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特表2024-544967高温コンポジット及び高温コンポジットを調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高温コンポジット及び高温コンポジットを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/83 20060101AFI20241128BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20241128BHJP
   C04B 35/524 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C04B35/83
C01B32/05
C04B35/524
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527821
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022049962
(87)【国際公開番号】W WO2023086674
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21306580.8
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17/530,970
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・バーソッティ
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・ミンニチ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ジー・ディピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】マリー・キャルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ロデリック・リーバー
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB05
4G146AD36
4G146BA13
4G146BC03
4G146BC32A
4G146BC32B
4G146BC33A
4G146BC33B
(57)【要約】
本発明は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットである、高温コンポジットを作製する方法であって、以下:a.少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とを含む樹脂から前駆体部品を作製する工程と;b.前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品にする工程と;c.液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と; d.注入された部品を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程とを含み、場合により、工程c.からd.までを1回又は複数回、繰り返す、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットである、高温コンポジットを作製する方法であって、以下:
a. 少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とを含む樹脂から前駆体部品を作製する工程と、
b. 前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品にする工程と、
c. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
d. 注入された部品を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と
を含み、場合により、工程c.からd.までを1回又は複数回繰り返す、方法。
【請求項2】
PAEKコポリマーが、2つの繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PAEKコポリマーが、50:50~78:22、好ましくは55:45~75:25のT:I比を有する、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
PEKKが、約55:45~約65:35のT:I比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
PEKKが、約65:35~約75:25のT:I比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
熱分解の間、チャンバ内の温度を、約1000℃以上のピーク温度に上昇させ、
チャンバ内の前記温度を、前記熱分解の間、1℃/時~約20℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、前記熱分解を、1つ又は複数の温度において一定期間、維持する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度を、450℃~600℃の間で10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、450℃~600℃の間の1つ又は複数の温度(450℃と600℃を含む)において一定期間、維持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度を、400℃未満及び/又は650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
液状の第2の樹脂が、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前駆体部品が、ポリ(アリールエーテルケトン)及び少なくとも1種の強化材料を含む樹脂を溶融加工する工程によって作製される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
溶融加工が、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、引き抜き成形、フィラメントワインディング及び融解(fused)フィラメント製造印刷のうちの1つ又は複数を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)の前駆体部品が、以下:
a1)少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化用添加剤とを含む樹脂を連続繊維テープ又は布に含浸させて、充填PAEKテープ若しくは布を作製するか、又は連続繊維若しくは布を、PAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含むPAEK繊維と共織りして、充填された共織PAEK繊維若しくは布を作製する工程、及び
a2)充填PAEKテープ若しくは布、又は共織PAEK繊維若しくは布を、以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数によって加工し、前駆体部品を作製する工程
によって作製される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)の前駆体部品が、以下:
a1)整列させた強化材料と、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むPAEKコポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーを含む樹脂とを加工して、整列させた強化材料PAEK組成物を作製して、整列させた強化材料及び含浸されたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを生成する工程、
a2)ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング若しくはニードルパンチ、又はZ-軸強化の他の方法と、その後の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション、in situコンソリデーションにより、整列させた強化材料及び含浸されたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを加工して、前駆体物体を作製する工程
によって作製される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
強化材料が、炭素系添加剤、チョップド繊維、無機添加剤若しくはそれらの混合物;長繊維、連続繊維若しくはそれらの混合物を含む繊維材料;又はそれらの混合物のなかから選択される、1種又は複数の強化用添加剤を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
強化材料が、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク、バッキーボール及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である炭素系添加剤を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
強化材料が、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維、ポリマー繊維及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である、チョップド繊維、長繊維又は連続繊維を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
強化材料が、IV族、V族若しくはVI族の炭化物、ケイ化物、ホウ化物若しくは窒化物、及び/又はセラミックウィスカーのうちの1種又は複数である無機添加剤を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前駆体部品が、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートである分散剤を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
強化材料が、チョップド炭素繊維又はチョップドガラス繊維である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
強化材料が、長炭素繊維若しくは連続炭素繊維、又は長ガラス繊維若しくは連続ガラス繊維である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
強化材料が、チョップド繊維と、長繊維又は連続繊維との混合物である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)の前駆体部品が、以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数により、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むPAEKコポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とから作製される、テープ若しくは布、又は共織PAEK繊維若しくは布を加工する工程によって作製される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットに関する。本発明はまた、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットは、超高温特性が要求される、極超音速、固体/液体ロケット推進及び他の防衛/航空宇宙用途等の領域に有用となり得る。工業的用途としては、金属及びガラスの加工、並びに集光型太陽光発電を挙げることができる。
【0003】
カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットを含めた高温コンポジット材料は、伝統的に、ピッチ、又はフェノール樹脂(Hexion Durite SC1008等)若しくはエポキシ等の熱硬化性樹脂を利用して作製されてきた。これらの熱硬化性コンポジットを利用する前駆体部品は、熱硬化性プリプレグを押し圧するために多大な手作業を必要とする「ハンドレイアップ」によって作製される。この人手による労力はまた、このような労力の時間及び費用に加え、人的エラー及び前駆体部品における品質の低下をもたらす。熱可塑性コンポジット材料は、自動テープ配置及び3D印刷を含めた、自動化法によって加工することができるという利点を有する。熱可塑性テープは、冷蔵輸送及び保管を通常、必要としない点で、熱硬化性プリプレグよりも更なる利点を有する。
【0004】
熱分解工程(熱処理)は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットの生産に使用され得る。熱分解は、コンポジット中(ポリマーマトリックス中等)の揮発物及び/又は非炭素有機元素を除いて、炭素元素を保持するために行われ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 10,669,659
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、熱分解工程は、時として数百時間かかり、黒鉛化のために追加の日数を伴い得る。次に、このプロセスを数回、繰り返し、部品の完成には長いリードタイムをもたらす。更なる再注入及び熱分解サイクルの各々は、労働集約的であり、多大な時間を要する。更に、各サイクルにおいて、不具合又は欠陥が、許容されない最終物体をもたらし得る可能性がある。したがって、完全に密な部品を達成するための必要なサイクル数を低減することが望ましい。チャー収率が一層高いことにより、このプロセスを短縮することが可能となり、なぜなら、部品は、最初の熱分解サイクルの後、完全な固体に一層近く、これによって、必要なサイクル数が減少するからである。通常、フェノール樹脂ベースの溶液だけが、50~70%のチャー収率をもたらすことができる。多数の他の(PAEKではない)熱可塑性溶液は、65%未満のチャー収率をもたらす。
【0007】
とりわけ、熱分解工程の間に起こる回避すべき欠陥は、熱分解される部品の寸法変化、特に、部品の膨張及び/又は部品内部に現れるひび割れである。
【0008】
選択されるポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーを利用する、本明細書に記載されている本発明は、予想外なことに、上記の問題の少なくとも一部を克服する。
【0009】
PAEKポリマーは、高い融点、極めて高い熱特性、並外れた化学耐性及び難燃性、並びに高いモジュラス及び強度を有する高性能半結晶性ポリマーである。本発明の実施形態に従うことによって、熱可塑性樹脂を使用して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットを作製することが可能である。熱可塑性樹脂は、自動化方法による前駆体部品の作製を可能にし、これによって、時間及び費用が削減されると同時に、品質が改善し、チャー収率70%~80%、最大で85%、最大で90%及び更には最大で95%以上等の予想外な程に高いチャー収率を有する。熱分解サイクルは、PAEK材料が単一分解点を示すので高速化することが可能であり、これによって、多くの場合、熱硬化性樹脂を用いた場合に観察される複数の温度における、長い保持サイクルの必要性が軽減する。驚くほどの高いチャー収率はまた、熱分解工程/注入工程を他の方法よりも少なくすることが可能になり、これによって、生産時間の日数、及び週数でさえ削減される。ある特定の実施形態では、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットは、約50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、140時間、150時間、160時間、170時間、180時間、190時間、200時間、又は指定値の間の任意の範囲未満の全処理時間で作製され得る。
【0010】
本出願人はまた、とりわけ、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーの選択のおかげで、熱分解される部品の高いチャー収率及び低い寸法変化を伴うPAEKポリマーの高い機械性能という利点を併せ持つ、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット前駆体を利用することが可能であることを、驚くべきことに発見した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットである、高温コンポジットを作製するための方法であって、以下:
a. 少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とを含む樹脂から前駆体部品を作製する工程であり、工程と、
b. 前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品にする工程と、
c. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
d. 注入された部品を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と
を含み、場合により、工程c.からd.までを1回又は複数回繰り返す、方法を対象とする。
【0012】
ある特定の実施形態では、PAEKコポリマーは、2つの繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなる。ある特定の実施形態では、PAEKコポリマーは、50:50~78:22、好ましくは55:45~75:25のT:I比を有する、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)である。ある特定の実施形態では、PEKKは、約55:45~約65:35のT:I比を有する。ある特定の実施形態では、PEKKは、約65:35~約75:25のT:I比を有する。
【0013】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃以上のピーク温度に上昇させる。
【0014】
ある特定の実施形態では、チャンバ内の温度は、前記熱分解の間、1℃/時~約20℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、前記熱分解は、1つ又は複数の温度において一定期間、維持する。
【0015】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃以上のピーク温度に上昇させ、チャンバ内の温度は、前記熱分解の間、1℃/時~約20℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、前記熱分解は、1つ又は複数の温度において一定期間、維持する。
【0016】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃~600℃の間で10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させ、450℃~600℃の間の1つ又は複数の温度(450℃と600℃を含む)において一定期間、場合により維持する。
【0017】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満及び/又は650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0018】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数を含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、前駆体部品は、ポリ(アリールエーテルケトン)及び少なくとも1種の強化材料を含む樹脂を溶融加工する工程によって作製される。ある特定の実施形態では、溶融加工は、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、引き抜き成形、フィラメントワインディング及び融解フィラメント製造印刷のうちの1つ又は複数を含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、工程(a)の前駆体部品は、以下:
a1)少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化用添加剤とを含む樹脂を、連続繊維テープ又は布に含浸させて、充填PAEKテープ若しくは布を作製するか、又は連続繊維若しくは布を、PAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含むPAEK繊維と共織りして、充填された共織PAEK繊維若しくは布を作製する工程、及び
a2)充填PAEKテープ若しくは布、又は共織PAEK繊維又は布を、以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数によって加工し、前駆体部品を作製する工程
によって作製される。
【0021】
ある特定の実施形態では、工程(a)の前駆体部品は、以下:
a1)整列させた強化材料と、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むPAEKコポリマーであって、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーを含む樹脂とを加工して、整列させた強化材料PAEK組成物を作製して、整列させた強化材料及び含浸されたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを生成する工程、
a2)ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング若しくはニードルパンチ、又はZ-軸強化の他の方法と、その後の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション、in situコンソリデーションにより、整列させた強化材料及び含浸されたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを加工して、前駆体物体を作製する工程
によって作製される。
【0022】
ある特定の実施形態では、強化材料は、炭素系添加剤、チョップド繊維、無機添加剤若しくはそれらの混合物;長繊維、連続繊維若しくはそれらの混合物を含む繊維材料;又はそれらの混合物のなかから選択される、1種又は複数の強化用添加剤を含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、強化材料は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク、バッキーボール及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である、炭素系添加剤を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、強化材料は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維、ポリマー繊維及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である、チョップド繊維、長繊維又は連続繊維を含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、強化材料は、チョップド炭素繊維又はチョップドガラス繊維である。
【0026】
ある特定の実施形態では、強化材料は、長炭素繊維若しくは連続炭素繊維、又は長ガラス繊維若しくは連続ガラス繊維である。
【0027】
ある特定の実施形態では、強化材料は、IV族、V族若しくはVI族の炭化物、ケイ化物、ホウ化物又は窒化物、及び/或いはセラミックウィスカーのうちの1種又は複数である、無機添加剤を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、前駆体部品は、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートである分散剤を含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、強化材料は、チョップド繊維と、長繊維又は連続繊維との混合物である。
【0030】
ある特定の実施形態では、工程(a)の前駆体部品が、以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数により、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むPAEKコポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とから作製される、テープ若しくは布、又は共織PAEK繊維若しくは布を加工する工程によって作製される。
【0031】
本発明はまた、本発明の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の実施形態は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットを調製する方法に関する。本開示の実施形態はまた、開示されている方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットに関する。
【0033】
本明細書において使用する場合、用語「約」は、明記した値の±10%を意味する。単なる例として、少なくとも「約50パーセント」は、少なくとも45パーセント~少なくとも55パーセント(及びこれを含む)を含むことができる。
【0034】
語「含むこと(comprising)」は、そのオープンエンドな意味と一致して使用され、すなわち、所与の生成物又はプロセスは、明示的に記載されているもの以外の追加の特徴又は要素も、場合により有することができることを意味する。実施形態が、言い回し「含むこと」と共に記載されている場合でも、「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」に関して記載されている他の類似の実施形態もやはり、企図されており、本開示の範囲内にあると理解される。
【0035】
本明細書において使用する場合、用語「整列した」は、コンポジットの断面の光学顕微鏡からの画像を使用して測定した場合に、物体の75%超が、同じ方向に配向(±5°)したその主軸の少なくとも1つを有することを意味する。
【0036】
本明細書において使用する場合、用語「チャー収率」とは、熱分解後に残留する質量によって測定される残留炭素含有率を指し、本明細書における実施例に記載されている通りに決定することができる。
【0037】
本明細書において使用する場合、コンポジットの文脈では、用語「%中実」は、空孔又は空隙を含まない理論的に完全に密な部品と比べた、熱分解された部品の密度のパーセント(%)を意味する。完全に密な部品の密度は、マトリックス材料(炭素又はセラミック)及び繊維材料(ガラス又は炭素)の混合物の公式によって計算することができる。
D=d1a+d2(1-a)
前記式において、
D=完全に密な部品の密度
d1=繊維材料(ガラス又は炭素)の密度
a=繊維材料(ガラス又は炭素)の質量分率
d2=マトリックス材料(炭素又はセラミック)の密度。
熱分解された部品の密度は、その質量をその体積によって除算することによって実験により測定することができる。
【0038】
本明細書において使用する場合、用語「コンポジット」は、少なくとも2種の異なる及び/又は個別の成分を含む材料を意味する。例えば、及び非限定的に、カーボン-カーボンコンポジットは、炭素繊維を含む炭素マトリックス(例えば、グラファイト系)を含むことができる。カーボンセラミックマトリックスコンポジットは、炭素を含むセラミックマトリックス(例えば、SiC)を含むことができる。カーボンシリカコンポジットは、ガラス/シリカ繊維を含む炭素(通常、グラファイト系)マトリックスを含むことができる。
【0039】
本明細書において使用する場合、用語「高温」とは、高温コンポジットという表現で使用される場合、約1000℃以上の温度を意味する、及びこの温度を指し、この温度において、コンポジットが有害な分解なしに使用され得る。
【0040】
本明細書において使用する場合、用語「熱分解すること」とは、熱の適用により、材料に化学的変化をもたらすことを意味し、材料の一部の、実質的にすべての、又はすべての非炭素元素又は非無機元素の揮発除去を引き起こす。本発明では、前駆体の化学変化は、一般に、少なくとも250℃の温度、とりわけ少なくとも400℃の温度で起こる。
【0041】
本明細書において使用する場合、用語「注入」(又は「注入すること」)は、マトリックスに液状樹脂を浸透させることを意味し、空隙又は空孔を満たすことができる。
【0042】
本明細書において使用する場合、用語「チョップド」とは、連続的ではなく、かつ約20mm未満、好ましくは約15mm未満、好ましくは約10mm未満及び最も好ましくは約5mm未満の長さを有する繊維を指す。
【0043】
本明細書において使用する場合、その頭字語によって「PAEK」と一般に称される、用語「ポリアリールエーテルケトン」とは、以下の式:
(-Ar-X-)及び(-Ar1-Y-)
(式中、
- Ar及びAr1はそれぞれ、二価の芳香族ラジカルを意味し、
- Ar及びAr1は、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、3,3'の位置で二価の1,1'-ビフェニレン、3,4'の位置で二価の1,1'-ビフェニル、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン及び2,6-ナフチレンから好ましくは選択されてもよく、
- Xは、電子求引基を意味し、それは、カルボニル基及びスルホニル基から好ましくは選択されてもよく、
- Yは、酸素原子、硫黄原子、又は-(CH2)-及びイソプロピリデン等のアルキレン基から選択される基を意味する)
を有する繰り返し単位を含む。これらの単位X及びYでは、X基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%及びより特には少なくとも80%は、カルボニル基であり、Y基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%及びより特には少なくとも80%は、酸素原子を表す。
【0044】
好ましい実施形態によれば、X基の100%は、カルボニル基を表すことができ、Y基の100%が、酸素原子を表すことができる。
【0045】
PAEKコポリマー
本発明において使用されるPAEKは、コポリマーであり、これは、異なる化学構造の少なくとも2種の繰り返し単位を有することを意味する。繰り返し単位の1つは、コポリマーを構成する繰り返し単位の合計モル数に対して、50mol%~78mol%の量で存在する。実際に、本発明者らは、2種の異なる繰り返し単位がPAEK構造中に存在することは、熱分解の間の、PAEKの寸法変化を最小限にすることに関与することを認めた。
【0046】
一部の実施形態では、PAEKコポリマーは、異なる化学構造の2つの繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなる。本明細書において使用する場合、用語「繰り返し単位から本質的になる」は、繰り返し単位が、ポリマー中、95%~99.9%のモル比に相当することを意味する。更に、用語「繰り返し単位からなる」は、繰り返し単位が、ポリマー中、少なくとも99.9%、理想的には100%のモル比に相当することを意味する。
【0047】
一部の実施形態では、コポリマー構造中に主に存在する繰り返し単位は、コポリマーを構成する繰り返し単位の合計モル数に対して、55mol%~75mol%に相当する。
【0048】
有利には、PAEKコポリマーは、以下:
- PEKKとしても知られているポリエーテルケトンケトンコポリマーであって、式:-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位から本質的になる、又はこれからなる、ポリエーテルケトンケトンコポリマー;
- PEEKとしても知られているポリエーテルエーテルケトンコポリマーであって、式:-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位から本質的になる、又はこれからなる、ポリエーテルエーテルケトンコポリマー;
- PEKとしても知られているポリエーテルケトンコポリマーであって、式:-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位から本質的になる、又はこれからなる、ポリエーテルケトンコポリマー;
- PEEKKとしても知られているポリエーテルエーテルケトンケトンコポリマーであって、式:-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位から本質的になる、又はこれからなる、ポリエーテルエーテルケトンケトンコポリマー;
- PEEEKとしても知られているポリエーテルエーテルエーテルケトンコポリマーであって、式:-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位から本質的になる、又はこれからなる、ポリエーテルエーテルエーテルケトンコポリマー
- PEDEKとしても知られているポリエーテルジフェニルエーテルケトンコポリマーであって、式:-Ph-O-Ph-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位から本質的になる、又はこれからなる、ポリエーテルジフェニルエーテルケトンコポリマー
- 及びそれらの混合物;及び
- 上述の繰り返し単位のうちの少なくとも2つを含むコポリマーから選択することができ、
Phはフェニレン基を表し、-C(O)-はカルボニル基を表し、フェニレンの各々は、可能性として、独立して、オルト(1-2)、メタ(1-3)又はパラ-(1-4)タイプのものであり、優先的には、メタ又はパラタイプのものである。
【0049】
特定の実施形態では、PAEKは、テレフタル酸繰り返し単位及びイソフタル酸繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなるPEKKであることができ、テレフタル酸繰り返し単位は、式(「T単位」):
【化1】
を有しており、イソフタル酸繰り返し単位は、式(「I単位」):
【化2】
【0050】
を有する。
【0051】
「T単位」はまた、-A-C(=O)-B-C(=O)-と記載されてもよく、「I単位」はまた、-A-C(=O)-D-C(=O)-と記載されてもよく、ここでAは、p,p'-Ph-O-Ph-基であり、Phはフェニレンラジカルであり、Bはp-フェニレンであり、Dはm-フェニレンである。
【0052】
本発明によれば、PAEKがPEKKである場合、ポリエーテルケトンケトンにおける式I:式II(T:I)の異性体比は、有利には、50:50~78:22の範囲にある。異性体比は、特定の一連の特性を実現するために所望され得る場合、例えば、ポリエーテルケトンケトンを作製するために使用される異なるモノマーの相対量を変えることによって、容易に変えることができる。これらのT:I異性体比は、熱分解された部品のチャー収率の最大化と前駆体部品の寸法変形の最小化との両方を可能にする。
【0053】
好ましい実施形態では、ポリエーテルケトンケトンコポリマーは、55:45~75:25のT:I異性体比を有することができる。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約65:35、とりわけ約60:40のT:I異性体比を有することができる。一部の他の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約65:35~約75:25、とりわけ約70:30のT:I異性体比を有することができる。
【0054】
好適なポリエーテルケトンケトンは、Arkema社によって供給されるKEPSTAN(登録商標)という商標名で販売されている。
【0055】
特定の実施形態では、PAEKは、以下:
式:
【化3】
の繰り返し単位及び繰り返し単位:
【化4】
から本質的になる、又はこれらからなることさえあるポリマーとすることができる。
【0056】
ある特定の実施形態では、PAEKコポリマーは、55:45~75:25の単位(III)対単位(IV)のモル比を有することができる。
【0057】
ある特定の実施形態では、PAEKコポリマーは、55:45~75:25の単位(IV)対単位(III)のモル比を有することができる。
【0058】
特定の実施形態では、PAEKは、以下:
式:
【化5】
の繰り返し単位、及び式:
【化6】
【0059】
の繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなるポリマーとすることができる。
【0060】
ある特定の実施形態では、PAEKコポリマーは、55:45~75:25の単位(III)対単位(V)のモル比を有することができる。
【0061】
ある特定の実施形態では、PAEKコポリマーは、55:45~75:25の単位(V)対単位(III)のモル比を有することができる。
【0062】
強化材料
本発明の強化材料は、添加剤、繊維材料又はそれらの混合物であってもよい。
【0063】
ある特定の実施形態では、強化材料は、溶融加工の後に、前駆体部品の樹脂の組成物全体の質量に対して、約0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%又は指定値の間の任意の範囲の量で存在することができる。
【0064】
強化材料が強化用添加剤である場合、本発明の場合、強化材料は個別のものであることを意味する。強化材料は、長繊維、連続繊維、又は繊維材料とみなされる他の材料をとりわけ包含しない。繊維のなかで、強化用添加剤は、長さ20mm超を有する繊維、又はある実施形態では、長さ15mm超、又は10mm超又は5mm超を有する繊維をとりわけ包含しない。前駆体部品を作製するために強化用添加剤を使用する利点は、強化用添加剤は、熱分解された部品のチャー含有率を向上することが可能であり、ポリアリールエーテルケトンからしか作製されていない同等な部品と比べて、その機械特性を改善する点である。同時に、PAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む前駆体部品は、長繊維、連続繊維、又は繊維材料とみなされる他の材料を含むPAEKから作製された前駆体部品よりも加工するのが一層容易である。
【0065】
ある特定の実施形態では、強化材料は強化用添加剤である。強化材料は、樹脂の組成物全体の約0.1質量%~約70質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、樹脂の組成物全体の約1質量%~約60質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、強化材料は、溶融加工後に、前駆体部品の樹脂の組成物全体の約5質量%~約50質量%の量で存在することができる。
【0066】
好ましい実施形態では、強化用添加剤は、溶融加工後に、前駆体部品の樹脂の組成物全体の質量に対して、20%~45%、とりわけ25%~40%の間の量で存在することができる。
【0067】
ある特定の有利な実施形態では、強化用添加剤は、炭素系添加剤、チョップド繊維、分散剤及び無機添加剤又はそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク及びバッキーボール、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加物は、溶融加工からのせん断によって整列され得る。
【0069】
ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。添加剤の長さは、溶融コンパウンディング前に、光学顕微鏡によって測定することができる。添加剤の直径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0070】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、チョップド繊維とすることができる。ある特定の実施形態では、チョップド繊維は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維及びポリマー繊維、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数を含む。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタン、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。
【0071】
ある特定の実施形態では、チョップド繊維はチョップド炭素繊維である。1種又は複数の炭素繊維は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。添加剤の長さは、溶融コンパウンディング前に、光学顕微鏡によって測定することができる。添加剤の直径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0072】
好ましい一実施形態は、50:50~78:22のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、10~45%又は15~40%又は20~35%の搭載レベルのチョップド炭素繊維を対象とする。
【0073】
より好ましい実施形態は、50:50~78:22のT:I比、とりわけ約60:40又は約70:30のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、20%~45%、とりわけ25%~40%の間の搭載レベルのチョップド炭素繊維を対象とする。
【0074】
ある特定の実施形態では、チョップド繊維はチョップドガラス繊維である。1種又は複数のガラス繊維は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップドガラス繊維は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップドガラス繊維は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、チョップドガラス繊維は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。添加剤の長さは、溶融コンパウンディング前に、光学顕微鏡によって測定することができる。添加剤の直径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0075】
好ましい一実施形態は、50:50~78:22のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、10~45%又は15~40%又は20~35%の搭載レベルのチョップドガラス繊維を対象とする。
【0076】
より好ましい実施形態は、50:50~78:22のT:I比、とりわけ約60:40又は約70:30のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、20%~45%、とりわけ25%~40%の間の搭載レベルのチョップドガラス繊維を対象とする。
【0077】
ある特定の実施形態では、無機添加剤は、IV族、V族又はVI族の炭化物、ケイ化物(silicid)、ホウ化物及び窒化物のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、粉末形態にあることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、約0.01μm~500μm、約0.1μm~250μm、約1μm~100μm又は約2μm~50μmとすることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、250μm、500μm又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0078】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、分散剤を含むことができる。分散剤とは、添加剤/粒子の分離を改善する、及び/又は凝集若しくは沈殿を防止する任意の部分を意味する。ある特定の実施形態では、分散剤は、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートとすることができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm~500nm、約2nm~250nm又は3nm~100nmの平均粒子サイズを有することができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm、2nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、250nm、500nm又は指定値の間の任意の範囲の平均粒子サイズを有することができる。粒子サイズは、溶融コンパウンディング前の分散剤の走査型電子顕微鏡によって決定することができる。
【0079】
繊維材料とみなされる強化材料に関すると、いくつかの繊維、一方向性ロービング又は連続フィラメントマット、布、フエルト、又はストリップ、ラップ、編み紐、房若しくは小片の形態にあってもよい不織布を挙げることができる。繊維材料は、様々な形態、及び1次元、2次元、又は3次元のいずれかの寸法を有することができる。繊維材料は、1種若しくは複数の長繊維又は連続繊維の集合体を一般に含む。繊維が連続である場合、その集合体は布を形成する。
【0080】
一方向形態は、線状長繊維に相当する。繊維は、不連続であってもよく、又は連続であってもよい。繊維は、無作為に整列されていてもよく、又は連続フィラメントの形態で互いに平行に整列されていてもよい。繊維は、繊維の長さと直径との間の比である、そのアスペクト比によって定義される。繊維材料の繊維は、長繊維又は連続繊維である。これらの繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には、少なくとも3000及びより有利には少なくとも5000、更により有利には少なくとも6000、更により有利には少なくとも7500及び最も有利には少なくとも10 000のアスペクト比を一般に有する。
【0081】
2次元形態は、不織繊維マット若しくは織繊維マット、又は繊維の強化物若しくは束に相当し、これらは、やはり、編まれていてもよい。2次元形態が、ある特定の厚さを有し、したがって、原理的に、第3の寸法を有する場合でさえも、本発明によれば、2次元とみなされる。
【0082】
3次元形態は、例えば、不織繊維マット若しくは強化物、又は繊維の積層された束若しくは折り畳まれた束、又はそれらの混合物、第3の寸法での2次元形態の集合体に相当する。
【0083】
ある特定の実施形態では、長繊維又は連続繊維は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維及びポリマー繊維、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数であってもよい。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタン、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。
【0084】
好ましくは、繊維材料は無機繊維から選択される。より好ましくは、繊維性基材は、ガラス繊維又は炭素繊維から選択される。
【0085】
繊維材料の繊維は、0.005μm~100μmの間、好ましくは1μm~50μmの間、より好ましくは5μm~30μmの間、有利には10μm~25μmの間の直径を有することができる。
【0086】
繊維材料の繊維は、5mm超の繊維長さを有する。一部の実施形態では、繊維材料の繊維は、10mm超、又は15mm超、又は20mm超の繊維長さを有する。大部分の場合、繊維材料の繊維は、20mm超の繊維長さを有する。
【0087】
ある特定の実施形態では、繊維材料は、樹脂の組成物全体の約40質量%~約80質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、繊維材料は、樹脂の組成物全体の約45質量%~約75質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、繊維材料は、前駆体部品の樹脂の組成物全体の約50質量%~約70質量%の量で存在することができる。
【0088】
好ましい一実施形態は、前駆体部品の樹脂の組成物全体の質量によって測定すると、40~80%又は45~75%又は50~70%の量で存在する長ガラス繊維又は連続ガラス繊維を対象とし、樹脂が、50:50~78:22のT:I比、とりわけ約60:40又は約70:30のT:I比を有するPEKKである。
【0089】
1つの他の好ましい実施形態は、前駆体部品の樹脂の組成物全体の質量によって測定すると、40~80%又は45~75%又は50~70%の量で存在する長ガラス繊維又は連続ガラス繊維を対象とし、樹脂が、50:50~78:22のT:I比、とりわけ約60:40又は約70:30のT:I比を有するPEKKである。
【0090】
高温コンポジットを製造する方法
本開示は、カーボンカーボン-コンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製する方法を対象とする。
【0091】
ある特定の実施形態では、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製する方法は、以下:
a. 少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであって、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とを含む樹脂から前駆体部品を作製する工程と、
b. 前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品を作製する工程と、
c. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
d. 注入された部品を熱分解して、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と、
e. 場合により、工程(c)から(d)までを1回又は複数回、繰り返す工程と
を含む。
【0092】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記の方法によって作製される、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【0093】
溶融加工を含む方法
ある特定の実施形態では、本方法は、溶融加工によって前駆体部品を作製する工程を含むことができる。
【0094】
ある特定の実施形態では、溶融加工は、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、引き抜き成形、フィラメントワインディング及び融解フィラメント製造印刷のうちの1つ又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、溶融加工の後に、熱成形又はロッドベンディング等の溶融形成が場合により続くことができる。
【0095】
強化材料は、添加剤として及び/又は繊維材料として、ポリエーテルケトンケトンに添加されてもよい。
【0096】
本発明によれば、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度まで、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させる。
【0097】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程b.の間の熱分解条件は、熱分解工程d.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程b.の間の熱分解条件は、熱分解工程d.の間の熱分解条件とは異なる。
【0098】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0100】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0101】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0102】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0103】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0104】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間、120℃~1000℃の間、又は200℃~1000℃の間、又は400℃~1000℃の間の温度において温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0105】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0106】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数を含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる。ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、フェノール樹脂又はそれらの組合せを含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる。
【0107】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程c.及び熱分解工程d.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程c.及び熱分解工程d.を少なくとも2回、3回、4回、5回又はそれより多い回数、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0108】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、実施例に準拠して測定すると、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程c.及び熱分解工程d.を繰り返す工程を含む。
【0109】
ある特定の実施形態では、本方法は、工程c.からd.までを1回又は複数回、繰り返す工程を含む。
【0110】
PAEKテープ若しくは布又は共織PAEK繊維若しくは布の加工
ある特定の実施形態では、工程(a)の前駆体部品が、以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数により、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むPAEKコポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化材料とから作製される、テープ若しくは布、又は共織繊維若しくは布を加工する工程によって作製される。
【0111】
これらの実施形態では、強化材料は、一般に、繊維材料である。
【0112】
本発明によれば、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度まで、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させる。
【0113】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程b.の間の熱分解条件は、熱分解工程d.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程b.の間の熱分解条件は、熱分解工程d.の間の熱分解条件とは異なる。
【0114】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0115】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0116】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0117】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0118】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0119】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0120】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間、120℃~1000℃の間、又は200℃~1000℃の間、又は400℃~1000℃の間の温度において温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0121】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0122】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数を含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる。ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、フェノール樹脂又はそれらの組合せを含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる。
【0123】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程c.及び熱分解工程d.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程c.及び熱分解工程d.を少なくとも2回、3回、4回、5回又はそれより多い回数、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0124】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、実施例に準拠して測定すると、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程c.及び熱分解工程d.を繰り返す工程を含む。
【0125】
ある特定の実施形態では、本方法は、工程c.からd.までを1回又は複数回、繰り返す工程を含む。
【0126】
整列させた材料を含む方法
ある特定の実施形態では、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製するための方法は、以下:
a1)整列させた強化材料と、少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むPAEKコポリマーであって、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーを含む樹脂とを加工して、整列させた強化材料PAEK組成物を作製し、整列させた強化材料及び含浸されたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを生成する工程と、
a2)ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング若しくはニードルパンチ、又はZ-軸強化の他の方法と、その後の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション、in situコンソリデーションにより、整列させた強化材料及び含浸されたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを加工して、前駆体物体を作製する工程と、
c. 物体を熱分解して、熱分解された物体を作製する工程と、
d. 液状の第2の樹脂を熱分解された物体に注入して、注入された物体を作製する工程と、
e. 注入された物体を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と、
f. 場合により、工程c.からd.までを1回又は複数回、繰り返す工程と
を含む。
【0127】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【0128】
ある特定の実施形態では、強化材料は、1~2次元フレーク材料又は整列された1~2次元プレートレット材料である。強化材料は、とりわけ、グラファイト、グラフェン又はウィスカーであり得る。
【0129】
ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.001mm~0.1mm、約0.005mm~0.09mm又は約0.01mm~0.08mmの厚さを有することができる。ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.001mm、0.005mm、0.01mm、0.02mm、0.03mm、0.04mm、0.05mm、0.06mm、0.07mm、0.08mm、0.09mm、0.1mm及び指定値の間の任意の範囲の厚さを有することができる。測定は、溶融コンパウンディング前の光学電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡のイメージングから得ることができる。
【0130】
ある特定の実施形態では、加工は、整列した強化材料及び含浸したPAEKを含む布を生成することができる。ある特定の実施形態では、加工は、整列した強化材料及び含浸したPAEKを含むプリプレグを生成することができる。ある特定の実施形態では、加工は、整列した強化材料及び含浸したPAEKを含むテープを作製することができる。
【0131】
ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、繊維が破壊されて、その繊維を流体流に供して繊維を整列させる、又は繊維を電磁場に供して繊維を整列させるまで、一方向テープを伸長することによって作製され得る。ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、繊維が破壊される(PAEK樹脂の含浸前又は含浸後のいずれか)まで、一方向テープを伸長することによって作製され得る。好ましい実施形態では、繊維は、US 10,669,659に記載されている整列された繊維のマットを作製するため、多孔質ベルト上の流体流によって整列される。
【0132】
ある特定の実施形態では、整列させた強化材料は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維、ポリマー繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン及び炭素又はセラミックウィスカーのうちの1種又は複数であり得る。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタンのうちの1種又は複数とすることができる。
【0133】
ある特定の実施形態では、整列させた強化材料は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの長さを有することができる。ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。
【0134】
ある特定の実施形態では、in situコンソリデーションは、圧力及び/又は熱を適用するための圧延を含むことができる。
【0135】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度まで、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件とは異なる。
【0136】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0137】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0138】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0139】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0140】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0141】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0142】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間の温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0143】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0144】
ある特定の実施形態では、前駆体物体は、加工工程a.の後であるが、熱分解工程c.の前に溶融形成され得る。
【0145】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ピッチ、フェノール樹脂又はそれらの組合せが好ましい。
【0146】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも2回、3回、4回又は5回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0147】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程d.及び熱分解工程e.を繰り返す工程を含む。
【0148】
ある特定の実施形態では、工程c.からd.は、1回又は複数回、繰り返される。
【0149】
1種の強化用添加剤の存在下における含浸工程又は共織工程を含む方法
ある特定の実施形態では、本開示は、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する方法を対象とする。
【0150】
ある特定の実施形態では、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製するための方法は、以下:
a1) 少なくとも2種の異なる繰り返し単位を含むポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)コポリマーであり、繰り返し単位のうちの一つが、コポリマーを構成する繰り返し単位の総量に対して50~78mol%の量で存在する、PAEKコポリマーと、少なくとも1種の強化用添加剤とを含む樹脂を連続繊維テープ又は布に含浸させて、充填PEKKテープ又は布を作製する工程と、
a2)ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング若しくはニードルパンチ又はZ-軸強化の他の方法と、その後の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション又はin situコンソリデーションにより、充填されたPEKKテープ若しくは布又は共織PEKK/繊維材料を加工して、前駆体部品を作製する工程と、
c. 前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品を作製する工程と、
d. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
e. 注入された部品を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と
を含む。
【0151】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【0152】
ある特定の実施形態では、本方法は、PAEK及び少なくとも1種の添加剤を含む樹脂を連続繊維テープ又は布に含浸させて、充填PAEKテープを作製する工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、連続繊維又は布を、PAEK及び少なくとも1種の添加剤を含むPAEK繊維と共織し、充填PAEKテープ又は布を作製する工程を含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、連続繊維又は布は、炭素繊維とすることができる。
【0154】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、炭素系添加剤、チョップド繊維、分散剤及び無機添加剤のうちの1種又は複数とすることができる。
【0155】
ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約0.01質量%~約30質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約0.1質量%~約25質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約1質量%~約20質量%の量で存在することができる。
【0156】
ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の質量に対して、約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%,30%又は指定値の間の任意の範囲の量で存在することができる。
【0157】
ある特定の実施形態では、添加剤は、炭素系添加剤とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク及びバッキーボールのうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、溶融加工からのせん断によって整列され得る。
【0158】
ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。
【0159】
ある特定の実施形態では、添加剤は、チョップド繊維とすることができる。ある特定の実施形態では、チョップド繊維は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維及びポリマー繊維のうちの1種又は複数を含む。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタンのうちの1種又は複数とすることができる。
【0160】
ある特定の実施形態では、チョップド繊維はチョップド炭素繊維である。1種又は複数の炭素繊維は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。
【0161】
ある特定の実施形態では、添加剤は、無機添加剤とすることができる。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、IV族、V族又はVI族の炭化物、ケイ化物、ホウ化物及び窒化物のうちの1種又は複数とすることができる。炭化物及びケイ化物が好ましく、炭化ケイ素が最も好ましい。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、粉末形態にあることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、約0.01μm~500μm、約0.1μm~250μm、約1μm~100μm又は約2μm~50μmとすることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、250μm、500μm又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0162】
ある特定の実施形態では、添加剤は、分散剤を含むことができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートとすることができ、オルガノシリケート及びオルガノチタネートが好ましく、オルガノシリケートが最も好ましい。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm~500nm、約2nm~250nm又は3nm~100nmの平均細孔サイズを有することができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm、2nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、250nm、500nm又は指定値の間の任意の範囲の平均細孔サイズを有することができる。
【0163】
ある特定の実施形態では、in situコンソリデーションは、圧力及び/又は熱を適用するための圧延を含むことができる。
【0164】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度まで、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件とは異なる。
【0165】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0166】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0167】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0168】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で、1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0169】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0170】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0171】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間の温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0172】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0173】
ある特定の実施形態では、前駆体物体は、加工工程b.の後であるが、熱分解工程c.の前に溶融形成され得る。
【0174】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数とすることができる。
【0175】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも2回、3回、4回若しくは5回、又はそれより多い回数、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0176】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程d.及び熱分解工程e.を繰り返す工程を含む。
【実施例
【0177】
本明細書に記載されている方法及び生成物をこれより、以下の実施例を参照しながら更に詳述する。これらの実施例は、例示目的で提示されているに過ぎず、本明細書に記載されている実施形態は、これらの実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではない。むしろ、実施形態は、本明細書において提示されている教示の結果として明白になる、ありとあらゆる変形形態を包含すると解釈されるべきである。
【0178】
(実施例1)
PEKK試料のT/I比の影響
様々なT/I比(60/40;80/20)及び30%のチョップド繊維(ガラス又は炭素の一方)を有するPEKK、並びにニートPEKK又はPEEK試料(「表1」)を、射出形成によって製造し、不活性環境下、マッフル炉中の石英るつぼで熱分解し、表2に記載されている熱分解サイクルを施した。それらの最初の寸法は、すべて、ほぼ5.1cm x 1.3cm x 0.3cmであった。PEEKは、式(III)の繰り返し単位から作製されたホモポリマーとした。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
試料A及びBを秤量し、それらの厚さ(t)を熱分解の前後に測定し、チャー収率を計算し、寸法変化(「表3」)を決定した。
【0182】
チャー収率は、熱分解前後の各試料の質量から計算した(「式1」):
【0183】
【数1】
【0184】
(式中、wb及びwaは、それぞれ、熱分解前及びその後の試料の質量である)。
【0185】
パラメータΔtは、熱分解の後の厚さと熱分解前の25℃における厚さとの間の差異を、熱分解前の25℃における厚さにより除算することによって計算した(百分率として表す)。
【0186】
【表3】
【0187】
ニートPEKK(試料C)は、ニートPEEK(試料D)と比べ、熱分解時にかなり一層高いチャー収率を示した。したがって、PEEKの繰り返し単位に比べて、PEKKの繰り返し単位が好ましい。
【0188】
60:40のT:I比を有しており、かつチョップド繊維を充填したPEKK(試料A)は、80:20のT:I比を有しており、かつチョップド繊維を充填したPEKK(試料B)に比べた場合、チャー収率のわずかな改善、及び厚さの寸法変化によって測定すると、試料の膨張のほとんど3×の低下を示した。これは、同様のチャー収率を得ると同時に、膨張を最小化する、PAEKコポリマー繰り返し単位比に最適があることを示している。
【国際調査報告】