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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】混合水酸化物沈殿物の選択的酸浸出
(51)【国際特許分類】
   C22B 23/00 20060101AFI20241128BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20241128BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20241128BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20241128BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20241128BHJP
   C22B 5/12 20060101ALI20241128BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B3/06
C22B3/08
C22B3/22
C22B5/12
C22B3/44 101Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527260
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022081451
(87)【国際公開番号】W WO2023083953
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21208049.3
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524171873
【氏名又は名称】ソルベイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラカデナ,マリア ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス,アラン プライス
(72)【発明者】
【氏名】バスケス,オスカー
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001BA16
4K001DB02
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB05
4K001DB16
4K001DB17
4K001DB19
4K001DB21
(57)【要約】
本発明は、混合水酸化物沈殿物(MHP)を酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と接触させて、それぞれ混合水酸化物沈殿物中に存在するニッケル及びコバルトの総量に基づいて少なくとも75重量%のニッケルを浸出液に溶解させ、且つ少なくとも90重量%のコバルトを固相中で回収させることにより、混合水酸化物沈殿物からニッケルを選択的に浸出するプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合水酸化物沈殿物を酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と接触させて、それぞれ前記混合水酸化物沈殿物中に存在するニッケル及びコバルトの総量に基づいて少なくとも75重量%のニッケルを浸出液に溶解させ、且つ少なくとも90重量%のコバルトを固相中で回収させることにより、前記混合水酸化物沈殿物からニッケルを選択的に浸出するプロセス。
【請求項2】
混合水酸化物沈殿物を、酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸から本質的になる組成物と30℃~80℃の温度で接触させることにより、前記混合水酸化物沈殿物からニッケルを選択的に浸出するプロセス。
【請求項3】
前記混合水酸化物沈殿物は、ニッケル、コバルト及び任意選択的にマンガンを含有し、ニッケルは、溶解され、且つコバルトは、固相中で回収され、及び前記混合水酸化物沈殿物中にマンガンが存在する場合、マンガンも前記固相中で回収される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記混合水酸化物沈殿物は、最初に前記酸性の浸出溶液と、且つ続いて前記ペルオキシ一硫酸と接触されて、ニッケルを少なくとも部分的に溶解させ、コバルトを少なくとも部分的に溶解及び次いで沈殿させ、且つ存在する場合にはマンガンを少なくとも部分的に酸化及び沈殿させるか、又は前記混合水酸化物沈殿物は、前記酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と同時に接触されて、ニッケルを少なくとも部分的に溶解させ、コバルトを少なくとも部分的に酸化及び沈殿させ、且つ存在する場合にはマンガンを少なくとも部分的に酸化及び沈殿させるか、又は前記混合水酸化物沈殿物は、最初に前記ペルオキシ一硫酸と、且つ続いて前記酸性の浸出溶液と接触されて、ニッケルを少なくとも部分的に溶解させ、且つコバルト及び存在する場合にはマンガンを固相に残存させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスの最後に回収される前記固相は、前記固相に残存している前記ニッケルを回収するために、浸出流体との少なくとも1回のさらなる接触に供される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酸性の浸出溶液中の酸は、ペルオキシ一硫酸又は硫酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸性の浸出溶液及び/又は前記ペルオキシ一硫酸は、30分~4時間の期間中に前記混合水酸化物沈殿物に添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスの前記接触ステップは、2~7、好ましくは3.5~5のpHで実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスの前記接触ステップの前記pHを制御するために追加の中和剤が使用されない、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ペルオキシ一硫酸は、8モルのペルオキシ一硫酸あたり1モル以下の過酸化水素を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ペルオキシ一硫酸とコバルトイオンとの反応により、前記プロセス中に硫酸が生成され、溶解されるニッケルに対する、前記酸性の浸出溶液の酸及び前記プロセス中に生成される前記追加の硫酸の総量のモル比は、0.6~0.9である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
回収されるコバルトに対するペルオキシ一硫酸のモル比は、0.7~3である、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
30~80℃の温度で実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記接触ステップ後、第1のさらなるステップにおいて、前記固相は、溶解されたニッケルを含有する前記浸出液から分離され、第2のさらなるステップにおいて、前記コバルト及び/又は存在する場合には前記マンガンは、前記固相から分離され、及び第3のさらなるステップにおいて、前記ニッケルは、前記浸出液から回収される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ニッケルは、電解採取、水素還元又は結晶化によって前記浸出液から回収される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料物質から金属を回収するプロセス、詳細には、ニッケル、コバルト及び任意選択的にマンガンを含有する混合水酸化物沈殿物から直接ニッケルを選択的に回収することに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、電気自動車(EV)の数が増えている。EVのための現在の主な電池電力貯蔵技術は、リチウムイオン電池(LIB)である。LIBでは、リチウムイオンは、放電中、負極又は陽極(主に炭素、例えば黒鉛から作られる)から電解液を通して正極(陰極)に移動し、充電時に逆行する。化学、性能、コスト及び安全特性は、LIBの種類によって異なる。電子ゲームは、多くの場合、高エネルギー密度をもたらすが、特に損傷した場合に安全性リスクを呈する、陰極材料としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を用いる(電解質としてポリマーゲルを用いる)リチウムポリマー電池を使用する。リン酸鉄リチウム(LiFePO)、マンガン酸リチウムイオン電池(LiMn、LiMnO又はLMO)及び酸化リチウムニッケルマンガンコバルト(LiNiMnCoO又はNMC)は、より低いエネルギー密度、しかし、より長い寿命及びより低い発火又は破裂の可能性をもたらす。特に、NMCは、自動車用途、すなわちEVを主導するものである。NMC電池に使用される陰極は、例えば、8:1:1の重量比(したがってNMC 811と呼ばれる)のニッケル:マンガン:コバルトの組み合わせである。
【0003】
近い将来、LIBの需要を満たすために一層多くのニッケルが必要とされるにもかかわらず、世界的供給網におけるほとんどのニッケルは、実際には電池製造に適していない。
【0004】
ニッケルが優勢の原料は、硫化物又はラテライト鉱床である。大きい高品位の硫化物鉱床は、一層稀になっており、それによりラテライト鉱の加工がこの金属の主要な供給源になると予測される。
【0005】
ラテライト鉱を処理する一般的な方法は、酸中で固体を浸出することである。一般に、酸浸出後、一般的に石灰石を添加することによって達成される不純物沈殿が続く。不純物沈殿後、通常、混合硫化物沈殿(MSP)又は混合水酸化物沈殿(MHP)により、ニッケル及びコバルトが共に水溶液から回収される。MHPは、浸出溶液にマグネシア、石灰、石灰石又は水酸化ナトリウムなどの塩基性化学物質を添加することによって達成される比較的最近の大規模工業技術である。MHPは、概ね水酸化ニッケルからなるが、価値のある水酸化コバルト、場合によりマンガン及び様々な他の不純物も含有する。MHPは、元のラテライト鉱中に存在するおよそ1%のニッケル及び0.1%のコバルトがMHP中のその相対量に関してかなり品位向上されるため、より価値のある濃縮された生成物に相当する。
【0006】
MHPは、こうした高い有価金属含有量を有するため、集中型のニッケル及びコバルト精錬所を稼働させる実行性が増大している。これは、品位向上された中間生成物の輸送費が、採掘されたままの鉱石の輸送費の数分の1であろうためである。
【0007】
MHPは、いくつかの方式でさらに加工することができる。例えば、MHPは、含有されるニッケルを鉄と合金にするために、鉄溶解炉の溶融物に添加され得る。このプロセスは、かなりのコバルト含有量を有するMHPに適しておらず、これは、価値のあるコバルトが回収されず、したがって経済的に実行不可能であるためである。
【0008】
MHPを精錬するための別の主要な加工経路は、例えば、米国特許出願公開第2007/0166214号明細書に記載されている通り、アンモニア/炭酸アンモニウム溶液中で物質を浸出することによるものである。ニッケル及びコバルトは、アンモニア溶液に溶解してアンモニア錯体を形成する。この溶液をCaron型プロセスでさらに処理して、ニッケル及びコバルトを回収する。このプロセスを使用することにより、ニッケル及び/又はコバルトを回収するためにいくつかのプロセスステップが必要となる。
【0009】
国際公開第2010/118455号パンフレットは、MHPからニッケル及び/又はコバルトを抽出するために、MHPが2種の酸性溶液で処理されるプロセスに関する。このプロセスでは、溶解されたニッケル及び/又はコバルトを含有する溶液から不純物を除去するために追加の溶媒抽出ステップが必要である。続いて、電解採取又は水素還元ステップにより、ニッケル及び/又はコバルトが溶液から回収される。
【0010】
こうした従来技術の手法は、一般に、比較的エネルギー多消費型であるか、又は最適なニッケル及び/若しくはコバルト回収率を生じないか、又は過剰な数の加工段階を必要とするか、又はアルミニウム、鉄及びクロムなどの他の不純物の存在の影響を受けやすい。ニッケルを含有する鉱石からニッケルを回収する改善された方法の必要性が存在する。MHP中のコバルトからのニッケルの直接的な分離のための、且つ両方の価値ある産物の効率的な回収を可能にするプロセスを提供することが望ましいであろう。
【0011】
米国特許出願公開第2016/0355906号明細書は、酸化剤として過硫酸ナトリウム又は過マンガン酸カリウムを使用することにより、浸出残渣固形物中にコバルトを保持しながら、MHPからニッケルを選択的に浸出するプロセスに関する。しかし、このプロセスでも、ニッケル-コバルト分離は、完全ではなく、これらの2つの金属のかなりの交差汚染が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術の文献で確認された課題又は不都合の1つ以上を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、混合水酸化物沈殿物(MHP)を酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と接触させて、それぞれ混合水酸化物沈殿物中に存在するニッケル及びコバルトの総量に基づいて少なくとも75重量%のニッケルを浸出液に溶解させ、且つ少なくとも90重量%のコバルトを固相中で回収させることにより、混合水酸化物沈殿物からニッケルを選択的に浸出するプロセスに関する。
【0014】
本発明は、混合水酸化物沈殿物(MHP)を、酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸から本質的になる組成物と30℃~80℃の温度で接触させることにより、混合水酸化物沈殿物からニッケルを選択的に浸出するプロセスにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1及び2の結果を示す。
図2】酸化剤としてペルオキシ一硫酸(CA)が使用される場合(実施例1を参照されたい)、より少ないコバルトが酸性の浸出溶液中で回収され、すなわち酸化剤としての過硫酸塩の使用(実施例2を参照されたい)と比較してより多いコバルトが固相中で回収されることを示す。
図3】実施例3及び4の結果を示す。
図4】実施例3及び4の結果を示す。
図5】実施例5の結果を示す。
図6】実施例5の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の現行の配合を説明する前に、本発明は、記載された特定の配合に限定されないことを理解されたい。なぜなら、こうした配合は、当然のことながら、変動し得るためである。本明細書で使用される用語法は、限定的であるものと意図されないことも理解されたい。なぜなら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるためである。
【0017】
本明細書で使用される用語「含んでいる」、「含む」及び「構成される」は、「包含している」、「包含する」又は「含有している」、「含有する」と同義であり、包括的又は非限定的であり、追加の列挙されていない構成要素、成分又は方法ステップを排除しない。本明細書で使用される用語「含んでいる」、「含む」及び「構成される」は、用語「からなっている」、「構成する」及び「からなる」を含むことを理解されたい。
【0018】
本出願の全体を通して、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために用いられる装置又は方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「重量%」、「wt.-%」、「重量百分率」又は「重量による百分率」は、互換的に使用される。
【0020】
端点による数値範囲の記述には、その範囲内に包含されるすべての整数及び適切な場合には端数が含まれる(例えば、「1~5」には、例えば、要素の数を指す場合には1、2、3、4が含まれ得、例えば測定値を指す場合には1.5、2、2.75及び3.80も含まれ得る)。端点の記述には、端点値自体も含まれる(例えば、1.0~5.0には、1.0及び5.0の両方が含まれる)。本明細書に列挙される任意の数値範囲には、その中に包含されるすべての部分範囲が含まれるものとする。
【0021】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。具体的には、本明細書で個別に言及されるすべての参考文献の教示が参照により組み込まれる。
【0022】
他に定義されない限り、技術及び科学用語を含めて、本発明の開示で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。さらなる手引きにより、本発明の教示をよりよく理解するための用語の定義が含まれる。
【0023】
以下の節では、本発明の様々な代替形態、実施形態及び変形形態をより詳細に定義する。このように定義されるそれぞれの代替形態及び実施形態は、そうではないと明確に示されるか、又は同じパラメータの値の範囲が分離している場合に明らかに適合しないと明確に示されない限り、任意の他の代替形態及び実施形態並びにそれぞれの変形形態についてこれと組み合わされ得る。具体的には、好ましい又は好都合であると示される任意の特徴を、好ましい又は好都合であると示される任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0024】
さらに、1つ以上の実施形態では、本開示から当業者に明らかであるように、本説明に記載された特定の特徴、構造又は特性は、任意の適切な方式で組み合わされ得る。さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴を含まない一方、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であり、異なる実施形態をなすことが意図される
【0025】
本発明は、ニッケルを混合水酸化物沈殿物(MHP)から直接且つ選択的に浸出することができるプロセスに関する。
【0026】
用語「混合水酸化物沈殿物」又は「MHP」は、本明細書で使用される場合、好ましくは固体の混合されたニッケル-コバルト水酸化物沈殿物を指す。こうした沈殿は、一般に、ニッケル含有鉱石の商業用加工における中間生成物として公知である。この沈殿は、通常、酸化物及び水酸化物を含む様々なニッケル、コバルト及び場合によりマンガン化合物を含む。その分離に関する「ニッケル」、「コバルト」又は「マンガン」に対する本明細書での言及は、金属の酸化物及び水酸化物を含むこれらの化合物の1つ以上に対する言及と受け取られ得ることを理解されたい。ニッケル及びコバルトは、一般に、MHP中において、原料物質に相当する元々の採掘された鉱石中よりも高い濃度である。通常、本発明で使用されるMHPは、無水MHPの総量に基づいて34~55重量%のニッケル、1~4.5重量%のコバルト及び任意選択的に1~7重量%のマンガンを含む。
【0027】
驚くべきことに、MHPを、本発明による酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸で処理することにより、ニッケルは、この酸性溶液に溶解し、且つコバルト及び存在する場合にはマンガンは、沈殿物として固相中でほぼ完全に回収され得ることが判明した。本発明のプロセスを使用することによる固相中でのコバルトの回収は、安定であり、すなわち酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸でのMHPの処理後、ニッケルとは逆に沈殿したコバルトの溶解をもたらさない。固相は、一般に、主要構成成分としてCo、Co及びCoOOHを含有する。固相は、未反応のNi(OH)及びNiOOHも含有し得る。MHP中にマンガンが存在する場合、マンガンは、固相中でほぼ完全に回収することもできる。固相は、主要マンガン構成成分として酸化マンガンMnOも含有する。
【0028】
本発明によれば、MHPを酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と接触させて、それぞれMHP中に存在するニッケル及びコバルトの総量に基づいて少なくとも75重量%のニッケルを浸出液に溶解させ、且つ少なくとも90重量%のコバルトを固相中で回収させる。MHP中に存在するニッケルの総量に基づいて少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらに一層好ましくは少なくとも90重量%のニッケルが酸性の浸出溶液に溶解されるように、MHPが酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と接触されることが好ましい。さらに、MHP中に存在するコバルトの総量に基づいて少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、より好ましくは99重量%のコバルトを固相中で回収できることが好ましい。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、ニッケルは、MHPを、酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸から本質的になる組成物と30℃~80℃の温度で接触させることにより、MHPから選択的に浸出される。
【0030】
本発明のプロセスで使用される酸性の浸出溶液は、水性の酸性の浸出溶液である。好ましくは、酸性の浸出溶液の酸は、硫酸(HSO)又はニッケルの適切な溶解を達成することができる任意の好適な強酸である。好適であり得る酸のさらなる例は、硝酸、塩酸及び他の強い鉱酸を含む。代わりに、酸性の浸出溶液の酸は、ペルオキシ一硫酸であり得る。酸が硫酸又はペルオキシ一硫酸である場合に最良の結果が得られる。
【0031】
本発明のプロセスでは、混合水酸化物沈殿物は、ニッケル、コバルト及び任意選択的にマンガンを含有する。通常、ニッケルは、溶解され、且つコバルトは、固相中で回収され、及びMHP中にマンガンが存在する場合、マンガンも固相中で回収される。
【0032】
酸性の浸出溶液は、約0.5重量%、約1.0重量%以上、好ましくは約5.0重量%以上、より好ましくは約10重量%以上の、このプロセスにおける初期酸濃度(好ましくは初期硫酸濃度)を有することがさらに好ましい。酸性の浸出溶液は、一般に、約30重量%以下、好ましくは約20重量%以下の初期酸濃度(好ましくは初期硫酸濃度)を有する。好ましくは、本発明のプロセスで使用される酸性の浸出溶液は、1.0重量%~20重量%、2.0~15.0重量%、より好ましくは3.0~10.0重量%又はさらに一層好ましくは5.5~7.0重量%の初期酸濃度(好ましくは初期硫酸濃度)を有する。
【0033】
本発明によれば、MHPを、上で定義した通りのあらかじめ調製された酸性の浸出溶液と接触させることができるか、又は第1のステップにおいて、MHPに水を添加し、その後、上で定義した通りの本発明のプロセスにおける初期濃度を有する酸性の浸出溶液を得るための量において、このMHPと水との混合物に、酸性の浸出溶液を形成するための酸を添加する。MHPと水との混合物に添加される酸は、高濃縮酸であり得、すなわち、酸は、93~98%、好ましくは95~98%の酸濃度を有する水性の酸性溶液であるか、又は上で定義した通りの本発明のプロセスにおける初期濃度を有する酸性の浸出溶液を得るのに十分に高い酸濃度を有する水性の酸性溶液であり得る。
【0034】
本明細書で使用される用語「酸性の浸出溶液」は、調製された酸性の浸出溶液を、又はMHPに水を添加し、続いてこの水とMHPとの混合物に酸を添加することによって得られる溶液を指す。これは、通常、水性の酸性の浸出溶液である。
【0035】
用語「浸出液」は、本明細書で使用される場合、MHPを酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と接触させた後に得られる溶液を指す。この浸出液溶液は、溶解されたニッケル、存在する場合には消費されていない酸、存在する場合には消費されていないペルオキシ一硫酸及びほとんどの場合に水を含有する。
【0036】
ペルオキシ一硫酸(HSO)は、過硫酸、ペルオキシ硫酸又はカロ酸としても公知である。ペルオキシ一硫酸のIUPAC名は、(ジオキシダニド)ヒドロキシジオキシドサルファーである。
【0037】
ペルオキシ一硫酸、好ましくは本発明のプロセスで使用されるペルオキシ一硫酸溶液は、以下の式を成立させる、過酸化水素(H)を硫酸(HSO)に添加することによって得られる。
+HSO⇔HSO+HO 式1
【0038】
本発明によれば、このプロセスで使用されるペルオキシ一硫酸(溶液)は、8モルのペルオキシ一硫酸あたり1モル以下の過酸化水素を含有することが好ましい。好ましくは、ペルオキシ一硫酸と過酸化水素とのモル比は、8:1、より好ましくは10:1、さらに一層好ましくは12:1よりも大きい。
【0039】
ペルオキシ一硫酸を生成するための硫酸(HSO)と水素(H)とのモル比は、3:1~8:1、より好ましくは4:1~6:1であることがさらに好ましい。好ましくは、本発明のプロセスで使用されるペルオキシ一硫酸溶液は、このプロセスで使用されるペルオキシ一硫酸溶液の総量に基づいて5~20重量%、好ましくは8~12重量%の濃度を有する。
【0040】
ペルオキシ一硫酸は、このプロセスで酸化剤としての役割を果たし、すなわち、これは、基質の酸化状態を増大させる、例えば電子を失わせる(それによりこのプロセスで試薬自体が還元される)ことが可能な試薬である。本発明の酸性の浸出溶液中に存在するニッケル(Ni2+)及びコバルト(Co2+)及び任意選択的にマンガン(Mn2+)の2価のイオンは、異なる酸化される能力を有する。本発明によれば、ペルオキシ一硫酸は、溶解された2価のコバルト(Co(II))を酸化して3価のコバルト(Co(III))にし、これが沈殿する(式2を参照されたい)。
SO+2Co2+5HO→2Co(OH)+HSO+4H 式2
SO+Mn+HO→MnO+HSO+2H 式3
【0041】
本発明のプロセスは、MHPを最初に酸性の浸出溶液と、且つ続いてペルオキシ一硫酸と接触させて、ニッケルを少なくとも部分的に溶解させ、コバルトを少なくとも部分的に溶解させ、次いで沈殿させ、且つ存在する場合にはマンガンを少なくとも部分的に酸化及び固相に沈殿させるように実施することができる。これに関して使用される用語「続いて」は、酸性の浸出溶液の全量がMHPと接触した後又は本発明のプロセスに使用される酸性の浸出溶液の全量の一部がMHPに添加された後を意味する。
【0042】
代わりに、MHPを酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と同時に接触させて、ニッケルを少なくとも部分的に溶解させ、コバルトを少なくとも部分的に例えばCo、Co又はCoOOHの形態で酸化及び沈殿させ、且つ存在する場合にはマンガンを少なくとも部分的に例えばMnOの形態で酸化及び沈殿させる。この代替形態の第1の実施形態では、酸性の浸出溶液は、ペルオキシ一硫酸溶液と異なる。第2の実施形態では、酸性の浸出溶液は、ペルオキシ一硫酸溶液と同一である。この場合、酸のすべてが硫酸としてペルオキシ一硫酸溶液中に存在し、酸が別に添加されることはない。
【0043】
さらに別の代替形態では、MHPを最初にペルオキシ一硫酸と、且つ続いて酸性の浸出溶液と接触させて、ニッケルを少なくとも部分的に溶解させ、且つコバルト及び存在する場合にはマンガンを固相に残存させる。
【0044】
本発明のプロセスに使用される量の酸性の浸出溶液及び/又はペルオキシ一硫酸は、MHPに連続的に添加されることがさらに好ましい。酸性の浸出溶液の連続的な添加は、第1のステップにおいて、MHPに水が添加され、その後、この混合物に、酸性の浸出溶液を形成するための酸が添加されて、上で定義した通りの酸性の浸出溶液が得られるように実施することができる。別の実施形態では、上で定義した通りのあらかじめ調製された酸性の浸出溶液がMHPに連続的に添加される。さらなる好ましい実施形態では、ペルオキシ一硫酸がMHPと酸性の浸出溶液との混合物に連続的に添加される。
【0045】
本明細書で使用される用語「連続的に」又は「連続的な」は、酸性の浸出溶液及び/又はペルオキシ一硫酸の全量が(好ましくはそのプロセスで使用される酸性の浸出溶液及び/又はペルオキシ一硫酸の総量のそれぞれ多くとも1重量%又は1重量%未満の)少量ずつ、好ましくは所与の期間を通して等間隔の時間で又は連続流でMHPに添加されることを意味する。通常、酸性の浸出溶液及び/又はペルオキシ一硫酸をMHPに連続的に添加する期間は、少なくとも30分、具体的には少なくとも1時間である。この期間は、通常、最大で8時間、具体的には最大で6時間、より具体的には最大で4時間、ときに最大で3時間、場合により最大で2時間である。好ましい期間は、30分~4時間である。
【0046】
構成成分、すなわち酸性の浸出溶液及び/又はペルオキシ一硫酸が所与の期間を通して等間隔の時間で少量ずつMHPに添加される場合、構成成分は、好ましくは、約5~約40分ごと、より好ましくは約10~約30分ごとの間隔において、約5~約12部分、約6~約10部分又はより好ましくは約6~約8部分でMHPに添加されることが好ましい。
【0047】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、構成成分は、連続的注入量、好ましくは実験室規模の0.1~1.0ml/分、実験室規模の0.2~0.9ml/分又は実験室規模の0.3~0.8ml/分、より好ましくは実験室規模の0.4~0.6ml/分の連続的注入量でMHPに添加される。工業規模について、当技術分野で公知の通り、この注入量は、それに応じて調整しなければならない。
【0048】
より好ましい実施形態では、このプロセスで使用されるペルオキシ一硫酸の全量は、実験室規模の0.7~0.9ml/分の連続的注入量でMHPと酸性の浸出溶液との混合物に添加される。さらに、ペルオキシ一硫酸は、1.0~2.5時間、より好ましくは1.5~2.0時間の期間にわたり、MHPと酸性の浸出溶液との混合物に添加されることが好ましい。
【0049】
多くの場合、コバルトは、酸性の浸出溶液の酸によって最初に浸出され、ペルオキシ一硫酸が注入されると沈殿し始めることが判明している。一方、ニッケルは、ペルオキシ一硫酸の注入と共に連続的に溶解する。
【0050】
このプロセスで使用される酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸の総量は、MHP中に存在するニッケル、コバルト及び任意選択的にマンガンの量に依存する。換言すれば、金属溶解及び沈殿の量は、それぞれこのプロセスで使用される酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸の量によって制御することができる。
【0051】
酸、すなわちこのプロセス中、特にコバルトイオン及び存在する場合にはマンガンイオンのペルオキシ一硫酸との反応(式2及び3を参照されたい)によって生成される硫酸と組み合わせた酸性の浸出溶液の酸の、溶解されるニッケルに対するモル比は、0.6~0.9、より好ましくは0.7~0.85であることが好ましい。
【0052】
このプロセスでは、より小さい化学量論量の酸を使用することにより、MHP中に存在する水酸化ニッケル(Ni(OH))が中和剤としての役割を果たす。その場合、このプロセスの接触ステップのpHを制御するために、このプロセスで追加の中和剤を使用する必要はない。
【0053】
本発明では、回収されるコバルトに対するペルオキシ一硫酸のモル比は、少なくとも0.7、具体的には少なくとも1.0、より具体的には少なくとも1.5であることが好ましい。このモル比は、通常、最大で6.0、多くの場合に最大で5.0、具体的には最大で4.0、より具体的には最大で3.0である。0.7~3.0の比を用いると、良好な結果が得られる。
【0054】
さらに、ニッケルが酸性の浸出溶液に溶解され、コバルト及び任意選択的にマンガンが所望の量で固相中において回収されることを確実にするために、本発明のプロセスは、適切なpHで実施されるべきである。好ましくは、本発明によれば、接触ステップ中のpHは、2~7、具体的には3~6、より具体的には3.5~5である。接触ステップ中に存在する液体のpH値は、当技術分野で一般に使用される方法によって決定される。ある可能な方法は、pH及びORPのためのセンサーを備えたVWR、pHenomenal(登録商標)111 pH電極、3イン1型のpHプローブを使用することである。
【0055】
本発明によるプロセスは、30~80℃、具体的には35℃~65℃、より具体的には40~55℃の温度で好ましくは実施される。反応条件に応じて、反応の熱は、追加の加熱なしで、必要とされる温度範囲に到達するのに十分であり得る。
【0056】
MHPは、酸性の酸溶液の酸の量と比較して100%~約40%、約90%~約50%、より好ましくは約85~約60%の化学量論(%)量で存在することがさらに好ましい。
【0057】
好ましくは、溶液、すなわちMHPと接触する酸性の酸溶液及び酸性の酸溶液とペルオキシ一硫酸との溶液は、本発明のプロセス中に撹拌されるか、又は金属浸出プロセスで通常使用される容器/反応器中において機械的条件下で別にかき混ぜられる。これを行う1つの利点は、MHPへの酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸の導入による温度の局所的差異を可能な限り最小限にすることである。なぜなら、こうした差異は、ペルオキシ一硫酸増大又はより高い残留レベルの未溶解ニッケルによって現れる性能低下をもたらす結果となるためである。
【0058】
このプロセスは、大気圧で実施されることが好ましい。
【0059】
本発明のプロセスで使用されるMHPは、ニッケル及びコバルトに加えて、マンガン化合物も含有し得る。本発明のプロセスは、コバルトに関して記載されたのと同じ効果をマンガンに対して有することができる。
【0060】
本発明によれば、酸性の浸出溶液に溶解されたニッケルを前記溶液から直接回収することができる。代わりに、接触ステップ後、第1のさらなるステップにおいて、高濃度の溶解されたニッケルを含む浸出液は、沈殿したコバルト及び任意選択的にマンガンを含む固相から分離され、第2のさらなるステップにおいて、コバルト及び/又は存在する場合にはマンガンは、固相から分離され、及び第3のさらなるステップにおいて、ニッケルは、当技術分野で公知の様々な好適な手段によって浸出液から回収される。具体的には、ニッケルは、ニッケル金属の電解採取、ニッケル金属への水素還元又は硫酸ニッケル水和物への結晶化を含む手段によって浸出液から回収され得る。このプロセスは、例えば、米国特許出願公開第2016/0355906号明細書に記載された通り、酸性溶液又はアルカリ性アンモニア含有溶液へのコバルト又はマンガンの選択的溶解により、コバルト及びMHP中に存在する場合にはマンガン固体を分離するステップをさらに含み得る。
【0061】
本発明によるプロセスでは、プロセスの最後に回収される固相は、固相に残存しているニッケルを回収するために、浸出流体との少なくとも1回のさらなる接触に供され得る。このさらなる接触ステップで使用される浸出流体は、最初の接触ステップで使用された酸性の浸出溶液及びペルオキシ一硫酸と同一であり得る。これは、異なるか又は任意の種類の公知の浸出流体でもあり得る。さらなる接触ステップの動作条件は、最初の接触ステップのものと同一であるか又は異なり得る。
【0062】
本発明のプロセスを使用し、且つ/又はペルオキシ一硫酸とは別の酸化剤を使用することにより、MHP中のコバルト及び任意選択的にマンガンからのニッケルの分離は、驚くほど効果的となり、ある種の従来技術の手法(これは、代わりに、ニッケルとコバルトとの両方及び任意選択的にマンガンを含有する溶液からコバルト及び任意選択的にマンガンを選択的に沈殿させようとする)に対する明らかな利点を提供する。
【0063】
本発明を以下の実施例によってさらに例示する。以下の実施例は、例示のためのものに過ぎず、本発明をそれに限定するために使用されないことを理解されたい。
【実施例
【0064】
実施例1(本発明によるもの)
実施例1では、Ni(OH)、Co(OH)及び硫酸を含有する反応器に実験室規模の0.8ml/分の注入速度の連続流でペルオキシ一硫酸を連続的に注入した。
【0065】
Ni(OH)は、38gの量で反応器中に存在し、ニッケルとコバルトとのモル比(Ni:Co)は、1:0.05であった。反応器中に存在するスラリー濃度は、10重量%であった。ペルオキシ一硫酸を生成するための硫酸と過酸化水素とのモル比(HSO:H)は、5:1であり、この反応に使用された溶液のペルオキシ一硫酸濃度は、10%であった。式2に従い、反応中にさらに硫酸が生成されることを考慮すると、コバルトに対するペルオキシ一硫酸のモル比は、3であり、ニッケルに対する硫酸のモル比は、0.85であった。
【0066】
反応器中に存在する混合物を300rpmで撹拌し、反応温度は、45℃であり、pHは、4を超えていた。反応中に溶液のpHを制御するための中和剤は、使用しなかった、pH及びORPのためのセンサーを備えたVWR、pHenomenal(登録商標)111 pH電極、3イン1型のpH測定プローブを利用した。
【0067】
実施例2(比較例)
実施例2では、最初にMHPに過硫酸塩(Na)を注入した。この反応の30分後、次いで硫酸溶液を注入した。
【0068】
Ni(OH)は、38gの量で反応器中に存在し、ニッケルとコバルトとのモル比(Ni:Co)は、1:0.05であった。反応器中に存在するスラリー濃度は、10重量%であった。過硫酸ナトリウムとコバルトとの反応中にさらに硫酸が生成されることを考慮すると、コバルトに対する過硫酸ナトリウムのモル比(Na:Co)は、1.87であり、ニッケルに対する硫酸のモル比(HSO:Ni)は、0.83であった。
【0069】
反応器中に存在する混合物を300rpmで撹拌し、反応温度は、60℃であった。
【0070】
結果
図1から分かる通り、実施例1では、最初に硫酸によってコバルトが浸出し、ペルオキシ一硫酸(カロ酸、CA)が注入されると沈殿し始める。ニッケルは、カロ酸の注入と共に連続的に溶解する。
【0071】
実施例2では、硫酸は、ニッケルを浸出するのに対して、コバルトを沈殿中に残存させ続けた(図1を参照されたい)。
【0072】
図2のグラフは、酸化剤としてペルオキシ一硫酸(CA)が使用される場合(実施例1を参照されたい)、より少ないコバルトが酸性の浸出溶液中で回収され、すなわち酸化剤としての過硫酸塩の使用(実施例2を参照されたい)と比較してより多いコバルトが固相中で回収されることを示す。
【0073】
【表1】
【0074】
したがって、ペルオキシ一硫酸の使用は、中和剤を添加せずにコバルトを含まない硫酸ニッケル溶液を生成するためのMHPの選択的酸浸出をもたらす。
【0075】
実施例3及び4(ニッケル/コバルト/マンガン)
実施例3では、水に懸濁させたNi(OH)、Co(OH)及びMnSOを含有する反応器に0.8ml/分の注入速度の連続流でペルオキシ一硫酸を連続的に注入した。
【0076】
Ni(OH)は、38gの量で反応器中に存在し、ニッケルとコバルトとのモル比(Ni:Co)は、1:0.05であり、ニッケルとマンガンとのモル比(Ni:Mn)は、1:0.05であった。反応器中に存在するスラリー濃度は、10重量%であった。ペルオキシ一硫酸を生成するための硫酸と過酸化水素とのモル比(HSO:H)は、5:1であり、この反応に使用された溶液のペルオキシ一硫酸濃度は、10重量%であり、この反応に使用された溶液の硫酸濃度は、42重量%であった。コバルト及びマンガンに対するペルオキシ一硫酸のモル比(HSO:Co+Mn)は、3であり、硫酸の添加は、実施しなかった。
【0077】
反応器中に存在する混合物を300rpmで撹拌し、反応温度は、70℃であり、pHは、4を超えていた。反応中に溶液のpHを制御するための中和剤は、使用しなかった。pH及びORPのためのセンサーを備えたVWR、pHenomenal(登録商標)111 pH電極、3イン1型のpH測定プローブを利用した。
【0078】
実施例4は、まさに実施例3の通りであり、ペルオキシ一硫酸の最後の一滴を添加した30分後に開始する硫酸の滴下を、4を超えるpHを維持しながら行った。
【0079】
実施例3及び4の結果を図3に示す。図3から分かる通り、実施例3では、マンガンは、水に溶解し、ペルオキシ一硫酸の添加と共に沈殿した。コバルトは、部分的に溶解し、その後、ペルオキシ一硫酸の添加と共に沈殿した。ニッケルは、ペルオキシ一硫酸の注入と共に連続的に溶解した。実施例4では、4を超えるpHを維持しながらの硫酸の滴下(図4)は、コバルト及びマンガンを固相中に維持しながらのニッケルの追加の溶解を可能にした。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例5(MHPサンプル)
実施例5では、水に懸濁させたMHPサンプルを含有する反応器に0.8ml/分の注入速度の連続流でペルオキシ一硫酸を連続的に注入した。
【0082】
このMHPサンプルは、47重量%の水分及び以下の組成(重量%)を含有していた。
【0083】
【表3】
【0084】
MHPサンプルは、60gの量で反応器中に存在し、反応器中に存在するスラリー濃度は、10重量%であった。ペルオキシ一硫酸を生成するための硫酸と過酸化水素とのモル比(HSO:H)は、5:1であり、この反応に使用された溶液のペルオキシ一硫酸濃度は、10重量%であり、この反応に使用された溶液の硫酸濃度は、42重量%であった。
【0085】
反応器中に存在する混合物を300rpmで撹拌し、反応温度は、70℃であり、pHが2になるまで(図6)ペルオキシ一硫酸を連続的に注入した。反応中に溶液のpHを制御するための中和剤は、使用しなかった。pH及びORPのためのセンサーを備えたVWR、pHenomenal(登録商標)111 pH電極、3イン1型のpH測定プローブを利用した。
【0086】
実施例5の結果を図5に示す。この図は、時間の経過及びペルオキシ一硫酸の添加に伴うMHPから溶液へのニッケルの溶解を明らかにしている。
【0087】
【表4】



図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】