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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】マルチテクスチャスタンプ
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B29C59/04 B
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024528569
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022081808
(87)【国際公開番号】W WO2023084082
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21208278.8
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517278185
【氏名又は名称】モーフォトニクス ホールディング ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Morphotonics Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】De Run 4281, 5503 LM Veldhoven, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マテイス テア ミューレン
(72)【発明者】
【氏名】ブラム ヨハネス ティテュレーア
(72)【発明者】
【氏名】レオン ウィレム フェルトヒュイゼン
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AH73
4F209AJ03
4F209PA08
4F209PB01
4F209PB02
4F209PN09
4F209PQ06
4F209PQ09
5F146AA32
(57)【要約】
本発明は、インプリンティングプロセスで使用するためのフレキシブルスタンプであって、該フレキシブルスタンプは、第1の表面を含む支持体と、フレキシブル材料の少なくとも2つのスポットとを含み、該スポットは、支持体の第1の表面に接着しており、かつ表面を有し、該表面は、支持体の前面に対して平行であり、かつインプリンティングパターンでテクスチャ加工が施されている、フレキシブルスタンプに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリンティングプロセスで使用するためのフレキシブルスタンプであって、前記フレキシブルスタンプは、
・第1の表面を含む支持体と、
・フレキシブル材料の少なくとも2つのスポットと
を含み、前記スポットは、
・前記支持体の前記第1の表面に接着しており、かつ
・表面を有し、前記表面は、
・前記支持体の前面に対して平行であり、かつ
・インプリンティングパターンでテクスチャ加工が施されている、
フレキシブルスタンプ。
【請求項2】
前記フレキシブル材料が、ポリマー材料である、請求項1記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項3】
前記少なくとも2つのスポットが、互いに離れている、請求項1記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項4】
すべてのスポットが同じテクスチャを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項5】
前記スポットが、前記支持体に可逆的に接着している、請求項1から4までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項6】
前記スポットのポリマー材料が、50mN/m、好ましくは35mN/m、さらにより好ましくは30mN/m以下の表面自由エネルギーを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項7】
前記スポットの前記表面が、前記支持体の前記表面の上方に存在する、請求項1から6までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項8】
フレキシブルなポリマー材料が、エポキシド、チオール、ポリビニル樹脂、アクリレート、メタクリレート、ポリエーテル、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化ポリエーテル、シロキサン、シロキサンアクリレートまたはそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項9】
少なくとも1つのスポットが複数の層を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項10】
少なくとも1つの層が、薄いガラスシート、薄い金属シートまたはポリマー材料の薄い層であり、より具体的には、ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートの薄い層である、請求項9記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項11】
前記フレキシブルスタンプが、前記支持体上の前記スポット間にチャネルまたは他の空所領域を含む、請求項1から10までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項12】
前記スポット間の領域に追加の材料が充填されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項13】
前記追加の材料が、粘着防止材料またはハードコート樹脂である、請求項12記載のフレキシブルスタンプ。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプの製造方法であって、前記方法は、
a.テクスチャ領域を含む少なくとも1つのマスタを提供する工程と、
b.支持体を提供する工程と、
c.前記マスタまたは前記支持体に硬化性樹脂を供給する工程と、
d.前記支持体および前記マスタを、間にある前記樹脂と接触させる工程と、
e.任意に前記支持体を加圧し、前記加圧を、前記樹脂が前記テクスチャ領域を充填し、前記テクスチャ領域を覆う層を形成するように行う工程と、
f.前記樹脂が前記マスタおよび前記支持体の双方と接触した状態で前記樹脂を硬化させる工程と、
g.硬化した前記樹脂を有する前記支持体を前記マスタから分離する工程と、
h.前記少なくとも1つのマスタを接触面に対して相対的に、かつ前記支持体の面に対して平行な面内で移動させる工程と
を含み、前記工程d)から前記工程g)を少なくとも2回実施する、方法。
【請求項15】
フレキシブルスタンプの製造装置であって、前記装置は、
・少なくとも1つのマスタを支持するためのステージと、
・少なくとも1つのローラと、
・フレキシブルシート状材料と、
・任意に、硬化性樹脂を硬化させるための手段と、
・任意に、前記フレキシブルシート状材料に対して前記マスタを位置決めするための手段と、
・任意に、硬化性樹脂を前記マスタおよび/または前記フレキシブルシート状材料に選択的に計量供給するための手段と、
・任意に、前記マスタの位置を決定するための手段と、
・任意に、前記フレキシブルシート状材料の位置を決定するための手段と
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、フレキシブルスタンプ、その製造方法、および該フレキシブルスタンプを使用する装置に関する。
【0002】
デバイスにおける機能的なテクスチャ層(「テクスチャ」という用語は、例えば、角錐体、レンズ、角柱体、円錐体、平坦な層を含む)の使用は重要なテーマである。このような層を適切に使用することで、性能向上、コスト削減、または製品の外観の向上が可能となる。例えば、拡散層がディスプレイで使用されており、これにより、ディスプレイを側面から照らす薄型のLEDバックライトコンセプトの使用が可能となる。その他の新たな先端技術の可能性としては、機能性テクスチャ層をソーラーパネルに組み込んでその効率を向上させることや、有機発光ダイオード(OLED)照明パネルに組み込んでより多くの光を得ることが挙げられる。
【0003】
機能性テクスチャ層は、UVインプリンティングの使用により製造することができる。この場合、基材、スタンプまたはその双方をラッカー(樹脂またはレジスト)でコーティングする。ラッカーを挟んでスタンプを基材に押し付けた後、テクスチャが付与されたラッカーを硬化させて固相にする。硬化方法は、熱によるものであってもUV光の使用によるものであってもよい。この技術は、すでに1978年に米国特許第4,128,369号明細書で言及されている。さらなる先駆的な研究は、1995年にChouによって行われた。彼は、剛性スタンプを使用することにより、25nm未満のテクスチャを大量生産のために高スループットで複製できることを実証した(米国特許5,772,905号明細書、またはStephen Y. Chou、Peter R. Krauss、Preston J. Renstromによる論文(Appl. Phys. Lett. 67 (1995) 3114-3116))。その後、ローラを使用して剛性スタンプまたは曲げた薄い金属シートに圧力をかけることでテクスチャが複製されることが実証された(Hua Tan、Andrew Gilbertson、Stephen Y. Chouによる論文J. Vac. Sci. Technol., B 16 (1998) 3926-3928)。
【0004】
多くの研究機関や企業がこの研究を続け、様々な技術を生み出した。半導体産業では、米国特許第6,334,960号明細書、米国特許出願公開第2004/0065976号明細書、および米国特許第8,432,548号明細書に記載されているように、剛性スタンプを転写プロセス、材料および正確な位置決めと組み合わせて使用することによりプレート・ツー・プレートインプリンティングが適用されている。ロール・ツー・ロールインプリンティング技術では、例えば米国特許8,027,086号明細書に記載されているように、連続プロセスで箔やフィルムにテクスチャを付与するために、テクスチャローラがフレキシブル基材と組み合わせて使用される。
【0005】
上記のプレート・ツー・プレート技術は、均一で平坦なウェハー上に小さなテクスチャ(100nm未満のフィーチャサイズ)を高い位置精度で正確にウェハースケールにてインプリンティングできるように設計されている。しかし、中国特許出願第103235483号明細書に記載されているように、この技術は大面積への拡張が困難である。
【0006】
ロール・ツー・ロール技術を用いることで、テクスチャ箔を高い製造速度で連続生産することができる。これらのテクスチャ箔は、フレキシブル用途の基材として使用することも、剛性基材に積層することもできる。しかし後者には、フレキシブルなテクスチャ箔を剛性基材や剛性製品に接着するための中間接着層という追加コストがかかる。そこで、第三の新技術、すなわちダイレクト・ロール・ツー・プレート・インプリンティングが開発されつつある。これにより、厚さ数十ミクロンないし数百ミクロンの追加の中間接着層を有する補助フィルムを使用することなく、機能性テクスチャ層が別個の基材に直接施与される。プレート・ツー・プレート技術とは対照的に、インプリントは、テクスチャ加工が施されたローラを使用するか、またはローラに巻き付けられたフレキシブルスタンプとも呼ばれるテクスチャ箔を使用することによって行われる。
【0007】
こうして、ロール・ツー・プレートインプリンティングは、大型剛性基材の直接テクスチャリングの標準技術として確立され、一方でプレート・ツー・プレートインプリンティングは、小型剛性基材の直接テクスチャリングの標準技術となっている。
【0008】
最近の開発では、欧州特許第2823356号明細書に示されているように、大型基材上で小型のフレキシブルスタンプを繰り返し転がして使用することで、小さな周期構造のロール・ツー・プレートインプリンティングが大型基材にも拡張されている。
【0009】
これらの開発はすべて、ロール・ツー・プレートインプリンティングが大型基材用のインプリンティング技術に発展しつつある一方で、小型基材には通常、プレート・ツー・プレートインプリンティングによってテクスチャが付与されることを示している。
【0010】
しかし、通常、各基材は高さが異なるため、小型基材のプレート・ツー・プレートインプリンティングは困難である。これらの差は小さい場合があり、通常は数ミクロンまたは10数ミクロンのオーダーである。それでも、ロール・ツー・プレートインプリンティングプロセスにおいてフレキシブルスタンプに圧力がかかると、基材の鋭利な縁部における小さな高さの段差によって、フレキシブルスタンプが損傷するおそれがある。
【0011】
非常に敏感なポリマーからなるテクスチャ領域は、1つのフレキシブルスタンプで複数の基材にインプリンティングする場合、基材の縁部との接触時に深刻な損傷を受けるおそれがあるが、一方で単一の基材にインプリンティングする場合、基材の縁部をテクスチャ領域に接触しないように配置することができる。テクスチャ領域の損傷は、傷、ルーズな粒子、および歩留まり低下を招くおそれがあり、これを防止する必要がある。
【0012】
本願の目的は、フレキシブルスタンプのいかなる部分も損傷することなく、一度に複数の小型基材にロール・ツー・プレートインプリンティングするための高速で効率的な技術を提供することである。
【0013】
この目的は、インプリンティングプロセスで使用するためのフレキシブルスタンプであって、該フレキシブルスタンプは、第1の表面を含む支持体と、フレキシブル材料の少なくとも2つのスポットとを含み、該スポットは、支持体の第1の表面に接着しており、かつ表面を有し、該表面は、支持体の前面に対して平行であり、かつインプリンティングパターンでテクスチャ加工が施されている、フレキシブルスタンプによって達成される。
【0014】
一実施形態では、接着には、フレキシブル材料による支持体のエンボスも含まれ得る。
【0015】
本願を通じて、「フレキシブル」という用語は、材料またはその部材が0.1ギガパスカル(GPa)~10ギガパスカル(GPa)のヤング率を有することを意味する。一実施形態では、ヤング率は、0.5ギガパスカル(GPa)~5ギガパスカル(GPa)である。ヤング率は、ASTM E111に準拠して測定される。
【0016】
本願を通じて、2つの表面、平面または領域に関する「平行」という用語は、前記の2つの表面、平面または領域が交差しないか、または互いに最大6°の角度をなして交差することを意味する。
【0017】
本願によるスタンプは、表面のテクスチャリング、インプリンティングまたはエンボスに使用することができる任意の手段である。典型的には、スタンプは、凹部および凸部のインプリンティングパターンでテクスチャ加工が施されたインプリンティング面を備え、このインプリンティングパターンは、その後、基材に転写される。この転写は、3つの異なる方法で行うことができる。第一に、凸部のみがインプリンティング材を拾ってこれが基材に転写されるように、インプリンティング面をインク、着色剤または樹脂などのインプリンティング材で処理することができ、これは、いわゆるレリーフインプリンティングの原理に従ったものであり、例えば事務用スタンプや古典的なタイプライター、または鉛活字を用いた歴史的な書籍印刷などにも用いられている。これらのすべてのインプリンティングプロセスでは、インプリンティング面の凸部のみがインプリンティング媒体を基材に転写する。第二に、インプリンティング面の凹部にインプリンティング材が充填されるように、インプリンティング面をインク、着色剤または樹脂などのインプリンティング材でコーティングすることができる。その後、凹部にのみインプリンティング媒体が残り、ここからこのインプリンティング媒体が基材に転写されるように、例えばドクターブレードを使用してインプリンティング面を掻き取ることができる。基材が紙である場合、このインプリンティング技術は凹版インプリンティングとして知られている。また、スタンプを使用して、インプリンティングパターンの凹部が基材上の凸部となり、インプリンティングパターンの凸部が基材上の凹部となるように、樹脂、ラッカーまたはワックスなどの液体または粘性のインプリンティング媒体のスポットまたは層にテクスチャ加工を施すこともできる。これは、シーリングワックスやシーリングラッカーに伝統的な彫刻を施したシーリングマトリックスを使用する場合と同様である。
【0018】
第三に、固体であるが成形可能な表面にスタンプを押し付けて、紙上のエンボスシールに似たパターンをそこにエンボスすることができる。
【0019】
本願によるフレキシブルスタンプは、前記すべてのインプリンティング技術に使用することができる。
【0020】
本願による支持体は、フレキシブルスタンプの骨格の一種を形成し、任意のフレキシブル材料であってよい。一実施形態では、支持体は、例えばポリエチレンテレフタレートまたは他のフレキシブルであるが堅牢なポリマー材料のプラスチック箔である。支持体はまた、薄いシート、例えばガラスシート、金属シートであってもよい。支持体はまた、例えば薄いガラス、金属またはポリマーシートがポリマー材料の上または間に埋め込まれた複合材料であってもよい。
【0021】
別の実施形態では、支持体は、プラスチック箔または薄いシートまたは埋め込まれたシートとその上にある接着層との組み合わせであり、特にこれはポリマー層または感圧接着剤であってよい。
【0022】
一実施形態では、支持体は、支持体を通じた樹脂の放射線誘導硬化を可能にするために、可視光および/またはUV光に対して透明であってよい。
【0023】
一実施形態では、支持体は、放射線誘導硬化中の劣化を防止するために、UV保護剤を含むことができる。可能なUV保護剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)の群のものであってよい。
【0024】
一実施形態では、支持体は、硬化性樹脂の典型的な硬化温度において損傷を受けることや機械的安定性を失うことのないように、耐熱性とすることができる。
【0025】
支持体は、第1の表面と第2の表面とを含む。定義上、第1の表面とは、インプリンティングプロセス中に基材に向けられる表面であるとみなされる。
【0026】
フレキシブルスタンプは、フレキシブルなポリマー材料の少なくとも2つのスポットをさらに含み、該スポットは、支持体の第1の表面に接着している。スポットと支持体との間の接着接続は、フレキシブルなポリマー材料のスポットと支持体の第1の表面との間に位置する追加の接着材料によって行うことも、スポットのポリマー材料と支持体の材料との間の固有の接着接続によって行うこともできる。スポットはまた、複数の層を含み、支持体の第1の表面から離れた方を向く層に、インプリンティングパターンでテクスチャ加工が施されていてもよい。
【0027】
本願によるスポットは、支持体上の、支持体よりもはるかに小さい領域であり、該領域は、通常は支持体とは異なる材料でできており、かつ該スポットが支持体上に別個の層を形成していることを特徴とする。したがって、本願によるスポットは、支持体上の、支持体よりも小さく、かつ支持体上に第2の層を形成する領域と解釈することができる。支持体上のスポットは、コーティングの形態を有することもできる。スポットはまた、箔、例えばプラスチック、ガラスまたは薄い金属シートのテクスチャ片であってもよく、これらは、テクスチャラベルの要領で支持体に接着接続され、その上にポリマー層がある。
【0028】
スポットは、アクリレート、メタクリレート、フッ素化アクリレート、エポキシド、チオール、ビニル基含有モノマー、エーテル、フッ素化エーテル、シロキサン、シロキサン-アクリレートまたはこれらの材料の2種以上のブレンドをベースとするポリマー材料などの任意のフレキシブルなポリマー材料であってよい。
【0029】
一実施形態では、フレキシブルなポリマー材料は、エポキシド、チオール、ポリビニル樹脂、ポリエーテル、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化ポリエーテル、シロキサン、シロキサンアクリレートまたはこれらのブレンドなどのポリマーの種類から選択される。
【0030】
一実施形態では、スポットの材料は、液体または粘性の形態で支持体と接触させ、次いで支持体と接触した状態で固化または硬化させた材料の固化または硬化プロセスの生成物であってよい。異なるスポットの材料は、同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
スポットは、ポリカーボネート、PET、薄いガラスシートまたは薄い金属シートなどの追加の中間ベース層を有することができる。この場合、スポットとベース層との組み合わせが、接着層とともに支持体の材料に接着される。
【0032】
本願によるスポットはすべて、支持体の第1の表面に対して平行な平坦な表面を有する。支持体上のすべてのスポットの平坦な表面は、スポットの表面が支持体の第1の表面の平面に対して平行な1つの仮想平面の一部となるように、同じ高さを有する。すべてのスポットの表面には、スポットの表面に凹部および凸部を形成するインプリンティングパターンで少なくとも部分的にテクスチャ加工が施されている。凹部は、スポット全体を通じて支持体の材料に達するように構成されていてもよいし、いなくてもよい。テクスチャは、スポットの平坦な表面全体を覆ってもよいし、覆わなくてもよい。好ましくは、スポットの長さおよび幅のサイズは、基材上の好ましいテクスチャ領域と比較して大きい。
【0033】
スポットは、互いに重なっていてもよいし、互いに離れていてもよい。係属中の本願によれば、分離しているとは、支持体の「裸の」または覆われていない材料が基材の方を向いている領域にスポットが完全に囲まれていることを意味する。したがって、互いに離れているスポットは、支持体上の島のようなものである。
【0034】
スポットは、円形、楕円形、矩形または多角形などの規則的な形状を有していてもよいし、スポットの形状は不規則であってもよい。インプリンティングパターンは、スポットのサイズおよび形状から逸脱したサイズおよび形状の双方を有することができるが、スポットのサイズは、常にインプリンティングパターンのサイズと少なくとも同じ大きさとなる。一実施形態では、インプリンティングパターンは矩形であってよく、一方で、インプリンティングパターンを有するスポットは、円形、楕円形または不規則な形状を有することができる。
【0035】
スポットの表面のテクスチャは、同じであっても異なっていてもよい。本願によるフレキシブルスタンプは、同じテクスチャを有する隣接するスポットのグループを有することができる。同じテクスチャを有する隣接するスポットのグループは、支持体上に線、列、斜線または他の種類のデザインを形成することができる。スポットをランダムに配置することも可能である。
【0036】
係属中の本願によれば、フレキシブルスタンプに複数のスポットを設けることで、フレキシブルスタンプを使用して、一度に複数の基材にテクスチャを付与することができる。このためには、本願による方法に複数の基材を提供し、この提供を、スポットのテクスチャ加工面の真下に基材の表面が位置するように行う必要がある。この手法を用いると、1回のインプリンティングプロセス中に多数の小型基材にテクスチャを付与することができる。これは、小さいサイズしかない基材タイプに有利であり、またこれにより、テクスチャが付与された表面に損傷や汚れを生じさせるおそれのある、テクスチャが付与された大型基材の切り離しを行う手間を省くことができる。このように、本願によるフレキシブルスタンプを使用することで、一般にはプレート・ツー・プレートプロセスを使用してテクスチャが付与される小型基材のインプリンティングプロセスのスループットを向上させ、さらに効率も向上させることができる。プレート・ツー・プレートプロセスでの剛性スタンプは、特に本願で後述する方法を用いた場合の本願によるフレキシブルスタンプに比べて複製がはるかに困難で高コストである。
【0037】
フレキシブルスタンプの堅牢な設計は、フレキシブルスタンプの使用を、1つのスポットのサイズが類似した基材へのインプリントに限定するものではない。一実施形態では、フレキシブルスタンプは、複数のスポットをカバーする基材のインプリンティングに使用することができる。インプリンティング基材は、フレキシブルスタンプと同様のサイズとすることができる。このような場合、基材には、複数の別々のテクスチャがインプリントされ、これらのテクスチャは、同じである場合も、異なる場合も、周期的なテクスチャの一部である場合もある。テクスチャリングは、フレキシブルスタンプの下方に存在する大規模の基材に1回通すことによって行われる。テクスチャが付与された基材は、そのままの状態でさらに使用することも、小片に分離することも可能である。これは、大型基材での小型マスタの多重複製の方法であってよい。
【0038】
フレキシブルスタンプの堅牢な設計は、スポットよりも小さい基材のインプリントへのフレキシブルスタンプの使用を制限するものではない。こうした使用は依然として可能であるが、ただし歩留まりに影響がある可能性がある。
【0039】
フレキシブルスタンプのスポットの数は、制限されない。
【0040】
中間接着層を使用する場合、スポットと支持体との接着接続は、永続的または可逆的のいずれでもよい。可逆的接続とは、例えば、溶媒のような化学薬剤の使用、加熱、機械的応力またはそれらのいずれかの組み合わせによってスポットを支持体から取り外すことができることを意味する。取り外しは、支持体が損傷しないように実施することができる。一実施形態では、スポットを支持体から完全に取り外すことができ、例えば支持体に新しいスポットを接着することによって、支持体を再使用することができる。
【0041】
一実施形態では、スポットのポリマー材料は、50mN/m未満の表面自由エネルギーを有することができ、一実施形態では、表面自由エネルギーは、35mN/m未満であるか、30mN/m未満であるか、またはさらに低い。一実施形態では、スポットのポリマー材料は、エポキシド、チオール、ポリビニル樹脂、アクリレート、メタクリレート、ポリエーテル、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化ポリエーテル、シロキサン、シロキサンアクリレートまたはそれらのブレンドのような、フレキシブルスタンプを使用するインプリンティングプロセスで通常使用される硬化した樹脂からの容易な剥離を可能にする接着性を示すように選択される。
【0042】
スポットのポリマー材料は、粘着防止特性を有することができる。そうでない場合には、フレキシブルスタンプに、使用前に粘着防止処理を施してもよい。フレキシブルスタンプのこのような表面処理は、プラズマ処理であってもよいし、湿式プロセス、蒸気プロセス、気相プロセスまたはこれらのプロセスの組み合わせによる粘着防止コーティング処理であってもよい。
【0043】
スポット間の、スポットで覆われていない支持体材料は、スポットと同じ低い表面自由エネルギーを有することができ、例えば、50mN/m以下ないし35mN/m程度またはさらにそれを下回る表面自由エネルギーを有することができる。低い表面エネルギーは、支持体材料の固有の性質であってもよいし、追加の表面処理プロセスによって支持体材料上に生じさせることも可能である。支持体のこのような表面処理は、プラズマ処理であってもよいし、湿式プロセス、蒸気プロセス、気相プロセスまたはこれらのプロセスの組み合わせによる粘着防止コーティング処理であってもよい。
【0044】
別の好ましい実施形態では、スポット間の、スポットで覆われていない支持体材料は、1回のインプリンティング工程で処理される複数の小型基材の縁部によってフレキシブルスタンプが損傷しないように保護するために、ハードコートの上面を有することができる。
【0045】
一実施形態では、スポットの表面は、支持体の第1の表面の上方に存在する。このようなスポットは、支持体に追加されるようなものである。一実施形態では、スポットの上面は、支持体の第1の表面の上方に、インプリンティングパターンの最も深い凹部の深さよりも高い位置に存在する。別の実施形態では、スポットの表面は、第1の表面の上方に、用途に応じてフレキシブルスタンプによってテクスチャが付与されるインプリンティング可能な媒体の層の厚さのばらつきよりも高い位置に存在する。組み合わせることも可能であるこれら双方の実施形態には、支持体の材料がインプリンティング可能な媒体と接触しないようにするという目的がある。
【0046】
一実施形態では、支持体上のスポット間にチャネルが形成される。前記チャネルは、異なるスポット間の境界であると解釈することができ、さらに前記チャネルは、用途に応じてフレキシブルスタンプを使用して実施することができるインプリンティングプロセス中に、ある機能を有することができる。フレキシブルスタンプ、基材およびインプリンティング可能な媒体のシステム内に封じ込められた過剰なインプリンティング可能な媒体または空気のいずれかを、前記チャネルを通じて逃がすことができる。チャネルと同様の効果は、材料の異なるスポット間のクリアリングによっても達成できる。チャネルとは対照的に、本願によるクリアリングは、チャネルよりも大きな空所領域である。チャネルがより線状であるのとは対照的に、クリアリングはより領域状である。総じて、チャネルおよびクリアリングはどちらも空所領域であり、チャネルはより線状であるのに対し、クリアリングはより空間状である。本願を通じて、「チャネル」および「クリアリング」という用語は同義で用いられ、つまり、特に言及がない場合、いずれか一方の用語が用いられていれば、双方の用語を意味する。
【0047】
本願はさらに、請求項14記載のフレキシブルスタンプの製造方法に関する。一実施形態では、本方法はさらに、テクスチャ領域を含む少なくとも1つのマスタを提供する工程と、1つ以上のマスタのテクスチャ領域の幅および長さと同じサイズであるかまたはそれより大きい幅および長さを有する支持体を提供する工程と、マスタおよび/または支持体に硬化性樹脂を供給する工程と、支持体およびマスタを、間にある樹脂と接触させる工程と、任意に支持体を加圧し、この加圧を、樹脂がテクスチャ領域を充填し、テクスチャ領域を覆う層を形成するように行う工程と、樹脂がマスタおよび支持体の双方と接触した状態で樹脂を硬化させる工程と、硬化した樹脂を有する支持体をマスタから分離する工程と、少なくとも1つのマスタを接触面に対して相対的に、かつ支持体の面に対して平行な面内で移動させるか、またはその逆を行う工程とを含み、支持体およびマスタを樹脂と接触させる工程、支持体を加圧する工程、樹脂を硬化させる工程、および硬化した樹脂を有する支持体をマスタから分離する工程を、少なくとも2回実施する。
【0048】
本願による支持体は、製造されるフレキシブルスタンプの骨格の一種を形成し、任意のフレキシブル材料であってよい。一実施形態では、支持体は、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートまたは他のフレキシブルであるが堅牢なポリマー材料のプラスチック箔である。支持体はまた、例えば薄いガラスシート、薄い金属シート、または薄型のものが1つ以上のポリマー材料の中に埋め込まれた複合材料であってもよい。
【0049】
一実施形態では、支持体は、支持体を通じた樹脂の放射線誘導硬化を可能にするために、可視光および/またはUV光に対して透明であってよい。
【0050】
一実施形態では、支持体は、放射線誘導硬化中の劣化を防止するために、UV保護剤を含むことができる。可能なUV保護剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)の群のものであってよい。
【0051】
一実施形態では、支持体は、硬化性樹脂の典型的な硬化温度において損傷を受けることや機械的安定性を失うことのないように、耐熱性とすることができる。
【0052】
マスタは、典型的には、耐久性のある材料の剛性の平坦なプレートである。一実施形態では、マスタは、鋼、ニッケル、銅またはアルミニウムのような金属でできていてよい。一実施形態では、マスタは、ケイ素、石英またはガラスでできていてよい。一実施形態では、マスタは、プラスチック箔またはプラスチックシートであってよい。一実施形態では、マスタは、シリコンウェハーである。マスタは、円形、楕円形、矩形、三角形、多角形または不規則形などの任意の形状を有することができる。
【0053】
マスタは、テクスチャ領域を含む。テクスチャ領域は、テクスチャを形成する凹部および凸部を含むマスタの表面上の領域であり、テクスチャは、規則的であってもランダムであってもよく、また任意の種類の描画、画像またはパターンを形成することができる。テクスチャ領域は、ミリングのような任意の彫刻技術によってマスタの表面に彫刻することによって形成することができる。他の技術としては、例えばレーザーアブレーション、グレースケールリソグラフィー、ウェハースケールリソグラフィーおよびエッチングがあるが、これらに限定されるものではない。テクスチャ領域が有する表面積は、最大でも支持体の表面積の半分である。テクスチャ領域は、矩形、三角形、多角形、円形、楕円形または不規則形など、任意の形状を有することができる。テクスチャ領域は、マスタとは異なる形状を有することができる。テクスチャ領域は、マスタより小さくてもよい。したがって、例えば円形のマスタの内側に矩形のテクスチャ領域を設けることが可能である。
【0054】
マスタは、検出マーカーを含むことができる。本願による検出マーカーは、例えばカメラおよびコンピュータを備えた検出システムによって検出される構造体であり、これによりマスタの位置および向きを正確に決定することができる。検出マーカーは、マスタの表面に彫り込むことや、例えば永久インクを用いてマスタ上に描画または塗工することが可能である特定のパターンであってよい。検出マーカーは、マスタの材料とは視覚的に異なる材料の小片であって、マスタに接着、溶接またははんだ付けされたものであってもよい。
【0055】
硬化した樹脂を有する支持体をマスタから容易に分離できるようにするため、マスタを、フレキシブルスタンプの製造方法への供給前に粘着防止剤で処理することができる。可能な粘着防止剤としては、低粘度シリコーン油、パラフィン油、脂肪油、脂肪族界面活性剤、フッ素化界面活性剤、脂肪族シロキサン、フッ素化ホスホン酸、シロキサンまたは脂肪族もしくはフッ素化シランを挙げることができる。フレキシブルスタンプの製造方法を適切に実施するためには、マスタ上の粘着防止剤と硬化性樹脂とが互いに混合しないことが必要である。マスタのテクスチャ領域を含む表面は、最大で50mN/mの表面自由エネルギーを有することができる。一実施形態では、テクスチャ領域を含むマスタの表面の表面自由エネルギーは、最大で35mN/mである。別の実施形態では、テクスチャ領域を含むマスタの表面の表面自由エネルギーは、最大で25mN/m、または最大で15mN/mである。
【0056】
ディップコーティング、滴下、スリットコーティング、ロールコーティング、ウォーターフォールコーティング、スプレーコーティング、蒸着またはインクジェット印刷などの任意の可能な計量供給技術によって、マスタおよび/または支持体に硬化性樹脂を供給することができる。硬化性樹脂をマスタに直接供給してもよいし、硬化性樹脂を支持体にコーティングし、次いで支持体をマスタと接触させた際にマスタに供給してもよい。一方では樹脂のオーバーフローを回避し、他方ではテクスチャ領域を覆う樹脂層を確実に形成できるようにするために、制御された様式でマスタまたは支持体のいずれかに硬化性樹脂を計量供給することができる。一実施形態では、1つ以上の液滴、液だまり、線、円、楕円、または施与後に分配される任意の他の幾何学的な計量分配パターンとしてマスタに硬化性樹脂を施与することができる。加圧時にマスタのテクスチャ領域を覆う層が形成されるように、マスタおよび/または支持体上に1つ以上の液滴を配置することができる。硬化性樹脂は、エポキシド、チオール、ポリビニル樹脂用モノマー、アクリレート、メタクリレート、ポリエーテル、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化ポリエーテル、シロキサン、シロキサンアクリレートまたはそれらのブレンドからなる群から選択することができる。
【0057】
支持体を、マスタ上の樹脂と接触させる。一実施形態では、本方法工程は、支持体とマスタが直接接触せず、樹脂が支持体とマスタとを互いに分離する層を形成するように行われる。支持体とマスタとの間の距離を調整することにより、支持体とマスタとの間の樹脂層の厚さを調整することができ、樹脂の分布を制御することができる。マスタと支持体との間の距離を小さく選択すればするほど、樹脂層は薄くなる。樹脂は、硬化後に樹脂が支持体の材料と強い接着力を形成するが、他方ではマスタの表面と接着力を形成しないように選択することができる。
【0058】
支持体をマスタ上の樹脂と接触させ、この接触を、樹脂がマスタのテクスチャ領域を充填し、テクスチャ領域を覆う層を形成するように行う。樹脂の粘度によっては、支持体および樹脂にかかる圧力によって、テクスチャ領域を含むマスタ上に樹脂があふれる場合があり、この樹脂の流れが、樹脂を分配する上で重要な役割を果たす。このため、樹脂の流れを制御するために、非常に良好に制御された様式で加圧することができる。例えば、リニアモーターや油圧または空気圧プレスのような、非常に良好に制御された様式で加圧する手段を備えたローラを使用して加圧することができる。
【0059】
樹脂がマスタおよび支持体の双方と接触した状態で樹脂を硬化させる。硬化は、マスタ、樹脂および支持体のシステムを、例えばオーブンまたは赤外線による加熱を用いて硬化温度まで加熱する熱硬化など、当業者に公知の任意の方法で実施することができる。マスタまたは支持体のいずれかが、例えば多くの金属が有するような高い熱伝導性を有する場合には、熱硬化は簡略化される。硬化はまた、適切なランプで放射される可視光線または紫外線を使用して実施することもできる。可視光線または紫外線による硬化は、例えば支持体がポリマー箔である場合やマスタの材料が石英である場合のように、少なくともマスタまたは支持体が可視光線または紫外線に対して透明である場合にのみ可能である。マスタおよび支持体が樹脂と接触した状態で硬化を行うことで、マスタのテクスチャ領域の形状に対応する形状で樹脂が硬化することが保証される。
【0060】
硬化が完了した後、硬化した樹脂が支持体に接着した状態で支持体をマスタから分離することで、硬化した樹脂のスポットが支持体上に形成され、このスポットは、少なくともテクスチャ領域のサイズを有することができ、最大でマスタのサイズを有することができる。
【0061】
支持体をマスタから分離した後、マスタを支持体に対して相対的に、かつ支持体の面に対して平行な面内で移動させる。この移動は、例えばステージ上でマスタを移動させることによって、またはマスタをステージ上もしくはマウント上に固定したまま支持体を移動させることによって行うことができる。移動は、支持体が少なくともシフト方向でのテクスチャ領域の延在分だけシフトするように行われる。
【0062】
マスタの移動は、例えば、マスタを例えばステージ上の所定の位置に配置するデルタロボットのようなロボットを用いて実施することができる。また、少なくとも一方向に移動可能で、例えばステッピングモータやサーボモータを用いて位置決め可能なマウントにマスタを取り付けることも可能である。マスタの移動は、マスタを移動させるロボットへの接続も可能であるコンピュータに接続されたカメラなどの光学検出装置によって制御することができる。マスタの位置決めおよび方向付けが適切に行われているかどうかを確認するために、カメラによってマスタ上の検出マーカーを追跡することができる。
【0063】
また、フレキシブルスタンプの位置は、例えば光学検出装置を用いて監視することができる。これにより、フレキシブルスタンプの位置を基準としてマスタの位置を配置することができる。
【0064】
移動後、マスタに樹脂を供給する工程、支持体をマスタおよび/または支持体上の樹脂と接触させる工程、場合によっては加圧する工程、樹脂を硬化させる工程、および硬化した樹脂を有する支持体をマスタから分離する工程を繰り返すことにより、硬化した樹脂を有する支持体をマスタから再び分離した後に支持体上に第2のスポットを形成する。一実施形態では、第2のスポットは、第1のスポットとは別個のものである。マスタおよび支持体のサイズに応じて、また必要な支持体上のスポットの数に応じて、少なくともシフト方向でのテクスチャ領域の延在分だけマスタをシフトさせながら、このプロセスを必要な回数だけ繰り返すことができる。このプロセスを実施するたびに支持体上に新しいスポットが形成され、したがって、このプロセスによって、マスタのテクスチャ領域の成形像を有するスポットを多数有するフレキシブルスタンプが得られる。
【0065】
スポットのポリマー材料および/または支持体が50mN/m未満の表面自由エネルギーを有しない場合には、1つ以上のスポットを有するマスタから支持体を離した後に、追加の粘着防止処理を施すことができる。
【0066】
ロール・ツー・プレートプロセスでは、マスタと支持体との間に樹脂を挟んだ状態で、ローラを使用して支持体をマスタと接触させる。ロール・ツー・プレートインプリントプロセスを用いたインプリンティングの間、ローラが移動するか、マスタと支持体との間に樹脂を挟んだ状態で支持体およびマスタが移動するか、または双方が逆方向に移動する。移動するローラと、または樹脂を間に挟んだ状態で移動する支持体およびマスタとの間の移動において摩擦によるヒックアップが生じないようにするために、支持体および/またはマスタの移動を進めるか、またはローラ軸線の中心点の移動が動くことが提案されるが、いずれの場合も、ローラは自由回転ローラである。ローラの回転は、能動的に進められるわけではない。
【0067】
本発明はさらに、フレキシブルスタンプの製造装置であって、該装置は、少なくとも1つのマスタを収容するためのステージと、少なくとも1つのローラと、フレキシブルシート状材料と、硬化性樹脂を硬化させるための手段と、マスタをステージ上で移動させるための手段と、硬化性樹脂をマスタおよび/またはフレキシブルシート状材料に選択的に計量供給するための手段とを備える、装置に関する。
【0068】
フレキシブルスタンプは、カットアンドペーストプロセスで製造することもできる。この場合、入手可能な複数のフレキシブルスタンプまたはマスタを切断または機械加工して、タイルとも呼ばれる所望のサイズのスポットにし、これらをグループ化して支持体箔にペーストする。スポットがすでに粘着防止特性を有していることも、下流の粘着防止プロセスで粘着防止特性を付加することも可能である。
【0069】
別の下流プロセスでは、スポット間の領域に追加の材料を供給することができる。スポットまたはタイルの領域間に追加される材料は、これらの位置での表面領域を機械的または他の損傷または汚染から保護する役割を果たす。この材料は、粘着防止材料で構成することも、ハードコート樹脂やラッカーで構成することもできる。材料を追加する方法としては、例えば印刷工程など、どのようなディスペンスプロセスでも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1aは、ロール・ツー・プレートインプリントプロセスの基本的な問題を示す図であり、図1bは、基材の縁部と接触しないポリマー材料102Bの2つの別個のスポットを設けることによる、前述の問題の解決策を示す図である。
図2図2aは、それぞれテクスチャ層202を有するポリマー材料201の4つのスポットを有する支持体102を備えたフレキシブルスタンプを示す図であり、図2bは、それぞれテクスチャ領域202を有するポリマー材料201の4つのスポットを有する支持体102を備えたフレキシブルスタンプを示す図である。
図3】4つのスポットを有する支持体102からなり、各スポットは、ポリマー上層303を有する箔301からなる、提案された解決策によるフレキシブルスタンプの設計を示す図である。
図4】提案された解決策による、1つのマスタから複数のスポットを有するフレキシブルスタンプを製造する装置を示す図である。
【0071】
図1aは、ロール・ツー・プレートインプリントプロセスの基本的な問題を示しており、この方法では、支持体102Aおよびポリマー材料102B中のテクスチャ層102Cを有するフレキシブルスタンプ102を、ローラ101の使用により、2つの異なる基材103上の樹脂104と接触させる。これらの基材は基材の高さが異なるため、接触領域105で角張った接触が生じ、脆弱なポリマー層102Bが損傷する可能性がある。図1bでは、この問題が、基材の縁部と接触しないポリマー材料102Bの2つの別個のスポットを設けることで解決されている。
【0072】
図2は、提案された解決策による異なるフレキシブルスタンプの設計を示している。図2aは、それぞれテクスチャ層202を有するポリマー材料201の4つのスポットを有する支持体102を備えたフレキシブルスタンプを示す。このテクスチャ層は、基材上の活性領域とも呼ばれる好ましいテクスチャの反転体を有する。図2bは、それぞれテクスチャ領域202を有するポリマー材料201の4つのスポットを有する支持体102を備えたフレキシブルスタンプを示す。ポリマー材料201のスポットの間には、方法最適化材料203が加えられている。これは、ハードコート材料または粘着防止特性を有する材料とすることができる。
【0073】
図3は、提案された解決策によるフレキシブルスタンプの設計を示しており、このフレキシブルスタンプは、4つのスポットを有する支持体102からなり、各スポットは、ポリマー上層303を有する箔301からなる。ポリマー層303は、テクスチャ層302を有する。
【0074】
図4は、提案された解決策による、1つのマスタから複数のスポットを有するフレキシブルスタンプを製造する装置を示す。テクスチャ領域401Aを有するマスタ401が、インプリントステージ402に載置される。このインプリントステージ402は、インプリントプロセスにおいてマスタ401を支持し、グライダー403を使用して装置内を搬送し、ここで、インプリント方向が矢印で示されている。マスタ401の位置は、ロボット412により調整可能である。本図では、ディスペンスツール410により樹脂液滴409がマスタに印刷される。樹脂409を有するマスタ401をラミネーションローラ408Aにより支持体404と接触させることで、テクスチャ層404Bを有するポリマー層404Aが形成される。この場合、支持体は、2本のベルト406に取り付けられた2つのクランプ405Aおよび405Bによって保持される。支持体の移動は、ベルトによって進められる。次の工程では、UV光源411からのUV光でポリマー層404Aを硬化させ、剥離ローラ408Bを使用して、ポリマー層404Aおよびテクスチャ層404Bを有する支持体404をマスタ401から取り外す。このプロセスを、インプリントスレッジ402およびマスタ401が初期位置に戻された後に繰り返すことができる。新しいサイクルの前に、ロボット412によりマスタ401を再配置することができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリンティングプロセスで使用するためのフレキシブルスタンプ(102)であって、前記フレキシブルスタンプ(102)は、
・第1の表面を含む支持体(102A)と、
・フレキシブル材料(201,301,303)の少なくとも2つのスポットと
を含み、前記スポットは、
互いに離れており、かつ前記支持体(102A)の前記第1の表面に接着しており、かつ
・表面を有し、前記表面は、
前記支持体(102A)の前記第1の表面の上方に存在しており、
・前記支持体(102A)の前面に対して平行であり、かつ
・インプリンティングパターン(202,302)でテクスチャ加工が施されており、前記インプリンティングパターン(202,302)は、前記スポットのサイズよりも小さいサイズを有する、
フレキシブルスタンプ(102)
【請求項2】
前記フレキシブル材料が、ポリマー材料である、請求項1記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項3】
前記スポットの前記表面は、前記支持体(102A)の前記第1の表面の上方に、前記インプリンティングパターン(202,302)の最も深い凹部の深さよりも高い位置に存在する、請求項1または2記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項4】
すべてのスポットが同じテクスチャを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項5】
前記スポットが、前記支持体(102A)に可逆的に接着している、請求項1から4までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項6】
前記スポットのポリマー材料が、50mN/m、好ましくは35mN/m、さらにより好ましくは30mN/m以下の表面自由エネルギーを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項7】
フレキシブルなポリマー材料が、エポキシド、チオール、ポリビニル樹脂、アクリレート、メタクリレート、ポリエーテル、フッ素化アクリレート、フッ素化メタクリレート、フッ素化ポリエーテル、シロキサン、シロキサンアクリレートまたはそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項8】
少なくとも1つのスポットが複数の層を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項9】
少なくとも1つの層が、薄いガラスシート、薄い金属シートまたはポリマー材料の薄い層であり、より具体的には、ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートの薄い層である、請求項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項10】
前記フレキシブルスタンプが、前記支持体(102A)上の前記スポット間にチャネルまたは他の空所領域を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項11】
前記スポット間の領域に追加の材料が充填されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項12】
前記追加の材料が、粘着防止材料またはハードコート樹脂である、請求項11記載のフレキシブルスタンプ(102)
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のフレキシブルスタンプ(102)の製造方法であって、前記方法は、
a.テクスチャ領域を含む少なくとも1つのマスタを提供する工程と、
b.支持体(102A)を提供する工程と、
c.前記マスタまたは前記支持体(102A)に硬化性樹脂を供給する工程と、
d.前記支持体(102A)および前記マスタを、間にある前記樹脂と接触させる工程と、
e.任意に前記支持体(102A)を加圧し、前記加圧を、前記樹脂が前記テクスチャ領域を充填し、前記テクスチャ領域を覆う層を形成するように行う工程と、
f.前記樹脂が前記マスタおよび前記支持体(102A)の双方と接触した状態で前記樹脂を硬化させる工程と、
g.硬化した前記樹脂を有する前記支持体(102A)を前記マスタから分離する工程と、
h.前記少なくとも1つのマスタを接触面に対して相対的に、かつ前記支持体(102A)の面に対して平行な面内で移動させる工程と
を含み、
前記工程d)から前記工程g)を少なくとも2回実施することによりフレキシブルスタンプ(102)が得られ、前記フレキシブルスタンプ(102)は、第1の表面を含む支持体(102A)と、フレキシブル材料の少なくとも2つのスポットとを含み、前記スポットは、互いに離れており、かつ前記支持体(102A)の前記第1の表面に接着しており、かつ表面を有し、前記表面は、
・前記支持体(102A)の前記第1の表面の上方に存在しており、
・前記支持体(102A)の前面に対して平行であり、かつ
・インプリンティングパターン(202,302)でテクスチャ加工が施されており、前記インプリンティングパターン(202,302)は、前記スポットのサイズよりも小さいサイズを有する、方法。
【国際調査報告】