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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/20 20200101AFI20241128BHJP
   H05B 47/155 20200101ALI20241128BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20241128BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20241128BHJP
【FI】
H05B45/20
H05B47/155
H05B47/16
H05B47/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523253
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022077874
(87)【国際公開番号】W WO2023086714
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/278,680
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524144110
【氏名又は名称】パウルゼン,ゲイリー
(71)【出願人】
【識別番号】524144121
【氏名又は名称】バスケン,デイビッド
(71)【出願人】
【識別番号】524144132
【氏名又は名称】ミュラー,マシュー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】パウルゼン,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】バスケン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,マシュー
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA01
3K273PA03
3K273PA06
3K273PA07
3K273QA13
3K273RA05
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA33
3K273TA49
3K273UA21
3K273UA22
3K273UA23
3K273UA24
(57)【要約】
方法は、第三色覚異常共有点により定義される第1の第三色覚異常混同色線上に前記第1の色を有する第1の光を発光することと、第三色覚異常共有点により定義される第2の第三色覚異常混同色線上に第2の色を有する第2の光を発光することとを含んでいる。第2の光は第1の光と位相をずらして照射され、第1の第三色覚異常混同色線、第三色覚異常共有点、及び第2の第三色覚異常混同色線が10度未満の角度を形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第三色覚異常共有点により定義される第1の第三色覚異常混同色線上に第1の色を有する第1の光を発光することと、
前記第三色覚異常共有点により定義される第2の第三色覚異常混同色線上に第2の色を有する第2の光を発光することを含み、前記第2の光が前記第1の光と位相をずらして発光され、前記第1の第三色覚異常混同色線、前記第三色覚異常共有点、及び前記第2の第三色覚異常混同色線ラインが10度未満の角度を形成する方法。
【請求項2】
前記第1の第三色覚異常混同色線、前記第三色覚異常共有点、及び前記第2の第三色覚異常混同色線が5度未満の角度を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の第三色覚異常混同色線、前記第三色覚異常共有点、及び前記第2の第三色覚異常混同色線が2.5度未満の角度を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の第三色覚異常混同色線、前記第三色覚異常共有点、及び前記第2の第三色覚異常混同色線が1度未満の角度を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の第三色覚異常混同色線と前記第2の第三色覚異常混同色線が同一第三色覚異常混同色線である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の色と前記第2の色が黒体軌跡の互いに反対側にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の色と前記第2の色の平均色が黒体軌跡上に存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の色と前記第2の色の平均色が黒体軌跡上に存在しない、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の色と前記第2の色が共に非スペクトル色である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の色が前記第1の色よりも少なくとも10%前記第三色覚異常共有点に近い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の色が前記第1の色よりも少なくとも20%前記第三色覚異常共有点に近い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の色が前記第1の色よりも少なくとも30%前記第三色覚異常共有点に近い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の色が前記第1の色よりも少なくとも40%前記第三色覚異常共有点に近い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の色が前記第1の色よりも少なくとも50%前記第三色覚異常共有点に近い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の光を発光することが、前記第1の光と180度位相をずらして前記第2の光を発光することを含んでいる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の光を発光することが、前記第1の光の第1の強度が第1の周波数で振動するように前記第1の光を発光することを含み、前記第2の光を発光することが、前記第2の光の第2の強度が前記第1の周波数に等しい第2の周波数で振動するように前記第2の光を発光することを含んでいる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の周波数が1Hz~50Hzの範囲内にある、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記第1の周波数が8Hzよりも大きい、請求項16~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の周波数が10Hzよりも大きい、請求項16~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の周波数が15Hzよりも大きい、請求項16~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の周波数が17Hz~21Hzの範囲内にある、請求項16~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の周波数が19Hzに等しい、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記第1の光が、矩形波、正弦波、鋸波、三角波、又は他の任意の振動波の形式である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の光が、矩形波、正弦波、鋸波、三角波、又は他の任意の振動波の形式である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の光及び前記第2の光が、デューティサイクルが等しい波の形式である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の光及び前記第2の光が、デューティサイクルが等しくない波の形式である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の光がゼロよりも大きい最小値に周期的に達する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の光がゼロに等しい最小値に周期的に達する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の光がゼロよりも大きい最小値に周期的に達する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の光がゼロに等しい最小値に周期的に達する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1項に記載の方法を照明装置に実行させるべく構成された制御システム。
【請求項32】
光源アセンブリと、
請求項1~30のいずれか1項に記載の方法を前記光源アセンブリに実行させるべく構成された制御システムとを含む照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2021年11月12日出願の米国仮特許出願第63/278,680号の優先権を主張する国際出願であり、引用によりその内容を本明細書に組み込んでいる。
【0002】
[0002] 本出願は、以下の出願の開示全体を引用により組み込んでいる。2019年12月10日出願の米国特許出願第16/708,563号、2019年8月20日出願の米国特許出願第16/545,853号、2019年8月20日出願の米国特許出願第16/545,750号、2018年4月2日出願の米国特許出願第15/943,210号、2018年3月1日出願の国際出願PCT/US2018/020395号、2017年8月16日出願の米国仮特許出願第62/546,475号、2017年5月18日出願の米国仮特許出願第62/508,286号、2020年11月20日出願の米国特許出願第17/100,536号、2020年5月14日出願の米国仮特許出願第63/024,806号、及び2019年11月22日出願の米国仮特許出願第62/939,037号。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 時差ぼけ又は通常とは異なる勤務シフトへの適応等の理由から、人の概日リズム又は「睡眠サイクル」を変えることが有用な場合がある。人の概日リズムは主として脳の視床下部内の小領域である視交叉上核(SCN)が司っている。人の概日リズムを変化させる従来の方法は一般に、網膜内の網膜神経節細胞の約1%を占める内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)内の光受容タンパク質メラノプシンを直接刺激するものであった。網膜を(例えば約480ナノメートル付近の狭い範囲の波長の)青色光で照射すれば人のipRGC内でメラノプシンを励起させて神経経路を介してSCNを刺激することにより当該人の概日リズムを変化させる(例えば、疲労の出現を遅らせる)と考えられている。しかし、ipRGCは光感受性が比較的低く、網膜内に比較的まばらに存在し、且つ光活性反応が遅いため、このような方法は、不快又は苦痛でさえある強度で比較的長時間にわたり網膜を照射する点で好ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0004] 本開示の一態様は、第三色覚異常共有点により定義される第1の第三色覚異常混同色線上に第1の色を有する第1の光を発光することと、第三色覚異常共有点により定義される第2の第三色覚異常混同色線上に第2の色を有する第2の光を発光することとを含み、第2の光は第1の光とは位相をずらして発光され、第1の第三色覚異常混同色線、第三色覚異常共有点、及び第2の第三色覚異常混同色線が10度未満の角度を形成する方法である。
【0005】
[0005] 本開示の別の態様は、第三色覚異常共有点により定義される第1の第三色覚異常混同色線上に第1の色を有する第1の光を発光することと、第三色覚異常共有点により定義される第2の第三色覚異常混同色線上に第2の色を有する第2の光を発光することとを含み、第2の光は第1の光と位相をずらして発光され、第1の第三色覚異常混同色線、第三色覚異常共有点、及び第2の第三色覚異常混同色線が10度未満の角度を形成する機能を照明装置に実行させるべく構成された制御システムである。
【0006】
[0006] 本開示の別の態様は、光源アセンブリと、第三色覚異常共有点により定義される第1の第三色覚異常混同色線上に第1の色を有する第1の光を発光することと、第三色覚異常共有点により定義される第2の第三色覚異常混同色線上に第2の色を有する第2の光を発光することを含む機能を光源アセンブリに実行させるべく構成された制御システムとを含み、第2の光は第1の光と位相をずらして発光され、第1の第三色覚異常混同色線、第三色覚異常共有点、及び第2の第三色覚異常混同色線が10度未満の角度を形成する照明装置である。
【0007】
[0007] 本明細書に記述する量又は測定値に関する用語「約」又は「実質的に」は、言及する特性、パラメータ、又は値を正確に達成する必要はないが、例えば、公差、測定誤差、測定精度の限界、及び当業者に公知の他の要因を含む逸脱又は変動が、当該特性が提供すべく意図された効果を妨げない程度に生じる可能性があることを意味する。
【0008】
[0008] 上述の特徴、機能、及び利点は、様々な例において独立に実現可能であり、又は以下の記述及び図面を参照して更なる詳細が明らかになる更に他の例において組み合わせてもよい。
【0009】
図面の簡単な説明
[0009] 複数の例示的な例の特性と思われる新規な特徴は、添付の請求項に記載されている。しかし、例示的な例だけでなく、それらの好適な使用、更なる目的及び説明は、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面と合わせて参照することにより最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]一例による照明装置のブロック図である。
図2】[0011]一例による第1の光及び第2の光の強度波形を示す。
図3】[0012]一例による色空間内の第1の光及び第2の光の色を示す。
図4】[0013]一例による色空間内の第1の光及び第2の光の色を示す。
図5】[0014]一例による色空間内の第1の光及び第2の光の色を示す。
図6】[0015]一例による方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
[0016] 上述のように、内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)内のメラノプシンの直接刺激を介して概日リズムを変化させる現在の方法は往々にして不便、不快、及び/又は若干効果が少ない。従って、概日リズムを変化させる改良された装置及び方法を本明細書に開示する。
【0012】
[0017] 概日リズムは、神経経路に沿って錐体の下流にあるipRGCの間接的刺激を生起させる網膜内のS錐体、M錐体、L錐体の刺激を介してより便利且つ効率的に変化させることができる。従来の方法は、青色光(例えば、約480nmのλ)でipRGCを照射してメラノプシンの光活性を最適化いたが、本明細書に開示する方法は一般に、約419nmで最大光感度を有するS錐体、約530nmで最大光感度を有するM錐体、及び/又は約559nmで最大光感度を有するL錐体を刺激すべくに設計された波長で網膜を照射するものである。
【0013】
[0018] より具体的には、網膜内に密集して存在し、ipRGCに比べて光感受性が高い錐体を刺激することで、太陽光を介したipRGCへの直接刺激よりも効率的にipRGCを励起させることができる。このipRGCの間接的励起により、視交叉上核(SCN)を刺激することができる。錐体の励起を介して間接的にipRGCを励起させる当該方法は、人の概日リズムが変化しやすい場合に実行することができる。
【0014】
[0019] 例えば、照明装置により実行される方法は、照明装置により発光された光を見る位置にいる1名以上の人が各々の概日リズムの1日の最小値に近づいているか又は最近経験した時点で実行することができる。例えば、照明装置により発光される光を、一日のうちで最も眠い時間帯に近づいている(例えば、4時間前以内)人が見たならば、当該光は眠気の開始を遅らせる傾向を示す。多くの人の1日で最も眠い時間帯は午前0時から2時30分(0:00~2:30)の間である。一方、1日のうちで最も眠い時間帯を最近(例えば4時間後以内)に経験した人が照明装置から発せられた光を見たならば、当該光は眠気の開始を早める傾向を示す。
【0015】
[0020] ipRGCは全ての網膜神経節細胞と同様に、上流の錐体光受容体により駆動される。従って、錐体に入射する光の照度の急激な増減(デルタ)はipRGCのシグナリングを確実に駆動する。例えば、M錐体(例:緑色光)及びL錐体(例:赤色光)による光吸収の急激な増大、及びS錐体(例:紫色光)による光吸収の急激な減少に応答して、ipRGCの活性(及び結果的に下流のSCNの活性)が最大化される。
【0016】
[0021] より具体的には、照明装置は2色の光を、人間には固定しているように(例:1個の固定的な色として)見える程度に充分速いが、錐体光受容体は依然として反応してipRGCを介して概日中枢まで活動を促進するのに充分な程度に遅い速度で振動させることができる。従って、一般家庭又は職場の照明として有用な照明装置を人間の概日リズムの調整に用いることができる。
【0017】
[0022] 開示する複数の例について添付の図面を参照しながら以下により詳細に記述するが、これらの図面には、開示する例のうちいくつかを示しているが全てではない。実際、いくつかの異なる例を記述しているが本発明が本明細書に開示する例に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの例は、本開示が網羅且つ完全であって当業者に本開示の範囲を充分に伝え得るように記述されている。
【0018】
[0023] 図1に、光源アセンブリ102及び制御システム104を含む照明装置100を示す。いくつかの例において、光源アセンブリ102は、発光ダイオード(LED)、レーザ、有機発光ダイオード(OLED)白熱電球、又はハロゲン電球等、1個以上の光源を含んでいてよいが、他の例も可能である。
【0019】
[0024] 制御システム104は、光源アセンブリ102及び/又は照明装置100に、本明細書に記述する機能の任意のものを実行させるべく構成されたソフトウェア及び/又はハードウェアの任意の組み合わせの形式であってよい。例えば、制御システム104は、本明細書に記述する機能の任意のものを実行すべく光源アセンブリ102に電力及び/又は制御信号を供給すべく構成された1個以上のブール回路、プログラム可能論理コントローラ(PLC)、及び/又は専用回路を含んでいてよい。追加的又は代替的に、制御システム104は、1個以上のプロセッサと、当該プロセッサにより実行されたならば、光源アセンブリ102及び/又は照明装置100に本明細書に記述する機能の任意のものを実行させる命令を保存したコンピュータ可読媒体とを含んでいてよい。制御システム104は追加的に信号生成器を含んでいてよい。
【0020】
[0025] 様々な例において、照明装置100は、被験者の網膜に光を照射すべく構成されたウェアラブル装置、ゴーグル、ヘッドバンド、アームウェア、リストウェア、又は治療用ウェアラブル装置に一体化されているか又はこれらの形式であってよい。いくつかの例において、照明装置100は、自動車、飛行機、ヘリコプター、ボート、船、又は列車等の乗り物に組み込まれている。照明装置100はまた、ダッシュボード、アクセント照明ユニット、キャビン全般向け照明ユニット、又はヘッドライトユニットに組み込まれていてよい。様々な実施形態において、照明装置100は、携帯電話、タブレットコンピュータ、モニタ、又はテレビ等のディスプレイ装置に組み込まれている。照明装置100はまた、ランプ、夜間灯、シャンデリア、オーバーヘッド照明等の照明ユニットに組み込まれていてよい。
【0021】
[0026] 幾つかの実施形態において、照明装置100は、昼光、黒体、又は他の照明参照標準と比較して演色評価指数が70よりも大きい白色光源の形式であってよい。本明細書で用いる用語「白色光」は、国際照明委員会(CIE)Raスケールにより定義される70よりも大きい演色評価指数を有する任意の多色光を指す場合がある。このような白色光は、400~700nmの可視スペクトル全体にわたり非ゼロの強度を含んでいてよい。このように、「白色光源」は上述のような白色光を生成すべく構成された任意の光源を含んでいてよい。本明細書で用いる用語「演色評価指数」(CRI)は、CIERaスケールを参照しながら一般に定義されてもよい。
【0022】
[0027] 図2に、照明装置100から発光された2種類の光を示す。本明細書に開示する照明装置100及び関連方法を用いて様々な目的で人の概日周期を進めるか又は遅らせることができる。このような方法を用いて季節性感情障害(SAD)、又はうつ病、双極性障害、ディスチミア等、別種の気分障害に罹患している被験者を治療することができる。睡眠障害や不規則な睡眠は、がん及び/又は心臓病を患っている人にも影響を及ぼす恐れがあるため、これらの方法を適宜用いてこのような影響を打ち消すことができる。
【0023】
[0028] 照明装置100は、第1の光10及び第2の光18を発光する。照明装置100は、図示するように、第1の光10と位相がずれた(例えば位相が180度ずれた)第2の光18を発光する。図2において、第1の光10及び第2の光18は共に正弦波形を有しているが、第1の光10及び第2の光18は、矩形波、正弦波、鋸歯状波、三角波、又は任意の振動波等、他の形式であってよい。光源アセンブリ102は、第1の光10を発光すべく構成された1個以上の第1の光源と、第2の光18を発光すべく構成された1個以上の第2の光源とを含んでいてよいが、他の例も可能である。
【0024】
[0029] より具体的には、図2に、第1の光10及び第2の光18の各々の振動強度を示し、第1の光10の強度は第2の光18の強度と位相が(例えば180度)ずれている。すなわち、横軸は時間を表し、縦軸は光の強度を表す。いくつかの例において、第1の光10の周期的最小強度11及び第2の光18の周期的最小強度13は共にゼロであるが、第1の光10及び第2の光18の最小強度として非ゼロの例も可能である。波形が非正弦波形をとる例において、第1の光10及び第2の光18のデューティサイクルは等しくても、又は等しくなくてもよい。
【0025】
[0030] 第1の光10の強度は一般に、第2の光18と同じ周波数で振動する。例えば、第1の光10と第2の光18の共通の振動周波数は、1Hz~50Hzの範囲にあってよい。様々な例において、第1の光10と第2の光18に共通の振動周波数は、8Hz超、10Hz超、又は15Hz超である。また、第1の光10と第2の光18の共通の振動周波数は、17Hz~21Hzの範囲内、より具体的にはほぼ19Hzに等しく、又は丁度19Hzに等しい。
【0026】
[0031] 人間のS錐体の臨界融合周波数は約8Hz~10Hzであるため、これらの振動周波数は有用である。従って、共通第三色覚異常混同色線上に各々の色を有する8Hz~10Hzよりも大きい周波数で振動する光の表示を用いて、照明装置100により発光される光の色の変化をユーザーが知覚することなく人間のS錐体を励起することができる。約19Hzの振動周波数は、S錐体のフリッカー融合周波数よりも大きいが、振動する第1の光10及び第2の光18と若干同期している確実な生理学的反応をS錐体が示すのに充分に低いため有用な場合がある。これらの現象について以下により詳細に記述する。
【0027】
[0032] 図3に、国際照明委員会(CIE)1931XYZ色空間内の第1の光10及び第2の光18の色を示す。CIE1931XYZ色空間は、人間が知覚する色が電磁可視スペクトルにおける特定の波長分布にどのように関連するかの視覚的表現である。CIE1931RGB色空間又は1976CIELUV色空間等の他の色空間もまた第1の光10及び第2の光18の色を定義する基礎として用いられてよい。
【0028】
[0033] 図示するように、照明装置100は、第三色覚異常共有点16により定義される第1の第三色覚異常混同色線14上に第1の色を有する第1の光10を発光する。本例において、第1の光10の第1の色は非スペクトルの黄色である。第1の第三色覚異常混同色線14は、第三色覚異常共有点16に第1の終点を有し、約573nmの単一波長でスペクトル黄色である第2の終点17を有している。第三色覚異常共有点16は、約380nmの単一波長におけるスペクトル紫色に対応する。第三色覚異常共有点16を定義する別の方法は、CIE1931XYZ内で約0.17045のx座標と約0のy座標を有することである。第三色覚異常共有点は、他の色空間では若干異なる仕方で定義されてもよい。
【0029】
[0034] 第三色覚異常の共分点16は、無限本数の第三色覚異常混同色線の終点である。すなわち、全ての第三色覚異常混同色線は第三色覚異常の共分点16を始点としている。どの特定の第三色覚異常混同色線も、人間のS錐体を励起させる程度だけが異なる色のスペクトルを定義している。すなわち、同一第三色覚異常混同色線上にある2色は、L錐体とM錐体の同一励起を生じさせるが、S錐体の異なる励起を生じさせる。ところで、これは第三色覚異常の人は、同一の第三色覚異常混同色線上にある2色を区別するのが難しいことを意味する。
【0030】
[0035] 照明装置100はまた、第三色覚異常共有点16により定義される第2の第三色覚異常混同色線20上に第2の色を有する第2の光18を発光する。本例において、第2の光18の第2の色は非スペクトルの桃色である。第2の第三色覚異常混同色線20は、第三色覚異常共有点16に第1の終点を有し、約582nmの単一波長でスペクトル黄色がかったオレンジ色である第2の終点19を有している。
【0031】
[0036] 上述のように、第2の光18は第1の光10と位相をずらして発光される。更に、第1の第三色覚異常混同色線14、第三色覚異常共有点16、及び第2の第三色覚異常混同色線20は、10度未満の角度24を形成する。図3において、角度24は必ずしも定縮尺で描かれておらず、複数の例として上で述べたものとは異なる第三色覚異常混同色線及び/又は色に対応する場合がある。図3に示す角度24及び10度の角度は単に例として挙げたものに過ぎない。様々な例において、角度24は、5度未満、2.5度未満、又は1度未満であってよく、角度24が小さいほどユーザーに知覚される色の変化が少ない。
【0032】
[0037] 注目すべきは、図3に、同一第三色覚異常混同色線上で全く整列していない2色が依然としてユーザーに利益をもたらし得ることを示す。例えば、第1の光10と第2の光18の位相ずれ振動は一般に、ユーザーのS錐体に振動励起を生じさせ、ユーザーは一般にL錐体とM錐体の励起の変化を介して僅かな色の変化しか知覚しないであろう。例えば、振動周波数19Hzは、S錐体の臨界融合周波数よりも大きいため、使用者は一般に、生じるS錐体の異なる励起を知覚しない。その代わり、ユーザーは一般に、S錐体の時間平均励起(例えば、第1の光10の第1の色と第2の光18の第2の色との中間点21を表す平均色に相当)を知覚するであろう。しかし、L錐体とM錐体の臨界融合周波数は19Hzよりも大きい(例えば、約40Hz)ため、使用者は一般に、第1の光10と第2の光18により表されるL錐体とM錐体の時間変化する励起を、少なくともある程度知覚する。S錐体の励起は一般に、励起が知覚されるか否かに依らずユーザーの概日リズムのずれを誘導する。
【0033】
[0038] 知覚される色の振動的変化を含まない経験をユーザーに提供するには、第1の光10と第2の光18を同一第三色覚異常混同色線上にあるように発光して、同一第三色覚異常混同色線上の2色の差異を知覚できる唯一の錐体であるS錐体の臨界融合周波数よりも振動周波数が大きくなるようにすることが有用である。
【0034】
[0039] 図4に、第1の光10の第1の色及び第2の光18の第2の色が同一第三色覚異常混同色線14上にある例を示す。
【0035】
[0040] 図示するように、照明装置100は、第三色覚異常共有点16により定義される第三色覚異常混同色線14上に第1の色を有する第1の光10を発光する。本例において、第1の光10の第1の色は非スペクトルの黄色である。照明装置100はまた、第三色覚異常混同色線14上に第2の色を有する第2の光18を発光する。本例において、第2の光18の第2の色は、非スペクトルの緑色がかった及び/又は黄色がかった白色である。
【0036】
[0041] 注目すべきは、図4に、同一第三色覚異常混同色線上に整列する2色が、使用者により多くの利点をもたらし得ることを示す。例えば、共通の第三色覚異常混同色線14上の色を有する第1の光10と第2の光18の位相のずれた振動は一般に、専ら使用者のS錐体だけに振動励起を与え、L錐体とM錐体の励起の変化は実質的にゼロである。例えば、19Hzの振動周波数は、S錐体の臨界融合周波数よりも大きいため、使用者は一般に、S錐体に生じる異なる励起を知覚しない。その代わり、ユーザーはS錐体の時間平均励起(例えば、第1の光10の第1の色と第2の光18の第2の色との間の第三色覚異常混同色線14上の中間点21を表す平均色と同等)を知覚する。S錐体の励起は一般に、励起が知覚されるか否かに依らず、使用者の概日リズムのずれを生じさせる。上述のように、共通第三色覚異常混同色線上の全ての色はL錐体とM錐体を同一レベルで励起する。従って、たとえ第1の光10及び第2の光18がL錐体とM錐体の臨界融合周波数未満で振動していても、L錐体又はM錐体の励起に変化は生じないため無関係である。従って、使用者は一般に時間と共に変化しない色を見るが、振動する光は概日リズムにずれを生じさせる。
【0037】
[0042] 図4に示すように、第1の光10の第1の色及び第2の光18の第2の色は、黒体軌跡31の互いに反対側にある。黒体軌跡31は、ケルビン単位で様々な温度における白熱黒体の色スペクトルを表す。汎用「白色」室内照明は往々にして黒体軌跡31に近いか又は黒体軌跡31上の色を発光する。図示するように、第1の光10と第2の光18の平均色を表す中間点21が黒体軌跡31上にある。
【0038】
[0043] 様々な例において、第2の光18の第2の色が第1の光10の第1の色よりも第三色覚異常共有点16に少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%近いことが有利な場合がある。すなわち、第2の光18と比較して第1の光10により生じるS錐体励起の変動が大きいほど一般に概日リズムのずれがよりも大きく及び/又は早くなる。
【0039】
[0044] 図5に、第1の光10の第1の色と第2の光18の第2の色が同一第三色覚異常混同色線14上にある別の例を示す。しかし、図5では、中間点21で表される平均色が黒体軌跡31上に位置していない。従って図5は専用の「白色」照明ではなく、非スペクトルの桃色のムード照明機能で概日リズムをずらすべく構成された照明装置100を表していてよい。
【0040】
[0045] 図6は方法200のブロック図である。方法200は、図1~5に示すような照明装置100により実行できる方法の一例である。図6に示すように、方法200は、ブロック202、204に示すような1個以上の動作、機能、又は処置を含んでいる。当該ブロックは一連の順序で示しているが、これらのブロックは並列に、及び/又は本明細書に記述する順序とは異なる順序で実行されてよい。また、様々なブロックは、所望の実装方式に基づいて、より少ないブロックに組み合わせても、追加的なブロックに分割されても、及び/又は除外されてもよい。
【0041】
[0046] ブロック202において、方法200は、第三色覚異常共有点16により定義される第1の第三色覚異常混同色線14上に第1の色を有する第1の光10を発光することを含んでいる。ブロック202は図1~5を参照しながら上で説明した。
【0042】
[0047] ブロック204において、方法200は、第三色覚異常共有点16により定義される第2の第三色覚異常混同色線20上に第2の色を有する第2の光18を発光することを含んでいる。第2の光18は第1の光10と位相をずらして発光される。また、第1の第三色覚異常混同色線14、第三色覚異常共有点16、及び第2の第三色覚異常混同色線20は10度未満の角度24を形成する。ブロック204は図1~5を参照しながら上で説明した。
【0043】
[0048] 様々な有利な配置の記述は例示及び説明目的で提示したものであり、網羅的であること、又は開示する形式の例に限定することは意図していない。多くの変更及び変形が当業者には明らかになろう。更に、異なる有利な例が、他の有利な例と比較して異なる利点を記述する場合がある。選択された1個又は複数の例は、これらの例の原理及び実際の応用を説明して、企図された特定の用途に適するよう様々な変更を加えた様々な例について他の当業者が本開示を理解できるように選択及び記述されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】