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特表2024-544909船舶の蒸発ガスの再液化システム及び蒸発ガスの再液化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】船舶の蒸発ガスの再液化システム及び蒸発ガスの再液化方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20241128BHJP
   F17C 6/00 20060101ALI20241128BHJP
   F17C 9/02 20060101ALI20241128BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20241128BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B63B25/16 D
B63B25/16 H
F17C6/00
F17C9/02
F17C13/00 302A
F17C13/02 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527455
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2021019908
(87)【国際公開番号】W WO2023096019
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0162298
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,サング カク
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BD02
3E172HA04
(57)【要約】
船舶の蒸発ガスの再液化システム及び蒸発ガスの再液化方法が開示される。本発明の船舶の蒸発ガスの再液化システムは、船舶に設けられて液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、冷媒循環部を循環する冷媒との熱交換により冷却して、再液化させる再液化装置と、再液化装置の再液化容量を制御する再液化容量制御器とを備え、貯蔵タンクから蒸発ガスが排出されるベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力値が、予め設定される低圧設定値より低い場合に、再液化容量制御器で再液化装置の再液化容量を減少させて、貯蔵タンク内の圧力を維持することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設けられて、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンク;と、
前記液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮する圧縮機;と、
前記圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、冷媒循環部を循環する冷媒との熱交換により冷却して、再液化させる再液化装置;と、
前記再液化装置の再液化容量を制御する再液化容量制御器;とを備え、
前記貯蔵タンクから蒸発ガスが排出されるベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力値が、予め設定される低圧設定値より低い場合に、前記再液化容量制御器で前記再液化装置の再液化容量を減少させて、前記貯蔵タンク内の圧力を維持することを特徴とする、
船舶の蒸発ガスの再液化システム。
【請求項2】
前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスの絶対圧力を検知する第1圧力トランスミッタ;と、
前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスのゲージ圧力を検知する第2圧力トランスミッタ;と、
前記第1圧力トランスミッタで検知された圧力値が伝達されて、前記貯蔵タンク内の圧力を目標値に維持するように前記再液化装置の再液化容量を調整する通常圧力制御部;と、
前記第2圧力トランスミッタで検知された圧力値が前記低圧設定値より低い場合に、前記再液化装置の再液化容量を強制的に減少させるように前記再液化容量制御器を制御する低圧制御部;とをさらに備える、
請求項1に記載の船舶の蒸発ガスの再液化システム。
【請求項3】
前記通常圧力制御部は、
前記第1圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第1通常圧力制御器;と、
前記第2圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第2通常圧力制御器;と、
前記第1及び第2通常圧力制御器からの動作信号のいずれか1つを選択し、前記再液化容量制御器に再液化容量を調整する動作信号を出力するセレクタ;とを備え、
前記通常圧力制御部と再液化容量制御器とがカスケード方式で接続されることを特徴とする、
請求項2に記載の船舶の蒸発ガスの再液化システム。
【請求項4】
船船内に前記再液化装置が複数設けられ、各再液化装置は独立したトレインとして夫々設置され、
各再液化装置に、再液化容量制御器が夫々設けられることを特徴とする、
請求項3に記載の船舶の蒸発ガスの再液化システム。
【請求項5】
前記トレインの夫々に、各トレインの再液化装置の再液化容量制御器を制御するトレイン容量制御器が設けられることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶の蒸発ガスの再液化システム。
【請求項6】
前記トレインの各再液化装置は、前記通常圧力制御部に接続されて稼働されるか、または前記通常圧力制御部と独立して、前記トレイン容量制御器により稼働されることを特徴とする、
請求項5に記載の船舶の蒸発ガス再液化システム。
【請求項7】
船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、
圧縮された蒸発ガスを再液化装置で冷媒循環部を循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させ、
前記再液化装置の再液化容量を制御する再液化容量制御器が設けられる船舶の蒸発ガスの再液化方法において、
前記貯蔵タンクから蒸発ガスが排出されるベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力値が、予め設定される低圧設定値より低い場合には、前記再液化容量制御器で前記再液化装置の再液化容量を減少させて、前記貯蔵タンク内の圧力を維持することを特徴とする、
船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【請求項8】
前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスの絶対圧力を第1圧力トランスミッタで検知し、検知した圧力値を通常圧力制御部に伝達して、前記貯蔵タンク内の圧力が目標値に維持されるように前記再液化装置の再液化容量を調整し、
前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスのゲージ圧力を第2圧力トランスミッタで検知し、前記第2圧力トランスミッタで検知した圧力値が前記低圧設定値より低い場合には、低圧制御部で前記再液化装置の再液化容量が強制的に減少するように、前記再液化容量制御器を制御することを特徴とする、
請求項7に記載の船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【請求項9】
前記通常圧力制御部に、
前記第1圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第1通常圧力制御器;と、
前記第2圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第2通常圧力制御器;と、
前記第1及び第2通常圧力制御器からの動作信号のいずれか1つを選択し、前記再液化容量制御器に再液化容量を調整する動作信号を出力するセレクタ;とが設けられる船舶の蒸発ガスの再液化方法において、
前記通常圧力制御部と再液化容量制御器とをカスケード方式で接続することを特徴とする、
請求項8に記載の船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【請求項10】
前記再液化装置が複数設けられると共に、各再液化装置は独立したトレインとして夫々設けられ、
各再液化装置に、再液化容量制御器が夫々設けられる船舶の蒸発ガスの再液化方法において、
各トレインの再液化装置を、前記通常圧力制御部に接続して稼働させるか、または前記通常圧力制御部と独立させて、各トレインに設けられた再液化装置の再液化容量制御器を制御するトレイン容量制御器により稼働させることを特徴とする、
請求項9に記載の船舶の蒸発ガスの再液化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の貯蔵タンク内に貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas、ボイルオフガス)を、冷却して再液化させ、貯蔵タンク内の圧力に応じて再液化容量を調整して、貯蔵タンク内の圧力を一定に維持する蒸発ガスの再液化システム及び蒸発ガスの再液化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(Natural gas)は、メタン(Methane)を主成分とし、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないことから、環境性に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを常圧で約-163℃に冷却して液化させて得られるものであり、気体状態の天然ガスと比べて、その体積が約1/600まで減少することから、海上ルートを利用した長距離輸送に非常に適している。このような理由から、天然ガスは、主に貯蔵や輸送に有利なLNGの液体状態で、貯蔵されて輸送される。
【0003】
天然ガスの液化点は、常圧で約-163℃と極低温であることから、LNG貯蔵タンクには、通常、LNGを液体状態で維持するための断熱処理が施されるが、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても、外部熱を完全に遮断することは難しい。このため、外部熱がLNG貯蔵タンクに継続して伝達されることで、LNG輸送の過程でLNG貯蔵タンク内のLNGが自然気化し、蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンク内で蒸発ガスが継続して発生することで、LNG貯蔵タンク内の圧力が上昇する。そして、貯蔵タンク内の圧力が設定した安全圧力以上になると、タンク破損(Rupture)等の緊急事態が生じる恐れがあるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部に排出させる必要がある。しかし、蒸発ガスは、LNG損失の1つであり、LNGの輸送効率や燃料効率の点で重要な問題となることから、貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを処理する様々な方法が用いられている。
【0005】
近年、船舶のエンジン等の燃料需要先で蒸発ガスを使用する方法、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクに回収する方法、または、これら2つの方法を組合せて使用する方法等が開発され、用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸発ガスを再液化させる再液化サイクルを船舶に適用する場合、代表的な再液化サイクルとして、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルが知られている。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、プロパンの単一冷媒を用いて蒸発ガスを冷却した後、混合冷媒を用いて冷却して再液化させる。また、SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分から構成される混合冷媒を用いて蒸発ガスを再液化させる。
【0007】
これらSMRサイクルやC3MRサイクルは、混合冷媒が用いられ、液化工程の進行に伴い冷媒が漏洩する。これにより、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下するため、混合冷媒の組成比を継続して計測すると共に、不足した冷媒成分を補充することで、冷媒の組成を維持する必要がある。
【0008】
また、再液化サイクルを利用する他の再液化方法として、窒素冷媒が用いられるシングルサイクルの再液化方法が知られている。
【0009】
窒素冷媒は、混合冷媒を用いる冷凍サイクルと比較して冷却効率は低いが、窒素冷媒は不活性物質であり、安全性が高く、また冷媒の相変化が生じないことから、船舶に適用し易いという利点がある。
【0010】
このように船舶の運航中に発生した蒸発ガスは、貯蔵タンクから排出され、圧縮機で圧縮された後、燃料として供給されるか、または再液化サイクルに供給されて再液化され、貯蔵タンクに回収される。この場合、再液化システムの再液化容量の調整は、制御器により再液サイクルの冷熱量を調整することで行われる。
【0011】
しかし、再液化システムが、貯蔵タンクで発生した蒸発ガスの量よりも多い量の蒸発ガスを再液化し続ける場合、特に窒素冷媒が用いられる再液化サイクルで、貯蔵タンク内で発生する蒸発ガスの量が減少しているも関わらず、再液化システムの再液化容量を維持するために、再液化システムで再液化された過冷却状態の再液化ガスを貯蔵タンクに供給する場合、貯蔵タンク内の圧力が過度に低下し、タンク破損等の危険な状況が発生する恐れ可能性がある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するため、貯蔵タンク内の圧力に応じて再液化システムを稼働させて、貯蔵タンク内の圧力を安定に維持できる蒸発ガスの再液化システム及び蒸発ガスの再液化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態では、船舶に設けられて、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクと、前記液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、冷媒循環部を循環する冷媒との熱交換により冷却して、再液化させる再液化装置と、前記再液化装置の再液化容量を制御する再液化容量制御器とを備え、前記貯蔵タンクから蒸発ガスが排出されるベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力値が、予め設定される低圧設定値より低い場合に、前記再液化容量制御器で前記再液化装置の再液化容量を減少させて、前記貯蔵タンク内の圧力を維持することを特徴とする、船舶の蒸発ガス再液化システムが提供される。
【0014】
また、好ましくは、前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスの絶対圧力を検知する第1圧力トランスミッタと、前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスのゲージ圧力を検知する第2圧力トランスミッタと、前記第1圧力トランスミッタで検知された圧力値が伝達されて、前記貯蔵タンク内の圧力を目標値に維持するように前記再液化装置の再液化容量を調整する通常圧力制御部と、前記第2圧力トランスミッタで検知された圧力値が前記低圧設定値より低い場合に、前記再液化装置の再液化容量を強制的に減少させるように前記再液化容量制御器を制御する低圧制御部とをさらに備える。
【0015】
また、好ましくは、前記通常圧力制御部は、前記第1圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第1通常圧力制御器と、前記第2圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第2通常圧力制御器と、前記第1及び第2通常圧力制御器からの動作信号のいずれか1つを選択し、前記再液化容量制御器に再液化容量を調整する動作信号を出力するセレクタとを備え、前記通常圧力制御部と再液化容量制御器とがカスケード方式で接続される。
【0016】
また、好ましくは、船船内に前記再液化装置が複数設けられ、各再液化装置は独立したトレインとして夫々設置され、各再液化装置に、再液化容量制御器が夫々設けられる。
【0017】
また、好ましくは、前記トレインの夫々に、各トレインの再液化装置の再液化容量制御器を制御するトレイン容量制御器が設けられる。
【0018】
また、好ましくは、前記トレインの各再液化装置は、前記通常圧力制御部に接続されて稼働されるか、または前記通常圧力制御部と独立して、前記トレイン容量制御器により稼働される。
【0019】
また、本発明の実施形態では、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、圧縮された蒸発ガスを再液化装置で冷媒循環部を循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させ、前記再液化装置の再液化容量を制御する再液化容量制御器が設けられる船舶の蒸発ガスの再液化方法において、前記貯蔵タンクから蒸発ガスが排出されるベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力値が、予め設定される低圧設定値より低い場合には、前記再液化容量制御器で前記再液化装置の再液化容量を減少させて、前記貯蔵タンク内の圧力を維持することを特徴とする、船舶の蒸発ガス再液化方法が提供される。
【0020】
また、好ましくは、前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスの絶対圧力を第1圧力トランスミッタで検知し、検知した圧力値を通常圧力制御部に伝達して、前記貯蔵タンク内の圧力が目標値に維持されるように前記再液化装置の再液化容量を調整し、前記ベイパーヘッダーの蒸発ガスのゲージ圧力を第2圧力トランスミッタで検知し、前記第2圧力トランスミッタで検知した圧力値が前記低圧設定値より低い場合には、低圧制御部で前記再液化装置の再液化容量が強制的に減少するように、前記再液化容量制御器を制御する。
【0021】
また、好ましくは、前記通常圧力制御部に、前記第1圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第1通常圧力制御器と、前記第2圧力トランスミッタで検知された圧力値に応じて、前記再液化装置の再液化容量を調整するための動作信号を出力する第2通常圧力制御器と、前記第1及び第2通常圧力制御器からの動作信号のいずれか1つを選択し、前記再液化容量制御器に再液化容量を調整する動作信号を出力するセレクタとが設けられる船舶の蒸発ガスの再液化方法において、前記通常圧力制御部と再液化容量制御器とをカスケード方式で接続する。
【0022】
また、好ましくは、前記再液化装置が複数設けられると共に、各再液化装置は独立したトレインとして夫々設けられ、各再液化装置に、前記再液化装置の再液化容量を制御する再液化容量制御器が夫々設けられる船舶の蒸発ガスの再液化方法において、各トレインの再液化装置を、前記通常圧力制御部に接続して稼働させるか、または前記通常圧力制御部と独立させて、各トレインに設けられた再液化装置の再液化容量制御器を制御するトレイン容量制御器により稼働させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、貯蔵タンク内の圧力に応じて再液化装置の再液化容量を調整して、貯蔵タンク内の圧力を一定に維持することができる。
【0024】
また、窒素冷媒等の他の冷媒を使用する再液化装置が複数設けられる場合でも、貯蔵タンク内の圧力に応じて再液化装置の再液化容量を調整して、再液化システムを効率的に稼働させることができ、貯蔵タンク内の圧力を維持することができる。これにより、貯蔵タンク内の圧力が過度に上昇または過度に低下することによるタンクの破損を防止して、船舶の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態の船舶の蒸発ガスの再液化システムを模式的に示す。
図2】本発明の実施形態の再液化システムに3台の再液化装置が設けられる場合のベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力を基に出力された出力値の変化による全再液化装置の総負荷量の変化を示すグラフである。
図3】本発明の実施形態の再液化システムに3台の再液化装置が設けられる場合のベイパーヘッダーで検知した蒸発ガスの圧力を基に出力された出力値の変化による全再液化装置の総負荷量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面及び図面に記載した内容を参照して、本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態により達成される目的を、本発明の実施形態を例に説明する。
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用について説明する。なお、各図面の構成要素に付した参照符号について、同一の構成要素には、他の図面上に表示されるものにも可能な限り同一の符号を表記する。
【0028】
後述する本発明の実施形態の船舶としては、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶であり得る。代表的なものとしては、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)等の自走能力を備える船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)等の推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物である。
【0029】
また、本実施形態は、ガスを低温で液化させて輸送でき、貯蔵時に蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。このような液化ガスとしては、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)等の液化ガスがある。なお、後述する実施形態では、代表的な液化ガスの1つであるLNGを例に説明する。
【0030】
図1には、本発明の実施形態の船舶の蒸発ガスの再液化システムを模式的に示す。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の再液化システムは、船舶に設けられて、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクTと、液化ガスから発生する蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮ガスを、冷媒循環部を循環する冷媒との熱交換により冷却して、再液化させる再液化装置NRSとを備える。
【0032】
貯蔵タンクTに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスは、ベイパーヘッダーVHを介して排出され、圧縮機(図示せず)に供給される。蒸発ガスは、圧縮機(図示せず)で圧縮され、例えば船舶の主エンジンの燃料供給圧力まで圧縮される。例えば、DFエンジンが設けられる場合には5.5bargの圧力、X-DFエンジンが設けられる場合には15bargの圧力、ME-GIエンジンが設けられる場合には300bargの圧力まで圧縮される。圧縮された蒸発ガスは、船舶の主エンジン(図示せず)に燃料として供給され、燃料として供給されずに残った蒸発ガスが再液化される。
【0033】
ところで、船舶に関する規定によれば、エンジンに燃料を供給する圧縮機は、緊急事態に備えて冗長設計(Redundancy)することが求められる。なお、本実施形態では、主に1台の圧縮機を例に説明するが、圧縮機は、主圧縮機と予備圧縮機とを備えるように構成してもよい。
【0034】
圧縮機で圧縮された圧縮ガスのうち、燃料として供給されずに残ったガスは、再液化装置NRSに供給されて再液化される。
【0035】
再液化装置NRSは、圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、熱交換により冷却する熱交換器と、熱交換器より下流側に設けられて、蒸発ガスを再液化させた再液化ガスを気液分離する気液分離器とを備える。また、必要に応じて、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクTに回収する再液化ラインの気液分離器より上流側には、熱交換器で冷却された圧縮ガスを減圧して、再液化量を調整する減圧バルブがさらに設けられる。
【0036】
熱交換器では、冷媒循環部を循環する冷媒を冷熱源として、圧縮ガスが冷却されて再液化される。また、貯蔵タンクTから排出された蒸発ガスを、熱交換器に供給して熱交換器で冷熱を回収した後、圧縮機へ供給することで、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガスの冷熱も熱交換器で利用することができる。
【0037】
熱交換器で冷却された後、気液分離器で分離された再液化ガスは、貯蔵タンクTに供給されて再び貯蔵される。一方、気液分離器で分離されたフラッシュガスは、ベイパーヘッダーVHから排出された蒸発ガスを圧縮機(図示せず)に供給する蒸発ガス供給ラインの熱交換器より上流側で、圧縮される前の蒸発ガスの流れに供給されるか、ガス燃焼ユニット(GCU)に送られる。
【0038】
再液化装置NRSの冷媒循環部(図示せず)では、冷媒が冷媒循環ライン内を循環し、熱交換器で熱交換により圧縮ガスを冷却する。また、冷媒循環ラインを循環する冷媒は、例えば窒素冷媒である。
【0039】
冷媒循環部は、熱交換器に供給される冷媒を膨張させて冷却する冷媒膨張機と、冷媒膨張機に接続されて冷媒の膨張エネルギーが伝達され、熱交換器で熱交換後に熱交換器から排出される冷媒を圧縮する冷媒圧縮機とを備える。また、冷媒圧縮機を駆動するためのモータが設けられ、冷媒圧縮機と冷媒膨張機とはシャフトを介して接続され、冷媒の膨張エネルギーが冷媒の圧縮に利用される。これにより、冷凍サイクルを駆動するために必要な電力を削減できる。
【0040】
冷媒膨張機で膨張により冷却された冷媒は、冷熱を供給するために熱交換器に供給され、熱交換器で熱交換された後、熱交換器から排出されて、冷媒圧縮機で圧縮される。冷媒圧縮機で圧縮された冷媒は、熱交換器に供給されて冷却された後、冷媒膨張機に供給されて膨張により冷却され、熱交換器に再び供給されることで、冷媒が冷媒循環ラインを循環する。
【0041】
したがって、熱交換器では、圧縮機で圧縮された蒸発ガス、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガス、冷媒膨張機で膨張により冷却された冷媒及び、冷媒圧縮機で圧縮された冷媒の4つの流れが熱交換される。即ち、熱交換器では、圧縮機で圧縮された圧縮ガスと冷媒圧縮機で圧縮された冷媒とが、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガスと冷媒膨張機で膨張により冷却された冷媒との熱交換により冷却される。
【0042】
このような再液化装置NRSには、その再液化容量(Capacity)を制御する再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3が設けられている。
【0043】
再液化装置NRSは船舶内に複数設けられてもよい。また、複数の再液化装置NRSが設けられる場合、各再液化装置NRSは、独立したトレイン(Train)として船舶内に設置され、各再液化装置トレインTR1,TR2,TR3には、再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3が夫々設けられている。また、再液化装置NRSが設けられる各トレインTR1,TR2,TR3には、各トレインTR1,TR2,TR3に設けられる再液化装置NRSの再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3を制御するトレイン容量制御器TLC1,TLC2,TLC3が設けられている。
【0044】
本実施形態によれば、貯蔵タンクT内の圧力に応じて再液化装置NRSの再液化容量が調整される。
【0045】
このため、本実施形態の再液化システムでは、ベイパーヘッダーVHの蒸発ガスの絶対圧力(Absolute pressure)を検知する第1圧力トランスミッタPT1と、ベイパーヘッダーVHの蒸発ガスのゲージ圧力(Gauge pressure)を検知する第2圧力トランスミッタPT2とが設けられている。
【0046】
本実施形態の再液化システムは、第1及び第2圧力トランスミッタPT1,PT2で検知した圧力値に応じて、貯蔵タンクT内の圧力が所定範囲内の目標値に維持されるように、再液化装置NRSの再液化容量を調整する通常圧力制御部を備える。
【0047】
本実施形態の再液化システムには、特に貯蔵タンクT内の圧力が過度に低下することを防止するために、再液化装置NRSの再液化容量を強制的に減少させる低圧制御部LPCが更に設置されている。
【0048】
第2圧力トランスミッタPT2で検知されたベイパーヘッダーVHの圧力値が、予め設定された低圧設定値より低い場合には、低圧制御部LPCが再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3を制御して、再液化装置NRSの再液化容量を強制的に減少させる。これにより、貯蔵タンクT内の圧力が過度に低下することを防いで、タンクの破損を防止する。
【0049】
通常圧力制御部は、第1圧力トランスミッタPT1で検知された圧力値に応じて、再液化装置NRSの再液化容量を調整するための動作信号を出力する第1通常圧力制御器NPC1と、第2圧力トランスミッタPT2で検知された圧力値に応じて、再液化装置NRSの再液化容量を調整するための動作信号を出力する第2通常圧力制御器NPC2と、これら第1及び第2通常圧力制御器NPC1,NPC2からの動作信号のいずれか1つを選択し、各トレインTR1,TR2,TR3の再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3に再液化容量を調整するための動作信号を出力するセレクタSSとを備える。また、通常圧力制御部と各再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3とは、カスケード(Cascade)方式で接続され、各再液化装置NRSの再液化容量を自動調整して、貯蔵タンクT内の圧力は予め設定された目標値に維持される。
【0050】
複数の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3が設けられる場合、各トレインTR1,TR2,TR3の再液化装置NRSを通常圧力制御部に夫々接続して、再液化装置NRSを夫々稼働させてもよく、または通常圧力制御部と独立させて、各トレイン容量制御器TLC1,TLC2,TLC3により再液化装置NRSを個別に稼働させることもできる。
【0051】
図2及び図3は、3台の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3が設けられる場合のベイパーヘッダーVHで検知した蒸発ガスの圧力を基に出力された出力値の変化による全再液化装置の総負荷量(Total Load)変化を示すグラフである。
【0052】
まず、図2のグラフは、3台の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3が通常圧力制御部に接続され、各トレインTR1,TR2,TR3の再液化容量制御器NCC1,NCC2,NCC3が、貯蔵タンクT内の圧力に基づく通常圧力制御部の出力値に応じて、再液化負荷を分担した場合の出力値の変化による全再液化装置NRSの総負荷量の変化を示すグラフである。
【0053】
図2のグラフ内のA点は、通常圧力制御部の出力値が0%の場合に相当し、この時の各トレインTR1,TR2,TR3の再液化装置の負荷(Load)は約11%であり、この時の3台の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3の全再液化装置NRSの総負荷量は、最小値の約33%である。また、グラフ内のB点は通常圧力制御部の出力値が53%の場合であり、この時の各トレインTR1,TR2,TR3の再液化装置NRSの負荷は約58%であり、この時の3台の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3の全再液化装置NRSの総負荷量は約173%である。また、グラフ内のC点は通常圧力制御部の出力値が85%で、2台のトレインTR1,TR2を稼働させる場合であり、この時の各トレインTR1,TR2の再液化装置の負荷は約87%であり、この時の2台の再液化装置トレインTR1,TR2の両再液化装置NRSの総負荷量は約180%である。また、グラフ内のD点は通常圧力制御部の出力値が100%の場合であり、この時の各トレインTR1,TR2,TR3の再液化装置NRSの負荷も100%であり、この時の3台の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3の全再液化装置NRSの総負荷量は、最大値の300%である。
【0054】
次に、図3のグラフは、1台のトレインTR1をトレイン容量制御器TLC1で個別に稼働させ、2台のトレインTR2,TR3を通常圧力制御部に接続して、その出力値に応じて再液化負荷を分担した場合の出力値の変化による全再液化装置NRSの総負荷量の変化を示すグラフである。
【0055】
第1トレインTR1は、トレイン容量制御器TLC1で、再液負荷が58%の固定値で個別に稼働され、第2及び第3トレインTR2,TR3は通常圧力制御部に接続されて、貯蔵タンクT内の蒸発ガスの圧力に基づく通常圧力制御部の出力値に応じて再液化負荷が分担される。
【0056】
図3のグラフ内のA点では、第1トレインTR1の再液化負荷が58%であり、第2及び第3トレインTR2,TR3は通常圧力制御部の出力値が0%の場合である。この時、各トレインTR2,TR3の再液化装置NRSは、最小値である約11%の負荷で稼働し、この時の全再液化装置NRSの総負荷量は約80%である。グラフ内のB点では、第1トレインTR1の再液負荷が58%であり、第2及び第3トレインTR2,TR3は通常圧力制御部の出力値が53%の場合である。この時、各トレインTR2,TR3の再液化装置NRSは約58%の負荷で稼働し、この時の全再液化装置NRSの総負荷量は約173%である。グラフ内のC点は、第1トレインTR1の再液負荷が58%であり、第2及び第3トレインTR2,TR3は通常圧力制御部の出力値が最大値の100%の場合である。この時、各トレインTR2,TR3の再液化装置NRSは、100%の負荷で稼働し、この時の全再液化装置NRSの総負荷量は258%である。
【0057】
以上、本実施形態の再液化システムでは、複数の再液化装置トレインTR1,TR2,TR3を、必要に応じて、各トレインTR1,TR2,TR3の再液化装置NRSを通常圧力制御部に接続し、その出力値に応じて稼働することもでき、また、各トレインTR1,TR2,TR3に設けられるトレイン容量制御器TLC1,TLC2,TLC3により個別に稼働させて再液化装置NRSの負荷を調節することができる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】