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  • 特表-ガス処理用三級アルカノールアミン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガス処理用三級アルカノールアミン
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241128BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 53/48 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 53/52 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 53/54 20060101ALI20241128BHJP
   C10K 1/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/78 ZAB
B01D53/62
B01D53/48
B01D53/50 220
B01D53/52 220
B01D53/54
B01D53/48 100
C10K1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024522478
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022049883
(87)【国際公開番号】W WO2023091384
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/279,817
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドゥードル、ジョン アール.
(72)【発明者】
【氏名】クバディア、ズービン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ、ガガン
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ、クリストフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラザー、シモーネ ティ.
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4H060
【Fターム(参考)】
4D002AA01
4D002AA02
4D002AA03
4D002AA04
4D002AA06
4D002AA09
4D002AB01
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA32
4D002DA70
4D002EA07
4D002EA08
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB08
4D002GB11
4D002GB20
4D002HA08
4D020AA03
4D020AA04
4D020AA06
4D020AA08
4D020AA10
4D020BA08
4D020BA10
4D020BA16
4D020BA19
4D020BA30
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC02
4D020CB08
4D020CC09
4D020DA01
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB06
4D020DB07
4D020DB20
4H060AA01
4H060BB23
4H060DD11
4H060EE01
4H060EE03
4H060FF04
(57)【要約】
酸ガスを含む工業ガス流を処理するための方法であって、工業ガス流を気液吸収器内で水性液体吸収媒体と接触させることを含む。水性液体吸収媒体は、少なくとも、水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の一般式(I)を有する三級アルカノールアミンと、10重量%~90重量%の量の水とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸ガスを含む工業ガス流を処理するための方法であって、
前記工業ガス流を気液吸収器内で水性液体吸収媒体と接触させることを含み、
前記水性液体吸収媒体は、少なくとも
(a)前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の一般式(I)を有する三級アルカノールアミンであって、
【化1】

式中、Rは、C~Cアルキルであり、Rは、H又はC~Cアルキルであり、nは、1~3の整数である、三級アルカノールアミンと、
(b)前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の水と、を含む、方法。
【請求項2】
前記工業ガス流が、合成ガス、煙道ガス、又はバイオガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性液体吸収媒体が、前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて0.1重量%~3.0重量%の量の酸を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性液体吸収媒体が、前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて0.1重量%~3.0重量%の量のリン酸を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
がCアルキルであり、RがHであり、nが1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性液体吸収媒体が、55℃~80℃の高温である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工業ガス流が、合成ガス、煙道ガス、又はバイオガスからなり、
前記水性液体吸収媒体が、前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて、30重量%~75重量%の前記三級アルカノールアミン、0.1重量%~3.0重量%のリン酸、及び20重量%~65重量%の水から本質的になり、
がCアルキルであり、RがHであり、nが1である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工業ガス流と前記水性液体吸収媒体とを前記気液吸収器内で接触させることによって酸ガスを多く含む水性吸収媒体を形成することと、
前記酸ガスを多く含む水性吸収媒体から酸ガスを少なくとも部分的に除去して、酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を形成することと、
前記工業ガス流から酸ガスを更に除去するために、前記酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を再生することと、を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、少なくとも三級アルカノールアミンを含む、工業ガス流から酸ガスを除去するための水性吸収媒体と、少なくとも三級アルカノールアミンを提供することを含む、工業ガス流から酸ガスを除去するためのプロセスとに関する。
【0002】
序論
工業ガス流は、硫化水素、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素、シアン化水素、硫化カルボニル、及び/又はメルカプタンなどの酸ガスを不純物として含有する場合がある。工業ガスは、本質的にガス状態であり、したがって、液化石油ガス(LPG)、天然ガス液(NGL)、液体凝縮物、又は原油などの液化炭化水素を含まない。例示的な工業ガスとしては、炭化水素ガス、合成ガス、煙道ガス、及びバイオガスが挙げられる。
【0003】
炭化水素ガスとしては、生産された天然ガス、製油所ガス、及び石油化学プロセスガスが挙げられ得る。酸ガス除去の処理前に、ガス状炭化水素流を凝縮物及び水除去のために処理してもよい。
【0004】
合成ガス(シンガスとも呼ばれる)は、主に水素及び一酸化炭素からなり、一般に、天然ガス、石炭、又はバイオマスなどの炭素系原料から製造される。合成ガスの製造方法としては、ガス化(又は部分酸化)、水蒸気改質、及びオーソサーマル(authothermal)改質が挙げられる。合成ガスは、典型的には水性ガスシフト反応器に供給されてシフト合成ガスを生成するが、一酸化炭素は、水と反応して二酸化炭素及び水素を形成する。例示的なプロセスでは、シフト合成ガスは、酸ガスを除去するために水性吸収媒体と接触され得る。
【0005】
煙道ガスは、燃焼排ガスであり、典型的には石炭又は天然ガス火力発電所から排出されるものであるが、炭化水素分解ユニット、流動接触分解ユニット、又は蒸気発生用ボイラも含まれ得る。例示的なプロセスでは、煙道を出た後及び/又はその後の冷却後に、煙道ガスは、酸ガスを除去するために水性吸収媒体と接触され得る。
【0006】
バイオガスは、メタンと、二酸化炭素と、有機物の嫌気性消化によって生成される比較的少量の他のガスとの混合物である。バイオガスは、バイオダイジェスタ、埋立地ガス回収システム、又は廃水処理施設から生成され得る。嫌気性消化後、バイオガスは、酸ガスを除去するために水性吸収媒体と接触され得る。
【0007】
アミン系水性吸収媒体は、工業ガス流から酸ガスを除去するために使用することができる。しかしながら、運用コストを最小にし、酸ガス除去を最大にしようとする試みの両方において、ガス流から酸ガスを除去するための改善されたアミン系水性吸収媒体が求められている。
【発明の概要】
【0008】
実施形態は、酸ガスを含む工業ガス流を処理するための方法を提供することによって実現することができる。この方法は、工業ガス流を気液吸収器内で水性液体吸収媒体と接触させることを含む。水性液体吸収媒体は、少なくとも、水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の一般式(I)を有する三級アルカノールアミンであって、
【0009】
【化1】

式中、RがC~Cアルキルであり、RがH又はC~Cアルキルであり、nが1~3の整数である、三級アルカノールアミンと、
水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の水とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
実施形態の特色は、添付の図面を参照しながら、その例示的な実施形態を詳細に説明することによって、当業者にはより明らかになるであろう。
図1】例示的なプロセス図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
三級及び高度立体障害アミンは、ある種のガス処理用途に利点を提供する。求められるのは、三級アミンを含み、揮発性によるアミン損失を最小化しながらHSなどの酸ガスの除去を目的とする水性液体吸収媒体である。アミンの揮発損失は、アミンの種類、アミン濃度、及び/又は出口蒸気流の温度若しくは圧力に依存し得る。例えば、三級アミンのN-メチルジエタノールアミン(MDEA)は、低圧で及び/又は高い接触器塔頂温度で動作するシステムにおいて著しい蒸発損失をもたらすことがある。例えば、54℃(130°F)の吸収器頂部温度及び20psiaの圧力で50重量%のMDEA/50重量%の水を含む液体吸収媒体の場合、アミン損失は、最大4.5lb/MMSCF(8×10-5kg/Nm)になるなど望ましくないほど高いことがある。
【0012】
対照的に、一般式(I)を有する三級アミンであって、
【0013】
【化2】

式中、RがC~Cアルキルであり、RがH又はC~Cアルキルであり、nが1~3の整数である三級アミンは、ガス処理用途に見られる低圧及び/又は高温であってもアミン損失を最小化しながら酸ガスを除去するための工業ガス流処理での使用に特によく適していると考えられる。このような工業ガス流としては、炭化水素ガス、合成ガス、煙道ガス、又はバイオガスが挙げられ得る(例えば、これらから本質的になり得る)。工業ガス流は、本質的にガス状態である。例示的な実施形態によれば、一般式(I)に関して、RはCアルキルであってもよい。RはHであってもよく、nは1であってもよい。
【0014】
液化炭化水素を三級アミンの吸収水溶液で処理することが提案されており(米国特許第9,732,298号参照)、
【0015】
【化3】

式中、Rはプロパン-2,3-ジオールであり、Rは、水素、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、又はプロパン-2,3-ジオールであり、Rは、水素、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、又はプロパン-2,3-ジオールである。しかしながら、工業ガス流を気液分離プロセスで処理することは、液化炭化水素流を液液分離プロセスで処理することとは異なる考慮事項を有する。例えば、低揮発性(すなわち、低蒸気圧)を有するアミンは、蒸発による溶媒損失が減少するため気液分離に有益であるが、液液分離は、炭化水素溶解性による損失が低い(すなわち、高親水性を有する)アミンから恩恵を受ける。液液分離に有用な低炭化水素溶解性を有するアミン溶媒は、気液分離に望ましい低揮発性を必ずしも有していなくてもよく、逆もまた同様であることに留意することが重要である。この挙動は、低炭化水素溶解性及び/又は低蒸気圧のいずれかを支配する化合物の化学構造、例えば、分子量、アミンの全体的極性、及びその前述の媒体との結合相互作用の強さの違いによるものである。
【0016】
更に、驚くべきことに、本明細書に記載の一般式(I)の三級アミンは、工業ガス流の処理に特によく適していることが見出されている。多くの商業的用途では、高温及び低圧などの高い損失をもたらす動作条件は、ガス処理では回避することができず、液体処理ではあまり問題にならない。更に、ガス処理の場合、水洗浄などの損失軽減プロセスは、関連する資本コストの増加及び操作の複雑さのために望ましくない。このような状況では、低揮発性を有することが知られている三級アミンを選択することが望ましい。特に、MDEAの揮発性よりも低い揮発性を有する三級アミンが改善になることが見出されている。アミンの揮発性の指標は標準沸点であってもよく、特に標準沸点が高いほどアミンの揮発性が低いことが見出されている。
【0017】
以下の表1を参照すると、本明細書に記載の一般式(I)による三級アミンは、MDEAと比較して高い沸点を有するが、TEAと比較して高いpKaを有することが示されており、MDEA及びTEAは共にガス処理用の三級アミンとして使用されることが知られている。
【0018】
【表1】
【0019】
特に、上記の表1を参照すると、MDEAの標準沸点が247℃(477°F)であることが示されている。一方、一般式(I)による三級アミンは、277℃(530°F)超及び/又は290℃(554°F)超などのはるかに高い標準沸点を有する。更に、TEAの標準沸点は316℃(600°F)を超えているが、TEAは、pKaがわずか7.77であり、高い酸ガス搬送能力を維持するには塩基性が不十分であるという重大な欠点を有する。一方、一般式(II)による三級アミンは、十分なpKa(例えば、8~9及び/又は8.40~8.70の範囲内)を有する。
【0020】
また、分子量の増加は揮発性を低下させ得るが、ガス処理用途において酸ガスに対する高い能力を維持するために、実際の用途では比較的低い分子量を維持することが依然として望ましい。したがって、ガス処理用には、200kg/kmol以下の分子量を有する三級アミンが望ましい。
【0021】
例示的な実施形態によれば、ガス処理用の三級アルカノールアミンは、247℃(477°F)超及び/又は260℃(500°F)超の標準沸点、180kg/kmol未満の重量分子量、及びpKa≧8.0を有する。
【0022】
水性液体吸収媒体は、少なくとも10重量%~90重量%(例えば、20重量%~80重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~55重量%など)の一般式(I)を有する三級アルカノールアミンを含み得る。水性液体吸収媒体はまた、10重量%~90重量%(例えば、20重量%~80重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60重量%、45重量%~55重量%など)の水を含み得る。
【0023】
水性液体吸収媒体は、例えば、付加物を低減するように溶媒を再生してプロセスの潜在能を高めるのに役立つように、酸を更に含んでもよい。例示的な酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、亜硫酸、ホウ酸、ホスホン酸などが挙げられる。酸は、水性液体吸収媒体の総重量に基づいて0.1重量%~3.0重量%の量で存在してもよい。例えば、水性液体吸収媒体は、水性液体吸収媒体の総重量に基づいて0.1重量%~3.0重量%(例えば、0.1重量%~2.0重量%、0.1重量%~1.5重量%、0.1重量%~1.1重量%など)の量のリン酸を更に含む。
【0024】
水性液体吸収媒体は、反応速度、ひいては二酸化炭素などの酸ガスのガス流からの除去を加速させるのに役立ち得る十分な量の少なくとも1つの活性剤を更に含み得る。したがって、比較的低濃度で二酸化炭素などの酸ガスの効率的な除去を可能にする活性剤が求められている。
【0025】
工業ガス流からの酸ガスの除去は、気液吸収装置(液体吸収剤を使用する圧力スイング吸収(Pressure Swing Absorption、PSA)及び温度スイング吸収(Temperature Swing Absorption、TSA)など)で行うことができる。工業ガス流を接触させるための動作温度は、50℃~300℃であってもよい。更に、ガス処理中の水性液体吸収媒体自体は、55℃~80℃の高温であってもよい。
【0026】
揮発性によるアミンの損失は、気液分離プロセスにおける懸念事項である。揮発性は、水性吸収媒体の成分が、一般的に使用される三級アルカノールアミンと比較して相対的に低い沸点を有する場合に、特に問題になり得る。したがって、一般式(I)の三級アルカノールアミンを含む水性吸収媒体については、両方が比較的高い沸点(例えば、少なくとも280℃の同様の沸点)を有することが有用であり得ることが見出されている。低沸点はガス処理用途における高い揮発性を意味するが、水性吸収媒体自体における高い溶解性を必ずしも意味するものではないことに留意されたい。換言すれば、揮発性と溶解性とは異なる原理であり、この場合、懸念事項は揮発性である。この点に関して、高い揮発性を有するアミンは、ガス流の酸ガス処理にとって非実用的であり、コストがかかる傾向がある。
【0027】
酸ガスを除去するためのプロセスでは、水性吸収媒体と酸性ガスを含むガス状混合物とを吸収塔内で低温及び高圧で向流的に接触させてもよい。環状吸着プロセスは、高速の気液交換、吸収工程と再生工程との間の大量の液体インベントリの移動、及びアミン溶液の再生のための高エネルギー要件を使用することができる。このようなプロセスは、サイクルの吸収部分と脱離(再生)部分との間のガス流における大きな温度差を利用することができる。例えば、水性アミンスクラビング方法は、酸ガス取り込みには比較的低い温度、例えば、50℃未満を使用してもよく、脱離には約100℃超、例えば、120℃以上まで温度を上昇させる。大量の水性吸収媒体の再生は、100℃を超える温度で行われる場合があり、その結果、多くの一般的に使用されるアミンは、温度スイングプロセスにおける蒸発に起因して著しいアミン損失を被る可能性がある。
【0028】
化学反応は、アミンと酸ガスとの反応の熱により、発熱性である。それによってガスの温度が上昇する。処理されるガス(リーンガス又はスイートガス)は、吸収カラムの底部から入り、吸収カラムの頂部から出る。酸ガスが付加されたアミン溶液(酸ガスを多く含む溶液)は、吸収カラムの底部から出る。
【実施例
【0029】
例示的な実施例、比較実施例、並びに実施例及び比較実施例のための報告された結果において使用された情報に関して、近似の特性、性質、パラメータなどが以下に提供される。
【0030】
ガス流を処理するためのプロセスは、図1に示すものに基づいていてもよく、ここでは、水性液体吸収媒体は、供給ライン5を介して気液向流充填床吸収カラム2の上部に供給され得る。ガス流は、供給ライン1を通って吸収カラム2の下部に約17標準リットル/分のガス流量で導入され得る。乾燥供給物の組成は、90モル%の窒素及び10モル%の二酸化炭素である。吸収カラム内の圧力は、約250psigに設定される。クリーンなガス(すなわち、CO量が低減されたもの)が、出口ライン3を通って吸収カラム2の頂部で排出され、残留COレベルがガスクロマトグラフィによって測定される。COを多く含む水性液体吸収媒体は、吸収カラム2の下部に向かって流れ、ライン4を介して出る。
【0031】
ライン4内のCO2を多く含む水性吸収媒体は、レベル制御弁8によって減圧され、ライン7を通って熱交換器9に流れることができ、ここで、CO2を多く含む水性吸収媒体が加熱され得る。次いで、加熱されたCO2を多く含む水性吸収媒体は、ライン10を介して再生器12の上部に入ることができる。再生器12は、HS及びCOの脱離を行うことができるランダム充填物(例えば、Pro-Pak(登録商標))を備えている。再生器の圧力は、約27psiaに設定される。次いで、再生器12からのガスは、ライン13を通過して凝縮器14内に送られ得、ここで、任意の残留水及びアミンの冷却及び凝縮が行われ得る。次いで、ガスは分離器15に入ることができ、ここで、凝縮された液体が蒸気相から分離され得る。凝縮された水溶液は、ポンプ22を介してライン16を通って再生器12の上部にポンプ輸送され得る。凝縮から残ったガスは、最後の回収及び/又は廃棄のためにライン17を通して除去することができる。再生された水溶液は、再生器12及び密結型リボイラ18を通って下方に流れる。電気加熱装置を備えるリボイラ18は、水溶液の一部分を気化させて任意の残留ガスを追い出すことができる。リボイラ温度は約125℃に設定されてもよい。蒸気は、リボイラから上昇して再生器12に戻されてもよく、ここで、落下する液体と混ざり合い、次いでライン13を通って出て、プロセスの凝縮段階に入り得る。リボイラ18からの再生された水性吸収媒体は、ライン19を通って出て、熱交換器20で冷却することができる。次いで、再生された(すなわち、酸ガスをあまり含まない)水性吸収媒体は、溶媒供給ライン5を通って吸収器2に戻るようにポンプ21を介してポンプ輸送され得る。
【0032】
実施例では以下の材料を主に使用してもよい。
MDEAは、The Dow Chemical Company又は関連会社から入手可能であり、以下の構造を有する三級アルカノールアミンであるメチルジエタノールアミンの約98%溶液を指す。
【0033】
【化4】

TEAは、The Dow Chemical Company又は関連会社から入手可能であり、以下の構造を有する三級アルカノールアミンであるトリエタノールアミンの約98%溶液を指す。
【0034】
【化5】

HEMAPDは、The Dow Chemical Company又は関連会社から入手可能であり、以下の構造を有する三級アルカノールアミンである3-[2-ヒドロキシエチル)メチルアミノ]-1,2-プロパンジオールの約98%溶液を指す。
【0035】
【化6】
【0036】
以下の実施例に関して、表2の条件に基づいて、三級アルカノールアミンのHEMAPD、TEA、及びMDEAの間で比較を行う。各実施例は、水性液体吸収媒体として50重量%の水及び50重量%の表示したアルカノールアミンを含む。実施例は50重量%の水に設定するが、それは、腐食及び加工上の問題を最小限に抑えながら酸ガスの容量を最大化するための典型的な目標のためである。しかし、全アミン含有量(したがって、水の量)は、特定のガス処理施設で使用される材料の意図される用途及び種類に基づいて異なり得ることが周知である。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例は、2.0モル%のHS含有量で吸収カラム2に入る供給ガス(すなわち、図1の供給ライン1)を処理することに基づく。この供給ガスは、6.7モル%のCO、6.0モル%のHO、2.0モル%の水素、残りは窒素の組成を有する。全体的な流れの情報を以下の表3に提供する。
【0039】
【表3】
【0040】
循環速度は、特定のアルカノールアミンに対して可能な限り低く設定され、1705リットル/分を超える循環速度は高速で望ましくないと考えられ得る。吸収カラムの計算は、化学反応による吸収の増強がWellekの増強因子モデル(1979)を用いて説明される、速度ベースの計算方法を使用して行われる。物質移動係数は、Scheffe-Weilandモデルから得られる。フロースキームは、Bottomsの標準アミンプラントフローシートである。熱力学的計算では、MDEA及びTEAに対してChen & Evansの電解質NRTLモデル(1986)を使用する。HEMAPDはTEAの構造異性体であるため、粘度、密度、及び揮発性などの物理的性質はTEAと近似していると合理的に考えることができる。HEMAPDは、代理分子としてTEAを使用し、そのプロトン化定数を修正してHEMAPDの塩基性度と一致する塩基性度を達成することによってモデル化される。
【0041】
実施例1~3を参照すると、工業ガス流を処理するための水性液体吸収媒体中のアミンとしてHEMAPDを使用するとき、アミン損失(揮発性)及びHS含有量が共に最小化され得ることが示されており、比較的低い(すなわち、非常に望ましい)と考えられる。しかしながら、比較例A~Cを参照すると、TEAを使用するとき、アミン損失は最小化され得るが、HS含有量は、特に酸を添加すると高くなり得ることが示されている。更に、比較例D~Fを参照すると、MDEAを使用するとき、HS含有量は、特に酸を添加すると低くなり得るが、アミン損失は、このような酸の添加の有無にかかわらず高くなり得ることが示されている。全体として、HEMAPDは、最小化されたアミン損失(揮発性)及び低いHS含有量(高いHS除去)を共に提供し得ることが示されており、この結果は、他の三級アルカノールアミンのTEA及びMDEAでは実現することができない。
【0042】
実施例におけるHPO(リン酸)に関しては、酸濃度が高いと、TEAはHS除去においてあまり有効でないことが示されているが、TEAの低いpKを考慮すると、ガス処理には酸が必要であり得る。更に、MDEAでは、アミン損失が全ての酸濃度についてHEMAPD及びTEAの損失よりも望ましくないほど高い。
【0043】
また、実施例1~3に関して、水性吸収媒体による供給ガス中の二酸化炭素除去率がそれぞれ約5.4%、4.8%、及び4.5%であることが見出されている。
【0044】
上記は例示的な実施形態を対象としているが、その基本的な範囲から逸脱することなく他の更なる実施形態が考案されてもよく、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸ガスを含む本質的にガス状態の工業ガス流を処理するための方法であって、
前記工業ガス流を気液吸収器内で水性液体吸収媒体と接触させることを含み、
前記水性液体吸収媒体は、少なくとも
(a)前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の一般式(I)を有する三級アルカノールアミンであって、
【化1】

式中、Rは、C~Cアルキルであり、Rは、H又はC~Cアルキルであり、nは、1~3の整数である、三級アルカノールアミンと、
(b)前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量の水と、を含む、方法。
【請求項2】
前記工業ガス流が、合成ガス、煙道ガス、又はバイオガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性液体吸収媒体が、前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて0.1重量%~3.0重量%の量の酸を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性液体吸収媒体が、前記水性液体吸収媒体の総重量に基づいて0.1重量%~3.0重量%の量のリン酸を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
がCアルキルであり、RがHであり、nが1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性液体吸収媒体が、55℃~80℃の高温である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】