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  • 特表-肺がん治療のための組み合わせ療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】肺がん治療のための組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/08 20060101AFI20241128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241128BHJP
   C07K 14/655 20060101ALI20241128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K51/08 100
A61P11/00
A61P35/00
A61K51/08 200
A61K39/395 T
A61K31/282
A61K31/7048
C07K14/655
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527169
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 IB2022060840
(87)【国際公開番号】W WO2023084445
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/278,621
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】521030618
【氏名又は名称】アドバンスド アクセラレーター アプリケーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】アイモネ,パオラ ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】チッコ,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】フォリター,イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】マリアニ,マウリツィオ エフ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085EE01
4C085GG02
4C085HH03
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB82
4C085LL09
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA05
4C206ZA59
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA30
4H045BA32
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA35
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA51
(57)【要約】
本発明は、小細胞肺がん(SCLC)、特にそれを必要とする対象における小細胞肺がん(SCLC)を治療するための方法に関し、ここでSSTR結合部分、特に[177Lu]Lu-DOTATEを含んでなる、治療有効量の放射性医薬品化合物は、カルボプラチン及びエトポシドなどの1つ又は複数の化学療法剤と、任意選択的にチスレリズマブなどの免疫腫瘍学(I/O)薬剤と組み合わせて、前記対象に投与される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソマトスタチン受容体結合分子を含んでなる治療有効量の放射性医薬品化合物を、治療有効量の1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時にヒト対象に投与するステップを含んでなる、小細胞肺がん(SCLC)、特に拡張期小細胞肺がん(ES-SCLC)をそれを必要とする前記対象において治療するための方法。
【請求項2】
前記放射性医薬品化合物が式、
M-C-S-P
(式中、
Mは放射性核種であり;
Cは前記放射性核種をキレート化できるキレート化剤であり;
SはCとPの間を共有結合する任意のスペーサーであり;
Pは、直接、又はSを介して間接的に、Cに共有結合したソマトスタチン受容体結合ペプチドである)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式中、Mが、90Y、131I、121Sn、186Re、188Re、64Cu、67Cu、59Fe、89Sr、198Au、203Hg、212Pb、165Dy、103Ru、149Tb、161Tb、213Bi、166Ho、165Er、169Er、153Sm、177Lu、213Bi、223Ra、225Ac、227Ac、227Th、211At、67Cu、186Re、188Re、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、199Au、44Sc、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、76As、111Ag、及び47Scから選択され、好ましくは177Luである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式中、Cが、DOTA(テトラキセタン)、トリゾキセタン、DOTAGA、DTPA、NTA、EDTA、DO3A、TETA、NOTA、NOTAGA、NODAGA、NODAPA、及びAAZTA(例えばAAZTA5)キレート化剤から選択され、好ましくはDOTA、DOTAGA、NOTA又はDTPAキレート化剤であり、より好ましくはDOTAキレート化剤である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
式中、Pが、オクトレオチド、オクトレオテート、サトレオチド、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択され、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記放射性医薬品化合物が、DOTA-OC、DOTA-TOC(エドトレオチド)、DOTA-NOC、DOTA-TATE(オキソドトレオチド)、サトレオチドテトラキセタン、DOTA-LAN、及びDOTA-VAPから選択され、好ましくはDOTA-TOC及びDOTA-TATEから選択され、より好ましくはDOTA-TATEである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記放射性医薬品化合物が、[177Lu]Lu-DOTA-TOC(177Lu-エドトレオチド)又は[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)、より好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が新たにSCLC、特にES-SCLCと診断されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、放射性医薬治療に使用されるのと同じ有機化合物であるが、画像化に適した放射性金属、好ましくは68Ga、67Ga又は64Cu、より好ましくは68Gaを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRI画像化による治療のために選択されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、少なくとも1つの標的病変又は非標的病変における画像化陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって、好ましくは[68Ga]Ga-DOTA-TATE画像化PETスキャンによって、SSTR陽性と診断されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数の化学療法剤が、カルボプラチン及びエトポシドを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記放射性医薬品化合物が、1~8回、好ましくは2~7回、例えば4~6回投与され、前記放射性医薬品化合物の2回毎の投与の間に治療間隔が存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記放射性医薬品化合物の各投与が、2週間、又は3週間、又は4週間、又は5週間、又は6週間にさえ至る、好ましくは3週間及び/又は6週間の治療間隔を含んでなる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記導入期間に続く、前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、好ましくは3週間毎の投与を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
好ましくは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、GITR拮抗薬、TGF-b阻害剤、IL15/IL15RA複合体、CD40/CD40L複合体、OX40阻害剤、4-1BB/CD137複合体、ICOS阻害剤、CD47阻害剤、VISTA阻害剤、GD-2阻害剤、及びB7/H3阻害剤、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン)、細胞免疫療法、及びがんワクチンからなる群から選択され、より好ましくはPD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤又はそれらの組み合わせである、1つ又は2つ以上の治療有効量の免疫腫瘍学(I-O)治療剤を組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップを含んでなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される阻害剤は抗体である。
【請求項18】
(i)前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(ii)前記腫瘍免疫剤が、好ましくは前記化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に、第1週に、好ましくは化学療法剤の初回投与日に、及び前記導入期間中は3週間毎に投与される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記導入期間に続く、
(iii)3週間毎の前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、及び
(iv)3週間毎の前記腫瘍免疫剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤が、例えば、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、イピリムマブ、PDR001/スパルタリズマブ(Novartis)、キイトルーダ/ペンブロリズマブ/MK-3475/ランブロリズマブ(Merk & Co)、ピジリズマブ、デュルバルマブ/MEDI4736、アテゾリズマブ/MPDL3280A/Tecentriq/RG7446(Roche)、アベルマブ、MEDI0680(AMP-514、Medimmune)、REGN2810/セミプリマブ(Regeneron)、TSR-042/ドスターリマブ/ドスターリマブ-gxly(Tesaro)、PF-06801591/サナンリマブ(Pfizer)、BGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、BGB-108、INCSHR1210/カムレリズマブ(Incyte)、及びAMP-224(Amplimmune)からなる群から選択される、抗PD1、抗PD-L1又は抗CTLA-4抗体からなる群から選択される、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤がチスレリズマブであり、好ましくは約200mg又は約300mgの用量で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがない、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法であって、前記放射性医薬品化合物が、[177Lu]Lu-DOTA-TATEであり、前記1つ又は複数の化学療法剤が、カルボプラチン(好ましくは、3週間サイクルの1日目におけるカルボプラチンAUC5)及びエトポシド(好ましくは、3週間サイクルの1、2目、及び3日目に100mg/m2の1日用量で投与される)であり、前記使用がさらに、治療有効量のチスレリズマブを[177LU]Lu-DOTA-TATE投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップをさらに含んでなる、方法。
【請求項23】
(i)前記カルボプラチン及びエトポシドが、導入期間中に、好ましくは、カルボプラチン及び/又はエトポシドの初回投与後の第1週に、例えば第1週の3、4又は5日目のいずれかにおける、[177LU]Lu-DOTA-TATEの初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回目の投与の[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(ii)チスレリズマブが、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせて、好ましくは同時に、第1週、好ましくはカルボプラチンの初回投与日、及び前記導入期間中は3週間毎に投与される、
実施形態22に記載の方法。
【請求項24】
前記導入期間に続く、
(iii)3週間毎の[177LU]Lu-DOTA-TATEの1~4回の投与、及び
(iv)3週間毎のチスレリズマブ剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記放射性医薬品化合物が、0.925GBq(25mCi)~29.6GBq(800mCi)の間、好ましくは1.48GBq(40mCi)~18.5GBq(500mCi)の間、好ましくは1.85GBq(50mCi)~14.8GBq(400mCi)の間、より好ましくは3.7GBq(100mCi)to11.1GBq(300mCi)の間の範囲、なおもより好ましくは、約3.7GBq(100mCi)、5.55GBq(150mCi)、7.4GBq(200mCi)又は9.25GBq(250mCi)の用量(すなわち、1日用量、各投与の用量、非累積用量)で投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それを必要とする対象における小細胞肺がん(SCLC)を治療するための方法に関し、ここで、SSTR結合部分を含んでなる治療有効量の放射性医薬品化合物は、化学療法剤と、任意選択的に免疫腫瘍学(I/O)剤との組み合せで前記対象に投与される。
【0002】
配列表
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に援用される、XML形式で電子的に提出された配列表を含む。2022年11月7日に作成されたXMLコピーの名称は、PAT059204_SL.xmlである。
【背景技術】
【0003】
肺がんは、2020年に世界で180万人が死亡する最も一般的ながん死因である(WHO Cancer fact sheet 2021)一方、肺がんの診断例と死亡例は、年々増え続けている(Bade BC,Dela Cruz CS Lung Cancer 2020:Clin Chest Med;41:1-24)。小細胞肺がん(SCLC)は最も致命的で侵攻性の高い肺がんのサブタイプであり、全ての肺がんの約10~15%に相当し、限局期SCLC(LS-SCLC)患者の推定生存期間中央値は18~23ヶ月、拡張期SCLC(ES-SCLC)患者の推定生存期間中央値は8~10ヶ月である(Dela Cruz CS,Tanoue LT,Matthay RA(2011)Clin Chest Med;32:605-44,Dayen C,Debieuvre D,Molinier O,et al(2017)New insights into stage and prognosis in small cell lung cancer:an analysis of 968 cases.J Thorac Dis;9(12):5101-11)。
【0004】
ソマトスタチン受容体(SSTR)は、免疫組織化学及び[68Ga]Ga-DOTA-TATE PET/CTスキャンによって証明されるように、SCLCを有する患者の30~50%で発現される(Lapa C,Haenscheid H,Wild V,et al(2016)Oncotarget;7(15):20033-40,Lehman JM,Hoeksema MD,Staub J,et al(2019)Int J Cancer;144:1104-14)。ソマトスタチン受容体2シグナル伝達が、SCLCの増殖と生存を促進し、SSTR-2の高発現が患者の生存率の悪化と相関することが示された(Lehman JM,Hoeksema MD,Staub J,et al(2019)Int J Cancer;144:1104-14)。
【0005】
SCLCは、LS-SCLCを有する患者における同時化学放射線療法として主に使用される、胸部外部放射線療法に適した放射線感受性腫瘍であることが知られている。ES-SCLCでは、症状の制御のために放射線治療が使用され得る。
【0006】
ES-SCLCを有する患者に対する現行の標準的な第一選択治療は、免疫チェックポイント阻害剤(アテゾリズマブ又はデュルバルマブ)と組み合わされた、プラチナベースの全身化学療法(シスプラチン又はカルボプラチンと、トポイソメラーゼII阻害剤エトポシド)である(NCCN Guidelines Small Cell Lung Cancer Version 3.2021;Dingemans AMC,Fruh M,Ardizzoni A,et al(2021)32(7):839-53)。
【0007】
臨床現場では、免疫チェックポイント阻害剤が、[177Lu]Lu-DOTA-TATEとの組み合わせで相乗的に作用するという仮説が、進行性難治性ES-SCLC、又は第一選択のプラチナベースの化学療法後の非進行性ES-SCLC、又は進行性グレードI~IIの肺NETのいずれかを有する9人の患者において、第I相試験で評価された(Kim C,Liu SV,Subramaniam DS,et al(2020)J Immunother Cancer;8:e000980)。
【0008】
特定のがんに対するPRRTとI/Oの組み合わせの相乗効果(国際公開第2016/207732号パンフレット及び国際公開第2020021465号パンフレットでも報告されている)と同様に、PRRTとカルボプラチン/エトポシドの組み合わせが評価され、前臨床設定においてPRRT又は化学療法単独と対比して有意な生存期間の延長が示された(Lewin J,Cullinane C,Akhurst T,et al(2015)Eur J Nucl Med Mol Imaging;42:25-32)。これらの前臨床知見は、PRRTと合わせたエトポシド(腎機能のためカルボプラチンは避けられた)を投与された、SSTR2の高発現がある肺外起源の転移性再発小細胞がんを有する患者における臨床使用に変換された。患者は4ヵ月間にわたり、完全な代謝応答と臨床的改善を経験した。治療法は、軽度の疲労、悪心、グレード2の貧血、及びグレード3の血小板減少症を除けば、忍容性が良好であった。患者は治療開始から4.5ヵ月後に、疾患進行を経験した(Lewin J,Cullinane C,Akhurst T,et al(2015)Eur J Nucl Med Mol Imaging;42:25-32)。
【発明の概要】
【0009】
したがって、SCLC、特にES-SCLCの治療には、いくらかの進歩にもかかわらず、まだ限られた治療選択肢しかなく、ES-SCLCを有する患者の全体的な予後は非常に悪いままである。
【0010】
本開示は、特に、SSTR陽性SCLC、特にES-SCLCを有する患者において、SSTRペプチド標的核種療法(例えば177Lu-DOTA-TATE)と、化学療法(chemotheray)(例えばカルボプラチン(carboplatine)及びエトポシド)及び免疫チェックポイント阻害剤(例えばチスレリズマブ)との組み合わせに基づく、SCLC、特にES-SCLCを治療するための新規治療選択肢を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】臨床試験デザインである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
具体的な実施形態
1.治療有効量のソマトスタチン受容体結合分子を含んでなる放射性医薬品化合物を、治療有効量の1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に前記対象に投与する、小細胞肺がん(SCLC)、特に拡張期小細胞肺がん(ES-SCLC)をそれを必要とするヒト対象において治療するために使用するための放射性医薬品化合物。
【0013】
2.前記放射性医薬品化合物が、式
M-C-S-P
(式中、
Mは放射性核種であり;
Cは前記放射性核種をキレート化できるキレート化剤であり;
SはCとPの間を共有結合する任意のスペーサーであり;
Pは、直接、又はSを介して間接的に、Cに共有結合したソマトスタチン受容体結合ペプチドである)
の化合物である、実施形態1の使用のための放射性医薬品化合物。
【0014】
3.式中、Mが、90Y、131I、121Sn、186Re、188Re、64Cu、67Cu、59Fe、89Sr、198Au、203Hg、212Pb、165Dy、103Ru、149Tb、161Tb、213Bi、166Ho、165Er、169Er、153Sm、177Lu、213Bi、223Ra、225Ac、227Ac、227Th、211At、67Cu、186Re、188Re、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、199Au、44Sc、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、76As、111Ag、及び47Scから選択され、好ましくは177Luである、実施形態2に記載の放射性医薬品化合物の使用。
【0015】
4.式中、Cが、DOTA(テトラキセタン)、トリゾキセタン、DOTAGA、DTPA、NTA、EDTA、DO3A、TETA、NOTA、NOTAGA、NODAGA、NODAPA、及びAAZTA(例えばAAZTA5)キレート化剤から選択され、好ましくはDOTA、DOTAGA、NOTA又はDTPAキレート化剤であり、より好ましくはDOTAキレート化剤である、実施形態2又は3による使用のための放射性医薬品化合物。
【0016】
5.式中、Pが、オクトレオチド、オクトレオテート、サトレオチド、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択され、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される、実施形態1~4のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0017】
6.放射性医薬品化合物が、DOTA-OC、DOTA-TOC(エドトレオチド)、DOTA-NOC、DOTA-TATE(オキソドトレオチド)、サトレオチドテトラキセタン、DOTA-LAN、及びDOTA-VAPから選択され、好ましくはDOTA-TOC及びDOTA-TATEから選択され、より好ましくはDOTA-TATEである、実施形態1~5のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0018】
7.放射性医薬品化合物が、[177Lu]Lu-DOTA-TOC(177Lu-エドトレオチド)又は[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)、より好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)である、実施形態1~6のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0019】
8.前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的(systematic)治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがない、実施形態1~7のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0020】
9.前記対象が、新たにSCLC、特にES-SCLCと診断されている、実施形態1~8のいずれかに1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0021】
10.前記対象が、放射性医薬治療に使用されるのと同じ有機化合物であるが、画像化に適した放射性金属、好ましくは68Ga、67Ga又は64Cu、より好ましくは68Gaを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRI画像化による治療のために選択されている、実施形態1~9のいずれか1つによる放射性医薬品化合物。
【0022】
11.前記対象が、少なくとも1つの標的病変又は非標的病変における画像化陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって、好ましくは[68Ga]Ga-DOTA-TATE画像化PETスキャンによって、SSTR陽性と診断されている、実施形態1~10のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0023】
12.前記1つ又は複数の化学療法剤が、カルボプラチン(好ましくは、3週間サイクル毎の1日目にカルボプラチンAUC5)及びエトポシド(好ましくは、3週間サイクル毎の1、2、及び3日目に100mg/mの1日用量で投与される)を含む、実施形態1~11のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0024】
13.前記放射性医薬品化合物が、1~8回、好ましくは2~7回、例えば4~6回投与され、前記放射性医薬品(radiopharmeceutical)化合物の2回の投与毎に治療間隔がある、実施形態1~12のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0025】
14.前記放射性医薬品化合物の各投与が、2週間、又は3週間、又は4週間、又は5週間、又はさらに6週間にさえ至る、好ましくは3週間及び/又は6週間の治療間隔を含んでなる、実施形態1~13のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0026】
15.前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与される、実施形態1~14のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0027】
16.導入期間に続く、前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、好ましくは3週間毎の投与を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態15による使用のための放射性医薬品化合物。
【0028】
17.好ましくは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、GITR拮抗薬、TGF-b阻害剤、IL15/IL15RA複合体、CD40/CD40L複合体、OX40阻害剤、4-1BB/CD137複合体、ICOS阻害剤、CD47阻害剤、VISTA阻害剤、GD-2阻害剤、及びB7/H3阻害剤、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン(interlukin))、細胞免疫療法、及びがんワクチンからなる群から選択され、より好ましくはPD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤又はそれらの組み合わせである、1つ又は2つの治療有効量の免疫腫瘍学(I-O)治療剤を組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップを含んでなる、実施形態1~16のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される阻害剤は抗体である。
【0029】
18.(i)前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(ii)前記腫瘍免疫剤が、好ましくは前記化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に、第1週に、好ましくは化学療法剤の初回投与日に、導入期間中は3週間毎に投与される、
実施形態17による使用のための放射性医薬品化合物。
【0030】
19.導入期間に続く、
(i)3週間毎の前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、及び
(ii)3週間毎の前記腫瘍免疫剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態18による使用のための放射性医薬品化合物。
【0031】
20.前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤が、例えば、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、イピリムマブ、PDR001/スパルタリズマブ(Novartis),キイトルーダ/ペンブロリズマブ/MK-3475/ランブロリズマブ(Merk & Co)、ピジリズマブ、デュルバルマブ/MEDI4736、アテゾリズマブ/MPDL3280A/Tecentriq/RG7446(Roche)、アベルマブ、MEDI0680(AMP-514、Medimmune)、REGN2810/セミプリマブ(Regeneron)、TSR-042/ドスターリマブ/ドスターリマブ-gxly(Tesaro)、PF-06801591/サナンリマブ(Pfizer)、BGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、BGB-108、INCSHR1210/カムレリズマブ(Incyte)、及びAMP-224(Amplimmune)からなる群から選択される、抗PD1、抗PD-L1又は抗CTLA-4抗体からなる群から選択される、実施形態17~19のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0032】
21.前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤がチスレリズマブであり、好ましくは約200mg~約500mg、より好ましくは約200mg~約400mg、なおもより好ましくは約200mg~約300mgのいずれか、なおもより好ましくは約200mg又は約300mgのいずれか、なおもより好ましくは200mgの用量で投与される、実施形態20による使用のための放射性医薬品化合物。
【0033】
22.前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的(systematic)治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがなく、前記放射性医薬品(radiopharmaceutic)化合物は、[177Lu]Lu-DOTA-TATEであり、前記1つ又は複数の化学療法剤は、カルボプラチン及びエトポシドであり、前記使用がさらに、治療有効量のチスレリズマブを[177LU]Lu-DOTA-TATE投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップをさらに含んでなる、実施形態1~21のいずれか1つによる使用のための放射性医薬品化合物。
【0034】
23.(i)前記カルボプラチン及びエトポシドが、導入期間中に、好ましくは、カルボプラチン及び/又はエトポシドの初回投与後の第1週に、例えば第1週の3、4又は5日目のいずれかにおける、[177LU]Lu-DOTA-TATEの初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回目の投与の[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(ii)チスレリズマブが、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせて、好ましくは同時に、第1週、好ましくはカルボプラチンの初回投与日、導入期間中は3週間毎に投与される、実施形態22による使用のための放射性医薬品化合物。
【0035】
24.前記使用が、導入期間に続く、
(i)3週間毎の[177LU]Lu-DOTA-TATEの1~4回の投与、及び
(ii)3週間毎のチスレリズマブ剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態23による使用のための放射性医薬化合物。
【0036】
25.前記放射性医薬品化合物が、0.925GBq(25mCi)~29.6GBq(800mCi)の間、好ましくは1.48GBq(40mCi)~18.5GBq(500mCi)の間、好ましくは1.85GBq(50mCi)~14.8GBq(400mCi)の間、より好ましくは3.7GBq(100mCi)~11.1GBq(300mCi)の間の範囲、なおもより好ましくは、約3.7GBq(100mCi)、5.55GBq(150mCi)、7.4GBq(200mCi)又は9.25GBq(250mCi)の用量(すなわち、1日用量、各投与の用量、非累積用量)で投与される、実施形態1~24の使用のための放射性医薬品化合物。
【0037】
26.ソマトスタチン受容体結合分子を含んでなる治療有効量の放射性医薬品化合物を、治療有効量の1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に前記対象に投与するステップを含んでなる、小細胞肺がん(SCLC)、特に拡張期小細胞肺がん(ES-SCLC)をそれを必要とするヒト対象において治療するための方法。
【0038】
27.前記放射性医薬品化合物が式、
M-C-S-P
(式中、
Mは放射性核種であり;
Cは前記放射性核種をキレート化できるキレート化剤であり;
SはCとPの間を共有結合する任意のスペーサーであり;
Pは、直接、又はSを介して間接的に、Cに共有結合したソマトスタチン受容体結合ペプチドである)
の化合物である、実施形態26の方法。
【0039】
28.式中、Mが、90Y、131I、121Sn、186Re、188Re、64Cu、67Cu、59Fe、89Sr、198Au、203Hg、212Pb、165Dy、103Ru、149Tb、161Tb、213Bi、166Ho、165Er、169Er、153Sm、177Lu、213Bi、223Ra、225Ac、227Ac、227Th、211At、67Cu、186Re、188Re、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、199Au、44Sc、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、76As、111Ag、及び47Scから選択され、好ましくは177Luである、実施形態27の方法。
【0040】
29.Cが、DOTA(テトラキセタン)、トリゾキセタン、DOTAGA、DTPA、NTA、EDTA、DO3A、TETA、NOTA、NOTAGA、NODAGA、NODAPA、及びAAZTA(例えばAAZTA5)キレート化剤から選択され、好ましくは、DOTA、DOTAGA、NOTA又はDTPAキレート化剤、より好ましくはDOTAキレート化剤である、実施形態27又は28の方法。
【0041】
30.式中、Pが、オクトレオチド、オクトレオテート、サトレオチド、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択され、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される、実施形態26~29のいずれか1つの方法。
【0042】
31.放射性医薬品化合物が、DOTA-OC、DOTA-TOC(エドトレオチド)、DOTA-NOC、DOTA-TATE(オキソドトレオチド)、サトレオチドテトラキセタン、DOTA-LAN、及びDOTA-VAPから選択され、好ましくはDOTA-TOC及びDOTA-TATEから選択され、より好ましくはDOTA-TATEである、実施形態26~30のいずれか1つの方法。
【0043】
32.放射性医薬品化合物が、[177Lu]Lu-DOTA-TOC(177Lu-エドトレオチド)又は[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)、より好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)である、実施形態26~31のいずれか1つの方法。
【0044】
33.前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的(systematic)治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがない、実施形態26~32のいずれか1つの方法。
【0045】
34.前記対象が新たにSCLC、特にES-SCLCと診断されている、実施形態26~33のいずれか1つの方法。
【0046】
35.前記対象が、放射性医薬治療に使用されるのと同じ有機化合物であるが、画像化に適した放射性金属、好ましくは68Ga、67Ga又は64Cu、より好ましくは、68Gaを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRI画像化による治療のために選択されている、実施形態26~34のいずれか1つの方法。
【0047】
36.前記対象が、少なくとも1つの標的病変又は非標的病変における画像化陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって、好ましくは[68Ga]Ga-DOTA-TATE画像化PETスキャンによって、SSTR陽性と診断されている、実施形態26~35のいずれか1つの方法。
【0048】
37.前記1つ又は複数化学療法剤が、カルボプラチン及びエトポシドを含む、実施形態26~36のいずれか1つの方法。
【0049】
38.前記放射性医薬品化合物が、1~8回、好ましくは2~7回、例えば4~6回投与され、前記放射性医薬品(radiopharmeceutical)化合物の2回毎の投与の間に治療間隔が存在する、実施形態26~37のいずれか1つの方法。
【0050】
39.前記放射性医薬品化合物の各投与が、2週間、又は3週間、又は4週間、又は5週間、又は6週間にさえ至る、好ましくは3週間及び/又は6週間の治療間隔を含んでなる、実施形態26~38のいずれか1つの方法。
【0051】
40.前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与される、実施形態26~39のいずれか1つの方法。
【0052】
41.導入期間に続く、前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、好ましくは3週間毎の投与を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態40の方法。
【0053】
42.好ましくは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、GITR拮抗薬、TGF-b阻害剤、IL15/IL15RA複合体、CD40/CD40L複合体、OX40阻害剤、4-1BB/CD137複合体、ICOS阻害剤、CD47阻害剤、VISTA阻害剤、GD-2阻害剤、B7/H3阻害剤、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン(interlukin))、細胞免疫療法、及びがんワクチンからなる群から選択され、より好ましくはPD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA4阻害剤又はそれらの組み合わせである、1つ又は複数の治療有効量の免疫腫瘍学(I-O)治療剤を組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップを含んでなる、実施形態26~41のいずれか1つの方法。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される阻害剤は抗体である。
【0054】
43.(i)前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(ii)前記腫瘍免疫剤が、好ましくは前記化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に、第1週に、好ましくは化学療法剤の初回投与日に、導入期間中は3週間毎に投与される
実施形態42の方法。
【0055】
44.導入期間に続く、
(iii)3週間毎の前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、及び
(iv)3週間毎の前記腫瘍免疫剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態43の方法。
【0056】
45.前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤が、例えば、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、イピリムマブ、PDR001/スパルタリズマブ(Novartis),キイトルーダ/ペンブロリズマブ/MK-3475/ランブロリズマブ(Merk & Co)、ピジリズマブ、デュルバルマブ/MEDI4736、アテゾリズマブ/MPDL3280A/Tecentriq/RG7446(Roche)、アベルマブ、MEDI0680(AMP-514、Medimmune)、REGN2810/セミプリマブ(Regeneron)、TSR-042/ドスターリマブ/ドスターリマブ-gxly(Tesaro)、PF-06801591/サナンリマブ(Pfizer)、BGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、BGB-108、INCSHR1210/カムレリズマブ(Incyte)、及びAMP-224(Amplimmune)からなる群から選択される、抗PD1、抗PD-L1又は抗CTLA-4抗体からなる群から選択される、実施形態42~44のいずれか1つの方法。
【0057】
46.前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤がチスレリズマブであり、好ましくは約200mg~約500mg、より好ましくは約200mg~約400mg、なおもより好ましくは約200mg~約300mgのいずれか、なおもより好ましくは約200mg又は約300mgのいずれか、なおもより好ましくは200mgの用量で投与される、実施形態45の方法。
【0058】
47.前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的(systematic)治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがなく、前記放射性医薬品(radiopharmaceutic)化合物が、[177Lu]Lu-DOTA-TATEであり、前記1つ又は複数の化学療法剤が、カルボプラチン(好ましくは、3週間サイクルの1日目におけるカルボプラチンAUC5)及びエトポシド(好ましくは、3週間サイクルの1、2、及び3日目に100mg/mの1日用量で投与される)であり、前記使用がさらに、治療有効量のチスレリズマブを[177LU]Lu-DOTA-TATE投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップをさらに含んでなる、実施形態26~46のいずれか1つの方法。
【0059】
48.(i)前記カルボプラチン及びエトポシドが、導入期間中に、好ましくは、カルボプラチン及び/又はエトポシドの初回投与後の第1週に、例えば第1週の3、4又は5日目のいずれかにおける、[177LU]Lu-DOTA-TATEの初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回目の投与の[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(ii)チスレリズマブが、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせて、好ましくは同時に、第1週、好ましくはカルボプラチンの初回投与日、導入期間中は3週間毎に投与される
実施形態47の方法。
【0060】
49.導入期間に続く、
(iii)3週間毎の[177LU]Lu-DOTA-TATEの1~4回の投与、及び
(iv)3週間毎のチスレリズマブ剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態48の方法。
【0061】
50.前記放射性医薬品化合物が、0.925GBq(25mCi)~29.6GBq(800mCi)の間、好ましくは1.48GBq(40mCi)~18.5GBq(500mCi)の間、好ましくは1.85GBq(50mCi)~14.8GBq(400mCi)の間、より好ましくは3.7GBq(100mCi)~11.1GBq(300mCi)の間の範囲、なおもより好ましくは、約3.7GBq(100mCi)、5.55GBq(150mCi)、7.4GBq(200mCi)又は9.25GBq(250mCi)の用量(すなわち、1日用量、各投与の用量、非累積用量)で投与される、実施形態26~49のいずれか1つの方法。
【0062】
51.治療有効量のソマトスタチン受容体結合分子を含んでなる放射性医薬品化合物を、治療有効量の1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に前記対象に投与する、小細胞肺がん(SCLC)、特に拡張期小細胞肺がん(ES-SCLC)をそれを必要とするヒト対象において治療するための薬剤の製造における放射性医薬品化合物の使用。
【0063】
52.前記放射性医薬品化合物が、式、
M-C-S-P
(式中、
Mは放射性核種であり;
Cは前記放射性核種をキレート化できるキレート化剤であり;
SはCとPの間を共有結合する任意のスペーサーであり;
Pは、直接、又はSを介して間接的に、Cに共有結合したソマトスタチン受容体結合ペプチドである)
の化合物である、実施形態51の使用。
【0064】
53.式中、Mが、90Y、131I、121Sn、186Re、188Re、64Cu、67Cu、59Fe、89Sr、198Au、203Hg、212Pb、165Dy、103Ru、149Tb、161Tb、213Bi、166Ho、165Er、169Er、153Sm、177Lu、213Bi、223Ra、225Ac、227Ac、227Th、211At、67Cu、186Re、188Re、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、199Au、44Sc、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、76As、111Ag、及び47Scから選択され、好ましくは177Luである、実施形態52の使用。
【0065】
54.式中、Cが、DOTA(テトラキセタン)、トリゾキセタン、DOTAGA、DTPA、NTA、EDTA、DO3A、TETA、NOTA、NOTAGA、NODAGA、NODAPA、及びAAZTA(例えばAAZTA5)キレート化剤から選択され、好ましくは、DOTA、DOTAGA、NOTA又はDTPAキレート化剤であり、より好ましくはDOTAキレート化剤である、実施形態52又は53による使用。
【0066】
55.式中、Pが、オクトレオチド、オクトレオテート、サトレオチド、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択され、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される、実施形態51~54のいずれか1つによる使用。
【0067】
56.放射性医薬品化合物が、DOTA-OC、DOTA-TOC(エドトレオチド)、DOTA-NOC、DOTA-TATE(オキソドトレオチド)、サトレオチドテトラキセタン、DOTA-LAN、及びDOTA-VAPから選択され、好ましくはDOTA-TOC及びDOTA-TATEから選択される、より好ましくはDOTA-TATEである、実施形態51~55のいずれか1つによる使用。
【0068】
57.放射性医薬品化合物が、[177Lu]Lu-DOTA-TOC(177Lu-エドトレオチド)又は[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)、より好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)である、実施形態51~56のいずれか1つによる使用。
【0069】
58.前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的(systematic)治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがない、実施形態51~57のいずれか1つによる使用。
【0070】
59.前記対象が、新たにSCLC、特にES-SCLCと診断されている、実施形態51~58のいずれか1つによる使用。
【0071】
60.前記対象が、放射性医薬治療に使用されるのと同じ有機化合物であるが、画像化に適した放射性金属、好ましくは68Ga、67Ga又は64Cu、より好ましくは68Gaを用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRI画像化による治療のために選択されている、実施形態51~59のいずれか1つによる放射性医薬品化合物。
【0072】
61.前記対象が、少なくとも1つの標的病変又は非標的病変における画像化陽電子放出断層撮影(PET)スキャンによって、好ましくは[68Ga]Ga-DOTA-TATE画像化PETスキャンによって、SSTR陽性と診断されている、実施形態51~60のいずれか1つによる使用。
【0073】
62.前記1つ又は複数の化学療法剤が、カルボプラチン(好ましくは、3週間サイクル毎の1日目にカルボプラチンAUC5)及びエトポシド(好ましくは、3週間サイクル毎の1、2、及び3日目に100mg/mの1日用量で投与される)を含む、実施形態51~61のいずれか1つによる使用。
【0074】
63.前記放射性医薬品化合物が、1~8回、好ましくは2~7回、例えば4~6回投与され、前記放射性医薬品(radiopharmeceutical)化合物の2回毎の投与の間に治療間隔が存在する、実施形態51~62のいずれか1つによる方法。
【0075】
64.前記放射性医薬品化合物の各投与が、2週間、又は3週間、又は4週間、又は5週間、又は6週間にさえ至る、好ましくは3週間及び/又は6週間の治療間隔を含んでなる、実施形態51~63のいずれか1つによる方法。
【0076】
65.前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与される、実施形態51~64のいずれか1つによる使用。
【0077】
66.導入期間に続く、前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、好ましくは3週間毎の投与を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態65による使用。
【0078】
67.好ましくは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、GITR拮抗薬、TGF-b阻害剤、IL15/IL15RA複合体、CD40/CD40L複合体、OX40阻害剤、4-1BB/CD137複合体、ICOS阻害剤、CD47阻害剤、VISTA阻害剤、GD-2阻害剤、及びB7/H3阻害剤、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン(interlukin))、細胞免疫療法、及びがんワクチンからなる群から選択され、より好ましくはPD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA4阻害剤又はそれらの組み合わせである、1つ又は2つの治療有効量の免疫腫瘍学(I-O)治療剤を組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップを含んでなる、実施形態51~66のいずれか1つによる使用。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される阻害剤は抗体である。
【0079】
68.(iii)前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(iv)前記腫瘍免疫剤が、好ましくは前記化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に、第1週に、好ましくは化学療法剤の初回投与日に、導入期間中は3週間毎に投与される、
実施形態67による使用。
【0080】
69.導入期間に続く、(v)3週間毎の前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、及び
(vi)3週間毎の前記腫瘍免疫剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態68による使用。
【0081】
70.前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤が、例えば、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、イピリムマブ、PDR001/スパルタリズマブ(Novartis),キイトルーダ/ペンブロリズマブ/MK-3475/ランブロリズマブ(Merk & Co)、ピジリズマブ、デュルバルマブ/MEDI4736、アテゾリズマブ/MPDL3280A/Tecentriq/RG7446(Roche)、アベルマブ、MEDI0680(AMP-514、Medimmune)、REGN2810/セミプリマブ(Regeneron)、TSR-042/ドスターリマブ/ドスターリマブ-gxly(Tesaro)、PF-06801591/サナンリマブ(Pfizer)、BGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、BGB-108、INCSHR1210/カムレリズマブ(Incyte)、及びAMP-224(Amplimmune)からなる群から選択される、抗PD1、抗PD-L1又は抗CTLA-4抗体からなる群から選択される、実施形態67~69のいずれか1つによる使用。
【0082】
71.前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤がチスレリズマブであり、好ましくは約200mg~約500mg、より好ましくは約200mg~約400mg、なおもより好ましくは約200mg~約300mgのいずれか、なおもより好ましくは約200mg又は約300mgのいずれか、なおもより好ましくは200mgの用量で投与される、実施形態70による使用。
【0083】
72.前記対象が、SCLC、特にES-SCLCの体系的(systematic)治療を以前に受けたことがなく、特に前記対象が、SCLC、特にES-SCLCを治療するための化学療法を以前に受けたことがなく、前記放射性医薬品(radiopharmaceutic)化合物は、[177Lu]Lu-DOTA-TATEであり、前記1つ又は複数の化学療法剤は、カルボプラチン及びエトポシドであり、前記使用がさらに、治療有効量のチスレリズマブを[177LU]Lu-DOTA-TATE投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップをさらに含んでなる、実施形態51~71のいずれか1つによる使用。
【0084】
73.(iii)前記カルボプラチン及びエトポシドが、導入期間中に、好ましくは、カルボプラチン及び/又はエトポシドの初回投与後の第1週に、例えば第1週の3、4又は5日目のいずれかにおける、[177LU]Lu-DOTA-TATEの初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回目の投与の[177LU]Lu-DOTA-TATEの2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、
(iv)チスレリズマブが、カルボプラチン及びエトポシドと組み合わせて、好ましくは同時に、第1週に、好ましくはカルボプラチンの初回投与日に、導入期間中は3週間毎に投与される、
実施形態72による使用。
【0085】
74.前記使用が、導入期間に続く、(v)3週間毎の[177LU]Lu-DOTA-TATEの1~4回の投与、及び
(vi)3週間毎のチスレリズマブ剤の1~4回の投与
を含んでなる維持期間をさらに含んでなる、実施形態73による使用。
【0086】
75.前記放射性医薬品化合物が、0.925GBq(25mCi)~29.6GBq(800mCi)の間、好ましくは1.48GBq(40mCi)~18.5GBq(500mCi)の間、好ましくは1.85GBq(50mCi)~14.8GBq(400mCi)の間、より好ましくは3.7GBq(100mCi)~11.1GBq(300mCi)の間の範囲、なおもより好ましくは、約3.7GBq(100mCi)、5.55GBq(150mCi)、7.4GBq(200mCi)又は9.25GBq(250mCi)の用量(すなわち、1日用量、各投与の用量、非累積用量)で投与される、実施形態51~74のいずれか1つによる使用。
【0087】
本開示は、治療有効量のソマトスタチン受容体結合分子を含んでなる放射性医薬品化合物を、治療有効量の1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に前記対象に投与する、小細胞肺がん(SCLC)、特に拡張期小細胞肺がん(ES-SCLC)をそれを必要とするヒト対象において治療するための方法に関する。
【0088】
一般的な定義
本明細書及び特許請求の範囲の双方における「a」、「an」、及び「the」の冠詞の使用は、本明細書で別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両者をカバーするものと解釈される。「含んでなる(comprising)」、「有する(having)」、「である(being of)」(例えば、「キレート化剤に連結した放射性核種と細胞受容体結合有機部分との」複合体など)、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、特に明記されない限り、開放型用語として解釈される(すなわち、「含むがこれに限定されるものではない」を意味する)。さらに、一実施形態において「含んでなる」又は別の非限定的用語が使用される場合は常に、中間用語「から本質的になる」又は閉鎖型用語「からなる」を使用して、同じ実施形態がより狭義に請求され得ることが理解されるべきである。
【0089】
用語「約」又は「ca.」は、本明細書では続く値が±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、なおもより好ましくは±2%、なおもより好ましくは±1%変動してもよいことを意味する。
【0090】
別段の定義がない限り、「%」は、本明細書では重量百分率(wt%)の意味を有し、重量%(w/w%)とも称される(refered)。
【0091】
「総濃度」は、1つ又は複数の個々の濃度の合計を指す。
【0092】
「水溶液」は、水中の1つ又は複数の溶質を指す。
【0093】
「の治療」及び「治療する」という語句には、疾患、障害、又はその症状の予防、改善又は停止が含まれる。特に、腫瘍の治療に関して、「治療」という用語は、腫瘍の増殖の阻害、又は腫瘍のサイズの縮小を指してもよい。
【0094】
本明細書の用法では、「拡張期小細胞肺がん」(「ES-SCLC」とも称される)は、反対側の肺、骨、脳、又は骨髄組織などの身体の他の部分に広がった小細胞肺がん(SCLC)を指す。
【0095】
国際単位系に従って、「MBq」は、放射能の単位「メガベクレル」の略称である。
【0096】
本明細書の用法では、「PET」は陽電子放出断層撮影を表す。
【0097】
本明細書の用法では、「SPECT」は単一光子放出コンピュータ断層撮影を表す。
【0098】
本明細書の用法では、「MRI」は磁気共鳴画像法を表す。
【0099】
本明細書の用法では、「CT」は、ンピュータ断層撮影を表す。
【0100】
本明細書の用法では、化合物の「有効量」又は「治療有効量」という用語は、例えば、症状の改善、病状の緩和、疾患進行の遅延又は遅滞、又は疾患の予防など、対象の生物学的又は医学的応答を誘発する化合物の量を指す。
【0101】
「患者」及び「対象」という用語は同義的に使用され、例えばがんを有する対象をはじめとするヒトを指す。
【0102】
「商業的使用」は、例えば医薬品水溶液などの医薬品が、保健当局によって要求される医薬品の品質と安定性の要件を全て遵守することによって、例えばUS-FDA又はEMAなどの保健当局による販売承認を取得でき(好ましくは取得されており)、商業規模で医薬品製造施設から、又は医薬品製造施設で製造でき(好ましくは製造されており)、品質管理試験手順がそれに続き、例えば病院又は患者などの遠隔地にある最終使用に供給できる(好ましくは供給されている)ことを指す。
【0103】
「組み合わせ療法」、「共投与」、「組み合わせ投与」又は「同時投与」は、少なくとも2つの治療薬の組み合わせ投与を指し、典型的には放射性医薬品化合物である第1の薬剤が、第2の薬剤と同時に又は時間隔内に別々に、それを必要とする同じ対象に投与され、これらの時間隔により、組み合わされたパートナーが、例えばがんなどの障害を治療するために、協同的又は相乗効果を示すことが可能になる。これらの送達方法は本明細書に記載の範囲内であるが、治療薬を同時に投与しなければならない、及び/又は一緒に送達するために製剤化しなければならないことを暗示することは意図されない。放射性医薬品化合物は、1つ又は複数の他の追加の治療法又は治療薬と同時に、又はその前、又はその後に投与され得る。用語はまた、薬剤が必ずしも同じ投与経路によって投与されるわけではない治療レジメンを包含することも意味する。
【0104】
本明細書の用法では、「放射性医薬品」という用語は、典型的には金属性の放射性核種元素で標識された医薬化合物を指す。放射性医薬品化合物は、ペプチド受容体放射性核種(radionclide)療法(PRRT)で使用されてもよい。
【0105】
本明細書の用法では、「PRRT」又は「ペプチド受容体放射性核種(radionclide)療法」という用語は、腫瘍上で過剰発現された受容体(例えば、ソマトスタチン受容体サブタイプ2)を高親和性及び特異性で標的化するように設計された、放射性標識ペプチド(例えば、177Lu-ドータテート)の全身投与を伴う分子標的化放射線療法を指す。
【0106】
本開示の治療方法に使用するための放射性医薬品化合物
本開示の治療方法において使用するための放射性医薬品化合物は、放射性核種を含んでなり、SSTR、例えば少なくともソマトスタチン受容体サブタイプ2(SSTR2)に特異的結合親和性を有するソマトスタチン(somatostating)受容体(SSTR)結合化合物である。
【0107】
具体的な実施形態では、本明細書に記載されるように使用するための前記放射性医薬品化合物は、式、
M-C-S-P
(式中、
●Mは放射性核種であり;
●Cは前記放射性核種をキレート化できるキレート化剤であり;
●SはCとPの間を共有結合する任意のスペーサーであり;
●Pは、例えばそのN末端を介して、直接的又はSを介して間接的にCに共有結合した、ソマトスタチン受容体結合ペプチドである)
の化合物である。
【0108】
このような放射性医薬品化合物は、オクトレオチド、オクトレオテート、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択されてもよく、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される。
【0109】
本開示のいくつかの実施形態では、放射性核種Mは、核医学療法又はペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)に適した、放射性核種同位体から選択される。
【0110】
PRRTに適したこのような放射性核種Mの例としては、制限なく、90Y、131I、121Sn、186Re、188Re、64Cu、67Cu、59Fe、89Sr、198Au、203Hg、212Pb、165Dy、103Ru、149Tb、161Tb、213Bi、166Ho、165Er、169Er、153Sm、177Lu、213Bi、223Ra、225Ac、227Ac、227Th、211At、67Cu、186Re、188Re、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、199Au、44Sc、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、76As、111Ag、及び47Scが挙げられ、好ましくは177Luである。
【0111】
本明細書の用法では、「キレート化剤」という用語は、放射性核種と非共有結合を形成し、それによって安定な放射性核種複合体を形成できる官能基を含んでなる有機部分を指す。本開示の文脈において、キレート化剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)(テトラキセタン)、トリゾキセタン、1,4,7,10-テトラアザシクロドデセカン,1(グルタル酸)-4,7,10-三酢酸(DOTAGA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(DO3A)、トリエチレンテトラミンTETA、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、NOTAGA、1-(1,3-カルボキシプロピル)-4,7-カルボキシメチル-1,4,7-トリアザシクロノナン(NODAGA)、NODASA、NODAPA、及び1,4-ビス(カルボキシメチル)-6-[ビス(カルボキシメチル)]アミノ-6-メチルペルヒドロ-1,4-ジアゼピン(AAZTA、例えばAAZTA5)であってもよい。本開示の多くの実施形態において、キレート化剤はDOTAである。
【0112】
このようなキレート化剤は、ソマトスタチン受容体結合ペプチドに直接連結されるか、又はリンカー分子を介して連結されるが、好ましくは直接連結される。連結結合は、細胞受容体結合有機部分(及びリンカー)とキレート化剤との間の共有結合又は非共有結合のどちらかであり、好ましくは、結合は共有結合である。
【0113】
本明細書の用法では、「ソマトスタチン受容体結合ペプチド」という用語は、ソマトスタチン受容体に特異的結合親和性を有するペプチド部分を指す。このようなソマトスタチン受容体結合ペプチドは、オクトレオチド、オクトレオテート、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択されてもよく、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される。
【0114】
本開示の方法の多くの実施形態によれば、キレート化剤に連結したソマトスタチン受容体結合ペプチドは、DOTA-OC、DOTA-TOC(エドトレオチド)、DOTA-NOC、DOTA-TATE(オキソドトレオチド)、サトレオチドテトラキセタン、DOTA-LAN、及びDOTA-VAPから選択される。これらの実施形態の多くでは、ソマトスタチン受容体結合ペプチドはDOTA-TOC又はDOTA-TATEである。多くのこのような実施形態では、ソマトスタチン受容体結合ペプチドはDOTA-TATEである。
【0115】
一実施形態では、本開示の放射性医薬品化合物は、[177Lu]Lu-DOTA-TOC(177Lu-エドトレオチド)又は[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)、より好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)である。
【0116】
したがって、細胞受容体結合部分とキレート化剤は、次の分子を一緒に形成してもよい:
DOTA-OC:[DOTA,D-Phe]オクトレオチド、
DOTA-TOC:[DOTA,D-Phe,Tyr]オクトレオチド、エドトレオチド(INN)、
これらは次式で表される。
【化1】
【0117】
DOTA-NOC:[DOTA,D-Phe,1-Nal]オクトレオチド、
DOTA-TATE:[DOTA,D-Phe,Tyr]オクトレオテート、DOTA-Tyr-オクトレオテート、DOTA-d-Phe-Cys-Tyr-d-Trp-Lys-Thr-Cys-Thr(シクロ2,7)、オキソドトレオチド(INN)、これらは次式で表される。
【化2】
【0118】
DOTA-LAN:[DOTA,D-β-Nal]ランレオチド、
DOTA-VAP:[DOTA,D-Phe,Tyr]バプレオチド。
【0119】
サトレオチドトリゾキセタン
【化3】
【0120】
サトレオチドテトラキセタン
【化4】
【0121】
組み合わせ療法で使用するための本開示の一般的な「キレート化剤に連結した細胞受容体結合部分」分子は、DOTA-TOC、DOTA-TATE、及びサトレオチドテトラキセタンであり、より好ましくは分子はDOTA-TATEである。
【0122】
より具体的には、本開示の多くの実施形態において、本発明によるキレート化剤に連結した放射性核種と細胞受容体結合部分とによって形成される複合体は、[177Lu]Lu-DOTA-TATEであり、これはルテチウム(177Lu)オキソドトレオチド(INN)とも称され、すなわち、[N-{[4,7,10-トリス(カルボキシラト-κO-メチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル-κ,N,N,N10]アセチル-κO}-D-フェニルアラニル-L-システイニル-チロシル-D-トリプトフィル-L-リシル-L-スレオニル-L-システイニル-L-スレオニナト環状(2→7)-ジスルフィド(4-)](177Lu)ルテチウム酸(1-)水素
であり、次式で表される。
【化5】
【0123】
前記放射性標識ソマトスタチン受容体結合化合物は、典型的には、それを必要とする対象に治療有効量を投与するために製剤化される。
【0124】
放射性標識ソマトスタチン受容体結合化合物は、100MBq/mL以上の体積放射能を提供する濃度で存在し得る。本開示の多くの実施形態において、体積放射能は250MBq/mL以上である。
【0125】
本開示の多くの実施形態において、放射性標識ソマトスタチン受容体結合化合物は、例えば約370MBq/mL(10mCi/mL)の濃度で、250MBq/mL~500MBq/mLの間を含めて、100MBq/mL~1000MBq/mLの間を含んでなり、体積放射能を提供する濃度で存在し得る。
【0126】
薬学的に許容可能な賦形剤は、従来から使用されているもののいずれかであり得て、溶解性及び活性化合物との反応性の欠如など、物理化学的考慮事項によってのみ制限される。
【0127】
特に、1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤は、このような薬学的に(pharmaceutcially)許容可能な賦形剤の多数の異なるクラスから選択され得る。このようなクラスの例としては、放射線分解に対する安定剤、緩衝剤、金属イオン封鎖剤、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0128】
本明細書の用法では、「放射線分解に対する安定剤」は、放射線分解から有機分子を保護する安定剤を指し、例えば、放射性核種から放出されたガンマ線が有機分子の原子間の結合を切断してラジカルが形成されると、次にそれらのラジカルは安定剤によって除去され、ラジカルが、望ましくない、潜在的に効果のない、或いは有毒でさえある分子をもたらし得る任意のその他の化学反応を起こすのを回避する。したがって、これらの安定剤は「フリーラジカル捕捉剤」、又は略して「ラジカル捕捉剤」とも称される。これらの安定剤の他の代替用語は、「放射線安定性増強剤」、「放射線分解安定剤」、又は単に「クエンチャー」である。
【0129】
本明細書の用法では、「金属イオン封鎖剤」は、製剤中の遊離放射性核種金属イオン(放射性標識ペプチドと複合体化していない)を複合体化するのに適した、キレート化剤を指す。
【0130】
緩衝剤としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及びリン酸緩衝液が挙げられる。
【0131】
本開示の多くの実施形態によれば、医薬組成物は、例えば注射用製剤などの水溶液である。具体的な実施形態によれば、医薬組成物は輸液用溶液である。
【0132】
注射用組成物に有効な薬学的担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982),and SHP Handbook on Injectable Drugs,Trissel,15th ed.,pages 622-630(2009)を参照されたい)。
【0133】
以下の条項は、本開示の組み合わせ方法において使用するのに適切な医薬品水溶液の種々の実施形態に言及する。以下に提供される条項は、非限定的なものである。
【0134】
76.(a)(ai)放射性核種と、
(aii)キレート化剤と連結した細胞受容体結合有機部分と
によって形成される複合体;及び
(b)放射線分解に対する少なくとも1つの安定剤
を含んでなり、前記放射性核種が、少なくとも100MBq/mL、好ましくは少なくとも250MBq/mLの体積放射能を提供する濃度で存在する、医薬品水溶液。
【0135】
77.前記安定剤、成分(b)が、少なくとも0.2mg/mL、好ましくは少なくとも0.5mg/mL、より好ましくは少なくとも1.0mg/mL、なおもより好ましくは少なくとも2.7mg/mLの総濃度で存在する、実施形態76による医薬品水溶液。
【0136】
78.前記放射性核種が、100~1000MBq/mL、好ましくは250~500MBq/mLの体積放射能を提供する濃度で存在する、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0137】
79.前記安定剤が、0.2~20.0mg/mL、好ましくは0.5~10.0mg/mL、より好ましくは1.0~5.0mg/mL、なおもより好ましくは2.7~4.1mg/mLの総濃度で存在する、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0138】
80.成分(b)が放射線分解に対する1つの安定剤のみ、すなわち第1の安定剤のみである、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0139】
81.成分(b)が放射線分解に対する少なくとも2つの安定剤、すなわち少なくとも第1及び第2の安定剤、好ましくは2つの安定剤のみ、すなわち第1及び第2の安定剤のみである、先行する実施形態のいずれか1つによるの医薬品水溶液。
【0140】
82.第1の安定剤が、0.2~5mg/mL、好ましくは0.5~5mg/mL、より好ましくは0.5~2mg/mL、なおもより好ましくは0.5~1mg/mL、なおもより好ましくは0.5~0.7mg/mLの濃度で存在する、実施形態80~81のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0141】
83.第2の安定剤が、0.5~10mg/mL、より好ましくは1.0~8.0mg/mL、なおもより好ましくは2.0~5.0mg/mL、なおもより好ましくは2.2~3.4mg/mLの濃度で存在する、実施形態80~81による医薬品水溶液。
【0142】
84.安定剤が、ゲンチシン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)又はその塩、アスコルビン酸(L-アスコルビン酸、ビタミンC)又はその塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム)、メチオニン、ヒスチジン、メラトニン、エタノール、及びSe-メチオニンから選択され、好ましくは、ゲンチシン酸又はその塩及びアスコルビン酸又はその塩から選択される、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0143】
85.エタノールを含まない、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0144】
86.第1の安定剤が、ゲンチシン酸及びアスコルビン酸から選択され、好ましくは第1の安定剤がゲンチシン酸である、実施形態80~84のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0145】
87.第2の安定剤が、ゲンチシン酸及びアスコルビン酸から選択され、好ましくは第2の安定剤がアスコルビン酸である、実施形態81~86のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0146】
88.第1の安定剤がゲンチシン酸又はその塩であり、第2の安定剤がアスコルビン酸又はその塩であり、第1の安定剤の濃度(mg/mL)と第2の安定剤の濃度(mg/mL)との比が、1:3~1:7、好ましくは1:4~1:5である、実施形態81~82のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0147】
89.放射性核種が、90Y、131I、121Sn、186Re、188Re、64Cu、67Cu、59Fe、89Sr、198Au、203Hg、212Pb、165Dy、103Ru、149Tb、161Tb、213Bi、166Ho、165Er、169Er、153Sm、177Lu、213Bi、223Ra、225Ac、227Ac、227Th、211At、67Cu、186Re、188Re、161Tb、175Yb、105Rh、166Dy、199Au、44Sc、149Pm、151Pm、142Pr、143Pr、76As、111Ag、及び47Scから選択され、好ましくは177Luである、先行する実施形態のいずれか1つの医薬品水溶液。
【0148】
90.細胞受容体結合部分がソマトスタチン受容体結合ペプチドであり、好ましくは前記ソマトスタチン受容体結合ペプチドが、オクトレオチド、オクトレオテート、ランレオチド、バプレオチド、及びパシレオチドから選択され、好ましくはオクトレオチド及びオクトレオテートから選択される、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0149】
91.キレート化剤が、DOTA(テトラキセタン)、トリゾキセタン、DOTAGA、DTPA、NTA、EDTA、DO3A、TETA、NOTA、NOTAGA、NODAGA、NODASA、NODAPA、及びAAZTA(例えばAAZTA5)から選択され、好ましくはDOTAである、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0150】
92.細胞受容体結合部分とキレート化剤が、DOTA-OC、DOTA-TOC(エドトレオチド)、DOTA-NOC、DOTA-TATE(オキソドトレオチド)、サトレオチドテトラキセタン、DOTA-LAN、及びDOTA-VAPから選択され、好ましくはDOTA-TOC及びDOTA-TATEから選択され、より好ましくはDOTA-TATEである、分子を一緒に形成する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬水溶液。
【0151】
93.放射性核種、細胞受容体結合部分、及びキレート化剤が、複合体[177Lu]Lu-DOTA-TOC(177Lu-エドトレオチド)又は[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)、好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATEを一緒に形成する、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0152】
94.緩衝液をさらに含んでなり、好ましくは前記緩衝液が酢酸緩衝液であり、好ましくは、0.3~0.7mg/mL(好ましくは約0.48mg/mL)の酢酸と0.4~0.9mg/mL(好ましくは約0.66mg/mL)の酢酸ナトリウムの濃度になる量である、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0153】
95.金属イオン封鎖剤をさらに含んでなり、好ましくは前記金属イオン封鎖剤がジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩であり、好ましくは0.01~0.10mg/mL(好ましくは約0.05mg/mL)の濃度になる量である、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0154】
96.25°C以下で少なくとも24時間、25°C以下で少なくとも48時間、25°C以下で少なくとも72時間、25°C以下で24時間~120時間、25°C以下で24時間~96時間、25°C以下で24時間~84時間、25°C以下で24時間~72時間の貯蔵寿命を有し、特に25°C以下で72時間の貯蔵寿命を有する、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0155】
97.前記溶液が商業規模の製造で生産され、特に少なくとも20GBq、少なくとも50GBq、又は少なくとも70GBqのバッチサイズで生産される、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0156】
98.即時使用可能である、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0157】
99.商業用である、上記実施形態のいずれかに記載の医薬水溶液。
【0158】
100.(a)(ai)250~500MBq/mLの体積放射能を提供する濃度で存在する放射性核種177ルテチウム(Lu-177)、及び
(aii)有機部分DOTA-TATE(オキソドトレオチド)又はDOTA-TOC(エドトレオチド)に結合する(binging)キレート化剤連結ソマトスタチン受容体
によって形成される複合体;
(bi)0.5~1mg/mLの濃度で存在する、放射線分解に対する第1の安定剤としてのゲンチシン酸又はその塩;
(bii)2.0~5.0mg/mLの濃度で存在する、放射線分解に対する第2の安定剤としてのアスコルビン酸又はその塩
を含んでなる、医薬品水溶液。
【0159】
101.(c)0.01~0.10mg/mLの濃度のジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩をさらに含んでなる、実施形態100による医薬品水溶液。
【0160】
102.(d)0.3~0.7mg/mLの濃度の酢酸と0.4~0.9mg/mLの濃度の酢酸ナトリウムをさらに含んでなる、実施形態100又は101による医薬品水溶液。
【0161】
103.安定剤が、成分(ai)及び(aii)の複合体化中に溶液中に存在する、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0162】
104.第1の安定剤のみが、成分(ai)及び(aii)の複合体化中に、好ましくは最終溶液中に0.5~5mg/mL、より好ましくは0.5~2mg/mL、なおもより好ましくは0.5~1mg/mL、なおもより好ましくは0.5~0.7mg/mLの濃度になる量で存在する、実施形態81~103のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0163】
105.第2の安定剤の量の一部が、成分(ai)及び(aii)の複合体化中に溶液中に既に存在し、第2の安定剤の量の別の一部が、成分(ai)及び(aii)の複合体化後に添加される、実施形態81~104のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0164】
106.第2の安定剤が、成分(ai)及び(aii)の複合体化後に添加される、実施形態81~105のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0165】
107.第2の安定剤が、成分(ai)及び(aii)の複合体化後に、好ましくは最終溶液中に0.5~10mg/mL、より好ましくは1.0~8.0mg/mL、なおもより好ましくは2.0~5.0mg/mL、なおもより好ましくは2.2~3.4mg/mLの濃度になる量で添加される、実施形態81~106のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0166】
108.成分(ai)及び(aii)の複合体化後に添加される、任意の非複合体Luを除去するための金属イオン封鎖剤をさらに含んでなり、好ましくは前記封鎖剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩であり、好ましくは最終溶液中に0.01~0.10mg/mL(好ましくは、約0.05mg/mL)の濃度になる量である、先行する実施形態のいずれか1つによる医薬品水溶液。
【0167】
多くの場合、比放射能濃度が370MBq/mL(±5%)であるものなどの[177Lu]Lu-DOTA-TATE又は[177Lu]Lu-DOTA-TOCの輸液用溶液が、本開示の組み合わせ方法において使用される。
【0168】
先行する実施形態のいずれか1つで定義された医薬品水溶液を製造するための特定のプロセスは、以下のプロセスステップを含んでなってもよい:
(1)放射性核種とキレート化剤連結細胞受容体結合有機部分との複合体を、以下によって形成する:
(1.1)放射性核種を含んでなる水溶液を調製するステップ;
(1.2)キレート化剤連結細胞受容体結合有機部分、第1の安定剤、任意選択的に第2の安定剤を含んでなる水溶液を調製するステップ;及び
(1.3)ステップ(1.1)及び(1.2)で得られた溶液を混合し、得られた混合物を加熱するステップ;
(2)ステップ(1)で得られた錯体溶液を、以下によって希釈する:
(2.1)任意選択的に第2の安定剤を含んでなる水性希釈溶液を調製するステップ;及び
(2.2.)ステップ(1)で得られた複合体溶液と、ステップ(2.1)で得られた希釈溶液とを混合するステップ。
【0169】
本明細書に開示される治療方法は、前記放射性医薬品化合物との組み合わせ療法を提供する。
【0170】
より具体的には、放射性医薬品化合物、好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE(177Lu-オキソドトレオチド)は、それを必要とする対象におけるSCLC、特にES-SCLCを治療するために本開示に従って使用され、治療有効量の前記放射性医薬品化合物が前記対象に投与される。
【0171】
一実施形態では、前記放射性医薬品化合物は、0.925GBq(25mCi)~29.6GBq(800mCi)の間、好ましくは1.48GBq(40mCi)~18.5GBq(500mCi)の間、好ましくは1.85GBq(50mCi)~14.8GBq(400mCi)の間、より好ましくは3.7GBq(100mCi)~11.1GBq(300mCi)の間の範囲、なおもより好ましくは、約3.7GBq(100mCi)、5.55GBq(150mCi)、7.4GBq(200mCi)又は9.25GBq(250mCi)の用量で投与される。
【0172】
別の実施形態では、使用される放射性医薬品化合物は、導入期の治療当たり1~8回、好ましくは2~7回、より好ましくは4~6回投与される。使用される放射性医薬品化合物の投与は、2週間、又は3週間、又は4週間、又は5週間、又は6週間、又は7週間の治療間隔を含んでなってもよい。
【0173】
具体的な実施形態では、放射性医薬品化合物(好ましくは[177LuLu]-DOTATE)が化学療法剤(好ましくはカルボプラチン及びエトポシド)と組み合わせて、好ましくは同時に投与される導入期間中、前記放射性医薬品化合物の投与の治療間隔は、例えば7週間など、6~8週間であり、化学療法が停止される維持期間中、前記放射性医薬品化合物の投与のための治療間隔は短縮され、例えば2~4週間、好ましくは3週間を含んでなる。
【0174】
具体的な実施形態では、対象に投与される総(累積)線量は55.5(1500mCi)を超えない。
【0175】
具体的な実施形態では、総(累積)線量は800mCiを超え、例えば1000~1500mCiの間である。
【0176】
特定の実施形態では、化学療法剤を共投与する導入期間中は、維持期中(化学療法期間後)よりも投与量が少なく、例えば、各投与量は、導入期間中には100mCi~200mCiの間を含んでなり、維持期間には150mCi~250mCiの間を含んでなる。
【0177】
組み合わせで使用される化学療法
本開示は、相乗的抗腫瘍効果を提供するためのPRRTと化学療法の組み合わせ療法を提供し、それによってSCLC、特にES-SCLCを有する対象を治療する。
【0178】
本明細書の用法では、「化学療法」という用語は、細胞を死滅させるか又は分裂を停止させることによってがん細胞の増殖を止める薬剤を使用する、腫瘍学的性質の疾患の治療に使用される。化学療法としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、及び細胞傷害性抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
したがって、本開示の方法は、1つ又は複数の化学療法剤を、前記放射性医薬品化合物と組み合わせて、好ましくは同時に投与するステップを含んでなる。
【0180】
好ましい実施形態では、本明細書に開示される放射性医薬品化合物と組み合わせて使用するための前記1つ又は複数の化学療法剤は、アルキル化剤、より好ましくはシスプラチン又はカルボプラチンなどのシスプラチン及び誘導体の中から選択される。
【0181】
20年以上にわたり、ES-SCLC患者を治療するための現行の標準治療は、エトポシドを用いたプラチナ化学療法(カルボプラチン又はシスプラチン)である。したがって、具体的な実施形態では、本明細書に開示される放射性医薬品化合物と組み合わせて使用するための前記1つ又は複数の化学療法剤は、エトポシドを含むカルボプラチンである。
【0182】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は、例えば3週間毎の、例えばカルボプラチン及びエトポシドなどの1つ又は複数の化学療法剤の3~4サイクルの投与を含んでなる。
【0183】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は、3週間毎のカルボプラチン及びエトポシドの3~4サイクルの投与を含んでなり、カルボプラチンは曲線下面積(AUC)5で投与され、エトポシドは100mg/m2で投与される。
【0184】
具体的な実施形態では、1つ又は複数の化学療法剤の初回投与は、放射性医薬品の初回投与の前後15日未満、好ましくは10日未満、より好ましくは7日未満に行われる。
【0185】
具体的な実施形態では、カルボプラチンは1日目に初回投与され、エトポシドは1日目~3日目に初回与され、放射性医薬品化合物(好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE)は3日目~5日目に初回投与される。
【0186】
具体的な実施形態では、前記1つ又は複数の化学療法剤(典型的にはカルボプラチン及びエトポシド)は、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間、好ましくは第7週における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物(典型的には[177Lu]Lu-DOTA-TATE)の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与される。
【0187】
本明細書の用法では、「導入期間」は、前記1つ又は複数の化学療法剤、好ましくはカルボプラチン及びエトポシドが対象に投与される期間を指し、ここで期間は、例えば第1週の1日目から第11週の終わりの7日目までなど、最大11週間である。
【0188】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は導入期間と維持期間を含んでなる。
【0189】
本明細書の用法では、「維持期間」は、導入期後又はPRRTと化学療法との同時投与期間後に開始する期間を指し、ここで化学療法は中止されるが、PPRTは継続され、例えば第12週の1日目に開始され、持続期間は第25週まで、又はそれ以上である。
【0190】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は導入期間と維持期間を含んでなり、導入期間中、対象は次を受ける:
(i)好ましくは曲線下面積(AUC)5で1日目と3週間毎のカルボプラチンと、100mg/m2で1~3日目と3週間毎のエトポシドの4サイクルの化学療法剤(例えばカルボプラチン及びエトポシド)、及び
(ii)第1週及び第7週中に、好ましくは第1週の3、4、又は5日目に、放射性医薬品化合物(例えば[177Lu]Lu-DOTA-TATE)の2回の投与、及び
維持期間中、化学療法は中止され、対象は次を受ける:
(iii)例えば、第13週、第16週、第19週、及び第22週の、前記放射性医薬品化合物(例えば[177Lu]Lu-DOTA-TATE)の1~4回の投与。
【0191】
免疫腫瘍学(I/O)療法
最近、SCLC患者を治療するための標準治療スキームに、カルボプラチン-エトポシドとの組み合わせで、免疫腫瘍学的療法が追加された。特に、アテゾリズマブはカルボプラチン-エトポシドと組み合わせて投与され、維持期間におけるアテゾリズマブの投与がそれに続く(Horn L,Mansfield AS,Szczesna A,et al(2018)N Engl J Med;379(23):2220-9)。
【0192】
具体的な実施形態では、前節で開示した組み合わせ療法は、好ましくは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、GITR拮抗薬、TGF-b阻害剤、IL15/IL15RA複合体、CD40/CD40L複合体、OX40阻害剤、4-1BB/CD137複合体、ICOS阻害剤、CD47阻害剤、VISTA阻害剤、GD-2阻害剤、B7/H3阻害剤、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン(interlukin))、細胞免疫療法、及びがんワクチンからなる群から選択され、より好ましくはPD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA4阻害剤又はそれらの組み合わせである、治療有効量の1つ又は複数の免疫腫瘍学(I-O)治療剤を組み合わせて、好ましくは同時に投与することをさらに含んでなる。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される阻害剤は抗体である。
【0193】
本明細書の用法では、免疫腫瘍学治療剤(I/O剤、I/O療法と同義的に使用される)は、がんと闘うために身体の免疫系を利用する、任意の薬剤又は治療法を指す。I/O療法は、治療用がんワクチン、CAR-T療法、及び標的化抗体療法など、免疫系を介して、がん細胞を特異的に標的化してもよい。I/O療法は、必ずしもがん細胞を直接標的化する必要はなく、チェックポイント阻害剤及びサイトカインなど、がん細胞を攻撃する免疫系の能力を高めることでがんを治療し得る。
【0194】
具体的な実施形態では、このように使用され得るI/O治療剤としては、免疫チェックポイント阻害剤、好ましくはPD-1、PD-L1、又はCTLA4阻害剤、LAG-3阻害剤、及びTIM-3阻害剤からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0195】
I/O治療剤の例は、国際公開第2016/207732号パンフレット及び国際公開第2020/021465号パンフレットにさらに開示されており、その内容はその全体が本明細書に援用される。
【0196】
より具体的には、「PD-1」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、プログラム死-1受容体を指す。「PD-1」という用語はまた、CD28、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、誘導性共刺激分子(ICOS)をはじめとするCD28-B7シグナル伝達受容体ファミリーに属し、PD-L1と相互作用するI型膜貫通タンパク質を指す。
【0197】
「抗PD-1抗体」又は「抗PD-L1」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、それぞれPD-1又はPD-L1に対する結合親和性と、PD-1に対する拮抗薬活性を有する抗体を指し、すなわちそれは、PD-1に関連するシグナル伝達カスケードを阻害し、PD-1リガンド結合(PD-L1;PD-L2)を阻害する。このような抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、CD28-B7シグナル伝達ファミリーの他のサブタイプ又はイソ型の受容体(CD28;CTLA-4;ICOS)との相互作用よりも高い親和性と効力で、それぞれPD-1を優先的に不活化する。化合物がPD-1阻害剤であるかどうかを判定するための試験及びアッセイは、当業者に良く知られている。
【0198】
前記PD-1、PD-L1又はCTLA-4阻害剤の例は、例えば、チスレリズマブ、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)、イピリムマブ、PDR001/スパルタリズマブ(Novartis)、キイトルーダ/ペンブロリズマブ/MK-3475/ランブロリズマブ(Merk & Co)、ピジリズマブ、デュルバルマブ/MEDI4736、アテゾリズマブ/MPDL3280A/Tecentriq/RG7446(Roche)、アベルマブ、MEDI0680(AMP-514、Medimmune)、REGN2810/セミプリマブ(Regeneron)、TSR-042/ドスターリマブ/ドスターリマブ-gxly(Tesaro)、PF-06801591/サナンリマブ(Pfizer)、BGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、BGB-108、INCSHR1210/カムレリズマブ(Incyte)、及びAMP-224(Amplimmune)からなる群から選択される、抗PD-1、抗PD-L1又は抗CTLA-4抗体からなる群から選択される。
【0199】
本明細書の用法では、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。そのため、「抗体」という用語は、抗体分子全体だけでなく、抗体断片並びに抗体及び抗体断片の変異型(誘導体をはじめとする)をも包含する。
【0200】
本明細書の用法では、「抗体」という用語は、二重特異性分子又は多重特異性分子も含む。抗体は、例えば、別のペプチドやタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体又はリガンド)などの別の機能性分子に誘導体化又は連結して、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成し得る。抗体は、実際には、誘導体化されて、又は2つ以上のその他の機能性分子に連結されて、2つを超える異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多重特異性分子を生成してもよく;このような多重特異性分子もまた、本明細書の用法では「二重特異性分子」という用語に包含されることが意図される。二重特異性分子を作製するために、発明の抗体は、二重特異性分子が生じるように、(例えば、化学共役、遺伝子融合、非共有結合などによって)別の抗体、抗体断片、ペプチド又は結合模倣物などの1つ又は複数のその他の結合分子に、機能的に連結され得る。さらに、二重特異性分子が多重特異性である実施形態では、分子は、第1及び第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含み得る。一実施形態では、本明細書に開示される二重特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Unibody又は一本鎖Fvをはじめとする、少なくとも1つの抗体又はその抗体断片を含んでなる。抗体はまた、軽鎖若しくは重鎖の二量体、又はLadner et al.の米国特許第4,946,778号明細書に記載されているようなFv又は一本鎖コンストラクトなどのそれらの任意の最小断片であってもよい。
【0201】
天然の抗体では、2本の重鎖がジスルフィド結合によって互いに結合しており、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖と結合している。軽鎖にはラムダ(λ)とカッパ(k)の2種類がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又はイソ型)、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEがある。各鎖は異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)の2つのドメインを含む。重鎖は、1つの可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3、集合的にCHと称される)の4つのドメインを含む。軽鎖(VL)と重鎖(VH)の双方の可変領域によって、抗原に対する結合認識と特異性が決定される。軽鎖(CL)と重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、胎盤通過性、補体結合、Fc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。
【0202】
Fv断片は免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1本の軽鎖と1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の構造的相補性にある。抗体結合部位は、超可変領域又は相補性決定領域(CDR)に主に由来する、残基で構成されている。時には、非高可変領域又はフレームワーク領域(FR)からの残基は、抗体結合部位に関与するか、又はドメイン全体の構造、ひいては結合部位に影響を及ぼすことがある。相補性決定領域又はCDRは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性と特異性を一緒に定義するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖と重鎖はそれぞれ、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3、及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と称される3つのCDRを有する。したがって、抗原結合部位は、典型的には、重鎖及び軽鎖のV領域のそれぞれからのCDRセットを含んでなる6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDRの間に挟まれたアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖及び重鎖の可変領域は、典型的には、次の配列の4つのフレームワーク領域と3つのCDRとを含んでなる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。
【0203】
抗体可変ドメインの残基は、Kabat et al.が考案したシステムに従って慣例的に番号付けされている。このシステムは、Kabat et al.,1987,in Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USA (以下「Kabat et al.」)に記載されている。Kabat残基の命名は、配列番号中のアミノ酸残基の線形番号と直接対応するとは限らない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであれ相補性決定領域(CDR)であれ、構造構成要素の短縮又は構造構成要素への挿入に対応する厳密なKabat番号付けよりも、少ないか又は多いアミノ酸を含有してもよい。残基の正しいKabat番号付けは、抗体の配列中の相同性のある残基と「標準」Kabat番号付け配列とのアラインメントによって、所与の抗体について決定されてもよい。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)、及び残基95~102(H-CDR3)に位置している。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)、及び残基89~97(L-CDR3)に位置している。
【0204】
本明細書の用法では、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、PD-1に特異的に結合する単離された抗体は、PD-1以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、PD-1に特異的に結合する単離された抗体は、他種の関連するPD-1分子など、他の抗原に対して交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、その他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0205】
好ましい実施形態では、本明細書に開示される放射性医薬化合物と組み合わせて使用するための前記I/O剤は、PD1阻害剤、特に抗PD1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA4抗体の中から選択され、より好ましくはBGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、ニボルマブ(Bristol-MyersSquibb)、イピリムマブ、PDR001/スパルタリズマブ(Novartis)、キイトルーダ/ペンブロリズマブ/MK-3475/ランブロリズマブ(Merk & Co)、ピジリズマブ、デュルバルマブ/MEDI4736、アテゾリズマブ/MPDL3280A/Tecentriq/RG7446(Roche)、アベルマブ、MEDI0680(AMP-514、Medimmune)、REGN2810/セミプリマブ(Regeneron)、TSR-042/ドスターリマブ/ドスターリマブ-gxly(Tesaro)、PF-06801591/サナンリマブ(Pfizer)、BGB-A317/チスレリズマブ(Beigene)、BGB-108、INCSHR1210/カムレリズマブ(Incyte)、及びAMP-224(Amplimmune)の中から選択される。
【0206】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、その全体が参照により援用される、米国特許出願公開第2015/0210769号明細書に記載されている抗PD-1抗体分子である。
【0207】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、国際公開第2015/035606号パンフレット、米国特許出願公開第2015/315274号明細書、米国特許出願公開第2015/079109号明細書、及び米国特許第2018/111995号明細書に開示(discosed)されているBGB-A317/チスレリズマブである。一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、BGB-A317/チスレリズマブのCDR配列(又は集合的にCDR配列の全て)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列の1つ又は複数を含んでなる。
【0208】
重鎖
【化6】
-HCDR1:GFSLTSYGVH(配列番号2)
-HCDR2:VIYADGSTNYNPSLKS(配列番号3)
-HCDR3:ARAYGNYWYIDV(配列番号4)
【0209】
軽鎖
【化7】
-LCDR1:KSSESVSNDVA(配列番号6)
-LCDR2:YAFHRFT(配列番号7)
-LCDR3:HQAYSSPYT(配列番号8)
【0210】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤はPDR001である。PDR001は、スパルタリズマブとしても知られている。ニボルマブ(クローン5C4)及び他の抗PD-1抗体は、それらの全体が参照により援用される、米国特許第8,008,449号明細書及び国際公開第2006/121168号パンフレットに開示されている。ペンブロリズマブ及び他の抗PD-1抗体は、それらの全体が参照により援用される、Hamid,O.et al.(2013)New England Journal of Medicine 369(2):134-44、米国特許第8,354,509号明細書、及び国際公開第2009/114335号パンフレットに開示されている。MEDI0680及び他の抗-PD-1抗体は、それらの全体が参照により援用される、米国特許第9,205,148号明細書、及び国際公開第2012/145493号パンフレットに開示されている。さらなる既知の抗PD-1抗体としては、例えば、それらの全体が参照により援用される、国際公開第2015/112800号パンフレット、国際公開第2016/092419号パンフレット、国際公開第2015/085847号パンフレット、国際公開第2014/179664号パンフレット、国際公開第2014/194302号パンフレット、国際公開第2014/209804号パンフレット、国際公開第2015/200119号パンフレット、米国特許第8,735,553号明細書、米国特許第7,488,802号明細書、米国特許第8,927,697号明細書、米国特許第8,993,731号明細書、及び米国特許第9,102,727号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0211】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、MDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、又はOPDIVO(登録商標)としても知られている、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb)である。ニボルマブ(クローン5C4)及び他の抗PD-1抗体は、それらの全体が参照により援用される、米国特許第8,008,449号明細書及び国際公開第2006/121168号パンフレットに開示されている。
【0212】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ランブロリズマブ、MK-3475、MK03475、SCH-900475、又はキイトルーダ(登録商標)としても知られている、ペンブロリズマブ(Merck & Co)である。ペンブロリズマブ及び他の抗PD-1抗体は、それらの全体が参照により援用される、Hamid,O.et al.(2013)New England Journal of Medicine 369(2):134-44、米国特許第8,354,509号明細書、及び国際公開第2009/114335号パンフレットに開示されている。
【0213】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、AMP-514としても知られているMEDI0680(Medimmune)である。MEDI0680及び他の抗-PD-1抗体は、それらの全体が参照により援用される、米国特許第9,205,148号明細書、及び国際公開第2012/145493号パンフレットに開示されている。一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、MEDI0680のCDR配列(又は集合的にCDR配列の全て)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列の1つ又は複数を含んでなる。
【0214】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はREGN2810/セミプリマブ(Regeneron)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、REGN2810のCDR配列(又は集合的にCDR配列の全て)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列の1つ又は複数を含んでなる。
【0215】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はPF-06801591(Pfizer)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、PF-06801591のCDR配列(又は集合的にCDR配列の全て)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列の1つ又は複数を含んでなる。
【0216】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、INCSHR01210又はSHR-1210としても知られているINCSHR1210(Incyte)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、INCSHR1210のCDR配列(又は集合的にCDR配列の全て)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列の1つ又は複数を含んでなる。
【0217】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ANB011としても知られているTSR-042(Tesaro)である。一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、TSR-042のCDR配列(又は集合的にCDR配列の全て)、重鎖若しくは軽鎖可変領域配列、又は重鎖若しくは軽鎖配列の1つ又は複数を含んでなる。
【0218】
さらなる既知の抗PD-1抗体としては、例えば、それらの全体が参照により援用される、国際公開第2015/112800号パンフレット、国際公開第2016/092419号パンフレット、国際公開第2015/085847号パンフレット、国際公開第2014/179664号パンフレット、国際公開第2014/194302号パンフレット、国際公開第2014/209804号パンフレット、国際公開第2015/200119号パンフレット、米国特許第8,735,553号明細書、米国特許第7,488,802号明細書、米国特許第8,927,697号明細書、米国特許第8,993,731号明細書、及び米国特許第9,102,727号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0219】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、本明細書に記載の抗PD-1抗体の1つと結合につい競合する、及び/又はPD-1上の同じエピトープに結合する抗体である。
【0220】
一実施形態では、PD-1阻害剤はPD-1シグナル伝達経路を阻害するペプチドであり、例えば、その全体が参照により援用される米国特許第8,907,053号明細書に記載されているようなものである。一実施形態では、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含んでなるイムノアドヘシンである。一実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-224(B7-DCIg(Amplimmune)、例えば、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2010/027827号パンフレット及び国際公開第2011/066342号パンフレットに開示されている)である。
【0221】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤(例えば、チスレリズマブ)は、約200mg~約500mg(例えば、約300mg~約400mg)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は3週間毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は4週間毎に1回投与される。他の実施形態では、PD-1阻害剤は、3週間毎に1回、約200mg~約400mg(例えば約300mg)の用量で投与される。さらに他の実施形態では、PD-1阻害剤は、4週間毎に1回、約300mg~約500mg(例えば、約400mg)の用量で投与される。
【0222】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は、例えば3週間毎など、3~4週間毎のI/O治療剤、例えば抗PD1阻害剤、好ましくはチスレリズマブの投与を含んでなる。
【0223】
具体的な実施形態では、I/O治療剤、例えば抗PD1阻害剤、好ましくはチスレリズマブの初回投与は、放射性医薬品の初回投与の前後15日未満、好ましくは10日未満、より好ましくは7日未満に行われる。
【0224】
具体的な実施形態では、PD1阻害剤(好ましくはチスレリズマブ)は、1つ又は複数の化学療法剤の初回投与と共に1日目に初回投与され、放射性医薬品化合物(好ましくは[177Lu]Lu-DOTA-TATE)は、3~5日目に初回投与される。
【0225】
具体的な実施形態では、前記I/O治療剤(典型的には抗PD1阻害剤、より好ましくはチスレリズマブ)は、導入期間中に、前記1つ又は複数の化学療法剤と、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の、前記放射性医薬品化合物(典型的には[177Lu]Lu-DOTA-TATE)の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与される。
【0226】
前記放射性医薬化合物の使用方法の具体的な実施形態では、前記1つ又は複数の化学療法剤が、導入期間中に、好ましくは、化学療法剤の初回投与の第1週、例えば第1週の3、4、又は5日目のいずれかにおける、前記放射性医薬品化合物の初回投与と、第6週と第8週の間における、前記放射性医薬品化合物の2回目の投与の前記放射性医薬品化合物の2回の投与と組み合わせて、好ましくは同時に投与され、前記腫瘍免疫剤が、好ましくは前記化学療法剤と組み合わせて、好ましくは同時に、第1週に、好ましくは化学療法剤の初回投与日に、導入期間中は3週間毎に投与される。
【0227】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は、導入期間と維持期間を含んでなり、ここで維持期間は、次を含んでなる:
(i)3週間毎の前記放射性医薬品化合物の1~4回の投与、及び
(ii)3週間毎の前記腫瘍免疫剤の1~4回の投与。
【0228】
具体的な実施形態では、組み合わせ療法は導入期間と維持期間を含んでなり、導入期間中、対象は次を受け:
(i)好ましくは曲線下面積(AUC)5で1日目と3週間毎のカルボプラチンと、100mg/m2で1~3日目と3週間毎のエトポシドの4サイクルの化学療法剤(例えばカルボプラチン及びエトポシド)、
(ii)第1週及び第7週中に、好ましくは第1週の3、4、又は5日目に、放射性医薬品化合物(例えば[177Lu]Lu-DOTA-TATE)の2回の投与、及び
(iii)好ましくは1日目と3週間毎の200mgの抗PD1阻害剤の4サイクルのI/O剤(例えば抗PD1阻害剤、典型的にはチスレリズマブ)、維持期間中、化学療法は中止され、対象は次を受ける:
(iv)例えば、第13週、第16週、第19週、及び第22週の、前記放射性医薬品化合物(例えば[177Lu]Lu-DOTA-TATE)の1~4回の投与、
(v)3週間毎に200mgのI/O薬(例えば抗PD1阻害薬、典型的にはチスレリズマブ)、好ましくは抗PD1阻害剤の2~4回の投与。
【0229】
組み合わせ療法の効果
特定の態様では、放射性医薬品化合物(PRRT)と化学療法の複合効果は、化学療法単独と比較して、及び/又は放射線療法と組み合わされたPRRTと比較して、全奏効率を少なくとも10%、20%、30%、40%、又は少なくとも50%に増加させる。
【0230】
特定の態様では、本開示の組み合わせ療法は、対象における腫瘍増殖を阻害、遅延、及び/又は低減し得る。特定の態様では、腫瘍の増殖は、未治療の対照と比較して、少なくとも10%、20%、30%又は50%遅延する。特定の態様では、腫瘍の増殖は、未治療の対照と比較して少なくとも20%遅延する。特定の態様では、腫瘍の増殖は、治療なしで予測される腫瘍の増殖と比較して、少なくとも10%、20%、30%又は80%遅延する。特定の態様では、腫瘍の増殖は、治療なしで予測される腫瘍の増殖と比較して、少なくとも20%遅延する。
【0231】
特定の態様では、放射性医薬品組成物を含んでなる組成物を、前記治療に適格な対象に投与することで、対象の生存期間を延長させることができる。特定の態様では、生存期間の延長は、未治療の対照との比較、又はES-SCLC対象の標準治療、典型的にはカルボプラチンとエトポシドの化学療法と、任意選択的に抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA4抗体などのI/O治療薬との組み合わせで治療された対照との比較である。特定の態様では、生存期間の延長は、治療なしの対象の予測生存期間との比較である。特定の態様では、生存期間は、未治療の対照と比較して、又はES-SCLC対象の標準治療、典型的にはカルボプラチンとエトポシドの化学療法と、任意選択的に抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA4抗体などのI/O治療薬との組み合わせで治療された対照と比較して、少なくとも10%、20%、又は30%延長される。特定の態様では、生存期間は、未治療の対照と比較して少なくとも20%延長される。特定の態様では、生存期間は、治療なしの対象の予測生存期間と比較して、少なくとも10%、20%、又は30%延長される。特定の態様では、生存期間は、治療なしの対象の予測生存期間と比較して、少なくとも20%延長される。特定の態様では、生存期間は、未治療の対照と比較して、又はSCLCの標準治療、典型的にはカルボプラチンとエトポシドの化学療法と、任意選択的に抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA4抗体などのI/O治療薬との組み合わせで治療された対照、特にES-SCLC対象と比較して、少なくとも1週間、2週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、又は3年延長される。特定の態様では、生存期間は、未治療の対照と比較して、少なくとも1ヵ月、3ヵ月、又は6ヵ月延長される。特定の態様では、生存期間は、治療なしの対象の予測生存期間と比較して、又はSCLCの標準治療、典型的にはカルボプラチンとエトポシドの化学療法と、任意選択的に抗PD-1、抗PD-L1又は抗CTLA4抗体などのI/O治療剤との組み合わせで治療された対照、特にES-SCLC対象の予測生存期間と比較して、少なくとも1週間、1週間、1ヶ月間、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、又は3年延長される。特定の態様では、生存期間は、治療なしの対象の予測生存期間と比較して、又はSCLCの標準治療、典型的にはカルボプラチンとエトポシドの化学療法と、任意選択的に抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は抗CTLA4抗体などのI/O治療薬との組み合わせで治療された対照、特にES-SCLC対象の予測生存期間と比較して、少なくとも1ヶ月間、3ヶ月、又は6ヶ月延長される。
【0232】
組み合わせ療法の対象を選択する方法
本開示の特定の実施形態では、前記小細胞肺がんはSSTR陽性疾患である。一実施形態では、対象は、PRRTに使用されるのと同じ有機化合物であるが、画像化に適した放射性金属、すなわち画像化放射性医薬品化合物を用いたSPECT/CT又はPET/CT又はSPECT/MRI、PET/MRI画像化による治療のために選択される。画像化における造影剤としての使用に適した典型的な放射性金属としては、次が挙げられる:111In、133mIn、99mTc、94mTc、67Ga、66Ga、68Ga、52Fe、72As、97Ru、203Pb、62Cu、64Cu,61Cu177Lu、86Y、51Cr、52mMn、157Gd、169Yb、172Tm、117mSn,123I、124I、125I、18F、Al18F、152Tb、155Tb,82Rb,89Zr、43Sc、44Sc。
【0233】
好ましい実施形態によると、画像化に適した放射性金属は、67Ga、68Ga又は64Cu、好ましくは68Gaである。
【0234】
一実施形態では、特に[177Lu]Lu-DOTA-TATEが組み合わせ療法におけるPRRTに使用される場合、対象は、腫瘍領域におけるPET/CT又はPET/MRIスキャンによる68Ga-DOTA-TATE取り込みを評価することによって選択される。
【0235】
したがって、本開示はまた、SSTR陽性SCLC、特にES-SCLCを有するヒト患者が、本明細書に開示される前記組み合わせ療法に適格であるかどうかを判定するための方法にも関し、前記方法は、
(i)前記放射性医薬品化合物の取り込みを画像化するための造影剤として、効率的な量の画像化放射性医薬品化合物を投与するステップと、
(ii)前記患者のPET/MRI又はPET/CTによる画像を取得するステップと
(iii)対照画像と比較するステップと
を含んでなる。
【0236】
上記方法の目的は、SSTR陽性腫瘍を有する患者、すなわち、典型的にはDOTA-TATEで標識された画像化放射性医薬品SSTR結合化合物を造影剤として注射した後、PET/MRI又はPET/CT画像化によって、その取り込みを評価することによって検出され得る腫瘍を有する患者を組み合わせ療法のために選択することである。
【0237】
有利なことに、SSTR陽性患者は、無作為化された患者集団(すなわち、本方法の選択ステップによって選択されなかった患者集団)と比較して、治療に対して統計学的により良い反応を示し、及び/又は無作為化された患者集団(すなわち、本方法の選択ステップによって選択されなかった患者集団)と比較して、治療に対してより少ない副作用を示す。
【0238】
特定の態様では、68Ga-DOTA-TATEは、NETSPOT(登録商標)(ガリウムGa 68ドータテート(USAN))と称されるキットで提供される。このキットは、アメリカ合衆国(USA)(2016年)、カナダ(2019年)、及びスイス(2019年)で承認された[68Ga]Ga-DOTA-TATEの放射性医薬品調製用キットで、適応症は次の通りである:(68Ga)で放射性標識された後、SSTR陽性神経内分泌腫瘍(NET)の位置を特定するためにPETと共に使用される放射性診断薬である(NETSPOT(登録商標)PI)。
【0239】
一実施形態では、対象の選択は、放射性医薬品化合物の初回投与の10~28日前、好ましくは約14日前に行われる。
【0240】
特定の実施形態では、前記画像化放射性医薬品(radiopharmaeutical)は、1.5MBq/kg(0.040mCi/kg)から2.5MBq/kg(0.067mCi/kg)の間、好ましくは約2MBq/kg体重(0.054mCi/kg)の用量で投与され、最小用量は100MBq(2.7mCi)、最大用量は200MBq(5.4mCi)であり、典型的には静脈内注射、好ましくは緩徐静脈内注射によって投与される。
【0241】
次に対象の身体の画像をPET/MRI又はPET/CT画像化によって取得し、画像を対照画像と比較して、例えば、MRI、CT、SPECT又はPETによる従来の画像化によって同定された病変が、前記画像化放射性医薬品(radiopharmaceutcal)化合物取り込み、すなわち68Ga-DOTA-TATE取り込みによってもまた同定されるかどうかを同定する。典型的には、PET/MRI又はPET/CT画像化は、前記画像化放射性医薬品化合物の対象への静脈内投与後30分から120分の間、好ましくは60分から90分の間に実施される。
【0242】
本方法の具体的な実施態様では、本開示の組み合わせ療法のために対象が選択され、次の条件を満たす:前記対象において、例えば、MRI、CT、SPECT又はPETなどの従来の画像化によって検出される病変の少なくとも10%、好ましくは20%超え、好ましくは30%超え、好ましくは40%超え、好ましくは50%超え、好ましくは60%超え、好ましくは70%超え、好ましくは80%超えが、前記対象におけるPET/MRI又はPET/CTイメージングによって判定される、画像化放射性医薬品化合物取り込み、例えば68Ga-DOTA-TATE取り込みによってもまた同定される。
【0243】
具体的な実施形態では、「病変」という用語は、Ellingson BM,Wen PY,Cloughesy TF.Modified Criteria for Radiographic Response Assessment in Glioblastoma Clinical Trials.Neurotherapeutics.2017 Apr;14(2):307-320.doi:10.1007/s13311-016-0507-6.PMID:28108885;PMCID:PMC5398984で定義される修正RANO基準に従って測定可能な腫瘍病変を指す。
【0244】
特定の態様では、前記対象は新たにSCLC、特にES-SCLCと診断されている。
【0245】
特定の態様では、前記対象はSSTR陽性SCLC、特にES-SCLCである。
【0246】
別の実施形態では、対象は、SCLC、特にES-SCLCに対する以前の全身治療を受けておらず、特に前記対象は、SCLC、特にES-SCLCを治療するための以前の化学療法を受けていない。特に具体的な実施形態では、前記対象は、第一選択化学療法後の再発又は難治性SCLC、特にES-SCLCであることが確認されていない。
【実施例
【0247】
実施例1:ES-SCLC対象を治療するための臨床試験
本明細書に提供されるのは、新たに診断された拡張期小細胞肺がん(ES-SCLC)において、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、導入療法期のカルボプラチン、エトポシド、及びチスレリズマブとの組み合わせ、及び維持療法期のチスレリズマブとの組み合わせの安全性と活性を評価する、前向き第Ib相用量設定試験を記述するプロトコル例である。
【0248】
1.プロトコル概要
目的:この研究は、この状況における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの安全且つ忍容性の高い用量を確立し、組み合わせ療法の予備的な活性を評価することを目的としている。研究は、この侵攻性の高いがん型を有する患者に、新たな可能な治療選択肢を評価するために不可欠なものである。
【0249】
主要目的は、新たにES-SCLCと診断された患者において、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、導入療法中のカルボプラチン、エトポシド、及びチスレリズマブとの組み合わせ、及び維持療法中のチスレリズマブとの組み合わせの推奨用量を確立することである。
【0250】
副次目的を以下に列挙する:
●新たにES-SCLCと診断された患者における、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、導入療法中のカルボプラチン、エトポシド、及びチスレリズマブとの組み合わせ、及び維持療法中のチスレリズマブとの組み合わせの安全性と忍容性を特徴付ける
●新たにES-SCLCと診断された患者における、[68Ga]Ga-DOTA-TATEの安全性と忍容性を評価する
●新たにES-SCLCと診断された患者における、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの予備的な抗腫瘍活性を評価する
●新たにES-SCLCと診断された患者における、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの薬物動態(PK)と線量測定を特徴付ける
●新たにES-SCLCと診断された患者における、チスレリズマブの薬物動態と免疫原性を特徴付ける
【0251】
研究デザイン
これは、新たにES-SCLCと診断された参加者における、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、導入療法期間中のカルボプラチン、エトポシド、及びチスレリズマブとの組み合わせ、及び維持療法期間中のチスレリズマブとの組み合わせの間の多施設共同非盲検第Ib相試験である。
【0252】
各参加者の試験は、スクリーニング期間、導入療法期間と維持療法期間を含む治療期間、及びフォローアップ期間からなる。
【0253】
適格な参加者は3~6人のコホートに登録され、次を受ける:
●導入期間中、第1、4、7、10週に3週間毎の、1日目の曲線下面積(AUC)5のカルボプラチン、1~3日目の100mg/m2のエトポシドを4サイクル
●導入期間及び維持期間中、3週間毎の1日目の200mgのチスレリズマブ
●導入期間中、第1週の3、4、又は5日目のいずれかと、第7週の3日目の期間にける2回の[177Lu]Lu-DOTA-TATEの投与と、それに続く、評価された用量に応じて、維持期間中、第13週の1日目、第16週の1日目、第19週の1日目、及び第22週の1日目の1~4回の投与。
【0254】
177Lu]Lu-DOTA-TATEの最大6つの異なる用量レベルの組み合わせが、次のように試験で評価される:
●用量レベル1(DL1):導入期間中の100mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE、及び維持期間中の100mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル2a(DL2a):導入期間中及び維持期間中の双方の150mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル2b(DL2b):導入期間中の150mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE、及び維持期間中の200mCiの[100Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル3a(DL3a):導入期間中及び維持期間中の双方の200mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル3b(DL3b):導入期間中の200mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE、及び維持期間中の250mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル4(DL4):導入期間中及び維持期間中の双方の250mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
【0255】
この研究における用量漸増部分は、治療の最初の6週間(42日)以内に観察された用量制限毒性(DLT)率によって導かれる。DLTに加えて、その時点で入手可能な安全性データの全体を、用量漸増の決定毎に評価する。用量漸増/漸減は、ベイズの最適間隔アプローチ(BOIN)を用いて行う。
【0256】
理論的根拠:
これはES-SCLCを有する患者における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの最初の試験であるため、この集団における有効性と安全性はまだ確立されていない。しかしながら、ソマトスタチン受容体(SSTR)を発現する腫瘍細胞を標的化する[177Lu]Lu-DOTA-TATEの作用機序と、入手可能な前臨床及び臨床データに基づいて、ES-SCLCを有する患者が標的放射性リガンド治療の恩恵を受ける可能性は十分にある。この研究は、ES-SCLCに新たな治療オプションの可能性をもたらすために不可欠であり、満たされていない医学的ニーズと限られた治療選択肢を考慮すると、この第Ib相試験におけるES-SCLCを有する患者に対する利点/リスク評価は良好であると見なされる。
【0257】
【表X1】
【0258】
【表X2】
【0259】
2.詳細な研究デザイン
各参加者の試験は、スクリーニング期間、導入療法期間と維持療法期間を含む治療期間、及びフォローアップ期間からなる。
【0260】
スクリーニング期間
SCLC治療開始前の最大28日間のスクリーニング期間中に、参加者の適格性を、プロトコルの事前に定義された組み入れ基準及び除外基準に従って判定する。[68Ga]Ga-DOTA-TATEによる画像化は、参加者の登録が遅れないよう、スクリーニング中にできる限り速やかに実行しなければならない。
【0261】
スクリーニング時に全ての適格基準を満たした参加者は、試験に登録し得る。登録と[177Lu]Lu-DOTA-TATEの注文は、全ての適格基準が確認され、参加者が適格であることが確認された後、直ちに実施しなければはならない。
【0262】
68Ga]Ga-DOTA-TATEを投与された全ての参加者は、安全のため、[68Ga]Ga-DOTA-TATE投与の2日後に専用の電話で追跡されてAEの発生が評価される。
【0263】
治療期間
治療期間は、導入期間と維持期間からなる。適格な参加者は3~6人のコホートに登録され、次を受ける:
●導入期間の第1、4、7、10週に3週間毎の、1日目の曲線下面積(AUC)5のカルボプラチン、1~3日目の100mg/mmのエトポシドを4サイクル
●導入期間及び維持期間中、3週間毎の1日目の200mgのチスレリズマブ
●導入期間中の[177Lu]Lu-DOTA-TATEの2回の投与:第1週の3、4、5日目のいずれかと第7週3日目の期間、とそれに続く、維持期間中の第13週1日目、第16週1日目、第19週1日目、及び第22週1日目に、評価用量に応じて1~4回の投与。
【0264】
この研究には、合計でおよそ39人の参加者が登録されると予想される。治験責任医師は、スポンサーから、前回のコホートの結果が評価され、新たなコホートを開始しても差し支えない旨の書面による確認を受けるまでは、コホートの登録を続行しない。
【0265】
177Lu]Lu-DOTA-TATEの最大6つの異なる用量レベルの組み合わせが、次のように試験で評価される:
●用量レベル1(DL1):導入期間中の100mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE、及び維持期間中の100mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル2a(DL2a):導入期間中及び維持期間中の双方の150mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル2b(DL2b):導入期間中の150mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE、及び維持期間中の200mCiの[100Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル3a(DL3a):導入期間中及び維持期間中の双方の200mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル3b(DL3b):導入期間中の200mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE、及び維持期間中の250mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●用量レベル4(DL4):導入期間中及び維持期間中の双方の250mCiの[177Lu]Lu-DOTA-TATE
●投与量レベル1の場合、参加者は維持期間中に[177Lu]Lu-DOTA-TATEを4回投与される(すなわち、全体で[177Lu]Lu-DOTA-TATEを6回投与;累積投与量600mCi)。より高い線量の場合、累積線量が800mCiを超える可能性がある、次に予定されている[177Lu]Lu-DOTA-TATE用量の投与前に、以下のようなチェックを行う:
●用量レベル2aの場合:維持期間中の3回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後(すなわち、全体で5回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後)
●用量レベル2b及び3aの場合:維持期間中の2回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後(すなわち、全体で4回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後)
●用量レベル3b及び4の場合:維持期間中の1回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後(すなわち、全体で3回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後)
【0266】
治験責任医師は、以下を判断すべきである:
●参加者は疾患の安定化又は応答の証拠を示す(すなわち、放射線学的又は臨床的有用性によって評価される)。
●[177Lu]Lu-DOTA-TATE治療に対して良好な耐性を示している。
【0267】
参加者が上記の基準を全て満たし、[177Lu]Lu-DOTA-TATEによる維持療法をさらに継続することに同意した場合、治験責任医師は[177Lu]Lu-DOTA-TATEの累積投与量が800mCiを超えるサイクルをさらに1~3サイクル実施してもよい。最大1500mCiに相当する、最大6サイクルの放射性リガンド治療が許可される(理論的根拠については次のセクションを参照されたい)。
【0268】
177Lu]Lu-DOTA-TATE処方情報に従って、腎保護のために各[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与時に、2.5%リジン-アルギニンアミノ酸(AA)溶液の輸液が同時投与される。輸液に関連した悪心及び嘔吐の予防のために、鎮吐薬を投与すべきである。
【0269】
承認されたGEP-NET適応症において、Q8W投与と比較してより頻回に[177Lu]Lu-DOTA-TATEを投与した場合の重要臓器及び腫瘍病変における、吸収線量を評価するため、各投与量レベルの最初の3人の参加者(1、2a、3a、及び4)は、2回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後の最初の1週間、すなわち各参加者の試験治療期間中に1回、線量測定/PKの追加評価を受ける。2回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与後に、特定の参加者において線量測定を実行し得ない例外的な状況では、後の投与時にできるだけ早く線量測定を完了しなければならない。2回目の[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与時の線量測定解析は、安全性と有効性に関する参加者の全体的な評価と関連して、より頻度の高いレジメンの支持データとして使用される。
【0270】
安全性、忍容性、薬物動態の追加データを提供するため、既に試験済みの用量レベルで最大6人が追加登録されてもよい。
【0271】
各参加者の治療期間は、RECIST 1.1に従って病勢進行が確認されるか、又は別の理由で中止されるまでとする。維持期間にチスレリズマブの投与を受けている参加者では、参加者が治験責任医師が評価した臨床効果があり、治験薬に耐容性を示し、特定の条件が満たされている場合に限り、最初に治験責任医師が評価したRECIST v1.1で定義された疾患の進行を超える治療が許可される。
【0272】
治験治療の最後の投与後、28日以内に治療終了時の受診を実施しなければならない。
【0273】
研究デザインの理論的根拠
新たに診断されたES-SCLCを有する患者の一次治療に対する初期応答にもかかわらず、予後は依然として不良であり、全生存期間は約10~12ヶ月である。この侵襲性疾患を有する患者の予後を改善する、新規治療選択肢に対する、満たされていない医学的ニーズが存在する。
【0274】
SSTRの発現は、組織学的及び画像化法の双方によってSCLCで実証されており、この腫瘍型を有する患者において[177Lu]Lu-DOTA-TATEによる放射性リガンド療法を使用する生物学的根拠となっている(Reisinger I,Bohuslavitzki KH,Brenner W,et al(1998)J Nucl Med;39(2):224-7,Reubi JC,Waser B,Schaer JC,et al(2001)Eur J Nucl Med;28(7):836-46,Lehman JM,Hoeksema MD,Staub J,et al(2019)Int J Cancer;144:1104-14)。この研究は、他のSSTR陽性腫瘍における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの有効性に基づいて、SSTR陽性ES-SCLCにおいて相乗的な抗腫瘍応答をもたらすはずである、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、ES-SCLCにおける確立された第一選択治療との組み合わせを評価する。
【0275】
これは、新たにES-SCLCと診断された患者における、カルボプラチン、エトポシド、及びチスレリズマブと組み合わされた[177Lu]Lu-DOTA-TATEを評価する最初の臨床研究である。主要目的は、この設定で適切な用量を選択することを目的として、導入期間と維持期間における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの数回の用量を評価することである。この目的のために、研究では[177Lu]Lu-DOTA-TATEの最初のサイクルでDLTを評価し、ベイズの最適間隔アプローチ(BOIN)に基づいて用量漸増/漸減を実施する(Liu S,Yuan Y(2015)Bayesian optimal interval designs for phase I clinical trials;64(3):507-23;Yuan Y,Hess KR,Hilsenbeck SG,et al(2016)Clin Cancer Res;22(17):4291-301)。
【0276】
研究の二次目的は、この新しい設定における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの全体的な安全性を評価し、組み合わせの抗腫瘍活性の予備的な兆候を評価するために選択された。抗腫瘍活性の評価では、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、及びDoRが最も関連性の高いエンドポイントであるため、これらを評価する。さらに、[177Lu]Lu-DOTA-TATEは放射性リガンド化合物であるため、その線量測定と薬物動態を評価する。SSTR発現の評価は、探索的目的の一環として行われる。
【0277】
この研究は非無作為化非盲検方式でデザインされており、第I相用量漸増試験に適していると考えられる。がん患者における第I相試験の標準的なアプローチとして、研究は複数の国の複数の施設で実施される。
【0278】
要約すると、この多施設共同非盲検臨床試験は、新たにES-SCLCと診断された参加者において、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、導入療法期間中のカルボプラチン、エトポシド、及びチスレリズマブとの組み合せ、及び維持療法期間中のチスレリズマブとの組み合わせの安全で忍容性の高い用量を確立する。さらに、この組み合わせ設定における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの安全性、予備的な抗腫瘍活性、薬物動態及び線量測定を調査する。
【0279】
用量/レジメン及び治療持続期間の理論的根拠
177Lu]Lu-DOTA-TATEの用量とスケジュールの選択の理論的根拠
確立されたGEP-NET適応症における[177Lu]Lu-DOTA-TATEの承認された成人用レジメンは、8週間毎に投与される4回の用量(各7.4GBq/200mCi)からなる(累積用量:29.6GBq/800mCi)。このレジメンは安全であり、GEP-NET患者の無増悪生存期間(PFS)と生活の質の大幅な改善につながることが示された(Strosberg J,Leeuwenkamp O,Siddiqui MK(2021)Cancer Treat Rev;93:102141;Strosberg J,Wolin E,Chasen B,et al(2018).J Clin Oncol;36(25):2578-84)。
【0280】
一般に潜伏性の経過をとる高分化型GEP-NETとは対照的に、ES-SCLCは高侵襲性疾患であり、確立された薬剤投与レジメンでも患者の進行は速い。IMPower133研究では、アテゾリズマブ治療群の患者のPFSは5.2ヶ月であり(Horn L,Mansfield AS,Szczesna A,et al(2018)N Engl J Med;379(23):2220-9)、CASPIAN研究では、デュルバルマブ治療群の患者のPFSは5.1ヵ月であった(Paz-Ares L,Dvorkin M,Chen Y,et al(2019)Lancet;394:1929-39)。この患者集団ではPFSが短いため、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの投与間隔を標準的な8週間とすると、有効な累積放射性線量を投与できないと考えられる。したがって、本研究では、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの投与間隔を短縮した。導入期間中の組み合わせレジメンの骨髄毒性が重複する可能性のために、6週間毎にレジメンが評価される一方、化学療法を投与しない維持期間中は、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの投与間隔は、3週間毎に短縮される。Q3Wレジメンは、チスレリズマブ治療スケジュールとも同期される。
【0281】
これは、ES-SCLCを有する患者における[177Lu]Lu-DOTA-TATEとカルボプラチン、エトポシド及びチスレリズマブとの組み合わせの最初の研究であることから、重複する毒性の安全性リスクを最小限に抑えるために、第1のコホートの開始用量は、導入期間と維持期間の双方で[177Lu]Lu-DOTA-TATE100mCiに選択された。100mCiの開始用量は、化学療法、放射性リガンド療法で以前に治療を受け、リスク因子又は腎機能及び骨髄機能に異常を示した患者において、この線量が良好な忍容性を示すと評価した第II相試験によって裏付けられる(Paganelli G,Sansovini M,Ambrosetti A,et al(2014)Eur J Nucl Med Mol Imaging;41:1845-51)。この研究では、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの承認線量200mCiと比較して)100mCiの線量は、有効性を維持しながら、重要臓器における吸収線量を減少させた。さらに、100mCiは、[177Lu]Lu-DOTA-TATEによる毒性に対処するために実行される用量低減レベルである([177Lu]Lu-DOTA-TATE治験責任医師向けパンフレット))。
【0282】
800mCiにおける良好な安全性プロファイルを考慮すると、ES-SCLCにおける12.3ヶ月の全生存期間中央値に反映されるように、SCLCを有する患者とGEP-NETを有する患者における、疾患の侵襲性と予後の違いを考慮すると、GEP-NETを有する患者における48ヶ月に対して(Strosberg J,Caplin M,Kunz P,et al(2021)Final overall survival in the phase 3 NETTER-1 study of lutetium-177-DOTATATE in patients with midgut neuroendocrine tumors[4112]2021年6月4日から8日にバーチャルで開催された米国臨床腫瘍学会年次総会で発表されたポスター)、SCLCを有する患者において800mCiの累積投与量を超える可能性が考慮されてもよい(Horn L,Mansfield AS,Szczesna A,et al(2018)N Engl J Med;379(23):2220-9)。さらに、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの追加投与が必要であれば、追加の安全性シグナルなしに投与可能であることを示す文献からの一連の証拠が蓄積されており、患者の慎重な評価を考慮した場合、安全性を損なうことなく利益を最大化するには累積線量が800mCiを超えてもよいことが示唆される(Strosberg J,Leeuwenkamp O,Siddiqui MK(2021)Cancer Treat Rev;93:102141)。したがって、[177Lu]Lu-DOTA-TATEの投与回数は、評価される用量レベル、医師の判断、及び患者の忍容性に応じて変動してもよい。
【0283】
最近、腎臓と骨髄の線量測定に影響する共変数を同定するために、2つの研究(Erasmus及びNETTER-1)からの成人患者集団について集団解析が行われた。結果は、腎臓と骨髄の線量測定に対する腎機能と線量の有意な影響を示しており、これはSvenssonの発表と一致する(Svensson J,Berg G,Wangberg B,et al(2015)Eur J Nucl Med Mol Imaging;42:947-55)。2つの研究では、初回投与後に線量測定評価が行われ、[177Lu]Lu-DOTA-TATEは、平均して8週間毎に投与された。[177Lu]Lu-DOTA-TATEの排泄は主に腎臓経路を介して起こり、代謝は(あったとしても)非常に低く、薬物は薬物トランスポーターと相互作用しないという事実を踏まえると、SCLCを有する患者におけるその分布と健常組織への取り込みは、GEP-NET患者と有意に異なるとは予想されない。本研究では、投与頻度を増加させ、例えば骨髄(BM)の回復までの時間など、急性毒性に影響を与えてもよい。したがって、より頻度の高いレジメンが、線量測定及び急性毒性(つまり、BMの回復までの時間)とどのように相関するかを評価するために、最初の投与後ではなく2回目の投与後に線量測定評価を行うことが提案されている。
【0284】
化学療法とチスレリズマブの用量とスケジュールの選択の理論的根拠
全ての化学療法薬の用量とスケジュールは、製品ラベル、文献、及び地域のガイドラインに基づいている。
【0285】
チスレリズマブについては、ファースト・イン・ヒューマン試験であるBGB-A317_Study_001から得られた薬物動態、安全性、及び有効性データ、並びに他の臨床試験データを総合的に解析し、主要臨床試験の推奨用量を決定した。さらなる評価のために、3週間毎に1回の200mgの一定用量を静脈内投与することが選択された。
【0286】
2mg/kgと5mg/kgを2週間に1回投与された患者と3週間に1回投与された患者で観察された治療関連の有害事象と重篤な有害事象の発生率は同等であり、これらのレジメン全体で明確な用量依存性がないことが示唆された。同様に、2mg/kgと5mg/kgのチスレリズマブを2週間に1回投与された患者の確定全奏功率(ORR)が10%~15%の範囲であったのに対し、2mg/kgと5mg/kgを3週間に1回投与された患者では15%~38%の範囲であった。
【0287】
第Ia相試験であるBGB-A317_Study_001の薬物動態データによると、チスレリズマブのCLは、体重、民族、性別と無関係であり、200mg投与で観察された血清曝露量は、2mg/kg投与~5mg/kg投与(同等の安全性と有効率を備えた用量範囲)で観察された血清曝露量の間に収まった。
【0288】
さらに、体重ベースのコホートと比較した場合、200mg固定用量コホート(BGB-A317_Study_001、第Ia相、パート3)では予想外の治療関連の有害事象は発生しなかった。治療された評価可能患者(n=13)のうち、3人の患者(23%)は部分奏効(PR)のBORを有し、4人の患者(31%)は安定した疾患のBORを有し、及び6患者(46%)は進行性疾患(PD)のBORを有した。したがって、200mgのチスレリズマブを3週間に1回投与された患者では、管理可能で忍容可能な安全性プロファイルを有する臨床活動が維持されることが期待される。
【0289】
さらに、進行肺がんの第一選択治療としてプラチナベースの化学療法と組み合わされたチスレリズマブの第II相試験では、全患者に、4~6サイクルのプラチナダブレットと組み合わされた200mgのチスレリズマブを投与した。SCLC患者グループをはじめとして、抗腫瘍活性を促進することが実証され、この薬剤は一般に忍容性が良好で、異なる免疫関連及び細胞周期関連の遺伝子シグネチャが、コホート全体の有効性と関連していた(Wang Z,Zhao J,Ma Z,et al(2020)A Phase 2 Study of Tislelizumab in Combination With Platinum-Based Chemotherapy as First-line Treatment for Advanced Lung Cancer in Chinese Patients.Lung Cancer;147:259-68)。
【0290】
結論として、上記の理論的根拠に基づいて、このES-SCLC研究ではチスレリズマブの確定用量200mgが選択された。
【0291】
この研究におけるチスレリズマブによる治療は、疾患が進行するまで継続される。しかし、選択された参加者は、RECIST v1.1に従って、放射線学的進行後もチスレリズマブ治療を継続することが許可される。ES-SCLCの第二選択治療は、低い有効性と高い毒性によって顕在化する不利な利益とリスクのプロファイルという事実、及び最初のX線画像評価では偏りなしには反映されないこともある免疫療法の結果としての偽進行/腫瘍免疫浸潤の可能性に照らして、治験責任医師の判断により、医療モニターと協議の上、参加者はRECIST v1.1に従ってX線画像による疾患の進行を超えた治療を受けることが考慮されてもよい。RECIST v1.1に従ってX線画像による疾患の進行を超えて治療を継続する参加者は、臨床的に密接にモニターされ、臨床的有用性が失われるまで腫瘍評価が予定通り継続される。
【0292】
組み合わせ薬剤の選択の理論的根拠
この研究では、[177Lu]Lu-DOTA-TATEが、プラチナベースの化学療法とチェックポイント阻害剤の確立された組み合わせと組み合わせて投与される。上で論じたように、ES-SCLCを有する患者には、確立された治療法と組み合わされ得る、新規の作用機序を有して毒性が重複しない、新薬に対する顕著な満たされていないニーズが存在する。上皮成長因子受容体(EGFR)TKIとBCR-ABLTKIなどのチロシンキナーゼ(TKI)、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)シグナル伝達経路、及び血管内皮増殖因子(VEGF)シグナル伝達経路を標的化するものをはじめとする、過去20年間に研究されてきた複数の標的化薬剤は、この疾患における生存上の利点を示すことに成功していない(Mamdani H,Induru R,Jalal SI(2015)Transl Lung Cancer Res;4(5):533-44)。エトポシドを用いたプラチナ化学療法(カルボプラチン又はシスプラチン)は、20年以上にわたってSCLCの標準治療であり続けている(Farago AF,Keane FK(2018)Transl Lung Cancer Res;7(1):69-79)。
【0293】
最近、免疫チェックポイント阻害剤が、標準治療スキームに追加された。アテゾリズマブとカルボプラチン-エトポシド(C/E)の組み合わせと、それに続く維持期間中のアテゾリズマブは、OSはC/Eと比較しておよそ2ヶ月目までに改善し(12.3ヶ月対10.3ヶ月、HR=0.70、p=0.007)、PFSはおよそ1ヶ月目までに改善した(5.2ヶ月対4.3ヶ月、HR=0.77、p=0.02)(Horn L,Mansfield AS,Szczesna A,et al(2018)N Engl J Med;379(23):2220-9)。これに基づいて、この組み合わせは、米国食品医薬品局(FDA)及び欧州医薬品庁(EMA)によって、ES-SCLCの第一選択(1L)治療として承認された。同様に、無作為化第III相CASPIAN試験の結果、全生存期間中央値が10.3ヶ月から13.0ヶ月に改善したことにより、最近FDAとEMAが、ES-SCLCの1L治療における、PD-L1阻害剤デュルバルマブと、プラチナ及びエトポシドの組み合わせを承認した(Paz-Ares L,Dvorkin M,Chen Y,et al(2019)Lancet;394:1929-39)。
【0294】
現在、ES-SCLCを有する患者に対する標準治療の第一選択治療は、チェックポイント阻害剤(CPI)(アテゾリズマブ又はデュルバルマブ)と組み合わされた、4サイクルのプラチナベースの化学療法(シスプラチン又はカルボプラチン)とエトポシドである(NCCN Guidelines Small Cell Lung Cancer Version 3.2021;Dingemans AMC,Fruh M,Ardizzoni A,et al(2021)Ann Oncol;32(7):839-53)。しかしながら、第一選択(1L)治療に免疫療法が追加されたにもかかわらず、ES-SCLCは依然として難治性の疾患である。SCLCは、SSTR-2受容体標的の発現が中程度から高度の神経内分泌起源の放射線感受性腫瘍であることから、前臨床及び臨床エビデンスは、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと、カルボプラチン、エトポシド、及びチェックポイント阻害薬との組み合わせによる放射性リガンド標的治療の検討を支持しており、第一選択の臨床治療環境におけるES-SCLC患者の臨床転帰を改善することを目的としている。
【0295】
組み合わせスキームにおける免疫チェックポイント阻害剤成分としてのチスレリズマブの選択は、チスレリズマブの臨床試験のデータに基づいており、進行性固形腫瘍を有する患者における安全性と予備活性の点で、チスレリズマブが他のチェックポイント阻害剤と同等であることが実証された。さらに、肺がんの一次治療におけるチスレリズマブと様々な標準治療化学療法の組み合わせは、他のチェックポイント阻害剤+化学療法と比較して、新たな安全性シグナルをもたらさないことが示された。進行性肺がん患者の第一選択治療としてプラチナベースの化学療法と組み合わされたチスレリズマブの第II相試験(BGB-A317-206)では、SCLCを有する患者の17人のコホートにおいて、チスレリズマブ(Q3W、1日目)とシスプラチン/カルボプラチン(Q3W、1日目)、及びエトポシド(Q3W、1日目、2日目、3日目)が投与された。ORR77%、PFS中央値6.9ヵ月、及びOS中央値15.6ヵ月という、有望な抗腫瘍活性が示された。レジメンの忍容性は概して良好であり、異なる免疫及び細胞周期に関連する遺伝子シグネチャは、コホート全体の有効性と関連していた(Wang Z,Zhao J,Ma Z,et al(2020)Lung Cancer;147:259-68)。
【0296】
現在、チスレリズマブは、未治療のES-SCLCを有するおよそ364人の患者において、第一選択治療としてのチスレリズマブとシスプラチン又はカルボプラチンとエトポシドの組み合わせ療法と、プラセボとシスプラチン又はカルボプラチンとエトポシドの組み合わせ療法(B群)の有効性を比較するために、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、第III相試験(BGB-A317-312)で研究されている。研究はまだ発表されていないが、以前の研究から収集されたデータによると、単剤療法又はプラチナベースの化学療法との組み合わせに関係なく、チスレリズマブは、管理可能な安全性プロファイルを確立しており、最も一般的な副作用は他の抗PD-1抗体の既知のクラス効果と一致している。
【0297】
この研究では、抗がん治療剤に加えて、[68Ga]Ga-DOTA-TATEが、画像化PET剤として使用される。この化合物の選択は、[177Lu]Lu-DOTA-TATEと[68Ga]Ga-DOTA-TATEの作用機序に基づくもので、これはSSTR受容体を標的化する診断治療薬ペアであり、標的画像化と標的放射線療法を提供する。
【0298】
3.臨床試験で使用する薬剤
【0299】
【表1】
【0300】
177Lu]Lu-DOTA-TATE
Lutathera(登録商標)は、基準日時(校正時間(tc))における体積放射能が370MBq/mLである[177Lu]Lu-DOTA-TATEを含有する、即時使用可能な輸液用溶液として供給される無菌放射性医薬品である単回投与バイアル当たりの放射能の総量は、注入日時において7,400MBq/7.4GBq(200mCi)±10%である。
【0301】
チスレリズマブ
チスレリズマブは、単回使用バイアル(20Rガラス、米国薬局方[USP]I型)中の、静注用として製剤化されたモノクローナル抗体であり、10mLの等張液中に合計100mgの抗体を含有する。チスレリズマブは、ゴム栓付きの単回使用ガラスバイアル内に無菌充填され、アルミニウムのフリップオフシールキャップで蓋がされている。各バイアルは1つのカートンボックスに梱包されている。
【0302】
200mgのチスレリズマブは、各21日サイクルの1日目に投与される(3週間毎に1回)。
【0303】
68Ga]Ga-DOTA-TATE
NETSPOT(登録商標)は、40mcgのDOTA-TATEを含有する[68Ga]Ga-DOTA-TATEの放射性医薬品を調製するためのキットである。この研究では、[68Ga]Ga-DOTA-TATEを造影剤として使用して、スクリーニング中にSSTRを特徴付ける。
【0304】
ガリウム(68Ga)で放射性標識された後、それは、ソマトスタチン受容体陽性腫瘍の位置を特定するための陽電子放射断層撮影法(PET)による放射性診断薬として機能する。
【0305】
成人の場合、PET画像化のために投与される放射能の推奨量は2MBq/kg体重(0.054mCi/kg)で、最小線量は100MBq(2.7mCi)、最大線量は200MBq(5.4mCi)である。
【0306】
再構成後、[68Ga]Ga-DOTA-TATEを緩徐静脈内注射によって投与する。静脈内投与後40~90分で画像を取得し得る。スクリーニング期間中、全参加者がスキャンされる。
【0307】
化学療法(カルボプラチン及びエトポシド)
カルボプラチンとエトポシドは対象患者集団における標準治療の一部であるため、研究では治験薬とは見なされない。
【0308】
導入期間中のサイクル1からサイクル4までの各21日サイクルの1日目に、参加者はカルボプラチンAUC5とエトポシド100mg/mの静脈内投与を受ける。エトポシド100mg/mIVは、4サイクルのそれぞれの2日目と3日目にも投与される。
【0309】
薬剤は、1日目に逐次投与されなければならない。チスレリズマブと化学療法の投与のタイミングと順序については、表2を参照されたい。
【0310】
【表2】
【0311】
177Lu]Lu-DOTA-TATEが他の治験薬と一緒に投与される日には、[177Lu]Lu-DOTA-TATEは常に最後に投与される。
【0312】
追加試験治療
参加者は、[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与毎に、腎保護のために2.5%Lys-Argアミノ酸輸液を受ける。
【0313】
2.5%Lys-Arg溶液は、250ml/hの輸液速度で静脈内投与しなければならない。輸液は[177Lu]Lu-DOTA-TATE輸液開始の30分前に開始され、合計4時間継続する必要がある(輸液の中断又は輸液速度の低下を要とする有害反応がある場合は、6時間までの延長が許可される)。
【0314】
2.5%Lys-Arg溶液の組成を下に示す。
【0315】
【表3】
【0316】
各[177Lu]Lu-DOTA-TATE投与日には、2.5%Lys-Arg溶液の輸液を開始する前に、現地の処方情報に従って、十分なリードタイムを持って制吐剤の静脈内ボーラスを投与しなければならない。制吐薬の選択は、施設の規則に従い、治験責任医師の裁量に委ねられる(推奨される選択肢:グラニセトロン(3mg)、又はオンダンセトロン(8mg)、又はトロピセトロン(5mg))。ソマトスタチン受容体が下方制御される可能性のために、予防的制吐療法としてのステロイドの使用は、可能であれば避けるべきである。
【0317】
臨床試験のデザインを図1に示す。
図1
【配列表】
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【国際調査報告】