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特表2024-544987高温コンポジット及び高温コンポジットを調製するための方法
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  • 特表-高温コンポジット及び高温コンポジットを調製するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高温コンポジット及び高温コンポジットを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/83 20060101AFI20241128BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20241128BHJP
   C04B 35/52 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C04B35/83
C08J5/04 CEZ
C04B35/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528555
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2022000667
(87)【国際公開番号】W WO2023084306
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21306580.8
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17/530,970
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・バーソッティ
(72)【発明者】
【氏名】ロデリック・リーバー
(72)【発明者】
【氏名】マリー・キャルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ジー・ディピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・ミンニチ
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB05
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB33
4F072AD42
4F072AG03
4F072AG22
4F072AK02
4F072AK11
4F072AK14
4F072AL02
(57)【要約】
カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製するための方法であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂を溶融加工して、前駆体部品を作製する工程と、前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品を作製する工程と、液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、注入された部品を熱分解する工程とを含み、チャンバ内の温度を、前記熱分解の間、1℃/時~約20℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、前記熱分解を、1つ又は複数の温度において、一定期間、維持する、方法。他の方法は、整列させた強化用添加剤及びPAEKを含む樹脂を加工して、整列させた強化用添加剤PAEK、整列させた1~2次元フレーク材料又は整列させた1~2次元プレートレット材料を作製し、整列させた強化用添加剤及び浸漬させたPAEKを含む、布、プリプレグ又はテープを生成する工程を含む。他の方法は、連続繊維テープ若しくは布に、PAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂を含浸させる工程、又は連続繊維若しくは布をPAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含むPAEK繊維と共織りする工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットである高温コンポジットを作製するための方法であって、以下:
a. ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂から前駆体部品を作製する工程と、
b. チャンバ中で前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品にする工程と、
c. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
d. 注入された部品をチャンバ中で熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と、
e. 場合により、工程c.からd.を1回又は複数回、繰り返す工程と
を含み、
チャンバ内の温度を、前記熱分解の間、1℃/時~約20℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、前記熱分解を、1つ又は複数の温度において、一定期間、維持する、方法。
【請求項2】
PAEKが、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトン-ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(PEEK-PEDEK)、ポリエーテルケトン(PEK)及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)のうちの1種又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PAEKが、ポリエーテルケトンケトンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリエーテルケトンケトンが、50:50~78:22及び好ましくは55:45~75:25のT:I異性体比を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
熱分解の間、チャンバ内の温度を、約1000℃以上のピーク温度に上昇させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度を、450℃~600℃の間、10℃/時未満の速度で、1回又は複数回、上昇させ、場合により、450℃~600℃(450℃と600℃を含む)の間の1つ又は複数の温度において、一定期間、維持する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度を、400℃未満及び/又は650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
液状の第2の樹脂が、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前駆体部品が、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂を溶融加工する工程によって作製される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶融加工が、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、引き抜き成形、フィラメントワインディング及び融解(fused)フィラメント製造印刷のうちの1つ又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の前駆体部品が、以下:
a1)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)と、少なくとも1種の強化用添加剤とを含む樹脂を連続繊維テープ又は布に含浸させて、充填PAEKテープ若しくは布を作製するか、又は連続繊維若しくは布を、PAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含むPAEK繊維と共織りして、充填された共織PAEK繊維若しくは布を作製する工程、及び
a2)充填PAEKテープ若しくは布、又は共織PAEK繊維若しくは布を、以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数によって加工し、前駆体部品を作製する工程
によって作製される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)の前駆体部品が、以下:
a1)整列させた強化用添加剤及びポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含む樹脂を加工して、整列させた強化用添加剤PAEK、整列させた1~2次元フレーク材料又は整列させた1~2次元プレートレット材料を作製し、整列させた強化用添加剤及び含浸させたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを作製する工程、並びに
a2)以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数により、PAEKテープ、プリプレグ又は布を加工して、前駆体部品を作製する工程
によって作製される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
強化用添加剤が、炭素系添加剤、チョップド繊維、無機添加剤若しくはそれらの混合物の1種又は複数を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
強化用添加剤が、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク、バッキーボール及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である炭素系添加剤を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
強化用添加剤が、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維、ポリマー繊維及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である、チョップド繊維を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
強化用添加剤が、チョップド炭素繊維を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
強化用添加剤が、チョップドガラス繊維を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
強化用添加剤が、IV族、V族若しくはVI族の炭化物、ケイ化物、ホウ化物若しくは窒化物、及び/又はセラミックウィスカーのうちの1種又は複数である、無機添加剤を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前駆体部品が、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートである分散剤を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
強化用添加剤が、溶融加工からのせん断によって整列される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
連続繊維又は布が、炭素繊維又はガラス繊維を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
整列させた強化用添加剤が、整列させた強化用添加剤内の繊維が破壊されて、整列させた強化用添加剤内の繊維を流体流に供して繊維を整列させる、又は整列させた強化用添加剤内の繊維を電磁場に供して繊維を整列させるまで、一方向テープを伸長することによって作製される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットに関する。本発明はまた、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットは、超高温特性が要求される、極超音速、固体/液体ロケット推進及び他の防衛/航空宇宙用途等の領域に有用となり得る。工業的用途としては、金属及びガラスの加工、並びに集光型太陽光発電を挙げることができる。
【0003】
カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットを含めた高温コンポジット材料は、伝統的に、ピッチ、又はフェノール樹脂(Hexion Durite SC1008等)若しくはエポキシ等の熱硬化性樹脂を利用して作製されてきた。これらの熱硬化性コンポジットを利用する前駆体部品は、熱硬化性プリプレグを押し圧するために多大な手作業を必要とする「ハンドレイアップ」によって作製される。この人手による労力はまた、このような労力の時間及び費用に加え、人的エラー及び前駆体部品における品質の低下をもたらす。熱可塑性コンポジット材料は、自動テープ配置及び3D印刷を含めた、自動化法によって加工することができるという利点を有する。熱可塑性テープは、冷蔵輸送及び保管を通常、必要としない点で、熱硬化性プリプレグよりも更なる利点を有する。
【0004】
熱分解工程(熱処理)は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットの生産に使用され得る。熱分解は、コンポジット中(ポリマーマトリックス中等)の揮発物及び/又は非炭素有機元素を除いて、炭素元素を保持するために行われ得る。
【0005】
しかし、熱分解工程は、時として数百時間かかり、黒鉛化のために追加の日数を伴い得る。次に、このプロセスを数回、繰り返し、部品の完成には長いリードタイムをもたらす。更なる再注入及び熱分解サイクルの各々は、労働集約的であり、多大な時間を要する。更に、各サイクルにおいて、不具合又は欠陥が、許容されない最終物体をもたらし得る可能性がある。したがって、完全に密な部品を達成するための必要なサイクル数を低減することが望ましい。チャー収率が一層高いことにより、このプロセスを短縮することが可能となり、なぜなら、部品は、最初の熱分解サイクルの後、完全な固体に一層近く、これによって、必要なサイクル数が減少するからである。通常、フェノール樹脂ベースの溶液だけが、50~70%のチャー収率をもたらすことができる。多数の他の(PAEKではない)熱可塑性溶液は、65%未満のチャー収率をもたらす。
【0006】
とりわけ、熱分解工程の間に起こる回避すべき欠陥は、熱分解される部品の寸法変化、特に、部品の膨張及び/又は部品内部に現れるひび割れである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 10,669,659
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及びとりわけポリエーテルケトンケトン(PEKK)を利用する、本明細書に記載されている本発明は、予想外なことに、これらの問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
PEKKを含めたPAEKは、高い融点、極めて高い熱特性、並外れた化学耐性及び難燃性、並びに高いモジュラス及び強度を有する高性能半結晶性ポリマーである。本発明の実施形態に従うことによって、熱可塑性樹脂を使用して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットを作製することが可能である。熱可塑性樹脂は、自動化方法による前駆体部品の作製を可能にし、これによって、時間及び費用が削減されると同時に、品質が改善し、チャー収率70%~80%、最大で85%、最大で90%及び更には最大で95%以上等の予想外な程に高いチャー収率を有する。熱分解サイクルは、PAEK材料が単一分解点を示すので高速化することが可能であり、これによって、多くの場合、熱硬化性樹脂を用いた場合に観察される複数の温度における、長い保持サイクルの必要性が軽減する。驚くほどの高いチャー収率はまた、熱分解工程/注入工程を他の方法よりも少なくすることが可能になり、これによって、生産時間の日数、及び週数でさえ削減される。ある特定の実施形態では、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットは、約50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、140時間、150時間、160時間、170時間、180時間、190時間、200時間、又は指定値の間の任意の範囲未満の全処理時間で作製され得る。
【0010】
本出願人はまた、本発明の実施形態によれば、容易な加工性、高いチャー収率及び高い機械性能という利点を併せ持つカーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットの前駆体を利用することが可能であることを驚くべきことに発見した。
【0011】
本出願人はまた、一部の実施形態では、熱分解される部品の高いチャー収率及び低い寸法変化を伴うPAEKポリマーの高い機械性能という利点を併せ持つ、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットの前駆体を利用することが可能であることを、驚くべきことに発見した。
【0012】
本発明は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットである高温コンポジットを作製するための方法であって、a.ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂から前駆体部品を作製する工程と、b.前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品にする工程と、c.液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、d.注入された部品を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と、e.場合により工程c.からd.を1回又は複数回、繰り返す工程とを含む、方法を対象とする。前記熱分解の間、チャンバ内の温度は、1℃/時~約20℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させ、場合により、1つ又は複数の温度において、一定期間、維持する。
【0013】
本発明の一実施形態では、PAEKは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトン-ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(PEEK-PEDEK)、ポリエーテルケトン(PEK)及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、好ましくはPEKKのうちの1種又は複数を含む。
【0014】
一実施形態では、PAEKは、ポリエーテルケトンケトンを含む。
【0015】
一実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、50:50~78:22及び好ましくは55:45~75:25のT:I異性体比を有する。
【0016】
本発明の一実施形態では、チャンバ内の温度は、熱分解の間、約1000℃以上のピーク温度まで上昇させる。
【0017】
本発明の一実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数、好ましくは、ピッチ及び/又はフェノール樹脂を含む。
【0018】
本発明の一実施形態では、前駆体部品は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂を溶融加工することによって作製される。溶融加工は、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、引き抜き成形、フィラメントワインディング及び融解フィラメント製造印刷のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0019】
本発明の実施形態では、強化用添加剤は、炭素系添加剤、チョップド繊維、無機添加剤又はそれらの混合物のうちの1種又は複数を含むことができる。強化用添加剤は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク、バッキーボール及びそれらの混合物のうちの1種又は複数である、炭素系添加剤を含むことができる。強化用添加剤は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維、ポリマー繊維及びそれらの混合物のうちの1種又は複数であるチョップド繊維を含むことができる。強化用添加剤は、とりわけ、チョップド炭素繊維又はチョップドガラス繊維であってもよい。強化用添加剤は、IV族、V族若しくはVI族の炭化物、ケイ化物、ホウ化物若しくは窒化物、及び/又はセラミックウィスカーのうちの1種又は複数である、無機添加剤を含むことができる。前駆体部品は、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートである分散剤を含むことができる。
【0020】
本発明はまた、実施形態であって、これによって、工程a.の前駆体部品が、a1)連続繊維テープ又は布に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂を含浸させて、充填PAEKテープ若しくは布を作製する工程、又は連続繊維若しくは布を、PAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含むPAEK繊維と共織りして、充填共織PAEK繊維又は布を作製する工程、及びa2)以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数により、充填PAEKテープ若しくは布又は共織PAEK繊維若しくは布を加工して、前駆体部品を作製する工程によって作製される、実施形態を対象とする。連続繊維テープ又は布は、炭素繊維又はガラス繊維を含むことができる。
【0021】
別の実施形態では、工程a.の前駆体部品は、a1)整列させた強化用添加剤及びポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含む樹脂を加工して、整列させた強化用添加剤PAEK、整列させた1~2次元フレーク材料又は整列させた1~2次元プレートレット材料を作製し、整列させた強化用添加剤及び含浸させたPAEKを含む布、プリプレグ又はテープを作製する工程、並びにa2)以下の方法:ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング、ニードルパンチ及びZ-軸強化の他の方法と、その後の1つ又は複数の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション及びin situコンソリデーションのうちの1つ又は複数により、PAEKテープ、プリプレグ又は布を加工して、前駆体部品を作製する工程によって作製される。強化用添加剤は、溶融加工からのせん断によって整列させることができる。整列させた強化用添加剤は、整列させた強化用添加剤内の繊維が破壊されて、その整列させた強化用添加剤内の繊維を流体流に供して繊維を整列させる、又は整列させた強化用添加剤内の繊維を電磁場に供して繊維を整列させるまで、一方向テープを伸長することによって作製され得る。
【0022】
本発明は、本明細書において記載及び特許請求されている方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットに更に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】チャー収率84%を有する、最初の熱分解後の40%チョップド炭素繊維を含むPEKK試料を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の実施形態は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジット等の高温コンポジットを調製する方法に関する。本開示の実施形態はまた、開示されている方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット及びカーボンシリカコンポジットに関する。
【0025】
本明細書において使用する場合、用語「約」は、明記した値の±10%を意味する。単なる例として、少なくとも「約50パーセント」は、少なくとも45パーセント~少なくとも55パーセント(及びこれを含む)を含むことができる。
【0026】
語「含むこと(comprising)」は、そのオープンエンドな意味と一致して使用され、すなわち、所与の生成物又はプロセスは、明示的に記載されているもの以外の追加の特徴又は要素も、場合により有することができることを意味する。実施形態が、言い回し「含むこと」と共に記載されている場合でも、「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」に関して記載されている他の類似の実施形態もやはり、企図されており、本開示の範囲内にあると理解される。
【0027】
本明細書において使用する場合、用語「整列した」は、コンポジットの断面の光学顕微鏡からの画像を使用して測定した場合に、物体の75%超が、同じ方向に配向(±5°)したその主軸の少なくとも1つを有することを意味する。
【0028】
本明細書において使用する場合、用語「チャー収率」とは、熱分解後に残留する質量によって測定される残留炭素含有率を指し、本明細書における実施例に記載されている通りに決定することができる。
【0029】
本明細書において使用する場合、コンポジットの文脈では、用語「%中実」は、空孔又は空隙を含まない理論的に完全に密な部品と比べた、熱分解された部品の密度のパーセント(%)を意味する。完全に密な部品の密度は、マトリックス材料(炭素又はセラミック)及び繊維材料(ガラス又は炭素)の混合物の公式によって計算することができる。
D=d1a+d2(1-a)
前記式において、
D=完全に密な部品の密度
d1=繊維材料(ガラス又は炭素)の密度
a=繊維材料(ガラス又は炭素)の質量分率
d2=マトリックス材料(炭素又はセラミック)の密度。
熱分解された部品の密度は、その質量をその体積によって除算することによって実験により測定することができる。
【0030】
本明細書において使用する場合、用語「コンポジット」は、少なくとも2種の異なる及び/又は個別の成分を含む材料を意味する。例えば、及び非限定的に、カーボン-カーボンコンポジットは、炭素繊維を含む炭素マトリックス(例えば、グラファイト系)を含むことができる。カーボンセラミックマトリックスコンポジットは、炭素を含むセラミックマトリックス(例えば、SiC)を含むことができる。カーボンシリカコンポジットは、ガラス/シリカ繊維を含む炭素(通常、グラファイト系)マトリックスを含むことができる。
【0031】
本明細書において使用する場合、用語「高温」とは、高温コンポジットという表現で使用される場合、約1000℃以上の温度を意味する、及びこの温度を指し、この温度において、コンポジットが有害な分解なしに使用され得る。
【0032】
本明細書において使用する場合、用語「熱分解すること」とは、熱の適用により、材料に化学的変化をもたらすことを意味し、材料の一部の、実質的にすべての、又はすべての非炭素元素又は非無機元素の揮発除去を引き起こす。本発明では、前駆体の化学変化は、一般に、少なくとも250℃の温度、とりわけ少なくとも400℃の温度で起こる。
【0033】
本明細書において使用する場合、用語「注入」(又は「注入すること」)は、マトリックスに液状樹脂を浸透させることを意味し、空隙又は空孔を満たすことができる。
【0034】
本明細書において使用する場合、用語「チョップド」とは、連続的ではなく、かつ約20mm未満、好ましくは約15mm未満、好ましくは約10mm未満及び最も好ましくは約5mm未満の長さを有する繊維を指す。
【0035】
本明細書において使用する場合、その頭字語によって「PAEK」として知られている、用語「ポリアリールエーテルケトン」とは、以下の式:
(-Ar-X-)及び(-Ar1-Y-)
(式中、
- Ar及びAr1はそれぞれ、二価の芳香族ラジカルを意味し、
- Ar及びAr1は、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、3,3'の位置で二価の1,1'-ビフェニレン、3,4'の位置で二価の1,1'-ビフェニル、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン及び2,6-ナフチレンから好ましくは選択されてもよく、
- Xは、電子求引基を意味し、それは、カルボニル基及びスルホニル基から好ましくは選択されてもよく、
- Yは、酸素原子、硫黄原子、又は-(CH2)-及びイソプロピリデン等のアルキレン基から選択される基を意味する)
を有する繰り返し単位を含む。これらの単位X及びYでは、X基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%及びより特には少なくとも80%は、カルボニル基であり、Y基の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%及びより特には少なくとも80%は、酸素原子を表す。
【0036】
好ましい実施形態によれば、X基の100%は、カルボニル基を表すことができ、Y基の100%が、酸素原子を表すことができる。
【0037】
有利には、PAEKは、以下:
- PEKKとしても知られているポリエーテルケトンケトンであって、式:-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位を含む、ポリエーテルケトンケトン;
- PEEKとしても知られているポリエーテルエーテルケトンであって、式:-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位を含む、ポリエーテルエーテルケトン;
- PEKとしても知られているポリエーテルケトンであって、式:-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位を含む、ポリエーテルケトン;
- PEEKKとしても知られているポリエーテルエーテルケトンケトンであって、式:-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位を含む、ポリエーテルエーテルケトンケトン;
- PEEEKとしても知られているポリエーテルエーテルエーテルケトンであって、式:-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位を含む、ポリエーテルエーテルエーテルケトン
- PEDEKとしても知られているポリエーテルジフェニルエーテルケトンであって、式:-Ph-O-Ph-Ph-O-Ph-C(O)-の1つ又は複数の繰り返し単位を含む、ポリエーテルジフェニルエーテルケトン
- 及びそれらの混合物;及び
- 上述の繰り返し単位のうちの少なくとも2つを含むコポリマーから選択することができ、
Phはフェニレン基を表し、-C(O)-はカルボニル基を表し、フェニレンの各々は、可能性として、独立して、オルト(1-2)、メタ(1-3)又はパラ-(1-4)タイプのものであり、優先的には、メタ又はパラタイプのものである。
【0038】
特定の実施形態では、PAEKは、テレフタル酸繰り返し単位及びイソフタル酸繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなるPEKKであることができ、テレフタル酸繰り返し単位は、式(「T単位」):
【化1】
【0039】
を有しており、イソフタル酸繰り返し単位は、式(「I単位」):
【化2】
を有する。
【0040】
所与のファミリーのポリマーに関すると、用語「繰り返し単位から本質的になる」は、繰り返し単位が、ポリマー中に95%~99.9%のモル比に相当することを意味する。更に、用語「繰り返し単位からなる」は、ポリマー中に、少なくとも99.9%、理想的には100%のモル比に相当することを意味する。
【0041】
特定の実施形態では、PAEKは、以下:
式:
【化3】
の繰り返し単位及び繰り返し単位:
【化4】
から本質的になる、又はこれらからなることさえあるポリマーとすることができる。
【0042】
特定の実施形態では、PAEKは、以下:
式:
【化5】
の繰り返し単位、及び式:
【化6】

の繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなるポリマーとすることができる。
【0043】
特定の実施形態では、PAEKは、式(III)の繰り返し単位から本質的になる、又はこれらからなるポリマーとすることができる。
【0044】
溶融加工を含む方法
ある特定の実施形態では、本開示は、カーボンカーボン-コンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製するための方法を対象とする。
【0045】
ある特定の実施形態では、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製するための方法は、以下:
a. ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂から前駆体部品を作製する工程と、
b. 前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品を作製する工程と、
c. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
d. 注入された部品を熱分解して、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と、
e. 場合により、工程(c)から(d)を1回又は複数回、繰り返す工程と
を含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記の方法によって作製される、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【0047】
ある特定の実施形態では、本方法は、溶融加工によって前駆体部品を作製する工程を含むことができる。ある特定の実施形態では、溶融加工は、射出成形、押出成形、回転成形、圧縮成形、引き抜き成形、フィラメントワインディング及び融解フィラメント製造印刷のうちの1つ又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、溶融加工の後に、熱成形又はロッドベンディング等の溶融形成が場合により続くことができる。
【0048】
ある特定の実施形態では、PAEKは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトン-ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(PEEK-PEDEK)、ポリエーテルケトン(PEK)及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)のうちの1種又は複数であり得る。ある特定の実施形態では、PAEKはPEKKであり得る。
【0049】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む、これから本質的になる、又はこれからなる。本発明において使用するために好適なポリエーテルケトンケトンは、以下の式I及びII:
-A-C(=O)-B-C(=O)- I
-A-C(=O)-D-C(=O)- II
(式中、Aはp,p'-Ph-O-Ph-基であり、Phはフェニレンラジカルであり、Bはp-フェニレンであり、Dはm-フェニレンである)
によって表される繰り返し単位を含むことができる、又はこれからか本質的になることができる。ポリエーテルケトンケトンにおける式I:式II(T:I)異性体比は、100:0~0:100の範囲となり得る。異性体比は、特定の一連の特性を実現するために所望され得る場合、例えば、ポリエーテルケトンケトンを作製するために使用される異なるモノマーの相対量を変えることによって、容易に変えることができる。
【0050】
一般的に述べると、式I:式IIの比が比較的高いポリエーテルケトンケトンは、式I:式IIの比がより低いポリエーテルケトンケトンよりも結晶性が高いであろう。したがって、T:I比は、所望の場合、アモルファス(非結晶性)ポリエーテルケトンケトン又は一層結晶性の高いポリエーテルケトンケトンをもたらすように調節することができる。一実施形態では、約50:50~約90:10のT:I異性体比を有するポリエーテルケトンケトンが使用され得る。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約85:15、約60:40~約80:20、約65:35~約75:25、約70:30の、又は指定範囲の間の任意の範囲でT:I異性体比を有することができる。
【0051】
好ましい実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、50:50~78:22のT:I異性体比を有することができる。実際に、これらのT:I異性体比は、熱分解された部品に関するチャー収率の最大化と前駆体部品の変形の最小化を可能にする。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約65:35、とりわけ約60:40のT:I異性体比を有することができる。一部の他の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約65:35~約75:25、とりわけ約70:30のT:I異性体比を有することができる。
【0052】
好適なポリエーテルケトンケトンは、Arkema社によって供給されるKEPSTAN(登録商標)という商標名で販売されている。
【0053】
本発明の強化用添加剤は、個別のものであり、長繊維及び連続繊維も連続布もとりわけ包含しない、すなわち20mm超の長さを有する繊維、又は一部の実施形態では、15mm超又は10mm超又は5mm超の長さを有する繊維を包含しない。前駆体部品を作製するためにこのような強化用添加剤を使用する利点は、強化用添加剤は、熱分解された部品のチャー含有率を向上することが可能であり、ポリアリールエーテルケトンからしか作製されていない同等な部品と比べて、その機械特性を改善する点である。同時に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む前駆体部品は、とりわけ射出成形又は押出成形等の高生産率プロセスによって、長繊維又は連続繊維を含むポリアリールエーテルケトン(PAEK)から作製される前駆体部品よりも加工が一層容易である。
【0054】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、炭素系添加剤、チョップド繊維、分散剤及び無機添加剤、又はそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。
【0055】
ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約0.1質量%~約70質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約1質量%~約60質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、添加剤は、溶融加工後に、前駆体部品の樹脂の組成物全体の約5質量%~約50質量%の量で存在することができる。
【0056】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、溶融加工の後に、前駆体部品の樹脂の組成物全体の質量に対して、約0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%又は指定値の間の任意の範囲の量で存在することができる。
【0057】
好ましい実施形態では、強化用添加剤は、溶融加工後に、前駆体部品の樹脂の組成物全体の質量に対して、20%~45%、とりわけ25%~40%の間の量で存在することができる。
【0058】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、炭素系添加剤とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク及びバッキーボール、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加物は、溶融加工からのせん断によって整列され得る。
【0059】
ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。添加剤の長さは、溶融コンパウンディング前に、光学顕微鏡によって測定することができる。添加剤の直径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0060】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、チョップド繊維とすることができる。ある特定の実施形態では、チョップド繊維は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維及びポリマー繊維、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数を含む。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタン、並びにそれらの混合物のうちの1種又は複数とすることができる。
【0061】
ある特定の実施形態では、チョップド繊維はチョップド炭素繊維である。1種又は複数の炭素繊維は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。添加剤の長さは、溶融コンパウンディング前に、光学顕微鏡によって測定することができる。添加剤の直径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0062】
好ましい一実施形態は、55:45~85:15のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、10~45%又は15~40%又は20~35%の搭載レベルのチョップド炭素繊維を対象とする。
【0063】
より好ましい実施形態は、55:45~78:22のT:I比、とりわけ約60:40又は約70:30のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、20%~45%、とりわけ25%~40%の間の搭載レベルのチョップド炭素繊維を対象とする。
【0064】
ある特定の実施形態では、チョップド繊維はチョップドガラス繊維である。1種又は複数のガラス繊維は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップドガラス繊維は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップドガラス繊維は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、チョップドガラス繊維は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。添加剤の長さは、溶融コンパウンディング前に、光学顕微鏡によって測定することができる。添加剤の直径は、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
【0065】
好ましい一実施形態は、55:45~85:15のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、10~45%又は15~40%又は20~35%の搭載レベルのチョップドガラス繊維を対象とする。
【0066】
より好ましい実施形態は、55:45~78:22のT:I比、とりわけ約60:40又は約70:30のT:I比を有するPEKKマトリックスにおいて、質量によって測定すると、20%~45%、とりわけ25%~40%の間の搭載レベルのチョップドガラス繊維を対象とする。
【0067】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、無機添加剤とすることができる。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、IV族、V族又はVI族の炭化物、ケイ化物(silicid)、ホウ化物及び窒化物のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、粉末形態にあることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、約0.01μm~500μm、約0.1μm~250μm、約1μm~100μm又は約2μm~50μmとすることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、250μm、500μm又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、分散剤を含むことができる。分散剤とは、添加剤/粒子の分離を改善する、及び/又は凝集若しくは沈殿を防止する任意の部分を意味する。ある特定の実施形態では、分散剤は、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートとすることができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm~500nm、約2nm~250nm又は3nm~100nmの平均粒子サイズを有することができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm、2nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、250nm、500nm又は指定値の間の任意の範囲の平均粒子サイズを有することができる。粒子サイズは、溶融コンパウンディング前の分散剤の走査型電子顕微鏡によって決定することができる。
【0069】
本発明によれば、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させる。一般に、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度に上昇させる。しかし、一部の場合、チャンバ内の温度は、約850℃又は約900℃又は約950℃という、より低い温度に上昇させてもよい。
【0070】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程b.の間の熱分解条件は、熱分解工程d.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程b.の間の熱分解条件は、熱分解工程d.の間の熱分解条件とは異なる。
【0071】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0072】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0073】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で、1回又は複数回、上昇させる。
【0074】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0075】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0076】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0077】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間、120℃~1000℃の間、又は200℃~1000℃の間、又は400℃~1000℃の間の温度において温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0078】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0079】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数を含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる。ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、フェノール樹脂又はそれらの組合せを含む、これらから本質的になる、又はこれらからなる。
【0080】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程c.及び熱分解工程d.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程c.及び熱分解工程d.を少なくとも2回、3回、4回、5回又はそれより多い回数、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0081】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、実施例1に準拠して測定すると、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程c.及び熱分解工程d.を繰り返す工程を含む。
【0082】
ある特定の実施形態では、本方法は、工程c.からd.までを1回又は複数回、繰り返す工程を含む。
【0083】
整列させた添加剤を含む方法
ある特定の実施形態では、本開示は、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製するための方法を対象とする。
【0084】
ある特定の実施形態では、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを調製するための方法は、以下:
a1)整列させた強化用添加剤及びポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含む樹脂を加工して、整列させた強化用添加剤PAEK、整列させた1~2次元フレーク材料又は整列させた1~2次元プレートレット材料を作製し、整列させた強化用添加剤及び浸漬させたPAEKを含む、布、プリプレグ又はテープを生成する工程と、
a2)ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング若しくはニードルパンチ、又はZ-軸強化の他の方法と、その後の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション、in situコンソリデーションにより、PAEKテープ、プリプレグ又は布を加工して、前駆体物体を作製する工程と、
c. 物体を熱分解して、熱分解された物体を作製する工程と、
d. 液状の第2の樹脂を熱分解された物体に注入して、注入された物体を作製する工程と、
e. 注入された物体を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と、
f. 場合により、工程c.からd.を1回又は複数回、繰り返す工程と
を含む。
【0085】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【0086】
ある特定の実施形態では、本方法は、整列させた強化用添加剤及びポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含む樹脂を加工して、整列させた強化用添加剤PAEKを作製する工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、整列させた強化用添加剤及びポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含む樹脂を加工して、整列させた1~2次元フレーク材料を作製する工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、整列させた強化用添加剤及びポリアリールエーテルケトン(PAEK)を含む樹脂を加工して、整列させた1~2次元プレートレット材料を作製する工程を含む。ある特定の実施形態では、整列させた1~2次元フレーク材料又は整列させた1~2次元プレートレット材料は、グラファイト、グラフェン又はウィスカーとすることができる。
【0087】
ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.001mm~0.1mm、約0.005mm~0.09mm又は約0.01mm~0.08mmの厚さを有することができる。ある特定の実施形態では、1~2次元フレーク材料又は1~2次元プレートレット材料は、約0.001mm、0.005mm、0.01mm、0.02mm、0.03mm、0.04mm、0.05mm、0.06mm、0.07mm、0.08mm、0.09mm、0.1mm及び指定値の間の任意の範囲の厚さを有することができる。測定は、溶融コンパウンディング前の光学電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡のイメージングから得ることができる。
【0088】
ある特定の実施形態では、加工は、整列した強化用添加剤及び含浸したPAEKを含む布を生成することができる。ある特定の実施形態では、加工は、整列した強化用添加剤及び含浸したPAEKを含むプリプレグを生成することができる。ある特定の実施形態では、加工は、整列した強化用添加剤及び含浸したPAEKを含むテープを作製することができる。
【0089】
ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、繊維が破壊されて、その繊維を流体流に供して繊維を整列させる、又は繊維を電磁場に供して繊維を整列させるまで、一方向テープを伸長することによって作製され得る。ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、繊維が破壊される(PAEK樹脂の含浸前又は含浸後のいずれか)まで、一方向テープを伸長することによって作製され得る。好ましい実施形態では、繊維は、US 10,669,659に記載されている整列された繊維のマットを作製するため、多孔質ベルト上の流体流によって整列される。
【0090】
ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維、ポリマー繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン及び炭素又はセラミックウィスカーのうちの1種又は複数であり得る。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタンのうちの1種又は複数とすることができる。
【0091】
ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの長さを有することができる。ある特定の実施形態では、整列させた強化用添加剤は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。
【0092】
ある特定の実施形態では、PAEKは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトン-ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(PEEK-PEDEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)のうちの1種又は複数であり得る。ある特定の実施形態では、PAEKはPEKKであり得る。一部の実施形態では、PEKKが好ましい。他の実施形態では、PEEKが好ましい。
【0093】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む、これから本質的になる、又はこれからなる。本発明において使用するために好適なポリエーテルケトンケトンは、以下の式I及びII:
-A-C(=O)-B-C(=O)- I
-A-C(=O)-D-C(=O)- II
(式中、Aはp,p'-Ph-O-Ph-基であり、Phはフェニレンラジカルであり、Bはp-フェニレンであり、Dはm-フェニレンである)
によって表される繰り返し単位を含むことができる、又はこれからか本質的になることができる。ポリエーテルケトンケトンにおける式I:式II(T:I)異性体比は、100:0~0:100の範囲となり得る。異性体比は、特定の一連の特性を実現するために所望され得る場合、例えば、ポリエーテルケトンケトンを作製するために使用される異なるモノマーの相対量を変えることによって、容易に変えることができる。
【0094】
一般的に述べると、式I:式IIの比が比較的高いポリエーテルケトンケトンは、式I:式IIの比がより低いポリエーテルケトンケトンよりも結晶性が高いであろう。したがって、T:I比は、所望の場合、アモルファス(非結晶性)ポリエーテルケトンケトン又は一層結晶性の高いポリエーテルケトンケトンをもたらすように調節することができる。一実施形態では、約50:50~約90:10のT:I異性体比を有するポリエーテルケトンケトンが使用され得る。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約85:15、約60:40~約80:20、約65:35~約75:25、約70:30の、又は指定範囲の間の任意の範囲でT:I異性体比を有することができる。
【0095】
好ましい実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、50:50~78:22のT:I異性体比を有することができる。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約65:35、とりわけ約60:40のT:I異性体比を有することができる。一部の他の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約65:35~約75:25、とりわけ約70:30のT:I異性体比を有することができる。
【0096】
ある特定の実施形態では、in situコンソリデーションは、圧力及び/又は熱を適用するための圧延を含むことができる。
【0097】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度まで、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件とは異なる。
【0098】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0099】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0100】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0101】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0102】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0103】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0104】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間の温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0105】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0106】
ある特定の実施形態では、前駆体物体は、加工工程a.の後であるが、熱分解工程c.の前に溶融形成され得る。
【0107】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ピッチ、フェノール樹脂又はそれらの組合せが好ましい。
【0108】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも2回、3回、4回又は5回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0109】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程d.及び熱分解工程e.を繰り返す工程を含む。
【0110】
ある特定の実施形態では、工程c.からd.は、1回又は複数回、繰り返される。
【0111】
含浸工程又は共織工程を含む方法
ある特定の実施形態では、本開示は、カーボン-カーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する方法を対象とする。
【0112】
ある特定の実施形態では、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製するための方法は、以下:
a1)連続繊維テープ又は布に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の強化用添加剤を含む樹脂を含浸させて、充填PAEKテープ若しくは布を作製する工程、又は連続繊維若しくは布をPAEK及び少なくとも1種の強化用添加剤を含むPAEK繊維と共織りして、充填されたPAEKテープ又は布を作製する工程と、
a2)ハンドレイアップ、自動テープ配置、3D印刷、フィラメントワインディング若しくはニードルパンチ又はZ-軸強化の他の方法と、その後の圧縮成形、真空バッグコンソリデーション、オートクレーブコンソリデーション又はin situコンソリデーションにより、充填されたPAEKテープ若しくは布又は共織PAEK/繊維材料を加工して、前駆体部品を作製する工程と、
c. 前駆体部品を熱分解して、熱分解された部品を作製する工程と、
d. 液状の第2の樹脂を熱分解された部品に注入して、注入された部品を作製する工程と、
e. 注入された部品を熱分解して、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを作製する工程と
を含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記の方法によって作製される、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットを対象とする。
【0114】
ある特定の実施形態では、本方法は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及び少なくとも1種の添加剤を含む樹脂を連続繊維テープ又は布に含浸させて、充填PAEKテープを作製する工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、連続繊維又は布を、PAEK及び少なくとも1種の添加剤を含むPAEK繊維と共織し、充填PAEKテープ又は布を作製する工程を含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、連続繊維又は布は、炭素繊維とすることができる。
【0116】
ある特定の実施形態では、PAEKは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトン-ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)(PEEK-PEDEK)、ポリエーテルケトン(PEK)及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)のうちの1種又は複数であり得る。ある特定の実施形態では、PAEKはPEKKであり得る。
【0117】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)を含む、これから本質的になる、又はこれからなる。本発明において使用するために好適なポリエーテルケトンケトンは、以下の式I及びII:
-A-C(=O)-B-C(=O)- I
-A-C(=O)-D-C(=O)- II
(式中、Aはp,p'-Ph-O-Ph-基であり、Phはフェニレンラジカルであり、Bはp-フェニレンであり、Dはm-フェニレンである)
によって表される繰り返し単位を含むことができる、又はこれからか本質的になることができる。ポリエーテルケトンケトンにおける式I:式II(T:I)異性体比は、100:0~0:100の範囲となり得る。異性体比は、特定の一連の特性を実現するために所望され得る場合、例えば、ポリエーテルケトンケトンを作製するために使用される異なるモノマーの相対量を変えることによって、容易に変えることができる。
【0118】
一般的に述べると、式I:式IIの比が比較的高いポリエーテルケトンケトンは、式I:式IIの比がより低いポリエーテルケトンケトンよりも結晶性が高いであろう。したがって、T:I比は、所望の場合、アモルファス(非結晶性)ポリエーテルケトンケトン又は一層結晶性の高いポリエーテルケトンケトンをもたらすように調節することができる。一実施形態では、約50:50~約90:10のT:I異性体比を有するポリエーテルケトンケトンが使用され得る。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約85:15、約60:40~約80:20、約65:35~約75:25、約70:30の、又は指定範囲の間の任意の範囲でT:I異性体比を有することができる。
【0119】
好ましい実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、50:50~78:22のT:I異性体比を有することができる。実際に、これらのT:I異性体比は、熱分解された部品に関するチャー収率の最大化と前駆体部品の変形の最小化を可能にする。一部の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約55:45~約65:35、とりわけ約60:40のT:I異性体比を有することができる。一部の他の実施形態では、ポリエーテルケトンケトンは、約65:35~約75:25、とりわけ約70:30のT:I異性体比を有することができる。
【0120】
ある特定の実施形態では、強化用添加剤は、炭素系添加剤、チョップド繊維、分散剤及び無機添加剤のうちの1種又は複数とすることができる。
【0121】
ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約0.01質量%~約30質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約0.1質量%~約25質量%の量で存在することができる。ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の約1質量%~約20質量%の量で存在することができる。
【0122】
ある特定の実施形態では、添加剤は、樹脂の組成物全体の質量に対して、約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%,30%又は指定値の間の任意の範囲の量で存在することができる。
【0123】
ある特定の実施形態では、添加剤は、炭素系添加剤とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンウィスカー、フラーレン、カーボンブラック、カーボンフレーク及びバッキーボールのうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、溶融加工からのせん断によって整列され得る。
【0124】
ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の長さを有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、炭素系添加剤は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。
【0125】
ある特定の実施形態では、添加剤は、チョップド繊維とすることができる。ある特定の実施形態では、チョップド繊維は、炭素、ガラス、シリカ、ホウ素、天然繊維及びポリマー繊維のうちの1種又は複数を含む。ある特定の実施形態では、天然繊維は、セルロース、竹、ヘンプ及び黄麻のうちの1種又は複数とすることができる。ある特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエステル及びポリウレタンのうちの1種又は複数とすることができる。
【0126】
ある特定の実施形態では、チョップド繊維はチョップド炭素繊維である。1種又は複数の炭素繊維は、約0.1mm~10mm、約0.5mm~9mm又は約1mm~8mmの繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm及び指定値の間の任意の範囲の繊維長さを有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm~10μm、約0.5μm~9μm又は約1μm~8μmの直径を有することができる。ある特定の実施形態では、チョップド炭素繊維は、約0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm及び指定値の間の任意の範囲の直径を有することができる。
【0127】
ある特定の実施形態では、添加剤は、無機添加剤とすることができる。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、IV族、V族又はVI族の炭化物、ケイ化物、ホウ化物及び窒化物のうちの1種又は複数とすることができる。炭化物及びケイ化物が好ましく、炭化ケイ素が最も好ましい。ある特定の実施形態では、無機添加剤は、粉末形態にあることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、約0.01μm~500μm、約0.1μm~250μm、約1μm~100μm又は約2μm~50μmとすることができる。ある特定の実施形態では、粉末の平均粒子サイズは、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、250μm、500μm又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0128】
ある特定の実施形態では、添加剤は、分散剤を含むことができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、オルガノシリケート、オルガノジルコネート、オルガノアルミネート又はオルガノチタネートとすることができ、オルガノシリケート及びオルガノチタネートが好ましく、オルガノシリケートが最も好ましい。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm~500nm、約2nm~250nm又は3nm~100nmの平均細孔サイズを有することができる。ある特定の実施形態では、分散剤は、約1nm、2nm、3nm、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、75nm、100nm、250nm、500nm又は指定値の間の任意の範囲の平均細孔サイズを有することができる。
【0129】
ある特定の実施形態では、in situコンソリデーションは、圧力及び/又は熱を適用するための圧延を含むことができる。
【0130】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1000℃のピーク温度まで、約1℃/時~約20℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約3℃/時~約17℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約5℃/時~約15℃/時の速度で上昇させ得る。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件と同じである。ある特定の実施形態では、熱分解工程c.の間の熱分解条件は、熱分解工程e.の間の熱分解条件とは異なる。
【0131】
ある特定の実施形態では、熱分解の間、チャンバ内の温度は、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時、11℃/時、12℃/時、13℃/時、14℃/時、15℃/時、16℃/時、17℃/時、18℃/時、19℃/時、20℃/時又は指定値の間の任意の範囲の速度で上昇させ得る。
【0132】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、450℃未満の温度又は400℃未満の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0133】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、600℃超の温度又は650℃超若しくはそれより高い温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0134】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃~650℃の間又は450℃~600℃の間において、10℃/時未満の速度で、1回又は複数回、上昇させる。特に、チャンバ内の温度は、400℃~650℃又は450℃~600℃の間、約1℃/時、2℃/時、3℃/時、4℃/時、5℃/時、6℃/時、7℃/時、8℃/時、9℃/時、10℃/時の速度で上昇させ得る。
【0135】
好ましい実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時以上の速度で、450℃~600℃の間において10℃/時未満の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時以上の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0136】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間、チャンバ内の温度は、400℃未満の温度において10℃/時~15℃/時の速度で、450℃~600℃の間において2℃/時~5℃/時の速度で、及び650℃超の温度において、10℃/時~15℃/時の速度で1回又は複数回、上昇させる。
【0137】
ある特定の実施形態では、熱分解は、熱分解の間の温度保持を場合により含むことができる。ある特定の実施形態では、熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス下で行われ得る。ある特定の実施形態では、熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0138】
ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、熱分解の間、450℃~600℃の間(両端の温度を含む)の1つ又は複数の温度保持を含むことができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、窒素、アルゴン又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)下で行われ得る。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解は、グラファイトベッドで行われる。ある特定の実施形態では、熱分解の間の温度保持は、約1時間~72時間、約2時間~48時間又は約3時間~24時間とすることができる。ある特定の実施形態では、前駆体部品の熱分解の間の温度保持(すなわち、維持される)は、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、72時間又は指定値の間の任意の範囲とすることができる。
【0139】
ある特定の実施形態では、前駆体物体は、加工工程b.の後であるが、熱分解工程c.の前に溶融形成され得る。
【0140】
ある特定の実施形態では、液状の第2の樹脂は、ピッチ、ベンゾオキサジン、フルフラール、ポリエステル、ビニルエステル、アクリル及びフェノール樹脂のうちの1種又は複数とすることができる。
【0141】
ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも1回、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、本方法は、注入工程d.及び熱分解工程e.を少なくとも2回、3回、4回若しくは5回、又はそれより多い回数、繰り返す工程を含む。ある特定の実施形態では、最初の熱分解サイクル後、又は2回、3回、4回、5回若しくはそれより多い回数後のチャー収率は、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超若しくは95%超又はそれより高くあり得る。
【0142】
ある特定の実施形態では、本方法は、カーボンカーボンコンポジット、カーボンセラミックマトリックスコンポジット又はカーボンシリカコンポジットが、少なくとも約75%の中実、80%の中実、85%の中実、90%の中実、95%の中実又は99%の中実となるまで、注入工程d.及び熱分解工程e.を繰り返す工程を含む。
【実施例
【0143】
本明細書に記載されている方法及び生成物をこれより、以下の実施例を参照しながら更に詳述する。これらの実施例は、例示目的で提示されているに過ぎず、本明細書に記載されている実施形態は、これらの実施例に限定されるものと決して解釈されるべきではない。むしろ、実施形態は、本明細書において提示されている教示の結果として明白になる、ありとあらゆる変形形態を包含すると解釈されるべきである。
【0144】
(実施例nb 1)
0~40%の炭素充填PAEK樹脂の熱分解
提案されている発明のいくつかの変形形態のチャー収率に関して評価した。ニート樹脂(60/40から80/20までの様々なT/I含有率)及び短鎖のチョップド炭素繊維(0~40%)を含む、射出成形引張試験片を分析した(「表1」)。PEKKだけからなる引張試験片は、比較例を表す一方、40%のチョップド炭素繊維を含む実施例が本発明のものである。
【0145】
【表1】
【0146】
試料にはすべて、不活性雰囲気下(窒素を全体に10~15LPMで流す)、以下の熱分解サイクルを施した(「表2」)。
【0147】
【表2】
【0148】
チャー収率は、熱分解前及びその後の各試料の質量から計算した(「式1」):
【0149】
【数1】
【0150】
(式中、wb及びwaは、それぞれ、熱分解前及びその後の試料の質量である)。
結果を以下に要約する(「表3」。図1に示されている、炭素繊維の充填剤を含有する本発明の実施例Eは、比較例A~Dよりもチャー収率が著しく高かったことが分かり得る。
【0151】
【表3】
【0152】
(実施例nb 2)
PEKK試料のT/l比の影響
様々なT/I比(60/40;80/20)及び30%のチョップド繊維(ガラス又は炭素の一方)を含むPEKK試料(「表4」)を、射出形成によって製造し、不活性環境において、マッフル炉中の石英るつぼで熱分解し、以下の熱分解サイクルを施した(「表5」)。それらの最初の寸法は、すべて、ほぼ5.1cm x 1.3cm x 0.3cmであった。
【0153】
【表4】
【0154】
【表5】
【0155】
試料F及びGを秤量し、それらの厚さ(t)を熱分解の前後に測定し、チャー収率を計算し、寸法変化(「表6」)を決定した。
パラメータΔtは、熱分解前の25℃における厚さにより除算した、熱分解の後の厚さと熱分解前の25℃における厚さとの間の差異を指す(百分率として表す)。
【0156】
【表6】
【0157】
実施例F(60:40のT:I比)は、実施例G(80:20のT:I比)に比べた場合、チャー収率のわずかな改善を示した。より顕著なことに、実施例Fは、実施例Gと比較した場合、厚さの寸法変化によって測定される、試料の膨張のほとんど3×低下を示した。
【0158】
(実施例nb 3)
熱分解中の温度上昇プロファイルの影響
様々なT/I比(60/40、70/30、80/20)を有するポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及び様々な短鎖のチョップド炭素繊維含有率(0~40質量%)を含むポリエーテルエーテルケトン(PEEK;式(III)の繰り返し単位からなるホモポリマー)の試料を射出成形によって製造し、不活性環境中、ゆっくりとした傾斜速度(表5の熱分解サイクルを受ける)で、及び1000℃までの保持の延長により、マッフル炉中の石英るつぼにおいて熱分解した。
比較として、不活性環境中、1000℃で3時間の保持を伴う速い傾斜速度(20℃/分に設定)を使用して、同様に製造した比較試料を熱分解した。炉は、速い傾斜速度に設定したが、炉は、このような速い速度では十分に動作せず、1~5℃/分により近い実施と推定した。試料を秤量し、その厚さを熱分解の前後に測定し、チャー収率を計算して寸法変化を決定した。
【0159】
【表7】
【0160】
すべての同等な試料に関して、熱分解の速い傾斜は、遅い傾斜に比べて、かなり一層高い寸法変化、及び同等な又はわずかに高いチャー収率を引き起こしたことが観察された。更に、ニートPEEKは、同じ熱分解条件では、ニートPEKKよりもかなり低いチャー収率を有するように思われる。
図1
【国際調査報告】