(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】バッテリー管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527685
(86)(22)【出願日】2023-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2023007636
(87)【国際公開番号】W WO2023249285
(87)【国際公開日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0075815
(32)【優先日】2022-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ-イェオン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、キュン-ファ
(72)【発明者】
【氏名】バエ、ユン-ジュン
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA23
2G036AA24
2G036BB08
(57)【要約】
本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置は、バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するように構成されたプロファイル取得部と、前記バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部と、前記プロファイル生成部から受信したプロファイルからターゲットピークの変化量を決定し、決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定するように構成された制御部と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するように構成されたプロファイル取得部と、
前記バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部と、
前記プロファイル生成部から受信した微分プロファイルからターゲットピークの変化量を決定し、決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定するように構成された制御部と、
を含む、バッテリー管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記微分プロファイルからターゲットピークを決定し、予め設定された基準ピークの容量値と前記ターゲットピークの容量値とを比較した結果に基づいて、前記ターゲットピークの変化量を決定するように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理装置。
【請求項3】
前記制御基準は、
前記ターゲットピークの変化量が前記ガス量プロファイルから予め設定されたガス発生量の基準値に対応する第1の変化量以下に相当するか否かを判断する第1の制御基準と、
前記ターゲットピークの変化量が負極反応面積の損失量の基準値に対応する第2の変化量以下に相当するか否かを判断する第2の制御基準と、
を含むように構成されている、請求項1に記載のバッテリー管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記ターゲットピークの変化量が前記第1の制御基準を満たす場合、前記バッテリーの温度及び充電状態(SOC)を調整し、Cレートを減少させるように構成されている、請求項3に記載のバッテリー管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ターゲットピークの変化量が前記第2の制御基準を満たす場合、Cレートを減少させるように構成されている、請求項3に記載のバッテリー管理装置。
【請求項6】
前記第1の変化量は、前記第2の変化量以下である、請求項3に記載のバッテリー管理装置。
【請求項7】
前記ガス量プロファイルは、
特定の充電状態(SOC)で互いに異なる温度をもった複数のバッテリーについての微分プロファイルと前記複数のバッテリーのガス発生量に基づいて生成されている、請求項1に記載のバッテリー管理装置。
【請求項8】
前記ガス量プロファイルは、
前記複数のバッテリーについての微分プロファイルから決定されたピークの変化量と対応するガス発生量との相関を示すように構成されている、請求項7に記載のバッテリー管理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置を含む、バッテリーパック。
【請求項10】
バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するガス量プロファイル取得ステップと、
前記バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成する微分プロファイル生成ステップと、
前記微分プロファイル生成ステップにおいて生成された微分プロファイルからターゲットピークの変化量を決定するターゲットピークの変化量決定ステップと、
決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定する使用条件設定ステップと、
を含む、バッテリー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年06月21日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0075815号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されている内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリー管理装置及び方法に関し、より詳細には、非破壊な方式によりバッテリーの状態を診断することのできるバッテリー管理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯型電子製品の需要が急激に伸び、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能二次電池に対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、商用化されている二次電池としてはニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウム二次電池などが挙げられる。中でも、リチウム二次電池は、ニッケル系の二次電池に比べてメモリ効果が殆ど起きないため充放電が自在であり、自己放電率が非常に低くエネルギー密度が高いという長所で脚光を浴びている。
【0005】
このようなバッテリーは、充電及び放電が行われ続くことにつれて、劣化する恐れがある。例えば、ガスの発生に起因して電極内の電子の伝達力が低下して負極の劣化のバラツキが生じる恐れがある。また、バッテリーのガスの発生量は発火につながる可能性があるため、バッテリーの状態の診断が速やかに行われていない場合には、予期しない事故が起こることが懸念されるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するために案出されたものであって、ガス量プロファイルを解析することで、非破壊的な方式によりバッテリーの状態を診断することのできるバッテリー管理装置及び方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するように構成されたプロファイル取得部と、前記バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部と、前記プロファイル生成部から受信した微分プロファイルからターゲットピークの変化量を決定し、決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定するように構成された制御部と、を含むことを特徴とし得る。
【0009】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記制御部が、前記微分プロファイルからターゲットピークを決定し、予め設定された基準ピークの容量値と前記ターゲットピークの容量値とを比較した結果に基づいて、前記ターゲットピークの変化量を決定するように構成されたことを特徴とし得る。
【0010】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記制御基準が、前記ターゲットピークの変化量が前記ガス量プロファイルから予め設定されたガス発生量の基準値に対応する第1の変化量以下に相当するか否かを判断する第1の制御基準と、前記ターゲットピークの変化量が負極反応面積の損失量の基準値に対応する第2の変化量以下に相当するか否かを判断する第2の制御基準と、を含むように構成されたことを特徴とし得る。
【0011】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記制御部が、前記ターゲットピークの変化量が前記第1の制御基準を満たす場合、前記バッテリーの温度及び充電状態(SOC)を調整し、Cレートを減少させるように構成されたことを特徴とし得る。
【0012】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記制御部が、前記ターゲットピークの変化量が前記第2の制御基準を満たす場合、Cレートを減少させるように構成されたことを特徴とし得る。
【0013】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記第1の変化量は、前記第2の変化量以下であることを特徴とし得る。
【0014】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記ガス量プロファイルが、特定の充電状態(SOC)で互いに異なる温度をもった複数のバッテリーについての微分プロファイルと前記複数のバッテリーのガス発生量に基づいて生成されたことを特徴とし得る。
【0015】
本発明の一態様によるバッテリー管理装置は、前記ガス量プロファイルは、前記複数のバッテリーについての微分プロファイルから決定されたピークの変化量と対応するガス発生量との相関を示すように構成されたことを特徴とし得る。
【0016】
本発明の他の態様によるバッテリーパックは、本発明の一態様によるバッテリー管理装置を含み得る。
【0017】
本発明のさらに他の態様によるバッテリー管理方法は、バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するガス量プロファイル取得ステップと、前記バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成する微分プロファイル生成ステップと、前記微分プロファイル生成ステップにおいて生成された微分プロファイルからターゲットピークの変化量を決定するターゲットピークの変化量決定ステップと、決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定する使用条件設定ステップと、を含むことを特徴とし得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、ガス量プロファイルを解析することで、非破壊的な方式によりバッテリーの状態が診断されることが可能になる。
【0019】
本発明の効果は上述した効果に何ら制限されるものではなく、言及されていない他の効果は、特許請求の範囲の記載から当業者にとって明確に理解できるものであろう。
【0020】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるガス量プロファイルを概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による複数の微分プロファイルを概略的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による微分プロファイルを概略的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるガス量プロファイルを概略的に示す図である。
【
図6】本発明の他の実施形態によるバッテリーパックの例示的な構成を概略的に示す図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー管理方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。
【0023】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示されている構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを表すものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解されたい。
【0024】
また、本発明を説明するに当たって、本発明と関連する公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨をかえって曖昧にする恐れがあると認められる場合にはその詳細な説明を省略する。
【0025】
第1、第2などの序数を含む言い回しは、様々な構成要素のうちのいずれか一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これらの言い回しによって構成要素を限定するために使われたものではない。
【0026】
明細書の全般において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0027】
なお、明細書の全般において、ある部分が他の部分と「接続(連結)」されているというとき、これは「直接的に接続(連結)」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「間接的に接続(連結)」されている場合も含む。
【0028】
以下では、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100を概略的に示す図である。
【0030】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100は、プロファイル取得部110、プロファイル生成部120及び制御部130を含み得る。
【0031】
プロファイル取得部110は、バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するように構成され得る。
【0032】
ここで、バッテリーは、負極端子と正極端子を備え、物理的に分離可能な1つの独立したセルを意味することがある。一例を挙げると、リチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池がバッテリーとしてみなされ得る。また、バッテリーは、複数のセルが直列に及び/又は並列に接続されたバッテリーモジュールを意味することもある。以下では、説明のしやすさのために、バッテリーが1つの独立したセルを意味するものであると説明する。
【0033】
例えば、プロファイル取得部110は、外部からガス量プロファイルを直接的に受信し得る。
【0034】
ガス量プロファイルは、特定のSOCで互いに異なる温度をもった複数のバッテリーについての微分プロファイルと前記複数のバッテリーのガス発生量に基づいて生成されたものを意味することがある。
【0035】
例えば、ガス量プロファイルは、バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示し得る。ここで、ガス発生量及びピークの変化量は、相対的な値であり得る。例えば、ガス発生量及びピークの変化量は、正規化した値であり得る。
【0036】
また、ガス量プロファイルは、Xをピークの変化量に設定し、Yを総ガス量に設定した場合、X-Yの2次元グラフで表され得る。
図2に基づいて詳しく説明する。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態によるガス量プロファイルを概略的に示す図である。
図2には、Xをピークの変化量に設定し、Yを総ガス量に設定した、X-Yの2次元グラフで表されたガス量プロファイルが示されている。例えば、
図2の実施形態において、◆にて示されたポイントは、SOC 100%であるバッテリーの温度が70℃に保たれるときのガス量を示す。■にて示されたポイントは、SOC 100%であるバッテリーの温度が65℃に保たれるときのガス量を示す。▲にて示されたポイントは、SOC 100%であるバッテリーの温度が60℃に保たれるときのガス量を示す。
【0038】
実施形態に応じて、ガス量プロファイルは、複数のバッテリーについての微分プロファイルから決定されたピークの変化量と対応するガス発生量との相関を示すように構成され得る。
【0039】
具体的には、ガス量プロファイルは、互いに異なる温度において測定された複数のバッテリーについての微分プロファイルから決定されたピークの変化量に対応するガス発生量の間の相関を示すように構成され得る。ここで、微分プロファイルは、バッテリーの容量(Q)と微分電圧(dV/dQ)との対応関係を示す微分電圧プロファイルを意味することがある。ここで、バッテリーの容量(Q)及び微分電圧(dV/dQ)は、相対的な値であり得る。例えば、バッテリーの容量(Q)及び微分電圧(dV/dQ)は、正規化した値であり得る。
図3を用いて詳しく説明する。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態による複数の微分プロファイルを概略的に示す図である。
図3には、Xを正規化した容量に設定し、Yを微分電圧(dV/dQ)に設定した、X-Yの2次元グラフで表された複数の微分プロファイルが示されている。
【0041】
ガス量プロファイルは、複数の微分プロファイルのそれぞれのピークの変化量に基づいて生成され得る。例えば、ピークの変化量は、微分プロファイルのピークと基準微分プロファイルのピークとを比較した結果値により決定され得る。基準微分プロファイルは、寿命初期(BOL:Beginning of life)のプロファイルを意味することがある。
【0042】
図3を参照すると、第1の微分プロファイルのピークTP1は、基準プロファイルのピークTP8よりも左側に約17容量だけ離れているため、第1の微分プロファイルのピークの変化量は-17として計算され得る。例えば、制御部130は、基準プロファイルのピークTP8の容量値から第1の微分プロファイルのピークTP1の容量値を差し引いて、第1の微分プロファイルのピークの変化量を-17として計算し得る。
【0043】
逆に、第2の微分プロファイルのピークTP5は、基準プロファイルのピークTP8よりも左側に5容量だけ離れているため、第2の微分プロファイルのピークの変化量は、-5として計算され得る。
【0044】
ガス量プロファイルは、複数の微分プロファイルのそれぞれから計算されたピークの変化量及びそれぞれの微分プロファイルに対応するガス発生量に基づいて生成され得る。
【0045】
図2に戻ると、ピークの変化量と総ガス量との相関が示されていることが分かる。したがって、本発明の一実施形態によれば、ガス量プロファイルを用いると、ピークの変化量に基づいて総ガス量を正確に推定することができる。
【0046】
プロファイル生成部120は、バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成し得る。
【0047】
ここで、微分プロファイルは、バッテリーの容量(Q)と微分電圧(dV/dQ)との対応関係を示す微分電圧プロファイルを意味することがある。ここで、バッテリーの容量(Q)及び微分電圧(dV/dQ)は、相対的な値であり得る。例えば、バッテリーの容量(Q)及び微分電圧(dV/dQ)は、正規化した値であり得る。
【0048】
プロファイル生成部120は、外部から微分プロファイルを直接的に受信したり、外部からバッテリーの電圧と容量を周期的に受信して微分プロファイルを直接的に生成したりし得る。
【0049】
例えば、バッテリープロファイルは、バッテリーの容量(Q)と電圧(V)との対応関係を示し得る。ここで、容量の単位は[mAh]であり、電圧の単位は[V]であり得る。また、バッテリープロファイルは、Xを容量に設定し、Yを電圧に設定した場合、X-Yの2次元グラフで表され得る。
【0050】
そして、プロファイル生成部120は、バッテリープロファイルの1次導関数に相当する微分プロファイルを生成し得る。例えば、プロファイル生成部120は、容量(Q)と微分電圧(dV/dQ)との対応関係を示す微分電圧プロファイルを生成し得る。
【0051】
図4は、本発明の一実施形態による微分プロファイルを概略的に示す図である。
【0052】
制御部130は、プロファイル生成部120から受信した微分プロファイルから前記ターゲットピークを決定し得る。具体的には、制御部130は、微分プロファイルの複数のピークのうちの1つをターゲットピークとして決定し得る。
【0053】
一般に、バッテリーが充電される過程において負極の相転移が起こり得る。そして、負極の相転移が起こるとき、バッテリーの微分プロファイルのピークが現れ得る。例えば、6回の負極の相転移が起こった場合、順次にTa(1)、Ta(2)、Ta(3)、Ta(4)、Ta(5)及びTa(6)ピークが微分プロファイルに含まれ得る。
【0054】
例えば、制御部130は、微分プロファイルに含まれているTa(6)をターゲットピークとして決定し得る。
【0055】
制御部130は、予め決定された基準ピークの容量値とターゲットピークTP10の容量値とを比較した結果に基づいて、ターゲットピークの変化量を決定し得る。
【0056】
図4を参照すると、ターゲットピークTP10の容量値が予め決定された基準ピークTP11の容量値よりも左側に約1だけ離れているため、ターゲットピークの変化量を-1として決定し得る。
【0057】
制御部130は、決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定し得る。例えば、制御部130は、ターゲットピークの変化量と予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、バッテリーについてのCレート(C-rate)を調整し得る。これについては、
図5を参照して後述する。
【0058】
本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100は、バッテリーをリアルタイムにて測定して生成された微分プロファイルを用いてターゲットピークを決定することにより、正確にバッテリーの状態を診断することができる。
【0059】
本発明の一実施形態によるバッテリー管理装置100は、バッテリーの状態を正確に診断し、診断結果に基づいて、バッテリーの使用条件を設定することにより、バッテリーのガスの発生に伴う劣化を防ぐことができる。
【0060】
一方、バッテリー管理装置100に配備されたプロファイル取得部110、プロファイル生成部120及び制御部130は、本発明において行われる多種多様な制御ロジックを起動するために当業界において知られているプロセッサー、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuits)、他のチップセット、論理回路、レジスター、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含み得る。また、前記制御ロジックがソフトウェアにより実現されるとき、プロファイル取得部110、プロファイル生成部120及び制御部130は、プログラムモジュールの集合により実現され得る。このとき、プログラムモジュールはメモリに記憶され、プロファイル取得部110、プロファイル生成部120及び制御部130により起動され得る。メモリは、プロファイル取得部110、プロファイル生成部120及び制御部130のそれぞれの内部または外部に存在し得、よく知られている様々な手段によりプロファイル取得部110、プロファイル生成部120及び制御部130と接続され得る。
【0061】
また、バッテリー管理装置100は、記憶部140をさらに含み得る。記憶部140は、バッテリー管理装置100の各構成要素が動作及び機能を行うのに必要なデータやプログラム又は動作及び機能が行われる過程において生成されるデータなどを記憶し得る。記憶部140は、データの記録、消去、更新及び読出を行い得ると知られている公知の情報記憶手段であれば、その種類に特に制限がない。一例示として、情報記憶手段には、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、フラッシュメモリ、読み出し専用メモリ(ROM:read-only memory)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリー(EEPROM:electrically erasable programmable read-only memory)、レジスターなどが含まれ得る。また、記憶部140は、制御部130により起動可能なプロセスが定義されたプログラムコードを記憶し得る。
【0062】
以下では、制御基準について具体的に説明する。制御部130は、決定されたターゲットピークの変化量と前記ガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較し得る。制御基準は、バッテリーの生成に際して予め設定された値であるか、あるいは、使用者が予め設定した値であり得る。
【0063】
実施形態に応じて、制御基準は、第1の制御基準及び第2の制御基準を含み得る。
図5に基づいて詳しく説明する。
【0064】
図5は、本発明の一実施形態によるガス量プロファイルを概略的に示す図である。
図5には、第1の変化量及び第2の変化量が示されており、第1の制御基準が第2の制御基準よりも左側にあることを確認することができる。
【0065】
制御部130は、ターゲットピークの変化量が第1の制御基準を満たすか否かを判断し得る。第1の制御基準は、ターゲットピークの変化量がガス量プロファイルから予め設定されたガス発生量の基準値に対応する第1の変化量以下に相当するか否かを判断する基準を意味することがある。例えば、
図5の実施形態において、予め設定されたガス発生量の基準値に対応する第1の変化量は、-2であり得る。
【0066】
ガス量プロファイルから予め設定されたガス発生量の基準値とは、バッテリーのガス発生量に対する制御が必要となるしきい値を意味することがある。一般に、バッテリーのターゲットピークの変化量が第1の変化量以下である場合(換言すれば、バッテリーのガス発生量が基準値以上である場合)、バッテリーが高温に曝露された時間が相対的に長い場合であり得る。
【0067】
したがって、制御部130は、ターゲットピークの変化量が第1の制御基準を満たす場合、バッテリーの温度及びSOCを調整し、Cレートを減少させ得る。具体的には、制御部130は、バッテリーの温度及び充電状態(SOC)の上限を低め得る。そして、制御部130は、バッテリーの充電Cレートを減少させ得る。例えば、
図5の実施形態において、制御部130は、バッテリーのターゲットピークの変化量が-2以下である場合、バッテリーの温度及び充電状態(SOC)の上限を低め、充電Cレートを減少させ得る。
【0068】
他の例を挙げると、制御部130は、ターゲットピークの変化量が第2の制御基準を満たすか否かを判断し得る。第2の制御基準は、ターゲットピークの変化量が負極反応面積の損失量の基準値に対応する第2の変化量以下に相当するか否かを判断する基準を意味することがある。例えば、
図5の実施形態において、第2の変化量は、-1であり得る。
【0069】
負極反応面積の損失量の基準値とは、負極が劣化して負極反応面積が損失することに伴い、制御が必要となるしきい値を意味することがある。一般に、負極反応面積の損失は、バッテリーの寿命を短縮させ、これにより、ガスの発生を促すリスクがある。
【0070】
したがって、制御部130は、ターゲットピークの変化量が第2の制御基準を満たす場合、Cレートを減少させ得る。具体的には、制御部130は、バッテリーの充電Cレートを減少させ得る。例えば、
図5の実施形態において、制御部130は、バッテリーのターゲットピークの変化量が-1以下、かつ、-2超えである場合、バッテリーの充電Cレートを減少させ得る。
【0071】
一方、一実施形態において、第1の変化量は、第2の変化量以下であり得る。前述したように、負極反応面積の損失は、バッテリーの寿命を短縮させ、これにより、ガスの発生を促すため、負極反応面積の損失についての第2の変化量は、ガス発生量についての第1の変化量よりもさらに大きな可能性がある。すなわち、負極反応面積の損失によりガスが生じ得るため、第2の変化量は、第1の変化量よりもさらに大きな可能性がある。
【0072】
この場合、制御部130は、負極反応面積の損失とガス発生量についてのバッテリー異常を段階的に診断できるようにバッテリーの運用条件を設定し得る。バッテリーの運用条件が段階的に設定されるので、バッテリーの深刻な劣化が防がれ、予期しない火災や爆発などの事故が未然に防がれることが可能になる。
【0073】
本発明によるバッテリー管理装置100は、バッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)に適用可能である。すなわち、本発明によるBMSは、上述したバッテリー管理装置100を含み得る。このような構成において、バッテリー管理装置100の各構成要素のうちの少なくとも一部は、従来BMSに含まれている構成要素の機能を補完したり追加したりすることにより実現され得る。例えば、バッテリー管理装置100のプロファイル取得部110、プロファイル生成部120、制御部130及び記憶部140は、BMSの構成要素として実現され得る。
【0074】
また、本発明によるバッテリー管理装置100は、バッテリーパック1に配備され得る。すなわち、本発明によるバッテリーパック1は、上述したバッテリー管理装置100及び1つ以上のバッテリーを含み得る。また、バッテリーパック1は、電装品(リレー、ヒューズなど)及びケースなどをさらに含み得る。
【0075】
図6は、本発明の他の実施形態によるバッテリーパック1の例示的な構成を概略的に示す図である。
【0076】
バッテリーBの正極端子は、バッテリーパック1の正極端子P+と接続され、バッテリーBの負極端子は、バッテリーパック1の負極端子P-と接続され得る。
【0077】
測定部200は、第1のセンシングラインSL1、第2のセンシングラインSL2及び第3のセンシングラインSL3と接続され得る。具体的には、測定部200は、第1のセンシングラインSL1を介してバッテリーBの正極端子に接続され、第2のセンシングラインSL2を介してバッテリーBの負極端子に接続され得る。測定部200は、第1のセンシングラインSL1と第2のセンシングラインSL2のそれぞれにおいて測定された電圧に基づいて、バッテリーBの電圧を測定し得る。
【0078】
そして、測定部200は、第3のセンシングラインSL3を介して電流測定ユニットAと接続され得る。例えば、電流測定ユニットAは、バッテリーBの充電電流及び放電電流を測定可能な電流計又はシャント抵抗であり得る。測定部200は、第3のセンシングラインSL3を介してバッテリーBの充電電流を測定して充電量を算出し得る。また、測定部200は、第3のセンシングラインSL3を介してバッテリーBの放電電流を測定して放電量を算出し得る。
【0079】
充放電装置は、一方の端がバッテリーパック1の正極端子P+と接続され、他方の端がバッテリーパック1の負極端子P-と接続され得る。したがって、バッテリーBの正極端子、バッテリーパック1の正極端子P+、充放電部300、バッテリーパック1の負極端子P-及びバッテリーBの負極端子は、電気的に接続されることが可能になる。
【0080】
図7は、本発明のさらに他の実施形態によるバッテリー管理方法を概略的に示す図である。
【0081】
好ましくは、バッテリー管理方法の各ステップは、バッテリー管理装置100により行われ得る。以下では、先に説明した内容と重複する内容は省略したり簡略に説明したりする。
ガス量プロファイル取得ステップ(S110)は、バッテリーのガス発生量とピークの変化量との対応関係を示すガス量プロファイルを取得するステップであって、プロファイル取得部110により行われ得る。
【0082】
例えば、プロファイル取得部110は、外部からガス量プロファイルを直接的に受信し得る。ガス量プロファイルは、特定のSOCで互いに異なる温度をもった複数のバッテリーについての微分プロファイルと前記複数のバッテリーのガス発生量に基づいて生成されたものを意味することがある。
【0083】
実施形態に応じて、ガス量プロファイルは、複数のバッテリーについての微分プロファイルから決定されたピークの変化量と対応するガス発生量との相関を示すように構成され得る。
【0084】
具体的には、ガス量プロファイルは、互いに異なる温度において測定された複数のバッテリーについての微分プロファイルから決定されたピークの変化量に対応するガス発生量の間の相関を示すように構成され得る。
【0085】
微分プロファイル生成ステップ(S120)は、バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成するステップであって、プロファイル生成部120により行われ得る。
【0086】
例えば、プロファイル生成部120は、バッテリーの容量と微分電圧との対応関係を示すバッテリープロファイルについての微分プロファイルを生成し得る。
【0087】
ここで、微分プロファイルは、バッテリーの容量(Q)と微分電圧(dV/dQ)との対応関係を示す微分電圧プロファイルを意味することがある。ここで、バッテリーの容量(Q)及び微分電圧(dV/dQ)は、相対的な値であり得る。例えば、バッテリーの容量(Q)及び微分電圧(dV/dQ)は、正規化した値であり得る。
【0088】
ターゲットピークの変化量決定ステップ(S130)は、プロファイル生成ステップ(S120)において生成された微分プロファイルからターゲットピークの変化量を決定するステップであって、制御部130により行われ得る。
【0089】
例えば、制御部130は、プロファイル生成部120から受信した微分プロファイルから前記ターゲットピークを決定し得る。具体的には、制御部130は、微分プロファイルのピークのうちのいずれか1つをターゲットピークとして決定し得る。例えば、制御部130は、微分プロファイルに含まれているTa(6)をターゲットピークとして決定し得る。
【0090】
制御部130は、予め決定された基準ピークの容量値とターゲットピークの容量値とを比較した結果に基づいて、ターゲットピークの変化量を決定し得る。
【0091】
使用条件設定ステップ(S140)は、決定されたターゲットピークの変化量とガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準とを比較した結果に基づいて、前記バッテリーの使用条件を設定するステップであって、制御部130により行われ得る。
【0092】
例えば、ターゲットピークの変化量とガス量プロファイルに対して予め設定された制御基準との比較結果に基づいて、バッテリーのCレートが調整され得る。
【0093】
制御基準は、バッテリーの生成の際に予め設定された値であり得るか、あるいは、使用者が予め設定した値であり得る。実施形態に応じて、制御基準は、第1の制御基準及び第2の制御基準を含み得る。
【0094】
例えば、制御部130は、ターゲットピークの変化量が第1の制御基準を満たすか否かを判断し得る。第1の制御基準は、ターゲットピークの変化量がガス量プロファイルから予め設定されたガス発生量の基準値に対応する第1の変化量以下に相当するか否かを判断する基準を意味することがある。制御部130は、ターゲットピークの変化量が第1の制御基準を満たす場合、バッテリーの温度及びSOCを調整し、Cレートを減少させ得る。
【0095】
他の例を挙げると、制御部130は、ターゲットピークの変化量が第2の制御基準を満たすか否かを判断し得る。第2の制御基準は、ターゲットピークの変化量が負極反応面積の損失量の基準値に対応する第2の変化量以下に相当するか否かを判断する基準を意味することがある。制御部130は、ターゲットピークの変化量が第2の制御基準を満たす場合、Cレートを減少させ得る。
【0096】
制御部130は、負極反応面積の損失とガス発生量についてのバッテリー異常を段階的に診断できるようにバッテリーの運用条件を設定し得る。バッテリーの運用条件が段階的に設定されるので、バッテリーの深刻な劣化が防がれ、予期しない火災や爆発などの事故が未然に防がれることが可能になる。
【0097】
以上説明した本発明の実施形態は、装置および方法によってのみ実現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を介して実現されてもよい。このような実現は、上述した実施形態の記載から本発明が属する技術分野の専門家であれば容易に実現できるものである。
【0098】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0099】
また、以上で説明した本発明は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能であるため、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるのではなく、様々な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0100】
1:バッテリーパック
100:バッテリー管理装置
110:プロファイル取得部
120:プロファイル生成部
130:制御部
140:記憶部
200:測定部
300:充放電部
【国際調査報告】