(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-04
(54)【発明の名称】リン酸鉄の製造方法、リン酸鉄リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/37 20060101AFI20241127BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C01B25/37
C01B25/45 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537853
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022135562
(87)【国際公開番号】W WO2023185056
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210328818.0
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524042089
【氏名又は名称】湖北宇浩高科新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】王 勤
(57)【要約】
本発明は、リン酸鉄の製造方法及びリン酸鉄リチウムの製造方法を提供する。前記リン酸鉄の製造方法は、硫酸塩スラグと亜硫酸塩を水で均一に混合して第1混合系を得るステップと、第1混合系にリン酸及び緩衝剤を添加して浸出反応を行うステップと、浸出反応後に得られたスラリーに対して第1固液分離を行って、第1濾液及び第1濾滓を得るステップと、第1濾液に空気を導入して第1撹拌反応を行うステップと、第1撹拌反応後に得られたスラリーに対して第2固液分離を行って、第2濾液及び第2濾滓を得るステップと、第2濾滓を焼成するステップと、を含み、前記浸出反応の圧力は、0.25~0.5MPaであり、時間は、1~2時間であり、前記浸出反応の反応系のpHは、1.5~3であり、前記緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含む。前記リン酸鉄の製造方法は、硫酸塩スラグ中の鉄源を利用して、リン酸鉄の製造コストを低減でき、簡単で操作しやすい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸塩スラグと亜硫酸塩を水で均一に混合して第1混合系を得るステップと、前記第1混合系にリン酸及び緩衝剤を添加して浸出反応を行うステップと、前記浸出反応後に得られたスラリーに対して第1固液分離を行って、第1濾液及び第1濾滓を得るステップと、前記第1濾液に空気を導入して第1撹拌反応を行うステップと、前記第1撹拌反応後に得られたスラリーに対して第2固液分離を行って、第2濾液及び第2濾滓を得るステップと、前記第2濾滓を焼成してリン酸鉄を得るステップと、を含み、
前記浸出反応の圧力は、0.25~0.5MPaであり、前記浸出反応の時間は、1~2時間であり、
前記浸出反応の反応系のpHは、1.5~3であり、
前記緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含む、リン酸鉄の製造方法。
【請求項2】
前記硫酸塩スラグの粒径は、80~120メッシュであり、
好ましくは、前記硫酸塩スラグ中の鉄元素と、前記亜硫酸塩と、前記リン酸と、前記緩衝剤とのモル比は、1:(0.35~0.4):(0.25~0.3):(1.7~1.75)であり、
好ましくは、前記リン酸及び前記緩衝剤を、15~30min以内に前記第1混合系に添加し、
好ましくは、1時間当たりに前記第1濾液に導入される空気の量と、前記第1濾液中の第一鉄イオンとの比率は、(8~12)m
3:(28~32)molである、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項3】
前記浸出反応の温度は、130~170℃であり、
好ましくは、前記浸出反応は、撹拌の条件下で行われる、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項4】
前記第1濾液に空気を導入する前に、撹拌の条件下で、前記第1濾液を40~60℃に加熱し、
好ましくは、前記第1撹拌反応は、具体的には、
空気を導入した後の前記第1濾液を上澄み液中の鉄元素の含有量が0.5g/L以下になるまで撹拌し、前記第1濾液を90~95℃に加熱した後、さらに30~60min撹拌することを含む、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項5】
前記第2濾滓を焼成する前に、洗浄及び乾燥をさらに含み、
好ましくは、前記洗浄用の洗浄水の温度は、40~50℃であり、
好ましくは、前記洗浄液のpHが4.5以上になるまで洗浄し、
好ましくは、前記乾燥後の前記第2濾滓の含水量は、0.5%以下である、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項6】
前記第2濾滓を焼成する温度は、650~680℃であり、
好ましくは、前記第2濾滓を焼成する時間は、60~90minである、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項7】
前記浸出反応が終了した後、前記浸出反応で発生したガスを水酸化ナトリウム溶液に導入し、亜硫酸ナトリウムを得るステップをさらに含む、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項8】
前記第2濾液を冷却して第3固液分離を行って、硫酸ナトリウム結晶及び母液を得るステップと、前記母液に硫化ナトリウムを添加して、第3濾液及び第3濾滓を得るステップと、前記第3濾液のpHを9~10に調整し、第4固液分離を行って、第4濾液及び第4濾滓を得るステップと、前記第3濾滓を焼成し、焼成後の前記第3濾滓を硫酸で溶解して、第2混合系を得るステップと、前記第2混合系に対して抽出、濃縮、及び結晶化を行って、粗製硫酸銅と粗製硫酸コバルトを得るステップと、をさらに含み、
好ましくは、前記第2濾液を冷却した後の温度は、5~10℃であり、
好ましくは、前記第3濾滓を焼成する温度は、500~700℃であり、
好ましくは、前記第3濾滓を焼成する時間は、2~4時間である、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項9】
浮選濃縮された前記第1濾滓に王水を添加して、第3混合系を得るステップと、前記第3混合系に対して第5固液分離を行って、第5濾液を得るステップと、前記第5濾液に塩化ナトリウムを添加した後、第6固液分離を行って、塩化銀及び第6濾液を得るステップと、前記第6濾液に鉄粉を添加して、粗金粉を得るステップと、をさらに含む、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリン酸鉄の製造方法を含む、リン酸鉄リチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年3月30日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号202210328818.0で、発明の名称が「リン酸鉄の製造方法、リン酸鉄リチウムの製造方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その内容の全ては参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電池の技術分野に属し、特にリン酸鉄の製造方法、リン酸鉄リチウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
硫酸塩スラグは、製鉄などの原料として100年以上の歴史があり、毎年排出される硫酸塩スラグの量は、300万トン以上に達することができるが、そのうち100万トンしか合理的に利用できず、残りは環境に排出される。堆積すると、農地を占有し、土地を汚染し、川や河に排出すると、水を汚染する。
【0004】
現在、硫酸塩スラグを総合的に利用する方法が多く、ほとんどの硫酸塩スラグは、「鉄精鉱を選別し、スラグからレンガを製造する」という方法を用いる。製鉄の原料として、鉄品位が25%以上の硫酸塩スラグから鉄精鉱を選別することは、一定の経済価値があり、選別プロセスは、一般的な鉄鉱選別プロセスとの差が大きくなく、スラグ中の鉄鉱物の比磁化係数の高低に応じて、それぞれ重力選別又は磁気選別の方法を用いることができる。経済分析は、以下のとおりである。1年あたりの硫酸塩スラグの選別量が2万トンであれば、鉄品位30のスラグから鉄品位60の精鉱を選別し(鉄品位≧60%の鉄精鉱は、そのまま製鉄に使用できる)、収率を40%とした場合、年間で8000トンの鉄精鉱を生産することができ、鉄品位60の精鉱(硫黄含有量≦0.5)は、1トンあたりの価格が110元で、生産コストが70元で、利益が40元であり、年間利益は、32万元である。1つの鉄選別工場の総投資は、50万元程度であり、生産を始めてから2年未満で投資を全て回収することができる。鉄精鉱を選別した後、12000トンのスラグが残っており、レンガの製造に使用することができ、硫酸塩スラグ自体は、接着能力がないが、SiO2とAI2O3などの活性物質を含有する。
【0005】
硫酸塩スラグを焼結鉱の原料とすることができ、その中の鉄含有成分を主に利用し、焼結原料の生産コストを低減する。しかし、その球状形成性が低く、吸水率が高いため、焼結生産率に影響を与える。また、硫黄含有量が高く、Cu、Pb及びZnなどの有害元素を含有するため、焼結鉱の品質に影響を与える。焼結材中の硫酸塩スラグの添加量は、一般的に10%以下である。硫酸塩スラグを処理し、細さを高め、その鉄含有量を向上させ、硫黄含有量を低下させることにより、鉱石ペレットの原料とすることができる。いくつかの従来技術では、高温塩素化プロセスを用い、スラグに含まれる金属を塩素化し、その後、湿式冶金で金、銀などの貴金属を浸出し、スラグ中の有害金属を除去する。
【0006】
リン酸鉄リチウムの発展に伴い、安価な鉄源が注目されており、二酸化チタン副生成物の硫酸第一鉄結晶は、価格が一路上昇し、現在、価格が350元/トンに達し、かつ運賃が約70~90元/トンであり、また、鉄リチウムの生産能力の拡大に伴い、硫酸第一鉄結晶の価格は、ますます上昇し、かつ購入しにくい。したがって、安価で入手しやすい新しい鉄源の開発が急務となっている。硫酸塩スラグの毎年の生成量が非常に大きく、数百万トンに達し、かつ循環利用率が低い。
【0007】
これに鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに鑑み、本発明は、リン酸鉄の製造方法、リン酸鉄リチウムの製造方法を提供することを目的とし、リン酸鉄の製造方法は、簡単で、コストが低く、硫酸塩スラグ中のコバルト、銅、金、銀及び硫酸ナトリウムなどを回収することができ、硫酸塩スラグの付加価値を大幅に向上させ、硫酸塩スラグの資源化利用率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
硫酸塩スラグと亜硫酸塩を水で均一に混合して第1混合系を得るステップと、前記第1混合系にリン酸及び緩衝剤を添加して浸出反応を行うステップと、前記浸出反応後に得られたスラリーに対して第1固液分離を行って、第1濾液及び第1濾滓を得るステップと、前記第1濾液に空気を導入して第1撹拌反応を行うステップと、前記第1撹拌反応後に得られたスラリーに対して第2固液分離を行って、第2濾液及び第2濾滓を得るステップと、前記第2濾滓を焼成してリン酸鉄を得るステップと、を含み、
前記浸出反応の圧力は、0.25~0.5MPaであり、浸出反応の時間は、1~2時間であり、
前記浸出反応の反応系のpHは、1.5~3であり、
前記緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含む、リン酸鉄の製造方法を提供する。
【0010】
好ましくは、前記硫酸塩スラグの粒径は、80~120メッシュであり、
好ましくは、前記硫酸塩スラグ中の鉄元素と、前記亜硫酸塩と、前記リン酸と、前記緩衝剤とのモル比は、1:(0.35~0.4):(0.25~0.3):(1.7~1.75)であり、
好ましくは、前記リン酸及び前記緩衝剤を、15~30min以内に前記第1混合系に添加し、
好ましくは、1時間当たりに前記第1濾液に導入される空気の量と、前記第1濾液中の第一鉄イオンとの比率は、(8~12)m3:(28~32)molである。
【0011】
前記浸出反応の温度は、130~170℃であり、
好ましくは、前記浸出反応は、撹拌の条件下で行われる。
【0012】
前記第1濾液に空気を導入する前に、撹拌の条件下で、前記第1濾液を40~60℃に加熱し、
好ましくは、前記第1撹拌反応は、具体的には、
空気を導入した後の前記第1濾液を上澄み液中の鉄元素の含有量が0.5g/L以下になるまで撹拌し、前記第1濾液を90~95℃に加熱した後、さらに30~60min撹拌することを含む。
【0013】
前記第2濾滓を焼成する前に、洗浄及び乾燥をさらに含み、
好ましくは、前記洗浄用の洗浄水の温度は、40~50℃であり、
好ましくは、前記洗浄液のpHが4.5以上になるまで洗浄し、
好ましくは、前記乾燥後の前記第2濾滓の含水量は、0.5%以下である。
【0014】
前記第2濾滓の焼成温度は、650~680℃であり、
好ましくは、前記第2濾滓を焼成する時間は、60~90minである。
【0015】
前記リン酸鉄の製造方法は、
前記浸出反応が終了した後、前記浸出反応で発生したガスを水酸化ナトリウム溶液に導入し、亜硫酸ナトリウムを得るステップをさらに含む。
【0016】
前記リン酸鉄の製造方法は、
前記第2濾液を冷却して第3固液分離を行って、硫酸ナトリウム結晶及び母液を得るステップと、前記母液に硫化ナトリウムを添加して、第3濾液及び第3濾滓を得るステップと、前記第3濾液のpHを9~10に調整し、第4固液分離を行って、第4濾液及び第4濾滓を得るステップと、前記第3濾滓を焼成し、焼成後の前記第3濾滓を硫酸で溶解して、第2混合系を得るステップと、前記第2混合系に対して抽出、濃縮、及び結晶化を行って、粗製硫酸銅と粗製硫酸コバルトを得るステップと、をさらに含み、
好ましくは、前記第2濾液を冷却した後の温度は、5~10℃であり、
好ましくは、前記第3濾滓を焼成する温度は、500~700℃であり、
好ましくは、前記第3濾滓を焼成する時間は、2~4時間である。
【0017】
前記リン酸鉄の製造方法は、
浮選濃縮された前記第1濾滓に王水を添加して、第3混合系を得るステップと、前記第3混合系に対して第5固液分離を行って、第5濾液を得るステップと、前記第5濾液に塩化ナトリウムを添加した後、第6固液分離を行って、塩化銀及び第6濾液を得るステップと、前記第6濾液に鉄粉を添加して、粗金粉を得るステップと、をさらに含む。
【0018】
本発明は、上記リン酸鉄の製造方法を含むリン酸鉄リチウムの製造方法を提供する。
【0019】
前記リン酸鉄リチウムの製造方法は、簡単でコストが低い。
【発明の効果】
【0020】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
(1)本発明に係るリン酸鉄の製造方法は、高圧還元浸出を巧みに利用し、酸により溶解されにくい四酸化三鉄及び赤色酸化鉄を溶解し、同時にリン酸とリン酸二水素ナトリウムの混合溶液を利用して還元された鉄塩を浸出して、リン酸二水素第一鉄溶液を得て、同時に高いpHで、一部のアルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどが溶解されることを避けることができ、鉄の浸出率を大幅に向上させ、浸出された鉄をリン酸鉄の製造に使用する。
(2)本発明に係るリン酸鉄の製造方法は、硫酸塩スラグ中のコバルト、銅、金、銀及び硫酸ナトリウムなどを回収することもでき、硫酸塩スラグの付加価値を大幅に向上させ、硫酸塩スラグの資源化利用率を向上させる。
(3)本発明に係るリン酸鉄リチウムの製造方法は、簡単でコストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働をしない前提で、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の実施例に係る走査型電子顕微鏡でリン酸鉄を観察した結果を示す図である。
【
図2】本発明の別の実施例に係る走査型電子顕微鏡でリン酸鉄を観察した結果を示す図である。
【
図3】本発明のさらに別の実施例に係るリン酸鉄の粒度分布の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら、本発明の技術的手段を明確かつ完全に説明するが、当業者であれば、以下に説明する実施例は、本発明の一部の実施例であり、全部の実施例ではなく、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得られる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。実施例において具体的な条件を明記されていないものは、通常の条件又はメーカーが提案する条件に従う。使用される試薬又は機器のメーカーが明記されていないものは、いずれも市場から獲得できる通常の製品である。
【0023】
本発明の一態様は、
硫酸塩スラグと亜硫酸塩を水で均一に混合して第1混合系を得るステップと、前記第1混合系にリン酸及び緩衝剤を添加して浸出反応を行うステップと、前記浸出反応後に得られたスラリーに対して第1固液分離を行って、第1濾液及び第1濾滓を得るステップと、前記第1濾液に空気を導入して第1撹拌反応を行うステップと、前記第1撹拌反応後に得られたスラリーに対して第2固液分離を行って、第2濾液及び第2濾滓を得るステップと、前記第2濾滓を焼成するステップと、を含み、前記浸出反応の圧力は、0.25~0.5MPaであり、前記浸出反応の反応系のpHは、1.5~3であり、前記緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含む、リン酸鉄の製造方法に関する。
【0024】
いくつかの具体的な実施例において、前記浸出反応の圧力は、例えば、0.25MPa、0.3MPa、0.35MPa、0.4MPa、0.45MPa又は0.5MPaであってもよいが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの具体的な実施例において、前記浸出反応の反応系のpHは、例えば、1.5、2、2.5又は3であってもよいが、これらに限定されない。
【0026】
硫酸塩スラグとは、黄鉄鉱から硫酸を製造するプロセスによるスラグであり、黄鉄鉱渣又は焼渣とも呼ばれ、化学廃棄物の1種である。スラグには鉄が含まれるため、鉄鋼冶金の原料として使用することができる。硫酸塩スラグ中の鉄含有酸化物(Fe2O3、Fe3O4、FeO)の含有量は、約20~50%であり、シリカの含有量が約15~65%であり、アルミナの含有量が約10%であり、酸化カルシウムの含有量が約5%であり、酸化マグネシウムの含有量が5%以下であり、硫黄の含有量が約1~2%であり、通常、銅、コバルト、鉛、亜鉛、金及び銀をさらに含有する。四酸化三鉄は、硫酸の不動態化作用で緻密な四酸化三鉄を形成する。
【0027】
本発明に係るリン酸鉄の製造方法は、高圧還元浸出を巧みに利用し、酸により溶解されにくい四酸化三鉄及び赤色酸化鉄を溶解し、同時にリン酸とリン酸二水素ナトリウムの混合溶液を利用して還元された鉄塩を浸出して、リン酸二水素第一鉄溶液を得て、同時に浸出反応の反応系のpHを1.5~3に制御することにより、一部のアルミニウム、カルシウム、マグネシウムなどが溶解されることを避け、鉄の浸出率を向上させることができる。
【0028】
リン酸は、水素イオンを供給することができ、同時に、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウムは、緩衝溶液であり、リン酸イオンの水素イオンが消耗された後、水素イオンを補充できるとともに、溶液のpHが低すぎて他の不純物が浸出されることを回避できる。
【0029】
本発明の浸出反応は、特定の浸出条件で行われ、浸出率を大幅に向上させるとともに、亜硫酸塩を添加することにより、酸性環境下で還元性を示し、三価鉄イオンを二価鉄イオンに還元し、浸出率をさらに向上させ、最終的にリン酸二水素第一鉄を得ることができる。同時に、弱酸性環境及び大量のリン酸二水素イオンが存在する環境において、リン酸二水素第一鉄溶液を生成する。
【0030】
好ましくは、前記亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウム及び/又は亜硫酸カリウムを含む。
【0031】
好ましくは、前記硫酸塩スラグの粒径は、80~120メッシュである。
【0032】
いくつかの具体的な実施例において、前記硫酸塩スラグの粒径は、例えば、80メッシュ、90メッシュ、100メッシュ、110メッシュ又は120メッシュであってもよいが、これらに限定されない。
【0033】
好ましくは、前記硫酸塩スラグ中の鉄元素と、前記亜硫酸塩と、前記リン酸と、前記緩衝剤とのモル比は、1:(0.35~0.4):(0.25~0.3):(1.7~1.75)である。
【0034】
いくつかの具体的な実施例において、前記硫酸塩スラグ中の鉄元素と、前記亜硫酸塩と、前記リン酸と、前記緩衝剤とのモル比は、例えば、1:0.35:0.25:1.7、1:0.37:0.28:1.173又は1:0.4:0.3:1.75であってもよいが、これらに限定されない。
【0035】
好ましくは、前記リン酸及び前記緩衝剤を、15~30min(例えば、15min、20min、25min又は30min)以内に前記第1混合系に添加する。
【0036】
好ましくは、1時間当たりに前記第1濾液に導入される空気の量と、前記第1濾液中の第一鉄イオンとの比率は、(8~12)m3:(28~32)molである。
【0037】
いくつかの具体的な実施例において、1時間当たりに前記第1濾液に導入される空気の量と、前記第1濾液中の第一鉄イオンとの比率は、例えば、8:28、10:30又は12:32であってもよいが、これらに限定されない。
【0038】
好ましくは、前記浸出反応の温度は、130~170℃である。
【0039】
いくつかの具体的な実施例において、前記浸出反応の温度は、例えば、130℃、140℃、150℃、160℃又は170℃であってもよいが、これらに限定されない。
【0040】
好ましくは、前記浸出反応の時間は、1~2時間である。
【0041】
いくつかの具体的な実施例において、前記浸出反応の時間は、例えば、1時間、1.2時間、1.4時間、1.6時間、1.8時間又は2時間であってもよいが、これらに限定されない。
【0042】
好ましくは、前記浸出反応は、撹拌の条件下で行われる。
【0043】
好ましくは、前記第1濾液に空気を導入する前に、撹拌の条件下で、前記第1濾液を40~60℃(例えば、40℃、45℃、50℃、55℃又は60℃)に加熱する。
【0044】
好ましくは、前記第1撹拌反応は、具体的には、空気を導入した後の前記第1濾液を上澄み液中の鉄元素の含有量が0.5g/L以下になるまで撹拌し、前記第1濾液を90~95℃(例えば、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃又は95℃)に加熱した後、さらに30~60min(例えば、30min、35min、40min、45min、50min、55min又は60min)撹拌することを含む。
【0045】
好ましくは、前記第2濾滓を焼成する前に、洗浄及び乾燥をさらに含む。
【0046】
好ましくは、前記洗浄の温度は、40~50℃(例えば、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃又は50℃)である。
【0047】
好ましくは、前記洗浄液のpHが4.5以上(例えば、4.5、4.8、5、5.5、6又は6.5)になるまで洗浄する。
【0048】
好ましくは、乾燥後の前記第2濾滓の含水量は、0.5%以下(例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%又は0.5%)である。
【0049】
好ましくは、前記第2濾滓を焼成する温度は、650~680℃(例えば、650℃、655℃、660℃、665℃、670℃、675℃又は680℃)である。
【0050】
好ましくは、前記第2濾滓を焼成する時間は、60~90min(例えば60min、65min、70min、75min、80min、85min又は90min)である。
【0051】
好ましくは、前記第2濾滓を焼成した後、冷却、粉砕、篩分け、除鉄及び真空包装を行って、無水リン酸鉄を得る。
【0052】
好ましくは、前記リン酸鉄の製造方法は、前記浸出反応が終了した後、前記浸出反応で発生したガスを水酸化ナトリウム溶液に導入し、亜硫酸ナトリウムを得て、使用に備えるステップをさらに含む。
【0053】
好ましくは、前記リン酸鉄の製造方法は、前記第2濾液を冷却して第3固液分離を行って、硫酸ナトリウム結晶及び母液を得るステップと、前記母液に硫化ナトリウムを添加して、第3濾液及び第3濾滓を得るステップと、前記第3濾液のpHを9~10に調整し、第4固液分離を行って、第4濾液及び第4濾滓を得るステップと、前記第3濾滓を焼成し、焼成後の前記第3濾滓を硫酸で溶解して、第2混合系を得るステップと、前記第2混合系に対して抽出、濃縮、及び結晶化を行って、粗製硫酸銅と粗製硫酸コバルトを得るステップと、をさらに含む。
【0054】
好ましくは、前記第2濾液を冷却した後の温度は、5~10℃(例えば、5℃、7℃、8℃、9℃又は10℃)である。
【0055】
第2濾液に亜硫酸塩を混合した後、リン酸二水素ナトリウムを混合して、硫酸塩スラグを浸出するように戻す。第2濾液を3回循環利用してボーメ度が45~50になるまで濃縮してから、第2濾液の温度が5~10℃になるまで冷却し、遠心分離して乾燥させ、得られた結晶が硫酸ナトリウム結晶である。
【0056】
第4濾液にリン酸及びリン酸二水素ナトリウムを添加した後、硫酸塩スラグを浸出するように戻す。
【0057】
好ましくは、前記第3濾滓を焼成する温度は、500~700℃(例えば、530℃、560℃、590℃、620℃、650℃、680℃又は700℃)である。
【0058】
好ましくは、前記第3濾滓を焼成する時間は、2~4時間(例えば2h、2.5時間、3時間、3.5時間又は4時間)である。
【0059】
第3濾滓を焼成して生成した廃ガスを水酸化ナトリウム溶液で吸収し、硫酸塩スラグを浸出するように戻す。
【0060】
好ましくは、前記リン酸鉄の製造方法は、浮選濃縮された前記第1濾滓に王水を添加して、第3混合系を得るステップと、前記第3混合系に対して第5固液分離を行って、第5濾液を得るステップと、前記第5濾液に塩化ナトリウムを添加した後、第6固液分離を行って、塩化銀及び第6濾液を得るステップと、前記第6濾液に鉄粉を添加して、粗金粉を得るステップと、をさらに含む。
【0061】
本発明は、硫酸塩スラグ中の鉄源を利用してリン酸鉄を製造するとともに、硫酸塩スラグ中の銅、コバルトを粗製硫酸銅及び粗製硫酸コバルトに濃縮し、硫酸塩スラグ中の銀及び金を濃縮することもできる。
【0062】
本発明の別の態様は、さらに、前記リン酸鉄の製造方法を含むリン酸鉄リチウムの製造方法に関する。
【0063】
リン酸鉄リチウムの製造方法は、以下のとおりである。
【0064】
上記無水リン酸鉄にリチウム源、炭素源及びドーパントを添加し、純水を添加し、スラリー化した後、ナノ化粉砕し、噴霧乾燥させ、得られた噴霧乾燥材を不活性雰囲気下で焼成し、得られた焼成材を粉砕、篩分け、除鉄及び真空包装して、リン酸鉄リチウムを得る。
【0065】
前記無水リン酸鉄、リチウム源、炭素源及びドーパントの質量比は、1:(0.2~0.25):(0.1~0.2):(0.0005~0.005)であり、前記リチウム源は、炭酸リチウム又は水酸化リチウムであり、前記炭素源は、グルコース、スクロース、可溶性デンプン、PEG、クエン酸、アスコルビン酸及び安息香酸のうちの少なくとも1種である。前記ドーパントは、チタンの化合物、バナジウムの化合物、マグネシウムの化合物及びマンガンの化合物のうちの少なくとも1種である。
【0066】
ナノ化粉砕の場合、スラリーの粒径が100~600nmになるまで粉砕し、不活性雰囲気が窒素ガスであり、焼成温度が600~900℃であり、焼成時間が5~40時間である。
【0067】
前記リン酸鉄リチウムの製造方法は、簡単でコストが低い。
【実施例】
【0068】
以下、本発明をさらに説明するために、実施例を参照して本発明に係るリン酸鉄の製造方法、リン酸鉄リチウムの製造方法を詳細に説明するが、それらを本発明の保護範囲に対する限定と理解することはできない。
【0069】
本実施例に係るリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(7)を含む。
【0070】
ステップ(1)では、硫酸塩スラグをボールミルで粉砕した後、100メッシュの篩にかけ、硫酸塩スラグからサンプリングした検出データを表1に示す。
【0071】
【0072】
ステップ(2)では、硫酸塩スラグをオートクレーブ内に添加し、亜硫酸ナトリウム溶液を添加し、混合して撹拌し、高圧ポンプにより、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合溶液をオートクレーブ内に添加し、添加しながら150℃まで昇温し、オートクレーブ内の圧力を0.42MPaにし、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合溶液の添加時間を20minとし、この温度及び圧力で1.5時間撹拌して反応させ、反応後のスラリーを濾過し、第1濾液及び第1濾滓を得て、第1濾滓をサンプリングして、検出データを表2に示す。
【0073】
表2 実施例1における第1濾滓の具体的な情報
【表2】
【0074】
鉄の浸出率は、95%より高く、金銀などの元素を濃縮した。
【0075】
ステップ(3)では、第1濾液を撹拌状態で温度が50℃になるまで昇温してから、空気を導入し、この条件で撹拌して上澄み液中の鉄元素の濃度が0.35g/Lになるまで反応させ、95℃まで昇温し、そして、この温度で40min撹拌して反応させ、濾過し、第2濾液及び第2濾滓を得て、そして、第2濾滓を洗浄した後、乾燥させ、ロータリーキルンで焼成し、焼成温度が670℃であり、焼成時間が80minであり、焼成材に対して冷却、粉砕、篩分け、除鉄及び真空包装を行って、無水リン酸鉄を得て、無水リン酸鉄の検出データを表3に示し、走査型電子顕微鏡でリン酸鉄を観察した結果を
図1及び
図2に示し、リン酸鉄の粒度分布を
図3に示す。
【0076】
【0077】
ステップ(4)では、第2濾液をリン酸二水素ナトリウムと混合するように戻し、続いて硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第2濾液を3回循環利用してボーメ度が48になるまで濃縮してから、溶液の温度が8℃になるまで冷却し、遠心分離して乾燥させ、得られた結晶が硫酸ナトリウム結晶であり、結晶化後の母液に硫化ナトリウム溶液を添加し、濾過して、第3濾液及び第3濾滓を得て、そして、第3濾液に水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを9.5に調整し、濾過して、第4濾液及び第4濾滓を得て、第4濾液を新しいリン酸溶液及びリン酸二水素ナトリウムと併用するように戻して、純度が98.5%以上の硫酸ナトリウム結晶を得た。
【0078】
硫酸塩スラグ中の鉄元素と、亜硫酸ナトリウムと、リン酸と、リン酸二水素ナトリウムとのモル数の比は、1:0.37:0.3:1.7であり、亜硫酸ナトリウム溶液の濃度は、2.5mol/Lであり、リン酸とリン酸二水素ナトリウムの混合溶液のモル濃度の和は、2mol/Lであった。
【0079】
ステップ(5)では、第3濾滓をロータリーキルンで焼成し、焼成温度が600℃であり、焼成時間が3時間であり、焼成して生成した廃ガスを水酸化ナトリウム溶液で吸収して、硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第3濾滓を焼成した後、硫酸を添加して溶解し、P2O4抽出剤によりコバルト、銅を抽出分離して、コバルト銅溶液を得て、そして、濃縮して結晶化し、純度が95.6%の粗製硫酸銅と純度が91.5%の粗製硫酸コバルトを得た。
【0080】
ステップ(6)では、第1濾滓を浮選した後、金と銀をさらに濃縮し、王水を添加して溶解し、濾過し、得られた濾液に塩化ナトリウムを添加し、その中の銀を沈殿させ、塩化銀を得て、残りの濾液に鉄粉を添加してその中の金を置換させて、粗金粉を得た。
【0081】
ステップ(7)では、オートクレーブ内のガスを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に導入するとともに、オートクレーブ内に窒素ガスを導入し、これにより、二酸化硫黄ガスがいずれも排出されて水酸化ナトリウム溶液に吸収され、最終的に吸収液の水酸化ナトリウム濃度が0.2mol/L未満になり、得られた吸収液が亜硫酸ナトリウムであり、再利用するように戻し、1時間当たりに導入された空気の流量(m3)と溶液中の第一鉄イオンの総モル数(mol)との比は、20であった。
【0082】
リン酸鉄リチウムの製造方法は、以下のとおりである。
【0083】
上記無水リン酸鉄にリチウム源、炭素源及びドーパントを添加し、純水を添加し、スラリー化した後、ナノ化粉砕し、噴霧乾燥させ、得られた噴霧乾燥材を不活性雰囲気下で焼成し、得られた焼成材を粉砕、篩分け、除鉄及び真空包装して、リン酸鉄リチウムを得た。
【0084】
無水リン酸鉄、リチウム源、炭素源及びドーパントの質量比は、1:0.23:0.13:0.0015であり、前記リチウム源は、炭酸リチウムであり、前記炭素源は、グルコースであり、前記ドーパントは、二酸化チタンであった。
【0085】
ナノ化粉砕の場合、スラリーの粒径が320nmになるまで粉砕し、不活性雰囲気が窒素ガスであり、焼成温度が780℃であり、焼成時間が12時間であった。
【0086】
最終的なリン酸鉄リチウムの検出データは、以下のとおりである。
【表4】
【0087】
粉末抵抗率は、四探針法で測定し、圧力が10MPaであった。
【0088】
プレス密度を得るために用いられる圧力は、3Tであった。
【0089】
実施例2
本実施例に係るリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(7)を含む。
【0090】
ステップ(1)は、実施例1と同様である。
【0091】
ステップ(2)では、硫酸塩スラグをオートクレーブ内に添加し、亜硫酸カリウム溶液を添加し、混合して撹拌し、高圧ポンプにより、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合溶液をオートクレーブ内に添加し、添加しながら130℃まで昇温し、オートクレーブ内の圧力を0.5MPaにし、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合溶液の添加時間を15minとし、この温度及び圧力で2時間撹拌して反応させ、反応後のスラリーを濾過し、第1濾液及び第1濾滓を得た。
【0092】
ステップ(3)では、第1濾液を撹拌状態で温度が40℃になるまで昇温してから、空気を導入し、この条件で撹拌して上澄み液中の鉄元素の濃度が0.1g/Lになるまで反応させ、95℃まで昇温し、そして、この温度で30min撹拌して反応させ、濾過し、第2濾液及び第2濾滓を得て、そして、第2濾滓を洗浄した後、乾燥させ、ロータリーキルンで焼成し、焼成温度が680℃であり、焼成時間が60minであり、焼成材に対して冷却、粉砕、篩分け、除鉄及び真空包装を行って、無水リン酸鉄を得た。
【0093】
ステップ(4)では、第2濾液をリン酸二水素ナトリウムと混合するように戻し、続いて硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第2濾液を3回循環利用してボーメ度が48になるまで濃縮してから、溶液の温度が8℃になるまで冷却し、遠心分離して乾燥させ、得られた結晶が硫酸ナトリウム結晶であり、結晶化後の母液に硫化ナトリウム溶液を添加し、濾過して、第3濾液及び第3濾滓を得て、そして、第3濾液に水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを9に調整し、濾過して、第4濾液及び第4濾滓を得て、第4濾液を新しいリン酸溶液及びリン酸二水素ナトリウムと併用するように戻した。
【0094】
硫酸塩スラグ中の鉄元素と、亜硫酸カリウムと、リン酸と、リン酸二水素ナトリウムとのモル数の比は、1:0.35:0.25:1.7であり、亜硫酸カリウム溶液の濃度は、2.5mol/Lであり、リン酸とリン酸二水素ナトリウムの混合溶液のモル濃度の和は、2mol/Lであった。
【0095】
ステップ(5)では、第3濾滓をロータリーキルンで焼成し、焼成温度が500℃であり、焼成時間が4時間であり、焼成して生成した廃ガスを水酸化ナトリウム溶液で吸収して、硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第3濾滓を焼成した後、硫酸を添加して溶解し、P204抽出剤によりコバルト、銅を抽出分離して、コバルト銅溶液を得て、そして、濃縮して結晶化し、粗製硫酸銅と粗製硫酸コバルトを得た。
【0096】
ステップ(6)~(7)は、実施例1と同様である。
【0097】
実施例3
本実施例に係るリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(7)を含む。
【0098】
ステップ(1)は、実施例1と同様である。
【0099】
ステップ(2)では、硫酸塩スラグをオートクレーブ内に添加し、亜硫酸ナトリウム溶液を添加し、混合して撹拌し、高圧ポンプにより、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合溶液をオートクレーブ内に添加し、添加しながら170℃まで昇温し、オートクレーブ内の圧力を0.25MPaにし、リン酸とリン酸二水素ナトリウムとの混合溶液の添加時間を30minとし、この温度及び圧力で1時間撹拌して反応させ、反応後のスラリーを濾過し、第1濾液及び第1濾滓を得た。
【0100】
ステップ(3)では、第1濾液を撹拌状態で温度が60℃になるまで昇温してから、空気を導入し、この条件で撹拌して上澄み液中の鉄元素の濃度が0.5g/Lになるまで反応させ、90℃まで昇温し、そして、この温度で60min撹拌して反応させ、濾過し、第2濾液及び第2濾滓を得て、そして、第2濾滓を洗浄した後、乾燥させ、ロータリーキルンで焼成し、焼成温度が650℃であり、焼成時間が90minであり、焼成材に対して冷却、粉砕、篩分け、除鉄及び真空包装を行って、無水リン酸鉄を得た。
【0101】
ステップ(4)では、第2濾液をリン酸二水素ナトリウムと混合するように戻し、続いて硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第2濾液を3回循環利用してボーメ度が48になるまで濃縮してから、溶液の温度が8℃になるまで冷却し、遠心分離して乾燥させ、得られた結晶が硫酸ナトリウム結晶であり、結晶化後の母液に硫化ナトリウム溶液を添加し、濾過して、第3濾液及び第3濾滓を得て、そして、第3濾液に水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを10に調整し、濾過して、第4濾液及び第4濾滓を得て、第4濾液を新しいリン酸溶液及びリン酸二水素ナトリウムと併用するように戻した。
【0102】
硫酸塩スラグ中の鉄元素と、亜硫酸ナトリウムと、リン酸と、リン酸二水素ナトリウムとのモル数の比は、1:0.4:0.3:1.75であり、亜硫酸ナトリウム溶液の濃度は、2.5mol/Lであり、リン酸とリン酸二水素ナトリウムの混合溶液のモル濃度の和は、2mol/Lであった。
【0103】
ステップ(5)では、第3濾滓をロータリーキルンで焼成し、焼成温度が700℃であり、焼成時間が2時間であり、焼成して生成した廃ガスを水酸化ナトリウム溶液で吸収して、硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第3濾滓を焼成した後、硫酸を添加して溶解し、P204抽出剤によりコバルト、銅を抽出分離して、コバルト銅溶液を得て、そして、濃縮して結晶化し、粗製硫酸銅と粗製硫酸コバルトを得た。
【0104】
ステップ(6)~(7)は、実施例1と同様である。
【0105】
比較例1
本比較例に係るリン酸鉄の製造方法は、浸出反応の圧力が0.1MPaであり、鉄の浸出率が83%である点のみで実施例1と異なる。
【0106】
比較例2
本比較例に係るリン酸鉄の製造方法は、浸出反応の反応系のpHが1である点のみで実施例1と異なり、得られた第1濾滓の詳細情報をそれぞれ表4に示す。
【0107】
表4 比較例2における第1濾滓の具体的な情報
【表5】
【0108】
比較例3
本比較例に係るリン酸鉄の製造方法は、浸出反応の時間が0.5時間であり、鉄の浸出率が81%である点のみで実施例1と異なる。
【0109】
実施例1、比較例1及び比較例3を比較することにより、浸出反応の圧力及び時間が一定の範囲内でなければ、鉄の浸出効果を保証できないことが分かる。
【0110】
実施例1と比較例2を比較することにより、pHが低いと、他の不純物の浸出率が大幅に向上し、鉄含有溶液に多くの不純物が導入され、鉄の浸出効果に影響を与え、pHが一定の範囲内でなければ、鉄の浸出純度を保証できないことが分かる。
【0111】
具体的な実施例を参照しながら本発明を説明・記述したが、以上の各実施例は、本発明の技術的手段を説明するためのものに過ぎず、制限するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲を逸脱せずに、前述した各実施例に記載された技術的手段を修正し、或いはそのうちの一部又は全ての技術的特徴に対して等価の代替を行うことができることを理解されたい。これらの修正及び代替は、対応する技術的手段の本質を本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱させるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲には、本発明の保護範囲内に入る全ての代替、修正が含まれることを意味する。
【0112】
以上の記述は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとって、本発明に記載の原理から逸脱しない前提において、さらに、様々な改善や修飾を行うことができ、これらの改善や修飾も本発明の保護範囲と見なすべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸塩スラグと亜硫酸塩を水で均一に混合して第1混合系を得るステップと、
前記第1混合系にリン酸及び緩衝剤を添加して浸出反応を行うステップと、
前記浸出反応後に得られたスラリーに対して第1固液分離を行って、第1濾液及び第1濾滓を得るステップと、
前記第1濾液に空気を導入して第1撹拌反応を行うステップと、
前記第1撹拌反応後に得られたスラリーに対して第2固液分離を行って、第2濾液及び第2濾滓を得るステップと、
前記第2濾滓を焼成してリン酸鉄を得るステップと、を含み、
前記浸出反応の圧力は、0.25~0.5MPaであり、
前記浸出反応の時間は、1~2時間であり、
前記浸出反応の反応系のpHは、1.5~3であり、
前記緩衝剤は、リン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含む、リン酸鉄の製造方法。
【請求項2】
前記硫酸塩スラグの粒径は、80~120メッシュであり、
前記硫酸塩スラグ中の鉄元素と、前記亜硫酸塩と、前記リン酸と、前記緩衝剤とのモル比は、1:(0.35~0.4):(0.25~0.3):(1.7~1.75)であり、
前記リン酸及び前記緩衝剤を、15~30min以内に前記第1混合系に添加し、
1時間当たりに前記第1濾液に導入される空気の量と、前記第1濾液中の第一鉄イオンとの比率は、(8~12)m
3:(28~32)molである、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項3】
前記浸出反応の温度は、130~170℃であり、
前記浸出反応は、撹拌の条件下で行われる、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項4】
前記第1濾液に空気を導入する前に、撹拌の条件下で、前記第1濾液を40~60℃に加熱し、
前記第1撹拌反応は、具体的には、
空気を導入した後の前記第1濾液を上澄み液中の鉄元素の含有量が0.5g/L以下になるまで撹拌し、前記第1濾液を90~95℃に加熱した後、さらに30~60min撹拌することを含む、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項5】
前記第2濾滓を焼成する前に、洗浄及び乾燥をさらに含み、
前記洗浄用の洗浄水の温度は、40~50℃であり、
前記洗浄液のpHが4.5以上になるまで洗浄し、
前記乾燥後の前記第2濾滓の含水量は、0.5%以下である、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項6】
前記第2濾滓を焼成する温度は、650~680℃であり、
前記第2濾滓を焼成する時間は、60~90minである、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項7】
前記浸出反応が終了した後、前記浸出反応で発生したガスを水酸化ナトリウム溶液に導入し、亜硫酸ナトリウムを得るステップをさらに含む、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項8】
前記第2濾液を冷却して第3固液分離を行って、硫酸ナトリウム結晶及び母液を得るステップと、
前記母液に硫化ナトリウムを添加して、第3濾液及び第3濾滓を得るステップと、
前記第3濾液のpHを9~10に調整し、第4固液分離を行って、第4濾液及び第4濾滓を得るステップと、
前記第3濾滓を焼成し、焼成後の前記第3濾滓を硫酸で溶解して、第2混合系を得るステップと、
前記第2混合系に対して抽出、濃縮、及び結晶化を行って、粗製硫酸銅と粗製硫酸コバルトを得るステップと、をさらに含み、
前記第2濾液を冷却した後の温度は、5~10℃であり、
前記第3濾滓を焼成する温度は、500~700℃であり、
前記第3濾滓を焼成する時間は、2~4時間である、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項9】
浮選濃縮された前記第1濾滓に王水を添加して、第3混合系を得るステップと、
前記第3混合系に対して第5固液分離を行って、第5濾液を得るステップと、
前記第5濾液に塩化ナトリウムを添加した後、第6固液分離を行って、塩化銀及び第6濾液を得るステップと、
前記第6濾液に鉄粉を添加して、粗金粉を得るステップと、をさらに含む、請求項1に記載のリン酸鉄の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のリン酸鉄の製造方法を含む、リン酸鉄リチウムの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
実施例1
本実施例に係るリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(7)を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
ステップ(5)では、第3濾滓をロータリーキルンで焼成し、焼成温度が600℃であり、焼成時間が3時間であり、焼成して生成した廃ガスを水酸化ナトリウム溶液で吸収して、硫酸塩スラグを浸出するように戻し、そして、第3濾滓を焼成した後、硫酸を添加して溶解し、P204抽出剤によりコバルト、銅を抽出分離して、コバルト銅溶液を得て、そして、濃縮して結晶化し、純度が95.6%の粗製硫酸銅と純度が91.5%の粗製硫酸コバルトを得た。
【国際調査報告】