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特表2024-544878酸化炭素電解槽のためのカソード触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】酸化炭素電解槽のためのカソード触媒
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/081 20210101AFI20241128BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20241128BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20241128BHJP
   C25B 11/069 20210101ALI20241128BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241128BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241128BHJP
   B01J 31/06 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C25B11/081
C25B11/054
C25B11/065
C25B11/069
C25B1/23
C25B9/00 G
B01J31/06 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527253
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022079570
(87)【国際公開番号】W WO2023086837
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/263,810
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520271481
【氏名又は名称】トゥエルブ ベネフィット コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フオ、ジヤン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チェンティアン
(72)【発明者】
【氏名】フア、ケネス エックス.
(72)【発明者】
【氏名】レイズ、アンジェリカ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン、レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】タオ、ジシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ユエシェン
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA22A
4G169BB02A
4G169BC01A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC64A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BD03A
4G169CB81
4G169DA05
4G169EA08
4G169EC28
4G169FC02
4K011AA31
4K011BA07
4K011DA10
4K021AC02
4K021AC05
4K021AC30
4K021DB18
(57)【要約】
本開示の態様は、導電性担持粒子を含む触媒組成物;及び導電性担持粒子に付着した金属触媒粒子に関連する。触媒組成物は、酸化炭素還元電解槽のカソードにおいて使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性担持粒子;及び
前記導電性担持粒子に付着している金属触媒粒子、ここで前記金属触媒粒子は約2~100nmの平均直径を有する、
を備える触媒組成物。
【請求項2】
前記金属触媒粒子は、最大で約200%の粒子サイズの分散度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記金属触媒粒子は、最大で約15%の粒子サイズ分散度を有する、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記導電性担持粒子に付着している前記金属触媒粒子の少なくとも一部は、付着しているそれぞれの前記導電性担持粒子上に最近接金属触媒粒子を有し、前記最近接金属触媒粒子の間の間隔は、約50%又はより小さい分散度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記金属触媒粒子は、触媒組成物における充填量が質量分率で約10~80%である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
導電性粒子の少なくとも約80%が前記金属触媒粒子に付着している、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記金属触媒粒子の少なくとも約95%が前記導電性担持粒子に付着している、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記金属触媒粒子の少なくとも約50%は単結晶粒子である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項9】
金属触媒粒子の少なくとも約85%は、少なくとも約90%の真球度を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記導電性担持粒子は、約10~100nmの平均直径を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記導電性担持粒子は、約10%~80%のポロシティを有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記導電性担持粒子は、約20~2000cm/100gの表面積対体積比を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記金属触媒粒子は、金、白金、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム及びイリジウムから成る群から選択される金属の原子を少なくとも約90%含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記金属触媒粒子は、金である金属を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記金属触媒粒子は、約200ppm又はより少ないホウ素又は1又は複数のアルカリ金属を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記金属触媒粒子は、約20ppm又はより少ない任意の遷移金属を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記導電性担持粒子は炭素を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記導電性担持粒子はアモルファス炭素を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記導電性担持粒子はカーボンブラックを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項20】
アイオノマー;及び
請求項1から19のいずれか一項に記載の触媒組成物
を備えるカソード触媒層。
【請求項21】
前記アイオノマーはアニオン伝導性ポリマーである、請求項20に記載のカソード触媒層。
【請求項22】
請求項20に記載の触媒層を含む膜電極アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
参照による援用
PCTリクエストフォームは、本願の一部分として本明細書と同時に提出される。同時に提出されたPCTリクエストフォームにおいて特定されているように本願が利益又は優先権を主張する各出願は、参照により、その全体が全ての目的のために本明細書に援用される。
政府のサポートの声明
【0002】
本発明は、米国エネルギー省アワード第DE-AC36-08GO28308の下で政府のサポートにより作成された。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
電解酸化炭素還元リアクタは、酸化炭素反応物の還元を促進するために触媒を用いる必要がある。触媒の特性は、電解リアクタの動作電圧、ファラデー収率、及び一酸化炭素(CO)及び/又は他の炭素含有生成物(CCP)と水素とを含むカソードで生成される生成物の混合に強い影響を与え得る。
【0004】
本明細書に含まれる背景及び文脈上の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することのみを目的として提供されている。本開示の多くは、発明者の研究を提示し、そのような研究が背景セクションに記載されているという理由、又は本明細書の他の箇所で文脈として提示されているという理由だけで、そのような研究が先行技術として認められることを意味しない。
【発明の概要】
【0005】
詳細な説明において以下で更に記載される、単純化された形態の、選択された概念を紹介するために、本概要が提供される。この概要は、特許請求される主題の主要な特徴又は必須の特徴を識別することを意図しておらず、また特許請求される主題の範囲を決定する際の補助として使用されることも意図していない。
【0006】
本開示の態様は、(a)導電性担持粒子、及び、(b)導電性担持粒子に付着している金属触媒粒子を含む触媒組成物に関連する。金属触媒粒子は、約2~100nm、又は約2~50nm、又は約2~10nmの平均直径を有し得る。特定の実施形態において、金属触媒粒子は、最大約200%、又は最大約15%の粒子サイズの分散度を有する。特定の実施形態において、金属触媒粒子は、質量分率約20~40%の触媒組成物の充填量を有する。
【0007】
特定の実施形態において、伝導性担持粒子に付着している金属触媒粒子の少なくとも一部は、それらが付着しているそれぞれの伝導性担持粒子上で最近接金属触媒粒子を有し、このような金属触媒粒子は、最近接金属触媒粒子間の間隔によって特徴付けられ得、その間隔は約50%以下の分散度によって特徴付けられ得る。
【0008】
特定の実施形態において、導電性粒子の少なくとも約80%が金属触媒粒子に付着している。特定の実施形態において、金属触媒粒子の少なくとも約95%が導電性担持粒子に付着している。
【0009】
特定の実施形態において、金属触媒粒子の少なくとも約90%は単結晶粒子である。特定の実施形態において、組成物における金属触媒粒子の少なくとも約85%は、少なくとも約90%の真球度を有する。
【0010】
特定の実施形態において、導電性担持粒子は、約10~100nm、約20~100nm、又は約20~50nmの平均直径を有する。特定の実施形態において、導電性担持粒子は、約25%~75%のポロシティを有する。特定の実施形態において、導電性担持粒子は、約25~225cm/100gの表面積対体積比を有する。
【0011】
特定の実施形態において、金属触媒粒子は、金、白金、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム及びイリジウムから成る群から選択される金属の原子を少なくとも約90%含む。特定の実施形態において、金属触媒粒子は金の金属を含む。
【0012】
特定の実施形態において、金属触媒粒子は、約200ppm又はより少ないホウ素又は1又は複数のアルカリ金属を含む。特定の実施形態において、金属触媒粒子は、約20ppm又はより少ない任意の遷移金属を含む。
【0013】
特定の実施形態において、導電性担持粒子は炭素を含む。特定の実施形態において、導電性担持粒子はアモルファス炭素を含む。特定の実施形態において、導電性担持粒子はカーボンブラックを含む。
【0014】
本開示のいくつかの態様は、(a)アイオノマー;及び(b)上で識別された特性の任意の1又は複数を有するものなどの触媒組成物を含むカソード触媒層に関連する。いくつかの実施形態において、アイオノマーはアニオン伝導性ポリマーである。
【0015】
本開示のいくつかの態様は、上に説明されたものなどの触媒層を含む膜電極アセンブリに関連する。
【0016】
上に記載された本開示の態様において、1又は複数の従属的な特徴の任意の組み合わせは、主な触媒組成物及び膜電極アセンブリの態様と共に使用されるとき、互いに一緒に、又は別個に実現され得る。本開示のこれら及び他の特徴は、以下で提示され、いくつかの態様は、図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】市販の金のナノ粒子のサイズ及び均一性(左側のパネル)と、本開示の態様による金粒子(右側のパネル)との比較を示す。
【0018】
図2】市販の金のナノ粒子の2つの画像を提示し、左側のパネルは、比較的低い充填量のナノ粒子を有する金のナノ粒子であり、右側のパネルは、比較的高い充填量を有するそれらのナノ粒子である。
【0019】
図3】市販の金のナノ粒子(左側のパネル)と、本開示の特定の実施形態による金粒子(右側のパネル)との形状の比較を示す。
【0020】
図4】市販の金のナノ粒子(左側のパネル)と、本開示の特定の実施形態の金粒子(右側のパネル)との結晶化度の比較を示す。
【0021】
図5】市販の金で修飾した炭素粒子(左側のパネル)、及び、本開示の態様による金で修飾した炭素粒子(右側のパネル)の画像を含む。
【0022】
図6】また、市販の金で修飾した炭素粒子(左側のパネル)、及び、本開示の態様による金で修飾した炭素粒子(右側のパネル)の画像を示す。
【0023】
図7】市販の金で修飾した炭素粒子(左側のパネル)、及び、本開示の態様による金で修飾した炭素粒子(右側のパネル)の画像を含む。左側のパネルに示されるように、金のナノ粒子は、炭素粒子表面上に高い凝集度で密接に、不均一にクラスタ化している。対照的に、右側のパネルは、低度の不規則な凝集を伴う、炭素粒子表面上の十分に間隔を空けた金のナノ粒子を示す。
【0024】
図8】アイオノマーマトリクスにおける金で修飾された炭素粒子の画像を含む。
【0025】
図9】フロースルーシステムの例の概略図を示す。
【0026】
図10】MEA(膜電極アセンブリ)を含むセルを含み得る酸化炭素還元リアクタについての例示的なシステムを示す。
【0027】
図11】CO還元における使用についてのMEAの例を示す。MEAは、イオン伝導性ポリマー層によって離隔されるカソード層及びアノード層を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
導入及び文脈
ポリマーベースの膜電極アセンブリ(MEA)を含む酸化炭素電解槽は、アノードにおいて水から酸素を生成し、カソードにおいて二酸化炭素又は他の酸化炭素の電気化学的還元を通じて1又は複数の炭素ベースの化合物を生成するよう設計され又はそのように構成される。MEA及びMEAベースの酸化炭素電解槽の様々な例が以下の参考文献:2017年11月9日に公開された、「CO2、CO及び他の化学化合物の電気化学反応についての高度なアーキテクチャを有するリアクタ」と題するPCT出願公開第2017/192788号、2019年7月25日に公開された、「二酸化炭素リアクタ制御のためのシステム及び方法」と題する、PCT出願公開第2019/144135号、及び、2021年6月3日に公開された、「COx還元のための膜電極アセンブリ」と題する、PCT出願公開第2021/108446号において説明されており、その各々は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
いくつかの場合において、MEAは、バイポーラ界面、すなわち、カチオンに比べてアニオンの伝導性が実質的に高い第1イオン交換ポリマーの層、及び、アニオンに比べてカチオンの伝導性が実質的に高い第2イオン交換ポリマーの層の間の界面を有する。いくつかの場合において、MEAは、アニオン交換ポリマーのみ、又は、複数のアニオン交換ポリマー(任意選択的に複数の層として提供される)を含む。
【0030】
カソード層又はカソード触媒層とも称されるMEAのカソードは、CO還元を促進する。それは、CO還元反応用の触媒を含む。いくつかの実施形態において、それはまた、還元触媒粒子及び/又はイオン伝導性ポリマーについての担持を提供する電子伝導性担持粒子を含む。いくつかの実施形態において、還元触媒粒子は、担体無しでイオン伝導性ポリマーと組み合わされる。いくつかの場合において、カソード層は多孔質である。カソード層の厚さの例は、約80nm~300μmの範囲である。
【0031】
いくつかの例において、触媒は、金、銀又は銅粒子等の金属粒子である。いくつかの実施形態において、金属触媒粒子は、約0.1~1000nm、又は、約1~100nm、又は、約0.2~10nmの平均サイズを有する。いくつかの実施形態において、触媒は、フィルム及びナノ構造表面の形態であり得る。
【0032】
使用される場合、カソードにおける電子伝導性担体は、様々な材料から作成され、様々な形態を有し得る。例えば、担体は、カーボンブラック粒子等の炭素粒子を含み得る。他の例示的な伝導性担持粒子は、ホウ素ドープダイヤモンド又はフッ素ドープ酸化スズを含む。
【0033】
単一のカソードは、1、2、又はより多くのタイプの触媒を含み得る。例えば、カソードは、1つの反応(例えば、CO→CO)において良好である1つの触媒、及び、別の反応(例えば、CO→CH)において良好である第2触媒を含み得る。このような例において、カソード層は、CO→CHの変換を実行し得るが、反応における異なるステップが異なる触媒上で優先的に生じる。
【0034】
金属触媒粒子、カソードイオン伝導性ポリマー、及び電子伝導性担体に加えて、カソード触媒層は、細孔の形成を促進する添加物等の他の添加物を含み得る。例として、このような添加物はPTFE粒子又は繊維であり得る。いくつかの実施形態において、空隙空間は、このような粒子の周りに形成する。
用語
【0035】
別段定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有している。すぐ下で提示される用語は、明細書の他の部分を参照することによって、より完全に理解され得る。以下の説明は、本明細書に説明される複雑な概念に文脈及び導入を提供するために提示される。これらの説明は、本開示の全範囲を限定することを意図していない。
【0036】
酸化炭素-本明細書において使用される場合、酸化炭素という用語は、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、炭酸イオン(CO 2-)、炭酸水素イオン(HCO )、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0037】
触媒粒子-触媒粒子は、典型的には電解槽のカソードにおける酸化炭素の還元等の所望される反応である、所与の反応の活性化エネルギーを低下させる粒子である。触媒粒子は、反応を触媒する材料を含む。このような材料は、所望される反応を触媒できる、金、銀、銅、又は任意の他の金属等の金属であり得る。粒子は、組成物、物理寸法、形状、結晶化度等の様々な特性のいずれかを有し得る。粒子は、均質(例えば、実質的に純粋な触媒材料)又は非均質である組成物を有し得る。
【0038】
担持粒子-いくつかの実施形態において、触媒粒子が担持粒子上に設けられる。担持粒子は、1、2、又はより多くの触媒粒子を保持し、又はそれに付着し得る。電解槽のための触媒層に用いられるとき、担持粒子は、酸化炭素等の反応物にアクセス可能にする方式で、触媒粒子を提示するように機能し得る。担持粒子が、1又は複数の他の特徴を触媒層に付与し得る。例えば、担持粒子は、電気及び/又は熱伝導性を触媒層に付与し得る。導電性は、電子及び/又はイオンについてのものであり得る。
【0039】
修飾担持粒子-修飾担持粒子は、それに付着している1又は複数の触媒粒子を有する担持粒子である。いくつかの場合において、担持粒子は平均的に、触媒粒子より大きい。結果として、担持粒子は平均的に、それに付着している多くの(例えば5又はより多くの)触媒粒子を有し得る。
【0040】
混合物が2又はより多くのコンポーネントを含み、別段の定めがある場合を除き、識別されたコンポーネント以外のコンポーネントを含み得る。
カソード触媒粒子パラメータ
【0041】
触媒における金属粒子は様々なパラメータによって特徴付けられ得る。以下の説明は、これらのパラメータのいくつかを識別する。カソード性能に影響し得る金属触媒パラメータの例は、サイズ、サイズ分布、担持粒子上のカバレッジの均一性、形状、充填量(金属の重量/金属の重量+炭素の重量として、又は、触媒層の幾何学的面積あたりの粒子の質量として特徴付けられる)、表面積(触媒層の体積あたりの実際の金属触媒表面積)、純度等を含む。
【0042】
いくつかの場合において、金属粒子は金のナノ粒子である。他の場合において、粒子は、異なる貴金属(例えば白金)又は遷移金属(例えば銅)等の異なる金属を含む。いくつかの場合において、金属触媒ナノ粒子は合金を含む。いくつかの実施形態において、金属ナノ粒子は、MEAの触媒層のコンポーネントである。いくつかの場合において、金属ナノ粒子は、触媒層の前駆体として機能する混合物のコンポーネントである。例えば、金属ナノ粒子は、実質的に金属ナノ粒子だけを含む混合物として提供され得る。いくつかの場合において、金属ナノ粒子には、炭素粒子等の導電性担持材料が設けられる。いくつかの場合において、金属ナノ粒子は、導電性担持材料、及び、アイオノマー等のイオン伝導マトリクスを含む組成物において提供される。
金属粒子のサイズ
【0043】
触媒金属粒子のサイズは、金属粒子の代表的球体の直径によって特徴付けられ得る。本明細書において使用される場合、粒子の直径は、実際には全てが球形でない場合でも粒子が球形であると想定するパラメータである。例として、粒子サイズは、例えば透過型電子顕微鏡法(TEM)を用いる高解像度イメージングによって決定され得る。結果として生じる顕微鏡写真を分析して粒子サイズを決定できる。顕微鏡写真における粒子の数、及び、顕微鏡写真における全ての粒子の総面積を用いて、粒子あたりの面積を決定でき、球形粒子の直径をそれから逆に算出できる。別の例において、全ての粒子の平均面積が決定され、粒子が球形であると想定して直径が算出される。いくつかの実施形態において、画像分析プロセスは、サイズ計算を、粒子「真円度」又は真球度(例えば、1=完全な円又は球、及び、0に近い=細長い多角形)の指定範囲内の粒子だけに限定する。例えば、約0.3又はより高い真円度を有する粒子だけが、サイズ決定において考慮される。
【0044】
特定の実施形態において、酸化炭素電解槽カソード触媒における金属粒子の直径の算術平均又は他の代表値(例えば、中央値)は、約2~100nm又は約3~5nmである。特定の実施形態において、金属粒子の平均直径は、約2~100nm、又は、約2~50nm、又は、約2~10nm、又は約3~5nmである。
金属粒子サイズの均一性
【0045】
金属触媒粒子は、サイズ又は直径の分布を有する。特定の実施形態において、分布は実質的に均一である。いくつかの実施形態において、触媒における金属粒子は、分散度(場合により、多分散インデックスと称される)によって特徴付けられる。分散度は、混合物における粒子のサイズの不均質性の尺度である。物体が同一のサイズ、形状、又は質量を有する場合、物体の集合は、均一と呼ばれる。一貫しないサイズ、形状及び質量の分布を有する物体の標本は、不均一と呼ばれる。
【0046】
分散度は、標本標準偏差を平均粒子直径で除算することによって算出される(すなわち、s/μ)。標本標準偏差sは、以下によって与えられる。
【数1】
「X」は、平均粒子サイズであり、nは標本における粒子の数である。
【0047】
いくつかの実装において、金属触媒粒子は、最大で約300%、又は、最大で約200%、又は、最大で約100%、又は、最大で約50%、又は、最大で約15%の粒子サイズ分散度を有する。
【0048】
発明者は、市販の金のナノ粒子標本が多くの場合、広い範囲、例えば、3~75nmの範囲の粒子サイズを有し、結果として、非常に不均一であることを観察した。図1は、ニュージャージー州チェリーヒルのPremetek製の市販の金のナノ粒子(左側のパネル)と、本開示の態様による金粒子(右側のパネル)との比較を示す。左側のパネルに示される金のナノ粒子は、非常に非均一的であり、約3~75nmの範囲の直径を有する。右側のパネルに示される金のナノ粒子は、遥かにより均一的であり、約3~5nmの範囲の直径を有する。
金属充填度
【0049】
様々な実施形態において、触媒は、炭素粒子等の電子伝導性担持粒子と組み合わせた金属ナノ粒子を含む。金属ナノ粒子は、担持粒子に付着し得る。金属-担持触媒の組み合わせは、金属ナノ粒子の充填量によって特徴付けられ得る。充填量は、金属及び担持材料(例えば炭素)だけを含む組み合わせにおける金属の質量分率であり得る。それは、アイオノマー等の触媒層の他の共通コンポーネントを含まない。特定の実施形態において、触媒粒子は、約20~40%の金属充填度を有する。特定の実施形態において、触媒粒子は、少なくとも約30%の金属充填度を有する。いくつかの場合、このような充填量は、金属粒子凝集を少なくして又は無くして達成される。
【0050】
発明者は、比較的高い充填量(例えば、30%より高い)を有する市販の金のナノ粒子の組成物が、金粒子の著しく不規則な形状の凝集を有することを観察した。
【0051】
図2は、Premetek製の市販の金のナノ粒子の2つの画像を示す。左側のパネルにおける金のナノ粒子は、ナノ粒子の比較的低い充填量を有し、一方、右側のパネルにおけるそれらのナノ粒子は比較的高い充填量を有する。右側のパネルに示されるように、高充填量で設けられる金のナノ粒子は、望ましくない不規則な形状の塊に凝集(aggregate)又は凝集(agglomerate)する傾向がある。
金属粒子の形状
【0052】
特定の実施形態において、触媒金属ナノ粒子は、概して球形又は円形の形状を有する。例えば、金属ナノ粒子は、真球又は円の形状に近いことがあり得る。特定の実施形態において、金属ナノ粒子は、規則的な多面体(例えば、立方体、八面体、十二面体等)、楕円体、又はワイヤ等の他の形状を(概して)有し得る。特定の実施形態において、触媒金属粒子は、物体の球形又は円形の程度の尺度である、それらの真球度又は真円度によって特徴付けられる。粒子の真球度は、等しい体積の球の表面積と、粒子の実際の表面積との比として定義される。特定の実施形態において、金属ナノ粒子の少なくとも約50%は、少なくとも約80%の真球度を有し、又は、金属ナノ粒子の少なくとも約70%は、少なくとも約90%の真球度を有する。特定の実施形態において、触媒における金属ナノ粒子の少なくとも約85%は、少なくとも約90%の真球度を有する。
【0053】
図3は、Premetek製の市販の金のナノ粒子(左側のパネル)と、本開示の特定の実施形態による金粒子(右側のパネル)との比較を示す。左側のパネルに示される金のナノ粒子は、非常に非球形であり、三角形、八面体等の多くの非球形粒子を有する。対照的に、右側のパネルに示される金のナノ粒子は、遥かにより均一な球形の形状を有する。
金属粒子の結晶化度
【0054】
特定の実施形態において、触媒における多くの又は大部分の金属粒子は、単結晶ナノ粒子である。単結晶粒子は多結晶でない。例えば、それらは双晶を呈しない。
【0055】
触媒層等の組成物における触媒金属粒子は、単結晶である粒子の最小限の分率によって特徴付けられ得る。いくつかの触媒において、金属粒子の少なくとも約20%は単結晶粒子である。いくつかの触媒において、金属粒子の少なくとも約80%は単結晶粒子である。
【0056】
図4は、Premetek製の市販の金のナノ粒子(左側のパネル)と、本開示の特定の実施形態の金粒子(右側のパネル)との比較を示す。左側のパネルに示される金のナノ粒子は、高度に多結晶(例えば、双晶)であり、明確な粒界を有する。対照的に、右側のパネルに示される金のナノ粒子は、単結晶ナノ粒子である。
金属粒子における不純物
【0057】
特定の実施形態において、金属触媒ナノ粒子は、存在するとしても少ない不純物を有する。例えば、金属触媒ナノ粒子(例えば、金のナノ粒子)は、約200ppm又はより少ないホウ素又は1又は複数のアルカリ金属(例えば、ナトリウム)を含む。特定の実施形態において、金属触媒ナノ粒子(例えば、金のナノ粒子)は、約20ppm又はより少ない任意の遷移金属又は任意の他の不純物を含む。いくつかの実装において、金属ナノ粒子及び/又は触媒組成物の他の成分を生成する反応物と接触する金属部分が少ない又は無い装置を使用して金属ナノ粒子が製造される。
炭素粒子サイズ
【0058】
特定の実施形態において、金のナノ粒子等の金属触媒粒子が、電子伝導性基質又は担体であり得る基質又は担体上に設けられる。いくつかの場合において、伝導性担体は、粒子状の材料である。いくつかの場合において、金属触媒粒子は、伝導性担体に付着し又は結合される。いくつかの場合において、伝導性担持粒子の一部又は大部分には、複数の触媒粒子が付着している。金属触媒粒子が付着している又は結合されている伝導性担持粒子は、金属触媒粒子で修飾されると言え得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、導電性性担持粒子は炭素粒子である。このような粒子は、様々な結合タイプ、同素体及び/又は化学特性のいずれかを有する炭素から作成され得る。一般に、炭素担体は、アモルファス炭素又は非アモルファス炭素であり得る。非アモルファス炭素の例は、グラファイト又はグラフェン含有炭素、フラーレン、又は、それらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態において、カーボンブラック粒子が担体として使用される。カーボンブラックの例は、Vulcan XC 72R(マサチューセッツ州ボストン、Cabot Corporation)である。炭素粒子のこれらのタイプのいずれかは、金又は他の金属触媒粒子で修飾され得る。
【0060】
様々なパラメータは、カーボンブラック又は他の炭素担持粒子を特徴付け得る。これらのパラメータの例は、炭素粒子サイズ、金属触媒粒子で修飾された炭素粒子の分率、炭素及び金属粒子の間の結合、及び炭素ポロシティを含む。
【0061】
触媒粒子と同様に、担持粒子のサイズは様々な方式で特徴付けられ得る。例えば、担持粒子のサイズは、担持粒子の代表的な球の直径によって特徴付けられ得る。いくつかの場合において、担持粒子の直径は、実際には全てが球形でない場合でも粒子が球形であると想定する。
【0062】
特定の実施形態において、炭素担持粒子は、約20~50nm又は約25~35nmの平均又は他の代表値(例えば中央値)の直径を有する。特定の実施形態において、導電性担持粒子は、約10~100nm、約20~100nm、又は約20~50nmの平均直径を有する。
炭素粒子上の金属触媒粒子のカバレッジ
【0063】
いくつかの実施形態において、触媒組成物における担持粒子の全て又はほぼ全てには、少なくとも1つの金属触媒粒子が付着している。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの付着している金属触媒粒子を有する担持粒子の最小限の分率は、少なくとも約80%又は少なくとも約90%である。
【0064】
図5は、Premetek製の市販の金で修飾した炭素粒子(左側のパネル)、及び、本開示の態様による金で修飾した炭素粒子(右側のパネル)の画像を含む。示されるように、左側のパネルに示される混合物は、金カバレッジが少ない又は無い多くの炭素粒子を含む。炭素上の金のカバレッジは、非常に一貫しない。対照的に、右側のパネルに示される混合物では、炭素粒子上の金のカバレッジは、遥かに一貫性があり、均一である。金を有しない炭素粒子は存在しない。
金属粒子及び炭素の間の結合
【0065】
同様に、いくつかの実施形態において、触媒組成物における全て又はほぼ全ての金属触媒粒子は担持粒子に付着する。例えば、担持粒子に付着する金属触媒粒子の分率は、少なくとも約95%又は少なくとも約98%である。
【0066】
いくつかの場合において、例えば、配位子を使用して触媒粒子の表面エネルギーを変更して担持粒子に対する接着を改善することによって、金属触媒粒子及び担持粒子の間の結合が、修飾された粒子の製造中に促進される。いくつかの場合において、修飾された粒子は、コロイド金属粒子を、担持粒子を含む溶液と混合することによって、金属粒子を炭素粒子に機械的に固定することによって調製される。
【0067】
図6は、Premetek製の市販の金で修飾した炭素粒子(左側のパネル)、及び、本開示の態様による金で修飾した炭素粒子(右側のパネル)の画像を示す。左側のパネルに示される混合物は、任意の炭素粒子に付着しない多くの金のナノ粒子を含む。対照的に、右側のパネルに示される混合物では、炭素粒子に対する金のナノ粒子の付着は、遥かにより一貫性がある。炭素粒子に付着しない金粒子は、存在するとしても少ない。
炭素粒子のポロシティ
【0068】
炭素粒子等の担持粒子は、それらのポロシティによって特徴付けられ得る。担持粒子、及び、ひいてはカソード層のポロシティは、水を除去しながら、気体の反応物及び生成物がカソードに入る能力及びそれから出る能力に影響を与え得る。しかしながら、カソード層は、カソードのイオン及び/又は電気抵抗が性能を低下させるほど多孔質であるべきでない。
【0069】
特定の実施形態において、担持粒子のポロシティは、約15%~約85%又は約25%~約75%である。いくつかの実施形態において、ポロシティは、水銀ポロシメトリ又はTEM画像の画像分析等の方法によって決定される。特定の実施形態において、担持粒子の質量あたりの細孔体積は、約25~225cm/100g又は約50~200cm/100gである。
金属触媒粒子間の間隔
【0070】
特定の実施形態において、触媒金属粒子は、担体粒子表面上で実質的に一様に間隔を空けている。このような場合において、金属触媒粒子が担体粒子表面上に不規則に凝集する確率は低い。一様に間隔を空けるこの傾向は、触媒粒子と共に担持粒子を含む粉末の特性である。均一な間隔は、アイオノマーを含み得る最終的な触媒層において保存され得る。
【0071】
特定の実施形態において、担持粒子上の個別の金属触媒粒子間の均一な間隔は、最近接粒子間の離隔距離の標準偏差又は分散度によって表される。例えば、個別の金属ナノ粒子(最近接)間の間隔の分散度は、約50%又はより少ない。担持粒子表面上の金属ナノ粒子の間隔の分散度は、最近接ナノ粒子間の平均離隔距離で標本標準偏差を除算する(s/μ)ことによって定義され得る。
【0072】
図7は、市販の金で修飾した炭素粒子(左側のパネル)、及び、本開示の態様による金で修飾した炭素粒子(右側のパネル)の画像を含む。左側のパネルに示されるように、金のナノ粒子は、炭素粒子表面上に高い凝集度で密接に、不均一にクラスタ化している。対照的に、右側のパネルは、低度の不規則な凝集を伴う、炭素粒子表面上の十分に間隔を空けた金のナノ粒子を示す。
アイオノマー被覆の均一性
【0073】
MEAのための触媒層は、金属触媒粒子で修飾された導電性担持粒子だけでなく、アニオン伝導性ポリマー等のイオン伝導性材料も含み得る。MEA触媒層において、全て又は実質的に全ての金属触媒粒子は、アイオノマー又は他のイオン伝導性材料に接触し得る。例えば、アイオノマーマトリクス内において、触媒粒子の少なくとも約50%が、アイオノマーで被覆される(又は密接に接触する)。いくつかの実施形態において、触媒粒子の少なくとも約70%がアイオノマーで被覆される(又は密接に接触する)。
【0074】
図8は、アイオノマーマトリクスにおける金修飾炭素粒子の画像を含む。左側のパネルに示されるように、アイオノマー(小さい光の斑点又は緑色の領域)が一貫性なく分散される。それは金粒子(明るい又は赤色の点)を非均一的に被覆し、十分に分散しない。対照的に、右側のパネルに示されるように、アイオノマーは、触媒層の全てのエリアにおいて、実質的に均一な被覆又は分布を生じさせる。金粒子及び炭素粒子(大きい光の領域又は青色)はアイオノマー内において十分に分散する。
【0075】
本明細書に記載される例及び実施形態は一般に、酸化炭素電解槽についてのカソード触媒を参照するが、本明細書に記載される触媒及び他の組成物は、酸化炭素以外の様々な物質の燃料電池及び電解槽等の他の電気化学システム、例えば水電解槽についてのMEA等における他の文脈で用いられ得る。
【0076】
更に、本明細書に記載される例及び実施形態は一般に、触媒としての金粒子を参照するが、電極及び適用に応じて他の触媒が用いられ得る。例えば、金以外の貴金属が、電解槽カソードにおいて用いられ得る。このような他の貴金属として、白金、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、及びイリジウムが挙げられる。このような金属は、二酸化炭素を一酸化炭素に還元するのに適切であり得る。いくつかの実施形態において、電解槽カソードは、銅、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、及びモリブデン等の他の金属触媒を用い得る。このような金属は、酸化炭素を炭化水素(例えばメタン及びエチレン)、ギ酸、アルコール、アルデヒド等に還元するのに適切であり得る。
【0077】
担持される金属粒子触媒組成物は、バッチ又はフロースループロセスによって調製され得る。方法は、金属前駆体溶液をキャッピング剤溶液と混合することによって金属ナノ粒子を形成して第1混合物を形成すること、及び、次に還元剤を添加して金属前駆体を還元して金属ナノ粒子を形成することを伴う。金属ナノ粒子は次に、懸濁された担持粒子を含む溶液に添加される。溶液は混合され、金属ナノ粒子が担持粒子上に吸着することを可能にする。
【0078】
還元されて元素金属を形成し得る任意の適切な金属含有化合物が使用され得る。金のナノ粒子を合成するために、金属前駆体の例として、一ヨウ化金(AuI)、臭化金(I)(AuBr)、塩化金(I)(AuCl)、フッ化金(I)(AuF)、三塩化金(AuCl)、テトラクロロ金(III)酸三水和物(HAuCl)、硫化金(I)オートチオプール、Au(SCHCHPh)、AuCl(オレイルアミン)、AuCl(オクタデシルアミン)、酢酸金(III)、及び硝酸金(III)が挙げられる。固体の前駆体が超純水又は他の適切な溶媒に溶解され得る。他の金属のナノ粒子の合成のために、適切な金属含有前駆体が使用され得る。例えば、硝酸銀(AgNO)が銀ナノ粒子を合成するために使用され得、硝酸銅(Cu(NO)が銅ナノ粒子を合成するために使用され得る。
【0079】
キャッピング剤は、制御されたサイズ及び十分に定義された形状を有する金属ナノ粒子の合成を促進する。例として、クエン酸、クエン酸ナトリウム、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セトリモニウム(CTAC)、ヘキシルアミンを含む短いアルキル配位子を有する第一級アミン、ノニルアミン、及びドデシルアミン、カルボン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ドデカンチオールを含むチオール、チオラート、ドデシル硫酸ナトリウムを含むアルキル硫酸ナトリウム、Tween80(登録商標)などのポリソルベート、リン配位子、デンドリマー、複素環化合物、チオラート末端キャップポリスチレン、チオラートポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、チオラートポリ(ビニルピリジン)(PVP)、5アームポリエチレングリコール-b-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-b-PCL)スターブロックコポリマー、ジスルフィド末端を持つポリペプチド、及び臭化テトラオクチルアンモニウム(TOAB)が挙げられる。
【0080】
還元剤の例として、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、アスコルビン酸アスコルビン酸塩、ポリオール、タンニン酸、ヒドロキシルアミンを含むアミン、ホルムアルデヒドを含むアルデヒド、チオール、ヒドラジン、ホスホン酸、チオ硫酸塩、水素化ホウ素、及びアミノボランが挙げられる。
【0081】
担持粒子の例は、上で提供され、カーボンブラック粒子、ホウ素ドープダイヤモンド、及びフッ素ドープ酸化スズが挙げられる。
【0082】
バッチ処理の例において、金属前駆体(例えば、超純水中のHAuCl)が、容器においてキャッピング剤(例えば、超純水中のクエン酸三ナトリウム)と混合され、混合物が撹拌される。還元剤溶液(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)が添加され、混合物が数時間にわたって撹拌される。金属粒子のサイズは、UV-可視分光法によってモニタリングされ得る。混合物は次に、溶解前の希釈された炭素担体(例えば、Vulcanカーボン)を含む第2容器内にポンピングされ、数日間にわたって撹拌される。担持される材料は、デカント及び遠心分離によって回収され得る。
【0083】
図9は、フロースルーシステムの例の概略図を示す。システム900は、金属前駆体溶液リザーバ902、キャッピング及び還元溶液リザーバ904を含む。金属前駆体及びキャッピング及び還元剤を含む溶液は、混合のためにジャンクション908へ制御可能にポンピングされる。ジャンクションの例として、スタティックミキサを収容する短いチューブセクションが続くYジャンクション、Tジャンクション、及びケーブルタイプジャンクションが挙げられる。金属ナノ粒子/キャッピング溶液混合物は、チャネル914内をジャンクション910へ流れる。混合物は、チャネル916を流れ、ここで、金属前駆体及び還元溶液は、十分な時間にわたって反応し、金属ナノ粒子を形成する。金属ナノ粒子が形成されると、それらは懸濁溶液において担持粒子と混合するために混合容器912へ移され得る。
【0084】
図9の例において、金属ナノ粒子は、直接的に混合容器912へ流される。代替的な実施形態において、それらはまず、金属ナノ粒子だけを調製するために使用されるフロー合成を用いて、収集され、別個に混合容器に添加され得る。
【0085】
金属ナノ粒子が事前の回収無しで担持粒子と混合されるいくつかの実施形態において、担持粒子懸濁溶液は、混合プロセス中に担持粒子懸濁溶液リザーバ(図示せず)から混合容器に添加され得る。これは、凝集の防止に有用であり得る。
【0086】
生産をスケールアップするべく、各リザーバからの複数の平行なチャネル及び複数のジャンクションが用いられ得る。
【0087】
粒子サイズ及び粒子サイズ分布を制御するために用いされ得るパラメータとして、流量、滞留時間、キャッピング剤と金属前駆体の比、及び還元剤の濃度が挙げられる。滞留時間は部分的に、チャネル914及び916の長さによって制御され得る。いくつかの実施形態において、長いチャネルを促進するために、曲がりくねったチャネルが用いられる。チャネルは、フローフィールドプレート内に設けられ得る。チャネル長の例は、10メートル~100メートルである。直径の例は、1mm~25mmである。
【0088】
滞留時間は、金属ナノ粒子のサイズ及びチャネル寸法に従って変動する。滞留時間の例は1~10分間である。キャッピング剤と金属前駆体の比は、用いられるキャッピング剤に依存する。モル比の例は、2:1~20:1である。還元及びキャッピング剤濃度の例は、1mmol/L~100mmol/Lである。金属前駆体濃度の例は、1mmol/L~100mmol/Lである。濃度が高いほど、同一の滞留時間で、より大きいナノ粒子が生成される。流量の例は、金属前駆体溶液については、10mL/分~1000mL/分である。還元及びキャッピング剤溶液の流量の例は、0.1~4mL/分である。
【0089】
特定のサイズ及びサイズ分布についてのパラメータ値を決定することを助けるために、インラインUV-可視分光法又は動的光散乱法を使用して金属ナノ粒子サイズがモニタリングされ得る。
酸化炭素電解槽システムの実施形態
【0090】
図10は、MEA(膜電極アセンブリ)を含むセルを含み得る酸化炭素還元リアクタ1003についての例示的なシステム1001を示す。リアクタは、スタックにして配置される複数のセル又はMEAを含んでよい。システム1001は、還元リアクタ1003のアノードとインタフェースするアノードサブシステムと、還元リアクタ1003のカソードとインタフェースするカソードサブシステムとを備える。システム1001は、上述の方法又は動作条件のいずれかと共に使用されてよい、又は上述の方法又は動作条件の何れかを実装し得るシステムの例である。
【0091】
図示するように、カソードサブシステムは、酸化炭素フィードストリームを還元リアクタ1003のカソードに提供するよう構成されている酸化炭素ソース1009を含み、これは、動作中、カソードにおける還元反応の生成物を含む出力ストリームを生成してよい。生成物ストリームは、未反応酸化炭素及び/又は水素を含んでもよい。1008を参照されたい。
【0092】
酸化炭素ソース1009は、還元リアクタ1003への酸化炭素の体積流量又は質量流量を制御するよう構成されている酸化炭素流量コントローラ1013に連結されている。1又は複数の他のコンポーネントが、フロー酸化炭素ソース1009から還元リアクタ1003のカソードまでの流路上に配置されてよい。例えば、任意の加湿器1004が、経路上に設けられ、酸化炭素供給ストリームを加湿するよう構成されてよい。加湿酸化炭素は、MEAの1又は複数のポリマー層を湿潤させ、それにより、このような層の乾燥を回避し得る。流路上に配置され得る別のコンポーネントは、パージガスソース1017に連結されているパージガス流入口である。特定の実施形態において、パージガスソース1017は、還元リアクタ1003のセルへの電流が一時停止されている期間中に、パージガスを提供するよう構成されている。一部の実装において、MEAカソード上にパージガスを流すことは、触媒活性の回復及び/又は選択性を促進する。パージガスの例としては、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、及びこれらのうちの任意の2以上の混合物が挙げられる。
【0093】
動作中、カソードからの出力ストリームは、セルのカソード側における圧力を規定範囲(例えば、システム構成に応じて、約50~800psig)内に維持するよう構成されている背圧コントローラ1015に接続する導管1007を介して流れる。出力ストリームは、反応生成物1008を分離及び/又は濃縮のために1又は複数のコンポーネント(図示せず)に提供してよい。
【0094】
特定の実施形態において、カソードサブシステムは、排出口ストリームからの未反応酸化炭素を還元リアクタ1003のカソードに戻して制御可能にリサイクルするよう構成されている。いくつかの実装において、出力ストリームは、酸化炭素をリサイクルする前に、還元生成物及び/又は水素を除去するように処理される。MEAの構成及び動作パラメータに応じて、還元生成物は、一酸化炭素、水素、メタン及び/又はエチレン等の炭化水素、ギ酸、酢酸等の酸素含有有機化合物、及びこれらの任意の組み合わせであってよい。特定の実施形態において、生成物ストリームから水を除去する1又は複数のコンポーネント(図示せず)がカソード排出口の下流に配置される。このようなコンポーネントの例としては、生成物ガスストリームから液体水を除去するよう構成されている相分離器、及び/又は、生成物ストリームガスを冷却し、それにより、乾燥ガスを、例えば必要な場合に下流プロセスに提供するよう構成されている凝縮器が挙げられる。一部の実装において、リサイクルされる酸化炭素は、カソードの上流のソース1009からの新鮮な酸化炭素と混合し得る。
【0095】
図10に示すように、アノードサブシステムは、酸化炭素還元リアクタ1003のアノード側にアノードフィードストリームを提供するよう構成されている。特定の実施形態において、アノードサブシステムは、新鮮なアノード水を、アノード水リザーバ1019及びアノード水流量コントローラ1011を含む再循環ループに提供するよう構成されているアノード水ソース(図示せず)を備える。アノード水流量コントローラ1011は、還元リアクタ1003のアノードへの又はそこからのアノード水の流量を制御するよう構成されている。図示の実施形態において、アノード水再循環ループは、アノード水の組成を調整するためのコンポーネントに連結されている。これらには、水リザーバ1021及び/又はアノード水添加物ソース1023が含まれ得る。水リザーバ1021は、アノード水リザーバ1019内のものとは異なる組成を有する水を供給する(及びアノード水再循環ループにおいて循環させる)よう構成されている。1つの例において、水リザーバ1021内の水は、循環アノード水内の溶質又は他の成分を希釈することができる純水である。純水は、従来の脱イオン水、さらには、例えば少なくとも約15MOhm-cmであるか又は18.0MOhm-cmを超える抵抗率を有する超純水であってよい。アノード水添加物ソース1023は、循環アノード水に塩及び/又は他の成分等の溶質を供給するよう構成されている。
【0096】
動作中、アノードサブシステムは、少なくとも部分的に反応して酸素等の酸化生成物を生成する水又は他の反応物をリアクタ1003のアノードに提供してよい。生成物は、未反応アノード供給材料とともに、還元リアクタの排出口ストリーム中に提供される。図10には示していないが、任意の分離コンポーネントがアノード排出口ストリームの経路上に設けられ、アノード生成物ストリームから酸化生成物を凝縮又は分離するよう構成されてよい。
【0097】
他の制御機能部がシステム1001に含まれてよい。例えば、温度コントローラは、動作中の適切な点において、酸化炭素還元リアクタ1003を加熱及び/又は冷却するよう構成されてよい。図示の実施形態において、温度コントローラ1005は、アノード水再循環ループに提供されるアノード水を加熱及び/又は冷却するよう構成されている。例えば、温度コントローラ1005は、アノード水リザーバ1019内の水及び/又はリザーバ1021内の水を加熱又は冷却し得る加熱器及び/又は冷却器を含むか又はそれに連結されてよい。いくつかの実施形態において、システム1001は、アノード水成分以外の成分を直接加熱及び/又は冷却するよう構成されている温度コントローラを備える。セル又はスタック内のこのような他の成分の例、及びカソードに流れる酸化炭素。
【0098】
酸化炭素還元リアクタ1003への電流が一時停止されているか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム1001の特定のコンポーネントは、非電気的動作を制御するように動作してよい。例えば、システム1001は、カソードへの酸化炭素の流量及び/又はリアクタ1003のアノードへのアノード供給材料の流量を調整するよう構成されてよい。この目的で制御され得るコンポーネントとしては、酸化炭素流量コントローラ1013及びアノード水コントローラ1011が挙げられ得る。
【0099】
また、電流が一時停止されているか否かを含む、電気化学的動作のフェーズに応じて、システム1001の特定のコンポーネントは、酸化炭素供給ストリーム及び/又はアノードフィードストリームの組成を制御するように動作してよい。例えば、水リザーバ1021及び/又はアノード水添加物ソース1023は、アノードフィードストリームの組成を調整するように制御されてよい。いくつかの場合において、添加物ソース1023は、水性アノードフィードストリーム中の1又は複数の塩等の1又は複数の溶質の濃度を調整するよう構成されてよい。
【0100】
いくつかの場合において、そのようなコントローラ1005等の温度コントローラは、動作のフェーズに基づいて、システム1001の1又は複数のコンポーネントの温度を調節するよう構成されている。例えば、セル1003の温度は、ブレークイン、通常動作中の電流一時停止、及び/又は保管中に、上昇又は低下されてよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、酸化炭素電解還元システムは、他のシステムコンポーネントからの還元セルの除去を容易にするよう構成されている。これは、保管、メンテナンス、改修等のためにセルを除去する必要がある場合に有用であり得る。図示の実施形態において、隔離弁1025a及び1025bは、それぞれ酸化炭素ソースへの並びにカソード及び背圧コントローラ1015へのセル1003の流体連通を遮断するよう構成されている。さらに、隔離弁1025c及び1025dは、それぞれアノード水流入口及び排出口へのセル1003の流体連通を遮断するよう構成されている。
【0102】
酸化炭素還元リアクタ1003は、1又は複数の電源及び関連するコントローラの制御下で動作してもよい。ブロック1033を参照されたい。電源及びコントローラ1033は、還元リアクタ1003内の電極に供給される電流を制御及び/又は印加される電圧を制御するようにプログラム又は別様に構成されてよい。電流及び/又は電圧は、本明細書の他の箇所に記載の電流スケジュール及び/又は電流プロファイルを実行するように制御されてよい。例えば、電源及びコントローラ1033は、還元リアクタ1003のアノード及び/又はカソードに印加される電流を周期的に一時停止するよう構成されてよい。本明細書に記載の電流プロファイルはいずれも、電源及びコントローラ1033内にプログラムされてよい。
【0103】
特定の実施形態において、電源及びコントローラ1033は、酸化炭素還元リアクタ1003における所望の電流スケジュール及び/又はプロファイルを実現するのに必要な動作のすべてではないが一部を実行する。システムオペレータ又は他の責任者は、還元リアクタ1003に印加される電流のスケジュール及び/又はプロファイルを完全に定義するように、電源及びコントローラ1033と連携して行動してよい。例えば、オペレータは、電源及びコントローラ1033内にプログラムされている電流一時停止のセットの他に1又は複数の電流一時停止を制定してよい。
【0104】
特定の実施形態において、電源及びコントローラは、システム1001の他のコンポーネントと連携する1又は複数の他のコントローラ又は制御機構と協調して動作する。例えば、電源及びコントローラ1033は、カソードへの酸化炭素の送達、アノードへのアノード水の送達、アノード水への純水又は添加物の添加、及びこれらの機能部の任意の組み合わせを制御するためのコントローラと協調して動作してよい。一部の実装において、1又は複数のコントローラは、以下の機能の任意の組み合わせを制御するように協調して制御又は動作するよう構成されている:還元セル1003への電流及び/又は電圧の印加、(例えば、背圧コントローラ1015を介した)背圧の制御、(例えば、パージガスコンポーネント1017を用いた)パージガスの供給、(例えば、酸化炭素流量コントローラ1013を介した)酸化炭素の送達、(例えば、加湿器1004を介した)カソード供給ストリーム中の酸化炭素の加湿、(例えば、アノード水流量コントローラ1011を介した)アノードへの及び/又はそこからのアノード水の流量、並びに(例えば、アノード水ソース1005、純水リザーバ1021、及び/又はアノード水添加物コンポーネント1023を介した)アノード水組成。
【0105】
図示の実施形態において、電圧モニタリングシステム1034は、MEAセルのアノード及びカソードにかかる又はセルスタックの任意の2つの電極にかかる電圧を決定する、例えば、マルチセルスタック内のすべてのセルにかかる電圧を決定するために用いられる。このようにして決定された電圧は、電流一時停止中にセル電圧を制御、一時停止の継続時間を通知等するために用いることができる。特定の実施形態において、電圧モニタリングシステム1034は、還元セル1003を指定の電圧範囲内に留まらせるように電源1033と協調して機能するよう構成されている。例えば、電源1033は、電流一時停止中にセル電圧を指定範囲内に維持するようにして還元セル1003の電極に電流及び/又は電圧を印加するよう構成されてよい。例えば、電流一時停止中、セルの開回路電圧が規定範囲から逸脱する(電圧モニタリングシステム1034によって判定される)場合、電源は、セル電圧を指定範囲内に維持するように電極に電流又は電圧を印加するよう構成されてよい。
【0106】
図10に示すもの等の電解酸化炭素還元システムは、1又は複数のコントローラと、ポンプ、センサ、ディスペンサ、弁、及び電源等の1又は複数の制御可能なコンポーネントとを含む制御システムを使用してよい。センサの例としては、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、伝導性センサ、電圧計、電流計、電気化学機器を含む電解質組成センサ、クロマトグラフィーシステム、吸光度計測ツール等の光学センサ等が挙げられる。このようなセンサは、アノード水、純水、塩溶液等を保持するためのリザーバ、及び/又は電解酸化炭素還元システムの他のコンポーネントにおいて、(例えば、流動場における)MEAセルの流入口及び/又は排出口に連結されてよい。
【0107】
1又は複数のコントローラによって制御され得る様々な機能には、電流及び/又は電圧を酸化炭素還元セルに印加すること、このようなセル上でカソードからの排出口にかかる背圧を制御すること、カソード流入口にパージガスを供給すること、カソード流入口に酸化炭素を送達すること、カソード供給ストリーム中の酸化炭素を加湿すること、アノードに及び/又はアノードからアノード水を流すこと、並びにアノード供給組成を制御することが挙げられる。これらの機能のうちの任意の1又は複数は、その機能を単独で制御するための専用コントローラを有してよい。これらの機能のうちの任意の2以上は、コントローラを共有してよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1のマスタコントローラが2以上のコンポーネントコントローラに命令を提供する、コントローラのヒエラルキが用いられる。例えば、システムは、高水準制御命令を(i)酸化炭素還元セルへの電源、(ii)カソード供給ストリーム流量コントローラ、及び(iii)アノードフィードストリーム流量コントローラに提供するよう構成されているマスタコントローラを備えてよい。例えば、システムの個々のコンポーネントを制御するために、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が用いられてよい。
【0108】
特定の実施形態において、制御システムは、本明細書に記載の特性の任意のものを有し得る電流スケジュールに従って、MEAを備える酸化炭素還元セルに電流を印加するよう構成されている。例えば、電流スケジュールは、印加電流における周期的一時停止を提供し得る。いくつかの場合において、制御システムは、本明細書に記載のようなランプ及び/又は段階的変化等の規定のプロファイルを有する電流一時停止を提供する。
【0109】
特定の実施形態において、制御システムは、電流スケジュールと協調して、1又は複数の供給ストリーム(例えば、酸化炭素流等のカソード供給ストリーム及びアノードフィードストリーム)の流量を制御するよう構成されている。例えば、酸化炭素又はパージガスの流れは、MEAセルに印加されている電流が一時停止されると、オンに切り替えられ、オフに切り替えられ、又は別様に調整され得る。
【0110】
特定の実施形態において、制御システムは、本明細書に記載の回復シーケンスを実装するよう構成されてよい。このような制御システムは、電流を一時停止又は低減する、回復ガスフローを流す、水又は他の液体を流す、カソードを乾燥させる、通常動作を再開する、又はこれらの任意の組み合わせを実行するよう構成されてよい。コントローラは、回復シーケンスの初期化の制御し、回復シーケンスにおける任意の動作の継続時間の制御等を実行するよう構成されてよい。
【0111】
コントローラは、任意の数のプロセッサ及び/又はメモリデバイスを含んでよい。コントローラは、そのようなソフトウェア又はファームウェアなどの制御ロジックを含んでよい、及び/又は別のソースから提供された命令を実行してよい。酸化炭素を還元する前、途中、及び後の電解セルの動作を制御するために、コントローラを電子機器と統合してよい。コントローラは、1又は複数の電解酸化炭素還元システムの様々なコンポーネント又はサブパーツを制御してよい。コントローラは、処理要件及び/又はシステムのタイプに応じて、ガスの送達、温度設定(例えば、加熱及び/又は冷却)、圧力設定、電力設定(例えば、MEAセルの電極に送達される電圧及び/又は電流)、液体流量設定、流体送達設定、及び浄水及び/又は塩溶液の投与など、本明細書に開示されるプロセスのいずれかを制御するようにプログラムされてよい。これらの被制御プロセスは、電解酸化炭素還元システムと協調して機能する1又は複数のシステムと接続又はインタフェースしてよい。
【0112】
様々な実施形態において、コントローラは、命令を受け取り、命令を発行し、本明細書に記載の動作を制御する様々な集積回路、ロジック、メモリ、及び/又はソフトウェアを備える電子機器を含む。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、及び/又は1又は複数のマイクロプロセッサ、又はプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを含んでよい。プログラム命令は、電解酸化炭素還元システムの1又は複数のコンポーネントでプロセスを実行するための動作パラメータを定義する、様々な個別の設定(又はプログラムファイル)の形でコントローラに伝達される命令であってもよい。いくつかの実施形態において、動作パラメータは、一酸化炭素、炭化水素、及び/又は他の有機化合物などの特定の還元生成物の生成中に1又は複数の処理段階を達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってもよい。
【0113】
いくつかの実装では、コントローラは、システムと統合されるか、又はシステムに連結されるか、他の方法でシステムにネットワーク接続されるか、又はそれらの組み合わせがなされるコンピュータの一部であるか、そのコンピュータに連結されてよい。例えば、コントローラは、リモートで(例えば、「クラウド」に)格納された命令を利用してよい、及び/又はリモートで実行してよい。コンピュータは、システムへのリモートアクセスを可能にすることで、電解動作の現在の進行状況を監視し、過去の電解動作の履歴を調べ、複数の電解動作からの傾向又は性能測定基準を調べて、現在の処理のパラメータを変更するか、現在の処理に従うように処理段階を設定するか、又は新しいプロセスを開始してよい。いくつかの例において、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)が、ローカルネットワーク又はインターネットを含み得るネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供することができる。リモートコンピュータは、パラメータ及び/又は設定の入力又はプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでよく、パラメータ及び/又は設定は、次に、リモートコンピュータからシステムに伝達される。いくつかの例において、コントローラは、1又は複数の動作中に実行されることになる処理段階の各々についてのパラメータを指定する、データの形式の命令を受信する。
【0114】
コントローラは、一緒にネットワーク接続され、MEAセルへの電流の印加及び本明細書に記載の他のプロセス制御等の共通の目的に向けて機能する、1又は複数の別個のコントローラを含むこと等によって、分散され得る。このような目的で分散された制御システムの一例としては、酸化炭素を電解還元するためのシステム上の1又は複数のプロセッサ、及び、プロセスを制御するために組み合わせられる(プラットフォームレベルで又はリモートコンピュータの一部として等)リモートに配置される1又は複数のプロセッサが挙げられる。
【0115】
コントローラ及びプロセッサ、メモリ、命令、ルーチン、モデル、又は他のコンポーネントを含む様々な関連の計算要素のいずれかは、場合により、1又は複数のタスクを実行する「よう構成された」として説明又は特許請求される。このようなコンテキストにおいて、「よう構成され」という表現は、コンポーネントが、動作中にタスク又はタスクを実行する構造(例えば、格納された命令、回路等)を含むことを示すことによって構造を示すために用いられる。そのため、コントローラ及び/又は関連付けられたコンポーネントは、たとえ特定のコンポーネントが必ずしも現在動作中(例えば、オンでない)でない場合でも、タスクを実行するよう構成されていると言えてよい。
【0116】
ある動作を実行する「よう構成された」コントローラ及び他のコンポーネントは、ハードウェアとして実装されてよく、これには、例えば、回路、当該動作を実装するために実行可能なプログラム命令等を格納するメモリが含まれる。追加的に、ある動作を実行する「よう構成された」コントローラ及び他のコンポーネントは、記載されたタスクを実行可能であるように動作させるべく、ソフトウェア及び/又はファームウェア(例えば、FPGA又はソフトウェアを実行する汎用プロセッサ)により操作されるハードウェアとして実装されてよい。追加的に、「よう構成された」は、記載されたタスクを実行するためのコンピュータ実行可能命令を格納する1又は複数のメモリ又はメモリ要素を指してよい。このようなメモリ要素は、処理ロジックを有するコンピュータチップ上のメモリを含んでよい。
【0117】
リアクタ、電解槽、膜アセンブリ、層及び触媒粒子等の非計算要素はまた、特定の機能を実行するよう「構成」され得る。このようなコンテキストにおいて、「よう構成され」という表現は、言及される構造が、機能の実行を可能にする1又は複数の特徴を有することを示す。このような特徴の例として、寸法、組成、ポロシティ等の物理及び/又は化学的特性が挙げられる。
MEAの実施形態
MEAの概要
【0118】
様々な実施形態において、MEAは、アノード層、カソード層、電解質、及び任意選択的に1又は複数の他の層を含む。層は、固体及び/又はゲルであってよい。これらの層は、イオン伝導性ポリマー等のポリマーを含んでよい。
【0119】
使用中、MEAのカソードは、CO、COと化学的に反応するイオン(例えば、プロトン又は水酸化物イオン)、及び電子という3つの入力を組み合わせることにより、COの電気化学的還元を促進する。還元反応は、CO、炭化水素、及び/又はメタノール、エタノール及び酢酸等の酸素含有及び水素含有有機化合物を生成し得る。使用時、MEAのアノードは、酸素元素及びプロトンを生成するように、水の電解等の電気化学酸化反応を促進する。カソード及びアノードは、それぞれの反応を促進するように触媒をそれぞれ含んでよい。
【0120】
MEAの動作中に、イオンはポリマー電解質を通じて移動し、一方、電子はアノードから外部回路を通じてカソードへ流れる。いくつかの実施形態において、液体及び/又はガスは、MEA層を通じて移動する又は浸透する。このプロセスは、MEA内の細孔によって促進され得る。
【0121】
MEA内の層の組成及び構成は、CO還元生成物の高収率を促進し得る。この目的で、MEAは、以下の条件のうち任意の1又は複数を促進し得る:(a)カソードにおける最小寄生還元反応(非CO還元反応);(b)アノード又はMEAにおける他の箇所へのCO反応物の低い損失;(c)反応中のMEAの物理的インテグリティ(例えば、MEA層は互いに固定されたままである);(d)CO還元生成物のクロスオーバーを防止する;(e)酸化生成物(例えばO)のクロスオーバーを防止する;(f)還元反応についてのカソードにおける適切な環境;(g)所望されないイオンを遮断しながら所望のイオンがカソード及びアノード間で移動する経路;及び(h)低電圧動作。
COx還元の考慮事項
【0122】
MEA等のポリマー系膜アセンブリは、水電解槽等の様々な電解システムにおいて、及び、燃料電池等の様々なガルバニックシステムにおいて用いられてきた。ただし、CO還元は、水電解槽及び燃料電池では発生しない、又は発生する程度が少ない問題を提示する。
【0123】
例えば、多くの用途では、CO還元のためのMEAが、約50,000時間以上程度(約5年間の連続動作)の寿命を必要とし、これは、自動車用途の燃料電池の予想寿命(例えば、5,000時間程度)よりも大幅に長い。また、様々な適用において、CO還元のためのMEAは、自動車用途の燃料電池に使用されるMEAと比較して、比較的大きな表面積を有する電極を使用している。例えば、CO還元のためのMEAは、少なくとも約500cmの表面積(細孔及び他の非平面形状部を考慮しない)を有する電極を用い得る。
【0124】
CO還元反応は、特定の反応物及び生成物種の物質移送を容易にし、且つ、寄生反応を抑制する、動作環境で実装されてよい。燃料電池及び水電解槽MEAは、多くの場合、そのような動作環境を作り出すことができない。例えば、このようなMEAは、カソードにける気体水素の発生及び/又はアノードにおける気体COの生成等の不所望な寄生反応を促進し得る。
【0125】
いくつかのシステムでは、CO還元反応の速度は、カソードでのガス状CO反応物の利用可能性によって制限される。対照的に、水の電解速度は反応物の利用可能性によって大幅に制限されない。液体水はカソード及びアノードに容易にアクセス可能である傾向があり、電解槽は可能な限り最高の電流密度付近で動作をすることができる。
MEAの構成
【0126】
特定の実施形態において、MEAは、カソード層と、アノード層と、アノード層とカソード層との間のポリマー電解質膜(PEM)を有する。ポリマー電解質膜は、短絡を引き起こすであろう電子伝達を防止しながら、アノード層とカソード層との間のイオン伝達を提供する。カソード層は還元触媒、及び、任意選択的に、イオン伝導性ポリマー(場合によりアイオノマーと呼ばれる)を含む。カソード層はまた、電子伝導体及び/又は追加のイオン伝導体を含み得る。アノード層は、酸化触媒、及び、任意選択的に、イオン伝導性ポリマーを含む。アノード層はまた、電子伝導体及び/又は追加のイオン伝導体を含み得る。PEMはまた、イオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態では、MEAが、カソード層とポリマー電解質膜との間にカソードバッファ層を有する。カソードバッファはまた、イオン伝導性ポリマーを含む。
【0127】
PEM、カソード、アノード及びカソードバッファ層におけるイオン伝導性ポリマーの各々は、存在する場合、組成物、伝導性、分子量又は他の特性において互いに異なり得る。いくつかの場合において、これらのポリマーのうちの2又はより多くは同一である。例えば、カソード及びカソードバッファ層におけるイオン伝導性ポリマーは同一であり得る。
【0128】
特定の実施形態では、MEAが、アノード層とポリマー電解質膜との間にアノードバッファ層を有する。アノードバッファはまた、他のイオン伝導性ポリマー(例えば、アノードにおけるイオン伝導性ポリマー)のいずれかと同一の特性を有し得るイオン伝導性ポリマーを含む。又は、アノードのイオン伝導性層は、MEAにおけるすべての他のイオン伝導性層と異なり得る。
【0129】
特定のMEA設計に関連して、イオン伝導性ポリマーには、アニオン伝導体、カチオン伝導体、及びカチオン-アニオン混合伝導体という3つの利用可能なクラスがある。特定の実施形態では、第1、第2、第3、第4、及び第5のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも2つは、異なるクラスのイオン伝導性ポリマーに由来する。
MEA層のためのイオン伝導性ポリマー
【0130】
「イオン伝導性ポリマー」又は「アイオノマー」という用語は、本明細書において、イオン(アニオン及び/又はカチオン)を伝導するポリマーを説明するために用いられ、材料がイオン伝導材料又はアイオノマーであることを言う。特定の実施形態において、MEAは、アニオン及び/又はカチオンについて、約1mS/cm又はより大きい比伝導率を有する1又は複数のイオン伝導性ポリマーを含む。「アニオン伝導体」という用語は、主にアニオンを伝導し(ただし、依然としていくらか少量のカチオン伝導があるであろう)、且つ、約100マイクロメートルの厚さで約0.85を超えるアニオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表す。「カチオン伝導体」及び/又は「カチオン伝導性ポリマー」という用語は、主にカチオンを伝導し(例えば、依然として付随的な量のアニオン伝導が存在し得る)、且つ、約100マイクロメートルの厚さで約0.85を超えるカチオンの輸率を有する、イオン伝導性ポリマーを表す。アニオン及びカチオンの両方を伝導すると説明されているイオン伝導性ポリマー(「カチオン-アニオン伝導体」)の場合は、アニオンもカチオンも、約100マイクロメートルの厚さで輸率が約0.85を超えることも約0.15を下回ることもない。各クラスのイオン伝導性ポリマーの例は、以下の表1に提示されている。
【表1】
ポリマー構造
【0131】
イオン化可能部分又はイオン性部分を含み得る、かつ、ここで説明されるMEAにおけるイオン伝導性ポリマー(アイオノマー)として用いられ得るポリマー構造の例を以下に提供する。イオン伝導性ポリマーは、イオン伝導性ポリマーを含む複数のMEA層のいずれかにおいて適切なものとして使用されてよい。材料を通した電荷伝導は、イオン化可能部分/イオン性部分におり提供される電荷のタイプ及び量(例えば、ポリマー構造上のアニオン電荷及び/又はカチオン電荷)によって制御されてよい。また、組成は、ポリマー、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ポリメリックブレンド、他のポリマーベースの形態、又は単量体繰り返し単位の他の有用な組み合わせを含んでよい。以下に記載の通り、様々な実施形態によれば、イオン伝導性ポリマー層は、架橋、連結部分、及びアリレン基のうちの1又は複数を含んでよい。いくつかの実施形態において、2又はより多くのイオン伝導性ポリマー(例えば、MEAの2又はより多くのイオン伝導性ポリマー層における)は架橋されてよい。
【0132】
非限定的な単量体単位は、以下のうちの1又は複数を含み得る。
【化1】
ここで、Arは、任意選択的に置換されたアリレン又は芳香族であり;Akは、任意選択的に置換されたアルキレン、ハロアルキレン、脂肪族、ヘテロアルキレン、又はヘテロ脂肪族であり;Lは連結部分(例えば、本明細書において説明されるいずれか)である、又は、-C(R)(R)-であり得る。さらに他の非限定的な単量体単位は、任意選択的に置換されたアリレン、アリレンオキシ、アルキレン又はこれらの組み合わせ、例えば任意選択的に置換された(アリール)(アルキル)エン(例えば、‐Ak‐Ar‐又は‐Ak‐Ar‐Ak‐又は‐Ar‐Ak‐、ここでArは任意選択的に置換されたアリレン及びAkは任意選択的に置換されたアルキレン)などを含んでよい。1又は複数のモノマーユニットは、任意選択的に1又は複数のイオン化可能又はイオン性部分(例えば、本明細書で記載したように)で置換されてよい。
【0133】
1又は複数のモノマーユニットは組み合わされてポリマー単位を形成し得る。非限定的なポリマー単位は、以下のうちの任意のものを含む。
【化2】
ここで、Ar、Ak、L、n及びmは、本明細書において説明されるいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、各mは独立に0又は1以上の整数である。他の実施形態において、Arは、2又はより多くのアリレン又は芳香族基を含み得る。
【0134】
他の代替的な構成もまた本明細書の組成で包含され、例えば、分岐構成、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、ランダムコポリマー又は統計的コポリマー、ステロブロックコポリマー、グラジエントコポリマー、グラフトコポリマー、及び本明細書に記載の任意のブロック又は領域の組み合わせなどである。
【0135】
ポリマー構造の例は、式(I)‐(V)及び(X)~(XXXIV)のうちの任意の1つによるもの又はこれらの塩を含む。いくつかの実施形態において、ポリマー構造はコポリマーであり、且つ、式(I)‐(V)のうちの任意の1つのもの又はこれらの塩から選択された第1のポリマー構造を含む;第2のポリマー構造は、任意選択的に置換された芳香族、任意選択的に置換されたアリレン、式(I)‐(V)及び(X)~(XXXIV)の任意の1つから選択された構造、又はこれらの塩を含む。
【0136】
一実施形態において、イオン伝導性ポリマーのMWは、少なくとも10,000g/mol又は約5,000~2,500,000g/molの重量平均分子量(Mw)である。別の実施形態において、MWは、少なくとも20,000g/mol又は約2,000~2,500,000g/molの数平均分子量(Mn)である。
【0137】
本明細書のいずれの実施形態においても、n、n1、n2、n3、n4、m、m1、m2又はm3の各々は独立に1以上、20以上、50以上、100以上及び1~1,000,000、例えば10~1,000,000、100~1,000,000、200~1,000,000、500~1,000,000又は1,000~1,000,000などである。
【0138】
非限定的ポリマー構造は、以下:
【化3】
又はその塩を含み得、
ここで、R、R、R、及びR10の各々は独立に、電子求引性部分、H、任意選択的に置換された脂肪族、アルキル、ヘテロ脂肪族、ヘテロアルキレン、芳香族、アリール、又はアリールアルキレンであり、ここでR又はRのうちの少なくとも1つは、電子求引性部分を含み得、又は、R及びR又はR及びR10の組み合わせは、共にまとめられて、任意選択的に置換された環状基を形成する;
Arは、任意選択的に置換された芳香族又はアリレン(例えば、本明細書において説明されるいずれか)であるか、又はそれを含み;
nの各々は独立に、1又はより大きい整数であり;
環a~cの各々は任意選択的に置換され得;
環a~c、R、R、R及びR10は任意選択的にイオン化可能又はイオン性部分を含み得る。
【0139】
さらに非限定的ポリマー構造は、以下:
【化4】
のうちの1又は複数、又はその塩を含み得、ここで:
は、本明細書において(例えば式(I)~(V)について)説明されるいずれかであり得;
nは1又はより大きく;
各L8A、LB'、及びLB"は独立に連結部分であり;
各X8A、X8A'、X8A"、XB'、及びXB"は独立にイオン化可能又はイオン性部分である。
【0140】
さらなる他のポリマー構造は、以下:
【化5】
【化6】
【化7】
又はその塩を含み、ここで:
、R、R、R、R、R及びR10の各々は独立に、電子求引性部分、H、任意選択的に置換された脂肪族、アルキル、ヘテロ脂肪族、ヘテロアルキレン、芳香族、アリール、又はアリールアルキレンであり、ここで、R又はRのうちの少なくとも1つは、電子求引性部分を含み得、又は、R及びR又はR及びR10の組み合わせは、共にまとめられて、任意選択的に置換された環状基を形成し得;
各Akは、任意選択的に置換された脂肪族、アルキレン、ハロアルキレン、ヘテロ脂肪族又はヘテロアルキレンであるか、又はそれを含み;
各Arは、任意選択的に置換されたアリレン又は芳香族であるか、又はそれを含み;
L、L、L、L、及びLの各々は独立に連結部分であり;
n、n1、n2、n3、n4、m、m1、m2及びm3の各々は独立に1又はより多くの整数であり;
qは、0、1、2、又はより大きく;
環a~iの各々は任意選択的に置換され得;
環a~i、R、R、R、及びR10は、任意選択的に、イオン化可能又はイオン性部分を含み得る。
【0141】
特定の実施形態(例えば、(XIV)又は(XVの式に関する)において、環a及び/又は環b上の窒素原子の各々は、任意選択的に置換された脂肪族、アルキル、芳香族、アリール、イオン化可能部分又はイオン性部分で置換される。いくつかの実施形態において、1又は複数の水素又はフッ素原子(例えば、式(XIX)又は(XX)における)は置換されて、イオン化可能部分又はイオン性部分(例えば、本明細書で記述された任意の)を含んでよい。他の実施形態において、ポリマー構造中に存在する酸素原子(例えば、式(XXVIII)における)は、アルカリドーパント(例えば、K)と関連付けられてよい。
【0142】
特定の例において、Ar、環a~i(例えば、環a、b、f、g、h又はi)、L、L、L、L、L、Ak、R、R、R及び/又はR10の1又は複数は、任意選択的に1又は複数のイオン化可能又はイオン性部分、及び/又は、1又は複数の電子求引性基で置換されてよい。Ar、環(例えば環a~i)、L、Ak、R、R、R及びR10のためのさらなる他の非限定的置換基には、本明細書に記載の1又は複数、例えば、シアノ、ヒドロキシ、ニトロ及びハロ、及び任意選択的に置換された脂肪族、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アリール、アリールアルキレン、アリロイル(aryloyl)、アリールオキシ、アリールアルコキシ、ヒドロキシアルキル及びハロアルキルなどが含まれる。
【0143】
いくつかの実施形態において、R、R及びRの各々は独立にH、任意選択的に置換された芳香族、アリール、アリールオキシ、又はアリールアルキレンである。他の実施形態において(例えば、式(I)‐(V)又は(XII)において)、Rは電子求引性部分を含む。さらなる他の実施形態において、R、R及び/又はR10はイオン化可能又はイオン性部分を含む。
【0144】
一事例において、ポリマーサブユニットは、イオン性部分を有しないことがあり得る。代替的に、ポリマーサブユニットは、Ar基、L基、Ar及びL基の両方に、又は、L基の一部として統合され得るイオン性部分を含み得る。イオン化可能部分又はイオン性部分の非限定的例には、本明細書に記載されたカチオン性基、アニオン性基及びマルチイオン基が含まれる。
【0145】
本明細書における任意の実施形態において、電子求引性部分は、任意選択的に置換されたハロアルキル、シアノ(CN)、リン酸塩(例えば、-O(P=O)(ORP1)(ORP2)又は-O-[P(=O)(ORP1)-O]P3-RP2)、硫酸塩(例えば、-O-S(=O)(ORS1))、スルホン酸(-SOH)、スルホニル(例えば、-SO-CF))、ジフルオロボラニル(-BF)、ボロノ(B(OH))、チオシアナート(-SCN)、又はピペリジニウムであり得るか、又はそれを含み得る。さらなる他の非限定的なリン酸基には、リン酸の誘導体、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、トリメタリン酸、及び/又は、無水リン酸、又はこれらの組み合わせなどを含んでよい。
【0146】
さらなる他のポリマー単位には、ポリ(ベンズイミダゾール)(PBI)、ポリフェニレン(PP、ポリイミド(PI)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、スルホン化ポリイミド(SPI)、ポリスルホン(PSF)、スルホン化ポリスルホン(SPSF)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、カルド基を有するPEEK(PEEK‐WC)、ポリエーテルスルホン(PES)、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(SPEEK)、カルド基を有するSPEEK(SPEEK‐WC)、ポリ(P‐フェニレンオキシド)(PPO)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エピクロルヒドリン)(PECH)、ポリ(スチレン)(PS)、スルホン化ポリ(スチレン)(SPS)、水素化ポリ(ブタジエン‐スチレン)(HPBS)、スチレンジビニルベンゼンコポリマー(SDVB)、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン(SEBS)、スルホン化ビスフェノール‐A‐ポリスルホン(SPSU)、ポリ(4‐フェノキシベンゾイル‐1,4‐フェニレン)(PPBP)、スルホン化ポリ(4‐フェノキシベンゾイル‐1,4‐フェニレン)(SPPBP)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(フォスファゼン)、ポリ(アリールオキシフォスファゼン)、ポリエーテルイミド及びこれらの組み合わせが含まれ得る。
COx還元のためのバイポーラMEA
【0147】
特定の実施形態では、MEAは、アニオン伝導性ポリマーをMEAのカソード側に、及び、インタフェースするカチオン伝導性ポリマーをMEAのアノード側に有するバイポーラ界面を含む。いくつかの実装では、カソードが、第1の触媒及びアニオン伝導性ポリマーを含有する。特定の実施形態では、アノードが、第2触媒及びカチオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実装では、カソードとPEMとの間に位置するカソードバッファ層が、アニオン伝導性ポリマーを含有する。いくつかの実施形態において、アノードバッファ層は、アノードとPEMとの間に配置され、カチオン伝導性ポリマーを含む。
【0148】
カソード及び/又はカソードバッファ層でアニオン伝導性ポリマーを使用する実施形態では、MEAは、望ましくない生成物を生成し、且つ、セルの全体的な効率を低下させる、望ましくない反応を減少又は遮断することができる。アノード及び/又はアノードバッファ層にカチオン伝導性ポリマーを使用する実施形態では、所望の生成物の生成を減少させ、且つ、セルの全体的な効率を低下させる、望ましくない反応を低減又は遮断することができる。
【0149】
例えば、COのカソード還元に使用される電位のレベルでは、水素イオンが水素ガスに還元され得る。これは寄生反応であり、COを還元するために使用できる電流は、代わりに水素イオンを還元するために使用される。水素イオンは、CO還元リアクタのアノードで実行される様々な酸化反応によって生成されてよく、MEAを横切って移動し、カソードに到達してよく、そこで還元されて水素ガスを生成することができる。この寄生反応が進行できる範囲は、カソードに存在する水素イオンの濃度の関数である。従って、MEAは、カソード層及び/又はカソードバッファ層でアニオン伝導性材料を使用してよい。アニオン伝導性材料は、水素イオンがカソード上の触媒部位に到達することを少なくとも部分的に遮断する。結果として、水素ガスの寄生生成が減少し、CO又は他の炭素含有生成物の生成速度が増加する。
【0150】
回避され得る別の反応は、COを生成するアノードでの炭酸イオン又は炭酸水素イオンの反応である。水性炭酸イオン又は炭酸水素イオンは、カソードでCOから生成され得る。そのようなイオンがアノードに到達すると、水素イオンと反応してガス状COを生成及び放出し得る。その結果、COはカソードからアノードへ正味で移動し、そこで還元されず、酸化生成物と一緒に失われる。カソードにおいて生成された炭酸イオン及び炭酸水素イオンがアノードに到達するのを防止するために、アノード及び/又はアノードバッファ層は、カチオン伝導性ポリマーを含んでよく、これが、炭酸水素イオン等の負イオンのアノードへの移送を少なくとも部分的に遮断する。
【0151】
従って、いくつかの設計では、バイポーラ膜構造が、カソードでのpHを上げて、CO還元を促進し、プロトン交換層などのカチオン伝導性ポリマーが、相当量のCO及びCO還元生成物(例えば、炭酸水素塩)のセルのアノード側への通過を防止する。
【0152】
CO還元に使用するためのMEA1100の例を図11に示す。MEA1100は、イオンがカソード層1120とアノード層1140との間を移動するための経路を提供するイオン伝導性ポリマー層1160によって分離された、カソード層1120とアノード層1140とを有する。特定の実施形態では、カソード層1120は、アニオン伝導性ポリマーを含む、及び/又は、アノード層1140は、カチオン伝導性ポリマーを含む。特定の実施形態では、MEAのカソード層及び/又はアノード層は多孔質である。細孔は、ガス及び/又は流体移送を促進し得、反応に利用可能な触媒表面積の量を増加させ得る。
【0153】
イオン伝導性層1160は、2つ又は3つの副層、すなわち、ポリマー電解質膜(PEM)1165、任意選択的なカソードバッファ層1125、及び/又は任意選択的なアノードバッファ層1145を含んでよい。イオン伝導性層の1又は複数の層が多孔質であってもよい。特定の実施形態では、少なくとも1つの層が非多孔質であるため、カソードの反応物及び生成物は、ガス及び/又は液体の移送によってアノードに通過することができず、その逆も同様である。特定の実施形態では、PEM層1165が非多孔質である。アノードバッファ層及びカソードバッファ層の特性の例は、本明細書の他の箇所に提供されている。特定の実施形態において、イオン伝導性層は、専ら単層であるか又は2の副層を含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、酸化炭素電解槽アノードは、酸化触媒及びイオン伝導性ポリマーのブレンドを含む。アノードに供給される反応物とアノード触媒とに応じて、アノードで発生し得る様々な酸化反応が存在する。一構成では、酸化触媒は、Ir、Pt、Ni、Ru、Pd、Auの金属及び酸化物とそれらの合金、IrRu、PtIr、Ni、NiFe、ステンレス鋼、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。酸化触媒は更に、炭素、ホウ素ドープダイヤモンド、チタン及びそれらの任意の組み合わせ等の伝導性担持粒子を含み得る。
【0155】
例として、酸化触媒は、構造化メッシュの形態であってもよいし、粒子の形態であってもよい。酸化触媒が粒子の形態である場合は、粒子は、電子伝導性担持粒子によって担持され得る。酸化触媒が粒子の形態である場合は、粒子は、電子伝導性担持粒子によって担持され得る。伝導性担持粒子はナノ粒子であり得る。伝導性担持粒子は、電解槽が動作しているときに電解槽アノード内に存在する、酸化安定的で任意の電気化学反応に関与しない化学物質に適合し得る。これは、伝導性担持粒子が、アノードでの電圧及び反応物を念頭に置いて選択される場合に、特に有用である。いくつかの構成では、伝導性担持粒子がチタンであり、高電圧に非常に適している。他の構成では、伝導性担持粒子が炭素であり、低電圧で最も有用であり得る。いくつかの実施形態において、そのような伝導性担持粒子は酸化触媒粒子より大きく、各伝導性担持粒子は1又は複数の酸化触媒粒子を担持することができる。一構成では、酸化触媒がイリジウム酸化ルテニウムである。酸化触媒に使用できる他の材料の例には、上記のものが含まれるが、これらに限定されない。これらの金属触媒の多くは、特に反応条件下で、酸化物の形態であり得ることが理解されるべきである。
【0156】
言及されたように、いくつかの実施形態において、MEAのアノード層はイオン伝導性ポリマーを含む。いくつかの場合において、このポリマーは、移動可能な正電荷イオンを移送するよう構成されている1又は複数の共有結合された負電荷官能基を含む。第2イオン伝導性ポリマーの例として、フッ化エタンスルホニル、2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエチニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクタンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、及びそれらのブレンドが挙げられる。市販のカチオン伝導性ポリマーの例として、例えば、Nafion115、Nafion117、及び/又はNafion211が挙げられる。上に説明されるカチオン伝導性アイオノマーの他の例は、アノード層における使用に適切である。
【0157】
アノード内のイオン伝導性ポリマーの量を選択することにはトレードオフがあってよい。例えば、アノードは、十分なイオン伝導性を提供するための十分なアノードイオン伝導性ポリマーを含み得、一方で、反応物及び生成物がそれを通じて容易に移動できるように多孔質である。アノードはまた、反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化するために製造され得る。様々な配置において、アノードにおけるイオン伝導性ポリマーは、アノード総質量の約10及び90wt%、又は、約20及び80wt%、又は約25及び70wt%を占める。例として、イオン伝導性ポリマーは、アノードの約5及び20wt%を占め得る。特定の実施形態において、アノードは、可逆水素電極に対して約1.2Vより上の電圧等の比較的高電圧に耐えるよう構成され得る。こいくつかの実施形態において、反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化し、且つ、ガス及び液体の移送を容易にするためにアノードは多孔質である。
【0158】
金属触媒の一例では、Ir粒子又はIrOx粒子(100~200nm)及びNafionアイオノマーが、約10μmの厚さの多孔質層を形成する。金属触媒の充填量は約0.5~3g/cmである。
いくつかの実施形態において、塩基性反応にNiFeOxが用いられる。
【0159】
いくつかの実施形態において、MEA及び/又は関連するカソード層が、in situで生成されたガスに対応するように設計又は構成されている。このようなガスは様々な機構を介して生成され得る。例えば、カソードからアノードへ移動する炭酸又は炭酸水素イオンが、アノードからカソードへ移動する水素イオンに遭遇するときに二酸化炭素が生成され得る。この遭遇は、例えば、バイポーラMEAにおけるアニオン及びカチオン伝導性アイオノマーの界面で生じ得る。代替的に、又は、追加的に、このような接触は、カソード層及びポリマー電解質膜の界面で生じ得る。例えば、ポリマー電解質膜は、アノードで生成されたプロトンの移送を可能にするカチオン伝導性アイオノマーを含み得る。カソード層は、アニオン伝導アイオノマーを含み得る。
【0160】
二酸化炭素又は他のガスの生成は、放置したままにすると、MEAが剥離し得る又はそうでなければ損傷し得る。それはまた、反応物ガスの一部がアノードで還元されることを防止し得る。
【0161】
二酸化炭素等のガスがin situで生成されるMEA内又はそれに隣接する場所は、このようなガスに対応するよう設計された1又は複数の構造を含み、任意選択的に、ガスがアノードに到達することを防止し得る(そうでない場合、そこでは反応に利用できない)。
【0162】
特定の実施形態において、ガスが生成される場所にポケット又は空隙が提供される。これらのポケット又は空隙は、生成されたガスがMEAから、任意選択的にカソード(ここで、例えば、二酸化炭素は電気化学的に還元され得る)へ出ることを可能にする関連経路を有し得る。特定の実施形態において、MEAは、アニオン及びカチオン伝導性アイオノマー層の界面(バイポーラMEAにおけるこのような界面等)において不連続性を含む。いくつかの実施形態において、カソードにおいて又はその近くで生成された二酸化炭素がカソード内に退避することを可能にする細孔又は空隙を含む方式でカソード構造が構築される。
【0163】
いくつかの実施形態において、このような不連続性又は空隙領域は、アノード及びカソード構造を別個に製造し、次に、不連続性又は空隙を生成する方式で、別個に製造された2つの構造を一緒に挟み込む方式でMEAにおいて製造することによって調製される。
【0164】
いくつかの実施形態において、フルオロカーボンポリマー等の多孔質又は繊維状マトリクス上に銅又は他の触媒材料を堆積し、次に、結果として生じる構造を、アニオン伝導アイオノマーで被覆することによって、MEA構造が製造される。いくつかの実施形態において、被覆された構造は次に、アノード、及び、カチオン伝導膜等のポリマー電解質膜を含み得る残りのMEA構造に付着する。
【0165】
いくつかの実施形態において、カソードは多孔質構造及び/又は多孔質構造を有する関連カソードバッファ層を有する。細孔は、生成された二酸化炭素又は他のガスがカソードへのその経路を見つけることを可能にする開放的なセルフォーマットで存在し得る。
【0166】
いくつかのMEAにおいて、アニオン伝導層及びカチオン伝導層の間の界面(例えば、カソードバッファ層及びPEMの界面)は、界面において形成し得る二酸化炭素、水、又は他の材料によって生じる層間剥離に耐える特徴を含む。いくつかの実施形態において、当該特徴は、生成された材料が、MEAから出るまで占有する空隙空間を提供する。いくつかの例において、アニオン伝導層等の層の天然ポロシティが必要な空隙空間を提供する。細孔の相互接続されるネットワークは、界面において生成される二酸化炭素又は他のガスのための退避ルートを提供し得る。いくつかの実施形態において、MEAは、界面において(物理又は化学的な)インターロック構造を含む。いくつかの実施形態において、MEAは界面において不連続性を含む。いくつかの実施形態において、MEAは、界面に隣接する1つの層において繊維状構造を含む。MEAのアニオン及びカチオン伝導層の間の界面構造の更なる説明は、2021年6月3日に公開された、参照によって全体として本明細書に組み込まれる、「COx還元のための膜電極アセンブリ」と題するPCT出願公開第2021/108446号に含まれる。
カソード触媒層
カソード層機能
【0167】
カソード触媒層の主な機能は、CO還元のための触媒を提供することである。反応の例は以下の通りである:CO+2H+2e→CO+H
【0168】
カソード触媒層はまた、CO変換を促進する他の機能を有し得る。これらは、水管理、ガス移送、金属触媒への反応物送達、生成物除去、金属触媒の粒子状構造の安定化、金属触媒への電子及びイオン伝導、及びMEA内の機械的安定性を含む。
【0169】
特定の機能及び課題は、酸化炭素電解槽に特有であり、燃料電池又は水電解槽等の他の適用のためのMEAアセンブリにおいて見られない。これらの課題には、MEAのカソード触媒層が、ガス(例えば、CO又はCO)を中に移送すること、及び、ガス(例えば、エチレン、メタン、CO)又は液体(例えば、エタノール)を外に移送することが含まれる。カソード触媒層は、ガス移送を遮断し得る水の蓄積を防止するように設計又は構成され得る。更に、COx還元のための触媒は、場合により、水素燃料電池において用いられ得る白金のような触媒より安定性が低い。これらの機能、これらの特定の課題、及び、それらにどのように対処できるかは、以下で説明される。
水管理(カソード触媒層)
【0170】
カソード触媒層は、水の移動を容易にして、水がカソード触媒層に閉じ込められるのを防止する。閉じ込められた水は、COが触媒に接近するのを妨げる及び/又は反応生成物がカソード触媒層の外に移動するのを妨げ得る。
【0171】
水管理の課題は、多くの点でCO電解槽に固有のものである。例えば、PEM燃料電池の酸素電極と比較して、CO電解槽ははるかに低いガス流量を使用する。CO電解槽はまた、より低い流量を使用して、入力COの高利用率を達成し得る。気相水の除去は、体積ガス流量によって決定されるため、CO電解槽で実行される気相水の除去ははるかに少なくなる。CO電解槽は、燃料電池より高い圧力(例えば、100psi~450psi)で動作してもよく、より高い圧力では、同じモル流量により、体積流量が少なくなり、気相水の除去が少なくなる。いくつかのMEAの場合は、気相水を除去する能力は、燃料電池に存在しない温度制限によってさらに制限される。例えば、COからCOへの還元は、約50℃で実行されてよく、エチレン及びメタン生成は20℃~25℃で実行されてよい。これは、燃料電池の通常の動作温度である80℃~120℃と比較される。その結果、除去する液相水が多くなる。
【0172】
カソード触媒層が水を除去する能力に影響を与える特性としては、ポロシティ、細孔サイズ、細孔サイズの分布、疎水性、イオン伝導性ポリマーと金属触媒粒子と電子伝導性担体との相対量、層の厚さ、層全体の触媒の分布、及び、層を通した触媒の周囲でのイオン伝導性ポリマーの分布が挙げられる。
【0173】
多孔質層は、水の出口経路を可能にする。いくつかの実施形態において、カソード触媒層は、約1nm~100nmのサイズを有する一部の細孔と、少なくとも約1ミクロンのサイズを有する他の細孔とを含む細孔サイズ分布を有する。このサイズ分布は、水の除去に役立ち得る。多孔質構造は、炭素担持構造(例えば、担持粒子)内の細孔、スタックした炭素ナノ粒子間にスタックする細孔、凝集した炭素球(マイクロメートルスケール)間に二次的にスタックする細孔、又は、PTFE及び炭素間の界面が数百nm~マイクロメートルの範囲の不規則な細孔も作り出す、不活性フィラー(例えば、PTFE)が導入された細孔、のうちの1又は複数によって形成することができる。
【0174】
カソード触媒層の厚さは水管理に寄与し得る。より厚い層を使用することにより、触媒、ひいては反応をより大きな体積で分散させることができる。これにより、水分布が広がり、管理が容易になる。特定の実施形態において、カソード層の厚さは約80nm~300μmである。
【0175】
非極性の疎水性骨格を有するイオン伝導性ポリマーを、カソード触媒層で使用してよい。いくつかの実施形態において、カソード触媒層が、イオン伝導性ポリマーに加えて、PTFEなどの疎水性ポリマーを含んでよい。いくつかの実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、疎水性ポリマーも含むコポリマーのコンポーネントであってよい。いくつかの実施形態において、イオン伝導性ポリマーは疎水性及び親水性領域を有する。親水性領域は、水移動を支援でき、疎水性領域はガス移動を支援できる。
ガス移送(カソード触媒層)
【0176】
カソード触媒層は、ガス移送用に構造化される。具体的には、COは、触媒まで移送され、気相反応生成物(例えば、CO、エチレン、メタン等)は触媒層の外に移送される。
【0177】
ガス移送に関連付けられる特定の課題は、CO電解槽に固有のものである。ガスは、カソード触媒層の内外に移送される。すなわち、COは内に移送され、CO、エチレン、及びメタンなどの生成物は外に移送される。PEM燃料電池では、ガス(O又はH)が内に移送されるが、外には何も出ないか、又は生成水が出る。また、PEM水電解槽において、水は、O及びHガス生成物との反応物である。
【0178】
リアクタを通る圧力、温度、及び流量を含む動作条件は、ガス移送に影響を及ぼす。ガス移送に影響を与えるカソード触媒層の特性は、ポロシティと、細孔サイズ及び分布と、層の厚さと、アイオノマー分布とを含む。これらのパラメータの値の例が本明細書の他の箇所において提供される。
【0179】
いくつかの実施形態において、アイオノマーと触媒との接触が最小限に抑えられる。例えば、アイオノマーが、触媒との接触を最小限に抑えながら、炭素の表面に沿って連続的なネットワークを形成してよい。アイオノマー、担体、及び触媒は、アイオノマーが触媒表面よりも担体表面に対してより高い親和性を有するように設計されてよい。これは、アイオノマーが触媒との間でイオンを伝導することを可能にしながら、アイオノマーによって遮断されることのない触媒との間でのガス移送を促進し得る。
アイオノマー(カソード触媒層)
【0180】
アイオノマーは、触媒層の粒子を一緒に保持することと、カソード触媒層を通るイオンの移動を可能にすることとを含む複数の機能を有してよい。いくつかの場合において、アイオノマーと触媒表面との相互作用が、CO還元に有利な環境を作り出し、所望の生成物に対する選択性を高めてよい、及び/又は反応に必要な電圧を減少させてよい。アイオノマーは、カソード触媒層を通るイオンの移動を可能にするイオン伝導性ポリマーであることが重要である。例えば、水酸化物イオン、炭酸水素イオン、及び炭酸イオンは、CO還元が起こる触媒表面から遠くに移動する。
【0181】
特定の実施形態において、カソードのイオン伝導性ポリマーは、アニオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含む。これは、プロトン伝導体と比較してpHを上げることから、有利な場合がある。
【0182】
様々なアニオン伝導性ポリマーが上述された。これらの多くは、それらの骨格にアリール基を有する。このようなアイオノマーは、本明細書に説明されるようなカソード触媒層において使用され得る。いくつかの実施形態において、イオン伝導性ポリマーは、移動可能な負電荷イオンを移送するよう構成されている、1又は複数の共有結合された、正電荷官能基を含み得る。このようなイオン伝導性ポリマーの例として、アミノ化テトラメチルポリフェニレン;ポリ(エチレン-コ-テトラフルオロエチレン)ベースの第四級アンモニウムポリマー;四級化ポリスルホン、それらのブレンド、及び/又は、任意の他の適切なイオン伝導性ポリマーが挙げられる。第1のイオン伝導性ポリマーは、炭酸水素塩又は水酸化物塩を可溶化するよう構成され得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、カソードにおけるイオン伝導性ポリマーは、カチオン及びアニオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含む。このようなイオン伝導性ポリマーの例として、カチオン及びアニオンを移送できるポリエーテル、及び、カチオン及びアニオンを移送できるポリエステルが挙げられる。このようなイオン伝導性ポリマーの更なる例として、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン及びポリウレタンが挙げられる。
【0184】
電解槽における使用中、カチオン及びアニオン伝導体は、局所的なpHを(純粋なカチオン伝導体と比較して)上昇させ得る。更に、いくつかの実施形態において、アニオン伝導性ポリマー及びカチオン伝導ポリマーの2次元界面においてではなく、カチオン及びアニオン伝導体を使用して、大量の酸塩基再結合を促進することが有利であり得る。これにより、水及びCOの形成、熱の発生を広げることができ、酸塩基反応に対する障壁を減少させることによって、潜在的に膜の抵抗を下げることができる。これらは全て、生成物の蓄積、熱を回避する手助けをするのに有利であり得、MEAでの抵抗損失を低下させてセル電圧を下げるのに有利である場合がある。
【0185】
特定の実施形態において、アニオン伝導性ポリマーは、共有結合した正電荷官能基が付加されたポリマー骨格を有する。いくつかの実施形態において、これらは正電荷窒素基を含んでよい。いくつかの実施形態において、ポリマー骨格は、上述のように非極性である。ポリマーは、任意の適切な分子量、例えば、25,000g/mol~150,000g/molを有し得るが、この範囲外のポリマーが使用され得ることが理解される。
【0186】
CO電解槽におけるイオン伝導性ポリマーについての特定の課題として、COがポリマーに溶解し、及び/又は、ポリマーを可溶化し、それらの機械的安定性を低下させ、膨張しやすくし、ポリマーがより自由に移動することを可能にすることが挙げられる。これにより、触媒層全体とポリマー電解質膜の機械的安定性が低下する。いくつかの実施形態において、CO可塑化の影響を受けにくいポリマーが使用される。また、水電解槽及び燃料電池の場合とは異なり、伝導性の炭酸イオン及び炭酸水素イオンがCO還元についての重要なパラメータである。
【0187】
水素結合を形成できるヒドロキシル基及びカルボキシル基などの極性官能基の導入により、疑似架橋ネットワークが形成される。エチレングリコール及びアルミニウムアセチルアセトナートのような架橋剤を添加して、アニオン交換ポリマー層を強化し、ポリマーのCO可塑化を抑制することができる。ポリジメチルシロキサン共重合体のような添加物も、CO可塑化を緩和するのに役立ち得る。
【0188】
様々な実施形態によると、イオン伝導性ポリマーは、少なくとも6mS/cm、又は、いくつかの実施形態において少なくとも12mS/cmの炭酸水素イオン伝導性を有してよく、80℃以下の温度で化学的及び機械的に安定しており、メタノール、エタノール、及びイソプロポノールなどの、製造中に使用される有機溶媒に溶けやすい。イオン伝導性ポリマーは、CO還元生成物の存在下で安定している(化学的に安定しており、安定した溶解度を有する)。イオン伝導性ポリマーは、そのイオン交換容量、いくつかの実施形態において2.1mmol/g~2.6mmol/gの範囲であり得る、イオン交換に関与する活性部位又は官能基の合計によって特徴付けられてもよい。いくつかの実施形態において、1又は1.5mmol/gより大きい等、より低いIECを有するイオン伝導性ポリマーが使用され得る。
【0189】
アニオン伝導性ポリマーの例は、上記で、クラスAイオン伝導性ポリマーとして上記表内に与えられている。
【0190】
受け取られたときのままのポリマーは、アニオン(例えば、I、Br等)を炭酸水素塩と交換することによって調製されてよい。
【0191】
また、上記のように、特定の実施形態では、アイオノマーがカチオン-アニオン伝導性ポリマーであってよい。上記の表には、例がクラスBイオン伝導性ポリマーとして示されている。
【0192】
カソード内のカチオン伝導性ポリマーの量を選択することには、トレードオフがある。カソードは、十分なイオン伝導性を提供するために十分なカソードイオン伝導性ポリマーを含み得るが、反応物及び生成物がそれを通じて容易に移動できるほど十分に、及び、反応に利用可能な触媒表面積の量を最大化するために、多孔質であり得る。様々な配置において、カソードイオン伝導性ポリマーは、カソード層における材料の約10~90wt%、約20~80wt%、又は約30~70wt%を占める。
金属触媒(カソード触媒層)
【0193】
特定の実施形態において、金属触媒は、上に提示された特性のうち1又は複数を有する。一般に、金属触媒は1又は複数のCO還元反応を触媒する。金属触媒は通常ナノ粒子の形態であり得る、いくつかの実施形態において、より大きな粒子、フィルム、及びナノ構造表面を使用してよい。ナノ粒子の特定の形態により、より大きな活性を有する活性部位が曝露されて安定化され得る。
【0194】
還元触媒粒子に使用できる材料の例には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Au、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、及びHgなどの遷移金属、及びそれらの組み合わせ、及び/又は任意の他の適切な材料が含まれるが、これらに限定されない。他の触媒材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、アクチニド、及びSn、Si、Ga、Pb、Al、Tl、Sb、Te、Bi、Sm、Tb、Ce、Nd、及びInなどの遷移金属、又はそれらの組み合わせ、及び/又は他の任意の適切な触媒材料を含むことができる。触媒の選択は、CO電解槽のカソードで実行される反応に依存する。
【0195】
金属触媒は、純粋な金属(例えば、Cu、Au、Ag)から構成され得るが、合金又は2金属系が特定の反応に使用され得る。いくつかの実施形態において、金属触媒がドーパントを含む。ドーパントの例として、ホウ素、窒素、及び水素が挙げられる。いくつかの場合において、金属触媒は、ホウ素ドープ銅を含む。ドーパントの濃度は、金属粒子にわたって実質的に均一であり得るか、又は、粒子表面からの距離の関数として変動し得る。例えば、ドーパント濃度は、粒子表面からの距離と共に減少し得る。
【0196】
触媒の選択は、所望の反応によって誘導され得る。例えば、CO生成にはAuを使用してよく、メタン及びエチレン生成にはCuを使用してよい。CO還元は、既知の触媒での水素発生及び酸素発生など、他のよく知られた電気化学反応と比較して、高い過電位を有する。少量の汚染物質が、CO変換のための触媒を汚染し得る。
【0197】
少なくとも部分的に、所望の生成物及びMEAの動作に基づいて、異なる金属触媒材料が選択され得る。例えば、1Dナノワイヤは、エチレン生成についてのより高い選択性を有し得るが、一方で三角形のCuナノプレートは、メタンについてのより高い選択性を有し得る。ナノキューブは、AEM MEAにおけるエチレンについての良好な選択性を示し得る。
担体(カソード触媒層)
【0198】
上で説明されたように、担持構造は粒子であり得る。しかしより一般に、それらは、球、多角形(例えば三角形)、ナノチューブ、及びシート(例えばグラフェン)等の多くの異なる形状を有し得る。体積に対して大きい表面積を有する構造が、触媒粒子が付着する部位を提供するために有用である。担持構造はまた、それらのポロシティ、体積あたりの表面積、導電性、官能基(Nドープ、Oドープ等)及び同様のものによって特徴付けられ得る。粒子状担持構造の様々な特性が上で提示される。
【0199】
存在する場合、カソード触媒粒子の担体は、様々な機能のいずれかを有し得る。カソード触媒層の担体は、金属ナノ粒子を安定化させてそれらが凝集するのを防止し、触媒層の体積全体に触媒部位を分散させて反応物の損失及び生成物の形成を広げることができる。担体はまた、導電性経路を金属ナノ粒子に提供し得る。例えば、炭素粒子は、接触する炭素粒子が導電性経路を提供するように一緒に充填される。粒子間の空隙空間は、ガス及び液体が通過できる多孔質ネットワークを形成する。
【0200】
担体は、疎水性であるとともに、金属ナノ粒子に対して親和性を有してよい。
【0201】
多くの場合において、伝導性担持粒子は、動作中にカソードに存在する化学物質に適合し、還元的に安定であり、任意の電気化学反応に関与しないように高い水素生成過電位を有する。特定の実施形態において、そのような伝導性担持粒子は還元触媒粒子より大きく、各伝導性担持粒子は多くの還元触媒粒子を担持することができる。
【0202】
使用できるカーボンブラックの例は以下を含む。
・Vulcan XC-72R-密度256mg/cm2、30~50nm
・Ketjen Black-中空構造、密度100~120mg/cm2、30~50nm
・Printexカーボン、20~30nm
カソード触媒層の特性
【0203】
特定の実施形態において、カソード層は、約15~75%のポロシティを有する。カソード層のポロシティは様々な技法によって決定され得る。1つの方法では、各コンポーネント(例えば、触媒、担体、及びポリマー)の充填量にそれぞれの密度を乗算する。これらを合計して、コンポーネントが材料に占める厚さを決定する。次に、これを既知の総厚さで除算して、材料で占有されている層の割合を取得する。次に、結果として得られる割合を1から引いて、空隙空間(例えば、空気又は他のガスで満たされている又は真空)であると想定される層の割合、つまりポロシティを取得する。いくつかの実施形態において、ポロシティは、水銀ポロシメトリ又はTEM画像の画像分析等の方法によって直接決定される。
【0204】
カソード層はまた、その粗さによって特徴付けられ得る。カソード層の表面特性は、膜電極アセンブリにわたる抵抗に影響を与え得る。過剰に粗いカソード層は潜在的に、触媒及び電流コレクタ又は微小孔層等の他の電子伝導性担体層の間の界面ギャップをもたらし得る。これらのギャップは、電流コレクタから触媒エリアへの電子移動を妨げ、そうして、接触抵抗を増加させる。界面ギャップはまた、反応物及び生成物の物質移送に有害である水の蓄積の場所として機能し得る。他方で、非常に滑らかな表面には、層間の接触不良という問題があり得る。カソード層の粗さは、電気接触抵抗及び濃度分極損失に影響を与え得る。表面粗さは、異なる技法(例えば、機械的なスタイラスの方法、光学プロフィロメトリ、又は原子間力顕微鏡法)を使用することによって測定され得、実際の表面の高周波数、短波長成分として定義される。算術平均高さSは、表面粗さを評価するために一般に使用されるパラメータである。それは数値的には、標本の全体的な幾何学的面積にわたって平均的な平面に対する表面上の谷及び山の絶対的高さを積分することによって算出される。0.50~1.10μm又は0.70~0.90μmの間のカソード層S値が、いくつかの実施形態において使用され得る。
【0205】
CO、メタン、及びエチレン/エタノール生成についてのカソード触媒層特性の例
・CO生成:Vulcan XC72Rカーボン上で担持され、Orion製のTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合される直径4nmのAuナノ粒子。層は、約15μm厚、Au/(Au+C)=30%、触媒に対するTM1の質量比が0.32、質量充填量が1.4~1.6mg/cm、推定ポロシティが0.47である。
・メタン生成:20~30nmのサイズのCuナノ粒子が、Vulcan XC72Rカーボン上に担持され、Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合される。触媒に対するFAA-3の質量比は0.18である。推定Cuナノ粒子充填量は、より広い範囲1~100μg/cm以内で、約7.1μg/cmである。
・エチレン/エタノール生成:25~80nmのサイズのCuナノ粒子が、Fumatech製のFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質と混合される。触媒に対するFAA-3の質量比は0.10である。純粋なAEMのためのSigracet39BC GDE上又はポリマー電解質膜上のいずれかに堆積される。推定Cuナノ粒子充填量は270μg/cmである。
・メタン生成のためのバイポーラMEA:触媒インクは、FAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質(Fumatech)と混合されたVulcanカーボン(Premetek40%Cu/Vulcan XC-72)によって担持される20nmのCuナノ粒子からできている。FAA-3と触媒の質量比は0.18である。カソードは、Nafion(PFSA)212(Fuel Cell Etc)膜上にスプレーコーティングされるFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質を含むバイポーラ膜上に触媒インクを超音波吹き付け成膜することによって形成される。アノードは、3mg/cmの充填量でバイポーラ膜の反対側にスプレーコーティングされるIrRuOxから構成される。多孔質炭素ガス拡散層(Sigracet 39BB)がCu触媒被覆バイポーラ膜に挟み込まれ、MEAを構成する。
・エチレン生成のためのバイポーラMEA:触媒インクは、FAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質(Fumatech)と混合された純粋な80nmのCuナノ粒子(Sigma Aldrich)からできている。FAA-3と触媒の質量比は0.09である。カソードは、Nafion(PFSA)115(Fuel Cell Etc)膜上にスプレーコーティングされるFAA-3アニオン交換固体ポリマー電解質を含むバイポーラ膜上に触媒インクを超音波吹き付け成膜することによって形成される。アノードは、3mg/cmの充填量で、バイポーラ膜の反対側にスプレーコーティングされたIrRuOxから構成される。多孔質炭素ガス拡散層(Sigracet 39BB)は、Cu触媒被覆バイポーラ膜に挟み込まれ、MEAを構成する。
・CO生成:直径4nmのAuナノ粒子が、Vulcan XC72Rカーボン上に担持され、Orion製のTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合される。層は約14ミクロンの厚さであり、Au/(Au+C)=20%である。触媒層において、TM1と触媒の質量比は0.32、質量充填量は1.4~1.6mg/cm、推定ポロシティは0.54である。
・CO生成:直径45nmのAuナノ粒子が、Vulcan XC72Rカーボン上に担持され、Orion製のTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合される。層は約11ミクロンの厚さであり、Au/(Au+C)=60%である。触媒層において、TM1と触媒の質量比は0.16であり、質量充填量は1.1~1.5mg/cmであり、推定ポロシティは0.41である。
CO生成:直径4nmのAuナノ粒子が、Vulcan XC72Rカーボン上に担持され、Orion製のTM1アニオン交換ポリマー電解質と混合される。層は約25ミクロンの厚さであり、Au/(Au+C)=20%である。触媒層において、TM1と触媒の質量比は0.32であり、質量充填量は1.4~1.6mg/cmであり、推定ポロシティは0.54である。
PEM
【0206】
MEAは、アノード触媒層とカソード触媒層との間に配置され、且つ、アノード触媒層及びカソード触媒層に伝導的に連結された、ポリマー電解質膜(PEM)を含んでよい。特定の実施形態において、ポリマー電解質膜は、高イオン伝導性(例えば、約1mS/cm超)を有し、及び、機械的に安定である。機械的安定性は、高い引張強度、弾性率、破断点伸び、及び引き裂き抵抗など、様々な方法で証明され得る。多くの市販の膜を、ポリマー電解質膜に使用することができる。例には、様々なNafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、及びAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
一構成では、PEMが、カチオン伝導体である少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーを含む。第3のイオン伝導性ポリマーは、移動可能な正電荷イオンを移送するよう構成された、1又は複数の共有結合した負電荷官能基を含むことができる。第3のイオン伝導性ポリマーは、フッ化エタンスルホニル、2-[1-[ジフルオロ-[(トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2,-テトラフルオロ-、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ-3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテンスルホン酸コポリマー、他のパーフルオロスルホン酸ポリマー、及びそれらのブレンドから成る群から選択され得る。
カソードバッファ層
【0208】
ポリマー電解質膜がカチオン伝導体(例えば、それはプロトンを伝導する)である場合、それは、CRRの動作中に高濃度のプロトンを含んでよい一方で、低濃度のプロトンが存在する場合、カソードはより良く動作してよい。高濃度のプロトンから低濃度のプロトンへの遷移領域を提供するために、ポリマー電解質膜とカソードとの間にカソードバッファ層が提供されてよい。一構成では、カソードバッファ層が、カソード内のイオン伝導性ポリマーと同じ特性のうちの多くを有するイオン伝導性ポリマーである。カソードバッファ層は、プロトン濃度が、高いプロトン濃度を有するポリマー電解質膜から低いプロトン濃度を有するカソードへ遷移するための領域を提供してよい。カソードバッファ層内で、ポリマー電解質膜からのプロトンが、カソードからのアニオンと遭遇してよく、それらは互いに中和してよい。カソードバッファ層は、ポリマー電解質膜からの有害な数のプロトンがカソードに到達してプロトン濃度を上昇させないことを確実にするのに役立ってよい。カソードのプロトン濃度が高過ぎる場合、CO還元は生じない。高プロトン濃度は、約10~0.1モルの範囲の濃度であってよく、低プロトン濃度は、約0.01モル未満の濃度であってよい。
【0209】
カソードバッファ層は、単一のポリマー又は複数のポリマーを含むことができる。カソードバッファ層が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは、一緒に混合することができるか、又は、別個の隣接する層に配置することができる。カソードバッファ層に使用できる材料の例としては、限定されるものではないが、FumaSep FAA-3、Tokuyamaアニオン交換膜材料、及びポリエチレンオキシド(PEO)等のポリエーテル系ポリマー、並びにそれらのブレンドが挙げられる。更なる例は、カソード触媒層の説明において上述されている。
【0210】
カソードバッファ層の厚さは、プロトン濃度が低いためにCO還元活性が高くなるのに十分であるように選択される。この十分性は、カソードバッファ層の材料によって異なり得る。一般に、カソードバッファ層の厚さは、約200nmから100μmの間、300nmから75μmの間、500nmから50μmの間、又は任意の適切な範囲である。
【0211】
いくつかの実施形態において、カソードバッファ層は、50μm未満、例えば、1~5μm、5~15μm、又は10~25μmの間など、1~25μmの間である。この範囲の厚さのカソードバッファ層を使用することにより、セルの全体的な伝導性を維持しながら、カソード内のプロトン濃度を低減することができる。いくつかの実施形態において、超薄層(100nm~1μm、及びいくつかの実施形態において、サブミクロン)を使用してよい。また、上記のように、いくつかの実施形態において、MEAがカソードバッファ層を有しない。いくつかのそのような実施形態では、カソード触媒層中のアニオン伝導性ポリマーで十分である。カソードバッファ層の厚さは、PEMのそれに対して特徴付けられ得る。
【0212】
カソードバッファ層とPEMとの界面で形成された水とCOとは、ポリマー層が接続するMEAを剥離し得る。層間剥離の問題には、不活性フィラー粒子及び関連付けられる細孔を有するカソードバッファ層を使用することによって対処することができる。その有効性についての1つの可能な説明は、気体二酸化炭素が還元され得るカソードに気体二酸化炭素が戻るように逃げるための経路を細孔が作成することである。
【0213】
不活性フィラー粒子として適切な材料には、TiO、シリカ、PTFE、ジルコニア、及びアルミナが含まれるが、これらに限定されない。様々な配置において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nmから500μmの間、10nmから100μmの間、又は任意の適切なサイズ範囲である。粒子は、一般に球形であってよい。
【0214】
PTFE(又は他のフィラー)の量が多すぎると、イオン伝導性が低くなるまでポリマー電解質が希釈される。ポリマー電解質の量が多すぎると、ポロシティに役立たないまで、PTFEを希釈する。多くの実施形態では、ポリマー電解質/PTFEの質量比は、0.25~2であり、より具体的には、0.5~1である。ポリマー電解質/PTFE体積比(又は、より一般的には、ポリマー電解質/不活性フィラー)は、0.25~3、0.5~2、0.75~1.5、又は1.0~1.5であってよい。
【0215】
他の構成では、ポロシティは、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルが層に形成されるレーザアブレーションである。別の例は、層に機械的に穴をあけて、層を通るチャネルを形成することである。
【0216】
一構成では、カソードバッファ層は、0.01%~95%(例えば、重量、体積、質量などで、だいたいその間)のポロシティを有する。ただし、他の構成では、カソードバッファ層が、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%)を有することができる。いくつかの実施形態において、ポロシティは50%以下であり、例えば、0.1~50%、5~50%、20~50%、5~40%、10~40%、20~40%、又は25%~40%である。いくつかの実施形態において、ポロシティは20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。
【0217】
ポロシティは、満たされた空間対空の空間を計算するために、水銀ポロシメトリー、X線回折(SAXS又はWAXS)、及びTEM画像の画像処理などの方法で、コンポーネントの質量充填量及び厚さを使用することを含めて、触媒層に関連して上述したように測定されてよい。ポロシティは、MEAが完全に乾燥したときに測定される。なぜなら、材料は、動作中に水に露出されると様々な程度に膨潤するからである。
【0218】
カソードバッファ層を含むMEAの層のポロシティは、以下でさらに説明される。
アノードバッファ層
【0219】
いくつかのCRR反応において、カソードにおいて炭酸水素塩が生成される。カソード及びアノード間のどこかでの炭酸水素塩の移送をブロックして、カソードからの炭酸水素塩の移動を防止するポリマーが存在することが有用であってよい。炭酸水素塩は移動するときにいくらかのCOを取り込むため、カソードでの反応に利用可能なCOの量が減少する可能性がある。いくつかのMEA構成では、ポリマー電解質膜が、炭酸水素塩の移送をブロックするポリマーを含む。そのようなポリマーの例には、Nafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、及びAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかのMEAの構成では、ポリマー電解質膜とアノードとの間にアノードバッファ層があり、これが炭酸水素塩の移送をブロックする。ポリマー電解質膜がアニオン伝導体であるか、又は炭酸水素塩の移送を遮断しない場合は、炭酸水素塩の移送を防止するためのさらなるアノードバッファ層が有用であり得る。炭酸水素塩の移送を遮断するために使用できる材料には、Nafion(登録商標)製剤、GORE-SELECT、FumaPEM(登録商標)(PFSA)(FuMA-Tech GmbH)、及びAquivion(登録商標)(PFSA)(Solvay)が含まれるが、これらに限定されない。当然ながら、CRR内に炭酸水素塩が存在しない場合、イオン交換層内に炭酸水素塩ブロック機能を含むことは特に望ましくない。
【0220】
特定の実施形態において、アノードバッファ層は、プロトン濃度がポリマー電解質膜からアノードの間へ移行するための領域を提供する。ポリマー電解質膜中のプロトン濃度は、その組成及びそれが伝導するイオンの両方に依存する。例えば、プロトンを伝導するNafionポリマー電解質膜は、高プロトン濃度を有する。水酸化物を伝導するFumaSep FAA-3ポリマー電解質膜は、低プロトン濃度を有する。例えば、アノードでの所望のプロトン濃度がポリマー電解質膜と3桁より大きく異なる場合は、アノードバッファ層は、ポリマー電解質膜のプロトン濃度からアノードの所望のプロトン濃度への移行に影響を及ぼすのに有用であり得る。アノードバッファ層は、単一のポリマー又は複数のポリマーを含むことができる。アノードバッファ層が複数のポリマーを含む場合、複数のポリマーは、一緒に混合することができるか、又は、別個の隣接する層に配置することができる。pH遷移のための領域を提供するのに有用であり得る材料には、Nafion、FumaSep FAA-3、Sustainion(登録商標)、Tokuyamaアニオン交換ポリマー、及びポリエチレンオキシド(PEO)などのポリエーテル系ポリマー、それらのブレンド、及び/又は任意の他の適切な材料が含まれるが、これらに限定されない。高いプロトン濃度は、約10~0.1モルの範囲であるとみなされ、低濃度は約0.01モル未満であるとみなされる。イオン伝導性ポリマーは、伝導するイオンのタイプに基づいて、異なるクラスに分類され得る。これについては、上記で詳しく説明された。上記の表1に記載されているイオン伝導性ポリマーには3つのクラスがある。本発明の1つの実施形態において、カソード、アノード、ポリマー電解質膜、カソードバッファ層、及びアノードバッファ層内のイオン伝導性ポリマーのうちの少なくとも1つは、その他のうちの少なくとも1つと異なるクラスのものである。
層のポロシティ
【0221】
以下の層:カソード、カソードバッファ層、アノード、及びアノードバッファ層のうちのいくつか又はすべてが多孔質である場合が有用であり得る。いくつかの構成では、ポロシティは、不活性フィラー粒子をこれらの層のポリマーと組み合わせることによって達成される。
不活性フィラー粒子として適切な材料には、TiO、シリカ、PTFE、ジルコニア、及びアルミナが含まれるが、これらに限定されない。様々な配置において、不活性フィラー粒子のサイズは、5nmから500μmの間、10nmから100μmの間、又は任意の適切なサイズ範囲である。
他の構成では、ポロシティは、層が形成されるときに特定の処理方法を使用することによって達成される。そのような処理方法の一例は、ナノサイズからマイクロサイズのチャネルが層に形成されるレーザアブレーションである。レーザアブレーションは、追加的に又は代替的に、表面下アブレーションによって層のポロシティを達成することができる。表面下アブレーションは、層内のある点にビームを集束させ、それによってその点の近くの層材料を気化させると、層内に空隙を形成することができる。このプロセスを繰り返して、層全体に空隙を形成し、それによって層にポロシティを達成することができる。空隙の体積は、好ましくは、レーザ出力によって決定される(例えば、より高いレーザ出力は、より大きな空隙体積に対応する)が、追加的に又は代替的に、ビームの焦点サイズ、又は他の任意の適切なレーザパラメータによって決定され得る。別の例は、層に機械的に穴をあけて、層を通るチャネルを形成することである。ポロシティは、層において任意の好適な分布を有することができる(例えば、均一、層を通して増加していくポロシティ勾配、ランダムポロシティ勾配、層を通して減少していくポロシティ勾配、周期的ポロシティ等)。
【0222】
上述の例及び他の例並びに変形例のポロシティ(例えば、カソードバッファ層、アノードバッファ層、膜層、カソード層、アノード層、他の適切な層などのポロシティ)は、好ましくは均一な分布を有するが、追加的に又は代替的に任意の適切な分布(例えば、ランダム化された分布、層を通じて又は層に渡って増加する細孔サイズの勾配、層を通じて又は層に渡って減少する細孔サイズの勾配など)を有することができる。ポロシティは、不活性フィラー粒子(例えば、ダイヤモンド粒子、ホウ素ドープダイヤモンド粒子、ポリフッ化ビニリデン/PVDF粒子、ポリテトラフルオロエチレン/PTFE粒子など)などの任意の適切なメカニズムと、ポリマー層内に実質的に非反応性の領域を形成するための他の任意の適切なメカニズムとによって形成され得る。不活性フィラー粒子は、最小で約10ナノメートル、最大で約200ナノメートル、及び/又は任意の他の好適な寸法又は寸法分布等の、任意の好適なサイズを有することができる。
【0223】
上記のように、カソードバッファ層は、好ましくは、約1~90体積パーセントのポロシティを有するが、追加的に又は代替的に、任意の好適なポロシティ(例えば、ポロシティがないことを含む)を有することができる。ただし、他の構成及び例では、カソードバッファ層が、任意の適切なポロシティ(例えば、0.01~95%、0.1~95%、0.01~75%、1~95%、1~90%など)を有することができる。いくつかの実施形態において、ポロシティは20%以下であり、例えば、0.1~20%、1~10%、又は5~10%である。
【0224】
いくつかの実施形態において、カソードバッファ層は多孔質であるが、カソード層とアノード層との間の少なくとも1つの層は非多孔質である。これにより、層間剥離を防止しながら、カソード層とアノード層との間のガス及び/又はバルク液体の通過を防止することができる。例えば、非多孔質層は、アノードからカソードへの水の直接通過を防止することができる。
他の実施形態及び結論
【0225】
簡単にするため省略したが、システム及び/又は方法の実施形態は、様々なシステムコンポーネント及び様々な方法プロセスのあらゆる組み合わせ及び置換を含むことができ、本明細書に記載の当該方法及び/又はプロセスの1又は複数の例は、本明細書に記載のシステム、要素、及び/又はエンティティのうちの1又は複数の例により、及び/又は、当該例を用いて、非同期的に(例えば、シーケンシャルに)、同時に(例えば、並行して)、又は任意の他の好適な順序で実行できる。
【0226】
当業者が前述の詳細な説明と図面及び特許請求の範囲とから認識するように、本発明の好ましい実施形態に対する修正及び変更を、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】