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特表2024-544912バリアコーティングされたセルロース系基材を含むラミネート包装材料及び包装容器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】バリアコーティングされたセルロース系基材を含むラミネート包装材料及び包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20241128BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20241128BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20241128BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B32B27/10
D21H19/82
D21H21/14 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527487
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022082026
(87)【国際公開番号】W WO2023084122
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21208175.6
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
【住所又は居所原語表記】70 Avenue General Guisan,CH-1009 Pully,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100151105
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸川 義信
(72)【発明者】
【氏名】ナイマン、ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】マルクボ、オリビア
(72)【発明者】
【氏名】オルデン、マッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリーチバウム、コンスタンチン
(72)【発明者】
【氏名】ダマージオ、レナト アウグスト ペレイラ
(72)【発明者】
【氏名】デ オリベイラ カンポス、セルジオ エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】バティスタ、リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ホーチュルハック、アラン フランシスコ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA11
4F100AC03B
4F100AC03H
4F100AJ04A
4F100AJ07B
4F100AK21C
4F100AK69C
4F100AK73B
4F100AK73J
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA23B
4F100CA23C
4F100CA23H
4F100DG10A
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH66D
4F100GB23
4F100JD02
4L055AA02
4L055AC06
4L055AG03
4L055AG04
4L055AG25
4L055AG27
4L055AG44
4L055AG45
4L055AG47
4L055AG59
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG89
4L055AG94
4L055AH02
4L055AJ01
4L055BE08
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA13
4L055EA14
4L055EA19
4L055FA11
4L055FA14
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
本発明は、少なくとも900kg/mの密度及び30~80g/mの坪量を有するセルロース系基材(11)を含み、セルロース系基材の第1の面には少なくとも1つのガスバリアコーティング(13a、14a;14b)が施されたバリアコーティングされたセルロース系基材(10a;25a)を含むラミネート包装材料(20a)に関し、このラミネート包装材料は、特に、液体カートン食品包装などの酸素に敏感な製品の包装を意図しており、また、ラミネート包装材料を含む包装容器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素に敏感な製品を包装するためのラミネート包装材料(20a;20b)であって、バリアコーティングされたセルロース系基材(10a;10b)と、第1の最外層の保護材料層(22a;22b)と、第2の最内層の液密でヒートシール可能な材料層(23a;23b)とを備え、
前記バリアコーティングされたセルロース系基材(10a;10b)は、
少なくとも900kg/mの密度を有し、30~80g/mの坪量を有するセルロース系基材(11)を備え、
前記セルロース系基材の第1の面上に、2~7000nm、例えば2~5000nm、例えば2~4000nmの総厚になるように、少なくとも1つのガスバリア材料からなる少なくとも1つのガスバリアコーティング(13a,14a;14b)を塗布し、
前記バリアコーティングされたセルロース系基材(10)は、延性ベース層プレコーティング(12a;12b)をさらに含み、
延性ベース層プレコーティングは、分散コーティング及びその後の乾燥によって、セルロース系基材(11)の第1面の表面に塗布され、少なくとも1つのガスバリアコーティング(13a,14a;14b)の下に配置され、
バリアコーティングされたセルロース系基材は、ラミネート包装材やその包装にガスバリア性を付与するのに適している、
ラミネート包装材料(20a;20b)。
【請求項2】
前記ガスバリアコーティング(13a)が、分散又は溶液コーティングによって塗布されるバリア分散コーティング、及び/又は蒸着法によって塗布されるバリア蒸着コーティング(14a;14b)である、
請求項1に記載のラミネート包装材料。
【請求項3】
前記バリア分散コーティング(13a)は、ビニルアルコールポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルアルコール、PVOH、及びエチレンビニルアルコール、EVOH、デンプン及びデンプン誘導体、キシラン、キシラン誘導体、ナノフィブリル/ミクロフィブリルセルロース、NFC/MFC、ナノ結晶セルロース、NCC及びそれらの2種以上のブレンドからなる群から選択されるポリマーを備える、
請求項1又は2に記載のラミネート包装材料。
【請求項4】
前記バリア蒸着コーティング(14a;14b)が、金属、金属酸化物、無機酸化物及び炭素コーティングから選択される材料の蒸着コーティングである、
請求項1~3のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項5】
前記少なくとも1つのガスバリアコーティング(13a、14a)が、前記延性ベース層プレコーティング上に分散又は溶液コーティングの手段によって最初に塗布されるバリア分散コーティング(13a)と、前記バリア分散コーティング(13a)上に蒸着法の手段によって続いて塗布されるバリア蒸着コーティング(14a)とを備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項6】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)は、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)ラテックス、スチレン-アクリレート共重合体(SA)ラテックス、アクリル酸ビニル共重合体ラテックス及び酢酸ビニル-アクリレート共重合体ラテックス等のアクリレートポリマー及び共重合体の他のラテックス、並びにバイオベースのポリマー材料からなる群から選択される固有の延展性を有するポリマーバインダー材料を含む水性組成物から作製される、
請求項1~5のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項7】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)は、デンプン誘導体、ポリイソプレン、リグニン系ポリマー、アルギン酸塩、ガム、及び大豆ベースのタンパク質からなる群から選択される固有の延性特性を有するバイオベースポリマーバインダー材料を含む水性組成物、及び1つ又は複数のバイオベースポリマーバインダー材料のラテックスから作られる、
請求項1~6のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項8】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)は、無機フィラー等の充填剤材料をさらに含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項9】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)は、乾燥重量当たり、固有の延性特性を有するポリマーバインダー材料10~20wt%、無機充填剤75~85wt%、デンプン等の架橋化合物3~5wt%、及び増粘剤1~2wt%を備える、
請求項6~8のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項10】
前記充填剤は、ベントナイト又はカオリンなどの無機層状化合物である、
請求項6~9のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項11】
前記延性ベース層プレコーティングは、2~15g/m、例えば5~15g/m、例えば8~15g/m、例えば10~15g/mの坪量を有する、
請求項6~10のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項12】
前記セルロース系基材は、その反対側に第2の延性コーティング(15a;15b)を有し、前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)と同じ組成のものである、
請求項1~11のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項13】
ISO 1762:2019によって決定される、15~25wt%、例えば15~23wt%の灰分含有量を有する、
請求項8~12のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項14】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)を含む前記セルロース系基材は、ISO 534:2011に従って測定した、少なくとも密度が950kg/m、例えば少なくとも1000kg/m、例えば少なくとも1100kg/mを有し、及び坪量が35~75g/m、例えば40~75g/m、例えば45~70g/m、例えば45~65g/mを有する、
請求項1~13のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項15】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)を含むセルロース系基材は、試験法ISO 5636-5:2013の適用下限である100nm/(Pa・s)より低く、さらに1nmより低い、例えば40~900pm/(Pa・s)にカレンダー処理され、
さらにSCAN-P 26:78によって決定される40~900pm/(Pa・s)、例えば40~800pm/(Pa・s)、例えば100~700pm/(Pa・s)、例えば200~500pm/(Pa・s)など、1nmよりも低い、
請求項1~14のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項16】
前記バリアコーティングされたセルロース系基材は、前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)及び少なくとも1つのガスバリアコーティング(13a、14a;14b)を備え、
TAPPI 555 om-15に従って測定した場合、ISO 8791-4 と同じであり、前記ガスバリアコーティングは、3.0μm未満、例えば2.8μm未満、例えば2.5μm未満、例えば2.2μm未満、例えば2.0μm未満、例えば1.8のPPS表面粗さを有している、
請求項1~15のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項17】
少なくとも50wt%、例えば60~100wt%、例えば70~100wt%の針葉樹セルロース、例えばクラフト針葉樹セルロースを含む、
請求項1~16のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項18】
前記延性ベース層プレコーティング(12a;12b)を有するプレコーティングされ乾燥されたセルロース系基材は、ガスバリアコーティング(13a,14a;14b)でさらにコーティングする前にスーパーカレンダー処理される、
請求項1~17のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項19】
紙、板紙又は他のセルロース系材料のバルク層(21a;21b)と、前記第1の最外層の保護材料層(22a; 22b)と、前記第2の最内層の液密でヒートシール可能な材料層(23a;23b)と、前記バルク層の内側に、前記バルク層と前記第2の最内層の液密でヒートシール可能な材料層との間に配置された、前記バリアコートされたセルロースベースの基材(10a;10b)を含む、
請求項1~16のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項20】
前記バリアコーティングされたセルロース系基材(10a;10b)は、アクリル系ポリマー及びコポリマー、デンプン、セルロース及び多糖誘導体、酢酸ビニル及び/又はビニルアルコールのポリマーおよびコポリマーからなる群から選択されるバインダーを含む組成物を含む中間結合層(26a;26b)によって、前記バルク層(21a;21b)に結合される、
請求項19に記載のラミネート包装材料。
【請求項21】
前記第2の最内層の液密でヒートシール可能な材料層(23a´;23b‘)は、包装材料の機械的特性の堅牢性を向上させるために予め製造されたポリマーフィルムを備える、
請求項1~20のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項22】
前記バリアコーティングされたセルロース系基材(10a)は、バリア分散コーティング(13a)を有するが、任意選択でさらなるバリア蒸着コーティング(14a)を有し、
蒸着法により塗布された、バリア蒸着コーティングを有する予め製造されたポリマーフィルム基材にさらにラミネートされ、前記バリア蒸着コーティングを有する予め製造されたポリマーフィルム基材が、前記バリアコーティングされたセルロース系基材と前記第2の最内層の液密でヒートシール可能な材料層(23a; 23b)の間に配置される、
請求項1~21のいずれか一項に記載のラミネート包装材料。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のラミネート包装材料を含む包装容器(50a;50b;50c;50d)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体カートン食品パッケージ等の酸素に敏感な製品用のラミネート包装材料に関し、ラミネート包装材料のバリアシートとして使用するための、バリアコーティングされた紙又はセルロース系基材を含むラミネート包装材料、及びラミネート包装材料を含む包装容器に関する。本発明はさらに、少なくとも1つのガスバリア材料の少なくとも1つのガスバリアコーティングを総厚2~5000nmに塗布することによって得られるバリアコーティングされた紙又はセルロース系基材を含むラミネート包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品用の一回使い切りタイプの包装容器は、板紙やカートンをベースとした包装用ラミネートから製造されることが多い。このような一般的に使用される包装容器の1つは、「Tetra Brik Aseptic(登録商標)」という商標を付して販売されており、主に、長期間の常温保存用に販売される牛乳、フルーツジュース等の液体食品の無菌包装に採用されている。この公知の包装容器の包装材料は、通常、紙、板紙、その他のセルロースベースの材料のバルク又はコア層と、熱可塑性プラスチックの液密の外側層を含むラミネートである。包装容器をガス気密、特に、酸素気密にするために、例えば、牛乳やフルーツジュースの無菌包装やパッケージングの目的で、これらの包装容器のラミネートは通常、少なくとも1つの追加層、最も一般的には、アルミニウム箔を含む。
【0003】
積層体の内側、すなわち、ラミネートから製造される容器の充填された食品内容物に面することを意図した側には、アルミニウム箔上に塗布される最内層があり、この最内層は、接着性ポリマー及び/又はポリオレフィン等のヒートシール可能な熱可塑性ポリマーを含む1又は複数の部分層を含む。また、バルク層の外側には、最外のヒートシール可能なポリマー層がある。
【0004】
包装容器は、一般に、包装材料のウェブ又は予め組み立てられたブランクからパッケージを形成、充填及びシールするタイプの最新の高速包装機によって製造される。包装容器は、ラミネート包装材料のウェブの長手方向の両縁を、内側及び外側のヒートシール可能な熱可塑性ポリマー層を一緒に溶着することによってオーバーラップ接合部で互いに結合させ、チューブに改質することによって製造される。チューブは目的とする液体食品で充填され、その後、チューブ内の内容物のレベルより低い位置で互いに所定の距離をおいてチューブを繰り返し横方向にシールすることによって、個々のパッケージに分割される。パッケージは、横方向シールに沿って切り込みを入れることでチューブから分離され、包装材料に予め用意された折り目線に沿って折り目を形成することで、所望の幾何学的形状、通常は平行六面体に形成される。
【0005】
この連続的なチューブ形成、充填及びシールする包装方法の概念の主な利点は、チューブ形成の直前にウェブを連続的に滅菌できることであり、無菌包装方法、すなわち、充填される液体内容物及び包装材料自体がバクテリアから低減され、充填された包装容器が、充填された製品における微生物の増殖の危険なしに周囲温度であっても長期間保存できるように清潔な条件下で製造される方法の可能性を提供することである。Tetra Brik(登録商標)タイプの包装方法のもう一つの重要な利点は、上述したとおり、コスト効率に大きな影響を与える連続高速包装が可能である点である。
【0006】
敏感な液体食品、例えば、牛乳やジュースの包装容器も、本発明のラミネート包装材料のシート状ブランク又は予め組み立てられたブランクから製造できる。平らに折り畳まれた包装用ラミネートのチューブ状ブランクから、まずブランクを組み立てて開いたチューブ状容器カプセルを形成し、その一方の開口端を一体型エンドパネルの折り畳みとヒートシールによって閉鎖することによって、パッケージが製造される。こうして閉鎖された容器カプセルは、他方の開口端から食品、例えば、ジュース等が充填され、その後、対応する一体型エンドパネルのさらなる折り畳みとヒートシールすることによって閉鎖される。シート状及びチューブ状のブランクから製造される包装容器の例として、従来のいわゆるゲーブルトップパッケージがある。また、このタイプのパッケージには、プラスチック製の成形されたトップ及び/又はスクリューキャップを備えたものもある。
【0007】
包装用ラミネートのアルミニウム箔の層は、他のガスバリア材料よりも非常に優れたガスバリア性を提供する。液体食品の無菌包装用の従来のアルミニウム箔ベースの包装用ラミネートは、その性能レベルにおいて、今日、市場で入手可能な最もコスト効率の良い包装材料である。
【0008】
箔ベースの材料と競合する他の材料は、原材料に関するコスト効率が良く、同等の食品保存特性を有し、包装用ラミネートの完成品への材料の変換の複雑さが比較的低いことが必要である。
【0009】
液体食品用カートン包装用の非アルミニウム箔材料の開発努力の中で、従来のラミネート包装材料のアルミニウム箔バリア材料に取って代わる、あるいはラミネート材料に複数の別個のバリア層を組み合わせ、ラミネートや製造のための従来のプロセスに適合させることができる、高バリア性や多重バリア性を有する予め製造されたフィルムやシートの開発に対する一般的な意欲もある。
【0010】
このような代替の、より環境的に持続可能なバリア材料の好ましいタイプは、薄い紙キャリア基材への水性分散コーティング又は蒸着コーティングによって作られたバリアコート紙基材である。様々な水性分散コーティングプロセス、蒸着コーティングプロセス及びこのようなコーティングのための材料レシピがあり、液体食品包装用の包装ラミネートに使用するための、バリア特性、特に酸素ガスなどのガスに対する改善された特性を有する、「非箔」タイプ、すなわち非アルミニウム箔のコスト効率のよいバリア材料が必要とされている。
【0011】
特許公開WO2011/003565A1には、誘導ヒートシールを目的とした、プレコートされ金属化された紙又はセルロース系基材を含む非アルミニウム箔包装材料が開示されている。
【0012】
特許公開WO2017/089508A1には、同様の包装ラミネートにおいて、最適な特性を提供する紙基材を選択することによって、金属化された紙から同様の方法で改善されたバリア特性が得られることが開示されている。このような金属化された紙基材は、改善されたバリア特性を提供するだけでなく、誘導ヒートシール目的での金属化層のより良好な安定性も示した。
【0013】
しかしながら、従来技術のガスバリアコート紙基材の酸素ガスバリア性をさらに改善する必要性が残っている。また、ガスバリアコート紙基材及びそれを含むラミネート包装材料に使用される材料のリサイクル性及び環境持続可能性に関する特性を改善するニーズも高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、包装材料にラミネートするための改良されたバリアコートセルロース系基材を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、将来の持続可能なラミネート包装材料のニーズを満たすために、良好なガスバリア性を有し、改善されたリサイクル性及び環境持続可能性を提供する、バリアコーティングされた紙又はセルロース系基材を使用することである。
【0016】
本発明のさらなる一般的な目的は、アルミニウム箔を含まず、長期の無菌包装に適した良好なガスバリア性及びその他のバリア性を合理的なコストで提供する、液体、半液体又は、湿潤食品製品用の非箔ラミネート包装材料等の酸素に敏感な製品用のラミネート包装材料を提供することである。
【0017】
特定の目的は、アルミ箔バリア材料と比較して、良好なガスバリア性及び水蒸気バリア性、並びにリサイクル性及び持続可能な環境プロファイルを有するパッケージを提供し、コスト効率の高い、箔を使用しない、紙又は板紙ベースのラミネート包装材料を、長期無菌食品保存用パッケージを製造する目的で提供することである。
【0018】
したがって、これらの目的は、本発明によれば、本明細書において定義され、記載されるバリアコーティングされたセルロース系基材を含む、又は本明細書において記載されるバリアコーティングされたセルロース系基材の製造方法によって得られる、添付の特許請求の範囲において定義されるラミネート包装材料及び包装容器によって達成可能である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
酸素に敏感な製品用のラミネート包装材料におけるバリアシートとして使用するための、バリアコーティングされたセルロース系基材が提供され、バリアコーティングされたセルロース系基材は、少なくとも900kg/mの密度及び30~80g/mの坪量を有するセルロース系基材を備え、セルロース系基材の第1面に、少なくとも1種のガスバリア性材料の少なくとも1つのガスバリアコーティングを、2~7000nm、例えば2~5000nm、例えば2~4000nmの総厚となるように塗布し、バリアコーティングされたセルロース系基材は、分散コーティング及びその後の乾燥によって、セルロース系基材の第1の面の表面上に塗布され、少なくとも1つのガスバリアコーティングの下に配置される延性ベース層プレコーティングをさらに含み、このように、バリアコーティングされたセルロース系基材は、ラミネート包装材料及びそれを用いた包装にガスバリア性を提供するのに適している。
【0020】
ガスバリアコーティングは、分散コーティング又は溶液コーティングによって施されるバリア分散コーティング、及び/又は蒸着法によって施されるバリア蒸着コーティングであってもよい。
【0021】
バリア分散コーティングは、ビニルアルコールポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、PVOH、及びエチレンビニルアルコール、EVOH、デンプン及びデンプン誘導体、キシラン、キシラン誘導体、ナノフィブリルセルロース/ミクロフィブリルセルロース、NFC/MFC、ナノ結晶セルロース、NCC及びそれらの2種以上のブレンドからなる群から選択されるポリマーを備えてもよい。
【0022】
バリア蒸着コーティングは、代わりに、又は追加的に、金属、金属酸化物、無機酸化物及び炭素コーティングから選択される材料の蒸着コーティングを備えてもよい。バリア蒸着コーティングは、アルミニウム蒸着コーティング及び酸化アルミニウム(AlOx)からなる群から選択される蒸着コーティングであってもよく、好ましくはアルミニウム金属化コーティングである。
【0023】
少なくとも1つのガスバリアコーティングは、延性ベース層プレコーティング上に分散コーティング又は溶液コーティングによって最初に塗布されるバリア分散コーティングと、バリア分散コーティング上に蒸着法によって続いて塗布されるバリア蒸着コーティングとを備えてもよい。
【0024】
延性ベース層プレコーティングは、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)ラテックス、スチレン-アクリレート共重合体(SA)ラテックス、アクリル酸ビニル共重合体ラテックス及び酢酸ビニル-アクリレート共重合体ラテックスなどのアクリレートポリマー及び共重合体の他のラテックス、並びにバイオベースポリマー材料からなる群から選択される固有の延性特性を有するポリマーバインダー材料を含む水性組成物から作製してもよい。
【0025】
延性ベース層のプレコーティングは、セルロース系基材の表面をさらに滑らかにするために、有利にはフィラー材料をさらに含んでもよい。フィラーは無機材料であってもよく、好ましい実施形態では、無機化合物の層状粒子を含む。このような層状充填剤は、重なり合う鉱物フレークまたはラメラ(lamellae)を生成することにより、材料のバリア特性にさらに寄与し、材料を通る小分子の移動を防止し得る。このような層状無機粒子は、カオリン粘土またはベントナイト粘土などの粘土、ケイ酸塩およびタルカム粒子であってもよい。
【0026】
延性ベース層プレコーティングは、乾燥重量で2~15g/m、例えば5~15g/m、例えば8~15g/m、例えば10~15g/mの量で水性分散コーティングによって適用されてもよい。
【0027】
セルロース系基材は、その反対側に第2の延性コーティングをさらに有していてもよく、この第2の延性コーティングは、基材の第1の面の延性ベース層プレコーティングと同じ種類であってもよい。
【0028】
本発明の第1の態様によれば、本明細書に記載のバリアコーティングされたセルロース系基材を含むラミネート包装材料が提供される。ラミネート包装材料は、第1の最外の保護材料層と第2の最内の液密材料層とをさらに備えてもよい。第2の最内の液密材料層は、ラミネート包装材料から形成された包装容器に包装される製品に向かって接触層を形成し、それ自体又は他の熱可塑性材料にヒートシール可能であってもよい。
【0029】
ラミネート包装材は、バルク層を構成する紙、板紙、又は他のセルロース系材料の追加層をさらに含んでもよい。
【0030】
液体、半液体又は湿潤食品などの酸素に敏感な食品のカートン包装の目的のために、ラミネート包装材料は、紙、板紙又は他のセルロース系材料のバルク層と、第1の最外の保護層及び/又は液密な材料層と、第2の最内の液密で任意にヒートシール可能な材料層と、バルク層の内側に、バルク層と第2の最内層との間に配置された、本明細書に記載のバリアコーティングされたセルロース系基材とを備える。
【0031】
本発明の第2の態様では、第1の態様のラミネート包装材料を備える包装容器が提供される。一実施形態では、液体、半液体又は湿潤食品の包装を目的とする包装容器が提供される。一実施形態によれば、包装容器は、少なくとも一部がラミネート包装材料から製造され、さらなる実施形態によれば、全体がラミネート包装材料から製造される。
【0032】
記載されたバリアコーティングされたセルロース系基材の製造方法が提供される。この方法は、ロール供給式システム(roll-to-roll system)における移動ウェブとして、第1の面及び第2の面を有するセルロース系基材を提供する第1のステップと、移動するセルロース系基材の第1の面上に、延性ベース層プレコーティング組成物の第1の水性分散液を塗布し、任意選択で、移動する基材の他方の面に延性コーティング組成物の第2の水性分散液を塗布し、その後、強制蒸発により、塗布された延性ベース層プレコーティング、及び任意選択の第2の延性コーティング組成物を乾燥させる第2のステップと、プレコーティング及び乾燥されたセルロース系基材をカレンダー処理して、少なくとも900kg/m、例えば少なくとも1000kg/mの密度を得る第3のステップと、移動するセルロース系基材及び延性ベース層プレコーティングの第1面上に、バリア組成物の第2の水性分散液又は溶液を分散コーティングすることによってガスバリアコーティングを適用し、その後、強制蒸発及び/又はバリア蒸着コーティングによって、移動するセルロース系基材及び延性ベース層プレコーティングの第1面に適用されたバリア分散コーティングを乾燥し、2~7000nm、例えば2~5000nmの総ガスバリアコーティング厚さとなる、第4のステップと、を備える。
【0033】
方法の第4のステップは、延性ベース層プレコーティングを有する移動セルロース系基材の第1の面上に、バリア組成物の第2の分散液又は溶液を分散コーティングすることによってガスバリアコーティングを適用し、適用されたガスバリアコーティングを強制蒸発によって乾燥させる第1の操作と、その後に、延性ベース層プレコーティング及び第1の操作のガスバリアコーティングを有する移動セルロース系基材の第1の面上に、バリア蒸着コーティングを蒸着する第2の操作とを備えてもよい。
【0034】
これまで、バリアコーティングされた紙によるガスバリア性の向上は、任意のポリマー層にさらに積層されたときに本質的にガスバリア性を提供する、より優れたセルロース系基材を調達することによって、及び/又は、本質的なガスバリア性を有するバリアコーティング材料をより厚くコーティングすることによって達成されると考えられてきた。しかしながら、最近では、バリアコーティング材料とセルロース系基材との間の界面部分が、ガスバリア性に最も寄与し、その後に塗布されるコーティング材の最適性能にとって重要な役割を果たす可能性があることが、より良く理解されるようになった。セルロース系基材の表面に延性のあるベース層のプレコートを追加することによって、最適な性能が得られることが判明した。そうすることで、高密度セルロース系基材自体のバリア性をそれほど高くする必要がなくなり、バリア性プレコートとしてコーティングするガスバリア性ポリマーの量を減らせることがわかった。したがって、延性ベース層プレコーティングを使用すれば、それ自体はガスバリア性に寄与しないが、包装用ラミネートにおけるガスバリア性は改善される。延性ベース層プレコーティング組成物は、延性基礎を提供すると同時に、さらなるガスバリアコーティングを受けるための、均一で緻密で適合性のあるプレコーティング表面を提供するように選択されるべきである。しかし、延性ベース層プレコートのために選択された材料は、固有のガスバリア特性を有する必要はない。
【0035】
延性ベース層プレコーティング材料は、有利には、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)ラテックス、スチレン-アクリレート共重合体(SA)ラテックス、アクリル酸ビニル共重合体ラテックス及び酢酸ビニル-アクリレート共重合体ラテックス等のアクリレートポリマー及び共重合体の他のラテックス、並びにバイオベースポリマー材料からなる群から選択される固有の延性特性を有するポリマーバインダー材料を含む水性組成物の形態で適用される。延性ベース層プレコーティング組成物の第1の水性分散液は、粘土などの無機粒子又は顔料、及び/又はセルロースフィブリル等の充填剤をさらに含んでもよい。
【0036】
上述した方法及びコーティング層構成によって得られるバリアコーティングされたセルロース系基材は、ラミネート包装材料及びそれから作られる包装容器に改善されたガスバリア性を提供し、また、そのような包装材料及び包装容器のリサイクル性及び持続可能性プロファイルを改善し得る。
【0037】
(詳細な説明)
本発明に関連して使用される「長期保存」という用語は、包装容器が包装された食品の品質、すなわち栄養価、衛生的安全性及び味について、周囲温度条件で少なくとも1ヶ月又は2ヶ月、例えば、少なくとも3ヶ月、好ましくは、6ヶ月、例えば12ヶ月、又はそれ以上保存できることを意味する。
【0038】
「パッケージの完全性」という用語は、一般にパッケージの気密性、すなわち包装容器の漏れや破損に対する耐性を意味する。この用語は、充填された食品を劣化させ、パッケージの予想される保存期間を短くする可能性のある細菌、汚れ等の微生物の侵入に対するパッケージの耐性を包含する。
【0039】
ラミネート包装材料のパッケージの完全性に対する1つの主な貢献は、ラミネート材料の隣接する層間の良好な内部接着によってもたらされる。また、別の寄与は、各材料層のピンホール、破断などの欠陥に対する材料の耐性からもたらされ、さらに別の寄与は、包装容器の形成時に材料がシールされるシール接合部の強度からもたらされる。このように、ラミネート包装材自体の完全性に関しては、各ラミネート層とその隣接層との接着性、及び各材料層が、例えば、包装容器を形成するための折り畳み時及びシール時の熱的及び機械的負荷に耐える能力に着目される。包装容器のシールに関しては、完全性は主にシール接合部の品質に焦点を当てており、これは充填機における十分に機能する強固なシール作業によって確保され、さらにこれはラミネート包装材料の適切に適合したヒートシール特性によって確保される。
【0040】
「液体又は半液体食品」という用語は、一般に、任意に食品の断片を含むことができる流動性のある内容物を有する食品を指す。乳製品及び牛乳、大豆、米、穀物及び種子飲料、ジュース、ネクター、清涼飲料、水、フレーバーウォーター、エナジードリンク、スポーツ飲料、コーヒー又は茶飲料、ココナッツウォーター、ワイン、スープ、ハラペーニョ、トマト、ソース(パスタソース等)、豆及びオリーブオイル等が、想定される食品のいくつかの非限定的な例である。
【0041】
本開示のラミネート包装材料で包装及び保護することが可能な他の酸素に敏感な食品のさらなる例は、例えば、粉乳及び他の粉末食品等の乾燥食品及び/又は脂肪性食品である。脂肪性食品の例としては、チーズ、バター、スプレッド等が挙げられる。このような包装は、例えば、袋入りのフローラップ包装又は成形、充填、シール(FFS)包装であってもよい。また、瓶、トレイ、蓋付きスプレッド容器、折りたたみ可能なチューブ、クラムシェルパッケージ、スリーブ、封筒、又は包装紙の包装であってもよい。これらの用途では、包装材料は通常、折り畳み又は同様のタイプの応力(例えば、折り目、伸張)を受けるため、本開示のバリアコーティングされたセルロース系基材をベースとする包装材料が特に適している。
【0042】
包装材料及び包装容器に関連する「無菌」という用語は、微生物が除去され、不活性化され、又は死滅している状態を指す。微生物の例としては、細菌や胞子が挙げられる。一般に、製品が包装容器に無菌的に充填される場合、無菌プロセスが使用される。包装容器の保存期間中、無菌状態を維持するためには、パッケージの完全性特性が非常に重要である。充填された食品の長期保存のために、さらに、本来の味や栄養価、例えば、ビタミンC含有量を保つために、酸素ガス等のガスや蒸気に対するバリア性を有することが重要である。
【0043】
「バルク層」という用語は、通常、多層ラミネートにおける最も厚い層又は最も多くの材料を含む層、すなわち、ラミネート及びラミネートから折り畳まれた包装容器の機械的特性及び寸法安定性に最も寄与している層、例えば、板紙又はカートン等を意味する。また、形成された包装用容器の十分な機械的特性を達成するため、バルク層の両側で、より高いヤング率を有する安定化対向層とさらに相互作用する、サンドイッチ構造においてより大きな厚さ距離を提供する層を意味する場合もある。
【0044】
本明細書において、「分散コーティング」という用語は、ポリマーの水性又は実質的に水性の分散液、懸濁液、乳濁液(emulsion)又は溶液を、通常は連続ウェブの形態で、基材層の表面に塗布し、乾燥後に固体で実質的に無孔質の被膜を形成するコーティング技術に関する。したがって、「分散液」という用語は、乾燥後にこのようなコーティングを提供することができる任意の懸濁液、乳濁液、溶液、又はそれらの混合物も含む。ポリビニルアルコール(PVOH、PVAL)は、分散コーティングに適した典型的なポリマーであるが、例えば、実際には高いケン化度では、むしろポリマー溶液、又は分散したPVOHと溶解したPVOHの混合物であってもよい。分散コーティングされたバリア層又はコーティングは、「液膜コーティング(liquid-film coating)」とも呼ばれる分散コーティング技術によって形成される。水性分散液は、微細なポリマー粒子を備えてもよく、したがってラテックスであってもよい。
【0045】
本明細書において、「ラテックス」という用語は、ポリマー粒子の水性懸濁液又は分散液又は乳濁液を含む組成物を指し、これらのポリマーは、天然ポリマー、合成ポリマー、バイオマス由来の合成ポリマー又はそれらの組み合わせである。
【0046】
紙の坪量は、ISO 536:2019の公式試験法に従い、g/m単位で測定され、厚さ及び密度はISO 534:2011に従い、それぞれμm(m)、及びkg/m単位で測定される。
【0047】
紙上にコーティングされたポリマー層の厚さ測定は、構造体のスライス断面サンプルを採取し、顕微鏡で調べることによって測定・推定してもよい。スライスは、例えばクライオミクロトームを用いて行ってもよい。
【0048】
OTRは、ASTM F1927-14及びASTM F1307-14に従い、電量センサに基づくOxtran 2/21(Mocon社)装置を用いて測定した。実施例と関連したOTR試験方法のさらなる説明を参照する。
【0049】
平坦な材料におけるOTRを測定する方法は、定められた温度、所定の大気圧、すなわち酸素21%の雰囲気(特に断りのない限り)において、24時間の間に材料を通過する際の表面及び単位時間あたりの酸素量を特定するものである。包装材料のOTRを測定する方法は、定められた温度、所定の大気圧、すなわち酸素濃度21%(特に断りのない限り)の雰囲気下において、24時間の間に包装材料に入る時間単位あたりの酸素量を特定するものである。
【0050】
水蒸気透過率(WVTR)測定は、Permatran 3/33(Mocon)装置(相対湿度検出とWVTR測定のための変調赤外線センサを使用したASTM F1249-13規格)により、38℃、90%の駆動相対湿度勾配で実施した:規格:ASTM F1249-13、相対湿度検出及びWVTR測定用変調赤外線センサを使用)により、38℃、90%駆動相対湿度勾配で測定した。
【0051】
表面粗さは、ISO 8791-4と同じTAPPI 555 om-15に従って測定した。本発明の目的のためにバリアコーティングを施すのに適したセルロース系基材は、特定の種類の紙に限定されるものではなく、様々な結晶化度の天然セルロース、繊維状セルロース又はミクロ/ナノフィブリルセルロースをベースとする他のセルロース系基材も含まれる。しかし、本発明は、再生された、すなわち溶解し、その後沈殿させた化学修飾セルロースポリマーから作られたフィルムのような、プラスチックやポリマーから作られた基材には適用されない。
【0052】
本発明によるベース層プレコーティングとガスバリアコーティングの組み合わせは、これまで可能だと考えられていた以上に紙基材のガスバリア性を向上させる可能性があることがわかった。
【0053】
蒸着コーティングプロセスによる最終バリアコーティングステップに適するためには、基材の繊維状部分は、効率及び生産経済性の理由から、また基材の繊維状セルロース系部分に空気が巻き込まれることによるコーティングの膨れを避けるために、60g/m以下、例えば50g/m以下、好ましくは45g/m以下等、薄くする必要がある。一方、セルロース系基材が30g/mより薄いか、又は低い坪量の場合、湿潤分散液でコーティングし、その後乾燥させると、機械的に弱くなりすぎ、及び/又は寸法安定性が低下することがあり、その結果、収縮やカールの問題、さらにはウェブの破断が生じることがある。したがって、30~70g/m、例えば30~65g/m、例えば35~60g/m、例えば35~55g/m、例えば35~50g/mの坪量を有するセルロース系基材を使用することがより好ましい。
【0054】
さらに、プレコートされたセルロース系基材は、少なくとも900kg/mの高密度を有し、さらに、その上に塗布されるガスバリアコーティングとの最良の界面のために、緻密で平滑な表面を有するべきである。したがって、バリアコーティングされたセルロース系基材は、プレコートされ、カレンダー処理された、例えばスーパープレコートされ、カレンダー処理された紙であることが望ましい。カレンダー処理又はスーパーカレンダー処理は、基材の高密度化に加えて、プレコート層と紙基材表面との接着性の向上、すなわち「一体化」を実現する。
【0055】
本発明に従って使用するためのセルロース系基材は、硫酸パルプ等の化学パルプを乾燥重量で少なくとも50%含むセルロース繊維から形成されてもよい。化学パルプは、高速コーティング及び加工プロセス及び最終パッケージで使用する紙の強靭性を得るために使用される。
【0056】
硫酸パルプ又は「クラフト」パルプは、リサイクルにおける再パルプ化の改善や繊維の一般的な脱水に有利であり得る。
【0057】
リサイクル及び良好な脱水能力を目的として、セルロース系基材の繊維は、ISO 5267-2:2001によって測定される300mlより高い、例えば350mlより高い、例えば400mlより高いカナダ標準ろ水度(CSF)を有するべきである。これに対応して、セルロース系基材の繊維は、ISO 5267-1:1999に従って測定された、40度SRより低い、例えば36度SRより低い、例えば32度SRより低いショッパー・リーグラー値を有するべきである。
【0058】
針葉樹パルプは、得られる紙に強度/靱性特性を与え、パルプ中に少なくとも50wt%含まれてもよい。好ましくは、このように、セルロース系基材は、少なくとも50wt%、例えば60~100wt%、例えば70~100wt%のクラフト針葉樹セルロース、例えば漂白クラフト針葉樹セルロースを備える。
【0059】
湿潤製品、液体、粘性流動製品の液密包装など、いくつかの用途では、できるだけ薄いセルロース系基材を使用するのが有利であることが分かっている。そうすれば、隣接する層に必要なポリマーが少なくなる可能性があるためである。
【0060】
最小限のバリア材料で最適なバリア特性を得るためには、紙やセルロース系基材に数マイクロメートル又はナノメートルの厚さだけコーティングするガスバリアコーティングは、まずセルロース系基材に延性のあるベース層をプレコーティングする必要がある。
【0061】
延性ベース層プレコーティングは、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)ラテックス、スチレン-アクリレート共重合体(SA)ラテックス、アクリル酸ビニル共重合体ラテックス及び酢酸ビニル-アクリレート共重合体ラテックス等のアクリレートポリマー及び共重合体の他のラテックス、並びにバイオベースポリマー材料からなる群から選択される固有の延性特性を有するポリマーバインダー材料を含む水性組成物から得られてもよい。
【0062】
延性ベース層プレコーティングは、デンプン誘導体、ポリイソプレン、リグニン系ポリマー、アルギン酸塩、ガム、及び大豆ベースのタンパク質からなる群から選択される、固有の延性特性を有するバイオベースポリマーバインダー材料と、そのようなバイオベースポリマーバインダー材料の1種以上のラテックスとを含む水性組成物から得ることができる。
【0063】
延性ベース層プレコーティングは、充填剤をさらに含んでもよい。
【0064】
延性ベース層プレコーティングは、ブレードコーティング、ロッドコーティング、バーコーティング、スムースロールコーティング、リバースロールコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、ディップコーティング、スロット結合層コーティング法などの適切な分散コーティング技術によって適用することができ、その後、強制対流乾燥によって分散媒体(通常は水)を蒸発させる。好ましくは、延性ベース層プレコーティングは、ブレード又はロッドコーティング技術とその後の乾燥によって適用される。「水性分散コーティング」という用語には、ポリマーエマルション、分散液、懸濁液、溶液及びラテックス製剤の水性組成物のコーティングが含まれ、また、そのような組成物が顔料、無機粒子又は他の充填剤をさらに含む場合も含まれる。
【0065】
延性ベース層プレコーティングは、水性ラテックス組成物、例えば、スチレン-ブタジエンラテックス(SB-ラテックス)、メチルスチレン-ブタジエンラテックス、スチレン-アクリレートラテックス(SA-ラテックス)、アクリル酸ビニル共重合体及び酢酸ビニル-アクリレートラテックス等のアクリレートラテックスからなる群から選択されるラテックスから得られてもよい。スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルラテックス、スチレン-アクリレート-アクリロニトリルラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリレート-アクリロニトリルラテックス、スチレン-無水マレイン酸ラテックス、スチレン-アクリレート-無水マレイン酸ラテックス、これらの混合物、又は植物由来のポリマー材料で作られたバイオベースラテックス等がある。また、スチレン-アクリレート系ラテックスやスチレン-ブタジエン系ラテックスの少なくとも一部をバイオマス由来とすることで、カーボンフットプリントを改善しながら同様の性能を実現してもよい。
【0066】
延性ベース層プレコーティングは、一実施形態では、デンプン誘導体、 改質デンプン及び架橋デンプンを含む からなる群から選択されるような、バイオベースポリマーバインダー材料のエマルジョンを含む水性ラテックス組成物を製造することによって、実質的に植物ベースの材料源から製造され得る。ポリイソプレン、リグニンベースのポリマー、アルギン酸塩、グアーガムなどのガム、及び大豆ベースのタンパク質からなる群から選択されるラテックス組成物を含み、これにはEcosynthetix社の「Ecosphere」、Vystar社の「Vytex」、Stora Enso社の「NeoLigno」、Organoclick社の「OC-Binder」、Polygal社の「Polygal」表面コーティングが含まれる。Ecosynthetix社のバイオラテックス組成物Ecosphere(登録商標)は、例えば、架橋デンプン粒子の水性ラテックスである。ラテックスは水性乳化重合によって製造してもよい。あるいは、バイオポリマーからラテックスを製造する場合のように、デンプンなどのバイオポリマー材料をせん断力下で可塑化し、適当な粒径にした後、架橋剤を添加して架橋してもよい。その後、バイオポリマー粒子を水分散液に加え、水性ラテックス又は粒子の懸濁液を形成してもよい。
【0067】
延性ベース層プレコーティング組成物は、一実施形態において、植物由来又はバイオベースのポリマーから作られ、そのようなポリマーの水性ラテックスの形態で適用され得る。
【0068】
延性ベース層プレコーティングは、スチレン-ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン-アクリレートコポリマー(SA)、他のアクリレートポリマー及びアクリレートコポリマー、例えばアクリルビニルコポリマー及び酢酸ビニルアクリレートコポリマー、並びにバイオベースポリマー材料の水性ラテックスからなる群から選択される固有の延性特性を有するポリマー材料を備える水性ラテックス組成物から作製されてもよい。
【0069】
さらなる実施形態において、延性ベース層プレコーティングは、変性デンプン及び架橋デンプンを含むデンプン誘導体、ポリイソプレン、リグニン系ポリマー、アルギン酸塩、ガム、及び大豆系タンパク質からなる群から選択される固有の延性特性を有するバイオベースポリマー材料を含む水性ラテックス組成物から作製されてもよい。
【0070】
さらなる実施形態では、延性ベース層プレコーティングは、架橋デンプン粒子を含む水性ラテックス組成物から作製されてもよい。
【0071】
ラテックス組成物は、例えば、カオリンクレー又は他の層状粘土化合物、シリカ粒子、タルカム粒子及び/又は炭酸カルシウム等の無機充填剤粒子を、乾燥含有量の1~80重量%、例えば1~70重量%、例えば1~50重量%、例えば1~40重量%、例えば30重量%、例えば1~20重量%さらに含んでもよい。粒子の含有は、延性をさらに支持し、同時に十分な柔軟性を提供し、プレコーティングの張力を減少させ、プレコーティング自体に亀裂を生じさせることなく、折り畳まれた際にプレコーティングが基材のセルロースベースの部分に追従し得る。
【0072】
ラテックス組成物は、代替的に、あるいは更に、ミクロフィブリル化セルロースなどの有機充填剤を含んでもよい。
【0073】
一実施形態において、延性ベース層プレコーティングは、4~45wt%、例えば4~35wt%、例えば4~25wt%、例えば4~20wt%、例えば4~16wt%の固有の延性特性を有するポリマーバインダー材料を備えてもよく、55~96wt%、例えば65~96wt%、例えば75~96wt%、例えば80~96wt%の充填剤、乾燥重量、及び任意に、増粘剤及び架橋化合物等のさらなる化合物を添加量で含む。このような添加量は、乾燥重量を基準として、延性ベース層プレコーティングの10wt%までしか含まれない。
【0074】
別の実施形態では、延性ベース層プレコーティングは、乾燥重量を基準として、10~20wt%の固有の延性特性を有するポリマーバインダー材料、75~85wt%の無機充填剤、3~5wt%のデンプン等の架橋化合物、及び1~2wt%の増粘剤を備えてもよい。
【0075】
充填剤は、ベントナイトクレー、カオリンクレー、タルカム、CaCO、及びシリカ粒子を含むナノクレーなどのクレーからなる群から選択される無機充填剤であってもよい。
【0076】
好ましくは、充填剤は、ベントナイトクレー又はカオリンクレーなどの無機層状化合物である。具体的に好適なこのような層状粘土鉱物は、ラポナイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、四ケイ素雲母ナトリウム、テニオライトナトリウム、コモンマイカ、マーガライト、バーミキュライト、フロゴパイト、キサントフィライトなどである。このようなナノクレー層状粒子の特定のタイプは、モンモリロナイト、例えばナトリウム交換モンモリロナイト(Na-MMT)の粒子である。
【0077】
このようにしてプレコートされたセルロース系基材の灰分含有量は、ISO 1762:2019によって決定されるように、15~25wt%、例えば15~23wt%であってもよい。同じ範囲の灰分が、ガスバリアコーティングされプレコーティングされたセルロース系基材、すなわち15~25wt%に適用される。
【0078】
延性ベース層プレコート組成物は、乾燥重量で2~15g/m、例えば5~15g/m、例えば8~15g/m、例えば10~15g/mの坪量で塗布してもよい。
【0079】
延性ベース層プレコーティングのポリマーは、そのベース層プレコーティングで被覆された紙基材に固有の延性を与えるために、-30~+30℃、例えば-30~+20℃のガラス転移温度を示すように選択してもよい。
【0080】
セルロース系基材は、その反対側に第2の延性コーティングをさらに有していてもよく、この第2の延性コーティングは、基材の第1の側の延性ベース層プレコーティングと同じ種類であってもよい。
【0081】
第2の延性コーティング組成物は、水性分散コーティングによって、乾燥重量で1~10g/m、例えば1~7g/m、例えば1~6g/m、例えば1~5g/m、例えば2~5g/mの量になるように塗布してもよい。特に好適なラテックス組成物は、ラテックスポリマー化学組成がスチレン-ブタジエン共重合体又はスチレン-アクリル共重合体であるものとして説明することができる。このようなラテックスポリマーは、任意の割合で水に混和性である。他の特に好適なラテックスポリマーは、アクリル酸n-ブチルとスチレンの共重合体のアニオン性水性分散体であってもよい。
【0082】
延性ベース層プレコーティングは、紙又はセルロース系基材の表面に直接、隣接してコーティングされるべきである。紙は、水分がラミネート包装材を通って外側に移動するのを許容し、延性のあるベース層プレコーティング材料もまた、このような水蒸気の移動を許容して、PVOHやEVOHなどの感湿性バリアコーティングの近くに水分が好ましくない形で閉じ込められるのを防ぐことができる。パッケージ内の液体食品から材料を通って移動する水分は、ラミネート包装材料の紙層及び板紙バルク層を介して、包装容器の外側に向かってゆっくりと輸送される。セルロース系基材と板紙バルク層は、バリアプレコーティングから湿度を「呼吸」し、ガスバリアコーティング内の含水率を時間とともに実質的に一定に保つことができる。
【0083】
延性ベース層プレコーティングは、セルロース系基材上にコーティングし、強制対流乾燥させた後、カレンダー処理してもよい。カレンダー処理により、延性ベース層プレコーティングと基材のセルロース表面とがさらに一体化され、表面の結合が改善されると同時に、延性ベース層プレコーティングの平滑な表面が形成される。カレンダー処理は、複数の高圧ローラ・ニップ及び少なくとも1つの熱ローラ・ニップ、例えば4つ以上の高圧ローラ・ニップを含むスーパーカレンダー処理であってもよく、そのような場合、プレコートされたセルロース系基材の密度は、少なくとも900kg/m、例えば1000kg/m以上、例えば1100kg/m以上となる。サーモ・ローラの温度は、100~300℃、例えば100~240℃の表面温度を提供してもよい。
【0084】
塗布される水性ラテックスコーティング中の固形分含量は、45~70wt%、例えば45~60wt%、例えば47~55wt%、例えば48~51wt%の範囲であってもよい。
【0085】
延性プレコート又はコーティング組成物の分散コーティングに最も適したタイプのシステムは、ブレードコーター又はロッドコーターであり、大量のコーティング組成物が紙に塗布され、余剰分は再び掻き落とされる。コーティング組成物は、アプリケーターによって基材上に塗布される。一般的なアプリケーターは、ジェットアプリケーター、ロールアプリケーター、ショートドエルタイムアプリケーター(SDTA)である。ロールアプリケーターの利点は、ロールアプリケーターにとって基材紙の形成不良が重要でないことであり、したがって厚いコーティングが望まれる場合に適している。過剰な量の塗膜を削り取るために使用されるブレードはスチール製で、寿命を延ばすためにセラミックチップを備えている場合もある。塗布された塗膜は、通常IRドライヤー、熱風ドライヤー、シリンダードライヤーなどの乾燥機を通過する。
【0086】
延性のあるプレコートされたセルロース系基材の坪量は、一実施形態では、40~80g/m、例えば40~75g/m、例えば40~70g/m、例えば40~65g/mであってもよい。
【0087】
延性のあるプレコートされたセルロース系基材の厚さは、35~70μm、例えば35~65μm、例えば40~60μm、例えば45~60μmであってもよい。
【0088】
延性のあるプレコートされたセルロース系基材の第一の上面は、非常に低い気孔率を示し得る。
【0089】
延性ベース層プレコーティングは、固形分が48~51wt%、ブルックフィールド粘度が100~1000mPa・s、pHが5.5~8である水性ラテックス組成物として塗布してもよい。
【0090】
延性ベース層プレコーティングはさらに、水性組成物として、乾燥重量で5~15g/m、ブレード又はロッドコーティングによって塗布してもよい。
【0091】
このようにして得られたプレコート及び乾燥されたセルロース系基材は、その後、少なくとも100kN、例えば少なくとも200kN、例えば300kN以上のカレンダーニップ圧で、100~300℃、例えば100~240℃、例えば150~240℃のサーモ・ローラ表面温度で、スーパーカレンダー処理されてもよい。延性ベース層プレコーティングを含むセルロース系基材は、試験方法ISO 5636-5:2013が適用可能な範囲の下限である100nm/(Pa・s)より低い透気度、さらに1nmより低い透気度値、例えば40~900pm/(Pa・s)となるようにカレンダー処理されてもよい。s)、例えば40~800pm/(Pa・s)、例えば100~700pm/(Pa・s)、例えば200~500pm/(Pa・s)である。高密度セルロース系基材の延性プレコートベース層によって得られる著しく緻密な表面は、その後に薄いガスバリア性コーティングで被覆した場合に、ガスバリア性の堅牢性の効果をこれまで以上に促進すると考えられる。
【0092】
延性のプレコートされたセルロース系基材は、SS-ISO 8791-2:2013に従って測定された、100ml/minベントセンよりも低い、例えば80ml/minベントセンよりも低い、例えば50ml/minベントセンよりも低い、例えば30ml/minベントセンよりも低い、例えば20ml/minベントセンよりも低い、第1の、上面の表面粗さを有してもよい。
【0093】
表面粗さの別の測定法として、TAPPI 555 om-15に従って測定されるパーカー印刷表面(PPS)粗さがあり、これはISO 8791-4と同じである。
【0094】
第1の上側の延性プレコートされたセルロース系基材表面のPPS粗さは、好ましくは3.0μm以下、例えば2.8μm以下、例えば2.5μm以下、例えば2.2μm以下、例えば2.0μm以下、例えば1.8μm以下であり、ガスバリアコーティング性能をさらに向上させるために、上記試験方法により決定される。
【0095】
延性ベース層プレコーティング及び少なくとも1つのガスバリアコーティングを含むセルロース系基材は、ISO 8791-44と同じであるTAPPI 555 om-15に従って測定された、3.0μm以下、2.8μm以下、2.5μm以下、2.2μm以下、2.0μm以下、1.8μm以下などのPPS表面粗さを有してもよい。
【0096】
延性プレコートセルロース系基材の密度は、900kg/mよりも高く、例えば1000kg/mよりも高く、例えば1100kg/mよりも高く、例えば1200kg/mよりも高くてもよい。プレコートされたセルロース系基材は、高密度と表面平滑性を得るために、好ましくはスーパーカレンダー処理などのカレンダー処理を施してもよい。
【0097】
表面粗さが低いほど、その後に塗布される隣接層やコーティングとの界面が完璧になり、コーティング層のピンホールや凹凸などの欠陥が少なくなる。その結果、コーティングや更なる層は、より高い品質で、あるいはより低い厚みで、あるいはその両方で塗布することができる。同じ膜厚のガスバリアコーティングであれば、コーティング自体により優れた酸素バリア性が得られる。
【0098】
延性ベース層プレコーティングを含むプレコーティングされたセルロース系基材は、ISO 534:2011に従って測定された、少なくとも950kg/m、例えば少なくとも1000kg/m、例えば少なくとも1100kg/mの密度と、35~75g/m、例えば40~75g/m、例えば45~70g/m、例えば45~65g/mの坪量を有してもよい。
【0099】
このようにコーティングされたセルロース系基材のカレンダー処理と連動して、延性のあるベース層プレコーティングを施すことで、プレコーティングされたセルロース系基材の延性が向上し、その結果、最終的なガスバリア性コーティング材料も延性が向上するため、ラミネート包装材料においてもガスバリア性が向上し、パッケージへの変換過程やパッケージの取り扱いや流通において、破損、ひび割れ、損傷に対する耐性が向上する。
【0100】
延性が高まることで、紙に亀裂が入りにくくなり、折り畳み作業時などに、より広い表面積に応力やひずみが再分配されるため、ガスバリアコーティングにも亀裂が入りにくくなる。
【0101】
本発明のバリアコーティングされたセルロース系基材に基本的なガスバリア性を与える少なくとも1つのガスバリアコーティングは、分散又は溶液コーティングによって適用されるガスバリア分散コーティング、及び/又は蒸着法によって適用されるバリア蒸着コーティングであり得る。
【0102】
ガスバリア性組成物の水性分散液又は溶液のコーティングによって適用されるガスバリア性コーティングは、固有のガスバリア特性を有し、リサイクル可能性に関しても、工業的コーティング及びラミネーションプロセスにおいても、食品安全性が高く、環境的に持続可能なポリマーから構成され得る。このようなポリマーは、水分散性及び/又は水に溶解可能であり、水性「分散コーティング」プロセス又はいわゆる「液体フィルムコーティング」プロセスによって適用されてもよい。アルコール又はアルコールと水の混合物をベースとするような、非水性又は部分的にのみ水性のコーティング組成物も、本発明の良好な結果を達成するのに適している。しかしながら、これらの組成物は、純粋な水性コーティング組成物よりも、環境維持の観点からは適さない可能性が高い。
【0103】
一実施形態において、バリア性分散コーティングは、ビニルアルコールポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVOH)及びエチレンビニルアルコール(EVOH)からなる群から選択されるポリマー、デンプン、デンプン誘導体、キシラン、キシラン誘導体、ナノフィブリルセルロース/ミクロフィブリルセルロース(NFC/MFC)、ナノ結晶セルロース(NCC)及びそれらの2種以上のブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む。
【0104】
さらなる実施形態では、バリア性分散コーティングは、乾燥重量で、0.2~6g/m、例えば0.5~5g/m、例えば0.5~4g/m、例えば0.5~3.5g/m、例えば1~3.5g/m、例えば1~3g/m、の総量で分散コーティング又は溶液コーティングによって適用される。
【0105】
グラビアロールコーティング、平滑ロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ブレードコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング法などである。本発明の実験は、平滑ローラーコーティングによって行ったが、平滑で均一なコーティング表面を有する均質な層を生成するのに寄与する、上記又は他の液体フィルムコーティング法のいずれかが、本発明のガスバリアコーティングを提供するのに適していると考えられる。
【0106】
より具体的な実施形態では、バリア性分散コーティング組成物は、ビニルアルコールモノマー、すなわちポリビニルアルコール(PVOH)及びエチレンビニルアルコール(EVOH)をベースとする、分散コーティングに適した2つの最も一般的なタイプのポリマー及びコポリマーをベースとする。
【0107】
ガスバリア性ポリマーは、PVOHであることが好ましい。なぜなら、PVOHは、良好なフィルム形成特性、ガスバリア性、コスト効率、食品適合性、臭気バリア性を提供するからである。
【0108】
PVOHベースのガスバリア性組成物は、PVOHのケン化度が少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%である場合に最も優れた性能を発揮するが、ケン化度の低いPVOHでも酸素バリア性を発揮する。
【0109】
一方、EVOHはエチレンモノマー単位からなるコポリマーであるため、バリア材料にある程度の耐湿性を与えることで有利になり得る。エチレンモノマー単位の量は、EVOHのグレードの選択によって異なるが、純粋なPVOHと比較して、その存在は、ある程度の酸素バリア性を犠牲にすることになる。従来のEVOHポリマーは、通常、押出成形用であり、3.5g/m以下の薄い液膜コーティングバリアフィルムを製造するために、水性媒体中に分散又は溶解することは不可能である。EVOHは、水分散性であるために、かなり多量のビニルアルコールモノマー単位を備え、PVOHの液状フィルムコーティンググレードにできるだけ近い特性であるべきだと考えられている。したがって、押出しコーティングされたEVOH層は、押出しコーティング用のEVOHグレードよりも本質的にPVOHとの類似性が低く、押出しコーティング又は押出しラミネーションによって単層として5g/m以下のコスト効率のよい量で塗布することができないため、液体フィルムコーティングされたEVOHの代替とはならない。
【0110】
ナノ結晶セルロース(NCC)はナノセルロースの一形態であるが、ミクロフィブリルセルロース(MFC)(CMF)やナノフィブリルセルロース(NFC)(CNF)とは異なる。
【0111】
MFC/NFCは、3~100nmの幅を有し、少なくとも1μm、例えば最大10μm、例えば最大100μmの長さを有する、より長い粒子、いわゆる「フィブリル」を含んでもよい。
【0112】
MFCとNFCはいずれもアスペクト比が50以上であるが、NCC/CNCは、例えばTAPPI規格案WI3021に従って、アスペクト比が50未満と定義され得る。
【0113】
「NCC」という用語は、3~100nmの幅を有し、100~3000nm等、1000nmを超えて100~3000nmの長さを有する、より短い粒子及び「棒状」粒子に使用される。組成物中のNCC粒子の大部分はこの寸法を有するべきであり、100~500nmの長さ、例えば100~200nmであってよく、3~100nmの小さな幅を有してもよい。
【0114】
バリア性分散コーティング組成物は、乾燥コーティング重量を基準にして約1~約20重量%の無機層状化合物、例えばベントナイト等の剥離ナノクレー粒子をさらに含んでもよい。したがって、バリア層は、乾燥コーティング重量を基準として約99~約80重量%のポリマーを含んでもよい。分散安定剤、消泡剤などの添加剤も、ガスバリア性組成物中に、好ましくは乾燥コーティングを基準として約1重量%以下の量で含んでもよい。組成物の全乾燥含量は、好ましくは5~20重量%、例えば7~15重量%である。
【0115】
バリアプレコーティング組成物中のさらに可能な添加剤は、PVOHコーティングの水蒸気及び酸素バリア特性を改善するために、官能性カルボン酸基を有するポリマー又は化合物であってもよい。好適には、官能性カルボン酸基を有するそのようなポリマーは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)及びエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)又はそれらの混合物の中から選択される。一実施形態において、このようなバリア層混合物は、本質的にPVOH、EAA及び無機ラミナー化合物を備えてもよい。EAAコポリマーは、乾燥コーティング重量を基準として、約1~20重量%の量でバリア層に含まれてもよい。
【0116】
乾燥温度を上げると、PVOHとEAAがエステル化反応し、PVOHが疎水性のEAAポリマー鎖によって架橋され、PVOHの構造に組み込まれることで、酸素バリア性及び水バリア性がさらに向上すると考えられる。架橋は、多価化合物、例えば金属酸化物のような金属化合物の存在によって誘導することもできる。しかし、このような混合物は、添加剤のコストがかかるためより高価であり、リサイクル性の観点からも好ましくない。
【0117】
したがって、純粋なPVOH又はEVOH組成物からなるバリア性分散コーティングを使用することがより好ましいが、上記のようなさらなる添加剤を含むバリア性分散コーティングでも、有利なガスバリア性の結果を得られる。
【0118】
したがって、バリア分散コーティングは、0.2~5g/m、例えば0.2~4g/m、より好ましくは0.5~4g/m、例えば0.5~3.5g/m、例えば1~3g/mの乾燥重量の総量で塗布してもよい。0.2g/m以下では、ガスバリア性は全く得られない。一方、3.5g/mを超えると、一般にバリア性ポリマーのコストが高く、液体を蒸発させるためのエネルギーコストが高いため、コーティングは包装用ラミネートにコスト効率をもたらさない可能性がある。PVOHは、0.5g/m 以上で、認識できるレベルの酸素バリア性を達成し、0.5~3.5g/mの間で、バリア性とコストの良好なバランスが通常達成される。
【0119】
一実施形態において、バリア性分散コーティングは、部分層として、中間乾燥を伴う2つ又はさらには3つの連続するステップで塗布してもよい。2つの部分層又は「部分コーティング」として塗布する場合、各層は、好適には、0.2~2.5g/m、好ましくは0.5~1.5g/mの量で塗布してもよく、より少ない量の液体ガスバリア組成物から、より高品質の総層が得られる。より好ましくは、2つの部分層は、それぞれ0.5~1.5g/mの量で塗布されてもよい。
【0120】
本発明の予想外の改良のために、バリア性分散コーティングは、紙又はセルロース系基材上に直接コーティングされるのではなく、ガスバリア性コーティングの塗布のための基材表面を準備するために、ガスバリア性材料組成物とは異なるポリマー及び材料組成物の第1の延性ベース層プレコーティングが先行しなければならない。水性延性ベース層プレコーティング組成物の特殊な特性は、さらなるガスバリアコーティングのための緻密で均一なベース層上面と、その後の例えばポリビニルアルコール系ガスバリアコーティングのための相溶性接着化学及び濡れ性を促進すると考えられている。しかし、主な改善効果は、第1の延性ベース層プレコーティングが、ラミネート包装材料に使用される場合、折り畳まれ乱用される際に、バリアコーティングされたセルロース系基材の応力や歪みを吸収する能力を有することである。
【0121】
別の実施形態によれば、ベース層のプレコートされたセルロース系基材は、代替的に又は追加的に、その第1のプレコートされた側の表面に、金属、金属酸化物、無機酸化物、及び非晶質結合層ヤモンドライクカーボンコーティングから選択されるガスバリア材料の蒸着コーティングを備えてもよい。蒸着コーティングは、物理的蒸着法(PVD)又は化学的蒸着法(CVD)、例えばプラズマCVD法(PECVD)によって施すことができる。より具体的には、アルミニウム金属化コーティング及び酸化アルミニウム(AlOx)からなる群から選択してもよい。好ましくは、アルミニウム蒸着コーティングである。
【0122】
さらなる実施形態では、バリアコーティングされたセルロース系基材は、その第1の上側表面に、水性ガスバリア組成物の分散液又は溶液のコーティングとその後の乾燥によって形成されたガスバリア材料の第1のコーティングと、第1のバリア分散コーティング上に塗布された、金属、金属酸化物、無機酸化物及び非晶質結合層ヤモンドライクカーボンから選択されるようなガスバリア材料の蒸着コーティングとを有する。
【0123】
バリアコーティングされたセルロース系基材は、その上側表面に蒸着コーティングによってガスバリア材料で2~80nm、例えば2~50nm、例えば2~45nmの厚さにコーティングしてもよい。
【0124】
セルロース系基材の上面側に最終的にコーティングされる蒸着バリアコーティングは、物理的蒸着法(PVD)又は化学的蒸着法(CVD)、例えば、プラズマCVD法(PECVD)によって施される。
【0125】
一般に、5nm以下ではバリア性が低すぎて有用でない場合があり、200nm以上、例えば100nm以上、例えば50nm以上では、蒸着コーティングの種類にもよるが、バリアコーティングの柔軟性が低くなり、その結果、柔軟な基材に塗布したときに割れやすくなり、コストも高くなる。
【0126】
蒸着コーティングの他の例としては、酸化アルミニウム(AlOx、Al)や酸化ケイ素(SiOx)コーティングがある。一般的に、このような酸化物のPVDコーティングは脆く、ラミネーションによる包装材料への組み込みには適していないが、例外として金属化層はPVDで作られているにもかかわらず、ラミネーション材料に適した機械的特性を有している。
【0127】
通常、アルミニウムの金属化層は、使用される金属化コーティングプロセスの性質上、本質的に酸化アルミニウムを含む薄い表面部分を有する。
【0128】
一実施形態では、このようなアルミニウム蒸着層は、光学濃度(OD)が1.8~2.5、好ましくは1.9~2.2になるように塗布されている。光学密度が1.8より低い場合、金属化フィルムのバリア性が低すぎる場合がある。一方、2.5を超えると、金属化層が脆くなる可能性があり、また、基材フィルムを長時間にわたって金属化する際に熱負荷が高くなるため、金属化プロセス中の耐熱性が低くなる。その結果、コーティングの品質や密着性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0129】
他のコーティングは、多かれ少なかれ酸化的な環境下で基材上に化合物の蒸気を蒸着させるプラズマCVD法(PECVD)により塗布してもよい。例えば、酸化ケイ素コーティング(SiOx)は、PECVDプロセスによって適用されてもよく、特定のコーティング条件とガスレシピの下で非常に優れたバリア特性を得られ得る。
【0130】
DLCは、結合層ヤモンドの典型的な特性の一部を示す非晶質炭素材料(結合層ヤモンドライクカーボン)の一種を定義する。好ましくは、アセチレン又はメタンなどの炭化水素ガスが、PECVD真空プロセスによって適用される非晶質水素化炭素バリア層のコーティング、すなわちDLCを生成するためのプラズマ内のプロセスガスとして使用される。真空下でPECVDにより塗布されたDLCコーティングは、ラミネート包装材料中の隣接するポリマー層又は接着剤層に対して良好な接着性を提供する。特に、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリエチレンをベースのコポリマーは、隣接するポリマー層との良好な接着性が得られる。
【0131】
少なくとも1つのガスバリアコーティングは、延性ベース層プレコーティング上に分散コーティング又は溶液コーティングによって最初に塗布されるバリア分散コーティングと、バリア分散コーティング上に蒸着法によって続いて塗布されるバリア蒸着コーティングとを備えてもよい。
【0132】
バリアコーティングされたセルロース系基材をさらに提供してもよく、この基材は、基材の裏面にも塗布された延性ベース層コーティングをさらに含む。セルロース系基材の他方の面にこのような延性のあるコーティングをさらに施すことにより、バリアコーティングされたセルロース系基材からなるラミネート包装材料のさらなる酷使や折り畳み成形時に最適な性能が確保され、最終的に成形され充填された包装容器のより優れた酸素バリア性が得られる。
【0133】
したがって、基板の裏面は、任意選択的に、上記の実施形態のいずれかで定義されるような少なくとも1つのガスバリア材料の少なくとも1つのガスバリアコーティングでさらに被覆してもよい。
【0134】
上記の方法で得られたガスバリア性被覆セルロース系基材は、ラミネート包装材料にラミネートした後、さらにこのようなラミネート材料を折り畳んでパッケージに封入する作業を行った後でも、優れた低OCTR及び低WVTRを提供する。
【0135】
酸素に敏感な製品を包装するためのカートンをベースとするラミネート包装材料は、紙又は板紙のバルク層と、最外層の第1の液密材料層と、最内層の第2の液密材料層と、紙又は板紙のバルク層の内側に、包装材料から作られた包装容器の内側に向かって、バルク層と最内の第2の液密材料層との間に配置された、本発明のバリアコーティングされたセルロース系基材とを備えてもよい。
【0136】
本発明に使用するための紙又は板紙バルク層は、通常、約100μm~約600μmまでの厚さ、及び約100~500g/m、好ましくは約200~300g/mの表面重量である、適切な包装品質の従来の紙又は板紙を有してもよい。
【0137】
液体食品を低コストで無菌的に長期包装するためには、より薄い紙コア層を有する、より薄い包装用ラミネートを使用してもよい。このような包装用ラミネートから作られる包装容器は、折り畳み式ではなく、ピロー状のフレキシブルパウチ包装に類似する。このようなパウチ包装に適した紙は、通常、表面重量が約50~約140g/m、好ましくは約70~約120g/m、より好ましくは約70~約110g/mである。本発明におけるバリアコーティング基材は、それ自体がラミネート材料にある程度の安定性で寄与する可能性があるため、「バルク」層に相当する紙層はさらに薄くてもよく、サンドイッチ相互作用でバリアセルロース系基材と相互作用して、やはり所望の機械的特性を完全に有するラミネート包装材料を製造することができる。
【0138】
バリアコーティングされた紙又はセルロース系基材は、中間接着剤、又は熱可塑性ポリマー結合層によってバルク層に結合させることができ、それによってバリアコーティングされた紙のコーティングされていない表面をバルク層に結合させる。一実施形態において、接着層は、ポリオレフィン層、特に、エチレンモノマー単位を大部分に含むようなポリオレフィンコポリマー又はブレンドの層などであってもよい。結合層は、溶融した結合ポリマーを層としてウェブの間に溶融押出ラミネートし、同時に冷却下でラミネーション・ローラ・ニップを通して前進させながら、3つの層を同時に押圧することにより、バルク層をバリアコーティングされたセルロース系基材に結合することができ、したがって、押出ラミネーションによりラミネート構造を提供することができる。溶融押し出しラミネーションには、2つの冷たい面を結合させるのに十分な量の溶融ポリマー(この場合、典型的には低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン)が必要である。十分な量は、典型的には12~20g/m、場合によっては12~15g/mである。
【0139】
代替の実施形態によれば、例えばバルク層又はコア層とバリアコーティングされたセルロース系基材との間、又は最内側の液密でヒートシール可能な層とバリアコーティングされた紙基材との間などの、積層材料の内部における適切な接着層又は結合層は、いわゆる接着性熱可塑性ポリマー、例えば、主にLDPE又はLLDPE共重合体をベースとする変性ポリオレフィン、又はカルボキシル官能基又はグリシジル官能基などの官能基含有モノマー単位を有するグラフト共重合体、例えば、(メタ)アクリル酸モノマー又は無水マレイン酸モノマー(すなわち、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)又はエチレンメタクリル酸共重合体(MAH))であってもよい。例えば、(メタ)アクリル酸モノマー又は無水マレイン酸(MAH)モノマー(すなわち、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)又はエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA))、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー(EG(M)A)又はMAH-グラフトポリエチレン(MAH-g-PE)である。このような変性ポリマー又は接着性ポリマーの別の例は、いわゆるアイオノマー又はアイオノマーポリマーである。好ましくは、変性ポリオレフィンは、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)又はエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)である。
【0140】
他の実施形態において、バリアコーティングされたセルロース系基材は、接着性ポリマーバインダーを含む接着剤組成物の水性分散液を、ラミネートされるウェブの一方の表面に湿式塗布し、ラミネーション・ローラ・ニップを通して2つの紙ウェブを前進させながら一緒に押圧することにより、バルク層に接着させることができ、その結果、湿式ラミネーションによりラミネート構造が提供される。水性接着剤組成物の水分は、2つの紙層の繊維状セルロースネットワークに吸収され、その後のラミネートステップで、時間と共に部分的に蒸発する。したがって、強制乾燥ステップは必要ない。バリアコーティングされたセルロース系基材は、0.5~6g/m 、例えば1~5g/m、例えば1~5g/m 、乾燥重量で、アクリルポリマー及びコポリマー、デンプン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、セルロースからなる群から選択されるバインダーを含む、相互隣接接着組成物をバルク層に積層することができる、デンプン誘導体、セルロース誘導体、酢酸ビニルのポリマー及びコポリマー、ビニルアルコールのポリマー及びコポリマー、スチレン-アクリルラテックス又はスチレン-ブタジエンラテックスのコポリマー、又は粘着性バイオラテックスからなる群から選択されるバインダーを含む。可能な限り環境と持続可能性を考慮すると、植物や非化石由来の粘着バインダーが好ましい。
【0141】
このような低量の隣接接着組成物は、ポリマーバインダーの水性分散液又は溶液コーティングによってのみ適用可能であり、溶融層押出ステップの性質上、単層ポリマー溶融物の押出コーティング又は押出ラミネーションによって適用することはできない。接着される層の表面はいずれもセルロースからできているので、このようなウェットラミネーションは、それぞれのセルロース層への水性媒体の吸収によって行われ、その結果、2つの層の界面に薄く乾燥した接着層を形成できる。
【0142】
最外層及び最内層の液密層に適した材料は、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーなどのポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状LDPE(LLDPE)、メタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)及びこれらのブレンド又はコポリマーからなる群から選択されるポリエチレンである。このような熱可塑性ポリマーは、同一又は類似のポリマーや熱可塑性挙動を有する他の材料と容易に溶着可能、すなわちヒートシール可能であるという利点も有する。一実施形態によれば、最も外側のヒートシール可能で液密な層はLDPEであってもよく、最も内側のヒートシール可能で液密な層は、最適なラミネーションとヒートシール特性を得るために、m-LLDPEとLDPEのブレンド組成物であってもよい。
【0143】
しかしながら、最外層は、液体や汚れに対して単に保護するだけでよく、開封装置などの別の表面や物品に対する外面のシールは、追加の接着剤やホットメルトによって行われることが考えられる。シールの強度や気密性に関する要求が低い製品のパッケージの場合、これは最内層の第2層に関しても有効である。液体、半液体、粘性流動製品及び湿潤食品のパッケージの場合、包装容器の品質は、取り扱い及び流通のあらゆる状況下で充填された製品を運ぶことができる強固で気密性の高いパッケージを製造するために、最内層の第2層がヒートシール可能であることに大きく依存する。
【0144】
最外層及び最内層に関して列挙したのと同じ熱可塑性材料、例えばポリオレフィン、特にポリエチレン系材料は、ラミネート材料の内部、すなわち紙又は板紙などのバルク層又はコア層とバリアコーティングされたセルロース基材との間の接着層にも適している場合がある。したがって、一実施形態において、熱可塑性接着層は、低密度ポリエチレン(LDPE)層などのポリエチレン層であってもよい。
【0145】
さらなる実施形態において、第2の最も内側の液密でヒートシール可能なポリオレフィン層は、包装材料の機械的特性の堅牢性を向上させるために、上述したように、同一又は類似のポリオレフィンからなる予め製造されたフィルムとしてもよい。フィルムブロー及びフィルムキャスト操作における製造ステップ、及び任意に続くフィルム配向操作ステップにより、このようなフィルムのポリマーは、単に(共)押出コーティングされたポリオレフィン層から可能なものとは異なる特性を獲得する。したがって、このような予め製造されたポリマーフィルムは、ラミネート包装材料の機械的堅牢性、機械的強度、包装の完全性、及びラミネート包装材料から成形され充填された包装容器のバリア特性の損失のさらなる低減に寄与し得る。
【0146】
ラミネート包装材料は、ラミネート包装材料の機械的特性の堅牢性を向上させるために、バリアコーティングされたセルロース系基材と第2の最内層液密材料層との間に、予め製造されたポリマーフィルムをラミネートしてもよい。予め製造されたフィルムは、製造されるポリマーの配向度が高く、したがって、同じポリマー又は対応するポリマーの単なる押出コーティング層又は押出ラミネート層とは異なる機械的特性を有する。したがって、このようなフィルムを構造体に組み込むことで、ラミネートされた材料は全体として強度が増し、材料の下流での強靭な処理に対する耐性が向上する可能性がある。このような予め製造されたフィルムは、材料の調達の観点からも、ラミネート加工の観点からもコストを増加させるため、材料に使用することを避けることが好ましい。予め製造されたフィルムは、異なる機械的特性を有する場合があり、単なる押出キャストフィルムによって得られる二軸配向した強靭なフィルムから、フィルムブローによって製造され、そのステップで生じる固有のポリマー配向、又はその後の付加的な配向を伴うフィルムに及ぶ場合がある。しかしながら、単に押出コーティング又は押出ラミネートしたポリマー材料を使用することが望ましい。
【0147】
液密でヒートシール可能な材料の第2の最内層は、ポリオレフィン、好ましくは低密度ポリエチレン、LDPE、及びメタロセン触媒(シングルサイト触媒又は拘束幾何学触媒を使用した)直鎖状低密度ポリエチレンm-LLDPEのブレンドであってもよい。このタイプのポリマーは、液密性とヒートシール性のバランスが最もよく、ヒートシール包装容器の包装品位を可能な限り高めることができるため、現在、最内層に最も使用されている。この層の組成を注意深く選択することで、この層のポリマーの量を可能な限り少なく最適化することができる。
【0148】
他の実施形態において、液密でヒートシール可能な材料の第2の最内層は、予め製造されたポリマーフィルムであってもよく、又は含んでもよく、このフィルムは、ヒートシール可能な熱可塑性ポリマー材料と、任意選択で、ラミネート包装材料の機械的特性の改善された堅牢性を提供するための材料のさらなる層とを備えてもよい。
【0149】
先に挙げた実施形態のいずれか1つの目的は、単にバリアコーティングされたセルロース系基材をそのままラミネート構造のガスバリア材料として使用する場合、又は塗布されたコーティングが一部のガスバリア特性のみを提供する場合、又はコーティングが感湿性ガスバリア材料のみを有する場合に、ラミネート包装材料に相補的な特性を付加することである。バリアコーティングされたセルロース系基材を、さらに耐湿性又は水蒸気バリア性を付加しうるポリマーフィルムにラミネートすることにより、少なくとも2つの異なるバリア材料が相互作用して、ラミネート構造全体にさらに強化されたトータルバリア性を提供することができる。少なくとも水蒸気に対するバリア特性を付加する、このような予め製造されたフィルムの典型的な例としては、金属化フィルムや、フレーク状の鉱物フィラーやその他の小粒子のような充填剤を含むポリマーフィルムが挙げられ、これらはラミネート構造体を通る水蒸気の拡散を遅らせるのに役立つ。バリアコーティングされたセルロース系基材とさらなるバリアフィルムとの間に必要な結合層は、隣接する結合層が積層構造における「クッション」及びさらなる「ガス又は蒸気の移動界面」として機能するため、このようなバリア特性の向上を保証することができる。
【0150】
最外層と最内層の液密層、及びラミネート構造内部のラミネート層は、通常、移動する気体分子や低分子に対して高いバリア性を本質的に付与するものではない。その目的は、液体状の水がセルロース系バルク材や他の紙層に浸透するのを直接バリアすることである。液体バリア層はまた、セルロースが濡れる程度に水蒸気がセルロースに移動するのを防ぐが、ラミネート構造の含水量をゼロまたは「乾燥した」紙の低レベル(周囲温度、つまり 23℃、相対湿度50%(RH)の環境では約7~8%)に保つことはできない。液体が充填された包装容器のラミネートカートン素材の水分含量は通常かなり高く、アルミニウム箔、蒸着金属化層、その他の蒸着コーティング、無機材料層又は他のポリマー材料層等、さらなる水蒸気バリアが含まれていない限り、素材を介した移行が発生する。
【0151】
上記のいずれかの実施形態によるラミネート包装材料は、ラミネート構造内の隣接層間の良好な接着性、及びバリアコーティングと延性ベース層のプレコーティングの各々及び組み合わせの良好な品質を提供することにより、充填した包装容器に変形したときに良好な完全性を提供することができる。特に、液体や湿潤食品のパッケージには、酸素ガスバリア性と同様に、ラミネート包装材料内の層間接着性が湿潤包装条件下でも維持されることが重要である。
【0152】
上記に記載されたラミネート包装材料から形成された包装容器は、部分的に密封し、液体又は半液体食品を充填し、その後、包装材料をそれ自体に、任意で包装のプラスチック製開口部又は上部と組み合わせて密封し得る。
【0153】
結論として、長期保存可能な液体食品包装用の堅牢で信頼性の高いパッケージは、本発明によって定義されるバリアコーティングされたセルロース系基材及びそれを含むラミネート包装材料によって得られる。包装材料を折りたたむ間もバリア特性が維持される限り、バリア特性はすべて向上する。ラミネート包装材料構造は、バリアコート基材とラミネート材料の他の層との間の良好な接着に関しても、バリアコート基材自体からのガスバリア特性への改善された寄与に関しても、折り畳み成形されたパッケージへの成形に対してより良好に機能する。後者は、バリアコートされたセルロース系基材の延性ベース層プレコートのおかげで、柔軟性が向上し、応力や変形に対する耐性が向上したためと考えられる。延性のあるプレコーティングは、バリアコーティングと最内層の液密層がひずんでクラックが入るのを防ぐことができる。おそらく、延性プレコーティングは、セルロース系基材、バリアコーティング、最内層の液密層における高い局所応力とひずみを、折り畳み時に再分配しているのだろう。そのため、ひずみレベルは小さくなり、より広い範囲に分散される。
【0154】
好ましい実施形態の例及び説明
以下に、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0155】
図1a】本発明によって使用されるバリアコーティングされたセルロース系基材の実施形態を概略的に示す断面図である。
図1b】本発明によるバリアコーティングされたセルロース系基材の実施形態を概略的に示す断面図である。
図2a図1aのバリアコーティングされたセルロース系基材を含む、本発明によるラミネート包装材の一例の概略断面図である。
図2b図1bのバリアコーティングされたセルロース系基材を含むラミネート包装材の概略断面図である。
図3a】セルロース系基材上にベース層又はバリア性プレコート組成物を分散コーティングする方法を模式的に示している。
図3b】本発明の包装用ラミネートの最内層と最外層を形成するために、熱可塑性ヒートシール性ポリマーと液密ポリマーの層を基板上に溶融(共)押出しコーティングする方法を概略的に示している。
図4a】固体金属蒸発片を使用して基材フィルムに物理蒸着(PVD)コーティングを行うプラントの斜視図である。
図4b】マグネトロンプラズマによって紙基材又はフィルムにプラズマCVD(PECVD)コーティングを行うプラントの概略図である。
図5a】本発明のラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な例を示している。
図5b】本発明のラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な例を示している。
図5c】本発明のラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な例を示している。
図5d】本発明のラミネート包装材料から製造された包装容器の典型的な例を示している。
図6】包装容器が、包装用ラミネートから連続的なロール供給、成形、充填、シールステップで製造される原理を示している。
図7】異なる紙基材の酸素透過率に及ぼす表面粗さの影響を示す図である。
図8】延性ベース層でプレコートされたセルロース系基材の一実施形態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0156】
実施例
実施例1
本発明に最適なセルロース系基材を提供するため、実験室規模で紙の特性評価を行った。
【0157】
以下の表1は、最適な紙基材を選択するために使用した主な特性を示している。空隙率(ガーレー(Gurley)空気抵抗で表される)、機械抵抗(伸びとTEA-引張エネルギー吸収で表される)、表面平滑性(ベントセン(Bendtsen)とPPS粗さ値で表される)の特性について、いくつかの紙構造を試験した。紙の空隙率は、Tappi T460 om-02で測定される単位s/(100ml)の空気抵抗として、又はISO 5036-5:2013で測定される単位μm/(Pa・s)の空気透過率として測定することができる。空隙率が非常に低い紙の場合、単位μm/(Pa・s)、nm/(Pa・s)、又はpm/(Pa・s)の通気度は、SCAN-P 26:78によって決定される。
【0158】
試験された紙の中で、空隙率が最も低く、ガーレー空気抵抗の値が最も高く、値が高すぎて装置で検出できないことがあった構造は、紙1、紙2、紙11であった。
【0159】
(表1) 気孔率、機械抵抗、表面粗さの異なる評価済み紙基材
【0160】
【表1】
【0161】
(*) 数値が高く、装置の検出限界を超えた特性。GPPはグリースプルーフ紙、CPはプレコート紙、NCはノンコート紙を意味する。
【0162】
評価された紙の特性の最も適切な組み合わせは、上記の表1のKに記載されている組み合わせであることが判明した。この構造がガスバリア用途に最も適していることを確認するため、ベース層プレコートとガスバリアコート配合物を塗布し、選択した紙ベースで達成された酸素透過レベルを検証した。延性ベース層プレコーティングとバリアコーティングは、紙のフェルト面、すなわち上面に塗布した。
【0163】
コート紙について実施した分析の概要を表2に示す。プレコート紙の表面粗さはPPSで評価した。紙の粗さに対するベース層プレコートの効果は、コート紙について測定した粗さの変化(単位:%)を、非コート紙について測定した粗さと比較したものである。
【0164】
紙基材(A、B、F、G、K)はさらに、ナノ結晶セルロース、NCC、ガスバリア溶液(合計湿潤厚さ~25μm)の1層又は2層でコーティングした。コーティング重量、粗さ、耐油性(kit oil)、耐グリース性及び酸素バリア性を評価した。これらのバリアコーティング特性の評価により、原紙シートの種類とその初期粗さが、さらなるガスバリアコーティング性能に及ぼす影響が示された。
【0165】
耐油性は、Tappi T559 pm96規格(KITテスト)に従って評価した。この試験では、有機溶剤混合物をコート紙の表面に滴下し、その後、有機溶剤がバリア層を透過して紙に吸収されたかどうかを検査する。この評価では、7~12等級のKITテスト混合物を使用した。
【0166】
表2の酸素バリア特性は、ASTM D3985及びF1927-50規格に従い、MOCONセンサ装置、Ox-Tranモデル2/22を用いて評価した。測定は23℃、相対湿度70%、1気圧、すなわち酸素100%の条件下で行った。初期表面粗さが高い紙については、2層のコーティングを施した後にOTRを測定した(1層では良好なバリアが形成されないため)。表面粗さが低い紙については、コーティング層1層で評価した(良好なバリア形成のため)。
【0167】
(表2)バリア用途に選択したコート紙について実施した分析の概要
【0168】
【表2】
【0169】
バリアコート紙の酸素透過率に及ぼす粗さの影響を図7に示す。
【0170】
表2に示すように、また観察されたように、基紙の表面粗さは、コーティング後の最終的なバリア性能に大きな影響を与える。まず、原紙の表面粗さが高いほど、塗布するガスバリアコーティングの重量が大きくなる。これは、表面粗さが比較的高く、その結果高いガスバリアコーティング重量を必要とした紙AとBに見られる。また、A紙とB紙で観察されたように、通常3μm(PPS)を超える高い粗さの測定値を持つ紙では、NCCコーティングバリア溶液は紙の粗さを減少させた。表面粗さの低い紙では、粗さのわずかな増加が見られるが、μm単位で見ると、粗さは非常に低いままである。
【0171】
次に、表2及び図7からわかるように、原紙の粗さ(通常<3μm)が低いほど、バリア塗布後のバリア性能は向上する。GやKのような粗さの低い紙構造では、たった1層の塗工で優れた酸素バリア性とグリースバリア性が得られることがわかるが、AやBの紙では、塗工量は多いものの、酸素バリア性は不十分であった。このことは、バリア性能が改善されただけでなく、バリア形成に必要な層数も減少したことを示唆している。紙の耐グリース性を試験した結果、すべての紙が優れたグリースバリア性を示した(KIT
12)。さらに、紙Fを除くすべての紙が、紙に折り目をつけた後でも耐グリース性を示した。紙の粗さは、酸素バリアに比べ、グリースバリアに与える影響が小さい。
【0172】
紙Fの性能は、試験した他の紙とは異なっていた。低粗度では、酸素透過性と耐グリース性の点で不十分なバリア性能を示した。低い表面粗さと低い空隙率を併せ持ち、良好な酸素バリア性を発揮する紙Kの特性から、バリア性能に影響を与えるのは粗さだけでなく、紙の組成、すなわち空隙率や表面の組成も影響すると結論づけることができる。
【0173】
紙の表面粗さは、塗布層数、塗布重量、バリア性能など、コーティングバリア層の効果に影響する非常に重要なパラメーターである。層でコーティングし、良好なバリア性能を得るためには、PPS粗さが3μm以下であることが必要である。表面粗さだけが重要なパラメーターではなく、紙の組成や抵抗特性も性能に影響する。
【0174】
したがって、上記のすべての紙基材構造を調査及び評価し、紙の空気抵抗、すなわち空隙率、表面粗さ特性、及び紙に塗布した後のバリアテストでの紙の性能の組み合わせを考慮した結果、Kと名付けられた紙構造が、スケールアップ研究を継続し、バリア性能を検証するための概念実証を設計するのに最適な構造であるとして選択された。
【0175】
紙Kはプレコートとスーパーカレンダー加工が施され、1100kg/mを超える密度を持ち、針葉樹クラフトパルプ100%から製造される。
【0176】
実施例2
プレコートされた高密度紙Kは、両面にプレコートされ、坪量は55g/m、その内容物はすべて再パルプ化が可能である。図8は、上面にコーティングされたガスバリア性コーティングの性能を確保するために最適な組み合わせであると判断されたプレコートされた薄紙Kの構造を表している。図8に示す構造では、紙の上面だけでなく下面の表面にも延性コーティングが施されているが、これについては後述する。これらの延性ベース層コーティングは、期待される酸素バリア性能を達成するために、低い空隙率と粗さの最適な組み合わせを可能にする。延性ベース層プレコーティングは、紙の繊維の上に直接塗布される。紙の上面(又はフェルト面)の最も重い層(図8のB)の上に直接、後のステップでガスバリアコーティングを塗布する。
【0177】
図8でAとして表される繊維組成物は、セルロースパルプ繊維のみから形成されている。これらの繊維は漂白クラフト針葉樹繊維から作られており、30~50g/m2の坪量を有し得る。コート紙の坪量は、40~65g/mとなる。紙Kの原紙は、35g/mの非コーティングの坪量、55g/mの延性のあるプレコーティングの坪量を有する。
【0178】
このようにして、繊維状組成物Aの上面及び下面を、延性分散組成物の水性プレコーティングで被覆した。これらのコーティングは、5.5~8のpH、48~51%の固形分含有量、100~1000mPa・sのブルックフィールド粘度を有し、一方、コーティングされた材料は、-30~0及び0~30℃の範囲のTgを示し、化学組成の観点から、スチレン-ブタジエンバインダーコポリマー、いわゆるSB-ラテックス、及びカオリンクレーフィラーの水性分散液として記載され得る。使用されたプレコーティング組成物は、約15wt%のSB-ラテックス、約80wt%のカオリン充填剤、約4wt%の架橋デンプン化合物、及び2wt%未満の増粘剤などのさらなる添加剤を備える。
【0179】
図8に示されるように、紙の上面に塗布されるコーティング層Bは、単層で塗布される5~15g/m、例えば10~15g/mの重量を有し得る。紙の下面/裏面に塗布されるCに例示されるコーティング組成物は、単層で塗布される1~10g/m2の坪量を有し、また、スチレン-ブタジエン共重合体とカオリンとを含む水性分散液から得られる。従って、A、B及びCのセットで示されるようなコート紙は、40~65g/mの最終の坪量を有し得る。
【0180】
このようにして、層A、B及びCを有する、図8に示されるようなプレコート紙Kは、55g/mの坪量及び、試験方法の適用範囲の下限であるISO 5636-5:2013によって決定される100nm/(Pa・s)よりも低い最終空隙率、及びSCAN-P 26:78によって決定される1nmよりもさらに低い最終空隙率を有していた。プレコート紙は、上面のPPS粗さが2μm以下、すなわち約1.8μmであった。(表2)の最終的なNCCガスバリアコート紙Kは、約2.8のフェルト側表面粗さを示した。したがって、本発明のプレコート紙及びバリアコート紙は、3μmより低い、例えば0.5~3μmのPPS表面粗さを有し得る。
【0181】
実施例3
使用したプレコートセルロース系基材の機械的耐性特性を調査し、バリアコート基材の最終的な塗布に対するプレコート紙組成物の各層の重要性と寄与を実証した。
【0182】
基材の亀裂の核生成と伝播による材料破壊は、バリアコーティング層に開口部と不連続性を生じさせ、最終的なパッケージバリアを破壊する。基材が破損する前に受ける伸びが大きければ大きいほど、パッケージ成形時の曲げなどの様々な荷重に対する基材の弾力性が高まる。より柔軟になることで、延性のある材料でプレコートし、その後乾燥とカレンダー処理を行った後の構造体は、プレコートされた紙の構造体がより効果的に曲げやその表面の破断の開始に抵抗できるようになる。
【0183】
カレンダー処理後のセルロース繊維と上面及び裏面コーティングを含む構造体の剛性が低下するというこの挙動は、表3及び表4に示すように、紙のMD及びCDの両方向におけるヤング率の低下で説明することができる。ヤング率の低下は、材料構造全体の剛性が低下することを意味し、これによって材料はより柔軟性を得ることができ、その結果、より弾力性が増し、折り目や折り畳み加工に耐えるようになる。
【0184】
可撓性又は延性のあるベース層を繊維質層にプレコートすることで、最終的な材料の延性を向上させることができ、その結果、パッケージの変換プロセスにおいて、破損、亀裂、損傷に対してより耐性のある材料となる。
【0185】
(表3) 図7(すなわちA B F G K)に記載した各プレコート紙層材料の応力×ひずみ曲線について得られた値の平均値、及び紙のMD方向における各材料の最終延性に対する各コーティング層の影響
【0186】
【表3】
【0187】
(表4) 図7(すなわちA B F G K)の各プレコート紙層材料の応力×ひずみ曲線について得られた値の平均値、及び紙のCD方向における材料の最終延性に対する各コーティング層の影響
【0188】
【表4】
【0189】
ここで評価したプレコート紙と非コート紙の機械的抵抗特性は、実験室でのバリア用途の試験結果と合わせると、達成された優れた性能を理解することができる。例えば、最大荷重時の伸びは、セルロース系基材や紙がプレコートされるにつれて増加し(測定値「B」)、プレコート紙がカレンダー処理されるにつれてさらに増加する(測定値「C」)。これは、ガスバリア用基材としてより延性/柔軟性のある材料を提供することの有益な効果を確認するもので、ガスバリアコーティング基材は、包装材料をパッケージに変換する際に亀裂が生じることなく、より高い伸びに耐えることができる。
【0190】
実施例4
本明細書に記載された発明は、高い酸素バリアレベルに達することを可能にするユニークな特徴をもたらすことに加え、したがって、パッケージの非再生可能な構成要素を置き換えることができる解決策であり、再生可能な材料の含有率が高く、PTS RH 021/97規格によれば100%再パルプ可能又はリサイクル可能である。
【0191】
ここで開発された用途のために選択された薄くて延性のあるプレコート紙基材のリサイクルのために、PTS RH 021/97に従った再パルプ化試験の実施に加えて、実験室で再パルプ化試験を実施した。
【0192】
実験室で再パルプ化性を評価するため、重量が既知の紙のサンプルを、3000回転/分の装置を用いて23℃で20分間攪拌した。撹拌開始3分後には、すでに紙が再パルプ化可能であることが確認できた。水懸濁液中に塊は検出されず、紙がすでに水中に分散していることがわかった。
【0193】
実施例5
可撓性プレコート紙基材をコーティングするために、NCCをベースとするガスバリアコーティング配合物を使用した。この配合物は、固形分を5~22%含有し、600~2500±2mPa・sの粘度を有し得る。配合物の化学成分は、NCC(CNC)、PVOH及びデンプンベースの材料をベースとし、再生可能な材料(NCC及びデンプン)を少なくとも50%、例えばNCCを少なくとも50%含有し、100%リサイクル可能で生分解性である。
【0194】
ナノセルロースは難しいレオロジーを持つため、他のポリマーや成分とのブレンドに添加すると、懸濁液の最終粘度を変化させることでレオロジーに変化をもたらす。NCC(ナノ結晶セルロース又はセルロースナノ結晶)は広葉樹又は針葉樹のセルロース系パルプから抽出され、その寸法はすべてナノメートルスケールである。使用されるNCCは、幅が5~20nm、長さが150~400nmで、すべての寸法がナノメートルスケールである。
【0195】
ナノ結晶セルロース又はPVOH又は他のガスバリア材料の二重層ガスバリア層は、延性プレコート紙の上面側に形成することができる。第1のガスバリアコーティングは、紙の上面の延性ベース層プレコーティング上にガスバリア層を形成し、第2のガスバリアコーティングは、第1のガスバリアコーティング層上に第2のガスバリア層を提供する。
【0196】
この場合、延性プレコート紙へのバリア層塗布の順序が重要である。最初のガスバリア性分散層は、紙の上面側の延性ベース層プレコート上にバーコートによって塗布され、この層は赤外線と熱風を用いて乾燥され、表面に均質なガスバリア層を形成する。試験で使用した塗布速度は、延性プレコート紙表面に形成されたガスバリアコーティング層の良好な品質を確保するため、300~600m/分であった。最初に形成されたガスバリア性分散層は、乾燥した第1のバリア性分散層上に、同じくバーコーティングによって形成される第2のバリア性分散層を受容するために、表面を準備する。塗布された第2のガスバリア性分散層も、赤外線と熱風を用いた成膜・乾燥ステップを経る。配合物と延性プレコート紙について試験した熱風を用いた乾燥の最適範囲は、90~150℃であることに留意すべきである。
【0197】
評価された温度での乾燥は、バリアレベルの低下を引き起こさず、高温でもプレコート紙表面への塗膜形成を良好にする。最後に、バリアコート紙基材の適切な巻き取りと冷却を確実にするため、乾燥後、コート紙は40℃以下の温度で巻き取る必要がある。これにより、均質な皮膜が形成され、高い酸素バリア性とグリースバリア性が確保される。
【0198】
実施例6
上述した紙Kの表面にガスバリアコーティングをより大規模に塗布するために、異なる条件を試験した。ガスバリアコーティングは、異なる技術を使用できるパイロットコーティング機で塗布されたが、図8に示すように、延性プレコーティングB上に塗布されたガスバリアコーティング層を形成するために使用された塗布技術は、バー又はブレードコーティング法であり、総乾燥コーティング量は0.5~5g/mであった。塗布バーは平滑で、その直径はさまざまで、ここでは18~30mmのバーを使用した。図8に示すように、延性のあるプレコート原紙にガスバリアを直接塗布して試験を行った。
【0199】
概念実証とアップスケーリングのための最終プロトタイプでは、開発に使用した延性プレコート紙の特性は、以下の表5に示す通りであった。
【0200】
(表5) 大規模テストで使用した紙の特徴
【0201】
【表5】
【0202】
このアップスケーリング作業では、表面粗さが低く、空隙率が低いプレコート紙基材が、一般に良好な結果をもたらし、成形・充填されたパッケージの酸素バリアレベルを向上させることがわかった。
【0203】
このようにして、NCCを含むバリア配合物を、紙基材Aの上面の延性プレコートB上に(図8)、すなわち、プレコート重量が最も大きい上面に、NCC 2×2.5g/mの2層ガスバリアコーティングを形成することによって塗布し、ASTM F1307-14に従って、0.2気圧、50%RHでパッケージOTR 21%O(cc/pkg/24時間)0.016を得た。
【0204】
こうして、セルロースナノ結晶を含む水性分散液を第1段階で表面Bに塗布し、それによって約2.5g/m2の最終ガスバリア層を固め、第2ガスバリア分散液コーティング層を受ける表面を準備した。第1層を塗布した後、赤外線加熱と熱風対流によって乾燥させる。約2.5g/m2の第2層を第1ガスバリアコーティング層上に塗布し、合計約5g/m2の2層ガスバリアコーティングを形成した。第2層を塗布した後、赤外線加熱と熱風で乾燥させ、最後に、固化した樹脂を40℃以下の温度に冷却して、すでに表面にバリアが塗布された紙のシート同士の接着(まだ活性のある未冷却の樹脂でシートを接着すること)を防止する。
【0205】
塗布量は、セルロース系基材に過剰な水分が付着するのを防ぐため、各部分層で2.5g/m2に制限した。図7に記載したようにプレコート紙を使用することで、柔軟なプレコートBが表面調整剤として働くだけでなく、基材の表面粗さと空隙率に影響を与えるため、より大きな寸法安定性制御が可能になる。
【0206】
このガスバリアコーティングの形成に使用された塗布技術は、バーコーティング法である。直径24mmのバーを使用した。バリア分散液の塗布に使用したバーは、紙の巻き取り方向と同じ方向に20~80rpmの速度で回転させるか、又は紙の巻き取り方向と反対方向に80~160rpmの速度で回転させた。
【0207】
実施例7
(表1)の紙基材Kと、酸素バリアコーティングを塗布するのに最適な基材紙、すなわちNordic Paper社のグリースプルーフ紙「Superperga WS 32gsm Parchment FL109」を、比較のために(比較例1)、それぞれの上面にLDPEを20g/mで同様にラミネートした。
【0208】
この比較紙は、上面、すなわちバリアコーティングされる側の表面粗さが約36ml/分ベントセンであった。この紙は、より高度に精製されたセルロース、すなわち、より小さな繊維状/フィブリル状分子のセルロースを備え、その緻密な表面と865kg/mという中程度の紙密度を実現している。この比較紙は100%リサイクル可能というわけではなく、水で膨潤した低分子セルロースの廃棄物が残る。
【0209】
本発明で使用した紙基材Kは、上面のベントセン粗さが約20ml/分であった。
【0210】
実施例1及び比較例1の平坦なラミネート紙を通過する酸素透過率を、クーロメトリック検出器を用いて測定し、ASTM F1927-14に従って、酸素圧0.2気圧、相対湿度50%の水分レベルにおいて、単位cm/m/24時間で評価した。測定結果を(表6)に示す。
【0211】
(表6) 0.2気圧、50%RHの条件下での、PEをラミネートした平らな紙のOTR、cm/m/24時間
【0212】
【表6】
【0213】
(表6)の結果から、ラミネートサンプルとして以前に研究された最良の紙基材は、本発明のベース層プレコート紙基材よりも優れた初期固有のOTR性能を提供することがわかる。
【0214】
実施例7からのプレコート紙基材であるが、両面にLDPEの積層層がないものを、代わりに、延性ベース層プレコート(紙基材の上面)上に、それぞれポリビニルアルコール、PVOH、又はNCCの第1のガスバリアコーティングで被覆した。使用したPVOHはクラレから入手したもので、少なくとも98%の加水分解度を有するもの、すなわちPoval(登録商標)6-98であった。PVOHの分散液は、パイロットスケールの装置で平滑ローラーコーティング法によって塗布し、PVOHの水性分散液の湿潤塗布量は約15重量%であった。発泡防止のため、PVOHに対して0.05体積%の1-オクタノールを添加した。PVOH分散バリア組成物の23℃におけるブルックフィールド粘度は、500~800mPa・sであった。
【0215】
コーティングローラーの回転速度は160rpmであり、ウェブの走行方向とは逆方向に回転させた。コーティングは2段階で行い、第1層と第2層の乾燥坪量はそれぞれ1.6g/m、1.6g/mであった。
【0216】
コーティング層の乾燥には赤外線照射IRと熱風を併用し、表面温度は100℃以下に保たれ、コーティング中のウェブ速度は約300m/分であった。
【0217】
同じパイロットスケールの装置での別のコーティング作業では、代わりにNCCの分散液を平滑ローラーコーティング法で塗布した。NCCの水性分散液の塗布量は約19~20重量%であった。水性NCC分散バリア組成物の23℃におけるブルックフィールド粘度は<2000mPa・sであり、50℃における粘度は1000~1200mPa・sであった。コーティング層の乾燥にはIRと熱風の両方を使用し、コーティング中のウェブ速度は約300m/分であった。コーティングローラーの回転速度は80rpmで、ウェブの走行方向とは逆方向に回転させた。コーティングは2段階で行い、第1層と第2層の乾燥坪量はそれぞれ1.9g/m 、2.7g/mであった。
【0218】
その後、プレコート紙とガスバリアコート紙をその上面に20g/m LDPEでラミネートし、実施例7及び比較例1と同様に酸素透過率を評価したが、水分レベル80%も含めた。酸素透過率を(表7)に示す。
【0219】
(表7) PEでラミネートされたプレコート紙及びバリアコート紙のOTR
【0220】
【表7】
【0221】
表7の結果から、プレコート紙とバリアコート紙のOTR性能は、(表6)のガスバリアコーティングなしのプレコート紙に比べて著しく向上していることがわかる。PVOHコーティングとNCCコーティングの両方ともOTR性能を向上させている。しかし、どちらのタイプのコーティングも湿気に敏感で、80%RHのOTRは50%RHのOTRより高いことがわかる。
【0222】
実施例8
実施例7のプレコート紙とガスバリア性分散コート紙を、光学濃度約1.8に金属化した。次に、金属化バリア紙を板紙及びポリマーと押出コーティングラミネートし、以下の構造による包装材料を提供した。
【0223】
//外側 12g/m LDPE//デュプレックス CLC 80mN、200g/m、板紙バルク層/LDPE 20g/m接着層/バリアコート紙基材(2×バリアコーティング ~4g/m/Al金属 OD~1.8/粘着層 EAAコポリマー 6g/m/ブレンド LDPE+m-LLDPE 29g/m//)
【0224】
液体板紙はラミネートの前に、パッケージの折り畳みを容易にするために折り目が付けられた。包装材料のラミネートは、3つの押し出しコーティング・ステーションを備えたフレキシブル・パイロット・ラミネーターで行われた。ラミネート速度は約400m/分であった。
【0225】
デュプレックス(Duplex) CLC板紙は従来型のクレーコート板紙であり、m-LLDPEはメタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレンである。紙基材のバリアコート面は、ラミネート構造において内側(ラミネート材料から製造された包装容器の内側に相当)に向けられていた。接着ポリマーEAAと最内層のヒートシール可能層は、バリアコート紙上に一緒に共押出しコーティングされ、最外層のLDPEは板紙の外側に押出しコーティングされた。
【0226】
実施例8のフラットラミネート包装材を通過する酸素透過率は、クーロメトリック検出器を用いて測定し、ASTM F1927-14に従って、単位cm/m/24時間、酸素圧0.2気圧、相対湿度50%及び80%の水分レベルで評価した。
【0227】
比較例2
比較例1でも使用した、先に試験した紙基材にガスバリアコーティングを施し、延性ベース層のプレコーティングが含まれていない以外は、実質的に対応する方法で包装材構造にラミネートした。
【0228】
まず、PVOH(Poval(登録商標)15-99、完全ケン化PVOH)を1.5g/m、2回連続で分散コーティングした。その後、光学濃度約2.3に金属化した。
【0229】
バリアコートされた比較紙基材は、さらに以下のように包装材構造にラミネートされた。
【0230】
//外側 12g/m LDPE/デュプレックスCLC 80mN、200g/m、板紙バルク層/LDPE 20g/m接着層/バリアコート紙基材(2×バリアコーティング ~1.5g/m/Al金属 OD~2.3/接着層 EAAコポリマー 6g/m/ブレンド LDPE+m-LLDPE 19g/m//)
【0231】
実施例8及び比較例2のラミネート包装材料のOTR測定結果を(表8)に示す。
【0232】
(表8) フラットラミネート包装材料のOTR
【0233】
【表8】
【0234】
酸素圧1気圧/0.2気圧で測定
** 酸素圧0.2気圧に換算
【0235】
(表8)からわかるように、本発明のプレコート紙ではバリアコーティングの坪量が高いにもかかわらず、プレコート紙とバリアコーティング紙を使用した包装材料のOTR値は、高度に精製されたグリースプルーフ紙を使用した包装材料よりも高い。これは、紙自体からのOTR寄与が、高度に精製されたグリースプルーフ紙と比較して、プレコート紙の方が低いことに起因すると考えられる(表7参照)。
【0236】
また、プレコート紙やバリアコート紙を使用した包装材料は、水分レベルの上昇に敏感ではないことにも留意されたい。
【0237】
実施例9
パッケージはTetra Pak(登録商標)E3/CompactFlex充填機で製造された。このタイプの充填機は、ポーションパッケージを毎時9000パッケージの速度で充填する能力があり、異なるパッケージ形式間で素早く変更できる柔軟性を持っている。パッケージはTetra Brik(登録商標)のフォーマットで、容量は200mlであった。
【0238】
パッケージ内部は窒素がパージされ、パッケージの外側は装置周辺の環境にさらされている。酸素がパッケージを透過して窒素キャリアガスに浸透すると、電量センサに運ばれる。センサは、パッケージ内の窒素ガスにどれだけ酸素が漏れたかを読み取る。OTRは、ASTM F1307-14に従い、0.2気圧(21%の酸素を含む周辺空気)で評価される。測定単位はcm/パッケージ/24時間である。
【0239】
(表9) 損失係数を含むパッケージのOTR
【0240】
【表9】
【0241】
表2のパッケージラミネート面積と対応する平坦な包装材料のOTR値を使用する。
【0242】
表9から興味深いことに、驚くべきことに、プレコート紙とバリアコート紙を使用したフラットラミネート包装材のOTR値は、表7からわかるように、高度に精製されたグリースプルーフ紙を使用したフラットラミネート包装材料よりも高いにもかかわらず、プレコート紙とバリアコート紙を使用することによってパッケージのOTR値が改善されている。パッケージのOTR測定値は0.075ではなく、0.013~0.016cm/パッケージ/24時間/0.2気圧である。測定されたOTR値を対応する理論計算値で割ると、高度に精製されたグリースプルーフ紙を使用した場合の損失係数9.6に対し、プレコート紙とバリアコート紙を使用した場合の損失係数は1に近いこともわかる。プレコート紙やバリアコート紙を使用した場合、フラットラミネート包装材のガスバリア性能は、包装を折りたたんだ後でも維持されていることがわかる。これは、延性のあるベース層のプレコートにより、紙の応力集中の影響を軽減できるためである。応力集中は、紙を通して亀裂を発生させ、伝播させる原因となる。紙に亀裂が生じると、非常に薄いバリアコーティングは高い応力に耐えられず、結果的に亀裂が生じ、ガスバリア性が損なわれる。特に延性材料は、高いひずみに耐えることができ、折り畳み時に紙の応力集中を再分配することができる。
【0243】
さらに、添付の図面に関する:
図1aには、本発明のバリアコーティングされたセルロース系基材10aの一実施形態が断面で示されている。基材11aは、硫酸塩針葉樹パルプ由来のセルロース繊維を主要な割合とする紙であり、35g/mの坪量を有し、その上面に、ラテックス又はバイオポリマーバインダー組成物、例えば、本例では、特にSB-ラテックスバインダー組成物を、水性分散コーティングによって塗布し、その後乾燥して水分を蒸発させることによって、延性ベース層プレコーティング12aを最初に備える。塗布された延性ベース層プレコーティングの乾燥重量は約12g/mである。オプションとして、延性ベース層プレコーティング12aと同じ組成の、さらなる、第2の、延性コーティング15aを、紙基材11aの反対側の、コーティングされていない面に、同じ方法で塗布することができる。第2の延性コーティングの乾燥重量は、約5g/mである。こうしてプレコートされた紙基材は、その後、複数の高圧ローラ・ニップ及び少なくとも1つのサーモロールを通過させることにより、100~240℃の表面温度でスーパーカレンダー処理される。
【0244】
さらに、紙基材は、PVOHのバリア性分散液又は溶液コーティング、クラレのPoval(登録商標)6-98から作られたガスバリア性コーティング13aを、延性ベース層プレコーティング12aの表面に塗布する。このようにして、ガスバリアコーティング13aは、水性分散コーティングによって塗布され、その後、水分を蒸発させるために乾燥される。好ましくは、2つの連続した パートコーティング ステップとして、その間に乾燥が行われる。PVOHバリア分散コーティングの総乾燥重量は、約3.5g/mである。さらにオプションで、バリア分散コーティングされた紙基材は、バリア分散コーティング13aの乾燥表面上に、物理的蒸着によって約1.8のODに塗布されたアルミニウムバリア蒸着コーティング14a、すなわちアルミニウム金属化層を有してもよい。
【0245】
図1bは、本発明のバリアコーティングされたセルロース系基材10bのさらなる実施形態を断面で示す。図1aと同じ紙をセルロース系基材として使用し、図1aで使用したものと同じ組成の第1の延性ベース層プレコーティング12bを乾燥重量で約12g/mの量でコーティングしている。さらに、延性ベース層プレコート12bと同じ組成の第2の延性コーティング15bを、紙基材11bの反対側の非コーティング面に同様に塗布する。第2の延性コーティングの乾燥重量は約5g/mである。
【0246】
この実施形態では、ガスバリア性分散コーティングは施されていないが、第1の延性ベース層プレコーティング12bは、外径約2のアルミニウム蒸着層のガスバリア性蒸着コーティング14bで直接コーティングされている。一方、第2の延性コーティング15bは、図1aに記載されているように、PVOHのバリア性分散又は溶液コーティング、クラレのPoval(登録商標)6-98から作られたガスバリア性コーティング13bでコーティングされている。このようにして得られたバリアコーティングされた紙基材は、紙基材表面とそれぞれのガスバリアコーティング14b及び13bとの間の橋渡し層として、紙の両側にそれぞれ1つのガスバリアコーティングが施され、その下にそれぞれ延性コーティングが施されている。
【0247】
図2aでは、液体カートン包装に適した本発明のラミネート包装材料20aが示されており、このラミネート材料は、80mNの曲げ力と約200g/mの坪量を有する板紙のバルク層21aを備え、さらに、バルク層21aの外側に塗布された低密度ポリエチレンの外側の液密でヒートシール可能な層22aを備え、この層は、包装用ラミネートから製造される包装容器の外側に向けられる。この層22aは、紙又は板紙のバルク層に施された印刷装飾パターン27aを外側に見せるために透明であり、その結果、パッケージの内容物、包装ブランド、及び小売施設や食品店の消費者を対象とするその他の情報を知らせる。外層22aのポリエチレンは、ヒートシール可能な品質の従来の低密度ポリエチレン(LDPE)であるが、LLDPEを含むさらに類似のポリマーを含んでもよい。塗布量は約12g/mである。最も内側の液密でヒートシール可能な層23aは、バルク層21aの反対側に配置され、この層は包装用ラミネートから製造される包装容器の内側に向けられる。積層包装材料から製造された液体包装容器の強力な横方向ヒートシールを形成することになる。したがって最も内側のヒートシール可能な層23aは、LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びエチレンモノマーと、C4~C8、より好ましくはC6~C8のα-オレフィンアルキレンモノマーとをメタロセン触媒の存在下で重合させることによって製造されたLLDPE、いわゆるメタロセン-LLDPE(m-LLDPE)からなる群から選択されるポリエチレンの1種又は2種以上の組み合わせを備える。このポリエチレンの最内層は、約29g/mである。
【0248】
バルク層21aは、図1aから、バリアコーティングされた紙基材10aのコーティングされていない側(すなわち、ガスバリアコーティングが施されていない側)、すなわち25aに積層され、この紙基材10aは、バリア分散コーティング13aの乾燥表面上に、物理的蒸着によって約1.8の外径に塗布されたアルミニウムバリア蒸着コーティング14a、すなわちアルミニウム金属化層を有し、低密度ポリエチレン(LDPE)の中間接合層26aによって積層される。中間接着層26aは、2つの紙ウェブの間に薄いポリマーの溶融カーテンとして溶融押出しすることによって形成され、その結果、3つの層すべてが冷却されたプレスローラ・ニップを通過する際に、バルク層とバリアコーティングされた紙基材とを互いにラミネートする。中間接着層26aの塗布量は約20g/mである。
【0249】
最内側のヒートシール可能な層23aは、1つの層から成っていてもよく、あるいは代替的に、同一又は異なる種類のLDPE又はLLDPE又はそれらのブレンドの2つ以上の部分層を備えてもよく、約6g/mの量の、例えば、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)の中間共押出し結合層24aによって、バリアコート紙基材10aの金属化バリア蒸着コーティング表面14aに良好に接着される。これにより、層24a及び23aの1回の溶融共押出しコーティングステップで層を一緒に適用することによって、最も内側のヒートシール可能な層をバリアコート紙基材10aに接着する。
【0250】
押出ラミネートポリエチレンポリマー等のリサイクルステップにおける熱可塑性ポリマー画分の量を低減し、リサイクルステップにおける包装材料の反発性を改善するために、バリアコートセルロース系基材25aをバルク層21aに接着しているラミネート層26aは、代わりに、分散コート水性接着剤組成物の乾燥から得られる湿潤ラミネートポリマーバインダーの薄い層であってもよい。このようなラミネーションステップは、水の蒸発を促進するために必要なエネルギーを消費する乾燥操作なしに、工業的速度で効率的なコールド又は常温ラミネーションステップで行われる。このような接着層の乾燥重量は、このような実施形態では、約6g/mであり、又は好ましくはそれ以下である必要があるだけであり、カートン繊維リサイクルステップでセルロース繊維の画分に再分散可能であるように、水に容易に再分散可能なポリマーから作られる。
【0251】
さらなる実施形態では、紙基材11aの裏面は、最初に、図1aに関連して説明したように、延性ベース層プレコーティング12aと同一又は類似の組成の第2の延性コーティング15aで、約5g/mの乾燥重量でコーティングされてもよく、次いで、接着層26aは、延性ベース層プレコーティング組成物15aと同様の水性接着剤組成物から構成されてもよい。別の実施形態では、紙基材11aは、裏面ではコーティングされないままであってもよく、一方、そのような接着層26aの量は、延性ベース層15a及びラミネート接着層26aの両方として挙動する1つの単一層26aを同時に製造するために、10~約12g/mのような高い量であってもよい。
【0252】
さらなる実施形態によれば、図示されていないが、バルク層21aを、図1aからのバリアコーティング紙基材10a’のコーティングされていない側(すなわち、ガスバリアコーティングが施されていない側)に、オプションのアルミニウムバリア蒸着コーティング14aを有していない、上述したのと同じ方法によって積層する。バリアコーティングされたバリア基材の内側には、代わりに、バリアコーティングされたセルロース系基材に積層された金属化コーティングのような、蒸着法によって塗布されたバリア蒸着コーティングを有する、予め製造されたポリマーフィルム基材が積層される。ポリマーフィルム基材は、2つのバリアコーティングされたウェブの間に熱可塑性接着層を押出ラミネートする方法、又は水性接着剤をウェットラミネートする方法のいずれかによって、ポリマーの隣接する接着層によってバリアコーティングされたセルロース系基材にラミネートしてもよい。金属化されたポリマーフィルム基材は、ポリマーフィルム基材の金属化コーティングの反対側にヒートシール材料層を含み、第2の最も内側の液密でヒートシール可能な材料層を形成してもよい。あるいは、金属化ポリマーフィルム基材を、第2の最も内側の液密でヒートシール可能な材料層23aでさらに押出コーティングすることもできる。材料及びポリマーは、その他の点では図1のラミネート包装材料と同じである。これは図2aに示されており、上で説明されている。
【0253】
図2bには、液体カートン包装用の本発明の別のラミネート包装材料20bが示されており、この積層材料は、80mNの曲げ力及び約200g/mの坪量を有する板紙コア層21bを含む。図2aに示すように、バルク層21bの外側に塗布されたLDPEの液密でヒートシール可能な外側層22bをさらに含む。さらに、図2aで上述したように、同様の最内液密でヒートシール可能な層23bがバルク層21bの反対側に配置される。
【0254】
バルク層21bは、図1bで説明したバリアコート紙基材に、ポリ酢酸ビニル接着剤、又はデンプン接着剤の水性分散液を、互いに接着すべき表面の一方に塗布し、その後ローラ・ニップで押し付けることによって得られる、接着性ポリマーの薄層の中間接着層26bを用いた湿式ラミネーションによって積層される。このようにして、このラミネーションステップは、水の蒸発を促進するために必要なエネルギーを消費する乾燥操作なしに、工業的速度で効率的なコールド又は常温ラミネーションステップで実施される。中間接着層26bの乾燥塗布量は3~5g/mのみであり、接着層の乾燥及び蒸発が不要であることを意味する。
【0255】
したがって、このラミネート層では、図2aで説明した従来のLDPEの溶融押出ラミネート接着層に比べて、熱可塑性ポリマーの量を大幅に減らすことができる。
【0256】
このようにして得られた積層包装材20bは、図1bに記載したようなバリアコーティングされたセルロース系基材を有し、各面に施されたガスバリアコーティングを有し、バリア蒸着層14b(この場合、金属化層)は内側及び最内層23bに向けられ、バリア分散コーティング13bはバルク層21bに向けられる。両ガスバリアコーティング14b、13bは、それぞれその下に延性コーティングを有し、それぞれ柔軟なクッション層12b、15bとして作用する。
【0257】
図2aのラミネート構造(図示せず)、又は図2bのラミネート構造(図示せず)のいずれかのさらに別の実施形態では、最も内側の液密層23a’又は23b’は、LDPE又はLLDPEポリマーをそれらの任意のブレンドで含む、予め製造されたインフレーションフィルムから構成されてもよい。バリアコーティングされた紙基材に、そのバリア蒸着コーティングの表面、すなわち、アルミニウムメタライゼーションに積層されることができる。図2a又は2bで使用したものより厚いEAAの結合層、又は12~20g/m、例えば12~18g/m 、より単純なLDPEの結合層からなる、中間的な溶融押出ラミネート結合層24a又は24bによって、アルミニウムのメタライゼーションが行われる。
【0258】
あるいは、予め製造されたフィルム23a又は23bは、別のウェットラミネーション接着層、すなわち、アクリル(共)重合体結合層24a’又は24b’の水性接着剤によって、周囲(低温)温度で、3~5g/mの量で、ガスバリアコーティングにラミネートされてもよい。上記のように、バリア蒸着コーティング14aがバリアコーティングされた紙基材に塗布されない場合、代わりに、蒸着コーティングによって、バリア蒸着コーティングが予め製造されたフィルムに塗布され得る。
【0259】
図3aには、水性分散コーティング30aの主要ステップの一実施形態が示されており、これは、水性ガスバリア組成物からガスバリアコーティング12を基材上に塗布するため、又は水性ラテックス組成物から延性ベース層プレコーティングを塗布するために使用することができる。あるいは、2枚のウェブをウェットラミネートするための水性接着剤組成物を塗布するために使用することもできる。セルロース系基材31a(例えば、図1a、1bの紙11a、11b)のウェブは、分散コーティング・ステーション32aに送られ、そこで、水性分散組成物が、ローラーによって基材の上面に塗布される。水性分散組成物は、バリア組成物の場合、80~99重量%の水性含量を有することがあり、従って、均質であり、バリア特性及び表面特性、すなわち均一性及び濡れ性に関して均一な品質を有する連続コーティングを形成するために、熱によって乾燥され、蒸発除去される必要のある湿潤コーティングされた基材上に多くの水が存在することがある。乾燥は熱風乾燥機33aによって行われ、これにより基材表面から水分が蒸発除去される。乾燥機を通過する際の基材温度は、コーティングの欠陥を避けるために、100℃以下、例えば90℃以下、例えば70~90℃の温度で一定に保つことができる。乾燥は、熱風対流乾燥と組み合わせて、赤外線IRランプからの照射熱によって部分的に補助することができる。しかし、延性ベース層のプレコーティングの場合、水性含量ははるかに低く、乾燥も少なくてすむ。
【0260】
得られた延性ベース層プレコート紙基材34aのウェブは、任意選択で、少なくとも1つの高圧ローラ・ニップを通過させることによってカレンダー処理され、次いで、冷却するために前進され、中間貯蔵のためにリールにさらに巻き取られ、後にガスバリアコーティング操作にさらに供される。さらなるコーティング工程は、バリア蒸着コーティング14の蒸着コーティング、又は上述のようなガスバリア組成物のさらなる分散コーティング操作であってよく、バリアコーティングされたセルロース系基材を提供する。
【0261】
図3bは、バルク層21a、21bが最初に図1a又は図1bのバリアコーティングされたセルロース系基材10a又は10b(すなわち、それぞれ図2a及び図2bの25a又は25b)にラミネートされた後の、それぞれ図2a及び図2bの包装ラミネート20a又は20bの製造における最終ラミネートステップのためのプロセス30bを示す。
【0262】
図2a及び図2bに関連して説明したように、バルク層板紙21a;21bは、湿式低温分散接着剤ラミネーション、又は溶融押出ラミネーションによって、バリアコート紙基材10a;10b;25a;25bにラミネートし得る。接着剤は、図3aに関連して説明したのと同じ方法又は類似の方法によって塗布してもよいが、乾燥を必要としないか、又は加熱をほとんど必要としない。
【0263】
得られた紙プレラミネートウェブ31bは、中間貯蔵リールから、又は紙プレラミネートをラミネートするためのラミネーションステーションから直接、搬送される。バルク層21a;21bの非ラミネート面、すなわち印刷面は、冷却されたローラ・ニップ33で、ラミネート材料の最外層22a;22bを形成するLDPEの溶融ポリマーカーテン32に接合され、LDPEは押出機のフィードブロック及び結合層32bから押し出される。その後、最外層22a;22bが印刷面、すなわち外側にコーティングされた紙プレラミネートウェブは、第2の押出機フィードブロックと結合層34b、及びラミネーションニップ35を通過し、ここで溶融ポリマーカーテン34がプレラミネートの他方の面、すなわち紙基材10;25a;25bのバリアコーティング面に接合され、コーティングされる。こうして、最も内側のヒートシール可能な層23aが紙プレラミネートウェブの内側に共押出しコーティングされ、最終的にラミネート包装材36が形成され、図示しない収納リールに巻き取られる。
【0264】
ラミネーション・ローラ・ニップ33及び35におけるこれら2つの共押出ステップは、代替的に、逆の順序で連続する2つのステップとして実施してもよい。
【0265】
別の実施形態によれば、最外層の一方又は両方は、代わりにプレラミネーションステーションで塗布することができ、そこでは、共押出コーティング層が最初に(印刷された)バルク板紙層の外側に、又はバリアコーティングされた紙基材のメタライゼーションコーティング上に塗布され、その後、2つのプレラミネーションされた紙ウェブは、上述のように互いに接合される。
【0266】
さらなる実施形態によれば、最内層のヒートシール可能で液密な熱可塑性樹脂層は、予め製造されたフィルムの形で塗布され、このフィルムはバリアコート紙基材10のコート面にラミネートされる。
【0267】
図2a及び図2bに関連して説明したように、このような最内層23a’;23b’は、湿式、冷分散接着剤ラミネーション、又は溶融押出ラミネーションによって、バリアコート紙基材10にラミネートしてもよい。
【0268】
図4aは、本発明のウェブ基材上への、例えばアルミニウム金属コーティングの物理蒸着(PVD)用プラント40aの一例の斜視図である。分散液でコーティングされた紙基材41は、そのコーティングされた側で、蒸発したアルミニウムの連続蒸着40に供され、アルミニウムの金属化層を形成するか、あるいは酸素とアルミニウム蒸気との混合物に供され、酸化アルミニウムの蒸着コーティングを形成する。被膜は、5~100nm、好ましくは10~50nmの厚さで設けられ、本発明のバリアコート紙43を形成する。アルミニウム蒸気は、アルミニウムの固体片42の蒸発源へのイオン衝撃によって形成される。酸化アルミニウムのコーティングの場合、酸素ガスも入口ポートからプラズマチャンバに注入してもよい。
【0269】
図4bは、本発明のウェブ基材上への例えば、水素化非晶質結合層ダイヤモンドライクカーボンコーティングのプラズマエンハンスト化学気相蒸着コーティング(PECVD)用プラント40bの一例の斜視図である。ウェブ基材44aは、その一方の表面上で、マグネトロン電極46と、電極としても機能する冷却されたウェブ搬送ドラム47との間の空間に形成されたプラズマ反応ゾーン45内において、プラズマの連続的なPECVDに供され、フィルムは、回転ドラムによって、ドラムの周面に沿ってプラズマ反応ゾーンを通って前進する。非晶質DLCコーティング層の蒸着コーティングのためのプラズマは、例えば、アセチレンやメタン等の有機炭化水素ガスからなるガス前駆体組成物をプラズマ反応チャンバに注入することから生成され得る。他のガスバリアコーティングも、有機ケイ素化合物の前駆体ガスから出発する酸化ケイ素コーティング(SiOx)のように、同じ主要なPECVD法によって塗布してもよい。PECVDプラズマチャンバは、出口ポート48a及び48bでチャンバを連続的に排気することによって真空状態に保たれる。
【0270】
図5aは、本発明による包装用ラミネートから製造される包装容器50aの一実施形態を示している。この包装容器は、飲料、ソース、スープ等に特に適している。通常、このような包装容器は、約100~1000mlの容積を有する。どのような形状であってもよいが、好ましくはレンガ状であり、それぞれ縦シール51a及び横シール52aを有し、任意選択で開封装置53を有する。図示されていないが、別の実施形態では、包装容器はくさび形であってもよい。このような「くさび形」を得るために、パッケージの底部のみが折り畳まれ、底部の横方向ヒートシールが、パッケージの底部に対して折り畳まれシールされた三角形のコーナーフラップの下に隠れるように形成される。上部の横方向シールは展開されたままである。このようにして、部分的に折り畳まれただけの包装容器は、扱いやすく、食品店の棚や平らな面に置くのに十分な寸法安定性を保っている。
【0271】
図5bは、本発明による代替包装用ラミネートから製造される包装容器50bの代替例を示す。この代替包装ラミネートは、紙バルク層が薄いため、平行六面体又はくさび形の包装容器を形成するのに十分な寸法安定性がなく、横シール52b後に折り目が形成されない。包装容器はピロー状の袋状容器のままとなり、この形態で流通販売される。
【0272】
図5cは、ゲーブルトップパッケージ50cを示しており、これは、板紙のバルク層と本発明のバリアコーティング紙基材からなるラミネート包装材料から、あらかじめカットされたシート又はブランクから折りたたみ成形されたものである。また、同様のブランク材からフラットトップ・パッケージを形成してもよい。
【0273】
図5dはボトル状パッケージ50dを示しており、これは本発明のラミネート包装材料のプレカットブランクから形成されたスリーブ54と、スクリューコルクなどの開口装置と組み合わせてプラスチックの射出成形によって形成されたトップ55の組み合わせである。この種のパッケージは、例えばTetra Top(登録商標)やTetra Evero(登録商標)の商品名で販売されている。これらの特殊なパッケージは、ラミネート包装材の筒状スリーブ54に、開口装置を取り付けた成型トップ55を閉じた状態で取り付け、こうして形成されたボトルトップ・カプセルを殺菌し、食品を充填し、最後にパッケージの底部を折り曲げて密封することによって形成される。
【0274】
図6は、本出願の冒頭で記載された原理を示す。すなわち、包装材料のウェブは、ウェブの長手方向端部62、62’を重ね合わせ、それらを互いにヒートシールすることによってチューブ61に形成され、オーバーラップ接合部63が形成される。チューブは、充填される液体食品で連続的に充填64され、チューブ内の充填された内容物のレベルより下に、予め決められた間隔でチューブの二重横シール65が繰り返されることにより、充填された個々の充填パッケージに分割される。パッケージ66は、二重の横シール(上シールと下シール)の間で切断することにより分離され、最終的に、材料に用意された折り目線に沿って折り目を形成することにより、所望の幾何学的形状に成形される。
【0275】
図7は、表2に示したコート紙の酸素透過率に及ぼす表面粗さの影響を、70%RHの条件下で示したものである(ml/m/日)。
【0276】
図8は、その上面に延性ベース層プレコートBが施され、さらに任意選択でその裏面に同様の延性コーティングCが施された延性セルロース系基材Aの主要構造を示している。
【0277】
最後に付言しておくが、本発明は、上記に示され説明された実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の変更を行ってもよい。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7
図8
【国際調査報告】