(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】金含有触媒、調製方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20241128BHJP
B01J 31/18 20060101ALI20241128BHJP
C07F 1/12 20060101ALI20241128BHJP
C07D 207/267 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01J37/02 101Z
B01J31/18 Z
C07F1/12 CSP
C07D207/267
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522559
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 GB2022053185
(87)【国際公開番号】W WO2023111537
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】カーシー、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ダマー、ニコラス フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ハッチングス、グラハム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ラザリドゥ、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】パティソン、サミュエル デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ルイーズ リアノン
(72)【発明者】
【氏名】スミット、ジュースト
【テーマコード(参考)】
4G169
4H048
【Fターム(参考)】
4G169AA04
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BD11A
4G169BE19A
4G169BE19B
4G169BE21A
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4G169BE38A
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4G169CB68
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB16
4G169FC10
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB40
4H048BB16
4H048VA22
4H048VA30
4H048VA32
4H048VA40
4H048VA58
4H048VB10
(57)【要約】
本明細書は、塩化水素化触媒を製造する方法であって、i)有機溶媒を含む溶媒中で金源と配位子とを組み合わせることによって含浸溶液を調製する工程と、ii)担体に工程(i)からの含浸溶液を含浸させる工程と、iii)工程(ii)の生成物を乾燥させて、触媒を得る工程と、を含む方法を記載する。担体上に担持された金と式(I)の配位子との錯体を含む塩化水素化触媒も記載される。これらの触媒は、アセチレンの塩化ビニルモノマーへの転化に特に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素化触媒を製造する方法であって、
i)有機溶媒を含む溶媒中で金源と配位子とを組み合わせることによって含浸溶液を調製する工程と、
ii)担体に工程(i)からの前記含浸溶液を含浸させる工程と、
iii)工程(ii)の生成物を乾燥させて触媒を得る工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記溶媒が前記有機溶媒からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が有機溶媒と水性溶媒との混合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、スルホキシド、ニトリル、アミド、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がアセトンを含むか又はアセトンからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記配位子が硫黄含有配位子である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記硫黄含有配位子がチオ硫酸塩である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記配位子が式(I)のものであり、
【化1】
(式中、
XはO又はSであり、
nは、1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記配位子がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
金と式(I)の配位子との錯体を含む塩化水素化触媒であって、
【化2】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基であり、
前記錯体が担体に担持されている、塩化水素化触媒。
【請求項11】
前記配位子がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
前記担体が粉末、顆粒又は成形粒子の形態である、請求項10又は11に記載の触媒。
【請求項13】
前記担体が炭素担体である、請求項10~12のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項14】
アルキン単位を含有する基質の触媒塩化水素化のためのプロセスであって、反応が、請求項10~13のいずれか一項に記載の触媒又は請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造可能な触媒の存在下で行われる、プロセス。
【請求項15】
前記基質がアセチレンである、請求項14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金含有触媒、特にアセチレンを塩化ビニルモノマー(Vinyl Chloride Monomer、VCM)に転化するための金含有触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、PVC)への前駆体としてVCMを製造するためのアセチレンの塩化水素化は、現在、特に中国などの石炭が豊富な地域及び天然ガスが豊富な地域において、天然ガスからアセチレンへの経路を通じて大規模な工業プロセスである。20,000,000トンを超えるVCMが、アセチレン塩化水素化によって毎年生産されており、大部分は、活性炭素上に担持された塩化第二水銀(HgCl2)触媒を利用している。水銀触媒は、触媒床から昇華する揮発性HgCl2に起因して、0.6kgのHg/トンVCM生成まで、重大な環境問題を引き起こす。このプロセスの環境への影響のために、最近批准された水俣条約は、全ての新しいVCMプラントが無水銀触媒を使用しなければならず、近い将来、全ての既存の工業プラントが無水銀代替物に切り替えなければならないと規定している。これにより、この反応の触媒として金及び他の金属を使用することへの商業的関心が復活した。
【0003】
国際公開第2010/055341号(Johnson Matthey PLC and Aker Process B.V.)から、HAuCl4/王水の混合物の湿式含浸によって調製されたAu含有触媒が、アセチレンのVCMへの転化に活性であることが知られている。触媒は、金属金コアと、塩化水素化反応のための活性種であると考えられるAu(I)及びAu(III)を含むより高い酸化状態種のシェルとを有する金粒子を含むと考えられる。
【0004】
国際公開第2013/008004号(Johnson Matthey PLC)は、チオ硫酸塩などの硫黄含有配位子を含むことによるHAuCl4に基づく触媒の開発を記載している。硫黄含有配位子は、Au原子と錯体を形成し、それによって塩化水素化反応における活性種であるAu(I)及びAu(III)を安定化すると考えられる。
【0005】
上記触媒のさらなる開発は、国際公開第2020/254817号(Johnson Matthey PLC)に記載されており、そこでは、カーボンナノチューブ形成に対する触媒の耐性を改善するために、無機酸化物、水酸化物、オキソ塩又はオキソ酸が含まれる。
【0006】
炭素担体上にチオ硫酸塩配位子を有する金の錯体を含むVCM触媒は、Johnson MattheyによってPRICAT(商標)MFCの商標で市販されている。これらの触媒は商業的に成功しているが、極めて発熱性のアセチレン塩化水素化反応におけるこれらの触媒の非常に高い初期活性は、特定の系に対して注意深く最適化される必要がある。初期の触媒活性が高すぎる場合、局所的なホットスポットが触媒床に形成される可能性があり、これが失活を引き起こす可能性がある。より安定した活性プロファイルを有し、初期過熱が起こりにくい代替触媒が必要とされている。本発明は、この問題に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、国際公開第2013/008004号及び国際公開第2020/254817号に記載されている製造方法を改変することによって、初期過熱が起こりにくい安定した活性プロファイルを有する触媒を調製できることを見出した。これらの参考文献に例示されている方法は、金と硫黄含有配位子との錯体を含有する含浸水溶液を形成し、これを炭素担体上に適用することを含む。本発明者らは、驚くべきことに、含浸溶液の水性溶媒を有機溶媒又は有機溶媒と水性溶媒との混合物で置き換えることによって、触媒の初期活性を低下させることができることを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、この変化は、触媒と含浸溶液との間の濡れを変化させ、これが担体上の金錯体の分散を変化させると考えられる。
【0008】
第1の態様において、本発明は、塩化水素化触媒を製造する方法であって、
i)有機溶媒を含む溶媒中で金源と配位子とを組み合わせることによって含浸溶液を調製する工程と、
ii)担体に工程(i)からの含浸溶液を含浸させる工程と、
iii)工程(ii)の生成物を乾燥させて触媒を得る工程と、を含む、方法に関する。
【0009】
国際公開第2020/016555号(University College Cardiff Consultants Ltd)は、金、有機溶媒及び担体材料を組み合わせることによる塩化水素化触媒の製造方法を記載している。この参考文献の実施例において、触媒は、有機溶媒中のHAuCl4・3H2Oの溶液を含浸させることによって調製される。この方法の利点は、配位子を必要としないことである。第1の態様による方法は、国際公開第2020/016555号における方法と同様であるが、金源に加えて配位子を含有する含浸溶液を使用して含浸が行われることを必要とする。
【0010】
第1の態様による方法は、国際公開第2013/008004号及び国際公開第2020/254817号に記載されているものと類似の錯体、すなわち配位子が硫黄含有である錯体を調製するために使用されてもよい。しかしながら、硫黄含有配位子を本明細書に記載の式(I)の配位子で置き換えることによって、安定性に関するさらなる利点を達成することができる。
【0011】
第2の態様において、本発明は、金と式(I)の配位子との錯体を含む触媒に関し、
【0012】
【化1】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基であり、
錯体が担体に担持されている。
【0013】
金及び式Iの配位子を含む触媒が、配位錯体(例えば、式Au[配位子]4-xClx、式中、x=1~4)又は付加物(例えば、[AuCl3]配位子)であるかどうかは、まだ完全には理解されていない。これは、配位子の選択に応じて変化する可能性がある。本明細書中で使用される場合、用語「錯体」は、両方の可能性を包含する。疑念を避けるために、錯体内のAuの酸化状態は、+1又は+3であり得る。
【0014】
銅及び窒素含有配位子の錯体は、アセチレンのVCMへの転化における触媒として使用できることが知られている。中国特許出願公開第111774094号及び中国特許出願公開第111715253号(南開大学)には、塩化ビニル製造用の銅系触媒を製造する方法が記載されている。この方法は、塩化銅及び種々の添加剤(窒素含有配位子であってもよい)を含有する含浸溶液で炭素担体を含浸する工程を含む。中国特許出願公開第110743624号(浙江技科大)は、CuCl2・2H2O及びN-メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone、NMP)の溶液を活性炭素と組み合わせ、続いて乾燥させ、塩化水素ガスで処理することによって調製された比較例を記載している。本発明者らの知る限りでは、金とNMPとの類似の錯体はこれまでに記載されていない。
【0015】
第3の態様において、本発明は、アルキン単位を含有する基質の触媒塩化水素化のためのプロセスであって、反応が、第2の態様による触媒、又は第1の態様による方法によって製造された若しくは製造可能な触媒の存在下で行われるプロセスに関する。
【0016】
このプロセスは、アセチレンを基質として使用してVCMを製造する場合に特に適している。アセチレンからVCMへの転化は、好ましくは気相中で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】触媒E2-1.2、E2-2.0及びE2-4.0の経時的な活性を示す。
【
図3】NMPと、HAuCl
4・3H
2O及びNMPを1:4のモル比で組み合わせることによって形成された錯体とのNMRスペクトルを示す。
【
図4】様々な温度での触媒E2-1.2の活性を示す。
【
図6】触媒E19(比較)及びE20の経時的な活性を示す。
【
図7】触媒E21及びE22の経時的な活性を示す。
【
図8】[HAuCl
4](NMP)
2の単結晶X線構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、全ての%は、別様に明記しない限り、総触媒重量の重量百分率に関する。
【0019】
触媒の製造
本発明の第1の態様では、塩化水素化触媒を製造する方法であって、
i)有機溶媒を含む溶媒中で金源と配位子とを組み合わせることによって含浸溶液を調製する工程と、
ii)担体に工程(i)からの含浸溶液を含浸させる工程と、
iii)工程(ii)の生成物を乾燥させて触媒を得る工程と、を含む、方法が提供される。
【0020】
工程(i)において、金と配位子との間に錯体が形成されると考えられる。含浸溶液は、金源及び溶媒を含有する溶液に配位子を添加することによって調製されることが好ましい。しかしながら、配位子及び溶媒を含有する溶液に金源を添加することも可能である。また、担体を順次金源で処理した後に配位子で処理するか、又はその逆で処理することによって触媒を調製することができることも予想される。
【0021】
金源は、典型的には、配位子と錯体を形成することができる金塩である。好ましい金源は、HAuCl4であり、固体(例えばHAuCl4・3H2O)又は溶液(例えばHCl/水中のHAuCl4)のいずれかである。
【0022】
溶媒は有機溶媒を含む。含浸溶液中の有機溶媒の存在は、含浸溶液と担体との間の濡れを変化させ、金錯体の水溶液が含浸溶液として使用される場合と比較して、金の分散の改善をもたらすと考えられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、溶媒は有機溶媒からなる。これは、金源及び配位子の両方が有機溶媒に可溶性である場合に好ましい可能性がある。
【0024】
いくつかの実施形態において、溶媒は、有機溶媒と水性溶媒との混合物を含む。これは、金源又は配位子の一方が有機溶媒に難溶性である場合に必要であり得る。例えば、金源が有機溶媒に可溶性であるが、配位子が有機溶媒に難溶性である場合、配位子を水性溶媒に溶解し、次いで有機溶媒中の金の溶液に添加してもよい。
【0025】
好適な有機溶媒は、国際公開第2020/016555号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、62以下、例えば60以下、55以下、又は50以下のET(30)極性を有することが好ましい。ET(30)極性は、C.Reichardt,Agnew.Chem.Int.Ed、1979、18、98~110ページに記載の方法によって測定される。溶媒が複数の有機溶媒の混合物を含むか、又は有機溶媒(複数可)と水との混合物である場合、ET(30)極性は溶媒全体について指す。
【0027】
いくつかの実施形態では、有機溶媒は、1気圧で120℃以下、例えば100℃以下又は90℃以下の沸点を有することが好ましい。
【0028】
有機溶媒は、好ましくは、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、スルホキシド、ニトリル、アミド、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
好ましいアルコール溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールである。
【0030】
好ましいケトン溶媒はアセトン、ブタノン及びシクロヘキサノンである。アセトンが特に好ましい溶媒である。
【0031】
好ましいエステル溶媒は酢酸エチルである。
【0032】
好ましいエーテル溶媒はジエチルエーテル及びテトラヒドロフランである。
【0033】
好ましいスルホキシド溶媒はジメチルスルホキシドである。
【0034】
好ましいアミド溶媒はジメチルホルムアミドである。
【0035】
いくつかの実施形態では、配位子は硫黄含有配位子である。好適な配位子は、国際公開第2013/008004号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。配位子が硫黄含有である場合、配位子は、スルホン酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ尿素又はチオールから選択されることが好ましい。好ましい配位子としては、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオプロピオン酸及びチオリンゴ酸が挙げられる。チオ硫酸塩が特に好ましい配位子である。
【0036】
代替的な実施形態では、配位子は、触媒に関連して以下に定義される式(I)のものである。
【0037】
金に対して添加される式(I)の配位子のモル当量は、好ましくは1:1~1:4、例えば1:1~1:2である。4当量を超える配位子を含むことは、触媒性能に悪影響を及ぼすようには見えないが、コストの理由から好ましくない。1.2モル当量の配位子を使用することは、金を完全に錯体化するのに一般的に十分である。
【0038】
工程(ii)において、担体は、工程(i)において形成された含浸溶液で含浸される。含浸技術は当業者によく知られている。
【0039】
工程(iii)では、触媒を乾燥させて有機溶媒を除去する。乾燥技術は当業者によく知られている。典型的な手順は、触媒を100℃以上の温度で12時間以上加熱することを含む。ガス流を使用して、有機溶媒の除去を援助することができる。乾燥の温度及び持続時間は、調製が行われる規模に応じて異なることが理解されるであろう。
【0040】
触媒
本発明はまた、金と式(I)の配位子との錯体を含む触媒に関し、
【0041】
【化2】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基であり、
錯体が担体に担持されている。
【0042】
XはOであることが好ましい。XがSである配位子の使用は、XがOである場合と比較してより低い活性を有する傾向がある。
【0043】
一実施形態では、Rは、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素(例えば、OH)又は窒素(例えば、NH2)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC1~C10炭化水素基、例えば、C1~C6炭化水素基である。例えば、C1~C6ヒドロカルビル基又はC1~C3ヒドロカルビル基であり、各場合において、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素(例えば、OH)又は窒素(例えば、NH2)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む。基R中のヘテロ原子の存在は、高極性溶媒中の配位子の溶解度を改善するのに有益であり得る。
【0044】
一実施形態では、Rは、C原子及びH原子のみからなるC1~C10ヒドロカルビル基、例えば、C1~C6ヒドロカルビル基である。例えば、C1~C6ヒドロカルビル基又はC1~C3ヒドロカルビル基である。基R中にヘテロ原子が存在しないことは、低極性溶媒中の配位子の溶解度を改善するのに有益であり得る。
【0045】
RがH又はMeであることが好ましく、RがMeであることが好ましい。RがHである配位子の使用は、RがMeである場合と比較して低い活性を有する傾向がある。
【0046】
n=1であることが好ましい。
【0047】
好ましい配位子は、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)及びN-メチル-2-ピペリドンである。これらの配位子は、チオ硫酸金錯体を含む比較触媒と同等又はより良好なアセチレン転化率を示す。NMPが特に好ましい配位子である。
【0048】
疑念を避けるために、NMPは以下の構造を有する。
【0049】
【0050】
配位子の役割は、Au(I)又はAu(III)酸化状態のAuを安定化することである。本発明の方法は、Auの高い分散と、塩化水素化のための活性種であると考えられるAu(I)及びAu(III)種の高い割合とを有する触媒を製造することを可能にする。
【0051】
Auの添加量は、Auのコストと触媒の活性との間のトレードオフである。触媒の典型的なAu含有量は、触媒全体の重量に基づいて、典型的には0.01~5重量%である。典型的には、Auの添加量は、0.01~2重量%、例えば0.05~1.5重量%、例えば0.2~1.5重量%である。
【0052】
いくつかの実施形態において、Auに加えて、触媒は、1つ以上の助触媒金属を含んでもよい。助触媒金属の存在は、触媒の活性を改善し、及び/又は経時的に触媒の活性を維持するのに役立ち得る。好適な助触媒としては、第1族及び第2族金属、並びにコバルト、銅、ランタン及びセリウムが挙げられる。
【0053】
任意の既知の触媒担体を使用して、本発明の触媒を作製し得る。アルミナ、シリカ、ゼオライト、シリカ-アルミナ、チタニア、又はジルコニア、及びこれらの複合物などの典型的な金属酸化物担体を使用し得る。担体は炭素担体であることが好ましい。炭素は、天然源(例えば、泥炭、木材、石炭、黒鉛)に由来してもよく、又は合成炭素であってもよい。炭素は、好ましくは活性炭であり、例えば、蒸気、酸、又は他の方法で化学的に活性化される活性炭である。
【0054】
担体は、粉末、顆粒又は成形粒子の形態であってもよい。成形粒子の例としては、球体、錠剤、シリンダ、マルチローブ(multi-lobed)シリンダ(例えば3ローブ(trilobes))、リング、ミニリスなど、又はモノリスなどの巨形触媒単位が挙げられる。代替的に、粉末形態の触媒は、コーティング製剤に含まれ得、反応器壁に、又はモノリスなどの成形基質にコーティングされ得る。触媒担体の1つの好ましい形態は、それぞれ0.1~10mmの直径、又はより好ましくは1~3mmの範囲の直径を有するシリンダ、球体、若しくはローブシリンダの形態の複数の形状単位を含む。ローブシリンダなどの不均一な直径を有する断面形状の場合、この直径は、平均直径である。シリンダ形及び3ローブ形が特に好ましい支持体の形状である。
【0055】
触媒の使用
本発明の触媒は、金含有触媒が有用性を見出すことが知られている任意の化学プロセスにおいて有用であることが想定される。触媒は、アルキン部分を含有する化合物の塩化水素化、特にアセチレンのVCMへの転化に特に適している。
【0056】
アセチレンのVCMへの転化は、典型的には高温で、通常約100℃~250℃で行われる。反応温度は、転化とより高い温度で反応器を運転する経済性との間のバランスである。さらに、200℃を大幅に超える温度では、コーキングが顕著になり得る。驚くべきことに、式(I)の配位子を含む触媒は、既存のAu系触媒よりも低い温度で活性である。
【0057】
HCl及びアセチレンは、好ましくは予混合され、また好ましくは反応温度に予熱される。通常、HClは、化学量論的反応に必要な量を超えて存在する。触媒は、供給ガスが触媒床上を通過する又は触媒床を通って通過するように配置された、触媒粒子の固定床の形態で反応器内に存在し得る。流動床又は他の移動床配置を含む、代替的な反応器配置が使用され得る。代替的に、触媒は、モノリスの形態で提供され得るか、又は反応器容器の壁にコーティングされ得る。触媒床には、発熱反応による過熱を回避するため、又は必要に応じて温度を上昇させるために、温度を調節するための手段を備え得る。このプロセスで使用する前に触媒をHClで処理することが好ましい場合がある。この処理は、典型的には、少なくとも50℃、より具体的には100℃超の温度で少なくとも1時間、触媒上にHClを流すことによって実施される。この前処理は、好適な温度でアセチレンなしのHClの流れで操作することによって反応器内で行われ得る。
【0058】
本発明はまた、以下の実施形態を含む。
1.塩化水素化触媒を製造する方法であって、
i)有機溶媒を含む溶媒中で金源と配位子とを組み合わせることによって含浸溶液を調製する工程と、
ii)担体に工程(i)からの含浸溶液を含浸させる工程と、
iii)工程(ii)の生成物を乾燥させて触媒を得る工程と、を含む、方法。
2.溶媒が有機溶媒からなる、実施形態1に記載の方法。
3.溶媒が有機溶媒と水性溶媒との混合物からなる、実施形態1に記載の方法。
4.担体が炭素担体である、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
5.有機溶媒が、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、スルホキシド、ニトリル、アミド、又はそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
6.有機溶媒がアセトンを含むか又はアセトンからなる、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
7.配位子が硫黄含有配位子である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
8.硫黄含有配位子が、スルホン酸塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ尿素又はチオールからなる群から選択される、実施形態7に記載の方法。
9.硫黄含有配位子がチオ硫酸塩である、実施形態7に記載の方法。
10.配位子が式(I)のものであり、
【0059】
【化4】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
11.XがOである、実施形態10に記載の方法。
12.RがMeである、実施形態10又は実施形態11に記載の方法。
13.配位子がN-メチル-2-ピロリドンである、実施形態10に記載の方法。
14.工程(i)におけるAu:配位子のモル比が1:1~1:2である、実施形態10~13のいずれかに記載の方法。
15.金と式(I)の配位子との錯体を含む塩化水素化触媒であって、
【0060】
【化5】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基であり、
錯体が担体に担持されている、塩化水素化触媒。
16.XがOである、実施形態15に記載の触媒。
17.RがHである、実施形態15又は実施形態16に記載の触媒。
18.RがMeである、実施形態15又は実施形態16に記載の触媒。
19.配位子がN-メチル-2-ピロリドンである、実施形態15に記載の触媒。
20.Au:配位子のモル比が1:1~1:4である、実施形態15~19のいずれかに記載の触媒。
21.触媒中のAuの含有量が0.01~5重量%である、実施形態15~20のいずれかに記載の触媒。
22.担体が、粉末、顆粒又は成形粒子の形態である、実施形態15~21のいずれかに記載の触媒。
23.担体が、炭素担体である、実施形態15~22のいずれかに記載の触媒。
24.アルキン単位を含有する基質の触媒塩化水素化のためのプロセスであって、実施形態15~23のいずれかに記載の触媒又は実施形態1~14のいずれかに記載の方法によって製造可能な触媒の存在下で反応が行われる、プロセス。
25.基質がアセチレンである、実施形態24に記載のプロセス。
【実施例】
【0061】
触媒試験の一般的手順
触媒の試料(~90mg)を反応管内のガラスウール上に装填した。供給流を、24.00mL/分のC2H2(アルゴン中5%アセチレン)、30.00mL/分のHCl(アルゴン中5%HCl)及び4.10mL/分のアルゴンを組み合わせることによって調製した。供給流の温度は、別様に明記しない限り、180℃に設定した。アセチレン転化率はガスクロマトグラフィにより測定した。
【0062】
実施例1-配位子を含まない比較触媒(E1)の調製
触媒E1は含浸法によって調製した。活性炭(NORIT ROX 0.8)を最初に粉砕し、篩(150メッシュ)にかけて、粒径150μm未満の粉末を得た。金前駆体、HAuCl4・3H2O(Alfa Aesarからの固体、20mg、アッセイ49%)を乾燥アセトン(2.7mL)に溶解し、10分間撹拌した。この溶液を、粉砕し、活性化した乾燥炭素粉末(0.99g)に撹拌しながら滴下した。溶液を室温で1時間撹拌し、最後に窒素下45℃で16時間乾燥させた。
【0063】
実施例2~11-配位子の役割
表1に報告される実施例2~11は、以下のように変更して、実施例1について記載されたのと同じ方法によって調製した。配位子をバイアル中に秤量した。HAuCl4・3H2Oのアセトン溶液を配位子に添加し、得られた溶液を実施例1に記載したように炭素粉末の含浸に使用した。Au:配位子(mol:mol)の比は、1:1.2、1:2又は1:4であった。最終Au添加量は1重量%であった。
【0064】
【0065】
これらの触媒を、一般的手順に従ってそれらのアセチレン転化率について試験した。結果を
図1に示す。E1(配位子なし)、E2-1.2(NMP)及びE10(ベンジルイソチオシアン酸塩)を除いて、全ての触媒が試験の過程で失活した。
【0066】
配位子等価物の役割
E2-1.2、E2-2.0及びE2-4.0についての配位子等価物の役割を
図2で比較する。性能は同様であったが、一般にE2-4.0>E2-2.0>E2-1.2であった。
【0067】
d
6-アセトン中のNMP及びd
6-アセトン中で調製したE2-4.0の
1H NMRスペクトルのオーバーレイを
図3に示す。NMPに関連するピークの全てが錯体中でシフトしており、NMPが配位していることを示唆している。
【0068】
温度の役割
実施例E2-1.2の活性を、30、65、120、180、200及び220℃の温度で試験した。結果を
図4に示す。活性は温度の上昇と共に増加した。アセチレン転化率は220℃で最も高かったが、転化されたアセチレンの量は生成されたVCMの量に対応しなかった。この不一致は、高温でのコークスの形成に関連すると考えられる。
【0069】
実施例12~18-代替配位子
表2の触媒は、1.2当量の配位子を用いて、実施例2~11と同じ手順に従って調製した。最終Au添加量は1重量%であった。
【0070】
【0071】
これらの触媒を、一般的手順に従ってそれらのアセチレン転化率について試験した。結果を
図5に示す。NMP配位子を含有する触媒E2-1.2は、全ての触媒の中で最も高い活性を示し、経時的に比較的安定な活性を有していた。N-メチル-2-ピペリドン配位子を含有する触媒E12も良好な活性を示し、比較的安定であったが、チオ硫酸塩配位子を含有するE1よりもわずかに活性が低かった。
【0072】
他の触媒は活性が低く、2-ピロリジノンを含有するE13及び1-メチルピロリジンを含有するE15の場合、開始から徐々に失活することを示した。
【0073】
実施例19及び20-溶媒の役割
それぞれの場合においてチオ硫酸塩配位子との錯体として1%のAuを含有する触媒を、以下の手順によって調製した。
【0074】
活性炭(NORIT ROX 0.8)を粉末に粉砕し、180ミクロン未満に篩い分けした。チオ硫酸アンモニウム(0.975g)及びCaCl2(0.175g)を17mLの脱塩水に溶解した。HAuCl4溶液(Johnson Matthey、0.25gのAu、アッセイ41.76%)を17mLの脱塩水で希釈し、この溶液をチオ硫酸アンモニウム含有溶液に添加した。炭素粉末(乾燥重量24.75g)に、初期湿潤技術によって金含有溶液を含浸させた。含浸塊を1時間放置し、次いで空気中105℃で16時間乾燥させ、触媒E19を得た。
【0075】
活性炭(NORIT ROX 0.8)を粉末に粉砕し、180ミクロン未満に篩い分けした。チオ硫酸アンモニウム(0.975g)を15mLの脱塩水に溶解した。HAuCl4溶液(Johnson Matthey、0.25gのAu、アッセイ41.76%)を25mLのアセトンで希釈し、この溶液をチオ硫酸アンモニウム含有溶液に添加した。炭素粉末(乾燥重量24.75g)に、初期湿潤技術によって金含有溶液を含浸させた。含浸塊を流動空気中、室温で12時間放置し、次いで空気中、105℃で16時間乾燥させ、触媒E20を得た。
【0076】
触媒試験は、フリット反応器管を用いて行った。150mgのSiCをフリット上に置き、続いて300mgの触媒を置いた。触媒の試料(約300mg)を反応管内のガラスウール上に装填した。供給流を、(5.83mL/分のアセチレン(アルゴン中5%アセチレン))と6.03mL/分のHCl(アルゴン中5%HCl)とを組み合わせることによって調製した。供給流の温度は、別様に明記しない限り、180℃に設定した。アセチレン転化率はガスクロマトグラフィにより測定した。結果を
図6に示す。
【0077】
1%のAuを含む含浸水溶液を用いて調製された触媒(E19)は、最初は約70%の転化率を示し、約45%の転化率で安定化した。安定値は、初期活性の約65%であった。
【0078】
対照的に、アセトン/水含浸溶液を使用して調製された触媒(E20)は、最初に約50%の転化率を示し、約45%の転化率で安定化した。安定値は、初期活性の約90%であった。この触媒は、高い初期活性なしに、はるかに安定した活性プロファイルを示した。これは、触媒の初期活性化における局所的なホットスポットを回避するのに有利であると予想される。
【0079】
実施例21及び22-代替の硫黄含有配位子
チオ硫酸アンモニウムの水溶液をチオシアン酸ナトリウム(0.530g)を25mLのアセトンに溶解した溶液で置き換えた以外は、E20を製造するために使用した手順に従って、1%のAuを含有する触媒(E21)を調製した。溶液HAuCl4の溶液を25mLではなく15mLのアセトンで希釈した。溶液を一緒に混合し、直ちに使用して炭素粉末を含浸させた。
【0080】
0.5%のAuを含有する触媒(E22)を、E21を製造するために使用した手順に従って調製したが、但し、HAuCl4溶液としての0.125gのAuを、HAuCl4溶液としての0.25gのAuの代わりに使用した。
【0081】
チオ硫酸アンモニウムの水溶液を25mLのアセトンに溶解したチオシアン酸ナトリウム(0.530g)の溶液で置き換えた。溶液HAuCl4の溶液を25mLではなく15mLのアセトンで希釈した。溶液を一緒に混合し、直ちに使用して炭素粉末を含浸させた。
【0082】
結果を
図7に示す。それぞれの場合において、触媒は、触媒活性における初期スパイクなしに安定な活性プロファイルを示した。これは、触媒の初期活性化中の局所的なホットスポットを回避するのに有利であると予想される。
【0083】
[HAuCl4](NMP)2の調製
アセトン(15mL)を、1.00gのAuを含有するHAuCl4(40.02%Au)の溶液2.50gに添加した。この溶液に、15mLのアセトン中に4モル当量のN-メチルピロリジン(2.01g)を含有する溶液を添加した。得られた溶液を混合し、30分間反応させた後、溶液を真空下で蒸発させて油状残留物を得た。シクロヘキサンのアリコートで洗浄した後、固体生成物が得られ、これを1-プロパノール-シクロヘキサンから再結晶させて、微細な鮮黄色針状物の収穫物を高収率で得た。X線結晶構造分析に適した針状単結晶は、1-プロパノール-シクロヘキサンからのゆっくりとした結晶化によって得られた。
【0084】
AuC10Cl4H19N2O2について計算された元素分析は、Clが26.4%、Cが22.3%、Hが3.6%、Nが5.2%であることを必要とし、Clが26.4%、Cが22.3%、Hが3.5%、Nが5.2%であることが分かった。
【0085】
0.71073Åの波長を有する放射線を使用する296KでのX線回折分析による単結晶構造測定は、材料が以下の特性を有することを示した:単斜晶、空間群P21/n、a=14.2719(8)Å、b=7.6086(5)Å、c=16.5447(15)Å)、α=90°、β=98.485(7)°、γ=90°、Z=4、結晶寸法0.380×0.140×0.090mm3。合計4383回の独立した反射を収集した。
【0086】
AuCl
4中心の周りのNMP配位を示す、測定された構造の画像を
図8に示す。N-Au距離は、3.726Å及び3.929Åであった。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素化触媒を製造する方法であって、
i)溶媒中で金源と配位子とを組み合わせることによって含浸溶液を調製する工程であって、前記溶媒が、アセトンを含むか又はアセトンからなる有機溶媒を含む、工程と、
ii)担体に工程(i)からの前記含浸溶液を含浸させる工程と、
iii)工程(ii)の生成物を乾燥させて触媒を得る工程と、を含み、
前記配位子が、式(I)のものであり、
【化1】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基である、方法。
【請求項2】
前記溶媒が前記有機溶媒からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が有機溶媒と水性溶媒との混合物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記配位子がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金と式(I)の配位子との錯体を含む塩化水素化触媒であって、
【化2】
(式中、
XはO又はSであり、
nは1又は2であり、
Rは、H、又はハロゲン(F、Cl、Br、I)、酸素若しくは窒素から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC1~C10炭化水素基であり、
前記錯体が担体に担持されている、塩化水素化触媒。
【請求項6】
前記配位子がN-メチル-2-ピロリドンである、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
前記担体が粉末、顆粒又は成形粒子の形態である、請求項5又は6に記載の触媒。
【請求項8】
前記担体が炭素担体である、請求項5~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
アルキン単位を含有する基質の触媒塩化水素化のためのプロセスであって、反応が、請求項5~8のいずれか一項に記載の触媒又は請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって製造可能な触媒の存在下で行われる、プロセス。
【請求項10】
前記基質がアセチレンである、請求項9に記載のプロセス。
【国際調査報告】