(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ANGPTLポリペプチドの生物学的活性を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20241128BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
G01N33/53 D
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526971
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 IB2022060727
(87)【国際公開番号】W WO2023084388
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】アルー,クリスティン シモーヌ アリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコビ,カーステン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ79
4B063QR77
4B063QS33
4B063QX01
(57)【要約】
本明細書には、軟骨形成バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルを測定することによって、治療薬の軟骨形成誘導活性をアッセイするための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ANGPTLポリペプチドの軟骨形成誘導活性を決定する方法であって、細胞培養物を前記ANGPTLポリペプチドに曝露することと、軟骨形成バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルを測定することと、前記発現及び/又は分泌レベルを、前記ANGPTLポリペプチドに曝露されていない細胞培養物と比較することとを含む方法。
【請求項2】
前記ANGPTLポリペプチドは、配列番号2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞培養物は、軟骨細胞で構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞培養物は、間葉系幹細胞で構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞は、ヒトである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記軟骨形成バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルは、免疫吸着アッセイによって測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫吸着アッセイは、ELISA又はウエスタンブロット法である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオマーカーは、アネキシンA6、CD44、CD151、ITM2A、FAM20B、FoxC1、FoxC2、SOX5、SOX6、SOX9、ACAN、カテプシンB、CHAD、CHADL、コンドロアドヘリン、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、CRTAC1、DSPG3、デコリン、IBSP/シアロタンパク質II、マトリリン-1、マトリリン-3、マトリリン-4、MIA、オトラプリン/OTOR、URB、DKK1、FBN2、LEP、ALPL、CORIN、CLEC3b、又はCOMPである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカーは、DKK1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオマーカーのDKK1、SOX9、ACAN又はCOMPの発現及び/又は分泌レベルは、前記ANGPTLポリペプチドに曝露されていない細胞培養物と比較して上昇される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオマーカーのLEP、ALPL、CLEC3b、CORIN又はFBN2の発現及び/又は分泌レベルは、前記ANGPTLポリペプチドに曝露されていない細胞培養物と比較して低下される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
軟骨形成を誘導するANGPTLポリペプチドの生物学的活性を決定する方法であって、ある量の前記ポリペプチドを細胞培養物に添加することと、DKK1の分泌量を測定することとを含み、前記ポリペプチドへの曝露後のDKK1の分泌の増大は、前記ポリペプチドが添加されていない細胞培養物のDKK1の分泌と比較して増大される、方法。
【請求項13】
前記ANGPTLポリペプチドは、ANGPTL2、ANGPTL3、又はANGPTL4である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物は、ANGPTL3誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物は、配列番号2である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物は、ANGPTL2誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物は、配列番号4である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、ANGPTL4誘導体である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
軟骨形成誘導効果を有する物質を特定する方法であって、
a.軟骨形成バイオマーカーを発現することができる細胞を培養するステップと、
b.前記物質を前記細胞培養物に添加するステップと、
c.前記物質の添加後の軟骨形成バイオマーカーの分泌を測定するステップと
を含み、
前記物質の添加後の軟骨形成バイオマーカーのレベルが、前記物質に曝露されていない細胞培養物中のバイオマーカーのレベルと比較して変化された場合に、前記物質は、軟骨形成誘導効果を有する、方法。
【請求項20】
前記軟骨形成バイオマーカーのレベルは、上昇される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記軟骨形成バイオマーカーのレベルは、低下される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記軟骨形成バイオマーカーは、アネキシンA6、CD44、CD151、ITM2A、FAM20B、FoxC1、FoxC2、SOX5、SOX6、SOX9、ACAN、カテプシンB、CHAD、CHADL、コンドロアドヘリン、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、CRTAC1、DSPG3、デコリン、IBSP/シアロタンパク質II、マトリリン-1、マトリリン-3、マトリリン-4、MIA、オトラプリン/OTOR、URB、DKK1、FBN2、LEP、ALPL、CORIN、CLEC3b、又はCOMPである、請求項20又は21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軟骨形成を誘導することができる化合物の生物学的活性を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、軟骨形成と呼ばれるプロセスを経て形成される。インビボでの軟骨の形成は、まず間葉系幹細胞の軟骨細胞への分化を伴い、これは次に、軟骨を含む細胞外マトリックスを形成する分子、例えば、コラーゲン及びプロテオグリカンを分泌する。軟骨は、任意の他の組織と同様に損傷され得る;しかしながら、他の組織とは異なり、軟骨は、修復能力が非常に限られている。その結果、損傷した軟骨は、長年にわたって徐々に悪化することになる。実際、世界中で300百万を超える人々に影響を及ぼす最も一般的な変性関節疾患である変形性関節症(OA)の顕著な特徴は、関節軟骨の進行性破壊である。OAの進行は、軟骨マトリックスの酵素分解と、軟骨マトリックス形成不全との両方によって媒介される。現在までの唯一の治療選択肢は疼痛管理及び/又は関節置換であるため、軟骨形成を誘導することができる治療薬を開発することにより、例えば、内在性間葉系幹細胞の軟骨細胞への分化を刺激する治療薬を開発することにより、軟骨の自己修復を改善し、それにより関節軟骨の再生もたらすことにかなりの研究努力が向けられている。しかしながら、軟骨形成を誘導する治療薬の特定は困難であり、時間がかかる可能性がある。したがって、このような治療薬の軟骨形成誘導活性を迅速且つ正確に決定することできる方法を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ANGPTLポリペプチドの軟骨形成誘導活性を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞培養物をANGPTLポリペプチドに曝露することと、軟骨形成バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルを測定することと、発現及び/又は分泌レベルを、前記ANGPTLポリペプチドに曝露されていない細胞培養物と比較することとを含む。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルは、ANGPTLポリペプチドに曝露されていない細胞培養物と比較して上昇される。他の実施形態では、バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルは、ANGPTLポリペプチドに曝露されていない細胞培養物と比較して低下される。
【0004】
いくつかの実施形態では、ANGPTLポリペプチドは、ANGPTL2、ANTPTL3、ANGPTL4、又はこれらの誘導体である。好ましい実施形態では、ANGPTLポリペプチドは配列番号2である。一実施形態では、使用される細胞培養物は、軟骨細胞で構成される。特定の実施形態では、軟骨細胞は不死化軟骨細胞である。別の実施形態では、軟骨細胞はC-28/12細胞である。別の実施形態では、細胞培養物は、間葉系幹細胞で構成される。好ましい実施形態では、間葉系幹細胞はヒトである。
【0005】
一実施形態では、軟骨形成バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルは、軟骨形成バイオマーカーの発現を定量化することができる方法によって測定される。一実施形態では、バイオマーカーの発現を定量化する方法は、免疫吸着アッセイである。特定の実施形態では、免疫吸着アッセイは、ELISA又はウエスタンブロット法である。別の実施形態では、軟骨形成バイオマーカーは、アネキシンA6、CD44、CD151、ITM2A、FAM20B、FoxC1、FoxC2、SOX5、SOX6、SOX9、ACAN、カテプシンB、CHAD、CHADL、コンドロアドヘリン、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、CRTAC1、DSPG3、デコリン、IBSP/シアロタンパク質II、マトリリン-1、マトリリン-3、マトリリン-4、MIA、オトラプリン/OTOR、URB、DKK1、FBN2、LEP、ALPL、CORIN、CLEC3b、又はCOMPである。好ましい実施形態では、軟骨形成バイオマーカーはDKK1である。
【0006】
別の実施形態では、軟骨形成を誘導するANGPTLポリペプチドの活性を決定する方法が本明細書において提供される。この実施形態では、本方法は、ある量のANGPTLポリペプチドを細胞培養物に添加することと、DKK1の分泌の量を測定することとを含み、ここで、ポリペプチドへの曝露後のDKK1の分泌の量は、ポリペプチドが添加されていない細胞培養物のDKK1の分泌の量と比較して増大される。いくつかの実施形態では、ANGPTLポリペプチドは、ANGPTL2、ANGPTL3、ANGPTL4、又はこれらの誘導体である。好ましい実施形態では、ANGPTLポリペプチドは、配列番号2である。
【0007】
別の実施形態では、軟骨形成を誘導するANGPTLポリペプチドの活性を決定する方法が本明細書において提供される。この実施形態では、本方法は、ある量のANGPTLポリペプチドを細胞培養物に添加することと、SOX9、ACAN、COMP、LEP、ALPL、CLEC3b、CORIN又はFBN2の発現及び/又は分泌の量を測定することとを含み、ここで、(i)ポリペプチドへの曝露後のSOX9、ACAN及びCOMPの発現/分泌の量は、ポリペプチドが添加されていない細胞培養物のSOX9、ACAN及びCOMPの発現/分泌の量と比較して増大され、そして(ii)ポリペプチドへの曝露後のLEP、ALPL、CLEC3b、CORIN及びFBN2の発現/分泌の量は、ポリペプチドが添加されていない細胞培養物のLEP、ALPL、CLEC3b、CORIN及びFBN2の発現/分泌の量と比較して減少される。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアッセイにおいてSOX9、ACAN、COMP、LEP、ALPL、CLEC3b、CORIN又はFBN2の発現及び/又は分泌を測定する場合、ANGPTLポリペプチドは、ANGPTL2、ANGPTL3、ANGPTL4、又はこれらの誘導体である。好ましい実施形態では、ANGPTLポリペプチドは配列番号2である。
【0009】
いくつかの実施形態では、軟骨形成誘導効果を有する物質を特定する方法であって、軟骨形成バイオマーカーを発現することができる細胞を培養するステップと、前記物質を細胞培養物に添加するステップと、前記物質の添加後の軟骨形成バイオマーカーの分泌を測定するステップと方法が本明細書において提供される。一実施形態では、物質の添加後の軟骨形成バイオマーカーのレベルが、物質に曝露されていない細胞培養物中のバイオマーカーのレベルと比較して変化された場合に、物質は軟骨形成誘導効果を有する。特定の実施形態では、軟骨形成バイオマーカーのレベルは上昇される。他の実施形態では、軟骨形成バイオマーカーのレベルは低下される。特定の実施形態では、軟骨形成バイオマーカーは、アネキシンA6、CD44、CD151、ITM2A、FAM20B、FoxC1、FoxC2、SOX5、SOX6、SOX9、ACAN、カテプシンB、CHAD、CHADL、コンドロアドヘリン、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、CRTAC1、DSPG3、デコリン、IBSP/シアロタンパク質II、マトリリン-1、マトリリン-3、マトリリン-4、MIA、オトラプリン/OTOR、URB、DKK1、FBN2、LEP、ALPL、CORIN、CLEC3b、又はCOMPである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】化合物1は、軟骨細胞によるDKK1(Dickkopf関連タンパク質1)の分泌を誘導する。化合物1が補充されたC-28/I2試験培地中で24時間培養したC-28/I2細胞からの上清のDKK1のELISA。レベルは、pg/mlで表される。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図2】DKK1の分泌は、軟骨細胞において化合物1、ANGPTL3、ANGPTL2及びANGPTL4処理によって刺激される。化合物1又はANGPTLが補充されたC-28/I2試験培地中で24時間培養したC-28/I2細胞からの上清のDKK1のELISA。明視野顕微鏡法における細胞形態評価に基づいた毒性スケール:+最初のわずかな毒性の兆候;++:無傷細胞がほんのわずか残存;+++:多数の粒子/細胞片が存在。レベルは、pg/mlで表される。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
**p<0.05、
***p<0.001及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図3】DKK1の分泌は、軟骨細胞において化合物1及びANGPTL2の切断型(C末端部分)によって刺激される。化合物1及びC末端ANGPTL2(260-493)処理されたときのC-28/I2細胞によるDKK1の分泌。化合物1又はC末端ANGPTL2が補充されたC-28/I2試験培地中で24時間培養したC-28/I2細胞からの上清のDKK1のELISA。明視野顕微鏡法における細胞形態評価に基づいた毒性スケール:+最初のわずかな毒性の兆候;++:無傷細胞がほんのわずか残存;+++:多数の粒子/細胞片が存在。レベルは、pg/mlで表される。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
**p<0.05、
***p<0.001及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図4】化合物1は、ヒトMSCによるDKK1の分泌を誘導する。3DhMSCペレット培養の8日目~11日目の間、15日目~18日目の間、及び22日目~25日目の間に蓄積されたDKK1の分泌を、ELISAにより定量化した。2人の異なるドナー(試験した4人のドナーのうち)からのhMSCにおいて化合物1の同等の効果が検出された。レベルは、pg/mlで表される。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
***p<0.001及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図5】化合物1は、ヒトMSCによるラブリシンタンパク質の産生を誘導する。化合物1の濃度を上昇させて28日間処理したヒトMSCペレットのラブリシン免疫組織化学染色。アイソタイプ対照は、染色特異性を示す;バー=100mm。免疫染色の定量化は、ラブリシン強度の合計で表される。値は、1人のドナーから単離された細胞で得られたデュプリケート試料の測定値の平均+/-SDである。
【
図6-1】
図6:化合物1は、ヒトMSCにおいてアルカリホスファターゼ(ALPL)及びレプチン(LEP)転写物、並びにレプチンタンパク質の発現を減少させる。28日間の培養後のhMSCの3Dペレットにおける、アルカリホスファターゼ(ALPL)及びレプチン(LEP)の相対的発現(2-ΔCt)と、上清中で分泌されるレプチン(pg/ml)とに対する化合物1の用量応答効果(ELISA)。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
**p<0.01、及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図7】化合物1は、UE7T-13細胞においてCOMP(軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質)の発現を増大させる。3、7、11及び14日間の培養後の炎症条件下の軟骨形成培地中で培養されたUE7T-13細胞における、COMP転写物の相対的発現(2-ΔCt)と、分泌されたCOMPタンパク質とに対する化合物1の用量応答効果(ng/ml、ELISA)。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図8】化合物1は、UE7T-13において転写因子SOX9の発現を増大させる。3、7、11及び14日間の培養後の炎症条件下の軟骨形成培地中で培養されたUE7T-13細胞における、SOX9転写物の相対的発現(2-ΔCt)に対する化合物1の用量応答効果。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【
図9】化合物1は、UE7T-13においてAcan(軟骨特異的プロテオグリカンコアタンパク質又はコンドロイチン硫酸プロテオグリカン1としても知られている、アグリカンをコードする遺伝子)の発現を増大させる。3、7、11及び14日間の培養後の炎症条件下の軟骨形成培地中で培養されたUE7T-13細胞における、Acan転写物の相対的発現(2-ΔCt)に対する化合物1の用量応答効果。値は、トリプリケートのウェルから得られた測定値の平均+/-SDである。
***p<0.001及び
****p<0.0001による一元配置ANOVA。
【発明を実施するための形態】
【0011】
改変ヒトANGPTL3ポリペプチドは軟骨形成効果及び軟骨保護効果を示すことが以前に示されている。このような改変ヒトANGPTL3ポリペプチドの例は、参照によってその内容が完全に援用される国際公開第2014/138687号パンフレットに既に記載されている。しかしながら、製造、バッチ貯蔵、安定性試験、又はこのようなポリペプチドの生物学的活性を評価することが必要である任意の他の事例の後に、これらが有効であり続けること、及び/又は効力を保持することを保証するために、このようなポリペプチドの生物学的活性を決定する改善された方法が依然として必要とされている。本発明者らは、軟骨形成に関連するバイオマーカーの発現又は分泌を測定するアッセイを開発することにより、この必要性を満たすための効果的な方法を発見した。特に、本発明者らは、DKK1が、改変ANGPTL3ポリペプチドなどの所与の化合物の軟骨形成誘導活性の正確で信頼できる指標であることを発見した。
【0012】
本明細書で使用される場合、本発明を説明する文脈における「a」及び「an」及び「the」という用語並びに同様の参照は、本明細書中で他に記載されない限り、又は文脈が明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。化合物、塩などに対して複数形が使用される場合、これは、単一の化合物、塩なども意味すると理解される。
【0013】
「又は」という用語は、文脈が明らかに他に指示しない限り、本明細書中では「及び/又は」という用語を意味するために使用され、それと互換的に使用される。
【0014】
「約」及び「およそ」は一般的に、測定の性質又は精度を考慮した、測定量の誤差の許容可能な程度を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、一般的には10%以内、さらに一般的には5%以内である。
【0015】
「ANGPTL2」は、アンジオポエチンタンパク質ファミリーのメンバーを指す。ANGPTL2のアミノ酸配列(GenBank受入番号NP_036230.1)は、配列番号3で示される。「ANGPTL2ポリペプチド」は、天然に存在する発現ポリペプチドを指す。本開示の目的のために、アミノ酸の番号付けは、通常、全長野生型ヒトANGPTL2ポリペプチド配列(配列番号3)を参照して決定される。したがって、ポリペプチドが全長ANGPTL2のC末端部分のみを含有し、N末端部分を含有しない実施形態では、ペプチドは493アミノ酸未満の長さであるが、位置の番号付けは、配列番号3に基づく。例えば、ANGPTL2ポリペプチド自体は200アミノ酸の長さでしかないかもしれないが、ANGPTL2ポリペプチドの位置350への言及は、配列番号3の位置350を指す。対象とする配列において配列番号3などの参照配列内の位置に「対応する」アミノ酸を決定する場合、これは、例えば、デフォルトのCLUSTALアライメントパラメーター又はデフォルトのBLAST2アライメントパラメーターを用いて配列を最適に整列させ、配列を比較することによって実施される。例えば、対象とする配列が配列番号3と最適に整列される場合、「配列番号3を参照して決定された」対象とする配列内の位置350、又は配列番号3の位置350に「対応する」アミノ酸は、配列番号3の位置350と整列されたアミノ酸を意味する。
【0016】
「ANGPTL3」は、アンジオポエチンタンパク質ファミリーのメンバーを指す。ANGPTL3のアミノ酸配列(GenBank受入番号NP_055310.1)は、配列番号1で示される。「ANGPTL3ポリペプチド」は、天然に存在する発現ポリペプチドを指す。本開示の目的のために、アミノ酸の番号付けは、通常、全長野生型ヒトANGPTL3ポリペプチド配列(配列番号1)を参照して決定される。したがって、ポリペプチドが全長ANGPTL3のC末端部分のみを含有し、N末端部分を含有しない実施形態では、ペプチドは460アミノ酸未満の長さであるが、位置の番号付けは、配列番号1に基づく。例えば、ANGPTL3ポリペプチド自体は200アミノ酸の長さでしかないかもしれないが、ANGPTL3ポリペプチドの位置423への言及は、配列番号1の位置423を指す。対象とする配列において、配列番号1などの参照配列内の位置に「対応する」アミノ酸を決定する場合、これは、例えば、デフォルトのCLUSTALアライメントパラメーター又はデフォルトのBLAST2アライメントパラメーターを用いて配列を最適に整列させ、配列を比較することによって実施される。例えば、対象とする配列が配列番号1と最適に整列される場合、「配列番号1を参照して決定された」対象とする配列内の位置423、又は配列番号1の位置423に「対応する」アミノ酸は、配列番号1の位置423と整列されたアミノ酸を意味する。
【0017】
「ANGPTL4」は、アンジオポエチンタンパク質ファミリーのメンバーを指す。ANGPTL4のアミノ酸配列(GenBank受入番号NP_647475.1)は、配列番号5で示される。「ANGPTL4ポリペプチド」は、天然に存在する発現ポリペプチドを指す。本開示の目的のために、アミノ酸の番号付けは、通常、全長野生型ヒトANGPTL4ポリペプチド配列(配列番号5)を参照して決定される。したがって、ポリペプチドが全長ANGPTL4のC末端部分のみを含有し、N末端部分を含有しない実施形態では、ペプチドは406アミノ酸未満の長さであるが、位置の番号付けは、配列番号5に基づく。例えば、ANGPTL4ポリペプチド自体は200アミノ酸の長さでしかないかもしれないが、ANGPTL4ポリペプチドの位置400への言及は、配列番号5の位置400を指す。対象とする配列において、配列番号5などの参照配列内の位置に「対応する」アミノ酸を決定する場合、これは、例えば、デフォルトのCLUSTALアライメントパラメーター又はデフォルトのBLAST2アライメントパラメーターを用いて配列を最適に整列させ、配列を比較することによって実施される。例えば、対象とする配列が配列番号5と最適に整列される場合、「配列番号5を参照して決定された」対象とする配列内の位置400、又は配列番号5の位置400に「対応する」アミノ酸は、配列番号5の位置400と整列されたアミノ酸を意味する。
【0018】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーだけでなく、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣物であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0019】
「生物学的活性」又は「生物学的に活性な」という用語は、生物学的な系、経路、組織、細胞、又は分子の物理的、化学的、又は生化学的特性を変化させる化合物の能力を指す。このような変化は、例えば、インビボ、インビトロ、又はエキソビボのいずれでも、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、DNA、RNA、糖類、糖、代謝産物、前駆体、補因子、又は他の生物学的分子の濃度又は量の増大、減少、維持、又は調節であり得る。このような変化は、定性的又は定量的に決定することができる。
【0020】
「アッセイ(assay)」又は「アッセイする(assaying)」という用語は、特定する、スクリーニングする、探索する又は決定する行為を指すために使用され、これらの行為は、任意の従来の手段によって実施され得る。例えば、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、質量分析法、逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-QPCR)、イメージングなどを使用することにより、サンプルは特定のバイオマーカーの存在についてアッセイされ、サンプル中にそのバイオマーカーが存在するかどうかを検出することができる。さらに、本明細書で使用される場合、「アッセイする」及び「決定する」という用語は、試験及び/又は測定することを意味するために使用される。
【0021】
参照によってその内容が完全に援用される国際公開第2014/138687号パンフレットに記載されるものなどの、改変ANGPTL3ポリペプチドを用いた以前の研究では、このようなポリペプチドは、軟骨形成効果及び軟骨保護効果を有することが示されている。化合物1(配列番号2)は、このような改変ANGPTL3ポリペプチドの一例である。化合物1の軟骨形成誘導効果は、インビトロ研究、インビボ動物研究、及び臨床試験を通して、繰り返し確立されている。化合物1の軟骨形成効果を確立する一連の証拠にもかかわらず、このような生物学的活性を確認するための従来のアッセイは時間がかかり、評価するのが困難であり得る。このようなポリペプチドの軟骨形成活性を決定する改善された方法が必要であった。本発明者らは、軟骨形成に関与することが知られている種々のバイオマーカーの相対的発現レベルを利用して、必要とされる方法を開発できると仮定した。
【0022】
軟骨形成は、種々のタンパク質の発現及び/又は分泌の増大又は減少と共に、いくつかの異なる遺伝子の上方制御及び下方制御を伴う複雑で動的な細胞プロセスである。これらの発現及び/又は分泌レベルの変化は、様々な標準的な技術を用いて検出することができ、したがって、軟骨形成に起因する発現及び/又は分泌レベルの変化を有するこれらの遺伝子及び/又はタンパク質は、軟骨形成の開始を検出するためのバイオマーカーとして使用される可能性を有する。本発明者らは、軟骨形成において重要な役割を果たすバイオマーカー、例えば、軟骨形成を誘導する、軟骨同化阻害剤を阻害する、又は軟骨異化活性を阻害するバイオマーカーが、軟骨形成活性をアッセイするための信頼できるバイオマーカーである可能性を有することを決定した。例えば、WNTシグナル伝達の阻害は、軟骨同化効果及び抗肥大効果を有し、したがって硝子軟骨の再生を促進することが報告されているので、WNTシグナル伝達経路は、OAの進行において重要な役割を有すると考えられる。DKK1は、WNTシグナル伝達の既知の阻害剤である。DKK1はOAの重症度と負の相関があることも示されており、例えば、軟骨細胞におけるDKK1の過剰発現は、マウスにおける実験的なOA軟骨破壊を阻害する。またDKK-1は、OAの発症に寄与し得る、関節軟骨細胞における肥大分化及びIL1β誘導性MMP発現も阻害する。したがって、本発明者らは、DKK1の分泌レベルが、化合物、例えば化合物1の軟骨形成活性をアッセイするための代替物としての役割を果たし得ると仮定した。
図1に示されるように、DKK1の分泌は、化合物1への曝露後に用量依存的に増大した。これにより、DKK1は、軟骨形成活性を決定するための代替マーカーとして使用可能であることが示される。
【0023】
軟骨形成及び軟骨リモデリングに関与することが報告されているANGPTLタンパク質ファミリーの他のメンバー、すなわちANGPTL2及びANGPTL4も評価した。化合物1をANGPTL3、ANGPTL2及びANGPTL4とアッセイで比較すると、これらの分子は全て、DKK1の上清中への分泌を誘導する能力を有することが観察された(
図2)。しかしながら、化合物1とは異なり、ANGPTL2及びANGPTL4タンパク質は、低濃度で細胞毒性も誘導した。この実験の結果により、本明細書に記載されるアッセイのロバスト性が検証され、潜在的な軟骨形成活性についてANGPTLポリペプチドを迅速にスクリーニングするためにそれが使用され得ることが示される。
【0024】
本明細書に記載されるアッセイは、ANGPTL2の切断型をスクリーニングするためにも使用された(
図3)。この実験の結果は、C末端ANGPTL2(260-493;配列番号4)が、化合物1に匹敵するDKK1の分泌レベルを誘導可能であることを実証する。これにより、切断型ANGPTL2は軟骨形成能を保持し、潜在的に、軟骨修復を誘導するための治療薬として開発され得ることが示唆される。
【0025】
【0026】
上記の実験は、DKK1が、ANGPTLポリペプチド、例えば化合物1の生物学的活性を評価するために代替バイオマーカーとして使用され得ることを実証する。軟骨形成に関与する他のバイオマーカーも、本開示の方法における使用に適している。このようなバイオマーカーの非限定的な例としては、アネキシンA6、CD44、CD151、ITM2A、FAM20B、FoxC1、FoxC2、SOX5、SOX6、SOX9、ACAN、カテプシンB、CHAD、CHADL、コンドロアドヘリン、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、CRTAC1、DSPG3、デコリン、IBSP/シアロタンパク質II、マトリリン-1、マトリリン-3、マトリリン-4、MIA、オトラプリン/OTOR、URB、DKK1、FBN2、LEP、ALPL、CORIN、CLEC3b、又はCOMPが挙げられる。当業者はさらに、軟骨形成活性と相関することが示されている他のバイオマーカーも、開示されるアッセイ及び方法における使用に適していることを認識するであろう。
【0027】
本明細書に提供されるアッセイ及び方法は、軟骨形成誘導活性を有する潜在的な治療薬をスクリーニング及び/又は特定するためにも使用され得る。当業者は、異なる化合物が異なる経路又は機序を介して軟骨形成を誘導し得ることを認識するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、軟骨形成誘導活性について潜在的な治療薬をスクリーニングするために多数のバイオマーカーが使用され得る。1つの潜在的な治療薬をスクリーニングするために使用されるバイオマーカーは、別の潜在的な治療薬スクリーニングするために使用されるバイオマーカーと同一であっても異なっていてもよいことが認識されるであろう。
【0028】
選択されたバイオマーカー、例えばDKK1を検出及び定量化する従来の方法は、本開示の方法と共に使用され得る。このような従来の方法の例としては、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はウエスタンブロット分析、及び質量分析が挙げられる。しかしながら、当業者は、細胞培養物中の特定のタンパク質を検出することができる任意の方法が、記載される方法と共に使用するために許容可能であることを認識するであろう。いくつかの実施形態では、検出方法はELISAであり、他の実施形態では、方法はサンドイッチELISAである。
【0029】
遺伝子発現を検出する方法も、開示されるアッセイ及び方法での使用に適している。遺伝子発現を検出するための方法の非限定的な例としては、PCR、定量的PCR、RNA-seq解析、又はマイクロアレイが挙げられる。当業者はさらに、核酸レベルを検出するための他の方法も許容可能であることを理解するであろう。
【0030】
軟骨細胞は、典型的な軟骨形成マーカーを発現し、軟骨を含む細胞外マトリックスタンパク質を分泌することができる細胞に既にさらに分化しているので、軟骨細胞は本明細書に開示されるアッセイ及び方法と共に使用するのに適している。軟骨細胞はさらに分化しているので、アッセイされる軟骨形成誘導化合物又は肥大阻害化合物の生物学的活性は、非分化細胞と比較して、より迅速に決定され得る。加えて、軟骨細胞株は何度も増殖させることができ、同じバッチの細胞を用いて作業することが可能になる。本方法と共に使用され得る軟骨細胞株の例としては、C-28/I2及びT/C28a2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
間葉系幹細胞も、本方法と共に使用するのに適している。間葉系幹細胞は、骨髄から単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、間葉系幹細胞はヒトである。これらの細胞はまだ分化しておらず、軟骨細胞に匹敵する分化段階に達するためには、しばらくの間、軟骨形成条件下で培養されなければならない。軟骨形成系列へのその分化プロセスの間に、間葉系幹細胞は徐々に、典型的な軟骨形成マーカーを発現する軟骨細胞になり、軟骨で見られる細胞外マトリックスタンパク質を分泌することができる。したがって、間葉系幹細胞に由来する軟骨細胞におけるアッセイは、軟骨細胞におけるアッセイと比較して、完了までの時間が長くなる。加えて、ヒト間葉系幹細胞は、異なる細胞系列へ分化する能力を失う前に数継代だけ増殖され得る。しかしながら、軟骨分化した間葉系幹細胞の利点は、初代軟骨細胞とのより近い類似性である。
【0032】
軟骨細胞及び間葉系幹細胞は、開示されるアッセイ及び方法における使用に十分適しているが、当業者は、軟骨形成関連マーカー、特にDKK1を発現することができる任意の細胞が使用され得ることを認識するであろう。
【0033】
本方法は、軟骨形成誘導能を有する化合物の生物学的活性を決定する迅速で効果的な方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、潜在的な治療薬である。他の実施形態では、化合物は、ANGPTLポリペプチド又は変異体である。別の実施形態では、化合物は化合物1である。
【0034】
一態様では、本方法は、軟骨形成誘導活性を有する化合物に細胞培養物を曝露した後、バイオマーカーの発現及び/又は分泌を測定することを伴う。いくつかの実施形態では、バイオマーカーのベースラインの発現レベルは、化合物への曝露の前に確立される。他の実施形態では、バイオマーカーの発現レベルは、化合物に曝露されていない対照と比較される。
【0035】
別の態様では、本方法は、細胞培養物を化合物に曝露した後にバイオマーカーの発現及び/又は分泌を測定することによって、化合物が軟骨形成誘導活性を有するかどうかを決定することを伴う。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの発現及び/又は分泌は増大される。他の実施形態では、バイオマーカーの発現及び/又は分泌は減少される。
【0036】
別の態様では、本アッセイで使用されるバイオマーカーは、軟骨形成に関連するバイオマーカーである。別の態様では、バイオマーカーは、軟骨同化活性の阻害に関連する。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、アネキシンA6、CD44、CD151、ITM2A、FAM20B、FoxC1、FoxC2、SOX5、SOX6、SOX9、ACAN、カテプシンB、CHAD、CHADL、コンドロアドヘリン、コラーゲンII、コラーゲンIV、コラーゲンIX、CRTAC1、DSPG3、デコリン、IBSP/シアロタンパク質II、マトリリン-1、マトリリン-3、マトリリン-4、MIA、オトラプリン/OTOR、URB、DKK1、FBN2、LEP、ALPL、CORIN、CLEC3b、又はCOMPである。別の実施形態では、バイオマーカーはDKK1である。
【0037】
別の態様では、細胞培養物は、軟骨細胞で構成される。他の実施形態では、細胞培養物は、間葉系幹細胞で構成される。別の実施形態では、間葉系幹細胞はヒトである。
【0038】
別の態様では、細胞培養物中のバイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルは、タンパク質及び/又は遺伝子の発現/分泌を定量的又は定性的に測定することができる検出方法によって決定される。いくつかの実施形態では、検出方法は、ウエスタンブロット法、又は質量分析である。別の実施形態では、検出方法はELISAであり、さらに別の実施形態では、検出方法はサンドイッチELISAである。
【0039】
別の態様では、本方法は、化合物が軟骨形成誘導活性を有することを確認するために、製造プロセスの間に使用され得る。したがって、一態様では、本開示は、放出前に軟骨形成活性を有する化合物の活性を検証する方法に関する。別の態様では、本方法は、貯蔵後に化合物の軟骨形成活性を決定するために使用され得る。さらに別の態様では、本方法は、患者に投与する前に化合物の軟骨形成誘導活性を決定するために使用され得る。
【0040】
別の態様では、記載されるアッセイ及び方法は、潜在的な軟骨形成誘導活性について化合物をスクリーニングするために使用され得る。一実施形態では、潜在的な軟骨形成誘導活性を有する化合物は細胞培養物に曝露され、軟骨形成バイオマーカーの発現及び/又は分泌レベルが測定される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーレベルは、潜在的な軟骨形成誘導活性を有する化合物に曝露されていない細胞培養物と比較して上昇される。別の実施形態では、バイオマーカーレベルは、潜在的な軟骨形成誘導活性を有する化合物に曝露されていない細胞培養物と比較して低下される。
【実施例】
【0041】
実施例1:DKK1のELISAアッセイ
マルチアレイ高結合96ウェルプレート(MSD)に、モノクローナル抗ヒトDkk1(1mg/mlのPBS)抗体(R&D)を4℃で一晩プレコートした後、サーモミキサーにおいて1%カゼインTBS(BioRad)を用いて450rpmで1時間ブロックし、RTで0.5xTBST(Sigma)により4回の洗浄ステップを行った。細胞上清を適切なウェルに添加し、サーモミキサーにおいて450rpmで1時間、RTでインキュベートした後、4回の洗浄ステップを行い、ビオチン化抗ヒトDKK1(R&D)を添加し、サーモミキサーにおいて450rpmで1時間、RTでインキュベートした。4回の洗浄ステップの後、ストレプトアビジンsulfo-TAG溶液(MSD)を添加し、サーモミキサーにおいて450rpmで30分間、RTでインキュベートした。4回の追加の洗浄ステップを実施した後、MSD Sector S600リーダーを用いて電気化学発光カウントを検出するために、2xRead緩衝液(MSD)を添加した。-80℃で貯蔵した細胞培養物上清においてELISAを実施した。
【0042】
【0043】
実施例2:化合物1によって誘導されるDKK1の分泌の検出のためのC-28/12細胞培養
ヒト軟骨細胞株C-28/I2(Dr.Mary Goldring,Massachusetts General Hospital,Boston,USAからライセンス供与)を、10%FCS(Millipore)、50μg/mlのL-アスコルビン酸2リン酸塩(Wako Pure Chemical)、100IU/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含有するDMEM/F12培地中で増殖させた。化合物1の活性を試験するために、図中で指定される濃度の化合物1(Novartis)、又は媒体対照が補充された、1%FCS(Millipore)、50μg/mlのL-アスコルビン酸リン酸塩(Wako Pure Chemical)、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含む100μlのDMEM/F12培地に、細胞を50’000細胞/ウェル(96ウェルプレートフォーマット,Costar)で播種し、24時間インキュベートした。細胞培養は、5%CO2を含む加湿インキュベーターにおいて37℃で実施した。
【0044】
C-28/I2細胞の上清において、対照に対して4.5倍までのDKK1タンパク質の用量依存性の増大が観察された。これは、化合物1処理の24時間以内に起こった(
図1)。
【0045】
実施例3:ANGPTL変異体によって誘導されるDKK1の分泌の検出のためのC-28/12細胞培養
ヒト軟骨細胞株C-28/I2(Dr.Mary Goldring,Massachusetts General Hospital,Boston,USAからライセンス供与)を、10%FCS(Millipore)、50μg/mlのL-アスコルビン酸2リン酸塩(Wako Pure Chemical)、100IU/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含有するDMEM/F12培地中で増殖させた。化合物1及びANGPTL変異体の活性を試験するために、図中で指定される濃度の化合物1(Novartis)、ANGPTL2(R&D)、ANGPTL3(Novartis)若しくはANGPTL4(R&D)、又は媒体対照が補充された、1%FCS(Millipore)、50μg/mlのL-アスコルビン酸リン酸塩(Wako Pure Chemical)、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含む100μlのDMEM/F12培地に、細胞を50’000細胞/ウェル(96ウェルプレートフォーマット,Costar)で播種し、24時間インキュベートした。細胞培養は、5%CO2を含む加湿インキュベーターにおいて37℃で実施した。
【0046】
軟骨で発現され、軟骨形成及び軟骨マトリックスリモデリングにそれぞれ影響を及ぼすことが以前に報告された2つのANGPTLファミリーメンバーであるANGPTL2及びANGPTL4は、DKK1の分泌の刺激において、化合物1よりも約20倍強力であった(
図2)。しかしながら、ANGPTL2、ANGPTL3及びANGPTL4は、3μMを超える濃度で強い細胞毒性を誘導し、したがって、化合物1よりも低濃度で試験した。化合物1による細胞毒性は観察されなかった(
図2)。
【0047】
実施例4:切断型ANGPTL変異体によって誘導されるDKK1の分泌の検出のためのC-28/12細胞培養
ヒト軟骨細胞株C-28/I2(Dr.Mary Goldring,Massachusetts General Hospital,Boston,USAからライセンス供与)を、10%FCS(Millipore)、50μg/mlのL-アスコルビン酸2リン酸塩(Wako Pure Chemical)、100IU/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含有するDMEM/F12培地中で増殖させた。化合物1及び切断型ANGPTL変異体の活性を試験するために、図中で指定される濃度の化合物1(Novartis)若しくはC末端ANGPTL2(R&D)、又は媒体対照が補充された、1%FCS(Millipore)、50μg/mlのL-アスコルビン酸リン酸塩(Wako Pure Chemical)、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含む100μlのDMEM/F12培地に、細胞を50’000細胞/ウェル(96ウェルプレートフォーマット,Costar)で播種し、24時間インキュベートした。細胞培養は、5%CO2を含む加湿インキュベーターにおいて37℃で実施した。
【0048】
軟骨で発現され、軟骨形成に影響を及ぼすことが以前に報告されたANGPTLファミリーメンバーの切断型であるC末端ANGPTL2(260-493;配列番号4)は、DKK1の分泌の刺激において、化合物1と同程度に強力であった(
図3)。しかしながら、ANGPTL2の切断型は、3μMを超える濃度で強い細胞毒性を誘導した。化合物1による細胞毒性は観察されなかった(
図3)。
【0049】
実施例5:化合物1によって誘導される軟骨形成バイオマーカーの発現の検出のためのhMSC細胞培養
3Dペレット培養アッセイのために、4人の異なるドナーからの骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(hMSC)(Lonza Verviers,Belgium)をまずLonza培地MSCGM-BulletKitTMにおいて2継代にわたって増殖させ、液体窒素中で貯蔵した。1g/Lのグルコース、10%FBS、6mMのL-グルタミン、10mMのHEPES、50IU/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン及び1ng/mlのヒト塩基性FGF(R&D Systems)のDMEMにおいて、細胞をさらに増殖させた。3D培養のために、96ウェルV底プレート(Costar)に継代6細胞を3.5x105細胞/ウェルで播種し、遠心分離(5分、250g)により沈降させ、表示されるようにLNA043(CHO細胞で組換え発現、Novartis)又は媒体対照が補充された、高グルコース、0.125%BSA(Sigma)、ITS(6.25μg/mlのヒトインスリン、6.25μg/mlのヒトトランスフェリン、6.25ng/mlの亜セレン酸ナトリウム(Roche)、5.3μg/mlのリノール酸(Sigma)、50μg/mlのL-アスコルビン酸リン酸塩(AA、Wako Pure Chemical)、100ng/mlのデキサメタゾン(Sigma)、40μg/mlのプロリン(Sigma)、100IU/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンのDMEMにおいて4週間培養した。培地を1週間に3回取り換えた。細胞培養は、5%CO2を含む加湿インキュベーターにおいて37℃で実施した。
【0050】
28日間の軟骨形成分化の間に化合物1(配列番号2)で処理することにより、上清においてWNT阻害剤タンパク質DKK1の分泌の用量依存性上方制御が誘導された(
図4)。加えて、28日間の軟骨形成分化の間に化合物1で処理することにより、3Dペレットの免疫組織化学染色によって検出される、軟骨表面ゾーンの糖タンパク質ラブリシン/プロテオグリカン4(PRG4)発現の5.7倍までの用量依存性増大が誘導された(
図5)。遺伝子発現レベルでは、化合物1は、軟骨肥大マーカーのアルカリホスファターゼ及び炎症促進性アディポカインのレプチンを減少させた(
図6)。化合物1によって下方制御されることが示されたさらなる遺伝子には、FBN2、CORIN、及びCLEC3bが含まれるが、COMP遺伝子は、上方制御されることが示された(データは示さず)。
【0051】
実施例6:化合物1によって制御される軟骨形成バイオマーカー
【0052】
【0053】
このようにしていくつかの実施形態のいくつかの態様が記載されたが、種々の変更、修正、及び改善を当業者が容易に思いつくことは認識されるべきである。このような変更、修正、及び改善は本開示の一部であることが意図され、本開示の趣旨及び範囲内に含まれることが意図される。したがって、前述の説明及び図面は単なる例示である。
【0054】
当業者は、日常的にすぎない実験を用いて、本明細書に具体的に記載される特定の実施形態の多数の等価物を認識する、又は確認することができるであろう。このような等価物は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】