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特表2024-544812石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20241128BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20241128BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20241128BHJP
   B23P 6/00 20060101ALI20241128BHJP
   B23P 23/04 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20241128BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20241128BHJP
   B05C 7/08 20060101ALI20241128BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20241128BHJP
   B05C 9/10 20060101ALI20241128BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241128BHJP
   B05B 13/06 20060101ALI20241128BHJP
   F22B 37/00 20060101ALI20241128BHJP
   F22B 37/04 20060101ALI20241128BHJP
   F22B 37/02 20060101ALI20241128BHJP
   F28F 19/02 20060101ALI20241128BHJP
   C23C 24/08 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 5/10 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
F22B37/10 Z
B24C1/00 C
B24C11/00 D
B23P6/00 Z
B23P23/04
B05D3/12 B
B05D5/00 Z
B05D7/22 Z
B05D3/02 Z
B05D3/12 D
B05C7/08
B05C9/14
B05C9/10
B05C11/00
B05C11/10
B05B13/06
F22B37/00 A
F22B37/04
F22B37/02 E
F28F19/02 501D
C23C24/08 C
C23C24/08 A
C09D1/00
C09D5/10
C09D7/61
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576217
(86)(22)【出願日】2023-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 CN2023111967
(87)【国際公開番号】W WO2024087798
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】202211325248.6
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520455014
【氏名又は名称】西安熱工研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Xi’an Thermal Power Research Institute CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.136 Xingqing Road,Beilin District,Xi’an City,Shaanxi Province,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲魯▼金涛
(72)【発明者】
【氏名】黄▲錦▼▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼醒▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼珍
(72)【発明者】
【氏名】周永莉
(72)【発明者】
【氏名】党▲瑩▼▲櫻▼
(72)【発明者】
【氏名】李力敏
(72)【発明者】
【氏名】袁勇
【テーマコード(参考)】
4D075
4F035
4F042
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA02
4D075AA06
4D075AA22
4D075AA33
4D075AA35
4D075AA38
4D075AA43
4D075AA62
4D075AA76
4D075AA82
4D075AA83
4D075AA85
4D075AG02
4D075AG04
4D075AG27
4D075AG28
4D075AG30
4D075BB04X
4D075BB04Z
4D075BB08X
4D075BB20X
4D075BB29Z
4D075BB92Z
4D075BB99Z
4D075CA33
4D075DA15
4D075DC15
4D075DC16
4D075EA06
4D075EB01
4D075EB05
4D075EB56
4D075EC02
4D075EC10
4F035AA03
4F035CE01
4F035CE04
4F035CF00
4F042AA25
4F042AB00
4F042AB05
4F042BA05
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA19
4F042BA25
4F042CA01
4F042CB03
4F042CB19
4F042DA04
4F042DB21
4F042DB39
4F042DH09
4F042EA04
4F042EA05
4F042EA18
4F042EA20
4F042EA30
4F042EA31
4F042EA32
4F042EA33
4F042EA34
4J038AA011
4J038HA066
4J038HA191
4J038HA216
4J038HA401
4J038KA02
4J038KA03
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB06
4J038PC02
4K044AA02
4K044AB03
4K044BA06
4K044BA10
4K044BA12
4K044BA15
4K044BA17
4K044BB01
4K044BB11
4K044BC02
4K044BC11
4K044CA07
4K044CA22
4K044CA24
4K044CA27
4K044CA53
4K044CA62
(57)【要約】
本願は、石炭焚きボイラの技術分野に関し、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法及び装置を提供する。該方法は、ボイラのチューブパネルをボイラ天井から切断してから垂直に吊り上げて固定し、且つボイラのチューブパネルの下部ベンドの底部で断面を切断するステップと、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁を掃除するステップと、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結するステップと、ボイラのチューブパネルにおける焼結後の各チューブ本体を溶接して修復するステップと、を含む。該方法の全ての工程は、炉を停止して点検する期間に炉床内で行うことができるため、生産効率が高く、点検工期を著しく短縮することができ、且つ小径ボイラーチューブの内壁に蒸気酸化防止層を形成することができ、使用中の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を大幅に向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法であって、
ボイラのチューブパネルをボイラ天井から切断してから垂直に吊り上げて固定し、且つボイラのチューブパネルの下部ベンドの底部で断面を切断するステップと、
ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁を掃除するステップと、
ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結するステップと、
ボイラのチューブパネルにおける焼結後の各チューブ本体を溶接して修復するステップと、を含むことを特徴とする石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法。
【請求項2】
ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁を掃除するときには、具体的には、
サンドブラスト装置により使用中のチューブパネルにおける各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去することを含み、
サンドブラスト装置から噴出した砂材料が褐色溶融アルミナ、白色溶融アルミナ及び石英砂のうちの1つ又は複数を含み、且つ砂材料の粒度が500メッシュよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法。
【請求項3】
ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結することは、具体的には、
吹き付け装置によりサンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布することと、
スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置により塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成することと、
サンドブラスト装置により焼結後のボイラーチューブから残滓を掃除することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法。
【請求項4】
塗料の製造において、質量比が1:1のアルミニウム粉及びニッケル粉を浸透剤とし、リン酸塩水溶液を溶剤とし、CrOを酸性抑制剤とし、MgOを硬化剤とし、且つ浸透剤100g:リン酸塩水溶液100ml:酸性抑制剤10g:硬化剤2gの比率で調製することを特徴とする請求項3に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法。
【請求項5】
塗料の吹き付け厚さが0.2mm~0.3mmであることを特徴とする請求項3に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法。
【請求項6】
石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置であって、
使用中のチューブパネルにおける各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去するように構成されたサンドブラスト装置と、
サンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布するように構成された吹き付け装置と、
塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成するように構成されたスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置と、を少なくとも備えることを特徴とする石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項7】
前記サンドブラスト装置は、中空モータ、第1ノズル及び砂搬送管を備え、
前記中空モータは前記第1ノズルに接続され、前記第1ノズルを駆動して回転させることにより前記第1ノズルのチャンバ内の砂材料を前記第1ノズルの表面の帯状開口から噴出させるように構成され、
前記砂搬送管は、一端が前記中空モータを通って前記第1ノズルのチャンバ内に伸びており、他端が外部の砂源に連通するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項8】
前記サンドブラスト装置は牽引ロープを更に備え、前記牽引ロープは、一端が前記中空モータの前記第1ノズルから離れた端部に接続され、他端が外部の牽引装置に接続されるように構成され、それにより外部の牽引装置が牽引ロープを介して前記サンドブラスト装置を駆動してボイラーチューブ内で移動させることを特徴とする請求項7に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項9】
前記中空モータ及び/又は前記第1ノズルの外壁に環状シールリングが嵌め込まれ、且つ前記環状シールリングの外径寸法がボイラーチューブの内径寸法と一致するように保持することを特徴とする請求項7に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項10】
前記吹き付け装置は、互いに接続される駆動機構及び吹き付け機構を備え、前記駆動機構は、前記吹き付け機構を駆動してボイラーチューブ内で移動させるように構成され、前記吹き付け機構は、塗料をボイラーチューブの内壁に吹き付けるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項11】
前記駆動機構は、第1ケース、駆動輪及び動力電池を備え、
前記第1ケースの外壁に、複数の前記駆動輪が前記第1ケースの周方向に沿って間隔を置いて設置され、各前記駆動輪はいずれも前記第1ケースの径方向に沿って伸縮可能であり、
前記動力電池は、前記第1ケース内に設置され、且つ各前記駆動輪に電気的に接続され、前記駆動輪を駆動して回転させるように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項12】
前記吹き付け機構は、第2ケース、第2ノズル、エアモータ、ガス搬送管及び材料供給管を備え、
前記第2ケースは前記第1ケースに接続され、前記第2ノズルは前記第2ケースの前記第1ケースから離れた端部に設置され、
前記エアモータは、前記第2ケース内に設置され、その排気口が前記第2ノズルの吸気口に連通し、その吸気口がガス搬送管を介して外部ガス源に連通し、
前記材料供給管は、一端が前記第2ノズルの材料供給口に連通し、他端が外部の塗料源に連通することを特徴とする請求項11に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項13】
前記第2ケースの外壁に、複数の位置決め輪が前記第2ケースの周方向に沿って間隔を置いて設置され、各前記位置決め輪はいずれも前記第2ケースの径方向に沿って伸縮可能であることを特徴とする請求項12に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項14】
前記吹き付け装置は、吹き付け過程を監視するように構成されたインカメラ、アウトカメラ及び厚さセンサを更に備え、
前記インカメラは前記第2ケースの前記第1ケースから離れた端部に設置され、
前記アウトカメラは前記第1ケースの前記第2ケースから離れた端部に設置され、
前記厚さセンサは前記第2ケースの前記第1ケースから離れた端部に設置されることを特徴とする請求項12に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項15】
前記スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置は、空冷誘導加熱コイル、コイル移動軌道、クローラ、インテリジェントコントロールキャビネット、及び誘導コイル電源を備え、
前記コイル移動軌道は、一端がボイラ天井に設置されるように構成され、他端がボイラーチューブの底部を超えて垂直下方に延びており、
前記クローラは、前記コイル移動軌道の内側に設置され、前記空冷誘導加熱コイルは前記クローラに接続され、
前記誘導コイル電源は前記空冷誘導加熱コイルに電気的に接続され、
前記インテリジェントコントロールキャビネットは、前記クローラに電気的に接続され、前記クローラが前記空冷誘導加熱コイルを駆動して前記コイル移動軌道に沿って移動させるように制御することにより、前記空冷誘導加熱コイル内に位置するボイラーチューブを焼結することを特徴とする請求項6に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【請求項16】
前記スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置は、第1ストッパ及び第2ストッパを更に備え、
前記第1ストッパと前記第2ストッパとは、前記コイル移動軌道に間隔を置いて設置され、前記クローラの前記コイル移動軌道での動作の始点位置及び終点位置を制限することを特徴とする請求項15に記載の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年10月27日に中国特許庁に提出した、出願第202211325248.6号、発明の名称「石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法及び装置」の中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が援用により本願に取り込まれる。本願は、石炭焚きボイラの技術分野に関し、具体的には、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラの高温セクションにある熱交換器チューブの表面酸化や腐食は、火力発電ユニットを長年妨げており、それに伴う配管の詰まりや配管の破裂の事故は計画外の設備停止の大部分を占めており、これに加えて、630~700℃の高度な超臨界火力発電技術の発展に伴い、一層高い蒸気パラメータでのボイラの熱交換器チューブの酸化腐食の問題はさらに深刻になる。火力発電ユニットのボイラの熱交換器チューブの特徴や使用環境に対して、現在は、熱交換器チューブの酸化腐食の問題を完全に解決することができるコーティング材料及び対応する製造プロセスを既に開発したが、該製造プロセスの最も重要な工程は、熱交換器チューブに対して対応する熱処理を行うことであり、そうしなければ、高温酸化腐食に耐えられる有効なコーティング構造を得ることができない。
【0003】
従来技術におけるボイラ熱交換器は、すべて、単一の小径ボイラーチューブを互いに溶接してなるものであり、熱交換器チューブに熱処理を施すには、配管を全て取り外して、個々のチューブに切断しなければ、従来の熱処理方式で1本ずつ行うことができず、コストが高くて効率が低いだけでなく、熱処理後の配管の再度溶接、組み立てや配置が必要となり、多くの溶接継目や欠陥は熱交換器チューブの再使用に潜在的な安全上の問題を引き起こしてしまい、火力発電ユニットの蒸気側の酸化皮膜の問題は、ボイラの配管の詰まりや配管破裂などの事故を引き起こす主な潜在的な安全上の問題であり、データによれば、1台の600MWの超々臨界ボイラの伝熱面の蒸気配管内での剥離した酸化皮膜の量は数トンにも達し、これらの酸化皮膜は過/再熱器を塞いで配管破裂の事故を引き起こすだけでなく、高流速蒸気によってボイラから運び出され、蒸気タービンの羽根へダメージを与えることが明らかになった。超々臨界火力発電ユニットにおいて、保護が最も必要とされる部材は、主に高温高圧蒸気を送る小径ボイラーチューブであり、その使用量が大きく、設計寿命が一般的に20年間以上である。例えば、1000MWのユニットの過/再熱器は、ボイラーチューブの内径が20~50mmであり、長さが8~12mであり、チューブパネルのベンドの数が多く、その使用量が1000トン以上に達する。近い将来、630~700℃の高度な超々臨界火力発電技術の発展に伴い、一層高い蒸気パラメータでの酸化皮膜の問題は日増しに深刻になっている。
【0004】
結晶粒微細化、内壁へのショットブラストや高Cr合金化などの技術は、抗酸化に必要なCr膜をオーステナイト鋼に迅速に成長させることができるが、600℃よりも高い蒸気におけるCrの安定性が比較的低いため、酸素添加処理されたユニットにおいて揮発性生成物による酸化膜が剥がれやすいという問題は深刻化する。使用時間の増加につれて、酸化膜を成長させるのに必要なCrが補充されていない場合、合金の抗酸化性能も急に低下してしまい、25%Cr系オーステナイト鋼は、抗酸化性能/抗腐食性能が優れたが、組織安定性が低いため合金の高温耐久強度を低下させてしまう。マルテンサイト耐熱鋼管は高温領域で使用する場合にも同様の問題に直面しており、9%Cr系マルテンサイト耐熱鋼は、650℃、常圧純水蒸気に1000h熱暴露されると、表面酸化皮膜の厚さが200μmに達し、その外層が多孔質で脱落しやすいFe層であり、これは、600℃超々臨界火力発電ユニットの安全な運転の信頼性を大幅に低下させてしまう。このため、従来使用されている材料を基に、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させることは非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本願が解決しようとする技術的課題は、従来使用されている材料を基に、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させることにより、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本願の技術案は以下のとおりである。
【0007】
石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法であって、ボイラのチューブパネルをボイラ天井から切断してから垂直に吊り上げて固定し、且つボイラのチューブパネルの下部ベンドの底部で断面を切断するステップと、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁を掃除するステップと、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結するステップと、ボイラのチューブパネルにおける焼結後の各チューブ本体を溶接して修復するステップと、を含む。
【0008】
任意選択で、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁を掃除するときには、具体的には、サンドブラスト装置により使用中のチューブパネルにおける各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去することを含み、サンドブラスト装置から噴出した砂材料が褐色溶融アルミナ、白色溶融アルミナ及び石英砂のうちの1つ又は複数を含み、且つ砂材料の粒度が500メッシュよりも小さい。
【0009】
任意選択で、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結することは、具体的には、吹き付け装置によりサンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布することと、スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置により塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成することと、サンドブラスト装置により焼結後のボイラーチューブから残滓を掃除することと、を含む。
【0010】
任意選択で、塗料の製造において、質量比が1:1のアルミニウム粉及びニッケル粉を浸透剤とし、リン酸塩水溶液を溶剤とし、CrOを酸性抑制剤とし、MgOを硬化剤とし、且つ浸透剤100g:リン酸塩水溶液100ml:酸性抑制剤10g:硬化剤2gの比率で調製する。
【0011】
任意選択で、塗料の吹き付け厚さが0.2mm~0.3mmである。
【0012】
石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置であって、使用中のチューブパネルにおける各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去するように構成されたサンドブラスト装置と、サンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布するように構成された吹き付け装置と、塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成するように構成されたスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置と、を少なくとも備える。
【0013】
任意選択で、前記サンドブラスト装置は、中空モータ、第1ノズル及び砂搬送管を備え、前記中空モータは前記第1ノズルに接続され、前記第1ノズルを駆動して回転させることにより前記第1ノズルのチャンバ内の砂材料を前記第1ノズルの表面の帯状開口から噴出させるように構成され、前記砂搬送管は、一端が前記中空モータを通って前記第1ノズルのチャンバ内に伸びており、他端が外部の砂源に連通するように構成されている。
【0014】
任意選択で、前記サンドブラスト装置は牽引ロープを更に備え、前記牽引ロープは、一端が前記中空モータの前記第1ノズルから離れた端部に接続され、他端が外部の牽引装置に接続されるように構成され、それにより外部の牽引装置が牽引ロープを介して前記サンドブラスト装置を駆動してボイラーチューブ内で移動させる。
【0015】
任意選択で、前記中空モータ及び/又は前記第1ノズルの外壁に環状シールリングが嵌め込まれ、且つ前記環状シールリングの外径寸法がボイラーチューブの内径寸法と一致するように保持する。
【0016】
任意選択で、前記吹き付け装置は、互いに接続される駆動機構及び吹き付け機構を備え、前記駆動機構は、前記吹き付け機構を駆動してボイラーチューブ内で移動させるように構成され、前記吹き付け機構は、塗料をボイラーチューブの内壁に吹き付けるように構成されている。
【0017】
任意選択で、前記駆動機構は、第1ケース、駆動輪及び動力電池を備え、前記第1ケースの外壁に、複数の前記駆動輪が前記第1ケースの周方向に沿って間隔を置いて設置され、各前記駆動輪はいずれも前記第1ケースの径方向に沿って伸縮可能であり、前記動力電池は、前記第1ケース内に設置され、且つ各前記駆動輪に電気的に接続され、前記駆動輪を駆動して回転させるように構成されている。
【0018】
任意選択で、前記吹き付け機構は、第2ケース、第2ノズル、エアモータ、ガス搬送管及び材料供給管を備え、前記第2ケースは前記第1ケースに接続され、前記第2ノズルは前記第2ケースの前記第1ケースから離れた端部に設置され、前記エアモータは、前記第2ケース内に設置され、その排気口が前記第2ノズルの吸気口に連通し、その吸気口がガス搬送管を介して外部ガス源に連通し、前記材料供給管は、一端が前記第2ノズルの材料供給口に連通し、他端が外部の塗料源に連通する。
【0019】
任意選択で、前記第2ケースの外壁に、複数の位置決め輪が前記第2ケースの周方向に沿って間隔を置いて設置され、各前記位置決め輪はいずれも前記第2ケースの径方向に沿って伸縮可能である。
【0020】
任意選択で、前記吹き付け装置は、吹き付け過程を監視するように構成されたインカメラ、アウトカメラ及び厚さセンサを更に備え、前記インカメラは前記第2ケースの前記第1ケースから離れた端部に設置され、前記アウトカメラは前記第1ケースの前記第2ケースから離れた端部に設置され、前記厚さセンサは前記第2ケースの前記第1ケースから離れた端部に設置される。
【0021】
任意選択で、前記スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置は、空冷誘導加熱コイル、コイル移動軌道、クローラ、インテリジェントコントロールキャビネット、及び誘導コイル電源を備え、前記コイル移動軌道は、一端がボイラ天井に設置されるように構成され、他端がボイラーチューブの底部を超えて垂直下方に延びており、前記クローラは、前記コイル移動軌道の内側に設置され、前記空冷誘導加熱コイルは前記クローラに接続され、前記誘導コイル電源は前記空冷誘導加熱コイルに電気的に接続され、前記インテリジェントコントロールキャビネットは、前記クローラに電気的に接続され、前記クローラが前記空冷誘導加熱コイルを駆動して前記コイル移動軌道に沿って移動させるように制御することにより、前記空冷誘導加熱コイル内に位置するボイラーチューブを焼結する。
【0022】
任意選択で、前記スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置は、第1ストッパ及び第2ストッパを更に備え、前記第1ストッパと前記第2ストッパとは、前記コイル移動軌道に間隔を置いて設置され、前記クローラの前記コイル移動軌道での動作の始点位置及び終点位置を制限する。
【発明の効果】
【0023】
本願の技術案は以下の利点を有する。
【0024】
本願に係る石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法では、まず、ボイラのチューブパネルをボイラ天井から切断してから垂直に吊り上げて固定し、且つボイラのチューブパネルの下部ベンドの底部で断面を切断し、次に、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁を掃除し、その後、ボイラのチューブパネルにおける各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結し、最後に、ボイラのチューブパネルにおける焼結後の各チューブ本体を溶接して修復する。該方法の全ての工程は、炉を停止して点検する期間に炉床内で行うことができるため、生産効率が高く、点検工期を著しく短縮することができ、且つ小径ボイラーチューブの内壁に蒸気酸化防止層を形成することができ、使用中の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を大幅に向上させることができる。
【0025】
本願の具体的な実施形態又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下に具体的な実施形態又は従来技術の記述に必要な図面を簡単に説明するが、明らかに、以下に記載する図面は本願の実施形態の一例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、更にこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は本願の実施例に係る石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置の全体構造模式図である。
図2図2図1におけるサンドブラスト装置の模式図である。
図3図3図2の断面図である。
図4図4図1における吹き付け装置の模式図である。
図5図5図4における駆動輪での拡大模式図である。
図6図6図4における位置決め輪での拡大模式図である。
図7図7図1におけるスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置の模式図である。
図8図8図7におけるクローラでの正面図である。
図9図9図7におけるクローラでの平面図である。
図10図10図7におけるクローラでの側面図である。
図11図11図7におけるスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置の作業状態における模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本願の技術案を明確且つ完全に説明するが、説明される実施例は本願の実施例の一部に過ぎず、実施例の全部ではないことは明らかである。本願の実施例に基づいて、当業者が進歩性のある労働を必要とせずに取得する他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0028】
なお、本願の説明において、「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「内」、「外」などの用語で示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本願を説明しやすくし、説明を簡素化するためのものに過ぎず、係る装置又は素子が必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成及び操作しなければならないことを指示又は暗示するのではなく、従って、本願を制限するものと理解されるべきではない。また、用語「第1」、「第2」、「第3」は説明のためのものに過ぎず、相対重要性を指示又は暗示するものと理解されるべきではない。
【0029】
なお、本願の説明において、説明すべきことは、特に明確に規定及び限定がない限り、「取り付ける」、「連結」、「接続」の用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続、取り外し可能な接続、又は一体接続であってもよく、機械的接続、電気的接続であってもよく、直接連結、中間素子による間接連結、2つの素子の内部の連通であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0030】
また、互いに衝突しない限り、以下に説明される本願の異なる実施形態に関わる技術的特徴は互いに組み合わせられてもよい。
【0031】
図1は本願の実施例に係る石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置の全体構造模式図であり、図1に示すように、本実施例では、天井でボイラのチューブパネルを切断処理するとき、天井切断面10の位置及び下部ベンド切断面13の位置については、図1に示すように、ボイラのチューブパネル14を入口コンテナ11及び出口コンテナ12から離脱させて、ボイラのチューブパネル14の下部ベンドの最も低い箇所で切断して分離し、且つ炉床内の懸架装置により切断後のボイラのチューブパネル14を吊り上げて固定する。
【0032】
本実施例では、ボイラ天井15に誘導コイル電源21、砂貯蔵タンク32及び塗料貯蔵タンク42が配置され、砂貯蔵タンク32は砂搬送管33を介してサンドブラスト装置31に接続される。塗料貯蔵タンク42は材料供給管43を介して吹き付け装置41に連通してもよい。
【0033】
本実施例のサンドブラスト装置31及び吹き付け装置41は、いずれも、ボイラのチューブパネル14の上部切断面の開口から配管に送られて作業を行うことができる。
【0034】
図1に示すように、本実施例は、使用中のチューブパネル14における各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去するように構成されたサンドブラスト装置31と、サンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布するように構成された吹き付け装置41と、塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成するように構成されたスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置と、を少なくとも備える、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置を提供する。
【0035】
該実施例に係る石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる装置は、まず、サンドブラスト装置31により使用中のチューブパネル14における各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去し、次に、吹き付け装置41によりサンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布し、最後に、スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置により塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成することによって、使用中の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を大幅に向上させることができる。
【0036】
図2は、図1におけるサンドブラスト装置の模式図であり、図3は、図2の断面図であり、図2及び図3に示すように、サンドブラスト装置31は、中空モータ311、第1ノズル312、及び砂搬送管33を備え、中空モータ311は第1ノズル312に接続され、第1ノズル312を駆動して回転させることにより第1ノズル312のチャンバ内の砂材料を第1ノズル312の表面の帯状開口315から噴出させるように構成され、砂搬送管33は、一端が中空モータ311を通って第1ノズル312のチャンバ内に伸びており、他端が外部の砂源に連通するように構成されている。
【0037】
サンドブラスト装置31は、牽引ロープ316を更に備え、牽引ロープ316は、一端が中空モータ311の第1ノズル312から離れた端部に接続され、他端が外部の牽引装置に接続されるように構成され、それにより、外部の牽引装置は牽引ロープ316を介してサンドブラスト装置31を駆動してボイラーチューブ内で移動させる。
【0038】
中空モータ311及び/又は第1ノズル312の外壁に環状シールリング314が嵌め込まれ、且つ環状シールリング314の外径寸法がボイラーチューブの内径寸法と一致するように保持する。
【0039】
具体的には、中空モータ311は、サンドブラスト装置31全体の後部に位置し、且つ導線317により外部電源に接続されるとともに、牽引ロープ316を介して外部の牽引装置に接続される。第1ノズル312は、サンドブラスト装置31の前部に取り付けられ、且つ第1接続体313及び第1軸継ぎ手3131により中空モータ311と同軸に直列接続され、後部の2つの部分を接続する軸心が一致するように保持される。砂搬送管33は、中空モータ311及び第1ノズル312の内部を貫通し、砂搬送管33の軸心位置が締め付けナット3211により固定され、砂搬送管33の末端は、第1継ぎ目321が設置され、外部の砂貯蔵タンク32に接続されてもよい。
【0040】
中空モータ311は、直流給電を用いてもよく、導線317が外部電源に接続される。中空モータ311の内部には、中空モータ311と第1ノズル312とを接続するための第1軸継ぎ手3131が取り付けられ、中空モータ311の回転により第1ノズル312は駆動されて高速回転し、中空モータ311の無負荷回転速度が30000回転/分間よりも大きい。第1ノズル312の先端がテーパ状構造であってもよく、テーパ面に複数の帯状開口315が設けられ、砂材料は第1ノズル312の高速回転による遠心力で帯状開口315からボイラーチューブの内壁に噴射される。第1ノズル312と中空モータ311との接続セクションが円柱状の中空ケーシングであってもよく、それによって、中空モータ311との同軸接続が可能になる一方、第1ノズル312の中空構造によりチャンバ内に少量の砂材料を貯蔵することが可能になり、砂材料の供給が安定しない場合においてもサンドブラスト作業を連続して行うことを確保することができる。中空モータ311及び第1ノズル312のそれぞれの外側に等径環状シールリング314が取り付けられ、環状シールリング314の直径を調整することにより、ボイラーチューブの内壁との密着を実現し、これにより、前進過程においてサンドブラスト装置31全体が常に配管の中心にあることが確保される。
【0041】
サンドブラスト掃除の品質を確保するために、該サンドブラスト装置31は、使用時に後進吹き付けの方式で作動する。サンドブラスト作業に先立って、環状シールリング314の直径を調整して、サンドブラスト装置31をサンドブラスト対象のボイラーチューブの内腔に置き、且つサンドブラスト装置31をサンドブラスト対象のボイラーチューブの最も先端まで行進させる。外部の砂貯蔵タンク32、牽引装置及び中空モータ311に給電する電源を接続した後、外部の牽引装置の動作速度を制御することによりサンドブラスト作業速度を調整する。該サンドブラスト装置31が使用する砂材料は、金剛砂や石英砂などの複数種類のサンドブラスト材料であってもよく、砂材料の粒度を500メッシュよりも小さくすべきである。
【0042】
図4は、図1における吹き付け装置の模式図であり、図5は、図4における駆動輪での拡大模式図であり、図6は、図4における位置決め輪での拡大模式図であり、図4図5及び図6に示すように、吹き付け装置41は、互いに接続される駆動機構411及び吹き付け機構412を備え、駆動機構411は吹き付け機構412を駆動してボイラーチューブ内で移動させるように構成され、吹き付け機構412は塗料をボイラーチューブの内壁に吹き付けるように構成されている。
【0043】
駆動機構411は、第1ケース414、駆動輪413及び動力電池4135を備え、第1ケース414の外壁に、複数の駆動輪413が第1ケース414の周方向に沿って間隔を置いて設置され、各駆動輪413はいずれも第1ケース414の径方向に沿って伸縮可能であり、動力電池4135は、第1ケース414内に設置され、且つ各駆動輪413に電気的に接続され、駆動輪413を駆動して回転させるように構成されている。
【0044】
吹き付け機構412は、第2ケース421、第2ノズル418、エアモータ419、ガス搬送管44及び材料供給管43を備え、第2ケース421は第1ケース414に接続され、第2ノズル418は第2ケース421の第1ケース414から離れた端部に設置され、エアモータ419は、第2ケース421内に設置され、その排気口が第2ノズル418の吸気口に連通し、その吸気口がガス搬送管44を介して外部ガス源に連通し、材料供給管43は、一端が第2ノズル418の材料供給口に連通し、他端が外部の塗料源に連通する。
【0045】
第2ケース421の外壁に、複数の位置決め輪417が第2ケース421の周方向に沿って間隔を置いて設置され、各位置決め輪417はいずれも第2ケース421の径方向に沿って伸縮可能である。
【0046】
吹き付け装置41は、吹き付け過程を監視するように構成されたインカメラ420、アウトカメラ415及び厚さセンサ423を更に備え、インカメラ420は第2ケース421の第1ケース414から離れた端部に設置され、アウトカメラ415は第1ケース414の第2ケース421から離れた端部に設置され、厚さセンサ423は第2ケース421の第1ケース414から離れた端部に設置される。
【0047】
具体的には、吹き付け装置41は、主に駆動機構411及び吹き付け機構412で構成され、矢印が吹き付け装置41の後方向である。駆動機構411は吹き付け装置41の後端に位置し、前進及び後進のための動力を供給するためのものであり、該駆動機構411は、第1ケース414と、第1ケース414に十字状に交差して取り付けられる4つの駆動輪413と、第1ケース414内の動力電池4135と、を有する。
【0048】
吹き付け機構412は、吹き付け装置41の先端に取り付けられ、ボイラーチューブの内壁への塗料吹き付けを行うためのものであり、該吹き付け機構412は、第2ケース421と、第2ケース421に十字状に交差して取り付けられる4つの位置決め輪417と、第2ケース421内に設けられるエアモータ419と、第2ケース421の外に設けられる第2ノズル418と、吹き付け過程を監視するためのインカメラ420、アウトカメラ415及び厚さセンサ423と、を有する。
【0049】
該吹き付け装置41の駆動機構411及び吹き付け機構412は、第2接続体416により直列接続されてもよく、後部の2つの部分を接続する軸心が一致するように保持される。使用過程には、使用される吹き付け塗料は塗料貯蔵タンク42により供給されてもよく、使用されるキャリアガスが外部の空気圧縮装置により供給されてもよい。
【0050】
ガス搬送管44は、第1ケース414及び第2ケース421内を貫通して、エアモータ419のガス搬送管44の継ぎ目に接続される。材料供給管43は、第1ケース414及び第2ケース421内を貫通して、第2ノズル418の材料供給管43の継ぎ目に接続される。
【0051】
駆動輪413には、第1輪4131と第1ケース414とを接続する油圧伸縮ロッド4133が設けられ、且つ駆動輪413の底部には、油圧伸縮ロッド4133に必要な圧力を供給するための超小型油圧タンク4134が設けられる。4組の駆動輪413は、十字状に交差して配置され、同じ構造を有し、第1ケース414の内部の動力電池4135は、中央に配置され、且つ、ガス搬送管44と材料供給管43とを貫通させるための空間が残されておく。
【0052】
位置決め輪417は、駆動機構411及び吹き付け機構412の軸心が一致することを確保するためのものであり、動力機能を備えず、それにより、不要な制御ユニットや接続回路を減らす。位置決め輪417は、第2輪4171、スライド室4173、スライド室4173に内蔵されるスライドロッド4172、圧縮ばね4174、及び仕切板で構成されている。第2輪4171が外力で押された場合、圧縮ばね4174は収縮して変形し、弾力がスライドロッド4172を介して伝達され、第2輪4171をボイラーチューブの内壁に固定する。4組の位置決め輪417は、十字状に交差して配置され、同じ構造を有する。第2ケース421の内部のエアモータ419は、中央に配置され、第2ケース421とエアモータ419との間には、材料供給管43を貫通させる空間が残されておき、エアモータ419は、末端には、ガス搬送管44に接続するためのガス搬送管44の継ぎ目が設けられ、頂部には、第2ノズル418に接続するための第2軸継ぎ手422が取り付けられ、第2ノズル418には帯状開口が設けられ、塗料は高速回転による遠心力で帯状開口からボイラーチューブの内壁に噴射される。
【0053】
吹き付けコーティングの品質を確保するために、吹き付け装置41は、使用時に後進吹き付けの方式で作動する。吹き付けるに先立って、油圧伸縮ロッド4133及びスライドロッド4172の延出長さを調整して、吹き付け装置41を吹き付け対象のボイラーチューブの内腔に置き、外部の空気圧縮装置と塗料貯蔵タンク42とを接続した後、動力電池4135を起動して4つの駆動輪413の直流モータ4132に動力を供給し、吹き付け装置41を吹き付け対象のボイラーチューブの最も先端まで行進させ、インカメラ420、アウトカメラ415及び厚さセンサ423を作動させ、塗料のコーティング過程を監視する。
【0054】
図7は、図1におけるスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置の模式図であり、図8は、図7におけるクローラでの正面図であり、図9は、図7におけるクローラでの平面図であり、図10は、図7におけるクローラでの側面図であり、図11は、図7におけるスクリーン型の全体加熱硬化焼結装置の作業状態における模式図であり、図7図8図9図10及び図11に示すように、スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置は、空冷誘導加熱コイル24、コイル移動軌道22、クローラ23、インテリジェントコントロールキャビネット25、及び誘導コイル電源21を備え、コイル移動軌道22は、一端がボイラ天井15に設置されるように構成され、他端がボイラーチューブの底部を超えて垂直下方に延びており、クローラ23は、コイル移動軌道22の内側に設置され、空冷誘導加熱コイル24は、クローラ23に接続され、誘導コイル電源21は、空冷誘導加熱コイル24に電気的に接続され、インテリジェントコントロールキャビネット25は、クローラ23に電気的に接続され、クローラ23を制御して、空冷誘導加熱コイル24を駆動してコイル移動軌道22に沿って移動させ、それによって、空冷誘導加熱コイル24内のボイラーチューブを焼結する。
【0055】
スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置は、第1ストッパ231及び第2ストッパ232を更に備え、第1ストッパ231と第2ストッパ232とは、コイル移動軌道22に間隔を置いて設置され、クローラ23のコイル移動軌道22での動作の始点位置及び終点位置を制限する。
【0056】
具体的には、空冷誘導加熱コイル24の両端はクローラ23に固定され、クローラ23はコイル移動軌道22の内側に取り付けられ、インテリジェントコントロールキャビネット25はクローラ23に電気的に接続され、誘導コイル電源21はクローラ23により空冷誘導加熱コイル24に接続され、コイル移動軌道22は、上端がボイラ天井15に固定され、下端がボイラーチューブの底部よりも下まで垂直に吊り上げられ、コイル移動軌道22は、一般的にペアになって使用される。コイル移動軌道22に第1ストッパ231及び第2ストッパ232が間隔を置いて配置され、第1ストッパ231はボイラ天井15の下方から0.3m離れた位置に配置されてもよく、第2ストッパ232は、ボイラーチューブの底部から下の0.5mの位置に配置されてもよく、それらは、クローラ23の動作の始点位置及び終点位置を自動的に位置決めするためのものであり、クローラ23は、第1ストッパ231と第2ストッパ232との間に位置し、且つ両端を水平に保持する。
【0057】
コイル移動軌道22に軌道係止溝221が設けられ、軌道係止溝221内に360°転がり可能な軌道スライドビーズ222が嵌め込まれる。クローラ23は、コイル固定ボルト233、駆動モータ236、ボス237、第2引込孔235及び第1引込孔234を備える。クローラ23は、ボス237及び軌道係止溝221によりコイル移動軌道22に接続され、軌道スライドビーズ222はクローラ23のクローリング抵抗を減少させるためのものであり、駆動モータ236はクローリング動力を供給し、駆動モータ236の正逆回転を設定することによりクローラ23の上方と下方へのクローリングを実現する。本発明のシステムは、ボイラーチューブを熱処理する前に組み立てられて取り付けられ、ここで、誘導コイル電源21やインテリジェントコントロールキャビネット25などの大型補助機械はすべて加熱システム全体に配置され、ボイラ天井15に固定され、残りの部材は、鉛直下向きに配置され、空冷誘導加熱コイル24のスパン寸法はボイラのチューブパネル14の寸法によって柔軟に変化し、ボイラのチューブパネル14などのワークの寸法により制限されるものではない。
【0058】
本実施例の選択可能な態様の1つとして、インテリジェントコントロールキャビネット25によるクローラ23の調整によってクローラ23を第1ストッパ231の位置に位置させ、ボイラーチューブに求められる熱処理温度やボイラーチューブの寸法などの情報に基づいて空冷誘導加熱コイル24に必要な電力、運転速度や運転時間などを設定し、インテリジェントコントロールキャビネット25の動作ボタンを押し、インテリジェントコントロールキャビネット25のPLCにより調整されることで、クローラ23は駆動モータ236の駆動によって上から下へクローリングし始め、第1ストッパ231を通過する際に、誘導コイル電源21が自動的に作動し、空冷誘導加熱コイル24がボイラーチューブに形成されたチューブパネル14を自動的に化学的に熱処理し始めるとともに、クローラ23に従って下方へクローリングし続け、チューブパネル14全体の熱処理を完了して第2ストッパ232に到達すると、インテリジェントコントロールキャビネット25は信号を出して、誘導コイル電源21は自動的にオフになり、誘導加熱を停止し、クローラ23は、駆動モータ236の逆転により、初期位置に戻るまで下から上へクローリングし、インテリジェントコントロールキャビネット25が作業を停止し、このように、チューブパネル14の熱処理過程が完了する。
【0059】
別の実施例では、石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法が提供され、この方法は、ボイラのチューブパネル14をボイラ天井15から切断してから垂直に吊り上げて固定し、且つボイラのチューブパネル14の下部ベンドの底部で断面を切断するステップと、ボイラのチューブパネル14における各チューブ本体の内管壁を掃除するステップと、ボイラのチューブパネル14における各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結するステップと、焼結後のボイラのチューブパネル14における各チューブ本体を溶接して修復するステップと、を含む。
【0060】
該実施例に係る石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を向上させる方法において、まず、ボイラのチューブパネル14をボイラ天井15から切断してから垂直に吊り上げて固定し、且つボイラのチューブパネル14の下部ベンドの底部で断面を切断し、次に、ボイラのチューブパネル14における各チューブ本体の内管壁を掃除し、その後、ボイラのチューブパネル14における各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結し、最後に、焼結後のボイラのチューブパネル14における各チューブ本体を溶接して修復する。該方法の全ての工程は、炉を停止して点検する期間に炉床内で行うことができるため、生産効率が高く、点検工期を著しく短縮することができ、且つ小径ボイラーチューブの内壁に蒸気酸化防止層を形成することができ、使用中の石炭焚きボイラの小径ボイラーチューブの耐蒸気酸化性を大幅に向上させることができる。
【0061】
ボイラのチューブパネル14における各チューブ本体の内管壁を掃除するときには、具体的には、サンドブラスト装置31により使用中のチューブパネル14における各ボイラーチューブの内壁に成長した酸化皮膜を除去することを含み、サンドブラスト装置31から噴出した砂材料が褐色溶融アルミナ、白色溶融アルミナ及び石英砂のうちの1つ又は複数を含み、且つ砂材料の粒度が500メッシュよりも小さい。
【0062】
ボイラのチューブパネル14における各チューブ本体の内管壁に抗酸化コーティングを焼結することは、具体的には、吹き付け装置41によりサンドブラスト掃除後のボイラーチューブに塗料を塗布することと、スクリーン型の全体加熱硬化焼結装置により塗料を塗布したボイラーチューブを焼結することで、ボイラーチューブの内管壁に抗酸化コーティングを形成し、焼結温度を800~900℃にし、保温時間を10~15minに制御することと、サンドブラスト装置31により焼結後のボイラーチューブから残滓を掃除することと、を含む。
【0063】
塗料の製造において、質量比が1:1のアルミニウム粉及びニッケル粉を浸透剤とし、リン酸塩水溶液を溶剤とし、CrOを酸性抑制剤とし、MgOを硬化剤とし、且つ浸透剤100g:リン酸塩水溶液100ml:酸性抑制剤10g:硬化剤2gの比率で調製する。
【0064】
任意選択で、塗料の吹き付け厚さが0.2mm~0.3mmである。
【0065】
明らかに、上記実施例は単に明確に説明するために挙げた例であり、実施形態を制限するものではない。当業者であれば、上記説明を基に更に他の様々な形態の変化又は変動を行うことができる。ここでは、全ての実施形態を挙げることができず、またその必要もない。そして、これにより派生した明らかな変化又は変動は依然として本願の保護範囲内にある。
【符号の説明】
【0066】
10 天井切断面
11 入口コンテナ
12 出口コンテナ
13 下部ベンド切断面
14 チューブパネル
15 ボイラ天井
21 誘導コイル電源
22 コイル移動軌道
23 クローラ
24 空冷誘導加熱コイル
25 インテリジェントコントロールキャビネット
31 サンドブラスト装置
32 砂貯蔵タンク
33 砂搬送管
41 吹き付け装置
42 塗料貯蔵タンク
43 材料供給管
44 ガス搬送管
221 軌道係止溝
222 軌道スライドビーズ
231 第1ストッパ
232 第2ストッパ
233 コイル固定ボルト
234 第1引込孔
235 第2引込孔
236 駆動モータ
237 ボス
311 中空モータ
312 第1ノズル
313 第1接続体
314 環状シールリング
315 帯状開口
316 牽引ロープ
317 導線
321 第1継ぎ目
3131 第1軸継ぎ手
3211 締め付けナット
411 駆動機構
412 吹き付け機構
413 駆動輪
414 第1ケース
415 アウトカメラ
416 第2接続体
417 位置決め輪
418 第2ノズル
419 エアモータ
420 インカメラ
421 第2ケース
422 第2軸継ぎ手
423 厚さセンサ
4131 第1輪
4132 直流モータ
4133 油圧伸縮ロッド
4134 油圧タンク
4135 動力電池
4171 第2輪
4172 スライドロッド
4173 スライド室
4174 圧縮ばね
図1
図2
図3
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【国際調査報告】