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特表2024-544848原料コストを削減するためのPower-To-Xプロセスを制御するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】原料コストを削減するためのPower-To-Xプロセスを制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20241128BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241128BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241128BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C01B32/40
C25B1/04
C25B9/00 A
C10G2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525089
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022000025
(87)【国際公開番号】W WO2023091165
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】17/300,821
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522402405
【氏名又は名称】インフィニウム テクノロジー,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INFINIUM TECHNOLOGY,LLC
【住所又は居所原語表記】2020 L Street,Suite 120,Sacramento,CA 95811-4260(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シュツレ,デニス
(72)【発明者】
【氏名】シュツレ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ギャロウェイ,アーニャ,ランプレッカー
(72)【発明者】
【氏名】マクギニス,グレン
(72)【発明者】
【氏名】マッタナ,アレックス
【テーマコード(参考)】
4G146
4H129
4K021
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4G146JD02
4H129AA01
4H129BA12
4H129BB07
4K021AA01
4K021BA02
(57)【要約】
【要約】
本明細書では、低炭素液体燃料及び化学物質の製造を制御するためのシステム及び方法が提供される。ある態様において、本明細書では、e燃料を製造するプロセスを制御する方法が提供される。別の態様において、本明細書では、e燃料を製造するためのシステムが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
e燃料を製造するプロセスを制御する方法であって、
a.第1の電力の量を電解モジュールへと供給することによってHを生成し、該HをCOと混合することによってCOに対するHの第1の比率を有するガス混合物を提供し、該ガス混合物に対して逆水性ガスシフト反応を実行することによって合成ガスを生成し、該合成ガスを反応させることによって液体炭化水素を生成する、ステップと、
b.刺激に応答して、第2の電力の量を前記電解モジュールへと供給することによってHを生成し、該HをCOと混合することによってCOに対するHの第2の比率を有するガス混合物を提供し、該ガス混合物に対して逆水性ガスシフト反応を実行することによって合成ガスを生成し、該合成ガスを反応させることによって液体炭化水素を生成する、ステップと
を含み、
前記第2の電力の量は、0と前記第1の電力の量との間の量であり、COに対するHの前記第2の比率は、COに対するHの前記第1の比率と実質的に同様である、方法。
【請求項2】
前記刺激が、電力の利用可能性に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記刺激が、電力の価格に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記刺激が、COの利用可能性に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記刺激が、COの価格に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記刺激が、一時的なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記刺激が、0~12時間持続する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記刺激に続いて、前記第1の量の電力が前記電解モジュールへと供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記刺激に応答して、Hがパイプラインから引き込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Hが、前記電解モジュールによって生成され、貯蔵される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記刺激に応答して、Hが貯蔵部から引き込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記合成ガスの前記液体炭化水素への反応の生成物流から、Hが回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
圧力スイング吸着を用いて、Hが回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の電力の量が、前記第1の電力の量の0%~70%である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記逆水性ガスシフト反応を実施する反応器へと供給される電力の量が、ゼロと前記第1の電力の量に対する前記第2の電力の量の比率の値との間の量だけ減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ガス混合物の流量が、20%~100%の量だけ減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電力の量及び/又は前記第2の電力の量が、再生可能な資源に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記液体炭化水素が、燃料である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の比率及び前記第2の比率が、2.0~4.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
e燃料を製造するシステムであって、
a.電力を使用することによって、水を、Hを含む電解生成物流へと変換することが可能な、電解モジュールと、
b.COを前記電解生成物流と反応させることによって、CO及びHを含む合成ガス混合物を生成することが可能な、逆水性ガスシフトモジュールと、
c.刺激を検出することが可能な、センサと、
d.前記刺激に応答して、水素回収モジュールを制御することが可能なコントローラであって、該水素回収モジュールは、前記合成ガス混合物からHを回収することによって、(i)逆水性ガスシフトモジュールに導かれるH流と、(ii)Hが枯渇した合成ガス混合物とを生成することが可能である、コントローラと、
e.Hが枯渇した前記合成ガス混合物を液体炭化水素へと変換することが可能な、炭化水素合成モジュールと、
f.自動熱改質(ATR)モジュールであって、前記電解モジュールからのOを、(i)前記炭化水素合成モジュールからの未反応反応物、及び、(ii)前記炭化水素合成モジュールからの5個未満の炭素原子を有する炭化水素と反応させることによって、前記炭化水素合成モジュールへと供給可能なATR生成物流を生成することが可能な、自動熱改質(ATR)モジュールと、
を含む、システム。
【請求項21】
前記センサが、前記逆水性ガスシフトモジュールへの入力におけるCOに対するHの比率を検出する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記刺激が、前記逆水性ガスシフトモジュールへの入力におけるCOに対するHの比率であって、該比率が2.5未満である、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記刺激が、電力の利用可能性に関連している、請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記刺激が、電力の価格に関連している、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記刺激が、COの利用可能性に関連している、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記刺激が、COの価格に関連している、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記刺激が、一時的なものである、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記刺激が、0~12時間持続する、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記刺激に続いて、前記第1の量の電力が前記電解モジュールへと供給される、請求項20に記載のシステム。
【請求項30】
前記水素回収モジュールが、圧力スイング吸着器(PSA)を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項31】
前記水素回収モジュールが、前記刺激がない場合には運転されない、請求項20に記載のシステム。
【請求項32】
前記水素回収モジュールが運転されない場合と比較して、前記水素回収モジュールが運転されることにより、前記炭化水素合成モジュールへと供給されるHに対するCOの比率が増加する、請求項20に記載のシステム。
【請求項33】
前記水素回収モジュールが運転されない場合と比較して、前記水素回収モジュールが運転されることにより、前記炭化水素合成モジュールによって生成される前記液体炭化水素の平均分子量が増加する、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし。
【0002】
連邦政府後援研究声明
該当なし。
【0003】
共同研究契約の当事者名
該当なし。
【0004】
配列リスト、表、コンピュータプログラムへの言及
該当なし。
【0005】
本発明の背景
二酸化炭素は、多くの工業及び生物学的プロセスによって生成される。二酸化炭素は、通常、大気中へと排出される。しかしながら、二酸化炭素は重大な温室効果ガスとして認識されているため、これらのプロセスからの二酸化炭素の排出を削減することが求められている。そのような工業プロセスの1つとして、電力の生産が挙げられる。電力は、COを排出しない太陽光や風力等の再生可能なエネルギー源から生産されることが増えており、時には、化石燃料から生産される電力よりもコスト効率よく生産され得る。
【0006】
しかしながら、電力は持続可能な方法で生産され得るが、CO排出量が少ないか、ゼロ又はマイナスで生産される燃料や化学物質に対する要求が残されている。いくつかの場合では、再生可能なエネルギー源からの電気エネルギーを液体又は気体分子の化学結合内に貯蔵することによって作製されるe燃料(合成燃料)を使用して、この要求を満たすことができる。e燃料は、航空(例えば、ジェット)燃料、ディーゼル燃料、ガソリン、ブタノール、ナフサ、合成天然ガス又は他の化石燃料から生産される他の燃料製品に対する互換性の高い代替品(drop-in alternative)となり得る。さらに、再生可能な電力を使用して製造され得る潜在的な化学物質には、アンモニアやメタノール、並びに、ホルムアルデヒド、酢酸、酢酸アルデヒド又は(例えば、ファインケミカル製造の出発材料としての)低級オレフィン及び芳香族化合物等の付加価値の高い化学物質が含まれる。このカテゴリーにおけるe燃料の製造プロセスは、「Power-to-X」と称され得る。これは、再生可能な電力がXを生産する際の主要な入力であることを意味し、ここで、Xは燃料、化学物質、天然ガス等である。
【0007】
e燃料及び化学物質の生産には、電力に加えて、供給原料が必要である。いくつかの場合では、この供給原料は炭素を含み得るものであり、この炭素は、例えば、他の産業源から捕捉されたCOに由来するが、このCOは、回収されない場合には大気中に排出されるものである。いくつかの場合では、この供給原料は、窒素を含み得るものであり、この窒素は、空気分離装置を含むいくつかの供給源に由来する。いくつかのe燃料又は化学物質は、「カーボンマイナス」、すなわち、その製造プロセスにおいて排出するCOよりも多くのCOを消費するものであり得る。水は、e燃料又は化学プロセスにおける別の供給原料であり得るものであり、この水を、再生可能な電力を使用して電解することによって、酸素(O)及び水素(H)を生成することができる。
【0008】
Power-to-Xを使用したe燃料の生産は、再生可能な電力を一次入力として利用するため、この入力が、e燃料又は他のPower-to-Xプラントの運転費用の大部分を占める。二次的なコストは、CO又は窒素等の追加の供給原料であり得る。
【0009】
本発明の分野
本発明の分野は、再生可能な電力又は低炭素電力からe燃料又は化学物質を製造するためのシステム及び方法、並びに、そのようなプロセスを制御及び最適化するための方法である。
【背景技術】
【0010】
関連技術の説明
様々なPower-to-X(PtX)コンセプトは、再生可能な電力又は低炭素電力を利用して、水を電気分解することにより水素を製造することに依存しています。この水素は、最終的なエネルギーキャリアとして直接使用され得るか、例えば、メタン、合成ガス、液体燃料、電気又は化学物質等へと変換され得る。PtXをエネルギーシステム内へと組み込むには、技術実証及びシステム統合が非常に重要である。200を超えるPtXの研究及び実証プロジェクトが発表されており、あるいは進行中である。
【0011】
これらのプロジェクトのうちいくつかには、プロセス最適化のためのいくつかの限定的な技術が含まれている。Schmidt et al(2017)は、水の電気分解のための断続的かつ信頼性の低い電力供給とのバランスをとることを補助するために、エネルギー貯蔵プロセスを組み込んでいる。
【0012】
Eichman et al(2020)は、組み込まれた再生可能なエネルギー電解槽システムの最適化について記載している。この最適化モデルは、卸売及び小売のエネルギー市場と需要とを組み合わせることについての正味の利益を決定している。しかしながら、このモデルには、供給原料のコストの変動、水素の代替供給源、生産物の卸売価格及び小売価格の変動、二次生産物(触媒のテールガスなど)の再利用は含まれていない。
【0013】
したがって、このような複雑なシステムを、経済等の外部刺激に対して全体的に制御及び最適化することは達成されていない。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、e燃料又は航空燃料、ディーゼル、メタノール、アンモニア等の化学物質を製造するためのシステム及び方法、並びに、酸素化された及び酸素化されていない化学供給原料の合成について記載する。本明細書では、電力の価格又は利用可能性、CO、窒素又は他の供給原料の価格又は利用可能性などの刺激に応答して、これらのシステムを制御する要求が認識されている。様々な態様において、この要求は、本明細書で提供されるシステム及び方法によって満たされる。
【0015】
ある態様では、本明細書において、e燃料を製造するプロセスを制御する方法を提供する。本方法は、第1の電力の量を電解モジュールへと供給することによってHを生成し、該HをCOと混合することによってCOに対するHの第1の比率を有するガス混合物を提供し、該ガス混合物に対して逆水性ガスシフト反応を実行することによって合成ガスを生成し、該合成ガスを触媒的に変換することによって液体炭化水素を生成する、ステップを含み得る。本方法は、さらに、刺激に応答して、第2の電力の量を前記電解モジュールへと供給することによってHを生成し、該HをCOと混合することによってCOに対するHの第2の比率を有するガス混合物を提供し、該ガス混合物に対して逆水性ガスシフト反応を実行することによって合成ガスを生成し、該合成ガスを反応させることによって液体炭化水素を生成する、ステップを含み得る。第2の電力の量は、ゼロと第1の電力の量の値との間の値である。COに対するHの第2の比率は、COに対するHの第1の比率と実質的に同様である。
【0016】
いくつかの態様では、刺激は、電力の利用可能性に関連している。
【0017】
いくつかの態様では、刺激は、電力の価格に関連している。
【0018】
いくつかの態様では、刺激は、COの利用可能性に関連している。
【0019】
いくつかの態様では、刺激は、COの価格に関連している。
【0020】
いくつかの態様では、刺激は、一時的なものである。
【0021】
いくつかの態様では、刺激は、0~12時間持続する。
【0022】
いくつかの態様では、刺激に続いて、第1の量の電力が電解モジュールへと供給される。
【0023】
いくつかの態様では、刺激に応答して、Hがパイプラインから引き込まれる。
【0024】
いくつかの態様では、Hは、電解モジュールによって生成され、貯蔵される。
【0025】
いくつかの態様では、刺激に応答して、Hが貯蔵部から引き込まれる。
【0026】
いくつかの態様では、合成ガスの液体炭化水素への反応の生成物流から、Hが回収される。
【0027】
いくつかの態様では、圧力スイング吸着を用いて、Hが回収される。
【0028】
いくつかの態様では、第2の電力の量は、第1の電力の量の0%~70%である。
【0029】
いくつかの態様では、逆水性ガスシフト反応を実施する反応器へと供給される電力の量は、0%と第1の電力の量に対する第2の電力の量の比率との間の量だけ減少される。
【0030】
いくつかの態様では、ガス混合物の流量は、20%~100%の量だけ減少される。
【0031】
いくつかの態様では、第1及び/又は第2の電力の量は、再生可能な資源に由来する。
【0032】
いくつかの態様では、液体炭化水素は、燃料である。
【0033】
いくつかの態様では、第1の比率及び第2の比率は、2.0~4.0である。
【0034】
別の態様では、本明細書において、e燃料を製造するシステムを提供する。本システムは、電力を使用することによって、水を、Hを含む電解生成物流へと変換することが可能な、電解モジュールを含み得る。本システムは、COを電解生成物流と反応させることによって、CO及びHを含む合成ガス混合物を生成することが可能な、逆水性ガスシフトモジュールを含み得る。本システムは、さらに、刺激を検出することが可能な、センサと、刺激に応答して、水素回収モジュールを制御することが可能なコントローラとを含み得る。該水素回収モジュールは、合成ガス混合物からHを回収することによって、(i)逆水性ガスシフトモジュールに導かれるH流と、(ii)Hが枯渇した合成ガス混合物とを生成することが可能である。本システムは、さらに、Hが枯渇した合成ガス混合物を液体炭化水素へと変換することが可能な、炭化水素合成モジュールと、自動熱改質(ATR)モジュールであって、電解モジュールからのOを、(i)炭化水素合成モジュールからの未反応反応物、及び、(ii)炭化水素合成モジュールからの5個未満の炭素原子を有する炭化水素と反応させることによって、炭化水素合成モジュールへと供給可能なATR生成物流を生成することが可能な、自動熱改質(ATR)モジュールとを含み得る。
【0035】
いくつかの態様では、センサは、逆水性ガスシフトモジュールへの入力におけるCOに対するHの比率を検出する。
【0036】
いくつかの態様では、刺激は、逆水性ガスシフトモジュールへの入力におけるCOに対するHの比率であって、該比率が0~2.5である。
【0037】
いくつかの態様では、水素回収モジュールは、圧力スイング吸着器(PSA)を含む。
【0038】
いくつかの態様では、水素回収モジュールは、刺激がない場合には運転されない。
【0039】
いくつかの態様では、水素回収モジュールが運転されない場合と比較して、水素回収モジュールが運転されることにより、炭化水素合成モジュールへと供給されるHに対するCOの比率が増加する。
【0040】
いくつかの態様では、水素回収モジュールが運転されない場合と比較して、水素回収モジュールが運転されることにより、炭化水素合成モジュールによって生成される液体炭化水素の平均分子量が増加する。
【0041】
前述の概念及び以下でさらに詳細に説明する追加の概念の全ての組み合わせ(ただし、そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)は、本明細書に開示の発明的主題の一部であることが企図されることを認識されたい。特に、本開示内における主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示の発明的主題の一部であることが企図される。
【0042】
これらの例示的な態様及び実施例のさらに他の態様、実施例及び利点については、以下で詳細に説明する。さらに、前述の情報及び以下の詳細な説明はいずれも、様々な態様及び実施例の単なる例示であって、特許請求される態様及び実施例の性質及び特性を理解するための概要又は枠組みを提供することが意図されていることを理解されたい。本明細書に開示の任意の実施例は、本明細書で開示される目的、目標及び要求の少なくとも1つと一致する任意の方法で他の実施例と組み合わせられてもよく、「ある実施例」、「いくつかの実施例」、「代替の実施例」、「様々な実施例」、「1つの実施例」、「少なくとも1つの実施例」、「本実施例及び他の実施例」等についての言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを示すことが意図されたものである。そのような用語が本明細書中に出現した場合、それらは必ずしも全てが同一の実施例を示すとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、再生可能な電力及びCOからe燃料を製造するプロセスの例を示す。
図2図2は、水素を廃液から逆水性ガスシフトモジュールの入力へと一時的に再利用するプロセスの例を示す。
図3図3は、例えばターンダウンの間に、e燃料プロセスで水素を回収して再利用するプロセスの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
再生可能な電力がより経済的になり、より広く配備されるようになると、本明細書に記載されるもののような、太陽光発電の電力を化学結合内に貯蔵する化学プロセス(すなわち、e-燃料及び電気化学物質)がより魅力的になる。再生可能な電力(例えば、風力や太陽光)の1つの利点は、限られた供給原料を消費せず、化石燃料由来の電力と比較して生産単価が低いことである。しかしながら、1つの欠点は、太陽光や風力は、一年を通して、あるいは一日の中でさえ一定ではない(すなわち変動する)ことであり得る。したがって、電力の貯蔵、再生可能でない電力の補充、又は、本明細書に記載されるような他の設計上の配慮がない限り、e燃料又は電気化学プロセスは、時折、ターンダウンする必要があり得る。本明細書で使用される場合、用語「ターンダウンする」又は「ターンダウンされた」は、概して、製造プロセスの出力を自発的に低下させることを示す。
【0045】
しかしながら、連続的な工業プロセス(例えば、燃料や化学物質を製造するプロセス)では、ターンダウンは典型的には困難であり、かつ時間がかかる。消費電力をより断続的に、かつ多くの場合より短時間で削減可能なプロセスは、それらが不可能なプロセスよりも経済的に顕著な利点(例えば、投入電力の平均コストがより低い)を享受することができる。
【0046】
ここでは、そのような燃料及び化学物質を製造するための有利なプロセスの1つについて説明し、図1において概略的に表す。全体として、本プロセスは、電力、CO及び水を、燃料及び化学物質へと変換する。ここで、電解槽100は、電力102を使用することによって、水104を水素106及び酸素108へと変換することができる。この水素を、逆水性ガスシフトモジュール110へと供給してCO112と併合することによって、一酸化炭素(CO)及び水素を含む合成ガス(合成ガス(syngas))114を生成することができる。この合成ガスを、液体燃料生成モジュール116内において反応させることによって、液体炭化水素118を生成することができ、この液体炭化水素118は、分留モジュール122内において燃料と化学生成物120とに分離することができる。テールガス124を液体燃料生成モジュールから自己熱改質モジュール126へと運搬して酸素108と反応させることによって、液体燃料生成モジュールのための追加の供給原料128を生成することにより、本プロセスの生産性を向上させることができる。
【0047】
図1に示すシステムは、本プロセスの全体的な電力消費の大部分が電解槽100の102に使用されるため、液体燃料及び化学物質を製造するための競合プロセスよりも容易にターンダウンすることができる。追加の電力130は、ユーティリティ132又は電解槽以外のモジュール(例えば、逆水性ガスシフト、液体燃料の製造、分画、自己熱改質器)に使用され得る。しかしながら、これらは、典型的には専ら電解に使用される電力の量よりもはるかに小さい。いくつかの場合では、本プロセスによって消費される総電力の75%~100%の量が、電解槽によって消費される。
【0048】
いくつかの場合では、本プロセスの出力は、本プロセスへの入力(例えば、電力)の量の減少(すなわち、ターンダウン)があったとしても、可能な限り高く維持される。本プロセスは、最小限の中断で該プロセスを迅速に復旧する能力を維持するようにして、ターンダウンされ得る。例えば、反応器は、製造温度及び製造圧力に、又はその付近に維持され得る。このような場合には、図1を参照すると、電解槽102を除くプロセス130のほとんど又は全てに対して電力が維持され得るようになる。全体として、電力消費に関しては、プロセスは、10%~100%ターンダウンされ得る。
【0049】
本プロセスは、電力消費に関して所定のターンダウンレベルで可能な限り多くの生産性を維持するように改良又は変更され得る。例えば、図2は、逆水性ガスシフトモジュール110から合成ガス生成物114を取り出すと共に水素を分離する水素回収モジュール200を示す。水素202は、電解槽106から直接供給される水素を補充するために、逆水性ガスシフトモジュールへと戻され得る。
【0050】
水素回収モジュール200は、化学量論的に過剰な過剰水素で運転される水性ガスシフトモジュールへと供給される適切な水素量を維持するために、ターンダウンケースで運転され得る。本プロセスは、刺激に応答してターンダウンされ得る。本システムは、刺激に応答して水素回収モジュールを制御することが可能なコントローラを含み得る。水素回収モジュールは、合成ガス混合物からHを回収することによって(i)逆水性ガスシフトモジュール110に導かれるH流202と、(ii)H204が枯渇した合成ガス混合物とを生成することが可能であり、この合成ガス混合物は、液体燃料生成部116へと送られ得る。
【0051】
水素回収モジュール200の運転によって、本プロセスにより生成される生成物120が変化され得る。いくつかの場合では、生成物分子の分子量分布が増加する。このことは、液体燃料生成モジュール116へと供給される水素の量が減少すると共にCOの量が相対的に増加することによって、炭素鎖の終端ではなく延長が促進されることに起因する。この生成物の変化は、刺激に応答してターンダウンしている間に、全体的な生産性が高くなることに対するトレードオフとして許容可能であり得るが、より長期的には(すなわち、刺激が存在しない際には)望ましくないことがある。
【0052】
刺激は、任意の適切な信号であり得る。いくつかの実施例では、刺激は、電力の利用可能性、及び/又は、電力の価格、及び/又は、電力の送電又は配電(T&D)の価格に関連している。再生可能な電力の価格及び利用可能性は、1年を通して、又は1日の中でさえ、時には大幅に変動し得る。電力のT&Dの価格及び利用可能性は、1年を通して、又は1日の中でさえ、時には大幅に変動し得る。例えば、様々な1年の時点(例えば、夏・冬)又は様々な1日の時点(例えば、昼・夜)において、それぞれ生産される平均的な太陽光発電電力は、比較的多く又は少なくなり得る。天候(雲や風など)の変動もまた、変動要因のひとつである。電力需要もまた変動的であり、いつでも事前に予測可能とは限らない。このような需要変動は、例えば、日中活動する人が多い際における追加の電力の需要、又は、天候が暑い際における追加の空調によって引き起こされ得る。このような要因及びそれ以上の要因が、電力の利用可能性又は価格の変動の一因となり得る。
【0053】
さらに、特に比較的多くの電力網が変動性のある再生可能な資源によって稼働している場合、電力会社は、電力網を管理するために、需要がピークになる期間及び/又は生産量が少ない期間には電力使用量を減らすよう、電力消費者に対してインセンティブを与えようとする。この管理は、電力の最大消費者(産業消費者)に対して、ピーク時の電力使用を回避又は削減するようインセンティブを与えることで最も効果的に達成される可能性がある。例えば、大規模な産業消費者に対して、ピーク時の電力消費を回避又は削減できれば、ピーク時以外であっても電力料金の請求を安くするプログラムが挙げられる。
【0054】
これらのピークは、任意の関連する期間であり得る。さらに、電力会社は、電力消費者に対して、これらのピーク時間について、事前に任意の関連する期間を通知する可能性がある。
【0055】
いくつかの場合では、刺激は、COの利用可能性、又は、窒素等の他のe燃料プラントへの供給原料の利用可能性に関連している。例えば、本明細書に記載のプロセスは、本プロセスと結合されなければCOを排出することになるプロセスと結合され得るが、そのようなプロセスは断続的に運転され得るか、それ自体がイベントに対応してターンダウンされる必要がある。そのような場合、追加のCOがパイプライン等の別の供給源から補充され得るか、本明細書に記載するように該プロセスがターンダウンされ得る。刺激はまた、COの価格にも関連し得る。
【0056】
いくつかの場合では、刺激は、逆水性ガスシフトモジュールへの入力における、COに対するHの比率である。通常の運転では、この比率は、2.0~4.0である。
【0057】
このプロセスは、刺激の後に復旧され得る。いくつかの場合では、刺激の後に、第1の電力の量が電解モジュールへと再び供給される。
【0058】
水素は、任意の適切な方法で回収されて、逆水性ガスシフトモジュールに再利用され得る。いくつかの場合では、水素は、選択膜の補助によって回収される。水素回収モジュールは、圧力スイング吸着器(PSA)を含み得る。
【0059】
いくつかの場合では、水素回収モジュールは、刺激のない場合には運転されない。いくつかの実施態様では、水素回収モジュールが運転されていない場合と比較して、水素回収モジュールが運転される場合は、炭化水素合成モジュールへと供給されるHに対するCOの比率が増加する。水素回収モジュールが運転されていない場合と比較して、水素回収モジュールが運転される場合は、炭化水素合成モジュールによって生成される液体炭化水素の平均分子量が増加し得る。
【0060】
刺激は、一時的なものであり得る。刺激は、任意の関連する期間だけ継続し得る。
【0061】
電力消費に関するターンダウンの期間はまた、別の供給源から水素を補充すること(すなわち、電解槽によって生成される水素の減少を補うこと)によっても管理され得る。例えば、水素は、一時的にパイプライン等の外部供給源から購入され得る。過剰水素はまた、電力が過剰な期間に電解槽によって生成され得ると共に、刺激に応答してターンダウンしている状況の間に後から使用するために貯蔵され得る。
【0062】
図3は、(例えば、プロセスのターンダウンの間に)水素を管理するための別のシステムを示す。ある態様では、本システムは、e燃料を製造するためのものである。本システムは、電力を使用することによって、水を、Hを含む電解生成物流へと変換することが可能な、電解モジュールを含み得る。本システムはさらに、COを電解生成物流と反応させることによって、CO及びHを含む合成ガス混合物を生成することが可能な、逆水性ガスシフトモジュールを含み得る。本システムはさらに、合成ガス混合物を液体炭化水素へと変換することが可能な、炭化水素合成モジュールを含み得る。本システムはさらに、炭化水素合成モジュールからHを回収して、該Hを逆水性ガスシフトモジュールへと供給することが可能な、水素回収モジュールを含み得る。本システムはさらに、電解モジュールからのOを、(i)炭化水素合成モジュール及び/又は水素回収モジュールからの未反応反応物、及び、(ii)炭化水素合成モジュール及び/又は水素回収モジュールからの5個未満の炭素原子を有する炭化水素と反応させることによって、炭化水素合成モジュールへと供給可能なATR生成物流を生成することが可能な、自動熱改質(ATR)モジュールを含み得る。
【0063】
図3を参照すると、テールガス124中の水素を、水素回収モジュール300内で回収することによって、(i)逆水性ガスシフトモジュール110に導かれるH流302と、(ii)H304が枯渇したテールガス混合物とを生成することが可能であり、このテールガス混合物は、自己熱改質器126へと送られ得る。水素は、任意の適切な方法で回収されて、逆水性ガスシフトモジュールに再利用され得る。いくつかの場合では、水素は、選択膜の補助によって回収される。水素回収モジュールは、圧力スイング吸着器(PSA)を含み得る。
【0064】
別の態様では、本明細書において、e燃料を製造するプロセスを制御する方法を提供する。本方法は、第1の電力の量を電解モジュールへと供給することによってHを生成し、該HをCOと混合することによってCOに対するHの第1の比率を有するガス混合物を提供し、該ガス混合物に対して逆水性ガスシフト反応を実行することによって合成ガスを生成し、該合成ガスを反応させることによって液体炭化水素を生成する、ステップを含み得る。本方法は、さらに、刺激に応答して、第2の電力の量を前記電解モジュールへと供給することによってHを生成し、該HをCOと混合することによってCOに対するHの第2の比率を有するガス混合物を提供し、該ガス混合物に対して逆水性ガスシフト反応を実行することによって合成ガスを生成し、該合成ガスを反応させることによって液体炭化水素を生成する、ステップを含み得る。第2の電力の量は、ゼロと第1の電力の量の値との間である。COに対するHの第2の比率は、COに対するHの第1の比率と実質的に同様である。
【0065】
第2の電力の量は、第1の電力の量についての任意の適切な分数(すなわち、電力消費に関するターンダウン量)であり得る。第2の電力の量は、第1の電力の量の0%~70%の量であり得る。刺激に続いて、第1の電力の量が、電解モジュールへと供給され得る(すなわち、プロセスが復旧され得る)。
【0066】
いくつかの実施形態では、ガス混合物(すなわち、COを伴うH)の流量が低減される(すなわち、反応物の消費に関係するターンダウン量)。ガス混合物の流量は、プロセスのフル稼働時におけるガス混合物の流量の0%~70%の量であり得る。いくつかの場合では、ガス混合物の流量は、プロセスのフル稼働時におけるガス混合物の流量の0%~70%の量である。
【0067】
COに対するHの第1の比率及び/又は第2の比率は、2.0~4.0であり得、好ましくは2.5~3.5であり得、さらに好ましくは2.8~3.2であり得る。
【0068】
COに対するHの第2の比率は、COに対するHの第1の比率と実質的に同様である。いくつかの場合では、第1の比率と第2の比率との差は、40%以下であり、好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。
【0069】
いくつかの態様では、刺激に応答して、Hがパイプラインから引き込まれる。いくつかの態様では、Hは、電解モジュールによって生成され、貯蔵される。いくつかの態様では、刺激に応答して、Hが貯蔵部から引き込まれる。いくつかの態様では、合成ガスの液体炭化水素との反応の生成物流から、Hが回収される。いくつかの態様では、圧力スイング吸着を用いて、Hが回収される。いくつかの態様では、逆水性ガスシフト反応を実施する反応器へと供給される電力の量は、ゼロと第1の電力の量に対する第2の電力の量の比率との間の値である量だけ減少される。
【0070】
二酸化炭素は、いくつかの供給源から取得され得る。肥料用のアンモニアを生産する工業的製造工場は、大量の二酸化炭素を生成する。トウモロコシ又は小麦をエタノールへと変換するエタノール工場は、大量の二酸化炭素を生成する。様々な資源(例えば天然ガス、石炭、その他の資源)から電気を発生させる発電所は、大量の二酸化炭素を生成する。ナイロン生産工場、エチレン生産工場、その他の化学工場等の化学工場は、大量の二酸化炭素を生成する。いくつかの天然ガス処理工場は、パイプラインの仕様に適合するように天然ガスを精製するプロセスの一部として、COを生成する。本明細書に記載されるような利用のためにCOを回収することには、多くの場合、排ガスの流又は主要成分が二酸化炭素でない別の流から二酸化炭素を分離することが含まれる。いくつかのCO供給源は、既に比較的純粋であり、本明細書に記載されるプロセスにおいて、少しの処理(ガスの圧縮を含むことがある)を行うだけで使用可能である。いくつかのプロセスは、排ガスの蒸気から二酸化炭素を除去するために使用されるアルキルアミン又は他の方法が必要になることがある。該プロセスにおいて使用されるアルキルアミンには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、アミノエトキシエタノール又はそれらの組み合わせが含まれる。金属有機フレームワーク(MOF)材料もまた、希釈された流から二酸化炭素を捕捉するために、化学吸着又は物理吸着を使用して該流から二酸化炭素を分離する手段として使用されている。濃縮された二酸化炭素を得る他の方法には、循環する金属酸化物材料が燃焼プロセス中に生成された二酸化炭素を捕捉する化学ループ燃焼が含まれる。二酸化炭素はまた、二酸化炭素の直接空気回収(DAC)と称される方法で、大気からも捕捉され得る。
【0071】
再生可能な水素(H)源は、電気分解によって水から製造することができる。
【化1】

この反応は、電気を使用することによって、水を水素と酸素とに分解する。電解槽は、電解液で分離された陽極と陰極とにより構成されている。電解槽が異なると、主に包含される電解質材料のタイプが異なることに起因して、機能が若干異なるものとなる。
【0072】
しかしながら、それぞれの電解技術において、水が常圧常温にてシステムへと供給されて、全てのエネルギー入力が電気の形態で提供される場合、理論上の最小電気エネルギー入力は39.4kWh/kgH(水素HHV)である。必要な電気エネルギー入力は、適切な熱エネルギーがシステムへと供給される場合、39.4kWh/kgHより少なくなることがある。電気分解の他に、現在の重要な研究は、光エネルギー及び光触媒を使用して水を水素と酸素とに分解する方法を調査することである。
【0073】
異なる電解技術を使用した種々異なる電解槽の設計が可能であり、そのような電界技術には、アルカリ電解、膜電解、固体高分子電解質膜(PEM)、固体酸化物電解(SOE)及び高温電解等が含まれる。アルカリ電解は、商業的には1MWを超える大規模運転が可能である。使用可能な種々異なる電解質には、活性化化合物を伴う又は伴わないKOH及びNaOH等の液体が含まれ得る。活性化化合物は、電解液の安定性を向上させるために電解液に添加され得る。水素発生反応のためのほとんどのイオン活性化剤は、エチレンジアミン(エン)系の金属塩化物錯体([M(en)]Cl、M1/4Co、Ni等)とNaMoO又はNaWOとで構成される。ラネー-ニッケル-アルミニウムのような金属及び酸化物の多くの異なる組み合わせが含まれる、種々異なる電極触媒が電極上に使用され得るが、そのような電極触媒は、合金に対してコバルト又はモリブデンを添加することによって強化され得る。PtMo、HfFe及びTiPt等、遷移金属のいくつかの組み合わせは、カソード材料として使用されており、技術水準における電極よりも著しく高い電極触媒活性を示している。
【0074】
陰極での水は、外部回路からの電子と結合することによって、水素ガスと負に帯電した酸素イオンとを形成する。酸素イオンは、固体セラミック膜を通過し、陽極にて反応することによって、酸素ガスを形成すると共に外部回路のための電子を生成する。このようにして、電解槽では、水素ガス及び酸素ガスの両方が生成される。一実施形態では、複数の電解槽が並列で運転される。どの電解槽も100%のエネルギー効率で運転されることはなく、エネルギー使用量は、設備の経済的な運転にとって極めて重要である。電解槽のエネルギー使用量は、0~200メガワット時(MWh)/メートルトン(MT)・生成Hであることが推奨され、好ましくは、0~120MWh/MT・生成Hであり、さらに好ましくは、0~60MWh/MT・生成Hである。アルカリ電解槽の実施形態では、電力使用量は、39.4MWh/MT・生成Hより大きくなる。しかしながら、高温電解槽の実施形態では、廃熱を使用することによって電解槽を周囲温度より高温に加熱する場合には、電力使用量は、潜在的には0~39.4MWh/MT・生成Hとなり得る。
【0075】
本明細書に記載されるように、逆水性ガスシフト(RWGS)反応は、以下の式に従って合成ガスを製造するために使用され得る:
【化2】

この反応は、二酸化炭素及び水素を、一酸化炭素及び水へと変換する。この反応は、室温では吸熱性であり、反応を進行させるために熱を必要とし、二酸化炭素を顕著に転化させるために高温及び優れた触媒を必要とする。
【0076】
水素と二酸化炭素とが混合される。H/COの比率は、2.0mol/mol~4.0mol/molであり、いくつかの場合では、3.0~4.0mol/molであり得る。混合RWGS原料は、間接熱交換によって、900°Fを超える温度まで加熱され得る。この初期温度の上昇は、熱を供給するために炭素含有ガスの直接燃焼を使用することなく行われ得る。このことは、二酸化炭素が生成されていたことを意味し、二酸化炭素を有用な燃料及び化学物質へと変換することの影響が否定され得る。
【0077】
水素及び二酸化炭素の混合物を含むRWGS供給ガスは、入口温度まで加熱され得る。入口温度は、RWGS反応を実施するための任意の適切な温度であり得る。いくつかの場合では、RWGS供給の入口温度は、900°F~1800°Fである。
【0078】
RWGS供給ガスは、主反応器容器の外側の予熱器内にて少なくとも部分的に加熱され得ることによって、加熱された供給ガスが生成され得る。予熱器は、電気的に加熱され得ると共に、間接的な熱交換を通じて供給ガスの温度を上昇させ得る。
【0079】
供給ガスの電気加熱が行われ得る方法としては、様々な方法が存在する。1つの方法は、電気加熱放射炉内での電気加熱である。いくつかの実施形態では、供給ガスの少なくとも一部が、炉内の加熱コイルを通過する。炉内では、加熱コイルが輻射式電気加熱要素によって取り囲まれているか、ガスが加熱要素の上を直接通過し、それによって、ガスが何らかの対流熱伝達によって加熱される。電気発熱体は、複数の材料から作製され得る。発熱体は、ニッケルクロム合金であってもよい。これらの要素は、圧延されたストリップ又はワイヤであってもよく、ジグザグパターンとして鋳造されていてもよい。該要素は、典型的には、断熱スチールのシェルで裏打ちされており、断熱には、通常はセラミックファイバーが使用される。輻射要素は、加熱パターンを制御するために、複数の区域へと分割されてもよい。熱を供給ガスへと供給して加熱された供給ガスを生成するには、複数のコイル及び複数の区域が必要になり得る。良好な視野率と良好な熱伝達を確保するため、輻射炉には発熱体及び流体コイルの適切な設計が必要である。輻射炉の電力使用量は、可能な限り低いことが推奨される。輻射炉の電力使用量は、供給ガス中におけるCO1トン(MT)あたり0~0.5MWh(メガワット時)であり、好ましくは0~0.40MWh/MT COであり、さらに好ましくは0~0.20MWh/MT COである。
【0080】
加熱されたRWGS供給ガス流は、次に、主RWGS反応器容器へと供給され得る。主RWGS反応器容器については、少なくとも2つの可能な実施形態が存在する。いくつかの実施形態では、主RWGS反応器容器は、断熱又はほぼ断熱であって、熱損失を最小化するように設計されるが、主反応器容器には熱が加えられず、主反応器容器内の温度は、該反応器の入口から出口へ向かって低下することになる。いくつかの実施形態では、主RWGS反応器容器は同様に設計されるが、容器内の等温又はほぼ等温の温度プロファイルを維持するために、該容器には追加の熱が加えられる。主RWGS反応器容器は、直径よりも長い長さの反応器であり得る。主反応器容器の入口は、容器の全体の直径よりも小さいものであり得る。主反応器容器は、スチール容器であり得る。スチール容器は、熱損失を抑制するために、内部が断熱され得る。注湯された若しくはキャスタブルの耐火物ライニング又は断熱レンガを含む様々な断熱材が、環境への熱損失を抑制するために使用されてもよい。
【0081】
触媒床は、主RWGS反応器容器の内部に存在し得る。触媒は、反応器を横切る圧力損失を最小にするために、顆粒、ペレット、球、三ローブ、四ローブ、モノリス又は他の任意の設計された形状の形態であり得る。いくつかの場合では、触媒粒子の形状及び粒径は、反応器の全体を跨いだ圧力損失が、平方インチあたり0~100ポンド(psi)(345kPa)、好ましくは0~20psiとなるように管理される。触媒形態のサイズは、1mm~10mmの特性寸法を有し得る。触媒粒子は、内部表面積が40m/gより大きく、いくつかの場合ではが80m/gより大きく、いくつかの場合では100m/gの表面積を有する多孔質材料の構造化材料であり得る。
【0082】
RWGS触媒は、汎用性が高く、かつRWGS反応を効率的に実施する、高性能な固溶体触媒であり得る。堅牢な固溶体遷移金属触媒は、最大1,100℃の温度にて高い熱安定性を有しており、カーボンを形成(コーキング)せず、捕捉されたCO流中に存在する可能性のある汚染物質に対して良好な耐性を有する。この触媒は、少なくとも30重量%の遷移金属濃度を必要とする他の触媒と比較して、低い遷移金属濃度(5~20重量%)にて高い活性を示し得る。さらに、触媒の性能を向上させるために、高価な貴金属を使用する必要がない。RWGS触媒の製造プロセスでは、金属相の偏析がほとんど又は全くない二種金属(bi-metallic)結晶相である固溶体相を形成する触媒を生成し得る。この化学構造によって、従来の金属担持触媒と比較して、コーキングに対する耐性が強化されることになる。また、硫黄及びアンモニア等の毒に対する耐性もまた強化される。さらに、該触媒は、例えばアルミナ上Ni等の単金属偏析触媒相と比較してより小さい表面積で、強化された触媒活性を有し得る。いくつかの場合では、該触媒は、炭素の析出を抑制するために必要とされるアルカリ促進が必要でない。
【0083】
いくつかの場合では、RWGSステップの圧力と、炭化水素合成又は液体燃料製造(LFP)ステップの圧とは、互いに200psi以内であり、いくつかの場合では、互いに100psi以内であり、いくつかの場合では、互いに50psi以内である。2つのプロセスを互いに近い圧力にて運転すると、合成ガス流の必要な圧縮が抑制される。
【0084】
主RWGS反応器容器内における二酸化炭素の一酸化炭素への1パス当たりの転化率は、60~90モル%であり得、いくつかの場合では、70~85モル%であり得る。断熱反応器が使用される場合、主RWGS反応器容器内の温度は、入口から出口へ向かって低下し得る。主RWGS反応器容器の出口温度は、主反応器容器の入口温度より100°F~200°F低く、いくつかの場合では、主反応器の入口温度より105~160°F低い。RWGS重量時間空間速度(WHSV)は、時間あたりのRWGS反応物(H+CO)の質量流量を、主RWGS反応器床内における触媒の質量で割ったものであり、これは1,000~50,000hr-1であり得、いくつかの場合では、5,000~30,000hr-1であり得る。
【0085】
主RWGS反応器容器を出るガスは、RWGS生成物ガス流である。RWGS生成物ガスは、一酸化炭素(CO)、水素(H)、未反応の二酸化炭素(CO)及び水(HO)を含む。さらに、RWGS生成物ガスはまた、主反応器容器内にて副反応により生成された少量のメタン(CH)を含むこともある。
【0086】
RWGS生成物ガスは、この時点で、様々な方法において使用され得る。該生成物ガスは冷却及び圧縮されて、燃料及び化学物質を製造する下流工程において使用され得る。RWGS生成物ガスは冷却及び圧縮されて、予熱器へと戻されることによって主反応器容器へと再供給され得る。RWGS生成物ガスは第2の電気予熱器内において再加熱されて、第2の反応器容器に送られ得、この第2の反応器容器において、COのCOへの追加の転化が行われ得る。
【0087】
RWGS反応からのCO(一酸化炭素)と水の電気分解による水素とを用いて、触媒で一酸化炭素を炭化水素へと水素化することにより、有用な生成物が得られる潜在的可能性がある。H及びCOの混合物は、合成ガス(synthesis gas)又は合成ガス(syngas)と称される。合成ガスは、広範な化学製品を製造するための原料として使用され得るものであり、そのような化学製品には、液体燃料、アルコール、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アンモニア及び他の多くの化学製品が含まれる。
【0088】
一酸化炭素の触媒水素化によって、メタンから重質炭化水素(C100以上)に至るまでの、軽質ガス、液体及びワックス、さらに酸素含有炭化水素を製造することは、典型的にはフィッシャー-トロプシュ(又はF-T)合成と称される。従来の低温(250℃未満)F-Tプロセスでは、主に触媒転化プロセスから重量(又は重量%)の大きいF-Tワックス(C25以上)が製造される。これらのF-Tワックスは、続いて、水素化分解及び/又はさらなる処理が行われることによって、ディーゼル、ナフサ及び他の留分が製造される。この水素化分解プロセスでは、軽質炭化水素もまた生成されるため、実現可能な製品を製造するためには、さらなる性能向上が必要となることがある。F-Tに一般的に使用される触媒は、コバルト(Co)ベース又は鉄(Fe)ベースの触媒であり、これらは供給される一酸化炭素を二酸化炭素へと転化することになる水ガスシフト(WGS)反応にも活性がある。
【0089】
F-Tに加えて、本明細書に記載の液体燃料製造(LFP)モジュールが使用され得る。LFP反応器は、CO及びHを、液体燃料及び化学物質として使用可能な長鎖炭化水素へと変換する。この反応器では、合成ガスから液体燃料範囲の炭化水素を製造するための触媒が使用され得る。合成ガスの冷却及び凝縮から得られる合成ガスは、テールガスとブレンドされることによって、LFP反応器供給物が製造され得る。LFP反応器供給物は、水素及び一酸化炭素を含む。理想的には、一酸化炭素に対する水素の比率は、1.9~2.2mol/molである。LFP反応器は、多管状固定床反応器システムであり得る。各LFP反応器管の直径は、13mm~26mmであり得る。反応器管の長さは、概して長さ6mを超えており、いくつかの場合では、長さ10mを超えている。LFP反応器は、概して、LFP反応器供給物がLFP反応器の頂部から入る垂直配向である。しかしながら、いくつかの状況では、反応器の水平配向もまた可能であり、高さに制限があるいくつかの状況では、反応器を斜めに設置することもまた有利であり得る。
【0090】
LFP反応器管の長さの大部分は、LFP触媒で満たされ得る。LFP触媒は、LFP反応器供給物のLFP反応器管内への及び該管全体にわたっての分配を補助するために、シリカ又はアルミナ等の希釈剤とブレンドされてもよい。LFP反応器内において起こる化学反応により、大部分として炭素数5~24の炭化水素(C-C24炭化水素)を含むと共に水もまた含むLFP生成物ガスが生成されるが、一部の炭化水素はこの範囲外である。LFP反応器は、典型的には、有意な量の二酸化炭素を生成しない。LFP反応器供給物中における一酸化炭素の0%~2%の量が、典型的には、LFP反応器内にて二酸化炭素へと変換される。LFP反応器供給物中における一酸化炭素の限られた量のみが、典型的には、炭素数が24より大きい炭化水素へと変換される。LFP生成物の炭化水素画分の0%~25%の量が、24より大きい炭素数を有する。いくつかの場合では、LFP生成物の炭化水素留分の0~10重量%が、24より大きい炭素数を有し、好ましくは、LFP生成物の炭化水素画分の0~4重量%が、24より大きい炭素数を有し、さらに好ましくは、LFP製品の炭化水素画分の0~1重量%が、24より大きい炭素数を有する。
【0091】
上述したように、フィッシャー・トロプシュ(F-T)プロセスは、概して、炭素原子の長さが1~125である炭化水素生成物を生成する。本明細書に記載のLFP触媒は、重質炭化水素を、F-Tプロセスにおいて使用される他の触媒と同じ収率では生成しない。いくつかの実施形態では、LFP触媒は、水ガスシフト反応を介した一酸化炭素の二酸化炭素への転化に対する活性としては、優位な活性を有しない。いくつかの実施形態では、一酸化炭素の二酸化炭素への水ガスシフト転化率は、供給物中の一酸化炭素の0%~5%である。いくつかの実施形態では、LFP触媒は、活性金属としてコバルトを含む。いくつかの実施形態では、LFP触媒は、活性金属として鉄を含む。いくつかの実施形態では、LFP触媒は、活性金属として鉄及びコバルトの組み合わせを含む。LFP触媒は、十分なサイズ、形状、細孔直径、表面積、破砕強度、有効ペレット半径を備えた、アルミナ、シリカ、チタニア、活性炭、カーボンナノチューブ、ゼオライト又は他の担体材料、又は、それらの混合物からなる群より選択される金属酸化物担体上に担持され得る。触媒は、様々な形状を有し得、そのような形状としては、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のローブ(lobe)を有するローブ付き(lobed)担体が含まれ、そのような担体では、2つ以上のローブが他の2つの短いローブよりも長く、長いローブの両方が左右対称である。担体の中点又は各ローブの中点からの距離は、有効ペレット半径と称され、C-C24炭化水素に対する所望の選択性の達成に寄与し得る。LFP触媒プロモーターには、ニッケル、セリウム、ランタン、白金、ルテニウム、レニウム、金又はロジウムのうち1つが含まれていてもよい。LFP触媒プロモーターは、触媒全体の0~1重量%であり、好ましくは0~0.5重量%であり、さらに好ましくは0~0.1重量%である。
【0092】
LFP触媒担体は、8ナノメートル(nm)を超える細孔直径、0~600ミクロンの平均有効ペレット半径、3ポンド/mmを超える破砕強度、及び、100m/gを超えるBET表面積を有し得る。金属が含浸された後の触媒は、4%の金属分散度を有し得る。いくつかのタイプの担体は、C-C24炭化水素の収率を最大化し得る。これらには、アルミナ/シリカの組み合わせ、活性炭、アルミナ、カーボンナノチューブ、及び/又は、ゼオライトベースの担体が含まれ得る。
【0093】
LFP固定床反応器は、C-C24炭化水素の収率を最大化する方法で運転され得る。LFP反応器は、150~450psiの圧力で運転され得る。反応器は、350~460°Fの温度範囲で、より典型的には約410°Fにて運転され得る。該反応は、発熱性である。反応器の温度は、反応器管の束が熱交換器内へと配置され、そこでLFP反応器管の外側に沸騰した蒸気が存在することにより、LFP反応器管の内部において維持され得る。蒸気の温度はLFP反応温度より低いため、熱はLFP反応器管から低温の蒸気へと流れる。蒸気の温度は、蒸気の圧力を維持することで維持できる。蒸気は、概して飽和蒸気である。いくつかの実施形態では、触媒反応器は、スラリー反応器、マイクロチャネル反応器、流動床反応器、又は、当技術分野にて既知の他の反応器タイプであり得る。
【0094】
LFP反応器内におけるCO転化率は、1パス当たり30~80モル%のCO転化率に維持され得る。COは、余分な転化率のために再利用されるか、下流における追加のLFP反応器へと送られ得る。COに対する炭素選択性は、変換されたCOの0%~4%の量に、より好ましくは0%~1%の量に最小化され得る。C-C24炭化水素に対する炭素選択性は、60~90%であり得る。LFP反応器生成物ガスは、液体燃料として凝縮される所望のC-C24炭化水素及び水、並びに、未反応の一酸化炭素、水素、少量のC-C炭化水素及び少量のC24+炭化水素を含有している。所望の生成物は、冷却、生成物の凝縮及び/若しくは蒸留、又は、他の許容可能な手段によって、流から分離され得る。未反応の一酸化炭素、水素及びC-C炭化水素は、自己熱改質器(ATR)への供給物の一部とされ得る。
【0095】
自己熱改質器(ATR)では、ATR炭化水素供給物は、一酸化炭素、水素及びC-C炭化水素を含む。メタン(C)を主成分とする天然ガスの自動熱改質によって、一酸化炭素及び水素が得られる。
【0096】
いくつかの実施態様では、ATR炭化水素供給物は、未反応の一酸化炭素、水素及びC-C炭化水素を含む。いくつかの場合では、該供給物はまた、天然ガスも含む。天然ガスはメタンを含み、二酸化炭素や軽質炭化水素を含むこともある。一部の実施形態では、生成される燃料及び化学物質はゼロ炭素燃料でなくてもよいが、それでも従来の燃料及び化学物質よりも炭素強度が改善されることになる。ATR供給物は、合成ガス(水素を大きな割合で含む)へと変換され得る。これにより、水素を生成するために電解する必要がある水の量が低減され得ることによって、電解槽のサイズが小さくされ得る。このことは、低炭素燃料及び化学物質を生成する際において、より経済的であり得る。ATR炭化水素供給物において、LFPの未反応の一酸化炭素、水素及びC-C炭化水素に対する天然ガスの比率は、0kg/kg~2.0kg/kgの量であり得、より好ましくは、0kg/kg~1.25kg/kgの量であり得る。
【0097】
ATRは、一酸化炭素を多く含む生成物を生成し得る。生成物ガス中の二酸化炭素は、0mol%~10mol%の量であり得る。ATR酸化剤供給物は、水蒸気及び酸素を含み得るものであり、ここで、酸素は水の電気分解によって生成される。ATR酸化剤供給物及びATR炭化水素供給物は、予熱され、続いてATRバーナー中で反応させられ、このとき、酸化剤及び炭化水素が、バーナー中の2000℃を超える温度にて部分的に酸化される。ATR反応器は、複数の区域へと分割され得る。燃焼区域(又はバーナー)は、ATR炭化水素原料の少なくとも一部が完全燃焼させられて、水及び二酸化炭素となる場所である。熱区域は、熱反応が起こる場所である。熱区域では、均質な気相反応によって、さらなる転化が起こる。それらの反応は、CO酸化反応及び高級炭化水素に関する熱分解反応のような燃焼反応よりも、遅い反応であり得る。熱区域における主な全体的反応には、均質な気相での水蒸気と炭化水素との改質反応や、シフト反応が含まれる。触媒区域では、炭化水素の最終転化が不均一系触媒反応によって行われ、そのような不均一系触媒反応には、水蒸気メタン改質及び水ガスシフト反応が含まれる。結果として得られるATR生成物ガスは、予測された熱力学的平衡組成に近い組成を有し得る。実際のATR生成物ガスの組成は、0℃~70℃の差の範囲内において、熱力学的平衡組成と同じであり得る。これは、いわゆる平衡アプローチ温度である。ATRにおいて生成されるCOの量を最小化するため、ATR酸化剤供給物中における蒸気の量は、可能な限り低く保たれ得る。その結果、予測された平衡組成に近い、煤の少ないATR生成物ガスが生成され得る。典型的には、この組み合わせたATR供給物(酸化剤+炭化水素)中における、炭素に対する全蒸気の比率(mol/mol)は0.4~1.0であり、最適には約0.6である。ATR供給物中における炭素に対する蒸気の比率が増加すると、合成ガス中におけるH/COの比率が増加する。また、二酸化炭素の量も増加する。いくつかの実施形態では、炭素に対する蒸気の比率を変更又は調整すると、設備内における水素の全体的な生成量を制御することにとって有益である。
【0098】
ATR生成物は、800℃を超える温度でATR触媒区域を出ることができる。ATR生成物は、廃熱ボイラーを通じてより低温に冷却され得、この排熱ボイラーにて熱が移動されることにより、蒸気を発生させる。この蒸気は、LFP反応器内にて生成されるより低圧の蒸気と同様に、発電に使用され得る。
【0099】
触媒区域での反応に適したATR触媒は、典型的にはニッケルベースである。本明細書に記載の新規な固溶体触媒は、ATR触媒として使用され得る。他の好適なATR触媒は、貴金属プロモーターの有無にかかわらず、α相アルミナ又はマグネシウムアルミナスピネル(MgAl)上ニッケルである。貴金属のプロモーターは、金、白金、レニウム又はルテニウムを含み得る。スピネルは、アルミナ系触媒よりも高い融点、高い熱強度及び安定性を有し得る。
【0100】
ATR生成物は、RWGS生成物とブレンドされて、LFP反応器供給物として使用され得る。その結果、原料の二酸化炭素をC-C24炭化水素製品へと変換する利用性が高められ得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、LFP生成物ガスはATRへと直接供給することに適しておらず、予備改質する必要がある。そのような場合、未反応の一酸化炭素、水素、C-C炭化水素及びCOを含むLFP生成物ガスは、予備改質炭化水素供給物ガスを含む。この流中において高級炭化水素及び炭素酸化物が多いと、ATR炭化水素供給物として直接使用されず、予備改質器の使用が必要になることがある。予備改質器は、概して断熱反応器である。断熱予備改質器は、予備改質器供給物中における高級炭化水素を、ATR炭化水素供給物として適したメタン、蒸気、炭素酸化物及び水素の混合物へと変換する。予備改質器を使用する利点の1つは、ATRにおいて使用される酸素を低減し得る、より高級なATR炭化水素供給物の予備加熱が可能になることである。その結果としての上記のような統合プロセスによって、二酸化炭素から、燃料又は化学物質として適したC-C24炭化水素生成物への高い転化率が得られる。
【0102】
いくつかの実施形態では、燃料/化学物質生成段階より得られるテールガス(及び、潜在的には他の炭化水素原料)、並びに、電解プロセスから得られる酸素を、追加の合成ガスへと変換する、自己熱改質(ATR)プロセスである。いくつかの実施形態では、(CO)RWGS(水素化)触媒を運転するための、ATRプロセスから得られる熱エネルギーの使用である。いくつかの実施形態では、ATRプロセスから得られるCOを分離すると共に、CO水素化触媒を使用して追加の合成ガスへと変換することである。いくつかの実施形態では、RWGS触媒、反応器及びプロセスは、CO及び水素を合成ガスへと変換し、このRWGS運転を、合成ガスが燃料又は化学物質へと変換される燃料/化学物質製造プロセスの圧力に近い圧力で運転することである。いくつかの場合では、これらの燃料又は化学物質は、パラフィン系又はオレフィン系炭化水素液体であって、それらの大部分は、C-C24の範囲にある。
【0103】
本明細書に記載のシステム及び方法は、センサを利用し得る。該センサは、流量センサ、プロセス流の化学組成を検出するセンサ、温度センサ、圧力センサ、又は、CO若しくは電力等のプロセス入力の価格若しくは利用可能性に結合されたセンサであり得る。
【0104】
一態様において、本明細書に記載されるシステム及び方法は、二酸化炭素を効率的に捕捉及び利用して、燃料(例えば、ディーゼル燃料、ガソリン、ガソリンブレンドストック、ジェット燃料、灯油、他)及び化学物質(例えば、溶剤、オレフィン、アルコール、芳香族、潤滑油、ワックス、アンモニア、メタノール、他)等の有用な製品へと変換し、そのような有用な製品は、石油及び天然ガス等の化石資源から生産される燃料及び化学物質を置き換えることができる。これにより、二酸化炭素の大気中への総排出量を低減することができる。ゼロ炭素、低炭素、超低炭素の燃料及び化学物質は、そのプロセス中で燃焼される化石燃料が最小限である。いくつかの場合では、統合されたプロセスへの供給物の加熱は、間接的な手段(例えば、直交流式熱交換器(cross exchanger))、又は、風力、太陽熱、地熱、原子力等のゼロ炭素又は再生可能なエネルギー源から供給される電気加熱によって行われる。
【0105】
所定の実施形態
以下は、二酸化炭素、水及び再生可能な電力を、低炭素又はゼロ炭素の高品質燃料及び化学物質へと転化するためのプロセスについての所定の実施形態である:
【0106】
1.再生可能な電力を使用して電力供給された電気分解システムに水を供給することよって、水素及び酸素を生成する。二酸化炭素は、供給源から捕捉される。この二酸化炭素を電気分解システムから得られた水素と混合することによって、加熱された流(逆水性ガスシフト供給原料又は「RWGS」供給原料)を形成し、この加熱された流を、RWGS触媒を含むRWGS反応器容器へと供給する。RWGS反応器は、この供給原料を、一酸化炭素、水素、未反応の二酸化炭素及び水を含むRWGS生成物ガスへと変換する。再生可能な電力のコスト上昇についての刺激に応答して、電解システムに供給される電力の量が減少される。水素の生成量の減少を補償するために、コントローラは水素回収モジュールを作動させ、該水素回収モジュールは、RWGS生成物ガスから水素を回収することによって、この水素をRWGS反応器へと再利用する。この補償により、水素及び二酸化炭素の比率が、2.0~4.0に維持される。このRWGS生成物ガスを冷却及び圧縮して、液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。LFPシステムは、RWGS製品ガスを炭化水素製品へと変換し、この製品の50%以上がC-C24炭化水素である。
【0107】
2.再生可能な電力を使用して電力供給された電気分解システムに水を供給することよって、水素及び酸素を生成する。二酸化炭素は、発酵排気ガスから捕捉される。この二酸化炭素を電気分解システムから得られた水素と混合することによって、加熱された流(逆水性ガスシフト供給原料又は「RWGS」供給原料)を形成し、この加熱された流を、RWGS触媒を含むRWGS反応器容器へと供給する。RWGS反応器は、この供給原料を、一酸化炭素、水素、未反応の二酸化炭素及び水を含むRWGS生成物ガスへと変換する。再生可能な電力のコスト上昇についての刺激に応答して、電解システムに供給される電力の量が減少される。水素の生成量の減少を補償するために、追加の水素がパイプライン又は水素貯蔵容器から引き出される。この補償により、水素及び二酸化炭素の比率が、2.0~4.0に維持される。このRWGS生成物ガスを冷却及び圧縮して、液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。LFPシステムは、RWGS製品ガスを炭化水素製品へと変換し、この製品の50%以上がC-C24炭化水素である。
【0108】
3.再生可能な電力を使用して電力供給された電気分解システムに水を供給することよって、水素及び酸素を生成する。二酸化炭素は、供給源から捕捉される。この二酸化炭素を電気分解システムから得られた水素と混合することによって、加熱された流(逆水性ガスシフト供給原料又は「RWGS」供給原料)を形成し、この加熱された流を、RWGS触媒を含むRWGS反応器容器へと供給する。RWGS反応器は、この供給原料を、一酸化炭素、水素、未反応の二酸化炭素及び水を含むRWGS生成物ガスへと変換する。再生可能な電力のコスト上昇についての刺激に応答して、電解システムに供給される電力の量が減少される。水素の生成量の減少を補償するために、コントローラは水素回収モジュールを作動させ、該水素回収モジュールは、RWGS生成物ガスから水素を回収することによって、この水素をRWGS反応器へと再利用する。この補償により、水素及び二酸化炭素の比率が、2.0~4.0に維持される。このRWGS生成物ガスを冷却及び圧縮して、液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。LFPシステムは、RWGS製品ガスを炭化水素製品へと変換し、この製品の50%以上がC-C24炭化水素である。さらに、1つ以上のC-C炭化水素、一酸化炭素及び水素を、触媒を含む自動熱改質器(「ATR」)へと供給することによって、ATR生成物流を提供する。RWGS生成物ガスは、ATR生成物流とブレンドして、システムの生産性を高めるために液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。
【0109】
4.再生可能な電力を使用して電力供給された電気分解システムに水を供給することよって、水素及び酸素を生成する。二酸化炭素は、供給源から捕捉される。この二酸化炭素を電気分解システムから得られた水素と混合することによって、加熱された流(逆水性ガスシフト供給原料又は「RWGS」供給原料)を形成し、この加熱された流を、RWGS触媒を含むRWGS反応器容器へと供給する。RWGS反応器は、この供給原料を、一酸化炭素、水素、未反応の二酸化炭素及び水を含むRWGS生成物ガスへと変換する。センサは、二酸化炭素に対する水素の比率が2.5未満であることを検出して、コントローラに対して水素回収モジュールを作動させる信号を送信し、該水素回収モジュールは、RWGS生成物ガスから水素を回収することによって、この水素をRWGS反応器へと再利用する。この補償により、水素及び二酸化炭素の比率が、2.0~4.0に維持される。このRWGS生成物ガスを冷却及び圧縮して、液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。LFPシステムは、RWGS製品ガスを炭化水素製品へと変換し、この製品の50%以上がC-C24炭化水素である。
【0110】
5.再生可能な電力を使用して電力供給された電気分解システムに水を供給することよって、水素及び酸素を生成する。二酸化炭素は、供給源から捕捉される。この二酸化炭素を電気分解システムから得られた水素と混合することによって、加熱された流(逆水性ガスシフト供給原料又は「RWGS」供給原料)を形成し、この加熱された流を、RWGS触媒を含むRWGS反応器容器へと供給する。RWGS反応器は、この供給原料を、一酸化炭素、水素、未反応の二酸化炭素及び水を含むRWGS生成物ガスへと変換する。再生可能な電力のコスト上昇についての刺激に応答して、RWGS反応器の運転温度が減少され、それによって消費電力が減少する。この修正により、RWGS反応器から得られる生成物の組成が変更される。このRWGS生成物ガスを冷却及び圧縮して、液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。LFPシステムは、RWGS製品ガスを炭化水素製品へと変換し、この製品の50%以上がC-C24炭化水素である。
【0111】
6.再生可能な電力を使用して電力供給された電気分解システムに水を供給することよって、水素及び酸素を生成する。二酸化炭素は、供給源から捕捉される。この二酸化炭素を電気分解システムから得られた水素と混合することによって、加熱された流(逆水性ガスシフト供給原料又は「RWGS」供給原料)を形成し、この加熱された流を、RWGS触媒を含むRWGS反応器容器へと供給する。RWGS反応器は、この供給原料を、一酸化炭素、水素、未反応の二酸化炭素及び水を含むRWGS生成物ガスへと変換する。再生可能な供給減少についての刺激に応答して、電解システムに供給される電力の量が減少されるが、システムの他のモジュールへと供給される電力は実質的に維持される。このRWGS生成物ガスを冷却及び圧縮して、液体燃料製造(「LFP」)システムへと供給する。LFPシステムは、RWGS製品ガスを炭化水素製品へと変換し、この製品の50%以上がC-C24炭化水素である。
【0112】
上述の実施形態は、数多くの方法のうち任意のもので実装され得る。例えば、それらの実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組合せを用いて実装され得る。ソフトウェアにて実装される場合には、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに設けられているか複数のコンピュータに分散されているかにかかわらず、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサ集合上で実行されてもよい。上述の機能を実行する任意のコンポーネント又はコンポーネント集合は、概して、上述の機能を制御する1つ又は複数のコントローラとみなされ得ることを認識されたい。1つ又は複数のコントローラは、上述の機能を実行するために、専用のハードウェアを用いた、又は、マイクロコード若しくはソフトウェアを使用してプログラムされた1つ又は複数のプロセッサを用いた数多くの方法で実装され得る。
【0113】
この点に関して、本発明の実施形態における1つの実施態様は、コンピュータプログラム(すなわち、複数の命令)がエンコードされた少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読記憶媒体(例えば、コンピュータメモリ、ポータブルメモリ、コンパクトディスク等)を含み、このコンピュータプログラムは、プロセッサ上で実行された際に、本発明の実施形態における上述の機能を実行することを理解されたい。コンピュータ可読記憶媒体は、該記憶媒体上に記憶されたプログラムを任意のコンピュータリソース上にロードすることによって、本明細書で論じた本発明の態様を実施し得るように、運搬可能であり得る。さらに、実行された際に上述の機能を実行するコンピュータプログラムに対する参照は、ホストコンピュータ上で実行されるアプリケーションプログラムに限定されないことを認識されたい。むしろ、コンピュータプログラムとの用語は、本明細書では一般的な意味で使用され、すなわち、本発明の上述の態様を実装するようプロセッサをプログラムするために採用され得る任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)について参照する。
【0114】
本発明の様々な態様は、単独で使用されてもよく、組み合わせて使用されてもよく、前述の説明に係る実施形態では特に論じられていない様々な配置で使用されてもよく、したがって、前述の説明にて示された又は図面にて図示された構成要素の詳細及び配置に対してそれらの態様を適用することに限定されない。例えば、ある実施形態に説明された態様は、他の実施形態に説明された態様と任意の方法で組み合わせられてもよい。
【0115】
また、本発明の実施形態は、1つ又は複数の方法として実施されてもよく、そのような例が提供されている。(1つ又は複数の)方法の一部として実行される行為は、任意の適切な方法で順序付けられてもよい。したがって、例示の実施形態では連続的な行為として示される場合であっても、示された順序とは異なる順序で行為が実行される実施形態が構築されてもよく、そのような異なる順序には、いくつかの行為を同時に行うことが含まれる。
【0116】
特許請求の範囲において、請求項要素を修飾するために「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞が使用される場合、それ自体によって、ある請求項要素の他の請求項要素に対する優先度、優先順位又は順序や、方法の行為が実行される時間的順序を意味するものではない。このような用語は、単に、ある名称を有する請求項要素を、(序数詞の使用を除いて)同じ名称を有する別の要素から区別するための標識として使用されているに過ぎない。
【0117】
本明細書で使用される表現及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「包含する(involving)」及びそれらの変形が使用される場合、その後に列挙される項目及び追加の項目を包含することを意味する。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、当業者には様々な修正及び改良が容易に思い浮かぶであろう。そのような変更及び改良は、本発明の趣旨及び範囲内にあることが意図される。したがって、前述の説明は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるようにのみ限定される。
【実施例
【0119】
以下の例は例示を目的としたものであって、どのような形であっても、本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0120】
事例1:
この事例は、e燃料生産設備の基本事例である。この設備は、図1のように構成されている。電気分解装置において電気を使用することによって、水素を生成する。二酸化炭素は、二酸化炭素捕捉設備から供給される。水素及び二酸化炭素は、H/CO比率を2.0として、RWGS反応器へと供給される。本事例において、刺激がある場合には、この設備は本発明の恩恵を受けることなく反応する。ここでの刺激は、風力タービンへの風の減少を原因とする、e燃料製造設備が利用可能な電力の量の減少である。基本電力の50%しか利用可能とならない期間が12時間存在している。この設備の電解装置は、Hの生産量を50%に縮小する。ここで、RWGS反応器へのH/COの比率を同じように保つために、COの使用量が50%減少する。これにより、RWGS反応器からの合成ガスは50%減少する。したがって、全体的なLFP燃料の生産量は50%減少する。プラント全体の収益は、この12時間の間、50%減少する。これは、明らかに所望よりも少ない。
【0121】
事例2:
この事例では、設備の構成は事例1の構成と類似しているが、図2に示すように、水素回収モジュールを備えている。この事例では、刺激は事例1と同一であり、12時間の期間、電力が50%削減される。モニター及びコントローラが作動する。この場合、水素回収モジュールは、刺激に対して、ATRから得られる合成ガスもまた含むRWGS反応器出口からHを分離することによって応答し、HをRWGS入口へと戻して再利用することによって、供給中のH/CO比を同じように保つ。COの使用量は、同じままとなる。ATRへと供給される水を増加させることによって、炭素に対する蒸気の比率が高くなり、その結果、ATRから出てくるH/CO比率が高くなる。LFPへと供給されるH/CO比率は、2.0から(例えば)1.8まで減少する。全体的なLFP反応器の転換率は、事例1の基本事例における刺激の前から20相対パーセント減少する。設備を出る生産物の全体的な減少は、事例1の50%減少の代わりに20%であり、このことは本発明の利点を示している。したがって、工場全体の収益は、12時間の間、20%減少する。これは、基本事例よりも収益が大幅に改善されたことを表している。
【0122】
事例3:
この事例では、構成は事例1と同一である。ここでの刺激は、炭素回収ユニットから得られる二酸化炭素流の2時間の停止である。この事例では、基本構成において、電解槽における水素の生成が停止される。全体的な燃料の生産量は、この期間にわたってゼロになる。この2時間の期間における収益は、ゼロになる。一時的な刺激が停止すると、設備が再起動してフル生産に達する。その後、設備は別の刺激を受け、利用可能な電力が2時間にわたってゼロになる。その後、施設は燃料の生産を停止する。この2時間の期間における収益は、ゼロである。この事例では、2つの別々の刺激による4時間にわたる収益は、ゼロである。
【0123】
事例4:
この事例では、構成は水素回収モジュールを備えている事例2と同一である。事例3と同じ刺激が、この新たな設備によって見られる。第1の刺激の間、2時間の二酸化炭素のない時間がある。この場合、事例3とは対照的に、電解槽の運転は継続する。水素回収モジュールは、停止中に生成された水素の液化及び貯蔵を可能にする。電解槽を運転するための電力が利用可能でない第2の刺激の間、水素が貯蔵部から取り出されて、燃料の生産が継続される。この事例では、第1の刺激イベントの間、設備の収益はゼロであるが、第2の刺激イベントの間、収益は減少しない。そのため、この場合において、2度の刺激イベント全体で、収益は完全な生産収益の50%となる。このことは、事例4の設備の収益に対して、大幅に収益が増加したことを表している。
【0124】
参考文献
Eichman, J, Koleva, M., Guerra, O.J., McLaughlin, B: Optimizing an integrated renewable-electrolysis system, National Renewable Energy Laboratory Report # NREL/TP-5400-75635, 55 pages (2020).
Ince, C., Hagen, S.: Modeling and simulation of Power-to-X systems: a review, Fuel, 304 (2021).
Wulf, C., Zapp, P., Schrebier, A.: Review of Power-to-X demonstration projects in Europe, Frontiers in Energy Research (2020).
図1
図2
図3
【国際調査報告】