(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】天然ガスエンジンによって生成される排気ガスを処理するための触媒材料
(51)【国際特許分類】
B01J 29/44 20060101AFI20241128BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241128BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01J29/44 A
B01D53/94 280
B01D53/94 ZAB
F01N3/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527484
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 GB2022053287
(87)【国際公開番号】W WO2023118828
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ハイ-イン
(72)【発明者】
【氏名】フェデイコ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア、ジャコブ
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジン
(72)【発明者】
【氏名】マクナマラ、ニコラス
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、天然ガスエンジンによって生成される排気ガスを処理するための触媒材料であって、触媒材料が、モレキュラーシーブと、モレキュラーシーブ上に担持された白金族金属(PGM)とを含み、モレキュラーシーブが、ケイ素、酸素、及びゲルマニウムを含む骨格を有し、かつ、約0.20モル%以下のヘテロ原子であるT原子の含有量を有し、ゲルマニウムが15~20モル%の量で存在する、触媒材料に関する。本発明は更に、触媒物品と、圧縮天然ガス燃焼及び排気システムとに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスエンジンによって生成される排気ガスを処理するための触媒材料であって、触媒材料は、モレキュラーシーブと、前記モレキュラーシーブ上に担持された白金族金属(PGM)とを含み、
前記モレキュラーシーブが、ケイ素、酸素及びゲルマニウムを含む骨格を有し、かつ、約0.20モル%以下のヘテロ原子であるT原子の含有量を有し、
前記ゲルマニウムが、15~20モル%の量で存在する、触媒材料。
【請求項2】
前記ヘテロ原子であるT原子が、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
前記骨格が、ケイ素、酸素、ゲルマニウム、及びヘテロ原子であるT原子から本質的になる、請求項1又は2に記載の触媒材料。
【請求項4】
前記モレキュラーシーブが、ゼオライト、好ましくはMFIゼオライトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項5】
前記白金族金属(PGM)の総量が、0.01~30重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項6】
前記白金族金属(PGM)が、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の触媒材料。
【請求項7】
パラジウムの総量が0.1~20重量%である、請求項6に記載の触媒材料。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブが、1200以上のSARを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブが、少なくとも0.010mmol/gのシラノール基を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒材料を基材上に含む、触媒物品。
【請求項11】
前記触媒材料が、ウォッシュコートとして前記基材上に提供される、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記ウォッシュコートの担持量が、1~50g/ft
3である、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
基材中に分散された請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒材料を含む、触媒物品。
【請求項14】
前記基材が、フロースルー基材又はフィルタリング基材である、請求項10~13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
圧縮天然ガス燃焼及び排気システムであって、
(i)天然ガス燃焼エンジン、及び
(ii)前記燃焼エンジンからの排気ガスを受け入れるための吸気口と、前記排気ガスを受け入れて処理するように配置された、請求項10~14のいずれか一項に記載の触媒物品と、を含む排気処理システム、
を備える、圧縮天然ガス燃焼及び排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスエンジンから生成される排ガスを処理するための触媒材料に関し、特に、メタン酸化活性及び水熱耐久性が改善された触媒材料に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、伝統的にガソリン及びディーゼル燃料を使用する車両及び定置エンジンのための代替燃料として関心が高まっている。天然ガスは、主にメタン(典型的には70~90%)から構成され、エタン、プロパン及びブタンなどの他の炭化水素(いくつかの鉱床では20%まで)及び他のガスを様々な割合で含む。これは、油田又は天然ガス田から商業的に生産することができ、発電、工業用コージェネレーション及び家庭用暖房のための燃焼エネルギー源として広く使用されている。また、車両燃料として使用することもできる。
【0003】
天然ガスは、圧縮天然ガス(CNG)及び液化天然ガス(LNG)の形態で輸送燃料として使用することができる。CNGは、3600psi(約248バール)に加圧されたタンクで運ばれ、単位体積当たりガソリンの約35%のエネルギー密度を有する。LNGは、CNGの2.5倍のエネルギー密度を有し、主に大型車両に使用される。LNGは-162℃で液体形態に冷却され、その結果、体積は600分の1に減少するが、これはLNGがCNGより容易に輸送されることを意味する。バイオLNGは、天然(化石)ガスの代替物となり得るものであり、バイオガスから生産され、埋立地廃棄物又は堆厩肥などの有機物の嫌気性消化によって得られる。
【0004】
天然ガスは、多くの環境上の利点を有しており、すなわち、典型的には不純物をほとんど含有しないよりクリーンな燃焼燃料であり、従来の炭化水素燃料よりも炭素当たりのエネルギー(Bti)が高く、結果として二酸化炭素排出量が低く(温室効果ガス排出量が25%少ない)、ディーゼル及びガソリンと比較してPM及びNOxの排出量が低い。バイオガスは、このような排出を更に低減することができる。
【0005】
天然ガスを採用するための更なる推進力には、他の化石燃料と比較して高い存在量及びより低いコストが含まれる。
【0006】
天然ガスエンジンは、大型及び小型ディーゼルエンジンと比較して、非常に低いPM及びNOx(それぞれ、最大で95%及び70%も少ない量)を放出する。しかしながら、NGエンジンによって生成される排気ガスは、かなりの量のメタンを含有する(いわゆる「メタンスリップ」)ことが多い。これらのエンジンからの排出を制限する規制は、現在、Euro VI及び米国環境保護庁(EPA)温室効果ガス法を含む。これらは、メタン、窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)の排出制限を課している。
【0007】
メタン燃料エンジンに使用される2つの主な動作モードは、化学量論的条件(λ=1)及び希薄燃焼条件(λ≧1.3)である。パラジウム系触媒は、両方の条件下でメタン酸化のための最も活性なタイプの触媒として周知である。化学量論的圧縮天然ガスエンジンと希薄燃焼圧縮天然ガスエンジンの両方について規制された排出制限は、それぞれパラジウム-ロジウム三元触媒(TWC)又は白金-パラジウム酸化触媒のいずれかを適用することによって満たすことができる。
【0008】
このPdベースの触媒技術の発展は、コスト並びに硫黄、水、及び熱による経時劣化によって生じる触媒失活に関する課題を克服することに依存する。
【0009】
メタンは最も反応性の低い炭化水素であり、一次C-H結合を切断するのに高いエネルギーが必要である。アルカンの発火温度は、一般に、燃空比が増加するにつれ、かつC-H結合強度と相関する炭化水素鎖長が増加するにつれて低下する。Pd系触媒では、メタン転化のライトオフ温度(「ライトオフ温度」とは、転化率が50%に達する温度を意味する)が、他の炭化水素よりも高いことが知られている。
【0010】
化学量論的条件(λ=1)で動作するとき、TWCが、メタンを燃焼させるための効果的かつ費用効率の高い後処理システムとして使用される。この炭化水素の非常に低い反応性並びに熱及び化学的影響による触媒失活に起因して、200gft-3を超える高い総白金族金属(pgm)担持量を有する大部分の二元金属Pd-Rh触媒が、寿命末期の全炭化水素(THC)規制を満たすための高レベルのメタン転化に必要とされる。高いpgm担持量の使用は、化学量論的CNGエンジンにおける全HC転化率を改善する。しかしながら、高いメタン転化率は、エンジン較正に基づいて比較的低いpgmで達成することができ、すなわち、化学量論量付近又は化学量論量よりもリッチで動作するように空燃比を制御することで、達成することができる。pgm担持量は、メタン及び非メタン転化に関する地域の法律要件に対応して変更することもできる。
【0011】
NOxの還元及びメタンの酸化もまた、非常に酸化性の条件下ではより困難である。希薄燃焼CNG用途では、より低い温度でのメタン燃焼のために、高い総pgm担持量(200gft-3超)でのPd-Ptが必要とされる。化学量論的エンジンとは異なり、過剰酸素の存在下でNOxを還元することができるように、還元剤も排気流に注入される必要がある。これは、通常、アンモニア(NH3)の形態であり、したがって、希薄燃焼用途は、化学量論的なものとは完全に異なる触媒系を必要とし、ここで、効率的なNOx還元は、わずかにリッチな又は化学量論的条件でCO又はHCを使用して達成することができる。
【0012】
低温におけるメタンの非反応(又は低反応)特性のために、主に排気温度が化学量論よりも低い希薄燃焼の場合、コールドスタート及びアイドル状態の間にメタン排出量の増加が生じる。より低い温度でのメタンの反応性を改善するために、選択肢の1つは、高いpgm担持量を使用することであるが、これはコストを増加させる。
【0013】
天然ガス触媒、特にPdベースの触媒は、特に希薄条件下で水(5~12%)及び硫黄(潤滑油中、0.5ppm未満のSO2)による被毒に悩まされる可能性があり、これは経時的な触媒の転化率の劇的な低下をもたらす。水による失活は、触媒表面上にヒドロキシル、カーボネート、ホルメート及び他の中間体が形成されるために顕著である。活性は可逆的であり、水が除去されると完全に回復することができる。しかしながら、これは、メタン燃焼供給物が、メタン中の高含有量のHに起因して高レベルの水を常に含有するので、非実用的である。
【0014】
H2Oは、空燃比、すなわちλに応じて、抑制剤又は促進剤のいずれかであり得る。化学量論的条件及び還元条件、及びλが1を超える条件下で、H2Oは、CNGエンジン及びガソリンエンジンの両方において、水蒸気改質反応による炭化水素の酸化のための促進剤として作用することができる。しかしながら、λが1超で動作する希薄燃焼CNGでは、H2Oはメタン酸化の阻害剤として作用する。水抑制効果を理解し、H2Oの存在に対してより耐性のある触媒を設計することが重要である。これは、希薄燃焼CNGからのメタン排出を制御しようとするときの改善を可能にする。
【0015】
エンジン排気中の硫黄レベルは非常に低いが、Pdベースの触媒は、安定な硫酸塩の形成に起因して、硫黄曝露時に著しく失活する。硫黄被毒後に活性を回復させるための触媒の再生は困難であり、通常、高温、リッチ運転、又はその両方を必要とする。これは化学量論的運転では容易に達成可能であるが、希薄燃焼ではより困難である。希薄燃焼車両は、化学量論的車両よりもはるかに高い空燃比で動作し、リッチ動作に切り替えるためにはるかに高い濃度の還元剤の噴射を必要とする。不十分なエンジン過渡制御及び点火システムによる高レベルの失火事象から生じる熱失活は、触媒を破壊し、それに対応して高レベルの排気エミッションをもたらす。
【0016】
パラジウム含有触媒は、希薄条件と科学両論的条件との両方の条件下で失活するが、硫黄被毒は、希薄運転における熱による経時的劣化よりも劇的な影響を及ぼす。硫黄被毒は、Pd触媒に少量のPtを添加することによって改善することができる。これは、硫酸パラジウムの形成による硫黄阻害が、Ptの添加により著しく低減され得るためである。しかしながら、Ptの添加は、更にコストを増加させる。
【0017】
米国特許出願公開第2016/0236147号は、天然ガスエンジンによって生成される排気ガスを処理するための触媒材料に関し、この触媒材料は、0.20モル%以下のヘテロ原子であるT原子の含有量を有するケイ質ゼオライトを含む。ケイ質ゼオライトは、任意選択的に、ゲルマニウムを、約10モル%以下の量で含んでもよい。この文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
したがって、触媒のコストを増加させることなく、硫黄、水及び熱による経時的劣化などによる触媒失活に取り組むことによってメタン排出を低減するために、天然ガス燃焼及び排気ガス処理用の改善されたシステム及びを提供することが望まれている。本発明の目的は、この問題に対処し、先行技術に関連する欠点に取り組み、あるいは少なくとも商業的に有用なその代替物を提供することである。
【発明の概要】
【0019】
第1の態様によると、
天然ガスエンジンによって生成される排気ガスを処理するための触媒材料であって、触媒材料は、モレキュラーシーブと、モレキュラーシーブ上に担持された白金族金属(PGM)とを含み、
モレキュラーシーブが、ケイ素、酸素、及びゲルマニウムを含む骨格を有し、約0.20モル%以下のヘテロ原子であるT原子の含有量を有し、
ゲルマニウムが、15~20モル%の量で存在する、触媒材料が提供される。
【0020】
本発明者らは、予期せぬことに、15~20モル%のゲルマニウム含有量を用いるこの触媒材料が、特に、メタンが、過剰の酸素を含有する排気ガスの一部である場合に、メタンに対する有利な酸化活性を有することを発見した。この触媒材料は、従来の酸化触媒と比較して、比較的低い温度で、高いメタン転化効率を達成することができる。触媒材料は、ガス混合物及び水蒸気の存在下で、良好な熱安定性及びオンストリーム安定性を有する。
【0021】
本発明の触媒材料は、メタンに対して驚くほど良好な酸化活性を示す。それはまた、低いメタンライトオフ温度を有し得る。十分なメタン転化活性を達成するために、触媒材料を高温に加熱することは不要であり得る。
【0022】
本発明の触媒材料の別の利点は、特に水熱条件下(すなわち、水蒸気の存在下)で、良好な熱安定性を有することである。触媒材料が比較的高い温度で使用される場合、メタンに対する触媒材料の酸化活性が、著しくは低下しない。
【0023】
本発明の触媒材料によって提供される更なる利点は、比較的低い温度(例えば、500℃未満)において、水蒸気の存在下でのオンストリーム活性が、アルミナ担持触媒において観察されるようには低下しないことである。
【0024】
以下の節では、異なる態様/実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0025】
本発明は、天然ガスエンジンにより生成される排気ガスを処理するための触媒材料に関する。すなわち、その触媒材料は、天然ガス燃焼エンジンからの排気ガスの触媒処理のためのものであり、排気ガス規制を満たすようにガスの成分を大気に放出する前に成分を転化又は変換するためのものである。天然ガスが燃焼されるとき、それによって二酸化炭素と水の両方が生成されるが、その場合には、排気ガスはまた、排気ガスが大気に放出される前に触媒的に除去される必要がある量の追加のメタン(及び他の短鎖炭化水素)を含有する。排気ガスはまた、典型的には、蓄積して触媒を失活させ得る、かなりの量の水及び硫黄を含有する。
【0026】
移動用途では、天然ガス燃焼は、希薄又は化学量論的構成で動作するように構成され得る。「移動用途」とは、システムが、概して、自動車又は他の車両(例えば、オフロード車両)における使用に好適であり得ることを意味し、そのようなシステムでは、加速等のオペレータ要件に応じて、動作中に燃料供給及び需要の変化があり得る。移動用途では、一般に、システムをリッチモードで一時的に稼働させることが可能であり、これは、触媒を汚染する硫黄を燃焼除去し、蓄積した水を除去するのに役立つ温度の大幅な上昇と関連付けられる。
【0027】
定置システムでは、天然ガス燃焼はまた、希薄条件又は化学量論的条件下で動作するように構成され得る。定置システムの例には、ガスタービン及び発電システムが含まれ、そのようなシステムでは、燃焼条件及び燃料組成は、一般に、長い動作時間にわたって一定に保たれる。これは、移動用途と比較して、硫黄及び水分汚染物質を除去するための再生工程を有する機会が少ないことを意味する。したがって、本明細書に記載される利益は、定置用途に特に有益であり得る。すなわち、触媒を再生する機会が限られている場合に、高い硫黄及び水分耐性を有する触媒を提供することが特に望ましい。
【0028】
上記の「希薄」及び「化学量論的」システムは、「移動」及び「定置」として説明されるが、両方のシステムタイプが、異なる用途の範囲にわたって使用され得ることを理解されたい。
【0029】
触媒材料は、モレキュラーシーブと、モレキュラーシーブ上に担持された白金族金属(PGM)とを含む。PGMがパラジウム(Pd)を含む場合、優れた酸化活性を得ることができる。好ましくは、白金族金属(PGM)は、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせからなる群から選択される。パラジウムの総量は、0.1~20重量%、好ましくは0.2~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%であり得る。
【0030】
白金族金属(PGM)が白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせである場合、そのPtとPdとの組み合わせは、別々に担持されたPtとPd、PtとPdとの混合物、PtとPdとの合金、並びにPtとPdとの混合物及び合金の両方、からなる群から選択され得る。PGMが別々に担持されたPtとPdである場合、Ptの粒子とPdの粒子とは、モレキュラーシーブの別々の部位に担持される。PtとPdとの混合物又は合金は、好ましくは2種の金属からなるものである。
【0031】
好ましくは、モレキュラーシーブは、唯一の遷移金属として、白金族金属(すなわち、上で定義されたとおり)を含み、好ましくは唯一の白金族金属として含む(すなわち、明示的に列挙されたもの以外の他の白金族金属が存在しなくてもよい)。
【0032】
触媒材料は、好ましくは、(i)白金族金属(PGM)及び/又はその酸化物と、(ii)本明細書で定義されるモレキュラーシーブとから本質的になっていてもよく、その白金族金属(PGM)は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
PGMは、モレキュラーシーブ上に担持される。この文脈における「担持された」という用語は、モレキュラーシーブと会合しているPGMを指す。典型的には、PGMは、モレキュラーシーブのシラノール基と、(例えば、イオン会合として、又は共有会合として)会合している。理論に束縛されるものではないが、活性PGM部位は、シラノールネスト部位などのシラノール基及び/又は、モレキュラーシーブの外表面上及び/又は空洞内に存在し得る、末端Si-OH(又はSi-O-)基と会合していると考えられる。
【0034】
PGMの一部は、モレキュラーシーブの細孔の内部に位置し得る。触媒材料は、(触媒材料のPGMの量の)少なくとも1重量%の、好ましくは少なくとも5重量%の、より好ましくは少なくとも10重量%の、モレキュラーシーブの細孔内に位置するPGMを有し得る。モレキュラーシーブの細孔内のPGMの量は、従来の技術を使用して、又はSAEの2013-01-0531に記載されている方法によって決定することができる。
【0035】
触媒材料は、(触媒材料のPGMの量の)75重量%以下の、好ましくは50重量%以下の、モレキュラーシーブの細孔内に位置するPGMを有し得る。
【0036】
モレキュラーシーブは、ケイ素、酸素及びゲルマニウムを含む骨格を有し、約0.20モル%以下のヘテロ原子であるT原子の含有量を有する。
【0037】
当技術分野で知られているように、「T原子」という用語は、モレキュラーシーブの骨格中に存在する「四配位原子」の略語である。
【0038】
「T原子」の文脈において本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、ケイ素ではなく、ゲルマニウムではなく、酸素ではない原子(すなわち、非ケイ素、非ゲルマニウム、非酸素ヘテロ原子)を指す。モレキュラーシーブは、1つ以上のヘテロ原子であるT原子を含む骨格を有し得る。ヘテロ原子は、例えば、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、それらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。より好ましくは、ヘテロ原子は、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
好ましくは、モレキュラーシーブは、ケイ素、酸素、ゲルマニウム、及びヘテロ原子であるT原子から本質的になる骨格を有する。より好ましくは、モレキュラーシーブは、(例えば、骨格の構成原子として)ケイ素、酸素、及びゲルマニウムから本質的になる骨格を有してもよく、ゲルマニウムの量は、本明細書で定義されるとおりである(例えば、ヘテロ原子であるT原子の含有量は、0.00モル%である)。
【0040】
モレキュラーシーブは、好ましくは約0.17モル%未満の、より好ましくは約0.15モル%以下、例えば約0.15モル%未満の、更により好ましくは約0.12モル%以下(例えば約0.12モル%未満)の、ヘテロ原子であるT原子の含有量を有してもよい。
【0041】
任意に、モレキュラーシーブは、約0.001モル%以上の、好ましくは約0.010モル%以上の、より好ましくは約0.020モル%以上の、ヘテロ原子であるT原子の含有量を有してもよい。
【0042】
場合によっては、モレキュラーシーブは、ヘテロ原子であるT原子を含有していなくてもよい(すなわち、モレキュラーシーブはヘテロ原子であるT原子を含まない)。
【0043】
ゲルマニウムは、モレキュラーシーブ中に15~20モル%、好ましくは16~18モル%の量で存在する。
【0044】
モレキュラーシーブは、マイクロ多孔質又はメソ多孔質であり得る。「マイクロ多孔質」及び「メソ多孔質」のIUPAC定義(Pure&Appl.,66(8),(1994),1739-1758を参照)によれば、マイクロ多孔質モレキュラーシーブは、2nm未満の直径を有する細孔を有し、メソ多孔質モレキュラーシーブは、2nm~50nmの直径を有する細孔を有する。
【0045】
モレキュラーシーブは、メソ多孔質であり得る。モレキュラーシーブがメソ多孔質モレキュラーシーブである場合、典型的には、メソ多孔質モレキュラーシーブは、MCM-41、MCM-48、MCM-50、FSM-16、AMS、SBA-1、SBA-2、SBA-3、SBA-15、HMS、MSU、SBA-15、及びKIT-1からなる群から選択され得る。
【0046】
典型的には、モレキュラーシーブは、特にモレキュラーシーブがマイクロ多孔質である場合、AEI、AFI、AFX、ANA、AST、ASV、ATS、BCT、BEA、BEC、BOF、BOG、BRE、CAN、CDO、CFI、CGS、CHA、-CHI、CON、DAC、DDR、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAR、FAU、FER、GON、HEU、IFR、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、ITN、ITR、ITT、ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JOZ、KFI、LEV、LOV、LTA、LTF、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWW、NAB、NES、NON、NSI、OBW、OFF、OKO、PAU、PCR、PHI、POS、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFS、SFV、SFW、SGT、SOD、SOF、SSF、-SSO、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TON、TUN、UFI、UOS、UOV、UTL、UWY、VET、VNI、及びVSVからなる群から選択される骨格タイプを有する。前述の3文字のコードのそれぞれは、「IUPAC Commission on Zeolite Nomenclature」及び/又は「Structure Commission of the International Zeolite Association」に準拠した骨格タイプを表す。
【0047】
モレキュラーシーブは、ゼオライトであることが好ましい。ゼオライトは、ケイ質ゼオライトなどの、シリカ含有ゼオライトとも呼ばれ得る。ゼオライトは、ゲルマノシリケートゼオライトであってもよい。したがって、ゼオライトは、低含有量の、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、及びチタン(Ti)と、任意選択で、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)などのヘテロ原子であるT原子と、を有するケイ質(すなわち、高シリカ含有)ゼオライトであり得る。
【0048】
シリカ質ゼオライト又は純粋なシリカゼオライトは、以下の表から選択されるゼオライトであり得る。
【0049】
当技術分野で知られているように、ケイ質ゼオライトは、SiO4四面体を含む骨格を有する。
【0050】
【0051】
モレキュラーシーブは、特にモレキュラーシーブがゼオライトである場合には、AEI、ANA、ATS、BEA、CDO、CFI、CHA、CON、DDR、ERI、FAU、FER、GON、IFR、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITN、ITR、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JOZ、LTA、LTF、MEL、MEP、MFI、MRE、MSE、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWW、NON、NSI、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFS、SFV、SGT、SOD、SSF、-SSO、SSY、STF、STO、STT、-SVR、SVV、TON、TUN、UOS、UOV、UTL、UWY、VET、及びVNIからなる群から選択される骨格タイプを有する。より好ましくは、モレキュラーシーブ又はゼオライトは、BEA、CDO、CON、MEL、MWW、MFI、及びFAUからなる群から選択される骨格タイプを有し、更により好ましくは、骨格タイプは、BEA及びMFIからなる群から選択される。最も好ましくは、ゼオライトは、MFI骨格を有する。
【0052】
ゼオライトは、小細孔ゼオライト(すなわち、8個の四面体原子による最大環サイズを有するゼオライト)、中細孔ゼオライト(すなわち、10個の四面体原子による最大環サイズを有するゼオライト)、及び大細孔モレキュラーシーブ(すなわち、12個の四面体原子による最大環サイズを有するゼオライト)から選択され得る。
【0053】
高いシリカ含有量(例えば、高いSAR)、並びに特定の骨格タイプ及び細孔直径を有するモレキュラーシーブ、特にゼオライトを調製するための様々な方法が、当技術分野において公知である。ゼオライト上に担持された白金族金属などの遷移金属を調製するための多数の方法も知られている。例えば、国際公開第2012/166868号を参照されたい。
【0054】
モレキュラーシーブ又はゼオライトは、小細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトであり得る。小細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトは、好ましくは、AEI、AFX、ANA、CDO、CHA、DDR、EAB、EDI、EPI、ERI、IHW、ITE、ITW、KFI、LEV、MER、NSI、PAU、PHI、RHO、RTH、UFI、及びVNIからなる群から選択される骨格タイプを有する。より好ましくは、小細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトは、CHA、CDO、又はDDRである骨格タイプを有する。
【0055】
モレキュラーシーブ又はゼオライトは、中細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトであり得る。中細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトは、好ましくは、MFI、MEL、MWW、及びEUOからなる群から選択される骨格タイプを有する。より好ましくは、中細孔モレキュラーシーブは、好ましくは、MFI、MEL、及びMWWからなる群から選択される骨格タイプ、例えば、MFIである骨格タイプを有する。
【0056】
モレキュラーシーブ又はゼオライトは、大細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトであり得る。大細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトは、好ましくは、AFI、CON、BEA、FAU、MOR、及びEMTからなる群から選択される骨格タイプを有する。より好ましくは、大細孔モレキュラーシーブ又はゼオライトは、AFI、BEA、CON、及びFAUからなる群から選択される骨格タイプ、例えばBEAである骨格タイプを有する。
【0057】
好ましくは、モレキュラーシーブ又はゼオライトは、固体である。より好ましくは、モレキュラーシーブ又はゼオライトは、微粒子形態である。
【0058】
モレキュラーシーブ又はゼオライトが微粒子形態である場合、典型的には、モレキュラーシーブ又はゼオライトは、0.1~20ミクロン(例えば5~15ミクロン)、例えば0.2~15ミクロン(例えば0.2~10ミクロン、又は7.5~12.5ミクロン)のD50を有する。D50は、0.5~10ミクロンであることが好ましい。誤解を避けるために、D50(すなわち、メジアン粒径)測定値は、例えば、Malvern Mastersizer 2000を使用する、レーザー回折粒径分析によって得ることができる。測定は、体積ベースの技法であり(すなわち、D50は、DV50(又はD(v,0.50)と呼ばれることもある)、数学的Mie理論モデルを適用して、粒径分布を決定する。
【0059】
モレキュラーシーブ又はゼオライトが小さい粒径分布(すなわち、より低いD50)を有する場合、触媒材料は、より大きい粒径分布を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトを含む触媒材料よりも、高い活性及び水熱耐久性を有するということが判明している。理論に束縛されるものではないが、モレキュラーシーブ又はゼオライトのシラノール基の部位は、モレキュラーシーブ又はゼオライトの粒径が減少するにつれて、白金族金属により接近しやすくなると考えられる。しかしながら、モレキュラーシーブ又はゼオライトがより大きな粒径分布を有する場合、触媒材料は、より良好な耐久性を示し得る。
【0060】
好ましくは、モレキュラーシーブは、1200以上のSARを有する。SARが1300以上、例えば1500以上(例えば1700以上)、より好ましくは2000以上、例えば2200以上であることが好ましい場合がある。特に、ヘテロ原子であるT原子がアルミニウムである場合、モレキュラーシーブ又はゼオライトは、1200以上のSARを有し得る。SARが1300以上、例えば1500以上(例えば1700以上)、より好ましくは2000以上、例えば2200以上であることが好ましい場合がある。
【0061】
本発明の触媒材料は、ゼオライトが多量のシラノール基を有する場合に特に有利である。好ましくは、モレキュラーシーブは、少なくとも0.010mmol/gのシラノール基を含む。より好ましくは、モレキュラーシーブは、少なくとも0.020mmol/gのシラノール基(例えば、0.030mmol/gのシラノール基)を含む。シラノール基の量は、実施例に記載されるK取り込み法などの、K取り込み法を用いて測定することができる。モレキュラーシーブ、特にゼオライトがかなりの数のシラノール基を含有する場合、有利な酸化活性が得られるということが判明している。モレキュラーシーブ又はゼオライトがシラノール基を含み、シラノール基が500℃以上の分解開始温度を有することが好ましい。分解開始温度は、示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0062】
シラノール基を有するモレキュラーシーブ又はゼオライトは、モレキュラーシーブ又はゼオライトの合成中に有機テンプレートを除去することによって、又は合成後処理によりモレキュラーシーブ又はゼオライトからヘテロ原子(例えば、Al、B、Ga、Znなど)を除去することによって、得ることができる。場合によっては、シラノール基は、モレキュラーシーブ又はゼオライト骨格の固有の部分であってもよい。
【0063】
シラノール基の存在は、FTIR分光法を使用して決定することができる。
【0064】
更なる態様によれば、基材中又は基材上に本明細書に記載の触媒材料を含む触媒物品が提供される。
【0065】
触媒物品は、排気ガスシステムにおける使用に適した構成要素である。典型的には、そのような物品はハニカムモノリスであり、「レンガ」と呼ばれることもある。これらは、処理されるべきガスを触媒材料と接触させて排気ガスの成分の変換又は転化を行うのに適した高表面積構成を有する。触媒物品の他の形態も知られており、プレート構成、並びにラップされた金属触媒基材を含む。本明細書に記載される触媒物品は、これらの既知の形態の全てにおいて使用するのに適しているが、コストと製造の単純さとの良好なバランスを提供するので、ハニカムモノリスの形態をとることが特に好ましい。
【0066】
触媒物品は、天然ガス燃焼エンジンからの排気の処理のためのものである。すなわち、触媒物品は、天然ガス燃焼エンジンからの排気ガスの触媒処理のためのものであり、排気ガス規制を満たすために、成分を転化又は変換してからガスの成分を大気に放出するためのものである。天然ガスが燃焼されるとき、それによって二酸化炭素と水の両方が生成されるが、排気ガスはまた、排気ガスが大気に放出される前に触媒的に除去される必要がある量の追加のメタン(及び他の短鎖炭化水素)を含有する。排気ガスはまた、典型的には、蓄積すると触媒を失活させ得るかなりの量の水及び硫黄を含有する。
【0067】
触媒物品は、基材の表面上にウォッシュコートを塗布することによって、かつ/又は押出成形することによって調製され得る。触媒物品は、当該技術分野において公知である方法を用いて、ウォッシュコートを調製し、基材上にウォッシュコートを塗布することによって製造され得る(例えば、国際公開第99/47260号、国際公開第2011/080525号及び国際公開第2014/195685号を参照)。押出成形による触媒物品製造の方法も知られている(例えば、本発明者らの国際公開第2011/092519号を参照されたい)。
【0068】
触媒材料は、基材上に配設又は担持されてもよい(例えば、触媒材料は、ウォッシュコートの形態で基材の表面に塗布される)。触媒材料は、基材上に直接配設されてもよい(すなわち、触媒材料は基材の表面と接触している)。追加的に又は代替的に、触媒材料は基材中に分散されてもよい(例えば、触媒材料は、基材を形成するために使用される押出成形物の一部である)。したがって、基材は、触媒材料を含む押出成形固体である。
【0069】
触媒材料が基材中に分散されている場合(例えば、酸化触媒が押出成形製品である場合)、得られる酸化触媒は、同じ触媒材料が基材上にウォッシュコートされている酸化触媒よりも性能が優れている可能性がある。触媒材料が基材中に分散される場合(例えば、酸化触媒が押出成形製品である場合)、酸化触媒を迅速に脱硫酸化することが可能であり得るが、しかも、触媒材料を基材上にウォッシュコートすることによって製造された酸化触媒と比較して、優れたオンストリーム安定性(例えば、良好な水及び酸素耐性)を有し得る。
【0070】
押出成形された固体は、(i)5~95重量%の触媒材料と、(ii)バインダー/マトリックス成分、無機繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、5~95重量%の少なくとも1つの成分とを含むか、又はそれらから本質的になっていてもよい。
【0071】
バインダー/マトリックス成分は、コージエライト、窒化物、炭化物、ホウ化物、スピネル、耐火性金属酸化物、リチウムアルミノシリケート、ジルコン、及びそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択することができる。
【0072】
耐火性金属酸化物は、任意選択的にドープされたアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、及びそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群から選択されてもよい。粘土などの、シリカの好適な供給源は、米国特許出願公開第2014/0065042A1号に記載されている。
【0073】
無機繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、及びセラミック繊維からなる群から選択され得る。
【0074】
触媒材料が基材中に分散される場合(例えば、基材が触媒材料を含む押出成形された固体である場合)、典型的には、基材は35~75%の細孔率を有する。基材の細孔率は、水銀ポロシメトリーなどの当技術分野で公知の従来の方法を使用して、決定することができる。
【0075】
触媒物品は、1立方インチあたり、0.3~5.0gの、好ましくは1立方インチあたり、0.4~3.8gの、より好ましくは1立方インチあたり、0.5~3.0g(例えば、1立方インチあたり、1~2.75g又は1立方インチあたり、0.75~1.5g)の、更により好ましくは1立方インチあたり、0.6~2.5g(例えば、1立方インチあたり、0.75~2.3g)の、触媒材料の総充填量を有していてもよい。
【0076】
基材は、フロースルー基材であってもフィルタ基材であってもよい。基材がモノリスである場合には、機材は、フロースルーモノリスであってもフィルタリングモノリスであってもよい。基材は、ハニカムモノリスであってもよい。
【0077】
フロースルー基材は、典型的には、それを貫通して延び、その両端部で開口する複数のチャネルを有するハニカム基材(例えば、金属又はセラミックのハニカム基材)を含む。
【0078】
フィルタリング基材は、概して、複数の入口チャネル及び複数の出口チャネルを含み、入口チャネルは、上流端部(すなわち、排気ガス入口側)で開き、下流端部(すなわち、排気ガス出口側)で塞がれ又は封じられ、出口チャネルは、上流端部で塞がれ又は封じられ、下流端部で開き、各入口チャネルは、多孔質構造によって出口チャネルから分かれている。
【0079】
基材がフィルタリング基材である場合、フィルタリング基材はウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各入口チャネルは、多孔質構造のウォールによって出口チャネルから交互に分離されており、逆もまた同様である。入口チャネル及び出口チャネルは、ハニカム配列で配置されることが好ましい。ハニカム配列が存在する場合、入口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれていることが好ましく、逆もまた同様である(すなわち、出口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれる)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの交互に塞がれ、開いている端部は、チェス盤のような外観をとる。
【0080】
原則として、基材は、任意の形状又は大きさであり得る。しかし、基材の形状及び大きさは、通常、触媒中の触媒材料の排気ガスへの曝露を最適化するように選択される。
【0081】
基材は、例えば、管状、繊維状、又は微粒子形態を有してもよい。好適な担持基材の例としては、モノリシックハニカムコーディエライト型の基材、モノリシックハニカムSiC型の基材、層状繊維又は編地型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤメッシュ型の基材、金属多孔質体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が挙げられる。
【0082】
更なる態様によれば、圧縮天然ガスの燃焼及び排気システムであって、
(i)天然ガス燃焼エンジン、及び
(ii)燃焼エンジンからの排気ガスを受け入れるための吸気口と、排気ガスを受け入れて処理するように配置された、本明細書に記載の触媒物品と、を含む排気処理システム、を備える、システムが提供される。
【0083】
天然ガス燃焼エンジンは、天然ガスを燃焼させるために使用されるエンジンである。好ましくは、天然ガス燃焼エンジンは、定置エンジン、好ましくはガスタービン又は発電システムである。定置用途では、天然ガス燃焼エンジンはまた、希薄条件又は化学量論的条件下で一定の動作をするように構成され得る。このようなシステムでは、燃焼条件及び燃料組成は、一般に、長い動作時間にわたって一定に保たれる。これは、移動用途と比較して、水分汚染物質を除去するための再生ステップを有する機会が少ないことを意味する。したがって、本明細書に記載される利益は、定置用途に特に有益であり得る。すなわち、触媒を再生する機会が限られている場合に、高い水分耐性を有する触媒を提供することが特に望ましい。希薄及び化学量論的システムタイプの両方が、異なる用途の範囲にわたって使用されることができるということを理解されたい。
【0084】
排気処理システムは、燃焼機関からの排気ガスを処理するのに適したシステムである。排気処理システムは、燃焼機関から排気ガスを受け入れるための吸気口と、排気ガスを受け入れて処理するように配置された触媒物品とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0085】
以下の非限定的な図に関連して、本発明を更に説明する。
【
図1】本発明によって達成された水熱耐久性の改善を示す。
【実施例】
【0086】
ここで、粉末の触媒サンプルが調製される、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を更に説明する。
【0087】
実施例1
実施例1の触媒は、0.1モル%のアルミニウムを含有する、パラジウム含有MFIゼオライトを有する。パラジウムの含有量は、3重量%である。
【0088】
実施例1の触媒は、従来の単純湿潤技術を用いて、0.1モル%のアルミニウムを有するケイ質MFIゼオライトの粉末サンプルに、硝酸パラジウムの溶液を含浸させることによって調製した。含浸後、サンプルを80℃で、5時間乾燥させ、静的オーブン内で空気中500℃で、2時間焼成した。
【0089】
実施例2
実施例2の触媒は、17モル%のゲルマニウムを含有する、パラジウム含有MFIゼオライトを有する。パラジウムの含有量は、3重量%である。
【0090】
実施例2の触媒は、従来の単純湿潤技術を用いて、17モル%のゲルマニウムを有するケイ質MFIゼオライトの粉末サンプルに、硝酸パラジウムの溶液を含浸させることによって調製した。含浸後、サンプルを80℃で、5時間乾燥させ、静的オーブン内で空気中500℃で、2時間焼成した。
【0091】
実施例3
実施例3の触媒は、2モル%のチタンを含有する、パラジウム含有MFIゼオライトを有する。パラジウムの含有量は、3重量%である。
【0092】
実施例3の触媒は、従来の単純湿潤技術を用いて、2モル%のチタンを有するケイ質MFIゼオライトの粉末サンプルに、硝酸パラジウムの溶液を含浸させることによって調製した。含浸後、サンプルを80℃で、5時間乾燥させ、静的オーブン内で空気中500℃で、2時間焼成した。
【0093】
実施例4
実施例4の触媒は、5モル%のアルミニウムを含有する、パラジウム含有MFIゼオライトを有する。パラジウムの含有量は、3重量%である。
【0094】
実施例4の触媒は、従来の単純湿潤技術を用いて、5モル%のアルミニウムを有するケイ質MFIゼオライトの粉末サンプルに、硝酸パラジウムの溶液を含浸させることによって調製した。含浸後、サンプルを80℃で、5時間乾燥させ、静的オーブン内で空気中500℃で、2時間焼成した。
【0095】
実施例5
実施例5の触媒は、アルミナ上に担持されたパラジウムを有する。パラジウムの含有量は、3重量%である。
【0096】
実施例5の触媒は、従来の単純湿潤技術を用いて、アルミナの粉末サンプルに、硝酸パラジウムの溶液を含浸させることによって調製した。含浸後、サンプルを80℃で、5時間乾燥させ、静的オーブン内で空気中500℃で、2時間焼成した。
【0097】
1120ppmのCH4、65ppmのC2H6、800ppmのCO、9%のO2、10%のH2O、6%のCO2、残部のN2を含むガス混合物を、100,000h-1の空間速度で、ある温度範囲(1分当たり5℃の昇温速度で250~450℃に昇温)にわたって触媒上に流すことによって、実施例1~5の触媒の、フレッシュな粉末サンプル及び経時的劣化した粉末サンプルのメタン転化活性を、合成触媒活性試験(SCAT)で試験した。700℃の温度で40時間にわたり、空気中の10%H2O中で経時的劣化させることによって、経時的劣化した触媒を得た。
【0098】
図1に示されるように、17モル%の量でゲルマニウムを使用することは、パラジウム含有MFIゼオライトにおいてアルミナもしくはチタニアを使用すること、又はアルミナ担体材料を使用することよりも良好なフレッシュメタン転化率をもたらす。更に、そのようなゲルマニウム含有触媒のフレッシュ活性及び経時的劣化活性は非常に類似しており、それによって、17モル%の量でのモレキュラーシーブ内のゲルマニウムの存在が、パラジウム含有ゼオライトの水熱耐久性を改善することを実証している。パラジウム含有ゼオライトの水熱耐久性を改善することは、パラジウム含有ゼオライトが天然ガスエンジンからの排気ガスを処理するために使用される場合、この排気ガスには水分が多いので、特に有利である。
【0099】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。「含む/備える(comprising)」という用語の使用は、そのような特徴を含むが他の特徴を除外しないものとして解釈されることが意図され、また、記載されたものに必然的に限定される特徴の選択肢を含むことが意図される。換言すれば、この用語はまた、文脈が明らかに他を示さない限り、「本質的に~からなる」(特定の更なる構成要素が、記載された特徴の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさないという条件で存在し得ることを意味することが意図される)及び「~からなる」(構成要素がそれらの割合によるパーセンテージとして表された場合、これらが合計して100%になる一方で、任意の不可避不純物を説明するが、他の特徴が含まれ得ないことを意味することが意図される)限定を含む。
【0100】
「第1」、「第2」などの用語は、様々な要素、層、及び/又は部分を説明するために本明細書で使用され得るが、要素、層、及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではないということを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、層、又は部分を、別の、又は更なる要素、層、又は部分から区別するためにのみ使用される。「上」という用語は、別の材料の「上」にあると言われる1つの材料の間に介在層がないように、「直接上」を意味することが意図されるということが理解されるであろう。「下(under)」、「下方(below)」、「真下(beneath)」、「下部(lower)」、「上(over)」、「上方(above)」、「上部(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、1つの要素又は特徴の別の要素又は特徴に対する関係を説明するための説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に示された配向に加えて、使用又は動作中のデバイスの異なる配向を包含することが意図されているということが理解されよう。例えば、本明細書に記載の装置がひっくり返された場合、他の要素又は特徴の「下」又は「下方」と記載された要素は、他の要素又は特徴の「上」又は「上方」に配向される。したがって、例示的な用語「下」は、上及び下の両方の向きを包含することができる。デバイスは、別様に配向されてもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述用語は、それに応じて解釈される。
【0101】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガスエンジンによって生成される排気ガスを処理するための触媒材料であって、触媒材料は、モレキュラーシーブと、前記モレキュラーシーブ上に担持された白金族金属(PGM)とを含み、
前記モレキュラーシーブが、ケイ素、酸素及びゲルマニウムを含む骨格を有し、かつ、約0.20モル%以下のヘテロ原子であるT原子の含有量を有し、
前記ゲルマニウムが、15~20モル%の量で存在する、触媒材料。
【請求項2】
前記ヘテロ原子であるT原子が、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
前記骨格が、ケイ素、酸素、ゲルマニウム、及びヘテロ原子であるT原子から本質的になる、請求項1又は2に記載の触媒材料。
【請求項4】
前記モレキュラーシーブが、ゼオライト、好ましくはMFIゼオライトである、
請求項1に記載の触媒材料。
【請求項5】
前記白金族金属(PGM)の総量が、0.01~30重量%である、
請求項1に記載の触媒材料。
【請求項6】
前記白金族金属(PGM)が、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)とパラジウム(Pd)との組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の触媒材料。
【請求項7】
パラジウムの総量が0.1~20重量%である、請求項6に記載の触媒材料。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブが、1200以上のSARを有する、
請求項1に記載の触媒材料。
【請求項9】
前記モレキュラーシーブが、少なくとも0.010mmol/gのシラノール基を含む、
請求項1に記載の触媒材料。
【請求項10】
請求項1に記載の触媒材料を基材上に含む、触媒物品。
【請求項11】
前記触媒材料が、ウォッシュコートとして前記基材上に提供される、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記ウォッシュコートの担持量が、1~50g/ft
3である、請求項11に記載の触媒物品。
【請求項13】
基材中に分散された
請求項1に記載の触媒材料を含む、触媒物品。
【請求項14】
前記基材が、フロースルー基材又はフィルタリング基材である、
請求項10に記載の触媒物品。
【請求項15】
圧縮天然ガス燃焼及び排気システムであって、
(i)天然ガス燃焼エンジン、及び
(ii)前記燃焼エンジンからの排気ガスを受け入れるための吸気口と、前記排気ガスを受け入れて処理するように配置された、
請求項10に記載の触媒物品と、を含む排気処理システム、
を備える、圧縮天然ガス燃焼及び排気システム。
【国際調査報告】