IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧 ▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】強化ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20241128BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20241128BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08K5/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527626
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2021130728
(87)【国際公開番号】W WO2023082273
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ワン、タオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、シルン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、カイナン
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、ウェンケ
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ウーイェ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB21X
4J002CL00W
4J002CL03W
4J002CP09Y
4J002EN026
4J002EN106
4J002FD206
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
(A)少なくとも1つのポリアミドと、(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、(C)少なくとも1つの有機アミンと、を含む強化ポリアミド組成物;強化ポリアミド組成物を製造するための方法;及び強化ポリアミド組成物から作製される物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも1つのポリアミドと、
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、
(C)少なくとも1つの有機アミンと、のブレンドを含み、前記少なくとも1つの有機アミンである成分(C)の濃度が、0.01重量%~10重量%である、強化ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの有機アミンである成分(C)が、分子の官能価が4未満であるという条件で、1分子中にアミンを含む、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリアミドである成分(A)の濃度が、50重量%~98.99重量%であり、前記少なくとも1つの耐衝撃性改良剤組成物である成分(B)の濃度が、1重量%~50重量%であり、前記少なくとも1つの有機アミンである成分(C)の濃度が、0.01重量%~10重量%である、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの耐衝撃性改良剤である成分(B)が、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマーである、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの有機アミンである成分(C)が、R-NH、R-NH-R’、NH-R-NH、R-NH-R’-NH、R-NH-R’-NH-R’’、及びこれらの混合物から本質的になる群から選択され、R、R’、R’’がそれぞれ別個に、炭素数2~30のアルキル基、アリール基、アリル基、又はアルコキシ基である、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの有機アミンである成分(C)が、少なくとも1つのポリエーテルアミンである、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有機アミンである成分(C)が、少なくとも1つの第一級アミン基、若しくは少なくとも1つの第二級アミン基、又はそれらの混合物を有する少なくとも1つのポリジメチルシロキサンであり、前記少なくとも1つの第一級アミン基、前記少なくとも1つの第二級アミン基、又はこれらの混合物が、前記少なくとも1つのポリジメチルシロキサンの末端又は側鎖に存在する、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項8】
高流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法であって、
(A)少なくとも1つのポリアミドと、
(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、
(C)少なくとも1つの有機アミンと、のブレンドを、一段階で溶融混合することを含み、前記有機アミンの濃度が、0.01重量%~10重量%であり、
前記溶融混合工程が、200℃を超える溶融混合温度で行われる、方法。
【請求項9】
高流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法であって、
(I)90℃未満の温度で所定の時間、少なくとも以下の2つの成分:
(α)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤(B)と、
(β)少なくとも1つの有機アミン(C)と、を浸漬して、ブレンド複合材成分を形成する工程と、
(II)200℃超の温度で所定の時間、少なくとも以下の2つの成分:
(γ)少なくとも1つのポリアミドと、
(δ)工程(I)からの前記ブレンド複合材成分と、を溶融混合して、強化ポリアミド組成物を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
高流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法であって、
(i)90℃超の温度で、少なくとも以下の2つの成分:
(α)少なくとも1つの強化剤成分と、
(β)少なくとも1つのシロキサン系成分と、を溶融混合して、ブレンド複合材成分を形成する工程と、
(ii)工程(i)からの前記ブレンド複合材成分をペレット化して、複数の複合材ペレットを形成する工程と、
(iii)200℃超の温度で、少なくとも以下の2つの成分:
(γ)少なくとも1つのポリアミドと、
(ε)工程(ii)からの前記複数の複合材ペレットと、を溶融混合して、強化ポリアミド組成物を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の強化ポリアミド組成物から製造された、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ポリアミド組成物に関し、より具体的には、本発明は、強化ポリアミド組成物に改善された室温衝撃強度及び流動性特性を与える、ポリアミド、耐衝撃性改良剤、及び有機アミンのブレンドを含む強化ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンは、ポリアミドから構成される合成熱可塑性ポリマーのファミリーの総称である。ポリアミド(PA)は、アミド結合によって連結された繰り返し単位である。ナイロンは、アミド連結(-CO-NH-)の少なくとも85重量%が2つの脂肪族基に直接結合している脂肪族又は半芳香族ポリアミドに基づく周知の合成熱可塑性ポリマーである。
【0003】
合成加工ナイロン(又はPA)は、優れた機械特性、耐溶剤性、耐摩耗性などを有するプラスチックであり、ナイロン材料は、様々な用途で使用するための物品/製品及び部品を形成するために、様々な繊維、フィルム、又は形状に溶融加工することができる。例えば、強化ナイロン複合材料は、自動車用途、産業機械用途、消費者用途、及び電子用途などの用途に使用することができる。しかしながら、ナイロンは、低いノッチ付き衝撃強度を有し、特に、ナイロンは、低温環境における靱性が低いという欠点を示し、このことは、ナイロンの産業における更なる用途を制限する。したがって、産業界は、強化ナイロンの衝撃強度性能をより良好にする(増加又は改善する)方法を絶えず求めている。
【0004】
典型的には、強化ナイロンの衝撃強度性能(又は耐衝撃性)は、耐衝撃性改良剤又は添加剤を強化ナイロンに添加することによって増加する。耐衝撃性改良剤材料を強化ナイロンに添加することは、特に自動車分野において、室温及び室温より低い温度の両方で強化ナイロンの耐衝撃性を改善する1つの方法である。
【0005】
ナイロンの耐衝撃性を改善するために、耐衝撃性改良剤が典型的にはナイロンに添加されて強化ナイロン組成物を形成し、そのような強化ナイロン組成物は、自動車、産業機械、消費者製品、及び電子製品などの様々な用途分野のために多くの産業によって広く使用されている。良好な衝撃強度及び良好な流動性などの強化ナイロン組成物の性能特性は、上記の産業によって非常に望まれている特性である。これらの特性の良好なバランスは、電子及び自動車用途分野における薄壁及び軽量部品を設計するために特に望ましい。上記用途で使用するための強化ナイロン組成物から薄い部品を製造するためには、強化ナイロンの十分な流動性が必要であり、軽量化設計を可能にするためには、強化ナイロン組成物の剛性/靱性/流動性バランスを改善するために強化ナイロン組成物に添加される効率的な耐衝撃性改良剤が必要である。強化ナイロンから作製された部品の厚さ及び重量を低減することによって、このシステムのコストも低減することができる。
【0006】
これまで、強化ナイロン(これは極性である)において主に使用される耐衝撃性改良剤(IM)は、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマー(これは非極性である)であった。通常、無水マレイン酸(MAH)は、以下の一般的化学反応スキーム(スキーム(I))に示されるように、POE上にグラフト化された無水物基とナイロン中のアミン末端基との間の反応を通してPOEとナイロンとの間の適合性を高めるために、ポリオレフィンエラストマー(POE)の骨格にグラフト化される。
【数1】
【0007】
無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン(MAHグラフト化POE)エラストマーは、非極性ポリオレフィンと高極性ナイロンとの間に必要とされる良好な適合性特性を実現する。しかしながら、上記反応は、不可逆的なイミド結合を引き起こし、得られるナイロン/POEブレンド組成物の流動性特性を著しく低下させる。
【0008】
これまで、例えば、IMのMAHグラフト比を最適化すること、POEのTgを低下させること、及び/又はPOE中に架橋を提供することを含む、強化ナイロンの衝撃強度を改善するための多くの努力が行われてきた。努力の大部分は、POE上にグラフト化されたMAHレベルを改良するなどの、MAHグラフト化POE(「POE-g-MAH」とも略される)成分の設計を伴う。しかしながら、強化ナイロン組成物の衝撃強度及び流動性性能の両方を最適化するための前述の産業による努力は、限られた成功しか収めていない。
【0009】
例えば、中国特許第110591100号は、ナイロンの衝撃強度を増加させて、超低温耐性及び耐衝撃性ナイロン(又は「強化ナイロン」)を形成するために使用される超低温耐性強化剤(又は耐衝撃性改良剤)について言及している。上記参考文献に開示された耐衝撃性改良剤は、ポリオレフィンエラストマーの主鎖と極性モノマーの側鎖とを含み、極性モノマーの側鎖がアミノシリコーンオイルと結合しているポリオレフィンエラストマーを含むことを特徴とする。上記参考文献のナイロン組成物は、可塑剤として作用する高充填量のシリコーンオイル(POEに基づいて25%~50%)を必要とし、アミノ基は、ナイロンと耐衝撃性改良剤との間の適合性を促進するリンカーとして作用するように官能化される。また、上記参考文献には、上記参考文献の耐衝撃性改良剤が強化ナイロン組成物の流動性を改善することについては言及されていない。更に、上記参考文献は、ジアミン又はトリアミンの使用について具体的に言及しておらず、モノアミンは強化ナイロンを提供するように作用しないことが見出されており、データはテトラミンも作用しないことを示している。
【0010】
米国特許出願公開第20060205880(A1)号は、高流動性POE(又はアイオノマー強化ポリアミド)を提供するために有機酸を使用することに言及している。酸添加量は最大で10%であり、強化剤は5psi~20,000psiの範囲の引張弾性率を有する。上記参考文献は、PA分子量をカットしてPAの流動性を改善するための、当業者に周知の有機酸の使用を開示している。しかしながら、上記参考文献は、ナイロン組成物の衝撃強度を改善するための4未満の官能価を有する有機アミンの使用を開示していない。
【0011】
中国特許出願公開第11174796(A)号は、ポリアミド、ミネラル、ガラス繊維、超分岐ポリアミド及びシランカップリング剤を含む、改善された耐熱性を有するナイロン複合材料について言及している。上記参考文献に開示されているアミノシランはナイロン複合材料にアミノ基を提供するが、アミノシランは充填剤表面改質に使用され、ナイロン複合材料の流動性又は衝撃強度特性に対する利点は開示されておらず、すなわち、上記参考文献のアミノシランは、ナイロン複合材料の流動性及び衝撃強度を改善するように作用しない。
【0012】
国際公開第2005054368(A1)号は、強化ポリアミド(ナイロン)の流動性を改善するために有機酸を使用すること、並びに良好な熱及びUV安定性を維持するために無機安定剤及び有機安定剤を組み合わせることについて言及している。上記の参考文献は、流動性と耐久性のバランスをとるためのMAHグラフト化POE+有機酸+安定剤の相乗作用を記載している。しかしながら、国際公開第2005054368(A1)号は、衝撃強度の改善を開示していない。それは、流動性と耐久性のバランスをとるためのMAHグラフト化POE+有機酸+安定剤の相乗作用を開示した。しかしながら、衝撃強さの改善はない。
【0013】
中国特許出願公開第110580971(A)号及び同第110437612(A)号は、酸化防止剤としてヒンダードアミンを含有するナイロン複合材料である巻線ワイヤの外層のためのクラッディング絶縁材料について言及している。しかしながら、ヒンダードアミンは反応性が低く、表面可逆的架橋剤として作用することができないため、ナイロン複合材料の流動性及び衝撃強度の性能を改善することができない。
【0014】
中国特許出願公開第109722020号は、ナイロン複合材料及び強化剤としてのアミノ官能化ポリオレフィンエラストマーの使用について言及している。上記の参考文献は、ナイロン複合材料の衝撃強度及び/又は流動性を改善することを記載していない。
【0015】
Polymer,Volume 43,Issue17,Pages 4673-4687における「Effect of glass fiber surface chemistry on the mechanical properties of glass fiber reinforced,rubber-toughened nylon 6」と題された論文は、アミノシランなどの異なるタイプの官能化シラン、及び強化ナイロン6において使用されるガラス繊維に対する表面処理剤として使用される場合のアミノシランの効果について言及している。アミノシランは、架橋剤としてナイロン6に使用されるが、アミノシランは、ナイロン6の流動性又は衝撃強度を改善するのに役立たない。
【0016】
公知の強化ナイロン組成物の衝撃強さ及び流動性に関する制限を考慮すると、強化ナイロンの流動性などの強化ナイロンの他の特性に悪影響を及ぼすことなく、かつ強化ナイロンの製造コストを著しく増加させることなく、特に-30℃未満などの低温での強化ナイロンの衝撃強さを更に改善することが望ましい。
【0017】
靱性特性及び流動性特性の両方が増大した新規な強化ナイロン化合物、材料又は組成物を提供することも望まれているか、又は、改良された強化ナイロン組成物を形成する適切な成分、例えば、(1)ポリアミド(ナイロン化合物、ポリマー、材料又は組成物)、(2)効率的な耐衝撃性改良剤、及び(3)有機アミンをブレンドすることによって、2つの特性の有利なバランスを少なくとも見出すことも望まれている。
【発明の概要】
【0018】
広範な実施形態では、本発明は、(A)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)と、(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、(C)強化ポリアミド組成物の流動性及び衝撃強度特性が改善されるような、少なくとも1つの特定の有機アミンとのブレンドを含む強化ポリアミド組成物に関する。好ましい実施形態では、本発明の強化ポリアミド組成物に使用される有機アミンは、4未満の官能価を有する。他の実施形態では、有機アミンは、MAHグラフト化POE強化剤と組み合わせて添加剤として使用され、そのような組み合わせは、ポリアミドに添加されると、驚くべきことに、改善された流動性及び衝撃強度特性を有する強化ポリアミド組成物を形成する。
【0019】
別の実施形態では、本発明の強化ポリアミド組成物は、50重量%~98.99重量%の濃度を有する少なくとも1つのポリアミドである成分(A)と、1重量%~50重量%の濃度を有する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤組成物である成分(B)と、0.01重量%~10重量%の濃度を有する少なくとも1つの有機アミンである成分(C)と、を含む。
【0020】
更に別の実施形態では、本発明は、高い流動性及び靱性を示す上記強化ポリアミド組成物を調製するための方法を含む。
【0021】
更に別の実施形態では、本発明の上記強化ポリアミド組成物を調製する方法は、少なくとも2軸スクリュー押出機で行われる溶融混合工程を含む。
【0022】
更に別の実施形態では、本発明は、上記強化ポリアミド組成物を用いて製造された物品を含む。
【0023】
1つ以上の実施形態では、本発明の上記の強化ポリアミド組成物及び物品製造方法は、押出方法及び/又は射出成形方法を含む。
【0024】
本発明の実施形態の追加の特徴及び有利な点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明らかになるか、又は発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を含む、本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される温度は、摂氏温度(℃)である。
【0026】
本明細書における「室温(Room temperature、RT)」及び/又は「周囲温度」は、別途特定されない限り、20℃~26℃の温度を意味する。
【0027】
「エラストマー」は、粘弾性(すなわち、粘度及び弾性の両方)を有し、他の材料と比較して弱い分子間力、一般に低いヤング率及び高い破壊歪みを有するポリマーである。IUPAC(国際純正・応用化学連合)は、「エラストマー」という用語を「ゴム様弾力性を示すポリマー」と定義している。
【0028】
「ポリマー」は、同じ種類又は異なる種類のモノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及び「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、及び3つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。微量の不純物、例えば触媒残留物が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる可能性がある。それはまた、コポリマーのすべての形態、例えば、ランダム、ブロックなども包含する。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマーの種類に「基づいて」、特定のモノマー含量を「含有する」などと称されるが、本文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0029】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0030】
本明細書における「ナイロンポリマー組成物」は、少なくとも1つの純粋なナイロンポリマーと、少なくとも1つの他の異なる成分、例えば、エラストマー、ガラス繊維、小分子添加剤などとの組み合わせ、混合物、又はブレンドを意味する。
【0031】
本明細書における「耐衝撃性改良剤」は、プラスチック樹脂の可撓性、靱性、及び衝撃強度を増大させて、そのようなプラスチック樹脂から作製される剛性部品の物理的特性要件を満たすために、様々なプラスチック樹脂に添加される添加剤である。
【0032】
本明細書において、ナイロン組成物に関する用語「衝撃靱性」、「衝撃強度」、及び「耐衝撃性」は、CHARPY、ISO 179に記載されている衝撃法によって評価されるナイロン組成物の衝撃強度の性能特性を意味する。上記用語は互換的に使用することができる。
【0033】
ナイロン組成物に関する「室温衝撃強度」は、本明細書において、室温条件下で試験されたナイロン組成物の衝撃強度値を意味する。
【0034】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除することを意図したものではない。疑義を避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるか否かにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる他の構成成分、工程、又は手順をあらゆる後続の説明の範囲から除外する。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、及び任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、その逆もまた同様である。
【0035】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までのすべての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0036】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈から別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する。「=」は、「等しい」又は「と等しい」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「@」は、「において」を意味し、μm=ミクロン、g=グラム、mg=ミリグラム、mW/m・K=1メートル、1ケルビン度当たりのミリワット、kJ/m=1平方メートル当たりのキロジュール、L=リットル、mL=ミリリットル、g/mL=1ミリリットル当たりのグラム、g/L=1リットル当たりのグラム、g/10min=10分当たりのグラム、kg/m=1立方メートル当たりのキログラム、ppm=重量百万分率、pbw=重量部、rpm=1分間当たりの回転数、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=マイクロメートル、min=分、s=秒、ms=ミリ秒、hr=時、Pa=パスカル、MPa=メガパスカル、Pa・s=パスカル秒、mPa・s=ミリパスカル秒、g/mol=1モル当たりのグラム、g/eq=1当量当たりのグラム、mg KOH/g=1グラム当たりの水酸化カリウムのミリグラム、Mn=数平均分子量、Mw=重量平均分子量、pts=重量部、1/s又は秒-1=秒の逆数[s-1]、℃=摂氏温度、mmHg=水銀柱ミリメートル、psig=1平方インチ当たりのポンド、kPa=キロパスカル、%=パーセント、vol%=体積パーセント、mol%=モルパーセント、及びwt%=重量パーセント。
【0037】
別途明記されない限り、すべてのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載したすべてのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0038】
本発明の具体的な実施形態が、本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明の主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0039】
一般に、本発明は、様々な用途のための、特に、ナイロン組成物が衝撃強度及び流動特性の増加を有することを必要とする用途において、ナイロン物品/製品又は部品を製造するのに有用な、強化ポリアミド(例えば、ナイロン)配合物又は組成物を含む。
【0040】
広範な実施形態では、強化ポリアミド組成物は、(A)ナイロンなどの少なくとも1つのポリアミドと、(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、(C)少なくとも1つの有機アミン化合物と、の組み合わせ、混合物、又はブレンドを含む。強化ポリアミド組成物の流動性及び衝撃強度特性を増加又は向上させるために、強化ポリアミド組成物は、例えば、(A)少なくとも1つのポリアミドと、(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、(C)少なくとも1つの有機アミン化合物とを、所定の濃度で、押出技術を使用した溶融ブレンド温度などの所定の条件下で混合することによって調製される。
【0041】
例えば、1つの好ましい実施形態では、強化ポリアミド組成物は、50重量%~98.99重量%の少なくとも1つのポリアミドである成分(A)と、1重量%~50重量%の少なくとも1つの耐衝撃性改良剤組成物である成分(B)と、0.01重量%~10重量%の少なくとも1つの有機アミンである成分(C)と、のブレンドを含み得る。本発明のナイロン組成物は、必要に応じて、(D)1つ以上の他の任意選択の化合物を更に含んでもよい。
【0042】
本発明では、所定量の特定の有機アミンと、耐衝撃性改良剤生成物(例えば、POE-g-MAH)と、強化ナイロンとをブレンドすることによって、強化ナイロン複合材料の衝撃強度を著しく改善できることが見出された。
【0043】
上記のブレンド組成物中に特定の有機アミンが存在すると、POEとナイロンとの間の動的結合が増加すると仮定される。例えば、特定の有機アミンがPOE-g-MAHなどの耐衝撃性改良剤生成物と結合する場合、POE中のMAHはアミド及び/又は酸化学物質で置き換えられ、この置き換えのために、POEとナイロンとの間の動的結合が増加する。加えて、形成された動的結合は、ナイロンとPOEとの間の良好な適合性を維持しながら、強化ナイロン化合物の流動性を著しく改善することができる。有機アミンをナイロンブレンド組成物に添加することによって、添加剤がPOE-g-MAH中の無水物基と反応して、アミド、酸、又は塩化学物質を形成することが理論付けられる。MAHと反応してナイロンと動的結合を形成する添加剤の一般的な化学反応スキームのいくつかの実施形態を、以下の一般的な化学反応スキーム、スキーム(II)、(III)及び(IV)に示す。
【数2】

【数3】

【数4】
【0044】
上記の反応スキーム(II)、(III)及び(IV)のいずれかの後、POE中のMAH基が消費され、したがって、MAHとナイロン中のアミン基との間の不可逆的架橋を抑制することができる。しかしながら、アミド、酸又は塩は、200℃を超える温度で行われる方法である配合方法又は射出成形方法中に、ナイロン中のアミン基との動的結合又は水素結合を依然として形成することができる。アミド、酸、又は塩とナイロン中のアミン基との間に形成される結合は、ナイロンとPOEとの間の良好な適合性を提供する一方で、得られる強化ナイロンの衝撃強度を維持又は改善する。
【0045】
ナイロン組成物のポリアミド化合物である成分(A)は、ポリマー主鎖の不可欠な部分として繰り返しアミド基(R-CO-NH-R’)を含有するポリマーである。本発明において有用なポリアミド化合物は、1つ以上のポリアミド化合物を含み得る。本発明に使用することができる好適なポリアミド樹脂としては、当技術分野で公知の任意のポリアミドが挙げられる。本発明において有用なポリアミドとしては、例えば、脂肪族、半結晶性、芳香族又は半芳香族ナイロン樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。ナイロン樹脂は、本質的にラクタム又はジアミン、及び脂肪族、半芳香族又は芳香族ジカルボン酸の出発材料から調製されるものである。本発明において有用な適切なラクタムとしては、例えば、カプロラクタム及びラウロラクタムが挙げられる。本発明において有用な適切なアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、2-メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカエチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2.2.4-(2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン(MXD)、パラキシリレンジアミン及び2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミン(MPMD)が挙げられる。本発明において有用な好適なジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸(DDDA)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウム-スルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸及びヘキサヒドロイソフタル酸が挙げられる。本発明においては、これらの出発材料に由来するナイロンホモポリマー又はコポリマーを単独又は混合物としてのいずれかで使用する。本発明の組成物に望ましいポリアミド樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる:(ナイロン6);ポリウンデカンアミド(ナイロン11);ポリラウラミド(ナイロン12);ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66);ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46);ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610);ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T);ポリヘキサメチレンイソテレフタルアミド(61);2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド(DT);2-メチルペンタメチレンイソフタルアミド(DI);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6T/6);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12);ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T);ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/61)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドf-ポリカプラミドコポリマー(ナイロン66/61/6);ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/-ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/61);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/61);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T);ポリヘキサメチレンテレフタルアミドf-ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6T/610/6);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/-ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/61);ポリm-キシリレンアジパミド(ナイロンMXD6);及び上記化合物のいずれかの混合物及びコポリマーなど。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド成分である成分(A)は、衝撃強度が所望される任意のポリアミドであり得る。例えば、本発明において有用な強化ポリアミド組成物成分は、本質的に以下からなる群から選択される少なくとも1つのポリアミドである成分(A)であり得る:(A1)ナイロン-4,6;(Aii)ナイロン-6,6;(Aiii)ナイロン-6,10;(Aiv)ナイロン-6,9;(Av)ナイロン-6,12;(Avi)ナイロン-11;(Avii)ナイロン-12;(Aviii)6T~12T;(Aix)6I~12I;(Ax)2-メチルペンタメチレンジアミン及び/又はヘキサメチレンジアミンと、(Axa)アジピン酸、(Axb)イソフタル酸、(Axc)テレフタル酸、及び(Axd)それらの混合物から本質的になる群から選択される1つ以上の酸とから形成される少なくとも1つのポリアミド;並びに(Axi)当該ナイロン及びそのポリアミドのブレンド及び/又はコポリマー。
【0047】
他の好ましい実施形態では、ポリアミドは、ナイロン6(自己重合するカプロラクタムから作製されるポリカプロラクタム)、ナイロン6,6(ポリマー主鎖内に繰り返しアミド基を有する長鎖合成ポリアミドであるヘキサメチレンジアミン-アジピン酸縮合生成物)、ナイロン4、ナイロン11、ナイロン6,10、又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0048】
更に他の好ましい実施形態では、本発明において有用なポリアミド化合物は、ナイロン6、ナイロン6,6又はそれらの混合物である。
【0049】
いくつかの実施形態において、ポリアミド成分である成分(A)は、市販の化合物から選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明において有用な市販のポリアミド化合物のいくつかは、Ultramid B3Sナイロン6(BASFから入手可能)、Ultramid A3Wナイロン66(BASFから入手可能)、及びこれらの混合物を含むことができる。
【0050】
ポリアミド成分である成分(A)の濃度は、強化ポリアミド組成物中の成分の重量に基づいて、例えば、一実施形態では50重量%~98.99重量%、別の実施形態では60重量%~92重量%、更に別の実施形態では70重量%~90重量%であり得る。
【0051】
広い実施形態では、本発明の強化剤成分又は耐衝撃性改良剤である成分(B)は、少なくとも1つの強化剤成分を含み、2つ以上の強化剤成分を含むことができる。ポリアミド成分(A)及び有機アミン成分(C)と組み合わせて使用される耐衝撃性改良剤は、以下の所定の特性:強化ナイロン組成物の他の成分と混合される前のMAHグラフト率、密度、及びメルトインデックスを有する1つ以上の耐衝撃性改良剤化合物であり得る。
【0052】
例えば、耐衝撃性改良剤は、一実施形態では、0.1%~5%、別の実施形態では0.2%~2.0%、更に別の実施形態では、0.3%~1.0%のMAHグラフトレベルを有する。
【0053】
例えば、耐衝撃性改良剤は、一実施形態では、0.80g/cc~0.95g/cc、別の実施形態では、0.83g/cc~0.93g/cc、更に別の実施形態では、0.85g/cc~0.92g/ccの密度を有する。
【0054】
例えば、耐衝撃性改良剤は、一実施形態では、0.1g/10分~100g/10分、別の実施形態では0.3g/10分~50g/10分、更に別の実施形態では0.5g/10分~20g/10分のメルトインデックス(MI;ASTM D1238に準拠して、190℃及び2.16kgで)を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、強化剤成分である成分(B)は、例えば、(Bi)(Bia)少なくとも1つの重合エチレン;(Bib)3個の炭素原子~12個の炭素原子を有する少なくとも1つの重合α-オレフィン;(Bic)4個の炭素原子~14個の炭素原子を有し、本質的に以下からなる群から選択される少なくとも1つの重合不飽和モノマー;(Bic1)分岐化合物;(Bic2)直鎖化合物;(Bic3)環式化合物;及び(Bic4)それらの混合物;及び(Bid)それらの混合物から本質的になる群から選択される少なくとも1つのポリマー;(Bii)本質的に以下からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和モノマー:(Biia)3個の炭素原子~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸;(Biib)本質的に以下からなる群から選択される少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体:(Biib1)1個の炭素原子~29個の炭素原子を有するアルコールの少なくとも1つのモノエステル;(Biib2)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の少なくとも1つの無水物;(Biib3)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の少なくとも1つの金属塩、(Biib4)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の少なくとも1つのモノエステル;(少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の0パーセント~100パーセントが、金属イオンによる中和によってイオン化されたカルボン酸基の0パーセント~100パーセントを有する);(Biii)成分(Bi)及び(Bii)の混合物から本質的になる群から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態では、強化剤成分(耐衝撃性改良剤;成分(B))は、無水マレイン酸官能化エラストマーエチレンコポリマー、無水マレイン酸官能化エチレン、αオレフィンコポリマー、エチレン、アクリル酸エステル及び無水マレイン酸のターポリマー、無水マレイン酸グラフト化(MAH)ポリオレフィンエラストマー(例えば、POE-g-MAH);及びこれらの組み合わせを含む。1つの好ましい実施形態では、強化剤成分である成分(B)は、POE-g-MAHである。
【0057】
いくつかの実施形態では、強化剤成分は、例えば、Exxelorシリーズ製品(ExxonMobilから入手可能);及びTafmerシリーズ製品(三井化学株式会社から入手可能)、及びこれらの混合物が含まれる市販の化合物から選択することができる。
【0058】
本発明のナイロン組成物を調製するのに使用される耐衝撃性改良剤である成分(B)の濃度は、例えば、一実施形態では、強化ナイロン組成物中の成分の重量に基づいて1重量%~50重量%、別の実施形態では、8重量%~35重量%、更に別の実施形態では、10重量%~25重量%を含む。
【0059】
広い実施形態では、本発明において有用な有機アミンである成分(C)は、少なくとも1つの有機アミン成分を含み、2つ以上の有機アミン成分を含むことができる。ポリアミド成分(A)及び強化剤成分(B)と組み合わせて使用される有機アミンは、以下の所定の特性:強化ナイロン組成物の他の成分と混合される前に4未満の官能価及び10,000未満のMwを有する1つ以上の有機アミン化合物を含むことができる。
【0060】
例えば、有機アミンは、一般的な一実施形態では4未満、別の実施形態では3未満の官能価を有することができる。他の実施形態では、有機アミンは、一実施形態では1~4未満;別の実施形態では1~3、更に別の実施形態では1~2の官能価を有することができる。
【0061】
一般に、本発明において有用な有機アミン化合物は、アミン技術分野において知られている1つ以上の有機アミン化合物を含むことができる。例えば、本発明において使用され得る好適な有機アミン成分(C)としては、例えば、これらに限定されないが、:(Ci)少なくとも1つの第一級アミン基;(Cii)少なくとも1つの第二級アミン基;及び(Ciii)分子の官能価が4未満であることを条件として、1つの分子中の成分(Ci)である少なくとも1つの第一級アミン基と、成分(Cii)である少なくとも1つの第二級アミン基との混合物、から本質的になる群から選択される有機アミンが挙げられ得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、有機アミンである成分(C)は、R-NH、R-NH-R’、NH-R-NH、R-NH-R’-NH、R-NH-R’-NH-R’’、及びこれらの混合物から本質的になる群から選択することができ、R、R’、R’’は各々別個に、2~30の炭素数を有するアルキル基、アリル基又はアルコキシ基である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明で使用される有機アミンである成分(C)は、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ラウリルアミン、ステアラミン、ベンヘナミン(benhenamine)、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)、エチルアミノ(エチル)アミン(EAEA)、ポリエーテルアミン(例えば、Jeffamine)、及びそれらの混合物を含む、1つ以上のアミンを含んでもよい。
【0064】
他の実施形態では、有機アミンである成分(C)は、少なくとも1つの第一級アミン基、少なくとも1つの第二級アミン基、又はそれらの混合物を有する少なくとも1つのポリジメチルシロキサン(PDMS)であり得る。有機アミンである成分(C)の少なくとも1つの第一級アミン基、少なくとも1つの第二級アミン基、又は混合物は、ポリジメチルシロキサンの末端又は側鎖に存在することができる。
【0065】
更に他の実施形態では、有機アミン成分は、例えば、Jeffamine(Huntsman Corporationから入手可能なポリエーテルアミン)、AEEA及びEAEA(両方ともThe Dow Chemical Companyから入手可能);KF-8010及びX-22-161A(両方ともSHIN-ETSU Chemical Companyから入手可能);並びにこれらの混合物を含む市販の化合物から選択することができる。
【0066】
本発明の強化ナイロン組成物を調製するのに使用される成分(C)である有機アミン化合物の濃度は、例えば、一実施形態では、強化ナイロン組成物中の成分の重量に基づいて0.01重量%~10重量%、別の実施形態では、0.02重量%~8重量%、更に別の実施形態では、0.04重量%~6重量%、なお別の実施形態では、0.05重量%~4重量%、更になお別の実施形態では0.06重量%~3重量%を含む。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、種々のアミンは、(1)POE-g-MAHを浸漬するために使用され得るか、又は(2)強化ナイロン組成物に成分を添加する前にPOE-g-MAHと配合され得るかのいずれかである。浸漬又は配合方法を使用する結果として、強化ナイロン組成物の毛細管粘度は、浸漬又は配合方法を使用して著しく低下する(これは流動性が改善することを意味する)。
【0068】
本発明の例示として、それによって限定されるものではないが、例えば、0.50重量%のMAHがグラフトされ、2.16kgの荷重で190℃で測定したメルトインデックスが1.6g/10分であるPOE-g-MAH中に、0.45重量%(POE-g-MAHの重量に基づく)のEAEA(アミンと無水物のモル比2:1)を浸漬することによって、強化ナイロンは、25%の毛細管粘度減少(例えば、770s-1で356Pa・sから264Pa・sへ)及び70%の室温衝撃強度の増加(例えば、43.6kJ/mから73.9kJ/mへ)を示す。驚くべきことに、異なるMAHグラフト化比、例えば、0.90重量%MAH及び0.35重量%MAHを有し、それぞれ異なるメルトインデックス値1.3g/10分及び1.4g/10分を有する(メルトインデックス値は、190℃、2.16kg荷重で測定される)いくつかの他のPOE-g-MAHグレードの衝撃強度は、同様に大幅に改善された。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の強化ポリアミド組成物は、所望であれば、1つ以上の任意の成分、添加剤又は他の薬剤化合物を更に含むことができる。本発明の強化ポリアミド組成物において有用な任意の化合物、成分(D)としては、例えば、充填剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、酸化防止剤、安定剤、成核剤、難燃剤、及び発泡剤、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0070】
一般には、強化ポリアミド中で使用される場合の任意選択の化合物の濃度、例えば、一実施形態では0重量%~50重量%、別の実施形態では0.01重量%~40重量%、更に別の実施形態では0.1重量%~30重量%を含む。
【0071】
一般的な一実施形態では、強化ナイロン組成物は、(A)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)と、(B)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤成分と、(C)少なくとも1つの有機アミンと、(D)必要に応じて任意選択の添加剤とを組み合わせる、ブレンドする、又は混合することによって製造することができる。上記混合物を含む得られた強化ポリアミド組成物は、上記混合物中にいずれか1つ以上の成分(A)~(C)、特に、少なくとも1つの有機アミンである成分(C)を含有しない従来のポリアミド組成物と比較して、少なくとも10パーセントの毛細管粘度の減少を示す。
【0072】
本発明の一実施形態の例示として、限定されるものではないが、本発明の強化ナイロン組成物を製造するための一般的な方法は、(A)強化ナイロン組成物の重量に基づいて50重量%~98.99重量%の濃度の少なくとも1つのポリアミドと、(B)強化ナイロン組成物の重量に基づいて1重量%~50重量%の濃度の少なくとも1つの強化剤と、(C)強化ナイロン組成物の重量に基づいて0.01重量%~10重量%の濃度の少なくとも1つの有機アミンと、(D)必要に応じて、強化ナイロン組成物の重量に基づいて50重量%未満の濃度のいずれか任意選択の成分とを混合する、組み合わせる、又はブレンドすることを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、改善された靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための本発明の方法は、一段階で、所定の温度で、かつ所定の時間で、ポリアミドである成分(A)ポリアミドと、強化剤である成分(B)と、有機アミンである成分(C)と、を溶融混合することを含む。一段階の溶融混合工程は、一実施形態では200℃以上の温度で、別の実施形態では200℃~360℃、別の実施形態では220℃~350℃、なお別の実施形態では230℃~340℃、更に別の実施形態では250℃~300℃の溶融温度で行うことができる。一段階の溶融混合工程の時間は、一実施形態では1秒超、別の実施形態では5秒~10分、なお別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。一実施形態では、上記の溶融混合一段階の方法は、従来の二軸スクリュー(少なくとも2つのスクリュー)押出機などの少なくとも1つの押出機で行うことができる。
【0074】
他の実施形態では、高い流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための本発明の方法は、少なくとも以下の2つの工程を含むことができる:(I)少なくとも以下の2つの成分を所定の温度で所定の時間混合して、ブレンド組成物成分を形成する第1の工程:(α)上述した無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマー(POE-g-MAH)などの少なくとも1つの耐衝撃性改良剤である成分(B);及び(β)上述した有機アミンなどの少なくとも1つの有機アミン化合物である成分(C);並びに(II)少なくとも以下の2つの成分を所定の温度で所定の時間混合して、強化ポリアミド組成物を形成する第2の工程:(γ)上述したポリアミド(又はナイロン)などの少なくとも1つのポリアミドである成分(A);及び(δ)工程(I)からのブレンド成分(すなわち、組成物混合物)。
【0075】
第1の混合工程(I)は、例えば、成分(B)及び(C)を一緒に浸漬し、次いで、例えば、少なくとも1つの二軸スクリュー押出機を使用して成分を混合することによって行うことができる。第1の混合工程(I)の温度は、一実施形態では90℃未満、別の実施形態では、0℃~60℃、更に別の実施形態では10℃~55℃であり得る。第1の混合工程(I)の時間は、一実施形態では1時間超、別の実施形態では1時間~48時間、更に別の実施形態では2時間~24時間であり得る。
【0076】
溶融混合の第2の工程(II)の温度は、一実施形態では200℃超、別の実施形態では200℃~360℃、更に別の実施形態では220℃~350℃、なお別の実施形態では230℃~340℃、更になお別の実施形態では250℃~300℃であり得る。溶融混合の第2の工程(II)の時間は、一実施形態では1秒以上、別の実施形態では5秒~10分、なお別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。一実施形態では、上記の溶融混合の第2の工程(II)は、少なくとも2つのスクリューを有する少なくとも1つの押出機、例えば、当技術分野で知られている従来の二軸スクリュー押出機で行うことができる。
【0077】
他の実施形態では、高い流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法は、少なくとも以下の3つの工程を含むことができる:(i)少なくとも以下の2つの成分:(α)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤、例えば、POE-g-MAHなどの上述の耐衝撃性改良剤である成分(B);及び(β)少なくとも1つの有機アミン成分、例えば、上述の有機アミン成分(C)を溶融混合して、耐衝撃性改良剤と有機アミンとの混合物を形成する第1の工程;(ii)工程(i)からの耐衝撃性改良剤/有機アミン混合物をペレット化して複数の複合材ペレットを形成する第2の工程、及び(iii)少なくとも以下の2つの成分:(γ)少なくとも1つのポリアミド;及び(ε)工程(ii)からの複数の複合材ペレットを溶融混合して強化ポリアミド組成物を形成する第3の工程。一実施形態では、上記の溶融混合の第3の工程(ii)は、従来の二軸押出機などの少なくとも1つの押出機で行うことができる。
【0078】
第1の溶融混合工程(i)の温度は、一実施形態では100℃超、別の実施形態では、100℃~200℃、更に別の実施形態では120℃~180℃であり得る。第1の混合工程(i)についての時間は、一実施形態では20秒hr超、別の実施形態では20秒hr~10分、更に別の実施形態では30秒~5分間であり得る。
【0079】
ペレット化工程(B)は、押出機を出る樹脂を所定のサイズのペレットに切断するためのストランドカッターなどの従来の装置を使用して行われる。
【0080】
溶融混合の第3の工程(iii)の温度は、一実施形態では200℃超、別の実施形態では200℃~360℃、更に別の実施形態では220℃~350℃、更に別の実施形態では230℃~340℃、更になお別の実施形態では250℃~300℃であり得る。溶融混合の第3の工程(iii)の時間は、一実施形態では5秒以上、別の実施形態では5秒~10分、なお別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。
【0081】
強化ポリアミド組成物を調製するための本発明の方法の実施形態、及び上記のようなその工程は、当業者に公知の従来の装置によって行うことができる。例えば、均一又は均質な混合物を形成するための成分の混合は、二軸スクリュー押出機、溶融混練機、バッチミキサーなどの公知のブレンダー又はミキサーによって行うことができる。
【0082】
一般に、強化ナイロンの衝撃強度に影響を与えるためには、強化ナイロン中の小さい(例えば、500nm未満)POE相サイズが必要である。また、強化ナイロン組成物の強度を増加させるには、ナイロン(極性)とエラストマー(非極性)との間の強い相互作用が必要であり、ナイロン(極性)とエラストマー(非極性)との間の強い相互作用は、ナイロン相中に所望の小粒径POE相を達成する。ナイロン強化剤の全重量に基づいて、ナイロン成分である成分(A)の含有量、極性耐衝撃性改良剤である成分(B)の含有量、及び有機アミン成分(C)の含有量は、所定の濃度範囲内であるべきである。
【0083】
本発明の一実施形態の例示としては、それによって限定されるものではないが、上述の本発明のナイロン組成物を製造するための一般的な方法は、二軸スクリュー押出機内で、50重量%~98.99重量%の少なくとも1つのポリアミドである成分(A)と、1重量%~50重量%の少なくとも1つの耐衝撃性改良剤組成物である成分(B)と、0.01重量%~10重量%の少なくとも1つの有機アミンである成分(C)とを混合し、組み合わせ又はブレンドする工程を含む。本発明の強化ナイロン組成物は、必要に応じて、(D)1つ以上の他の任意選択の化合物を更に含んでもよい。
【0084】
上述したように、本発明の強化ポリアミド組成物は、例えば、(1)RT衝撃強度の増加;及び(2)強化ナイロン組成物の毛細管粘度の減少(強化ナイロン組成物の流動性が改善することを意味する)を含むいくつかの有利な利益を示す。例えば、有機アミン及び耐衝撃性改良剤(例えば、POE-g-MAH)と強化ナイロン成分との組み合わせは、ナイロン組成物を効果的に更に強化するように有利に機能し、すなわち、強化ポリアミド組成物の室温衝撃強度をブースト又は増強することができる。強化ポリアミド組成物は、強化ナイロン組成物を形成するためにポリアミドがPOE-g-MAH及び有機アミンとブレンドされるとき、曲げ弾性率、引張強度、伸長、熱変形温度(HDT)などの強化ナイロン組成物の他の機械的性能が最適化されたレベルで維持される一方で、良好な流動性特性とバランスのとれた増加した衝撃強度を示す。
【0085】
例えば、1つの一般的な実施形態では、ナイロン成分と共に特定の有機アミン及び耐衝撃性改良剤を含有する本発明のナイロン組成物は、有利には、異なる従来の耐衝撃性改良剤を含有するナイロン組成物と比較して、室温(RT)衝撃強度において少なくとも10%の増加を示す。別の実施形態では、本発明の強化ポリアミド組成物は、RT衝撃強度において少なくとも15%の増加を示し、更に別の実施形態において、本発明の強化ポリアミド組成物は、RT衝撃強度において少なくとも20%の増加を示す。更に別の実施形態では、ナイロン成分と共に特定の有機アミン及び耐衝撃性改良剤を含む本発明の強化ポリアミド組成物は、他の従来の耐衝撃性改良剤を含有するポリアミド組成物と比較して、RT衝撃強度において10%~50%の増加を示す。
【0086】
加えて、本発明の強化ポリアミド組成物は、毛細管粘度の低下を示し、これは結果として組成物の流動特性の改善を提供する。例えば、一実施形態では、強化ポリアミド組成物の毛細管粘度は、他の従来の耐衝撃性改良剤を含有するポリアミド組成物と比較して、5%の減少から40%の減少、別の実施形態では、他の従来の耐衝撃性改良剤を含有するポリアミド組成物と比較して7%減少から35%減少、更に別の実施形態では、他の従来の耐衝撃性改良剤を含有するポリアミド組成物と比較して8%減少から30%減少を示す。
【0087】
本発明のナイロン組成物の別の利点は、組成物のRT衝撃強度の上記の改善された特性のために、より薄い壁を有し、より少ない組成物を使用する軽量物品/製品又は部品を製造するためにナイロン組成物を使用することができることである。
【0088】
本発明の強化ナイロン組成物から製造される物品/製品又は部品は、例えば、電子機器、自動車部品、ギア、及び玩具などを含むことができる。
【0089】
成分(A)、(B)及び(C)が溶融形態で完全かつ均一に一緒に混合されると、得られた溶融混合物を使用して、従来の方法及び器材を使用して物品/製品又は成形部品を形成することができる。例えば、射出成形、押出成形、又はブロー成形方法を使用して、本組成物から物品/製品又は成形部品を形成することができる。
【0090】
1つの好ましい実施形態では、物品/製品又は成形部品は、例えば、射出成形方法及び二軸スクリュー押出機などの押出器材を使用して生成及び加工される。一般に、本発明の強化ポリアミド組成物から本発明の物品を製造するための方法は、例えば、
(X)(A)少なくとも1つのポリアミド、(B)耐衝撃性改良剤、及び(C)有機アミンを混合することによって、強化ポリアミド組成物を提供する工程と、
(Y)工程(X)の組成物を、押出方法を使用して物品に加工して、物品を形成する工程と、を含む。
【0091】
より薄く、したがってより軽量の部品を作製するためには、ナイロン組成物が高い衝撃強度を有し、ナイロン組成物がより薄い壁を通って流れることが必要である。本発明のナイロン組成物を使用すると、流動特性及び強靱性の両方の改善が得られる。そのような高い性能特性は、優れた耐衝撃特性を必要とする内装及び外装の部品及び物品のゲージを落とすことを可能にする。
【0092】
耐衝撃性改良剤添加剤、強化ナイロン組成物及び強化ナイロン組成物から製造された物品、製品又は部品は、広範囲のポリマー組成物及び構造において使用することができる。一般に、本発明の耐衝撃性改良剤を含む強化ナイロン組成物は、従来のコポリマーから作製された部品よりも高い耐衝撃強度(すなわち、増加した強靱性及び耐久性)を有する部品が必要とされる用途において使用される。例えば、限定されるものではないが、強化ナイロン組成物は、様々な用途に使用することができ、耐衝撃性及び強度を必要とする分野において有用な成形品に形成することができる。一実施形態では、例えば、強化ナイロン組成物は、自動車用剛性部品及び構成要素を製造するための自動車用途において使用することができる。自動車製品は、従来のポリマー加工によって製造することができる。
【実施例
【0093】
以下の本発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較例(Comp.Ex.)(まとめて「実施例」とする)は、本発明の特徴を更に詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして明示的にも暗示的にも解釈されることを意図しない。本発明の実施例はアラビア数字によって特定され、比較例はアルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。特に指示しない限り、すべての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0094】
原材料
実施例で使用した原材料(成分)のいくつかを表Iに記載する。実施例で使用される3つの様々なグレードのPOE-g-MAHは、POE-g-MAH1(0.50重量%のMAHグラフトレベル及び1.6g/10分のメルトインデックス(MI)を有する)、POE-g-MAH2(0.90重量%のMAHグラフトレベル及び1.3g/10分のMIを有する)、及びPOE-g-MAH3(0.35重量%のMAHグラフトレベル及び1.4g/10分のMIを有する)と称される。
【0095】
実施例で使用されるアミンのいくつかには、2の官能価を有するジアミンである、エチルアミノ(エチル)アミン(EAEA);3の官能価を有するジアミンである、アミノエチルエタノールアミン(AEEA);及び4の官能価を有するテトラミンである、トリエチレンテトラミン(TETA)が含まれる。
【表1】
【0096】
配合物
実施例で使用した強化ナイロン複合材配合物は、シリーズ1の実験については表IIに、シリーズ2の実験については表IIIに記載した配合物に基づいて作製した。
【表2】

【表3】
【0097】
表II及び表IIIに記載された強化ナイロン複合材配合物試料を調製するために使用された一般的手順、及び試料を試験するために使用された方法は、本明細書において以下に記載される試験手順に記載されている。
【0098】
アミンをPOEとブレンドするための浸漬方法
実施例で使用したアミンを、POEペレット及び浸漬方法を使用してPOEとブレンドした。浸漬方法は、最初にアミンを室温でPOEペレットと混合し、次いで低分子量アミンをPOEペレットに浸透させることを含む。例えば、浸漬方法を以下のように行った:400gのPOEペレットを最初に2Lのプラスチック容器に入れ、次いで、容器中に存在するアミンの重量百分率に従ってアミンを容器に添加して、表II及び表IIIに記載の配合物を形成した。容器を異なる方向に5分間振盪した(例えば、容器を同様の頻度で上下方向及び左右方向に振盪した)。容器を5分間振盪した後、容器を5分間静置した。容器を5分間静置した後、容器を取り上げ、容器を振盪して5分間静置する工程を繰り返した。容器の振盪及び静置の組み合わせの工程を6回繰り返した。6回繰り返した後、容器を室温で更に3時間保持した。
【0099】
ナイロン中に浸漬させたPOEの配合
多数のナイロン試料を最初に120℃で少なくとも4時間除湿器で乾燥させた。二軸スクリュー押出機(Coperion Companyから入手可能なZSK18二軸スクリュー押出機)を使用して、浸漬させたPOEを乾燥ナイロン試料中に配合した。以下の押出機パラメータを使用した:電力=19.2KW、D=18mm、L/D=48。アミン/POEペレット及びナイロン試料を配合するための押出機の条件/パラメータは、以下の通りであった:押出機のバレル温度は、RTから約350℃の範囲において、ゾーン1=150℃、ゾーン2=195℃、ゾーン3=260℃、ゾーン4=260℃、ゾーン5=260℃、ゾーン6=260℃、及びゾーン7=250℃として設定した。押出機のスクリュー速度は300rpmであり、押出機へのブレンド材料の供給速度は10kg/時間であった。配合工程の後、得られた配合物を直径0.5mm~1mm及び長さ2mm~5mmを有するペレットに切断した。
【0100】
試験方法
以下の試験方法及び測定手順を使用して、試験用の強化ナイロン組成物試料を調製するための上記の一般的手順に従って調製された試料を試験した。
【0101】
毛細管粘度試験
配合されたナイロン/POE試料を、最初に、120℃で少なくとも4時間、除湿器内で乾燥させ、配合された試料を乾燥させた後、配合された試料を真空下でアルミニウムバッグ内に密封した。874 Oven Sample Processor (Thermo-Fisher Co.Ltd.から入手可能)を使用して、いわゆるカール・フッシャー法によって、配合ナイロン/POE試料中の水分含有量を試験した。配合されたナイロン/POE試料の水分は、毛細管粘度試験を用いて試料を試験する前に1,000ppm未満であることが推奨される。毛細管粘度試験に使用した毛細管レオメーター機器は、Gottfert rheograph 26(Gottfert Inc.から入手可能)であった。毛細管粘度試験に用いた試験温度は260℃であった。使用した毛細管の長さは30mmであり、毛細管の直径は1mmであった。試験に用いた剪断速度は、90 1/s~7,000 1/sの範囲であった。粘度に関する表に記載されたデータは、770 1/sでの剪断速度で報告される。
【0102】
射出成形方法
配合されたナイロン/POEペレットを最初に、120℃で少なくとも4時間、除湿器で乾燥させた後、試料を射出成形に供した。射出成形機Fanuc Roboshot S-2000i100BH(Fanucから入手可能)を射出成形方法に使用した。配合された試料を射出成形に供して試験片を製造し、本明細書において以下に記載される衝撃強度試験を用いて試験片に対して衝撃試験を行った。射出成形機及び方法のパラメータは以下の通りであった:射出スクリューのバレル温度を250℃~260℃に設定し、冷却温度は190℃であり、冷却時間は15秒であり、射出速度は30mm/秒であり、射出圧力は200MPaであった。
【0103】
衝撃強度試験
実施例で調製した検体の衝撃性能を試験するために使用した衝撃強度試験方法は、CHARPY、ISO179(「ISO」は「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」を表す)に記載されている。CHARPY、ISO179は、定義された条件下でプラスチックのシャルピー衝撃強度を決定するための方法を特定している。この試験で使用する検体は、表II及び表IIIの配合物から作製され、以下の寸法:長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmを有する平坦な試験検体である。CHARPY、ISO179は、適切にサイズ決めされたハンマーアームを有する振り子システムを使用して、3点曲げ構成で衝撃を受けたときの破壊に対するプラスチックの耐性を決定するために使用される方法を定義している。試験は機器を用いず、検体を破壊するのに必要なエネルギーを決定するために使用される。異なる試験パラメータを、検体が作製されている材料の種類、並びに検体におけるノッチカットの種類に従って特定する。
【0104】
本明細書に記載の実施例では、以下の一般的な手順に従った:すべての検体に半径2mmのノッチを入れた。検体を試験する前に、すべての検体を最初に除湿器中で120℃で4時間乾燥させた。その後、検体を湿器内で室温で2日間平衡化した。
【0105】
試験すべき各検体を振り子衝撃試験機に水平に取り付け、両端を固定せずに支持した。試験機のハンマーを解放し、検体を貫通させた。使用した第1のハンマーアームで破損が生じなかった場合、破損が生じるまで、より重いハンマーを順次使用した。次いで破壊時に、得られたエネルギー及び破壊の種類を記録する。
【0106】
使用された衝撃試験条件は以下の通りであった:4ジュールの振り子容量及び室温で≧6時間又は冷凍庫内-40℃で≧6時間の検体コンディショニング。冷凍庫内の試料を冷凍庫から取り出し、5秒以内に衝撃を与えた。試験条件は、室温(すなわち、23℃±2℃の温度)及び50%RH±10%RHであった。
【0107】
試験結果
表II及び表IIIに記載された強化ナイロン配合物の粘度結果は、上記の毛細管粘度試験を行うことによって得られ;シリーズ1実験についての表IIの配合物についての粘度結果は、表IVに記載され;シリーズ2実験についての表IIの配合物についての粘度結果は、表Vに記載されている。
【表4】

【表5】
【0108】
表II及び表IIIに記載された強化ナイロン配合物から射出成形試験片を製造し、表II及び表IIIに記載された強化ナイロン配合物のいくつかから作製された射出成形試験片のいくつかの衝撃強度を、上記の射出成形方法に従って調製された射出成形試験片に対して上記の衝撃強度試験を行うことによって得た。シリーズ1の実験について表IIの配合物から製造された試験片についての衝撃強さの結果を表VIに記載し;シリーズ2の実験について表IIIの配合物から製造された試験片についての衝撃強さの結果を表VIIに記載する。
【表6】

表VIについての注記:(1)NTは、試料を試験しなかったことを意味する。
【表7】

表VIIについての注記:(1)NTは、試料を試験しなかったことを意味する。
【0109】
結果の考察
シリーズ1の試験結果
表IVに記載されるシリーズ1では、異なるタイプ及び装填量の有機アミンを、シリーズ1のMAHグラフト化POE(POE-g-MAH1)に浸漬した。次に、浸漬したPOEをB3s(BASFから入手可能な中粘度ナイロン6)と配合した。毛細管粘度及び衝撃強度を、それぞれ表IV及び表VIに記載する。毛細管粘度を、低剪断速度から高剪断速度までの異なる剪断速度で試験した。しかしながら、表IVは、770s-1の剪断速度で試験した試料の毛細管粘度を示す。異なる剪断速度での毛細管粘度の結果は同様の傾向を示したので、この剪断速度は、試験から得られたデータを単純化するために選択された。表VIに記載されているように、POE-g-MAH1を有する強化ナイロン試料(実施例J)は、強化されていないナイロン試料(比較例A、アミンは比較例Aでは使用されない)と比較してより高い衝撃強度を示すが、比較例Bについての粘度は、組成物の一部としてのPOE-g-MAH1で著しく増加した。グラフト化MAHとナイロン鎖末端のアミン基との間の架橋に起因する粘度増加が観察されることが一般的である。有機アミンをPOE-g-MAH1に浸漬することによって、アミンで浸漬されたPOE-g-MAH1を含有する試料(例えば、本発明の実施例1~本発明の実施例7、比較例C及び比較例D)は、比較試料(比較例B)よりも低い粘度を示した。同じ有機アミンを使用すると、実施例の粘度は、有機アミン添加量が増加すると減少した。例えば、本発明の実施例2は、本発明の実施例1よりも低い粘度を有し、並びに本発明の実施例5は、本発明の実施例3及び本発明の実施例4よりも低い粘度を有する。この驚くべき現象は、有機アミンが強化ナイロンの粘度を低下させ、その結果、強化ナイロン組成物の流動性を改善するのに役立つことを明らかに示している。
【0110】
更に、本発明の実施例12~本発明の実施例18の強化ナイロン組成物試料から作製された試験片の室温での衝撃強度は、比較例Jのナイロン組成物試料と比較して、特に、実施例で使用される有機アミンの官能価が3未満である場合、大幅に改善されている。テトラアミンであるトリエチレンテトラミン(TETA)など、実施例で使用されるアミンの官能価が3を超える場合、POEの過架橋が起こり、そのような過架橋は、強化ナイロンの衝撃強度を著しく低下させる。例えば、比較例Lは、比較例Jよりも大幅に低いRT衝撃強度を示した。したがって、アミンの官能価を3以下に制御することが有益である。比較例Mでは、アミノシランを試験したが、望ましくない低い衝撃強度を有するナイロンをもたらした。比較例Mの試料の不良な衝撃強度は、アミンのZ-6020が高い架橋密度を提供するトリメトキシルシランであるので、POEの過剰架橋に起因し得る。
【0111】
シリーズ2の試験結果
表V及び表VIIに記載のシリーズ2では、MAHの異なるグラフトレベルを有する様々なPOE試料を耐衝撃性改良剤として使用した(例えば、POE-g-MAH1は0.50%のグラフトレベルを有し、POE-g-MAH2は0.90%のグラフトレベルを有し、POE-g-MAH3は0.35%のグラフトレベルを有した)。耐衝撃性改良剤をナイロン6マトリックス(BASF B3s)に添加し、試験した。表Vに示すように、ナイロン6にアミンを含浸させた強化ナイロン6の粘度は、アミンを含まない比較ナイロン組成物の粘度よりも大幅に低い。例えば、本発明の実施例8のナイロン試料を比較例Bのナイロン試料と比較し;本発明の実施例9及び本発明の実施例10のナイロン試料を比較例Fのナイロン試料と比較し;本発明の実施例11のナイロン試料を比較例Gのナイロン試料と比較した。上記の結果は、本発明の有機アミンが、異なるタイプのPOEにおける毛細管粘度に対して驚くほど有利に作用することを示す。
【0112】
表VIIからの上記の結果はまた、:(1)アミン浸漬ポリアミド試料の室温での衝撃強度値は、例えば、本発明の実施例19~本発明の実施例22を比較例Nと比較することによって明らかなように、非浸漬ポリアミド試料よりも非常に良好であり;(2)アミン浸漬ポリアミド試料の曲げ弾性率性能は、例えば、本発明の実施例13、14、15、16、21及び22によって明らかなように、非アミン浸漬ポリアミド試料と同等のレベルで本質的に維持されることを示す。
【0113】
上記の結果に基づいて、有機アミン浸漬POEは、強化ナイロン(又はポリアミド)の流動性及び室温衝撃強度を著しく改善することができると結論付けることができる。
【0114】
他の実施形態
実施形態1:少なくとも1つのポリアミドである成分(A)である、(ai)ナイロン-4,6;(Aii)ナイロン-6,6;(Aiii)ナイロン-6,10;(Aiv)ナイロン-6,9;(Av)ナイロン-6,12(Avi)ナイロン-11;(Avii)ナイロン-12;(Aviii)6T~12T;(Aix)6I~12I;(Ax)2-メチルペンタメチレンジアミンから及び/又はヘキサメチレンジアミンと1つ以上の酸から形成される少なくとも1つのポリアミド;並びに(Axi)当該ナイロンとそのポリアミドとのブレンド又はコポリマーから本質的になる群から選択される、本発明の強化ポリアミド組成物。
【0115】
実施形態2:少なくとも1つのポリアミドである成分(Ax)が、(Axa)アジピン酸、(Axb)イソフタル酸、(Axc)テレフタル酸、及び(Axd)それらの混合物から本質的になる群から選択される、本発明の組成物。
【0116】
実施形態3:少なくとも1つの耐衝撃性改良剤である成分(B)が、(Bi)本質的に以下からなる群から選択される少なくとも1つのポリマー:(Bia)少なくとも1つの重合エチレン;(Bib)3個の炭素原子~12個の炭素原子を有する少なくとも1つの重合α-オレフィン;(Bic)4個の炭素原子~14個の炭素原子を有する少なくとも1つの重合不飽和モノマー;及び(Bid)それらの混合物;と、(Bii)本質的に以下からなる群から選択される少なくとも1つの不飽和モノマー:(Biia)3個の炭素原子~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸;及び(Biib)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体;と、(Biii)成分(Bi)と(Bii)の混合物と、から本質的になる群から選択される、本発明の組成物。
【0117】
実施形態4:4個の炭素原子~14個の炭素原子を有する少なくとも1つの重合不飽和モノマーである成分(Bic)が、(Bic1)分岐化合物;(Bic2)直鎖化合物;(Bic3)環状化合物;及び(Bic4)それらの混合物から本質的になる群から選択される、本発明の組成物。
【0118】
実施形態5:少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体である成分(Biib)が、(Biib1)1個の炭素原子~29個の炭素原子を有するアルコールの少なくとも1つのモノエステル;(Biib2)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の少なくとも1つの無水物;(Biib3)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の少なくとも1つの金属塩;(Biib4)少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の少なくとも1つのモノエステル;(少なくとも1つのα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸の少なくとも1つの誘導体の0パーセント~100パーセントが、金属イオンによる中和によってイオン化されたカルボン酸基の0パーセント~100パーセントを有する);及び(Biib5)これらの混合物から本質的になる群から選択される、本発明の組成物。
【0119】
実施形態6:少なくとも1つの有機アミンである成分(C)が、(ci)少なくとも1つの第一級アミン基;(Cii)少なくとも1つの第二級アミン基;及び(Ciii)分子の官能価が4未満であることを条件として、1つの分子中の成分(Ci)である少なくとも1つの第一級アミン基と、成分(Cii)である少なくとも1つの第二級アミン基との混合物から本質的になる群から選択されるアミン基を含む、本発明の強化ポリアミド組成物。
【0120】
実施形態7:少なくとも1つの有機アミンを含有する強化ポリアミド組成物が、少なくとも1つの有機アミンを含有しない従来のポリアミド組成物と比較して、室温衝撃強度の少なくとも10パーセントの増加、又は毛細管粘度の10%の減少、又は室温衝撃の10%の増加及び毛細管粘度の10%の減少の両方を示す、本発明の強化ポリアミド組成物。
【国際調査報告】