(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-04
(54)【発明の名称】マイクロニードル・アレイ・チップ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A61M37/00 516
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537899
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2022139300
(87)【国際公開番号】W WO2023116548
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202123259085.X
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524233300
【氏名又は名称】蘇州納生微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐百
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267CC01
4C267HH19
(57)【要約】
本発明は、基板と基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードルとを備え、マイクロニードルの先端から下方に向かって溝が開設され、溝の幅が10nm以上であり、溝の深さが50nm以上であるマイクロニードル・アレイ・チップを開示した。マイクロニードル・アレイ・チップは、基板を備え、前記基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードル群が設けられ、各マイクロニードル群のそれぞれは、少なくとも2つのマイクロニードルからなり、各マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、10nm以上で300μm以下である。マイクロニードルの溝やマイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔を利用することで、マイクロニードルは、製剤または美容製品を運ぶ役割を果たすことができ、角質層を貫通する際に製剤または美容製品を皮膚の角質層下の深部組織に送達でき、製剤または美容製品の吸収効率を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードルとを備えるマイクロニードル・アレイ・チップであって、
マイクロニードルの先端から下方に向かって溝が開設され、溝の幅が10nm以上であり、溝の深さが50nm以上である
ことを特徴とするマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項2】
前記マイクロニードルは上部と下部を含み、前記上部に尖鋭部が形成され、前記尖鋭部の間に前記溝が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項3】
前記尖鋭部は、三角形に形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項4】
前記溝は、マイクロニードルの先端から下方に向かって開設され、前記溝の深さは、前記マイクロニードルの高さよりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項5】
前記溝は、マイクロニードルの先端から下方に向かって開設され、前記溝の深さは、前記マイクロニードルの高さに等しい
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項6】
前記溝は、V字形の溝である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項7】
前記溝は、矩形の溝である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項8】
前記溝の両側面は、斜面である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項9】
前記基板の裏側にリザーバが設けられ、前記リザーバと前記溝とが貫通穴を介して流体連通される
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項10】
隣接する前記リザーバは浅い溝によって連通される
ことを特徴とする請求項9に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項11】
前記溝の底面から基板の裏側に延在する貫通穴をさらに含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項12】
前記溝は、1つの直線溝、または任意の角度で交差する2つの直線溝からなる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項13】
基板を備えるマイクロニードル・アレイ・チップであって、
前記基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードル群が設けられ、各マイクロニードル群のそれぞれは、少なくとも2つのマイクロニードルからなり、各マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、10nm以上で300μm以下であり、マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、マイクロニードル・アレイ・チップにおけるマイクロニードル群間の間隔よりも小さい
ことを特徴とするマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項14】
基板の裏側にリザーバが設けられ、前記リザーバの底面と前記基板の表側とがマイクロニードル群におけるマイクロニードルの間に位置する貫通穴を介して流体連通される
ことを特徴とする請求項13に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項15】
隣接する前記リザーバは浅い溝によって連通される
ことを特徴とする請求項14に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項16】
前記基板の表側から基板の裏側に延在する貫通穴をさらに含み、前記貫通穴がマイクロニードル群におけるマイクロニードルの間に位置する
ことを特徴とする請求項13に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項17】
各マイクロニードル群のそれぞれは、2つのマイクロニードルからなる
ことを特徴とする請求項13~16のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項18】
各マイクロニードル群のそれぞれは、2つ以上のマイクロニードルからなり、マイクロニードルが円形に配列される
ことを特徴とする請求項13~16のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項19】
各マイクロニードル群のそれぞれは、4つのマイクロニードルからなり、4つのマイクロニードルが円形アレイ状に配列、または中心対称に配置されている
ことを特徴とする請求項13~16のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮投与の技術分野に属し、具体的にマイクロニードル・アレイ・チップに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロニードル・アレイ・チップは、マイクロニードルにより皮膚の角質層を貫通する装置であり、医療または美容分野において、皮膚の角質層を通過させて製剤または美容製品を投与し、より良好な吸収効果を得るために使用される。この技術分野において、マイクロニードルの作製、材料、構造、用途および開発などに関する技術的情報を記載した従来技術が既に大量に存在し、例えばCN100355470C、CN100402107C、CN103079634B、CN100408126C、CN100528091C、CN109432585A、CN111300702A、CN105581975Aなどの多くの特許文献がある。
【0003】
従来のマイクロニードル・アレイ・チップにおけるマイクロニードルは、中実のマイクロニードルと中空のマイクロニードルの2種類である。
【0004】
中実のマイクロニードルは、往復穿刺により角質層に短時間保持される微細流路が形成され、この保持時間内に製剤または美容製品を皮膚に留置させれば、製剤または美容製品が上記の微細流路により皮膚の角質層を通過して、皮膚の深部組織に吸収されることができる。しかしながら、この方法では吸収効率が低い。
【0005】
中空のマイクロニードルは、注射器とほぼ同様のメカニズムを有する。中空のマイクロニードルは、皮膚の角質層に挿入された後、そのまま皮膚の角質層内で滞在し、製剤が注射システムにより中空のマイクロニードルのキャビティを通過して皮膚の深部組織に注入される。しかしながら、中空のマイクロニードルの作製プロセスが複雑で、歩留まりが悪く、製造コストが高い。
【0006】
溶解性マイクロニードルは有機材料で作成され、製剤または美容製品がマイクロニードルの表面に硬化される。溶解性マイクロニードルは、角質層に挿入された後、そのまま皮膚の角質層内で数分間から数時間滞在し、その滞在時間内で製剤または美容製品が皮膚の深部組織で溶解され続ける。しかしながら、溶解性マイクロニードルは、作製プロセスが複雑で、コストが高い。
【0007】
したがって、マイクロニードルの経皮投与の技術分野における従来技術には、改良の余地がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、製剤または美容製品に皮膚の角質層を貫通する効率を向上させる中実のマイクロニードル・アレイ・チップを提供する。
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術案を採用する。
【0010】
マイクロニードル・アレイ・チップは、基板と基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードルとを備え、マイクロニードルの先端から下方に向かって溝が開設され、溝の幅が10nm以上であり、溝の深さが50nm以上である。
【0011】
定義:マイクロニードルとは、針の長さが5mm未満の微細針を指す。マイクロニードルの材質は、単結晶シリコン、金属または有機材料であってもよい。マイクロニードルのサイズは、マイクロメートルまたはナノメートルスケールであってもよい。
【0012】
好ましくは、前記基板の裏側にリザーバが設けられ、前記リザーバと前記溝とが貫通穴を介して流体連通される。
【0013】
好ましくは、前記溝の底面から基板の裏側に延在する貫通穴をさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記溝は、1つの直線溝、または任意の角度で交差する2つの直線溝からなる。
【0015】
マイクロニードル・アレイ・チップは、基板を備え、前記基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードル群が設けられ、各マイクロニードル群のそれぞれは、少なくとも2つのマイクロニードルからなり、各マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、10nm以上で300μm以下である。
【0016】
定義:マイクロニードル群とは、ワンセットのマイクロニードルを指す。1つのマイクロニードル群におけるマイクロニードルの数は2つ以上である。マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、マイクロニードル・アレイ・チップ上のマイクロニードル群間の間隔よりも小さい。
【0017】
好ましくは、前記基板の裏側にリザーバが設けられ、前記リザーバの底面と前記基板の表側とは、マイクロニードル群におけるマイクロニードルの間に位置する貫通穴を介して流体連通される。
【0018】
好ましくは、各マイクロニードル群のそれぞれは、2つのマイクロニードルからなる。
【0019】
好ましくは、各マイクロニードル群のそれぞれは、2つ以上のマイクロニードルからなり、マイクロニードルが円形に配列される。
【0020】
有益な効果
発明の有益な効果は以下である。マイクロニードルの溝やマイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔を利用することで、マイクロニードルは、製剤または美容製品を運ぶ役割を果たすことができ、角質層を貫通する際に製剤または美容製品を皮膚の角質層下の深部組織に送達することができ、製剤または美容製品の吸収効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1によるマイクロニードルチップアレイの表側の模式図である。
【
図2】実施例1によるマイクロニードルチップアレイの裏側の模式図である。
【
図3】実施例1による単一のマイクロニードル群の部分模式図である。
【
図4】実施例1による単一のリザーバの部分模式図である。
【
図5】実施例1による単一のマイクロニードル群の断面図である。
【
図6】実施例2による単一のマイクロニードル群の部分模式図である。
【
図7】実施例3による単一のマイクロニードル群の部分模式図である。
【
図8】実施例3による単一のマイクロニードル群の部分側面模式図その一である。
【
図9】実施例3による単一のマイクロニードル群の部分側面模式図その二である。
【
図10】実施例4による単一のマイクロニードル群の部分模式図である。
【
図11】実施例4による単一のマイクロニードル群の部分側面模式図である。
【
図12】実施例5による単一のマイクロニードル群の部分模式図である。
【
図13】実施例5による単一のマイクロニードル群の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明を実施するための最適な形態
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例に係る技術案を明瞭かつ完全に説明するが、説明される実施例が本発明の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは無論である。
【0023】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例1
【0024】
マイクロニードル・アレイ・チップは、
図1に示すように、基板1の表側に矩形アレイ状に配列した複数のマイクロニードル群2が設けられ、複数のマイクロニードル群2間の横方向および縦方向の間隔がいずれも400μmである。マイクロニードル群2の構造は、
図3に示すように、4つのマイクロニードル21が取り囲むように円形アレイ状に配列、または中心対称に配置されている。マイクロニードル21の間に十字形の流路が形成され、この流路は、互いに直交する2つの矩形の流路が交差して構成されているとも見なすことができる。マイクロニードル群2におけるマイクロニードル21のそれぞれは、いずれも高さ300μmの四角錐状に形成され、その根元の断面が辺の長さ25μmの正方形に形成される。隣接する2本のマイクロニードル21間の間隔が50μmである。つまり、十字形の流路は、互いに直交する幅が50μmの2つの矩形の流路からなる。基板1の裏側にリザーバ3が設けられ、リザーバ3が導液孔を介して基板の表側に連通する。導液孔は、直径が40μmで、基板の表側とリザーバとを流体連通させるものである。導液孔は、マイクロニードル群2におけるマイクロニードル21間の間隔、すなわち十字形の流路に配置される。
【0025】
従来の中実のマイクロニードル・アレイ・チップに比べて、本実施例によるマイクロニードル・アレイ・チップは、従来技術による中実のマイクロニードルをマイクロニードル群2に置き換えたものである。マイクロニードル群2は、皮膚を穿刺するメカニズムが中実のマイクロニードルと同様であり、皮膚の角質層を穿刺するためものである。好ましくは、浸透促進器などの装置により高周波振動を発生させることで角質層を穿刺し角質層に孔が形成される。美容有効成分や治療のための医薬品成分がこの孔を介して皮膚の角質層を通じて皮膚の深層部に到達することができるので、美容有効成分や治療のための医薬品成分の吸収効果が向上する。従来技術に比べて、本実施例は、さらに以下の技術的進歩を有する。マイクロニードル群2におけるマイクロニードル21間の間隔は、一定の収容機能を奏することができる。マイクロニードル群2が皮膚を往復穿刺する過程において、この間隔に美容有効成分や治療のための医薬品成分が収容され、皮膚の深層部に投与されることができる。従来技術による中実のマイクロニードルはこのような収容機能を有しないため、本実施例は、従来技術による中実のマイクロニードル・アレイ・チップに比べて美容有効成分や治療のための医薬品成分の吸収効果をさらに向上させることができる。
【0026】
本実施例は、
図2、4、5に示すように、従来の中実のマイクロニードル・アレイ・チップに比べて、基板1の裏側にリザーバ3が増設された。リザーバ3は、一定量の美容有効成分や治療のための医薬品成分を貯蔵することができる。美容有効成分や治療のための医薬品成分は、導液孔を介して基板1の表側、マイクロニードル群2間の流路に到達し、そしてマイクロニードル群2が角質層を穿刺する過程において角質層を通じて皮膚の深層部に到達する。よって、機械・液体一体化した設計が実現され、マイクロニードル・アレイ・チップを使用する前に予め美容有効成分や治療のための医薬品成分を皮膚の表面に塗布する必要がないため、操作の簡略化およびユーザの学習コストの低減という効果を奏する。美容有効成分や治療のための医薬品成分が導液孔を通じるメカニズムは、機械・液体一体化した浸透促進器やメソガンなどの装置による液体吐出ヘッドから液体が吐出されるメカニズムに似ており、美容有効成分や治療のための医薬品成分は、マイクロニードル・アレイ・チップの往復振動につれて自身の慣性により導液孔から振り出される。各マイクロニードル群2には、対応するリザーバ3が設けられ、各リザーバ3は浅い溝4によって連通される。これによって、各リザーバ3内の気圧が同じようになり、各マイクロニードル群2の液体吐出効果を一致にすることができる。
【0027】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例2
【0028】
基板1の表側に矩形アレイ状に配列した複数のマイクロニードル群2が設けられ、マイクロニードル群2の横方向および縦方向の間隔がいずれも300μmである。マイクロニードル群2の構造は、
図6に示すように、2本のマイクロニードル21からなり、2本のマイクロニードルがいずれもブレード状に形成される。2本のマイクロニードルの高さが300μmで、2本のマイクロニードル間の間隔が50μmである。
【0029】
実施例1に比べて、実施例2において、マイクロニードル群2は、2つのマイクロニードル21からなる。マイクロニードル21は、ブレード状に形成され、マイクロブレードとも呼ばれ得る。基板1の裏側にリザーバが設けられていないため、マイクロニードル・アレイ・チップを使用する前に予め美容有効成分や治療のための医薬品成分を皮膚の表面に塗布する必要がある。実施例2において、2つのマイクロニードル21間の間隔も同様に一定の収容機能を奏することができるため、従来技術による中実のマイクロニードル・アレイ・チップに比べて美容有効成分や治療のための医薬品成分の吸収効果をさらに向上させることができる。
【0030】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例3
【0031】
基板1の表側に複数のマイクロニードル21が設けられ、マイクロニードル21が矩形アレイ状に配列され、マイクロニードル21の横方向および縦方向の間隔がいずれも300μmである。マイクロニードル21の構造は、
図7、8、9に示すように、マイクロニードル本体の下部が角柱状で、上部に2つの三角形の尖鋭部22が形成され、2つの尖鋭部22の間にV字形の溝23が形成される。溝の深さが100μmで、マイクロニードルの高さが400μmである。
図7、8、9に示すように、溝23の深さはマイクロニードル21の高さよりも小さくなっている。
【0032】
従来技術による中実のマイクロニードルアレイに比べて、本実施例は、マイクロニードルの尖鋭部22に溝構造が形成されている。マイクロニードル21は、皮膚を穿刺するメカニズムが中実のマイクロニードルと同様であり、皮膚の角質層を穿刺するためのものである。好ましくは、浸透促進器などの装置により高周波振動を発生させることで角質層を穿刺し角質層に孔が形成される。美容有効成分や治療のための医薬品成分がこの孔を介して皮膚の角質層を通じて皮膚の深層部に到達することができるので、美容有効成分や治療のための医薬品成分の吸収効果が向上する。従来技術に比べて、本実施例は、さらに以下の技術的進歩を有する。マイクロニードルの尖鋭部22にある溝23は、一定の収容機能を奏することができる。マイクロニードルが皮膚を往復穿刺する過程において、この溝23に美容有効成分や治療のための医薬品成分が収容され、皮膚の深層部に投与されることができる。従来技術による中実のマイクロニードルはこのような収容機能を有しないため、本実施例は、従来技術による中実のマイクロニードル・アレイ・チップに比べて美容有効成分や治療のための医薬品成分の吸収効果をさらに向上させることができる。実施例1、2に比べて、本実施例で採用したマイクロニードルの尖鋭部22に溝を形成する構造は、従来の中実のマイクロニードルの構造に対する変更が少なく、プロセス変更も少ないので、適用が容易である。溝構造は、マイクロニードル本体に対する物理的な破壊が軽いので、従来の中実のマイクロニードルの作製プロセスの利点と、折れにくい等の作製された中実のマイクロニードルの利点を保持することができる。また、マイクロニードルの尖鋭部22から下方に向けて形成された溝23の深さがマイクロニードルの高さに等しい場合に、作製プロセスの難易度を上げることなく、マイクロニードルをマイクロニードル群の構造とすることができる。
【0033】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例4
【0034】
基板1の表側に複数のマイクロニードル21が設けられ、マイクロニードル21が矩形アレイ状に配列され、マイクロニードル21の横方向および縦方向の間隔がいずれも400μmである。マイクロニードルの構造は、
図10、11に示すように、基板1の表側に八角柱の外郭を有するマイクロニードル21が設けられ、マイクロニードル21の頂部から下方に向かって矩形の溝23が開設される。溝23の幅が15μmで、溝23の深さが100μmで、マイクロニードルの高さが300μmで、マイクロニードルの底部の直径が100μmで、溝23の深さがマイクロニードルの高さよりも小さい。また、溝23の深さがマイクロニードル21の高さに等しい場合に、本実施例4のマイクロニードルは、実施例2のマイクロニードル群のような構造となる。すなわち、実施例2のマイクロニードル群2は、本実施例4の特別な例として理解することができる。同様に、実施例1のマイクロニードル群は、2本の直線溝が交差しながらマイクロニードルの先端から下方に向かってマイクロニードルに等しい高さまで開設されるものとして理解することができる。
【0035】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例5
【0036】
基板1の表側に複数のマイクロニードル21が設けられ、マイクロニードル21が矩形アレイ状に配列され、マイクロニードル21の横方向および縦方向の間隔がいずれも300μmである。マイクロニードルの構造は、
図12、13に示すように、マイクロニードル21本体の下部が角柱状で、上部に2つの三角形の尖鋭部22が形成され、2つの尖鋭部の間に溝23が形成され、溝23の両側面が斜面である。溝23の底部の幅が40μmで、溝23の深さが100μmで、マイクロニードルの高さが400μmで、溝23の深さがマイクロニードル21の高さよりも小さい。基板1の裏側から溝23の底面まで貫通穴5が形成されることで、マイクロニードル21は中空のマイクロニードルになる。
【0037】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例6
【0038】
基板の表側に複数のマイクロニードル群2が設けられ、マイクロニードル群2が矩形アレイ状に配列され、マイクロニードル群2の横方向および縦方向の間隔がいずれも300μmである。マイクロニードル群2は、2本のマイクロニードル21からなり、2本のマイクロニードル21がいずれもブレード状に形成される。2本のマイクロニードル21の高さが300μmで、2本のマイクロニードル間の間隔が10nmである。
【0039】
マイクロニードル・アレイ・チップの実施例7
【0040】
基板の表側に複数のマイクロニードル群2が設けられ、マイクロニードル群2が矩形アレイ状に配列され、マイクロニードル群2の横方向および縦方向の間隔がいずれも1000μmである。マイクロニードル群2は、2本のマイクロニードル21からなり、2本のマイクロニードル21がいずれもブレード状に形成される。2本のマイクロニードル21の高さが500μmで、2本のマイクロニードル21間の間隔が300μmである。
【符号の説明】
【0041】
1…基板
2…マイクロニードル群
21…マイクロニードル
22…尖鋭部
23…溝
3…リザーバ
4…浅い溝
5…貫通穴
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードルとを備えるマイクロニードル・アレイ・チップであって、
マイクロニードルの先端から下方に向かって溝が開設され、溝の幅が10nm以上であり、溝の深さが50nm以上である
ことを特徴とするマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項2】
前記マイクロニードルは上部と下部を含み、前記上部に尖鋭部が形成され、前記尖鋭部の間に前記溝が形成され
、
前記溝は、マイクロニードルの先端から下方に向かって開設され、前記溝の深さは、前記マイクロニードルの高さ以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項3】
前記尖鋭部は、三角形に形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項4】
前記溝は、V字形の溝または矩形の溝である
ことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項5】
前記溝の両側面は、斜面である
ことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項6】
前記基板の裏側にリザーバが設けられ、前記リザーバと前記溝とが貫通穴を介して流体連通される
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項7】
隣接する前記リザーバは浅い溝によって連通される
ことを特徴とする
請求項6に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項8】
前記溝の底面から基板の裏側に延在する貫通穴をさらに含む
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項9】
前記溝は、1つの直線溝、または任意の角度で交差する2つの直線溝からなる
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項10】
基板を備えるマイクロニードル・アレイ・チップであって、
前記基板の表側にアレイ状に配列した複数のマイクロニードル群が設けられ、各マイクロニードル群のそれぞれは、少なくとも2つのマイクロニードルからなり、各マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、10nm以上で300μm以下であり、マイクロニードル群におけるマイクロニードル間の間隔は、マイクロニードル・アレイ・チップにおけるマイクロニードル群間の間隔よりも小さい
ことを特徴と
するマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項11】
基板の裏側にリザーバが設けられ、前記リザーバの底面と前記基板の表側とがマイクロニードル群におけるマイクロニードルの間に位置する貫通穴を介して流体連通される
ことを特徴とする
請求項10に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項12】
隣接する前記リザーバは浅い溝によって連通される
ことを特徴とする
請求項11に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項13】
前記基板の表側から基板の裏側に延在する貫通穴をさらに含み、前記貫通穴がマイクロニードル群におけるマイクロニードルの間に位置する
ことを特徴とする
請求項10に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項14】
各マイクロニードル群のそれぞれは、2つ以上のマイクロニードルからなり、マイクロニードルが円形に配列される
ことを特徴とする
請求項10~13のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【請求項15】
各マイクロニードル群のそれぞれは、4つのマイクロニードルからなり、4つのマイクロニードルが円形アレイ状に配列、または中心対称に配置されている
ことを特徴とする
請求項10~13のいずれか1項に記載のマイクロニードル・アレイ・チップ。
【国際調査報告】