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特表2024-544787AlNチャネルヘテロ構造電界効果トランジスタ
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  • 特表-AlNチャネルヘテロ構造電界効果トランジスタ 図1
  • 特表-AlNチャネルヘテロ構造電界効果トランジスタ 図2A
  • 特表-AlNチャネルヘテロ構造電界効果トランジスタ 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-04
(54)【発明の名称】AlNチャネルヘテロ構造電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537397
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 US2022050025
(87)【国際公開番号】W WO2023129293
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】17/646,178
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524059674
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】チュンベス,エドゥアルド,エム.
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM01
5F102GQ01
5F102HC01
(57)【要約】
半導体デバイスは、基板と、基板の上に配置されたAlNを含むウルツ鉱単結晶III族窒化物層の上にエピタキシャル的に及び異質に統合された斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
AlNを含むウルツ鉱単結晶III族窒化物層の上にエピタキシャル的に及び異質に統合された斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層と、
前記極性к-Al層内の伝導領域及び前記AlNの中への経路にわたって配置されたソース電極と、
前記極性к-Al層内の伝導領域及び前記AlNの中への経路にわたって配置されたドレーン電極と、
極性к-Al層の最上部で前記ソース電極と前記ドレーン電極との間に配置されたゲート電極と、
を備えた、前記半導体デバイス。
【請求項2】
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層は、к-Al及びк-Bの合金を含む、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層は、к-Bと置き換えられる、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層は、к-(AlGa1-x-yのバンドギャップがAlNよりも大きいと仮定して、к-(AlGa1-x-yと置き換えられる、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層は、3~15nmの厚みを有する、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記半導体デバイスは、デプレッションモード電界効果トランジスタである、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
半導体デバイスであって、
基板と、
前記基板の上に配置されたAlNを含むウルツ鉱単結晶III族窒化物層の上にエピタキシャル的に及び異質に統合された斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層と、
を備えた、前記半導体デバイス。
【請求項8】
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層内の伝導領域及びAlN層の中への経路にわたって配置されたソース電極と、
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層内の前記伝導領域及び前記AlN層の中への経路にわたって配置されたドレーン電極と、
デプレッションモード電界効果トランジスタを設けるための前記ソース電極と前記ドレーン電極との間に配置されたゲート電極と、
を備えた、請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項9】
前記斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層は、3~15nmの範囲の厚みを有する、請求項7に記載の半導体デバイス。
【請求項10】
前記ソース電極及び前記ドレーン電極は、前記AlN層をオーミック接合する、請求項8に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、デプレッションモード高電子モバイル電界効果トランジスタ(HEMT)半導体デバイスに関し、特に、ショットキー(Schottky)接合層を有するデプレッションモードHEMT半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本分野において既知であるように、例えば、GaN、AlGaN、InN、AlN、及びScAlNなどのIII族窒化物材料に基づいたダイオード及びFET(電界効果トランジスタ)などの活性半導体デバイスは、材料、工程、デバイス、及び設計技術の最適化と共に達成される、優秀なRF/マイクロ波性能を証明してきた。
【0003】
トランジスタ効率性は、RFシステムレンジ、感度、電力消費、及び信頼性を決定し、より高い電力密度において動作することは、高電力散逸(Pdiss)が伴う。トランジスタ電力及び効率性性能を改善することが望ましく、そうでなければ用途が熱管理に起因して潜在的に限定される。
【発明の概要】
【0004】
本開示によれば、AlNを含むウルツ鉱単結晶III族窒化物層の上にエピタキシャル的に及び異質に統合された斜方晶系極性結晶質酸化物к-Al層と、極性к-Al層内の伝導領域及びAlNの中への経路にわたって配置されたソース電極と、極性к-Al層内の伝導領域及びAlNの中への経路にわたって配置されたドレーン電極と、極性к-Al層の最上部でソース電極とドレーン電極との間に配置されたゲート電極と、を含む半導体デバイスが提供される。
【0005】
1つの実施形態では、上位層は、к-Bまたはк-Al及びк-Al及びк-B(例えば、к-(Al1-x2)合金を含む。
【0006】
別の実施形態では、半導体構造が提供され、к-AlとAlNとの間のヘテロ界面における分極不連続がヘテロ界面のAlN側で二次元電子ガス(2DEG)を誘導するために存在する。
【0007】
発明者は、AlNの大きなブレークダウン及び熱伝導性特性を利用して、超高電力密度無線周波数(RF)トランジスタをサポートするために、GaNチャネル層の代わりにより高いバンドギャップショートキーバリア層と共にAlNチャネル層を使用する利点を認識している。
【0008】
更に、発明者は、к-Alバリア層と共にAlNチャネル層の利点が、全体的により大きな分極不連続及びバンドギャップをもたらすことを認識している。
【0009】
開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明において示される。本開示の他の特長、目的、及び利点は、説明及び図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る、半導体デバイスの断面の略図である。
図2A】GaN及びAlNを含む異なる材料の様々な特性を示すチャートである。
図2B図2Aにおけるチャートからの様々な材料についてのブレークダウン電圧を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0012】
発明の詳細な説明から始まる前に、GaNチャネルをAlNと置き換えることと、分極を介してAlNに10倍よりも大きいキャリア密度を供給するために、極性酸化物(カッパ相Alまたはк-Al)をバリア層として使用することとの利点を発明者が認識していることに留意されるべきである。AlNをチャネル層として使用することは、4倍よりも大きい電界強度のGaNを有し、したがって、4倍だけ電圧をスケーリングすることができ、熱管理を改善するためのGaNよりも高い2.5倍よりも大きい導電性を有する。現在存在するAlN基板によるホモエピタキシが可能である。
【0013】
本開示は、AlNチャネルへのバリア層としてカッパ相のヘテロ構造を伴う。AlNチャネル(2.5倍よりも大きい熱伝導性及び4倍よりも大きい電界強度のGaN(P. Ranga et al., “Highly tunable, polarization-engineered two-dimensional electron gas in ε-AlGaO3/ε-Ga2O3 heterostructures”, Appl. Phys. Exp. 13 061009 (2020))を有するAl(GaNのものよりも高い9倍大きい及び3倍よりも大きいAIN)の非常に強い分極は、ダイヤモンドに統合することに頼ることなく、他の技術が達成することができない、より高い熱散逸を扱うために、熱伝導性を改善すると共に、最新のGaN構造の最大で40倍の電力密度を伝達する問題を解決する。その上、AlNは、ダイヤモンドに整合した格子により近く、よって、ダイヤモンド上でカッパ-Al/AlNを統合する工程がより単純である。AlN基板が商業的に存在し、よって、ホモエピタキシが可能である。
【0014】
説明されるように、構造は、トランジスタへの統合を扱う電力散逸を改善すると共に、現在のGaN構造の最大で40倍高い電力密度を有効にする。後者は、短いデューティサイクルパルス用途のみに用途を限定することに対処する熱冷却ソリューションが現在制限されている、8W/mmを超過する電力性能のために押し上げられる現在での超高電力トランジスタによる熱散逸問題に対処し軽減する。
【0015】
そのより高い熱伝導性、及び超高電力密度性能の潜在性があるにもかかわらずダイヤモンドは、現在の最新のGaN構造よりもはるかに低い性能であるトランジスタを結果としてもたらす低キャリア密度及びモビリティからの影響をそれが受けるので、何十年間も有望でなかった。GaNよりも超高電力密度性能が有望である他の半導体技術は、それらの半導体をダイヤモンドに統合する複雑な工程に頼る不良な熱伝導性から影響を受ける。それらの技術のいずれも、1つの半導体プラットフォームにおける組み合わされた高予測キャリア密度及び高熱伝導性と組み合わされたモビリティを有さない。
【0016】
説明されるように、斜方晶系к-Al(AlNの3倍)の高分極特性であるが、7.7eVの大きなバンドギャップ(AlNよりも高い1.5eVよりも大きい)により、к-Bは、11.3eVの更に大きなバンドギャップを有し、バリア層としても使用されることができる(Appl. Phys. Lett. 117, 012104 (2020);https://dol.org/10.1063/5.0005808;Submitted: 25 February 2020. Accepted 28 June 2020. Published Online: 09 July 2020を参照)。
【0017】
ここで、図1を参照して、デプレッションモード(D-モード)電界効果トランジスタ12、ここではD-モードHEMTを有する半導体構造10が示される。D-モードHEMT12は、示されるように、ソース電極26、ドレーン電極28、及びソース電極26とドレーン電極28との間に配置されたゲート電極25を含む。
【0018】
より具体的には、半導体構造10は、単結晶基板18、ここでは、例えば、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、ダイヤモンドまたは窒化アルミニウム(AlN)、及び核形成を成すエピタキシャル成長AlN層22、HEMT構造のバッファ及びチャネル領域、ならびに1つ以上のエピタキシャル成長極性酸化物バリア材料、ここでは、к-Alまたは以下で説明されるように、代わりにк-Bであるバリア層24を含む。酸化物窒化物ヘテロ層22及び24は、AlN層22内で2DEGチャネル(点線23によって示される)を結果としてもたらすヘテロ接合を成す。極性酸化物層24は、ソース電極26のオーミック接合領域27からドレーン電極28のオーミック接合領域29に延在することに留意されよう。ゲート電極25は、極性酸化物層24とショットキー接合する。ソース電極26及びドレーン電極28は、オーミック接合領域27及び29のそれぞれを介してAlNチャネル層22とオーミック接合することにも留意されよう。ショットキーバリアと直接接合した金属接点の熱アニールを伴う慣習的なオーミック接合形成は、電極とバリア材料との間のオーミック接合領域を形成するIII族窒化物HEMT内でバリア層をレンダリングする熱アニールの間の窒素空孔の形成及び電極及びバリア材料の元素混合を伴う機構がк-Alバリアを欠くので実現可能でない。この構造内でのオーミック接合領域27及び29の形成は、オーミックリセスまたは再成長構成のいずれかによって達成され、オーミック接合領域27及び29は、図1に示されるような側でのいずれかの材料が2DEGに接合するオーミック再成長のケースでは、例えば、エピタキシ技術(例えば、分子線、有機金属化学気相、物理蒸気)によって堆積されたオーミックリセスまたは導電AlN層のケースにおいてe-ビーム蒸着によって堆積された同一のソース電極材料26及びドレーン電極材料28のいずれかである。いずれかのケースでは、ソース電極及びドレーン電極が堆積されることになる領域内でバリア材料及びAlNチャネルの小さい部分を除去するために、エッチングが実行される。代わりに、領域27及び29は、オーミック接合形成を有効にする適切なイオン種(例えば、Si)のイオン注入によってк-Al及びAlNのいずれかのエッチング又は除去なしにレンダリングされる。ソース電極26及びドレーン電極28を形成した後、示されるように、バリア層24とショットキー接合してゲート電極25が形成される。
【0019】
ここで、図2A及び2Bを参照して、GaNをチャネル材料としてAlNと置き換えることは、GaNと比較して非常に大きな破壊強度に起因して(GaNよりも3倍大きい)高度にスケーリングされたトランジスタにおける極端に高い電圧を有効にし、AlN対GaNによる強いキャリアコンファイメントを理由に高電圧における高ゲインを維持し、熱管理を改善するために高い熱伝導性(2倍よりも大きいGaN)に起因したより高い効率性のトランジスタを提供し、AlN基板を採用することは、熱管理を更に改善する。そのような構造は、高電力切り替え用途のための既存の(SiC、GaN)技術及び出現する(β-Ga)と比較して10倍良好なRON-VBRK性能を有する。図2A及び2Bのそれぞれにおける表及びプロットは、J. Y. Tsao, Adv. Electron. Mat., vol. 04, 1600501, 2018からである。斜方晶系к-Alの高分極であるが(AlNの約3倍大きい)、7.7eVの大きなバンドギャップにより(AlNよりも高い1.5eVよりも大きい)、極端に高い電圧動作が得られ得る。к-Bは、11.3eVの更に大きなバンドギャップを有し、バリア層としても使用され得る。
【0020】
к-Alバリア層24の分極がAlNチャネル層22と同一の方向にあることを仮定して、高密度2DEGが可能であることに留意されるべきである。1つの実施形態では、к-Alバリア層は、3~15nm、ここでは、おおよそ4nmの厚みの範囲にある。
【0021】
上記でк-Al/AlN HEMT構造を説明してきたが、後者のバンドギャップがAlNよりも大きいことを仮定して、к-Alバリア層24がк-B、к-(Al1-x、または代わりに、к-(AlGa1-x-y))層と置き換えられることができることに留意されるべきである。
【0022】
開示のいくつかの実施形態が説明されてきた。しかしながら、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正が行われ得ることを理解されよう。チャネル及びバリア層の組成物は、その全体を通じて同一である必要はなく、また、複数の層、III族元素の複数の組み合わせ、またはIII族元素組成物のグラジエントから成り得る。更に、基板18の結晶構造に関して単一の良好に定義された結晶質配向によるAlNの堆積を有効にする他の単結晶基板18が使用され得ることを理解されたい。これは、別の結晶質材料上での1つ以上の結晶質材料の堆積を介して形成され、または結晶質であり、AlNの結晶質成長をサポートする表面領域を定義するように1つ以上の層を共に接着することによって形成されたヘテロ接合構造を含む。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
【国際調査報告】