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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241128BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241128BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241128BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241128BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241128BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/134
H01G11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527515
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022049803
(87)【国際公開番号】W WO2023086623
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/278,782
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513295777
【氏名又は名称】ファーストキャップ・システムズ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】FastCAP SYSTEMS Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,ワイアット
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジィ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュージエ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ワンジュン ベン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギテ
(72)【発明者】
【氏名】ブランビッラ,ニコロ
(72)【発明者】
【氏名】カラバトゥラ,スシール
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA15
5E078BA18
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA16
5H050HA01
(57)【要約】
ここではアノードが開示され、アノードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置され、シリコンを含む複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む活性層を含む。ここではカソードも開示され、カソードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む活性層を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードであって、
高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、前記高アスペクト比炭素要素は前記ネットワーク内の空隙を画定する、ネットワークと、
前記ネットワーク内の前記空隙に配置され、シリコンを含む複数の電極活物質粒子と、
(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤と、
を含む活性層
を含む、アノード。
【請求項2】
前記電極活物質粒子に含まれる前記シリコンがSiOの形態である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記電極活物質に含まれる前記シリコンがマイクロシリコンである、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記電極活物質に含まれる前記シリコンが、前記活性層の50重量%を超える、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記電極活物質に含まれる前記シリコンが、前記活性層の少なくとも80重量%である、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークがカーボンナノチューブのメッシュを含み、
前記カーボンナノチューブのメッシュが、前記シリコンの膨張中に前記メッシュに含まれる前記カーボンナノチューブの少なくとも1つのサブセットの間の電気的接続を維持する、
請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークがカーボンナノチューブのメッシュを含み、
前記カーボンナノチューブのメッシュが、前記電極が含まれる電池の充電及び放電中に、前記メッシュに含まれる前記カーボンナノチューブの少なくとも1つのサブセットの間の電気的接続を維持する、
請求項1に記載の電極。
【請求項8】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、
複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含む第1のセットのカーボンナノチューブと、
第2のセットのカーボンナノチューブであって、
前記第2のセットのカーボンナノチューブが、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含み、
前記第2のセットのカーボンナノチューブが、前記第1のセットのカーボンナノチューブとは異なる1つ以上の特性を有する、第2のセットのカーボンナノチューブと、
を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記第1のセットのカーボンナノチューブが多層ナノチューブを含む、請求項8に記載の電極。
【請求項10】
前記第2のセットのカーボンナノチューブが単層ナノチューブを含む、請求項8に記載の電極。
【請求項11】
カソードであって、
高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、前記高アスペクト比炭素要素は前記ネットワーク内の空隙を画定する、ネットワークと、
前記ネットワーク内の前記空隙に配置された複数の電極活物質粒子と、 (i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤と、を含む活性層
を含む、カソード。
【請求項12】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、
複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含む第1のセットのカーボンナノチューブと、
第2のセットのカーボンナノチューブであって、
前記第2のセットのカーボンナノチューブが、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含み、
前記第2のセットのカーボンナノチューブが、前記第1のセットのカーボンナノチューブとは異なる1つ以上の特性を有する、第2のセットのカーボンナノチューブと、
を含む、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記第1のセットのカーボンナノチューブが多層ナノチューブを含む、請求項12に記載の電極。
【請求項14】
前記第2のセットのカーボンナノチューブが単層ナノチューブを含む、請求項12に記載の電極。
【請求項15】
前記第1のセットのカーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブを含み、
前記第2のセットのカーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含み、
前記第1のセットのカーボンナノチューブと前記第2のセットのカーボンナノチューブとの重量比が約2:1である、
請求項12に記載の電極。
【請求項16】
前記高アスペクト比炭素要素のネットワークが、多層カーボンナノチューブのセットを含む、請求項11に記載の電極。
【請求項17】
前記活性層が、0.2~2重量%の多層カーボンナノチューブ、又は0.25~1.5重量%の多層カーボンナノチューブを含む、請求項16に記載の電極。
【請求項18】
前記多層カーボンナノチューブが分岐カーボンナノチューブである、請求項16に記載の電極。
【請求項19】
前記活性層が0.25~1.5重量%の多層カーボンナノチューブを含む、請求項16に記載の電極。
【請求項20】
前記多層カーボンナノチューブが、分岐する、互いにかみ合う、絡み合う、及び/又は共通の壁を共有する、請求項16に記載の電極。
【請求項21】
エネルギー貯蔵装置であって、
電解質と、請求項12に記載の電極とを含み、前記電解質で濡れると、前記第1のセットのカーボンナノチューブに含まれる前記多層ナノチューブが、前記第2のセットのカーボンナノチューブに含まれる前記単層カーボンナノチューブよりも膨潤する、エネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月12日に出願された米国仮出願第63/278,782号の利益を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エネルギー貯蔵装置、特にウルトラキャパシタ及びリチウムイオン電池、並びにそれらに使用される電極に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池は、医療機器、電気自動車、航空機、及びラップトップコンピュータ、携帯電話、カメラなどの消費者製品を含む多くの製品に使用されている。リチウムイオン電池は、その高いエネルギー密度、高い動作電圧、及び低い自己放電により、二次電池市場を席巻しており、製品及び発展途上の産業で新たな用途を見出し続けている。
【0004】
一般に、リチウムイオン電池(「LIB」又は「LiB」)は、アノード、カソード、及びリチウム塩を含む有機溶媒などの電解質材料を含む。より具体的には、アノード及びカソード(総称して「電極」という)は、アノード活物質又はカソード活物質のいずれかを結合剤及び溶媒と混合してペースト又はスラリーを形成し、次にアルミニウム又は銅などの集電体上にコーティングして乾燥させ、集電体上にフィルムを形成することによって形成される。次に、アノード及びカソードを層状又はコイル状にした後、電解質材料を含む加圧ケーシング内に収容し、これらは、全体としてリチウムイオン電池を形成する。
【0005】
結合剤は、活物質を適切なコーティングで集電体に接着する役割を果たす。結合剤は、活物質と集電体との十分な接触の維持を容易にすることが重要である。更に、電池の充電及び放電中の電極活物質(複数可)の膨張及び収縮の程度に耐えることができるように、電極活物質(複数可)と機械的に適合する結合剤を選択することが重要である。結合剤はまた、電池ケーシングに電極を嵌め込む際の電極の操作に耐えるのに十分でなければならない。
【0006】
したがって、良好な機械的特性を提供するために、セルロース系結合剤又は架橋ポリマー結合剤などの結合剤が使用されてきた。しかしながら、従来の電極では、選択された結合剤は一般に、処理のために環境に優しくないか、又は有毒な溶媒を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書ではアノードが開示され、アノードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置され、シリコンを含む複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む活性層を含む。
【0008】
本明細書ではカソードも開示され、カソードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤と含む活性層を含む。
【0009】
以下は、図面の簡単な説明であり、図面では同様の要素には同様の番号が付けられており、これらは、本明細書に開示される例示的な実施形態を説明することを目的として提示されており、本明細書に開示される例示的な実施形態を限定することを目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書に開示される電極の一例を示す図である。
図2A】本明細書に開示される電極を製造するために使用することができる方法の一例を示すフローチャートである。
図2B】エネルギー貯蔵装置用のアノードを製造する例示的な方法を示すフローチャートである。
図3】パウチセル装置における電極配置を示す図である。
図4】エネルギー貯蔵装置(ESD)の態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照することによって本明細書に開示される構成要素、プロセス、及び装置をより完全に理解することができる。これらの図は、便宜及び本開示の実証の容易さに基づく単なる概略図であり、したがって、装置又はその構成要素の相対的なサイズ及び寸法を示すこと、及び/又は例示的な実施形態の範囲を定義若しくは限定することを意図するものではない。以下の説明では明確にするために特定の用語が使用されるが、これらの用語は、図面で説明するために選択された実施形態の特定の構造のみを指すことを意図しており、本開示の範囲を定義又は限定することを意図するものではない。図面及び以下の説明において、同様の番号指定は同様の機能の構成要素を指すことを理解されたい。
【0012】
本明細書では、電極(アノード及びカソード)を含むハウジングを含む電解槽が開示される。ハウジングは、アノード及びカソードと接触する電解質を含む。両方の電極(アノード及びカソード)は集電体を含み、その上に活性層が配置される。活性層は、電極と接触する任意の接着層上に配置されてもよい。
【0013】
図1は、本明細書に開示される電極(アノード又はカソード)の一例を示す図である。図示の例では、電極100は集電体102及び活性層106を含む。電極100は、任意に接着層104を含んでもよい。一例として、接着層104は、集電体102と活性層106との間の接着を促進する材料を含む。活性層106は、結合剤中の電極活物質110と、導電性要素108とを含む。導電性要素は、高アスペクト比要素を含むことができる。
【0014】
集電体102は、導電性要素である。集電体は、金属(例えば、実質的に純粋な金属又は金属合金)を含むことができる。別の例として、集電体102は、金属ストリップ又は金属箔の形態であり得る。例えば、集電体102は、アルミニウム箔若しくはストリップ、アルミニウム合金箔若しくはストリップ、銅箔若しくはストリップ、又は銅合金箔若しくはストリップであり得る。集電体102は、15μm(ミクロン)以下、10μm以下、8μm以下、又は5μm以下の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、同時に集電体は少なくとも3μmの厚さを有することができる。例えば、集電体102は3~15m、好ましくは6m~10μmの厚さを有することができる。別の例として、集電体102は、厚さ5~7μmのアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔である。
【0015】
活性層106は、導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質を含む。活性層は、導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質を溶媒と混合して混合物を形成することによって製造することができる。混合物は、集電体に直接塗布することも、集電体に接着することができる接着層上に塗布することもできる。接着層を使用する場合、それは導電性であり得る。混合物を乾燥させて溶媒を除去して、固体の活性層を残すことができる。ここで、アノード及びカソードの活性層106を別々に詳細に説明する。
【0016】
アノード活性層及びカソード活性層の両方の結合剤材料はポリアミド、好ましくは水溶性又はアルコール可溶性ポリアミドである。アノードの活物質はシリコンを含むが、カソードの活物質はNMC、NCA、NCMA、又はそれらの組み合わせである。
【0017】
アノード
上述のように、アノードは、導電性要素、結合剤、及び電極活物質を含み、これらは一緒に混合されて混合物を形成する。混合物を集電体上に配置し、乾燥させて活性層を形成する。アノード活物質層の成分のそれぞれについては、以下に詳述する。
【0018】
導電性要素(導電性材料とも呼ばれる)は炭素を含むことができる。例えば、導電性要素は高アスペクト比炭素要素であってもよい。「高アスペクト比炭素要素」という用語は、要素の1つ以上の寸法(「主要寸法(複数可)」)のサイズが横方向寸法(「副寸法」)のサイズよりも著しく大きい炭素質要素を指す。高アスペクト比炭素元素は、実質的に炭素原子の円筒形ネットワークを構成することができる。導電性材料は、カーボンナノチューブ又はカーボンナノチューブの複数の束を含むことができる。
【0019】
一実施形態では、アノードに使用される導電性材料は、グラファイトフレークを含むことができる。これについては後述する。
【0020】
導電性材料は、(溶媒を含まない)固体活性層の表面に位置する任意の2つの離れた点の間で電流を伝達することができる導電性パーコレーションネットワーク(本明細書では高アスペクト比炭素元素のネットワークとも呼ばれる)を形成することができる。換言すれば、電極活性層内の導電性要素間の物理的接触又は電子ホッピングにより、電流は活性層の一方の表面又は端部から反対側の表面又は端部に伝達することができる。パーコレーションネットワークは、電極活物質を含有又は収容することができる高アスペクト比炭素要素の間に空隙を含むことができる。高アスペクト比導電性材料は、電極活性層106において集電体と実質的に平行な方向に実質的に配向されて、活性層の厚さ全体にわたってある程度弱い配向を維持しながら、電極の一端から他端への電流の伝導を容易にすることができる。
【0021】
高アスペクト比炭素要素のネットワークは、複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含む第1のセットのカーボンナノチューブと、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含む第2のセットのカーボンナノチューブとを含み、第2のセットのカーボンナノチューブは、第1のセットのカーボンナノチューブとは異なる1つ以上の特性を有する。一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブは多層ナノチューブを含み、第2のセットのカーボンナノチューブは単層ナノチューブを含み、第1のセットのカーボンナノチューブと第2のセットのカーボンナノチューブとの重量比は約2:1である。
【0022】
一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブの第1の平均アスペクト比は、第2のセットのカーボンナノチューブの第2の平均アスペクト比よりも大きい。別の実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは複数の多層カーボンナノチューブを含み、複数の多層カーボンナノチューブの長さの分布は、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っている。別の実施形態では、多層カーボンナノチューブの公称長さは少なくとも15マイクロメートルである。
【0023】
更に別の実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは複数の多層カーボンナノチューブを含み、複数の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は8マイクロメートルを超える長さを有する。更に別の実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは複数の多層カーボンナノチューブを含み、複数の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は12マイクロメートルを超える長さを有する。一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブと第2のセットのカーボンナノチューブの両方が電解質によって膨潤すると、第1のセットのカーボンナノチューブは第2のセットのカーボンナノチューブよりも膨潤する。
【0024】
導電性材料は、混合物(混合物は、導電性材料、電極活物質、結合剤材料及び溶媒を含む)の総重量に基づいて、0.1~2.0、又は0.15~1.2、又は0.3~1重量%(wt%)の量で混合物中に存在することができる。導電性材料は、活性層中の固体の総重量(固体の総重量は、溶媒を除いて、導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質を含む)に基づいて、0.2~3.5、又は0.3~3、又は0.5~2重量%の量で活性層中に存在することができる。
【0025】
高アスペクト比炭素要素は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)、多層カーボンナノチューブ(MWNT)、又は両方の混合物であり得る。
【0026】
単層カーボンナノチューブは、0.5~5.0ナノメートル、好ましくは1.0~3.5ナノメートルの外径を有することができる。単層カーボンナノチューブは、約2.0を超える、好ましくは5.0を超える、好ましくは10.0を超える、50を超える、より好ましくは100を超えるアスペクト比(長さ対直径比)を有することができる。例示的な実施形態では、単層カーボンナノチューブは、5~200の平均アスペクト比を有することができる。
【0027】
単層カーボンナノチューブは、6ナノメートルを超え、好ましくは10ナノメートルを超え、好ましくは15ナノメートルを超え、好ましくは30ナノメートルを超え、好ましくは50ナノメートルを超え、より好ましくは100ナノメートルを超え、好ましくは1マイクロメートルを超え、好ましくは5マイクロメートルを超え、好ましくは10マイクロメートルを超え、より好ましくは15マイクロメートルを超え、少なくとも200マイクロメートルまでの長さを有することができる。例示的な実施形態では、単層カーボンナノチューブは、10ナノメートル~20マイクロメートル、好ましくは20ナノメートル~15マイクロメートルの平均長さを有することができる。
【0028】
単層カーボンナノチューブは、導電性材料、結合剤材料、電極活物質及び溶媒の混合物中に、混合物の総重量に基づいて0.1~0.3重量%、好ましくは0.15~0.25重量%の量で存在することができる。
【0029】
単層カーボンナノチューブは、電極活性層(溶媒を除いた導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質)中に、電極活性層の全重量に基づいて0.2~0.6重量%、好ましくは0.3~0.5重量%の量で存在する。
【0030】
多層カーボンナノチューブにおける炭素壁の数は、2以上、5以上、10以上、50以上であり得る。多層カーボンナノチューブは、平均して3層~15層、4層~12層、5層~10層、6層~8層を含むことができる。
【0031】
活性層106は、多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブを含むことができる。多層カーボンナノチューブは、電極100が配置されているエネルギー貯蔵装置内の電解質で濡れると、単層カーボンナノチューブよりも膨潤する。例えば、多層カーボンナノチューブは、電極100が配置されているエネルギー貯蔵装置内の電解質で濡れると、単層カーボンナノチューブよりも少なくとも15%、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%大きく膨潤することができる。例えば、多層カーボンナノチューブの長さは、電解質で濡れると、単層カーボンナノチューブの長さよりも少なくとも15%、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%大きく膨張することができる。別の例として、多層カーボンナノチューブは、濡れると最大50%膨潤する(例えば、多層カーボンナノチューブの長さは、電解質で濡れた後に50%大きくなり、及び/又は多層カーボンナノチューブの直径は濡れた後に50%大きくなるなど)。
【0032】
多層カーボンナノチューブは、2.0~50ナノメートル、5.0~40ナノメートル、又は6~10ナノメートルの外径を有することができる。多層カーボンナノチューブは、10ナノメートルを超える、15ナノメートルを超える、30ナノメートルを超える、50ナノメートルを超える、100ナノメートルを超える、500ナノメートルを超える、1マイクロメートルを超える、5マイクロメートルを超える、10マイクロメートルを超える、又は15マイクロメートルを超える長さを有することができる。同時に、多層カーボナノチューブは、最大25マイクロメートル又は最大20マイクロメートルの平均長さを有することができる。例示的な実施形態では、多層カーボンナノチューブは、10ナノメートル~20マイクロメートル、又は20ナノメートル~15マイクロメートルの平均長さを有する。多層カーボンナノチューブは、5.0を超える、10.0を超える、50を超える、100を超える、又は500を超えるアスペクト比(長さ対直径比)を有することができる。一実施形態では、多層カーボンナノチューブは分岐ナノチューブであってもよい。
【0033】
電極は、関連技術の電極に含まれる多層カーボンナノチューブと比較して比較的長くなり得る多層カーボンナノチューブを含む。比較的長い多層カーボンナノチューブを電極に使用すると、有益な機械的特性及び/又は電気的特性が得られることが見出されている。例えば、多層カーボンナノチューブは、低密度で比較的優れた出力を提供する。別の例として、より短い多層カーボンナノチューブは、一般に、より長い多層カーボンナノチューブほど膨潤(例えば、膨張)しない。したがって、より短い多層カーボンナノチューブを使用すると、カーボンナノチューブの膨潤に関連する有益な特性の一部が失われる(又は減少する)。極端な例として、カーボンブラックは、多層カーボンナノチューブのセットによって示される絡み合いのような絡み合いを持たない単なる炭素の粒子であるため、膨潤を示さない。一定量の多層カーボンナノチューブの長さが閾値長を超えており、したがって十分な膨潤特性を有することは、カレンダー加工プロセス中の観察によって示され、すなわち、箔への塗布に関連してスラリーをカレンダー加工するための比較的大きな圧力又は労力は、活性層内の多層カーボンナノチューブの集合的な膨潤(例えば、平均膨潤)が特定の性能閾値を満たすことを示す。しかし、多層カーボンナノチューブは一般に加工が難しい。
【0034】
活性層及び/又は電極の作製/形成に関連する多層カーボンナノチューブの加工は、関連技術の電極の加工よりも穏やかである。したがって、様々な実施形態によるプロセスは、より長い多層カーボンナノチューブを維持する(例えば、より少ない多層カーボンナノチューブが粉砕され、断片化され、破壊されるなど)。いくつかの実施形態では、電極の活性層は、関連技術の電極における多層カーボンナノチューブの平均長さよりも長い平均長さを有する多層カーボンナノチューブのセットを含む。様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブのセットの長さの分布は、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っている。一例として、多層カーボンナノチューブの公称長さは約16ミクロンである。例えば、多層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブの破砕又は破壊を低減又は最小限にする方法で加工及び/又は適用される。高アスペクト比炭素要素のネットワークにおける多層カーボンナノチューブの長さは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さであり、又はそのような多層カーボンナノチューブの長さは、公称長さに対してより大きく偏る傾向がある。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも12ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも13ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4ミクロン~約15ミクロン)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも12ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも8ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも13ミクロンの長さを有する。
【0035】
様々な実施形態によれば、多層カーボンナノチューブのセットの長さの分布は、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っている。例えば、多層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブの破砕又は破壊を低減又は最小限にする方法で加工及び/又は適用される。高アスペクト比炭素要素のネットワークにおける多層カーボンナノチューブの長さは、一般に、多層カーボンナノチューブの公称長さであり、又はそのような多層カーボンナノチューブの長さは、公称長さに対してより大きく偏る傾向がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4マイクロメートル~約15マイクロメートル)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも12マイクロメートルの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも75%は、少なくとも13マイクロメートルの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、公称長さの10%以内(例えば、13.4マイクロメートル~約15マイクロメートル)である。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも12マイクロメートルの長さを有する。いくつかの実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワーク内の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、少なくとも13マイクロメートルの長さを有する。
【0037】
多層カーボンナノチューブは、混合物(混合物は、導電性材料、電極活物質、結合剤材料、及び溶媒又は溶媒の組み合わせを含む)中に、混合物の総重量に基づいて、0.3~1.0重量%、好ましくは0.4~0.9重量%の量で存在することができる。多層カーボンナノチューブは、固体アノード活性層(固体活性層は、溶媒を除いて、導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質を含む)中に、固体アノード活物質の全重量に基づいて、0.8~2.6重量%、好ましくは1.0~1.8重量%の量で存在する。
【0038】
多層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブの両方が使用される例では、混合物又は固体活物質層中の多層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブとの重量比は、少なくとも2:1であり得る。
【0039】
一例では、高アスペクト比炭素要素108の三次元ネットワークはカーボンナノチューブを含み、カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブ及び/又はそのようなカーボンナノチューブの断片のみである。
【0040】
別の例では、多層カーボンナノチューブは、導電性材料の重量に基づいて、単層カーボンナノチューブの量の少なくとも2倍の量で混合物又は固体アノード活物質層中に存在する。
【0041】
高アスペクト比炭素要素108の三次元ネットワークのネットワークは、少なくとも99重量%の炭素を含むことができる。
【0042】
高アスペクト比炭素要素(カーボンナノチューブ)に加えて、導電性材料は、任意に、グラファイトフレーク、カーボンブラック、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
グラファイトフレークは、好ましくは、少なくとも1つの寸法が他のどの寸法よりも大きい高アスペクト比グラファイトフレークである。グラファイトフレークは、天然に存在するフレークであっても、商業的に合成されたフレークであってもよい。グラファイトフレークは粒子状であり、楕円形の形状であってもよい。これらのグラファイトフレークのアスペクト比は、2:1~20:1、好ましくは5:1~12:1の範囲であってもよい。一実施形態では、グラファイトフレークに金属イオンを挿入することができる。別の実施形態では、グラファイトフレークは剥離フレークであってもよい。
【0044】
グラファイトフレークは、固体アノード活性層(固体活性層は、溶媒を除いて、導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質を含む)中に、固体アノード活物質の全重量に基づいて、5~65重量%、好ましくは8~50重量%の量で存在し得る。
【0045】
カーボンナノチューブに加えて、カーボンブラックを使用することもできる。カーボンブラックは、典型的には、50平方メートル/グラム(m/gm)を超える、好ましくは200m/gmを超える、より好ましくは500m/gmを超える表面積を有する高表面積カーボンブラックである。高表面積カーボンブラックの一例は、KELTJENブラックである。カーボンブラックは任意であり、固体アノード活性層(固体活性層は、溶媒を除いて、導電性材料、結合剤材料、及び電極活物質を含む)中に、固体アノード活物質の全重量に基づいて、0.5~2.0重量%、好ましくは0.8~1.6重量%の量で存在し得る。
【0046】
高アスペクト比炭素要素108の三次元ネットワークは、パーコレーション閾値を超える接続性を示す電気的に相互接続された炭素要素のネットワークを含むことができ、このネットワークは、100μmを超える長さを有する1つ以上の高導電性経路を画定する。パーコレーション閾値は、導電性要素が互いに接触して、ネットワークの任意の表面上の任意の2点にわたって測定される導電性ネットワークを形成する閾値である。
【0047】
アノード結合剤
一実施形態では、アノード活性層は、ナイロン(すなわち、ポリアミド)、ポリアミドのファミリー、又はポリアミドの誘導体を含むポリマー結合剤を含む。例示的な実施形態では、ポリアミドは、水溶性ポリアミド、アルコール可溶性ポリアミド、又はそれらの組み合わせ(すなわち、水とアルコールの組み合わせに可溶)である。アノード活性層は、水又はアルコールに不溶性のポリマー材料を含まない。換言すれば、アノード活性層は、ポリアミド又は水溶性ではない任意の他のポリマー結合剤を含まない。
【0048】
ポリアミド(アノードポリマー結合剤及びカソードポリマー結合剤に使用される)には、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。一実施形態では、ポリアミドには、アミド基(-C(O)NH-)の存在を特徴とする、ナイロンとして知られる一般的な樹脂ファミリーが含まれる。任意のアミド含有ポリマーを個別に又は組み合わせて使用することができる。ナイロン-6及びナイロン-6,6は、様々な商業的供給源から入手できる適切なポリアミド樹脂である。ただし、他のポリアミド、例えばナイロン-4、ナイロン-4,6(PA 46)、ナイロン-12、ナイロン-6,10、ナイロン-6,9、ナイロン-6,12、ナイロン-9T、ナイロン-6,6とナイロン-6のコポリマー、ナイロン610(PA610)、ナイロン11(PA11)、ナイロン12(PA 12)、ナイロン6-3-T(PA 6-3-T)、ポリアリールアミド(PA MXD 6)、ポリフタルアミド(PPA)及び/又はポリエーテル-ブロックアミド、並びに非晶質ナイロンなどの他のものも有用であり得る。様々なポリアミドの混合物、及び様々なポリアミドコポリマーも有用である。
【0049】
ポリアミドは、米国特許第2,071,250号、同第2,071,251号、同第2,130,523号、同第2,130,948号、同第2,241,322号、同第2,312,966号、及び同第2,512,606号に記載されているような多くの周知の方法によって得ることができる。例えば、ナイロン-6はカプロラクタムの重合生成物である。ナイロン-6,6は、アジピン酸と1,6-ジアミノヘキサンとの縮合生成物である。同様に、ナイロン4,6は、アジピン酸と1,4-ジアミノブタンとの縮合生成物である。アジピン酸の他に、ナイロンの製造に有用な他の二酸には、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、並びにテレフタル酸及びイソフタル酸などが含まれる。他の有用なジアミンとしては、とりわけ、m-キシリレンジアミン、ジ-(4-アミノフェニル)メタン、ジ-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ-(4-アミノシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。カプロラクタムと二酸及びジアミンとのコポリマーも有用である。
【0050】
ポリアミドは一般に、4~12個の炭素原子を有する有機ラクタムの重合から誘導される。一実施形態では、ラクタムは式(I)
【化1】
で表され、式中、nは3~11である。一実施形態では、ラクタムは、nが5に等しいイプシロン-カプロラクタムである。
【0051】
ポリアミドは、4~12個の炭素原子を有するアミノ酸から合成することもできる。一実施形態では、アミノ酸は式(II)








【化2】
で表され、式中、nは3~11である。一実施形態では、アミノ酸は、nが5に等しいイプシロン-アミノカプロン酸である。ポリアミドはまた、4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸及び2~12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから重合することもできる。一実施形態では、脂肪族ジアミンは式(III)、
N-(CH-NH(III)
で表され、式中、nは約2~約12である。一実施形態では、脂肪族ジアミンはヘキサメチレンジアミン(HN(CHNH)である。一実施形態では、ジカルボン酸とジアミンのモル比は0.66~1.5である。この範囲内では、モル比が0.81以上であることが一般に有利である。別の実施形態では、モル比は0.96以上である。更に別の実施形態では、モル比は1.22以下である。更に別の実施形態では、モル比は1.04以下である。本発明において有用なポリアミドの例としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,12、ナイロン10、又は前述のポリアミドの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0052】
ポリアミドの分子量は、200g/molを超え、好ましくは500,000g/molを超え、好ましくは1,000,000g/molを超え、より好ましくは500,000g/mol~1,500,000g/molである。
【0053】
一実施形態では、アノード活性層は、少なくとも0.5重量%、好ましくは0.5~1.5重量%のポリマー添加剤を含む。重量パーセントは、活性層の総重量に基づいている。
【0054】
アノード活物質
一実施形態では、アノードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素は、ネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置され、シリコンを含む複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む活性層を含む。
【0055】
一実施形態では、電極活物質粒子に含まれるシリコンはSiOの形態である。電極活物質粒子に含まれるシリコンはマイクロシリコンである。一実施形態では、電極活物質粒子に含まれるシリコンは、活性層の50重量%を超える。電極活物質粒子中のシリコンは、活性層の少なくとも80重量%である。
【0056】
アノードの要約
一実施形態では、アノードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置され、シリコンを含む複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤を含む活性層を含む。
【0057】
一実施形態では、電極活物質粒子に含まれるシリコンはSiOの形態である。電極活物質粒子に含まれるシリコンはマイクロシリコンである。一実施形態では、電極活物質粒子に含まれるシリコンは、活性層の50重量%を超える。電極活物質粒子中のシリコンは、活性層の少なくとも80重量%である。
【0058】
高アスペクト比炭素要素のネットワークは、カーボンナノチューブのメッシュを含み、カーボンナノチューブのメッシュは、シリコンの膨張中にメッシュに含まれるカーボンナノチューブの少なくとも1つのサブセットの間の電気的接続を維持する。
【0059】
高アスペクト比炭素要素のネットワークは、カーボンナノチューブのメッシュを含み、カーボンナノチューブのメッシュは、電極が含まれる電池の充電及び放電中に、メッシュに存在するカーボンナノチューブの少なくとも1つのサブセット間の電気的接続を維持する。高アスペクト比炭素元素のネットワークについては上記で詳述しており、簡潔にするためにそのほとんどはここでは繰り返さない。しかしながら、カソードに存在する対応するネットワークとは異なる、アノード活性層内の高アスペクト比カーボンナノチューブのネットワークのいくつかの特徴については、ここで詳細に説明する。
【0060】
一実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、空隙内にグラファイト粒子を含む。グラファイトは、一般に、アノード活性層中に最大10重量%、好ましくは最大5重量%の量で存在する。
【0061】
多層カーボンナノチューブ(第1のセットのカーボンナノチューブ)は、アノード活性層の重量に基づいて、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4.5重量%の量でアノード活性層中に存在する。一実施形態では、多層カーボンナノチューブは、アノード活性層の重量に基づいて3~5重量%の量でアノード活性層中に存在する。
【0062】
単層カーボンナノチューブ(第2のセットのカーボンナノチューブ)は、アノード活性層の重量に基づいて、少なくとも1.5重量%、好ましくは少なくとも2重量%の量でアノード活性層中に存在する。
【0063】
一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ(二層カーボンナノチューブを含む))の重量対第2のセットのカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ)の重量は少なくとも5:1、好ましくは少なくとも9:1である。
【0064】
一実施形態では、活性層は、電解質によって膨潤した後に、厚さが増加する。一実施形態では、(アノード又はカソードのいずれかの)活性層は、電解質で濡れると、平均厚さの量が(電解質で濡れる前の初期寸法に基づいて)15%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満増加する。
【0065】
第1のセットのカーボンナノチューブの第1の平均アスペクト比は、第2のセットのカーボンナノチューブの第2の平均アスペクト比よりも大きい。第1のセットのカーボンナノチューブの平均アスペクト比は、少なくとも100から1000まで、好ましくは200~1000である。
【0066】
一実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、複数の多層カーボンナノチューブは、5ミクロンを超える、好ましくは10マイクロメートルを超える平均長さを有する。
【0067】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、アノード及びカソードを含み、アノード又はカソードは、多層カーボンナノチューブを含む第1のセットのカーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブを含む第2のセットのカーボンナノチューブ、及び更にグラファイトを含む高アスペクト比炭素要素のネットワークを含む活性層を含む。活性層は、電解質で濡れると、多層ナノチューブの膨潤が単層カーボンナノチューブよりも少ないことを示す。
【0068】
アノード活性層中のポリマー添加剤は、ポリアミド、好ましくは水溶性ポリアミド、アルコール可溶性ポリアミド、又は水及びアルコールに可溶なポリアミドである。ポリアミドについては以下に詳述し、ここでは繰り返さない。
【0069】
アノード活性層は、20ミクロン~100マイクロメートル、好ましくは30~50マイクロメートルの平均厚さを有する。アノード活性層は、アノード活性層の96~99重量%、好ましくは96~98.5重量%の量のアノード活性粒子(例えばケイ酸塩などのシリコンを含有する)を含む。
【0070】
アノード活性層はまた、高アスペクト比炭素要素の表面上に、高アスペクト比炭素要素と活物質粒子との間の接着を促進する表面処理を含む。表面処理は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、活性層の重量に基づいて少なくとも0.5重量%の量で活性層中に存在し得る。界面活性剤は、高アスペクト比炭素要素に結合される界面活性剤層を形成し、それぞれが疎水性末端及び親水性末端を有する複数の界面活性剤要素を含み、ここで、疎水性末端は炭素要素の1つの表面の近位に配置され、親水性末端は炭素要素の1つの上記表面の遠位に配置される。表面処理は、ポリマー添加剤を含んでもよい(すなわち、それはポリアミドであってもよい)。
【0071】
多層カーボンナノチューブは、活性層の表面に対して垂直な方向に、あるいは電極として使用される金属箔に対して垂直な方向に実質的に整列していてもよい。金属箔は銅又はアルミニウムを含んでもよい。
【0072】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置(すなわち、ウルトラキャパシタ又は電池)は、カソードと、電解質と、アノードとを含み、アノードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置され、シリコンを含む複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤とを含む活性層を含み、ここで、活性層は、充電及び放電サイクル中にシリコンの少なくとも一部が使用されないほど十分なシリコンを含む。
【0073】
アノードの作製
アノードは、最初に溶媒又は溶媒混合物中で導電性要素、活物質及び結合剤の混合物(スラリーと呼ばれることもある)を調製することによって製造することができる。アノードの製造に使用される方法は、カソードの製造にも使用することができる。簡潔にするために、この方法はカソードの製造中に再度繰り返さない。本明細書に記載の結合剤の利点は、水、アルコール、又はそれらの組み合わせを溶媒として使用して有用なスラリーを形成できることである。次いで、スラリーを集電体上に直接コーティングすることも、中間接着層を用いて集電体に塗布することもできる。
【0074】
スラリーは単一のステップで調製することができる。図2A及び図2Bは、アノード又はカソードのいずれかを製造するプロセスを示す。これらは、アノード及びカソードの活性層を製造し、その活性層を集電体に適用する方法を示す。あるいは、スラリーは、図1の電極100に関して提供するプロセス200の一例を説明する図2Aのフローチャートに示されるような多段階プロセスに従って調製することができる。202において、導電性材料、例えば高アスペクト比炭素元素、及び表面処理材料(例えば、界面活性剤、本明細書に記載の結合剤材料、又はその両方)を溶媒(例えば、水、アルコール、又はそれらの組み合わせ)と混合して、最初のスラリーを形成する。204において、任意の追加の結合剤を最初のスラリーに添加して、第2のスラリーを形成することができる。206において、スラリーを金属箔(集電体)に塗布する。スラリー中に存在する溶媒を真空又は加熱によって除去し、集電体上に活性層を形成する。
【0075】
図2Bは、エネルギー貯蔵装置のアノード(又はカソード)を製造する別の方法300を示す。302において、導電性材料、例えば高アスペクト比炭素元素、及び表面処理材料(例えば、界面活性剤、本明細書に記載の結合剤材料、又はその両方)を溶媒(例えば、水、アルコール、又はそれらの組み合わせ)と混合して、最初のスラリーを形成する。材料をブレードミキサー303内で混合することができる。
【0076】
304において、スラリー中の固体材料の良好な分散を保証するために、最初のスラリーを処理する。Li-SiO-C活物質(又はNMC材料)をスラリーに添加してもよい。ステップ306において、グラファイト粉末及び任意の分散剤を添加してもよい。ブレード混合を、混合ステップ305及び307で実施してもよい。ステップ308において、ポリマー溶液を添加してもよく、ステップ310において追加の脱イオン水を添加してもよい。ステップ307及び309においてブレード混合及び分散混合を使用してもよい。次に、ステップ312で調製したスラリーを集電体に添加してもよい。
【0077】
この処理は、(例えば、「sonifier」と呼ばれることもあるソニケーター又は他の適切な混合装置(例えば、高剪断ミキサー)を使用して)溶媒及び固体材料の混合物に機械的エネルギーを導入することを含むことができる。例えば、混合物に導入される機械的エネルギーは、少なくとも0.4キロワット時/キログラム(kWh/kg)、0.5kWh/kg、0.6kWh/kg、0.7kWh/kg、0.8kWh/kg、0.9kWh/kg、1.0kWh/kg、又はそれ以上であり得る。例えば、混合物1キログラム当たり混合物に導入される機械的エネルギーは、0.4kWh/kg~1.0kWh/kgの範囲、又は0.4kWh/kg~0.6kWh/kgなどのその任意の部分範囲であってもよい。
【0078】
一例として、ステップ302、304、又は306で超音波浴ミキサーを使用してもよい。別の例として、プローブソニケーターを使用してもよい。プローブ超音波処理は、ナノ粒子用途の超音波浴と比較して、有意により強力かつ効果的であり得る。超音波キャビテーションによって生成される高い剪断力は、粒子の凝集体を分解する能力を有し、その結果、より小さく、より均一な粒子サイズが得られる。とりわけ、超音波処理により、スラリー中の固体の安定した均質な懸濁液が得られる。一般に、これにより、固体の分散や解凝集、及びその他の分解が生じる。プローブ超音波処理装置の例としては、QSonica LLC of Newtown,Connecticutから入手可能なQシリーズプローブソニケーターが挙げられる。別の例としては、Thomas Scientific of Swedesboro,New Jerseyから市販されているBranson Digital SFX-450ソニケーターが挙げられる。
【0079】
プローブアセンブリ内の各プローブの局所性により、時々、混合や懸濁が不均一になる場合がある。例えば、大きなサンプルの場合にこれが当てはまる場合がある。これは、連続フローセルを備えた装置及び適切な混合を使用することで解決することができる。例えば、そのような装置により、スラリーを混合すると、適度に均一な分散が達成される。
【0080】
最初のスラリーは、一度処理されると、5,000cps~25,000cpsの範囲、又はその任意の部分範囲、例えば6,000cps~19,000cpsの粘度を有することができる。
【0081】
任意のステップ(例えば、ステップ302で結合剤が添加されなかった場合に使用される)において、最初のスラリー中の導電性材料(例えば、高アスペクト比炭素要素)上に表面処理を完全に又は部分的に形成することができるため、結合剤又は追加の結合剤を適用することができる。いくつかの実施形態では、この段階で、表面処理は自己集合する可能性がある。
【0082】
得られる表面処理は、以下の更なるステップで説明するように、高アスペクト比炭素要素と活物質粒子との間の接着を促進することができる官能基又は他の特徴を含むことができる。例えば、結合剤上の官能基は、前述の表面処理を提供することができる。
【0083】
304及び306において、活物質粒子を最初のスラリーと混合して、表面処理が形成された高アスペクト比炭素元素とともに活物質粒子を含有する最終のスラリーを形成することができる。
【0084】
活物質は、最初のスラリーに直接添加されてもよい。あるいは、活物質を最初に溶媒中に(例えば、水、アルコール、又はそれらの組み合わせに、最初の溶媒に関して上述した技術を使用して)分散させて、活物質スラリーを形成することができる。次いで、この活物質スラリーを最初のスラリーと混合して、最終のスラリーを形成することができる。
【0085】
適切な溶媒は、水、アルコール、又はそれらの組み合わせである。アルコールの例は、エタノール、メタノール、プロパノール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はそれらの組み合わせである。水及びアルコールに加えて、ポリマーの可溶化及び/又は分散を促進するために他の溶媒を添加してもよい。他の溶媒としては、極性溶媒、非極性溶媒などが挙げられる。他の溶媒の添加は、好ましくは、水又はアルコール中のポリマーの溶解度を変化させるべきではない。ポリマーを溶解するために、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどの液体非プロトン性極性溶媒又はそれらの組み合わせを水又はアルコールに添加することができる。アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの極性プロトン性溶媒、又はそれらの組み合わせを使用することができる。ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの他の非極性溶媒、又はそれらの組み合わせも使用することができる。少なくとも1つの非プロトン性極性溶媒及び少なくとも1つの非極性溶媒を含む共溶媒もまた、溶媒の可溶化能力を改変するために利用することができる。
【0086】
アノード活性層(アノードに使用される)の溶媒として水及びアルコールが使用される場合、水とアルコールの比は80:20~95:5、好ましくは88:12~92:8である。例示的な実施形態では、水とアルコールの比は90:10である。
【0087】
溶媒は、結合剤、導電性材料及び活物質の混合物に、活性層の形成に使用される固体の総重量の10~1000重量%、好ましくは50~500重量%、より好ましくは100~200重量%の量で添加することができる。固体は、蒸発せず、最終的に電流導体上に配置される活物質層となる材料(例えば、結合剤、導電性材料、及び活物質)を含む。
【0088】
312において、最終のスラリー中の固体材料の良好な分散を保証するために最終のスラリーを処理する。当該技術分野で周知の任意の適切な混合プロセスを使用することができる。例えば、この処理は、303、305、307、309、及び311などを参照して上述した技術を使用することができる。あるいは、多軸(例えば、3軸以上)プラネタリーミキサーなどのプラネタリーミキサーを使用することができる。プラネタリーミキサーは、複数のブレード、例えば2つ以上の混合ブレード、及びディスク分散ブレードなどの1つ以上(例えば2つ、3つ又はそれ以上)の分散ブレードを特徴とすることができる。
【0089】
312の間、表面処理(例えば結合剤)と活物質との間の相互作用が自己集合プロセスを促進するため、活物質を絡めるマトリックスは完全に又は部分的に自己集合する可能性がある。
【0090】
いくつかの実施形態では、最終のスラリーは、一度処理されると、1,000cps~10,000cpsの範囲、又はその任意の部分範囲、例えば2,500cps~6000cpsの粘度を有する。
【0091】
312において、活性層106が最終のスラリーから形成される。いくつかの実施形態では、最終のスラリーを湿った状態で集電体導電層102(又は任意選択の接着層104)上に直接流し込み、乾燥させることができる。一例として、流し込みは、実質的にすべての溶媒及び任意の他の液体が除去されるまで熱及び真空のうちの少なくとも1つを適用することによって行うことができ、それによって活性層106が形成される。下にある層の様々な部分を保護することが望ましい場合がある。例えば、電極100が片面動作を目的とする場合には、導電層102の下面を保護することが望ましい場合がある。保護には、例えば、ある特定の領域をマスキングすることによる溶媒からの保護、又は溶媒を排出するための排水管を設けることが含まれ得る。
【0092】
別の例では、任意の適切な技術(例えば、ロールツーロール層塗布)を使用して、最終のスラリーを別の場所で少なくとも部分的に乾燥させた後、接着層104又は導電層102上に移して活性層106を形成することができる。別の例として、湿った混合スラリーを、適切な表面を有する中間材料上に配置し、乾燥させて層(例えば、活性層106)を形成することができる。適切な表面を有する任意の材料を中間材料として使用することができるが、例示的な中間材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。これは、その特性によりその後の表面からの除去が容易になるからである。この層をプレスで形成して、所望の厚さ、面積、及び密度を示す層を提供することができる。
【0093】
更に別の例では、最終のスラリーをシートに形成し、必要に応じて接着層104又は導電層102上にコーティングすることができる。例えば、最終のスラリーを、スロットダイを通して塗布して、塗布層の厚さを制御することができる。別の例として、スラリーを塗布し、その後、例えばドクターブレードを使用して、所望の厚さまで平らにすることができる。スラリーを塗布するために様々な他の技術を使用することができる。例えば、コーティング技術としては、コンマコーティング、コンマリバースコーティング、ドクターブレードコーティング、スロットダイコーティン、ダイレクトグラビアコーティング、エアドクターコーティング(エアナイフ)、チャンバードクターコーティング、オフセットグラビアコーティング、ワンロールキスコーティング、小径グラビアロールによるリバースキスコーティング、バーコーティング、3リバースロールコーティング(トップフィード)、3リバースロールコーティング(ファウンテンダイ)、リバースロールコーティングなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0094】
最終のスラリーの粘度は、塗布技術によって異なる場合がある。例えば、コンマコーティングの場合、粘度は約1,000cps~約200,000cpsの範囲であり得る。リップダイコーティングは、約500cps~約300,000cpsの粘度を示すスラリーによるコーティングを提供する。リバースキスコーティングは、約5cps~1,000cpsの粘度を示すスラリーによるコーティングを提供する。一部の用途では、それぞれの層を複数のパスによって形成することができる。
【0095】
所望であれば、最終のスラリーから形成された活性層106は、電極100に適用される前又は後に(例えば、カレンダー加工装置を使用して)圧縮することができる。スラリーを、圧縮プロセスの前又は圧縮プロセス中に(例えば、熱、真空、又はそれらの組み合わせを適用することによって)部分的に又は完全に乾燥させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、活性層は、(例えば、集電体層102に垂直な方向)にその圧縮前の厚さの90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%又はそれ未満の最終厚さまで圧縮することができる。
【0096】
コーティング又は圧縮プロセス中に部分的に乾燥した層が形成される場合、その層を、その後、(例えば、熱、真空、又はそれらの組み合わせを適用することによって)完全に乾燥させることができる。いくつかの実施形態では、実質的にすべての溶媒が活性層106から除去される。
【0097】
スラリーの形成に使用される溶媒は、回収してスラリー製造プロセスにリサイクルすることができる。
【0098】
活性層106を圧縮して、例えば、構成要素である高アスペクト比炭素元素又は他の炭素質材料の一部を破壊して、それぞれの層の表面積を増加させることができる。この圧縮処理により、層間の接着性、層内のイオン輸送速度、及び層の表面積のうちの1つ以上を増加させることができる。様々な実施形態では、圧縮は、それぞれの層が電極100に適用されるか、又は電極100上に形成される前又は後に適用することができる。
【0099】
活性層106を圧縮するためにカレンダー加工を使用する場合、カレンダ加工装置は、層の圧縮前の厚さの90%、80%、70%、50%、40%、30%、20%、10%又はそれ未満のギャップ間隔で設定することができる(例えば、層の圧縮前の厚さの約33%に設定)。カレンダーロールは、例えばロール長1cm当たり1トン超、ロール長1cm当たり1.5トン超、ロール長1cm当たり2.0トン超、ロール長1cm当たり2.5トン超、又はそれ以上の適切な圧力を提供するように構成することができる。圧縮後の活性層は、1g/cc~10g/ccの範囲、又は2.0g/cc~4.0g/ccなどのその任意の部分範囲の密度を有することができる。なお、カソード活性層は2~4g/ccの密度を有する。アノード活性層は、一般に、1.0~1.8g/ccの密度を有する。カレンダー加工プロセスは、20℃~140℃の範囲、又はその任意の部分範囲の温度で実施することができる。いくつかの実施形態では、活性層106は、カレンダー加工の前に、例えば20℃~100℃の範囲又はその任意の部分範囲の温度で予熱することができる。
【0100】
図2Bのプロセス300は、以下の特徴のいずれかを(個別に、又は任意の適切な組み合わせで)含んでもよい。
【0101】
最初のスラリーは、0.1重量%~20.0重量%(又はその任意の部分範囲)の固形分を有し、及び/又は最終のスラリーは、10.0重量%~80重量%(又はその任意の部分範囲)の範囲の固形分を有する。
【0102】
前述したように、導電性材料及び結合剤の足場又はマトリックスは、活物質粒子を一緒に保持して、金属集電体にも強力に付着する凝集層を形成することができる。このような活物質構造は、スラリーの調製中、並びにその後のロールツーロール(「R2R」)コーティング及び乾燥プロセス中に形成することができる。本技術の主な利点の1つは、そのスケーラビリティと「ドロップイン」性であり、これは、様々な実施形態が従来の電極製造プロセスと互換性があるからである。
【0103】
マトリックスは、本明細書に記載の技術を使用してスラリー調製中に形成することができる。例えば、図2A及び図2Bのプロセス200及び300を参照して上述したものを使用して、高アスペクト比炭素材料を適切に分散させ、所望に応じて化学的に官能化する。化学官能基化は、活物質粒子、例えば、カソードで使用するためのNMC粒子(以下に詳述)又はアノードの場合にはシリコン粒子(「Si」)若しくは酸化シリコン(「SiOx」)粒子の表面と共に組織化された自己集合構造を形成するように設計される。このように形成されたスラリーは、カソードについては水及び/又はアルコール溶媒をベースとし、アノードについては水をベースとすることができ、そのような溶媒は、製造プロセス中に非常に蒸発しやすく、取り扱いが容易である。静電相互作用は、スラリー内の自己集合構造を促進し、乾燥プロセス後、そのように形成された活物質粒子を含む炭素マトリックスと集電体の表面との間の結合は、表面処理(例えば、マトリックス上の官能基)及び炭素マトリックス中の活物質の強力な絡み合いによって促進される。
【0104】
電極の機械的特性は、表面官能化対絡み合い効果を調整することによって、用途及び質量負荷要件に応じて変更することができる。
【0105】
コーティング及び乾燥後、電極にカレンダー加工のステップを行って、活物質の密度及び気孔率を制御することができる。NMCカソード電極では、3.5g/cc以上の密度と20%以上の気孔率を達成することができる。質量負荷及びリチウムイオン電池セルの要件に応じて、気孔率を最適化することができる。酸化シリコン又はシリコンベースのアノードの場合、リチウム化プロセス中の活物質の膨張に対応するために気孔率を特定的に制御することができる。
【0106】
本明細書の教示は、最大20%の$/kWhの低減をもたらす可能性がある。水、アルコール、又は水とアルコールの混合物を溶媒として使用するにより、これらの溶媒は容易に蒸発し、電極製造スループットをより高くすることができ、そして更に重要なことに、長時間の乾燥機によるエネルギー消費を大幅に削減することができる。NMP又は同様の化合物を溶媒として使用する場合に必要とされる従来の回収システムも、水、アルコール、又はそれらの組み合わせを使用する場合には大幅に簡素化される。
【0107】
本明細書の教示は、PVDFなどの従来の結合剤を使用する電極と比較して電極の導電率を10倍から100倍劇的に高めることができる3Dマトリックスを有する活性層を提供し、これにより電池レベルでの高速充電が可能になる。この技術により、集電体の片面(又はそれ以上)あたり最大150umのカソードの厚い電極コーティングが可能である。強力な3Dカーボンマトリックスと組み合わせてスラリーに使用される溶媒は、乾燥ステップ中に亀裂を生じることなく厚い湿潤コーティングが得られるように設計される。高容量アノードを備えた厚いカソードにより、エネルギー密度が400Wh/kg以上に大幅に向上することが可能になる。
【0108】
カソード
カソードは、1つ以上のポリマー結合剤(カソードポリマー結合剤)、1つ以上の活物質、及び導電性材料を含む。1つ以上のポリマー結合剤、1つ以上の活物質、及び導電性材料を溶媒と混合して、カソード混合物を形成する。次いで、カソード混合物を集電体(通常は金属)上に配置し、乾燥させて固体のカソード活性層を形成する。
【0109】
カソードポリマー結合剤(カソードに使用される)は、ポリアミドを含む第1のカソードポリマー結合剤を含む。ポリアミドについては上記で詳述しており、簡潔にするために再度詳述しない。
【0110】
カソードポリマー結合剤は、カソード混合物(カソードポリマー結合剤(第1の及び第2のカソードポリマー結合剤)、カソード活物質、カソード導電性材料及び溶媒を含む)の重量に基づいて、0.1~0.4重量%、好ましくは0.15~0.375重量%の量で存在する。カソードポリマー結合剤は、カソード活性層の総重量に基づいて、0.2~0.5重量%、好ましくは0.25~0.45重量%の量でカソード活性層中に存在する。
【0111】
カソード活物質
カソード活物質は、コバルト酸リチウム(LCO、「コバルト酸リチウム(lithium cobaltate)」又は「コバルト酸リチウム(lithium cobaltite)」と呼ばれることもある)を含むことができる。LCO配合物の例としては、LiCoO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC、LiNiMnCoの変形式を有する)、リチウムマンガン酸化物(LiMn、LiMnOなどの変形式又はそれらの組み合わせを有するLMO)、チタン酸リチウム酸化物(LTO、1つの変形式はLiTi12である)、リン酸鉄リチウム酸化物(LFP、1つの変形式はLiFePO)である)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(及びNCAとしてのその変形)、並びに他の類似の材料が挙げられる。前述のものの他の変形が含まれてもよい。
【0112】
一実施形態では、カソード活物質は、NMC、NCA、NCMA、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0113】
NMCをカソード活物質として使用する場合、ニッケルに富むNMCを使用することができる。例えば、NMCの変形は、LiNiMnCo(1-x-y)であってもよく、式中、xは、約0.7、0.75、0.80、0.85以上であり、yは、0.1、0.15、0.2又は0.25以上であり、x+yは、1未満である。例えば、xが約0.8、yが約0.1である、NMC811を使用することができる。あるいは、カソード活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト(LiNiMnCo)の酸化物を含むことができる。活物質層に使用できるこの式の変形には、NMC 111(以下に詳述)、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2)、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2)、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0114】
一実施形態では、NMC91をカソード活物質として使用することができる。NMC91は91モル%以上のニッケルを含む。NMC91の一例は、LiNi0.91Co0.06Mn0.03である。Li[Ni1-x-yCoAl]ONCA)もカソード活物質として使用することができる。NCAの一例はNCA89である。
【0115】
更に別の実施形態では、カソード活物質はNCMA材料であってもよい。NCMAの一例は、NCMA89とも呼ばれるLi[Ni0.89Co0.05Mn0.05Al0.01]Oである。
【0116】
一実施形態では、カソード活物質は、ニッケル、マンガン、及びコバルトのニッケルに富む組み合わせを含むこともできる。リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCoO2)(NMCと略称)は、強力な総合的性能、優れた比エネルギー、及びすべての主流のカソード粉末の中で最も低い自己発熱率を実現する。NMC粉末は、NMCブレンドの総重量に基づいて、20~40重量%の量のニッケル、20~40重量%の量のマンガン、及び20~40重量%の量のコバルトを含むことができる。「NMC粉末」という用語は様々なブレンドを指すことができるが、33重量%のニッケル、33重量%のマンガン、及び33重量%のコバルトを含むブレンドを使用することが望ましい。1-1-1(NMC 111)と呼ばれることもあるこのブレンドは、ニッケル、マンガン、及びコバルトのニッケルに富む組み合わせ(NMC)のコバルト含有量の低下により材料コストが低減されるため、頻繁なサイクリング(自動車、エネルギー貯蔵)を使用する用途に有用である。NMC粉末は、NMCブレンドの総重量に基づいて、20~40重量%の量のニッケル、20~40重量%の量のマンガン、及び20~40重量%の量のコバルトを含むことができる。「NMC粉末」という用語は様々なブレンドを指すことができるが、33重量%のニッケル、33重量%のマンガン、及び33重量%のコバルトを含むブレンドを使用することが望ましい。1-1-1と呼ばれることもあるこのブレンドは、コバルト含有量の低下により材料コストが低減されるため、頻繁なサイクリング(自動車、エネルギー貯蔵)を使用する用途に有用である。リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCoO)は、強力な総合的性能、優れた比エネルギー、及びすべての主流のカソード粉末の中で最も低い自己発熱率を実現する。BASFによって製造される424及び523などのリチウムに富むNCM材料も、カソード活物質として使用することができる。
【0117】
一般に、カソードへの活物質の充填量を増やすと(カソードの総重量に応じて測定)、カソードの面積容量及び比エネルギーのレベルが増加する。
【0118】
上述したように、カソード活物質は、カソード活性層中に存在する高アスペクト比導電性材料のネットワーク内に含有又は収容することができる。カソード活物質は、カソードを形成するために使用される混合物中に、カソード混合物(カソード活性層を製造するために使用される、カソード結合剤材料、カソード活物質、カソード導電性材料及び溶媒を含む混合物)の総重量に基づいて、90~99重量%、好ましくは96~98.5重量%の量で存在することができる。カソード活物質は、カソード活性層(溶媒を含まない)中に、カソード活性層の総重量に基づいて95~98.5重量%の量で存在する。
【0119】
カソード活性層の製造
カソード活性層は集電体上に配置される。カソード活性層は、アノード活性層と同様の方法で製造される。カソード結合剤、カソード活物質及びカソード導電性材料を溶媒と混合してスラリーを形成する。スラリーをカソード集電体上に配置する。溶媒を蒸発させ、ロールミルでカソード集電体に更なる仕上げ操作を行ってカソードを形成し、その後、以下に詳述するエネルギー貯蔵装置内で使用することができる。
【0120】
カソードの要約
一実施形態では、カソードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤とを含む活性層を含む。
【0121】
カソードは、複数の第1のカーボンナノチューブ又は第1のカーボンナノチューブの複数の束を含む第1のセットのカーボンナノチューブと、複数の第2のカーボンナノチューブ又は第2のカーボンナノチューブの複数の束を含む第2のセットのカーボンナノチューブとを含む高アスペクト比炭素要素のネットワークを含み、第2のセットのカーボンナノチューブは、第1のセットのカーボンナノチューブとは異なる1つ以上の特性を有する。
【0122】
第1のセットのカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブを含む。第2のセットのカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを含む。一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブを含み、第2のセットのカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを含み、第1のセットのカーボンナノチューブと第2のセットのカーボンナノチューブとの重量比は約2:1である。
【0123】
一実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブのセットを含む。多層カーボンナノチューブの一部は、分岐し、互いにかみ合い、絡み合い、及び/又は共通の壁を共有する。活性層は、0.2~2重量%の多層カーボンナノチューブ、又は0.25~1.5重量%の多層カーボンナノチューブを含む。
【0124】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置は電解質と、アノードと、カソードとを含み、電解質で濡れると、カソード活性層の多層ナノチューブ(第1のセットのカーボンナノチューブ)は単層カーボンナノチューブ(第2のセットのカーボンナノチューブ)よりも膨潤する。
【0125】
一実施形態では、カソード活性層の多層カーボンナノチューブは、6nm~10nm又は6nm~15nmの平均直径、6nm~7nmの平均壁厚、及び約16マイクロメートルの平均長さを含む。一実施形態では、カソード活性層は、1nm~5nmの平均直径及び約5マイクロメートル以上から最大約200マイクロメートルまでの平均長さを有する単層カーボンナノチューブを含むことができる。一実施形態では、カソード活性層は、2nm~4nmの平均直径及び約6マイクロメートル以上から最大約8マイクロメートルまでの平均長さを有する単層カーボンナノチューブを含むことができる。単層カーボンナノチューブは、平均して1層又は2層の壁を含む。
【0126】
一実施形態では、カソード活性層に使用されるカーボンナノチューブは、電解質で濡れると、平均厚さの増加(直径の増加)が10%未満である。一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブの第1の平均アスペクト比は、第2のセットのカーボンナノチューブの第2の平均アスペクト比よりも大きい。別の実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは複数の多層カーボンナノチューブを含み、複数の多層カーボンナノチューブの長さの分布は、多層カーボンナノチューブの公称長さに向かって偏っており、ここで多層カーボンナノチューブの公称長さは少なくとも15マイクロメートルである。
【0127】
一実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは複数の多層カーボンナノチューブを含み、複数の多層カーボンナノチューブの少なくとも50%は、8マイクロメートルを超える、好ましくは12マイクロメートルを超える長さを有する。
【0128】
一実施形態では、第1のセットのカーボンナノチューブの平均アスペクト比は、少なくとも100、好ましくは200~1000である。一実施形態では、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、複数の多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブのセットを含み、複数の多層カーボンナノチューブは、少なくとも5層の壁、好ましくは少なくとも6層の壁、より好ましくは少なくとも7層の壁を有する。
【0129】
別の実施形態では、カソード活性層に使用される高アスペクト比炭素要素は、カーボンナノ構造、カーボンナノ構造の断片、及び破砕された多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0130】
一実施形態では、カソード活性層は、ナイロン(すなわち、ポリアミド)を含むポリマー結合剤を含む。例示的な実施形態では、ポリアミドは、水溶性ポリアミド、アルコール可溶性ポリアミド、又はそれらの組み合わせ(すなわち、水とアルコールの組み合わせに可溶)である。カソード活性層は、水又はアルコールに不溶性のポリマー材料を含まない。換言すれば、カソード活性層は、ポリアミド又は水溶性ではない任意の他のポリマー結合剤を含まない。
【0131】
ポリアミドの分子量は、200g/molを超え、好ましくは500,000g/molを超え、好ましくは1,000,000g/molを超え、より好ましくは500,000g/mol~1,500,000g/molである。
【0132】
一実施形態では、カソード活性層は、少なくとも0.5重量%、好ましくは0.5~1.5重量%のポリマー添加剤を含む。重量パーセントは、活性層の総重量に基づいている。
【0133】
一実施形態では、カソード活性層は、20~100マイクロメートル、好ましくは30~80マイクロメートルの平均厚さを有する。
【0134】
一実施形態では、活性層に存在する活物質粒子は、リン酸鉄リチウム、リチウム金属酸化物、リチウム硫黄、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム酸化物、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0135】
一実施形態では、カソード活物質は、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO、LiNiMhCoO、及びLiNi1-x-y-zCoM1M2からなる群から選択される少なくとも1つの電極活物質の粒子を含む(式中、M1及びM2は、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群からそれぞれ独立して選択され、x、y、及びzは、酸化物の対応する構成元素の原子分率を表し、かつ0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5の関係を満たす)。活性層は、少なくとも96重量%、好ましくは96.0重量%~98.5重量%の活物質粒子を含有する。
【0136】
一実施形態では、カソード活性層は、約25重量%の分散剤を含む。
【0137】
一実施形態では、カソード活性層は、高アスペクト比炭素要素の表面上に、高アスペクト比炭素要素と活物質粒子との間の接着を促進する表面処理を含む。一実施形態では、表面処理は、202℃未満、好ましくは185℃未満の沸点を有する溶媒に可溶な材料を含む。一実施形態では、表面処理は界面活性剤層を含み、ここで、界面活性剤層は、高アスペクト比炭素要素に結合され、それぞれが疎水性末端及び親水性末端を有する複数の界面活性剤要素を含み、疎水性末端は炭素要素の1つを含む表面の近位に配置され、親水性末端は炭素要素の1つを含む上記表面の遠位に配置される。
【0138】
一実施形態では、表面処理はポリマー添加剤(ポリアミド)を含む。別の実施形態では、ポリマー添加剤はポリマー結合剤である。ポリマー添加剤は、高アスペクト比炭素元素のネットワークによって画定される少なくとも1つの空隙内に少なくとも部分的に配置される。ポリマー添加剤は、1.135g/cmを超える、好ましくは1.20g/cmを超える比重を有する。ポリマー添加剤は、23℃で2.0J/g℃を超える、好ましくは23℃で2.2J/g℃を超える、より好ましくは23℃で2.4J/g℃を超える比熱を有する。ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、70MPa未満、好ましくは50MPa未満、好ましくは25MPa未満、好ましくは10MPa未満、好ましくは7.5MPa未満の引張強度を有する。ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、5~6MPaの引張強度を有する。
【0139】
ポリマー添加剤は、ポリマー添加剤が乾燥しているときに測定した場合、5%を超える、好ましくは10%を超える、好ましくは20%を超える、より好ましくは30%を超える降伏点伸びを有する。引張強度及び降伏点伸びは、ASTM D 638に従って測定される。
【0140】
ポリマー添加剤は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して10℃/分の温度変化率で測定した場合、0℃未満、好ましくは-10℃未満、好ましくは-25℃未満、好ましくは-30℃未満、好ましくは-45℃未満のガラス転移温度を有する。ポリマー添加剤の5%重量減少温度は375℃~400℃である。
【0141】
ポリマー添加剤とエチルセロソルブの混合物を冷却すると、ポリマー添加剤はゲル化を示す。ポリマー添加剤は、水、エチレングリコール、ベンジルアルコール、酢酸、N-メチルピロリドン及びイソブタノールのそれぞれに完全に溶解する。
【0142】
一実施形態では、ポリマー添加剤と、水及びアルコールの少なくとも一方との水溶液は、ポリマー添加剤の約50重量%の濃度で少なくとも60Pa・sの粘度を示す。一実施形態では、ポリマー添加剤と水溶性ポリマーの混合物は、透明な混合物を形成する。
【0143】
活性層は、水又はアルコールに不溶性のポリマー材料を含まない。
【0144】
一実施形態では、エネルギー貯蔵装置(ウルトラキャパシタ又は電池であり得る)は、アノードと、電解質と、カソードとを含み、カソードは、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び(i)ポリアミドのファミリーから選択されるもの、又は(ii)変性ポリアミド若しくはポリアミドの誘導体のうちの少なくとも1つであるポリマー添加剤とを含むカソード活性層を含む。
【0145】
別の実施形態では、電極は、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク(ここで、高アスペクト比炭素元素のネットワークは、多層カーボンナノ構造、多層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノ構造の断片、及び破砕された多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む)、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、及び水又はアルコールに可溶なポリアミドであるポリマー添加剤を含む活性層を含む。
【0146】
別の実施形態では、電極は、高アスペクト比炭素要素のネットワークであって、高アスペクト比炭素要素はネットワーク内の空隙を画定する、ネットワーク、ネットワーク内の空隙に配置された複数の電極活物質粒子、水又はアルコールに可溶なポリアミドであるポリマー添加剤を含む活性層を含み、ここで、高アスペクト比炭素元素のネットワークは、1つ以上の高導電性経路を形成し、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、多層カーボンナノチューブを含み、高アスペクト比炭素要素のネットワークは、複数の電極活物質粒子の少なくとも一部に機械的支持を提供し、ポリマー添加剤は、複数の電極活物質粒子の少なくとも一部に支持を提供する。
【0147】
エネルギー貯蔵装置
電極100が組み立てられると、電極100を使用してエネルギー貯蔵装置を組み立てることができる。エネルギー貯蔵装置の組み立ては、電極をセパレータと組み立て、キャニスター又はパウチなどのハウジング内に配置するために使用される従来のステップに従うことができ、更に電解質の添加及びハウジングの封止のための追加のステップを含み得る。
【0148】
1つの例示的な実施形態は、カソード内のNiリッチNMC活物質と、アノード内のSiOx及びグラファイトブレンド活物質とを組み合わせたパウチセル形式のLiイオン電池エネルギー貯蔵装置を含み、ここで、アノードとカソードの両方は、本明細書に記載されるような3Dカーボンマトリックスプロセスを使用して製造される。
【0149】
パウチセル装置の一例の電極配置の概略図を図3に示す。図示のように、カソード活性層760(例えば、本明細書に開示される様々な実施形態による活性層)を集電体710(例えば、アルミニウム箔集電体)の両側に配置して、2つの片面アノードの間に配置された両面カソードを形成する。片面アノードはそれぞれ、集電体720又は730(例えば、銅集電体)上に配置されたアノード層740又は750(例えば、本明細書に開示されるような炭素元素のネットワークを含む活性層)を有する。電極は、電解質(図示せず)で濡れた透過性セパレータ材料780によって分離される。この配置は、当該技術分野で周知のタイプのパウチセル内に収容することができる。
【0150】
図4には、エネルギー貯蔵装置(ESD)810の断面が示されている。エネルギー貯蔵装置(ESD)810は、ハウジング811を含む。ハウジング811は、その外部に配置された2つの端子800を有する。端子800は、ハウジング811内に収容された蓄電セル812への内部電気的接続と、負荷又は充電装置(図示せず)などの外部装置への外部電気的接続とを提供する。本明細書に開示されるエネルギー貯蔵装置は、電池、キャパシタ、ウルトラキャパシタなどであってもよい。
【0151】
あるいは、本開示は、本明細書に開示される任意の適切な構成要素を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなり得る。本開示は、追加的に又は代替的に、従来技術の組成物で使用されるか、又はそうでなければ本発明の機能及び/又は目的の達成に必要ではない任意の構成要素、材料、成分、アジュバント若しくは種を含まないか、又は実質的に含まないように配合することができる。
【0152】
引用されたすべての特許、特許出願、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本出願の用語が組み込まれた参考文献の用語と矛盾又は対立する場合、本出願からの用語が、組み込まれた参考文献からの矛盾する用語に優先する。
【0153】
本明細書に別段の指定がない限り、すべての試験基準は、本出願の出願日、又は優先権が主張されている場合には、その試験基準が記載されている最も早い優先権出願の出願日の時点で有効な最新の基準である。
【0154】
本発明をいくつかの実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を同等物で置き換えることができることは当業者には理解されるであろう。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の態様として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。
図1
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】