(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20241128BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241128BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241128BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241128BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241128BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61P43/00 121
A61K35/12
A61P31/14
G01N33/569 L
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527607
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022081676
(87)【国際公開番号】W WO2023084055
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523293574
【氏名又は名称】アールキュー・バイオテクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RQ Biotechnology Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ソーミナーデン,コビレン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
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4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB33
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
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4H045BA41
4H045DA76
4H045EA29
4H045EA53
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体と、COVID-19を含むコロナウイルス感染症並びにコロナウイルス感染症と関連する疾患及び/又は合併症の予防、処置及び/又は診断におけるその方法及び使用とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2コロナウイルスのスパイクタンパク質に結合することができる抗体であって、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに/又は
(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、若しくは
(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む抗体。
【請求項2】
(a)前記スパイクタンパク質のS1サブユニット上のエピトープ、任意選択的に前記S1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)上のエピトープ、又は
(b)三量体スパイクタンパク質を構成する高次構造への結合を通して生じる四級エピトープ
に特異的に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)配列番号4、32又は35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び
(b)配列番号9、14、19又は24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
IgG1 Fc領域を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
前記Fc領域は、野生型IgG1 Fc配列(配列番号26)と比較して1つ以上のアミノ酸置換を更に含む、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
前記Fc領域は、M252Y/S254T/T256E(「YTE」)、M428L/N434S(「LS」)、S239D/I332E(「DE」)、M252Y/T256D(「YD」)、T256D/T307Q(「DQ」)及び/若しくはT256D/T307W(「DW」)又はそれらの任意の組合せから選択されるアミノ酸置換の組合せを含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
(a)配列番号5、33又は36に対して少なくとも80%の配列同一性をそれぞれ有する2つの完全長IgG1重鎖、及び
(b)配列番号10、15、20又は25に対して少なくとも80%の配列同一性をそれぞれ有する2つの完全長カッパ軽鎖
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
SARS-CoV-2の少なくとも2つの異なるバリアントに5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満又は0.1nM未満のK
D値で結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、オミクロン(B.1.1.529)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントから選択される2つ以上のSARS-CoV-2バリアントに対して0.02g/ml未満のIC
50値を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントから選択される2つ以上のSARS-CoV-2バリアントに対して0.06μg/ml未満のIC
80値を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(f)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(g)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(h)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(j)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(k)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、又は
(l)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
(a)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(b)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(c)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(d)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(e)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(f)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(g)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(h)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(i)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(j)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(k)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、又は
(l)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
(a)配列番号4、32又は35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、
(b)配列番号9、14、19又は24の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む第1の軽鎖、
(c)前記第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、及び
(d)第2の軽鎖
を含む二重特異性抗体であって、前記第1の重鎖は、前記第1の軽鎖と会合して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上のエピトープ又は三量体スパイクタンパク質を構成する高次構造への結合を通して生じる四級エピトープに特異的に結合する第1の結合ドメインを形成し、及び前記第2の重鎖は、前記第2の軽鎖と会合して、第2の結合ドメインを形成する、二重特異性抗体。
【請求項14】
(a)前記第2の軽鎖は、前記第1の軽鎖と同じであるか、又は
(b)前記第2の軽鎖は、前記第2の重鎖と同じ抗体クローンに由来する、請求項13に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又は二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項17】
請求項15に記載のポリヌクレオチド又は請求項16に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体若しくは二重特異性抗体、請求項15に記載のポリヌクレオチド又は請求項16に記載のベクター及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の2つ以上の抗体、請求項15に記載の2つ以上のポリヌクレオチド又は請求項16に記載の2つ以上のベクター及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
SARS-CoV-2に結合することができる1つ以上の追加の抗体を更に含む、請求項18又は19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
薬剤として使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体若しくは二重特異性抗体、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の宿主細胞又は請求項18~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
任意選択的にコロナウイルスがSARS-CoV-2である、コロナウイルス感染症と関連する疾患又は合併症を処置又は予防する方法で使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体若しくは二重特異性抗体、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の宿主細胞又は請求項18~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
コロナウイルス感染症と関連する疾患又は合併症を有する対象を処置する方法であって、治療有効量の、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体若しくは二重特異性抗体、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の宿主細胞又は請求項18~20のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項24】
コロナウイルス感染症と関連する疾患又は合併症であって、任意選択的に、前記疾患は、COVID-19又はlong COVIDである、疾患又は合併症を処置又は予防するための薬剤の製造に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体若しくは二重特異性抗体、請求項15に記載のポリヌクレオチド、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の宿主細胞又は請求項18~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を生成する方法であって、本発明の宿主細胞を培養することと、前記培養から前記抗体を単離することとを含む方法。
【請求項26】
試料中のコロナウイルス又はその構成要素若しくは断片の存在を特定する方法であって、
(a)前記試料を、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体と接触させることと、
(b)前記抗体が抗体-抗原複合体を形成するかを判定することと
を含み、前記抗体-抗原複合体の前記形成は、前記試料がコロナウイルスについて陽性であることを示し、任意選択的に、前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2に結合する抗原結合分子、特に抗体、その断片及びバリアントと、COVID-19を含むコロナウイルス感染症の予防、処置及び/又は診断における前記抗原結合分子の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
SARS-CoV-2は、2020年1月、中国の武漢で重度のウイルス呼吸器疾患の大発生の原因として最初に特定された新規のベータコロナウイルスである。この疾患(その後、COVID-19と命名)は、世界的なパンデミックと宣言された。
【0003】
SARS-CoV-2のいくつかのバリアントが出現し、現在流行している。これらは、アルファ(別名B.1.1.7、2020年9月に英国で最初に実証された)、ベータ(別名501Y.V2又はB.1.351、2020年5月に南アフリカで最初に実証された)、ガンマ(別名P.1又は501Y.V2、2020年11月にブラジルで最初に実証された)、デルタ(別名B.1.617.2、2020年10月にインドで最初に実証された)及びオミクロン(B.1.1.529、2021年11月に複数の国で最初に実証された)を含む。
【0004】
SARS-CoV-2等のコロナウイルスは、4つの構造タンパク質、ヌクレオカプシド、エンベロープ、膜及びスパイク(S)タンパク質を有する。SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、3つのスパイクモノマーを含むホモ三量体構造を形成する。各スパイクモノマーは、S1サブユニット及びS2サブユニットを含む。S1サブユニットは、N末端ドメイン(NTD)及び受容体結合ドメイン(RBD)を更に含む。三量体スパイクタンパク質は、標的細胞に係合し、且つアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)細胞表面受容体との係合を介して標的細胞膜との融合をトリガーすることを担う。
【0005】
現在承認されているSARS-CoV-2ワクチンは、最初の武漢バリアント(hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019)のSタンパク質に対する免疫応答を誘導するように設計されている。しかしながら、SARS-CoV-2バリアントの多くは、Sタンパク質内に変異を含有する。したがって、ワクチン接種又はhCoV-19/Wuhan/WIV04/2019の以前の感染に応答して生成される抗体は、これらの株及び現在特定されていない株を認識する点であまり有効でなく、ワクチンの失敗のより大きいリスク及びブレークスルー感染又は以前に感染した個人における繰返し感染に対する感受性の増大に至るおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、COVID-19及びLong COVIDを含むコロナウイルス感染症並びにコロナウイルス感染症と関連する疾患及び/又は合併症を予防、処置及び/又は診断するための向上した抗体を提供することを目的とする。特に、本発明は、SARS-CoV-2の複数の知られているバリアント及びスパイクタンパク質において更なる変異を有する現在特定されていないバリアントに対して幅広い活性を有する抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合して、SARS-CoV-2を中和するのに有効であるヒトモノクローナル抗体(mAb)に関する。
【0008】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、スパイクタンパク質のS1サブユニット上のエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、本発明の抗体は、S1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)上のエピトープに特異的に結合する。代替の実施形態では、本発明の抗体は、三量体スパイクタンパク質を構成する高次構造への結合を通して生じる四級エピトープに結合する。
【0009】
好ましくは、本発明の抗体は、SARS-CoV-2の複数のバリアントに対して広く有効である。例えば、本発明の抗体は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020(hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019関連バリアント、パンデミックの初期に豪州で単離されたため、「ビクトリア」バリアントとしても知られている)、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P1)、デルタ(B1.617.2)及び/若しくはオミクロン(B.1.1.529)バリアント並びに/又は他のバリアント、注目すべきバリアント(VOI)及び特に他の懸念されるバリアント(VOC)の一部若しくは全てを中和するのに有効であり得る。
【0010】
「懸念されるバリアント」が意味するのは、世界保健機関(WHO)により、現在の実用的定義又は他の関連する任意の基準に従ってそのように現在指定されているSARS-CoV-2のバリアントである。「懸念されるバリアント」と現在指定されているバリアントが当業者に知られており、例えばhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/に列挙されている。2021年10月現在の指定される「懸念されるバリアント」は、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P1)及びデルタ(B1.617.2)バリアントである。
【0011】
「注目すべきバリアント」が意味するのは、世界保健機関(WHO)により、現在の実用的定義又は他の関連する任意の基準に従ってそのように現在指定されているSARS-CoV-2のバリアントである。「注目すべきバリアント」と現在指定されているバリアントも当業者に知られており、例えばhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/に列挙されている。2021年10月現在の指定された「注目すべきバリアント」は、ラムダ(C.37)及びミュー(B1.621)バリアントである。
【0012】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内に501Y、484K、417N/T、L452R又はT478K等の特定の変異を含有するバリアントを中和するのに有効であり得る。
【0013】
好ましくは、本発明の抗体は、SARS-CoV-2の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ又は5つ超の異なるバリアントの強力な中和をもたらす。一部の実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ若しくは4つ超の「懸念されるバリアント」を含む複数のバリアント、特に複数の「懸念されるバリアント」又はhCoV-19/Wuhan/WIV04/2019、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020、アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタバリアントのうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ若しくは少なくとも全てを中和するのに有効であり得る。
【0014】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、2つの異なる抗体クローン由来の軽鎖及び重鎖を交換することによって生成される混合鎖抗体であり得る。好ましくは、2つの異なる抗体クローンは、同じ公開V遺伝子に由来する。例えば、本発明の抗体は、RQCov-01に由来する重鎖及びRQCov-02、RQCov-03又はRQCov-04に由来する軽鎖を含み得る。
【0015】
代わりに、本発明の抗体は、同じ抗体クローンに由来する重鎖及び軽鎖を含み得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、RQCov-01に由来する重鎖及び軽鎖を含み得る。
【0016】
好ましくは、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖は、例えば、抗体の安定性又は効力を向上させるような1つ以上の更なる修飾を含む。特に、本発明の抗体のFc領域は、好ましくは、例えば抗体の安定性又は効力を向上させるような1つ以上の更なる修飾を含む。
【0017】
一態様では、本発明は、コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を提供し、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに/又は
(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3、
(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3、若しくは
(d)配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3
を含む軽鎖可変領域を含む。
【0018】
一部の実施形態では、抗体は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(d)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(e)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(f)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(g)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(h)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(j)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、
(k)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号31のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域、又は
(l)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0019】
一実施形態では、本発明は、コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を提供し、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、配列番号31又は配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
一実施形態では、本発明は、コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を提供し、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、配列番号31又は配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0021】
一実施形態では、本発明は、コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を提供し、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、配列番号31又は配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
一実施形態では、本発明は、コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を提供し、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、配列番号31又は配列番号34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0023】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32若しくは配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び/又は配列番号9、14、19若しくは24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0024】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32若しくは配列番号35に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは99%超の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び/又は(b)配列番号9、14、19若しくは24に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは99%超の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0025】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメイン、及び(b)配列番号9、14、19又は24の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0026】
例えば、抗体は、配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む重鎖及び配列番号9、14、19又は24の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む軽鎖を含み得る。
【0027】
一部の実施形態では、抗体は、
(a)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(b)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(c)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(d)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(e)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(f)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(g)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(h)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(i)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(j)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、
(k)配列番号32に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン、又は
(l)配列番号35に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン及び配列番号24に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン
を含む。
【0028】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び(b)配列番号9に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0029】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び(b)配列番号14に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0030】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び(b)配列番号19に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0031】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン、及び(b)配列番号24に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0032】
更なる態様では、本発明は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、(b)配列番号9、14、19又は24の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む第1の軽鎖、(c)第2の重鎖、及び(d)第2の軽鎖を含む二重特異性抗体を提供する。
【0033】
好ましくは、第1の重鎖は、第1の軽鎖と会合して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上のエピトープに特異的に結合する第1の結合ドメインを形成し、及び第2の重鎖は、第2の軽鎖と会合して、第2の結合ドメインを形成する。
【0034】
好ましくは、第2の重鎖は、第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する。
【0035】
一部の実施形態では、第1の軽鎖は、第2の軽鎖と同じ配列を有する。例えば、第1及び第2の軽鎖の両方は、配列番号9、14、19又は24の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む軽鎖である。
【0036】
代替の実施形態では、第1の軽鎖は、第2の軽鎖と同じ配列を有しない。例えば、第1の軽鎖は、配列番号9、14、19又は24から選択される配列を有する軽鎖可変ドメインを含み、及び第2の軽鎖は、配列番号9、14、19又は24から選択される異なる配列を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0037】
一部の実施形態では、第2の軽鎖は、第1の軽鎖に対して異なる抗体クローンに由来する。例えば、第2の軽鎖は、第2の重鎖と同じ抗体クローンに由来し得る。
【0038】
そのため、一部の実施形態では、第1の軽鎖は、配列番号9、14、19又は24から選択される配列を有する軽鎖可変ドメインを含み、及び第2の軽鎖は、配列番号9、14、19又は24から選択される配列を有しない軽鎖可変ドメインを含む。
【0039】
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)配列番号9の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む第1及び第2の軽鎖を含む。
【0040】
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)配列番号14の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む第1及び第2の軽鎖を含む。
【0041】
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)配列番号19の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む第1及び第2の軽鎖を含む。
【0042】
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、(a)配列番号4、配列番号32又は配列番号35の配列を有する重鎖可変ドメインを含む第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)配列番号24の配列を有する軽鎖可変ドメインを含む第1及び第2の軽鎖を含む。
【0043】
一部の実施形態では、第2の結合ドメインは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上の、第1の結合ドメインと同じエピトープに結合し得る。他の実施形態では、第2の結合ドメインは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上の異なるエピトープに結合し得る。特定の実施形態では、第2の結合ドメインは、SARS-CoV-2の三量体スパイク上の二級又は四級エピトープに結合し得る。他の実施形態では、第2の結合ドメインは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質以外のタンパク質に結合し得る。異なるタンパク質は、別のSARS-CoV-2タンパク質又は非SARS-CoV2タンパク質であり得る。
【0044】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33若しくは配列番号36に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖、及び/又は(b)配列番号10、15、20若しくは25に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0045】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33若しくは配列番号36に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは99%超の配列同一性を有する重鎖、及び/又は(b)配列番号10、15、20若しくは25に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは99%超の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0046】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33又は配列番号36に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖、及び(b)配列番号10に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0047】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33又は配列番号36に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖、及び(b)配列番号15に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0048】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33又は配列番号36に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖、及び(b)配列番号20に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0049】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33又は配列番号36に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する重鎖、及び(b)配列番号25に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は99%超の配列同一性を有する軽鎖を含む。
【0050】
一部の実施形態では、抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する重鎖、及び(b)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25の配列を有する軽鎖を含む。
【0051】
一部の実施形態では、抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する重鎖、及び(b)重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する軽鎖を含む。
【0052】
一部の実施形態では、抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25の配列を有する軽鎖、及び(b)軽鎖に対して異なる抗体クローンに由来する重鎖を含む。
【0053】
更なる態様では、本発明は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する第1の重鎖、(b)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25の配列を有する第1の軽鎖、(c)第2の重鎖、及び(d)第2の軽鎖を含む二重特異性抗体を提供する。
【0054】
好ましくは、第1の重鎖は、第1の軽鎖と会合して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上のエピトープに特異的に結合する第1の結合ドメインを形成し、及び第2の重鎖は、第2の軽鎖と会合して、第2の結合ドメインを形成する。
【0055】
一部の実施形態では、抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する第1の重鎖、(b)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25の配列を有する第1の軽鎖、(c)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、及び(d)第2の軽鎖を含む。
【0056】
一部の実施形態では、第1の軽鎖は、第2の軽鎖と同じ配列を有する。例えば、第1及び第2の軽鎖の両方は、任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25の配列を有する。
【0057】
代替の実施形態では、第1の軽鎖は、任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25から選択される配列を有し、及び第2の軽鎖は、任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10、15、20又は25から選択される異なる配列を有する。
【0058】
一部の実施形態では、第2の軽鎖は、第1の軽鎖に対して異なる抗体クローンに由来する。例えば、第2の軽鎖は、第2の重鎖と同じ抗体クローンに由来し得る。
【0059】
一部の実施形態では、二重特異性抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号10の配列を有する第1及び第2の軽鎖を含む。
【0060】
一部の実施形態では、二重特異性抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号15の配列を有する第1及び第2の軽鎖を含む。
【0061】
一部の実施形態では、二重特異性抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号20の配列を有する第1及び第2の軽鎖を含む。
【0062】
一部の実施形態では、二重特異性抗体は、(a)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を重鎖定常領域内に含む、配列番号5、配列番号33又は配列番号36の配列を有する第1の重鎖、(b)第1の重鎖に対して異なる抗体クローンに由来する第2の重鎖、並びに(c)任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を軽鎖定常領域内に含む、配列番号25の配列を有する第1及び第2の軽鎖を含む。
【0063】
本発明の抗体は、定常領域を更に含み得る。好ましくは、定常領域は、ヒト起源のものである。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM定常領域であり得る。好ましくは、定常領域は、IgG定常領域であり、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり得る。好ましい実施形態では、定常領域は、IgG1定常領域である。軽鎖定常領域は、ラムダ又はカッパ定常領域であり得る。好ましくは、軽鎖定常領域は、カッパ定常領域である。
【0064】
好ましい実施形態では、重鎖定常領域は、CH1、CH2及び/又はCH3ドメインの1つ以上又は全てを含み、及び軽鎖定常領域は、CLドメインを含む。
【0065】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号5、配列番号33又は配列番号36の重鎖、及び(b)配列番号10、15、20又は25の軽鎖を含み、重鎖定常ドメイン及び/又は軽鎖定常ドメインは、1つ以上のアミノ酸置換を更に含む。例えば、定常ドメインは、1つ以上のFc受容体へのFc領域の結合を増強するか、1つ以上のFcエフェクタ機能を増大させるか若しくは引き下げるか、抗体の半減期を延長若しくは短縮するか、抗体の製造容易性を向上させるか、抗体重鎖及び/若しくは軽鎖のヘテロ二量体化を促進するか又はそれらの任意の組合せをもたらすアミノ酸置換を含み得る。
【0066】
代わりに又は加えて、可変ドメインは、SARS-CoV-2の1つ以上のバリアントに対する抗体の結合親和性を向上させるアミノ酸置換を含み得る。
【0067】
好ましい実施形態では、抗体は、Fc領域を更に含む。好ましくは、Fc領域は、IgG1 Fc領域である。一部の実施形態では、Fc領域は、野生型IgG1 Fc領域と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む修飾IgG1 Fc領域であり得る。好ましい実施形態では、アミノ酸置換は、野生型IgG1 Fc領域と比較して、抗体の半減期を延長する。
【0068】
特定の実施形態では、IgG1抗体の半減期を向上させるために用いられるアミノ酸置換は、M252Y/S254T/T256E(「YTE」)、M428L/N434S(「LS」)、S239D/I332E(「DE」)、M252Y/T256D(「YD」)、T256D/T307Q(「DQ」)及び/若しくはT256D/T307W(「DW」)又はそれらの任意の組合せから選択される(EUナンバリングに従ってナンバリングした)。好ましい実施形態では、アミノ酸置換M252Y/S254T/T256E(「YTE」)は、IgG1抗体の半減期を延長するために用いられ得る。
【0069】
他の実施形態では、1つ以上の置換は、Fc受容体へのFc領域の結合を除去又は増強し得、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/若しくは補体依存性細胞傷害(CDC)等のエフェクタ機能を増大若しくは排除し得、免疫複合体形成を強化し得るか、又はそれらの任意の組合せをもたらし得る。1つ以上の置換は、当技術分野で知られている適切な任意の置換であり得る。
【0070】
他の実施形態では、1つ以上の置換は、抗体重鎖及び/又は軽鎖のヘテロ二量体化を促進し得る。例えば、本発明の抗体が二重特異性抗体である場合、第1の重鎖のFc領域及び第2の重鎖のFc領域は、第1の重鎖及び第2の重鎖の選択的な会合を促進する1つ以上の置換をそれぞれ含み得る。
【0071】
代わりに又は加えて、第1の重鎖のCH1領域及び第1の軽鎖のCL領域は、第1の軽鎖との第1の重鎖の選択的な会合を促進する1つ以上の置換をそれぞれ含み、且つ/又は第2の重鎖のCH1領域及び第2の軽鎖のCL領域は、第1の軽鎖との第1の重鎖の選択的な会合を促進する1つ以上の置換をそれぞれ含み得る。
【0072】
更なる態様では、本発明は、本発明に従う抗体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0073】
更なる態様では、本発明は、本発明に従う抗体及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。任意選択的に、医薬組成物は、SARS-CoV-2に結合することができる1つ以上の更なる抗体も含有し得る。代わりに又は加えて、医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤、例えば抗炎症剤又は抗ウイルス剤も含有し得る。
【0074】
一部の実施形態では、本発明は、本発明に従う1つ以上の抗体を含む医薬組成物を提供する。例えば、組成物は、表2の抗体の1、2、3又は全4つの抗体を含み得る。
【0075】
本発明の抗体は、感染した対象においてコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)からのインビボ保護を実現することができる。例えば、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)に感染した対象への本発明の抗体の投与は、感染症の予防、生存のチャンスの向上、疾病期間の短縮及び/又は徴候の重篤度の軽減をもたらし得る。
【0076】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、SARS-CoV-2への曝露前の感染症の予防(曝露前予防)に用いられ得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、SARS-CoV-2への最近の曝露後の感染症の予防(曝露後予防)に用いられ得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、急性SARS-CoV-2感染症(COVID-19)の処置に用いられ得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、SARS-CoV-2感染症の長期の影響(Long COVID)の処置に用いられ得る。
【0077】
したがって、更なる態様では、本発明は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染症と関連する疾患又は合併症を処置、予防又は診断する方法で使用するための抗体又は医薬組成物を提供する。
【0078】
一実施形態では、本発明の抗体又は医薬組成物は、SARS-CoV2バリアントによって引き起こされるコロナウイルス感染症を処置、予防又は診断する方法に用いられる。本発明の1つ以上の抗体により処置することができるSARS-CoV-2バリアントの例として、以下に限定されないが、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020、A.23.1、B.1.1.7(アルファ)、B.1.351(ベータ)、B.1.258、B.1.526.2、B.1.616、B.1.617.1、B.1.617.2(デルタ)、C36.3、C.37又はP.1(ガンマ)が挙げられる。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明の抗体又は医薬組成物は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は懸念される他の任意のバリアントによって引き起こされるCOVID-19感染症を処置、予防又は診断する方法に用いられる。
【0080】
当業者であれば、上述のリストは、包括的でなく、本発明の抗体又は医薬組成物は、他の知られているか又は依然として特定されていない任意のSARS-CoV-2バリアント(ウイルス遺伝子型がSARS-CoV-2データベースに列挙されている任意のバリアント、自然界に存在することが知られている任意のバリアント、ラボ実験で生成された任意のバリアント又は感受性動物の感染により生成された任意のバリアントを含む)によって引き起こされるコロナウイルス感染症を処置、予防又は診断する方法に用いるのに適切であり得ると認識するであろう。本発明に従う抗体によって処置、予防又は診断することができるバリアントの例は、SARS-CoV-2ゲノム及びスパイクデータベースに列挙されている。
【0081】
例えば、本発明に従う抗体は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアントと比較して、スパイク遺伝子内に遺伝的変異を有するSARS-CoV2バリアントによって引き起こされるコロナウイルス感染症を処置、予防又は診断する方法に用いられ得る。一部の実施形態では、バリアントのスパイクタンパク質は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019のものに対して80%超、85%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、95%超、96%超、97%超、98%超又は99%超同一であり得る。例えば、バリアントのスパイクタンパク質は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019のスパイクタンパク質と、1、2、3、4、5、5超又は最大10個のアミノ酸が異なり得る。一部の実施形態では、変異は、SARS-CoV-2の天然に存在するバリアントで観察された変異である。他の実施形態では、変異は、SARS-CoV-2の天然に存在するバリアントに見られないが、ラボで操作された変異である。好ましい実施形態では、変異は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内の位置501、484、452、478及び/又は417の1つ以上における変異である。
【0082】
更なる態様では、本発明は、対象を処置する方法であって、治療有効量の、本発明に従う抗体又は本発明に従う医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。更に提供されるのは、対象を処置するための薬剤の製造に使用するための、本発明に従う抗体である。
【0083】
更なる態様では、本発明は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合することができる抗体を生成する方法であって、本発明に従う抗体の生成にとって最適な条件の下で本発明の宿主細胞を培養することと、抗体を前記培養から単離することとを含む方法を提供する。
【0084】
更なる態様では、本発明は、試料中のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)又はその構成要素若しくは断片の存在を特定する方法であって、試料を、本発明に従う抗体と接触させることと、抗体が抗体-抗原複合体を形成するかを判定することとを含み、抗体-抗原複合体の形成は、試料がコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)について陽性であることを示す、方法を提供する。
【0085】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、N-グリコシル化部位を重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域内に含まない。一実施形態では、本発明の抗体は、N-グリコシル化部位を重鎖可変領域内に含まない。好ましくは、本発明の抗体は、N-グリコシル化部位をVHCDR3内に含まない。
【0086】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する本発明に従う抗体の結合親和性は、平衡解離定数(KD)を求めることによって定量化され得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、SARS-CoV-2バリアントのスパイクタンパク質に5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満又は0.1nM未満のKD値で結合する。KD値は、当技術分野で知られている適切な任意の手段、例えばELISA又は表面プラズモン共鳴(Biacore)によって測定することができる。好ましい実施形態では、試験したSARS-CoV-2バリアントは、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020又は19/Wuhan/WIV04/2019である。
【0087】
更なる実施形態では、試験したバリアントは、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントである。
【0088】
一実施形態では、本発明の抗体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質とACE2(標的細胞融合を媒介する細胞表面受容体)との間の相互作用を全体として又は部分的にブロックする。例えば、本発明の抗体は、相互作用を直接的にブロックし得るか、又はスパイクタンパク質の高次構造を崩壊させることによって融合に間接的に干渉し得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、スパイク-ACE2相互作用を50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超又は100%引き下げ得る。スパイク-ACE2形成のブロッキングは、当技術分野で知られている適切な任意の手段、例えばELISAによって測定することができる。
【0089】
一実施形態では、本発明の抗体は、SAR-CoV-2の少なくとも1つの生物活性を中和することができる。例えば、本発明の抗体は、ウイルス伝染力を中和することができる。ウイルス伝染力を測定する適切な方法が当技術分野で知られている。例えば、ウイルス伝染力を中和する抗体の能力は、フォーカス減少法による中和アッセイ(FRNT)又は他の適切な任意の方法によって測定され得る。
【0090】
SARS-CoV-2の中和は、半分最大阻害濃度(IC50)値を用いて測定することができる。一部の実施形態では、本発明に従う抗体は、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満、0.01μg/ml未満、0.005μg/ml未満、0.002μg/ml未満又は0.001μg/ml未満のIC50値を有し得る。場合により、本発明の抗体は、1つ以上のSAR-CoV-2バリアントに対して0.0001μg/ml~0.1μg/ml、0.0001μg/ml~0.05μg/ml又は0.0001μg/ml~0.001μg/mlのIC50値を有し得る。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明に従う抗体は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントに対して0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満、0.01μg/ml未満、0.005μg/ml未満、0.002μg/ml未満又は0.001μg/ml未満のIC50値を有し得る。
【0092】
特に好ましい実施形態では、IC50値は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントに対して0.01μg/ml未満又は0.02μg/ml未満である。
【0093】
場合により、本発明の抗体は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は懸念される他の任意のバリアントに対して0.0001μg/ml~0.1μg/ml、0.0001μg/ml~0.05μg/ml又は0.0001μg/ml~0.001μg/mlのIC50値を有し得る。
【0094】
SARS-CoV-2の中和は、80%最大阻害濃度(IC80)値を用いて測定することもできる。一部の実施形態では、本発明に従う抗体は、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満、0.01μg/ml未満、0.005μg/ml未満、0.002μg/ml未満又は0.001μg/ml未満のIC80値を有し得る。場合により、本発明の抗体は、1つ以上のSAR-CoV-2バリアントに対して0.0001μg/ml~0.1μg/ml、0.0001μg/ml~0.05μg/ml又は0.0001μg/ml~0.001μg/mlのIC50値を有し得る。
【0095】
好ましい実施形態では、本発明に従う抗体は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントに対して0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満、0.01μg/ml未満、0.005μg/ml未満、0.002μg/ml未満又は0.001μg/ml未満のIC80値を有し得る。
【0096】
特に好ましい実施形態では、IC80値は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は別の懸念されるバリアントに対して0.03μg/ml未満又は0.06μg/ml未満である。
【0097】
場合により、本発明の抗体は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019バリアント、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020バリアント、アルファ(B.1.1.7)バリアント、ベータ(B.1.351)バリアント、ガンマ(P1)バリアント、デルタ(B1.617.2)バリアント、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/若しくは417の1つ以上において変異を含む別のバリアント並びに/又は懸念される他の任意のバリアントに対して0.0001μg/ml~0.1μg/ml、0.0001μg/ml~0.05μg/ml又は0.0001μg/ml~0.001μg/mlのIC80値を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】SARS-CoV-2ビクトリア、アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタバリアントに対するRQCov-05/02、RQCov-05/03、RQCov-05/04及びRQCov-05/05モノクローナル抗体についての中和プロットを示す。データを、Y軸上にプロットした中和%に対するX軸上にプロットした対数抗体濃度(μg/ml)として示す。
【
図2】SARS-CoV-2ビクトリア、アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタバリアントに対するRQCov-06/03モノクローナル抗体についての中和プロットを示す。データを、Y軸上にプロットした中和%に対するX軸上にプロットした対数抗体濃度(μg/ml)として示す。
【
図3】SARS-CoV-2ビクトリア、アルファ、ベータ、ガンマ及びデルタバリアントに対するRQCov-07/02、RQCov-07/03及びRQCov-07/07モノクローナル抗体についての中和プロットを示す。データを、Y軸上にプロットした中和%に対するX軸上にプロットした対数抗体濃度(μg/ml)として示す。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本発明の抗体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に特異的に結合する。好ましくは、本発明の抗体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)に結合する。代わりに、本発明の抗体は、三量体スパイクタンパク質を構成する高次構造への結合を通して生じる四級エピトープに結合し得る。
【0100】
本発明の抗体は、表1の少なくとも3、4、5又は6つのCDRを含み得る。例えば、抗体は、表1の抗体由来の少なくとも1つ、少なくとも2つ若しくは3つ全ての重鎖CDR(VHCDR)及び/又は少なくとも1つ、少なくとも2つ若しくは3つ全ての軽鎖CDR(VLCDR)を含み得る。好ましくは、抗体は、表1の6つのCDR(すなわち全3つの重鎖CDR及び全3つの軽鎖CDR)を含む。
【0101】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1、2及び3のアミノ酸配列をそれぞれ有するVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3、並びに(a)配列番号6、7及び8のアミノ酸配列をそれぞれ、(b)配列番号11、12及び13のアミノ酸配列をそれぞれ、(c)配列番号16、17及び18のアミノ酸配列をそれぞれ、又は(d)配列番号21、22及び23のアミノ酸配列をそれぞれ有するVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含み得る。
【0102】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1、2及び31のアミノ酸配列をそれぞれ有するVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3、並びに(a)配列番号6、7及び8のアミノ酸配列をそれぞれ、(b)配列番号11、12及び13のアミノ酸配列をそれぞれ、(c)配列番号16、17及び18のアミノ酸配列をそれぞれ、又は(d)配列番号21、22及び23のアミノ酸配列をそれぞれ有するVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含み得る。
【0103】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1、2及び34のアミノ酸配列をそれぞれ有するVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3、並びに(a)配列番号6、7及び8のアミノ酸配列をそれぞれ、(b)配列番号11、12及び13のアミノ酸配列をそれぞれ、(c)配列番号16、17及び18のアミノ酸配列をそれぞれ、又は(d)配列番号21、22及び23のアミノ酸配列をそれぞれ有するVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含み得る。
【0104】
一実施形態では、本発明の抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2、及び配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに/又は(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0105】
一実施形態では、本発明の抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに/又は(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号13のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0106】
一実施形態では、本発明の抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに/又は(b)配列番号16のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号18のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0107】
一実施形態では、本発明の抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCDR2及び配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域、並びに/又は(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むVLCDR1、配列番号22のアミノ酸配列を含むVLCDR2及び配列番号23のアミノ酸配列を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0108】
更なる実施形態では、本発明の抗体は、表1内の抗体の重鎖可変ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメインを含み得る。代わりに又は加えて、本発明の抗体は、表1内の抗体の軽鎖可変ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含み得る。
【0109】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号4、配列番号32又は配列番号35に対して80%超、85%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメインを含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号9、14、19又は24に対して80%超、85%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含み得る。
【0110】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号5、配列番号33又は配列番号36に対して80%超、85%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖を含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号10、15、20又は25に対して80%超、85%超、90%超、95%超、96%超、97%超、98%超、99%超又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖を含み得る。
【0111】
本発明の抗体は、回復したSARS-CoV-2 COVID-19患者から特定された抗体から誘導され得る(例えば、Dejnirattisai et al.“The antigenic anatomy of SARS-CoV-2 receptor binding domain.”Cell 184.8(2021):2183-2200及びDejnirattisai et al.“Antibody evasion by the P.1 variant of SARS-CoV-2.”Cell 184.11(2021):2939-2954を参照されたい)。
【0112】
好ましくは、本発明の抗体が由来する抗体は、複数のSARS-CoV-2バリアントに対して強力な中和能力を保持し、すなわち2つ以上のSARS-CoV-2バリアントに対して有効である。
【0113】
例えば、これらの抗体は、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満、0.01μg/ml未満、0.005μg/ml未満、0.002μg/ml未満又は0.001μg/ml未満のIC50値を有し得る。場合により、本発明の抗体は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ若しくは少なくとも5つ又はそれを超える様々なSARS-CoV-2バリアントに対して0.0001μg/ml~0.1μg/ml、0.0001μg/ml~0.05μg/ml又は0.0001μg/ml~0.001μg/mlのIC50値を有し得る。
【0114】
本発明の抗体は、混合鎖抗体であり得る。一実施形態では、本発明の抗体は、抗体RQCov-01に由来する重鎖可変ドメインを含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、抗体RQCov-02、RQCov-03又はRQCov-04に由来する軽鎖可変ドメインを含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、RQCov-01に由来する重鎖及びRQCov-02に由来する軽鎖を含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、RQCov-01に由来する重鎖及びRQCov-03に由来する軽鎖を含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、RQCov-01に由来する重鎖及びRQCov-04に由来する軽鎖を含み得る。一実施形態では、本発明の抗体は、RQCov-01に由来する重鎖及び軽鎖を含み得る。
【0115】
一部の実施形態では、抗体RQCov-01に由来する重鎖可変ドメインは、RQCov-05の重鎖可変ドメインである。一部の実施形態では、抗体RQCov-01に由来する重鎖可変ドメインは、RQCov-06の重鎖可変ドメインである。一部の実施形態では、抗体RQCov-01に由来する重鎖可変ドメインは、RQCov-07の重鎖可変ドメインである。RQCov-05、RQCov-06及びRQCov-07の重鎖は、VHCDR3内の重鎖可変領域にN-グリコシル化部位を含有しないように修飾されている。
【0116】
RQCov-01、RQCov-02、RQCov-03、RQCov-04、RQCov-05、RQCov-06及びRQCov-07の各々の重鎖ドメインは、IGHV1-58 v-領域に由来する。同じv-領域に由来する重鎖可変ドメインを有する様々なモノクローナル抗体間で重鎖及び軽鎖をスイッチすることで、SARS-CoV-2を中和するのに特に有用である抗体が生じることが見出された。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、表2に提供される重鎖及び軽鎖の組合せの1つを有する。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
本発明の抗体は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域内にN-グリコシル化部位を含まないように修飾されている操作された抗体であり得る。好ましくは、本発明の抗体は、VHCDR3内の重鎖可変領域内にN-グリコシル化部位を含まない。本発明者らは、驚くべきことに、アミノ酸残基アスパラギン(N)を特定の代替のアミノ酸残基で置換することにより、VHCRD3内のグリコシル化モチーフ「NRT」が除去される場合、本発明の抗体がSARS-CoV2に対して効力を保持することを見出した。
【0124】
好ましい実施形態では、グリコシル化モチーフ「NRT」内のアスパラギン(N)は、アスパラギン酸(D)で置換されて、モチーフ「DRT」を形成する。そのため、好ましい実施形態では、本発明の抗体は、N-グリコシル化モチーフ「NRT」が、モチーフ「DRT」で置換されるような、抗体RQCov-01(配列番号29)のVHCDR3の位置6でのアスパラギン(N)の、アスパラギン酸(D)への置換を含む(配列番号3)。
【0125】
更に好ましい実施形態では、グリコシル化モチーフ「NRT」内のアスパラギン(N)は、セリン(S)で置換されて、モチーフ「SRT」を形成する。そのため、好ましい実施形態では、本発明の抗体は、N-グリコシル化モチーフ「NRT」が、モチーフ「SRT」で置換されるような、抗体RQCov-01(配列番号29)のVHCDR3の位置6でのアスパラギン(N)の、セリン(S)への置換を含む(配列番号31)。
【0126】
更に好ましい実施形態では、グリコシル化モチーフ「NRT」内のアスパラギン(N)は、グルタミン(Q)で置換されて、モチーフ「QRT」を形成する。そのため、好ましい実施形態では、本発明の抗体は、N-グリコシル化モチーフ「NRT」が、モチーフ「QRT」で置換されるような、抗体RQCov-01(配列番号29)のVHCDR3の位置6でのアスパラギン(N)の、グルタミン(Q)への置換を含む(配列番号34)。
【0127】
驚くべきことに、これらの抗体は、SARS-CoV-2に強く結合し、効力の損失なく複数のSARS-CoV-2バリアントを中和する能力を保持することが見出された(
図1~3及び実施例1を参照されたい)。
【0128】
本明細書中で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち特異的に抗原に結合する抗原結合部位を含有する分子を指し、天然であるか又は部分的若しくは完全に合成的に生成されるかを問わない。この用語は、抗体結合ドメインであるか又はそれに相同である結合ドメインを有する任意のポリペプチド又はタンパク質も包含する。抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであり得る。抗体は、天然の源に由来し得るか、又は部分的若しくは完全に合成的に生成され得る。本明細書中で用いられる「特異的に結合する」は、抗体が高い親和性で所望の抗原に結合し、且つ他の抗原に大きく結合しないか又はそれと交差反応しないことを意味する。
【0129】
抗体は、典型的には2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含有するポリペプチドである。哺乳動物では、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)と呼ばれる2種類の軽鎖が存在する。各重鎖及び各軽鎖が、可変領域及び定常領域で構成される。重鎖可変領域はVH領域と称され、軽鎖可変領域はVL領域と称される。カッパ軽鎖について、VL領域はVK領域とも称され得る。好ましくは、本発明に従う抗体は、カッパ軽鎖を含む。
【0130】
重鎖及び軽鎖の各々の可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)、すなわちCDR1、CDR2及びCDR3を含む。これらは、VHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3並びにVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3とそれぞれ命名される。任意の免疫グロブリンアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)及びそのアイソタイプサブクラスの抗体、抗原結合ドメインを含む断片、例えばFab、F(ab’)2、Fv、scFv、dAb、Fd並びにダイアボディも本発明で意図される。好ましくは、本発明に従う抗体は、IgG抗体である。
【0131】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、全長抗体、すなわち可変ドメイン(VH)及び定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)をそれぞれ含む2つの完全長重鎖並びに可変ドメイン(VL)ドメイン及び定常ドメイン(CL)をそれぞれ含む2つの完全長軽鎖からなる抗体である。好ましくは、重鎖は、IgG1重鎖であり、軽鎖は、カッパ軽鎖である。
【0132】
明示的にそうでないと述べられない限り、本出願における可変ドメインの抗体ナンバリングへのいかなる言及も、IMGTナンバリングシステム(http://www.imgt.org;Lefranc MP,1997,J,Immunol.Today,18,509)に従うナンバリングを指し、本出願における定常ドメインの抗体ナンバリングへのいかなる言及も、EUインデックス(例えば、Kabat,EA.et al.,1991,Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition)に従うナンバリングを指す。
【0133】
別の実施形態では、本発明の抗体は、全抗体の断片、特に1つ以上の抗原結合領域を含む抗原結合断片であり得る。全抗体の断片が、抗原結合機能を果たし得ることが示されている。結合断片の例として、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片、VH及びCH1ドメインからなるFd断片、単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるdAb断片、単離されたCDR領域、2つの結合したFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片、2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成できるようにするペプチドリンカーによってVHドメイン及びVLドメインが連結する一本鎖Fv分子(scFv)、二重特異性一本鎖Fvダイマー及び遺伝子融合によって構築された多価又は多特異性断片である「ダイアボディ」がある。
【0134】
好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体である。本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体方法論を含む種々の技術によって生成され得る。
【0135】
本発明の抗体は、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体でもあり得る。二重特異性抗体は、2つの標的、例えば2つの抗原又は同じ抗原上の2つのエピトープに同時に結合することができる抗体である。例えば、抗体の一方の結合ドメインは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上のエピトープに結合し得、及び他方の結合ドメインは、異なる抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに結合し得る。一実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質上の2つの別々のエピトープに結合し得る。別の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質及び異なるタンパク質に結合し得る。異なるタンパク質は、別のSARS-CoV-2タンパク質又は非-SARS-CoV-2タンパク質であり得る。
【0136】
本発明の二重特異性抗体は、適切な任意のフォーマットであり得る。二重特異性抗体フォーマットの例として、以下に限定されないが、(mAb)2、Fcab、F(mAb’)2、クアドローマ、scFv(単鎖可変断片)、bsDb(二重特異性ダイアボディ)、scBsDb(単鎖二重特異性ダイアボディ)、BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャ)、DART(二重親和性再標的化抗体)、電荷対、タンデム抗体、タンデムscFv-Fc、Fab-scFv-Fc、Fab-scFv、ミニボディ、zybodies、DNL-F(ab)3(dock-and-lock三価Fab)及びbssdAb(二重特異性シングルドメイン抗体)が挙げられる。
【0137】
代わりに、本発明の抗原結合分子は、SAR-CoV-2のスパイクタンパク質について一価であり得、例えば一価の抗体断片であり得る。一価の抗原結合分子は、エピトープ又は抗原について1つの結合部位のみを有する抗原結合分子である。
【0138】
更なる実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合分子は、他の分子、例えば薬物、プロドラッグ又は毒性部分にもコンジュゲートされ得る。
【0139】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、Fc領域を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトFc領域、例えばIgA、IgD、IgE、IgG又はIgM Fc領域を含み得る。好ましくは、本発明の抗体は、IgG Fc領域、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4を含む。より好ましくは、本発明の抗体は、IgG1 Fc領域を含む。
【0140】
一部の実施形態では、Fc領域はハイブリッドFcである。ハイブリッドFcは、抗体の2つ以上の異なるクラス又はサブクラスに由来するFc部分を含む。一部の実施形態では、Fcは、IgG1/3ハイブリッドFcである。他の実施形態では、Fcは、IgG2/4ハイブリッドFcである。
【0141】
本発明の抗体は、Fc領域内に修飾を含み得る。例えば、本発明の抗体のFc領域は、その安定性を向上させ、その半減期を延長し、且つ/又はそのエフェクタ機能を修飾するように修飾され得る。適切な修飾が当技術分野で知られている。
【0142】
一実施形態では、Fc領域は、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して1つ以上のアミノ酸置換を含むように修飾され得る。例えば、置換は、Fc受容体へのFc領域の結合を除去若しくは増強し得、エフェクタ機能、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/若しくは補体依存性細胞傷害(CDC)を増大させ得るか若しくは排除し得るか、抗体の半減期を延長若しくは短縮し得るか、免疫複合体形成を強化し得るか又はそれらの任意の組合せをもたらし得る。
【0143】
一実施形態では、本発明の抗体は、抗体の半減期を改変するFc領域修飾を含み得る。一部の実施形態では、本発明の抗体は、FcRnとのFcドメインの相互作用を促進するように修飾され得る。一部の実施形態では、Fcドメイン修飾は、組合せM252Y/S254T/T256E(「YTE」)、M428L/N434S(「LS」)、S239D/I332E(「DE」)、M252Y/T256D(「YD」)、T256D/T307Q(「DQ」)、T256D/T307W(「DW」)及び/又はG236A/A330L/I332E(GAALIE)(EUナンバリングに従ってナンバリングした)から選択される。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、抗体の血清半減期を改変する1つ以上の修飾を有する。特に好ましい実施形態では、M252Y/S254T/T256E(YTE)変異は、抗体の安定性及び血清半減期を向上させるために用いられ得る。そのような修飾は、Fcエフェクタ機能を改変する修飾に加えて存在し得る。
【0144】
一部の実施形態では、抗体は、他の受容体、例えばFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIa、FcγRIIB、FcγRIII及びFcαRとの抗体の相互作用を改変するようにも修飾され得る。そのような修飾は、抗体のエフェクタ機能を増大又は低下させ得る。
【0145】
一実施形態では、本発明の抗体は、「サイレンシングされた」Fc領域を含む。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/若しくは補体依存性細胞傷害(CDC)又は標準的なFc領域と関連する機能を提示せず、且つ/或いは1つ以上の活性化Fcγ受容体に結合しない。
【0146】
別の実施形態では、本発明の抗体は、エフェクタ機能が増強したFc領域を含む。例えば、一実施形態では、本発明の抗体は、標準的なFc領域と関連するADCC及び/又はCDC機能と比較して、ADCC及び/又はCDC機能の増大を提示する。
【0147】
一実施形態では、本発明の抗体は、Fc受容体に結合しない。例えば、抗体は、1種以上のFc受容体に結合しない。一実施形態では、本発明の抗体は、FcγR受容体に結合しない。一実施形態では、本発明の抗体は、活性化Fc受容体FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIaの1つ以上又は全てに結合しない。一実施形態では、本発明の抗体は、阻害Fc受容体FcγRIIb受容体に結合しない。一実施形態では、本発明の抗体は、補体に結合しない。代替の実施形態では、本発明の抗体は、FcγRに結合しないが、補体に結合する。
【0148】
一実施形態では、本発明の抗体は、Fc受容体に、親和性が増強して結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、Fcγ受容体に、親和性が増強して結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、活性化Fc受容体FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIaの1つ以上に、親和性が増強して結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、阻害Fc受容体FcγRIIb受容体に、親和性が増強して結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、補体に、親和性が増強して結合する。一実施形態では、本発明の抗体は、FcRnに、親和性が増強して結合する。
【0149】
一実施形態では、本発明の抗体のFc領域は、CH2ドメインを含まない。一実施形態では、Fcは、CH3ドメインを含まない。一実施形態では、Fcは、追加のCH2及び/又はCH3ドメインを含む。
【0150】
一部の実施形態では、システイン残基がFc領域中に導入されることにより、この領域内での鎖間ジスルフィド結合形成が可能となる。
【0151】
他の実施形態では、1つ以上の置換は、抗体重鎖及び/又は軽鎖のヘテロ二量体化を促進し得る。例えば、本発明の抗体が二重特異性抗体である場合、第1の重鎖のFc領域及び第2の重鎖のFc領域は、第1の重鎖及び第2の重鎖の選択的会合を促進する1つ以上の置換をそれぞれ含み得る。Fcヘテロ二量体化を促進するのに適した戦略が当技術分野で知られており、立体相補性(例えば、Knob-in-Hole技術)、静電相補性(例えば、DD-KK置換)、アイソタイプ鎖交換(例えば、SEED)又はそれらの組合せが挙げられる。当業者であれば、適切な任意のヘテロ二量体化戦略が本発明の二重特異性抗体に応用され得ると認識するであろう。
【0152】
代わりに又は加えて、第1の重鎖のCH1領域及び第1の軽鎖のCL領域は、第1の軽鎖との第1の重鎖の選択的会合を促進する1つ以上の置換をそれぞれ含み得、且つ/又は第2の重鎖のCH1領域及び第2の軽鎖のCL領域は、第2の軽鎖との第2の重鎖の選択的会合を促進する1つ以上の置換をそれぞれ含み得る。重鎖軽鎖ヘテロ二量体化を促進するのに適した戦略が当技術分野で知られている。当業者であれば、適切な任意のヘテロ二量体化戦略が本発明の二重特異性抗体に応用され得ると認識するであろう。
【0153】
当技術分野で知られている「同一性」は、配列を比較することによって判定される、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。本明細書中で用いられる同一性は、「相同性」及び「類似性」と互換的に用いられ得る。
【0154】
特定の同一性%への言及は、相同性%及び類似性%に等しく当てはまる。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性パーセントは、最適な比較目的で配列をアラインして(例えば、ギャップを、配列との最良のアラインメントのために第1の配列中に導入することができる)、対応する位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較することによって求められる。「最良のアラインメント」は、最も高い同一性パーセントをもたらす2つの配列のアラインメントである。同一性パーセントは、比較されている配列内の同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドの数によって求められる(すなわち同一性%=同一の位置数/位置の総数×100)。通常、本明細書中での同一性%への言及は、文脈がそうでないと特定又は暗示しない限り、分子の全長に沿った同一性%を指す。2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当業者に知られている数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。適切なアルゴリズムとして、FASTA、BLAST及びGapped BLASTが挙げられる。これらの分析を実行するためのソフトウェアが公表されている。
【0155】
好ましい実施形態では、本発明の抗体のVH、VL、CH1、CH2及びCH3領域のアミノ酸配列は、表1内のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有する。より典型的には、VH及びVL領域は、表1内のアミノ酸配列に対してアミノ酸レベルで少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の同一性を有する。
【0156】
したがって、一実施形態では、配列番号1のアミノ酸に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を含むVHCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を含むVHCDR2、配列番号3、31若しくは34のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を含むVHCDR3を含む重鎖可変領域並びに/又は配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を含むVLCDR1、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を含むVLCDR2及び配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を含むVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗体、その断片又はバリアントが提供される。好ましい実施形態では、VHCDR3は、配列番号3、配列番号31又は配列番号34のアミノ酸配列に対して100%同一である。
【0157】
一実施形態では、本発明は、配列番号4、配列番号32若しくは配列番号35のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する重鎖可変領域及び/又は配列番号9、14、19若しくは24のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する軽鎖可変領域を含む、SARS-CoV-2に結合する抗体を提供する。
【0158】
本発明の抗体は、典型的には、モノクローナル抗体である。好ましい実施形態では、抗体は、ヒト定常領域が使用されている完全ヒトモノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、回復したSARS-CoV-2 COVID-19患者に由来する完全ヒト抗体である。
【0159】
本発明の抗体は、当技術分野で知られている適切な任意の発現系を用いて製造することができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、本発明の抗体を発現させるのに適している。RQCov-05/03は、優れた発現を示すため、本発明の特定の実施形態に用いるのに特に適している。
【0160】
モノクローナル及び他の抗体を使用し、且つ組換えDNA技術を用いて、他の抗体又はキメラ分子を生成することが可能である。そのような技術は、一方の抗体の免疫グロブリン可変領域又は相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、異なる抗体の定常領域又は定常領域及びフレームワーク領域をコードするDNAと組み合わせることを含み得る。抗体を生成するハイブリドーマ又は他の細胞は、遺伝的変異又は他の変化を受け得、これは、生成される抗体の結合特異性を変更させても又はさせなくてもよい。好ましい実施形態では、抗体は、第1の抗体クローンに由来する軽鎖可変ドメイン及び第2の抗体クローンに由来する重鎖可変ドメインを含むキメラ抗体である。
【0161】
本発明は、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換等を含む、表1内の配列のバリアントにも及ぶ。例えば、分子の安定性、製造容易性又は機能プロパティを向上させるアミノ酸置換がなされ得る。
【0162】
当業者であれば、種々のアミノ酸が、類似したプロパティを有することを知っている。1つ以上のそのようなアミノ酸を、多くの場合、その物質の所望の活性を除外することなく、1つ以上の他のそのようなアミノ酸によって置換することができる。代わりに、ポリペプチドの活性に及ぼす実質的な効果がないか又は少なくともそのような活性を除去しないアミノ酸を欠失させることができる。この性質の置換は、多くの場合、「保存的」又は「半保存的」アミノ酸置換と称される。
【0163】
一実施形態では、本発明の抗体は、1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、本発明の抗体は、1つ以上の「保存的」又は「半保存的」アミノ酸置換を含有する。一部の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、CDR領域内にある。他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、CDR領域内ではなくフレームワーク領域内、すなわち可変重鎖及び軽鎖内にある。他の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、可変重及び/又は可変軽領域内の任意の位置にあり得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、抗体の結合特異性及び/又は親和性に悪影響を与えない。したがって、バリアント抗体は、これが由来する抗体と同じであるか又はそれよりも優れている機能プロファイルを有し得る。
【0164】
本発明の範囲内のアミノ酸の置換又は挿入は、天然に存在するか又は天然に存在しないアミノ酸を用いてなされ得るが、天然に存在するアミノ酸が好まれ得る。例えば、アミノ酸置換は、抗体の機能が大きく悪影響を受けなければ、標識されたか又は非天然のアミノ酸を含み得る。
【0165】
一部の実施形態では、アミノ酸置換は全て、可変領域のCDR内に存在する。一部の実施形態では、全てのアミノ酸置換は、可変領域のフレームワーク領域内に存在する。
【0166】
そのような抗体は、バリアント抗原結合分子が由来する抗体の機能活性(例えば、EC50、IC50、IC80及び/又はKD)を保持し得る。
【0167】
本発明の抗体は、効力を向上させるか、新しいSARS-CoV-2バリアントに適応するか又は複数のSARS-CoV-2バリアントを中和する能力を広げるように、例えばエピトープ特徴の変化を補償することとなる、抗体内の考えられる置換を特定するように修飾され得る。
【0168】
先に記載される本発明の抗体の修飾は、抗体の合成中若しくは生成後修飾によって又は抗体が組換え形態である場合に調製され得る。適切な技術、例えば部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、酵素的切断及び/又は核酸のライゲーションが当技術分野で知られている。
【0169】
更なる態様では、本発明は、本発明の1つ以上の抗体を含む医薬組成物を提供する。例えば、医薬組成物は、表2で提供される抗体の1、2、3つ又は全てを含み得る。
【0170】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明に従う抗体及び薬学的に許容される担体、バッファ、賦形剤、アジュバント、ビヒクル、希釈剤若しくは安定剤又はそれらの任意の組合せの1つ以上を含む。
【0171】
本発明に用いるのに適した担体の例として、水、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、エタノール、リポソーム、グリセロール、ポリエチレングリコール及びそれらの組合せが挙げられる。
【0172】
医薬組成物は、適切な任意の形態であり得るか、又は適切な任意の投与方法による使用のために製剤化され得る。例えば、それは、経口、口腔内、舌下、直腸、経鼻、経皮、経膣、非経口、皮下、筋肉内、静脈内又は皮内経路のために製剤化され得る。
【0173】
本発明の医薬組成物は、本発明の分子に加えて、1つ以上の治療的に活性な更なる薬剤も含有し得る。例えば、本発明の医薬組成物は、SARS-CoV-2に特異的に結合する1つ以上の更なる抗体を含み得る。代わりに又は加えて、本発明の医薬組成物は、抗ウイルス剤、抗炎症剤又は別の治療的に活性な薬剤の1つ以上を含有し得る。
【0174】
適切な抗ウイルス剤の例として、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、APN01及びFavilavirが挙げられる。適切な抗炎症剤の例として、副腎皮質ステロイド(例えば、デキサメタゾン)又は非ステロイド性の抗炎症薬物が挙げられる。
【0175】
一部の実施形態では、活性薬物濃縮物の製剤は、薬学的に許容される等張化剤、緩衝剤及び薬学的に許容される界面活性剤を含み得る。
【0176】
特に上記の成分に加えて、製剤は、問題の製剤の種類について、当技術分野における従来の他の薬剤を含み得、例えば、経口投与に適したものは、賦香剤を含み得ることを理解されたい。
【0177】
提供されるのは、本発明の抗体又は他の組成物及び使用説明書を含むキットでもある。キットは、1つ以上の追加の活性剤、例えば追加の治療剤又は予防剤を更に含有し得る。
【0178】
本発明は、治療又は診断の方法のための、本発明に従う抗体の使用に更に関する。
【0179】
一態様では、本発明は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染症又はコロナウイルス感染症と関連する疾患若しくは合併症(例えば、COVID-19又はLong COVID)を処置する方法に関する。
【0180】
一実施形態では、方法は、コロナウイルスと関連する疾患又は合併症(例えば、COVID-19又はlong COVID)に罹患している対象に、治療有効量の本発明の抗体又は医薬組成物を投与することを含む。
【0181】
本発明の抗体又は医薬組成物は、適切な任意の方法によって投与され得る。例えば、皮下、静脈内、皮内、経口的、鼻腔内、筋肉内又は頭蓋内投与され得る。好ましい実施形態では、本発明の抗体又は医薬組成物は、静脈内又は皮下投与される。
【0182】
一部の実施形態では、本発明は、コロナウイルス感染症と関連する徴候又は合併症(例えば、COVID-19又はlong COVID)の重篤度を引き下げるか、又はその発症若しくは進行を予防する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、対象、例えばコロナウイルスに曝されてきたか若しくは曝される危険性が高い対象又はコロナウイルス感染症と関連する重度の徴候若しくは合併症(例えば、COVID-19若しくはlong COVID)を経験する危険性が高い対象でコロナウイルス感染症が発生するのを予防する方法を提供する。
【0183】
本発明は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染症又はそれと関連する疾患若しくは合併症(例えば、COVID-19若しくはlong COVID)を処置する方法で使用するための、本発明に従う抗体又は医薬組成物にも関する。
【0184】
別の態様では、本発明は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染症又はそれと関連する疾患若しくは合併症(例えば、COVID-19)を処置するための組成物を製剤化する方法に関し、前記方法は、本発明に従う抗体を、薬学的に許容される担体と混合して、前記組成物を調製することを含む。
【0185】
別の態様では、本発明は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)感染症又はそれと関連する疾患若しくは合併症(例えば、COVID-19)を処置するための医薬の製造のための、本発明に従う抗体又は医薬組成物の使用に関する。
【0186】
本発明は、本明細書中に記載されるように、いずれかのSARS-CoV-2バリアントによって引き起こされるコロナウイルス感染症を予防、処置又は診断することにも関する。COVID-19は、任意のSARS-CoV-2バリアントによって引き起こされ得る。
【0187】
好ましい実施形態では、本発明は、系統hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019、SARS-CoV-2/human/AUS/VIC01/2020、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P1)、デルタ(B1.617.2)又はオミクロン(B.1.1.529)由来のSARS-CoV-2バリアントによって引き起こされる感染症を予防、処置又は診断することに関する。一部の実施形態では、本発明は、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019と比較して、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のRBD内で位置501、484、452、478及び/又は417の1つ以上において変異を含むSARS-CoV-2バリアントによって引き起こされる感染症を予防、処置又は診断することに関する。一部の実施形態では、本発明は、懸念されるSARS-CoV-2バリアントによって引き起こされる感染症に関する。
【0188】
例えば、本発明の抗体は、本発明の別の抗体又はその結合断片の前、その後若しくはそれと同時に、且つ/又は抗ウイルス薬若しくは抗炎症剤の前、その後若しくはそれと同時に投与され得る。一実施形態では、全ての治療剤は、単一の組成物により一緒に投与され得る。別の実施形態では、各構成要素は、併用療法レジメンの一部として別途投与され得る。
【0189】
一部の実施形態では、本発明の方法は、処置前と比較して、例えば10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超又は100%のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)のウイルス量の低下に至り得る。ウイルス量を求める方法は、当技術分野で周知であり、例えば感染アッセイがある。
【0190】
更に提供されるのは、コロナウイルス感染症(例えば、SARS-CoV-2感染症)を有する対象を特定する方法である。例えば、本発明の方法及び使用は、試料中のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)又はその構成要素若しくは断片の存在を特定することを含み得る。
【0191】
したがって、別の態様では、本方法は、対象由来の試料中のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)又はその構成要素若しくは断片の存在を特定することを含む。試料は、適切な任意の試料、例えば組織生検、喉スワブ、鼻スワブ又は唾液試料であり得る。
【0192】
更なる態様では、本発明は、試料中のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)又はその構成要素若しくは断片の存在を特定する方法を提供し、方法は、試料を本発明の抗体と接触させて、抗体が抗体-抗原複合体を形成するかを判定することを含み、抗体-抗原複合体の形成は、試料がコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)について陽性であることを示す。
【0193】
本発明が試料中のコロナウイルスの存在を検出することに関する実施形態では、抗体は好ましくは、検出可能な標識、例えばフルオロフォア、小分子、ナノ粒子、放射性同位体又は酵素を含有する。
【0194】
検出は、インビトロ、インビボ又はインサイチュで実行され得る。抗体-抗原複合体の存在を判定する適切な任意の方法が用いられ得る。適切な方法が当技術分野で知られている。例えば、インビトロ検出技術として、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降及び免疫蛍光が挙げられる。インビボ技術は、標識された抗体を含む。検出技術は、定性的リードアウト又は定量的リードアウトを提供し得る。
【0195】
好ましい実施形態では、対象は、それを必要とするヒト対象である。しかしながら、対象は、非ヒト動物、例えばラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ又はイヌでもあり得る。対象は、症候性疾患を有し得る。代わりに、対象は、無症候性であるか又は症候が出る前であり得る。
【0196】
本発明は、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)の、試料中の存在を検出するためのキットも包含する。例えば、キットは、本発明に従う標識された抗体、試料中のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)の存在又は量を判定する手段及び試料中のコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)の量を標準又は対照と比較する手段を含み得る。一部の実施形態では、キットは、ラテラルフロー試験キットである。
【0197】
本発明の方法は、任意のSARS-CoV-2バリアントを特定するために用いることができる。好ましい実施形態では、本発明は、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P1)又はデルタ(B1.617.2)から選択されるSARS-CoV-2バリアントを特定することに関する。
【0198】
本発明は、本発明に従う抗体又は医薬組成物を用いて、試料中のSARS-CoV-1を検出する方法も提供する。例えば、SARS-CoV-1感染症又はSARS-CoV-1と関連する疾患若しくは合併症の診断のためのSARS-CoV-1の検出である。
【0199】
本発明の抗体は、複数のSARS-CoV-2バリアントを中和するのに有効であり得る。
【0200】
SARS-CoV-2バリアントは、hCoV-19/Wuhan/WIV04/2019(GenBank:MN908947)の参照配列と比較した場合にウイルスの遺伝的配列の変化を含むSARS-CoV-2のバージョンである。
【0201】
特に、本発明の抗体は、「懸念されるバリアント」(VOC)及び/又は「注目すべきバリアント」(VOI)と指定されたSARS-CoV-2バリアントを中和するのに有効であり得る。
【0202】
「懸念されるバリアント」及び「注目すべきバリアント」が意味するのは、世界保健機関(WHO)により、現在の実用的定義又は他の関連する任意の基準に従ってそのように現在指定されているSARS-CoV-2のバリアントである。「懸念されるバリアント」及び「注目すべきバリアント」と現在指定されているバリアントが当業者に知られており、例えばhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/に列挙されている。SARS-CoV-2遺伝的変異の範囲を記述するデータベースは、Nextstrain(https://nextstrain.org/)、GISAID(https://www.gisaid.org/)及びCOG-UK(https://www.cogconsortium.uk/)に見出すことができる。
【0203】
2021年10月現在の指定される「懸念されるバリアント」は、アルファ(B.1.1.7)、ベータ(B.1.351)、ガンマ(P1)、デルタ(B1.617.2)バリアントである。2021年10月現在の指定される「注目すべきバリアント」(VOI)は、ラムダ(C.37)及びミュー(B.1.621)バリアントである。
【0204】
SARS-CoV-2ウイルスの連続進化及びこのバリアントの影響に関する進行中の研究に起因して、例えばウイルスゲノムに対する更なる変化が新しいバリアントの出現の原因となるか、又は既存のバリアントの影響の理解における新しい進展が、もたらされる危険性の再評価を必要とする場合、これらの名称は、固定されず、バリアントは、必須であると考えられるこれらの名称に加えられ得るか、これらから除去され得るか又はこれらの間で動かされ得ることが当業者によって認識されるであろう。
【0205】
そのため、他の流布しているSARS-CoV-2バリアントと比較して世界規模の公衆衛生に対する主要な更なる危険性をもはやもたらさないことが最終的に実証されている以前に指定された「注目すべきバリアント」(VOI)又は「懸念されるバリアント」(VOC)は、分類し直すことができる。逆に言えば、実用的定義で概説されるように、関連基準を満たすとWHO若しくは関連する公衆衛生体によって判断される場合又はそうでなければそのような名称を正当化するのに十分な更なる危険性をもたらすと判断される場合、注目すべきバリアント(VOI)又は関心事(VOC)のバリアントと以前に指定されなかったバリアントは、そのように指定され得る。
【0206】
「注目すべきバリアント」(VOI)又は「懸念されるバリアント」(VOC)について世界保健機構(WHO)によって提供される実用的定義は、例えば、変化する公衆衛生状況、新しいバリアントの出現又は異なるバリアントによってもたらされる相対的な公衆衛生の危険性の理解の更なる進展を説明するように定期的に調整されることも認識されるであろう。
【0207】
2021年10月現在、用語「注目すべきバリアント」(VOI)は、経時的な症例数の増大又は世界規模の公衆衛生に対する新進の危険性を示唆する他の見掛けの疫学的影響と並行する相対的な蔓延の増大を伴う複数の国々では、ウイルス特徴、例えば伝達性、重症度、免疫エスケープ、診断又は治療的エスケープに影響を与えることが予測されるか又は知られており、且つかなりの市中感染又は複数のCOVID-19クラスターを引き起こすと特定された遺伝的変化を有するSARS-CoV-2バリアントを指すと理解される。
【0208】
2021年10月現在、用語「懸念されるバリアント」(VOC)は、VOIの定義(上記を参照されたい)を満たし、且つ比較に関する評価を通して、世界規模の公衆衛生の重要性の程度で以下の変化の1つ以上と関連すると実証されたSARS-CoV-2バリアントを指すと理解される:
- 伝達性の増大若しくはCOVID-19疫学の有害な変化、又は
- 病原性の増大若しくは臨床症状の変化、又は
- 公衆衛生及び社会施策又は利用可能な診断法、ワクチン、治療薬の有効性の低下。
【0209】
「注目すべきバリアント」(VOI)及び「懸念されるバリアント」(VOC)のWHOの現在の実用的定義は、SARS-CoV2に関するために当業者に知られており、例えばhttps://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/に列挙されている。
【0210】
本発明の開示される抗体又は医薬組成物の様々な使用は、当技術分野における具体的な必要性に合わせて調整され得ることを理解されたい。本明細書中で用いられる専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明するためのみのものであり、限定することを意図されないことも理解されたい。
【0211】
加えて、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、内容がそうではないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。そのため、例えば、「抗体」への言及は、2つ以上の「抗体」を含む。
【0212】
上記又は下記を問わず、本明細書中で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0213】
実施例1:SARS-CoV-2の中和
段階希釈したRQCov-05/02、RQCov-05/03、RQCov-05/04、RQCov-05/05、RQCov-06/03、RQCov-07/02、RQCov-07/03又はRQCov-07/07モノクローナル抗体(mAb)をSARS-CoV-2ウイルスと混合して、37℃で1時間インキュベートした。次に、混合物をVero細胞単層に二反復で移して、更に2時間インキュベートしてから、ウイルス拡散を制限するために各ウェルに1.5%半固体カルボキシメチルセルロース(CMC)オーバレイ培地を加えた。次に、フォーカス(感染細胞)形成アッセイを、Vero細胞をヒト抗NP mAb(mAb206)に続いてペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(A0170;Sigma)で染色することによって実行した。最終的に、フォーカス(抗体の不在下でウェルあたりおよそ100個)を、TrueBlueペルオキシダーゼ基質を加えることによって可視化した。ウイルス感染細胞フォーカスを、AID ELISpotソフトウェアを用いて、classic AID EliSpotリーダーによりカウントした。フォーカス減少のパーセンテージを算出して、IC50及びIC80を、SPSSパッケージのプロビットプログラムを用いて求めた。
【0214】
更なる詳細については、Dejnirattisai et.al.(2021).Antibody evasion by the P.1 strain of SARS-CoV-2 Cell 184(11)2939-2954 https://doi.org/10.1016/j.cell.2021.03.055を参照されたい。
【0215】
図1~3及び表3~8に示すように、抗体RQCov-05/02、RQCov-05/03、RQCov-05/04、RQCov-05/05、RQCov-06/03、RQCov-07/02、RQCov-07/03及びRQCov-07/07は全て、試験した全てのCOVIDバリアントを中和するのに高度に有効であった。
【0216】
図1並びに表3及び4は、抗体RQCov-05/02、RQCov-05/03、RQCov-05/04及びRQCov-05/05によるCOVIDバリアントの中和を示す。
【0217】
図2並びに表5及び6は、抗体RQCov-06/03によるCOVIDバリアントの中和を示す。
【0218】
図3並びに表7及び8は、抗体RQCov-07/02、RQCov-07/03及びRQCov-07/07によるCOVIDバリアントの中和を示す。
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【配列表】
【国際調査報告】