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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シュタルク・シフト相殺
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20241128BHJP
   H10N 60/12 20230101ALI20241128BHJP
   H10N 60/00 20230101ALI20241128BHJP
   G06F 7/38 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06N10/40
H10N60/12 A ZAA
H10N60/00 Z
G06F7/38 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523436
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 IB2022057862
(87)【国際公開番号】W WO2023084325
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】17/526,852
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】カンダーラ、アブヒナヴ
(72)【発明者】
【氏名】マッカイ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァサン、シュリカンス
(72)【発明者】
【氏名】マゲサン、イースワー
(72)【発明者】
【氏名】ガンベッタ、ジェイ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AC50
(57)【要約】
シュタルク・シフト相殺を促進するシステムおよび技術が提供される。様々な実施形態において、システムは、ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットを備えることができる。様々な場合において、制御量子ビットは、制御量子ビットをターゲット量子ビットにもつれさせる第1のトーンによって駆動され得る。様々な態様において、制御量子ビットは、第1のトーンと同時に第2のトーンによってさらに駆動され得る。様々な場合において、第2のトーンは、第1のトーンとは逆の離調符号を有し得る。様々な事例において、第1のトーンは制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こす可能性があり、第2のトーンはシュタルク・シフトを相殺することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットであって、前記制御量子ビットを前記ターゲット量子ビットにもつれさせる第1のトーンによって駆動される、前記制御量子ビットを備え、
前記制御量子ビットは、前記第1のトーンと同時に第2のトーンによって駆動され、前記第2のトーンは、前記第1のトーンとは逆の離調符号を有する、システム。
【請求項2】
前記第1のトーンが前記制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こし、前記第2のトーンが前記シュタルク・シフトを相殺する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のトーンが、前記逆の離調符号に従って前記第2のトーンの周波数を固定して、前記制御量子ビットの前記動作周波数の前記シュタルク・シフトが無効になるまで前記第2のトーンの振幅を掃引することによって較正される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御量子ビットに結合されたスペクテータ量子ビットであって、前記第2のトーンが、前記制御量子ビットの前記動作周波数が前記スペクテータ量子ビットの動作周波数と動的に衝突するのを防止する、スペクテータ量子ビットをさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のトーンが、ゼロ・ノイズ外挿手順中に前記制御量子ビットに順次に適用される時間的に伸縮された複数のトーンのうち1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットに第1のトーンを適用することであって、前記第1のトーンが前記制御量子ビットを前記ターゲット量子ビットにもつれさせる、第1のトーンを適用することと、
前記制御量子ビットに、前記第1のトーンと同時に第2のトーンを適用することであって、前記第2のトーンが前記第1のトーンとは逆の離調符号を有する、第2のトーンを適用することと
を含む方法。
【請求項7】
前記第1のトーンが前記制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こし、前記第2のトーンが前記シュタルク・シフトを相殺する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記逆の離調符号に従って前記第2のトーンの周波数を固定して、前記制御量子ビットの前記動作周波数の前記シュタルク・シフトが無効になるまで前記第2のトーンの振幅を掃引することによって、前記第2のトーンを較正することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記制御量子ビットにスペクテータ量子ビットが結合されており、前記第2のトーンが、前記制御量子ビットの前記動作周波数が前記スペクテータ量子ビットの動作周波数と動的に衝突するのを防止する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のトーンが、ゼロ・ノイズ外挿手順中に前記制御量子ビットに順次に適用される時間的に伸縮された複数のトーンのうち1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットであって、前記制御量子ビットの動作周波数のシュタルク・シフトを引き起こす第1のトーンによって駆動され、
前記シュタルク・シフトを打ち消す第2のトーンによってさらに駆動される制御量子ビット
を備えるデバイス。
【請求項12】
前記第2のトーンが前記第1のトーンとは逆の離調符号を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2のトーンが前記第1のトーンと同時に適用される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1のトーンの周波数と前記制御量子ビットの前記動作周波数との第1の絶対値差が、前記制御量子ビットの非調和性の絶対値未満であり、前記第2のトーンの周波数と前記制御量子ビットの前記動作周波数との第2の絶対値差が、前記制御量子ビットの前記非調和性の前記絶対値未満である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第2のトーンが、前記制御量子ビットの前記動作周波数が隣接した量子ビットの動作周波数と衝突するのを防止する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットに、前記制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こす第1のトーンを適用することと、
前記制御量子ビットに、前記シュタルク・シフトを打ち消す第2のトーンを適用することと
を含む方法。
【請求項17】
前記第2のトーンが前記第1のトーンとは逆の離調符号を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のトーンが前記第1のトーンと同時に適用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のトーンの周波数と前記制御量子ビットの前記動作周波数との第1の絶対値差が、前記制御量子ビットの非調和性の絶対値未満であり、前記第2のトーンの周波数と前記制御量子ビットの動作周波数との第2の絶対値差が、前記制御量子ビットの前記非調和性の前記絶対値未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のトーンが、前記制御量子ビットの前記動作周波数が、隣接した量子ビットの動作周波数と衝突するのを防止する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
量子ビット格子を備える装置であって、
前記量子ビット格子の中の制御量子ビットが量子もつれゲート・トーンによって駆動され、
前記制御量子ビットが、前記量子もつれゲート・トーンとは逆の離調符号を有するシュタルク・シフト相殺トーンによって前記量子もつれゲート・トーンと同時に駆動される、
装置。
【請求項22】
前記量子もつれゲート・トーンが前記制御量子ビットの動作周波数を増加させ、前記シュタルク・シフト相殺トーンが前記制御量子ビットの前記動作周波数を減少させる、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記量子もつれゲート・トーンが前記制御量子ビットの動作周波数を減少させ、前記シュタルク・シフト相殺トーンが前記制御量子ビットの前記動作周波数を増加させる、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記シュタルク・シフト相殺トーンの周波数が前記量子ビット格子における最高の動作周波数よりも高く、それによって、前記制御量子ビットの動作周波数が前記量子ビット格子の中のスペクテータ量子ビットの動作周波数と衝突するのを防止する、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記シュタルク・シフト相殺トーンの周波数が前記量子ビット格子における最低の動作周波数よりも低く、それによって、前記制御量子ビットの動作周波数が前記量子ビット格子の中のスペクテータ量子ビットの動作周波数と衝突するのを防止する、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主題開示は量子ビットに関し、より詳細には量子ビットのシュタルク・シフト相殺に関する。
【発明の概要】
【0002】
以下は、本発明の1つまたは複数の実施形態の基本的理解を提供するために概要を提示するものである。この概要は、特定の実施形態のいずれか範囲または特許請求の範囲のいずれか範囲の主要または重要な要素の同定または輪郭づけを意図したものではない。この概要の唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前ぶれとして、概念を簡単な形で提示することである。本明細書で説明される1つまたは複数の実施形態では、シュタルク・シフト相殺を促進することができるデバイス、システム、コンピュータ実施方法、装置、またはコンピュータ・プログラム製品あるいはその組合せが説明される。
【0003】
1つまたは複数の実施形態によれば、システムが提供される。システムは、ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットを備えることができる。様々な態様において、制御量子ビットは第1のトーンによって駆動され得、第1のトーンは、制御量子ビットをターゲット量子ビットにもつれさせることができる。様々な事例において、制御量子ビットは、第1のトーンと同時に第2のトーンによって駆動され得る。様々な場合において、第2のトーンは、第1のトーンとは逆の離調符号を有し得る。様々な態様において、第1のトーンは制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こす可能性があり、第2のトーンはシュタルク・シフトを相殺することができる。
【0004】
1つまたは複数の実施形態によれば、デバイスが提供される。デバイスは、ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットを備えることができる。様々な態様において、制御量子ビットは第1のトーンによって駆動され得、第1のトーンは、制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こす可能性がある。様々な事例において、制御量子ビットは、第2のトーンによって駆動され得る。様々な場合において、第2のトーンはシュタルク・シフトを打ち消すことができる。様々な場合において、第2のトーンは、第1のトーンとは逆の離調符号を有し得る。様々な場合において、第2のトーンは第1のトーンと同時に適用され得る。様々な場合において、第1のトーンの周波数と制御量子ビットの動作周波数との第1の絶対値差は、制御量子ビットの非調和性の絶対値未満であり得、第2のトーンの周波数と制御量子ビットの動作周波数との第2の絶対値差は、制御量子ビットの非調和性の絶対値未満であり得る。
【0005】
1つまたは複数の実施形態によれば、装置が提供される。装置は、量子ビット格子を備えることができる。様々な態様において、量子ビット格子の中の制御量子ビットは、量子もつれゲート・トーンによって駆動され得る。様々な事例において、制御量子ビットは、量子もつれゲート・トーンと同時にシュタルク・シフト相殺トーンによって駆動され得る。様々な場合において、シュタルク・シフト相殺トーンは、量子もつれゲート・トーンとは逆の離調符号を有し得る。
【0006】
1つまたは複数の実施形態によれば、前述のシステム、デバイス、または装置あるいはその組合せは、方法として実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進する非限定的なシステムの一例のブロック図である。
図2】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、駆動トーン周波数の関数としてのシュタルク・シフトを示す、例示の非限定的なグラフである。
図3】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺トーンの較正を促進する非限定的な方法の一例の流れ図である。
図4】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を用いるゼロ・ノイズ外挿の実行を促進する非限定的な方法の一例の流れ図である。
図5】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進する、スペクテータ量子ビットを含む非限定的なシステムの一例のブロック図である。
図6】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺が適用され得る、量子ビット格子を含む非限定的なシステムの一例のブロック図である。
図7】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進する非限定的な方法の一例の流れ図である。
図8】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進する非限定的な方法の一例の流れ図である。
図9】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態が促進され得る非限定的な動作環境の一例のブロック図である。
図10】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による例示の非限定的なクラウド・コンピュータ環境を示す図である。
図11】本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による例示の非限定的な抽象化モデル層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、単なる実例であり、実施形態または実施形態の用途もしくは使用法あるいはその両方を限定するようには意図されていない。その上、先の背景技術もしくは発明の概要の段落、または発明を実施するための形態の段落において表現または示唆された情報によって束縛される意図もない。
【0009】
次に、図面を参照しながら1つまたは複数の実施形態が説明され、図面の全体にわたって、類似の参照数字は類似の要素を指すように使用される。以下では、説明の目的で、1つまたは複数の実施形態のより十分な理解を提供するために、多くの特定の詳細が明記される。しかしながら、様々な事例において、1つまたは複数の実施形態が、これらの特定の詳細なしで実施され得ることが明らかである。
【0010】
主題開示は、量子回路を使用する量子計算に関する。量子計算は、情報を符号化して処理するのに、トランジスタに基づく2進のデジタル技術ではなく量子物理学を採用する。量子計算デバイスは、量子物理学の法則に従って動作し、重ね合わせやもつれなどの現象を示すことができる量子ビット(quantum bit)(量子ビット(qubit)とも称される)を採用することができる。量子物理学の重ね合わせの原理は、量子ビットが、部分的に、「1」の値と「0」の値の両方を同時に表す状態になることを可能にする。量子物理学のもつれ原理により、量子ビットの組み合わせた状態が個々の量子ビットの状態に分解され得ないように、量子ビットが互いに相関することが可能になる。たとえば、第1の量子ビットの状態は第2の量子ビットの状態に依拠し得る。そのため、量子回路は、トランジスタに基づく2進のデジタル技術とはかなり異なり得るやり方で情報を符号化して処理する量子ビットを採用することができる。
【0011】
量子ビットには種々のタイプがある。量子ビットのタイプの1つには、周波数または磁束を調整可能な量子ビットがあり、これは、ジョセフソン接合のセットを含み得る超伝導量子干渉デバイス(SQUID)ループを備えることができ、またはSQUIDループに関連付けられ得て、SQUIDループの機能の実行を促進する。磁束調整可能な量子ビットの周波数は、SQUIDループを通過する磁束を変化させることによって調節または調整され得る。量子ビットの別のタイプには、固定周波数の量子ビットがあり得る。固定周波数の量子ビットは、SQUIDループではなく単一のジョセフソン接合を備えることができる。SQUIDループを通過する磁束を変化させることによってその周波数を調節し得る、周波数または磁束を調整可能な量子ビットとは対照的に、固定周波数の量子ビットの周波数は固定され得、通常は、容易にまたは簡単には変化され得ない。固定周波数の量子ビットの周波数は、一般に、固定周波数の量子ビットを生成するために利用される製作プロセスの詳細によって確率的に判定される。固定周波数の量子ビットには、磁束線を必要とせず、したがって、配線もしくは他の回路、または低温槽内の構成要素がより少なくなり、そのような量子ビットの動作のための制御電子回路は、周波数または磁束を調整可能な量子ビットよりも少なくなり、磁束ノイズの影響を受けにくいという利点がある。
【0012】
量子計算の分野では、量子もつれゲート(たとえば、CNOTゲート、制御位相ゲート)は、(たとえば制御量子ビットを駆動することにより)制御量子ビットを、制御量子ビットに結合されたターゲット量子ビットの動作周波数(たとえば遷移周波数)と一致する周波数を有するマイクロ波トーンに暴露することによって、制御量子ビットに適用され得る。そのようなマイクロ波トーンは、マイクロ波トーンの周波数が制御量子ビットの動作周波数と一致しないので、非共振トーンと称され得る。なおまた、制御量子ビットにマイクロ波トーンが適用され得、マイクロ波トーンの周波数がターゲット量子ビットの動作周波数と一致し得るので、マイクロ波トーンは、制御量子ビットとターゲット量子ビットの両方の状態を変換することができ、そのような変換は、マイクロ波トーンの振幅または持続時間あるいはその両方によって確定され得る。たとえば、所与の振幅または持続時間あるいはその両方によって、マイクロ波トーンは、制御量子ビットおよびターゲット量子ビットに対して所与のゲート(たとえばCNOTゲート)を実行することができ、一方、異なる振幅または持続時間あるいはその両方によって、マイクロ波トーンは、制御量子ビットおよびターゲット量子ビットに対して異なるゲート(たとえば制御位相ゲート)を実行することができる。いずれにせよ、そのようなマイクロ波トーンは、制御量子ビットをターゲット量子ビットにもつれさせることができるが、制御量子ビットの動作周波数も変化させてしまう可能性があり、この変化はシュタルク・シフトと称される。言い換えれば、非共振トーンを用いて制御量子ビットを駆動すると、制御量子ビットの動作周波数が上方または下方へシフトする可能性がある。
【0013】
シュタルク・シフトは、様々な理由で望ましくないことがある。たとえば、シュタルク・シフトは動的周波数衝突を引き起こす可能性がある。言い換えれば、制御量子ビットがシュタルク・シフトを経験すると、制御量子ビットの動作周波数が新規の値にシフトし得、そのような新規の値は、隣接した量子ビットまたは観測された量子ビットあるいはその両方の動作周波数の任意の適切な閾値マージンと等しいおよび/またはその範囲内にあり得る。そのような場合には、制御量子ビットのシフトした動作周波数が、隣接した量子ビットまたは観測された量子ビットあるいはその両方の動作周波数に近すぎると考えられ、これは、制御量子ビットと、隣接した量子ビット/観測された量子ビットとが、互いに干渉したり、量子計算の目的に適した区別ができなくなったりすることを意味する。
【0014】
別の例として、シュタルク・シフトはゼロ・ノイズ外挿を妨害する可能性がある。当業者なら認識するように、ゼロ・ノイズ外挿はエラー軽減技術であり、ゼロ・ノイズ限界が外挿によって識別され得るように、ノイズ・レベルを変化させながら(たとえば、1つまたは複数の関心のある量子ゲートを適用した後の)結果の量子状態の複数の測定値を得ることを包含している。実際には、量子ゲートのノイズ・レベルを制御可能に変化させるのは非常に困難なことがある。時間不変ノイズを仮定すると、量子ゲートを特定の係数で時間的に伸ばす(たとえばそのような量子ゲートを実行するマイクロ波トーンの持続時間を特定の係数だけ増やし、マイクロ波トーンの振幅を適切に再度較正する)ことは、その量子ゲートに関連するノイズを同一の係数で増幅するのと同等であることが示されている。しかしながら、残念なことに、制御量子ビットが経験するシュタルク・シフトは、駆動周波数の関数であるばかりでなく、駆動振幅の関数でもある。したがって、量子ゲートを繰返し時間的に伸ばし、対応して量子ゲートの駆動振幅を再スケーリングすることによって制御量子ビットにゼロ・ノイズ外挿を実行すると、それぞれの繰返しにおいて(たとえばそれぞれの繰返しで再度スケーリングされた振幅によって)、制御量子ビットが異なるシュタルク・シフトを経験する可能性があり、対応して、制御量子ビットの緩和時間が、それぞれの繰返しにおいて大幅に異なる可能性がある。言い換えれば、シュタルク・シフトの存在により、時間不変ノイズの仮定が成立しない場合があり、ゼロ・ノイズ外挿によって非常に不正確な結果がもたらされる可能性がある。この問題は、欠陥二準位系と相互作用する超伝導量子ビットにとって特に深刻になる可能性がある。
【0015】
したがって、これらの技術的問題のうち1つまたは複数に対処するシステムまたは技術あるいはその両方が望ましい。
【0016】
本発明の様々な実施形態が、これらの技術的問題のうち1つまたは複数に対処することができる。具体的には、本発明の様々な実施形態は、シュタルク・シフト相殺を促進し得るシステムまたは技術あるいはその両方を提供することができる。詳細には、本発明者は、マイクロ波トーンによって駆動される時に制御量子ビットが経験するシュタルク・シフトの方向が、様々な場合においてマイクロ波トーンの離調符号に依拠し得ることを認識した。すなわち、マイクロ波トーンの離調が正であれば、制御量子ビットは1つの方向のシュタルク・シフトを経験し得る(たとえば、制御量子ビットの動作周波数が増加または減少し得る)。対照的に、マイクロ波トーンの離調が代わりに負であれば、制御量子ビットは反対方向のシュタルク・シフトを経験し得る(たとえば、正の離調符号で制御量子ビットの動作周波数が増加するなら、負の離調符号で制御量子ビットの動作周波数が減少し得、正の離調符号で制御量子ビットの動作周波数が減少するなら、負の離調符号で制御量子ビットの動作周波数が増加し得る)。したがって、本発明者は、第1のマイクロ波トーンによって駆動されている制御量子ビットが経験するシュタルク・シフトは、第1のマイクロ波トーンとは逆の離調符号を有する第2のマイクロ波トーンで同時に駆動することにより、相殺したり無効化したりすることが可能であることを理解した。言い換えれば、第1のマイクロ波トーンは、制御量子ビットの動作周波数を増加または減少させ得、第2のマイクロ波トーンは、制御量子ビットのシフトされた動作周波数を、減少または増加させて戻すことができる。結果として、制御量子ビットの動作周波数の変化は、ゼロに、またはあらゆる適切な閾値よりも小さいものになり得る。言い換えれば、本明細書で説明された様々な実施形態の発明者は、シュタルク・シフトを解消するかまたはかなり低減することができる技術を考案した。したがって、シュタルク・シフトによって引き起こされる動的周波数衝突も同様に解消または低減され得て、シュタルク・シフトによって妨害されるゼロ・ノイズ外挿が、より正確に実行され得る。
【0017】
詳細には、本明細書で説明された様々な実施形態は、ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットを含むことができる。様々な態様において、制御量子ビットは、量子ビット挙動を示すことができる(たとえば2つの基本状態の重ね合わせが可能な)任意の適切なタイプの量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方であり得る。たとえば、制御量子ビットは、1つまたは複数のジョセフソン接合から成る超伝導量子ビット(たとえば、位相量子ビット、電荷量子ビット、磁束量子ビット、トランズモン量子ビット)であり得る。別の例として、制御量子ビットは、スピン量子ビットまたは量子ドットあるいはその両方であり得る。同様に、ターゲット量子ビットは、量子ビット挙動を示すことができる任意の適切な量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方(たとえば、超伝導量子ビット、スピン量子ビット、または量子ドットあるいはその組合せ)であり得る。いずれにせよ、制御量子ビットは、特定の動作周波数(たとえば特定の遷移周波数)を有したり示したりまたはその両方を行うことができ、ターゲット量子ビットは、別の動作周波数(たとえば別の遷移周波数)を有したり示したりまたはその両方を行うことができる。
【0018】
様々な態様において、制御量子ビットは、任意の適切な量子計算カプラによってターゲット量子ビットに結合され得る。たとえば、場合によっては、量子計算カプラは、ターゲット量子ビットに制御量子ビットを直接結合する1つまたは複数の超伝導体ケーブルまたは超伝導体ワイヤあるいはその両方を含むことができる。別の例として、量子計算カプラは、ターゲット量子ビットに制御量子ビットを容量結合する1つまたは複数の超伝導体ケーブルまたは超伝導体ワイヤあるいはその両方を含むことができる。さらに別の例として、量子計算カプラは、前述のものの任意の適切な組合せを含むことができる。
【0019】
様々な事例において、制御量子ビットは、第1のマイクロ波トーンによって駆動され得、または第1のマイクロ波トーンに暴露され得、あるいはその両方が可能である。より具体的には、当業者なら認識するように、任意の適切な電子制御回路(たとえば波形発生器)が、第1の駆動ライン(たとえば第1の超伝導体ケーブル/超伝導体ワイヤ)によって制御量子ビットに結合され得、電子制御回路は第1のマイクロ波トーンを生成することができ、第1の駆動ラインは、電子制御回路から制御量子ビットへ第1のマイクロ波トーンを搬送することができる。様々な場合において、第1のマイクロ波トーンは量子もつれトーンであり得る。言い換えれば、第1のマイクロ波トーンは、制御量子ビットとターゲット量子ビットとに所望の量子もつれゲート(たとえば、CNOTゲート、制御位相ゲート)を実行することができる。そのようなもつれを促進するために、第1のマイクロ波トーンの周波数は、ターゲット量子ビットの動作周波数と等しい(および/または動作周波数の任意の適切な閾値マージンの範囲内にある)ことがあり得、第1のマイクロ波トーンの振幅または持続時間あるいはその両方が、所望の量子もつれゲートを実行するように任意の適切な大きさに較正され得る。そのため、ターゲット量子ビットの動作周波数が制御量子ビットの動作周波数よりも低ければ、第1のマイクロ波トーンは負の離調符号を有すると見なされ得る(たとえば、第1のマイクロ波トーンの周波数はターゲット量子ビットの動作周波数と等しくなり得、したがって、第1のマイクロ波トーンの周波数と制御量子ビットの動作周波数との間の差は負数になり得る)。対照的に、ターゲット量子ビットの動作周波数が制御量子ビットの動作周波数よりも高ければ、第1のマイクロ波トーンは正の離調符号を有すると見なされ得る(たとえば、第1のマイクロ波トーンの周波数はターゲット量子ビットの動作周波数と等しくなり得、したがって、第1のマイクロ波トーンの周波数と制御量子ビットの動作周波数との間の差は正数になり得る)。いずれにせよ、制御量子ビットは、第1のマイクロ波トーンに暴露されたとき第1のシュタルク・シフトを経験し得、第1のシュタルク・シフトの方向は第1のマイクロ波トーンの離調符号に依拠し得る。
【0020】
様々な態様において、制御量子ビットは、第2のマイクロ波トーンによってさらに駆動され得、または第2のマイクロ波トーンにさらに暴露され得、あるいはその両方が可能である。より具体的には、当業者なら認識するように、任意の適切な電子制御回路(たとえば波形発生器)が、第2の駆動ライン(たとえば第2の超伝導体ケーブル/超伝導体ワイヤ)を介して制御量子ビットに結合され得、電子制御回路は第2のマイクロ波トーンを生成することができ、第2の駆動ラインは、電子制御回路から制御量子ビットへ第2のマイクロ波トーンを搬送することができる。様々な事例において、第2のマイクロ波トーンは、第1のマイクロ波トーンと同時に(および/または第1のマイクロ波トーンの任意の適切な閾値時間間隔の範囲内で)制御量子ビットに適用され得る。様々な場合において、第2のマイクロ波トーンはシュタルク・シフト相殺トーンと見なされ得る。言い換えれば、本明細書で説明されたように、第1のマイクロ波トーンによって引き起こされる第1のシュタルク・シフトの、第2のマイクロ波トーンによる相殺、無効化、または打消しあるいはその組合せが可能である。そのような相殺、無効化、または打消しあるいはその組合せを促進するために、第2のマイクロ波トーンは、第1のマイクロ波トーンの離調符号とは逆の離調符号を有し得る。したがって、第1のマイクロ波トーンの離調符号が負であると(たとえば第1のマイクロ波トーンの周波数が制御量子ビットの動作周波数よりも低いと)、第2のマイクロ波トーンの離調符号は正になり得る(たとえば、第2のマイクロ波トーンの周波数は制御量子ビットの動作周波数よりも高く設定され得る)。他方では、第1のマイクロ波トーンの離調符号が正であると(たとえば第1のマイクロ波トーンの周波数が制御量子ビットの動作周波数よりも高いと)、第2のマイクロ波トーンの離調符号は負になり得る(たとえば、第2のマイクロ波トーンの周波数は制御量子ビットの動作周波数よりも低く設定され得る)。したがって、様々な場合において、制御量子ビットは、第2のマイクロ波トーンに暴露されたとき、第1のマイクロ波トーンによって引き起こされる第1のシュタルク・シフトとは逆方向の第2のシュタルク・シフトを経験し得る。言い換えれば、第1のマイクロ波トーンは、制御量子ビットの動作周波数を一方向(たとえば増加方向)に移動させ得、第2のマイクロ波トーンは、制御量子ビットの動作周波数を逆方向(たとえば減少方向)に移動させ得る。したがって、適切な振幅較正を用いて、第1のシュタルク・シフトの大きさを、第2のシュタルク・シフトの大きさと等しく(および/またはその大きさの任意の適切な閾値マージンの範囲内にある)ようにすることができ、結果として、第2のシュタルク・シフトが第1のシュタルク・シフトを取り消す。すなわち、第1のマイクロ波トーンと同時に第2のマイクロ波トーンを適用すると、制御量子ビットが経験する動作周波数の変化は結局ゼロになり、制御量子ビットがシュタルク・シフトを全く経験しないかのようになることを意味する。
【0021】
したがって、本明細書で説明された様々な実施形態は、シュタルク・シフトの大きさを相殺するかまたはかなり低減することができるシステムまたは技術あるいはその両方と見なされ得る。したがって、シュタルク・シフトによって引き起こされ得る動的周波数衝突も回避または低減され得て、シュタルク・シフトによって妨害されるゼロ・ノイズ外挿が、より正確に実行され得る。
【0022】
本発明の様々な実施形態は、事実上高度に技術的な問題(たとえばシュタルク・シフト相殺を促進すること)を解決するために、ハードウェアまたはソフトウェアあるいはその両方を使用するように採用され得、抽象的なものではなく、単なる自然法則ではなく、単なる自然現象ではなく、人間による精神的な行為のセットとして実行できないものである。むしろ、本明細書で説明された様々な実施形態は、シュタルク・シフトの技術的問題の低減、緩和、または改善あるいはその組合せのために実施され得る、有体の量子計算構造/アーキテクチャ、または有体の量子計算構造/アーキテクチャに関する技法、あるいはその両方を含む。実際、前述のように、シュタルク・シフトはゼロ・ノイズ外挿の性能をかなり妨げる可能性がある(たとえば、量子ビットの、周波数付近における欠陥を伴う2レベル量子システムとの相互作用により、可変の緩和時間が生じることがあり、そのような緩和時間は、シュタルク・シフトによって大きく変動する可能性がある)。なおまた、上記でも言及されたように、シュタルク・シフトは、制御量子ビットと1つまたは複数の隣接した/観測された量子ビットとの間の動的周波数衝突を引き起こす可能性がある。残念ながら、既存のシステム/技術は、シュタルク・シフトの問題に対していかなる緩和も提供していない。
【0023】
対照的に、本明細書で説明された様々な実施形態は、シュタルク・シフトの問題に対処することができる。具体的には、本明細書で説明されたシステム/技術は、制御量子ビットを、制御量子ビットに結合されたターゲット量子ビットともつれさせる第1のマイクロ波トーンで駆動し、同時に、第2のマイクロ波トーンで駆動することを含むことができる。様々な事例において、第2のマイクロ波トーンは、第1のマイクロ波トーンの離調符号とは逆の離調符号を有し得る。したがって、第1のマイクロ波トーンが制御量子ビットの動作周波数を増加方向または減少方向にシフトしても、第2のマイクロ波トーンが制御量子ビットの動作周波数を逆方向シフトすることができ、結果として、制御量子ビットの動作周波数の変化は正味でゼロになり得る。言い換えれば、第1のマイクロ波トーンによって引き起こされるシュタルク・シフトの、第2のマイクロ波トーンによる相殺または打消しあるいはその両方が生じると考えられ得る。本明細書で説明された様々な実施形態は、シュタルク・シフトの問題を緩和することができるので、そのような実施形態は、量子計算の分野において、具体的かつ明確な技術的改善を確実に構成する。
【0024】
なおまた、本明細書で説明された様々な実施形態は、単なる一時的な信号または伝搬波形あるいはその両方を対象とするものではないことを強調する必要がある。本明細書で説明されたように、本発明の様々な実施形態は、制御量子ビットが非共振信号/トーンによって駆動されるときの制御量子ビットの動作周波数の変化を指すシュタルク・シフトの技術的問題を解決することができる。本明細書で説明されたように、本発明者が考案した、この技術的問題に対する解決策は、逆の離調符号を有する別の非共振信号/トーンで制御量子ビットを同時に駆動することを含む。したがって、本発明の様々な実施形態は、そのようなマイクロ波トーン/信号またはマイクロ波トーン/信号の制御パラメータ(たとえば、周波数、持続時間、振幅)あるいはその両方について論じること/説明することなしには、知的な説明は不可能である。本発明の様々な実施形態は、マイクロ波トーン/信号のそのような説明/議論にもかかわらず、そのようなマイクロ波トーン/信号に限定されず、それらに加えてかなりのものを含む。むしろ、そのような実施形態は、そのようなマイクロ波トーン/信号を生成したりこれに反応したりする、具体的な有体の非一時的量子計算構造/アーキテクチャ(たとえば、ターゲット量子ビットに結合された制御量子ビットであり、第1のトーンで駆動されることによってシュタルク・シフトを経験する可能性がある。シュタルク・シフトは、第1のトーンとは逆の離調符号を有する第2のトーンで制御量子ビットを同時に駆動することによって解消され得る)を対象とするものである。
【0025】
その上、本発明の様々な実施形態は、開示された教示に基づいて、有体の、ハードウェア・ベースまたはソフトウェア・ベースあるいはその両方のデバイスを制御することができる。たとえば、本発明の実施形態に含まれ得る有体の量子ビット(たとえばジョセフソン接合で構成された超伝導量子ビット)の動作周波数は、本明細書で説明された教示によってシュタルク・シフトから保護され得る。
【0026】
図および本明細書の開示は、本発明の様々な実施形態の非限定的な例を説明するものであることを認識されたい。
【0027】
図1は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進することができる非限定的なシステム100の一例のブロック図を示す。
【0028】
様々な実施形態において、システム100は制御量子ビット102およびターゲット量子ビット104を含むことができる。様々な態様において、制御量子ビット102は、量子ビット挙動を示すことができる任意の適切な量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方であり得る。たとえば、制御量子ビット102は、1つまたは複数のジョセフソン接合で構成されており、磁束量子ビット、電荷量子ビット、位相量子ビット、トランズモン量子ビット、またはそれらの任意の適切な変形形態、あるいはその組合せなどの超伝導量子ビットであり得る。別の例として、制御量子ビット102はスピン量子ビットであり得る。もう一つの例として、制御量子ビット102は量子ドットであり得る。いずれにせよ、制御量子ビット102は、任意の適切な振幅を有する初期の動作周波数を示すことができる。説明のために、制御量子ビット102の初期の動作周波数はωcontrol_initialと表され得る。
【0029】
様々な態様において、ターゲット量子ビット104は、量子ビット挙動を示すことができる任意の適切な量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方であり得る。たとえば、ターゲット量子ビット104は、1つまたは複数のジョセフソン接合で構成されており、磁束量子ビット、電荷量子ビット、位相量子ビット、トランズモン量子ビット、またはそれらの任意の適切な変形形態、あるいはその組合せなどの超伝導量子ビットであり得る。別の例として、ターゲット量子ビット104はスピン量子ビットであり得る。もう一つの例として、ターゲット量子ビット104は量子ドットであり得る。いずれにせよ、ターゲット量子ビット104は、任意の適切な振幅を有する動作周波数を示すことができる。説明のために、ターゲット量子ビット104の動作周波数はωtargetと表され得る。様々な態様において、制御量子ビット102の初期の動作周波数はターゲット量子ビット104の動作周波数とは異なり得る。すなわち、ωcontrol_initial≠ωtargetである。
【0030】
場合によっては、制御量子ビット102は、ターゲット量子ビット104と同一タイプの量子ビットであり得る(たとえば、どちらもトランズモン量子ビットであり得る)。他の場合には、制御量子ビット102は、ターゲット量子ビット104と異なるタイプの量子ビットであり得る(たとえば、一方がトランズモン量子ビットであり得、他方が位相量子ビットであり得る)。
【0031】
様々な態様において、制御量子ビット102はカプラ106を介してターゲット量子ビット104に結合され得る。様々な事例において、カプラ106は、2つの量子ビットを電気的に結合することができる、任意の適切な量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方であり得る。たとえば、カプラ106は、制御量子ビット102を、ターゲット量子ビット104に、物理的に、または直接的に、あるいはその両方で取り付ける1つまたは複数の超電導線であり得る。別の例として、カプラ106は、制御量子ビット102を、ターゲット量子ビット104に、容量的に取り付ける1つまたは複数の超電導線であり得る。もう一つの例として、カプラ106は、制御量子ビット102を、ターゲット量子ビット104に、物理的に、または容量的に、あるいはその両方で結合する1つまたは複数のマイクロ波共振器であり得る。いずれにせよ、制御量子ビット102とターゲット量子ビット104との間のもつれを促進し得るように、カプラ106は、制御量子ビット102をターゲット量子ビット104に対して電磁的に結合することができる。図1は、カプラ106を真っすぐな単一の経路として表しているが、これは図示の容易さのための単なる非限定的な例である。当業者なら、カプラ106は、任意の適切な形状、サイズ、寸法、または経路数、あるいはその組合せを示し得ることを認識するであろう。
【0032】
図1には明示的に示されていないが、当業者なら、制御量子ビット102、ターゲット量子ビット104およびカプラ106は、任意の適切な量子計算基板上で組み立てたり製造したりされ得ることを認識するであろう。たとえば、制御量子ビット102、ターゲット量子ビット104、およびカプラ106は、シリコンウェーハ上で組み立てたり製造したりされ得る。その上、当業者なら、制御量子ビット102、ターゲット量子ビット104、およびカプラ106は、フォトリソグラフィ、堆積、または2倍角蒸発あるいはその組合せなどの任意の適切な微細加工技術またはナノ加工技術あるいはその両方によって組み立てたり製造したりされ得ることを認識するであろう。
【0033】
様々な実施形態において、制御量子ビット102は量子もつれゲート・トーン108によって駆動され得る。様々な態様において、量子もつれゲート・トーン108は、制御量子ビット102をターゲット量子ビット104にもつれさせることができる任意の適切なマイクロ波信号またはマイクロ波波形あるいはその両方であり得る。様々な事例において、量子もつれゲート・トーン108は、ωentangleとして表される任意の適切な周波数を有し得る。様々な場合において、量子もつれゲート・トーン108は、Ωentangleとして表される任意の適切な振幅を有し得る。図1には明示的に示されていないが、量子もつれゲート・トーン108は任意の適切な持続時間を有し得る。制御量子ビット102とターゲット量子ビット104との間のもつれを促進するために、量子もつれゲート・トーン108の周波数は、ターゲット量子ビット104の動作周波数と等しい(および/または、等しくない場合は、動作周波数の任意の適切な閾値マージンの範囲内にある)ことがあり得る。すなわち、ωentangle=ωtargetである。
【0034】
当業者なら認識するように、量子もつれゲート・トーン108の振幅または持続時間あるいはその両方が、量子もつれゲート・トーン108によって促進されるもつれのタイプを制御するように、制御可能に調節したり変調したりまたはその両方を行い得る。たとえば、場合によっては、量子もつれゲート・トーン108の振幅または持続時間あるいはその両方がいくらかの特定の値に設定され得ることにより、量子もつれゲート・トーン108が、制御量子ビット102およびターゲット量子ビット104に対してCNOTゲートを実行し得る。他の場合には、量子もつれゲート・トーン108の振幅または持続時間あるいはその両方が他のいくらかの特定の値に設定され得ることにより、量子もつれゲート・トーン108が、制御量子ビット102およびターゲット量子ビット104に対して、制御された位相ゲートを実行し得る。したがって、量子もつれゲート・トーン108の振幅または持続時間あるいはその両方を制御可能に調節することによって任意の適切なタイプの量子もつれ動作が達成され得る。
【0035】
図1には明示的に示されていないが、当業者なら、第1の駆動ライン(たとえば任意の適切な超電導線)を通じて制御量子ビット102に結合された任意の適切な電子制御回路(たとえば任意の波形発生器)が存在し得ることを認識するであろう。したがって、様々な態様において、そのような電子制御回路は量子もつれゲート・トーン108を生成することができ、第1の駆動ラインは、制御量子ビット102に量子もつれゲート・トーン108を送信したり搬送したりまたはその両方を行うことができる。
【0036】
様々な態様において、制御量子ビット102は、量子もつれゲート・トーン108によってシュタルク・シフトを経験する可能性がある。言い換えれば、制御量子ビット102は、量子もつれゲート・トーン108に暴露されたとき、動作周波数が、初期の動作周波数ωcontrol_initialからωcontrol_shiftedと表される別の動作周波数へと変化したりシフトしたりまたはその両方を行う可能性がある。詳細には、このシュタルク・シフトは、次式によって近似的に定義され得、
【数1】

ωcontrol_shifted-ωcontrol_initialは、量子もつれゲート・トーン108に応答して制御量子ビット102が経験するシュタルク・シフトを表し、αcontrolは、制御量子ビット102の非調和性を表し、Δentangle=ωentangle-ωcontrol_initialは、量子もつれゲート・トーン108の離調を表す。この式から理解され得るように、シュタルク・シフトの符号(たとえば、ωcontrol_shifted-ωcontrol_shifted>0か、それともωcontrol_shifted-ωcontrol_shifted<0か)は、量子もつれゲート・トーン108の離調符号(たとえば、Δentangle>0か、それともΔentangle<0か)に依拠し得る。つまり、シュタルク・シフトの方向(たとえば、シュタルク・シフトは、制御量子ビット102の動作周波数の増加を表すのか、それとも減少を表すのか)は、量子もつれゲート・トーン108の周波数と制御量子ビット102の初期の動作周波数との間の差の符号の関数であり得る(たとえば、そのような差が正数かそれとも負数かということに依拠し得る)。したがって、本明細書で説明されたように、本発明者は、量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされるシュタルク・シフトは、逆の離調符号を有する制御量子ビット102に別のトーンを適用することによって相殺したり打ち消したりまたはその両方を行い得ることを理解した。
【0037】
具体的には、様々な実施形態において、制御量子ビット102は、シュタルク・シフト相殺トーン110によってさらに駆動され得る。様々な態様において、シュタルク・シフト相殺トーン110は、量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされるシュタルク・シフトを、打ち消したり、無効にしたり、相殺したりまたはその両方を行うことができる任意の適切なマイクロ波信号またはマイクロ波波形あるいはその両方であり得る。様々な事例において、シュタルク・シフト打消しトーン110は、ωStarkとして表される任意の適切な周波数を有し得る。様々な場合において、シュタルク・シフト打消しトーン110は、ΩStarkとして表される任意の適切な振幅を有し得る。図1には明示的に示されていないが、シュタルク・シフト打消しトーン110は任意の適切な持続時間を有し得る。図1には明示的に示されていないが、当業者なら、第2の駆動ライン(たとえば任意の適切な超電導線)によって制御量子ビット102に結合された任意の適切な電子制御回路(たとえば任意の波形発生器)が存在し得ることを認識するであろう。したがって、様々な態様において、そのような電子制御回路はシュタルク・シフト打消しトーン110を生成することができ、第2の駆動ラインは、制御量子ビット102にシュタルク・シフト打消しトーン110を送信したり搬送したりまたはその両方を行うことができる。
【0038】
量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされるシュタルク・シフトに対する相殺、無効化または逆作用あるいはその組合せを促進するために、量子もつれゲート・トーン108と同時に(および/または第1のマイクロ波トーンの任意の適切な閾値時間窓の範囲内で)制御量子ビット102にシュタルク・シフト相殺トーン110が適用され得る。その上、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数は、シュタルク・シフト相殺トーン110の離調の符号が量子もつれゲート・トーン108の離調の符号とは逆になるような任意の適切な値に設定され得る。すなわち、ωentangleおよびωcontrol_initialが与えられたとき、ωStarkの値は、(ωStark-ωcontrol_initial)(ωentangle-ωcontrol_initial)<0となるように選択され得、(ωStark-ωcontrol_initial)=ΔStarkはシュタルク・シフト相殺トーン110の離調を表し、(ωentangle-ωcontrol_initial)=Δentangleは、量子もつれゲート・トーン108の離調を表す。
【0039】
より具体的には、様々な態様において、シュタルク・シフト相殺トーン110の離調符号が量子もつれゲート・トーン108の離調符号とは逆のとき(たとえば、ΔStarkΔentangle<0のとき)、制御量子ビット102の動作周波数は、シュタルク・シフト相殺トーン110によって、量子もつれゲート・トーン108によるシフト方向とは逆の方向にシフトされ得る。言い換えれば、量子もつれゲート・トーン108は、ωcontrol_initialをωcontrol_shiftedにシフトすると見なされ得、シュタルク・シフト相殺トーン110は、ωcontrol_shiftedをωcontrol_initialにシフトすると見なされ得る。したがって、様々な場合において、シュタルク・シフト相殺トーン110が量子もつれゲート・トーン108と同時に制御量子ビット102に適用されると、制御量子ビット102の、動作周波数における正味の変化がないかのようになり得る。
【0040】
その上、シュタルク・シフト相殺トーン110は、量子もつれゲート・トーン108とは逆の離調符号を有し得るので、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数は、量子もつれゲート・トーン108の周波数と等しくなく(たとえばωStark≠ωentangle)、したがって(たとえばωentangle=ωtargetなので)ターゲット量子ビット104の動作周波数とも等しくないという場合があり得る。したがって、シュタルク・シフト相殺トーン110は、制御量子ビット102とターゲット量子ビット104との間の望ましくないもつれを抑制することができる(たとえば、シュタルク・シフト相殺トーン110は、その周波数がターゲット量子ビット104の動作周波数と一致しない非共振駆動と見なされ得る)。
【0041】
シュタルク・シフト相殺トーン110が、量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされたシュタルク・シフトを相殺したり打ち消したりまたはその両方を行うやり方に関してさらに明瞭にするために、図2を検討する。
【0042】
図2は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、駆動トーン周波数の関数としてのシュタルク・シフトを示す、例示の非限定的なグラフ200を示す。言い換えれば、グラフ200は、制御量子ビット102が駆動トーンに応答して経験するシュタルク・シフトのプロットと見なされ得る。そのようなプロットは次式で与えられ得、
【数2】

f(ωdrive)は、制御量子ビット102が特定の駆動トーンに暴露されたときの動作周波数におけるシュタルク・シフトを表し、αcontrolは制御量子ビット102の非調和性を表し、Δdrive=ωdrive-ωcontrol_initialは、特定の駆動トーンの離調を表し、ωdriveは特定の駆動トーンの周波数を表し、ωcontrol_initialは、制御量子ビット102の動作周波数(たとえば遷移周波数)を表す。図2に示される非限定的な例において、制御量子ビット102は300MHzの非調和性を有し得、制御量子ビット102は5GHzの動作周波数を有し得、特定の駆動トーンは10MHzの振幅を有し得る。これらは単なる非限定的な例の値であることを理解されたい。
【0043】
示されるように、グラフ200は、4.7GHzにおける漸近線および5GHzにおける別の漸近線を表す。ここで、5GHzにおける漸近線は、f(ωdrive)の分母の項Δdriveによってもたらされ得、すなわち、この非限定的な例において特定の駆動トーンが5GHzの周波数を有するとき、特定の駆動トーンの離調Δdriveはゼロになり得る。その上、4.7GHzにおける漸近線は、f(ωdrive)の分母の項(αcontrol-Δdrive)によってもたらされ得、すなわち、この非限定的な例において特定の駆動トーンが4.7GHzの周波数を有するとき、量(αcontrol-Δdrive)はゼロになり得る。
【0044】
この非限定的な例に示されるように、特定の駆動トーンが4.7GHz~5GHzの周波数を有するとき、制御量子ビット102が経験するシュタルク・シフトの値は正(たとえば、4.7GHz<ωdrive<5GHzであるとき、f(ωdrive)>0)であり得(たとえば制御量子ビット102の動作周波数が増加し得)、これは、負の離調符号に対応する(たとえば、そのような周波数は5GHzの動作周波数よりも低い)。他方では、この非限定的な例に示されるように、特定の駆動トーンが5GHzよりも高い周波数を有するとき、制御量子ビット102が経験するシュタルク・シフトの値は負(たとえば、5GHz<ωdriveであるとき、f(ωdrive)<0)であり得(たとえば制御量子ビット102の動作周波数が減少し得)、これは、正の離調符号に対応する(たとえば、そのような周波数は5GHzの動作周波数よりも高い)。
【0045】
したがって、制御量子ビット102の動作周波数に正のシュタルク・シフトを引き起こす可能性がある様々な駆動周波数が存在し得、制御量子ビット102の動作周波数に負のシュタルク・シフトを引き起こす可能性がある他の駆動周波数が存在し得る。したがって、量子もつれゲート・トーン108が制御量子ビット102の動作周波数に正のシュタルク・シフトを引き起こす場合、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数は、シュタルク・シフト相殺トーン110が制御量子ビット102の動作周波数に負のシュタルク・シフトを引き起こすように選択され得、結果として、制御量子ビット102の動作周波数における正味の変化はゼロになる(または非常に小さくなる)。同様に、量子もつれゲート・トーン108が制御量子ビット102の動作周波数に負のシュタルク・シフトを引き起こす場合、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数は、シュタルク・シフト相殺トーン110が制御量子ビット102の動作周波数に正のシュタルク・シフトを引き起こすように選択され得、結果として、制御量子ビット102の動作周波数における正味の変化はゼロになる(または非常に小さくなる)。
【0046】
具体的には、グラフ200に見られるように量子もつれゲート・トーン108の離調の絶対値が、制御量子ビット102の非調和性の絶対値未満であるとき(たとえば|Δentangle|<|αcontrol|のとき)、シュタルク・シフト相殺トーン110は、(1)シュタルク・シフト相殺トーン110が量子もつれゲート・トーン108とは逆の離調符号を有するように、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数を選択し、(2)シュタルク・シフト相殺トーン110の離調の絶対値が、制御量子ビット102の非調和性の絶対値未満になるように(たとえば|ΔStark|<|αcontrol|となるように)、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数を選択することによって、量子もつれゲート・トーン108とは逆方向にシュタルク・シフトを引き起こすことを保証され得る。言い換えれば、|Δentangle|<|αcontrol|となるωentangleが与えられたとき、ωentangleとは逆の離調符号を有する少なくとも1つの周波数が存在して、ωentangleが引き起こすシュタルク・シフトを打ち消したり相殺したりまたはその両方を行うことができ、ωStarkに選択され得る。
【0047】
たとえば、量子もつれゲート・トーン108が、数字202によって与えられる周波数を有すると仮定する。そのような場合には、量子もつれゲート・トーン108は、負の離調値を有する(たとえば数字202が5GHzの動作周波数未満である)と見なされ得る。その上、そのような場合には、量子もつれゲート・トーン108は、振幅が制御量子ビット102の非調和性の絶対値未満である離調値を有する(たとえば数字202が5GHzの動作周波数から300MHz未満だけ離れている)と見なされ得る。さらに、そのような場合には、量子もつれゲート・トーン108は、制御量子ビット102の動作周波数に正のシュタルク・シフトを引き起こすものと見なされ得る(たとえば、グラフ200は数字202においてゼロよりも大きい)。
【0048】
これらを所与として、数字202によって引き起こされる正のシュタルク・シフトを打ち消したり相殺したりまたはその両方を行うことができる少なくとも1つの周波数が存在する。数字204は、そのような周波数のうちの1つであり得る。示されるように、数字204によって表された周波数は、数字202の離調とは逆の符号である正の離調符号を有する(たとえば、数字204は5GHzの動作周波数よりも大きい)。なおまた、示されるように、数字204は、振幅が制御量子ビット102の非調和性の絶対値未満である離調を有する(たとえば数字202が5GHzの動作周波数から300MHz未満だけ離れている)と見なされ得る。その上、示されるように、数字204は、制御量子ビット102の動作周波数に負のシュタルク・シフトを引き起こすことができる(たとえば、グラフ200は数字204においてゼロ未満である)。さらに、示されるように、数字204によって引き起こされる負のシュタルク・シフトの大きさは、数字202によって引き起こされる正のシュタルク・シフトの大きさと等しい(および/またはその大きさの任意の適切なマージンの範囲内にある)ことがあり得る。
【0049】
したがって、量子もつれゲート・トーン108が数字202に対応する周波数を有する場合には、シュタルク・シフト相殺トーン110は数字204に対応する周波数を有し得る。そのような場合には、シュタルク・シフト相殺トーン110は、量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされる正のシュタルク・シフトを打ち消したり相殺したりまたはその両方を行う負のシュタルク・シフトを引き起こすことができると見なされ得る。そのような相殺または逆作用あるいはその両方は、シュタルク・シフト相殺トーン110の離調の絶対値が量子もつれゲート・トーン108の離調の絶対値と異なる(たとえば|ΔStark|≠|Δentangle|)場合にも促進され得ることに留意されたい。
【0050】
要するに、グラフ200は、量子もつれゲート・トーン108の離調の絶対値が制御量子ビット202の非調和性の絶対値未満である場合は常に、量子もつれゲート・トーン108とは逆の離調符号を有する周波数が存在して、量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされるシュタルク・シフトを相殺したり打ち消したりまたはその両方を行うことができることを示している。そのような周波数は、シュタルク・シフト相殺トーン110用の周波数として選択され得る。
【0051】
様々な実施形態において、量子もつれゲート・トーン108またはシュタルク・シフト相殺トーン110あるいはその両方を生成するように、任意の適切な較正技術が実施され得る。たとえば、当業者なら認識するように、量子もつれゲート・トーン108の周波数は、(たとえばもつれを促進するために)ターゲット量子ビット104の動作周波数に等しく設定され得、量子もつれゲート・トーン108の振幅または持続時間あるいはその両方が、(たとえば、量子もつれゲートによって実行される任意の所望の変換を促進するように)任意の適切な値に較正され得る。なおまた、当業者ならさらに認識するように、シュタルク・シフト相殺トーン110の周波数は、量子もつれゲート・トーン108とは逆の離調符号を有してシュタルク・シフト相殺トーン110をもたらす任意の適切な値に設定され得、シュタルク・シフト相殺トーン110の振幅または持続時間あるいはその両方が、量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされるシュタルク・シフトを相殺するものと識別される特定の振幅または特定の持続時間あるいはその両方まで、実験的に掃引され得る。このことは、図3を参照しながらさらに論じられる。
【0052】
図3は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺トーンの較正を促進することができる非限定的な方法の一例の流れ図である。
【0053】
様々な実施形態において、行為302は、初期の動作周波数ω0_initialを有してターゲット量子ビットq(たとえば104)に結合された制御量子ビットq(たとえば102)向けに、所与の周波数ωdriveおよび所与の振幅Ωdriveを有する量子もつれゲート・トーン(たとえば108)を選択することを含むことができる。
【0054】
様々な態様において、行為304は、任意の適切な振幅ΩStarkと、量子もつれゲート・トーンに対して逆の離調符号を有する別のトーンをもたらす周波数ωStarkとを有する、別のトーン(たとえば110)を定義することを含むことができる。言い換えれば、周波数ωStarkは、(ωStark-ω0_initial)(ωdrive-ω0_initial)<0となるような任意の適切な値に選択され得る。
【0055】
様々な事例において、行為306は、制御量子ビットに、量子もつれゲート・トーンと別のトーンとを同時に適用することを含むことができる。
【0056】
様々な場合において、行為308は、(たとえばラムゼー干渉法などによって)制御量子ビットの現在の動作周波数ω0_currentを測定することを含むことができる。
【0057】
様々な態様において、行為310は、|ω0_current-ω0_initial|が任意の適切な閾値未満であるかどうかを判定することを含むことができる。すなわち、行為310は、|ω0_current-ω0_initial|がゼロに十分近いかどうかを判定することができる。十分近いわけではないなら、方法300は行為312に進むことができる。十分近ければ、方法300は行為314に進むことができる。
【0058】
様々な事例において、行為312は、別のトーンの振幅ΩStark(または持続時間あるいはその両方)を乱すことを含むことができる。したがって、方法300は行為306に戻ることができる。
【0059】
様々な場合において、行為314は方法300を終了することを含むことができる。言い換えれば、行為314において、別のトーンが、適切に較正されたシュタルク・シフト相殺トーンと見なされる可能性がある。図3には明示的に示されていないが、行為314は、(たとえば、別のトーンの導入がもたらした可能性がある量子もつれゲート・トーンに対するあらゆるコヒーレンス・エラーを補正するために)量子もつれゲート・トーンまたは別のトーンあるいはその両方に対して任意の適切かつ精細な較正を実行することをさらに含み得る。
【0060】
いずれにせよ、行為306~312は、|ω0_current-ω0_initial|がゼロに十分近くなるまで繰り返され得る。当業者なら認識するように、そのような繰返し/反復は振幅掃引と見なされ得る。
【0061】
様々な態様において、方法300は、所与の量子もつれゲート・トーンに正味ゼロのシュタルク・シフトを与えるように調整するためのやり方を説明するものと見なされ得る。
【0062】
本明細書の開示は、ここまで、(たとえば、図1図2に示されるように)量子もつれゲート・トーン108によって引き起こされるシュタルク・シフトを相殺したり打ち消したりまたはその両方を行うように、シュタルク・シフト相殺トーン110が実施され得る様子と、(たとえば図3に示されるように)シュタルク・シフト相殺トーン110が較正され得る様子とを説明してきた。シュタルク・シフト相殺トーン110が制御量子ビット102の動作周波数のシュタルク・シフトを解消することができるので、制御量子ビット102に対してゼロ・ノイズ外挿が正確に適用され得、また、制御量子ビット102は、隣接した量子ビットとの動的周波数衝突を回避することができる。これらの利益が、図4図6を参照しながらさらに説明される。
【0063】
最初にゼロ・ノイズ外挿を検討する。前述のように、また、当業者なら認識するように、ゼロ・ノイズ外挿はエラー軽減技術であり、量子ゲートが接近するゼロ・ノイズ限界を識別するようにノイズのレベルを漸進的に増減して、量子ゲートを繰返し実行することを包含している。実際には、そのような変化するノイズ・レベルは、伸縮係数のセット(たとえばスカラのセット)によって量子ゲートを時間的に繰返し伸縮し、それぞれの繰返しにおいて量子ゲートの振幅を繰返し度較正することによって達成され得る。残念ながら、ゼロ・ノイズ外挿の精度はシュタルク・シフトによって妨害される可能性がある。したがって、様々な実施形態において、ゼロ・ノイズ外挿の精度を改善するようにシュタルク・シフト相殺が実施され得る。より具体的には、量子ゲートがスケーリング係数によって伸縮される場合は常に、伸縮される量子ゲートに対応するシュタルク・シフト相殺トーンが識別/較正され得て、伸縮される量子ゲートと同時に適用され得る。このことは、図4を参照しながらさらに説明される。
【0064】
図4は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を用いるゼロ・ノイズ外挿の実行を促進することができる非限定的な方法400の一例の流れ図を示す。
【0065】
様々な実施形態において、行為402は、ターゲット量子ビット(たとえば104)に結合された制御量子ビット(たとえば102)について、所与の振幅、所与の周波数、または所与の持続時間あるいはその組合せを有する量子もつれゲート・トーン(たとえば108)を選択することを含むことができる。
【0066】
様々な態様において、行為404は、量子もつれゲート・トーンに対してゼロ・ノイズ外挿を実行するための伸縮係数のセット(たとえばスカラのセット)を識別することを含むことができる。
【0067】
様々な事例において、行為406は、シュタルク・シフト相殺トーンの空セットを初期化することを含むことができる。
【0068】
様々な場合において、行為408は、伸縮係数のセットにおける伸縮係数のすべてが対処されたかどうかを判定すること(たとえば、伸縮係数のセットの各々について、それぞれのシュタルク・シフト相殺トーンが識別/較正されたかどうかを判定すること)を含むことができる。対処されていなければ、方法400は行為410に進むことができる。対処されていれば、方法400は行為418に進むことができる。
【0069】
様々な態様において、行為410は、伸縮係数のセットの中でまだ対処されていない伸縮係数を選択すること(たとえばそれぞれ対応するシュタルク・シフト相殺トーンがまだ識別/較正されていない伸縮係数を選択すること)を含むことができる。
【0070】
様々な事例において、行為412は、伸縮された量子もつれゲート・トーンをもたらすことにより、量子もつれゲート・トーンに、選択された伸縮係数を適用することを含むことができる。当業者なら認識するように、これは、量子もつれゲート・トーンの所与の周波数をターゲット量子ビットの動作周波数に固定すること、量子もつれゲート・トーンの所与の持続時間を伸縮係数によって伸縮すること、または伸縮係数による伸縮の後に量子もつれゲート・トーンによって実行された変換を維持するように、量子もつれゲート・トーンの所与の振幅を調節すること、あるいはその組合せを含むことができる。
【0071】
様々な場合において、行為414は、伸縮された量子もつれゲート・トーンによって引き起こされる制御量子ビットの動作周波数のシュタルク・シフトを相殺する、新規のトーン(たとえば110)を較正することを含むことができる。様々な場合において、そのような較正は、図3を参照しながら説明されたように促進され得る。
【0072】
様々な態様において、行為416は、シュタルク・シフト相殺トーンのセットに新規のトーンを追加することを含むことができる。様々な場合において、方法400は行為408に戻ることができる。
【0073】
様々な事例において、行為418は、伸縮係数のセットおよびシュタルク・シフト相殺トーンのセットに基づいてゼロ・ノイズ外挿を実行することを含むことができる。これは、量子もつれゲート・トーンに伸縮係数のセットを適用することにより、伸縮された量子もつれゲート・トーンのセット産出することと、伸縮された量子もつれゲート・トーンのセットを用いて、制御量子ビットを、順次に、または繰返して、あるいはその両方で駆動することと、それぞれの伸縮された量子もつれゲート・トーンについて(たとえばそれぞれの繰返しについて)、シュタルク・シフト相殺トーンのセットからのそれぞれ対応するシュタルク・シフト相殺トーンを用いて、制御量子ビットを同時に駆動することとを含むことができる。
【0074】
ゼロ・ノイズ外挿の精度の改善に加えて、動的周波数衝突を防止するために、図5図6に示されるように、本明細書で説明されたシュタルク・シフト相殺が実施され得る。
【0075】
図5は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進することができる、スペクテータ量子ビットを含む非限定的なシステム500の一例のブロック図を示す。示されるように、システム500は、システム100と同一の構成要素を含むことができ、スペクテータ量子ビット502をさらに含むことができる。
【0076】
様々な実施形態において、スペクテータ量子ビット502は、量子ビット挙動を示すことができる任意の適切な量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方であり得る。たとえば、スペクテータ量子ビット502は、1つまたは複数のジョセフソン接合で構成されており、磁束量子ビット、電荷量子ビット、位相量子ビット、トランズモン量子ビット、またはそれらの任意の適切な変形形態、あるいはその組合せなどの超伝導量子ビットであり得る。別の例として、スペクテータ量子ビット502はスピン量子ビットであり得る。もう一つの例として、スペクテータ量子ビット502は量子ドットであり得る。いずれにせよ、スペクテータ量子ビット502は、任意の適切な振幅を有する動作周波数を示すことができる。説明のために、スペクテータ量子ビット502の動作周波数はωspectatorと表され得る。様々な態様において、スペクテータ量子ビット502の動作周波数は、周波数衝突を回避するように、制御量子ビット102の動作周波数と異なり得、またはターゲット量子ビット104の動作周波数とも異なり得、あるいはその両方であり得る。すなわち、ωspectator≠ωcontrol_initialかつωspectator≠ωtargetである。
【0077】
場合によっては、スペクテータ量子ビット502は、制御量子ビット102またはターゲット量子ビット104あるいはその両方と同一タイプの量子ビットであり得る。他の場合には、スペクテータ量子ビット502は、制御量子ビット102またはターゲット量子ビット104あるいはその両方と異なるタイプの量子ビットであり得る。
【0078】
様々な態様において、スペクテータ量子ビット502はカプラ504によって制御量子ビット102に結合され得る。様々な事例において、カプラ504は、2つの量子ビットを電気的に結合することができる任意の適切な量子計算構造または量子計算アーキテクチャあるいはその両方であり得る。たとえば、カプラ504は、スペクテータ量子ビット502を、制御量子ビット102に、物理的に、または直接的に、あるいはその両方で取り付ける1つまたは複数の超電導線であり得る。別の例として、カプラ504は、スペクテータ量子ビット502を、制御量子ビット102に、容量的に取り付ける1つまたは複数の超電導線であり得る。もう一つの例として、カプラ504は、スペクテータ量子ビット502を、制御量子ビット102に、物理的に、または容量的に、あるいはその両方で結合する1つまたは複数のマイクロ波共振器であり得る。いずれにせよ、スペクテータ量子ビット502と制御量子ビット102との間のもつれを促進し得るように、カプラ504は、スペクテータ量子ビット502を制御量子ビット102に対して電磁的に結合することができる。図5は、カプラ504を真っすぐな単一の経路として表しているが、これは図示の容易さのための単なる非限定的な例である。当業者なら、カプラ504は、任意の適切な形状、サイズ、寸法、または経路数、あるいはその組合せを示し得ることを認識するであろう。
【0079】
図5には明示的に示されていないが、当業者なら、スペクテータ量子ビット502は、任意の適切な微細加工技術またはナノ加工技術あるいはその両方によって、制御量子ビット102やターゲット量子ビット104と同一の量子基板(たとえばシリコンウェーハ)上に、組み立てたり製造したりまたはその両方を行い得ることを認識するであろう。
【0080】
様々な態様において、ωspectator=ωcontrol_shiftedであると仮定する。言い換えれば、量子もつれゲート・トーン108が、シュタルク・シフト相殺トーン110のない状態において制御量子ビット102に適用されると、制御量子ビット102とスペクテータ量子ビット502との間に動的周波数衝突が生じる可能性がある。言い換えれば、量子もつれゲート・トーン108が、制御量子ビット102の動作周波数を、スペクテータ量子ビット502の動作周波数に等しくする(または近づけすぎる)可能性がある。しかしながら、量子もつれゲート・トーン108がシュタルク・シフト相殺トーン110と同時に制御量子ビット102に適用されたとき、制御量子ビット102の動作周波数の正味の変化がなくなり得(または非常に小さくなり得)て、制御量子ビット102の動作周波数がスペクテータ量子ビット502の動作周波数に等しくなる(または近づきすぎる)のを抑制できることを意味する。このようにして、動的周波数衝突を防止するためにシュタルク・シフト相殺が実施され得る。
【0081】
図6は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺が適用され得る、量子ビット格子を含む非限定的なシステムの一例のブロック図を示す。
【0082】
示されるように、量子ビット格子600が存在し得る。様々な態様において、量子ビット格子600は、任意の適切な量子計算基板(図示せず)上に組み立てられた任意の適切なタイプの量子ビットの任意の適切な数を含むことができる。図6の非限定的な例では、量子ビット格子600は、量子ビット602、量子ビット604、量子ビット606、量子ビット608、量子ビット610、量子ビット612、量子ビット614、量子ビット616、および量子ビット618といった9つの量子ビットを含むことができる。
【0083】
様々な態様において、量子ビット格子の中のそれぞれの量子ビットは、それぞれ対応する動作周波数を示し得る。たとえば、量子ビット602は動作周波数ω602を有することができ、量子ビット604は動作周波数ω604を有することができ、量子ビット606は動作周波数ω606を有することができ、量子ビット608は動作周波数ω608を有することができ、量子ビット610は動作周波数ω610を有することができ、量子ビット612は動作周波数ω612を有することができ、量子ビット614は動作周波数ω614を有することができ、量子ビット616は動作周波数ω616を有することができ、量子ビット618は動作周波数ω618を有することができる。
【0084】
様々な事例において、量子ビット格子600の中のそれぞれの量子ビットは、最近傍の隣接した量子ビットのうちいかなるものとも異なる動作周波数を有し得る。たとえば、量子ビット610は、量子ビット604、量子ビット608、量子ビット612、および量子ビット616といった4つの最近傍を有すると見なされ得る。したがって、ω610の振幅は、ω604、ω608、ω612、およびω616のものとは異なり得る。別の例として、量子ビット614は、量子ビット608および量子ビット616といった2つの最近傍を有し得る。したがって、ω614の振幅は、ω608やω616のものとは異なり得る。もう一つの例として、量子ビット604は、量子ビット602、量子ビット606、および量子ビット610といった3つの最近傍を有し得る。したがって、ω604の振幅は、ω602、ω606、およびω610のものとは異なり得る。
【0085】
様々な態様において、動的周波数衝突を防止するように、量子ビット格子600においてシュタルク・シフト相殺が実施され得る。たとえば、量子ビット610を制御量子ビットとして扱い、量子ビット612をターゲット量子ビットとして扱うことが望まれると仮定する。そのような場合には、量子ビット610は、ω612と等しい(および/またはω612の任意の適切な閾値マージンの範囲内にある)周波数を有する、量子もつれゲート・トーンによって駆動され得る。その上、量子ビット610は、その量子もつれゲート・トーンに対して逆の離調符号を有するシュタルク・シフト相殺トーンによって同時に駆動され得る(たとえば、そのようなシュタルク・シフト相殺トーンは、図3を参照しながら上記で説明されたように較正され得る)。したがって、量子もつれゲート・トーンは、量子ビット610と量子ビット612との間に所望のもつれを引き起こすことができ、シュタルク・シフト相殺トーンは、量子ビット610の動作周波数(たとえばω610)が正味のシフトを経験するのを防止することができる。したがって、シュタルク・シフト相殺トーンは、量子ビット610の最近傍の動作周波数と量子ビット610の動作周波数とが衝突するのを防止する(たとえば、ω610が、ω604、ω608、ω612、またはω616に近づきすぎるのを防止する)と考えられ得る。
【0086】
別の例として、量子ビット608を制御量子ビットとして扱い、量子ビット614をターゲット量子ビットとして扱うことが望まれると仮定する。そのような場合には、量子ビット608は、ω614と等しい(および/またはω614の任意の適切な閾値マージンの範囲内にある)周波数を有する、量子もつれゲート・トーンによって駆動され得る。その上、量子ビット608は、その量子もつれゲート・トーンに対して逆の離調符号を有するシュタルク・シフト相殺トーンによって同時に駆動され得る(たとえば、そのようなシュタルク・シフト相殺トーンは、図3を参照しながら上記で説明されたように較正され得る)。したがって、量子もつれゲート・トーンは、量子ビット608と量子ビット614との間に所望のもつれを引き起こすことができ、シュタルク・シフト相殺トーンは、量子ビット608の動作周波数(たとえばω608)が正味のシフトを経験するのを防止することができる。したがって、シュタルク・シフト相殺トーンは、量子ビット608の最近傍の動作周波数と量子ビット608の動作周波数とが衝突するのを防止する(たとえば、ω608が、ω602、ω610、またはω614に近づきすぎるのを防止する)と考えられ得る。
【0087】
このようにして、量子もつれゲート・トーンによって引き起こされるシュタルク・シフトを抑制することによって量子ビット格子600における動的周波数衝突を防止するために、量子ビット格子600における、一方が制御量子ビットであって他方がターゲット量子ビットである所与の対の量子ビットと、そのような対の量子ビットに適用することが望まれる所与の量子もつれゲートとに対して、独特なシュタルク・シフト相殺トーンを、較正して、所与の量子もつれゲート・トーンと同時に制御量子ビットに適用することができる。場合によっては、そのようなシュタルク・シフト相殺トーンの各々に対して、独特な周波数または別個の周波数あるいはその両方が使用され得る。しかしながら、他の場合には、そのようなシュタルク・シフト相殺トーンの各々について、共通の周波数が使用され得、そのようなシュタルク・シフト相殺トーンの各々が、独特な振幅または持続時間あるいはその両方を有する。たとえば、量子ビット格子600の中のすべての制御量子ビットが、その所望のターゲット量子ビットよりも高い動作周波数を有する場合には、シュタルク・シフト相殺トーンの各々について、量子ビット格子600における最高の動作周波数よりも高い単一の周波数が共通の周波数に選択され得る。他方では、量子ビット格子600の中のすべての制御量子ビットが、その所望のターゲット量子ビットよりも低い動作周波数を有する場合には、シュタルク・シフト相殺トーンの各々について、量子ビット格子600における最低の動作周波数よりも低い単一の周波数が共通の周波数に選択され得る。いずれか場合にも、共通の周波数は、それぞれのシュタルク・シフト相殺トーンが、その対応する量子もつれゲート・トーンに対して逆の離調符号を有することを保証し得る。
【0088】
図6の量子ビット格子600は、規則的かつ直線的な配列を有するように示されているが、これは単なる非限定的な例である。様々な場合において、量子ビット格子600は、任意の適切なやり方で要求通りに配列され得る。
【0089】
図7図8は、本明細書で説明された1つまたは複数の実施形態による、シュタルク・シフト相殺を促進することができる非限定的な方法700および800の例示の流れ図を示す。
【0090】
最初に方法700を検討する。様々な実施形態において、行為702は、ターゲット量子ビット(たとえば104)に結合された制御量子ビット(たとえば102)に第1のトーン(たとえば108)を適用することを含むことができる。様々な場合において、第1のトーンは、制御量子ビットをターゲット量子ビットにもつれさせることができる。
【0091】
様々な態様において、行為704は、制御量子ビットに、第1のトーンと同時に第2のトーン(たとえば110)を適用することを含むことができる。様々な場合において、第2のトーンは、第1のトーンとは逆の離調符号を有し得る。
【0092】
図7には明示的に示されていないが、第1のトーンは、制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こす(たとえば、ωcontrol_initialをωcontrol_shiftedにシフトする)可能性があり、第2のトーンはシュタルク・シフトを相殺する(たとえば、ωcontrol_shiftedをωcontrol_initialに戻す)ことができる。
【0093】
図7には明示的に示されていないが、方法700は、(たとえば、図3を参照しながら説明されたように)逆の離調符号に従って第2のトーンの周波数(たとえばωStark)を固定して、第2のトーンの振幅(たとえばΩStark)を、制御量子ビットの動作周波数のシュタルク・シフトが無効になるまで掃引することにより、第2のトーンを較正することをさらに含むことができる。
【0094】
図7には明示的に示されていないが、スペクテータ量子ビット(たとえば502)が制御量子ビットに結合され得て、第2のトーンは、スペクテータ量子ビットの動作周波数(たとえばωspectator)と制御量子ビットの動作周波数が動的に衝突するのを防止することができる。
【0095】
図7には明示的に示されていないが、第1のトーンは、(たとえば図4を参照しながら説明されたような)ゼロ・ノイズ外挿手順中に制御量子ビットに順次に適用される、時間伸縮された複数のトーンのうち1つであり得る。
【0096】
次に図8を検討する。様々な実施形態において、行為802は、ターゲット量子ビット(たとえば104)に結合された制御量子ビット(たとえば102)に第1のトーン(たとえば108)を適用することを含むことができる。様々な場合において、第1のトーンは、制御量子ビットの動作周波数にシュタルク・シフトを引き起こす(たとえば、ωcontrol_initialをωcontrol_shiftedにシフトする)可能性がある。
【0097】
様々な態様において、行為804は、制御量子ビットに、第2のトーン(たとえば110)を適用することを含むことができる。様々な場合において、第2のトーンはシュタルク・シフトを打ち消す(たとえば、ωcontrol_shiftedをωcontrol_initialに戻す)ことができる。
【0098】
図8には明示的に示されていないが、第2のトーンは第1のトーンとは逆の離調符号を有し得る。
【0099】
図8には明示的に示されていないが、第2のトーンは第1のトーンと同時に適用され得る。
【0100】
図8には明示的に示されていないが、第1のトーンの周波数と制御量子ビットの動作周波数との第1の絶対値差(たとえば、第1のトーンの離調の絶対値|Δentangle|)は、制御量子ビットの非調和性の絶対値(たとえば|αcontrol|)未満であり得、第2のトーンの周波数と制御量子ビットの動作周波数との第2の絶対値差(たとえば、第2のトーンの離調の絶対値|ΔStark|)は、制御量子ビットの非調和性の絶対値未満であり得る。
【0101】
図8には明示的に示されていないが、第2のトーンは、制御量子ビットの動作周波数が、隣接した量子ビット(たとえば502)の動作周波数と衝突するのを防止することができる。
【0102】
本明細書で説明された様々な実施形態は、シュタルク・シフト相殺を促進するためのシステムまたは技術あるいはその両方を含む。詳細には、制御量子ビットに量子もつれゲート・トーンが適用される場合は常に、量子もつれゲート・トーンによって引き起こされるシュタルク・シフトを相殺したり取り消したりまたはその両方を行うために、制御量子ビットにシュタルク・シフト相殺トーンが同時に適用され得る。具体的には、これは、シュタルク・シフト相殺トーンが量子もつれゲート・トーンに対して逆の離調符号を有するようにシュタルク・シフト相殺トーンの周波数を設定する(たとえば、シュタルク・シフト相殺トーンの離調を正にして、量子もつれゲート・トーンの離調を負にするか、またはシュタルク・シフト相殺トーンの離調を負にして、量子もつれゲート・トーンの離調を正にする)ことによって促進され得る。したがって、あらゆる所望の量子もつれゲート・トーンに対して、それぞれ対応するシュタルク・シフト相殺トーンが、量子もつれゲート・トーンを正味ゼロのシュタルク・シフトに調整するように較正され得る。そのようなシュタルク・シフト相殺は、動的周波数衝突を防止することができ、ゼロ・ノイズ外挿のより正確な実行を可能にすることができる。したがって、本明細書で説明された様々な実施形態は、量子計算の分野における具体的かつ有体の技術的な改善を確実に構成する。
【0103】
当業者なら、本明細書の開示は、主題の技術革新の様々な実施形態の非限定的な例を説明するものであることを認識するであろう。本明細書の開示の様々な部分が、主題の技術革新の様々な実施形態について論じるとき、記述または説明あるいはその両方の容易さのために「各」という用語を利用している。当業者なら、「各」という用語のそのような利用が非限定的な例であることを認識するであろう。言い換えれば、本明細書の開示が、いくつかの特定の対象物や構成要素の「各々」に適用される説明を提供するとき、これは、主題の技術革新の様々な実施形態の非限定的な例であることが理解されるべきであり、主題の技術革新の様々な他の実施形態において、そのような説明が当てはまる事例は、特定の対象物や構成要素またはその両方の「各々」よりも少ない可能性があることがさらに理解されるべきである。
【0104】
本明細書で説明された様々な実施形態に関する追加の文脈を提供するために、図9および以下の議論は本明細書で説明された実施形態の様々な実施形態が実施され得る適切なコンピュータ環境900の簡単な概要を提供するように意図されている。実施形態は、上記で、1つまたは複数のコンピュータ上で動作することができるコンピュータ実行可能命令の一般的な状況において説明されているが、当業者なら、他のプログラム・モジュールとの組合せ、またはハードウェアとソフトウェアの組合せ、あるいはその両方として、実施され得ることも認識するであろう。
【0105】
一般に、プログラム・モジュールは、データ構造など特定のタスクを実行するかまたは特定の抽象データ型を実施するルーチン、プログラム、コンポーネントを含む。なおまた、当業者なら、本発明の方法は、各々が1つまたは複数の関連するデバイスに対して動作可能に結合され得る、単一のプロセッサまたは多重プロセッサのコンピュータ・システム、ミニコンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、モノのインターネット(IoT)デバイス、分散コンピューティング・システム、ならびにパーソナル・コンピュータ、携帯用コンピューティング・デバイス、マイクロプロセッサ・ベースまたはプログラム可能な民生用電子機器などを含む他のコンピュータ・システム構成で実施され得ることを認識するであろう。
【0106】
本明細書の図示の実施形態は、通信ネットワークを通じてリンクされた遠隔処理装置によって特定のタスクを実行する分散コンピューティング環境でも実施され得る。分散コンピューティング環境では、プログラム・モジュールは、ローカル記憶装置とリモート記憶装置の両方に配置され得る。
【0107】
コンピューティング・デバイスは、一般的には、コンピュータ可読記憶媒体、機械可読記憶媒体、または通信媒体あるいはその組合せを含み得る様々な媒体を含み、本明細書では、これらの用語のうち2つは、以下のように互いに異なって使用される。コンピュータ可読記憶媒体または機械可読記憶媒体は、コンピュータによってアクセスされ得る揮発性媒体と不揮発性媒体の両方を含む、取外し可能または取外し不能な任意の利用可能な記憶媒体であり得る。限定ではなく例として、コンピュータ可読記憶媒体または機械可読記憶媒体は、コンピュータ可読命令または機械可読命令、プログラム・モジュール、構造化データまたは非構造化データなどの情報を記憶するための任意の方法または技術に関連して実施され得る。
【0108】
コンピュータ可読記憶媒体は、それだけではないが、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュ・メモリまたは他の記憶技術、コンパクト・ディスクを使った読出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ・ディスク(BD)または他の光学ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶装置、ソリッド・ステート・ドライブまたは他の固体記憶装置、あるいは、所望の情報を記憶するために使用され得る他の有体の媒体もしくは非一時的媒体またはその両方を含むことができる。この点に関して、本明細書で、記憶装置、メモリまたはコンピュータ可読媒体に対する修飾語として適用される「有体」または「非一時的」という用語は、伝搬する一時的な信号自体のみを除外するものと理解されるべきであり、伝搬する一時的な信号自体ではないすべての標準的な記憶装置、メモリまたはコンピュータ可読媒体に対する権利を放棄するものではない。
【0109】
コンピュータ可読記憶媒体は、媒体に記憶された情報に対する様々な動作のために、1つまたは複数ローカルまたはリモートのコンピューティング・デバイスによって、たとえば、アクセス要求、クエリまたは他のデータ検索プロトコルによってアクセスされ得る。
【0110】
通信媒体は、一般的にはコンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュールまたは他の構造化データもしくは非構造化データを、たとえば搬送波または他の伝送手段といった、変調されたデータ信号などのデータ信号で具現するものであり、任意の情報の配信媒体または伝送媒体を含む。「変調されたデータ信号」または信号という用語は、その特性のうち1つまたは複数が、情報を1つまたは複数の信号に符号化するようなやり方で設定または変化された信号を指す。限定ではなく例として、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接有線接続などの有線媒体、および音響、RF、赤外線および他の無線媒体などの無線媒体を含む。
【0111】
再び図9を参照して、本明細書で説明された態様の様々な実施形態を実施するための例示の環境900は、処理ユニット904、システム・メモリ906およびシステム・バス908を含んでいるコンピュータ902を含む。システム・バス908は、処理ユニット904に、システム・メモリ906などを含むシステム・コンポーネントを結合する。処理ユニット904は、様々な市販のプロセッサのうち任意のものであり得る。デュアル・マイクロプロセッサや他の多重プロセッサ・アーキテクチャも処理ユニット904として採用され得る。
【0112】
システム・バス908は、様々な市販のバス・アーキテクチャのうち任意のものを使用して、(メモリコントローラの有無に関わらず)メモリ・バスに周辺バスやローカル・バスをさらに相互に接続することができるいくつかのタイプのバス構造のうち任意のものであり得る。システム・メモリ906は、ROM 910およびRAM 912を含む。基本入出力システム(BIOS)は、ROM、消去可能プログラマブル読出し専用メモリ(EPROM)、EEPROMなどの不揮発性メモリに記憶され得、起動中などに、コンピュータ902の内部要素との間の情報伝達を支援する基本ルーチンを含有している。RAM 912は、データをキャッシュするためのスタティックRAMなどの高速RAMも含むこともできる。
【0113】
コンピュータ902は、内蔵ハード・ディスク・ドライブ(HDD)914(たとえば、EIDE、SATA)、1つまたは複数の外部記憶装置916(たとえば、磁気フロッピ・ディスク・ドライブ(FDD)、メモリ・スティックまたはフラッシュ・ドライブ・リーダ、メモリ・カード・リーダなど)、および、たとえば、ソリッド・ステート・ドライブ、光ディスク・ドライブなどのドライブ920をさらに含み、これらはCD-ROMディスク、DVD、BD、などのディスク922との間で読出しや書込みが可能である。あるいは、ソリッド・ステート・ドライブが包含される場合には、ディスク922は分離していなければ含まれないであろう。内部HDD 914は、コンピュータ902の内部に配置されるように示されているが、適切なシャーシ(図示せず)の中での外部使用向けに構成され得る。加えて、環境900には示されていないが、HDD 914に加えて、またはその代わりに、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)が使用され得る。HDD 914、外部記憶装置916、およびドライブ920は、それぞれ、HDDインターフェース924、外部記憶装置インターフェース926、およびドライブ・インターフェース928によって、システム・バス908に接続され得る。外部ドライブの実装のためのインターフェース924は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)および電気電子学会(IEEE)1394インターフェース技術の少なくとも一方または両方を含むことができる。他の外部ドライブ接続技術は、本明細書で説明された実施形態の企図の範囲内にある。
【0114】
ドライブおよびそれらの関連するコンピュータ可読記憶媒体は、データ、データ構造、コンピュータ実行可能命令などの不揮発性記憶装置を提供する。コンピュータ902については、ドライブおよび記憶媒体は、適切なデジタル形式における任意のデータの記憶装置に適応する。上記のコンピュータ可読記憶媒体の説明は、それぞれのタイプの記憶装置を指すが、当業者なら、コンピュータ可読の他のタイプの記憶媒体も、現存のものであれ将来開発されるものであれ、例示の動作環境においても使用され得、また、任意のそのような記憶媒体が、本明細書で説明された方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含有し得ることを認識するはずである。
【0115】
ドライブおよびRAM 912には、オペレーティング・システム930、1つまたは複数のアプリケーション・プログラム932、他のプログラム・モジュール934およびプログラム・データ936を含むいくつかのプログラム・モジュールが記憶され得る。オペレーティング・システム、アプリケーション、モジュール、またはデータあるいはその組合せのすべてまたは一部を、RAM 912にキャッシュすることもできる。本明細書で説明されたシステムおよび方法は、様々な市販のオペレーティング・システムまたはオペレーティング・システムの組合せを利用して実施され得る。
【0116】
コンピュータ902は、任意選択でエミュレーション技術を含むことができる。たとえば、ハイパーバイザ(図示せず)または他の仲介物がオペレーティング・システム930のハードウェア環境をエミュレートすることができ、エミュレートされたハードウェアは、任意選択で、図9に示されたハードウェアとは異なり得る。そのような実施形態では、オペレーティング・システム930は、コンピュータ902においてホスティングされた複数の仮想マシン(VM)のうち1つを備えることができる。その上、オペレーティング・システム930は、アプリケーション932のために、Java(R)ランタイム環境または.NETフレームワークなどのランタイム環境を提供することができる。ランタイム環境は、一貫した実行環境であり、ランタイム環境を含む任意のオペレーティング・システム上でアプリケーション932を実行することを可能にするものである。同様に、オペレーティング・システム930は、コンテナをサポートすることができ、コンテナは、軽量なスタンドアロンの実行可能なソフトウェアのパッケージであって、たとえば、コード、ランタイム、システム・ツール、システム・ライブラリおよびアプリケーションの設定を含むものであり、アプリケーション932は、コンテナの形をとることができる。
【0117】
さらに、コンピュータ902は、信頼できる処理モジュール(TPM)などのセキュリティ・モジュールを有効化することができる。たとえば、TPMを用いると、ブート・コンポーネントは、次のブート・コンポーネントをハッシュして、その結果が保護された値と一致するかどうかを確認してから、次のブート・コンポーネントをロードする。このプロセスは、コンピュータ902のコード実行スタックの任意のレイヤで行われ得て、たとえばアプリケーション実行レベルまたはオペレーティング・システム(OS)のカーネル・レベルで適用され得、それによって、コード実行の任意のレベルでセキュリティを有効にする。
【0118】
ユーザは、たとえばキーボード938、タッチ・スクリーン940、およびマウス942などのポインティング・デバイスといった1つまたは複数の有線/無線の入力装置によって、コンピュータ902に命令や情報を入力することができる。他の入力装置(図示せず)は、マイクロフォン、赤外線(IR)遠隔制御、無線周波数(RF)遠隔制御、または他の遠隔制御、ジョイスティック、仮想現実コントローラまたは仮想現実ヘッドセットあるいはその両方、ゲーム・パッド、スタイラス・ペン、たとえばカメラといった画像入力装置、ジェスチャ・センサ入力装置、視覚動作センサ入力装置、感情または顔の検知デバイス、たとえば指紋または虹彩スキャナといった生体認証入力装置などを含むことができる。これらの入力装置や他の入力装置は、多くの場合、システム・バス908に結合可能な入力装置インターフェース944を介して処理ユニット904に接続されるが、並列ポート、IEEE 1394シリアル・ポート、ゲーム・ポート、USBポート、IRインターフェース、BLUETOOTH(R)インターフェースなどの他のインターフェースによって接続され得る。
【0119】
モニタ946または他のタイプの表示装置も、ビデオ・アダプタ948などのインターフェースを介してシステム・バス908に接続され得る。コンピュータは、モニタ946に加えて、一般的には、スピーカ、プリンタなどの他の周辺出力装置(図示せず)を含む。
【0120】
コンピュータ902は、論理的接続を使用して、リモート・コンピュータ950などの1つまたは複数のリモート・コンピュータに対する有線通信または無線通信あるいはその両方によって、ネットワーク化された環境で動作することができる。リモート・コンピュータ950は、ワークステーション、サーバ・コンピュータ、ルータ、パーソナル・コンピュータ、携帯型コンピュータ、マイクロプロセッサ・ベースの娯楽器具、ピア装置または他の共通ネットワーク・ノードであり得、一般的には、コンピュータ902に関連して説明された要素のうち多数またはすべてを含むが、簡潔さのためにメモリ/記憶装置952のみが示されている。表された論理的接続は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)954、またはたとえば広域ネットワーク(WAN)956といったより大規模なネットワーク、あるいはその両方に対する有線/無線の接続性を含む。そのようなLANおよびWANのネットワーク環境は、オフィスや企業において一般的であり、イントラネットなどの企業全体のコンピュータ・ネットワークを促進し、たとえばインターネットといったグローバル通信ネットワークに接続することができる。
【0121】
コンピュータ902は、LANネットワーク環境において使用されるとき、有線または無線あるいはその両方の通信ネットワーク・インターフェースまたはアダプタ958を介してローカル・ネットワーク954に接続され得る。アダプタ958は、LAN 954に対する有線または無線の通信を促進することができ、LAN 954は、アダプタ958と無線モードで通信するように配設された無線アクセスポイント(AP)も含むこともできる。
【0122】
コンピュータ902は、WANネットワーク環境において使用されるとき、モデム960を含み得、またはインターネットなどによってWAN 956にわたる通信を確立するための他の手段を介してWAN 956上の通信サーバに接続され得る。有線または無線のデバイスのモデム960は、内部または外部にあり得、入力装置インターフェース944を介してシステム・バス908に接続され得る。ネットワーク化された環境では、プログラム・モジュールは、コンピュータ902またはその一部に関連して表され、遠隔のメモリ/記憶装置952に記憶され得る。示されたネットワーク接続は例示であり、コンピュータとの間の通信リンクを確立する他の手段が使用され得ることが理解されよう。
【0123】
コンピュータ902は、LANまたはWANのネットワーク環境で使用されたとき、上記で説明された外部記憶装置916加えて、またはその代わりに、それだけではないが、記憶装置または情報処理の1つまたは複数の態様を提供するネットワーク仮想マシンなどのクラウド記憶システムまたは他のネットワーク・ベースの記憶システムにアクセスすることができる。一般に、コンピュータ902とクラウド記憶システムとの間の接続は、たとえばアダプタ958またはモデム960によって、それぞれLAN 954またはWAN 956を通じて確立され得る。外部記憶インターフェース926は、関連するクラウド記憶システムにコンピュータ902を接続すると、アダプタ958またはモデム960あるいはその両方の支援を得て、クラウド記憶システムによって提供される記憶装置を他のタイプの外部記憶装置と同様に管理する。たとえば、外部記憶装置インターフェース926は、クラウド記憶ソースに対して、クラウド記憶ソースがコンピュータ902に物理的に接続されているかのようにアクセスを提供するように構成され得る。
【0124】
コンピュータ902は、たとえば、プリンタ、スキャナ、デスクトップ・コンピュータまたは携帯型コンピュータあるいはその両方、携帯用情報端末、通信衛星、無線で検知可能なタグに関連付けられた任意の機器または場所(たとえば、キオスク、ニュース・スタンド、店頭棚など)、および電話といった、無線通信で動作可能に配設された任意の無線デバイスまたはエンティティと通信するように機能することができる。これは、ワイヤレス・フィデリティ(Wi-Fi)およびBLUETOOTH(R)無線技術を含むことができる。したがって、通信は、従来のネットワークと同様に事前に定義された構造、または単純に少なくとも2つのデバイスの間のアドホック通信であり得る。
【0125】
次に図10を参照して、実例となるクラウド・コンピュータ環境1000が表されている。示されるように、クラウド・コンピュータ環境1000は1つまたは複数のクラウド計算ノード1002を含み、これと、クラウド・コンシューマによって使用される、たとえば個人用デジタル情報処理端末(PDA)または携帯電話1004、デスクトップ・コンピュータ1006、ラップトップ・コンピュータ1008、または自動車コンピュータ・システム1010あるいはその組合せなどのローカル・コンピューティング・デバイスが通信し得る。ノード1002は互いに通信し得る。ノード1002は、プライベート、コミュニティ、パブリック、または上記で説明されたハイブリッド・クラウドなどの1つまたは複数のネットワークに物理的または仮想的にグループ化され得(図示せず)、またはそれらの組合せであり得る。これによって、クラウド・コンピュータ環境1000が、インフラストラクチャ、プラットフォームまたはソフトウェアあるいはその組合せをサービスとして提供することが可能になり、クラウド・コンシューマは、ローカル・コンピューティング・デバイス上にリソースを維持する必要がない。図10に示されたコンピューティング・デバイス1004~1010のタイプは例示のみを意図しており、また、計算ノード1002およびクラウド・コンピュータ環境1000は、(たとえばウェブ・ブラウザを使用して)任意のタイプのネットワークまたはネットワーク・アドレス可能な接続あるいはその両方を通じて、任意のタイプのコンピュータ化されたデバイスと通信可能であることが理解される。
【0126】
次に図11を参照して、クラウド・コンピュータ環境1000(図10)によってもたらされる機能的な抽象層のセットが示されている。本明細書で説明された他の実施形態で採用されている類似の要素の繰返しの説明は、簡潔さのために省略される。図11に示されるコンポーネント、層、および機能は、例示のみを意図しており、本発明の実施形態を限定するものではないことをあらかじめ理解されたい。表されるように、以下の層および対応する機能が提供される。
【0127】
ハードウェアおよびソフトウェアの層1102は、ハードウェア・コンポーネントおよびソフトウェア・コンポーネントを含む。ハードウェア・コンポーネントの例は、メインフレーム1104、RISC(縮小命令セット・コンピュータ)アーキテクチャ・ベースのサーバ1106、サーバ1108、ブレード・サーバ1110、記憶装置1112、ならびにネットワークおよびネットワーキング・コンポーネント1114を含む。いくつかの実施形態では、ソフトウェア・コンポーネントは、ネットワーク・アプリケーション・サーバ・ソフトウェア1116およびデータベース・ソフトウェア1118を含む。
【0128】
仮想化層1120が抽象層を提供し、抽象層から、仮想サーバ1122、仮想記憶装置1124、仮想プライベート・ネットワーク、仮想のアプリケーションおよびオペレーティング・システム1128、および仮想クライアント1130を含む仮想ネットワーク1126といった仮想エンティティの例が提供され得る。
【0129】
一例では、管理層1132は、以下で説明される機能を提供し得る。リソース・プロビジョニング1134は、クラウド・コンピュータ環境の中でタスクを実行するために利用されるコンピューティング・リソースおよび他のリソースの動的調達を提供する。計量および価格設定1136は、クラウド・コンピュータ環境の中でリソースが利用されるときのコスト追跡、ならびにこれらのリソースの消費に対する請求またはインボイスを提供する。一例では、これらのリソースは、アプリケーション・ソフトウェア・ライセンスを含み得る。セキュリティは、データおよび他のリソースの保護に加えて、クラウド・コンシューマおよびタスクの識別情報検証も提供する。ユーザ・ポータル1138は、コンシューマおよびシステム管理者用のクラウド・コンピュータ環境に対するアクセスを提供する。サービス・レベル管理1140は、必要なサービス・レベルが満たされるように、クラウド・コンピューティング・リソースの割当ておよび管理を提供する。サービス・レベル契約(SLA)の計画および履行1142は、SLAに従って将来の要件が予想されるクラウド・コンピューティング・リソースの事前準備および調達を提供する。
【0130】
ワークロード層1144は、クラウド・コンピュータ環境が利用され得る機能の例を提供する。ワークロード層1144から提供され得るワークロードおよび機能の例は、マッピングおよびナビゲーション1146、ソフトウェアの開発およびライフサイクルの管理1148、仮想教室の教育配信1150、データ分析処理1152、トランザクション処理1154、および差分プライバシー連合学習処理1156を含む。本発明の様々な実施形態は、図10および図11を参照しながら説明されたクラウド・コンピュータ環境を利用して、本明細書で説明された様々な実施形態に応じて1つまたは複数の差分プライバシー連合学習プロセスを実行する。
【0131】
本発明は、任意の可能な技術的詳細レベルの集積化におけるシステム、方法、装置またはコンピュータ・プログラム製品あるいはその組合せであり得る。コンピュータ・プログラム製品は、プロセッサに本発明の態様を実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行装置によって使用するための命令を保持したり記憶したりすることができる有体の装置であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、それだけではないが、たとえば電子記憶装置、磁気記憶装置、光記憶装置、電磁記憶装置、半導体記憶装置、またはこれらの任意の適切な組合せであり得る。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストは、携帯型コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能ROM(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、静的ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、携帯用のコンパクト・ディスクを使った読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピ・ディスク、命令を記録したパンチカードまたは溝にある突起などの機械的に符号化されたデバイス、およびこれらの任意の適切な組合せも含むことができる。本明細書で使用されるコンピュータ可読記憶媒体自体は、電波または他の自由に伝搬する電磁波、導波管または他の伝送媒体によって伝搬させる電磁波(たとえば光ファイバ・ケーブルを通過する光パルス)、あるいは電線を通って伝送される電気信号などの一時的な信号であると解釈されるべきではない。
【0132】
本明細書で説明されるコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体から、たとえばインターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、広域ネットワークまたは無線ネットワークあるいはその組合せといったネットワークを介して、それぞれの演算装置/処理装置または外部コンピュータもしくは外部記憶装置にダウンロードされ得る。ネットワークは、銅の伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータまたはエッジ・サーバあるいはその組合せを備えることができる。それぞれの演算装置/処理装置におけるネットワーク・アダプタ・カードまたはネットワーク・インターフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受け取って、それぞれの演算装置/処理装置の内部のコンピュータ可読記憶媒体に記憶させるように転送する。本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路設計のための構成データ、あるいはSmalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラム言語、および「C」プログラム言語または類似のプログラム言語などの手続型プログラム言語を含む1つまたは複数のプログラム言語の任意の組合せで記述されたソース・コードまたはオブジェクト・コードのいずれかであり得る。コンピュータ可読プログラム命令は、スタンドアロンのソフトウェア・パッケージとして、ユーザのコンピュータ上ですべて実行してよく、部分的にユーザのコンピュータ上で実行してよく、一部をユーザのコンピュータで実行し、一部を遠隔コンピュータ上で実行してよく、または遠隔のコンピュータまたはサーバ上ですべて実行することができる。後者のシナリオでは、遠隔コンピュータは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)もしくは広域ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続され得、または(たとえばインターネット・サービス・プロバイダを使用してインターネットを介して)外部コンピュータに接続され得る。いくつかの実施形態では、たとえば、プログラム可能論理回路、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、またはプログラム可能論理アレイ(PLA)を含む電子回路が、本発明の態様を実行するために、電子回路をパーソナライズするコンピュータ可読プログラム命令の利用状態情報によってコンピュータ可読プログラム命令を実行することができる。
【0133】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータ・プログラム製品の流れ図またはブロック図あるいはその両方を参照しながら本明細書で説明されている。流れ図またはブロック図あるいはその両方の各ブロック、ならびに流れ図またはブロック図あるいはその両方のブロックの組合せは、コンピュータ可読プログラム命令によって実施され得ることが理解されよう。これらのコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサによって実行する命令が、流れ図またはブロック図あるいはその両方のブロックで規定された機能/行為を実施するための手段を生成するように、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、またはマシンを製作するための他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに供給され得る。これらのコンピュータ可読プログラム命令は、命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体が、流れ図またはブロック図あるいはその両方のブロックおいて規定された機能/行為の態様を実施する命令を含む製品を備えるように、コンピュータ、プログラム可能なデータ処理装置、または特定のやり方で機能する他の装置、あるいはその組合せに指示することができるコンピュータ可読記憶媒体に記憶されることも可能である。コンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、または他の装置において実行する命令が、流れ図またはブロック図あるいはその両方のブロックで規定された機能/行為を実施するために、コンピュータ、他のプログラム可能な装置、または他の装置において一連の動作の行為を実行して、コンピュータ実施プロセスを生成するように、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、または他の装置にロードされることも可能である。
【0134】
流れ図およびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータ・プログラム製品の可能な実装形態の、アーキテクチャ、機能性、および動作を示すものである。この点に関して、流れ図またはブロック図の各ブロックは、規定された論理関数を実施するための1つまたは複数の実行命令を含む命令の、モジュール、セグメント、または一部を表し得る。いくつかの代替実装形態では、ブロックで指示された機能は、図の中で指示された順序から外れて生じ得る。たとえば、連続して示された2つのブロックは、実際には、包含されている機能性に依拠して、実質的に同時に実行され得、時には逆の順序で実行され得る。ブロック図または流れ図あるいはその両方の各ブロック、ならびにブロック図または流れ図あるいはその両方におけるブロックの組合せは、規定された機能または行為あるいは特殊目的のハードウェアとコンピュータ命令との組合せを実行する、特殊目的のハードウェア・ベースのシステムによって実施され得ることも注目されよう。
【0135】
主題は、上記で、1つまたは複数のコンピュータ上で実行するコンピュータ・プログラム製品のコンピュータ実行可能命令の一般的な状況において説明されているが、当業者なら、本開示が他のプログラム・モジュールと組み合わせて実施され得ることも認識するであろう。一般に、プログラム・モジュールは、データ構造など特定のタスクを実行したり特定の抽象データ型を実施したりするルーチン、プログラム、コンポーネントを含む。なおまた、当業者なら、本発明のコンピュータ実施方法は、単一プロセッサまたはマルチプロセッサのコンピュータ・システム、ミニコンピューティング・デバイス、メインフレーム・コンピュータ、ならびに、コンピュータ、携帯用コンピューティング・デバイス(たとえば、PDA、電話)、マイクロプロセサ・ベースまたはプログラム可能な消費者用または産業用の電子回路などを含む他のコンピュータ・システム構成で実施され得ることを認識するであろう。図示の態様は、通信ネットワークを通じてリンクされた遠隔処理装置によってタスクを実行する分散コンピューティング環境でも実施され得る。しかしながら、本開示の態様の、すべてではなくとも一部が、スタンドアロンのコンピュータで実施され得る。分散コンピューティング環境では、プログラム・モジュールは、ローカル記憶装置とリモート記憶装置の両方に配置され得る。
【0136】
本出願で使用される「コンポーネント」、「システム」、「プラットフォーム」、「インターフェース」などの用語は、1つまたは複数の特定の機能を有するコンピュータ関連のエンティティまたは使用可能なマシン関連のエンティティを指すこと、または含むこと、あるいはその両方が可能である。本明細書で開示されたエンティティは、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、ソフトウェア、または実行中のソフトウェアのいずれかであり得る。たとえば、コンポーネントは、それだけではないが、プロセッサ上で実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能なもの、実行のスレッド、プログラム、またはコンピュータあるいはその組合せであり得る。例示として、サーバ上で実行中のアプリケーションとサーバの両方がコンポーネントであり得る。1つまたは複数のコンポーネントが、プロセスまたは実行スレッドあるいはその両方の内部に存在し得、コンポーネントを、1つのコンピュータにローカライズしたり、2つ以上のコンピュータの間に分散させたりまたはその両方を行うことができる。別の例では、各種データ構造を有している様々なコンピュータ可読媒体から、それぞれのコンポーネントが実行され得る。コンポーネントは、1つまたは複数のデータ・パケット(たとえば、ローカル・システムや分散システムにおける別のコンポーネントと相互作用し、またはインターネットなどのネットワークにわたって信号によって他のシステムと相互作用し、あるいはその両方である1つのコンポーネントからのデータ)を有する信号に従うなどして、ローカル・プロセスまたはリモート・プロセスあるいはその両方によって通信することができる。別の例として、コンポーネントは、プロセッサが実行するソフトウェアまたはファームウェアのアプリケーションによって作動される電気回路または電子回路によって動作する機械的部品がもたらす特定の機能を有する装置であり得る。そのような場合には、プロセッサは、装置の内部または外部にあって、ソフトウェアまたはファームウェアのアプリケーションの少なくとも一部を実行することができる。もう一つの例として、コンポーネントは、機械的部品なしで電子部品によって特定の機能を提供する装置であり得、電子部品は、プロセッサまたは電子部品の機能を少なくとも部分的に付与するソフトウェアまたはファームウェアを実行するための他の手段を含むことができる。一態様では、コンポーネントは、たとえばクラウド・コンピューティング・システムの内部で仮想マシンによって電子部品をエミュレートすることができる。
【0137】
加えて、「または」という用語は、排他的な「または」ではなく包括的な「または」を意味するように意図されている。すなわち、「XはAまたはBを採用する」は、特に指定がない限り、または文脈から明らかでない限り、自然な包括的順列のうちのいずれかを意味するように意図されている。すなわち、XはAを採用する、XはBを採用する、XはAとBの両方を採用する、は、いずれも「XはAまたはBを採用する」を満たす。なおまた、本明細書および添付図面で使用される冠詞「1つの(a)」や「1つの(an)」は、単数形を指すことが文脈から明らかな場合を除き、特に指定されていなければ、一般的には「1つまたは複数の」を意味するように解釈されるべきである。本明細書で使用される、「例」または「例示的」あるいはその両方の用語が、例、事例、または例示として働くことを意味するように利用される。疑義を避けるために、本明細書で開示された主題は、そのような例によって限定されない。加えて、本明細書で「例」または「例示的」あるいはその両方として説明されたあらゆる態様または設計は、他の態様または設計に対して必然的に好ましいかまたは有利であると解釈されるべきではなく、当業者に既知の等価な例示的構造および技術を排除することを意味するわけでもない。
【0138】
本明細書で採用される「プロセッサ」という用語は、それだけではないが、単一コア・プロセッサ、ソフトウェア・マルチスレッド実行能力を有する単一プロセッサ、マルチコア・プロセッサ、ソフトウェア・マルチスレッド実行能力を有するマルチコア・プロセッサ、ハードウェア・マルチスレッド技術を有するマルチコア・プロセッサ、並列プラットフォーム、および分散共有メモリを有する並列プラットフォームを備える、任意のコンピューティング処理ユニットまたはコンピューティング処理装置を実質的に指すことができる。加えて、プロセッサは、本明細書で説明された機能を実行するように設計された集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、複合プログラム可能論理デバイス(CPLD)、個別のゲートまたはトランジスタ・ロジック、個別ハードウェア・コンポーネントまたはそれらの任意の組合せを指すことができる。さらに、プロセッサは、それだけではないが、分子や量子ドットベースのトランジスタ、スイッチおよびゲートなどのナノスケール・アーキテクチャを利用して、ユーザ機器の空間利用を最適化したり性能を向上させたりすることができる。プロセッサは、コンピューティング処理ユニットの組合せとしても実施され得る。本開示では、「記憶」、「保存」、「データ記憶」、「データ保存」、「データベース」、およびコンポーネントの動作や機能に関連する実質的に任意の他の情報保存コンポーネントなどの用語は、「メモリ・コンポーネント」、「メモリ」の中に具現されたエンティティ、またはメモリを備えるコンポーネントを指すように利用される。本明細書で説明されたメモリまたはメモリ・コンポーネントあるいはその両方が、揮発性メモリまたは不揮発性メモリのいずれかであり得、または揮発性メモリと不揮発性メモリの両方を含むことができるものと認識されたい。限定ではなく例示として、不揮発性メモリは、読出し専用メモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能プログラマブル読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュ・メモリ、または不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(RAM)(たとえば強誘電性RAM(FeRAM))を含むことができる。揮発性メモリは、たとえば外部キャッシュ・メモリとして働き得るRAMを含むことができる。限定ではなく例示として、RAMは、シンクロナスRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SDRAM)、ダブル・データ・レートSDRAM(DDR SDRAM)、拡張SDRAM(ESDRAM)、Synchlink DRAM(SLDRAM)、直接Rambus RAM(DRRAM)、直接RambusダイナミックRAM(DRDRAM)、およびRambusダイナミックRAM(RDRAM)などの多くの形態で利用可能である。加えて、本明細書のシステムまたはコンピュータ実施方法の開示されたメモリ・コンポーネントは、他の適切なタイプのメモリを含むことを意図しており、これらに限定されない。
【0139】
上記の説明は、システムおよびコンピュータ実施方法の単なる例を含む。もちろん、本開示を説明する目的で、コンポーネントまたはコンピュータ実施方法の考えられるすべての組合せを説明することは不可能であるが、当業者なら、本開示の多くのさらなる組合せや順列が可能であることを認識することができる。その上、「含む」、「有する」、「所有する」などの用語が、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、付録および図面において使用される範囲では、そのような用語は、請求項における過渡的な単語として採用されたときの「備える」という用語と同様に解釈されるように、包括的であることが意図されている。
【0140】
様々な実施形態の説明が例示のために提示されたてきが、網羅的であることや、開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者には、多くの修正形態および変形形態が、説明された実施形態の範囲から逸脱することなく明らかになるはずである。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実用的な用途、もしくは市場に見られる技術に対する技術的な改善について最もよく説明するように、または他の当業者が本明細書で開示された実施形態を理解することを可能にするように、選択されたものである。
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【国際調査報告】