(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】軌道のまくらぎを検出する装置
(51)【国際特許分類】
E01B 35/00 20060101AFI20241128BHJP
E01B 31/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E01B35/00
E01B31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527310
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 AT2022060386
(87)【国際公開番号】W WO2023081946
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517002409
【氏名又は名称】ハーペードライ・レアール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヒュットマイヤー・ハーラルト
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057AB01
2D057BA33
(57)【要約】
軌道のまくらぎを検出する装置であって、まくらぎ検出センサ(11)を備え、まくらぎ検出センサ(11)は、軌道におけるまくらぎ(5、19)のポジションを検測及び特定するために、線路工事機械に、場合によっては線路工事機械に割り当てられた軌道検測車に配置されている、装置が記載される。まくらぎのポジションを有利に求めることができるように、まくらぎ検出センサ(11)は、まくらぎ検出センサ(11)と軌道との間の少なくとも1つの空隙を有する磁気回路内に磁場(14、15)を生成する磁石と、磁気回路内に配置されたホールセンサ(13)とを有し、ホールセンサ(13)の、軌道長手方向(A、s)に変化するホール電圧(U)が、軌道におけるまくらぎ(5、19)の位置を特定するために用いられることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道のまくらぎを検出する装置であって、
まくらぎ検出センサ(11)を備え、前記まくらぎ検出センサ(11)は、軌道におけるまくらぎ(5、19)のポジションを検測及び特定するために、線路工事機械に、場合によっては線路工事機械に割り当てられた軌道検測車に配置されている、装置において、
前記まくらぎ検出センサ(11)は、前記まくらぎ検出センサ(11)と軌道との間の少なくとも1つの空隙を有する磁気回路内に磁場(14、15)を生成する磁石と、磁気回路内に配置されたホールセンサ(13)とを有し、前記ホールセンサ(13)の、軌道長手方向(A、s)に変化するホール電圧(U)が、軌道におけるまくらぎ(5、19)の位置を特定するために用いられることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記磁石は、電磁石(12)及び/又は永久磁石であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電磁石(12)の電流コイルは、直流電源に接続されていて、磁気回路内に直流磁場(By)を生成することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電磁石(12)の電流コイルは、交流電源に接続されていて、磁気回路内に交流磁場(By)を生成することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
まくらぎ(5、19)の間で金属の部品を検出するために、複数のまくらぎ検出センサ(11)が、軌道横方向に相並んで配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
軌道において金属の部品を探索するために、少なくとも1つのまくらぎ検出センサ(11)が、前記線路工事機械及び/又は前記軌道検測車に割り当てられた移動装置によって、軌道の横方向に変位可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つのまくらぎ検出センサ(11)が、軌道に対して高さ調整可能に、前記線路工事機械及び/又は前記軌道検測車に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ホールセンサ(13)は、前記空隙内に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
制御装置が、軌道長さにわたるホール電圧(U)の電圧ピーク(21)とホール電圧(U)のベースレベル(22)との差から、電圧ピーク(21)とベースレベル(22)との間にある境界値(20)を連続的に求め、各電圧ピーク(U)と境界値(20)との交点の平均値から、軌道におけるまくらぎ(5、19)の位置を特定することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道のまくらぎを検出する装置であって、まくらぎ検出センサを備え、まくらぎ検出センサは、軌道におけるまくらぎのポジションを検測及び特定するために、線路工事機械に、場合によっては線路工事機械に割り当てられた軌道検測車に配置されている、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のまくらぎ検出センサは、特にレールをまくらぎに結合する金属の締結手段の位置を測定及び特定するために用いられ、これにより、まくらぎの位置も明確に求めることができる。
【0003】
つき固め機は、軌道を整正する機械である。そのために、作業中に軌道高さ実際位置と軌道方向実際位と軌道のカント実際位置とを検測し、所定の目標値と比較する検測システムが使用される。軌道つり上げ整正ユニットによって、軌きょうが、所定の目標位置と実際位置との間の差が0になるまでつり上げられて側方で整列され、この位置で、つき固めユニットを用いてまくらぎ下でバラストを締め固めることによって固定される。この場合、軌きょうのつり上げ及び整正は、比例制御又はサーボ制御で、適切な液圧式のつり上げシリンダ及び整正シリンダを介して行われる。この種の線路工事機械のつき固め工具は、まくらぎの破壊及び破損を防止するために、正確にまくらぎ間の中間域でつき入れなければならない。したがって、工具でのつき固め機の正確なポジショニングに多大な注意を払わなければならない。線路工事機械の自動のポジショニング及び前進走行は、まくらぎが認識可能で、バラスト層によって覆われていない場合に可能である。
【0004】
保守作業の他に、つき固め機は、バラストふるい分け作業又は軌道更新の後で新しい位置の軌道のつき固めにも使用される。こられの作業は、複数のつき固め動作を特徴としている。これらのつき固め動作の特徴は、レール上縁にまで軌道にバラストが投入されていて、つき固め機が、大きなつり上げを実行することにある。まくらぎの位置は、オペレータには、つり上げの間、はっきりと形成されるバラスト起伏によって大体にしか認識されない。この場合、つき固め機運転手が、感覚及び経験に基づいてしか機械前進走行と中間域にわたるつき固め工具のポジショニングとを行えないことが問題である。この場合、自動の前進走行は、実際には排除されている。つき固め工具のポジショニングが正しくないときには、工具がまくらぎに衝突し、まくらぎが破損する。その他に、機械性能に著しく不都合な影響が及ぼされるという欠点が生じる。
【0005】
例えばレーザスキャナ又はビデオカメラを有する様々な光学系によって、レール、まくらぎ及びレール締結部の位置を検知できる。これにより、つき固め工具の自動の正確なポジショニング及びつき固め機の前進走行も実現される。しかし、公知の光学式の方法は、レール上縁にまでバラスト投入された軌道では役立たない。
【0006】
レール上縁にまでバラスト投入された軌道では、機械運転手が、多くの場合に分岐器に存在する、転てつ機、転てつ器機構及び転てつ器閉鎖装置などの、中間域にある障害物を認識せず、これらがつき入れ動作時につき固めユニットによって破損されることも問題である。ここでも光学式の計測方法が役立たない。
【0007】
一般的な誘導型及び容量型アナログセンサは、最大約30mmの検出距離を有する。しかし、レールの上縁と検出されるべきレール締結手段の高さ位置との間には、はるかに大きな間隔が存在し、したがって、この種のセンサは、これまで有効に使用できていない。したがって、例えば誘導式のセンサの案内には、センサを低くセットし、したがってバラストを通って移動しなければならないという問題がある。さらに、締結手段がタイプに応じて様々な高さを有する困難性が存在し、このことは、短い測定間隔に鑑みて同様に問題である。実際には、多くの様々なレール締結手段が存在する。レール締結手段の特徴は、ボルト締結であり、締結手段は、少なくとも主に鋼(強磁性体)から製作されている。これらの締結手段は、レールのすぐ近くに位置し、低い磁性の質量を有し、部分的に、公知の誘導型又は容量型センサでは確実に検出することができないレール上縁の下方にある。原則として、センサは、測定のために十分に締結手段の近くに降下していると、締結手段を検出できる。しかし、レール上縁にまでバラスト投入されていると、そのような解決策は、事実上もはや不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の基礎をなす課題は、上述の欠点を回避するとともにバラストがフルに投入されてもレール締結手段に対して(バラストの上方で)大きな間隔を置いて案内されて、レール締結手段を明確に検出する、検出機器及びユニットを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課せられた課題を、まくらぎ検出センサが、まくらぎ検出センサと軌道との間の少なくとも1つの空隙を有する磁気回路内に磁場を生成する磁石と、磁気回路内に配置されたホールセンサとを有し、ホールセンサの、軌道長手方向に変化するホール電圧が、軌道におけるまくらぎの位置を特定するために用いられることによって解決する。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に表されている。
【0010】
電磁石及び永久磁石を介して磁場が磁気回路内に生成され、磁場は、電流が流れるホールセンサによって測定され、ホールセンサのホール電圧は、レール締結部が存在することで磁気抵抗が減少することによって増大し、電圧の増大は、軌道長手方向のレール締結部、ひいてはまくらぎの位置の特定と、線路工事機械の自動の前進走行の制御とに利用される。主に、空隙、ひいては磁気抵抗は、レール締結部又は場合によっては例えば転てつ機などの他の機械的な障害物も存在するか否かに応じて変化する。このことは、特に2本のまくらぎの間に当てはまる。軌道長さにわたるホール電圧の経過、すなわち軌道におけるまくらぎ検出センサのその都度のポジションは、軌道長手方向のレール締結部、ひいてはまくらぎの位置の特定に用いられる。
【0011】
磁気回路は、2本のまくらぎの間でレールを介して閉じている。この磁気作用領域にレール締結部が到来すると、磁気抵抗が小さくなり、これにより磁場が大きくなる。つき固めユニットのポジショニングの前で幾つかのまくらぎにおいてレール締結部の検測、ひいては磁場の変化の測定及びまくらぎの位置の測定が行われるので、信号を事前に評価し、中心ポジションを特定できる。
【0012】
磁場についてベクトルに関連するローレンツ力が有効である:
【数1】
FL ローレンツ力
Q 電荷
v 電荷キャリアの速度
B 磁場
【0013】
既知の電流Iで動作するホール効果センサは、ホール効果センサの面に対して直交方向に生じる磁場成分Byを測定する。電場Exが生成される。電場Exに比例して、側面で電圧Uを測定できる。まくらぎ検出センサは、支持車に取り付けられていて、レール及びレール締結部の上方の一定の高さで案内される。進行した距離とホール電圧とが連続的に測定される。信号が評価される。このために、信号のベースレベルとピーク値との間の差を起点として、逐次境界値が求められる。この境界値における信号の平均値から、レール締結部の平均のポジション、ひいてはまくらぎの位置が得られる。まくらぎごとの測定された間隔aiは、つき固め工具の前進走行制御及びポジショニングに用いられる。
【0014】
この本発明による形態における利点は、バラスト層を通る測定及びこれにより実現可能なつき固め工具の正確なポジショニングである。これにより、つき固め機を、自動前進移動モードにおいて高速運転できる。ユニットは、相並んで台車に配置された複数のまくらぎ検出センサでも、強磁性材料からなる障害物、例えば中間域における分岐器用の駆動機構を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面には、本発明の対象が概略的に例示されている。
【
図1】レールと及びW形締結部と共に部分横断面図で示されたまくらぎを示す。
【
図2】レールと及びK形締結部と共に部分横断面図で示されたまくらぎを示す。
【
図3】磁場と共にまくらぎ検出センサの構造を概略的に示す。
【
図5】測定の経過とホールセンサで生じる電圧信号とを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、1:40の勾配でまくらぎ5上にボルト締結されたレール1を横断面図で示す。まくらぎ用ボルト2、緊締クランプ3、アングルガイドプレート4及びパッド6が図示されている。緊締クランプ3、まくらぎ5及びまくらぎ用ボルト2は、鋼からなり、したがってまくらぎ検出センサがレール1に沿って移動するときに磁束変化に影響を及ぼす。これにより、軌道における軌道長手方向のこれらの位置又は長手方向ポジションを明確に検出できる。
【0017】
図2は、別種のレール締結部、いわゆるK形締結部(クランププレート)を示す。まくらぎ5上で、レール1は、1:40の勾配をもってボルト締結されている。締結ナットを有するTボルト7、クランププレート8、まくらぎ用ボルト9、リブ付きプレート10及び弾性的なパッド6が示されている。Tボルト7、リブ付きプレート10及びクランププレート8は、鋼からなり、まくらぎ検出センサがK形締結部の上を移動するときに磁気抵抗を低減する。
【0018】
図3は、ここで言及されるまくらぎ検出センサ11の測定構造を模式的に示す。まくらぎ検出センサ11は、軌道におけるまくらぎ5、19のポジションを測定及び特定するために、図示されていない線路工事機械に、場合によっては線路工事機械に割り当てられた軌道検測車に配置されている。まくらぎ検出センサ11は、まくらぎ検出センサ11と軌道との間の少なくとも1つの空隙を有する磁気回路内に磁場を生成する電磁石12と、磁気回路内に配置されたホールセンサ13とを有する。ホールセンサ13は、この場合、まくらぎ検出センサ11と軌道との間のこの空隙内に配置されている。まくらぎ検出センサ11が軌道長手方向A、sに、すなわち軌道に沿って移動する際に変化するホール電圧Uは、軌道におけるまくらぎ5、19の位置を特定するために用いられる。
【0019】
まくらぎ検出センサ11には電磁石12が備え付けられている。電磁石12の電気コイルと磁心11、特にまくらぎ検出センサ11の軟鉄心とを介して、レール頭部に導入される磁場14、15が生成される。まくらぎ検出センサ11の軟鉄心は、略U字形に形成されている。磁心11は、レール頭部上でわずかな間隔を置いて同一の長手方向に案内される又は軟鉄心の一方の脚部でもって直接にレール頭部上を摺動する。車輪を介してレール頭部に磁場を導入することも可能である。レール締結部が存在しない場合、磁気回路は、磁心11の他端で、すなわち軟鉄心の他方の脚部を介して直接にレール1のレール頭部へ向けて閉じられる。磁心の他方の脚部の端部は、大体において場合によっては存在するレール締結部上に案内され、本実施例では、その空隙に対する接触面にホールセンサ13を支持する。これにより、ホールセンサ13は、磁気回路内に配置されている。
【0020】
まくらぎ締結部の領域で、磁場は、レール締結部、特にまくらぎ用ボルト2又はTボルト7を介して、磁場14の付加的な結合によって、磁心の、ホールセンサ13が備え付けられた端部へ向けて変化する。磁気抵抗が低下し、磁場が強くなり、測定されるホール電圧Uが増加する。磁心11は、磁化を向上させる理由から、薄板、特に相互に絶縁されたトランス板の複数の層から形成されてよい。
【0021】
図4は、磁場Byが通って流れるホール効果センサ16を概略的に示す。ホール効果センサを通って電流Iが流れ、電流Iは、ホール効果センサにおいて電流Iに対して横方向に、磁場Byに対して比例的な電圧Uを生成する接点を介してタップ可能である。発生するホール電圧について
【数2】
が成立する。
【0022】
関係式が示すように、発生する電圧Uは、電流I、材料特有のホール定数RH及び磁場BYに正比例する。ホール層の厚さdが増大するにつれ、電圧Uは低下する。
【0023】
図5は、作用形態を模式的に示す。まくらぎ検出センサ11は、方向Aにレール18に沿って一定の高さで案内される。レール18は、締結手段17を介して、まくらぎ間隔aiを置いてまくらぎ19に結合されている。さらに、軌道長さsにわたって測定されたホール電圧Uの経過が表されている。締結手段17が存在しない場合、電圧レベル22が測定される。金属のレール締結手段17の領域では、ホール電圧Uは21へ増大する。ここで、締結手段17の位置及び締結手段17と共にまくらぎ19を特定できる。電圧ピーク21とベースレベル22との差から、両方の値の間にある境界値20が連続的に求められる。応力ピーク21とこの境界値20との交点の平均値によって、締結手段17のポジション、ひいてはまくらぎ19の位置が得られる。
【国際調査報告】