(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】改善された止血薬再構成方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 15/32 20060101AFI20241128BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241128BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241128BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61L15/32 300
A61L15/32 100
A61P7/04
A61K45/00
A61K9/16
A61K47/42
A61K47/02
A61K9/08
A61K38/48 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521170
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022079740
(87)【国際公開番号】W WO2023097148
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】デルモッテ, イヴ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA31
4C076BB12
4C076CC19
4C076DD23
4C076EE42
4C081AA04
4C081BC02
4C081CD18
4C081DA15
4C084AA02
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA44
4C084CA62
4C084MA05
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA53
(57)【要約】
本明細書には、止血材料、並びに止血材料の製造及び使用の方法が開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血材料を患者に投与するためのシステムであって、前記システムが、
少なくとも1種の基質材料及び少なくとも1種の止血剤が共充填された第1の注射器と、
希釈剤が充填された第2の注射器と
を備える、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1種の基質材料がゼラチンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ゼラチンが架橋ゼラチンを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記架橋ゼラチンがゼラチン顆粒を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1種の止血剤がトロンビンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記希釈剤が滅菌水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記希釈剤が生理食塩水を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記生理食塩水が0.9%(w/v)のNaClを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記基質材料が予備膨潤されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記基質材料及び前記止血剤を分離する膜をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記膜が、溶解性であるか、断片化しやすいか、又は脆い材料を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記溶解性であるか、断片化しやすいか、又は脆い材料がゼラチンを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
局所止血の確立における使用のためのキットであって、
少なくとも1種の基質材料及び少なくとも1種の止血剤が共充填された第1の注射器と、
希釈剤が充填された第2の注射器と
を備える、キット。
【請求項14】
前記少なくとも1種の基質材料がゼラチンを含む、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記ゼラチンが架橋ゼラチンを含む、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記架橋ゼラチンがゼラチン顆粒を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記少なくとも1種の止血剤がトロンビンを含む、請求項13に記載のキット。
【請求項18】
前記希釈剤が滅菌水を含む、請求項13に記載のキット。
【請求項19】
前記希釈剤が生理食塩水を含む、請求項13に記載のキット。
【請求項20】
前記生理食塩水が0.9%(w/v)のNaClを含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記基質材料が予備膨潤されている、請求項13に記載のキット。
【請求項22】
前記基質材料及び前記止血剤を分離する膜をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項23】
前記膜が、溶解性であるか、断片化しやすいか、又は脆い材料を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記溶解性であるか、断片化しやすいか、又は脆い材料がゼラチンを含む、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[001]本願は、2021年11月29日に出願された米国特許出願第63/283,781号に対する優先権を主張するものであり、その開示は、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[分野]
[002]本明細書は、止血材料の調製及び使用に関する。
【0003】
[背景]
[003]局所出血の制御は、創傷管理において、特に、例えば外傷性損傷又は手術の結果としての外傷の管理に極めて重要である。出血を制御する典型的な方法は、綿ガーゼパッドを含む「受動的」デバイスの使用を採用する。しかしながら、受動的デバイスは、凝血を開始又は加速しない。
【0004】
[004]受動的デバイスとは対照的に、止血薬は、例えばフィブリノゲン又はトロンビンなどの止血剤の使用を通じて止血を促進し、凝固カスケードに積極的に関与して、フィブリン血栓を形成する、「能動的」材料である。トロンビンは、凝血(凝固)において重要な役割を果たすセリンプロテアーゼである。重要な凝固プロテアーゼとして、トロンビンは、可溶性フィブリノゲンを、トランスグルタミナーゼ(FXIII)によって架橋されたフィブリンネットワークに変換する。さらに、トロンビンは、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)を刺激することによる血小板の最も強力な活性化物質である。トロンビンによる活性化後に、血小板は、GPIIb/IIIa受容体の構造を物理的に変更し、フィブリノゲンのための高親和性結合部位を形成し、フィブリノゲン架橋血小板集合をもたらす。
【0005】
[005]しかしながら、現在の止血薬が有効である一方で、止血薬の使用の準備をするには、訓練を受けた人材が、重要な数秒を調製プロセスにおいて費やす必要があり得る。したがって、改善された方法及びシステムが所望される。
【0006】
[概要]
[006]本開示は、止血材料のより迅速な再構成を可能にする新規のクラスの送達システム、デバイス、及び方法を提供する。例えば、フロシール(FLOSEAL)(商標)の調製は、顆粒ゼラチン基質をトロンビン溶液で再構成することを必要とする。このプロセスは、複雑ではないものの、時間がかかり、操作者は、最初にトロンビン溶液を調製し、次いで、トロンビン溶液をゼラチンマトリックスと混合する必要がある。対照的に、本開示は、このプロセスを単純化し、加速する、システム及びデバイスを提供する。例えば、開示されている実施形態は、トロンビンなどの止血剤とゼラチン顆粒などの基質担体材料とを、例えば注射器などの単一の容器で組み合わせる。
【0007】
[007]開示されているシステム及びデバイスは、例えば、止血剤のための水分なしの環境を維持することによって、止血材料の安定性の向上も提供する。
【0008】
[008]開示されている実施形態は、開示されている止血材料と、デバイスと、システムと、を備える、キットも含む。
【0009】
[009]開示されている実施形態は、使用の方法も含む。例えば、開示されているシステム、デバイス、及び方法は、外科手術、損傷、創傷などに関連する出血などを低減又は停止するために使用することができる。実施形態は、以下を含む、様々なカテゴリの出血の処置を含み得る:
[010]グレード1:軽度
a.例えば、肝被膜擦過傷。グレード1の出血は、ガーゼでの拭き取り後に1~2分後に滲み出る一般的な滲出液を表す。
【0010】
[011]グレード2:中程度
a.グレード2の出血は、拭き取り後に目に見えて滲み出て、通常、外科手術を妨げると考えられる。
【0011】
[012]グレード3:重度
a.例えば、後腰椎椎弓切除術中の静脈叢の破裂。グレード3の出血は、拭き取り直後に滲み出て、手術を続行するための処置を必要とする。
【0012】
[013]グレード4:致命的
a.例えば、腹部大動脈裂傷。グレード4の出血は、致命的なものであり、即座の外科的処置を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】トロンビン及びゼラチンが予備充填されている、開示されている注射器を示す。この実施形態では、2種の成分が空間的に分離されている。
【
図2】トロンビン及びゼラチンが予備充填されており、2種の成分がゼラチン膜によって物理的に分離されている、開示されている注射器を示す。
【
図3】トロンビンとゼラチンとの混合物が予備充填されている、開示されている注射器を示す。
【
図4】トロンビン粉末と膨潤したゼラチン粒子との混合物が予備充填されている、開示されている注射器を示す。
【
図5】トロンビンと膨潤したゼラチン粒子との泡が予備充填されている、開示されている注射器を示す。
【
図6】トロンビン及びゼラチンが予備充填されている、開示されている注射器を示す。この実施形態では、2種の成分が空間的に分離されている。
【
図7】トロンビン及びゼラチンが予備充填されている、開示されている注射器を示す。成分は、ゼラチン膜によって物理的に分離されている。
【
図8】トロンビンと膨潤したゼラチン粒子との混合物が予備充填されている、開示されている注射器を示す。
【
図9】適用デバイスと、希釈剤注射器と、アプリケータとを有する、開示されているキットの実施形態を示す。
【
図10】ゼラチン顆粒とトロンビンとを含む開示されている止血材料を再構成する、開示されている方法を示す。
【
図11】ゼラチンペレットによって囲まれているトロンビン錠剤又は凍結乾燥したトロンビンが予備充填されている、開示されている注射器を示す。
【
図12】ゼラチンペレットの第1の層及び凍結乾燥又は凍結したトロンビンの第2の層が予備充填されており、その後、ゼラチン及びトロンビンの層が交互になっている、開示されている注射器を示す。
【0014】
[詳細な説明]
[026]開示されている実施形態は、止血材料のより迅速な再構成を可能にする新規のクラスの送達システム、デバイス、及び方法を含む。開示されている実施形態は、止血剤、例えばトロンビン、及び基質材料、例えば、ゼラチン粒子、ペレット、又は顆粒を、注射器などの単一の容器で組み合わせる。開示されているシステムは、希釈剤、例えば生理食塩水又は水を含む注射器などの少なくとも1つの追加の容器を備え得る。
【0015】
[027]さらなる実施形態は、注射器の内部の基質材料粒子及び止血剤を物理的に分離するバリア又は膜を備える。開示されている膜又はバリアは、成分間の相互作用を防ぐことができ、そのため、止血剤は、成分を混合する前に、架橋ゼラチン粒子などの粒子に関連する水分によって影響を受けない。この物理的な分離は、特に、予備膨潤した基質粒子を含む実施形態において使用される場合に、典型的な止血剤が水分の存在下で経時的に分解し得るため、多大な利点をもたらし得る。
【0016】
[028]実施形態では、膜は、トロンビンなどの止血剤成分と架橋ゼラチン粒子などの基質粒子との間に効果的な水分バリアを形成する、生体適合性であるか、溶解性であるか、又は脆い任意のフィルムを含み得る。そのような水分バリアは、架橋ゼラチン粒子などの予備膨潤した粒子を含む実施形態において、特に有利であり得る。
【0017】
[029]実施形態では、膜は、注射器プランジャなどを介した機械的に(例えば、手動で)適用された液体の力において適切な分離特徴を有する材料を含み、そのため、膜バリアは、液体への曝露後に素早く分解する。
【0018】
[030]実施形態では、適切な膜又はバリア材料は、例えば、ゼラチン又はヒドロゲルを含み得る。適切なヒドロゲルは、再吸収性であってもよく、ゲル膜の性能を向上させるサイズ及び他の物理的性質を有する小さなサブユニットを含み得る。特に、サブユニットは、止血材料成分が閾値レベル超の応力にかけられる場合、例えば、注射器を通じて押出される場合、ヒドロゲルが流れるようにサイズ決めすることができる。閾値応力は、典型的には、3×104Pa~5×105Paの範囲である。実施形態では、膜は、閾値レベル未満の応力にかけられる場合、一般に不動であり得る。
【0019】
[031]開示されている実施形態は、泡も含み得る。泡は、急速に「湿潤可能」なプレマトリックス構造をもたらし、したがって、乾燥粉末混合物又は順次充填される注射器よりも素早く、送達可能な止血ペースト材料を形成する。
【0020】
[032]実施形態では、開示されているデバイスは、製剤の安定性、例えば、トロンビンの安定性の向上をもたらす。例えば、トロンビンなどの止血剤及びゼラチン顆粒などの基質材料を別々に充填することによって、トロンビンを乾燥状態で維持しながら、別個の成分が単一のデバイスにおいて非常に物理的に近接して配置される(したがって、保管及び輸送が単純化される)。実施形態では、分離は、空間的に(膜又はバリアなしで)達成され、その一方で、いくつかの実施形態では、分離は、膜又はバリアの使用を通じて維持される。
【0021】
[033]開示されている実施形態は、例えば注射器などの別個の容器に、希釈剤をさらに含み得る。実施形態では、希釈剤は、例えば生理食塩水又は水を含み得る。
【0022】
[034]開示されている実施形態は、例えばルアーロック、チュービングなどの複数の注射器を接続するための手段を備え得る。
【0023】
[035]定義:
[036]「投与」又は「投与すること」は、止血デバイス、材料、又は薬剤を対象に与える(すなわち、投与する)ステップを意味する。本明細書で開示されている材料は、いくつかの適切な経路を介して投与することができる。
【0024】
[037]「共充填」又は「共充填された」は、複数の成分が注射器などの入れ物又は容器に充填されることを意味する。共充填は、複数の成分を順次又は同時に充填することを包含し得る。共充填された材料は、入れ物に混合物を形成すること、又は膜若しくはバリアによって例えば空間的若しくは物理的に分離することができる。
【0025】
[038]「平衡膨潤」は、ポリマーペレット又は粒子材料を、水含有量が一定になるのに十分な時間、典型的には18~24時間にわたって湿潤剤に浸漬した後の、平衡時の膨潤率として定義される。平衡膨潤は、典型的には、ポリマーペレット又は粒子内の架橋の量によって決定される。
【0026】
[039]「止血剤」は、トロンビンなどの生物学的製剤、トラネキサム酸(TXA)などの小分子、フェラクリラムなどのポリマー、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)などのペプチド、ポリスルホン酸ポリマー、硫酸化イコデキストリン、硫酸化炭水化物、及びカオリンなどの無機材料を含む、出血中に血栓の成長を開始すること及び安定化させることができる薬剤を意味する。
【0027】
[040]「止血材料」は、患者への適用に適切な形態の止血剤を含む材料を意味する。
【0028】
[041]「患者」は、医療ケア又は獣医学的ケアを受けているヒト又は非ヒトを意味する。
【0029】
[042]「治療有効量」は、治療目標を達成するために必要な薬剤、材料、又は組成物のレベル、量、又は濃度を意味する。
【0030】
[043]「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、損傷した若しくは傷付いた組織の治癒によって、又は既存の若しくは知覚された疾患、障害若しくは状態の変更、変化、向上、改善、寛解、及び/若しくは美化などによって、症状、疾患、障害、又は状態を、緩和若しくは軽減(これは、いくらかの軽減、大幅な軽減、ほぼ完全な軽減、及び完全な軽減を含む)、解消、又は予防(一時的又は永続的)して、所望の治療的又は美容的結果を達成することを意味する。
【0031】
[044]本開示は、止血材料の保管及び投与のためのシステム及びデバイスを提供し、前記止血材料は、少なくとも1種の止血剤及び少なくとも1種の基質担体を含む。
【0032】
[045]止血材料
[046]開示されている止血材料は、少なくとも1種の止血剤及び少なくとも1種の粒子基質材料を含む。
【0033】
[047]止血剤
[048]開示されている止血材料は、例えば、トロンビン、トラネキサム酸(TXA)などの小分子、フェラクリラム、トロンビン受容体活性化ペプチド(TRAP)などのペプチド、ポリスルホン酸ポリマー、硫酸化イコデキストリン、硫酸化炭水化物、それらの類似体、及びカオリンなどの無機材料を含む、止血剤を少なくとも含む。実施形態では、止血剤は、天然由来又は組換え由来のものであり得る。実施形態では、複数の止血剤を用いることができる。
【0034】
[049]粒子基質
[050]開示されている止血材料は、粒子、ペレット、又は顆粒、例えば、少なくとも1種の生物学的又は非生物学的ポリマー、例えば、タンパク質、多糖類、及び合成ポリマーを含む架橋材料を含む顆粒などの担体基質を含む。
【0035】
[051]実施形態では、基質ポリマーは、生分解性である。生分解性ポリマーは、マトリックスが治療中に消費又は生分解されると、含有されている薬剤を放出する。ポリマーは、通常、周囲の組織と生体適合性であるサブユニットに分かれるように選択される。インビボでの生分解性ポリマーの持続性は、生分解性ポリマーの分子量及び架橋度に依存しており、分子量及び架橋度が高いほど、寿命がより長くなる。一般的な生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA、ポリラクチドとも呼ばれる)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAとPGAとのコポリマー、ポリアミド、及びポリアミドとポリエステルとのコポリマーを含む。
【0036】
[052]様々な実施形態において、基質材料は、組換えポリマーを含む。特に、組換えポリマーは、例えば、組換えヒトコラーゲンI型、組換えヒトコラーゲンIII型、又はそれらの組み合わせなどの組換えヒトコラーゲンであり得る。一実施形態では、基質材料は、組換えヒトコラーゲンIII型を含む。別の実施形態では、基質材料は、組換えヒトコラーゲンI型を含む。例えば、組換えヒトゼラチンは、組換えヒトコラーゲンIII型から誘導することができる。さらなる別の実施形態では、基質材料は、組換えヒトコラーゲンI型から誘導された組換えゼラチンを含む。さらなる実施形態では、基質材料は、コードしているポリヌクレオチドの発現によって直接生成された組換えゼラチンを含む。実施形態では、コラーゲンは、ウシ、ブタ、若しくはウマの組織などの動物組織から、又はヒト供給源から由来由来することができる。
【0037】
[053]開示されている実施形態で生体適合性基質材料として使用される多糖類は、例えば、セルロース、アルキルセルロース、メチルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルローススルフェート、カルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キチン、カルボキシメチルキチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アルギネート、アルギン酸、プロピレングリコールアルギネート、グリコーゲン、デキストラン、デキストランスルフェート、カードラン、ペクチン、プルラン、キサンタン、コンドロイチン、コンドロイチンスルフェート、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルキトサン、キトサン、ヘパラン、ヘパランスルフェート、デルマタンスルフェート、ケラタンスルフェート、カラギーナン、キトサン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、ポリ-N-グルコサミン、ポリマンヌロン酸、ポリグルクロン酸、ポリグルロン酸、前記多糖類の誘導体、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0038】
[054]本生体適合性基質材料はまた、合成ポリマーをベースとしていてもよい。合成吸収性ポリマーは、脂肪族ポリエステルポリマー、脂肪族ポリエステルコポリマー、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0039】
[055]実施形態では、ポリマーは、架橋及び水和されて、ヒドロゲルを形成することができる。例示的なポリマーは、ゼラチン、コラーゲン(例えば、可溶性コラーゲン)、アルブミン、フィブリノゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチン、ラミニン、カゼイン、並びにそれらの誘導体及び組み合わせから選択されるタンパク質を含む。或いは、ポリマーは、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸又はコンドロイチンスルフェート)、デンプン誘導体、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、キシラン、アガロース、アルギネート、キトサン、及びそれらの組み合わせなどの多糖類を含み得る。さらなる代替として、ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルポリマー、ポリラクチド-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、並びにそれらの誘導体及び組み合わせなどの非生物学的ヒドロゲル形成ポリマーを含み得る。
【0040】
[056]ポリマーの架橋は、任意の従来の手法で達成され得る。例えば、タンパク質の場合、架橋は、アルデヒド、過ヨウ素酸ナトリウム、エポキシ化合物などの適切な架橋剤を使用して達成され得る。或いは、架橋は、γ放射線又は電子ビーム放射線などの放射線への曝露によって誘発され得る。多糖類及び非生物学的ポリマーも、適切な架橋剤及び放射線を使用して架橋され得る。さらに、非生物学的ポリマーは、架橋ポリマー及びコポリマーとして合成され得る。例えば、一価不飽和モノマーと多価不飽和モノマーとの間の反応によって、制御された架橋度を有する合成ポリマーが生じ得る。典型的には、ポリマー分子は、20kD~200kDの範囲の分子量をそれぞれ有し、ネットワークにおいて別のポリマー分子との少なくとも1個の結合を有し、多くの場合、1~5個の結合を有し、架橋の実際のレベルは、以下に記載されている範囲で、生分解性及び「膨潤」の所望の速度を部分的にもたらすように選択される。分子架橋ゼラチンを生成するための例示的な方法は、以下の通りである。
【0041】
[057]ゼラチンが得られ、水性緩衝剤に入れられて、非架橋ヒドロゲル、典型的には、1%~70%w/w、通常3重量%~10重量%の固体含有量を有する非架橋ヒドロゲルを形成する。次いで、ゼラチンは、典型的には、グルタルアルデヒド(例えば、水性緩衝剤において0.01%~0.05%w/w、0℃~15℃で一晩)、過ヨウ素酸ナトリウム(例えば、0.05M、48時間にわたって0℃~15℃で保つ)、又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)(例えば、0.5%~1.5%w/w、室温で一晩)のいずれかに曝露することにとって、又は約0.3~3メガラドのガンマ放射線若しくは電子ビーム放射線に曝露することによって架橋される。
【0042】
[058]或いは、ゼラチン粒子は、アルコール、好ましくはメチルアルコール又はエチルアルコールに、w/wで1重量%~70重量%、通常3重量%~10重量%の固体含有量で懸濁してもよく、架橋剤、典型的にはグルタルアルデヒド(例えば、0.01%~0.1%w/w、室温で一晩)に曝露することによって架橋してもよい。アルデヒドの場合、pHは、約6~11、好ましくは7~10で保つべきである。グルタルアルデヒドで架橋する場合、架橋は、その後の還元によって、例えば水素化ホウ素ナトリウムでの処理によって安定化され得るシッフ塩基を介して形成される。架橋後に、得られた顆粒は、水で洗浄され、任意選択で、アルコールで濯がれ、乾燥させられ、所望の緩衝剤及びpHを有する水性媒体において、所望の水和度まで再懸濁され得る。次いで、得られたヒドロゲルは、本開示のアプリケータに充填され得る。或いは、ヒドロゲルは、架橋の前又は後に機械的に破壊され得る。実施形態では、ゲニピンを架橋剤として用いることができる。
【0043】
[059]ポリマーの架橋度は、押出性、周囲の生体液の吸着性、凝集性、空間を充填する能力、膨潤能力、及び組織部位に接着する能力を含む、ヒドロゲルの複数の機能的性質に影響を及ぼす。ポリマーヒドロゲル組成物の架橋度は、架橋剤の濃度を調整すること、架橋放射線への曝露を制御すること、一価不飽和モノマー及び多価不飽和モノマーの相対量を変化させること、反応条件を変えることなどによって制御され得る。典型的には、架橋度は、架橋剤の濃度を調整することによって制御される。
【0044】
[060]本開示の開示されているヒドロゲルは、典型的には、1重量%~70%w/wの範囲の固体含有量を有するだろう。任意選択で、組成物は、以下でより詳細に説明するように、少なくとも1種の可塑剤を含み得る。適切な可塑剤は、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセロールなどを含む。
【0045】
[061]本発明の架橋ポリマーの平衡膨潤は、その意図されている使用に応じて、400%~5000%、400%~3000%、400%~2000%の範囲であり得、通常400%~1300%の範囲であり得、好ましくは500%~1100%であり得る。そのような平衡膨潤は、架橋度を変えることによって制御することができ、架橋度はまた、架橋方法の種類、架橋剤の曝露の期間、架橋剤の濃度、架橋温度などの架橋条件を変えることによって達成される。
【0046】
[062]包装の前又は後に成分を滅菌するために、γ放射線などの放射線への曝露も行われ得る。組成物が放射線敏感性材料から構成されている場合、組成物を滅菌放射線の不所望な影響から保護する必要があるだろう。例えば、いくつかの場合で、フリーラジカル機構による材料の分解及び/又はさらなる過剰な架橋を抑制するために、アスコルビン酸などの安定剤を添加することが所望されるであろう。
【0047】
[063]実施形態では、X線、eビーム、及びベータ滅菌を使用することができる。
【0048】
[064]システム及びデバイス
[065]開示されている実施形態は、入れ物、例えば注射器を備える、システム及びデバイスを含む。開示されているシステムは、少なくとも1種の止血剤と、粒子、ペレット、又は顆粒を含む少なくとも1種の基質とを含む、少なくとも1つの注射器を備え得る。例えば、実施形態では、止血剤は、トロンビン、フィブリノゲン、凝血因子などを含み得る。
【0049】
[066]実施形態では、粒子、ペレット、又は顆粒は、止血性を含む材料を含み得る。
【0050】
[067]実施形態では、止血剤及び担体基質は、入れ物、例えば注射器に共充填される。例えば、実施形態では、止血剤及び担体基質は、注射器に順次充填されるか、又は注射器に同時に充填される。実施形態では、基質成分は、成分を充填する前に液体に曝露することによって「予備膨潤」させることができる。実施形態では、成分は、成分を充填する前に凍結させることができる。実施形態では、開示されている注射器は、ルアーロック、チュービングなどを含み得る。
【0051】
[068]
図1の実施形態を見ると、システムは、ゼラチン粒子、ペレット、又は顆粒を含む第1の層と、トロンビンなどの止血剤を含む第2の層とを含む、デバイスを備える。第1の層は、球形の又は不規則な形状を有するペレットを含む。トロンビン層は、凍結乾燥したトロンビン、粉末化されたトロンビン、又はトロンビン錠剤を含み得る。この実施形態では、2つの層は、膜によって分離されていない。デバイスは、注射器本体の先端のコネクタを通じて、又はピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じてのいずれかで充填することができる。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。
【0052】
[069]
図2の実施形態を見ると、システムは、ペレット又は粒子、例えばゼラチンペレット又は粒子を含む第1の層と、膜、例えばゼラチン又はヒドロゲル膜と、トロンビンなどの止血剤を含む第2の層とを含む、デバイスを備える。実施形態では、ペレット又は粒子は、球形の又は不規則な形状を含む。
【0053】
[070]止血剤(トロンビンなど)層は、例えば、凍結乾燥したトロンビン、粉末化されたトロンビン、又はトロンビン錠剤を含み得る。
【0054】
[071]この実施形態では、2つの層は、例えばゼラチンから構成されている、脆性であるか、断片化しやすいか、又は溶解性である膜などの膜によって物理的に分離されている。膜は、希釈剤が適用されて成分が混合されるまで、2つの層の物理的な分離を維持する。実施形態では、2つの層を分離する膜は、製剤の安定性の向上をもたらす。例えば、止血剤を粒子又はペレットから分離する膜は、止血剤を粒子又はペレット相からの水分移動から保護することができる。膜は、止血剤と注射器のストッパーとの相互作用を防ぐこともできる;典型的なストッパー材料は、長期間の保管の最中に止血剤を不活性化させ得る油又は処置を含み得る。
【0055】
[072]デバイスは、ピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じて充填することができる。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分がデバイスの内部に入ることを防ぐ。
【0056】
[073]
図3の実施形態を見ると、システムは、トロンビンと混合された、又はトロンビンでコーティングされた、又はトロンビンに吸着されたゼラチンペレットを含むデバイスを備える。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。トロンビンでコーティングされたゼラチンペレットを含む実施形態では、コーティングは、注射器内でゼラチン及びトロンビンの均一な分散を確実にすることができる。
【0057】
[074]
図4の実施形態を見ると、システムは、例えばゼラチンの水和された粒子又はペレットと止血剤(トロンビンなど)との混合物を含むデバイスを備える。混合物は、充填前に、例えば液体に曝露することによって、膨潤させること又は膨潤を解消することができる。例えば、実施形態では、予備膨潤した架橋ゼラチン粒子、ペレット、又は顆粒は、粒子の多孔度の増加を理由により迅速な再構成及びペースト形成を可能にし、また、粒子の周りでより効率的な液体流路を形成し、したがって、トロンビンの溶解を加速し、止血薬マトリックスにおけるトロンビンの分布を増加させる。膨潤した粒子は、粒子とのトロンビン結合をより迅速にするために、粒子の表面積の増加ももたらし、再構成プロセスをさらに加速する。
【0058】
[075]注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。デバイスは、保管のために凍結させ、次いで、使用のために解凍することができる。予備膨潤した粒子と止血剤とを含む開示されている実施形態は、例えば、解凍から4時間、6時間、8時間、10時間、又は12時間以内などの、計画された将来の使用、例えば、1日の計画された手術での使用に、又は大量の死傷者がいる状況の場合に特に適切であり得る。例えば、大量の死傷者が生じる可能性がある事件の通知があった際に、複数の凍結した実施形態を、後の使用のための調製において解凍することができる。粒子又はペレットを予備膨潤させることによって、適切な再構成に必要な希釈剤の体積も低減される。
【0059】
[076]実施形態では、予備膨潤度は、所望の使用に基づいて決定することができる。例えば、異なる平衡膨潤値を有する材料は、異なる用途において異なる性能を発揮する;ある特定の用途での出血の抑制は、700%~950%の範囲の膨潤を有する架橋ゼラチン材料で最も容易に達成することができる。他の用途の場合、500%~600%の範囲のより低い平衡膨潤値がより成功を収め得る。したがって、架橋及び平衡膨潤を制御する能力は、開示されている止血材料を様々な使用のために最適化することを可能にする。
【0060】
[077]
図5の実施形態を見ると、システムは、膨潤した架橋ゼラチンとトロンビンなどの止血剤との泡を含む、デバイスを備える。実施形態では、泡は、水又は生理食塩水などの液体を含有する湿潤泡を含み得るか、又はその後の再水和のためにスポンジに乾燥させられ得る。デバイスは、ピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じて充填することができる。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。実施形態では、デバイスは、保管のために凍結させることができる。使用において、泡は、例えば幅広い面積を処置するために、スプレーとして適用することができる。
【0061】
[078]
図6の実施形態を見ると、システムは、例えばゼラチン粒子又はペレットの第1の層と、トロンビンなどの凍結乾燥又は凍結した止血剤の第2の層とを含む、デバイスを備える。第1の層は、球形の又は不規則な形状を有するペレットを含む。2つの層は、膜又はバリアで物理的に分離されていない。デバイスは、注射器本体の先端のコネクタを通じて、又はピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じてのいずれかで充填することができる。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。
【0062】
[079]
図7の実施形態を見ると、システムは、ゼラチン粒子又はペレットの第1の層と、トロンビンなどの凍結した止血剤の第2の層とを含む、デバイスを備える。第1の層は、球形の又は不規則な形状を有するペレットを含む。2つの層は、膜、例えばゼラチン膜で分離されている。デバイスは、ピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じて充填することができる。実施形態では、止血剤層を注射器内で凍結させ、次いで、基質粒子又はペレットを添加し、次いで、デバイスを再凍結させる。
【0063】
[080]注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。
【0064】
[081]
図8の実施形態を見ると、システムは、混合され、次いで凍結乾燥させられた、膨潤したゼラチンとトロンビンとの泡を含む、デバイスを備える。泡は、急速に「湿潤可能」なプレマトリックス構造をもたらし、したがって、乾燥粉末混合物又は順次充填される注射器よりも素早く、送達可能な止血ペースト材料を形成する。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。
【0065】
[082]
図11の実施形態を見ると、システムは、ゼラチンペレット又は顆粒によって囲まれている止血剤(トロンビンなど)錠剤又はシリンダを含む、デバイスを備える。トロンビンは、凍結乾燥したトロンビンを含み得る。止血剤シリンダは、希釈剤に対して増加した表面積を表し、したがって、再構成プロセスを加速する。
【0066】
[083]デバイスは、ピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じて充填することができる。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。別個のトロンビン錠剤又はシリンダの使用は、より単純な製造プロセスの使用を可能にし得る。
【0067】
[084]
図12の実施形態を見ると、システムは、ペレット又は粒子(ゼラチンペレット又は粒子など)の第1の層と、凍結乾燥又は凍結した止血剤(トロンビンなど)の第2の層とを含み、その後、ゼラチン及びトロンビンの層が交互になっている、デバイスを備える。ゼラチン層は、球形の又は不規則な形状を有するペレットを含む。2つの層は、膜で分離されていない。デバイスは、注射器本体の先端のコネクタを通じて、又はピストン及びプランジャの挿入前に注射器本体の大きな開口部を通じてのいずれかで充填することができる。注射器本体の先端のコネクタに被せたキャップは、水分をデバイスの内部から防ぐ。複数の別個のトロンビン錠剤の使用は、より単純な製造プロセスの使用を可能にすることができる。さらに、トロンビンのより薄い層は、トロンビンの急速な溶解、また、製剤のより容易な混合をもたらすことができる。
【0068】
[085]市販品/キット
[086]本止血材料は、当分野で実施される通常のステップ、例えば、適切な滅菌及び包装ステップによって、市販品として仕上げることができる。本開示による止血材料は、最終的に、使用まで無菌性を保持するように滅菌包装し、適切な容器(箱など)に(例えば、特定の製品情報リーフレットを追加することによって)包装することができる。
【0069】
[087]さらなる実施形態によると、止血材料は、患者への材料の投与に必要な他の成分と組み合わされたキット形態で提供することもできる。緩衝剤成分、例えば、ホスフェート、カーボネート、TRISなど、二価金属イオン、好ましくはCa2+イオン、又は他の機能成分(基質上又は基質内にまだ存在していない場合)、例えば、抗菌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、アプロチニン若しくはECEAなどの抗線維素溶解剤、成長因子、ビタミン、細胞など。キットは、注射器、チューブ、カテーテル、鉗子、はさみ、滅菌パッド、又はローションなどの止血材料を投与する手段又はその投与を準備する手段をさらに含み得る。
【0070】
[088]手術における、並びに/又は傷害及び/若しくは創傷の処置における使用のためなどの、開示されているキットは、開示されている止血材料と、少なくとも1つの投与デバイス、例えば、緩衝剤、注射器、チューブ、カテーテル、鉗子、はさみ、ガーゼ、滅菌パッド、又はローションとを備え得る。
【0071】
[089]実施形態では、緩衝剤溶液は、抗菌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗線維素溶解剤、特にアプロチニン若しくはECEA、成長因子、ビタミン、細胞、又はそれらの混合物をさらに含む。或いは、キットは、抗菌剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗線維素溶解剤、特にアプロチニン若しくはECEA、成長因子、ビタミン、細胞、又はそれらの混合物もさらに含み得る。
【0072】
[090]キットは、処置することが意図されている特定の欠陥に基づいて、様々な形態で設計されている。例えば、
図9は、適用デバイスと、希釈剤注射器と、アプリケータとを含む二重熱成形ブリスターを備える、例示的なキットを示す。追加の成分、例えば、カニューレ又は乾燥材を追加してもよい。
【0073】
[091]
使用の方法
[092]開示されている実施形態の使用の方法は、基質、例えば架橋ゼラチン顆粒を、止血剤、例えばトロンビンを含有する溶液で再構成し、続いて、出血を軽減することが所望されている部位に適用することを含み得る。例えば、
図10は、止血材料を再構成する例示的な方法を示し、希釈剤注射器は、基質/止血剤注射器に接続されており、内容物は、一方の注射器から他方の注射器に繰り返し「高速移動(swooshed)」させられる。
【0074】
[093]開示されている使用の方法は、損傷又は外科手術の部位などの、出血を軽減することが所望されている部位に、開示されている実施形態を適用することを含む。これらの方法は、以下の実施例においてさらに説明される。
【0075】
[実施例]
[094]以下の非限定的な実施例は、代表的な実施形態のより完全な理解を容易にするために、説明目的でのみ記載される。この実施例は、本明細書に記載されている実施形態のいずれかを限定するものと解釈されるべきではない。
【0076】
実施例1
共充填された注射器の製造
[095]第1の注射器を0.9%のNaClの希釈剤で充填する。
【0077】
[096]最初に、大きな開口部を通じて、第2の注射器を乾燥した架橋ゼラチン顆粒で充填する。次に、大きな開口部を通じて、第2の注射器を凍結乾燥したトロンビンで充填する。
【0078】
実施例2
共充填された注射器の製造
[097]第1の注射器を水の希釈剤で充填する。
【0079】
[098]大きな開口部を通じて、第2の注射器を乾燥した架橋ゼラチン顆粒及び凍結乾燥したトロンビンで同時に充填する。
【0080】
実施例3
止血材料の調製
[099]0.9%のNaCl(w/v)の希釈剤を含有する第1の注射器を、予備膨潤した架橋ゼラチン顆粒の層と凍結乾燥したトロンビンの層とを含む第2の注射器に「ドッキング」する。2種の成分は、ゼラチン膜によって分離されている。希釈剤を第1の注射器から第2の注射器に注入し、次いで、第2の注射器の内容物を第1の注射器に注入して戻す。これを数回繰り返して、ゼラチン顆粒を水和させ、トロンビンを再構成する。
【0081】
[0100]次いで、止血材料は、使用の準備が整う。
【0082】
実施例4
損傷の処置
[0101]自動車事故の被害者が、腹部に外傷性損傷を負っている。血液損失を止めるために、開示されている止血材料送達デバイスを使用して、開示されている止血材料を損傷部位に適用する。血液損失は、数分以内に低減される。
【0083】
実施例5
外科的切開の処置
[0102]血液損失を止めるために、開示されている止血材料送達デバイスを使用して、開示されている止血材料を外科的切開の部位に適用する。血液損失は、数分以内に低減され、止血材料は、殺菌効果ももたらす。
【0084】
[0103]最後となるが、本明細書の態様は、特定の実施形態を参照することによって強調されているが、当業者であれば、これらの開示されている実施形態が、本明細書で開示されている主題の原理を単に例示するだけであることが容易に分かると理解されるべきである。したがって、開示されている主題は、本明細書に記載されている特定の方法論、手順、及び/又は試薬などに決して限定されないと理解されるべきである。よって、本明細書の趣旨から逸脱することなく、本明細書の教示に従って、開示されている主題に対する様々な修正若しくは変更又はその代替的な設定を行うことができる。最後に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としており、請求項のみによって定義される本開示の範囲を限定することを意図してはいない。したがって、本開示の実施形態は、正確に図示及び説明されているものに限定されてはいない。
【0085】
[0104]本明細書には、本明細書に記載されている方法及びデバイスを実行するための発明者に既知の最良のモードを含むある特定の実施形態が記載されている。当然のことながら、これらの記載されている実施形態の変形は、前述の説明を読むことで当業者に明らかとなるであろう。したがって、この開示は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付されている請求項に列挙されている主題の全ての修正及び均等物を含む。さらに、本明細書において特に示されていない限り、又は文脈で明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上記の実施形態の任意の組み合わせがこの開示に包含されている。
【0086】
[0105]本開示の代替的な実施形態、要素、又はステップのグループ化は、限定として解釈されるべきではない。グループ構成要素はそれぞれ、個別に参照及び特許請求しても、又は本明細書で開示されている他のグループ構成要素との任意の組み合わせで参照及び特許請求してもよい。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1つ以上の構成要素が、グループに含まれ得ること、又はグループから削除され得ることが予想される。そのような包含又は削除が生じている場合、明細書は、修正されているようにグループを含むと考慮され、したがって、添付されている請求項で使用される全てのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0087】
[0106]特に示されていない限り、本明細書及び請求項で使用される特徴、項目、数量、パラメータ、性質、用語などを表す全ての数は、全ての事例において、「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、そのように条件付けられた特徴、項目、数量、パラメータ、性質、又は用語が、言及されている特徴、項目、数量、パラメータ、性質、又は用語の値のプラス又はマイナス10パーセント前後の範囲を包含することを意味する。したがって、特に反対のことが示されていない限り、本明細書及び添付されている請求項に記載されている数的パラメータは、変動し得る近似値である。最低限、請求項の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、数的表示はそれぞれ、報告されている有効数字の数の観点で、及び通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。広範囲の開示を記載している数的範囲及び値が近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載されている数的範囲及び値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数的範囲又は値も、それらの各々の試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本来的に含む。本明細書の値の数的範囲の列挙は、範囲内に入る別個の数的値それぞれを個々に言及する簡略な方法としての機能を果たすことを単に意図している。本明細書において特に示されていない限り、数的範囲の個々の値はそれぞれ、本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0088】
[0107]この開示を説明する文脈(特に以下の請求項の文脈)で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語、及び同様の指示語は、本明細書で特に示されていない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で特に示されていない限り、又はそうでなければ、文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に記載されている任意及び全ての例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、この開示をより良好に説明することを単に意図しており、別途特許請求される範囲を限定してはいない。本明細書のいかなる文言も、本明細書で開示されている実施形態の実践に必須である任意の特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0089】
[0108]本明細書で開示されている特定の実施形態は、からなる又はから本質的になるという文言を使用して請求項においてさらに限定される場合がある。請求項で使用される場合、出願時でも、又は補正での追加時でも、「からなる」という移行用語は、請求項で指定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分も除外する。「から本質的になる」という移行用語は、請求項の範囲を、指定された材料又はステップ、及び基本的な新規の特徴(複数可)に実質的に影響を与えないものに限定する。このようにして特許請求された本開示の実施形態は、本明細書において本来的に又は明示的に説明され、可能になる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
[005]しかしながら、現在の止血薬が有効である一方で、止血薬の使用の準備をするには、訓練を受けた人材が、重要な数秒を調製プロセスにおいて費やす必要があり得る。これまで市販されていた活性止血剤製品は、トロンビンを再構成することと、再構成したトロンビンを注射器に入れることと、その後、再構成したトロンビンを、十分に混合されたペーストが形成されるまで注射器の内容物を前後に高速移動させることによって、第2の注射器に供給した架橋ゼラチン粒子と入念に混合することとを含む、投与のための流動性止血ペーストを調製するための複数ステップのプロセスを使用していた。活性止血剤の手術台までの時間を改善する取り組みによって、改善がもたらされた。これまでの取り組みは、架橋ゼラチン粒子及びトロンビンを同じ注射器で提供することを含んでいた。トロンビンは、乾燥粉末として凍結乾燥させた。トロンビンは、水又は水分が存在すると急速に分解する敏感なタンパク質である。架橋ゼラチン粒子の残留水分によって、保管で分解する問題が発生した。欧州特許第2575775号では、乾燥ゼラチン及び乾燥トロンビンが、乾燥形態で注射器に添加される。ペーストに混合する準備が整った1つの注射器の充填された乾燥粉末混合物及び第2の希釈剤注射器を含む、キットが記載されている。欧州特許第2575770号では、乾燥ゼラチン粒子が、非常に薄い乾燥トロンビンコーティングを、混合された形態で注射器に施されている。表面コーティングされたゼラチン粒子を有する第1の注射器と、適切な希釈剤を含む第2の注射器とを含む、キットが記載されている。欧州特許第2771027号では、架橋ゼラチン粒子及び押出促進剤を含むペーストが、第1の注射器に設けられており、この第1の注射器は、トロンビンを含む第2の希釈剤注射器と一緒にキットに入れられている。さらにより改善された止血剤製品、方法、及びシステムが所望されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の基質材料及び少なくとも1種の止血剤が共充填された第1の注射器と、希釈剤を含む第2の注射器とを含むタイプの、患者に止血材料を投与するためのキットにおいて、
前記第1の注射器において前記少なくとも1種の基質材料を前記少なくとも1種の止血剤から分離して備え、前記基質材料は予備膨潤した架橋ゼラチン顆粒を含み、前記第1の注射器において少なくとも1種の基質材料それぞれと少なくとも1種の止血材料それぞれとの間に少なくとも1つの水分バリア膜が配置されている、キット。
【請求項2】
前記予備膨潤した架橋ゼラチン顆粒が、500%~600%の平衡膨潤を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記予備膨潤した架橋ゼラチン顆粒が、700%~950%の平衡膨潤を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記少なくとも1種の止血剤がトロンビンを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記希釈剤が滅菌水を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
前記希釈剤が生理食塩水を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記生理食塩水が0.9%(w/v)のNaClを含む、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
前記膜が、溶解性であるか、断片化しやすいか、又は脆い材料を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
前記溶解性であるか、断片化しやすいか、又は脆い材料がゼラチンを含む、請求項1に記載のキット。
【国際調査報告】