(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電動モータのロータシャフト、ロータシャフトの組立体、およびロータシャフトの組立体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H02K9/19 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527401
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 DE2022100818
(87)【国際公開番号】W WO2023083412
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129618.8
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505323725
【氏名又は名称】エムティーユー エアロ エンジンズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュロッフェル,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベル,ヨハン
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP07
5H609QQ08
5H609QQ16
(57)【要約】
本発明は、特に航空機エンジン用である、電動モータ(2)のロータシャフト(1)であって、鍛造による取り付けフランジ(3)を有し、取り付けフランジ(3)が、力および/またはトルクを伝達するために他のシャフト(6)に取り付けられるように設けられ、他のシャフト(6)に面する第1の軸方向端部(4)を備え、第1の軸方向端部(4)の反対の第2の軸方向端部にベースプレート(8)を備える、ロータシャフト(1)に関する。ロータシャフト(1)は、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体(9)を有し、付加製造による冷却剤分配体(9)が、鍛造による取り付けフランジ(3)のベースプレート(8)上に径方向に中心が合うように配置され、ロータシャフト(1)は、付加製造による冷却剤分配体(9)を径方向に囲繞し、少なくとも圧入により鍛造による取り付けフランジ(3)のベースプレート(8)に接合されるロータ装置(12)を有することが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に航空機エンジン用である、電動モータ(2)のロータシャフト(1)であって、鍛造による取り付けフランジ(3)を有し、前記取り付けフランジ(3)が、力および/またはトルクを伝達するために他のシャフト(6)に取り付けられるように設けられ、前記他のシャフト(6)に面する第1の軸方向端部(4)を備え、前記第1の軸方向端部(4)の反対の第2の軸方向端部にベースプレート(8)を備える、ロータシャフト(1)において、
少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体(9)を有し、付加製造による前記冷却剤分配体(9)が、鍛造による前記取り付けフランジ(3)の前記ベースプレート(8)上に径方向に中心が合うように配置され、
付加製造による前記冷却剤分配体(9)を径方向に囲繞し少なくとも圧入により鍛造による前記取り付けフランジ(3)の前記ベースプレート(8)に接合されるロータ装置(12)を有することを特徴とする、ロータシャフト(1)。
【請求項2】
前記取り付けフランジ(3)が、前記第1の軸方向端部(4)に、前記他のシャフト(6)を取り付けるための取り付け具(5)を備えることをさらに特徴とする、請求項1に記載のロータシャフト(1)。
【請求項3】
圧入および/または形状嵌合により前記他のシャフト(6)に前記取り付けフランジ(3)を接合するように構成された外部取り付け要素を備えることをさらに特徴とする、請求項1または2に記載のロータシャフト(1)。
【請求項4】
少なくともいくつかの領域の付加製造による前記冷却剤分配体(9)が、少なくともいくつかの領域の付加製造による前記冷却剤分配体(9)の外面(14)のチャネル開口(13)と流体連結にある冷却剤チャネル(11)を有することをさらに特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のロータシャフト(1)。
【請求項5】
少なくともいくつかの領域の付加製造による前記冷却剤分配体(9)が、前記取り付けフランジ(3)から離れる方を向く端部に、軸方向に延在する冷却剤供給要素(15)を備えることをさらに特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータシャフト(1)。
【請求項6】
前記冷却剤チャネル(11)の少なくともいくつかが、前記取り付けフランジ(3)の冷却チャネル(22)と流体連結にあることをさらに特徴とする、請求項4または5に記載のロータシャフト(1)。
【請求項7】
前記ロータ装置(12)が、連結装置(19)により前記取り付けフランジ(3)に接合されることをさらに特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータシャフト(1)。
【請求項8】
前記連結装置(19)が、前記ロータ装置(12)および前記取り付けフランジ(3)に固定された第1のタイロッド(20)を有することをさらに特徴とする、請求項7に記載のロータシャフト(1)。
【請求項9】
前記ロータ装置(12)が、2つのフランジプレート(16)同士の間に軸方向に配置されたロータユニット(17)を備え、2つの前記フランジプレート(16)が、第2のタイロッド(18)によって互いに接合されることをさらに特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のロータシャフト(1)。
【請求項10】
前記冷却剤分配体(9)が、材料接合により前記取り付けフランジ(3)に付加的に適用されることをさらに特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のロータシャフト(1)。
【請求項11】
鍛造による取り付けフランジ(3)であって、前記取り付けフランジ(3)が、力および/またはトルクを伝達するために他のシャフト(6)に取り付けられるように設けられ、前記他のシャフト(6)に面する軸方向端部(4)を備え、第1の軸方向端部(4)の反対の第2の軸方向端部(7)にベースプレート(8)を備える、鍛造による取り付けフランジ(3)を備える、ロータシャフト(1)の組立体(21)において、
前記ロータシャフト(1)が、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体(9)を有し、付加製造による前記冷却剤分配体(9)が、鍛造による前記取り付けフランジ(3)の前記ベースプレート(8)上に径方向に中心が合うように配置されることを特徴とする、組立体(21)。
【請求項12】
冷却剤分配体(9)が、ベースプレート(8)を備える鍛造による取り付けフランジ(3)上に少なくともいくつかの領域において付加製造法に従って適用され、付加製造による前記冷却剤分配体(9)が、径方向に中心が合うように鍛造による前記取り付けフランジ(3)の前記ベースプレート(8)上に配置される、ロータシャフト(1)の組立体(21)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴による、特に航空機エンジン用である、電動モータのロータシャフト、請求項11のプリアンブルの特徴による、ロータシャフトの組立体、および請求項12のプリアンブルの特徴による、ロータシャフトの組立体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータは、ステータとロータとを備える。電動モータのロータは、これによって、ロータシャフトに配置される。電動モータの動作の間、電動モータのロータは回転し、ロータ内で誘起されるトルクは、ロータシャフトを介してギアボックスに伝達される。ギアボックスにトルクを伝達することができるようにするために、ロータシャフトは、ギアボックスシャフトが配置され得る前部領域内にロータフランジを有する。それぞれのロータシャフトの設計において、ロータシャフトが、ロータによって供給されるトルクを伝達するのに十分に安定していることを確認する必要がある。供給されるトルクを伝達することができるようにするために、メガワットおよびギガワットの範囲のロータフランジおよびロータシャフトは、鍛造合金から製造される。これらの電力の範囲では、冷却剤を供給することによってロータを冷却する必要があり得る。冷却剤の供給は、例えば、ロータシャフトを通して行われ得る。この目的のため、ロータシャフト内に、冷却剤をロータに送達および冷却剤をロータから排出することができる冷却剤チャネルを配置する必要がある。
【0003】
しかし、冷却剤チャネルによって形成されるチャネル構造は、鍛造ロータシャフトによって実現することができない複雑さを伴うことがある。
【0004】
複雑な冷却チャネル構造を含むロータシャフトを製造する実現性は、付加製造法によってロータシャフトを製造することにある。付加製造ロータシャフトの欠点は、鍛造ロータシャフトに比べて機械的負荷に耐える能力が低いことである。その結果、付加製造ロータシャフトは、ロータシャフトについての特定の安全基準を満たすことができない。
【0005】
しかし、より単純な冷却チャネル構造を含む鍛造ロータシャフトの使用は、冷却能力を低減させ、その結果、電動モータの出力密度が減少することになる。
【0006】
EP3580434A1号には、付加製造法を用いた部品および部品を製造する方法が開示されている。この方法は、構成要素のベース基板上における付加製造法の使用を開示する。それによって、構成要素の環状部が構成要素のベース部に付加的に適用され得る。構成要素の環状部は、構成要素のベース部とは異なる材料特性を有するように形成され得る。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0010469A1号には、ロータを製造する方法が開示されている。ロータを生産する方法は、従来の製造方法を用いたハブの製作、および層ごとの付加製造法によるハブ上のブレードまたはベーンの製作を含む。
【0008】
EP2772329A1号には、ハイブリッド構成要素を製造する方法が開示されている。この方法では、ハイブリッド構成要素の第1の部分として予備成形体が製作されることが提供される。次いで、その予備成形体に対して、金属粉末材料から作られた構成要素の第2の部分が付加製造法による連続的な堆積によって適用される。
【0009】
EP3840197A1号には、発電機のロータを生産する方法が記載されている。この方法では、ロータシャフトの少なくとも一部が、三次元(3D)印刷法によって製作されることが提供される。ロータコアを印刷するステップは、ロータコアを通って延びる複数の液体冷却剤ラインを印刷することを含む。
【0010】
EP3654501A1号には、電気機械の付加形成ロータ構成要素、および付加形成ロータ構成要素を製造する方法が開示されている。形成ロータ構成要素は、ロータ組立体またはロータシャフトを備えることができる。例えば、ロータシャフトの第1の部分は、付加製造法によって印刷され得る。ロータシャフトの第2の部分は、ロータコア内の中心に形成され得る。冷却チューブは、均一になるように、ロータコアの部分を貫通して形成され得る。冷却チューブは、ロータコアの各層に付加製造することによって印刷され得る。冷却チューブは、冷却孔を画定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ロータの必要な冷却を可能にすると同時に所定のトルクを伝達するのに必要な安定性を有するロータシャフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴による、特に航空機エンジン用である、電動モータのロータシャフト、請求項11の特徴による、ロータシャフトの組立体、および請求項12の特徴による、ロータシャフトの組立体を製造する方法によって解決される。本発明の適切なさらなる発展形態による有利な実施形態は、それぞれの従属請求項で明記され、それによって、本発明の各態様の有利な実施形態は、本発明の他のそれぞれの態様の有利な実施形態としてみなされるべきである。
【0013】
本発明の第1の実施形態は、特に航空機エンジン用である、電動モータのロータシャフトに関する。換言すると、ロータシャフトは、特に航空機エンジンとして設計され得る、電動モータに使用されるように提供され得る。ロータシャフトは、鍛造による取り付けフランジを有することが提供される。取り付けフランジは、鋳造され得る、あるいは粉末冶金および鍛造により生産され得る。換言すると、取り付けフランジは、鋳造法によって、または粉末冶金法および鍛造法によって製作される。取り付けフランジは、力および/またはトルクを伝達するために、他のシャフトに取り付けられるように設けられる。換言すると、取り付けフランジは、他のシャフトへの取り付けのために設計される。他のシャフトは、電動モータの供給トルクが伝達されるギアボックスシャフトを含むことができる。取り付けフランジは、他のシャフトの方向に対して整列される第1の軸方向端部を有する。したがって、第1の軸方向端部は、軸方向に他のシャフトに面し得る。取り付けフランジは、第1の軸方向端部の反対の第2の軸方向端部にベースプレートを有する。換言すると、取り付けフランジは、ベースプレートによって第2の軸方向端部において境界が定められる。
【0014】
本発明は、ロータシャフトが、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体を有し、ここで、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体が、鍛造による取り付けフランジのベースプレート上に径方向に中心が合うように配置される。換言すると、ベースプレート上に軸方向に中心が合わせられ、少なくともいくつかの領域内に付加製造法によって製作された冷却剤分配体は、取り付けフランジ上に位置される。付加製造による冷却剤分配体は、圧入、形状嵌合(form-fitting)、または材料接合(material-bonded)により取り付けフランジのベースプレート上に配置され得る。冷却剤分配体は、円筒形状を有することができ、取り付けフランジと同様、ロータシャフトの長手方向軸に沿って中心が合うように延在することができる。
【0015】
ロータシャフトは、付加製造による冷却剤分配体を径方向に囲繞し、少なくとも圧入により、特に直接的な圧入により鍛造による取り付けフランジのベースプレートに接合されるロータ装置を有する。換言すると、付加製造による冷却剤分配体は、ロータ装置によってその外面に沿って囲繞される。ロータ装置は、例えば、冷却剤分配体の外面に載置され得る。ロータ装置は、コイルおよびコアを有することができ、動作中に冷却剤分配体により供給される冷却剤によって冷却され得る。これによって、冷却剤分配体は、冷却剤をロータ装置に送達することができ、または冷却剤をロータ装置から排出することができるように構成される。伝達されるトルクにより冷却剤分配体に掛かるあらゆる負荷を低減させるために、ロータ装置は、少なくとも圧入により、鍛造による取り付けフランジのベースプレートに接合され得る。このように、ロータ装置内に、特に直接的および/または間接的に誘起されるトルクは、ベースプレートに、および/またはベースプレートを介して取り付けフランジに伝達可能になる。トルクの伝達がベースプレートを介して行われるので、冷却剤分配体に掛かる機械的負荷は低減し、したがって、冷却剤分配体は、冷却剤分配体を介したトルクの単独の伝達の場合に必要とされるよりも低い機械的安定性を有することを必要とする。
【0016】
本発明は、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体の使用を可能にする、という利点をもたらす。というのも、生じるトルクの大部分は、取り付けフランジのベースプレートに伝達されるからである。
【0017】
本発明のさらなる一発展形態は、取り付けフランジが、第1の軸方向端部に、他のシャフトを取り付けるための取り付け具を有することを提供する。換言すると、取り付けフランジは、取り付けフランジの取り付け具上に他のシャフトが取り付けられるように構成される。取り付け具は、取り付けフランジの第1の軸方向端部に位置する。
【0018】
本発明のさらなる一発展形態は、ロータシャフトが、他のシャフトに取り付けフランジを接合するように構成された外部取り付け要素を備えることを提供する。外部取り付け要素は、他のシャフトへの取り付けフランジの外部取り付けを可能にするように設計され得る。外部取り付け要素は、力および/またはトルクを取り付けフランジから外部取り付け要素を介して他のシャフトに伝達するために、取り付けフランジに対する圧入および/または形状嵌合連結を可能にするように設計され得る。外部取り付け要素は、例えば、取り付け具または取り付けフランジに対して圧入および/または形状嵌合取り付けされるように設計され得る。加えて、外部取り付け要素は、例えば、他のシャフトに対して圧入および/または形状嵌合取り付けされるように設計され得る。
【0019】
本発明のさらなる一発展形態は、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体が、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体の外面のチャネル開口と流体連通にある冷却剤チャネルを有することを提供する。換言すると、冷却剤分配体は、冷却剤分配体を通って冷却剤を搬送するように構成される冷却チャネルを有する。チャネル開口は、ロータ装置に対する冷却剤の送達およびロータ装置からの冷却剤の排出を可能にするように構成される。
【0020】
本発明のさらなる一発展形態は、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体が、取り付けフランジから離れる方を向く端部に、軸方向に延在する冷却剤送達要素を備えることを提供する。換言すると、シャフトの軸に沿って軸方向に延在する冷却剤送達要素は、冷却剤分配体の、取り付けフランジの軸方向反対に位置する端部に配置される。冷却剤送達要素は、冷却剤分配体に対する冷却剤の送達および冷却剤分配体からの冷却剤の排出を可能にするために、送達ラインおよび排出ラインを有することができる。
【0021】
本発明のさらなる一発展形態は、冷却剤チャネルの少なくともいくつかが、取り付けフランジの冷却チャネルと流体連結にあることを提供する。換言すると、取り付けフランジは、冷却剤分配体の少なくとも1つの冷却チャネルと流体連結にある少なくとも1つの冷却チャネルを有する。これは、冷却剤がさらに取り付けフランジに送達され得るという利点をもたらす。
【0022】
本発明のさらなる一発展形態は、ロータ装置が、連結装置により取り付けフランジに接合されることを提供する。換言すると、ロータシャフトは、ロータ装置から取り付けフランジへのトルクの直接的な伝達が可能になるように取り付けフランジに対してロータ装置を連結するように構成される連結装置を有する。例えば、連結装置は、具体的には、ロータ装置と取り付けフランジとの間に直接的および/または間接的な圧入、形状嵌合、および/または材料接合で連結を生じさせることができる。
【0023】
本発明のさらなる一発展形態は、連結装置が、ロータ装置および取り付けフランジに固定された第1のタイロッドを有することを提供する。換言すると、連結装置は、第1のタイロッドを備え、ここで、各第1のタイロッドは、ロータ装置と取り付けフランジの両方に固定される。これにより、取り付けフランジに対するロータ装置内で誘起されるトルクの第1のタイロッドを介した伝達が可能になるという利点をもたらす。
【0024】
本発明のさらなる一発展形態は、ロータ装置が、2つのフランジプレート同士の間に軸方向に配置されたロータユニットを備え、2つのフランジプレートが、第2のタイロッドによって互いに接合されることを提供する。換言すると、ロータ装置は、ロータユニットを備える。ロータユニットは、例えば、ロータのコイルおよびコアを有することができる。ロータ装置の軸方向の両端部上には、例えば鍛造され得る2つのフランジプレートが配置される。フランジプレートを互いに接合し、ロータユニットに対してフランジプレートを接合するために、ロータ装置は、2つのフランジプレートにそれぞれ固定され得る第2のタイロッドを有する。
【0025】
本発明のさらなる一発展形態は、冷却剤分配体が、材料接合により取り付けフランジに付加的に適用されることを提供する。換言すると、少なくとも部分的な付加製造による冷却剤分配体は、取り付けフランジと冷却剤分配体との間に材料接合連結が形成されるように、取り付けフランジ上に付加的に適用されることが提供される。このさらなる発展形態は、取り付けフランジと冷却剤分配体との間に特に安定した機械連結がもたらされるという利点をもたらす。
【0026】
本発明の第2の態様は、ロータシャフトの組立体に関する。組立体は、鍛造による取り付けフランジを備え、ここで、取り付けフランジは、力および/またはトルクを伝達するために他のシャフトに取り付けられるように設けられる。換言すると、取り付けフランジは、他のシャフトに取り付けられるように設計される。他のシャフトは、電動モータの供給トルクが伝達されるギアボックスシャフトを含み得る。取り付けフランジは、他のシャフトの方向に整列される第1の軸方向端部を有する。したがって、第1の軸方向端部は、軸方向に他のシャフトに面し得る。取り付けフランジは、第1の軸方向端部の反対に位置する第2の軸方向端部にベースプレートを有する。換言すると、取り付けフランジは、ベースプレートによって第2の軸方向端部において境界が定められる。
【0027】
ロータシャフトは、少なくともいくつかの領域の付加製造による冷却剤分配体を有し、付加製造による冷却剤分配体が、径方向に中心が合うように、組立体の鍛造による取り付けフランジのベースプレート上に配置されることが提供される。
【0028】
そのさらなる特徴および利点は、本発明の第1の態様の説明から得ることができる。
【0029】
本発明の第3の態様は、ロータシャフトの組立体を製造する方法に関する。この方法において、ベースプレートを備える鍛造による取り付けフランジ上に所定の付加製造法に従って冷却剤分配体が適用されることが提供される。これによって、冷却剤分配体は、径方向に中心が合うように、鍛造による取り付けフランジのベースプレート上に配置される。
【0030】
そのさらなる特徴および利点は、本発明の第1および第2の態様の説明から得ることができる。
【0031】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面および図面の説明からもたらされる。説明における上述した特徴および特徴の組合せ、ならびに、図面の説明および/または図面単独における以下に示される特徴および特徴の組合せは、それぞれ指定された組合せにおいてだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せにおいても使用することができる。したがって、図面に明示的に示されず説明されないが、特徴の別個の組合せによる説明の実施形態から得られ生じる得る本発明の実施形態も、含まれ開示されるとみなされるべきである。したがって、本来明確に表されるような独立請求項のすべての特徴を有さない実施形態および特徴の組合せも開示されるとみなされるべきである。この他に、特許請求の範囲に戻って参照して討論される特徴の組合せにとどまらない、またはそれらから逸脱する、実施形態および特に上述の実施形態による特徴の組合せは、開示されるとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明による、電動モータのロータシャフトの概略図である。
【0033】
【
図2】本発明による、ロータシャフトの組立体の概略図である。
【0034】
【
図3】本発明による、ロータシャフトの組立体を製造する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、電動モータのロータシャフトの概略図である。ロータシャフト1は、特に、航空機エンジンの電動モータ2に設けられ得る。ロータシャフト1は、例えばチタン合金から所定の鍛造法に従って製作され得る、鍛造による取り付けフランジ3を有することができる。取り付けフランジ3は、第1の軸方向端部4に、例えばギアボックスシャフトなどの他のシャフト6を取り付けるための取り付け具5を有することができる。第1の軸方向端部4は、他のシャフト6に面し得る。取り付けフランジ3は、第2の軸方向端部7にベースプレート8を有することができる。取り付けフランジ3は、ロータシャフト1のトルクを他のシャフト6に伝達するために設けられ得る。
【0036】
取り付け具5の別法として、またはそれに加えて、図示されない一実施形態では、ロータシャフトは、取り付けフランジ3を他のシャフト6に接合するように構成される外部取り付け要素(図示せず)を備えてもよい。外部取り付け要素は、例えば、取り付けフランジ3を外側から囲繞するおよび/または内部に取り付けフランジ3が取り付けられる他のシャフト6の取り付けセクションとして他のシャフト6に取り付けフランジ3の外部取り付けを可能にするように設計され得る。外部取り付け要素は、力および/またはトルクを取り付けフランジ3から外部取り付け要素を介して他のシャフト6に伝達するために、取り付けフランジ3と他のシャフト6との間の直接的または間接的な圧入および/または形状嵌合連結を可能にするように設計され得る。外部取り付け要素は、他のシャフト6の一セクションであってもよく、またはそれと一体に一体部品に(直接連結)形成されてもよく、あるいは、外部取り付け要素は、他のシャフト6および取り付けフランジ3の追加または別個の部品(間接連結)であってもよい。他のシャフト6はまた、取り付けフランジ3に直接的または間接的に連結され得、その結果として、力またはトルクの直接的または間接的な伝達が可能にされ得る。
【0037】
付加製造による冷却剤分配体9は、取り付けフランジ3に配置され得、取り付けフランジ3と同様に、ロータシャフト1の長手方向軸10周りに中心が合うように配置され得る。少なくとも部分的な付加製造による冷却剤分配体9は、ロータシャフト1の長手方向軸10に沿って延在し得る円筒形状を有することができる。少なくとも部分的な付加製造による冷却剤分配体9は、取り付けフランジ3に対して、圧入、形状嵌合または材料接合により接合され得る。冷却剤分配体9は、例えば、所定の付加製造法によって、基板としての役割を果たす取り付けフランジ3上に直接適用され得、例えば、チタン合金から製作され得る。冷却剤分配体9内に、付加製造法の使用により、冷却剤分配体冷却剤チャネル11が設けられ得る。冷却剤チャネル11は、冷却剤分配体9に供給される冷却剤をロータ装置12に送達する、またはそれをロータ装置12から排出するように構成され得る。このため、個々の冷却剤チャネル11は、冷却剤分配体9の外面14に位置し得る開口13と流体連結にあり得る。冷却剤を冷却剤分配体9に送達する、またはそれを冷却剤分配体9から排出するために、冷却剤分配体9は、冷却剤供給要素15を有することができる。冷却剤供給要素15は、冷却剤分配体9の、ベースプレート8から離れた方を向く側に配置され得る。冷却剤送達要素15は、例えば、冷却剤を送達または排出するために、2つのチャネルを有することができる。冷却剤分配体9は、ロータ装置12によって少なくとも径方向に囲繞され得る。ロータ装置12は、冷却剤分配体9を通って搬送される冷却剤によって冷却されるコイルコアを有することができる。ロータ装置12は、例えば、冷却剤分配体9の外面14に載置し得る。
【0038】
付加製造法の理由から、冷却剤分配体9は、ロータシャフトの鍛造構成要素よりも低い機械的安定性を有する。したがって、トルクが異なるやり方でロータ装置12から取り付けフランジ3に伝達されるようにロータシャフト1を設計することが必要とされ得る。この目的のため、ロータ装置12は、ロータユニット17の軸方向の両側に配置され得るフランジプレート16を有することができる。フランジプレート16は、鍛造チタンからなり得る。2つのフランジプレート16は、それぞれのフランジプレート16に固定され得る第2のタイロッド18によって互いに接合され得る。第2のタイロッド18は、ロータ装置12の機能部をトルク伝達的にフランジプレート16に連結するために、ロータユニット17に接合され得る。ロータ装置12から取り付けフランジ3へのトルクの伝達のための連結装置19として、ロータシャフト1は、フランジプレート16のうちの少なくとも一方および取り付けフランジ3にそれぞれ固定され得る第1のタイロッド20を有することができる。このように、ロータ装置12によって供給される出力は、取り付けフランジ3に直接的に伝達され得、したがって冷却剤分配体9を通って伝達されるトルクの部分が減少される。
【0039】
図2は、ロータシャフトの組立体の概略図を示す。組立体21は、鍛造法に従って製作され得る取り付けフランジ3を有することができる。取り付けフランジ3は、例えば、チタン合金からなり得る。取り付けフランジ3は、第1の軸方向端部4に、図面に示されない他のシャフト6の取り付けのための取り付け具5を有することができる。取り付けフランジ3は、取り付けフランジ3の第2の軸方向端部7に、ベースプレート8を有することができる。取り付けフランジ3は、第2の軸方向端部に配置され得る冷却剤チャネル22を有することができる。冷却剤分配体9は、少なくとも部分的に付加製造され得、これによって、材料接合的に取り付けフランジ3上に適用され得る。冷却剤分配体9は、同様に、チタン合金からなり得る。冷却剤分配体9は、冷却剤分配体9の冷却剤チャネル11が取り付けフランジ3の冷却剤チャネル22と流体連結することができるように、取り付けフランジ3上に適用されることが実現され得る。冷却剤分配体9の冷却剤チャネル11は、冷却剤分配体9からの冷却剤がロータ装置へと送達される、およびそこから排出され得るように、冷却剤分配体9の開口13と流体連結することができる。冷却剤分配体9内における冷却剤の送達および排出を可能にするために、冷却剤分配体9は、例えば冷却剤の送達および排出のための2つの主チャネル23を有することができる冷却剤供給要素15を有することができる。
【0040】
図3は、組立体を製造する方法の概略図を示す。方法の第1のステップS1で、鍛造による取り付けフランジ3が、付加製造装置25の粉体床24内に配置される。取り付けフランジ3は、第2の軸方向端部7に配置されたベースプレート8が水平方向に位置合わせされるように配置され得る。取り付けフランジ3の冷却剤チャネル22の開口は、水平方向に位置合わせされたベースプレート8内に位置し得る。
【0041】
方法の第2の方法ステップS2で、取り付けフランジに冷却剤分配体9が付加製造法によって適用され得る。これによって、取り付けフランジ3は、冷却剤分配体9の基板となり得る。さらに、粉体が層ごとに適用され接合域に沿って局所的に加熱されることもされ得る。層ごとの適用は、冷却剤分配体9の冷却剤チャネル11からなる予め決められた構造が提供され得るように行われ得る。
【0042】
方法の第3のステップS3で、例えば、冷却剤分配体9上に冷却剤供給要素15が付加的にまたは鍛造要素を用いて配置され得る。
【0043】
ロータシャフト1は、新しい電動モータの全出力をギアボックスに伝達しなければならないので、取り付けフランジ3とも称されるモータフランジであるロータシャフトの最前部は、非常に高い負荷を受け、その一方で、ロータシャフト1の他の領域は、比較すると負荷をより少なく受ける。しかし、後者は、目標の出力密度を達成することができるようにするために、冷却剤分配体9内の複雑な冷却構造を備え得る、または備えなければならない。しかし、中実に設計された取り付けフランジ3は、付加製造の時間の観点から相当な労力を必要とし、それは、より長い必要時間のリスク、より長い走査長、より大きな融解表面、および、より大きな壁厚のために内部の探知が難しいという欠点を伴う。経済的な理由から、そのような単純な取り付けフランジの幾何形状体は、より安全で経済的なやり方で従来の方法を用いて伝統的に生産されるべきであり、次いで、従来の手段によって生産できない冷却構造を含む付加的なシャフト部に接合されるべきである。
【0044】
ロータシャフト1は、
図1に示されるように、前部取り付けフランジ3、フランジプレート16、冷却剤分配体9、後部フランジプレート16、および、冷却媒体が送達および排出され得る冷却剤供給要素15を備えることが実現され得る。
【0045】
電動モータのロータユニット17は、第2のタイロッドにより前部および後部フランジプレート16同士の間で締め付けられ得る。取り付けフランジ3において、力は、締め付けられているモータユニットから長い第1のタイロッドを介して導入される。加えて、取り付けフランジは、フランジプレート16に対して圧入および/または形状嵌合により接合され得る。
【0046】
さらに、メガワットおよびギガワット範囲にモータ概念をアップスケーリングする間、付加的に達成される材料特性が安全関連の取り付けフランジ3についての高い安全基準に達しないというリスクがある。しかし、複雑な内部冷却のために、完全に鍛造材料からロータシャフト1を実現することは不可能である。結果的に、より低い冷却能力による出力の損失になる。重量の増加およびシステム全体の出力密度の著しい低下は、推進システムを維持し得なくさせる。
【0047】
より高い負荷またはより大きな寸法の理由からメガワットまたはギガワット範囲へと前部取り付けフランジ3をスケール変更可能にしておくために、それは、例えば、今日のエンジンディスク(engine disc)のように、2つのフランジプレート16もまた同様に、鍛造Ti64から生産することができる。このように、非常に高い機械的負荷を確実に伝達することが可能になり、さらに、シャフトアタッチメントに今日の一般的な設計概念を使用することが可能になる。
【0048】
全体的または少なくともいくつかの領域の付加製造される冷却剤分配体に取り付けフランジを確実に接合するために、これらの2つの部品は、形状嵌合、圧入または材料接合により接合され得る。形状嵌合連結は、バヨネット嵌合によって引き起こされ、圧入連結はねじ山によって引き起こされ、または、材料接合連結は溶接、はんだ付けもしくは付加製造によって引き起こされ得る。
【0049】
材料接合連結の好ましい一変形形態は、例えば、依然として上方に開いているすでに部分的に予め製造された冷却剤チャネル上に、直接的に例えばSLMまたはEBM粉体床プロセスで複雑な冷却剤分配器を付加的に堆積させることができるように、付加製造ユニット内において、鍛造され、熱処理され、ほぼ終了した処理済み取り付けフランジを用いることを含む。
【0050】
このように、従来の方法では一体部品に製作できない、例えば鍛造Ti64ロータ取り付けフランジおよび例えば付加製造Ti64冷却剤分配器から作られる「複合」シャフトユニットが形成される。
【0051】
鍛造によるロータ取り付けフランジを別個に製作することにより、安全クラス1を実現することが可能になる。直接的に上に堆積させる後続の付加製造により、同じシャフト内で冷却剤分配器の複雑な構造が実現され得る。そのような部品は、従来になく、両方のシャフトの主な利点を併せ持つ。確立された鍛造プロセスは、取り付けフランジに対して十分にテストされ、さらに、より高いユニット数についてより費用対効果が高い。付加プロセスでの取り付けフランジの製作は、複雑性がより低い理由から魅力的ではない。しかし、競争上の優位性および経済性にとって重要である、シャフトの構造的に負荷が少ない領域におけるより複雑な機能的冷却剤チャネルの作製は、付加製造によって可能である。一般にそのような構造は、最適化されたかたちで従来の方法で生産することができないので、ここでは、付加製造は選択の手段であり、薄い複雑な構造の強度および機能性を実現することができる。600kW範囲の小さいロータの場合において、この製造概念を使用することによって、すでに、(不適切な機械的特性であったとしても)付加製造法における時間の観点から利点を実現することができ、また、後でアップスケーリングする間に、ハブが、既存のTi64鍛造設計データを用いて計算および設計され得、また、経済的に生産不可能でありしたがって新しい構造を必要とする壁厚による非常に大きな構造が実現され得る。したがって、付加的に利点を有する構造だけが付加的に堆積される。他の部品のすべては、高価値の機械的特性を有する従来の方法で製作され、それがやはりより経済的である。
【0052】
全般に、本発明によって、機械的要求に合致しつつ、ロータ装置の冷却を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0053】
1 ロータシャフト
2 電動モータ
3 取り付けフランジ
4 第1の軸方向端部
5 取り付け具
6 シャフト
7 第2の軸方向端部
8 ベースプレート
9 冷却剤分配体
10 長手方向軸
11 冷却剤チャネル
12 ロータ装置
13 開口
14 外面
15 冷却剤供給要素
16 フランジプレート
17 ロータユニット
18 第2のタイロッド
19 連結装置
20 第1のタイロッド
21 組立体
22 冷却剤チャネル
23 主チャネル
24 粉体床
25 付加製造装置
S1、S2 方法ステップ
【国際調査報告】