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特表2024-544961抗CLDN18.2モノクローナル抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】抗CLDN18.2モノクローナル抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20241128BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241128BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20241128BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20241128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241128BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241128BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K19/00
C07K14/725
C07K14/705
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
C12N5/078
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K35/17
A61K47/04
A61K47/68
G01N33/53 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527759
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2022131502
(87)【国際公開番号】W WO2023083327
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111333547.X
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522127715
【氏名又は名称】シャンハイ インスティテュート オブ バイオロジカル プロダクツ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF BIOLOGICAL PRODUCTS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1262 West Yan’an Road, Changning District, Shanghai 200052, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー,アイドン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホンユェン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,クンミン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,リナ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,ジンイェ
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ジァンファ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA12
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC41
4C076DD21
4C076EE59
4C076FF61
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA71
4H045BA72
4H045CA42
4H045DA01
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は抗CLDN18.2モノクローナル抗体及びその製剤を提供する。具体的に、本発明は、新規な抗CLDN18.2ヒト化抗体を提供する。本発明の抗体は高特異性で抗原に結合し、高親和力および高生物活性を有し、特異的にヒトCLDN18.2抗原分子に結合し、体外と体内のいずれにおいても効率的に腫瘍を抑制することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトCLDN18.2抗体の重鎖可変領域であって、以下の3つの相補性決定領域CDR:
(1)アミノ酸配列が配列番号3で示される、相補性決定領域CDR1;
(2)アミノ酸配列が配列番号4または16で示される、相補性決定領域CDR2;および
(3)アミノ酸配列が配列番号5または17で示される、相補性決定領域CDR3
を含むことを特徴とする、前記重鎖可変領域。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体の重鎖可変領域を有することを特徴とする、抗ヒトCLDN18.2抗体重鎖。
【請求項3】
抗ヒトCLDN18.2抗体の軽鎖可変領域であって、以下の3つの相補性決定領域CDR’:
(1)アミノ酸配列が配列番号8で示される、相補性決定領域CDR1’;
(2)アミノ酸配列’が配列番号9で示される、相補性決定領域CDR2’;および
(3)アミノ酸配列’が配列番号10で示される、相補性決定領域CDR3’
を含むことを特徴とする、前記軽鎖可変領域。
【請求項4】
請求項3に記載の抗体の軽鎖可変領域を有することを特徴とする、抗ヒトCLDN18.2抗体軽鎖。
【請求項5】
抗ヒトCLDN18.2抗体であって、
(1)請求項1に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)請求項3に記載の軽鎖可変領域
を有するか、または、請求項2に記載の重鎖、および/また請求項4に記載の軽鎖を有することを特徴とする、前記抗体。
【請求項6】
前記抗体は、配列番号1、11、12、または13で示される重鎖可変領域;および/または配列番号6、14または15で示される軽鎖可変領域を有することを特徴とする、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
組み換えタンパク質であって、
(i)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5に記載の抗体、ならびに
(ii)発現および/または精製を補助する任意のタグ配列
を有することを特徴とする、前記タンパク質。
【請求項8】
抗体製剤であって、
(a)請求項5に記載の抗ヒトCLDN18.2抗体、ならびに
(b)緩衝剤、無菌水、任意の界面活性剤を含むビヒクル
を含むことを特徴とする、前記抗体製剤。
【請求項9】
CAR構築物であって、前記CAR構築物の抗原結合領域のscFv断片は、CLDN18.2に特異的に結合する結合領域であり、かつ前記scFvは、請求項1に記載の重鎖可変領域および請求項3に記載の軽鎖可変領域を有することを特徴とする、前記CAR構築物。
【請求項10】
外来の請求項9に記載のCAR構築物を発現することを特徴とする、組み換え免疫細胞。
【請求項11】
抗体薬物複合体であって、
(a)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5に記載の抗体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、抗体部分と、
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記抗体部分と複合する複合部分と
を含有することを特徴とする、前記抗体薬物複合体。
【請求項12】
活性成分の使用であって、前記活性成分は、請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5に記載の抗体、請求項7に記載の組み換えタンパク質、請求項10に記載の免疫細胞、請求項11に記載の抗体薬物複合体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記活性成分は、
(a)検出試薬またはキットの製造、
(b)CLDN18.2関連疾患を予防および/または治療する薬物または製剤の製造、ならびに/あるいは
(c)癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物または製剤の製造
のために用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項13】
薬物組成物であって、
(i)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5に記載の抗体、請求項7に記載の組み換えタンパク質、請求項10に記載の免疫細胞、請求項11に記載の抗体薬物複合体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、活性成分と、
(ii)薬学的に許容される担体と
を含有することを特徴とする、前記組成物。
【請求項14】
以下の群から選ばれるポリペプチド:
(1)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5に記載の抗体;あるいは
(2)請求項7に記載の組み換えタンパク質;ならびに/あるいは
(3)請求項9に記載のCAR構築物
をコードすることを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項16】
遺伝子操作された宿主細胞であって、前記宿主細胞は、請求項15に記載のベクターを含むか、あるいはゲノムに請求項14に記載のポリヌクレオチドが組み込まれていることを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項17】
体外でサンプルにおけるCLDN18.2タンパク質を検出(診断的なものまたは非診断的なものを含む)する方法であって、以下の工程:
(1)体外において、前記サンプルを請求項5に記載の抗体と接触させること;
(2)抗原-抗体複合体が形成されたかを検出すること、ここで、複合体が形成されたというのはサンプルにCLDN18.2タンパク質が存在することを意味する
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項18】
基板(支持プレート)およびテストストリップを含む検出プレートであって、前記テストストリップが請求項5に記載の抗体または請求項11に記載の抗体薬物複合体を含有することを特徴とする、前記検出プレート。
【請求項19】
キットであって、
(1)請求項5に記載の抗体を含有する第一の容器、および/または
(2)請求項5に記載の抗体に対する二次抗体を含有する第二の容器
を含むか、または請求項18に記載の検出プレートを含むことを特徴とする、前記キット。
【請求項20】
CLDN18.2関連疾患を予防および/または治療する方法であって、これを必要とする対象に請求項5に記載の抗体、前記抗体の抗体-薬物複合体、または前記抗体を発現するCAR-T細胞、またはこれらの組み合わせを投与する工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、具体的に、抗CLDN18.2ヒト化モノクローナル抗体およびその製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
密着結合(Tight Junction、TJ)は上皮組織細胞間の透過性を調節する多分子複合体である。密着結合複合体において、クローディン(claudin)は隣接する細胞間で密着チャネルを形成し、イオン、溶質などの物質の流通を調節する。
【0003】
CLDN18は肺および胃の上皮細胞における密着結合の主な構成部分で、CLDN18はCLDN18.1とCLDN18.2の2種類のサブタイプで、CLDN18.1は主に肺で、CLDN18.2は主に胃で発現される。
【0004】
研究では、CLDN18.2は原発性胃癌および転移性胃癌、膵癌、食道癌、肺癌、胆管癌、卵巣癌などの多くの腫瘍において高発現であることが見出された(Sahin Uら, Clin Cancer Res, 2008;14(23):7624-34)。腫瘍細胞は増殖が速い、侵襲・転移しやすいなどの特性によって密着結合の構造がなくなり、その表面のCLDN18.2分子が露出しやすく、CLDN18.2は理想的な腫瘍治療の標的になっている(Hewitt KJら, BMC Cancer, 2006; 6:186)。
【0005】
Ganymed Pharmaceuticals AG社によって開発されたCLDN18.2に対するキメラ抗体IMAB362は既にIII期の臨床研究に入っている。末期または再発性胃食道癌のII期臨床研究において、IMAB362は第一線の化学治療薬EOX(エピルビシン、オキサリプラチン、カペシタビン)との併用によりも単独の化学治療のほうが顕著に患者のPFSおよびOSを延ばし、胃癌、食道癌などの疾患の治療の潜在的な薬物になっている(Lordick Fら, Gastric Cancer, 2021; 24(3): 721-730.)。
【0006】
CLDN18.2の腫瘍治療における潜在力のため、高活性の抗体薬物の開発に大きい臨床の需要がある。
【0007】
ヒトCLDN18.1とCLDN18.2の高度の類似性はCLDN18.2特異的抗体の開発に挑戦をもたらす。また、マウスCLDN18.2はヒトCLDN18.2の細胞外ループ1と配列が完全に一致し、マウス体内における特異性抗ヒトCLDN18.2抗体のスクリーニングはマウスの免疫耐性を突破しなくてはならない。そのため、高活性の特異的にヒトCLDN18.2抗体を認識する薬物の開発は多くの技術的難題を克服する必要がある。
【0008】
そのため、本分野では、高親和力および高生物活性のCLDN18.2抗体およびその使用の開発がまだ切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高親和力および高生物活性のCLDN18.2抗体およびその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の側面では、抗体の重鎖可変領域であって、以下の3つの相補性決定領域CDRを含む重鎖可変領域を提供する:
(1)アミノ酸配列が配列番号3で示される、相補性決定領域CDR1;
(2)アミノ酸配列が配列番号4または16で示される、相補性決定領域CDR2;および
(3)アミノ酸配列が配列番号5または17で示される、相補性決定領域CDR3。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記の重鎖可変領域の3つの相補性決定領域CDRの配列は配列番号3、4および5、あるいは3、16および5、あるいは3、4および17である。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記重鎖可変領域は以下の4つのフレームワーク領域FRを含み、ここで、前記4つのフレームワーク領域FRは配列番号1、11、12および13に相応する4つのフレームワーク領域FR由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記の重鎖可変領域は配列番号1、11、12または13で示されるアミノ酸配列を有する。
【0013】
本発明の第二の側面では、本発明の第一の側面に記載の抗体の重鎖可変領域を有する抗体重鎖を提供する。
もう一つの好適な例において、前記重鎖の定常領域はヒト由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記重鎖の定常領域はヒトIgG1、IgG2などの重鎖定常領域である。
【0014】
本発明の第三の側面では、以下の3つの相補性決定領域CDR’を含む、抗体の軽鎖可変領域を提供する:
(1)アミノ酸配列が配列番号8で示される、相補性決定領域CDR1’;
(2)アミノ酸配列’が配列番号9で示される、相補性決定領域CDR2’;および
(3)アミノ酸配列’が配列番号10で示される、相補性決定領域CDR3’。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記軽鎖可変領域は以下の4つのフレームワーク領域FRを含み、ここで、前記4つのフレームワーク領域FRは配列番号6、14、および15に相応する4つのフレームワーク領域FR由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記の軽鎖可変領域は配列番号6、14、または15で示されるアミノ酸配列を有する。
【0016】
本発明の第四の側面では、本発明の第三の側面に記載の抗体の軽鎖可変領域を有する抗体軽鎖を提供する。
もう一つの好適な例において、前記軽鎖の定常領域はヒト由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記軽鎖の定常領域はヒトκ、λなどの軽鎖定常領域である。
【0017】
本発明の第五の側面では、
(1) 本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、および/または
(2) 本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域
を有するか、本発明の第二の側面に記載の重鎖、および/または本発明の第四の側面に記載の軽鎖を有する抗体を提供する。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記抗体は、さらに、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を有する。
もう一つの好適な例において、前記抗体は配列番号1、11、12または13で示される重鎖可変領域、ならびに/あるいは配列番号6、14、および15で示される軽鎖可変領域を有する。
もう一つの好適な例において、前記抗体は配列番号1、11、12または13で示される重鎖可変領域、ならびに/あるいはが配列番号15で示される軽鎖可変領域を有する。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記抗体は、以下の群から選ばれる:
(Z1)配列番号1で示される重鎖可変領域および配列番号6で示される軽鎖可変領域を有する抗体;
(Z2)配列番号11で示される重鎖可変領域および配列番号14で示される軽鎖可変領域を有する抗体;
(Z3)配列番号11で示される重鎖可変領域および配列番号15で示される軽鎖可変領域を有する抗体;
(Z4)配列番号12で示される重鎖可変領域および配列番号14で示される軽鎖可変領域を有する抗体;
(Z5)配列番号12で示される重鎖可変領域および配列番号15で示される軽鎖可変領域を有する抗体;
(Z6)配列番号13で示される重鎖可変領域および配列番号14で示される軽鎖可変領域を有する抗体;
(Z7)配列番号13で示される重鎖可変領域および配列番号15で示される軽鎖可変領域を有する抗体。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記抗体の重鎖は配列番号18、20、21または22で示されるアミノ酸配列を有する。
もう一つの好適な例において、前記抗体の軽鎖は配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する。
もう一つの好適な例において、前記抗体はヒト化抗体である。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記抗体は特異的にCLDN18.2に結合する。
もう一つの好適な例において、前記の抗体は二本鎖抗体、または一本鎖抗体である。
もう一つの好適な例において、前記の抗体はモノクローナル抗体である。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は二重特異性抗体である。
もう一つの好適な例において、前記の抗体は、薬物複合体の形態である。
また、本発明は、624に相応する抗体であって、配列番号23で示される重鎖可変領域および配列番号24で示される軽鎖可変領域を有する抗体を提供する。
【0023】
本発明の第六の側面では、組み換えタンパク質であって、
(i) 本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体、ならびに
(ii)任意の発現および/または精製を補助するタグ配列
を有するタンパク質を提供する。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列は6Hisタグを含む。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質(またはポリペプチド)は融合タンパク質を含む。
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は、単量体、二量体、または多量体である。
【0025】
本発明の第七の側面では、抗体製剤であって、
(a)本発明の第五の側面に記載の抗体、ならびに
(b)緩衝剤、無菌水、任意に界面活性剤を含むビヒクル
を含む製剤を提供する。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記の製剤では、前記抗体の濃度は5-100 mg/mL、好ましくは10-70 mg/mL、より好ましくは20-60 mg/mLである。
もう一つの好適な例において、前記緩衝剤は、クエン酸緩衝系、ヒスチジン緩衝系、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記の製剤のpH範囲は5.0-7.5、好ましくは5.5-7である。
もう一つの好適な例において、前記の製剤は注射製剤である。
【0028】
本発明の第八の側面では、本発明の第七の側面に記載の抗体製剤、ならびに前記抗体製剤の入った容器を含むキットを提供する。
【0029】
本発明の第九の側面では、CAR構築物であって、前記のCAR構築物の抗原結合領域のscFv断片は特異的にCLDN18.2に結合する結合領域で、かつ前記scFvは本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域および本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域を有するCAR構築物を提供する。
【0030】
本発明の第十の側面では、組み換えの免疫細胞であって、外来の本発明の第九の側面に記載のCAR構築物を発現する免疫細胞を提供する。
もう一つの好適な例において、前記の免疫細胞は、NK細胞、T細胞からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の免疫細胞はヒトまたはヒト以外の哺乳動物(たとえばマウス)由来のものである。
【0031】
本発明の第十一の側面では、抗体薬物複合体であって、
(a) 本発明第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明第二の側面に記載の重鎖、本発明第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明第四の側面に記載の軽鎖、または本発明第五の側面に記載の抗体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる抗体部分と、
(b) 検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記抗体部分と複合する複合部分と
を含む複合体を提供する。
もう一つの好適な例において、前記の抗体部分と前記の複合部分は化学結合またはリンカーを介して複合している。
【0032】
本発明の第十二の側面では、活性成分の使用であって、前記活性成分は、本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体、本発明の第六の側面に記載の組み換えタンパク質、本発明の第十の側面に記載の免疫細胞、本発明の第十一の側面に記載の抗体薬物複合体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、前記活性成分は、
(a)検出試薬またはキットの製造、
(b)CLDN18.2関連疾患を予防および/または治療する薬物または製剤の製造、ならびに/あるいは
(c)癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物または製剤の製造
のためのものである使用を提供する。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記血液腫瘍は、急性骨髄球性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記の固形腫瘍は、胃癌、胃癌腹膜転移、肝臓癌、白血病、腎臓腫瘍、肺癌、小腸癌、骨癌、前立腺癌、結直腸癌、乳癌、大腸癌、子宮頸癌、卵巣癌、リンパ癌、鼻咽頭癌、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺癌(NSCLC)、脳膠細胞腫、子宮内膜癌、またはからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記腫瘍はCLDN18.2高発現の腫瘍である。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記薬物または製剤はCLDN18.2(発現陽性)に関連する疾患を予防および/または治療する薬物または製剤の製造のためのものである。
もう一つの好適な例において、前記の抗体は、薬物複合体(ADC)の形態である。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記の検出試薬またはキットはCLDN18.2関連疾患の診断のためのものである。
もう一つの好適な例において、前記検出試薬またはキットはサンプルにおけるCLDN18.2タンパク質の検出のためのものである。
もう一つの好適な例において、前記の検出試薬は検出シートである。
【0037】
本発明の第十三の側面では、薬物組成物であって、
(i) 本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体、本発明の第六の側面に記載の組み換えタンパク質、本発明の第十の側面に記載の免疫細胞、本発明の第十一の側面に記載の抗体薬物複合体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる活性成分と、
(ii) 薬学的に許容される担体と
を含有する組成物を提供する。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、さらに、抗腫瘍の第二活性成分を含む。
もう一つの好適な例において、前記の第二活性成分は、細胞毒性薬物、毒素、サイトカイン、酵素、抗体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の第二活性成分は、EGFRを標的とする抗体、HER2を標的とする抗体を含む。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は液体製剤である。
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は注射剤である。
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は腫瘍の治療に使用される。
もう一つの好適な例において、前記腫瘍はCLDN18.2高発現の腫瘍である。
【0040】
本発明の第十四の側面では、以下の群から選ばれるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する:
(1) 本発明の第一の側面に記載の重鎖可変領域、本発明の第二の側面に記載の重鎖、本発明の第三の側面に記載の軽鎖可変領域、本発明の第四の側面に記載の軽鎖、または本発明の第五の側面に記載の抗体、あるいは
(2) 本発明の第六の側面に記載の組み換えタンパク質、ならびに/あるいは
(3) 本発明の第九の側面に記載のCAR構築物。
【0041】
本発明の第十五の側面では、本発明の第十四の側面に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
もう一つの好適な例において、前記のベクターは、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳動物細胞ウイルス、たとえばアデノウイルス、レトロウイルス、またはほかのベクターを含む。
【0042】
本発明の第十六の側面では、遺伝子操作された宿主細胞であって、本発明の第十五の側面に記載のベクターを含むか、あるいはゲノムに本発明の第十四の側面に記載のポリヌクレオチドが組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0043】
本発明の第十七の側面では、体外でサンプルにおけるCLDN18.2タンパク質を検出(診断的なものまたは非診断的なものを含む)する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(1) 体外において、前記サンプルを本発明の第五の側面に記載の抗体と接触させる;
(2) 抗原-抗体複合体が形成したか検出し、ここで、複合体が形成したというのはサンプルにCLDN18.2タンパク質が存在することを意味する。
【0044】
本発明の第十八の側面では、基板(支持プレート)と、本発明の第五の側面に記載の抗体または本発明の第十一の側面に記載の抗体薬物複合体を含有するテストストリップとを含む検出プレートを提供する。
【0045】
本発明の第十九の側面では、キットであって、
(1) 本発明の第五の側面に記載の抗体を含有する第一の容器、および/または
(2) 本発明の第五の側面に記載の抗体に対する二次抗体を含有する第二の容器を含むか、
あるいは、本発明の第十八の側面に記載の検出プレートを含有するキットを提供する。
【0046】
本発明の第二十の側面では、組み換えポリペプチドの製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 発現に適切な条件において、本発明の第十四の側面に記載の宿主細胞を培養する;
(b) 培養物から、本発明の第五の側面に記載の抗体または本発明の第六の側面に記載の組み換えタンパク質である、組み換えポリペプチドを単離する。
【0047】
本発明の第二十一の側面では、CLDN18.2関連疾患を治療する方法であって、これを必要とする対象に本発明の第五の側面に記載の抗体、前記抗体の抗体-薬物複合体、または前記抗体を発現するCAR-T細胞、またはこれらの組み合わせを投与する工程を含む方法を提供する。
【0048】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1はとするハイブリドーマ上清細胞に結合するELISA結合の検出結果を示す。
図2A図2はフローサイトメトリーの検出結果を示す。図2Aはキメラ抗体ch429の検出結果で、図2Bはキメラ抗体ch623の検出結果で、図2Cはキメラ抗体ch624の検出結果で、図2Dはキメラ抗体ch782の検出結果で、図2Eは参照抗体Ref.ch175の検出結果である。
図2B図2はフローサイトメトリーの検出結果を示す。図2Aはキメラ抗体ch429の検出結果で、図2Bはキメラ抗体ch623の検出結果で、図2Cはキメラ抗体ch624の検出結果で、図2Dはキメラ抗体ch782の検出結果で、図2Eは参照抗体Ref.ch175の検出結果である。
図2C図2はフローサイトメトリーの検出結果を示す。図2Aはキメラ抗体ch429の検出結果で、図2Bはキメラ抗体ch623の検出結果で、図2Cはキメラ抗体ch624の検出結果で、図2Dはキメラ抗体ch782の検出結果で、図2Eは参照抗体Ref.ch175の検出結果である。
図2D図2はフローサイトメトリーの検出結果を示す。図2Aはキメラ抗体ch429の検出結果で、図2Bはキメラ抗体ch623の検出結果で、図2Cはキメラ抗体ch624の検出結果で、図2Dはキメラ抗体ch782の検出結果で、図2Eは参照抗体Ref.ch175の検出結果である。
図2E図2はフローサイトメトリーの検出結果を示す。図2Aはキメラ抗体ch429の検出結果で、図2Bはキメラ抗体ch623の検出結果で、図2Cはキメラ抗体ch624の検出結果で、図2Dはキメラ抗体ch782の検出結果で、図2Eは参照抗体Ref.ch175の検出結果である。
図3A図3は抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体の組み換え細胞との結合活性の検出結果を示す。図3Aは抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.1細胞との結合活性の結果で、図3Bは抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.2細胞との結合活性の結果である。
図3B図3は抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体の組み換え細胞との結合活性の検出結果を示す。図3Aは抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.1細胞との結合活性の結果で、図3Bは抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.2細胞との結合活性の結果である。
図4図4は抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のNUGC4細胞との結合活性の検出結果を示す。
図5図5は抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体の組み換え細胞との細胞結合活性のフローサイトメトリーの検出結果を示す。
図6図6は抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.2細胞に対するADCC活性の結果を示す。
図7A図7はヒト化抗体のヒト人CLDN18.1&CLDN18.2、マウスCLDN18.1&CLDN18.2およびNUGC4細胞に対する結合活性を示す。
図7B図7はヒト化抗体のヒト人CLDN18.1&CLDN18.2、マウスCLDN18.1&CLDN18.2およびNUGC4細胞に対する結合活性を示す。
図7C図7はヒト化抗体のヒト人CLDN18.1&CLDN18.2、マウスCLDN18.1&CLDN18.2およびNUGC4細胞に対する結合活性を示す。
図7D図7はヒト化抗体のヒト人CLDN18.1&CLDN18.2、マウスCLDN18.1&CLDN18.2およびNUGC4細胞に対する結合活性を示す。
図7E図7はヒト化抗体のヒト人CLDN18.1&CLDN18.2、マウスCLDN18.1&CLDN18.2およびNUGC4細胞に対する結合活性を示す。
図8A図8はヒト化抗体のADCC活性を示す。
図8B図8はヒト化抗体のADCC活性を示す。
図8C図8はヒト化抗体のADCC活性を示す。
図9図9はヒト化抗体のCDC活性の検出結果を示す。
図10図10はヒト化抗体のHEK293-hCLDN18.2増殖抑制活性の結果を示す。
図11A図11は本発明の抗体hu782と参照抗体の主要結合部位の比較を示す。ここで、図11AはRef.ch175の主要結合部位を、図11Bは本発明の抗体hu782の主要結合部位を示す。
図11B図11は本発明の抗体hu782と参照抗体の主要結合部位の比較を示す。ここで、図11AはRef.ch175の主要結合部位を、図11Bは本発明の抗体hu782の主要結合部位を示す。
図12図12は本発明の抗体の体内抗腫瘍活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明者は幅広く深く研究したところ、初めて、意外に、高親和力および高抗腫瘍活性の抗ヒトCLDN18.2抗体を得ることができた。具体的に、本発明者は、大量のスクリーニングを行ったところ、初めて、複数株のヒトCLDN18.2に対して高い親和力を有するマウス由来抗体を得ることができた。本発明では、マウス由来抗体に基づき、さらに、キメラ抗体およびヒト化抗体を製造し、そして得られたヒト化抗体に対して突然変異のスクリーニングを行った。本発明の抗体、特に、突然変異後のヒト化抗体は、キメラ抗体に近い親和力を有し、さらに標的治療のヒト化モノクローナル抗体薬物に開発される将来性がある。本発明の抗体は、有効にヒトCLDN18.2に結合し、多くの腫瘍細胞の増殖を抑制し、ヌードマウス体内における腫瘍の生長を抑制することができ、優れた抗腫瘍活性がある。これに基づき、本発明を完成させた。
【0051】
具体的に、本発明者は複数の様態のhCLDN18.2 DNAを構築して抗原として交代にマウスを免疫させ、そしてhCLDN18.2を発現する組み換え細胞株で強化免疫させることで、ハイブリドーマ融合技術によって特異的にhCLDN18.2を認識するマウスモノクローナル抗体mab429、mab623、mab624、mab782を得た。
【0052】
キメラ抗体ch782はhCLDN18.2に特異的に結合し、腫瘍細胞NUGC4の細胞表面のCLDN18.2分子を認識することができ、CLDN18.2との親和力が参照抗体Ref.ch175よりも高い。ch782はhCLDN18.2細胞に対してADCC、CDCおよび増殖抑制活性を有する。
【0053】
キメラ抗体ch782をヒト化させ、4種類のIgG1型ヒト化抗体の組み合わせhu782H1.1L1、hu782H1.2L1、hu782H1.1L2、hu782H1.2L2を得たが、4種類のヒト化抗体は特異的にhCLDN18.2を認識し、ch782に対して相当する親和力がある。
【0054】
ヒト化抗体の重鎖hu782H1.1に対してS60A部位の点突然変異を行うことによって潜在的なグルコシル化部位を除去し、同時にV101A突然変異を行うことによってその発現量を増加させ、ヒト化抗体の重鎖hu782 H1.2-V101Aを得た。上記S60A、V101A部位はKabat番号付け規則によって定義されている。
【0055】
ヒト化抗体hu782(H1.2L2組み合わせ)、hu782-HV(H1.2-V101A L2組み合わせ)は腫瘍細胞に対するADCC活性が顕著に参照抗体Ref.ch175よりも良い。
【0056】
ヒト化抗体hu782の重鎖定常領域の239番目、332番目のアミノ酸に対してS239D/I332E突然変異を行ってヒト化抗体hu782-DEを得た。上記S239D、I332EはEU番号付けシステムによって定義されている。
【0057】
ヒト化抗体hu782-DEは腫瘍細胞NUGC4に対するADCCが顕著に参照抗体Ref.ch175よりも良く、そのEC50値がRef.ch175よるも24倍低い。
【0058】
ヒト化抗体hu782、hu782-HVはhCLDN18.2標的細胞に対してCDC殺傷活性がある。
ヒト化抗体hu782、hu782-HVはhCLDN18.2標的細胞に対して増殖抑制活性を有し、その増殖抑制活性は投与量依存性があり、顕著に参照抗体Ref.ch175よりも良い。
【0059】
エピトープ分析では、ヒト化抗体hu782の認識の主要部位はhCLDN18.2分子のE56、G48部位を含むことが見出されたが、参照抗体Ref.ch175の認識の主要部位はA42S、N45A、E56A、G48部位を含むことから、二つの抗体の結合エピトープにある程度の違いがあることが証明された。
【0060】
ヌードマウス腫瘍移植モデルにおいて、hu782、hu782-HV、hu782-DEの三つの抗体はいずれも明らかに腫瘍生長を抑制することができ、かつ参照抗体Ref.ch175よりも良く、とりわけ、hu782、hu782-DEの二つの抗体は腫瘍生長抑制効果が顕著に参照抗体Ref.ch175よりも良い。hu782、hu782-DEの二つの抗体の治療群のいずれでも、マウスの腫瘍が完全に消退し、hu782-HV、hu782、hu782-DEの腫瘍抑制率が34.68%、62.88%および65.05%で、参照抗体Ref.ch175は15.5%である。
【0061】
用語
本開示が理解しやすくなるように、まず、一部の用語を定義する。本願に用いられるように、本明細書で別途に明確に規定しない限り、以下の用語はいずれも下記の意味を有する。出願全体において、ほかの定義が記述されている。
【0062】
用語「約」とは当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成で、それによって部分的にどのように値または組成を計量または測定するかというのが決まる。たとえば、本明細書で用いられるように、「約100」という表示は99と101およびその間の全部の値(たとえば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0063】
本明細書で用いられるように、用語「含有」または「含む」は開放式、半閉鎖式および閉鎖式のものでもよい。言い換えれば、前記用語は「基本的に・・・で構成される」、または「・・・で構成される」も含む。
【0064】
配列同一性は、所定の比較ウィンドウ(参照のヌクレオチド配列またはタンパク質の長さの50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%でもよい)に沿って2つの整列された配列を比較し、そして同様の残基が現れる位置の数によって確定する。通常、百分率で表示される。ヌクレオチド配列の配列同一性の測定は当業者に熟知の方法である。
【0065】
本明細書で用いられるように、用語「重鎖可変領域」と「V」は入れ替えて使用することができる。
本明細書で用いられるように、用語「軽鎖可変領域」と「V」は入れ替えて使用することができる。
【0066】
本明細書で用いられるように、用語「可変領域」と「相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)」は入れ替えて使用することができる。
【0067】
本発明において、用語「本発明の抗体」、「本発明のタンパク質」、または「本発明のポリペプチド」は入れ替えて使用することができ、いずれも特異的にCLDN18.2に結合する抗体、たとえば重鎖可変領域(たとえば配列番号1、11、12または13のアミノ酸配列)および/または軽鎖可変領域(たとえば配列番号6、14または15のアミノ酸配列)を有するタンパク質またはポリペプチドをいう。これらは、開始のメチオニンを含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0068】
もう一つの好適な本発明の抗体は624に相応する特異的にCLDN18.2に結合する抗体、たとえば重鎖可変領域(たとえば配列番号23のアミノ酸配列)および/または軽鎖可変領域(たとえば配列番号24のアミノ酸配列)を有するタンパク質またはポリペプチドである。
【0069】
CLDN18.2
ヒトCLDN18は、全長が261のアミノ酸を含み、4回膜貫通タンパク質で、四つの膜貫通疎水領域を有し、細胞外は二つのループ状構造で、ループ1は膜貫通領域1と膜貫通領域2が環状に回ってなり、ループ2は膜貫通領域3と膜貫通領域4が環状に回ってなる。ヒトCLDN18.1とCLDN18.2のN末端、膜貫通領域1および細胞外ループ1のアミノ酸は構成において違いがあり、ほかの部分はいずれも完全に一致し、その配列類似度が92%に達する。
【0070】
抗体
本明細書で用いられるように、用語「抗体」とは免疫グロブリンのことで、2本の同様の重鎖および2本の同様の軽鎖がジスルフィド結合を介して連結してなる4本ペプチド鎖の構造である。
【0071】
既存の抗体番号付けスキームは以下のものを含む。
1.Kabatスキーム(Kabatら、1991)は同ドメイン種類の配列の間の高配列変異領域の位置に基づくもので、抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VλとVκ)可変ドメインの番号が異なる。
2.Chothiaスキーム(Al-Lazikani、1997)はKabatスキームと同様であるが、構造ループに相応するように、一番目のVH相補性決定領域(CDR)の周囲の注釈が挿入された位置を校正したものである。同様に、増強型Chothiaスキーム(AbhinandanおよびMartin、2008)は挿入位置をさらに構造修正を行ったものである。
3.これらのKabatに類似するスキームと逆で、IMGT(Lefranc、2003)およびAHo(HoneggerおよびPluckthun、2001)はいずれも抗体およびT細胞受容体(TCR)(VαとVβ)の可変ドメインを定義した独特なスキームである。そのため、容易にドメイン種類の間で同等効果の位置を比較することができる。IMGTおよびAHoは注釈の位置の数字(それぞれ128と149)およびindel発生とされる位置において異なる。
【0072】
免疫グロブリンの重鎖定常領域のアミノ酸の構成および配列順序により、その抗原性が異なる。これにより、免疫グロブリンは5種類に分かれ、あるいは免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれ、すなわち、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEで、その相応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖、およびε鎖である。同一のIgはそのヒンジ領域のアミノ酸の組成および重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いにより、異なるサブタイプに分かれ、たとえばIgGはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分かれる。軽鎖は定常領域によってκ鎖またはλ鎖に分かれる。5種類のIgのうち、いずれのIgもκ鎖またはλ鎖を有してもよい。各クラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構造は本分野の技術者熟知である。
【0073】
本発明に記載の抗体の軽鎖はさらに軽鎖定常領域を含んでもよく、前記の軽鎖定常領域はヒト由来またはマウス由来のκ鎖、λ鎖またはそのバリアントを含む。
【0074】
本発明において、本発明に記載の抗体の重鎖はさらに重鎖定常領域を含んでもよく、前記の重鎖定常領域はヒト由来またはマウス由来のIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそのバリアントを含む。抗体の重鎖および軽鎖のN末端に近い約110のアミノ酸の配列は大きく異なり、可変領域(Fv領域)で、C末端に近い残りのアミノ酸配列は相対的に安定で、定常領域である。可変領域は3つの超可変領域(HVR)および4つの配列が相対的に保存的な骨格領域(FR)を含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。各軽鎖可変領域(LCVR)および重鎖可変領域(HCVR)は3つのCDR領域および4つのFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4の順で並ぶ。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2およびLCDR3を、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2およびHCDR3を指す。本発明の実施例13において、KabatおよびChothiaスキームを合わせ、ch782抗体の6つのCDRを分割する。
【0075】
本発明において、用語「マウス由来抗体」は本分野の知識および技能によって製造される抗CLDN18.2モノクローナル抗体である。製造時、CLDN18.2抗原で試験対象に注射した後、必要な配列または機能の特徴を有する抗体を発現するハイブリドーマを分離する。本発明の一つの好適な実施形態において、前記のマウス由来CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、さらにマウス由来κ鎖、λ鎖またはそのバリアントの軽鎖定常領域を、あるいはさらにマウス由来IgG1、IgG2、IgG3またはそのバリアントの重鎖定常領域を含んでもよい。
【0076】
用語「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、マウス由来抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を融合させてなる抗体で、マウス由来抗体による免疫応答反応を減少することができる。
【0077】
用語「ヒト化抗体(humanized antibody)」とは、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスのCDR配列をヒトの抗体可変領域のフレームワーク、すなわち、異なる種類のヒト種抗体骨格配列に移植してなる抗体である。ヒト化抗体はキメラ抗体が大量のマウスタンパク質成分を持つことで、異種性反応が誘導されることを克服することができる。このような骨格配列は、系列の抗体の遺伝子配列を含む公共DNAデータベースまたは公開された参照文献から得ることができる。免疫原性の低下およびそれによる活性の低下を防止するには、前記のヒト抗体の可変領域のフレームワーク配列に最低限の逆向突然変異または復帰突然変異をさせることによって活性を維持することができる。
【0078】
用語「抗体の抗原結合断片」(または「抗体断片」と略す)とは抗体の特異的に抗原(たとえば、CLDN18.2)に結合する能力を維持する一つまたは複数の断片である。全長抗体の断片で抗体の抗原結合機能を実現できることが示されている。用語「抗体の抗原結合断片」に含まれる結合断片の実例は以下のもの含む:
(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる1価の断片である、Fab断片;
(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋で連結した2つのFab断片を含む2価の断片である、F(ab’)断片;
(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;
(iv)抗体の一方のアームのVHおよびVLドメインからなるFv断片。
【0079】
Fv抗体は抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含有するが、定常領域がなく、かつすべての抗原結合部位を有する最小の抗体断片である。一般的に、Fv抗体はさらにVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含み、かつ抗原結合に必要な構造を形成することができる。
【0080】
用語「CDR」とは抗体の可変ドメイン内における主に抗原の結合を促進する6つの超可変領域の1つである。前記6つのCDRの最も用いられる定義の一つはKabat E.Aら,(1991)Sequences of proteins of immunological interest.NIH Publication91-3242)によって提供される。
【0081】
用語「エピトープ」または「抗原決定基」とは抗原における免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する部位(たとえば、CLDN18.2分子における特定の部位)である。エピトープは、通常、独特な配座で、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続のアミノ酸を含む。
【0082】
用語「特異的な結合」、「選択的な結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」とは抗体の予め決定された抗原におけるエピトープに対する結合である。通常、抗体は約10-7M未満、たとえば約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満あるいはそれよりも低い親和力(KD)で結合する。
【0083】
用語「競争的に結合する」とはCLDN18.2の細胞外領域における本発明のモノクローナル抗体と同様のエピトープ(抗原決定基とも呼ばれる)または同様のエピトープの一部を認識して前記抗原に結合する抗体である。本発明のモノクローナル抗体と同様のエピトープに結合する抗体とは本発明のモノクローナル抗体によって認識されるCLDN18.2のアミノ酸配列を認識して結合する抗体である。
【0084】
用語「KD」または「Kd」とは特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数である。通常、本発明の抗体は約10-7M未満、たとえば約10-8M、10-9Mまたは10-10M未満あるいはそれよりも低い解離平衡定数(KD)でCLDN18.2に結合する。
【0085】
本明細書で用いられるように、用語「抗原決定基」とは抗原における不連続の、本発明の抗体または抗原結合断片によって認識される立体空間部位である。
本発明は、完全の抗体だけではなく、免疫活性を有する抗体の断片または抗体とほかの配列からなる融合タンパク質も含む。そのため、本発明は、さらに、前記抗体の断片、誘導体および類似体を含む。
【0086】
本発明において、抗体は当業者に熟知の技術によって製造されるマウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体または全ヒト抗体を含む。組み換え抗体、たとえばキメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体は、ヒトの部分および非ヒトの部分を含み、本分野で熟知されるDNA組み換え技術によって製造することができる。
【0087】
本明細書で用いられるように、用語「モノクローナル抗体」とは単一の細胞由来のクローンから分泌される抗体である。モノクローナル抗体は、高度特異的で、単一のエピトープに対するものである。前記の細胞は、真核、原核またはファージのクローン細胞株でもよい。
本発明において、抗体は、単特異性、二重特異性、三重特異性、またはそれ以上の多重特異性でもよい。
【0088】
本発明において、本発明の抗体は、さらにその保存的変異体を含み、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較すると、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最も好ましくは3個以下のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドをいう。これらの保存的変異ポリペプチドは、好ましくは以下の表に基づいてアミノ酸置換を行うことにより生成される。
【表1】
【0089】
抗CLDN18.2ヒト化抗体
本発明は抗CLDN18.2ヒト化抗体(以下、CLDN18.2抗体と略す)を提供する。具体的に、本発明は、CLDN18.2に対して高特異性で高親和力のヒト化抗体であって、重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖は重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を、前記軽鎖は軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を含有する抗体を提供する。
【0090】
1986年に、Jonesらは、初めて、マウスモノクローナル抗体の重鎖CDRをヒト抗体の重鎖フレームワーク領域に移植し、さらにマウスモノクローナル抗体の軽鎖と完全な抗体に組み立てて元のマウスモノクローナル抗体に類似する親和力を保ち、抗体のヒト化技術の発展に新しい発想を提供した。1989年に、QueenらはCDR移植の方法により、抗CD25ヒト化抗体の構築に成功し、当該方法で使用されるのはヒト抗体フレームワーク領域によるヒト化で、フレームワーク領域の一部の部位においてマウス由来抗体のアミノ酸を残すことによって親和力を維持する。1992年に、Prestaらは、ヒト抗体のサブグループのコンセンサス配列(consensus sequence)を鋳型としてCDR移植を行ってヒト化の構築に成功した方法を報告した。1994年に、Pedersenらは、リサーフェイシング(resurfacing)の方法によって抗体をヒト化することを報告した。1994年に、Hsiaoらは、ヒト抗体生殖細胞系列配列のフレームワーク領域でCDR移植を行うヒト化方法を報告した。1994年に、Jespersらは、ファージライブラリー(shuffling library、シャッフリングライブラリー)の方法によってヒト化方法の構築に成功した。
【0091】
抗体のヒト化においてヒトフレームワーク領域の選択は、通常、2種類があるが、1種類は既知の成熟抗体で、もう1種類はヒト生殖細胞系列配列である。既知の成熟抗体のフレームワーク領域は、通常、体細胞の突然変異部位を含み、潜在的な免疫原性をもたらすことがある。成熟抗体と比べ、ヒト生殖細胞系列のフレームワーク領域は理論的に免疫原性がより低く、そして構造がより動きやすく、順応性が強く、異なるCDR領域が受け取りやすい。ヒト抗体生殖細胞系列遺伝子は人体における使用頻度にある程度の傾向があり、使用頻度の高い生殖細胞系列のフレームワーク領域でヒト化した抗体は免疫原性が低い、発現量が高い、構造が安定などの利点がある。
【0092】
本発明の一つの好適な実施形態において、ヒト化時、マウス由来抗体との類似度が最高の生殖細胞系列配列でなく、類似性および人体使用頻度を兼ね、大量の実験によってスクリーニングを行ったところ、最適化配列のフレームワーク領域を選んでヒト化する。ヒト抗体生殖細胞系列のフレームワーク領域でCDR移植を行い、このように構築されるヒト化抗体は構造がより安定で、発現量が高く、免疫原性が低く、薬らしさがより高い。
【0093】
もう一つの好適な例において、前記の重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域がヒト化の重鎖定常領域または軽鎖定常領域でもよい。より好ましくは、前記ヒト化の重鎖定常領域または軽鎖定常領域はヒトIgG1、IgG2などの重鎖定常領域またはヒトκ、λ軽鎖定常領域である。
【0094】
もう一つの好適な例において、前記少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換を経た配列は、好適に、相同性が少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列である。
本発明の抗体は二本鎖または一本鎖抗体でもよく、そして好ましくは全ヒト化抗体でもよい。
【0095】
本発明に係る抗体の誘導体は、一本鎖抗体、およびまたは抗体断片、たとえばFab、Fab’、(Fab’)、あるいは当該分野におけるほかの既知の抗体の誘導体など、ならびにIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体またはほかのサブタイプの抗体のうちの任意の一つまたは複数でもよい。
本発明の抗体は、CLDN18.2を標的とするヒト化抗体、CDR接木および/または修飾の抗体でもよい。
【0096】
本発明の上記内容において、前記付加、欠失、修飾および/または置換のアミノ酸数は、好ましくは元のアミノ酸配列の合計アミノ酸数の40%以下、より好ましくは35%以下、より好ましくは1~33%、より好ましくは5~30%、より好ましくは10~25%、より好ましくは15~20%である。
【0097】
抗体の製造
モノクローナル抗体の生成に適する方法のいずれも本発明のCLDN18.2抗体の生成に使用することができる。たとえば、連接または天然に存在するCLDN18.2タンパク質またはその断片で動物を免疫させることができる。アジュバント、免疫刺激剤、重複免疫強化接種を含む、適切な免疫接種方法を使用してもよく、一つまたは複数の手段をしようしてもよい。
【0098】
適切な様態のCLDN18.2のいずれも免疫原(抗原)とし、CLDN18.2に特異的な非ヒト抗体を生成し、前記抗体の生物学活性を選別して使用することができる。免疫原は単独で使用してもよく、あるいは本分野で既知の一つまたは複数の免疫原性補強剤と組み合わせて使用してもよい。免疫原は天然由来の精製されたもの、あるいは遺伝的に修飾された細胞において生成したものでもよい。免疫原をコードするDNAは、ゲノム由来のものまたは非ゲノム由来のもの(たとえばcDNA)でもよい。適切な遺伝ベクターで免疫原をコードするDNAを発現することができるが、前記ベクターはアデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、プラスミドおよび非ウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。
【0099】
ヒト化抗体は、任意の種類の免疫グロブリンから選ばれてもよいが、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含む。同様に、何らの軽鎖も本明細書の化合物および方法において使用することができる。具体的に、κ鎖、λ鎖またはそのバリアントは本発明の化合物および方法において有用である。
【0100】
本発明の抗体またはその断片のDNA分子の配列は、通常の技術で、たとえば、PCR増幅 あるいはゲノムライブラリースクリーニングなどの方法によって得ることができる。また、軽鎖および重鎖のコード配列を一体に融合し、一本鎖抗体を形成してもよい。
【0101】
関連の配列を獲得すれば、組み換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を単離して得る。
また、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法で関連配列を合成してもよい。通常、まず多数の小さい断片を合成し、そして連接させることにより、配列の長い断片を得ることができる。さらに、このDNA配列を本分野で周知の各種の既知のDNA分子(あるいはベクターなど)や細胞に導入してもよい。
【0102】
用語「核酸分子」とはDNA分子およびRNA分子である。核酸分子は一本鎖または二本鎖のものでもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸をもう一つの核酸配列と機能的な関係にした場合、核酸は「有効に連結している」。たとえば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響する場合、プロモーターまたはエンハンサーは前記コード配列と有効に連結している。
【0103】
用語「ベクター」とはそれに連結したもう一つの核酸を輸送することができる核酸分子である。一つの実施形態において、ベクターは「プラスミド」で、別のDNA断片をその中に連結することができる環状二本鎖DNA環を指す。
さらに、本発明は、上記の適当なDNA配列および適当なプロモーターあるいは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現するように、適当な宿主細胞の形質転換に用いることができる。
【0104】
用語「宿主細胞」とは既にその中に発現ベクターが導入された細胞である。宿主細胞は、原核細胞、たとえば細菌細胞、あるいは、低等真核細胞、たとえば酵母細胞、あるいは、高等真核細胞、たとえば植物または動物細胞(たとえば哺乳動物細胞)でもよい。
【0105】
本発明に記載のDNA組み換えによる宿主細胞の形質転換の工程は本分野で熟知の技術で行ってもよい。得られる形質転換体は通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現することができる。用いられる宿主細胞によって、通常の培地で適切な条件において培養する。
【0106】
通常、本発明の抗体の発現に適切な条件で、形質転換で得られた宿主細胞を培養する。そして、通常のグロブリンの精製工程、例えばプロテインA-Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィーやアフィニティークロマトグラフィーなどの本分野の技術者に熟知の通常の分離精製手段で精製し、本発明の抗体を得る。
【0107】
得られたモノクローナル抗体は、通常の手段で同定することができる。たとえば、モノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降、あるいは体外結合試験(たとえば放射免疫測定(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA))で測定することができる。
【0108】
抗体製剤
抗体は異なる製剤緩衝液において異なる安定性を有し、電荷異質性の変化、抗体分子の分解、多量体化などとして表れ、これらの質量的性質の変化は抗体自身の物理・化学的性質に関連するため、抗体薬物の開発過程において、異なる抗体の物理・化学的性質によってそれに適する製剤緩衝液をスクリーニングする必要がある。現在、よく使用される抗体製造の緩衝系はリン酸塩緩衝液、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液などがあり、同時に抗体の性質によって異なる濃度の塩イオンまたはソルビトール、トレハロース、ショ糖などの賦形剤、および適量のツインのような界面活性剤を添加することで、抗体の安定性を維持することがある。
【0109】
薬物組成物
さらに、本発明は組成物を提供する。好適な例において、前記の組成物は薬物組成物で、上記の抗体またはその活性断片あるいはその融合タンパク質またはそのADCまたは相応するCAR-T細胞と、薬学的に許容される担体とを含有する。通常、これらの物質を無毒で不活性で薬学的に許容される水系担体で配合し、pH値は配合される物質の性質および治療しようとする疾患にもよるが、pH値は通常5~8程度、好ましくは6~8程度である。配合された薬物組成物は通常の経路で給与することができ、腫瘍内、腹膜内、静脈内、あるいは局部給与が含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明に係る抗体は、ヌクレオチド配列によって細胞内で発現されて細胞治療に使用してもよく、たとえば、前記抗体はキメラ抗原受容体T細胞免疫療法(CAR-T)などに使用することができる。
本発明の薬物組成物は直接CLDN18.2タンパク質分子との結合に使用することができるため、CLDN18.2関連疾患の予防および治療に有用である。また、ほかの治療剤と併用してもよい。
【0111】
本発明の薬物組成物は、安全有効量(たとえば0.001~99wt%、好ましくは0.01~90wt%、より好ましくは0.1~80wt%)の本発明の上記のモノクローナル抗体(またはその複合体)と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む。このようなビヒクルは、食塩水、緩衝液、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノール、およびこれらの組み合せを含むが、これらに限定されない。薬物の製剤は投与形態に相応する。本発明の薬物組成物は、注射剤としてもよく、たとえば生理食塩水またはブドウ糖およびほかの助剤を含有する水溶液で通常の方法によって製造することができる。薬物組成物は、注射剤、溶液の場合、無菌条件で製造する。活性成分の投与量は治療有効量、たとえば毎日約1μg/kg体重~約5mg/kg体重である。また、本発明のポリペプチドはほかの治療剤と併用することが出来る。
【0112】
薬物組成物の使用時、安全有効量の薬物組成物を哺乳動物に投与するが、その安全有効量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重で、かつ多くの場合、約50mg/kg体重未満で、好ましくは当該投与量が約10μg/kg体重~約20mg/kg体重である。勿論、具体的投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内ある。
【0113】
検出用途およびキット
本発明の抗体は検出に有用で、たとえば検体を検出することによって診断情報を提供することができる。
本発明において、使用される検体(サンプル)は細胞、組織検体および生検標本を含む。本発明で用いられる用語「生検」は当業者に既知のすべての種類の生検を含む。そのため、本発明で使用される生検は、たとえば内視鏡方法あるいは器官の穿刺または針刺しによって調製された組織検体を含む。
【0114】
本発明で使用される検体は固定または保存された細胞または組織検体を含む。
また、本発明は、本発明の抗体(またはその断片)を含有するキットを提供するが、本発明の一つの好適な例において、前記のキットはさらに容器、使用説明書、緩衝液などを含む。好適な例において、本発明の抗体は検出プレートに固定されてもよい。
【0115】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.本発明の抗体は典型的なトリプトファン、チロシンの埋め込みが良い構造で、スクリーニングされたヒトVH、VLフレームワーク領域の鋳型構造が安定で、そしてマウスモノクローナル抗体のCDR領域との適応性が良く、軽・重鎖可変領域が好適にマッチし、親和力が高く、構造が安定である。
2.キメラ抗体と比べ、本発明のヒト化抗体は優れた生物活性、特異性を有し、CLDN18.2に相当する親和力を維持しながら、より低い免疫原性およびより高い発現量を有する。
3.本発明のヒト化抗体は顕著な体外生物活性を有し、効率的に体外培養の腫瘍細胞増殖の活性を抑制することができ、活性は対照抗体よりも良い。
4.本発明のヒト化抗体は顕著な体内生物活性を有し、ヒト胃癌細胞などの腫瘍細胞に対して優れた抑制活性を有し、活性は対照抗体よりも良い。
【0116】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
特別に説明しない限り、本発明の実施例で使用された材料または試薬はいずれも市販品である。
【0117】
材料と方法
1.参照抗体
本発明の実験で使用された参照抗体は、配列が特許US8168427における175D10クローンの抗体配列由来のものである。175D10抗体はIMAB362とも呼ばれる。175D10抗体の可変領域の配列は全遺伝子合成を行い、そしてIgG1キメラ抗体定常領域を含有する真核発現ベクターに構築し、発現させて精製した。本発明において、当該製造された参照抗体をRef.ch175と略す。
【0118】
参照抗体Ref.ch175(またはIMAB362)は特異的にCLDN18.2の細胞外ループ1部分を認識し、CLDN18.1と結合せず、主に抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity、CDC)によって腫瘍細胞を殺傷する。
【0119】
実施例1:CLDN18.1またはCLDN18.2安定発現細胞株の構築
本実施例において、安定してヒトCLDN18.1、ヒトCLDN18.2、マウスCLDN18.1、マウスCLDN18.2を発現する細胞株を構築した。方法は以下の通りである。
【0120】
ヒトCLDN18.1(NP_057453.1)、ヒトCLDN18.2(NP_001002026.1)をコードする全長遺伝子断片を全遺伝子合成し、全長断片をXhol+BamHI酵素によって切断してそれぞれpEGFP-N2真核発現ベクター(Clontech社から購入)にクローニングし、それぞれpEGFP-N2-hCLDN18.1およびpEGFP-N2-hCLDN18.2と名付けた。
【0121】
HEK293細胞(中国科学院細胞庫から購入、GNHu43)を4×10個/ウェルで6ウェルプレートに接種し、翌日に、リポフェクション試薬LipoMaxでpEGFP-N2-hCLDN18.1、pEGFP-N2-hCLDN18.2をそれぞれHEK293細胞に形質移入し、形質移入の24h後に1:10の比率で細胞を継代し、細胞が壁に付着すると最終濃度が300μg/mlになるようにG418(Gibcoから購入)を入れてプレッシャースクリーニングを行い、サブクローニングによって安定してヒトCLDN18.1、ヒトCLDN18.2膜タンパク質を発現するHEK293細胞を得たが、それぞれHEK293-hCLDN18.1およびHEK293-hCLDN18.2と名付けた。
【0122】
マウスCLDN18.1(NP_062789.1)、マウスCLDN18.2(NP_001181850.1)をコードする全長遺伝子断片を全遺伝子合成し、KpnI+XbaI酵素によって切断してpcDNA3.1-P2A-EGFP真核発現ベクター(南京genscript社から購入)にクローニングし、それぞれpcDNA3.1-mCLDN18.1およびpcDNA3.1-mCLDN18.1と名付けた。上記と同様の方法によってHEK293細胞に形質移入し、安定してマウスCLDN18.1およびCLDN18.2膜タンパク質を発現する細胞を得たが、それぞれHEK293-mCLDN18.1およびHEK293-mCLDN18.2と名付けた。
【0123】
>NP_057453.1 クローディン-18アイソフォーム1前駆体[ヒト(Homo sapiens)]配列番号25
MSTTTCQVVAFLLSILGLAGCIAATGMDMWSTQDLYDNPVTSVFQYEGLWRSCVRQSSGFTECRPYFTILGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV
【0124】
>NP_001002026.1 クローディン-18アイソフォーム2[ヒト(Homo sapiens)]配列番号26
MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV
【0125】
>NP_062789.1 クローディン-18アイソフォームA1.1前駆体[ハツカネズミ(Mus musculus)]配列番号27
MATTTCQVVGLLLSLLGLAGCIAATGMDMWSTQDLYDNPVTAVFQYEGLWRSCVQQSSGFTECRPYFTILGLPAMLQAVRALMIVGIVLGVIGILVSIFALKCIRIGSMDDSAKAKMTLTSGILFIISGICAIIGVSVFANMLVTNFWMSTANMYSGMGGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLTPDDSNFKAVSYHASGQNVAYRPGGFKASTGFGSNTRNKKIYDGGARTEDDEQSHPTKYDYV
【0126】
>NP_001181850.1 クローディン-18アイソフォームA2.1[ハツカネズミ(Mus musculus)]配列番号28
MSVTACQGLGFVVSLIGFAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGVIGILVSIFALKCIRIGSMDDSAKAKMTLTSGILFIISGICAIIGVSVFANMLVTNFWMSTANMYSGMGGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLTPDDSNFKAVSYHASGQNVAYRPGGFKASTGFGSNTRNKKIYDGGARTEDDEQSHPTKYDYV
【0127】
実施例2:免疫原の調製
ヒトCLDN18.2細胞外ループ1(CLDN18.2 ECL1)とマウスCLDN18.2 ECL1のアミノ酸配列が完全に一致するため、CLDN18.2 ECL1と結合する抗体を得ることが困難である。同時に、腫瘍細胞表面のCLDN18.2分子の配座は正常組織の細胞表面と異なる可能性があることを考慮し、本実施例において、複数の様態のDNAプラスミドを抗原として設計して免疫耐性を突破することで、高親和力で腫瘍細胞を認識する抗体を得た。
【0128】
ヒトCLDN18.2 ECL1およびCLDN18.2の全長アミノ酸をコードするヌクレオチドをそれぞれテタノスパスミンのP2エピトープTT830-844 、P30エピトープTT947-967と直列に連結して真核発現ベクターPTT5(Invitrogen社から購入)にクローニングし、それぞれPTT5-TT-hCLDN18.2、PTT5-TT-hCLDN18.2-ECL1と名付けた。
本発明では、CLDN18.2 ECL1をヒトIgG1 Fc-C末端に融合し、hFc-CLDN18.2-ECL1と名付けた。
【0129】
TT-hCLDN18.2 ヌクレオチド配列 配列番号29
CAGTACATCAAGGCCAACAGCAAGTTCATCGGCATCACCGAGCTGAAGAAGCTGGGTGGTTCCAACGACATATTCAACAACTTCACCGTGAGCTTCTGGCTGCGCGTGCCGAAGGTGAGCGCCAGCCACCTGGAGCAGTACGGTGGCGGTAGCGGAATGGCCGTGACTGCCTGTCAGGGCTTGGGGTTCGTGGTTTCACTGATTGGGATTGCGGGCATCATTGCTGCCACCTGCATGGACCAGTGGAGCACCCAAGACTTGTACAACAACCCCGTAACAGCTGTTTTCAACTACCAGGGGCTGTGGCGCTCCTGTGTCCGAGAGAGCTCTGGCTTCACCGAGTGCCGGGGCTACTTCACCCTGCTGGGGCTGCCAGCCATGCTGCAGGCAGTGCGAGCCCTGATGATCGTAGGCATCGTCCTGGGTGCCATTGGCCTCCTGGTATCCATCTTTGCCCTGAAATGCATCCGCATTGGCAGCATGGAGGACTCTGCCAAAGCCAACATGACACTGACCTCCGGGATCATGTTCATTGTCTCAGGTCTTTGTGCAATTGCTGGAGTGTCTGTGTTTGCCAACATGCTGGTGACTAACTTCTGGATGTCCACAGCTAACATGTACACCGGCATGGGTGGGATGGTGCAGACTGTTCAGACCAGGTACACATTTGGTGCGGCTCTGTTCGTGGGCTGGGTCGCTGGAGGCCTCACACTAATTGGGGGTGTGATGATGTGCATCGCCTGCCGGGGCCTGGCACCAGAAGAAACCAACTACAAAGCCGTTTCTTATCATGCCTCAGGCCACAGTGTTGCCTACAAGCCTGGAGGCTTCAAGGCCAGCACTGGCTTTGGGTCCAACACCAAAAACAAGAAGATATACGATGGAGGTGCCCGCACAGAGGACGAGGTACAATCTTATCCTTCCAAGCACGACTATGTGTAA
【0130】
TT-hCLDN18.2-ECL1ヌクレオチド配列:配列番号30
CAGTACATCAAGGCCAACAGCAAGTTCATCGGCATCACCGAGCTGAAGAAGCTGGGTGGTTCCAACGACATATTCAACAACTTCACCGTGAGCTTCTGGCTGCGCGTGCCGAAGGTGAGCGCCAGCCACCTGGAGCAGTACGGTGGCGGTAGCGGACGCATGGACCAGTGGAGCACCCAAGACTTGTACAACAACCCCGTAACAGCTGTTTTCAACTACCAGGGGCTGTGGCGCTCCTGTGTCCGAGAGAGCTCTGGCTTCACCGAGTGCCGGGGCTACTTCACCCTGCTGGGGCTGCCAGCCATGCTGCAGGCAGTGCGAGCCTAA
【0131】
hFc-CLDN18.2-ECL1 ヌクレオチド配列:配列番号31
GACAAGACCCACACATGCCCACCTTGTCCAGCTCCAGAGCTGCTGGGAGGACCAAGCGTGTTCCTGTTTCCACCCAAGCCCAAGGATACACTGATGATCTCTAGGACCCCCGAGGTGACATGCGTGGTGGTGGACGTGTCCCACGAGGACCCCGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCTAAGACCAAGCCCAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTATCGGGTGGTGTCTGTGCTGACAGTGCTGCATCAGGATTGGCTGAACGGCAAGGAGTATAAGTGCAAGGTGAGCAATAAGGCCCTGCCTGCTCCAATCGAGAAGACCATCTCTAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCTCAGGTGTACACACTGCCTCCATCCCGCGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGAGCCTGACATGTCTGGTGAAGGGCTTCTATCCTTCTGACATCGCTGTGGAGTGGGAGTCCAATGGCCAGCCAGAGAACAATTACAAGACCACACCCCCTGTGCTGGACAGCGATGGCTCTTTCTTTCTGTATTCCAAGCTGACCGTGGATAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGCAACGTGTTTTCCTGTAGCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCATTACACACAGAAGTCTCTGTCCCTGAGCCCTGGCAAGGGATCCGGAGGAGGCTCTGGAGGCTCCGACCAGTGGAGCACCCAGGATCTGTACAACAATCCCGTGACAGCCGTGTTCAACTATCAGGGCCTGTGGAGGTCTTGCGTGCGGGAGTCCAGCGGCTTCACCGAGTGTAGAGGCTACTTTACACTGCTGGGACTGCCTGCTATGCTGCAGGCTGTGCGCTGA
【0132】
実施例3:抗ヒトCLDN18.2ハイブリドーマ細胞株の製造
実験用Balb/cマウスは上海SIPPR-BK実験室から購入、すべての免疫用マウスは4-6週齢の雌で、標準化無疾患で、健康な純血種マウスである。
CLDN18.2は4回膜貫通タンパク質で、高親和力で腫瘍細胞を認識する特異性抗体を得るために、マウス免疫は複数種のプラスミドで交代免疫し、そして安定してヒトCLDN18.2膜タンパク質を発現する細胞でラッシュ免疫した。方法は以下の通りである。
【0133】
1日目および14日目:50μgのヒトCLDN18.2全長遺伝子をコードする真核発現ベクタープラスミドpEGFP-N2-hCLDN18.2を、マウス四頭筋に注射し(i.m)、アジュバントはIn vivo-Jet PEI-Man体内形質移入試薬(Polyplusから購入、203-10G)である。28日目に、50μgの真核発現プラスミドhFc-CLDN18.2-ECL1 DNAをマウス四頭筋に注射し(i.m)、42日目に、50μgの真核発現ベクタープラスミドPTT5-TT-hCLDN18.2をマウス四頭筋に注射し(i.m)、56日目に、50μgの真核発現ベクタープラスミドPTT5-TT-CLDN18.2 ECL1をマウス四頭筋に注射し(i.m)、70日目に、50μgの真核発現ベクタープラスミドPTT5-TT-hCLDN18.2および50μgの真核発現ベクタープラスミドPTT5-TT-CLDN18.2 ECL1をマウス四頭筋に注射した(i.m)。
【0134】
14日後、マウス尾静脈から採血し、細胞に基づくELISA法によって血清抗体力価を測定し、融合の3日前に2×10個のHEK293-hCLDN18.2細胞/匹マウスで腹腔内注射によって抗体力価が最高の2匹のマウスを強化免疫した。融合の当日に、マウスの眼球から採血して脾臓を摘出し、単細胞懸濁液を調製し、SP20細胞と電気融合の手段でハイブリドーマを得てプレートに敷いた。
【表2】
【0135】
実施例4:特異的にヒトCLDN18.2に結合するがヒトCLDN18.1に結合しないハイブリドーマ細胞のスクリーニング
本実施例において、細胞に基づくELISA法によってハイブリドーマのスクリーニングを行って特異的にヒトCLDN18.2に結合するがヒトCLDN18.1に結合しないハイブリドーマ細胞を得た。方法は以下の通りである。
【0136】
HEK293-hCLDN18.1細胞およびHEK293-hCLDN18.2細胞をトリプシンで消化した後、3×10個/mLの細胞密度でそれぞれポリリジン(P4707、Sigma)でコーティングされた96ウェルプレートに200μL/ウェルで接種し、一晩培養した。細胞のコンフルエンスが90%以上に達すると、上清を除去し、10%中性ホルマリン溶液で室温で15 min固定した。PBSで3回洗浄した後、そして5%脱脂牛乳で4℃で一晩ブロッキングした。ハイブリドーマを検出する時、同一のウェルの上清をそれぞれHEK293-hCLDN18.1細胞およびHEK293-hCLDN18.2細胞で80μl/ウェルでコーティングされたプレートに入れ、37℃で1hインキュベートし、PBSTで3回洗浄した後、100μl/ウェルの1:5000で希釈されたヒツジ抗マウスIgG(H+L)-HRPを入れ、37℃で45 minインキュベートし、30 min呈色させ、50μl/ウェルの2M HSOを入れて呈色を停止し、マイクロプレートリーダーによってOD450を読み取った。
【0137】
1万以上のクローンをスクリーニングしたところ、数株のhCLDN18.2特異的抗体を得たが、最適な4株を下記表に示す。
【表3】
【0138】
実施例5:マウスモノクローナル抗体のサブタイプの検出
サブタイプ検出キット(SBA Clonotyping System-HRP kit、southernbiotechから購入、5300-05)でCLDN18.2に特異的に結合するクローン株に対してサブタイプ検出を行った。
【0139】
検出結果は以下の通りである。
【表4】
【0140】
実施例6:抗ヒトCLDN18.2マウス由来モノクローナル抗体可変領域コード配列のクローニングと同定
スクリーニングによって得られたマウスモノクローナル抗体にIgMサブタイプ抗体が存在するため、さらにその活性を評価するために、RACE-PCR法によってマウスモノクローナル抗体の可変領域の配列を得、そしてキメラ抗体を構築した。
【0141】
RNA抽出キットTakaRa MiniBEST Universal RNA Extration Kit(Takara,9767)で実施例4で得られたハイブリドーマの全mRNAを抽出し、SMARTer RACE 5’/3’ Kit(Clontech,634858)でPCRによってマウス由来抗体の可変領域の配列を得たが、結果は以下の通りである。
【0142】
624抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号23):
QVQLQQPGAELVRPGASVKLSCKASGYSFTSYWMNWVKQRPGQGLEWIGMIHPSDSETRLNQKFKDKATLTVDKSSSTAYMQLSSPTSEDSAVYYCARTSYGNSFAYWGQGTLVTVSA
【0143】
624抗体軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号24):
DIVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPFTFGSGTKLEIK
【0144】
782抗体重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号2):
GATGTGCAGCTTCAGGAGTCAGGACCTGACCTGGTGAAACCTTCTCAGTCACTTTCACTCACCTGCACTGTCACTGGCTACTCCATCACCAGTGGTTATAGCTGGCACTGGATCCGGCAGTTTCCAGGAAACAAACTGGAATGGATGGGCTACATACACTACAGTGATAACACGAACTACAGCCCATCTCTCAAAAGTCGAATCTCTATCACTCGAGACACATCCAAGAACCAGTTCTTCCTGCAGTTGAATTCTGTGACTACTGAGGACACAGCCACATATTACTGTGCAAGGATCTACTATGGTAACTCGTTTGTTTACTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCA
【0145】
782抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1):
DVQLQESGPDLVKPSQSLSLTCTVTGYSITSGYSWHWIRQFPGNKLEWMGYIHYSDNTNYSPSLKSRISITRDTSKNQFFLQLNSVTTEDTATYYCARIYYGNSFVYWGQGTLVTVSA
【0146】
782抗体軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号7):
GACATTGTGATGACACAGTCTCCATCCTCCCTGACTGTGACAGCAGGAGAGAAGGTCACTATGAGCTGCAAGTCCAGTCAGAGTCTGTTAAACAGTGGAAATCAAAAGAACTACTTGACCTGGTACCAGCAGAAACCAGGACAGCCTCCTAAACTGTTGATCTACTGGGCATCCACTAGGGAATCTGGGGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGAACAGATTTCACTCTCACCATCAACAGTGTGCAGGCTGAAGACCTGGCAGTTTATTACTGTCAGAATGATTATTTTTATCCGTACACGTTCGGGGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAA
【0147】
782抗体軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号6):
DIVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTINSVQAEDLAVYYCQNDYFYPYTFGGGTKLEIK
【0148】
実施例7:抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体の構築と発現
相同組換え法のプライマー設計原則に従ってプライマーを設計し、実施例6で得られたマウス由来抗体重・軽鎖可変領域の遺伝子断片を増幅させ、それぞれヒト重・軽鎖定常領域の配列に連結し、発現ベクターPTT5(Invitrogen社から購入)に構築した。
商業化プラスミドマキシキットでプラスミド抽出を行い、そしてPEI形質移入法によって293FV懸濁細胞に形質移入し、形質移入7日後、上清を収集し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによってキメラ抗体を得た。
【0149】
実施例8:抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体の特異性分析
それぞれ安定してヒトCLDN18.2を形質移入したHEK293細胞および安定してヒトCLDN18.1を形質移入したHEK293細胞をトリプシンで消化した後、5×10個細胞/100μlでハイブリドーマ上清100μlに入れ、氷の上で1時間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した後、1:400で希釈されたヒツジ抗マウスIgG-PE二次抗体を入れ、氷の上で45 minインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した後、300μlの仕込み緩衝液を入れ、BDフローサイトメトリー管に移し、BD FACS caliburによって分析した。Flowjoソフトによって平均蛍光強度MFI(Median Fluorescence Intensity)を分析した。
【0150】
結果を図2および下記表に示す。
【表5】
【0151】
結果から、ch429、ch623、ch624、ch782はヒトCLDN18.2と特異的に結合し、ヒトCLDN18.1と結合しないことが示された。中では、キメラ抗体ch782のMFIは参照抗体Ref.ch175よりも高い。
【0152】
実施例9:抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体の組み換え細胞との結合活性の検出
HEK293-hCLDN18.1およびHEK293-hCLDN18.2細胞をトリプシンで消化した後、一定の細胞密度でポリリジン(P4707、Sigma)でコーティングされた96ウェルプレートに接種し、一晩培養した。細胞のコンフルエンスが90%以上に達すると、上清を除去し、10%ホルマリン溶液で室温で15 min固定した。PBSで1回洗浄した後、そして5%脱脂牛乳で4℃で一晩ブロッキングして使用に備えた。候補のキメラ抗体および参照抗体Ref.ch175を1μg/mlから3倍希釈で10の勾配に希釈し、100μl/ウェルで細胞でコーティングされた96ウェルプレートに入れ、37℃で1時間インキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄し、1:2000で希釈されたマウス抗ヒトIgG Fc-HRPを入れ、37℃で1時間インキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄し、TMB呈色液で15分呈色させ、2M HSOで停止した。OD450-OD630値を読み取り、GraphPad Prism 8ソフトでフィッティングしてグラフを作成してEC50を算出した。結果は図3を参照し、ch429、ch623、ch624、ch782および参照抗体Ref.ch175はいずれもHEK293-hCLDN18.1細胞と結合せず、HEK293-HCLDN18.2細胞と特異的に結合することが示され、そしてch429およびch782は参照抗体Ref.ch175の相対結合活性に対してそれぞれ257.5%および179.9%であった。結果を下記表に示す。
【表6】
【0153】
実施例10:抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のNUGC4細胞との結合活性の検出
実施例9と同様の方法によってNUGC4細胞(南京科佰生物有限公司から購入)を96ウェルプレートに敷き、候補のキメラ抗体および参照抗体Ref.ch175を100μg/mlから3倍希釈で10の勾配に希釈し、100μl/ウェルで細胞でコーティングされた96ウェルプレートに入れ、37℃で1時間インキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄し、1:2000で希釈されたマウス抗ヒトIgG Fc-HRPを入れ、37℃で1時間インキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄し、TMB呈色液で15分呈色させ、2M HSOで停止した。OD450-OD630値を読み取り、GraphPad Prism 8ソフトでフィッティングしてグラフを作成してEC50を算出した。
【0154】
結果を図4および下記表に示す。
【表7】
【0155】
キメラ抗体ch782およびch429のEC50はそれぞれ0.57μg/mlおよび5.25μg/mlで、そしてch782は高濃度の場合の読み値(OD450=2.3)がch429の読み値(OD450=1.2)よりも高かった。ch623、ch624よび参照抗体Ref.ch175はいずれもEC50を算出することができなかった。
【0156】
これにより、ch782抗体は内因的にヒトCLDN18.2タンパク質を発現するNUGC4細胞との結合活性が最も良く、明らかに参照抗体Ref.ch175よりも強いことが示された。
【0157】
実施例11:抗CLDN18.2ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.2細胞との結合活性の検出
実施例8における方法に従い、キメラ抗体ch429、ch624、ch782、Ref.ch175を濃度10μg/mlから3倍勾配希釈を行い、フローサイトメトリー実験を行った。MFIを縦座標としてGraphPad Prism 8ソフトでフィッティングしてグラフを作成してEC50を算出した。
【0158】
結果を図5および下記表に示す。
【表8】
【0159】
本発明のキメラ抗体ch429、ch782および参照抗体Ref.ch175はいずれもHEK293-hCLDN18.2細胞と結合することができ、EC50はそれぞれ0.52μg/ml、0.81μg/ml、0.85μg/mlであるが、ch624の結合活性は明らかに弱い。
また、高濃度の場合、ch782はHEK293-hCLDN18.2細胞と結合するMFIがRef.ch175よりも高い。
【0160】
実施例12:レポーター遺伝子法による抗CLDN18.2抗体ヒトマウスキメラ抗体のHEK293-hCLDN18.2細胞に対するADCC活性の検出
抗体Fc末端が仲介するADCC効果は抗体の抗腫瘍活性を評価する重要な指標である。ADCCは抗体依存性細胞介在性細胞傷害で、その作用機序は抗体が腫瘍表面の抗原に結合すると、抗体Fc領域が免疫エフェクター細胞受容体と結合し、主にNK細胞におけるFc受容体を標的として認識し、直接腫瘍細胞を溶解させて殺傷する。
【0161】
本実施例では、レポーター遺伝子法によって抗体のADCC生物学活性を検出し、安定してFcγRIIIa受容体を発現する工学的改変されたJurkat細胞をエフェクター細胞とし、Bio-GloTM Luciferase Assay Systemキットでルシフェラーゼの化学発光信号を検出し、NFATシグナル経路の活性化を測定することで、定量的に抗体Fcエフェクター因子の機能を検出した。
【0162】
実施例1で構築されたHEK293-hCLDN18.2細胞を消化した後、2.5×10/mlになるように希釈し、さらに100μl/ウェルで白色で不透明の細胞培養プレートに敷き、37℃で24h静置培養した後、上清を捨て、25μl/ウェルで0.1%BSA含有分析培地を入れた。Jurkat/NFAT-luc+FcγRIIIa細胞を6×10 个/mLに希釈し、96ウェルプレートを取り、各ウェルに25 μlのJurkat/NFAT-luc+FcγRIIIa細胞懸濁液を入れ、さらに各ウェルに25μLの抗体希釈液を最終濃度が6μg/mLになるように入れて同濃度から3倍系列希釈し、計10の希釈勾配にした。細胞プレートを恒温インキュベーターに置き、6 h誘導培養した後、96ウェルプレートを室温条件において置いて少なくとも15 min平衡化させ、連続仕込みピペットを使用し、全ての反応ウェルに75 μL/ウェルでBio-GloTM Luciferase Assay Reagentを入れ(染色液は光を避ける必要がある)、室温条件において5 min反応させ、多機能プレートリーダーにセットしてLuminescence光信号の数値を検出した。蛍光数値および抗体濃度を、GraphPad Prism 8ソフトでフィッティングしてグラフを作成してEC50を算出した。
【0163】
結果を図6および下記表に示す。
【表9】
【0164】
結果から、ch782と参照抗体Ref.ch175を勾配希釈した後、エフェクター標的比E:T=6:1で、37℃で6hインキュベートした後、ch782とRef.ch175はいずれも強いADCC活性を誘導することができることがわかる。
【0165】
実施例13:抗CLDN18.2抗体ch782のヒト化
抗体の免疫原性を低下させるために、抗体の体内への投与によるヒト抗マウス抗体(HAMA)効果を減少し、好適な抗体ch782をヒト化した。具体的に、実施例6におけるmab782抗体可変領域の配列に対してヒト化配列設計を行った。Kabat番号付けシステムに従って重・軽鎖のアミノ酸配列を番号付けし、NCBIIgblast(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)によって配列相同アラインメントを行い、相同性の高いヒト由来抗体の配列をフレームワークとし、マウス由来抗体CDR移植を行い、そしてフレームワーク領域の一部の核心となるアミノ酸を回帰突然変異させた。
【0166】
Blastで782抗体の重鎖およびヒト生殖細胞系列の相同配列を検索した。
【表10】
【0167】
Blastで782抗体の軽鎖およびヒト生殖細胞系列の相同配列を検索した。
【表11】
【0168】
782抗体の重鎖可変領域におけるKabatで定義されたFRおよびCDRの配列は以下の通りである。
【表12】
【0169】
782抗体の軽鎖可変領域におけるKabatで定義されたFRおよびCDRの配列は以下の通りである。
【表13】
【0170】
本発明において、抗体重鎖のヒト化は相同性の高いIGHV4-61を鋳型としてCDR領域の置き換えを行い、重鎖CDR1の移植時、同時にChothiaで定義されたCDR1部位を含み、そしてI48M/V67I/V71Rの3つの部位を回帰突然変異させてhu782H1.1を得た。
【0171】
翻訳後修飾の分析によってS60部位に潜在的なグルコシル化部位が存在し、点突然変異の手段によってS60Aに突然変異させ、hu782H1.2と名付け、そしてその101番目のアミノ酸のVをAに突然変異させることで、その発現量を最適化させ、そしてhu782 H1.2-V101Aと名付けた。
【0172】
本発明において、抗体軽鎖のヒト化はそれぞれVκIコンセンサス配列を鋳型としてCDR領域の置き換えを行い、hu782L1を、IGKV4-1を鋳型としてCDR領域の置き換えを行い、hu782L2を得た。
以上の配列をコドン最適化した後、全遺伝子合成を行い、そして重・軽鎖定常領域を含有する発現ベクターにクローニングして発現・精製を行った。
【0173】
hu782H1.1 (配列番号11)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSITSGYSWHWIRQPPGKGLEWGYIHYSDNTNYSPSLKSRTISDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARIYYGNSFVYWGQGTLVTVSS
【0174】
hu782H1.2 (配列番号12)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSITSGYSWHWIRQPPGKGLEWGYIHYSDNTNYPSLKSRTISDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARIYYGNSFVYWGQGTLVTVSS
【0175】
hu782H1.2-V101A (配列番号13)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSITSGYSWHWIRQPPGKGLEWGYIHYSDNTNYAPSLKSRTISDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARIYYGNSFYWGQGTLVTVSS
【0176】
hu782L1 (配列番号14)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGKAPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNDYFYPYTFGQGTKVEIK
【0177】
hu782L2 (配列番号15)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQNDYFYPYTFGGGTKLEIK
【0178】
実施例14:ヒト化抗体のCLDN18.2に対する特異的結合活性の検出
上記実施例におけるキメラ抗体の結合活性の評価方法を使用し、ヒト化後の抗体のヒトCLDN18.1およびCLDN18.2、マウスCLDN18.1およびCLDN18.2ならびにNUGC4細胞との結合活性を検出した。
【0179】
結果を図7および下記表に示す。
【表14】
【0180】
結果から、ヒト化抗体はいずれもヒトCLDN18.2と特異的に結合することができ、そして結合活性がキメラ抗体ch782に対して明らかな低下が見られなかったことが示された。
また、意外に、4種類のヒト化抗体の腫瘍細胞NUGC4との細胞結合のEC50値は顕著にキメラ抗体ch782よりも良かった。
【0181】
実施例15:ヒト化抗体のADCC活性の検出
本発明における抗体の体内活性の主な機序の一つはADCC機能活性で、ヒトIgG1抗体(hIgG1)は主に抗体のヒンジ領域およびCH2領域を介してFcγRと結合し、ADCC効果を発揮する。ヒト化抗体のADCC活性を増強するために、本実施例において、ヒト化抗体重鎖hu782H1.2のFcにS239D/I332E(DE)突然変異を導入することにより、そのFcγRに対する親和力を増強することで、ADCCを増強する目的を実現させた。発現・精製後、レポーター遺伝子法によって野生型およびDE突然変異型のヒト由来抗体のADCCを評価した。
【表15】
【0182】
方法は以下の通りである。実施例12における具体的な操作工程に従い、標的細胞であるHEK293-hCLDN18.2およびNUGC4細胞をそれぞれ2.5×10/mlになるように希釈し、さらに100μl/ウェルで白色で不透明の細胞培養プレートに敷き、37℃で24h静置培養した後、上清を捨て、25μl/ウェルで0.1%BSA含有分析培地を入れた。Jurkat/NFAT-luc+FcγRIIIa細胞を6×10 个/mLに希釈し、96ウェルプレートを取り、各ウェルに25 μLのJurkat/NFAT-luc+FcγRIIIa細胞懸濁液を入れ、さらに各ウェルに25μLの抗体希釈液を最終濃度が6μg/mLになるように入れて同濃度から3倍系列希釈し、計10の希釈勾配にした。細胞プレートを恒温インキュベーターに置き、6 h誘導培養した後、96ウェルプレートを室温条件において置いて少なくとも15 min平衡化させ、連続仕込みピペットを使用し、全ての反応ウェルに75 μL/ウェルでBio-GloTM Luciferase Assay Reagentを入れ(染色液は光を避ける必要がある)、室温条件において5 min反応させ、多機能プレートリーダーにセットしてLuminescence光信号の数値を検出した。蛍光数値および抗体濃度を、GraphPad Prism 8ソフトでフィッティングしてグラフを作成してEC50を算出した。
【表16】
【0183】
結果から、ヒトCLDN18.2高発現の組み換え細胞に対し、キメラ抗体ch782およびヒト化抗体hu782、hu782-HVはいずれも有効に参照抗体に相当するADCC活性が生じ(EC50はそれぞれ47.64ng/ml、64.03 ng/ml、70.94 ng/ml)、そしてFcプライマーS239D/I332E突然変異のhu782-DEはADCC活性が顕著に向上したことが示された(図8)。
【0184】
同様の結果は内因的にヒトCLDN18.2を発現するNUGC4細胞においても観察され、そして本発明で得られた候補の抗体ch782およびhu782のNUGC4細胞に対するADCC活性が参照抗体Ref.ch175よりも良かった。
【0185】
そして、安定してhCLDN18.2を形質移入したNUGC4細胞を標的細胞としてADCC活性の検出を行った結果、hu782-DE、hu782-HV-DEはADCC活性が顕著に対照抗体Ref.ch175よりも良く、EC50値がそれぞれ6.87ng/mlおよび11.48ng/mlであったことがわかる(図8C)。
【0186】
実施例16:ヒト化抗体のCDC活性の検出
CDCは補体依存性細胞傷害で、その作用機序は補体と結合した抗原抗体混合物が最終的に細胞膜に穴を開け、細胞の浸透圧を変化させ、最後に細胞分解につながる。本実施例において、HEK293-hCLDN18.2細胞を標的細胞とし、幼児ウサギ補体血清で補体を提供し、CCK-8細胞増殖-毒性検出キットによって抗体CDC効果を検出した。
【0187】
実施例1におけるHEK293-hCLDN18.2細胞を標的細胞とし、消化後、2.0×10個/mLになるように希釈し、100μL/ウェルの体積で96ウェル光透過黒色培養プレートに敷き、細胞が完全に壁に付着するまで4h程度静置培養した。生長培地を全部吸い取り、50μL/ウェルで分析培地を入れた。反応ウェル内に50μL/ウェルで希釈後の抗体を入れ、さらに50μLの1:15で希釈された幼児ウサギ補体を入れ、各ウェルの最終体積が150μLになるようにし、各ウェルのサンプルの体積が全体積の1/3で、初期濃度が目的標的の3倍で、目的濃度は6μg/mLからであった。細胞プレートを恒温インキュベーターに入れ、12h誘導培養した後、培地を吸い取り、100μL/ウェルで新鮮な分析培地を入れ、室温条件においてCCK-8溶液 を10μL/ウェルで入れ、5%COインキュベーターに置き、37℃で光を避けて4 h反応させた。多機能プレートリーダーにセットして波長450 nmでOD値を検出した。GraphPad Prism 8ソフトでフィッティングしてグラフを作成してEC50値を算出した。
【0188】
結果は下記表に示す。
【表17】
【0189】
結果から、本発明におけるch782、hu782、hu782HVはいずれもHEK293-hCLDN18.2細胞に対して参照抗体Ref.ch175に相当するCDC効果を誘導することができたことが示された(EC50はそれぞれ30.9 ng/ml、49.46 ng/ml、47.58 ng/ml、40.89 ng/ml)。
【0190】
実施例17 ヒト化抗体のHEK293-hCLDN18.2細胞に対する増殖抑制作用の検出
対数生長期のHEK293-hCLDN18.2細胞を取った。標的細胞を消化し、計数後、細胞を1.0×10個/mLになるように希釈し、100μL/ウェルの体積で96ウェル光透過黒色培養プレートに敷き、細胞が完全に壁に付着するまで4h程度静置培養した。反応ウェル内に100μL/ウェルで希釈後の抗体を入れ、各ウェルの最終体積が200μLで、96ウェルプレートを5%COインキュベーターに入れ、37℃で96h誘導培養した後、培地を吸い取り、100μL/ウェルで新鮮な分析培地を入れ、室温条件においてCCK-8溶液 を10μL/ウェルで入れ、5%COインキュベーターに置き、37℃で光を避けて4 h反応させた。多機能プレートリーダーにセットして波長450 nmでOD値を検出した。結果は、細胞増殖抑制率=1-(OD450抗体/OD450ブランク)で計算した。
【0191】
結果から、本発明の抗体hu782は低濃度(1μg/ml)で標的細胞に対する増殖抑制効果が高濃度(30μg/ml)の参照抗体Ref.ch175よりも良く(18.3 %vs.7.3%)、そして抗体濃度の増加につれ、増殖抑制効果が強くなるような投与量依存傾向を示し、30μg/mlの濃度では、ch782、hu782、hu782-HVの細胞増殖抑制率がそれぞれ67.8%、76%、63.2%に達し、顕著に参照抗体Ref.ch175よりもよかったことが示された。
【0192】
実施例18:ヒト化抗体のhCLDN18.2タンパク質との結合部位の解析
本発明における抗体のhCLDN18.2タンパク質と結合するが、hCLDN18.1タンパク質と結合しない重要なアミノ酸部位を探求するために、本実施例において、点突然変異の手段によって実施例1で構築されたpEFGP-N2- hCLDN18.2プラスミドにおいてhCLDN18.2 ECL1とhCLDN18.1 ECL1のアミノ酸相違部位およびその周囲のアミノ酸をアラニン突然変異させ、ここで、A42をhCLDN18.1 ECL1における対立アミノ酸Sに突然変異させた(Q29A、S31A、 N37A、 A42S、 N45A 、Q47A 、G48A、S52A、 E56A、 G65A、 L69A 、G71A)。突然変異できたプラスミドおよび野生型プラスミドを実施例1における方法によってそれぞれ293Fv細胞に形質移入し、48時間後、細胞を取ってフローサイトメトリーの検出を行った。
【0193】
hu782、Ref.ch175およびアイソタイプ対照(IsotypecontrolhIgG1)を10μg/mlになるように希釈し、それぞれ以上の形質移入細胞と氷の上で1時間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した後、1:400で希釈されたヒツジ抗マウスIgG-PE二次抗体を入れ、氷の上で45 minインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した後、300μlの仕込み緩衝液を入れ、BDフローサイトメトリー管に移し、BD FACS caliburによって分析した。Flowjoソフトによって平均蛍光強度MFI(Median Fluorescence Intensity)の結果を分析し、結果の判定では、突然変異後の形質移入細胞のMFIが野生型に対して50%以上低下した場合、当該部位を抗体の結合に影響する重要なアミノ酸部位とした。
【0194】
結果から、図11に示すように、本発明のA42S、N45A、E56A突然変異は参照抗体Ref.ch175の結合に影響が大きかったが、A42S突然変異はhu782の結合に影響がなく、N45A突然変異はhu782の結合に影響が小さく、E56A突然変異ははhu782の結合に影響が大きかったことが示された。同時に、本発明では、意外に、hCLDN18.2 ECL1とhCLDN18.1 ECL1の同様のアミノ酸部位G48Aが突然変異すると、参照抗体Ref.ch175およびhu782はいずれも結合できないことが見出された。
【0195】
実施例19:ヒト化抗体の体内活性の評価
本実施例において、BALB/cヌードマウスへの腫瘍細胞の皮下移植によってCDX動物モデルを構築し、ヒト化抗体の体内薬効を評価した。
【0196】
実施例1の方法によって構築されたNUGC4-hCLDN18.2安定形質移入細胞株を使用し、拡大培養を行った。4~6週齢の雌SPF級BALB/cヌードマウスを選び、3-4日の適応性飼育後、腫瘍接種を準備した。対数生長期の組み換えNUGC4-hCLDN18.2細胞を、消化後、無血清1640培地で2回洗浄した後、2.5×10/mlになるように希釈し、マウスの右側の脇下の皮下に0.2ml、計5×10個細胞/匹で接種した。接種1週間後、腫瘍が70~100 mmに生長すると、6匹/群でランダムに群分けした。ブランクモデル群はIgG1アイソタイプ対照である。実験群では、10mg/kgの投与量で投与し、投与頻度は週に2回で、交代に腹腔注射と静脈注射で投与し、毎回の投与前に腫瘍体積およびマウス体重のデータを記録した。
【0197】
腫瘍体積は、V(mm)=(Wx L)/2で計算され、Wは腫瘍の中線付近の短径で、Lは腫瘍の中線付近の長径である。
腫瘍体積が2000 mm超になるか、体重の減少が20%超になるか、あるいは重要な生理機能への干渉または腫瘍性潰瘍・壊死が観察されると、頚椎脱臼法でマウスを殺処分した。
【0198】
腫瘍抑制率(TGI)の計算式は以下の通りである。
【数1】
Vt-V0=(投与群のt日目の平均腫瘍体積)-(同群の群分けの当日の平均腫瘍体積)
Vt-Vc0=(投与群のt日目の平均腫瘍体積)-(同群の群分けの当日の平均腫瘍体積)
【0199】
NUGC4-hCLDN18.2マウス皮下移植腫瘍モデルにおいて、本発明のヒト化抗体およびその突然変異体の抗腫瘍生長活性が観察され、いずれもある程度の薬効が示された。終了時、各群の腫瘍体積は下記表に示す。
【表18】
【0200】
ヒト化抗体hu782およびその突然変異体hu782-HV、hu782-DE群では、腫瘍抑制率がいずれも顕著にRef.ch175群よりも高く、特にhu782およびそのADCC増強突然変異抗体hu782-DE群では、腫瘍抑制率がそれぞれ62.88%および65.05%に達した。また、hu782群における6匹のマウスのうち、1匹のマウスに腫瘍が完全に消退したのが観察され、hu782-DE群における6匹のマウスのうち、2匹のマウスに腫瘍が完全に消退したのが観察されたが、Ref.ch175群およびhu782-HV群のいずれも、当該現象が観察されなかった。
【0201】
上記結果から、本発明の抗体(特にヒト化抗体)は体内薬効が顕著に参照抗体Ref.ch175よりも良いことが示された。
【0202】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B
図12
【配列表】
2024544961000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒトCLDN18.2抗体の重鎖可変領域であって、以下の3つの相補性決定領域CDR:
(1)アミノ酸配列が配列番号3で示される、相補性決定領域CDR1;
(2)アミノ酸配列が配列番号4または16で示される、相補性決定領域CDR2;および
(3)アミノ酸配列が配列番号5または17で示される、相補性決定領域CDR3
を含むことを特徴とする、前記重鎖可変領域。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体の重鎖可変領域を有することを特徴とする、抗ヒトCLDN18.2抗体重鎖。
【請求項3】
抗ヒトCLDN18.2抗体の軽鎖可変領域であって、以下の3つの相補性決定領域CDR’:
(1)アミノ酸配列が配列番号8で示される、相補性決定領域CDR1’;
(2)アミノ酸配列’が配列番号9で示される、相補性決定領域CDR2’;および
(3)アミノ酸配列’が配列番号10で示される、相補性決定領域CDR3’
を含むことを特徴とする、前記軽鎖可変領域。
【請求項4】
請求項3に記載の抗体の軽鎖可変領域を有することを特徴とする、抗ヒトCLDN18.2抗体軽鎖。
【請求項5】
抗ヒトCLDN18.2抗体であって、
(1)請求項1に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)請求項3に記載の軽鎖可変領域
を有するか、または、請求項2に記載の重鎖、および/また請求項4に記載の軽鎖を有することを特徴とする、前記抗体。
【請求項6】
前記抗体は、配列番号1、11、12、または13で示される重鎖可変領域;および/または配列番号6、14または15で示される軽鎖可変領域を有することを特徴とする、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
組み換えタンパク質であって、
(i)請求項5に記載の抗体、ならびに
(ii)発現および/または精製を補助する任意のタグ配列
を有することを特徴とする、前記タンパク質。
【請求項8】
抗体製剤であって、
(a)請求項5に記載の抗ヒトCLDN18.2抗体、ならびに
(b)緩衝剤、無菌水、任意の界面活性剤を含むビヒクル
を含むことを特徴とする、前記抗体製剤。
【請求項9】
CAR構築物であって、前記CAR構築物の抗原結合領域のscFv断片は、CLDN18.2に特異的に結合する結合領域であり、かつ前記scFvは、請求項1に記載の重鎖可変領域および請求項3に記載の軽鎖可変領域を有することを特徴とする、前記CAR構築物。
【請求項10】
外来の請求項9に記載のCAR構築物を発現することを特徴とする、組み換え免疫細胞。
【請求項11】
抗体薬物複合体であって、
(a)請求項5に記載の抗体を含む抗体部分と、
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、前記抗体部分と複合する複合部分と
を含有することを特徴とする、前記抗体薬物複合体。
【請求項12】
活性成分の使用であって、前記活性成分は、請求項5に記載の抗体であり、前記活性成分は、
(a)検出試薬またはキットの製造、
(b)CLDN18.2関連疾患を予防および/または治療する薬物または製剤の製造、ならびに/あるいは
(c)癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物または製剤の製造
のために用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項13】
薬物組成物であって、
(i)請求項5に記載の抗体である活性成分と、
(ii)薬学的に許容される担体と
を含有することを特徴とする、前記組成物。
【請求項14】
請求項5に記載の抗体をコードすることを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項16】
遺伝子操作された宿主細胞であって、前記宿主細胞は、請求項15に記載のベクターを含むことを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項17】
体外でサンプルにおけるCLDN18.2タンパク質を検出する方法であって、以下の工程:
(1)体外において、前記サンプルを請求項5に記載の抗体と接触させること;
(2)抗原-抗体複合体が形成されたかを検出すること、ここで、複合体が形成されたというのはサンプルにCLDN18.2タンパク質が存在することを意味する
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項18】
基板(支持プレート)およびテストストリップを含む検出プレートであって、前記テストストリップが請求項5に記載の抗体を含有することを特徴とする、前記検出プレート。
【請求項19】
キットであって、
(1)請求項5に記載の抗体を含有する第一の容器、および/または
(2)請求項5に記載の抗体に対する二次抗体を含有する第二の容器
を含むことを特徴とする、前記キット。
【請求項20】
CLDN18.2関連疾患を予防および/または治療する方法に用いるための組成物であって、請求項5に記載の抗体、前記抗体の抗体-薬物複合体、または前記抗体を発現するCAR-T細胞、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする、前記組成物。
【国際調査報告】