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  • 特表-コンタクトレンズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20241128BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G02C7/04
B29C39/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519607
(86)(22)【出願日】2023-04-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 GB2023050907
(87)【国際公開番号】W WO2023209329
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】63/335,787
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】シ アーウィン
(72)【発明者】
【氏名】ケイアー ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユウェン
(72)【発明者】
【氏名】マルツェヴァ インナ
【テーマコード(参考)】
2H006
4F204
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
4F204AA33
4F204AC06
4F204AG19
4F204AH74
4F204EA03
4F204EB01
4F204EF01
4F204EK17
4F204EW02
(57)【要約】
ある一定量の少なくとも1種の冷却剤及び少なくとも1種のTRPV1阻害剤が放出可能に付着されたコンタクトレンズ、並びにその製造方法が記述される。本コンタクトレンズは、コンタクトレンズ装用者が快適に装用することができ、症状のあるコンタクトレンズ装用者において、快適なレンズ装用時間の持続時間を増加させ、及び/又はレンズ意識事象を低減させ、及び/又はコンタクトレンズの乾燥を低減させることができ、さらに、コンタクトレンズが最初に使用されたとき又はその後の短時間のうちに、チクチク感/ヒリヒリ感を低減させるか又は回避することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装溶液に浸漬され、包装内に密封された未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズであって、
a)高分子レンズ本体;
b)高分子レンズ本体に放出可能に付着された、ある一定量の冷却剤;及び
c)高分子レンズ本体に放出可能に付着されているか、又は包装溶液中に存在するかのいずれか、又はその両方である、ある一定量のTRPV1阻害剤
を含む、未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項2】
冷却剤がTRPM8アゴニストである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項3】
TRPV1阻害剤が、オレイン酸、アルファ-リポ酸、L-カルニチン、レスベラトロール、ヒアルロン酸、パルミトイルエタノールアミド、ペトロセリン酸、ナリンゲニン、アシバトレップ、AMG517、ABT102、GRC6211、SB-705498、又はMK-2295であり、
冷却剤が、イシリン、メントール、メントール誘導体、カルボキサミド、WS-148、WS-30、WS-11、CPS-113、CPS-369、フレスコラットML、フレスコラットMGA、Cooling-agent 10、PMD-38、ゲラニオール、リナロール、ユーカリプトール、ヒドロキシシトロネラール、AG3-5、5-メチル-4-(1-ピロリジニル)-3[2H]-フラノン、4,5-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2-[5H]-フラノン、バニリルブチルエーテル、ペパーミントオイル、メタンカルボキサミドエチルピリジン、メントキシプロパンジオール、メンタンジオール、シアノメチルフェニルメタンカルボキサミド、カンフル、エチルメタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、乳酸メンチル、4-(ブトキシメンチル)-2-メトキシフェノール、3-[[5-メチル-2-(1-メチル)シクロヘキシル]オキシ]-1,2-プロパンジオール、イソプレゴール、又はそれらの混合物若しくは組合せである、
請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項4】
冷却剤がTRPM8アゴニストを含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項5】
冷却剤がWS12を含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項6】
TRPV1阻害剤が高分子レンズ本体に放出可能に付着されている、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
TRPV1阻害剤が第1のin vitro放出プロファイルを有し、冷却剤が第2のin vitro放出プロファイルを有し、最初の1~3時間の放出において放出されるTRPV1阻害剤及び冷却剤の総負荷量のパーセントに基づいて、第1の放出プロファイルが第2の放出プロファイルよりも速い、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
第1の放出プロファイルが、最初の1~3時間の放出においてTRPV1阻害剤の総負荷量の大部分を放出し、第2の放出プロファイルが、同じ最初の1~3時間の放出において冷却剤の総負荷量の過半数未満を放出する、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
冷却剤が、PBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間後に0.01μg~10μgの冷却剤のin vitro放出プロファイルを有する、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.25μg~10μgである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項11】
高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.5μg~5μgである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項12】
第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.05μg~0.5μgの冷却剤の放出を含む、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項13】
第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.1μg~0.3μgの冷却剤の放出を含む、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項14】
TRPV1阻害剤がPBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間で2μg~25μgのTRPV1阻害剤の放出を含む放出プロファイルを有する、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項15】
第1の放出プロファイルが、放出媒体において少なくとも9時間にわたって1時間あたり3~20μgのTRPV1阻害剤の放出を含む、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項16】
高分子レンズ本体が、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の親水性ポリマー、又は少なくとも1種の親水性モノマー及び少なくとも1種の親水性ポリマーの両方を含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項17】
高分子レンズ本体が、ファンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、リオフィルコンA、又はステンフィルコンAである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項18】
高分子レンズ本体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー若しくはシロキサンモノマーの組合せ、NVP、VMA、若しくはそれらの組合せから選択される30質量%~55質量%のビニルモノマー、及び任意にN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の親水性モノマー、及び任意にメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸イソボルニル(IBM)、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル(HOB)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項19】
冷却剤がWS12である、請求項18に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項20】
包装がオートクレーブされている、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項21】
包装が、
a)包装溶液を保持するキャビティを有するベース部材;及び
b)ベース部材と液密シールを形成するカバー
を含む、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項22】
症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、請求項1~21のいずれか1項に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用。
【請求項23】
コンタクトレンズ装用者の乾燥の症状を低減させるための、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
コンタクトレンズ装用者による快適なレンズ装用時間を増加させるための、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
コンタクトレンズ装用者の涙液メニスカス高を増加させるための、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
レンズ装用者のCLDEQ-8スコアを低下させるための、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
請求項1~21のいずれか1項に記載のコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)高分子レンズ本体を得るために、重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合させること;
(b)前記コンタクトレンズ型から高分子レンズ本体を取り外すこと;
(c)冷却剤、TRPV1阻害剤、又はその両方を含む少なくとも第1の有機溶媒中で、1つ又は複数の工程において、高分子レンズ本体を抽出すること;
(d)ハイドロゲルコンタクトレンズを得るために、水和液中で高分子レンズ本体を水和させること;
(e)前記ハイドロゲルコンタクトレンズを包装液と共に包装内に密封すること;並びに
(f)前記包装をオートクレーブすること
を含む、方法。
【請求項28】
工程(c)が、冷却剤及びTRPV1阻害剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
工程(c)が、冷却剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出し、次いでTRPV1阻害剤を含む第2の有機溶媒中で抽出することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記密封の前に、包装溶液中にTRPV1阻害剤を含めることをさらに含む、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
高分子レンズ本体が凹面及び凸面を有し、TRPV1阻害剤が冷却剤と比較してより高い濃度で凹面に存在する、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項32】
症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、請求項1~31のいずれか1項に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用であって、冷却剤によるチクチク感がTRPV1阻害剤によって遮断又は低減される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、コンタクトレンズに関し、詳細には、症状のあるコンタクトレンズ装用者にとって、より快適なコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
全コンタクトレンズ装用者の推定50%がレンズ装用中に不快感を経験し、コンタクトレンズ装用者の約25%がレンズ装用を永久に中止する。眼の乾燥の症状は、コンタクトレンズに不満を持つ主な理由である。コンタクトレンズ材料の進歩にもかかわらず、現在市販されているコンタクトレンズを装用中に眼の乾燥症状を経験するコンタクトレンズ装用者が快適に装用できる、改良されたコンタクトレンズの必要性が残されている。
さらに、レンズを意識する感覚は、症状のあるコンタクトレンズ装用者がコンタクトレンズに不満を持つ主な理由である。コンタクトレンズ材料の進歩にもかかわらず、現在市販されているコンタクトレンズを装用中にレンズを意識する感覚を経験するコンタクトレンズ装用者が快適に装用できる、改良されたコンタクトレンズの必要性が残されている。
角膜は、体内で最も密に神経支配されている組織であり、Aデルタ及びC一次求心性線維によって、もっぱら神経支配されている。C神経線維は無髄である一方で、Aデルタ神経線維はわずかに有髄であるが、それらは角膜の透明性を保つために角膜に入った後はミエリン鞘を失う。よって、どちらのタイプの神経線維も、角膜の扁平上皮層に到達すると神経末端が露出する。これらの神経末端には、温度、化学物質、痛み、及び触覚を感知する受容体が位置している。これらの神経終末に存在することが示されている痛覚受容体(侵害受容体)はTRPV1である。
症状のあるコンタクトレンズ装用者に解決策を提供する際の本発明者らによる研究において生じた1つの技術的問題は、コンタクトレンズに使用される特定の組成物が、最終的には症状のあるコンタクトレンズ装用者が快適に装用できるコンタクトレンズを提供し得るものの、コンタクトレンズが最初に眼に挿入されるときに、最初のチクチク感/ヒリヒリ感があり得るということであった。このチクチク感/ヒリヒリ感は一時的なものであるにもかかわらず、装用者がコンタクトレンズを全く使用しなくなる原因となり得る。
よって、特に症状のあるコンタクトレンズ装用者のために、症状のあるレンズ装用者がコンタクトレンズを快適に装用することができ、さらに起こり得るチクチク感/ヒリヒリ感を遮断又は低減することができるようにコンタクトレンズが処理されているコンタクトレンズを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の特徴は、症状のあるコンタクトレンズ装用者を含む全てのコンタクトレンズ装用者が快適に装用できるコンタクトレンズ(例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズ)を提供することである。
本発明のさらなる特徴は、症状のあるコンタクトレンズ装用者において、快適なレンズ装用時間の持続時間を増加させ、及び/又はレンズ意識事象を低減させ、及び/又はコンタクトレンズの乾燥を低減させることができ、さらに、コンタクトレンズが最初に使用されたとき又はその後の短時間のうちに、チクチク感/ヒリヒリ感を低減させるか又は回避することができるコンタクトレンズ(例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズ)を提供することである。
【0004】
本発明のさらなる特徴は、2種の薬剤を放出することができるコンタクトレンズを提供することであり、一方の薬剤は、快適なレンズ装用時間の持続時間の増加、及び/又はレンズ意識事象の低減、及び/又は症状のあるコンタクトレンズ装用者におけるコンタクトレンズの乾燥の低減を促進又は提供又は許容するか又はそれに寄与することができ、第2の薬剤は、コンタクトレンズが最初に使用されたとき又はその後の短時間のうちに、チクチク感/ヒリヒリ感を低減又は回避することを促進又は提供又は許容するか又はそれに寄与することができる。
本発明のさらなる特徴及び利点は、部分的には以下の説明で述べられ、部分的には説明から明らかになるか、又は本発明の実施によって学習され得るであろう。本発明の目的及びその他の利点は、本説明及び添付の特許請求の範囲において特に指摘されている要素及び組合せによって実現及び達成されるであろう。
これらの利点及び他の利点を達成するために、また、本明細書において具体化され且つ広く説明される本発明の目的に従って、本発明は、部分的には、ある一定量の少なくとも1種の冷却剤及び少なくとも1種のTRPV1阻害剤が放出可能に付着されたコンタクトレンズに関する。
【0005】
本発明はさらに、包装溶液に浸漬され、包装内に密封された未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズに関する。コンタクトレンズは、a)高分子レンズ本体;b)高分子レンズ本体に放出可能に付着された、ある一定量の少なくとも1種の冷却剤;及びc)高分子レンズ本体に放出可能に付着されているか、又は包装溶液中に存在するかのいずれか、又はその両方である、ある一定量の少なくとも1種のTRPV1阻害剤を含む。
さらに、本発明は、視力、特に症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための本発明の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用に関する。
加えて、本発明は、本発明のコンタクトレンズの製造方法に関する。本方法は、コンタクトレンズ型内で重合性組成物を重合させて高分子レンズ本体を得ること;コンタクトレンズ型から高分子レンズ本体を取り出すこと;(1つ又は複数の工程において)冷却剤、TRPV1阻害剤、又はその両方を含む少なくとも第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出すること;水和液中で高分子レンズ本体を水和させてハイドロゲルコンタクトレンズを得ること;包装液と共にハイドロゲルコンタクトレンズを包装内に密封すること;及び包装をオートクレーブすることを含む。
さらに、本発明は、視力、特に症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための本発明の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズであって、冷却剤によるチクチク感/ヒリヒリ感が、少なくとも1種のTRPV1阻害剤によって遮断又は低減されるコンタクトレンズの使用に関する。
【0006】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明はどちらも、例示的且つ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載の本発明のさらなる説明を提供することを意図したものであることを理解されたい。
添付の図面は、本出願に組み込まれ、本出願の一部を構成し、本発明の特徴の一部を説明するものである。図面は、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】レンズ装用30日後における症候性及び無症候性のコンタクトレンズ装用者のWS12放出性コンタクトレンズ又は対照レンズのいずれかに対する選好を示す箱型図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
角膜は、体内で最も密に神経支配されている組織であり、Aデルタ及びC一次求心性線維によって、もっぱら神経支配されている。C神経線維は無髄である一方で、Aデルタ神経線維はわずかに有髄であるが、それらは角膜の透明性を保つために角膜に入った後はミエリン鞘を失う。よって、どちらのタイプの神経線維も、角膜の扁平上皮層に到達すると神経末端が露出する。これらの神経末端には、温度、化学物質、痛み、及び触覚を感知する受容体が位置している。温度を感知する受容体(TRPM8)と相互作用する薬剤(すなわち、冷却剤)をコンタクトレンズに埋め込むと、30日間の装用後、1日の終わりの乾燥が改善され、CLDEQ-8スコアが低減することが発見された。しかしながら、一部の被験者では、挿入時の初期にチクチク感/ヒリヒリ感があり、これは減少するものの、30日間の期間の終わりにも消えない場合がある。そこで、物理的及び化学的な刺激に敏感な受容体(TRPV1)と相互作用する薬剤(すなわち、TRPV1阻害剤)をコンタクトレンズに埋め込むと、挿入時の異物感の報告が低減し、チクチク感/ヒリヒリ感を低減又は除去できることが発見された。
【0009】
1つの仮説は、TRPM8アゴニストなどの冷却剤の使用に伴うチクチク感/ヒリヒリ感がTRPV1を通じて中枢神経系に中継される痛覚と関連しているというものである。TRPV1阻害剤を冷却剤と共にレンズに組み込むことで、チクチク感/ヒリヒリ感が遮断又は低減される。
これら2種の薬剤を一緒に使用して、両方の標的に対処し、それらの異なる放出特性を活用することにより、TRPVI阻害剤と冷却剤を用いて、チクチク感/ヒリヒリ感に対処し、コンタクトレンズの挿入時及び1日を通じての快適性を向上させることができる。
【0010】
本発明は、部分的には、コンタクトレンズ(例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズ)、コンタクトレンズの用途、及びコンタクトレンズの製造方法に関する。1種又は複数の冷却剤が、特に症状のあるコンタクトレンズ装用者において、コンタクトレンズ装用の快適さを改善する量で、装用中にレンズから放出されるように、1種又は複数の冷却剤がレンズ内及び/又はレンズ上に存在する。コンタクトレンズが最初に使用されたとき又はその後の短時間のうちに、装用者が経験する可能性のあるチクチク感/ヒリヒリ感を防止又は低減することができる量で、1種又は複数のTRPV1阻害剤が装用中にレンズから放出されるように、1種又は複数のTRPV1阻害剤がレンズ中及び/又はレンズ上に(冷却剤と共に)追加的に存在する。「その後の短時間」とは、例えば、使用から1時間以内(例えば、コンタクトレンズが最初に眼に挿入されたときから1時間以内)であり得る。この時間は、コンタクトレンズが最初に眼に挿入されてから最初の30分以内、又は最初の15分以内、又は最初の10分以内、又は最初の5分以内、又は最初の1分以内、又は最初の30秒以内であり得る。
【0011】
本発明は、部分的には、包装溶液に浸漬され、包装(例えば、ブリスターパッケージ)内に密封された未装用無菌コンタクトレンズ(例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズ)に関する。好ましいコンタクトレンズ、すなわちハイドロゲルコンタクトレンズについて以下に説明するが、本発明は他のタイプのコンタクトレンズにも適用可能であることを理解されたい。
未装用コンタクトレンズは、a)高分子レンズ本体;b)高分子レンズ本体に放出可能に付着された、ある一定量の少なくとも1種の冷却剤;及びc)高分子レンズ本体に放出可能に付着されているか、又は包装溶液中に存在するかのいずれか、又はその両方である、ある一定量の少なくとも1種のTRPV1阻害剤を含むか、それらから本質的になるか、それらからなるか、又はそれらを含有し得る。
【0012】
本明細書で使用される「冷却剤」という用語は、生理学的クーラント、すなわち、冷却の感覚に関連する神経終末又はその近傍で作用を発揮する化合物を指す。「1種の冷却剤」又は「その冷却剤」という用語は、1種又は複数の冷却剤を包含する。冷却剤は、コンタクトレンズ本体中又は本体上に一緒に負荷される2種以上の冷却剤の混合物であり得る。2種以上の冷却剤は、コンタクトレンズ本体中又は本体上に別々に負荷され得る。
本明細書で使用される冷却剤は、コンタクトレンズに放出可能に付着させることができ、症状のあるコンタクトレンズ装用者に改善された快適さを提供する能力を有する薬剤である。本明細書に記載されているように、症状のあるコンタクトレンズ装用者における改善(例えば、コンタクトレンズ装用者の乾燥の症状の低減、及び/又はコンタクトレンズ装用者による快適なレンズ装用時間の増加、及び/又はコンタクトレンズ装用者の涙液メニスカス高の増加、及び/又はコンタクトレンズ装用者のCLDEQ-8スコアの低下、及び/又はコンタクトレンズ装用者のVASスコアの低下)を決定するための様々な方法が記載/提供される。
冷却剤は、レンズ本体に放出可能に付着され、装用中に放出されるように、コンタクトレンズ本体中又は本体上に負荷されることが可能である。放出は、放出プロファイルが達成されるような期間にわたるものであり得る。
【0013】
冷却剤の例は、イシリン、メントール、メントール誘導体、カルボキサミド、WS-148、WS-30、WS-11、CPS-113、CPS-369、フレスコラットML、フレスコラットMGA、Cooling-agent 10、PMD-38、ゲラニオール、リナロール、ユーカリプトール、ヒドロキシシトロネラール、AG3-5、5-メチル-4-(1-ピロリジニル)-3[2H]-フラノン、4,5-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2-[5H]-フラノン、バニリルブチルエーテル、ペパーミントオイル、メタンカルボキサミドエチルピリジン、メントキシプロパンジオール、メンタンジオール、シアノメチルフェニルメタンカルボキサミド、カンフル、エチルメタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、乳酸メンチル、4-(ブトキシメンチル)-2-メトキシフェノール、3-[[5-メチル-2-(1-メチル)シクロヘキシル]オキシ]-1,2-プロパンジオール、イソプレゴール、又はそれらの混合物若しくは組合せを含むが、それらに限定はされない。冷却剤は一般に市販されている。
【0014】
メントールは、天然メントール又は合成メントールであり得る。
メントール誘導体は、ラセミメントール誘導体、ネオメントール、イソメントール、ネオイソメントール、コーンハッカ油などのメントール異性体、又はコハク酸モノメントール(MMS)を含み得る合成メントール様冷却剤のラセミ体及び異性体、メントールエチレングリコールカーボネート、メントールプロピレングリコールカーボネート、メントングリセロールケタール、乳酸メントール、3-(1-メントキシ)プロパン1-2ジオール(MPD)、Cooling-agent 10、TK-10、3-(1-メントキシ)-2-メチルプロパン-1-2-ジオール、3-(1-メントキシ)エタノール(Coolact 5)、3-(1-メントキシ)プロパン-1-オール、3-(1-メントキシ)-ブタン-1-オール、イソプレゴール(Coolact P)、p-メンタン-3,8ジオール(Coolact 380、PMD38)、メントングリセロールケタール(Frescolat MGA)、乳酸メンチル(Frescolat ML)、(2S)-3-(1-メトキシ)-プロパン-1-2ジオール(MPD、TK10)、メチル-3-ヒドロキシブタレート(MHB)、メンチルピロリジン-2-オン-5-カルボキシレート(Questice)、6-イソプロピル-9-ジメチル-1-4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-オン、又はCubebol、DL-ピロリジン-2-オンカルボン酸であり得る。
【0015】
カルボキサミド系冷却剤は、クーラント分子のp-メンタンカルボキサミド系のアルキルオキシアミド、D-Ala-O-Me及びD-Ala-O-Et、N-(R)-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル(1R,2S5R)-p-メンタン-3-カルボキサミド(D-HSL)、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(WS-3)、2-イソプロピルトリメチルブチルアミド(WS-23)、N-([エトキシカルボニル)メチル]メチル)-p-メタン-3-カルボキサミド(WS-14)、エチル-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(WS-5)、N,N-ジメチルメンチルコハク酸アミド、又はN-(2-エトキシエチル)-2-イソプロピル-2,3-ジメチルブタンアミド、(1R,2S,5R)N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(N-(4-メトキシフェニル)-5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキサンカルボキサミドとも呼ばれる)(CAS No.68489-09-8)(WS-12)を含むが、これらに限定はされない。
【0016】
冷却剤の追加の例は、バニリルブチルエーテル、ペパーミント油、メタンカルボキサミドエチルピリジン、メントキシプロパンジオール、メンタンジオール、シアノメチルフェニルメンタンカルボキサミド、カンフル、エチルメンタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、乳酸メンチル、4-(ブトキシメンチル)-2-メトキシフェノール、3-[[5-メチル-2-(1-メチル)シクロヘキシル]オキシ]-1,2-プロパンジオール、イソプレゴール、又はそれらのあらゆる混合物を含むが、これらに限定はされない。
1つの例では、冷却剤は、オランダ、ロッテルダムのLyondell Basell製のWINSENSE Extra 500であり、これは、エチルメンタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、及び乳酸メンチルの混合物である。
冷却剤は、TRPM8アゴニストであるか、又はTRPM8アゴニストを含むことができる。
【0017】
冷却剤は、1時間後に0.01μg~10μg以上の冷却剤をin vitroで放出するような量で高分子レンズ本体中に存在し得る。本明細書で使用される場合、所定の時点において又は一連の時点にわたってin vitroで高分子レンズ本体から放出される活性剤(例えば、冷却剤又はTPV1阻害剤)の量(すなわち、「放出プロファイル」)は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の25体積%のエタノール(EtOH)からなる放出媒体(以下、「in vitro放出媒体」)及び実施例3に記載の方法(以下、「in vitro放出法」)を使用して決定される。1時間後のin vitro放出は、0.01μg~10μg、又は0.02μg~10μg、又は0.05μg~10μg、又は0.075μg~10μg、又は0.1μg~10μg、又は0.5μg~10μg、又は0.75μg~10μg、又は1μg~10μg、又は2μg~10μg、又は3μg~10μg、又は5μg~10μgであり得る。これらの範囲のいずれか1つ又は複数よりも上又は下の他の量も選択肢となる。
【0018】
高分子レンズ本体に放出可能に付着される冷却剤の量は、約0.10μg~100μg以上であり得る。本明細書で使用される場合、高分子レンズ本体に「放出可能に付着」された活性剤の量とは、in vitro放出法を使用して、16時間後に高分子レンズ本体から放出される活性剤の累積量を指す。高分子レンズ本体に放出可能に付着される冷却剤の量は、0.10μg~100μg以上、又は約0.25μg~10μg以上、又は約0.5μg~5μg、又は0.10μg~9μg、又は0.10μg~8μg、又は0.10μg~7μg、又は0.10μg~6μg、又は0.10μg~5μg、又は0.10μg~4μg、又は0.10μg~3μg、又は0.5μg~10μg、又は0.7μg~10μg、又は1μg~10μg、又は2μg~10μg、又は3μg~10μg、又は4μg~10μg、又はここに示した範囲よりも上又は下の他の量であり得る。
【0019】
TRPV1阻害剤に関して、TRPV1阻害剤は、1種又は複数のTRPV1阻害剤であり得る。「1種のTRPV1阻害剤」又は「そのTRPV1阻害剤」という用語は、1種のTRPV1阻害剤を包含するか、又は一緒に使用される1種より多いTRPV1阻害剤を包含する。TRPV1阻害剤は、コンタクトレンズ本体中又は本体上に一緒に負荷される2種以上のTRPV1阻害剤の混合物であり得る。2種以上のTRPV1阻害剤は、コンタクトレンズ本体中又は本体上に別々に負荷され得る。
1つの選択肢として、TRPV1阻害剤は、冷却剤を同じレンズ上又はレンズ中に負荷した後に、コンタクトレンズ上又はコンタクトレンズ中に負荷され得る。したがって、連続的な負荷手順は、コンタクトレンズが最初に目に挿入されるときに、TRPV1阻害剤が先に放出されること、及び/又はより多量に放出されることを可能とし得る。
【0020】
1つの選択肢として、TRPV1阻害剤は、冷却剤と同時にコンタクトレンズ上又はコンタクトレンズ中に負荷され得る。
TRPV1阻害剤は、TRPV1の直接的な遮断による阻害、又はTRPV1の発現をダウンレギュレートすることによるなどの間接的な阻害を提供し得る。
1つの選択肢として、TRPV1はTRPV1アンタゴニストであり得る。
TRPV1阻害剤は、レンズ本体に放出可能に付着され、装用中に放出されるように、コンタクトレンズ本体中又は本体上に負荷されることが可能である。
TRPV1阻害剤の例は、オレイン酸、アルファ-リポ酸、L-カルニチン、レスベラトロール(3,5,4’-トリヒドロキシ-トランス-スチルベン)、ヒアルロン酸、パルミトイルエタノールアミドペトロセリン酸、ナリンゲニン、アシバトレップ、AMG517(Amgenから)、ABT102(Abbottから)、GRC6211(Glenmarkから)、SB-705498(GSKから)、又はMK-2295(Merck-Neurogenから)、又はそれらのあらゆる混合物若しくはあらゆる組合せを含むが、これらに限定はされない。
【0021】
【化1】
【0022】
TRPV1阻害剤は、1時間後に1μg~100μg(又はそれ以上)のTRPV1阻害剤をin vitroで放出するような量でレンズ本体中に存在し得る。1時間後のin vitro放出は、3μg~25μg、4μg~25μg、5μg~25μg、7μg~25μg、10μg~25μg、12μg~25μg、2μg~22μg、2μg~20μg、2μg~18μg、2μg~15μg、2μg~12μg、2μg~10μg、2μg~8μg、2μg~5μgであり得る。これらの範囲のいずれか1つ又は複数よりも上又は下の他の量も選択肢となる。
高分子レンズ本体に放出可能に付着されるTRPV1阻害剤の量は、約5μg~500μg以上、又は約10μg~500μg、又は20μg~500μg、又は30μg~500μg、又は50μg~500μg、又は75μg~500μg、又は100μg~500μg、又は125μg~500μg、又は150μg~500μg、又は175μg~500μg、又は200μg~500μg、又は5μg~450μg、又は5μg~400μg、又は5μg~300μg、又は5μg~200μg、又は5μg~100μg、又はここに示した範囲よりも上又は下の他の量であり得る。
【0023】
冷却剤とTRPV1阻害剤の具体的な組合せの例は、冷却剤がTRPM8アゴニストであるか又はTRPM8アゴニストを含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含むか又はオレイン酸を含有するものであり得る。
別の例は、冷却剤がWS12を含むか又はWS12を含有するか又はWS12であり、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含むか又はオレイン酸含有するか又はオレイン酸であるものである。
【0024】
本発明では、TRPV1阻害剤が第1の放出プロファイルを有し、冷却剤が第2の放出プロファイルを有し得る。第1の放出プロファイルは、第2の放出プロファイルとは異なり得る。第1の放出プロファイルは、in vitro放出法を用いて決定した場合、最初の1~3時間(例えば、1時間又は30分)に放出されるTRPV1阻害剤の放出可能に付着された量のパーセントに基づき、また、同じ時間(例えば、1時間又は30分)の後に放出される冷却剤の放出可能に付着された量のパーセントに基づき、第2の放出プロファイルよりも速いものであり得る。よって、例えば、高分子レンズ本体に放出可能に付着されたTRPV1阻害剤の量が40μgであり、そのうちの30μg(すなわち、75%)が実施例3に記載のin vitro放出法を用いて1時間後に放出され、高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が400μgであり、そのうちの40μg(すなわち、10%)がin vitro放出法を用いて1時間後に放出される場合、TRPV1阻害剤は冷却剤よりも速い放出プロファイルを有すると言われる。
【0025】
よって、1つの例として、TRPV1阻害剤は、最初の1~3時間の放出において(実施例3のin vitro放出法を用いて決定した場合)コンタクトレンズに放出可能に付着されたTRPV1阻害剤の量の50質量%~99質量%(例えば、50質量%~90質量%又は50質量%~80質量%又は50質量%~70質量%)を放出し得るのに比して、同じ最初の1~3時間の放出において、同じコンタクトレンズに放出可能に付着された冷却剤の量の5質量%~50質量%(例えば、5質量%~45質量%、又は5質量%~40質量%、又は5質量%~30質量%、又は5質量%~20質量%、又は5質量%~10質量%)が放出され得る。
よって、1つの例では、第1の放出プロファイルは、最初の1~3時間(例えば、1時間又は30分)の放出において、放出可能に付着した量のTRPV1阻害剤の大部分(質量%ベース)を放出し、第2の放出プロファイルは、同じ最初の1~3時間(例えば、1時間又は30分)の放出において、放出可能に付着した量の冷却剤の過半数未満(質量%ベース)を放出する。
【0026】
第1の放出プロファイル(TRPV1阻害剤放出プロファイル)は、放出媒体中で最大少なくとも9時間(例えば、1時間から9時間、又は3時間から8時間)にわたって、1時間あたり3~20μgのTRPV1阻害剤の放出であり得る。
第2の放出プロファイル(冷却剤放出プロファイル)は、最大6時間にわたって1時間あたり0.05μg~0.5μgの冷却剤の放出であり得るか、又は第2の放出プロファイルは、最大6時間にわたって1時間あたり0.1μg~0.3μgの冷却剤の放出であり得る。
1つの選択肢として、高分子レンズ本体は凹面及び凸面を有し、TRPV1阻害剤は冷却剤と比較して、より高い濃度で凹面若しくは凸面、又はその両方に存在する。例えば、凹面は、TRPV1阻害剤を含むコーティング(又は層)を有していてもよく、コーティングは、TRPV1阻害剤の初期の放出を可能とし得るが、冷却剤の初期の放出(例えば、コンタクトレンズが最初に眼に挿入されるとき)を初め遮断するか、阻害するか、又は低減若しくは減速し得る。
冷却剤に関しては、冷却剤はハイドロゲルコンタクトレンズ材料中に組み込まれ、標準的なコンタクトレンズの滅菌及び保管条件中に、好ましくは分解することなく、及び/又は好ましくは浸出することなく、レンズ材料内に留まり得る。
一旦コンタクトレンズが眼に装着されると、冷却剤が一定期間にわたってレンズから連続的に放出され得る。1つの例として、冷却剤はレンズから最大6時間、又は8時間、又は12時間、又は16時間以上にわたって連続的に放出される。
【0027】
TRPV1阻害剤に関しては、TRPV1阻害剤はハイドロゲルコンタクトレンズ材料中に組み込まれ、標準的なコンタクトレンズの滅菌及び保管条件中に、好ましくは分解することなく、及び/又は好ましくは浸出することなく、レンズ材料内に留まり得る。
一旦コンタクトレンズが眼に装着されると、TRPV1阻害剤が、30分以上又は1時間~数時間、例えば、30分~3時間又は1時間~2時間などの一定期間にわたって、TRPV1受容体を阻害するのに十分な量でレンズから連続的に放出され得る。
【0028】
冷却剤は、一過性受容器電位メラスタチン-8(TRPM8)イオンチャネルを活性化する能力を有していてもよい。
1つの選択肢として、コンタクトレンズは、冷却剤以外のTRPM8受容体アゴニストを有さない。
1つの選択肢として、コンタクトレンズは、眼の乾燥のために存在する他の薬剤を有さない。
ある一定量の冷却剤及びある一定量のTRPV1阻害剤が高分子レンズ本体に放出可能に付着されている高分子コンタクトレンズ本体に関して、高分子レンズ本体は、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の親水性ポリマー又は少なくとも1種の親水性モノマーと少なくとも1種の親水性ポリマーの両方とを含むか、又は含有する重合性組成物の反応生成物であり得る。
【0029】
高分子レンズ本体は、ファンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、リオフィルコンA、又はステンフィルコンAのうちの1つであり得る。
さらなる例として、コンタクトレンズは、非シリコーンハイドロゲルのための重合性組成物の反応生成物であり得る。非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは典型的には、1種又は複数の親水性モノマー、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)又はビニルアルコールを、任意で他のモノマーと組み合わせて、重合されて形成され、シロキサン分子を含まない。
【0030】
硬化した高分子レンズ本体は、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を含有する抽出溶媒(又は2種以上の抽出溶媒)中で抽出してもよく、これは、高分子レンズ本体に付着した所望の量の冷却剤及びTRPV1阻害剤をもたらす。1つの例として、抽出溶媒はEtOHなどの有機溶媒であり得る。抽出溶媒は(冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤が添加された、又は添加されていない)EtOHからなり得る。或いは、抽出溶媒は(冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤が添加された、又は添加されていない)変性EtOHと脱イオン水との50/50(体積比)混合物などの有機溶媒と水との混合物を含み得る。
或いは、又は追加的に、ハイドロゲルのための高分子レンズ本体は、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を含む水又は水溶液(又は2種以上の水和液)などの水和液中で水和させることができ、これは、高分子レンズ本体に付着した所望の量の冷却剤及びTRPV1阻害剤をもたらす。
或いは、又は追加的に、高分子レンズ本体を形成するための重合の前に、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤が、重合性組成物に添加され得る。冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤は、疎水性相互作用によって高分子レンズ本体に付着され、及び/又は高分子レンズ本体のポリマーネットワークによって物理的に封入され得る。
【0031】
ある材料で作られ、ある特定の量の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を高分子レンズ本体に放出可能に付着させた高分子レンズ本体は、異なる材料で作られ、同じ量の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤をそこに放出可能に付着させた高分子レンズ本体とは異なる放出プロファイルを有し得る。冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の放出プロファイルに影響を及ぼし得る高分子レンズ本体のいくつかの特性は、材料の疎水性、含水量、及び高分子レンズ本体の架橋度を含む。さらに、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤のレンズからの放出を遅延又は延長させるために、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を高分子レンズ本体に組み込む前に、リポソーム又は浸食性ナノ粒子などのカプセル化技術を使用して、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の一部又は全部をカプセル化してもよい。例えば、コンタクトレンズ中に組み込まれる冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の10質量%~80質量%以上が、この遅延放出特性を有し得る。実施例3に記載のin vitro放出法を用いて測定したときに、特定の数であるx時間後に放出される冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の量が、x-1時間後に放出される冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の量よりも多い場合、コンタクトレンズは、x時間にわたり冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の放出を維持すると考えられる。
【0032】
実施例2の方法は、装用時にコンタクトレンズから放出される冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の量を決定するために使用され得る。簡単に説明すると、ヒト被験者(n=3)が両眼にレンズを指定の期間装用する。指定された時点でレンズから放出された冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の量は、未装用レンズ中の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の平均量(n=3)と、試験された時点で装用レンズ中に残存する冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の平均量との差である。
【0033】
高分子レンズ本体は、コンタクトレンズ材料として使用するのに適したあらゆるハイドロゲル材料を含み得る。コンタクトレンズのためのシリコーンハイドロゲル材料は、典型的には、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の親水性ポリマー、又はそれらの組合せを含む重合性組成物(すなわち,モノマー混合物)を硬化させることによって形成される。本明細書で使用される場合、「シロキサンモノマー」という用語は、少なくとも1つのSi-O基と少なくとも1つの重合性基を含む分子である。コンタクトレンズ組成物において使用されるシロキサンモノマーは当技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,658,747号及び米国特許第6,867,245号を参照)。(ここで全体を通して言及されている全ての特許及び刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる)。いくつかの例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、20質量%、又は30質量%から約40質量%、50質量%、60質量%、又は70質量%までのシロキサンモノマーの総量を含む。特に指定しない限り、本明細書において使用される場合、重合性組成物の成分の所定の質量%(wt.%)は、重合性組成物中の全ての重合性成分及びIPNポリマー(以下においてさらに説明される)の総質量に対する相対値である。最終的なコンタクトレンズ製品に組み込まれない希釈剤などの成分によって寄与される重合性組成物の質量は、質量%の計算には含まれない。
【0034】
具体的な例では、重合性組成物は親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、「親水性ビニルモノマー」とは、アクリル基の一部ではない分子構造中に存在する重合可能な炭素-炭素二重結合(すなわち、ビニル基)を有するシロキサンを含まない(すなわち、Si-O基を含まない)親水性モノマーであり、ここで、ビニル基の炭素-炭素二重結合は、フリーラジカル重合下で、重合性メタクリレート基に存在する炭素-炭素二重結合よりも反応性が低い。本明細書で使用される場合、「アクリル基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドなどに存在する重合性基を指す。よって、炭素-炭素二重結合は、アクリレート基及びメタクリレート基中に存在するが、本明細書で使用される場合、そのような重合性基はビニル基であるとは考えられない。さらに、本明細書で使用される場合、モノマーは、標準的な振盪フラスコ法を用いて、目視で決定されるように、少なくとも50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に完全に溶解する(すなわち、水に約5%溶解する)場合、「親水性」である。種々の例において、親水性ビニルモノマーは、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、又はN-ビニルピロリドン(NVP)、又は1,4-ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、又はエチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、又はジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、又はそれらのあらゆる組合せである。1つの例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、15質量%、20質量%、又は25質量%から約45質量%、60質量%、又は75質量%までの親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、重合性組成物中の特定のクラスの成分(例えば、親水性ビニルモノマー、シロキサンモノマーなど)の所定の質量パーセンテージは、そのクラスに該当する組成物中の各成分の質量%の合計に等しい。よって、例えば、5質量%のBVEと25質量%のNVPを含み、他の親水性ビニルモノマーを含まない重合性組成物は、30質量%の親水性ビニルモノマーを含むと言われる。1つの例では、親水性ビニルモノマーはビニルアミドモノマーである。例示的な親水性ビニルアミドモノマーはVMA及びNVPである。具体的な例では、重合性組成物は少なくとも25質量%のビニルアミドモノマーを含む。さらなる具体例では、重合性組成物は、約25質量%から約75質量%までのVMA若しくはNVP、又はそれらの組合せを含む。重合性組成物に含まれ得る追加の親水性モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、及びそれらの組合せである。
【0035】
加えて、又は親水性モノマーの代替として、重合性組成物は、重合可能でない親水性ポリマーを含んでいてもよく、これは、重合可能でない親水性ポリマーがシリコーンハイドロゲルポリマーマトリックスを相互貫入した相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含む高分子レンズ本体をもたらす。この例では、重合可能でない親水性ポリマーはIPNポリマーと呼ばれ、コンタクトレンズの内部湿潤剤として作用する。対照的に、重合性組成物中に存在するモノマーの重合によって形成されるシリコーンハイドロゲルネットワーク内のポリマー鎖は、IPNポリマーであるとは考えられない。IPNポリマーは、例えば、約50,000~500,000ダルトンの高分子量親水性ポリマーであり得る。具体的な例では、IPNポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)である。他の例では、重合性組成物は、ポリビニルピロリドン又は他のIPNポリマーを実質的に含まない。
【0036】
1つの選択肢として、1種又は複数の非シリコーン含有疎水性モノマーが、重合性組成物の一部として存在し得る。疎水性モノマーとは、標準的な振盪フラスコ法を用いて、目視した際に20℃で1リットルの水に50グラムのモノマーが完全には溶解していないモノマーであると理解され得る。適切な疎水性モノマーの例は、アクリル酸メチル、又はアクリル酸エチル、又はアクリル酸プロピル、又はアクリル酸イソプロピル、又はアクリル酸シクロヘキシル、又はアクリル酸2-エチルヘキシル、又はメタクリル酸メチル(MMA)、又はメタクリル酸エチル、又はメタクリル酸プロピル、又はアクリル酸ブチル、又はメタクリル酸2-ヒドロキシブチル、又は酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル、又は酪酸ビニル、又は吉草酸ビニル、又はスチレン、又はクロロプレン、又は塩化ビニル、又は塩化ビニリデン、又はアクリロニトリル、又は1-ブテン、又はブタジエン、又はメタクリロニトリル、又はビニルトルエン、又はビニルエチルエーテル、又はパーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、又はイソボルニルメタクリレート(IBM)、又はトリフルオロエチルメタクリレート、又はヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、又はテトラフルオロプロピルメタクリレート、又はヘキサフルオロブチルメタクリレート、又はそれらのあらゆる組合せを含む。
【0037】
疎水性モノマーは、使用の際、重合性組成物の反応生成物中に重合性組成物の総質量に基づいて、1質量%~25質量%、1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~20質量%、3質量%~20質量%、5質量%~20質量%、5質量%~15質量%、1質量%~10質量%などといった、1質量%~約30質量%の量で存在し得る。
【0038】
当業者には理解されるように、重合性組成物は、コンタクトレンズ配合物に従来から使用されている追加の重合可能又は非重合可能成分、例えば、重合開始剤、UV吸収剤、着色剤、脱酸素剤、連鎖移動剤などの1種又は複数を含んでいてもよい。いくつかの例では、重合性組成物は、光学的に透明なレンズが得られるように、重合性組成物の親水性成分と疎水性成分との間の相分離を防止又は最小化する量の有機希釈剤を含み得る。コンタクトレンズ配合物に一般的に使用される希釈剤は、ヘキサノール、エタノール、及び/又はその他のアルコールを含む。他の例では、重合性組成物は、有機希釈剤を含まないか、実質的に含まない(例えば、500ppm未満)。そのような例において、ポリエチレンオキシド基、ペンダントヒドロキシル基、又は他の親水性基などの親水性部分を含むシロキサンモノマーの使用は、重合性組成物に希釈剤を含めることを不要とし得る。重合性組成物中に含まれ得るこれら及び追加の成分の非限定的な例は、米国特許第8,231,218号に記載されている。
【0039】
使用され得るシリコーンハイドロゲルの非限定的な例は、コムフィルコンA、ファンフィルコンA、ステンフィルコンA、セノフィルコンA、セノフィルコンC、ソモフィルコンA、ナラフィルコンA、デレフィルコンA、ナラフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、バラフィルコンA、サムフィルコンA、ガリフィルコンA、及びアスモフィルコンAを含む。
本発明のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの具体例は、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー若しくはシロキサンモノマーの組合せ、NVP、VMA、若しくはそれらの組合せから選択される30質量%~55質量%のビニルモノマー、並びに任意にN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の親水性モノマー、並びに任意にメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸イソボルニル(IBM)、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル(HOB)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の疎水性モノマーを含む重合性組成物に基づくものである。
この特定の実施形態の重合性組成物から作られるシリコーンハイドロゲル材料は、ステンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、ファンフィルコンA、及びエンフィルコンAを含む。
【0040】
本発明のコンタクトレンズを製造するためには、従来的な方法が使用され得る。1つの例としては、コンタクトレンズの前面を画定する凹面を有する雌型部材中に、シリコーンハイドロゲル組成物のための重合性組成物を分注する。コンタクトレンズの裏面、すなわち、角膜接触面を画定する凸面を有する雄型部材を雌型部材と組み合わせてコンタクトレンズ型アセンブリを形成し、このコンタクトレンズ型アセンブリをUV又は熱硬化条件などの硬化条件に付し、その条件下で硬化性組成物を高分子レンズ本体へと形成させる。雌型部材及び雄型部材は、非極性の型又は極性の型であり得る。型アセンブリを分解し(すなわち、脱型する)、高分子レンズ本体を型から取り出し、レンズ本体から未反応成分を抽出するために溶媒、例えば、エタノールなどの有機溶媒と接触させる。いくつかの例では、抽出液は水と混合した有機溶媒を含む。抽出後、レンズ本体を1種又は複数の水和液、例えば、水又は水溶液で水和し、包装する。いくつかの例では、抽出と水和は有機溶媒なしで達成され得る。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの例示的な製造方法は、米国特許第8,865,789号に記載されている。
【0041】
指し示されているように、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤は、抽出及び/又は水和工程において高分子レンズ中に負荷され得る。例えば、硬化後、高分子レンズ本体を、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を含むエタノールなどの抽出溶媒中で膨潤させる。続いて、抽出された高分子レンズ本体を脱イオン水などの水和液に入れると、抽出溶媒は除去され、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤は高分子レンズ本体に付着したまま残る。
抽出工程中の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の負荷は、数多くの方法で行うことができる。同じ抽出液又は水和液中に冷却剤及びTRPV1阻害剤の両方が一緒に存在する、同じ単一の抽出又は水和工程において、冷却剤及びTRPV1阻害剤の両方が負荷され得る。
或いは、又は追加的に、抽出は2つ以上の抽出工程を含み得る。複数の抽出工程が使用される場合、第1の抽出工程は、第1の抽出溶媒中に冷却剤を含むことができ、第2の抽出工程は、第2の抽出溶媒中にTRPV1阻害剤を含むことができる。1つの選択肢として、抽出の順番を逆にすることもできる。第1の抽出溶媒と第2の抽出溶媒は、互いに同じでも、異なっていてもよい。
抽出溶媒は有機溶媒であり得る。第1の抽出溶媒は第1の有機溶媒とすることができ、第2の抽出溶媒は第2の有機溶媒(第1の有機溶媒とは異なる)とすることができる。1つの選択肢として、1種又は複数の抽出溶媒は、変性EtOHと脱イオン水の50/50(体積比)混合物などといった有機溶媒と水の混合物を含み得る。
【0042】
或いは、又は追加的に、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤は、ベース部材内に包装溶液と共にコンタクトレンズを密封する前に、包装溶液(例えば、ブリスター溶液)中に存在することによって負荷され得る。
一部のTRPV1阻害剤は、有機溶媒(例えば、オレイン酸、アルファ-リポ酸、パルミトイルエタノールアミド、ペトロセリン酸)を用いた抽出中にコンタクトレンズ内又はコンタクトレンズ上に負荷されるのに適しており、他のものは、水性水和液又は包装(すなわち、ブリスター)溶液(例えば、L-カルニチン、ヒアルロン酸、ナリンゲニン)中に存在させる方法によって負荷されるのに適しており、さらに他のものは、抽出及び/又はブリスター負荷技術(例えば、レスベラトロール)を用いて許容される量で負荷され得る。簡単なルーチン的な実験及び/又はTRPV1阻害剤の水中での溶解度の理解が、負荷技術の適合性を決定するために利用され得る。
【0043】
よって、本発明は、本発明のコンタクトレンズの製造方法に関する。本方法は、高分子レンズ本体を得るために重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合させること、及び高分子レンズ本体をコンタクトレンズ型から取り出すこと;次いで、冷却剤、TRPV1阻害剤、又はその両方を含む少なくとも第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を(1つ又は複数の工程で)抽出することを含むか、それらから本質的になるか、又は包含し得る。本方法は、ハイドロゲルコンタクトレンズを得るために水和液中で高分子レンズ本体を水和させること、及び前記ハイドロゲルコンタクトレンズを包装液と共に包装内に密封すること;及び包装をオートクレーブすることを含む。抽出工程は、冷却剤及びTRPV1阻害剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出することを含み得る。或いは、抽出工程は、冷却剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出し、次いでTRPV1阻害剤を含む第2の有機溶媒中で抽出すること(又はその逆)を含み得る。本方法はさらに、例えば、密封前にTRPV1阻害剤を包装溶液に含めることを含み得る。抽出工程及び負荷工程の代わりに、又は上記の抽出工程による負荷に加えて、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の一方又は両方を包装溶液中に存在させることによって、負荷してもよい。
【0044】
抽出及び水和のプロセスで使用される抽出溶媒及び水和液の例は、変性エタノール、変性エタノールと脱イオン水の50/50(体積比)混合物、並びに脱イオン水からなり得る。1つの例として、抽出及び水和のプロセスは、変性エタノール中とその後のエタノール水の50:50混合物中での少なくとも1つの抽出工程、その後の脱イオン水中での少なくとも1つの水和工程を含み得るが、ここで、各抽出及び水和工程は、約20℃から約30℃までの温度で約15分~約3時間持続され得る。例えば、抽出溶媒は、WS12又は他の冷却剤の高分子レンズ本体へのアップロードを達成するために、WS12又は他の冷却剤を含み得る。
【0045】
冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤のアップロード溶液として使用される抽出溶媒は、少なくとも0.25μg/ml、又は少なくとも0.5μg/ml、又は少なくとも1.0μg/mlの濃度の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を含み得る。この濃度は、少なくとも2.5μg/ml、少なくとも5.0μg/ml、又は少なくとも10.0μg/mlの冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤であり得る。1つの例では、抽出溶媒中の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤のいずれか(又は両方)の濃度は、約1.0μg/ml~約1.5mg/ml(すなわち、1ppm~約1500ppm)である。
【0046】
いくつかの例では、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤は、一旦高分子レンズ本体に付着すると安定であり、未装用のハイドロゲルコンタクトレンズを包装溶液中に含む密封されたコンタクトレンズ包装のオートクレーブ中、又はその包装溶液中での保管中には高分子レンズ本体から実質的に放出又は分解されないが、レンズ装用中には放出される。よって、オートクレーブ前、又はオートクレーブ直後、又はその後1日後、又はその後30日後、又はその後60日後、又はその後120日後にコンタクトレンズが浸漬されている包装液は、0.1μg/ml未満、又は0.05μg/ml未満の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の濃度を有するか、又はHPLCによって決定される検出レベル未満の冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤の濃度を有する。
【0047】
本発明の一部として、コンタクトレンズは、コンタクトレンズ包装中に密封され得る。コンタクトレンズ包装内に密封される包装溶液は、あらゆる従来的なコンタクトレンズ適合溶液であり得る。1つの例では、包装溶液は、緩衝剤の水溶液、及び/又は張性剤を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる。別の例では、包装溶液は、追加の薬剤、例えば、1種若しくは複数の追加の抗菌剤、及び/又は快適化剤、及び/又は親水性ポリマー、及び/又は界面活性剤、及び/又は他の有益な薬剤を含む。いくつかの例では、包装溶液は、眼科用溶液及びコンタクトレンズ包装溶液において快適化ポリマー又は増粘剤として一般的に使用される多糖(例えば、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、又はポリビニルピロリドンなどの他の高分子量ポリマーを含んでいてもよい。他の例では、包装溶液は眼科用薬剤を含んでいてもよい。包装溶液は、約6.8又は7.0から約7.8又は8.0までの範囲のpHを有し得る。1つの例では、包装溶液はリン酸緩衝液又はホウ酸緩衝液を含む。別の例では、包装溶液は、浸透圧を約200~400mOsm/kgの範囲、典型的には約270mOsm/kg~約310mOsm/kgの範囲に維持する量で、塩化ナトリウム又はソルビトールから選択される張性剤を含む。
【0048】
コンタクトレンズの包装に関して、この包装は、コンタクトレンズ及び包装溶液を保持するように構成されたキャビティと、キャビティの周囲に外向きに延在するフランジ領域とを含むベース部材(例えば、プラスチックベース部材)を含むか、又は含有し得る。密封されたコンタクトレンズ包装を提供するために、ベース部材と液密シールを形成するカバー(例えば、取り外し可能なホイル)をフランジ領域に取り付けることができる。一般に「ブリスターパック」と呼ばれるそのようなコンタクトレンズの包装は、当技術分野でよく知られている(例えば、米国特許第7,426,993号を参照)。
【0049】
密封コンタクトレンズ包装の製造には、従来的な製造方法が使用され得ることが理解されるであろう。コンタクトレンズ包装の製造方法において、方法は、未装用コンタクトレンズ及びコンタクトレンズ包装溶液をレセプタクルに入れる工程、レセプタクルにカバーを被せる工程、並びにレセプタクル上のカバーを密封する工程を含み得る。一般的に、レセプタクルは、単一のコンタクトレンズと、コンタクトレンズを完全に覆うのに十分な量、典型的には約0.5~1.5mlの包装溶液を受け入れるように構成される。レセプタクルは、ガラス又はプラスチックなどのあらゆる適切な材料で作成され得る。1つの実施例では、レセプタクルは、コンタクトレンズ及び包装溶液を保持するように構成されたキャビティと、キャビティの周囲に外向きに延びるフランジ領域とを含むプラスチックベース部材を含み、カバーは、密封されたコンタクトレンズ包装を提供するためにフランジ領域に取り付けられた取り外し可能なホイルを含む。取り外し可能なホイルは、ヒートシール又は接着などの従来的なあらゆる手段により密封され得る。別の実施例では、レセプタクルは、複数のねじ山を含むプラスチックベース部材の形態であり、カバーは、ベース部材のねじ山との係合に適合性の一組のねじ山を含むプラスチックキャップ部材を含み、それによって再密封可能なカバーを提供する。再密封可能な包装を提供するために、他のタイプの包装も使用され得ることが理解されるであろう。例えば、コンタクトレンズの包装は、レセプタクルの適合性の機構と係合し、締まりばめを形成する機構を含むプラスチックカバーを含み得る。密封されたコンタクトレンズの包装を製造する方法は、密封されたコンタクトレンズの包装をオートクレーブすることによって未装用コンタクトレンズを滅菌することをさらに含み得る。オートクレーブは一般的に、密封されたコンタクトレンズの包装を少なくとも121℃の温度に少なくとも20分間供することを含む。
【0050】
コンタクトレンズは、未装用(すなわち、患者によって以前に使用されたことのない新しいコンタクトレンズ)で、包装溶液に浸漬され、包装中に密封された状態で提供され得る。包装は、ブリスター包装、ガラスバイアル、又はその他の適切な容器であり得る。包装は、包装溶液及び未装用コンタクトレンズを収容するためのキャビティを有するベース部材を含む。密封された包装は、オートクレーブによるもの、又はガンマ線、電子ビーム放射、紫外線照射などによるもののような、熱若しくは蒸気を含む、滅菌量の照射によって滅菌され得る。
【0051】
具体的な例では、包装されたコンタクトレンズはオートクレーブにより滅菌される。
最終製品は、眼科的に許容される表面湿潤性を有する無菌の包装されたコンタクトレンズ(例えば、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ)であり得る。
本明細書に記載のハイドロゲルコンタクトレンズは、症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するために使用され得る。例えば、ハイドロゲルコンタクトレンズは、症状のあるコンタクトレンズ装用者の快適なコンタクトレンズ装用時間を延長させ得る。本明細書において、「症状のあるコンタクトレンズ装用者」又は「症状のある被験者」とは、Youngら(Young et al. Characterizing contact lens-related dryness symptoms in a cross-section of UK soft lens wearers. Contact Lens & Anterior Eye 34(2011) 64-70)から適合させた以下の実施例5に記載の方法を用いて症候性であると分類されたレンズ装用者を指す。
本発明のコンタクトレンズは、コンタクトレンズ装用者の乾燥及び/又は不快感の症状を低減させ得る。
【0052】
本明細書に記載のハイドロゲルコンタクトレンズは、対照レンズ又は症状のある装用者の常習のレンズと比較して、特に1日の終わりにおける「乾燥」及び/又は不快な感覚を低減するために、症状のあるコンタクトレンズ装用者によって装用され得る。本明細書において「対照レンズ」とは、冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤を含まないが、それ以外の点ではそれが比較される冷却剤及び/又はTRPV1阻害剤レンズと同一のコンタクトレンズを指す。症状のあるコンタクトレンズ装用者の乾燥及び/又は不快な感覚の低減は、臨床試験において決定され得る。症状のあるコンタクトレンズ装用者のハイドロゲルコンタクトレンズに対する全体的なレンズの選好は、コンタクトレンズの不快感及び/又は乾燥に対する有益な影響を測定/確認する別の方法である。
【0053】
本明細書に記載されるハイドロゲルコンタクトレンズは、対照レンズと比較して、レンズ意識の低減をもたらし、及び/又は日中の「レンズ意識事象」の減少をもたらし得る。コンタクトレンズ装用中のレンズ意識及び/又はレンズ意識事象の低減は、Readらによって記載されているように、「レンズ意識ロガー」を用いて決定され得る(Read et al., Monitoring ocular discomfort using a wrist-mounted electronic logger. Contact Lens and Anterior Eye Vol. 43(2020) 476-483を参照)。
本明細書に記載のハイドロゲルコンタクトレンズは、レンズを1時間、2時間、4時間又はそれ以上装着した後に、対照レンズと比較して増加した涙膜メニスカス高(又は涙液メニスカス高)をもたらし得る。涙膜メニスカス高は、光干渉断層計(OCT)又は他の適切な方法により測定され得る。
本明細書に記載のハイドロゲルコンタクトレンズは、レンズ装用者、例えば、症状のあるレンズ装用者におけるCLDEQ-8スコアを改善(すなわち、低下)させ得る(Chalmers et al., Contact Lens Dry Eye Questionnaire-8(CLDEQ-8) and opinion of contact lens performance. Optom Vis Sci 2012; 89(10):1435-1442を参照)。CLDEQ-8スコアの改善は、ハイドロゲルコンタクトレンズ装用1週間後、2週間後、又は4週間後に見られ得る。
【0054】
前述のように、一部の被験者は、レンズの一部として冷却剤が存在するコンタクトレンズを挿入した後の初期にチクチク感/ヒリヒリ感又は冷却感を経験し得る。レンズの一部としてTRPV1阻害剤も存在することで、このような潜在的に初期の不快な感覚が低減又は回避され得る。TRPV1阻害剤により、レンズ装用者はコンタクトレンズ挿入時の不快感を経験することなく装用できる。レンズ挿入後30分以内などの初期の不快な感覚の低減は、知覚された不快感をレンズ装用者が、尺度の左端が「不快感なし」、尺度の右端が「最も不快」を表す直線的な尺度で記録する、検証済の視覚的アナログ尺度(VAS)を用いて実証され得る(Delgado et al. J Am Acad Orthop Surg Glob Res Rev. 2018 Mar; 2(3): e088を参照)。冷却剤とTRPV1阻害剤の両方を含むレンズを装用したときに、TRPV1阻害剤を含まないがそれ以外は同じレンズを装用したときと比較して、1~10の尺度において少なくとも1(すなわち、従来の紙ベースの10cm直線尺度で1cmに相当)の改善が見られた場合、不快感の有意な低減が示される。いくつかの例では、VASスコアにおける改善は少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4以上である。
以下の実施例は、本発明の特定の態様及び利点を示すものであるが、それによって限定されるものではないと理解すべきである。
【実施例
【0055】
実施例1
WS12放出性コンタクトレンズの調製
ステンフィルコンAのための配合物をコンタクトレンズ型中で硬化させることによって、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを調製した。硬化したステンフィルコンAを型から取り出し、表2に示されている負荷濃度でWS12(Tocris Bioscience)を含むエタノール(EtOH)中に215分間浸漬することにより抽出した。EtOHからレンズを取り出し、DI水で約6分間洗浄した後、DI水の交換を2回、約30分間ずつ行った。本明細書ではPBSと称するpH7.5のリン酸緩衝生理食塩水(0.78質量%のNaCl、0.05質量%のリン酸一塩基性ナトリウム、0.36質量%のリン酸二塩基性ナトリウム)を3mL含む6mLガラスバイアルにレンズを移した。バイアルを密封し、オートクレーブした。
オートクレーブした各レンズを3mLのEtOHを含むバイアルに移し、150rpmのシェーカー上で一晩、室温で保管して、レンズからWS12を抽出した。EtOH抽出液とレンズをオートクレーブしたPBSをHPLC(検出波長=250nm)による分析に較正標準に対して供し、各レンズ(n=5)に負荷されたWS12の平均量と、オートクレーブ中にレンズからWS12が浸出するかどうかを決定した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

コンタクトレンズ型中でコンフィルコンAのための配合物を硬化させ、15μg/mLという単一のWS12濃度をエタノール抽出工程で使用したことを除き、ステンフィルコンAで作成したレンズについて上述したのと同じ抽出、水和、及びオートクレーブ手順にレンズを供することによって、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを調製した。本レンズ(レンズD)をWS12含有量のHPLC分析に供したところ、平均で1.04μg/レンズのWS12の取り込みがあることが示された。
【0057】
実施例2
レンズ装用中のコンタクトレンズからのWS12の放出
実施例1のレンズBをヒト被験者に1時間、3時間、及び6時間装用させた(各時点のn=2)。各レンズの装用期間が終了した時点で、実施例1に記載の方法を用いてEtOH中でレンズを抽出した。抽出液をHPLC分析に供して、レンズ内に残存するWS12の量を決定し、装用中に放出されたWS12の量を算出した。レンズ装用中に放出されたWS12の平均量とパーセントを表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例3
In vitro放出法
In vitro放出法では、コンタクトレンズを容器から取り出し、余分な包装溶液を各レンズから振り落とす。各レンズ(各時点につきn=3)を35℃のPBS中25体積%のエタノール3mLを含む6mLガラスバイアルに移す(EtOH放出媒体)。バイアルを35℃のインキュベーター内で125rpmのシェーカー上に置く。30分時点と1時間時点で2.5mlのEtOH放出媒体を取り出し(すなわち、それぞれ30分時点と1時間時点のバイアルから)、HPLC分析に供する。1時間の時点、及びそれ以降の時点(すなわち、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、16時間)で、残りのバイアルの各々から2.5mlのEtOH放出媒体を取り出し、2.5mlの新鮮なEtOH放出媒体を各バイアルに添加して戻す。各時点でのWS12の累積放出量を計算する。例えば、3時間の時点は、1時間、2時間、3時間の時点で採取された放出媒体中に検出されるWS12の平均量の合計である。
上記のin vitro放出法は、表2と比較して、表3に示されているように、眼に装用されたコンタクトレンズからのWS12の放出とよく対応する、コンタクトレンズからのWS12のin vitro放出量をもたらす。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例4
WS12放出性コンタクトレンズの用量増加1日臨床試験
実施例1の3つの負荷濃度全てを評価する試験に、2人の被験者をリクルートした。各被験者に実施例1のレンズA、B、Cをそれぞれ30分間、片方の眼に対側的に装用してもらい曝露させた。最初の試験日には、被験者をレンズBとレンズCの対側装用に曝露し、その後、別の日にレンズBとレンズAの対側装用に曝露した。レンズCを使用した場合、1人の被験者はチクチク感を、もう1人の被験者は冷却感を経験した。レンズBを使用した場合、両者とも約1時間続く軽い冷却感/ヒリヒリ感を経験した。レンズAは、被験者に短時間の冷却感/湿潤感を引き起こした。レンズBをさらなる評価に選んだ。
【0062】
実施例5
WS12放出性コンタクトレンズの30日間臨床試験
実施例1のレンズB(試験品)又はMyDay(登録商標)ブランド(対照品)のコンタクトレンズをそれぞれ1カ月間装用する、両側無作為化クロスオーバー二重マスク試験に33人の被験者が登録された。Youngら(前出)により提唱された分類から順応させた表4に概要の示されている分類系を使用して、症状のある(S)コンタクトレンズ装用者又は無症候性(A)のコンタクトレンズ装用者のいずれかに被験者を分類した。
【0063】
【表4】

被験者のうち16人が、症状のあるコンタクトレンズ装用者に分類され、コンタクトレンズの乾燥/不快感の強さについて5段階中2以上の評価を報告し、コンタクトレンズの乾燥/不快感の頻度については「時々、頻繁、又は常時」と報告した。被験者のうち17人は、無症候性のコンタクトレンズ装用者と分類され、コンタクトレンズの乾燥/不快感の強さについて5段階中0又は1、コンタクトレンズの乾燥/不快感の頻度については「稀又は全く経験なし」と報告した。
【0064】
被験者が常習しているレンズを装用した3~7日間のウォッシュアウト期間の後、無作為化の順序から第2のレンズタイプ(すなわち、実施例1(試験品)又はMyDay(登録商標)ブランド(対照品)のコンタクトレンズ)が1カ月間装用された。快適さ、乾燥、冷却感、心地よさ、並びにCLDEQ-8スコアの評価をモニタリングした(前出のChalmersらを参照)。
【0065】
1週間の時点では、試験品のレンズは対照レンズよりも挿入時の心地よさが有意に劣ると評価されたが、この差は1カ月の装用後には減少した。この変化は、おそらく試験品のレンズを装用した被験者の感覚順応による冷却感の減少に起因すると考えられる。1週間後又は1カ月後の時点では、試験レンズと対照レンズの間で総合的な快適さの評価に有意差はなかった。しかし、1カ月の装用後、試験レンズでは、対照レンズと比較して2倍の被験者が、快適さの増加を報告した。1週間後と1カ月後の両方で、総合的な乾燥の評価は、試験レンズの方が対照レンズよりも有意に良好であった(すなわち、乾燥が少ない)。涙液メニスカス高をVisante OCT(Carl Zeiss Meditec Inc.、ダブリン、カリフォルニア州)を使用して測定したところ、試験レンズを装用して1カ月後には、対照レンズと比較して有意に増加していた。CLDEQ-8スコアは、対照レンズと比較して、試験レンズ装用1カ月後に有意に低くなっていた。この差は、症状のある被験者において統計的に有意であった。レンズ装用1カ月後、33人の被験者のうち19人(58%)が試験レンズを好み、11人(33%)が対照レンズを好み、3人(9%)が好みなしと報告した。16人の症状のある被験者のうち、11人(69%)が試験レンズを好み、5人(31%)が対照レンズを好んだ。結果を図1に示す。
【0066】
本発明は、以下の態様/実施形態/特徴をあらゆる順序及び/又はあらゆる組合せで含む:
1.本発明は、包装溶液に浸漬され、包装内に密封された未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズであって、
a)高分子レンズ本体;
b)高分子レンズ本体に放出可能に付着された、ある一定量の冷却剤;及び
c)高分子レンズ本体に放出可能に付着されているか、又は包装溶液中に存在するかのいずれか、又はその両方である、ある一定量のTRPV1阻害剤
を含む、未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズに関する。
2.冷却剤がTRPM8アゴニストである、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
3.TRPV1阻害剤が、オレイン酸、アルファ-リポ酸、L-カルニチン、レスベラトロール、ヒアルロン酸、パルミトイルエタノールアミド、ペトロセリン酸、ナリンゲニン、アシバトレップ、AMG517、ABT102、GRC6211、SB-705498、又はMK-2295であり、
冷却剤が、イシリン、メントール、メントール誘導体、カルボキサミド、WS-148、WS-30、WS-11、CPS-113、CPS-369、フレスコラットML、フレスコラットMGA、Cooling-agent 10、PMD-38、ゲラニオール、リナロール、ユーカリプトール、ヒドロキシシトロネラール、AG3-5、5-メチル-4-(1-ピロリジニル)-3[2H]-フラノン、4,5-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2-[5H]-フラノン、バニリルブチルエーテル、ペパーミントオイル、メタンカルボキサミドエチルピリジン、メントキシプロパンジオール、メンタンジオール、シアノメチルフェニルメタンカルボキサミド、カンフル、エチルメタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、乳酸メンチル、4-(ブトキシメンチル)-2-メトキシフェノール、3-[[5-メチル-2-(1-メチル)シクロヘキシル]オキシ]-1,2-プロパンジオール、イソプレゴール、又はそれらの混合物若しくは組合せである、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
4.冷却剤がTRPM8アゴニストを含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
5.冷却剤がWS12を含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
6.TRPV1阻害剤が高分子レンズ本体に放出可能に付着されている、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
7.TRPV1阻害剤が第1のin vitro放出プロファイルを有し、冷却剤が第2のin vitro放出プロファイルを有し、最初の1~3時間の放出において放出されるTRPV1阻害剤及び冷却剤の総負荷量のパーセントに基づいて、第1の放出プロファイルが第2の放出プロファイルよりも速い、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
8.第1の放出プロファイルが、最初の1~3時間の放出においてTRPV1阻害剤の総負荷量の大部分を放出し、第2の放出プロファイルが、同じ最初の1~3時間の放出において冷却剤の総負荷量の過半数未満を放出する、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
9.冷却剤が、PBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間後に0.01μg~10μgの冷却剤のin vitro放出プロファイルを有する、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
10.高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.25μg~10μgである、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
11.高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.5μg~5μgである、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
12.第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.05μg~0.5μgの冷却剤の放出を含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
13.第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.1μg~0.3μgの冷却剤の放出を含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
14.TRPV1阻害剤がPBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間で2μg~25μgのTRPV1阻害剤の放出を含む放出プロファイルを有する、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
15.第1の放出プロファイルが、放出媒体において少なくとも9時間にわたって1時間あたり3~20μgのTRPV1阻害剤の放出を含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
16.高分子レンズ本体が、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の親水性ポリマー、又は少なくとも1種の親水性モノマー及び少なくとも1種の親水性ポリマーの両方を含む重合性組成物の反応生成物である、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
17.高分子レンズ本体が、ファンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、リオフィルコンA、又はステンフィルコンAである、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
18.高分子レンズ本体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー若しくはシロキサンモノマーの組合せ、NVP、VMA、若しくはそれらの組合せから選択される30質量%~55質量%のビニルモノマー、及び任意にN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の親水性モノマー、及び任意にメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸イソボルニル(IBM)、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル(HOB)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
19.冷却剤がWS12である、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
20.包装がオートクレーブされている、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
21.包装が、
a)包装溶液を保持するキャビティを有するベース部材;及び
b)ベース部材と液密シールを形成するカバー
を含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
22.本発明はさらに、症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用に関する。
23.コンタクトレンズ装用者における乾燥の症状を低減させるための、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの使用又は他の実施形態。
24.コンタクトレンズ装用者による快適なレンズ装用時間を増加させるための、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの使用又は他の実施形態。
25.コンタクトレンズ装用者の涙液メニスカス高を増加させるための、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの使用又は他の実施形態。
26.レンズ装用者におけるCLDEQ-8スコアを低下させるための、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの使用又は他の実施形態。
27.本発明はさらに、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)高分子レンズ本体を得るために、重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合させること;
(b)前記コンタクトレンズ型から高分子レンズ本体を取り外すこと;
(c)冷却剤、TRPV1阻害剤、若しくはその両方を含む少なくとも第1の有機溶媒中で、1つ又は複数の工程において、高分子レンズ本体を抽出すること;
(d)ハイドロゲルコンタクトレンズを得るために、水和液中で高分子レンズ本体を水和させること;
(e)前記ハイドロゲルコンタクトレンズを包装液と共に包装内に密封すること;並びに
(f)前記包装をオートクレーブすること
を含む、方法に関する。
28.工程(c)が、冷却剤及びTRPV1阻害剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出することを含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの方法又は他の実施形態。
29.工程(c)が、冷却剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出し、次いでTRPV1阻害剤を含む第2の有機溶媒中で抽出することを含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの方法又は他の実施形態。
30.方法が、前記密封の前に、包装溶液中にTRPV1阻害剤を含めることをさらに含む、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの方法又は他の実施形態。
31.高分子レンズ本体が凹面及び凸面を有し、TRPV1阻害剤が冷却剤と比較して、より高い濃度で凹面に存在する、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ又は他の実施形態。
32.症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、先行又は後続の実施形態/特徴/態様のいずれかの使用又は他の実施形態であって、冷却剤によるチクチク感がTRPV1阻害剤によって遮断又は低減される、使用又は他の実施形態。
【0067】
本発明は、文章及び/又は段落において説明した上記及び/又は下記の様々な特徴又は実施形態のあらゆる組合せを含み得る。本明細書に開示された特徴のあらゆる組合せは、本発明の一部と考えられ、組合せ可能な特徴に関していかなる制限も意図されない。
本明細書における開示は、特定の図示された実施例に言及しているが、これらの実施例は例示として提示されたものであり、限定するものではないことを理解されたい。前述の詳細な説明の意図は、例示的な実施例を論じてはいるが、追加の開示によって定義される本発明の精神及び範囲内に入る可能性のある、実施例の全ての変更、代替、及び等価物を網羅するものと解釈されるべきである。
【0068】
本明細書において、「例」若しくは「特定の例」若しくは「態様」若しくは「実施形態」若しくは類似の語句への言及は、特徴の特定の組合せが相互に排他的である場合を除き、又は文脈がそうでないことを示す場合を除き、先に記載若しくは後に記載された例、態様、実施形態(すなわち、特徴)のあらゆる組合せと組合せ可能な、コンタクトレンズ若しくはその成分、密封されたコンタクトレンズの包装若しくはその成分、又はコンタクトレンズの製造方法(文脈による)の1つ若しくは複数の特徴を紹介することを意図している。さらに、本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という単数形は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数の指示対象(例えば、少なくとも1つ又はそれ以上)を含む。したがって、例えば、「コンタクトレンズ」には、単一のレンズだけでなく、2つ以上の同じ又は異なるレンズも含まれる。
【0069】
本開示において引用された全ての文献の全内容は、本開示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、文章及び/又は段落において規定されるように、上記及び/又は下記の特許請求の範囲に記載されている様々な特徴又は実施形態のあらゆる組合せを含み得る。本明細書に開示された特徴のあらゆる組合せは、本発明の一部と考えられ、組合せ可能な特徴に関していかなる制限も意図されない。
本明細書及び本明細書に開示される本発明の実施の考慮から、本発明の他の実施形態が当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮され、本発明の真の範囲及び精神は、以下の請求の範囲及びその均等物によって示されることが意図されている。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装溶液に浸漬され、包装内に密封された未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズであって、
a)高分子レンズ本体;
b)高分子レンズ本体に放出可能に付着された、約0.25μg~10.0μgの冷却剤;及び
c)高分子レンズ本体に放出可能に付着されているか、又は包装溶液中に存在するかのいずれか、又はその両方である、ある一定量のTRPV1阻害剤
を含む、未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項2】
冷却剤がTRPM8アゴニストである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項3】
TRPV1阻害剤が、オレイン酸、アルファ-リポ酸、L-カルニチン、レスベラトロール、ヒアルロン酸、パルミトイルエタノールアミド、ペトロセリン酸、ナリンゲニン、アシバトレップ、AMG517、ABT102、GRC6211、SB-705498、又はMK-2295であり、
冷却剤が、イシリン、メントール、メントール誘導体、カルボキサミド、WS-148、WS-30、WS-11、CPS-113、CPS-369、フレスコラットML、フレスコラットMGA、Cooling-agent 10、PMD-38、ゲラニオール、リナロール、ユーカリプトール、ヒドロキシシトロネラール、AG3-5、5-メチル-4-(1-ピロリジニル)-3[2H]-フラノン、4,5-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2-[5H]-フラノン、バニリルブチルエーテル、ペパーミントオイル、メタンカルボキサミドエチルピリジン、メントキシプロパンジオール、メンタンジオール、シアノメチルフェニルメタンカルボキサミド、カンフル、エチルメタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、乳酸メンチル、4-(ブトキシメンチル)-2-メトキシフェノール、3-[[5-メチル-2-(1-メチル)シクロヘキシル]オキシ]-1,2-プロパンジオール、イソプレゴール、又はそれらの混合物若しくは組合せである、
請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項4】
冷却剤がTRPM8アゴニストを含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項5】
冷却剤がWS12を含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項6】
TRPV1阻害剤が高分子レンズ本体に放出可能に付着されている、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
TRPV1阻害剤が第1のin vitro放出プロファイルを有し、冷却剤が第2のin vitro放出プロファイルを有し、最初の1~3時間の放出において放出されるTRPV1阻害剤及び冷却剤の総負荷量のパーセントに基づいて、第1の放出プロファイルが第2の放出プロファイルよりも速い、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
第1の放出プロファイルが、最初の1~3時間の放出においてTRPV1阻害剤の総負荷量の大部分を放出し、第2の放出プロファイルが、同じ最初の1~3時間の放出において冷却剤の総負荷量の過半数未満を放出する、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
冷却剤が、PBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間後に0.01μg~10μgの冷却剤のin vitro放出プロファイルを有する、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.5μg~5μgである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項11】
第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.05μg~0.5μgの冷却剤の放出を含む、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項12】
第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.1μg~0.3μgの冷却剤の放出を含む、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項13】
TRPV1阻害剤がPBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間で2μg~25μgのTRPV1阻害剤の放出を含む放出プロファイルを有する、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項14】
第1の放出プロファイルが、放出媒体において少なくとも9時間にわたって1時間あたり3~20μgのTRPV1阻害剤の放出を含む、請求項7に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項15】
高分子レンズ本体が、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の親水性ポリマー、又は少なくとも1種の親水性モノマー及び少なくとも1種の親水性ポリマーの両方を含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項16】
高分子レンズ本体が、ファンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、リオフィルコンA、又はステンフィルコンAである、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項17】
高分子レンズ本体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー若しくはシロキサンモノマーの組合せ、NVP、VMA、若しくはそれらの組合せから選択される30質量%~55質量%のビニルモノマー、及び任意にN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の親水性モノマー、及び任意にメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸イソボルニル(IBM)、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル(HOB)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項18】
冷却剤がWS12である、請求項17に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項19】
包装がオートクレーブされている、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項20】
包装が、
a)包装溶液を保持するキャビティを有するベース部材;及び
b)ベース部材と液密シールを形成するカバー
を含む、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項21】
症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、請求項1~20のいずれか1項に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用。
【請求項22】
コンタクトレンズ装用者の乾燥の症状を低減させるための、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
コンタクトレンズ装用者による快適なレンズ装用時間を増加させるための、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
コンタクトレンズ装用者の涙液メニスカス高を増加させるための、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
レンズ装用者のCLDEQ-8スコアを低下させるための、請求項21に記載の使用。
【請求項26】
請求項1~20のいずれか1項に記載のコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)高分子レンズ本体を得るために、重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合させること;
(b)前記コンタクトレンズ型から高分子レンズ本体を取り外すこと;
(c)冷却剤、TRPV1阻害剤、又はその両方を含む少なくとも第1の有機溶媒中で、1つ又は複数の工程において、高分子レンズ本体を抽出すること;
(d)ハイドロゲルコンタクトレンズを得るために、水和液中で高分子レンズ本体を水和させること;
(e)前記ハイドロゲルコンタクトレンズを包装液と共に包装内に密封すること;並びに
(f)前記包装をオートクレーブすること
を含む、方法。
【請求項27】
工程(c)が、冷却剤及びTRPV1阻害剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)が、冷却剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出し、次いでTRPV1阻害剤を含む第2の有機溶媒中で抽出することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記密封の前に、包装溶液中にTRPV1阻害剤を含めることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
高分子レンズ本体が凹面及び凸面を有し、TRPV1阻害剤が冷却剤と比較してより高い濃度で凹面に存在する、請求項1に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項31】
症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、請求項30に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用であって、冷却剤によるチクチク感がTRPV1阻害剤によって遮断又は低減される、使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
本開示において引用された全ての文献の全内容は、本開示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、文章及び/又は段落において規定されるように、上記及び/又は下記の特許請求の範囲に記載されている様々な特徴又は実施形態のあらゆる組合せを含み得る。本明細書に開示された特徴のあらゆる組合せは、本発明の一部と考えられ、組合せ可能な特徴に関していかなる制限も意図されない。
本明細書及び本明細書に開示される本発明の実施の考慮から、本発明の他の実施形態が当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮され、本発明の真の範囲及び精神は、以下の請求の範囲及びその均等物によって示されることが意図されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕包装溶液に浸漬され、包装内に密封された未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズであって、
a)高分子レンズ本体;
b)高分子レンズ本体に放出可能に付着された、ある一定量の冷却剤;及び
c)高分子レンズ本体に放出可能に付着されているか、又は包装溶液中に存在するかのいずれか、又はその両方である、ある一定量のTRPV1阻害剤
を含む、未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔2〕冷却剤がTRPM8アゴニストである、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔3〕TRPV1阻害剤が、オレイン酸、アルファ-リポ酸、L-カルニチン、レスベラトロール、ヒアルロン酸、パルミトイルエタノールアミド、ペトロセリン酸、ナリンゲニン、アシバトレップ、AMG517、ABT102、GRC6211、SB-705498、又はMK-2295であり、
冷却剤が、イシリン、メントール、メントール誘導体、カルボキサミド、WS-148、WS-30、WS-11、CPS-113、CPS-369、フレスコラットML、フレスコラットMGA、Cooling-agent 10、PMD-38、ゲラニオール、リナロール、ユーカリプトール、ヒドロキシシトロネラール、AG3-5、5-メチル-4-(1-ピロリジニル)-3[2H]-フラノン、4,5-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2-[5H]-フラノン、バニリルブチルエーテル、ペパーミントオイル、メタンカルボキサミドエチルピリジン、メントキシプロパンジオール、メンタンジオール、シアノメチルフェニルメタンカルボキサミド、カンフル、エチルメタンカルボキサミド、メンチルジイソプロピルプロピオンアミド、乳酸メンチル、4-(ブトキシメンチル)-2-メトキシフェノール、3-[[5-メチル-2-(1-メチル)シクロヘキシル]オキシ]-1,2-プロパンジオール、イソプレゴール、又はそれらの混合物若しくは組合せである、
前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔4〕冷却剤がTRPM8アゴニストを含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔5〕冷却剤がWS12を含み、TRPV1阻害剤がオレイン酸を含む、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔6〕TRPV1阻害剤が高分子レンズ本体に放出可能に付着されている、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔7〕TRPV1阻害剤が第1のin vitro放出プロファイルを有し、冷却剤が第2のin vitro放出プロファイルを有し、最初の1~3時間の放出において放出されるTRPV1阻害剤及び冷却剤の総負荷量のパーセントに基づいて、第1の放出プロファイルが第2の放出プロファイルよりも速い、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔8〕第1の放出プロファイルが、最初の1~3時間の放出においてTRPV1阻害剤の総負荷量の大部分を放出し、第2の放出プロファイルが、同じ最初の1~3時間の放出において冷却剤の総負荷量の過半数未満を放出する、前記〔7〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔9〕冷却剤が、PBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間後に0.01μg~10μgの冷却剤のin vitro放出プロファイルを有する、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔10〕高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.25μg~10μgである、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔11〕高分子レンズ本体に放出可能に付着された冷却剤の量が約0.5μg~5μgである、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔12〕第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.05μg~0.5μgの冷却剤の放出を含む、前記〔7〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔13〕第2の放出プロファイルが、最大6時間にわたって1時間あたり0.1μg~0.3μgの冷却剤の放出を含む、前記〔7〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔14〕TRPV1阻害剤がPBS中25体積%のEtOHからなる放出媒体において、1時間で2μg~25μgのTRPV1阻害剤の放出を含む放出プロファイルを有する、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔15〕第1の放出プロファイルが、放出媒体において少なくとも9時間にわたって1時間あたり3~20μgのTRPV1阻害剤の放出を含む、前記〔7〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔16〕高分子レンズ本体が、少なくとも1種のシロキサンモノマーと、少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の親水性ポリマー、又は少なくとも1種の親水性モノマー及び少なくとも1種の親水性ポリマーの両方を含む重合性組成物の反応生成物である、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔17〕高分子レンズ本体が、ファンフィルコンA、コンフィルコンA、ソモフィルコンA、リオフィルコンA、又はステンフィルコンAである、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔18〕高分子レンズ本体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー若しくはシロキサンモノマーの組合せ、NVP、VMA、若しくはそれらの組合せから選択される30質量%~55質量%のビニルモノマー、及び任意にN,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の親水性モノマー、及び任意にメタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸イソボルニル(IBM)、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル(HOB)、若しくはそれらのあらゆる組合せから選択される約1質量%~約20質量%の疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔19〕冷却剤がWS12である、前記〔18〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔20〕包装がオートクレーブされている、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔21〕包装が、
a)包装溶液を保持するキャビティを有するベース部材;及び
b)ベース部材と液密シールを形成するカバー
を含む、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔22〕症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、前記〔1〕~〔21〕のいずれか1項に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用。
〔23〕コンタクトレンズ装用者の乾燥の症状を低減させるための、前記〔22〕に記載の使用。
〔24〕コンタクトレンズ装用者による快適なレンズ装用時間を増加させるための、前記〔22〕に記載の使用。
〔25〕コンタクトレンズ装用者の涙液メニスカス高を増加させるための、前記〔22〕に記載の使用。
〔26〕レンズ装用者のCLDEQ-8スコアを低下させるための、前記〔22〕に記載の使用。
〔27〕前記〔1〕~〔21〕のいずれか1項に記載のコンタクトレンズの製造方法であって、
(a)高分子レンズ本体を得るために、重合性組成物をコンタクトレンズ型内で重合させること;
(b)前記コンタクトレンズ型から高分子レンズ本体を取り外すこと;
(c)冷却剤、TRPV1阻害剤、又はその両方を含む少なくとも第1の有機溶媒中で、1つ又は複数の工程において、高分子レンズ本体を抽出すること;
(d)ハイドロゲルコンタクトレンズを得るために、水和液中で高分子レンズ本体を水和させること;
(e)前記ハイドロゲルコンタクトレンズを包装液と共に包装内に密封すること;並びに
(f)前記包装をオートクレーブすること
を含む、方法。
〔28〕工程(c)が、冷却剤及びTRPV1阻害剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出することを含む、前記〔27〕に記載の方法。
〔29〕工程(c)が、冷却剤を含む第1の有機溶媒中で高分子レンズ本体を抽出し、次いでTRPV1阻害剤を含む第2の有機溶媒中で抽出することを含む、前記〔27〕に記載の方法。
〔30〕前記密封の前に、包装溶液中にTRPV1阻害剤を含めることをさらに含む、前記〔27〕~〔29〕のいずれか1項に記載の方法。
〔31〕高分子レンズ本体が凹面及び凸面を有し、TRPV1阻害剤が冷却剤と比較してより高い濃度で凹面に存在する、前記〔1〕に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズ。
〔32〕症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための、前記〔1〕~〔31〕のいずれか1項に記載の未装用無菌ハイドロゲルコンタクトレンズの使用であって、冷却剤によるチクチク感がTRPV1阻害剤によって遮断又は低減される、使用。
【国際調査報告】