IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-544828圧縮永久ひずみが低いエアロゲル及びエアロゲル複合材、ならびに作製方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】圧縮永久ひずみが低いエアロゲル及びエアロゲル複合材、ならびに作製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
C01B33/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519933
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022081835
(87)【国際公開番号】W WO2023115018
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,977
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/386,892
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506229844
【氏名又は名称】アスペン エアロゲルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン エバンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ グールド
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ミハルシク
(72)【発明者】
【氏名】キャスリン デクラフト
(72)【発明者】
【氏名】ウェンティン トン
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072CC08
4G072GG01
4G072HH19
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
本開示は、概して、エアロゲル技術に関する。本開示は、より具体的には、様々な実施形態において、エアロゲルを生成するための改善された方法及び圧縮永久ひずみが低い改善されたエアロゲル複合材に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ASTM D3574-Test Dにより決定して圧縮永久ひずみが15%超である第1のエアロゲルを提供することと、
(b)前記第1のエアロゲルを、10%超の酸素を含む雰囲気下、約200℃~400℃の温度で加熱して、第2のエアロゲルを得ることと、を含み、
前記第1のエアロゲルは、得られた前記第2のエアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下になるように、前記第1のエアロゲルの前記圧縮永久ひずみを改変するのに十分な時間、加熱される、方法。
【請求項2】
前記雰囲気が、約15%の酸素~約25%の酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記雰囲気が、空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のエアロゲルが、約30秒以上の時間加熱される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のエアロゲルが、約30秒~約3時間の時間加熱される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のエアロゲルの加熱中に、前記温度が400℃未満の温度に制限される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエアロゲルが、シリカを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のエアロゲルが、塩基を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基が、アミン塩基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のエアロゲルが、少なくとも0.5%の前記塩基を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のエアロゲルが、0.5%~約10%の前記塩基を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のエアロゲル中の塩基の量が、前記第2のエアロゲル中の塩基の量よりも多い、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のエアロゲルが、強化材料を含むエアロゲル複合材である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記強化材料が、繊維強化材料である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のエアロゲルが、不透明化添加剤を含むエアロゲル複合材である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記不透明化添加剤が、BC、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、AgO、Bi、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不透明化添加剤が、炭化ケイ素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
湿潤ゲル材料を形成することと、
前記湿潤ゲル材料をエージング流体とともにエージング温度及びエージング圧力で加熱することにより、前記湿潤ゲル材料をエージングさせることであって、前記エージング温度が、前記エージング流体の標準沸点を上回り、容器の圧力が、加熱中に前記エージング流体の蒸気圧を上回って維持される、前記エージングさせることと、
前記エージング流体を加熱された前記湿潤ゲル材料から抽出して、前記第1のエアロゲルを形成することと、を含む工程によって前記第1のエアロゲルを生成することを更に含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
先行請求項のいずれか1項に記載の方法によって生成される、エアロゲル。
【請求項20】
多孔質フレームワークを含むエアロゲルであって、前記エアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下である、前記エアロゲル。
【請求項21】
多孔質フレームワークが、シリカを含む、請求項19に記載のエアロゲル。
【請求項22】
前記エアロゲルが、シートの形態である、請求項19に記載のエアロゲル。
【請求項23】
前記エアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して10%以下である、請求項19に記載のエアロゲル。
【請求項24】
前記エアロゲルが、強化材料を含むエアロゲル複合材である、請求項19に記載のエアロゲル。
【請求項25】
前記強化材料が、繊維強化材料である、請求項23に記載のエアロゲル組成物。
【請求項26】
前記エアロゲルが、不透明化添加剤を含むエアロゲル複合材である、請求項19に記載のエアロゲル組成物。
【請求項27】
前記不透明化添加剤が、BC、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、AgO、Bi、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項25に記載のエアロゲル組成物。
【請求項28】
前記不透明化添加剤が、炭化ケイ素を含む、請求項25に記載のエアロゲル組成物。
【請求項29】
電気貯蔵システムで使用するための絶縁バリアであって、請求項19~27のいずれか1項に記載のエアロゲルを含む少なくとも1つの絶縁層を含む、前記絶縁バリア。
【請求項30】
電池モジュールであって、
複数の電池セルと、
請求項29に記載の1つ以上の絶縁バリアと、を備え、少なくとも1つの絶縁バリアが、隣接する電池セル間に配設される、前記電池モジュール。
【請求項31】
請求項29に記載の1つ以上の電池モジュールを備える、電力システム。
【請求項32】
請求項29に記載の電池モジュールを備える、デバイスまたは車両。
【請求項33】
デバイスが、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、ディスプレイパネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザー測距器、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、電子的に統合された衣料、暗視装置、電動工具、電卓、ラジオ、遠隔操作電化製品、GPSデバイス、手持ち及び携帯型テレビ、車始動器、懐中電灯、音響デバイス、携帯型加熱器、携帯型掃除機、または携帯型医療器具である、請求項31に記載のデバイス。
【請求項34】
車両が電気車両である、請求項31に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月17日に出願され、「Low Compression Set Aerogels and Aerogel Composites and Methods of Making」と題された米国仮特許出願第63/290,977号、及び2022年12月9日に出願され、「Low Compression Set Aerogels and Aerogel Composites and Methods of Making」と題された米国仮特許出願第63/386,892号の優先権及び利益を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、エアロゲル技術に関する。本発明は、より具体的には、様々な実施形態において、エアロゲルを生成するための改善された方法及び圧縮永久ひずみが低い改善されたエアロゲル複合材に関する。
【背景技術】
【0003】
低密度エアロゲル材料は、利用可能な最高の固体絶縁体であると広く考えられている。エアロゲルは、主に、伝導(低い構造密度により、固体フレームワークを通るエネルギー伝達のための蛇行した経路が得られる)、対流(大きな細孔体積及び非常に小さな細孔径により、最小の対流が得られる)、及び放射(IR吸収または散乱ドーパントは、エアロゲルマトリックス全体に容易に分散される)を最小限に抑えることによって、絶縁体として機能する。エアロゲルは、加熱及び冷却絶縁、音響絶縁、電子誘電体、航空宇宙、エネルギー貯蔵及び生産、ならびに濾過を含む幅広い用途で使用することができる。更に、エアロゲル材料は、様々な絶縁及び非絶縁用途においてそれらを極めて有用にする、他の多くの興味深い音響、光学、機械、及び化学特性を示す。
【0004】
エアロゲルは、概して、ゲルから液相を抽出することによって形成される。ゲルからの液相の抽出は、湿潤ゲルの多孔質ネットワーク及びフレームワークへの収縮を低下させる様式で行われる。しかしながら、得られるエアロゲルは、脆く、砕けやすい傾向がある。エアロゲル複合材は、エアロゲル材料の柔軟性及び/または強度などの特徴を改善する強化材料を含むエアロゲルである。しかしながら、そのような複合エアロゲルは、依然として高い圧縮永久ひずみに見舞われることがある。エアロゲル及びエアロゲル複合材における高い圧縮永久ひずみなどの欠陥を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、上述の方法及び材料の少なくとも1つの欠点を排除または軽減することである。本明細書に提供される方法及び材料は、エアロゲル及びエアロゲル複合材の圧縮永久ひずみ特性を改善するように設計される。
【0006】
本開示の一態様では、本エアロゲルまたはエアロゲル複合材の圧縮永久ひずみは、10%超の酸素を含む雰囲気下、約200℃~400℃の温度でエアロゲルを加熱することによって改善することができる。得られる熱処理されたエアロゲルは、圧縮永久ひずみ特性が改善されている。本発明の一態様では、本エアロゲルまたはエアロゲル複合材は、圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%を超える。酸素含有雰囲気下で熱処理した後、本エアロゲルの圧縮永久ひずみは、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下に改善される。本エアロゲルまたはエアロゲル複合材の加熱中、温度は、400℃未満の温度に制限される。
【0007】
本開示の一態様では、加熱が行われる雰囲気は、約15%の酸素~約25%の酸素を含む。本開示の好ましい態様では、雰囲気は空気である。
【0008】
本開示の一態様では、エアロゲルまたはエアロゲル複合材の圧縮永久ひずみの改善は、エアロゲルまたはエアロゲル複合材を約200℃~400℃の温度で、約30秒以上の時間加熱することにより達成される。本開示の一態様では、本エアロゲルまたはエアロゲル複合材は、30秒~3時間の時間加熱される。
【0009】
本開示の一態様では、本エアロゲルまたはエアロゲル複合材は、シリカを含む。本エアロゲルまたはエアロゲル複合材は、塩基を含んでもよい。塩基は、ゲル形成材料に添加して、エアロゲル中に残るエアロゲル前駆体ゲルのゲル形成を触媒する塩基であってもよい。本開示の一態様では、塩基はアミン塩基である。本エアロゲルは、少なくとも約0.5%の塩基を含んでもよい。本開示の一態様では、本エアロゲルは、塩基の0.5%~約10%を含んでもよい。本エアロゲルまたはエアロゲル複合材の熱処理により、塩基の一部がエアロゲルから除去される。本開示の一態様では、熱処理前の本エアロゲルまたはエアロゲル複合材中の塩基の量は、熱処理後の本エアロゲルまたはエアロゲル複合材中の塩基の量よりも多い。
【0010】
本開示の一態様では、本エアロゲルは、エアロゲル及び強化材料で構成されるエアロゲル複合材である。本開示の一態様では、強化材料は繊維強化材料である。本エアロゲル複合材はまた、不透明化添加剤を含んでもよい。例示的な不透明化添加剤としては、炭化ホウ素(BC)、珪藻土、マンガンフェライト(MnFe)、酸化マンガン(MnO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化スズ(SnO)、酸化銀(AgO)、酸化ビスマス(Bi)、炭化チタン(TiC)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)、カーボンブラック、酸化チタン(TiO)、酸化鉄チタン(FeTiO)、ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe)、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄チタン(イルメナイト、FeTiO)、酸化クロム(CrO)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい態様では、本エアロゲル複合材は、不透明化添加剤として炭化ケイ素を含む。
【0011】
本明細書に記載される方法を使用して、圧縮永久ひずみが改善されたエアロゲル及びエアロゲル複合材を形成することができる。これらの改善されたエアロゲル及びエアロゲル複合材は、様々な用途に使用することができる。本開示の一態様では、改善されたエアロゲル及びエアロゲル複合材は、電気貯蔵システムの絶縁バリアに使用することができる。
【0012】
本開示の別の態様では、改善されたエアロゲルまたはエアロゲル複合材を含む絶縁バリアは、電池モジュールに使用することができる。電池モジュールは、複数の電池セルと、隣接する電池セル間に配設された1つ以上の絶縁バリアとを含む。この電池モジュールは、電力システムに使用してもよい。
【0013】
本開示の一態様では、デバイスまたは車両は、改善されたエアロゲルまたはエアロゲル組成物を含む絶縁バリアを有する電池モジュールまたは電力システムを含む。例示的なデバイスには、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、ディスプレイパネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザー測距器、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、電子的に統合された衣料、暗視装置、電動工具、電卓、ラジオ、遠隔操作電化製品、GPSデバイス、手持ち及び携帯型テレビ、車始動器、懐中電灯、音響デバイス、携帯型加熱器、携帯型掃除機、または携帯型医療器具が含まれる。車両は電気車両であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、言うまでもなく変化し得る特定のデバイスまたは方法に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語が、特定の例を記載する目的でしかなく、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容により別途明示的に示されない限り、単数及び複数の指示対象を含む。更に、「may」という単語は、本出願全体をとおして、必須の意味(すなわち、そうしなければならない(must))ではなく、許容的な意味(すなわち、そうする可能性を有する、そうすることが可能である)で使用される。「含む」という用語及びその派生語は、「それらを含むが限定されない」を意味する。「結合した」という用語は、直接的または間接的に接続していることを意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「約」は、それが提示される文脈内でおよそまたはほぼを意味する。一実施形態では、「約」という用語は、数値の有効数字による従来の丸めを含み得る。加えて、「約『x』~『y』」という句は、「約『x』~約『y』」を含む。
【0016】
エアロゲルは、相互接続した構造のフレームワークを含む多孔質材料の区分であり、対応する細孔のネットワークがフレームワーク内に、間隙相(interstitial phase)が、主に空気などの気体で構成される細孔のネットワーク内に統合されている。エアロゲルは、典型的には、密度が低く、多孔率が高く、表面積が大きく、孔径が小さいことを特徴とする。エアロゲルは、それらの物理的及び構造的特性により、他の多孔質材料と区別され得る。本開示の背景では、エアロゲルは、(a)約2nm~約100nmの範囲の平均細孔径、(b)少なくとも80%以上の多孔率、及び(c)窒素多孔度測定試験を使用して決定して約20m/g以上の表面積を有する。このため、本開示のエアロゲルは、これらの定義要素を満たす任意のエアロゲルまたは他のオープンセル化合物を含む。
【0017】
エアロゲル材料はまた、追加の物理的特性、例えば、(d)約2.0mL/g以上、好ましくは約3.0mL/g以上の細孔体積、(e)約0.50g/cc以下、好ましくは約0.25g/cc以下の密度、及び(f)全細孔体積の少なくとも50%が2~50nmの細孔直径を含むことを更に特徴とし得るが、これらの追加の特性を満たすことは、エアロゲル材料としての化合物の特性評価に必須ではない。
【0018】
エアロゲルの生成には、概して、i)ゾルゲル溶液の形成、ii)ゾルゲル溶液からのゲルの形成、及びiii)溶媒をゲル材料から抽出して乾燥エアロゲル材料を得ることが含まれる。この工程は、具体的にシリカエアロゲルなどの無機エアロゲルを形成する背景で、以下でより詳細に考察される。しかしながら、本明細書に提供される特定の例及び図解は、本開示をいずれの特定のタイプのエアロゲル及び/または調製方法にも限定することを意図していない。本開示は、当業者に既知の任意の関連する調製方法により形成されるいずれのエアロゲルも含み得る。
【0019】
無機エアロゲルを形成する最初のステップは、概して、アルコール系溶媒中の金属アルコキシド前駆体の加水分解及び縮合によるゾルゲル溶液の形成である。無機エアロゲルの形成における主な変数には、ゾルゲル溶液に含まれるアルコキシド前駆体の種類、溶媒の性質、ゾルゲル溶液の加工温度及びpH(酸または塩基を加えることによって変化させることができる)、ならびにゾルゲル溶液内の前駆体/溶媒/水の比が含まれる。ゾルゲル溶液を形成する際にこれらの変数を制御することで、ゲル材料の「ゾル」状態から「ゲル」状態への後続の移行中にゲルフレームワークの成長及び凝集を制御することが可能になり得る。得られたエアロゲルの特性は、前駆体溶液のpH及び反応物のモル比の影響を受けるが、ゲルの形成を可能にする任意のpH及び任意のモル比が本開示で使用され得る。
【0020】
ゾルゲル溶液は、少なくとも1つのゲル化前駆体を溶媒と組み合わせることによって形成される。ゾルゲル溶液の形成に使用するのに好適な溶媒には、1~6個、好ましくは2~4個の炭素原子を有する低級アルコールが含まれるが、当業者に既知の他の溶媒を使用することもできる。有用な溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されない。複数の溶媒を組み合わせて、所望のレベルの分散を達成するか、またはゲル材料の特性を最適化することもできる。このため、ゾルゲル及びゲル形成ステップに最適な溶媒の選択は、ゾルゲル溶液に組み込まれる特定の前駆体、充填剤、及び添加剤、ならびにゲル化及び液相抽出のための目標加工条件、ならびに最終的なエアロゲル材料の所望の特性に左右される。
【0021】
水も、前駆体-溶媒溶液中に存在し得る。水は、金属アルコキシド前駆体を金属水酸化物前駆体に加水分解するように作用する。加水分解反応は、(例としてエタノール溶媒中のTEOSを使用して)以下であり得る。
Si(OC+4HO→Si(OH)+4(COH) (1)
【0022】
得られた加水分解された金属水酸化物前駆体は、個々の分子として、または分子の小さな重合(またはオリゴマー化)されたコロイドクラスターとしてのいずれかで、「ゾル」状態で溶媒溶液中に懸濁したままである。例えば、Si(OH)前駆体の重合/縮合は、次のように生じ得る。
2Si(OH)→(OH)Si-O-Si(OH)+HO (2)
この重合は、重合された(またはオリゴマー化された)SiO(シリカ)分子のコロイドクラスターが形成されるまで継続し得る。
【0023】
酸及び塩基をゾルゲル溶液に組み込んで、溶液のpHを制御し、前駆体材料の加水分解及び縮合反応を触媒することができる。いずれの酸を使用しても、前駆体反応を触媒し、より低いpHの溶液を得ることができるが、好ましい酸には、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、シュウ酸、及び酢酸が含まれる。
【0024】
同様に、いずれの塩基を使用しても、前駆体反応を触媒し、より高いpHの溶液、例えば、水酸化アンモニウム(NHOH)を得ることができる。本開示の一態様では、アミン塩基を使用して、前駆体反応を触媒してもよい。本開示の背景において、「アミン塩基」という用語は、アミン基を含む有機化合物を指す。例えば、本明細書の実施形態によるアミン塩基としては、トリアルキルアミン、アミジン、グアニジン、及びイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。アミン塩基の具体例としては、グアニジン(例えば、水酸化グアニジニウム)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、イミダゾール、及び4,5-ジヒドロイミダゾールが挙げられる。
【0025】
ゾルゲル溶液は、追加の共ゲル化前駆体、ならびに充填材及び他の添加剤を含むことができる。充填材及び他の添加剤は、ゲルの形成前または形成中の任意の時点で、ゾルゲル溶液中に分注してもよい。充填材及び他の添加剤はまた、当業者に既知の様々な技法を介してゲル化後にゲル化材料に組み込んでもよい。好ましくは、ゲル化前駆体、溶媒、触媒、水、充填材、及び他の添加剤を含むゾルゲル溶液は、好適な条件下で効果的なゲル形成が可能である均質な溶液である。
【0026】
ゾルゲル溶液が形成され、最適化されると、ゾルゲル中のゲル形成成分をゲル材料に移行させることができる。ゲル形成成分をゲル材料に移行させる工程は、ゲルをゲル材料のゲル点まで固化させる初期ゲル形成ステップを含む。ゲル材料のゲル点は、ゲル化溶液がその体積全体にわたってフローに対する耐性を呈し、及び/または実質的に連続したポリマーフレームワークを形成する点とみなされ得る。一連のゲル形成技法は、当業者に既知である。例としては、混合物を十分な期間静穏状態に維持すること、溶液のpHを調整すること、溶液の温度を調整すること、エネルギーの形態を混合物に向けること(紫外線、可視、赤外線、マイクロ波、超音波、粒子放射線、電磁気)、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
ゲル形成成分をゲル材料に移行させる工程には、液相抽出前のエージングステップ(硬化とも称される)も含まれ得る。ゲル材料をそのゲル点に達した後にエージングさせると、ネットワーク内の架橋数が増加することでゲルフレームワークを更に強固にすることができる。ゲルエージングの持続時間を調整して、得られるエアロゲル材料内の様々な特性を制御することができる。このエージング手順は、液相抽出中の体積損失及び収縮の可能性を防止するのに有用であり得る。エージングには、ゲルを(抽出前に)長期間静穏状態に維持すること、ゲルを昇温に維持すること、架橋促進化合物を加えること、またはそれらの任意の組み合わせが伴い得る。エージングのための好ましい温度は、典型的には、約10℃~約100℃であるが、他の好適な温度も本明細書で企図される。ゲル材料のエージングは、典型的には、湿潤ゲル材料の液相抽出まで継続する。
【0028】
ゲル形成材料をゲル材料に移行させるための期間は、最初のゲル形成の期間(ゲル化の開始からゲル点まで)と、液相抽出前のゲル材料の任意の後続する硬化及びエージングの期間(ゲル点から液相抽出の開始まで)との両方を含む。ゲル形成材料をゲル材料に移行させるための全期間は、典型的には、約1分~数日、好ましくは、約30時間以下、約24時間以下、約15時間以下、約10時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、または約15分以下である。
【0029】
湿潤ゲル材料のエージングは、湿潤ゲル材料を、エージング工程を完了するのに十分な時間加熱することによって達成することができる。典型的なエージング工程では、湿潤ゲル材料をエージング容器に配置する。次いで、湿潤ゲル材料をエージング温度に加熱し、エージング工程が完了するまでエージング温度に維持する。任意選択で、湿潤ゲル材料を、加熱前及び加熱中にエージング流体で洗浄してもよい。エージング流体を使用して、湿潤ゲルに存在する一次反応溶媒を代置してもよい。例示的なエージング流体は、C~Cアルコール、環式アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール、エーテル、ケトン、または環式エーテルである。好ましいエージング流体には、メタノール及びエタノールが含まれる。エージングの間、エージング流体は、実質的に連続して湿潤ゲル材料を過ぎ越させる(pass over)及び/または通過させ(pass through)、エージング容器を通過させることができる。エージング容器及び湿潤ゲルを通過するエージング流体は、新鮮なエージング流体であってもリサイクルされたエージング流体であってもよい。
【0030】
エージング工程を完了するために必要な時間量は、湿潤ゲル材料のエージング温度に関係する。概して、エージング温度が高いほど、エージング工程が早く完了する。しかしながら、使用することができる最大温度は、湿潤ゲル材料中に存在する液体に限定される。大気圧(1気圧、101,325Pa)下では、エージング温度は、湿潤ゲル材料中の液体の沸点に制限される。更に、エージング材料を液体の沸点またはその付近で加熱することは望ましくない。エージング流体をエージング流体の沸点またはその付近で加熱する際のエージング流体の蒸発により、湿潤ゲル材料のフレームワーク構造に損傷が生じ得る。湿潤ゲル材料を損傷する可能性を低減させるために、エージング工程は、典型的には、湿潤ゲル材料中のエージング流体の沸点未満で実施される。例えば、エタノールをエージング流体として使用する場合、湿潤ゲル材料は、典型的には、エタノールの沸点(1気圧(101,325Pa)でbp173°F(78.3℃))未満である160°F(71.1℃)の温度で、1時間~最大24時間の期間、エージングされる。
【0031】
本開示の一態様では、湿潤ゲル材料のエージング時間は、湿潤ゲル材料のエージング温度を増加させることにより短縮することができる。エージング温度は、概して、エージング流体の通常の沸点に制限されるが、エージング容器中の圧力を増加させることにより、エージング流体の通常の沸点を超えて温度を増加させることができる。エージング容器内部の圧力(「エージング圧力」)をエージング流体の蒸気圧を越えて維持すると、エージング流体を沸騰させることなく、エージング流体の温度を、エージング流体の通常の沸点を超えて増加させることができる。本明細書で使用される場合、液体の「通常の沸点」は、液体が1気圧(101,325Pa)で沸騰する温度である。
【0032】
本開示の一態様では、湿潤ゲル材料は、加圧され得る容器内に配置される。容器はまた、エージング流体のための入口及び流体が容器から出るための出口も含む。容器は密閉され、エージング流体が容器に導入される。エージング流体は、湿潤ゲル材料を作製するために使用される流体と同じ流体であっても異なる流体であってもよい。本開示の好ましい態様では、エージング流体は、アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)である。エージング流体は、エージング流体の蒸気圧を超える容器内部の圧力を維持しながら加熱される。エージング流体は、容器中にまたは容器に近接して位置する加熱要素により加熱され得る。
【0033】
本開示の一態様では、湿潤ゲル材料のエージング中に、エージング流体を除去してもよく、またエージング流体を実質的に連続して導入してもよい。例えば、エージング流体を、容器を通して再循環することができる。エージング流体を、容器内に再導入する前に、容器の外で加熱してもよい。エージングの間、容器内部の圧力(「エージング圧力」)は、エージング流体の蒸気圧が温度増加に伴って増加するため、液体の蒸気圧、特に、エージング温度での液体の蒸気圧よりも上に維持される。
【0034】
圧力を増加させることによりエージング温度を増加させると、エージング時間を短縮することができる。増加したエージング温度下では、そのエージング時間は40分~約200分になり得る。
【0035】
エージング温度は、エージング容器中の蒸気圧を増加させることにより、部分的に制御される。例えば、エージング流体としてのエタノールに230F(110℃)のエージング温度が所望される場合、液体が蒸発または沸騰に起因してフレームワーク構造に損傷を与え始めないことを確実にするためには、容器内部の蒸気圧は315kPa以上である必要がある。実際には、容器中の圧力は、エージング液体の蒸気圧の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも20倍の圧力に保たれる。例えば、エタノールをエージング流体とすると、容器内部の圧力は、少なくとも630kPa、少なくとも945kPa、少なくとも1575kPa、少なくとも3150kPa、または少なくとも6300kPaの圧力に保たれ得る。
【0036】
湿潤ゲル材料の高温及び高圧エージングに関する更なる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/416,017号に開示されている。
【0037】
得られたゲル材料を好適な二次溶媒中で洗浄して、湿潤ゲル中に存在する一次反応溶媒を代置してもよい。そのような二次溶媒は、1つ以上の脂肪族炭素原子を有する直鎖一価アルコール、2つ以上の炭素原子を有する二価アルコール、分岐アルコール、環式アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、多価アルコール、エーテル、ケトン、環式エーテル、またはそれらの誘導体であってもよい。
【0038】
ゲル材料が形成され処理されたら、次に、抽出方法を使用してゲルの液相を湿潤ゲルから少なくとも部分的に抽出して、エアロゲル材料を形成することができる。液相抽出は、他の要因のなかでも、多孔性及び密度などのエアロゲルの特徴、ならびに熱伝導率などの関連特性を操作するうえで重要な役割を果たす。概して、エアロゲルは、湿潤ゲルの多孔質ネットワーク及びフレームワークへの収縮を低下させる様式で、液相がゲルから抽出されるときに得られる。
【0039】
エアロゲルは、一般に、液体移動相を、液体移動相の臨界点付近またはそれを超える温度及び圧力でゲル材料から除去することにより形成される。臨界点に到達(臨界付近)またはそれを超過(超臨界)する(すなわち、システムの圧力及び温度がそれぞれ臨界圧力及び臨界温度以上である)と、液相または蒸気相とは異なる新しい超臨界相が流体中に現れる。こうすると、液体-蒸気界面、毛細管圧力、または液体-蒸気境界に典型的に関連付けられる任意の関連する質量移動限界を導入することなく、溶媒を除去することができる。加えて、超臨界相は、概して有機溶媒とより混和性があり、このため、より良好な抽出のための性能を有する。超臨界流体乾燥工程を最適化するために、共溶媒及び溶媒交換も一般的に使用される。
【0040】
湿潤ゲルから液相を抽出する一実施形態は、二酸化炭素の超臨界条件を使用し、これには、例えば、最初にゲルの細孔ネットワークに存在する一次溶媒を液体二酸化炭素と実質的に交換し、次に湿潤ゲルを二酸化炭素の臨界温度(約31.06℃)を超えて加熱し(典型的にはオートクレーブ中)、システムの圧力を二酸化炭素の臨界圧力(約1070psig)よりも大きい圧力に増加させることが含まれる。ゲル材料の周りの圧力をわずかに変動させて、ゲルからの超臨界二酸化炭素流体の除去を容易にすることができる。二酸化炭素を、抽出システムを通して再循環させて、一次溶媒を湿潤ゲルから連続して除去することを容易にすることができる。最後に、温度及び圧力を周囲条件にゆっくりと戻し、乾燥エアロゲル材料を生成する。二酸化炭素を、抽出チャンバに注入される前に、超臨界状態に前処理することもできる。
【0041】
エアロゲルの合成を説明する更なる詳細は、Evansらの米国特許出願公開第2016/0096949号及びEvansらの米国特許出願公開第2021/03095227号に見出すことができ、これらの両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本開示のエアロゲル複合材は、厚さが、15mm以下、10mm以下、5mm以下、3mm以下、2mm以下、または1mm以下であり得る。
【0043】
本明細書に記載される工程によって作製されるエアロゲルは、添加剤または充填剤をゲル前駆体またはゲルに加えない限り、脆く、砕けやすくなり得る。特に、エアロゲルの製造中に繊維を充填材料として使用することで、エアロゲル材料の柔軟性及び/または強度が改善され得る。本開示の一態様では、エアロゲル複合材は、ゲル前駆体組成物を繊維強化相に加え、ゲル前駆体組成物からゲルを形成することによって形成される。ゲルを液体抽出に供し(例えば、超臨界COを使用して)、乾燥させて、繊維と混合されたエアロゲルを含むエアロゲル複合材を形成する。エアロゲル繊維複合材の合成を説明する更なる詳細は、Evansらの米国特許出願公開第2016/0096949号及びEvansらの米国特許出願公開第2021/03095227号に見出すことができ、これらの両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
エアロゲルを支持するための強化相、例えば強化材料の使用により、得られるエアロゲル複合材を、より扱いやすく、操作しやすくすることができる。強化材は、繊維またはフォームの形態であり得る。強化材は、細長い材料シートの形態であり得る。強化材に対するエアロゲルの適切な比を選択することにより、柔軟で機械的に堅牢なエアロゲル複合材を得ることができる。
【0045】
強化相は、エアロゲル材料に増加した柔軟性、回復力、適合性、または構造的安定性を提供する任意の材料であり得る。周知の強化材料の例としては、オープンセルフォーム強化材料、クローズドセルフォーム強化材料、オープンセル膜、ハニカム強化材料、ポリマー強化材料、ならびに繊維強化材料、例えば、分離した繊維、織材料、不織材料、バッティング、ウェブ、マット、及びフェルトが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、繊維系強化材は、他の強化材料のうちの1つ以上と組み合わされてもよく、組成物の全体にわたって連続して、または組成物の限定された好ましい部分に、配向され得る。
【0046】
フォーム強化材料の例としては、有機ポリマー材料から作製された材料が挙げられるが、これらに限定されない。例としては、ポリオレフィン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、酢酸セルロース、及びポリスチレンから作製される材料が挙げられる。メラミンまたはメラミン誘導体から作製される材料も、ある特定の実施形態では好ましい。
【0047】
繊維強化材料の例としては、分離した繊維、織材料、不織材料、バッティング、ウェブ、マット、フェルト、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。繊維強化材料は、以下を含むがこれらに限定されない、広範な材料を含むことができる:ポリエステル、ポリオレフィンテレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリカーボネート(例えば、レーヨン、ナイロン)、綿(例えば、DuPont製のライクラ)、炭素(例えば、グラファイト)、ポリアクリロニトリル(PAN)、酸化PAN、非炭素化熱処理PAN(SGL carbon製のものなど)、ガラス繊維系材料(Sガラス、901ガラス、902ガラス、475ガラス、Eガラスなど)、石英などのシリカ系繊維(例えば、Saint-Gobain製のQuartzel)、Q-felt(Johns Manville製)、Saffil(Saffil製)、Durablanket(Unifrax製)、及び他のシリカ繊維、シリカ系繊維とガラス系繊維との組み合わせ、Duraback(Carborundum製)、Kevlar、Nomex、Sontera(全てDuPont製)、Conex(Taijin製)、ポリオレフィン、例えば、Tyvek(DuPont製)、Dyneema(DSM製)、Spectra(Honeywell製)、他のポリプロピレン繊維、例えば、Typar、Xavan(両方ともDuPont製)、フルオロポリマー、例えば、Teflon(DuPont製)、Goretex(W.L.GORE製)などの商品名のPTFE、炭化ケイ素繊維、例えばNicalon(COI Ceramics製)、セラミック繊維、例えばNextel(3M製)、アクリルポリマー、羊毛、絹、麻、革、スエードの繊維、PBO-Zylon繊維(Tyobo製)、液晶材料、例えばVectan(Hoechst製)、Cambrelle繊維(DuPont製)、ポリウレタン、ポリアミド、木質繊維、ホウ素、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼繊維、ならびに他の熱可塑性材、例えば、PEEK、PES、PEI、PEK、PPS。
【0048】
エアロゲル材料及びエアロゲル複合材の、大きく変化し得る1つの特性は、圧縮永久ひずみである。本明細書で使用される場合、「圧縮永久ひずみ」は、材料に適用された力を除去した後に残る材料の永久的な変形の測定値である。本開示では、圧縮永久ひずみは、ASTM D3574-Test Dを使用して決定される。圧縮永久ひずみは、所定の力を適用する前後の材料の厚さにおける変化のパーセンテージとして決定される。ASTM D3574-Test Dの一例では、圧縮永久ひずみは、次式から決定することができ、
=[(T-T)/T]×100
式中、Cは圧縮永久ひずみであり、Tは材料の元の厚さであり、Tは、適用された力を除去した後の材料の最終厚さである。
【0049】
材料の柔軟性を改善するための添加剤を一切含まないエアロゲルは、圧縮永久ひずみが高い傾向がある(すなわち、材料は、力の適用が中止された後、その元の厚さの50%未満に戻る)。繊維強化エアロゲルであっても、圧縮永久ひずみ値が高い傾向がある。したがって、エアロゲル及びエアロゲル複合材の圧縮永久ひずみを改善する方法を見出す必要がある。
【0050】
エアロゲルまたはエアロゲル複合材を酸素含有雰囲気下で加熱することで、加熱された材料の圧縮永久ひずみを改善できることが見出されている。いかなる理論にも拘束されるものではないが、エアロゲルまたはエアロゲル複合材の回復力と関連付けられる問題は、多孔質ネットワークの不完全な形成に関係すると考えられる。多孔質ネットワークが形成されるとき、ゲル材料の反応が不完全である弱点が形成される。これらの弱点は、エアロゲルまたはエアロゲル複合材の多孔質フレームワークの崩壊を引き起こし得る。エアロゲルが崩壊すると、その前の状態(例えば、その前の厚さ)を回復することができない。エアロゲルを酸素雰囲気中で加熱すると、多孔質ネットワーク内の不完全な反応部位での反応を促進することにより、あらゆる残留触媒(例えば、塩基)が除去され、エアロゲル中の弱点が除去されると考えられる。
【0051】
本開示の一態様では、第1のエアロゲルは、圧縮永久ひずみが第1のエアロゲルよりも良好である(すなわち、より低い)第2のエアロゲルに変換される。これは、圧縮永久ひずみがASTM D3574-Test Dにより決定して15%超である第1のエアロゲルを提供することにより達成される。第1のエアロゲルを、10%超の酸素を含む雰囲気下、約200℃~400℃の温度で加熱して、第2のエアロゲルを得る。第1のエアロゲルは、第2のエアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下になるように、第2のエアロゲルの圧縮永久ひずみを改変するのに十分な時間、加熱される。
【0052】
本開示の一態様では、第1のエアロゲルは、10%超の酸素、11%超の酸素、12%超の酸素、13%超の酸素、14%超の酸素、15%超の酸素、16%超の酸素、17%超の酸素、18%超の酸素、19%超の酸素、20%超の酸素、21%超の酸素、22%超の酸素、23%超の酸素、24%超の酸素、または25%超の酸素の雰囲気下で加熱される。本開示の一態様では、第1のエアロゲルの加熱中の雰囲気の酸素含有量は、10%の酸素~30%の酸素、15%の酸素~25%の酸素、または18%の酸素~25%の酸素の範囲である。本開示の好ましい態様では、第1のエアロゲルは、空気中で加熱される。
【0053】
本開示の一態様では、第1のエアロゲルは、200℃~400℃、225℃~400℃、250℃~400℃、250℃~350℃、または300℃~400℃の温度で、酸素含有雰囲気中で加熱される。第1のエアロゲルの加熱中、温度は、400℃未満に制限される。
【0054】
第1のエアロゲルは、得られた第2のエアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下になるように、第1のエアロゲルの圧縮永久ひずみを改変するのに十分な時間、加熱される。この変換を達成するために必要な例示的な時間は、10秒、30秒、1分、5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、もしくは3時間、またはこれらの値のうちのいずれか2つの範囲内であり得る。本開示の一態様では、加熱時間は、30秒~3時間、30秒~2時間、30秒~1時間、30秒~45分、30秒~30分、30秒~15分、30秒~5分、または30秒~1分である。
【0055】
酸素含有雰囲気中でエアロゲルまたはエアロゲル複合材を加熱することで、エアロゲル材料の圧縮永久ひずみを改善することができる。本発明の一態様では、酸素含有雰囲気中の熱処理後のエアロゲル材料の圧縮永久ひずみは、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下になる。
【0056】
酸素含有雰囲気中でエアロゲルを加熱する工程は、様々なエアロゲル及びエアロゲル複合材に適用することができる。本開示の一態様では、シリカエアロゲル複合材は、酸素含有雰囲気中で加熱され、エアロゲル複合材の圧縮永久ひずみを改善する。本開示の一態様では、シリカエアロゲルは、シリカ系ゲル形成材料の加水分解及び縮合により形成される。例示的なシリカ系ゲル形成材料としては、シリカ系アルコキシド、金属シリケート、アルコキシシラン、ポリエチレンシリケート、及びアルキルアルコキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示の一態様では、ゲル形成材料は、安定性及び疎水性などのゲルのある特定の特性を付与または改善することができる少なくとも1つの疎水性基を含む。疎水性基を含む例示的なゲル形成材料としては、アルキル金属アルコキシド、シクロアルキル金属アルコキシド、及びアリール金属アルコキシドが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の特定の態様では、ゲル形成材料は、シリカ系疎水性ゲル形成材料である。シリカ系ゲル形成材料の例としては、トリメチルメトキシシラン[TMS]、ジメチルジメトキシシラン[DMS]、メチルトリメトキシシラン[MTMS]、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン[DMDES]、メチルトリエトキシシラン[MTES]、エチルトリエトキシシラン[ETES]、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン[PhTES]、ヘキサメチルジシラン、及びヘキサエチルジシラザンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ゲル形成材料は、当該技術分野で既知の様々な技法を使用してゲルに変換され得る。本開示の一態様では、ゲル形成材料は、塩基を使用してゲルに変換されてもよい。任意の塩基を使用して、ゲル形成反応を触媒し得る。本開示の一態様では、アミン塩基を使用して、ゲル化反応を触媒してもよい。使用してもよい例示的な塩基としては、トリアルキルアミン、アミジン、グアニジン、及びイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。アミン塩基の具体例としては、グアニジン(例えば、水酸化グアニジニウム)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、イミダゾール、及び4,5-ジヒドロイミダゾールが挙げられる。使用されるアミン塩基の量は、ゲル形成材料の約0.5%~約10%の範囲であり得る。ゲル化及び溶媒除去の後、得られたエアロゲルは、約0.5%~約10%のエアロゲル中に残っているアミン塩基を有する。
【0059】
エアロゲルを200℃~400℃の温度で加熱すると、揮発性塩基(例えば、アミン塩基)の一部がエアロゲルから除去されることになると考えられる。このため、初期エアロゲル複合材中に存在する揮発性塩基(例えば、アミン塩基)の量は、加熱後にエアロゲル複合材中に残っている揮発性塩基の量よりも大きい。
【0060】
エアロゲル複合材は、より柔軟で、回復力があり、かつ適合性のある複合材製品を実現するために、様々な繊維強化材料で繊維強化されてもよい。繊維強化材料は、湿潤繊維状ゲル組成物を生成するために、ゲル化工程のいずれの時点でゲルに加えられてもよい。次に、湿潤ゲル組成物を乾燥させて、繊維強化エアロゲル複合材を生成してもよい。繊維強化材料は、分離した繊維、織材料、不織材料、バッティング、ウェブ、マット、及びフェルトの形態であってもよい。繊維強化材は、有機繊維性材料、無機繊維性材料、またはそれらの組み合わせから作製することができる。繊維強化材料は、以下を含むがこれらに限定されない、広範な材料を含むことができる:ポリエステル、ポリオレフィンテレフタレート、ポリ(エチレン)ナフタレート、ポリカーボネート(例えば、レーヨン、ナイロン)、綿(例えば、DuPont製のライクラ)、炭素(例えば、グラファイト)、ポリアクリロニトリル(PAN)、酸化PAN、非炭素化熱処理PAN(SGL carbon製のものなど)、ガラス繊維系材料(Sガラス、901ガラス、902ガラス、475ガラス、Eガラスなど)、石英などのシリカ系繊維(例えば、Saint-Gobain製のQuartzel)、Q-felt(Johns Manville製)、Saffil(Saffil製)、Durablanket(Unifrax製)、及び他のシリカ繊維、Duraback(Carborundum製)、Kevlar、Nomex、Sontera(全てDuPont製)、Conex(Taijin製)、ポリオレフィン、例えば、Tyvek(DuPont製)、Dyneema(DSM製)、Spectra(Honeywell製)、他のポリプロピレン繊維、例えば、Typar、Xavan(両方ともDuPont製)、フルオロポリマー、例えば、Teflon(DuPont製)、Goretex(W.L.GORE製)などの商品名のPTFE、炭化ケイ素繊維、例えばNicalon(COI Ceramics製)、セラミック繊維、例えばNextel(3M製)、アクリルポリマー、羊毛、絹、麻、革、スエードの繊維、PBO-Zylon繊維(Tyobo製)、液晶材料、例えばVectan(Hoechst製)、Cambrelle繊維(DuPont製)、ポリウレタン、ポリアミド、木質繊維、ホウ素、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼繊維、ならびに他の熱可塑性材、例えば、PEEK、PES、PEI、PEK、PPS。
【0061】
本開示の一態様では、不織繊維強化材料は、相互接続したまたは織り合わさった繊維強化材料の連続したシートとしてエアロゲル複合材に組み込まれる。この工程には、まず、ゲル前駆体溶液を、相互接続したまたは織り合わさった繊維強化材料の連続したシートにキャストするまたは含浸させることによって、繊維強化ゲルの連続したシートを生成することが含まれる。次いで、液相を、繊維強化ゲルシートから少なくとも部分的に抽出して、シート状の繊維強化エアロゲル複合材を生成してもよい。
【0062】
本開示の一態様では、本エアロゲル複合材は、熱伝達の放射成分を低減させるために不透明化添加剤を含んでもよい。ゲル形成前の任意の時点で、不透明化化合物またはその前駆体を、ゲル形成材料を含む混合物中に分散させてもよい。例示的な不透明化添加剤としては、炭化ホウ素(BC)、珪藻土、マンガンフェライト(MnFe)、酸化マンガン(MnO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化スズ(SnO)、酸化銀(AgO)、酸化ビスマス(Bi)、炭化チタン(TiC)、炭化タングステン(WC)、炭化ケイ素(SiC)、カーボンブラック、酸化チタン(TiO)、酸化鉄チタン(FeTiO)、ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe)、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄チタン(イルメナイト、FeTiO)、酸化クロム(CrO)、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい態様では、本エアロゲル複合材は、不透明化添加剤として炭化ケイ素を含む。
【0063】
無機エアロゲルには、安定性及び疎水性などのゲルにおけるある特定の特性を付与または改善することができる、アルキル金属アルコキシド、シクロアルキル金属アルコキシド、及びアリール金属アルコキシドなどの少なくとも1つの疎水性基を含むゲル前駆体も含まれ得る。無機シリカエアロゲルには、具体的には、アルキルシランまたはアリールシランなどの疎水性前駆体が含まれ得る。疎水性ゲル前駆体は、ゲル材料のフレームワークを形成するための一次前駆体材料として使用され得る。しかしながら、疎水性ゲル前駆体は、アマルガムエアロゲルの形成において単純な金属アルコキシドと組み合わせて共前駆体としてより一般的に使用される。シリカ系エアロゲル合成のための疎水性無機前駆体材料としては、トリメチルメトキシシラン[TMS]、ジメチルジメトキシシラン[DMS]、メチルトリメトキシシラン[MTMS]、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン[DMDS]、メチルトリエトキシシラン[MTES]、エチルトリエトキシシラン[ETES]、ジエチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン[PhTES]、ヘキサメチルジシラン、及びヘキサエチルジシラザンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
エアロゲルはまた、疎水性を付与または改善するように処理してもよい。疎水処理は、ゾルゲル溶液、液相抽出前の湿潤ゲルに、または液相抽出後のエアロゲルに適用することができる。疎水処理は、シリカエアロゲルなどの金属酸化物エアロゲルの生成において特に一般的である。疎水処理は、シリカゲルのフレームワーク上に存在するシラノール基(Si-OH)などのゲル上のヒドロキシ部分を、疎水化剤の官能基と反応させることにより行う。得られる反応により、シラノール基及び疎水化剤がシリカゲルのフレームワーク上の疎水性基に変換される。疎水化剤化合物は、次の反応に従って、ゲル上のヒドロキシル基と反応してもよい。
MX4-N(疎水化剤)+MOH(シラノール)→MOMR(疎水性基)+HX
疎水処理は、シリカゲルの外側マクロ表面上と、ゲルの多孔質ネットワーク内の内側細孔表面上との両方で行ってもよい。
【0065】
ゲルは、疎水化剤と、疎水化剤が可溶性であり、湿潤ゲル中のゲル溶媒とも混和性である任意選択の疎水処理溶媒との混合物に浸漬することができる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、及びヘキサンなどの溶媒を含む、広範囲の疎水処理溶媒を使用し得る。また、液体または気体形態の疎水化剤をゲルと直接接触させて、疎水性を付与してもよい。
【0066】
疎水処理工程には、疎水化剤が湿潤ゲルに浸透するのを助けるために、混合または撹拌が含まれ得る。疎水処理工程には、処理反応を更に増強し最適化するために、温度及びpHなどの他の条件を変化させることも含み得る。反応が完了した後、湿潤ゲルを洗浄して、未反応の化合物及び反応副産物を除去する。
【0067】
エアロゲルの疎水処理のための疎水化剤は、概して、下式の化合物であり、RNMX4-N、式中、Mは金属であり、Rは、疎水性基、例えば、CH、CHCH、C、もしくは同様の疎水性アルキル、シクロアルキル、またはアリール部分であり、Xは、ハロゲン、通常、Clである。疎水化剤の具体例としては、トリメチルクロロシラン[TMCS]、トリエチルクロロシラン[TECS]、トリフェニルクロロシラン[TPCS]、ジメチルクロロシラン[DMCS]、ジメチルジクロロシラン[DMDCS]などが挙げられるが、これらに限定されない。疎水化剤はまた、下式のものであることができ、Y(RM)、式中、Mは金属であり、YはNHまたはOなどの架橋基であり、Rは、疎水性基、例えば、CH、CHCH、C、もしくは同様の疎水性アルキル、シクロアルキル、またはアリール部分である。そのような疎水化剤の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン[HMDZ]及びヘキサメチルジシロキサン[HMDSO]が挙げられるが、これらに限定されない。疎水化剤は、下式の化合物を更に含むことができ、RNMV4-N、式中、Vは、ハロゲン以外の反応または脱離基である。そのような疎水化剤の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本開示の背景では、「疎水性結合ケイ素」という用語は、ケイ素原子に共有結合した少なくとも1つの疎水性基を含むゲルまたはエアロゲルのフレームワーク内のケイ素原子を指す。疎水性結合ケイ素の例としては、少なくとも1つの疎水性基(MTESまたはDMDSなど)を含むゲル前駆体から形成されるゲルフレームワーク内のシリカ基中のケイ素原子が挙げられるが、これらに限定されない。疎水性結合ケイ素として、追加の疎水性基を組成物に組み込むことにより疎水性を付与または改善するために疎水化剤(HMDZなど)で処理されるゲルフレームワーク中またはゲルの表面上のケイ素原子も挙げられるが、これらに限定されない。本開示の疎水性基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基、オクチル基、フェニル基、または当業者に既知の他の置換もしくは非置換の疎水性有機基が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の背景において、「疎水性基」、「疎水性有機材料」、及び「疎水性有機含有量」という用語は、有機溶媒とシラノール基との間の反応の産物であるゲル材料のフレームワーク上の容易に加水分解可能な有機ケイ素結合アルコキシ基を具体的に除外する。
【0069】
本開示の背景において、「脂肪族疎水性基」、「脂肪族疎水性有機材料」、及び「脂肪族疎水性有機含有量」という用語は、直鎖、分岐、環式部分(縮合、架橋、及びスピロ縮合多環式)、またはそれらの組み合わせ、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、(シクロ)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル部分、及びヘテロ脂肪族部分(1つ以上の炭素原子が、独立して、酸素、硫黄、窒素、またはリンからなる群から選択される1つ以上の原子で代置される)を含み得る、飽和であることも不飽和であることもできる(ただし、芳香族ではない)、1~40個の炭素原子を含む炭化水素部分が挙げられるが、これらに限定されない、脂肪族炭化水素に限定される疎水性結合ケイ素上の疎水性基を説明する。本開示のある特定の実施形態では、本エアロゲル組成物中の疎水性有機材料の少なくとも50%が、脂肪族疎水性基で構成される。
【0070】
本開示の背景において、「疎水性有機含有量」という用語は、エアロゲル材料または組成物中のフレームワークに結合した疎水性有機材料の量を指す。エアロゲル材料または組成物の疎水性有機含有量は、エアロゲル材料または組成物中の材料の総量に対する、エアロゲルフレームワーク上の疎水性有機材料の量の重量パーセントとして表すことができる。疎水性有機含有量は、当業者であれば、エアロゲル材料または組成物の生成に使用される材料の性質及び相対濃度に基づいて計算することができる。疎水性有機含有量は、不活性雰囲気中で熱重量分析(TGA)を使用して測定することもできる。具体的には、エアロゲル中の疎水性有機材料の割合は、TGA分析中に燃焼熱温度に供されたときの疎水性エアロゲル材料または組成物中の重量損失の割合と、TGA分析中の水分の損失、残留溶媒の損失、及び容易に加水分解可能なアルコキシ基の損失について調整が行うことで相関させることができる。
【0071】
本開示のエアロゲル材料または組成物は、疎水性有機含有量が、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、またはこれらの値のいずれか2つの間の範囲であり得る。
【0072】
エアロゲル材料及びエアロゲル複合材は、その熱伝導率が低いため、断熱用途に理想的な材料である。1つの例示的な使用では、エアロゲル複合材は、個々の電池セルまたはその群の間の熱バリアとして使用されてもよい。電池セルは、「酷使条件」下で壊滅的な故障の影響を受けやすい。酷使条件には、機械的酷使、電気的酷使、及び熱的酷使が含まれる。これらの酷使条件のうちの1つまたは全ては、外部または内部で始まり得る。例えば、サービス誘発応力、エージング、設計、例えば、セル間隔、セル相互接続スタイル、セル形状因子、製造、操作、及び保守などの設定パラメータ上の過失が、様々な種類の酷使を引き起こし得る内部の機械的要因である。外部の機械的要因には、落下またはセルの貫通からなどの、LIBへの損傷または被害が含まれる。電気的酷使条件には、主に、電池セルの内部または外部の短絡、過充電、及び過放電が含まれる。熱的酷使は、典型的には、過熱によって引き起こされる。例えば、電池セル内の過熱は、電池セルを高い周囲温度下で動作させることによって生じ得る。内部的には、熱的酷使は、電池セル中の電気的及び機械的欠陥によって生じ得る。
【0073】
電気的、機械的、または熱的酷使条件に起因して、電池セル内で熱暴走が発生し得る。「熱暴走」という用語は、引き出され得るよりも多くの熱が生成され、反応速度及び熱生成の両方の更なる増加をもたらす点まで、電池セルの内部反応速度が増加する状況を指す。熱暴走中は、高温により、電池内の放熱反応の連鎖が引き起こされ、電池の温度を急速に増加させる。多くの場合、1つの電池セルで熱暴走が発生すると、生成された熱により、熱暴走を経験しているセルの近くにあるセルが急速に加熱する。熱暴走反応に加わる各セルが、反応を継続する追加のエネルギーを含み、電池パック内で熱暴走伝播を引き起こし、最終的には火災または爆発による電池パックの壊滅的な故障につながる。迅速な放熱及び効果的な熱伝達経路の遮断が、熱暴走伝播によって引き起こされる危険を低減するための効果的な対策となり得る。
【0074】
本開示の一態様では、エアロゲルまたはエアロゲル複合材は、10%超の酸素を含む雰囲気下、約200℃~400℃の温度で加熱されて、エアロゲル材料の圧縮永久ひずみを低減する。圧縮永久ひずみがASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下である加熱されたエアロゲルまたは加熱されたエアロゲル複合材は、バリア材料として、または電池セル間に配設される多層バリア材料の一部として使用することができる。改善された圧縮永久ひずみにより、エアロゲルまたはエアロゲル複合材の永久的な変形を伴わずに、またはそれを最小限に押さえて、エアロゲルまたはエアロゲル複合材が、隣接する電池セルの膨張及び収縮に応答してそれぞれ収縮及び膨張することが可能になる。
【0075】
電池モジュール及び電池パックは、デバイスまたは車両に電気エネルギーを供給するために使用することができる。電池モジュールまたは電池パックを使用するデバイスとしては、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、ディスプレイパネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザー測距器、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、電子的に統合された衣料、暗視装置、電動工具、電卓、ラジオ、遠隔操作電化製品、GPSデバイス、手持ち及び携帯型テレビ、車始動器、懐中電灯、音響デバイス、携帯型加熱器、携帯型掃除機、または携帯型医療器具が挙げられるが、これらに限定されない。車両で使用される場合、電池パックは、完全電気車両またはハイブリッド車両に使用することができる。
【実施例
【0076】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を裏付けるために含まれる。以下に続く実施例において開示される技術は、本発明の実行において良好に機能するように本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その好適な実行の様式を構成すると考えられ得ることを、当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更が開示される特定の実施形態においてなされるが、それでも同様なまたは類似する結果を得ることができることを理解するべきである。
【0077】
ASTM D3574-Test Dを使用したエアロゲル複合材の比較試験
試験1-窒素アニールと空気アニールとの比較
厚さ2.25mmのシリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test Dを使用して試験した(エアロゲル試料S100142)。エアロゲル複合材は、0.085g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。応力無負荷時の厚さの50%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で20分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。この試験の結果を表1に要約する。表1に示すように、未処理のエアロゲル複合材は、圧縮永久ひずみが49.6%である。窒素雰囲気(酸素含有量10%未満)中350℃で加熱することによるエアロゲル複合材の処理により、圧縮永久ひずみが、エアロゲル複合材を窒素雰囲気下で加熱した時間量に応じて、16%、23%、または31%に改善する。空気雰囲気下でエアロゲル複合材を加熱することにより、圧縮永久ひずみの大幅な改善が達成された。空気雰囲気(酸素含有量およそ21%)中350℃で加熱することによるエアロゲル複合材の処理により、圧縮永久ひずみが、15%未満(具体的には、エアロゲル複合材を空気下で加熱した時間量に応じて、5.6%、10.2%、及び2.0%)に改善する。
【表1】
【0078】
試験2-処理温度の比較
厚さ2.25mmのシリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test Dを使用して試験した(エアロゲル試料S100142)。エアロゲル複合材は、0.085g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。応力無負荷時の厚さの60%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で20分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。この試験の結果を表2に要約する。この試験では、処理温度の影響を検討した。表2に示すように、最良の結果は、350℃の処理温度で達成された(2.86%の圧縮永久ひずみ)。400℃を超える空気中で試料を処理すると、酸化による試料の分解が生じる可能性があり、これがこの処理の上限を示す。
【表2】
【0079】
試験3-圧縮永久ひずみのエアロゲル試料の厚さの比較
厚さ4mmのシリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test Dを使用して試験した(エアロゲル試料S100144)。エアロゲル複合材は、0.085g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。応力無負荷時の厚さの60%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で10分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。この試験の結果を表3に要約する。試験1の結果と同様に、空気中350℃の処理温度で、15%未満への圧縮永久ひずみの低減が達成された(11.17%の圧縮永久ひずみ)。
【表3】
【0080】
試験4-エアロゲルのアニール温度が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
厚さ4mmのシリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test Dを使用して試験した(エアロゲル試料S100144)。エアロゲル複合材は、0.085g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。応力無負荷時の厚さの50%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で960分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。この試験の結果を表4に要約する。試験3の結果と同様に、空気中350℃の処理温度で、15%未満への圧縮永久ひずみの低減が達成された(9.2%の圧縮永久ひずみ)。
【表4】
【0081】
試験5-アニール温度が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
厚さ4mmのシリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test Dを使用して試験した(エアロゲル試料S100144)。エアロゲル複合材は、0.085g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。応力無負荷時の厚さの60%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で20分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。この試験の結果を表5に要約する。この試験では、処理温度の影響を検討した。表5に示すように、最良の結果は、350℃の処理温度で達成された(12.71%の圧縮永久ひずみ)。400℃を超える空気中で試料を処理すると、酸化による試料の分解が生じる可能性があり、これがこの処理の上限を示す。
【表5】
【0082】
試験6-エアロゲルを形成するために使用する塩基の比較
シリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test Dを使用して試験した。第1のシリカ-エロゲル複合材(グアニジン)を、湿潤ゲル形成を触媒する塩基としてグアニジンを使用して形成した。第1のシリカ-エアロゲル複合材は、疎水性含有量が36%であった。第2のシリカ-エアロゲル複合材(アンモニア)を、湿潤ゲル形成を触媒する塩基としてアンモニアを使用して形成した。第2のシリカ-エアロゲル複合材は、疎水性含有量が36%であった。応力無負荷時の厚さの50%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で20分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。この試験の結果を表6に要約する。アンモニアを用いて形成した試料と比較して、グアニジンを用いて形成した試料において、圧縮永久ひずみのより顕著な低減が達成される。
【表6】
【0083】
試験7-エアロゲル複合材の比較繰り返し試験
厚さ2.25mmのシリカ系エアロゲル複合材を、繰り返し圧縮を使用して試験した(エアロゲル試料S100142)。エアロゲル複合材は、0.085g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。この試験は、材料を一連の圧縮サイクルに供す繰り返し試験において材料の回復力を評価することを目的としたカスタムの方法に基づいた。具体的には、材料を2mm/分でピークひずみ目標(60%ひずみ)まで繰り返しにかけ、そのひずみ目標で15分間保持し、下方ひずみ目標(50%ひずみ)まで負荷を解除し、このひずみで15分間保持した後、ピークひずみ条件に戻した。このサイクルをデータベース内の各材料に対して35回繰り返し、材料の回復%を24時間の回復期間後に報告した。この試験の結果を表7に要約する。表7に示すように、未処理のエアロゲル複合材は、圧縮永久ひずみが49.6%である。空気雰囲気下350℃で加熱することによるエアロゲル複合材の処理により、繰り返し試験の後、圧縮永久ひずみが4.6%に改善する。
【表7】
【0084】
試験8-エージング温度が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、熱処理の前後に、ASTM D3574-Test D及び繰り返し試験を使用して試験した(エアロゲル試料S100149)。エアロゲル複合材は、0.055g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。シリカ系エアロゲル複合材を、標準エージング条件(標準)または高温高圧エージング条件(87℃、HTHP)下で作製した。全ての試料を、空気下350℃でアニールした。応力無負荷時の厚さの60%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で20分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。ASTM D3574試験結果を表8に示す。繰り返し試験のために、材料を2mm/分で50~60%の範囲のピークひずみまで繰り返しにかけ、そのひずみ目標で15分間保持し、下方ひずみ目標(50%ひずみ)まで負荷を解除し、このひずみで15分間保持した後、ピークひずみ条件に戻した。このサイクルをデータベース内の各材料に対して35回繰り返し、材料の回復%を24時間の回復期間後に報告した。繰り返し試験の結果を表9に要約する。結果は、アニールしていないHTHP試料が、アニールしていない標準試料よりも優れていることを示す。標準試料と比較したアニールしたHTHP試料の完全な利益は、繰り返し試験の後に実現される。
【表8】
【表9】
【0085】
試験9-エージング温度が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験及び繰り返し圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、0.055g/ccのシリカ密度、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。シリカ系エアロゲル複合材を、高温高圧エージング条件(HTHP)下、80℃、90℃、100℃、及び110℃の温度で作製した。全ての試料を、空気下350℃でアニールした。応力無負荷時の厚さの50%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で24時間保持し、24時間後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。単回圧縮試験結果を表10に示す。繰り返し試験のために、材料を2mm/分で50~60%の範囲のピークひずみまで繰り返しにかけ、そのひずみ目標で15分間保持し、下方ひずみ目標(50%ひずみ)まで負荷を解除し、このひずみで15分間保持した後、ピークひずみ条件に戻した。このサイクルを各材料に対して50回繰り返し、材料の回復%を24時間の回復期間後に報告した。繰り返し試験の結果を表11に要約する。結果は、エージング温度を増加させると、圧縮永久ひずみ挙動が改善されることを示す。繰り返し試験の結果は、エージング温度がより高いと、圧縮永久ひずみが改善され、50サイクル後に最小応力値を40kPa超のままにできることを示す。
【表10】
【表11】
【0086】
試験10-60%ひずみの圧縮永久ひずみに対するエージング温度/シリカ密度の影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。エアロゲルのシリカ密度は、0.065g/cc(Aero65)、0.075g/cc(Aero75)、0.085g/cc(Aero85)、または0.095g/cc(Aero95)のシリカ密度のいずれかであった。シリカ系エアロゲル複合材を、高温高圧エージング条件(HTHP)下110℃で作製した。エアロゲル複合材の幅は、2.5mmまたは5mmであった。応力無負荷時の厚さの60%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で24時間保持し、試料上で圧縮を解放し、即時に(即時)及び非圧縮状態で24時間した後に(24時間)標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。2.5mmの試料幅についての単回圧縮試験の結果を表12に示し、5mmの試料幅の結果を表13に示す。即時スプリングバックと最終圧縮永久ひずみとの両方が、シリカ密度の増加に伴い改善される(低下する)。
【表12】
【表13】
【0087】
試験11-80%ひずみの圧縮永久ひずみに対するエージング温度/シリカ密度の影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。エアロゲルのシリカ密度は、0.065g/cc(Aero65)、0.075g/cc(Aero75)、0.085g/cc(Aero85)、または0.095g/cc(Aero95)のシリカ密度のいずれかであった。シリカ系エアロゲル複合材を、高温高圧エージング条件(HTHP)下110℃で作製した。エアロゲル複合材の幅は、2.5mmまたは5mmであった。応力無負荷時の厚さの80%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で24時間保持し、試料上で圧縮を解放し、即時に(即時)及び非圧縮状態で24時間した後に(24時間)標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。2.5mmの試料幅についての単回圧縮試験の結果を表14に示す。5mmの試料幅を表15に示す。即時スプリングバックと最終圧縮永久ひずみとの両方が、シリカ密度の増加に伴い改善される(低下する)。
【表14】
【表15】
【0088】
試験12-アニーリング温度がHTHP試料の圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験及び繰り返し試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。シリカ系エアロゲル複合材を、高温高圧エージング条件(HTHP)下110℃で作製した。エアロゲル複合材の幅は、5mmであった。試料を、空気中、250℃、275℃、300℃、325℃、または350℃でアニーリングした。応力無負荷時の厚さの60%または80%の最大ひずみでエアロゲル標本を単回圧縮し、圧縮状態で20分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で24時間した後に標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。繰り返し試験のために、材料を2mm/分で50~60%の範囲のピークひずみまで繰り返しにかけ、そのひずみ目標で15分間保持し、下方ひずみ目標(50%ひずみ)まで負荷を解除し、このひずみで15分間保持した後、ピークひずみ条件に戻した。このサイクルを各材料に対して50回繰り返し、材料の回復%を24時間の回復期間後に報告した。60%ひずみ圧縮についての単回圧縮試験の結果を表16に示す。80%ひずみ圧縮についての単回圧縮試験の結果を表17に示す。繰り返し圧縮試験結果を表18に示す。漸増して厳しくなる機械的圧縮(80%、繰り返し試験)に対して回復力を維持するには、より高い熱処理温度が必要であることがわかった。
【表16】
【表17】
【表18】
【0089】
試験13-MTESゾル分子量が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、35%のSiC含有量、及び36%の疎水性含有量を有した。高分子量エアロゲル組成物(高MW)を、加水分解中の固形分の増加として、MTESゾルの分子量を増加させることにより作製した。MTESゾルの分子量は、標準的分子量配合よりも2倍~3倍の範囲で増加した。高MWエアロゲル組成物を、標準的分子量配合(標準)と比較した。シリカ系エアロゲル複合材を、高温高圧エージング条件(HTHP)下90℃で作製した。強化材料としてのFormosaバッティング(Formosa)またはCanyueバッティング(Canyue)上にエアロゲル複合材を形成した。Formosaエアロゲル複合材は、厚さが3.2mmであった。Canyueエアロゲル複合材は、厚さが2.5mmであった。試料を、空気中、250℃、300℃、または350℃でアニーリングした。応力無負荷時の厚さの60%の最大ひずみ(Formosa)または50%の最大ひずみ(Canyue)でエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で24時間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。Formosa試料の単回圧縮試験の結果を表19に示す。Canyue試料の単回圧縮試験の結果を表20に示す。MTES分子量の増加により、特にアニーリング後に、標準的MW配合よりも圧縮永久ひずみ挙動が改善される。
【表19】
【表20】
【0090】
試験14-強化エアロゲルの密度が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、疎水性含有量が36%であった。エアロゲルのシリカ密度は、0.045g/cc(Aero45R)、0.065g/cc(Aero65R)、または0.085g/cc(Aero85R)のシリカ密度のいずれかであった。湿潤ゲル形成中に、グアニジンを塩基として使用して、強化材料としてのメラミンフォーム上にエアロゲル複合材を形成した。メラミンエアロゲル複合材は、厚さが10mmであった。試料を、空気中250℃でアニーリングした。応力無負荷時の厚さの80%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で1分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。メラミンエアロゲル複合材の単回圧縮試験の結果を表21に示す。
【表21】
【0091】
試験15-強化エアロゲルの疎水性含有量が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、36%のMTES、50%のMTES、65%のMTES、80%のMTES、100%のMTES、または100%MTMSの疎水性含有量を有した。「100%のMTES」は、標準的配合と同様であるが、36%のMTESの代わりに100%を使用する。「100%のMTMS」は、通常のリン酸の代わりにシュウ酸による加水分解MTESであり、溶媒はエタノールではなくメタノールである。エアロゲル材料のシリカ密度は、0.065g/ccであった。湿潤ゲル形成中に、MTESにはグアニジンを塩基として使用し、MTMSにはアンモニアを塩基に使用して、強化材料としてのメラミンフォーム上にエアロゲル複合材を形成した。メラミンエアロゲル複合材は、厚さが10mmであった。試料を、空気中250℃でアニーリングした。応力無負荷時の厚さの80%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で1分間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。メラミンエアロゲル複合材の単回圧縮試験の結果を表22に示す。熱処理なしでは、36~80%のMTESの回復力は類似しており、100%のMTESまで改善されない。熱処理後、MTES%が増加するにつれて回復力が改善される傾向がある。MTES由来のエアロゲルは、これにより架橋密度が低くなるため、シリカよりも回復力が高い可能性がある。100%のMTESと100%のMTMSとは標準的配合と比較して同様のサイズの大きな孔を有するが、100%のMTMSは回復力がある一方、100%のMTESはそれほど回復力がないことが見出された。いずれの理論にも拘束されるものではないが、この回復力の差異は、おそらく、100%のMTMSでは架橋密度が低いことに起因する。100%のMTESの回復力は熱処理によって改善することができるが、それでも100%のMTMSほど低くはない。
【表22】
【0092】
試験16-ガラス繊維強化エアロゲルの疎水性含有量が圧縮永久ひずみに及ぼす影響
シリカ系エアロゲル複合材を、単回圧縮試験を使用して試験した。エアロゲル複合材は、36%のMTES、50%のMTES、65%のMTES、80%のMTES、100%のMTES、または100%MTMSの疎水性含有量を有した。「100%のMTES」は、標準的配合と同様であるが、36%のMTESの代わりに100%を使用する。「100%のMTMS」は、通常のリン酸の代わりにシュウ酸による加水分解MTESであり、溶媒はエタノールではなくメタノールである。エアロゲル材料のシリカ密度は、0.065g/ccであった。湿潤ゲル形成中に、MTESにはグアニジンを塩基として使用し、MTMSにはアンモニアを塩基に使用して、強化材料としてのガラス繊維上にエアロゲル複合材を形成した。メラミンエアロゲル複合材は、厚さが3mmであった。試料を、空気中350℃でアニーリングした。応力無負荷時の厚さの約56%の最大ひずみでエアロゲル標本を圧縮し、圧縮状態で24時間保持し、試料上で圧縮を解放し、非圧縮状態で標本の厚さにおける変化を測定することにより、試料を試験した。メラミンエアロゲル複合材の単回圧縮試験の結果を表23に示す。エアロゲル複合材の繰り返し圧縮も行った。繰り返し試験のために、材料を2mm/分で50~60%の範囲のひずみまで繰り返しにかけ、下方ひずみ目標(50%ひずみ)まで負荷を解除した後、ピークひずみ条件に戻した。このサイクルを各材料に対して35回繰り返し、材料の回復%を報告した。メラミンエアロゲル複合材の繰り返し圧縮試験の結果を表24に示す。試験15で見られたように、熱処理なしでは、36~80%のMTESの回復力は類似しており、100%のMTESまで大きくは改善されない。
【表23】
【表24】
【0093】
本特許では、ある特定の米国特許、米国特許出願、及び他の材料(例えば、物品)が参照により組み込まれている。しかしながら、そのような米国特許、米国特許出願、及び他の資料のテキストは、そのようなテキストと、本明細書に記載される他の記述及び図面との間に矛盾が存在しない限り、参照により組み込まれるにすぎない。そのような矛盾が生じた場合には、そのような参照により組み込まれる米国特許、米国特許出願、及び他の資料中のそのような矛盾するテキストは、具体的に、本特許に参照により組み込まれない。
【0094】
本発明の様々な態様の更なる修正及び代替的な実施形態は、本説明を考慮して、当業者には明らかとなる。したがって、この説明は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、本発明を実行する一般的な様式を当業者に教示することを目的とする。本明細書に示され、説明される本発明の形態は、実施形態の例とみなされるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書に例示され、説明されるものに置き換えてもよく、部品及び工程は逆転させてもよく、本発明のある特定の特徴は、独立して利用してもよく、これらは全て、本発明のこの説明の利益を得た後に当業者に明らかとなる。以下の特許請求の範囲に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更を加えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
本発明の様々な態様の更なる修正及び代替的な実施形態は、本説明を考慮して、当業者には明らかとなる。したがって、この説明は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、本発明を実行する一般的な様式を当業者に教示することを目的とする。本明細書に示され、説明される本発明の形態は、実施形態の例とみなされるべきであることを理解されたい。要素及び材料は、本明細書に例示され、説明されるものに置き換えてもよく、部品及び工程は逆転させてもよく、本発明のある特定の特徴は、独立して利用してもよく、これらは全て、本発明のこの説明の利益を得た後に当業者に明らかとなる。以下の特許請求の範囲に記載される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更を加えることができる。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[実施形態1]
(a)ASTM D3574-Test Dにより決定して圧縮永久ひずみが15%超である第1のエアロゲルを提供することと、
(b)前記第1のエアロゲルを、10%超の酸素を含む雰囲気下、約200℃~400℃の温度で加熱して、第2のエアロゲルを得ることと、を含み、
前記第1のエアロゲルは、得られた前記第2のエアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下になるように、前記第1のエアロゲルの前記圧縮永久ひずみを改変するのに十分な時間、加熱される、方法。
[実施形態2]
前記雰囲気が、約15%の酸素~約25%の酸素を含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記雰囲気が、空気である、実施形態1に記載の方法。
[実施形態4]
前記第1のエアロゲルが、約30秒以上の時間加熱される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態5]
前記第1のエアロゲルが、約30秒~約3時間の時間加熱される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態6]
前記第1のエアロゲルの加熱中に、前記温度が400℃未満の温度に制限される、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態7]
前記第1のエアロゲルが、シリカを含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態8]
前記第1のエアロゲルが、塩基を含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態9]
前記塩基が、アミン塩基である、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]
前記第1のエアロゲルが、少なくとも0.5%の前記塩基を含む、実施形態8または9に記載の方法。
[実施形態11]
前記第1のエアロゲルが、0.5%~約10%の前記塩基を含む、実施形態8または9に記載の方法。
[実施形態12]
前記第1のエアロゲル中の塩基の量が、前記第2のエアロゲル中の塩基の量よりも多い、実施形態8または9に記載の方法。
[実施形態13]
前記第1のエアロゲルが、強化材料を含むエアロゲル複合材である、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態14]
前記強化材料が、繊維強化材料である、実施形態13に記載の方法。
[実施形態15]
前記第1のエアロゲルが、不透明化添加剤を含むエアロゲル複合材である、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態16]
前記不透明化添加剤が、B C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag O、Bi 、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]
前記不透明化添加剤が、炭化ケイ素を含む、実施形態15に記載の方法。
[実施形態18]
湿潤ゲル材料を形成することと、
前記湿潤ゲル材料をエージング流体とともにエージング温度及びエージング圧力で加熱することにより、前記湿潤ゲル材料をエージングさせることであって、前記エージング温度が、前記エージング流体の標準沸点を上回り、容器の圧力が、加熱中に前記エージング流体の蒸気圧を上回って維持される、前記エージングさせることと、
前記エージング流体を加熱された前記湿潤ゲル材料から抽出して、前記第1のエアロゲルを形成することと、を含む工程によって前記第1のエアロゲルを生成することを更に含む、先行実施形態のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態19]
先行実施形態のいずれか1項に記載の方法によって生成される、エアロゲル。
[実施形態20]
多孔質フレームワークを含むエアロゲルであって、前記エアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下である、前記エアロゲル。
[実施形態21]
多孔質フレームワークが、シリカを含む、実施形態19に記載のエアロゲル。
[実施形態22]
前記エアロゲルが、シートの形態である、実施形態19に記載のエアロゲル。
[実施形態23]
前記エアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して10%以下である、実施形態19に記載のエアロゲル。
[実施形態24]
前記エアロゲルが、強化材料を含むエアロゲル複合材である、実施形態19に記載のエアロゲル。
[実施形態25]
前記強化材料が、繊維強化材料である、実施形態23に記載のエアロゲル組成物。
[実施形態26]
前記エアロゲルが、不透明化添加剤を含むエアロゲル複合材である、実施形態19に記載のエアロゲル組成物。
[実施形態27]
前記不透明化添加剤が、B C、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、Ag O、Bi 、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態25に記載のエアロゲル組成物。
[実施形態28]
前記不透明化添加剤が、炭化ケイ素を含む、実施形態25に記載のエアロゲル組成物。
[実施形態29]
電気貯蔵システムで使用するための絶縁バリアであって、実施形態19~27のいずれか1項に記載のエアロゲルを含む少なくとも1つの絶縁層を含む、前記絶縁バリア。
[実施形態30]
電池モジュールであって、
複数の電池セルと、
実施形態29に記載の1つ以上の絶縁バリアと、を備え、少なくとも1つの絶縁バリアが、隣接する電池セル間に配設される、前記電池モジュール。
[実施形態31]
実施形態29に記載の1つ以上の電池モジュールを備える、電力システム。
[実施形態32]
実施形態29に記載の電池モジュールを備える、デバイスまたは車両。
[実施形態33]
デバイスが、ラップトップコンピュータ、PDA、携帯電話、タグスキャナ、オーディオデバイス、ビデオデバイス、ディスプレイパネル、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デスクトップコンピュータ、軍用ポータブルコンピュータ、軍用電話、レーザー測距器、デジタル通信デバイス、情報収集センサ、電子的に統合された衣料、暗視装置、電動工具、電卓、ラジオ、遠隔操作電化製品、GPSデバイス、手持ち及び携帯型テレビ、車始動器、懐中電灯、音響デバイス、携帯型加熱器、携帯型掃除機、または携帯型医療器具である、実施形態31に記載のデバイス。
[実施形態34]
車両が電気車両である、実施形態31に記載の車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ASTM D3574-Test Dにより決定して圧縮永久ひずみが15%超である第1のエアロゲルを提供することと、
(b)前記第1のエアロゲルを、10%超の酸素を含む雰囲気下、約200℃~400℃の温度で加熱して、第2のエアロゲルを得ることと、を含み、
前記第1のエアロゲルは、得られた前記第2のエアロゲルの圧縮永久ひずみが、ASTM D3574-Test Dにより決定して15%以下になるように、前記第1のエアロゲルの前記圧縮永久ひずみを改変するのに十分な時間、加熱される、方法。
【請求項2】
前記雰囲気が、約15%の酸素~約25%の酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記雰囲気が、空気である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のエアロゲルが、約30秒以上の時間加熱される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のエアロゲルが、約30秒~約3時間の時間加熱される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のエアロゲルの加熱中に、前記温度が400℃未満の温度に制限される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエアロゲルが、シリカを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のエアロゲルが、塩基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基が、アミン塩基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のエアロゲルが、少なくとも0.5重量%の前記塩基を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のエアロゲルが、0.5重量%~約10重量%の前記塩基を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のエアロゲル中の塩基の量が、前記第2のエアロゲル中の塩基の量よりも多い、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のエアロゲルが、強化材料を含むエアロゲル複合材である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記強化材料が、繊維強化材料である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のエアロゲルが、不透明化添加剤を含むエアロゲル複合材である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項16】
前記不透明化添加剤が、BC、珪藻土、マンガンフェライト、MnO、NiO、SnO、AgO、Bi、TiC、WC、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄チタン、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄(I)、酸化鉄(III)、二酸化マンガン、酸化鉄チタン(イルメナイト)、酸化クロム、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不透明化添加剤が、炭化ケイ素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
湿潤ゲル材料を形成することと、
前記湿潤ゲル材料をエージング流体とともにエージング温度及びエージング圧力で加熱することにより、前記湿潤ゲル材料をエージングさせることであって、前記エージング温度が、前記エージング流体の標準沸点を上回り、容器の圧力が、加熱中に前記エージング流体の蒸気圧を上回って維持される、前記エージングさせることと、
前記エージング流体を加熱された前記湿潤ゲル材料から抽出して、前記第1のエアロゲルを形成することと、を含む工程によって前記第1のエアロゲルを生成することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【国際調査報告】