(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液化ガスを貯蔵するためのタンク及び流体輸送方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526642
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022083077
(87)【国際公開番号】W WO2023094500
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,ジャン・マルク
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA04
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172CA02
3E172DA04
3E172EA03
3E172EB03
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、液化ガス、具体的には液化水素を貯蔵するためのタンクに関し、タンクは、下端と上端との間で貯蔵空間を画定する封止されたシェル(2)を含み、タンク(1)は、流体を充填及び/又は排出するために貯蔵空間に流体接続される回路(3、4)を含み、タンクは、貯蔵空間内で、貯蔵空間の上部に置かれ、貯蔵空間の上端の方向に開いた、桶(5)を形成する1組の壁(15、25)を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス、具体的には液化水素を貯蔵して送達するための可動タンクであって、下端と上端との間で貯蔵容積を区切る液密シェル(2)を含み、前記シェル(2)は、前記タンク(1)が使用構成にある時に水平である主要方向(A)に延在し、前記シェル(2)は、真空下で断熱空間を備えた別のシェルによって包囲され、前記タンク(1)は、流体を充填及び/又は排出するための前記貯蔵容積に流体連結された回路(3、4)を含む、可動タンクにおいて、前記タンク(1)は、前記貯蔵容積内に、前記貯蔵容積の前記上部に置かれたボール(5)を形成し、前記貯蔵容積の前記上端に向かって開く1組の壁(15、25)を含み、前記ボール(5)は前記主要方向(A)に延在し、前記ボール(5)によって区切られた前記容積は、前記ボール(5)の少なくとも上縁部において前記タンクの前記貯蔵容積の残余部と連通することを特徴とする、タンク。
【請求項2】
前記ボール(5)によって区切られた前記容積が、1mm~50mmの高さを有する裂け目を介して前記タンクの前記貯蔵容積の残余部と連通することを特徴とする、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記ボール(5)によって区切られた前記容積が、前記シェル(2)によって区切られた前記容積の2%~15%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタンク。
【請求項4】
前記ボール(5)を形成する前記壁の組(15、25)が、前記ボールの底部を画定する壁(15)を含み、前記底部は、前記シェル(2)の高さの75%~95%に対応する前記シェル(2)の第1の高さ(L1)に置かれることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項5】
前記第1の高さ(L1)が、前記貯蔵容積の80%~98%、好ましくは90%~95%の前記シェル(2)に対する液体充填位置に対応することを特徴とする、請求項4に記載のタンク。
【請求項6】
前記ボール(5)を形成する前記壁の組(15、25)が、前記ボール(5)の前記上縁部を画定する少なくとも1つの壁(25)を含み、前記上縁部が、好ましくは前記シェル(2)の高さの80%~98%に対応する前記シェルの第2の高さ(L2)に置かれることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項7】
前記ボール(5)の前記上縁部の少なくとも一部は、垂直であり及び/又は前記ボール(5)の前記中心部に向かって配向されることを特徴とする、請求項6に記載のタンク。
【請求項8】
前記タンク(1)が、前記貯蔵容積(2)の前記下端と前記上端との間を通過する時に、前記流体を前記高さに垂直である主要方向(A)に少なくとも1往復させるように、この主要方向(A)にずれている前記貯蔵容積中に1つ又は複数の偏向壁(13)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項9】
前記偏向壁(13)の少なくとも一部は、前記タンクが液化ガスを含有する時に、前記液化ガスの前記液相中に沈められるように、前記貯蔵容積の下半分に置かれることを特徴とする、請求項8に記載のタンク。
【請求項10】
前記1つ又は複数の偏向壁(13)が、可撓性材料、具体的には前記シェル(2)が作成される材料よりも軽量である前記材料から作成されることを特徴とする、請求項8又は9のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項11】
前記ボール(5)を形成する前記壁の組の少なくとも一部は、可撓性材料、具体的には前記シェル(2)が作成される材料よりも軽量である前記材料から作成されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項12】
前記回路(3、4)が、前記ボール(5)中に開く第1の輸送ライン(4)を含み、この第1のライン(4)は、前記ボール(5)の下の前記シェルの前記貯蔵容積を任意選択により通過する前記ボール(5)中に開くことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項13】
前記ボール(5)の前記上端と前記液密シェルの前記上壁との間の前記裂け目の前記高さが、前記主要方向に一定ではなく、例えばこの高さは、前記気体供給部、すなわち前記第1の輸送ライン(4)が前記ボール(5)中に開く場所から遠ざかるほど増すことを特徴とする、請求項12に記載のタンク。
【請求項14】
前記主要方向Aに横方向の平面において、前記ボール(5)が中心に置かれ、すなわち前記タンクを2つの容積の半体に分離する中央垂直軸に関して中心に位置付けられ、並びに/又は前記ボールは、長手方向及び/若しくは横方向に対称であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のタンク。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載のタンク中に流体を輸送するための方法であって、以下のステップ、すなわち、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)を液体で充填するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)中に気体を輸送するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)から気体を排出するステップのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを貯蔵するためのタンク及び流体輸送方法に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、下端と上端との間で貯蔵容積を区切る液密シェルを含む、液化ガス、具体的には液化水素を貯蔵するためのタンクに関し、タンクは、流体を充填及び/又は排出するための貯蔵容積に流体連結された回路を含む。
【0003】
水と比べて低い密度の液体水素は、例えば静圧ヘッドを通って利用可能な圧力を制限する。低温では、これは、輸送中に蒸発によりかなりの損失をもたらす可能性がある。液体水素を送達及び貯蔵するためのシステムは、生産の最高15%までに及ぶ可能性がある損失をもたらす可能性がある。
【0004】
過冷却された液体を輸送することは、可動タンク内の圧力が気圧より低くならないことを確実にするために予防策を必要とする(これは、タンクの機械的強度に関する恐れ、又は輸送された流体に空気が入る恐れがあるはずである)。
【0005】
液体が充填されたトラックタンクは、液体水素を受領貯蔵施設に送達するために加圧されなければならない(この貯蔵施設は、液体ポンプの作動又は加圧水素の供給を確実にするために、通常加圧したまま保たれる)。この加圧は、通常トラックのタンク内の水素を蒸発及び再加熱することによって行われる(圧力構築ユニットすなわちPBU)。これは、従ってタンクの中にエネルギーを導入する。
【0006】
一旦液体が第1の受領貯蔵施設に送達されると、タンクは、別のステーションを充填するために進み、又は補給のために液体源に戻ることができる。トラックの移動により、液体が動き、気相と接触するお陰で、タンクの内側の減圧が可能になる。得られる圧力は、システムにエネルギーを追加するので最初の圧力より常に大きくなる。
【0007】
最終的に、送達数及びこれらの受領ステーションに必要な圧力が、往復した後に液化装置内で損失する又は再液化される水素の量を決定する。
【0008】
圧力が極低温液タンクから機器の別の品目に解放される時に、様々な場合のシナリオを生じる可能性があり、とりわけ
タンクの内側の圧力の低減により、液体が水蒸気と平衡状態にある場合に液体を蒸発させることができ(液体内の泡)、この蒸発は、液体の温度を均質化する傾向があり(反成層)、
圧力を低減するためにタンクから抽出される質量は、タンクから出る水蒸気の温度に直接関連する(水蒸気が低温であるほど、密度は高くなり圧力の同じ変化に対して抽出される質量は大きくなる)。
【0009】
同様に、極低温液体タンクが排熱により、又は別のタンクからの輸送により加圧される時に、様々な場合のシナリオが生じる可能性があり、とりわけ
液体の上で成層する水蒸気が多いほど、タンクの内側の圧力は速く上昇し(温度が上昇すると、水蒸気の密度は低減し)、
圧力の同じ上昇に対して、気体の密度に比べて「高温の」水蒸気の質量より多い質量の低温の水蒸気(平衡温度)を注入する必要がある。
【0010】
極低温液体タンクが別のタンクからの液体によって充填される時、様々な場合のシナリオが生じる可能性があり、とりわけ
液体の上に成層される水蒸気が多いほど、頂部から水蒸気を抽出することなくタンクの底部から充填する時に、圧力の上昇は速く、
貯蔵施設内に存在する水蒸気より液体の温度が低いほど、貯蔵施設が頂部から充填される(例えば雨)時に、圧力の降下は大きい。
【0011】
更に、極低温液体タンクが排出される時に、様々な場合のシナリオが生じる可能性があり、
液体が平衡から離れる(過冷却される)ほど、タンクが頂部に水蒸気を追加することなく排出される時に圧力の降下は速く、そうでなければ、減圧の場合のように蒸発が起き、
水蒸気の温度が平衡から離れるほど、タンクが頂部に水蒸気を追加することによって排出される時に、追加される水蒸気の質量は低下する。
【0012】
要するに、タンクに関与する異なる作動のための気相及び液相の最適な構成は、以下のように要約されてもよい。
減圧中:成層された水蒸気及び過冷却された液体。
充填中:成層された水蒸気及び過冷却された液体。
満杯の貯蔵/輸送中:成層されない水蒸気及び過冷却された液体。
一部満杯又は空の貯蔵又は輸送中:成層された水蒸気及び過冷却された液体。
加圧中:成層された水蒸気及び過冷却された液体。
排出中:成層された水蒸気及び過冷却された液体。
【0013】
満杯のタンクの貯蔵及び/又は輸送段階のみが、この少量の水蒸気の圧力の大幅な上昇を回避するために、気相内の平衡(成層がない)を必要とするはずである。液体は、貯蔵施設内の圧力で平衡温度に対して常に良好に成層して過冷却される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一目的は、上記の先行技術の欠点の全て又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明による、そうでなければ上記前文に与えられた一般的定義に対応するタンクは、貯蔵容積内で、貯蔵容積の上端に向かって開く貯蔵容積の上部にボールを形成する1組の壁を含むことを基本的に特徴とする。
【0016】
この構造により、気圧を超える圧力、及びタンクの輸送によって起きた液体のいかなる動きにもかかわらず、成層されて過冷却された液体の温度を同時に維持することができる。
【0017】
提案された解決策は、これらの貯蔵施設に対する加圧及び充填作動も促進する。
【0018】
輸送タンクは、タンク内の圧力が自然に増加した場合(熱の侵入)に水蒸気のための空間を残すために、通常90%まで(液体は最高95%まで)充填される。これは、圧力が上昇するにつれて液体の密度が降下し、同じ質量の液体によって占有された空間が増加するからである。液位は、従ってタンクから水蒸気を排出することなく、圧力が増加するにつれて増加する傾向がある。輸送規則は、タンクが移動される時に、液体が安全部材を通して排出されることを禁止している。従って最高液位は、これらの条件によって制限される。
【0019】
更に、本発明の実施形態は、1つ又は複数の以下の特徴を有してもよく、すなわち
ボールによって区切られた容積は、ボールの少なくとも上縁部でタンクの貯蔵容積の残余部と連通し、
ボールによって区切られた容積は、1mm~50mmの高さを有する裂け目を介して、タンクの貯蔵容積の残余部と連通し、
ボールによって区切られた容積は、シェルによって区切られた容積の2%~15%であり、
ボールを形成する壁の組は、ボールの底部を画定する壁を含み、前記底部は、シェルの高さの75%~95%に対応するシェルの第1の高さに置かれ、
第1の高さは、貯蔵容積の80%~98%、好ましくは90%~95%のシェル(2)に対する液体充填位置に対応し、
ボールを形成する壁の組は、ボールの上縁部を画定する少なくとも1つの壁を含み、前記上縁部は、好ましくはシェルの高さの80%~98%に対応するシェルの第2の高さに置かれ、
ボールの上縁部の少なくとも一部は、垂直であり及び/又はボールの中心部に向かって配向され、
タンクは、貯蔵容積の下端と上端との間を通過する時に、流体を高さに垂直な主要方向に少なくとも1往復させるように、この主要方向にずれる貯蔵容積に1つ又は複数の偏向壁を含み、
偏向壁の少なくとも一部は、タンクが液化ガスを含有する時に、液化ガスの液相内に沈められるように貯蔵容積の下半分に置かれ、
1つ又は複数の偏向壁は、可撓性材料、具体的にはシェルが作成される材料より軽量である材料から作成され、
シェルは、タンクの使用構成において水平である主要方向に延在し、ボールはこの主要方向に延在し、
ボールを形成する壁の組の少なくとも一部は、可撓性材料、具体的にはシェルが作成される材料より軽量である材料から作成され、
回路は、ボールに開く第1の輸送ラインを含み、
第1の輸送ラインは、ボールの下のシェルの貯蔵容積を通過してボールに開く。
【0020】
本発明は、上記若しくは下記の特徴のいずれか1つによるタンクに流体を輸送するための方法にも関し、以下のステップ、すなわち、第1のラインを介して液体をタンクに充填するステップ、第1のラインを介してタンクに気体を輸送するステップ、第1のラインを介してタンクから気体を排出するステップの少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明は、特許請求の範囲内の上記若しくは下記の特徴のあらゆる組合せを含む、あらゆる代替デバイス又は方法にも関してもよい。
【0022】
他の特徴及び利点は、図を参照して以下の記載に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明によるタンクの可能な例示的実施形態の断面の概略部分縦断図である。
【
図3】
図3は、別の実施形態によるタンクの詳細を示す、断面の概略部分図である。
【
図4】
図4は、本発明によるタンクの別の可能な例示的実施形態の断面の概略部分縦断図である。
【
図6】
図6は、本発明によるタンクの別の可能な例示的実施形態の断面の概略部分縦断図である。
【
図8】
図8は、充填段階の
図1の例示的実施形態の断面の概略部分縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示された液化ガス貯蔵タンク1は、例えば液化水素を貯蔵することを意図する。このタンク1は、具体的には可動送達タンクであってもよく、例えばトラック又はトラックトレーラによって運ばれてもよい。
【0025】
タンク1は、下端と上端との間で貯蔵容積を区切る液密シェル2を含む。このシェル2は、例えば真空下で(簡単にするために
図1のみに示されている)断熱空間を備えた第2のシェル20によって包囲されてもよい。
【0026】
タンク1は、流体を充填及び/又は排出するために貯蔵容積に流体連結された回路3、4を含む。
【0027】
例えばシェル2は、概して円筒形であり、タンク1の使用構成において水平である主要方向Aに延在してもよい。タンクは、従って「水平」タンクと呼ばれる。
【0028】
好都合な特徴によれば、タンク1は、貯蔵容積内に、貯蔵容積の上端に向かって開いている貯蔵容積の上部にボール5を形成する1組の壁15、25を含む。
【0029】
換言すると、タンク1の頂部は、タンクが動いている時であっても、貯蔵施設の頂部で液体と水蒸気との間の接触を防ぐ又は制限するように構成されたボール5(若しくは桶)を含む。これは、ボール5の壁が、ボール内に置かれた気体を下に置かれた液体から隔離又は分離することを意味する。
【0030】
ボール5は、好ましくはこの主要方向Aに延在する。
【0031】
図1に示されたように、このボール5は、その端部の少なくとも一方で(例えばシェル2と液密接続を用いて、例えば溶接により長手方向端部で)閉鎖されてもよい。ボール5は、タンク1の上壁に沿って、例えばその長手方向縁部で、シェル5の容積の残余部と連通する少なくとも1つを開いたままにしてもよい。
【0032】
ボール5によって区切られた容積は、次いでボール5の少なくとも上縁部でタンクの貯蔵容積の残余部と連通する。
【0033】
ボール5によって区切られた容積は、例えば1mm~50mmの高さを有する裂け目を介して、タンク1の貯蔵容積の残余部と連通する。
【0034】
例えば高さに垂直方向に、ボール5によって区切られた容積は、シェル2の長さの50%~95%の長さ、好ましくは長さの70%~90%の長さを有する裂け目を介して、タンクの貯蔵容積の残余部と連通する。
【0035】
ボール5によって区切られた容積は、シェル2によって区切られた容積の2%~15%であってもよい。
【0036】
例示されたように、ボール5を形成する壁の組は、ボールの底部を画定する壁15(例えば平面で水平である)を含んでもよい。好ましくはこの底部は、シェル2の高さのxx%~UU%に対応するシェル2の第1の高さL1に置かれる。例えばこの第1の高さL1は、総貯蔵容積の80%~98%、好ましくは90%~95%のシェル2に対する液体の充填位置に対応してもよい。これは、第1の高さL1が、貯蔵容積の90%~95%を液体で充填することができるように決定されてもよいことを意味する。
【0037】
ボール5を形成する壁の組は、底部からボール5の上縁部を画定する少なくとも1つの壁25を更に含む。この上縁部は、好ましくはシェル2内の第2の高さL2に置かれ、好ましくはシェル2の高さの80%~98%に対応する。第2の高さL2は、タンクの幾何形状に応じて決定されてもよい。これにより、第2の高さL2がボールの頂部に縁部を追加することによって最大化することができる。タンクが満たされると、液体の成層は、水平又はほぼ水平の壁を使用して保存されることもある。
【0038】
ボール5の上縁部を形成する壁の少なくとも一部は、垂直(
図2参照)若しくはボールの外側に向かって広がり、又はボールの中心部に向かって折り畳まれてもよい(
図3参照)。
【0039】
この構造により、過冷却された液体の温度が、理論上、気相の凝縮のためにこの圧力を低減できるはずである場合であっても、タンク1の内側の圧力を気圧より高く保つことができる。液位は、タンクの動きが自由表面に波を生成する時であっても、タンク内の圧力に影響を及ぼすことなく、第1の高さL1に達することができる。
【0040】
圧力は、液体の一部がボール5の中に流れることができ、水蒸気を維持して部分的に凝縮する、第2の高さL2に液位が達する時のみ影響を受ける。
【0041】
ボールの幅L3は、好ましくはタンク1を輸送中に、必要な気体容積を画定するように決定される。
【0042】
この解決策は、好都合なことに、可動タンク内に伝統的に設置されるスロッシング防止壁の交換も可能にする。これは、水平壁により動き始めることができる液体の質量を制限することにより、急な動きによる液体のスロッシング効果を自動的に低減するからである。
【0043】
例示されたように、回路は、充填及び/又は排出のためにボール5に開く(液体及び/又は気体の)第1の流体輸送ライン4を含んでもよい。例えば水蒸気出口栓は、(長手方向)端部の1つの付近で、このボール5の内側に置かれてもよい。第2のライン3は、シェル2の下部に開かれてもよい。
【0044】
例示されたように、第1のライン4は、その底部を通ってボール5に開くことがあり、ボール5の下に位置付けられたタンクの貯蔵容積を通過する。
【0045】
タンクの充填段階の間、ボール5は、頂部から充填する時に液体分配器として作用し得る。液体は、ボール5の中に運搬されてもよい(
図8参照)。
【0046】
ボール5は、液体で充填された後に下のタンクの気相に溢れる。これにより、液体をタンクの高壁の上に、また液相も通って分配することができ、これは過冷却された液体と接触した時に凝縮され得る。このシステムは、好都合なことに、追加の圧力損失を伴うことなく、気体部分の注入レールを交換し得る。
【0047】
ボール及びタンクの表面全体又は長さの上に液体を分配するために、液体入口と反対側のタンクの端部に向かってボール5内に傾斜が提供されてもよい。
【0048】
タンク1の加圧段階の間、比較的高温の気体が、第1のライン4により頂部に運ばれることが可能であり、タンク内の圧力を増加させることできる。この高温の気体は、交換器内の液体の蒸発により、又は他の気体源を使用することにより発生され得る。提案された解決策は、タンクの底部に向かう、及びボール5の中に運ばれることにより液体に向かう高温の気体の分散を制限する。これは、タンクの頂部及びボール5のみが、この作動中に加熱される(又は残余部より加熱される)ことを意味する。
【0049】
減圧段階の間、(具体的にはタンクの排水後の)圧力の低減も、温度成層がこのデバイスを使用して維持される場合に改善され得る。これは、ボール5から排出された高温の気体が、まずタンクから出る一方で、底部から来る低温の気体が、パイプ4を介して出る前に桶及び壁を冷却するからである。加圧中に注入されたエネルギーの一部は、次いでこのデバイスを使用してタンクから排出される。同じ残圧に達するために、タンクから排出されたガスの量は、比較的少ない。
【0050】
図4及び
図5に例示されたように、タンク1は、貯蔵容積2の下端と上端との間を通過する時に、流体を長手方向主要方向Aに少なくとも1往復動かすように、この主要方向Aにずれる貯蔵容積に1つ又は複数の偏向壁13も含んでもよい。偏向壁13の少なくとも一部は、タンクが液化ガスを含有する時に、液化ガスの液相内に浸すために貯蔵容積の下半分に置かれてもよい。
【0051】
可能な構成では、
偏向壁13は、シェル2の一端から主要方向Aに貯蔵容積の一部にわたって延在し、
偏向壁13は、タンク1の使用構成において水平又は実質的に水平であり、
偏向壁13は、貯蔵容積の断面全体を水平に通って延在し、
タンクは、奇数の偏向壁13、具体的には3つの偏向壁13を有し、
タンクは、シェル2の一方の長手方向端部の下部に置かれた充填及び/又は排出オリフィスを有し、
タンクは、シェル2の一方の長手方向端部の上部に置かれた充填及び/又は排出オリフィスを有し、
タンクは、一方の長手方向端部、及び貯蔵容積の上部と下部との間の中間高さに置かれた流体の充填又は排出オリフィスを有し、
偏向壁13の少なくとも一部は、可撓性材料、具体的にはシェル2が作成される材料より軽量である材料から作成され、
主要方向Aに横方向の平面において、ボール5は中心に置かれ、すなわちタンクを2つの容積の半体に分離する中央垂直軸に対して中心に位置付けられ、
ボールは、また長手方向及び/又は横方向に対称(例えば主要方向Aに平行な平面に対して及び/又は主要方向Aに垂直な平面に対して)であってもよく、
ボールの上端と液密シェルの上壁との間の裂け目の高さは、主要方向に一定ではなく(例えばこの高さは、気体供給部、すなわち第1の輸送ラインがボールに開く場所から遠ざかるほど増し)、流体の分配をより良好にできる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス、具体的には液化水素を貯蔵して送達するための可動タンクであって、下端と上端との間で貯蔵容積を区切る液密シェル(2)を含み、前記シェル(2)は、前記タンク(1)が使用構成にある時に水平である主要方向(A)に延在し、前記シェル(2)は、真空下で断熱空間を備えた別のシェルによって包囲され、前記タンク(1)は、流体を充填及び/又は排出するための前記貯蔵容積に流体連結された回路(3、4)を含む、可動タンクにおいて、前記タンク(1)は、前記貯蔵容積内に、前記貯蔵容積の前記上部に置かれたボール(5)を形成し、前記貯蔵容積の前記上端に向かって開く1組の壁(15、25)を含み、前記ボール(5)は前記主要方向(A)に延在し、前記ボール(5)によって区切られた前記容積は、前記ボール(5)の少なくとも上縁部において前記タンクの前記貯蔵容積の残余部と連通することを特徴とする、タンク。
【請求項2】
前記ボール(5)によって区切られた前記容積が、1mm~50mmの高さを有する裂け目を介して前記タンクの前記貯蔵容積の残余部と連通することを特徴とする、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記ボール(5)によって区切られた前記容積が、前記シェル(2)によって区切られた前記容積の2%~15%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のタンク。
【請求項4】
前記ボール(5)を形成する前記壁の組(15、25)が、前記ボールの底部を画定する壁(15)を含み、前記底部は、前記シェル(2)の高さの75%~95%に対応する前記シェル(2)の第1の高さ(L1)に置かれることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタンク。
【請求項5】
前記第1の高さ(L1)が、前記貯蔵容積の80%~98%、好ましくは90%~95%の前記シェル(2)に対する液体充填位置に対応することを特徴とする、請求項4に記載のタンク。
【請求項6】
前記ボール(5)を形成する前記壁の組(15、25)が、前記ボール(5)の前記上縁部を画定する少なくとも1つの壁(25)を含み、前記上縁部が、好ましくは前記シェル(2)の高さの80%~98%に対応する前記シェルの第2の高さ(L2)に置かれることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタンク。
【請求項7】
前記ボール(5)の前記上縁部の少なくとも一部は、垂直であり及び/又は前記ボール(5)の前記中心部に向かって配向されることを特徴とする、請求項6に記載のタンク。
【請求項8】
前記タンク(1)が、前記貯蔵容積(2)の前記下端と前記上端との間を通過する時に、前記流体を前記高さに垂直である主要方向(A)に少なくとも1往復させるように、この主要方向(A)にずれている前記貯蔵容積中に1つ又は複数の偏向壁(13)を含むことを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタンク。
【請求項9】
前記偏向壁(13)の少なくとも一部は、前記タンクが液化ガスを含有する時に、前記液化ガスの前記液相中に沈められるように、前記貯蔵容積の下半分に置かれることを特徴とする、請求項8に記載のタンク。
【請求項10】
前記1つ又は複数の偏向壁(13)が、可撓性材料、具体的には前記シェル(2)が作成される材料よりも軽量である前記材料から作成されることを特徴とする、請求項
8に記載のタンク。
【請求項11】
前記ボール(5)を形成する前記壁の組の少なくとも一部は、可撓性材料、具体的には前記シェル(2)が作成される材料よりも軽量である前記材料から作成されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタンク。
【請求項12】
前記回路(3、4)が、前記ボール(5)中に開く第1の輸送ライン(4)を含み、この第1のライン(4)は、前記ボール(5)の下の前記シェルの前記貯蔵容積を任意選択により通過する前記ボール(5)中に開くことを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタンク。
【請求項13】
前記ボール(5)の前記上端と前記液密シェルの前記上壁との間の前記裂け目の前記高さが、前記主要方向に一定ではなく、例えばこの高さは、前記気体供給部、すなわち前記第1の輸送ライン(4)が前記ボール(5)中に開く場所から遠ざかるほど増すことを特徴とする、請求項12に記載のタンク。
【請求項14】
前記主要方向Aに横方向の平面において、前記ボール(5)が中心に置かれ、すなわち前記タンクを2つの容積の半体に分離する中央垂直軸に関して中心に位置付けられ、並びに/又は前記ボールは、長手方向及び/若しくは横方向に対称であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のタンク。
【請求項15】
請求項1
2に記載のタンク中に流体を輸送するための方法であって、以下のステップ、すなわち、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)を液体で充填するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)中に気体を輸送するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)から気体を排出するステップのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項16】
請求項14に記載のタンク中に流体を輸送するための方法であって、以下のステップ、すなわち、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)を液体で充填するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)中に気体を輸送するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)から気体を排出するステップのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
可能な構成では、
偏向壁13は、シェル2の一端から主要方向Aに貯蔵容積の一部にわたって延在し、
偏向壁13は、タンク1の使用構成において水平又は実質的に水平であり、
偏向壁13は、貯蔵容積の断面全体を水平に通って延在し、
タンクは、奇数の偏向壁13、具体的には3つの偏向壁13を有し、
タンクは、シェル2の一方の長手方向端部の下部に置かれた充填及び/又は排出オリフィスを有し、
タンクは、シェル2の一方の長手方向端部の上部に置かれた充填及び/又は排出オリフィスを有し、
タンクは、一方の長手方向端部、及び貯蔵容積の上部と下部との間の中間高さに置かれた流体の充填又は排出オリフィスを有し、
偏向壁13の少なくとも一部は、可撓性材料、具体的にはシェル2が作成される材料より軽量である材料から作成され、
主要方向Aに横方向の平面において、ボール5は中心に置かれ、すなわちタンクを2つの容積の半体に分離する中央垂直軸に対して中心に位置付けられ、
ボールは、また長手方向及び/又は横方向に対称(例えば主要方向Aに平行な平面に対して及び/又は主要方向Aに垂直な平面に対して)であってもよく、
ボールの上端と液密シェルの上壁との間の裂け目の高さは、主要方向に一定ではなく(例えばこの高さは、気体供給部、すなわち第1の輸送ラインがボールに開く場所から遠ざかるほど増し)、流体の分配をより良好にできる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 液化ガス、具体的には液化水素を貯蔵して送達するための可動タンクであって、下端と上端との間で貯蔵容積を区切る液密シェル(2)を含み、前記シェル(2)は、前記タンク(1)が使用構成にある時に水平である主要方向(A)に延在し、前記シェル(2)は、真空下で断熱空間を備えた別のシェルによって包囲され、前記タンク(1)は、流体を充填及び/又は排出するための前記貯蔵容積に流体連結された回路(3、4)を含む、可動タンクにおいて、前記タンク(1)は、前記貯蔵容積内に、前記貯蔵容積の前記上部に置かれたボール(5)を形成し、前記貯蔵容積の前記上端に向かって開く1組の壁(15、25)を含み、前記ボール(5)は前記主要方向(A)に延在し、前記ボール(5)によって区切られた前記容積は、前記ボール(5)の少なくとも上縁部において前記タンクの前記貯蔵容積の残余部と連通することを特徴とする、タンク。
[2] 前記ボール(5)によって区切られた前記容積が、1mm~50mmの高さを有する裂け目を介して前記タンクの前記貯蔵容積の残余部と連通することを特徴とする、[1]に記載のタンク。
[3] 前記ボール(5)によって区切られた前記容積が、前記シェル(2)によって区切られた前記容積の2%~15%であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のタンク。
[4] 前記ボール(5)を形成する前記壁の組(15、25)が、前記ボールの底部を画定する壁(15)を含み、前記底部は、前記シェル(2)の高さの75%~95%に対応する前記シェル(2)の第1の高さ(L1)に置かれることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載のタンク。
[5] 前記第1の高さ(L1)が、前記貯蔵容積の80%~98%、好ましくは90%~95%の前記シェル(2)に対する液体充填位置に対応することを特徴とする、[4]に記載のタンク。
[6] 前記ボール(5)を形成する前記壁の組(15、25)が、前記ボール(5)の前記上縁部を画定する少なくとも1つの壁(25)を含み、前記上縁部が、好ましくは前記シェル(2)の高さの80%~98%に対応する前記シェルの第2の高さ(L2)に置かれることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一項に記載のタンク。
[7] 前記ボール(5)の前記上縁部の少なくとも一部は、垂直であり及び/又は前記ボール(5)の前記中心部に向かって配向されることを特徴とする、[6]に記載のタンク。
[8] 前記タンク(1)が、前記貯蔵容積(2)の前記下端と前記上端との間を通過する時に、前記流体を前記高さに垂直である主要方向(A)に少なくとも1往復させるように、この主要方向(A)にずれている前記貯蔵容積中に1つ又は複数の偏向壁(13)を含むことを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載のタンク。
[9] 前記偏向壁(13)の少なくとも一部は、前記タンクが液化ガスを含有する時に、前記液化ガスの前記液相中に沈められるように、前記貯蔵容積の下半分に置かれることを特徴とする、[8]に記載のタンク。
[10] 前記1つ又は複数の偏向壁(13)が、可撓性材料、具体的には前記シェル(2)が作成される材料よりも軽量である前記材料から作成されることを特徴とする、[8]又は[9]のいずれか一項に記載のタンク。
[11] 前記ボール(5)を形成する前記壁の組の少なくとも一部は、可撓性材料、具体的には前記シェル(2)が作成される材料よりも軽量である前記材料から作成されることを特徴とする、[1]~[10]のいずれか一項に記載のタンク。
[12] 前記回路(3、4)が、前記ボール(5)中に開く第1の輸送ライン(4)を含み、この第1のライン(4)は、前記ボール(5)の下の前記シェルの前記貯蔵容積を任意選択により通過する前記ボール(5)中に開くことを特徴とする、[1]~[11]のいずれか一項に記載のタンク。
[13] 前記ボール(5)の前記上端と前記液密シェルの前記上壁との間の前記裂け目の前記高さが、前記主要方向に一定ではなく、例えばこの高さは、前記気体供給部、すなわち前記第1の輸送ライン(4)が前記ボール(5)中に開く場所から遠ざかるほど増すことを特徴とする、[12]に記載のタンク。
[14] 前記主要方向Aに横方向の平面において、前記ボール(5)が中心に置かれ、すなわち前記タンクを2つの容積の半体に分離する中央垂直軸に関して中心に位置付けられ、並びに/又は前記ボールは、長手方向及び/若しくは横方向に対称であることを特徴とする、[1]~[13]のいずれか一項に記載のタンク。
[15] [12]~[14]のいずれか一項に記載のタンク中に流体を輸送するための方法であって、以下のステップ、すなわち、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)を液体で充填するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)中に気体を輸送するステップ、前記第1のライン(4)を介して前記タンク(1)から気体を排出するステップのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【国際調査報告】