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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】HTSコイルのための巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20241128BHJP
   H01B 12/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01F6/06 110
H01F6/06 140
H01F6/06 150
H01B12/06 ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527187
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022081459
(87)【国際公開番号】W WO2023083956
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2116158.3
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ノグテレン、 ジェロン
(72)【発明者】
【氏名】ブリストウ、 マシュー
【テーマコード(参考)】
5G321
【Fターム(参考)】
5G321AA04
5G321AA05
5G321AA98
5G321BA03
5G321CA04
5G321CA18
5G321CA24
5G321CA27
5G321CA28
5G321CA41
5G321CA42
5G321CA48
5G321CA50
5G321DB41
(57)【要約】
高温超伝導(HTS)界磁コイルである。HTS界磁コイルは、HTS界磁コイルの巻線を形成するように配列された複数のHTSテープと、各巻線を分離する基材とを含む。巻線は、界磁コイルの内周まわりにコイル状の経路を形成し、界磁コイルの内周からの距離は、コイル状の経路に沿った第1方向への移動とともに単調に増加する。径方向最も内側のHTSテープを除く各HTSテープに対し、HTSテープの各端は、HTSテープの径方向内側にある隣接HTSテープの対応端から第1方向にオフセットされ、HTSテープは、隣接HTSテープの長さの少なくとも50%にわたって隣接HTSテープと重なる。各HTSテープの長さは、コイルの外周に、HTSテープの一端と当該HTSテープの径方向外側にある隣接HTSテープの対応端との間のオフセットの大きさをプラスした長さよりも短い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、
前記HTS界磁コイルの巻線を形成するように配列された複数のHTSテープであって、前記巻線は、前記界磁コイルの内周まわりにコイル状経路を形成し、前記界磁コイルの内周からの距離が、前記コイル状経路に沿った第1方向に動くにつれて単調増加する、複数のHTSテープと、
前記巻線のそれぞれを分離する基材と
を含み、
径方向最も内側のHTSテープを除く各HTSテープに対し、
前記HTSテープの各端が、前記HTSテープの径方向内側にある隣接HTSテープの対応端から前記第1方向にオフセットされ、
前記HTSテープは、前記隣接HTSテープと、前記隣接HTSテープの長さの少なくとも50%にわたって重なり、
各HTSテープの長さは、前記コイルの外周に、前記HTSテープの一端と前記HTSテープの径方向外側にある前記隣接HTSテープの対応端との間のオフセットの大きさをプラスした長さよりも短い、HTS界磁コイル。
【請求項2】
各HTSテープが、
はんだペースト、
はんだフラックス、
樹脂、及び
導電材料が含侵された樹脂
のうちの一つによって隣接HTSテープに接合される、請求項1に記載のHTS界磁コイル。
【請求項3】
各HTSテープと前記隣接HTSとの間のオフセットは前記コイルまわりに変化する、請求項1又は2に記載のHTS界磁コイル。
【請求項4】
前記オフセットの変化は、前記オフセットの平均が、前記コイルのすべての巻線に対し、前記コイルの第2円弧においてよりも前記コイルの第1円弧において大きくなるようにされる、請求項3に記載のHTS界磁コイル。
【請求項5】
前記基材は、
絶縁体、
前記巻線を電気的に接続する導電材料、及び
半導体
のうちのいずれか一つ以上を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項6】
前記基材は、中にチャネルを有する導電材料を含み、前記HTSテープは、前記チャネルの複数の側面が前記HTSテープと互いに電気的に接続するように前記チャネルの中に存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項7】
各HTSテープが、前記HTSテープの径方向内側に存在する隣接HTSテープと、前記隣接HTSテープの長さの少なくとも90%、好ましくは前記隣接HTSテープの長さの少なくとも95%にわたって重なる、請求項1から6のいずれか一項に記載のHTS界磁コイル。
【請求項8】
高温超伝導(HTS)界磁コイルを巻線する方法であって、
前記界磁コイルの内周を画定するフォーマを設けることと、
第1のHTSテープを前記フォーマ上に置くことと、
複数のHTSテープを順番に置いて前記HTS磁界コイルの巻線を形成することであって、各HTSテープが以前のHTSテープと、前記以前のHTSテープの長さの少なくとも50%にわたって重なることにより、前記HTSテープの各端が、前記以前のHTSテープの対応端から前記磁界コイルの外周まわりの第1方向にオフセットされることと、
前記複数のHTSテープを置いている間に、前記HTSテープによって形成された巻線を分離するように前記界磁コイルまわりに基材を巻くことと
を含み、
各HTSテープの長さは、前記界磁コイルの外周に、前記HTSテープの一端と次のHTSテープの対応端との間のオフセットの大きさをプラスした長さよりも短い、方法。
【請求項9】
各HTSテープを置いている間に又は置く前に、各HTSテープと前記以前のHTSテープとの間に接合剤を適用することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接合剤は、はんだである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各HTSテープを、前記次のHTSテープを置く前に前記はんだを溶融させるのに十分な温度まで加熱することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記HTS界磁コイルを、前記複数のHTSテープを置いた後に、すべてのHTSテープ間で前記はんだを溶融させるのに十分な温度まで加熱することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記フォーマは前記基材の初期部分を含み、前記第1のHTSテープは、前記基材の前記初期部分に置かれる、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記HTSテープを置いた後に各HTSテープを監視することと、
前記HTSテープが前記HTS界磁コイルに正しく置かれたか否かを決定することと
をさらに含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
各HTSテープの各端と前記隣接HTSテープの対応端との間のオフセットの距離は、前記コイルまわりに変化する、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記オフセットの変化は、前記オフセットの平均が、前記コイルのすべての巻線に対し、前記コイルの第2円弧においてよりも前記コイルの第1円弧において大きくなるようにされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
高温超伝導(HTS)テープをHTS界磁コイル上に置く装置であって、
前記HTSテープを保持するように構成されるスプールと、
前記スプールから前記HTS界磁コイルへとHTSテープを送出するように構成される供給機構と、
前記界磁コイルに置かれたHTSテープを、前記スプール上のHTSテープから分離するように構成されるテープ切断器と、
前記装置を前記界磁コイルの外周まわりの両方向に動かすように構成される推進システムと、
制御器と
を含み、
前記制御器は、
前記推進システムが前記装置を前記外周まわりの第1方向に動かしている間に、前記供給機構にHTSテープを前記HTS界磁コイル上に送出させることと、
特定された長さのHTSテープが送出された後に、前記テープ切断器に前記送出されたHTSテープを、前記スプール上のHTSテープから分離させることと、
前記推進システムに、前記装置を前記外周まわりの第2方向に動かすようにさせることと、
HTSテープを送出するステップと、前記送出されたテープを分離するステップと、前記第2方向に戻るように動くステップとを繰り返すことと
を行うように構成される、装置。
【請求項18】
前記制御器は、HTSテープを送出するステップと、前記送出されたテープを分離するステップと、前記第2方向に戻るように動くステップとを繰り返すことにより、各HTSテープが、以前のHTSテープの開始位置から前記第1方向にオフセットされた開始位置で送出されるようにするように構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記HTSテープが送出されるときに接合剤を前記HTS界磁コイル上に適用するように構成される接合剤送出器をさらに含む、請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記接合剤は、
はんだペースト、
はんだフラックス、
樹脂、及び
導電材料が含侵された樹脂
のうちの一つである、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記接合剤送出器は、前記HTSテープが送出される前に、前記HTSテープの開始位置を前記界磁コイルに接合するように、接合剤のパッチを前記界磁コイルに適用するように構成される、請求項19又は20に記載の装置。
【請求項22】
前記接合剤をアクティブにして前記接合剤に、前記HTSテープの送出後に前記HTSテープを前記界磁コイルに接合させるように構成される接合剤アクティベータをさらに含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記送出されたHTSテープを監視するように構成される一以上のセンサをさらに含む、請求項17から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記センサは、
カメラ、
熱センサ、
導電性センサ、及び
位置センサ
のうちのいずれか一つ以上を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記制御器は、前記センサの出力から、前記HTSテープが前記界磁コイルに正しく適用されたか否かを決定するように構成される、請求項23又は24に記載の装置。
【請求項26】
前記供給機構は、
押出器、
前記HTSテープのスプールを回転させるように構成されるモータ、
前記送出されたHTSテープを前記界磁コイルと整列させるように構成される付勢手段を随意的に含むローラー
のうちの一つ以上を含む、請求項17から25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
高温超伝導(HTS)界磁コイルであって、
複数の巻線を有するらせんを形成するように配列されたHTSケーブルと、
一以上のHTSシャントと
を含み、
各HTSシャントが、
前記HTSケーブルと前記HTSシャントの少なくとも一側面との間で電流が共有され得るように前記コイルの円弧に沿った隣接巻線の各ペア間に配列され、
複数のHTSテープを含み、各HTSテープが前記円弧内に置かれ、
各HTSシャントの径方向最も内側のHTSテープを除く各HTSテープに対し、
前記HTSテープの各端が、前記HTSテープの径方向内側にある隣接HTSテープの対応端から、前記界磁コイルの外周に沿って前記第1方向にオフセットされ、
前記HTSテープが、前記隣接HTSテープと、前記隣接HTSテープの長さの少なくとも50%にわたって重なる、HTS界磁コイル。
【請求項28】
高温超伝導(HTS)界磁コイルを製造する方法であって、
複数の巻線を有する界磁コイルを設けるようにHTSケーブルを巻くことと、
前記HTSケーブルを巻いている間に、前記界磁コイルの円弧に沿って前記コイルの以前の巻線に隣接するようにHTSシャントを、
第1のHTSテープを前記HTSケーブル上に置くことと、
複数のHTSテープを順番に置いて前記HTSシャントを形成することであって、各HTSテープが以前のHTSテープと、前記以前のHTSテープの長さの少なくとも50%にわたって重なることにより、前記HTSテープの各端が、前記以前のHTSテープの対応端から前記磁界コイルの外周まわりの第1方向にオフセットされることと
によって、配置することと、
前記HTSシャントが前記巻線と前記以前の巻線との間に挟まれるように前記HTSケーブルを巻くことによって、電流が前記HTSシャントと前記HTSケーブルとの間で共有されることと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超伝導磁石すなわちHTS磁石の分野に関する。詳しくは、本発明は、HTSコイルのための巻線方法、その巻線方法により得られるコイル、及びその巻線方法を行うように構成された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導材料は典型的に、「高温超伝導体」(HTS)と「低温超伝導体」(LTS)とに分類される。Nb及びNbTiのようなLTS材料は、その超伝導がBCS理論によって記述できる金属又は金属合金である。すべての低温超伝導体は、約30Kを下回る自己場臨界温度(それを上回ると外部磁場がゼロでも超伝導になり得ない温度)を有する。HTS材料の挙動はBCS理論によっては記述されず、かかる材料は約30Kを上回る自己場臨界温度を有し得る(ただし、HTS及びLTS材料を定義するのは、自己場臨界温度ではなく、組成及び超伝導動作の物理的な違いであることに留意すべきである)。最も一般的に使用されるHTSは「銅酸化物超伝導体」である。これは、BSCCO又はReBCO(ここでReは希土類元素であり、一般にY又はGdである)のような銅酸化物(銅酸化物基を含む化合物)をベースにしたセラミックスである。他のHTS材料は、鉄ニクダイド(iron pnictide)(例えばFeAs及びFeSe)及び二ホウ酸マグネシウム(MgB)を含む。
【0003】
ReBCOは典型的に、図1に示される構造を有するテープとして製造される。かかるテープ100は一般に、近似的に100ミクロンの厚さであり、基材101(典型的には電解研磨されたニッケル・モリブデン合金(例えば近似的に50ミクロンの厚さのハステロイ(登録商標)))を含み、その上には、IBAD、マグネトロンスパッタリング、又は他の適切な技法によって、近似的な厚さが0.2ミクロンのバッファスタック102として知られる一連のバッファ層が堆積される。エピタキシャルReBCO・HTS層103(金属酸化物化学蒸着(MOCVD)又は他の適切な技法によって堆積される)が、バッファスタックに重なり、典型的には1ミクロンの厚さである。1~2ミクロンの銀層104が、スパッタリング又は他の適切な技法によってHTS層上に堆積され、銅スタビライザ層105が、電気メッキ又は他の適切な技法によってテープ上に堆積され、多くの場合、テープは完全にカプセル化される。銀層104及び銅スタビライザ層105は、テープ100及び基材101の側面にも堆積されるので、これらの層が、テープ100まわりに連続的に延びることにより、テープ100のいずれかの面からReBCO・HTS層103への電気接続がなされることが許容される。したがって、これらの層104、105は、「クラッディング」とも称される。典型的に、銀クラッディングは、テープの両側面及び両エッジの双方において、ほぼ1~2ミクロンの均一な厚さを有する。HTS層103と銅層105との間に銀層104を設けることにより、銅によるHTS材料の汚染をもたらし得るHTS材料が銅と接触することが防止される。テープ100の両側面上にある銀層104及び銅スタビライザ層105の複数部分は、明確性を目的として図1に示されていない。図1はまた、通常の場合のように、基材101の下に延びる銀層104も示していない。銀層104は、ReBCO層103に対する低抵抗の電気的インターフェースをなし、ReBCO層103まわりの気密保護シールをなす一方、銅層105は、テープへの外部接続を可能にし(例えば、はんだ付けを許容し)、電気的安定化のための平行導電経路を与える。
【0004】
加えて、「剥離された」HTSテープを製造することができる。これは、基材及びバッファスタックを欠くが、典型的には銀の「周囲コーティング」、すなわちHTS層の両側面及び両エッジにおける層、を有する。基材を有するテープは、「基材付き」HTSテープと称される。
【0005】
HTSケーブルは、導電性材料(通常は銅)を介して長さにその沿って接続された一以上のHTSテープを含む。HTSテープは、積層されて(すなわち、HTS層が平行になるように配列されて)よく、又はケーブルの長さに沿って変わり得る他のテープ配列を有してよい。HTSケーブルの注目すべき特別なケースは、単一のHTSテープ、及びHTSペアである。HTSペアは、HTS層が平行となるように配列されたHTSテープの一ペアを含む。基材付きテープが使用される場合、HTSペアは、タイプ0(HTS層が互いに対向する)、タイプ1(一方のテープのHTS層が他方のテープの基材に対向する)、又はタイプ2(基材が互いに対向する)となり得る。2つを超えるテープを含むケーブルは、当該テープの一部又はすべてをHTSペアに配列することができる。積層されたHTSテープは、HTSペアの様々な配列を含んでよく、最も一般的には、タイプ1ペアの積層、又はタイプ0ペア(又は同等にタイプ2ペア)の積層のいずれを含んでよい。HTSケーブルは、基材付きテープと剥離されたテープの混合を含み得る。
【0006】
超伝導磁石は、複数のHTSケーブル(又は、この記載の目的上、単一テープのケーブルとして扱い得る個別のHTSテープ)を、HTSケーブルを巻き取ること、又はHTSケーブルから作られたコイルのセクションを設けてこれらを一緒に結合することのいずれかにより、コイルに配列することによって形成される。HTSコイルは、以下の3つの広範なクラスに分類される。
【0007】
・絶縁され、巻線間に電気絶縁材料を有する(その結果、電流はHTSケーブルを通る「らせん経路」にのみ流れ得る)。
・非絶縁であり、巻線は、ケーブルに沿ってだけでなく、径方向に電気的に接続されている。
・部分的に絶縁され、巻線は、(例えば銅と比較して)高抵抗の材料を使用すること、又はコイル間に断続的な絶縁を設けることのいずれかにより、制御された抵抗に径方向に接続されている。
【0008】
非絶縁のコイルはまた、部分的に絶縁されたコイルの低抵抗の場合とみなされ得る。
【0009】
HTSコイルは典型的に、図2に示すように、張力を及ぼすための磁気ブレーキ202を備えたHTSケーブル210のスプール201を設けることによって製造される。その後、スプールをコイルまわりに(コイルの形状を画定するフォーマ又は支持構造物203から開始して)動かすことによって、又はスプールを静止させたままコイルをその軸まわりに回転させることによって、ケーブルが、一巻きごとにコイルに巻かれる。絶縁体、部分的絶縁層(すなわち、中に電流経路を有する絶縁体、又は典型的な絶縁体と伝導体との中間の抵抗を有する材料)、クエンチ検出構成コンポーネント等、の追加層を、HTSケーブルとともに巻いてよい。
【0010】
これは、すべてのコイル形状及びケーブル構造にとって適切なわけではない。特に、積層テープケーブル(すべての点においてコイルへと接線方向に延びるいくつかの平行なHTSテープを含む)は、巻きの外側でテープに重度の歪みがもたらされるので、鋭い巻きを有するコイルにこの態様で巻くことができない。かかるコイルに対し、図3に示す代替の巻線方法を使用してよく、ここでは、積層テープケーブルが、HTSテープの複数のスプール301a~eを設けることによってその場で組み立てられ、HTSテープは、いくつかのスプールからコイル302へと同時に巻かれる。HTSテープは、巻かれるときにフラックスでコーティングしてよく、コイルは、後に、HTSテープを接合して一緒にするべく、はんだを含浸させてよく、又はHTSテープが、巻かれるときにはんだ付けされて一緒にされてよい。後者の方は一般的に、大きなコイルに対して好ましい。HTSテープの劣化というリスクになる高温でのコイル全体保持が長時間になることを避けるためである。従前のケースと同様に、各ケーブルを形成するHTSテープの層間に他のコンポーネントを巻いてよい。
【0011】
図3におけるHTSテープの各スプールがコイル全体に対して十分なテープを保持し得る十分な長さのHTSテープを取得することは一般に困難である。しかしながら、HTSテープは、それぞれが尽きたときに、又は所定のパターンで、交換してよい。その結果、図4に模式的に示すテープ端からテープ端への一定パターンの「突合せ」接合部が得られる(コイルが「まっすぐになり」、長さが有意に短縮される)。ここで、HTSテープの各層は、HTSテープが終わる突合せ接合部401を含み、他層のHTSテープ402が、この突合せ接合部に重なる結果、典型的なレンガ積みと同様の全体的パターンが得られる。上述のように、図4における長さは有意に短くなっている。通常、各HTSテープの長さは数メートルから数百メートルのオーダーであり、厚さは100分の1から10分の1ミリメートルのオーダーである。
【0012】
個別のテープを使用する巻線方法の一つの欠点は、はんだ付けが一度に行われることである。コイルを高温に保持しなければならない時間は、コイルのサイズと巻線断面積によって増加する。これは、時間の経過に伴う温度の積分に関する認識された制限を超えた場合、HTSの臨界電流の劣化という問題につながり得る。また、はんだ付けのエラーを検出して修復することが困難になる。加えて、コイルが大電流を搬送し、又は多数のテープを必要とする極端な環境で動作することに対し、個別のテープスプールの数が巻線機構を構築するときの課題となる。
【0013】
これらの巻線方法の双方により、コイルの、すなわち、実質的に均一なコイルを生産するときに(一般に、使用時のコイルにおける不均一な磁場、温度又は歪みを補償するべく)コイルまわりで変化するゼロ磁場臨界電流を有するHTSコイルの、「グレード付け」を導入することが困難となる。これは、所定の円弧に沿って追加のHTSケーブル又はテープを含めることによって、ある程度軽減され得るが、これには追加のツールが要求される。
【0014】
加えて、上記巻線方法は、複雑なコイル形状、例えば、単一平面内において凸形状ではないHTSコイル、に実装することが困難となる。非凸形状に対しては、任意の凹状セクションに特別な措置を講じてHTSテープがそれらのセクションにわたって「ブリッジ形成」することを防止しなければならない。また、非平面コイルの場合、HTSスプール(又はコイル自体)の動きが有意に複雑となり得る。
【0015】
最後に、双方の方法とも、可能な限り少ないセクションのテープ又はケーブルからコイルが巻かれるように、長さが長いHTSテープを有することに依存する。一般に、HTSテープが長ければ長いほど、同等の全長の短いHTSテープよりも高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/213611号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/216348号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/011491号
【特許文献4】国際公開第2018/078326号
【特許文献5】国際公開第2019/150095号
【発明の概要】
【0017】
[新たな請求項が確定した時点で完了する予定]
第1側面によれば、高温超伝導(HTS)界磁コイルが与えられる。HTS界磁コイルは、HTS界磁コイルの巻線を形成するように配列された複数のHTSテープと、各巻線を分離する基材とを含む。巻線は、界磁コイルの内周まわりにコイル状の経路を形成し、界磁コイルの内周からの距離は、コイル状の経路に沿った第1方向への移動とともに単調に増加する。径方向に最も内側のHTSテープを除く各HTSテープに対し、HTSテープの各端は、前記HTSテープの径方向内側にある隣接HTSテープの対応端から第1方向にオフセットされ、HTSテープは、隣接HTSテープの長さの少なくとも50%にわたって隣接HTSテープと重なる。各HTSテープの長さは、コイルの外周に、HTSテープの一端と当該HTSテープの径方向外側にある隣接HTSテープの対応端との間のオフセットの大きさをプラスした長さよりも短い。
【0018】
第2側面によれば、高温超伝導(HTS)界磁コイルを巻く方法が与えられる。磁界コイルの内周を画定するフォーマが設けられる。フォーマ上に第1のHTSテープが置かれる。複数のHTSテープが順番に置かれてHTS磁界コイルの巻線を形成する。各HTSテープが以前のHTSテープと、当該以前のHTSテープの長さの少なくとも50%にわたって重なることにより、当該HTSテープの各端が、当該以前のHTSテープの対応端から磁界コイルの外周まわりの第1方向にオフセットされる。複数のHTSテープを置いている間、基材が、HTSテープによって形成された巻線を分離するように磁界コイルまわりに巻かれる。各HTSテープの長さは、磁界コイルの外周に、HTSテープの一端と次のHTSテープの対応端との間のオフセットの大きさをプラスした長さよりも短い。
【0019】
第3側面によれば、高温超伝導(HTS)テープをHTS磁界コイル上に置く装置が与えられる。装置は、スプールと、供給機構と、テープ切断器と、推進システムと、制御器とを含む。スプールは、HTSテープを保持するように構成される。供給機構は、HTSテープをスプールからHTS磁界コイル上に送出するように構成される。テープ切断器は、磁界コイル上に置かれたHTSテープを、スプール上のHTSテープから分離するように構成される。推進システムは、装置をHTS磁界コイルの外周まわりの両方向に動かすように構成される。制御装置は、
推進システムが装置を当該外周まわりの第1方向に動かしている間に、供給機構にHTSテープをHTS界磁コイル上に送出させることと、
特定された長さのHTSテープが送出された後に、テープ切断器に当該送出されたHTSテープを、スプール上のHTSテープから分離させることと、
推進システムに、装置を当該外周まわりの第2方向に動かすようにさせることと、
HTSテープを送出するステップと、当該送出されたテープを分離するステップと、第2方向に戻るように動くステップとを繰り返すことにより、各HTSテープが、以前のHTSテープの開始位置から第1方向にオフセットされた開始位置で送出されるようにすることとを行うように構成される。
【0020】
さらなる実施形態は、請求項2以下に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面は、特定の概念の説明のみを目的として提示され、特定の装置、方法、又は方法の結果の正確な表現として解釈されるべきではない。別段の指示がない限り、図面における要素は縮尺どおりに提示されているわけではなく、提示された概念の理解を目的として必要な当該要素のみが示される(例えば支持構造物は一般に省略される)。
【0022】
図1】高温超伝導(HTS)テープの図である。
図2】周知の巻線方法の図である。
図3】代替の周知の巻線方法の図である。
図4】周知のHTSケーブルの簡略化された断面である。
図5A-5E】図5Aから図5Eは、HTSコイル上にHTSテープを置く例示的な方法を示す。
図6】可変オフセットで置かれたHTSコイルを示す。
図7】特定の基材オプションを示す、さらなる例示的なHTSコイルの巻線の断面である。
図8】HTSコイル上にHTSテープを置く装置の模式的な図である。
図9】HTSコイルを巻く装置の模式的な図である。
図10】HTSコイル上にHTSテープを置くさらなる例示的な方法の模式的な図である。
図11図10に従って置かれたHTSコイルの巻線の模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
背景技術に記載された巻線プロセスを使用するよりもむしろ、複数の比較的短い長さのHTSテープを使用する巻線プロセスがここに記載される。これらのHTSテープは、重なり合う「屋根板状」パターンで下方に置かれる。
【0024】
図5Aから図5Eは、HTSテープをコイル上に置く簡略化された方法の模式的な図である。コイルは、説明の便宜上、平坦な線として表されるが、同じ原理が巻線コイルにも当てはまることが理解される。
【0025】
図5Aにおいて、第1のHTSテープ501が基材500上に置かれる。基材は、ひとたび構築されたHTSコイルの巻線を分離するので、最終的なコイル設計に必要とされるような導電性、絶縁性、又は部分的な絶縁性を有してよく、また、クエンチ検出コンポーネント、センサ等のような追加コンポーネントを含んでもよい。基材は、コイルを巻いている間に変更してよく、例えば、初回の巻線に対して基材は、コイルのフォーマ又は支持構造物であってよく、その後、第2巻線を巻くことが開始される前に、巻線を分離するための適切な特性を有する基材に変更してよい。
【0026】
図5Bにおいて、第2のHTSテープ502が第1のHTSテープ上に、HTSテープ502の長さの有意な部分と重なるように置かれ、第1のHTSテープの始点と第2のHTSテープの始点との間が距離S、及び第1のHTSテープの終点と第2のHTSテープの終点との間が距離Eとなる。距離S及びEは、実質的に等しくてよく(すなわち、第1のHTSテープと第2のHTSテープとが同じ長さであってよく)、異なってもよい(すなわち、これらのHTSテープの長さが異なってもよい)が、少なくともこの例において、第2のHTSテープの始点は、第1のHTSテープの始点よりもコイルまわりに遠くに存在し、第2のHTSテープの終点は、第2のHTSテープの終点よりもコイルまわりに遠くに存在する。なお、HTSテープが、この図と図5A及び図5Cとにおいて平坦かつ水平に示されているが、これは単に描画の便宜のためであり、領域E1の一部が基材上に存在するようにHTSテープを置いてよい。
【0027】
図5Cにおいて、第2のHTSテープが第1のHTSテープ上に置かれるのと実質的に同じ態様で、第3のHTSテープ503が第2のHTSテープ上に置かれる。すなわち、第3のHTSテープが、第2のHTSテープの有意な部分と重なり、第2のHTSテープ及び第3のHTSテープの始点と第2のHTSテープ及び第3のHTSテープの終点との間にそれぞれの距離S及びEを有する。
【0028】
図5Dは、複数のHTSテープ510が下方に置かれた後の結果を示す。各場合において、「n番目」のHTSテープが、「n-1番目」のHTSテープの上に置かれ、その有意な部分が、n-1番目のHTSテープ511(すなわち以前に置かれたHTSテープ)の始点とn番目のHTSテープ512(すなわちごく最近置かれたHTSテープ)との間の距離Sn-1、及びn-1番目のHTSテープの終点とn番目のHTSテープとの間の距離En-1を有して重なる。その結果、HTSテープの「屋根板」パターンが得られ、各テープは、以前に巻かれたいくつかのテープと重なり、以後に巻かれたいくつかのテープと重なる。
【0029】
図5Eにおいて、基材500は、以前に置かれたHTSテープ510の上に、最大でも次に置かれるHTSテープの始点まで重ねられる(なお、この図はHTSコイルの直線状表現であるため、HTSテープの上に重なるように示される基材上の点Xは、図のさらに下方にあるHTSテープの下に置かれる基材上の点Yと同じとなり得る)。追加の基材及びさらなるHTSテープを連続的に下方に置くことにより、HTSコイルは、任意の所望巻き数まで構築され得る。
【0030】
図5に示す巻線方法の結果が、巻線を形成するように配列された複数のHTSテープと、各巻線を分離する基材とを含むHTS界磁コイルとなる。巻線が、界磁コイルの内周まわりにコイル状の経路を形成し、その内周からの距離が、コイル状の経路に沿った第1方向に動くにつれて単調に増加する。最も内側のテープを除く各HTSテープについて、HTSテープの各端が、HTSテープの径方向内側にある隣接HTSテープの対応端から第1方向にオフセットされ、HTSテープは、その長さの少なくとも50%だけ隣接HTSテープと重なる。50%の重なりは、巻線の任意の所与断面において2つのテープのみを有するコイルを与えるので、有意な電流の要件を有するコイルにおいて、その重なりは、少なくとも90%(巻線断面当たり10テープ)又は少なくとも95%(巻線断面当たり20テープ)としてよい。各HTSテープの長さは、コイルの外周に、次のテープ(すなわち径方向外側にある隣接テープ)に対するオフセットの大きさをプラスした長さよりも短い。これは、基材がまだ下方に置かれていない位置に次のテープを配置することを可能にする最大長さとなる。高度に重なるコイル、すなわち重なりが短くて基材の最小曲げ半径のオーダーであるコイル、にとっては特に、最大長さはコイルの外周とみなし得る。
【0031】
図6は、HTSテープ610が互いに重なり合う距離S及びEを変化させることによって、コイルのグレード付けがどのように達成されるかを示す。領域601において、オフセット距離は、コイルの断面に3つのHTSテープが存在するようにされる。領域602において、オフセット距離は増加し、所与の断面に2つのHTSテープのみを有するようにコイルがグレードダウンする。領域602において、オフセット距離が減少し、所定の断面に5つのHTSテープを有するようにコイルがグレードアップする。一般に、これらの距離が大きいコイルのエリアにおいて、ケーブルの所与断面内のHTSテープの数が減少し、これらの距離が小さい場合は、ケーブルの所与断面内のHTSテープの数が増加する。所与温度におけるゼロ磁場臨界電流は、巻線の断面におけるHTS導体の量に依存するので、これによって、コイルのグレード付けがもたらされる。一般に、オフセット距離は、コイルまわりで変化してよく、特定例において、平均オフセットが、コイルのすべての巻線に対し、コイルの第1円弧(その円弧において電流密度を減少させる)において、コイルの第2円弧(その円弧において電流密度を増加させる)においてよりも大きくなるように(すなわち、すべての巻線に対し所与の円弧のグレード付けが同様となるように)変化してよい。
【0032】
最終的なコイルの必要な特性に応じて、基材は、絶縁体、巻線を接続する導電材料、半導体、又はこれらの任意の組み合わせ(例えば、事前決定された抵抗で巻線を径方向に接続するために貫通する導電経路を有する絶縁ストリップ)としてよい。基材は、中にチャネルを有する導電材料を含んでよく、HTSテープは、そのチャネルの中に置かれてよい。この場合、基材は付加的に、巻線を分離するべく導電材料の外側に絶縁層を含んでよい。これは、貫通する導電路を有していても有していなくてもよい。
【0033】
コイルを流れる電流は、HTSテープ間を各テープ端で移動する必要がある。テープ間の実質的な重なりは、これによって導入される抵抗が非常に低いことを意味し、ジュール損失のわずかな増加は、当業界で周知の方法によるHTSコイルの付加的な冷却によって補償することができる。これらのテープは、導電性固定化媒体(例えば、はんだ、若しくは導電エポキシ樹脂のような導電性樹脂、又は導電材料を含浸させた樹脂)によって固定され、テープ間の電流移動の大部分は、この媒体の中で、及び個別のテープ上の導電性の(例えば銅の)クラッディングの中で、起こる。抵抗のさらなる改善は、すべてのテープの側面をブリッジする追加の導電経路を設けることによって得ることができる。これは、テープ積層の「底部」からテープ積層の「頂部」まで流れる電流が、中間の各HTSテープを通過するのではなく、その導電経路を通過するだけでよいことを意味する。この導電経路は、別個に接合された導電要素によって設けられてよく、又は、コイルの巻線の端部断面図である図7に示されるように、基材が、HTSテープ702が置かれるU字形の銅チャネル701を含んでよい。ここで、U字形の側面が導電経路を形成する。基材は、巻線を分離し及び/又はU字形チャネルの外側エッジを絶縁するべく、付加要素703、704を含んでよい。
【0034】
HTSテープは、巻線の後に、はんだ又は他の固定化媒体(例えば導電性樹脂)をコイルに含浸させることによって一定位置に固定されてよい。代替的に、はんだ又は他の固定化媒体を、HTSテープとともに同時巻きにして溶解し、硬化し、又は他の方法で巻線時にテープを固定するように誘導してよい。後者のプロセスによれば、HTS材料が高温で費やす時間が低減され、さらに、各HTSテープの接合部が巻線時に欠陥を監視されるようにされ、巻線プロセス時に誤りが検出されて潜在的に(例えば、はんだのリフローによって、又は接合を反転させてテープの当該セクションを巻き戻すことによって)修正されるようになる。
【0035】
図8は、上記巻線方法を目的としてHTSテープを置く例示的な装置を示す。装置は、(基板850及び既に置かれたHTSテープ851を含む)コイルの経路に追従し、コイルとの整列を維持するガイド801を有する。装置は、HTSテープ803を収容するHTSテープスプール802を有する。HTSテープ803は、装置が第1方向(図において右、以下「コイルの上方」とするが、これは相対的な方向としてのみ認識されるべきである)に移動するときにコイル上に置かれ、供給機構によってスプール802から送り出される。供給機構は、HTSテープスプールを回転させるべく構成された押出器804及び/又はモータと、既に置かれたコイルのテープ(又は基材)にHTSテープを押し付けるようにばね荷重がかけられ又は同様に付勢され得るローラー805又は他の同様の手段とを含む。接合剤が、例えば、はんだペースト、エポキシ樹脂のような樹脂、導電性エポキシ、又ははんだフラックスが、ローラーからコイルの上方に配置されたノズル又は他の送出器806を介して適用される。これにより、堆積された接合剤が最終的にHTSテープ803と既に置かれたHTSテープ851との間に到達する。接合剤アクティベータ807が、(必要に応じて)ローラーからコイルの下方に存在し、接合剤のために必要な加熱、硬化、又は他のアクティベーションを与える。例えば、接合剤アクティベータは、はんだを溶融するのに十分な温度まで加熱する加熱器であってよい。ローラーからコイルの下方に、例えば接合剤アクティベータの両側に、複数のセンサ808を使用して、HTSテープ803と既に置かれたHTSテープ851との間の接合が許容可能か否かを測定することができる。これらのセンサは、カメラ、電気センサ、熱センサ(例えばサーマルカメラ又は温度プローブ)、又は他の任意の適切なセンサを含み得る。接合が許容可能か否かの決定は、事前に較正された値、既知の良好サンプル及び既知の不良サンプルに基づく機械学習を介した決定、又は、センサ出力若しくはそのサンプルの人間による監視、に基づいてよい。
【0036】
装置は、ローラーからコイルの上方に位置するテープ切断器809、例えばナイフ、を含む。テープ切断器809は、装置が所与のテープが終了すべき位置に到達すると、テープを切断する。
【0037】
テープを置いている間、装置は、第1端から開始する各HTSテープを置き、テープの所望の終点に到達するまで、コイルの上方に移動してテープを置き続ける。その終点でテープが切断され、装置は、HTSテープが以前に置かれたHTSテープに接合されるまで、最後までずっと追加のテープを供給することなく移動し続ける。装置はその後、コイルを下って次のHTSテープの始点まで戻り、このプロセスを繰り返す。このようにして、装置は、図5Aから図5Eを参照して記載されたように、コイルに沿っていくつかのHTSテープを置くことができる。
【0038】
位置センサ810を使用して、HTSテープスプール801から送出されるテープの量を監視し、次のHTSテープをコイル上に送出するのに十分なテープが残っているか否かを決定してよい。さらなる位置センサ811を使用して、装置がコイル上のどこに位置しているかを決定し、所望のコイルに対して事前に設定された載置パターンに従ってHTSテープの載置をいつ開始し、いつ終了するかを決定してよい。
【0039】
事実上、装置は、コイルの「上方」に移動しているときに置かれているテープとともに、前後に移動するローラーコースター上のカートのようにコイルに「乗車」し、その後テープが切断され、その後、装置は、次のテープの始点までコイルの「下方」に移動する。装置は、電動ホイールのような推進システムを含んでよく、又は、複数のガイドがコイル若しくはその支持構造物を交互に把持させて装置に対し、装置がコイルに沿って「這う」ことができるように動かしてよい。代替的に、推進システムは、例えば、装置をコイルまわりで適切に動かすように構成されたガントリのような、主要装置の外部にあってよい。
【0040】
装置の動作は、制御器によって制御される。制御器は、装置と一体であってもよいし、装置に適切な入力を送信する遠隔デバイスであってもよい。制御器は、装置の様々なコンポーネントに、上述したテープ載置方法を行わせる。いくつかの実装例において、制御器は、例えば分散コンピューティングアーキテクチャとして、又は中央制御器によってコーディネートされ得る個別部品のための個別の電気的若しくは機械的制御システムとして、いくつかのコンポーネントを介して分散されてよい。
【0041】
HTSテープの始点がコイルに適切に接合されることを確実にするために、装置は、HTSテープの開始位置に接合剤のパッチを堆積するように動き、その後、HTSテープを当該接合剤のパッチ上に送出して、テープの送出を続ける前に、初期の強い接合を形成してよい。
【0042】
上に示した装置は、図5A図5Eの例に従ってHTSテープを置くが、基材自体を置くわけではない。図9に示されるように、これは、コイル902まわりに連続的に、例えばHTSテープ載置装置の平均速度で、移動する別個のスプール901によって行われてよい。これは、HTSテープの長さの終点(ここでは以前のテープと重ならない)に置かれる予定のHTSテープのための基材910が常に存在するようにするためであり、さらには、基材が、まだ置かれていないテープの開始位置の頂部に置かれないようにするためでもある。図8の装置903はその後、このスプールに追従し、個別のHTSテープを置くように前後に移動する。
【0043】
代替の「ハイブリッド」巻線方法が図10に模式的に示される。この方法は、図2又は図3に示される従来型巻線方法の特徴と、図5A図5Eに示される新規な巻線方法の特徴とを組み合わせており、例えば、図5A図5Eの巻線方法によって導入される追加の抵抗が許容できない状況において有利となり得る。ハイブリッド巻線方法において、コイルは初期に、図2又は図3に示される従来型方法に従って、又はHTSケーブルを巻線して界磁コイルを形成する任意の他の連続巻線方法に従って、巻線される。この巻線方法の間(HTSケーブルの巻線と同時、又はHTSケーブルの巻線の休止中のいずれか)、図5A図5Eに示される巻線方法を使用して、界磁コイルの円弧に沿って、HTSケーブルと電気的に接触する複数層のテープを下方に置く。これら複数層のテープは、HTSケーブルのための「シャント」として作用する。「シャント」は、ケーブルと電気的に接触しており、HTSケーブルと電流を共有し得るので、界磁コイルの円弧に沿って追加の電流経路(ひいては追加の電流搬送容量)が得られる。
【0044】
シャントは、欧州特許第3747034号明細書に記載されているものと同様に機能するが、HTSシャントは、単一のHTSテープ又は従来型HTSテープ積層の代わりに、上述したテープが重なり合う配列を有する点が異なる。すなわち、シャントの各HTSテープの始点及び終点が、コイルの径方向内側のHTSテープの始点及び終点からコイルまわりの一方向にオフセットされている点が異なる。図5の方法を完全に使用して巻かれたコイルについて上述したように、HTSシャントのテープにも同様の修正を加えてよい。例えば、HTSシャントのHTSテープの間隔を変化させて界磁コイルの任意の所与断面におけるHTSの量を制御してよく、若しくはHTSシャントの側面に追加の導電経路を設けてよく、又は上述した任意の他の変更を加えてよい。
【0045】
図10の例において、HTSケーブル1010のスプール1001を使用して、図2のスプール201及びHTSケーブル210と類似の態様で主要巻線1011が与えられる。図8及び関連する記載に係る装置1003が、主要巻線に沿って移動し、選択された領域1021において(図示の例ではトロイダル磁場コイルの中央コラムセクションにおいて)追加のHTSテープ1020を下方に置いてHTSシャントを形成する。装置1003は、コイルまわりで主要巻線スプール201に追従してよく(すなわち、領域1021の外側でコイルまわりに移動するが、追加のテープを置くことがない)、又はケーブルが主要巻線スプールから巻かれているときにコイルから取り外され、追加のHTSテープのセクションが下方に置かれるたびに再導入されてもよい。複数のHTSシャントをコイルまわりに追加してよく、HTSシャントを主要巻線の任意数の巻線に追加してよい。
【0046】
図11は、コイルを巻いた後の、追加テープを有する領域における単一の巻線の拡大図を模式的に示す。巻線は、界磁コイル1101を形成するHTSケーブルを含む(その断面のみが示される)。円弧1110において、HTSテープ1111を含むHTSシャントがHTSケーブル上に設けられる。4つのHTSテープのみが図に示されるが、任意数のHTSテープを使用してHTSシャントを形成してもよい。ただし、径方向内側のHTSテープ以外の各HTSテープに対し、HTSテープの各端が、前記HTSテープの径方向内側にある隣接HTSテープの対応端から第1方向にオフセットしていることが条件となる。
【0047】
主要HTSコイルとHTSシャントとの間には若干の抵抗が存在するが、電流はシャントの全長に沿ってシャントとの間を行き来できるため、この抵抗は非常に小さくなる。これは、コイルが絶縁なしで設けられて、電流がどちらの側からもシャントに入ることができる場合にも当てはまる。ただし、基材を有するHTSテープからHTSシャントが作られる場合、HTSシャントの基材側の抵抗はHTS側の抵抗よりも高くなる。このように、コイルにおける電流が、シャントを備える円弧において主要HTSケーブル単独の臨界電流では輸送電流を搬送するのに十分でないような場合、過剰な電流は容易にHTSシャントへと分流される。グレード付き領域において主要HTSケーブルの臨界電流よりも低い電流では、電流の大部分は主に主要HTSケーブルに流れる。HTSケーブル電流が、高い磁場(又は高い温度、若しくはReBCO HTS層のc軸にあまり良好には整列していない磁場角度)を受けるケーブルの部分の臨界電流に近づくと、HTSは、主要ケーブルとシャントとの間の小さな抵抗を介した過剰な電流を駆動する電圧を生成する。HTSの1メートル当たりに生成される電圧(EHTS)は
【数1】
によって与えられる。ここで、E=1μV/cmは、定義された臨界電流基準であり、Iは、この基準におけるテープの臨界電流であり、nは、超伝導から常伝導への遷移の鋭さをモデル化する実験パラメータであり、ReBCOに対してnは典型的に20~50の範囲にある。nの値にもよるが、この電圧は、α=I/Iの値が約0.8未満の場合、無視できるほど小さくなる。局所臨界電流を上回る過剰電流はシャントに分流される。これは最小限の放熱で起こるので、生成される少量の熱はコイル冷却システムの設計によって対応される。シャントの数、及び各シャントにおけるテープの数は、コイルのすべての部分において比αを近似的に同じに維持するのに必要なHTSの量に基づいて選択され得る。主要HTSケーブルは、HTSシャントが電気的に接続されることを許容する任意の構造を有してよく、例えば積層テープケーブルであってよい。
【0048】
シャントがコイルの円弧に沿って設けられる場合、これらのシャントは、HTSケーブルのすべての巻線に均等に設けられてよく(例えば、HTSケーブルの各巻線が、2つのテープを含むHTSシャントを有してよく)、又はシャントの分布がコイル断面にわたって変化してよい(例えば、TFコイルの中心柱の外側に向かうすべての巻線にシャントを設けてよく、他のすべての巻線にのみのシャント、及び/又は磁場が低くなるにつれてTFコイルの中心柱の内側に向かう巻線に対してHTSテープが少なくなるシャント、を設けてよい)。
【0049】
上記の例は、図5A図5Eに示される方法と同様の方法によってHTSシャントが下方に置かれる状況を考慮したが、図8の装置を使用して、さらに典型的な積層テープケーブルとしてHTSシャントを下方に置いてもよい。例えば、各テープが、以前に下方に置かれたテープの一部分に重なる(すなわち、以前に下方に置かれたテープに対して各端がテープの中心に向かってオフセットされた状態で、各テープが下方に置かれる)場合、若しくは各テープが、以前に下方に置かれたテープに完全に重なる場合、又は、HTSテープを順次下方に置くことによって形成され得る任意の他の配列である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】