(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】歯切り盤にワークピースを自動的に搬送するための方法
(51)【国際特許分類】
B23F 23/04 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B23F23/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529111
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022081540
(87)【国際公開番号】W WO2023083993
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021005648.5
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン - プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシアス フィリッピン
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025HH02
(57)【要約】
本発明は、特に200mm超の直径及び/又は特に100kg超の重量を有するワークピースを、当該ワークピースに歯切り加工を施す歯切り盤に自動的に搬送するための方法に関し、この方法では、ワークピースが、準備スポットにおいて、モータによってもたらされる相互的な相対運動を実施する2つのグリッパアームによって把持され、両グリッパアームによって把持された状態において、モータによる両グリッパアームの共通の移動によって、準備スポットから移動経路に沿って、歯切り盤の受容スポットへと移動され、共通の移動は、連成して駆動制御される少なくとも2つのモータ駆動部によってもたらされ、それら2つのモータ駆動部の内の一方は、相対運動に寄与するか、又は相対運動をもたらす第1のモータ駆動部である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に200mm超の直径及び/又は特に100kg超の重量を有するワークピースを、当該ワークピースに歯切り加工を施す歯切り盤に自動的に搬送する方法であって、
ワークピース(W)は、準備スポット(B)において、モータによってもたらされる相互的な相対運動を実施する2つのグリッパアーム(1、2)によって把持され、両グリッパアームによって把持された状態において、モータによる両グリッパアームの共通の移動によって、前記準備スポットから移動経路に沿って前記歯切り盤の受容スポット(A)へと移動される方法において、
前記共通の移動は、連成して駆動制御される少なくとも2つのモータ駆動部によってもたらされ、前記2つのモータ駆動部の内の一方は、相対運動に寄与するか、又は相対運動をもたらす第1のモータ駆動部であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも2つのモータ駆動部の内の第2のモータ駆動部は、前記相対運動をもたらすために使用可能な第2の駆動部であり、特に両モータ駆動部は、前記ワークピースを把持するための前記相対運動をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記移動経路は、円弧状の経路区間を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記移動経路は、第3のモータ駆動部によりもたらされる軸線方向の、特に垂直方向の移動成分を有する経路区間を含む、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記ワークピースを把持して移動させる際に、前記グリッパアームのそれぞれが辿る各グリッパアーム移動経路は重複する、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記ワークピースは、前記ワークピースの加工後に、特に前記準備スポットとは異なる保管スポット(C)へと搬送され、特に前記移動経路を辿る場合と同じ移動方向に搬送され、前記グリッパアームは、特に前記保管スポットから、次のワークピースを把持するために再び前記準備スポットに向かって移動し、特に同じ移動方向に移動する、請求項1から5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
ワークピースに歯切り加工を施す歯切り盤に前記ワークピースを自動的に搬送するためのローディングシステム(100)であって、
モータによってもたらされる相互的な相対運動を実施して、準備スポット(B)においてワークピース(W)を把持するための2つのグリッパアーム(1、2)と、前記準備スポットから移動経路に沿った前記歯切り盤の受容スポット(A)への両グリッパアームの共通の移動を実施するための手段とを備えるローディングシステム(100)において、
前記共通の移動に用いられる第1の動作モードにおいて連成して駆動制御される少なくとも2つのモータ駆動部が設けられており、前記2つのモータ駆動部の内の一方は、第2の動作モードにおいて相対運動に寄与するか、又は相対運動をもたらす第1のモータ駆動部であることを特徴とする、ローディングシステム(100)。
【請求項8】
第1のグリッパアーム及び第2のグリッパアームの両グリッパアームが絶対的に可動であり、特に旋回可能に取り付けられている、特に柱である少なくとも1つのベース(10)を有する、請求項7記載のローディングシステム。
【請求項9】
両グリッパアームの旋回運動の共通の中心(Z)が設けられている、請求項8に記載のローディングシステム。
【請求項10】
1つのグリッパアーム及び/又は両グリッパアームの旋回運動が360°未満、好適には340°未満、特に320°未満に制限されている、請求項8又は9記載のローディングシステム。
【請求項11】
特に所定の角度で配置されている2つの接触面を有する、特に交換可能なグリッパジョー(1a、2a)がグリッパアーム(1、2)に固定されている、請求項7から10のいずれか一項記載のローディングシステム。
【請求項12】
グリッパジョーを備えた前記グリッパアームは、力結合による保持及び/又は荷重を支持する保持のために設計されている、請求項7から11のいずれか一項記載のローディングシステム。
【請求項13】
移動平面、特に旋回平面に対して直交する方向成分を有する直線移動軸線が設けられている、請求項7から12のいずれか一項記載のローディングシステム。
【請求項14】
ワークピースに歯切り加工を施すために、特に回転テーブルとして実施されたワークピーススピンドルを有する歯切り盤を備えた歯切り加工ステーションにおいて、請求項7から13のいずれか一項記載のローディングシステムが設けられていることを特徴とする、歯切り加工ステーション。
【請求項15】
グリッパアームの自由半径方向長さと、ワークピーススピンドル軸から前記グリッパアームの旋回移動の中心までの距離との比率が、88%未満、好適には84%未満、特に80%未満である、請求項14記載の歯切り加工ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に200mm超の直径及び/又は特に100kg超の重量を有するワークピースを、当該ワークピースに歯切り加工を施す歯切り盤に自動的に搬送するための方法に関し、この方法では、ワークピースが、準備スポットにおいて、モータによってもたらされる相互的な相対運動を実施する2つのグリッパアームによって把持され、両グリッパアームによって把持された状態において、モータによる両グリッパアームの共通の移動によって、準備スポットから移動経路に沿って歯切り盤の受容スポットへと移動する。
【背景技術】
【0002】
グリッパアームを備えたローディングシステムによる歯切り盤のその種のローディングは、この技術分野においては広く知られており、これに関して、例えば独国特許出願公開第102017005756号明細書に開示されているようなリングローダシステムが最も普及していると考えられる。この種のリングローダは、それぞれが2つのグリッパアームを備えた複数のグリッパユニット、例えば(180°の角度間隔を置いて)2つ、(120°の角度間隔を置いて)3つ、又は(90°の角度間隔を置いて)4つのグリッパユニットを有している。共通のタイミングモータによって、各グリッパユニットは、加工ステーション、待機スポット及び/又はピックアップスポット、また場合によっては別の加工ステーションのような個々の位置間において更にタイミング制御される。このようにして、ローディング時間及びアンローディング時間を非常に短く維持することができ、また主生産時間に対する非生産時間の好適な比率を達成することができる。多くの用途、特により大きい寸法のワークピースに関する用途では、この比率は余り重要ではなく、その種のシステムに関しては、ワークピースのサイズに応じて、ワークピースを歯切り盤の機械回転テーブルへと引き揚げるために、クレーン上のローディングシステムも使用される。
【発明の概要】
【0003】
本発明が基礎とする課題は、冒頭で述べたような方法を、特に、より大きい寸法のワークピースに関して有利に発展させることである。
【0004】
本発明は、方法技術的な観点では、連動して駆動制御される少なくとも2つのモータ駆動部によって共通の移動がもたらされ、それら2つのモータ駆動部の内の一方は、相対運動に寄与するか、又は相対運動をもたらす第1のモータ駆動部であることを本質的な特徴とする、冒頭で述べたような方法の発展形態によって解決される。
【0005】
ここで本発明は、上述の従来のリングローダシステムでは、ワークピースの寸法がより大きい場合の拡張された材料設計を補うことはもはやできないが、大きい寸法のワークピースに対して従来のローディングシステムでより高いレベルの自動化を依然として実現できる利点があるという認識に基づいている。
【0006】
特に好適な構成では、両グリッパアーム以外に別のグリッパアームは存在せず、ローディングシステムは、それら両グリッパアームのみを有する。これによって、主生産時間に対する非生産時間の比率の劣化を甘受した上で、材料及び重量が節約される。
【0007】
1つの特に好適な実施形態では、グリッパアーム及び/又はそれらの相対移動のためのモータ駆動部は、300mm超、それどころか450mm超、更には600mm超の直径を有し、且つ/又は150kg超、更に200kg超、それどころか400kg超、更には600kg超、若しくはそれ以上の重量を有するワークピースを保持するように設計されている。グリッパアームはこのために、相応に高い剛性を備えており、またワークピースを力結合により保持する場合には、グリッパアームに対応付けられている駆動部も相応に高いトルクを加えることができると解される。
【0008】
1つの別の好適な実施形態では、少なくとも2つのモータ駆動部のうちの第2のモータ駆動部が、相対運動をもたらすために使用可能な第2の駆動部であり、特に両モータ駆動部は、ワークピースを把持するための相対運動をもたらす。
【0009】
共通の連成運動において、連成している駆動制御は、力結合による保持が予定されている場合、好適には、押し動かされないグリッパアームが、トルク制限のある、特に回転トルク制限のある反トルクを加えるように設けられている。この種のばねは、共通の移動に抵抗する、押し動かされないグリッパアームに作用するばねと機械的に等価であり、好適には、駆動制御技術により実現される。
【0010】
1つの好適な構成では、移動経路が円弧状の経路区間を含み、また特に、移動平面に投影して見たときに円軌道である。この構成は、周囲で運動が行われる柱状のベースと良好に組み合わせることができる。
【0011】
1つの別の好適な構成では、移動経路が、第3のモータ駆動部によりもたらされる軸線方向の、特に垂直方向の移動成分を有する経路区間を含む。これにより、本方法の柔軟性が向上し、また個々のステーションの高さレベルを変えることや、グリッパアームを位置決めするステーションでのワークピースのスキップが可能になる。
【0012】
1つの好適な構成では、ワークピースを把持して移動させる際に、グリッパアームのそれぞれが辿る各グリッパアーム移動経路は重複する。従って、移動経路は強制的な案内のもとに制限され、このことは、簡単な構造での位置決めの安全性及び信頼性を向上させる。
【0013】
1つの別の好適な構成では、ワークピースが、その加工後に、特に準備スポットとは異なる保管スポットへと搬送され、特に移動経路を辿る場合と同じ移動方向に搬送され、またグリッパアームは、特に保管スポットから、次のワークピースを把持するために再び準備スポットに向かって移動し、特に同じ移動方向に移動する。つまり、準備スポットでは、例えば既に新たなワークピースが加工のために準備され、その際に、今まさに加工されているワークピースの歯切り加工後に、そのワークピースが再び準備スポットに戻ってくることを待機する必要がないので、ローディングプロセスの効率が向上する。
【0014】
装置技術的な観点から、本発明は、ワークピースに歯切り加工を施す歯切り盤にワークピースを自動的に搬送するためのローディングシステムを提供し、このローディングシステムは、モータによってもたらされる相互的な相対運動を実施して、準備スポット場所においてワークピースを把持するための2つのグリッパアームと、準備スポットから移動経路に沿った歯切り盤の受容スポットへの両グリッパアームの共通の移動を実施するための手段とを備え、このローディングシステムは、実質的に、共通の移動に用いられる第1の動作モードにおいて連動して駆動制御される少なくとも2つのモータ駆動部が設けられていることを特徴としており、それら2つのモータ駆動部の一方は、第2の動作モードにおいて相対運動に寄与するか、相対運動をもたらす第1のモータ駆動部である。
【0015】
本発明によるローディングシステムの利点は、本発明による方法についての上記の説明から既に明らかである。グリッパアームを移動させるために2つの駆動部が使用されるヴァリエーションも考えられる。この場合、第1の動作モードでは、合計4つのモータが連動して駆動制御される。
【0016】
構造的に、このローディングシステムは、第1及び第2の両グリッパアームが絶対的に可動であり、特に旋回可能に取り付けられている、特に柱状の少なくとも1つのベースを有することが好適である。このために、グリッパアーム用の垂直方向の適切な保持部を設けることができ、この保持部はレールに沿って、特にリングレールに沿って移動し、またそれらの保持部に対してグリッパアームは垂直方向に移動可能である。
【0017】
上記において既に言及した強制的な案内に関して、両グリッパアームの旋回移動は共通の中心を有する。
【0018】
中心が共通のこの種の円形移動経路では、基本的にグリッパアームの無限の回転を実現することができ、これにより、更に下記において説明するような役割交換と、別のグリッパアーム面への切り替えによる運動学的なクランプジョーとが簡単に可能となる。しかしながら、1つのグリッパアーム及び/又は両グリッパアームの旋回運動が360°未満、好適には340°未満、特に320°未満に制限されているヴァリエーションも好適である。これによって、構造的により簡潔でより高い信頼性の構成がもたらされる。
【0019】
更に、構造的には、特に所定の角度で配置されている2つの接触面を有する、特に交換可能なグリッパジョーがグリッパアームに固定されている。所定の角度で配置されている接触面の構成に関して、種々の大きさのワークピースも同じクランプジョーで保持することができるようになる。しかしながら、両グリッパアームはその移動強制案内にわたり平行ではなく、相互に鋏のように位置しているので、ワークピースが接触面において対称的に位置している必要はなく、力結合により保持する場合には、僅かにオフセットされて保持される。この関係において、好適には、半径方向に対する接触面の角度は、ワークピースを保持する際の両グリッパアームが成す角度の少なくとも半分の角度となり、好適には少なくとも1°、更に好適には少なくとも2°、特に少なくとも3°より大きい。交換可能なグリッパジョーに関して、グリッパジョーセットが提供されてもよく、そのグリッパジョーは、半径方向に対して異なる角度及び/又は半径方向総延伸部を有する。接触面は湾曲していてもよいが、これらの角度のうえに位置するさまざまな(接線)角度を有する。
【0020】
上記において既に説明したように、グリッパジョーを備えたグリッパアームは、力結合による保持及び/又は荷重を支持する保持のために設計することができ、後者の場合、半径方向及び接線方向に延在するフランジ又はL字形の段部をグリッパジョーに設けることができる。
【0021】
更には、同様に上記において既に言及したように、好適には、移動平面、特に旋回平面に対して直交する方向成分を有する直線移動軸線が設けられている。これによって、水平方向の移動平面においては、個別に又は一緒に、異なる高さレベルに到達することができる。
【0022】
更に本発明は、ワークピースに歯切り加工を施すために、特に内在的なものとして実施されたワークピーススピンドルを備えた歯切り盤を有する歯切り加工ステーション、また前述の態様の1つに従うローディングシステムも保護の対象とする。
【0023】
好適には、歯切り加工ステーションについては、グリッパアームの自由半径方向長さと、ワークピーススピンドル軸からグリッパアームの旋回移動の中心までの距離との比率が、88%未満、好適には84%未満、特に80%未満である。このことは、グリッパアーム及び保持構造に対する剛性要求及び曲げ剛性要求を緩和する。
【0024】
グリッパアームの周方向移動のための駆動部は、歯付リングレールのような駆動レールを介して駆動連結をもたらす。
【0025】
付加的な駆動レールとして使用されるか、又はガイドレールとして用いられる第2のレールは、好適には垂直方向において、好適には少なくとも40cm、特に少なくとも60cmの距離を置いて設けられている。
【0026】
駆動伝達の観点では、歯車による連結が考えられるが、例えば走行レール上を走行する駆動摩擦ホイール又は他の駆動技術/レール技術も考えられる。好適な構成では、グリッパアームを保持するための保持サポートが、両(リング)レール構造間に配置されており、そこにおいて、グリッパアームは好適には更に軸線方向において、また好適には垂直方向において移動可能である。
【0027】
上記において既に説明したように、(リング)レールにおいては、好適には、それぞれが丁度1つのグリッパアームを保持する丁度2つの保持サポートのみが周回する。1つの好適な構成では、保持サポートをレールに沿って移動させるための駆動部が、保持サポートと一緒に移動するように配置されている。グリッパアームのそれぞれの保持サポートに対してグリッパアームを垂直方向に移動させるための駆動部は、1つのヴァリエーションでは、一緒に移動するように配置することができ、別のヴァリエーションでは、空間的に固定されて、好適には柱状のベース内部に配置されており、その中心軸線は、重力に対して直交する平面に投影させて見ると、その移動時のワークピース(運行)円の中心を規定する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の更なる詳細、特徴及び利点は、添付の図を参照した以下の説明から明らかになる。
【
図2】種々の到達可能な位置を有するローディングシステムを示す。
【
図3】ローディングシステムのローディングサイクルを示す。
【
図4】ローディングシステムの別のローディングサイクルを示す。
【
図5】グリッパアームの相対位置が異なっている、ローディングシステムを示す。
【
図8】
図7のローディングシステムの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1の概略図においては、ワークピースWがグリッパアーム1、2のグリッパジョー1a、2aの間に保持されているように、ワークピースWが輪郭無しで表されている。グリッパアーム1、2は、概略的にリングとして示されているベース10に対して旋回可能に配置されており、また共通の中心Zに対して実質的に半径方向に延在している。基準軸線Xに対する旋回角度α
1、α
2は調整できるので変更可能である。このために、各グリッパアーム1、2は、専用に割り当てられている固有のモータ駆動部を有するが、このモータ駆動部は、
図1の概略図には示されていない。重力方向に対して直交する平面における、モータ駆動部のグリッパ移動バランスは円軌道である。
【0030】
ワークピースWを把持するために設けられている動作モードでは、両グリッパアーム1、2が、相互に接近するように移動してワークピースWを把持するために、それらグリッパアーム1、2の駆動部の対応する駆動制御によって相互に反対方向に移動する。相応に、グリッパアーム1、2をワークピースWから離すために、グリッパアーム1、2は相互に離れる方向に移動する。従って、これらの動作モードについて、各グリッパアームは相互に独立して移動し、種々のワークピースW、W’を把持することができる(
図5)。これに対して、ワークピースWが移動する場合、両グリッパアーム1、2は1つのペアとして機能し、相応に連成して駆動制御されることにより、それぞれが相互の相対位置を維持しながら、時計回り又は反時計回りに一緒に移動する。
【0031】
図2には、
図1に示したものに加えて、グリッパアーム1、2が到達する更に別の位置が示されている。ここでBは、歯切り盤によって未だ加工されていないワークピースが準備される準備スポットを表す。
図2において、ワークピースWが実際にグリッパアーム1、2によって保持されている位置Aは、歯切り盤の受容スポット、例えばワークピースWが位置決めされて載置される回転テーブルを表す。位置AにおけるワークピースWの加工後に、ワークピースは保管スポットCに運ばれ、そこから更に搬出することができる。
【0032】
図2aから明らかなように、到達するスポットA、B、Cを、相互に約120°で配置することができる。しかしながら、好適には、この両グリッパアーム1、2のみが実現されており、従来のリングローダの場合のように複数のグリッパアームペアは設けられていないので、角度位置にいては、ステーション/スポットA、B、Cの旋回経路上の任意の構成も考えられる。
図2bにおいては、グリッパアーム1、2が準備スポットBにあり、
図2cでは保管スポットCに示されている。
【0033】
図3に基づいて、ワークピースWをローディングするための好適なサイクルを説明する。ここで、
図3aは、約120°の共通した旋回移動を示しており、この旋回移動によって、ワークピースWが準備スポットBから、加工のために、例えば機械回転テーブルのような受容スポットAへと搬送される。
図3cは、既に加工されたワークピースWの、受容スポットAから保管スポットCへの搬送を示す。同様に約120°であるこの移動は、
図3aによるローディングと同じ回転方向において行われる。ここで、後続のワークピースを準備スポットBからピックアップするために、グリッパが、
図3a及び
図3cとは逆の回転方向で移動し、その際に(ワークピースが存在しない)受容スポットAに再び到達し、全体として、(半時計回りで)約240°の移動が行われる。このヴァリエーションに関しては、グリッパがベース10を中心にして無限に回転できることは必要とされない。むしろ、それぞれの旋回可能性は制限されており、ここでは約300°に制限されている。
【0034】
更に、
図3a、c及びbのステップは、別のワークピース毎に周期的に繰り返される。
【0035】
図4に基づいて説明する別の構成では、
図4a及び4cの時計回りで行われる移動は、既に説明した
図3a及び3cの移動に対応する。再び準備スポットへと戻る移動ステップにおいて、グリッパは、その前のステップのように反時計回りで移動するのではなく、更に時計回りで(直接的に)保管スポットCから準備スポットBへと移動する。グリッパアーム1、2の回転軸受けは、この構成のために無限に回転可能であるように構成されている。
【0036】
このヴァリエーションでは、
図4aにおいて先行するグリッパアームが(ワークピースがローディングされていない状態で)330°時計回りに旋回し、即ち他方のグリッパアームの図示された位置に旋回し、且つその他方のグリッパアームが、前述のもう一方のグリッパアームの位置まで約30°進むことによって、位置を入れ替えることもできる。
図6に示すように、グリッパアーム1、2が、自身のグリッパジョー1a、2a側とは反対側において、別の異なるグリッパジョー1a’、2a’を有する場合、特定のサイズ範囲を超える種々のワークピースに適合させるために別のやり方で設けられるクランプジョーは必要なく、グリッパアームの位置を入れ替え、クランプジョー1a’、2a’の別のペアを使用すれば足りる。クランプジョー1a、2aは、接触面が「V」字形の鈍角の頂角を有する構成となるように設計されている。V字の脚部は、湾曲していてもよく、円形になるまで湾曲するように延在していてもよい。またワークピースの支持を維持するために、水平の接触面を備えるように修正することも考えられる。
【0037】
1つの好適な構成では、グリッパアーム1、2を高さ方向に、即ち重力方向gに向かう方向又は重力方向gとは反対方向に移動させることもできる。これについても2つのヴァリエーションが考えられる。即ち、個々のグリッパアーム1、2それぞれについて、それぞれの個別の駆動部を有する独立した個別の高さ調整機能は、同期された共通の上昇移動又は下降移動のために連成して駆動制御することもできるし、個別に駆動制御することもできる。後者は、考えられるヴァリエーションでは、無限の回転可能性が与えられていない構成ヴァリエーションにおいて、グリッパアームの位置の入れ替えも実現する。
【0038】
別の構成では、両グリッパアームの上昇移動又は下降移動を、機械的に強制的に連成させることも可能であり、また特に、1つの共通の駆動部のみを介して実現することも可能であるかもしれない。このようにして、好適には少なくとも20cm、特に少なくとも40cm、更に好適には少なくとも60cmの高さ範囲の調整が実現され、それによって、例えば、個々の位置A、B、C間の高さレベル差が補整されるか、又は個々のグリッパアーム1、2は個別に若しくは両方とも、ワークピースの位置決め及び把持のために、ワークピースの上に引き上げられる。
【0039】
図面には示していない別の構成では、ステーションA、B、Cが、例えば異なる幾何学形状で、例えば線形に相前後して配置されていてもよい。この場合、ワークピースの移動経路も線形であると考えられ、またグリッパアームが線形レールに沿って移動可能であってもよい。移動経路の形状は、それ以上は制限されておらず、また移動は、グリッパアーム及びその軸受けの構造的な構成によって、湾曲した他の経路を辿ることも可能であると解されるが、しかしながら、重力方向gに対して直交する平面への投影で図面に図示した(運行)円軌道が好適であると解される。
【0040】
以下では、
図7及び
図8を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
図7には、柱11の形態の、ローディングシステムのベースが示されており、この柱11の、柱脚部11bを備えた下部柱領域11aは、高さ方向において間隔をあけて取り付けられている2つのレール12を支持しており、それら2つのレールは、柱11を中心にしてリング状に延在している。これらのレール12の少なくとも1つは、駆動レールとして構成されている。図示した実施形態では、これは、歯車駆動連結/歯付レール駆動連結のための歯切りされたリングレーンの形態であるが、しかしながら、摩擦歯車等のための走行レールのような他のヴァリエーションも考えられる。第2のレールも同様に、駆動式連結の走行レールとして用いられてもよいし、他のガイドレールとして用いられてもよい。後者の場合には、例えば、自由走行するガイドローラのための走行レールとして用いられてもよい。
【0041】
2つのレール間には、又はこの実施例ではそれら2つのレールを包囲するように、2つの垂直支持クランプ14が設けられており、それら2つの垂直支持クランプ14は、周方向においてレール12に沿って移動することができる。このための各駆動部は、一緒に移動可能なように垂直支持クランプ14に設けられているが、ここではモータ自体は図示されていない。従って、各支持クランプ14に取り付けられている両グリッパアーム1、2(
図8)は、上記において詳細に説明したように、(ワークピースWを把持するため/離すために)相互に独立して周方向において可動であるか、又は(重力に対して直交する投影面において円形の移動経路に沿ってワークピースWを移動させるために)連成して駆動制御される。
【0042】
グリッパアーム1、2は垂直方向にも移動可能である。つまりこのために、垂直支持クランプの半径方向外側に向けられた面は、移動レールとして形成されている。1つの構成では、垂直方向の移動は1つの共通の駆動部を介して実現されてもよく、この共通の駆動部は、例えば下部柱領域11aの内側に配置されており、また両グリッパアーム1、2に作用する。垂直移動のための1つの駆動部の代わりに、2つの独立した駆動部が実現されてもよく、それらの駆動部はそれぞれ、グリッパアーム1、2の一方に作用する。独立した両垂直駆動部の代替的な構成では、それら垂直駆動部が一緒に移動するように垂直支持クランプ14自体に配置されていてもよい。
【0043】
柱11における構成部材に参照符号18が付されており、この構成部材は、ローディングプロセス自体とは無関係であるが、例えば、加工時に波状のワークピースのための対応サポートとして用いることができるか、例えば、加工時にワークピースを覆うカバーのための支持体として用いることができる。
【0044】
図7及び
図8に示したヴァリエーションは、例えば、1200mmのワークピース直径のワークピースのために構成されている。一番低いグリッパアーム位置では、更に、底部から約400mmの距離が実現されている。この実施例では、グリッパアームの垂直方向の移動ストロークは、約800mmである。この実施例では、柱の中心軸線(ワークピースの円形運行経路の中心)から、図面においては、グリッパアーム1、2によって保持される位置のうちの加工位置(
図8)におけるワークピース中心点を通って延びる、歯切り盤の機械テーブルのワークピーススピンドル軸までの距離は、約1150mmである。
【0045】
この実施例では、グリッパアームジョーは、グリッパアーム1、2の一体型の構成部材であり、また周方向において突出するフランジ領域を有し、このフランジ領域にワークピースWが接触する。
図8において、保持されているワークピースWの反対側では、グリッパアームの接触面構造が種々に構成されており、より小さい直径のワークピースのために設計されている。これを使用するために、例えば、両グリッパアーム1、2を個別に、相互に反対の回転方向で、
図8においては右側へと旋回させ、続いて同じ回転方向で一緒に再び左側へと戻すことができ、それによって、両グリッパアーム1、2の位置が入れ替えられ、その入れ替えられた位置では、両グリッパアーム1、2の以前は外側に向けられていた面が、内側に向けられている。
【0046】
本発明は、上記の具体的な実施例において説明した特徴に限定されるものではない。むしろ、上記の説明の個々の特徴、また以下の特許請求の範囲も同様に、種々の実施形態で本発明を実現するために、単独でも組み合わせでも本質的なものであると考えられる。
【国際調査報告】