(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】磁気熱量発生器
(51)【国際特許分類】
F25B 21/00 20060101AFI20241128BHJP
H02N 10/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F25B21/00 A
H02N10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529138
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2022085011
(87)【国際公開番号】W WO2023110628
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524182064
【氏名又は名称】マグノリック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・マラッツォ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・リッサー
(72)【発明者】
【氏名】ゾエ・ティル
(57)【要約】
本発明は、MCM材料をベースとする一組の多孔質能動素子(2)と磁気装置(3)とを備える磁気熱量発生器(1)に関する。磁気装置(3)は、2つの重ね合わされた磁気ロータ、すなわち外部磁気ロータ(4)と内部磁気ロータ(5)とを備えて、それらの間にエアギャップ(E)を画定し、1つの同じ数の磁極(PM)を備える。一組の能動素子(2)は、前記エアギャップ(E)内に配設されたステータ(30)を備える。前記ステータ(30)内で軸方向に延びる能動素子(2)は、前記発生器の高温端(EC)と低温端(EF)との間の熱伝達流体の双方向の軸方向循環を可能にする。外部磁気ロータ(4)は、有利には、一方では機械的結合によって電気機械(9)に結合され、他方では磁気結合によって前記内部磁気ロータ(5)に結合され、それによって、前記ロータは、1つの同じ回転方向に移動し、磁気的に同期する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気熱量材料(MCM)をベースとする一組の能動素子(2)と、一組の前記能動素子(2)に対して移動可能に配置された磁気装置(3)とを備える磁気熱量発生器(1)であって、
前記磁気装置(3)が、2つの重ね合わされた磁気ロータ、すなわち、外部磁気ロータ(4)と内部磁気ロータ(5)とを備え、前記外部磁気ロータ及び前記内部磁気ロータ間にエアギャップ(E)を画定し、
前記外部磁気ロータ(4)及び前記内部磁気ロータ(5)が1つの同じ数の磁極(PM)を備え、
一組の前記能動素子(2)が、前記エアギャップ(E)内に配設されたステータ(30)を構成し、
前記能動素子(2)が、前記磁気熱量発生器の高温端(EC)と低温端(EF)との間で前記ステータ(30)内で長手方向に延び、
前記外部及び内部磁気ロータ(4、5)の一方が、一方では、機械的結合によって電気機械(9)に結合され、他方では、磁気結合によって前記内部及び外部磁気ロータ(4、5)の他方に結合され、それによって、前記内部及び外部磁気ロータが、1つの同じ方向に移動し、磁気的に同期することを特徴とする、磁気熱量発生器。
【請求項2】
前記磁気熱量発生器が円筒形状を有し、
前記外部及び内部磁気ロータ(4、5)がそれらの回転軸(A)を中心に同心であり、
前記ステータ(30)が、前記外部及び内部磁気ロータ(4、5)と同心の環状形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の磁気熱量発生器。
【請求項3】
前記外部磁気ロータ(4)が前記電気機械(9)に結合され、
前記外部磁気ロータ(4)が周縁歯付リング(11)を備え、
前記外部磁気ロータ(4)と前記電気機械(9)との間の前記機械的結合が、前記周縁歯付リング(11)と噛み合う歯付ベルト(10)による動力伝達装置を備えることを特徴とする、請求項2に記載の磁気熱量発生器。
【請求項4】
前記磁気熱量発生器が、少なくとも、ケーシング(C)によって担持された前記外部磁気ロータ(4)と前記内部磁気ロータ(5)とを回転可能に案内するための手段を備え、
前記外部磁気ロータ(4)を回転可能に案内するための前記手段が、前記外部磁気ロータ(4)の端部に取り付けられ、前記ケーシング(C)に属する案内経路上を循環するように配置された周縁案内部材(14)を備えることを特徴とする、請求項2または3に記載の磁気熱量発生器。
【請求項5】
前記周縁案内部材(14)が、前記磁極(PM)の外側に位置する周辺セクタの前記外部磁気ロータ(4)上に取り付けられることを特徴とする、請求項4に記載の磁気熱量発生器。
【請求項6】
前記案内経路が、前記ケーシング(C)に付加された案内リング(15)上に設けられ、
前記案内リング(15)が、前記ケーシング(C)の材料の硬度よりも大きい硬度の材料のものであることを特徴とする、請求項4に記載の磁気熱量発生器。
【請求項7】
前記磁気装置(3)がモジュール構造であり、少なくとも2つの重ね合わされた基本モジュール(17)のアセンブリを備え、
各前記基本モジュール(17)が、前記外部磁気ロータ(4)の一部及び前記内部磁気ロータ(5)の一部を備え、
基本モジュール(17)の数が、前記磁気装置(3)の長さを規定し、前記磁気熱量発生器(1)の目標とする出力及び/または温度差に応じて決定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気熱量発生器。
【請求項8】
前記基本モジュール(17)が、一方では、前記基本モジュール(17)を回転軸(A)に対してセンタリングし、前記基本モジュール(17)の互いに対する角度位置を割り出すように配置された相補的なインターロック形状を備えることを特徴とする、請求項7に記載の磁気熱量発生器。
【請求項9】
前記磁気装置(3)が、前記エアギャップ(E)に面して、前記外部磁気ロータ(4)及び/または前記内部磁気ロータ(5)の前記磁極(PM)に重ね合わされた磁場均一化デバイス(8)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の磁気熱量発生器。
【請求項10】
前記能動素子(2)が多孔質であり、前記能動素子それぞれが、前記磁気熱量発生器の第1の作業サイクルにおいて前記高温端(EC)から前記低温端(EF)への、逆に第2の作業サイクルにおいて前記低温端(EF)から前記高温端(EC)への熱伝達流体の代替循環を可能にする熱伝達回路によって通過され、
前記熱伝達流体の循環の向きが、前記磁気装置(3)の前記磁極(PM)によって生成される磁力線の向きに対して垂直であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の磁気熱量発生器。
【請求項11】
アセンブリの能動素子(2)の数が、前記磁気装置(3)の磁極(PM)の数の倍数であり、
前記能動素子(2)が、前記ステータ(30)の円周上に並んで配設されることを特徴とする、請求項10に記載の磁気熱量発生器。
【請求項12】
各前記能動素子(2)が、前記ステータ(30)に格納された長手方向の材料担体(32)を備え、
前記材料担体(32)が、正方形、長方形、台形、中空円筒部の中から選択される断面を有し、
前記材料担体(32)の長さが、前記磁気装置(3)の長さ、並びに前記磁気熱量発生器の目標とする出力、有効性及び/または温度差に応じて決定されることを特徴とする、請求項10または11に記載の磁気熱量発生器。
【請求項13】
各前記能動素子(2)の前記材料担体(32)が、少なくとも1つのMCMを受け入れるように構成された内側ハウジング(35)と、前記材料担体(32)の端部の各々にある少なくとも1つの流体コネクタ(37、38)であって、前記能動素子(2)を前記熱伝達回路に接続するように構成された、流体コネクタと、を備えることを特徴とする、請求項12に記載の磁気熱量発生器。
【請求項14】
前記材料担体(32)が、前記流体コネクタ(37、38)と前記内側ハウジング(35)との間の各端部領域に少なくとも1つの分配器(39)をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の磁気熱量発生器。
【請求項15】
前記能動素子(2)が、材料担体(32)の長手方向軸(B)に平行に配向され、互いに間隔を空けて配置された、規則的な材料ストリップまたは材料構造体(41)の形態の少なくとも1つの多孔質MCMブロック(40)を備え、
前記間隔が、各能動素子(2)を通る前記熱伝達流体の双方向循環を可能にする一組の長手方向流路(31)を形成することを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載の磁気熱量発生器。
【請求項16】
前記能動素子(2)が、それぞれ、1つの同じMCM、または異なるMCM、または異なるMCM組成物からなるいくつかの多孔質MCMブロック(40)を備え、
前記異なるMCMまたはMCM組成物が、段階的または連続的に展開するキュリー温度(Tc)の上昇または低下に応じて格納されることを特徴とする、請求項15に記載の磁気熱量発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気熱量材料(MCM)をベースとする少なくとも一組の能動素子と、一組の能動素子に対して移動可能に配置された磁気装置とを備える磁気熱量発生器に関し、前記磁気装置は、2つの重ね合わされた磁気ロータ、すなわち、外部磁気ロータと内部磁気ロータとを備えて、それらの間にエアギャップを画定し、前記外部磁気ロータ及び前記内部磁気ロータは1つの同じ数の磁極を備え、前記一組の能動素子は、前記エアギャップ内に配設されたステータを構成し、前記能動素子は、前記発生器の高温端と低温端との間に、前記ステータ内で長手方向に延びる。
【背景技術】
【0002】
常温磁気冷凍の技術は40年以上前から知られており、冷媒ガスの圧縮及び膨張に基づく従来技術に対して、エネルギー効率、及び環境負荷の低減という点で、その利点が知られている。また、その熱出力またはエネルギー変換に関するその限界も知られている。その後、この分野で行われた研究はすべて、磁場の強度及び質、能動素子の磁気熱量材料の性能、熱伝達流体と能動素子との間の熱交換面、熱交換器の性能など、様々な構成要素のパラメータを利用することによって、磁気熱量発生器の性能を改善する傾向がある。
【0003】
今日、一方では、これらの発生器を大量に製造することができ、他方では、これらの発生器にかなりの耐用年数を保証することができることを見込んで、開発は、これらの発生器の最適化に関連している。商業的に興味深いエネルギー効率に到達しなければならないことに加えて、大きさ制限を有する商業用途にこれらの発生器を組み込むことができるように、これらの発生器は、比較的小さいサイズまたは大きさを有しなければならない。
【0004】
本出願人に属する特許文献1及び特許文献2は、磁気熱量発生器に既に適用されている技術開発の認識を与え、これはさらに改善され得る。
【0005】
特許文献3には、磁気冷凍発生器用のハルバッハ型磁気アセンブリが記載されている。これは、エアギャップによって分離された2つの同軸の磁気ロータ、すなわち外側ロータと内側ロータとを備え、磁気熱量材料区画の形態の能動素子が配設されている。ロータは、モータ及び機械的駆動機構によって同期して逆方向に駆動される。ロータの逆回転駆動により、エアギャップ内に位置する能動素子に印加される磁場変化を生成することが可能になる。しかしながら、この原理では、ロータの磁石の位置エネルギーを利用することはできない。実際に、回転のわずかな部分にわたって、ロータは逆位相でもなく位相調整もしておらず、これはMCMの観点から、長く動作不能な移行段階となり、発生器の性能にとって不利となる。磁石が有効サイクル時間の半分にわたって逆位相であると、磁石の位置エネルギーは全く利用されず、その結果、磁石は低く評価される。さらに、この原理は、管理されなければならない磁気ロータの構造内の渦電流の原因であり、磁石の抗磁場を超えることによって磁石を消磁の危険にさらす。
【0006】
特許文献4には、磁気熱量材料をベースとする複合材料マトリックスが記載されている。これらの材料は、ニッケルなどの別の非磁気熱量材料をベースとするコーティングによって結合された粒子の形態で存在する。コーティングされた粒子は、共に、液体の循環のための空洞を画定する。その結果、非晶質多孔質マトリックス、すなわちランダムで不規則なマトリックスが生じ、必然的に負荷損失を発生させ、これは、磁気冷凍発生器の性能を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/087310号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2015/079313号パンフレット
【特許文献3】中国特許出願公開第113314292号明細書
【特許文献4】国際公開第2019/110193号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発生器の性能を最適化し、能動素子に印加される強度及び磁場変化を最大化し、前記能動素子の応答を最適化し、磁石の磁気エネルギー(BHmax)の利用を最適化し、負荷損失及び摩擦源を低減し、渦電流を回避し、エネルギー消費を低減し、発生器の技術的特徴を個別化して目標とする目的を達成し、それにより、加熱、冷却、空調、可逆ヒートポンプ、熱磁気モータなどの広範囲の用途に対応することを目的とする新世代の磁気熱量発生器を提案することを目的とする。これは、さらに、機械的及び/または電気的な仕事を使用した冷熱源から温熱源への熱エネルギーのポンピング、あるいは機械的及び/または電気的な仕事の温度差の形態での熱エネルギーの変換を可能にする可逆変換器に関し、この場合、機械エネルギーと電気エネルギーとの間の変換は、オルタネータ、ダイナモ、電気モータなどの従来の電磁機械によって保証される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これを踏まえて、本発明は、前記外部または内部磁気ロータの一方が、一方では機械的結合によって電気機械に結合され、他方では磁気結合によって前記内部または外部磁気ロータの他方に結合され、それによって前記ロータが1つの同じ方向に移動し、磁気的に同期することを特徴とする、プリアンブルに示されたタイプの発生器に関する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、前記発生器は円筒形状を有し、外部及び内部磁気ロータはそれらの回転軸を中心に同心であり、前記ステータは、前記外部及び内部磁気ロータと同心の環状形状を有する。
【0011】
前記外部磁気ロータは、好ましくは前記電気機械に結合される。この場合、前記外部磁気ロータは周縁歯付リングを備え、前記外部磁気ロータと前記電気機械との間の前記機械的結合は、前記歯付リングと噛み合う歯付ベルト動力伝達装置を備える。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記発生器は、少なくとも、ケーシングによって担持された前記外部磁気ロータと前記内部磁気ロータとを回転可能に案内するための手段を備え、前記外部磁気ロータを回転可能に案内するための前記手段は、前記外部磁気ロータの端部に取り付けられ、前記ケーシングに属する案内経路上を循環するように配置された周縁案内部材を備える。
【0013】
前記案内部材は、有利には、前記磁極の外側に位置する周辺セクタの前記外部磁気ロータ上に取り付けられる。また、前記案内経路は、有利には、前記ケーシングに付加された案内リング上に設けられ、前記案内リングは、前記ケーシングの材料の硬度よりも大きい硬度の材料で作ることができる。
【0014】
確実に有利には、前記磁気装置はモジュール構造であり、長手方向に積み重ねられた少なくとも2つの基本モジュールのアセンブリを備え、各基本モジュールは、前記外部磁気ロータの一部及び前記内部磁気ロータの一部を備え、基本モジュールの数は、前記磁気装置の長さを規定し、前記発生器の目標とする出力及び/または温度差に応じて決定される。
【0015】
前記基本モジュールは、好ましくは、一方では前記基本モジュールを前記回転軸に対してセンタリングし、前記基本モジュールの互いに対する角度位置を割り出すように配置された相補的なインターロック形状を備える。
【0016】
本発明の実施形態の変形例によれば、前記磁気装置は、前記エアギャップに面して、前記外部磁気ロータ及び/または前記内部磁気ロータの前記磁極に重ね合わされた磁場均一化デバイスを備えることができる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、前記能動素子は多孔質であり、それぞれ、前記発生器の第1の作業サイクルにおいて前記高温端から前記低温端への、逆に第2の作業サイクルにおいて前記低温端から前記高温端への熱伝達流体の代替循環を可能にする熱伝達回路によって通過される。この場合、熱伝達流体の循環の向きは、有利には、前記磁気装置の前記磁極によって生成される磁力線の向きに対して垂直である。
【0018】
好ましくは、前記アセンブリの能動素子の数は、前記磁気装置の磁極の数の倍数であり、前記能動素子は、前記ステータの円周上に並んで配設される。
【0019】
各能動素子は、前記ステータに格納された長手方向の材料担体を備えることができる。この場合、材料担体は、正方形、長方形、台形の中から選択される断面を有することができる。さらに、前記材料担体の長さは、有利には、前記磁気装置の長さ、並びに前記発生器の目標とする出力、有効性及び/または温度差に応じて決定される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、各能動素子の材料担体は、少なくとも1つのMCMを受け入れるように構成された内側ハウジングと、材料担体の端部の各々に、前記能動素子を前記熱伝達回路に接続するように構成された少なくとも1つの流体コネクタとを備える。材料担体は、前記流体コネクタと前記内側ハウジングとの間の各端部領域に少なくとも1つの分配器をさらに備えることができる。
【0021】
前記能動素子は、前記材料担体の長手方向軸に平行に配向され、互いに間隔を空けて配置された、規則的な材料ストリップまたは材料構造体の、非晶質形態の少なくとも1つの多孔質MCMブロックを備えることができる。この場合、間隔は、有利には、各能動素子を通る前記熱伝達流体の双方向循環を可能にする一組の長手方向流路を構成する。
【0022】
前記能動素子は、1つの同じMCMの、または接合ウェッジによって互いに分離された異なるMCMの、または可変キュリー温度を得るために投与され、組織化された異なるMCM組成物の1以上の多孔質MCMブロックを備えることができる。異なるMCMまたはMCM組成物は、好ましくは、段階的または連続的に展開するキュリー温度の上昇または低下に応じて格納または順序付けされる。
【0023】
本発明及びその利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として与えられるいくつかの実施形態の以下の説明において最もよく明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による磁気熱量発生器の斜視図であり、その磁気装置及びその回転駆動システムによって表されている。
【
図2】本発明による発生器に属する磁気装置の一部の、及び能動素子のための支持体の斜視図である。
【
図3】本発明による発生器の側面図であり、その磁気装置及びその能動素子によって表されている。
【
図4】2つの基本モジュールのアセンブリからなる、本発明による発生器の磁気装置の斜視図である。
【
図6】本発明の変形例による発生器の簡略側面図であり、
図3と同様である。
【
図7】本発明による発生器の能動素子の分解図である。
【
図9】本発明による発生器の斜視図であり、流線形で、熱伝達回路を制御するためのシステムを備える軸方向端部から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図示の実施形態の例では、同一の要素または部分は同じ参照番号を有する。さらに、垂直、水平、右、左、前、後、上、下などの相対的な意味を有する用語は、本発明の通常の使用条件下で、図に表されているように解釈されなければならない。軸X、Y、及びZはそれ自体、
図1に示す正規直交系によって定義される。さらに、「垂直」、「平行」、「対称」など、本明細書及び特許請求の範囲に示された幾何学的位置は、厳密な意味で幾何学として定義されたものに限定されず、得られた結果に影響を与えることなく、近い、すなわち当該技術分野における一定の許容誤差を受け入れる幾何学的位置にまで及ぶ。この許容誤差は、特に、副詞「実質的に」によって導入され、この用語は、必ずしも各形容詞の前に繰り返されるとは限らない。
【0026】
図を参照すると、以下で「発生器1」とも呼ばれる、本発明による磁気熱量発生器1は、互いに相対的に移動可能な一組のMCMベースの能動素子2と磁気装置3とを備える。図示の本発明の好ましい実施形態の例では、磁気装置3は、固定された一組の能動素子2に対して移動可能であり、それにより、熱伝達流体システムを大幅に簡素化することが可能になる。発生器1は、例えば、上述の出願人の刊行物に記載されているように、少なくとも1つの熱交換器(図示せず)を介して、能動素子を少なくとも1つのデバイスまたは1つの外部アプリケーション(図示せず)に熱的に結合するための熱伝達回路をさらに備える。熱伝達回路は、国際公開第2022/112391号パンフレットに記載されているような熱伝達流体または固体熱伝達流体(図示せず)を含むことができる。本発明は、特に、以下でMCMと呼ばれる磁気熱量材料の、キュリー温度または臨界温度(Tc)とも呼ばれる転移温度近傍における磁場変化の影響下で、それらの磁気熱量材料の磁性相の転移特性を使用することによって、機械的または電気的エネルギーから熱及び/または冷却を生成するための、冷熱源から温熱源への熱のポンピングに関する。本発明はまた、温度変化の影響下でMCM材料の同じ特性を使用することによる、温度差の形態で利用可能な熱エネルギーの、機械的または電気的エネルギーへの変換に関する。したがって、本発明の発生器1は、可逆的であり得る、すなわち入力エネルギーに応じた2つの予備動作モードに従って動作することができるエネルギー変換機を構成する。
【0027】
図示の例では、発生器1は円筒形状で表されており、磁気装置3は、Xに沿った回転軸Aを中心に同心である2つの重ね合わされた磁気ロータを備えるか、またはそれらから形成され、これらの外部磁気ロータ4及び内部磁気ロータ5は、エアギャップEと呼ばれる環状の間隔を共に画定する。外部磁気ロータ4及び内部磁気ロータ5は、少なくとも2つの磁極PM(
図3及び
図6)、4つの磁極PM(
図1、
図4、
図5)、または必要に応じて4つより大きい数の磁極PMの、1つの同じ数の磁極PMを備える。各ロータ4、5の磁極PMは、ロータ4、5の各々の円周に規則的に分布し、それぞれ、同じ値の角度セクタにわたって延在し、実質的にロータ4、5の円周の半分に相当する部分を占める。ロータ4、5の円周の残りの半分は、真空領域(磁場外)によって占められているか(
図1及び
図6)、または非磁性で熱的及び/または電気的に絶縁の材料を含んでいる(
図3)。さらに、2つのロータ4、5の磁極PMは、対をなして並べられて、外部磁気ロータ4の磁極PMと内部磁気ロータ5の磁極PMとの各対に磁力線の連続性を生成する。このようにして、磁力線は磁極PMの各対間のエアギャップEに集中し、それにより、磁場下の領域が形成される。この磁場集中は、磁場下の領域における磁場の強度を最大化し、磁場下の領域と磁場外の領域との間の磁場の変化を最大化する効果を有する。各磁極PMは、永久磁石、電磁石、超伝導体、または任意の他の適合する磁気発生器など、1以上の磁気発生器6、7を備えるか、またはそれらから形成される。
図1、
図3、
図6に示すように、各磁極PMがいくつかの磁気発生器6、7を備えるか、またはそれらから形成される場合、各磁極PMは互いに結合されて、連続的で中断のない磁極PMを形成する。
【0028】
図6に示す実施形態の変形例では、磁気装置3は、磁極PMによって生成される磁場を均一化し規則化するように、また、相関的に、磁極PMの磁気性能、したがって発生器1の有効性及び出力を高めるように配置された磁場均一化デバイス8をさらに備える。例えば、均一化デバイス8を介して磁極PMの磁気性能を少なくとも30%高めることができるが、この値は限定的ではない。図示の例では、磁場均一化デバイス8は、エアギャップEに面する外部磁気ロータ4の、及び/または内部磁気ロータ5の磁極PMの各々の端部を覆うように配置された、シートの形態、またはプレートの形態で表されている。磁場均一化デバイス8は、角柱形状など、形状を限定することなく、エアギャップE内の磁場下の領域における磁場を均一化するのに有利な任意の他の形状を有することができる。均一化デバイス8は、磁極PMの、及び/または能動素子2のプロファイルの形状に近づくようにプロファイルされる。均一化デバイス8は、接着によって、または任意の他の明らかに同等の固定方法によって磁極PMの端部に追加され得る。均一化デバイス8は、低炭素比の鋼、純鉄、及び任意の他の強磁性材料で作ることができる。一例として、均一化デバイス8は2mm~5mmの間の厚さを有することができ、一定であってもなくてもよく、この値の範囲は限定的ではない。
【0029】
外部磁気ロータ4及び内部磁気ロータ5は、互いに結合されて、1つの同じ回転方向に、回転軸Aを中心に同期して回転する。それらの磁気ロータは、ギアトレイン、ベルト及びプーリシステム、チェーン及びピニオンシステムなどの機械式動力伝達装置によって結合され得る。各ロータがモータリゼーションに結合される場合、それらのロータは、電子式動力伝達装置によって結合され得る。好ましくは、それらのロータは磁気的に結合され、すなわち非接触であり、それにより、摩擦による効率損失が回避され得る。2つのロータを駆動するこの原理の技術的効果により、各瞬間に磁極を形成する磁石の最大位置エネルギー(BHmax)を利用することが可能になる。磁力線は、可能な限り均一で集中した連続経路をたどり、エアギャップE内に位置する能動素子2に対して同期して回転する内側ロータ5及び外側ロータ4をまたいで連続的にループする。ロータ4及び5は、それらの磁気結合によって互いに動かないので、磁気的に同期している。その結果、磁気装置3は、それ自体に対して静止し、固定されたステータ30に対して回転する磁場の座となり、それにより、可能な限り短い移行段階でも、磁場下の領域と磁場外の領域との間の交互作用が生じる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、外部磁気ロータ4は電気機械9によって回転され、
図1に示すように、それ自体が磁気結合によって内部磁気ロータ5を駆動する。当然、逆の構成、すなわち、内部磁気ロータ5が電気機械9によって駆動され、それ自体が磁気結合によって外部磁気ロータ4を駆動することは適切であり得る。しかしながら、外部磁気ロータ4の機械的慣性は内部磁気ロータ5の機械的慣性よりも大きいので、磁気結合の有効性は、図示の例では明らかにより大きくなる。このようにして、外部機械駆動により、内部磁気ロータ5の磁気結合によって駆動する場合の振動現象を制限することが可能になる。
【0031】
電気機械9は、磁気熱量発生器の動作モードに応じて、任意のタイプのモータまたは任意のタイプのオルタネータによって構成され得る。図示の例では、電気機械9は、機械式動力伝達装置によって外部磁気ロータ4に結合されている。さらに、図示の例では、この機械式動力伝達装置は、好ましくは、外部磁気ロータ4の周囲に設けられた歯付ベルト11と噛み合う歯付ベルト10を備える。当然ながら、いかなる他のタイプの機械式動力伝達装置も適切であり得るが、歯付ベルト10による動力伝達装置は、正確で、信頼性があり、静音であるという利点を有する。さらに、電気機械9の出口の歯付きプーリ12と外部磁気ロータ4の歯付ベルト11との間の減速比がかなり大きいので、電気機械9と外部磁気ロータ4との間の減速機を取り外すことが可能になり、発生器1のエネルギー効率も改善される。このようにして、電気機械9は、発生器1の最適な動作点に達するように、最適な大きさにすることができる。
【0032】
2つのロータ4、5は、ケーシングC(
図9)によって担持された案内手段によって、それらの軸Aを中心に回転可能に案内される。2つのロータ4、5は、さらに、任意の適切な阻止手段(図示せず)によって、Xに沿った並進が停止される。内部磁気ロータ5は、任意の既知の手段によって、例えば、その端部領域(
図1)に設けられた2つの軸受13によって回転可能に案内され得る。外部磁気ロータ4は、それ自体、好ましくは、前記ロータの端部に固定された、周囲に配設された、前記ロータの平均直径と比較して小さい一連の案内部材14によって回転可能に案内される。図示の例では、案内部材14は、ケーシングC(
図9)に属する案内経路上を循環するように配置された回転ローラの形態で表されている。この解決策により、軸受ごとに外部磁気ロータ4の1回の回転案内が可能になり、したがって摩擦がなく、効果的で、信頼性があり、熱を発生せず、したがってエネルギーを消費しないので、特に有利である。さらに、この解決策は、市場で入手可能な部品であるこのタイプの案内部材14が低コストであることを考えると、経済的である。この解決策はまた、発生器1のすべてのサイズ、したがって外部磁気ロータ4のすべての直径に適しているので、汎用的である。しかしながら、この例は限定的ではなく、低摩擦係数ランナーなどのいかなる他の同等または適切なタイプの案内部材も適切であり得る。さらに、案内部材14の周縁配置により、発生器1の中央部全体、特にその高温端EC及び低温端EFを解放して、そこに熱伝達回路を格納することが可能になる(
図9)。この配置により、発生器1をより小型化することが可能になる。
【0033】
案内部材14は、外部磁気ロータ4の周囲に(
図1)、または好ましくは磁極PMの外側に(
図2及び
図3)規則的に配設することができ、これにより、それらの取付けが容易になり、摩擦のない動作が保証され、それらの内部の渦電流が制限される。案内部材14は、外部磁気ロータ4の端部に追加されたフランジ16上に取り付けることができる。案内経路は、ケーシングC上に直接設けてもよいし、ケーシングCに追加された案内リング15内に設けてもよい。したがって、案内リング15は、ケーシングCの材料とは異なる材料、特に、アルミニウムケーシングC用のステンレス鋼案内リングのように、その硬度がケーシングCの材料の硬度よりも大きい材料で作ることができ、この例は限定的ではなく、その機能に応じて原料の選択及びコストを最適化することが可能である。案内部材14の配置により、半径方向力を均衡させることが可能になるが、案内経路または案内リング15は、摩擦の有無にかかわらず、外部磁気ロータ4のXに沿った並進停止手段を形成するように構成され得る。
【0034】
磁気装置3は、図示の実施形態の変形例によれば、一体構造、または好ましくはモジュール構造とすることができる。モジュール構造により、目標とする仕様及び用途を満たすように、発生器1の製造を容易にし、合理化することが可能になり、発生器1の直径を大きくすることなく発生器1を長くすることが可能になる。
図1、
図2、
図4、及び
図5を参照すると、磁気装置3は、少なくとも2つの軸方向に重ね合わされた基本モジュール17のアセンブリを備え、磁気装置3の基本モジュール17の数は磁気装置3の長さを決定し、それ自体、特に、発生器1の目標とする出力及び/または温度差に応じて決定される。
【0035】
各基本モジュール17は、外部磁気ロータ4の一部と、内部磁気ロータ5の一部とを備える。当然ながら、2つのロータが物理的に独立した部品であることから、各ロータの基本モジュール17は別々に管理される。より具体的には、
図4は、磁石6、7なしで表された2つのロータ4、5の2つの重ね合わされた基本モジュール17のアセンブリを示す。
【0036】
図5は、磁石6なしで表された外部磁気ロータ4のみを示す、基本モジュール17を示す。各基本モジュール17は外部磁気ロータ4の磁気シェル18を備え、磁気シェル18は、1つの単一部品またはカット紙の束のようないくつかの部品で作ることができ、能動素子2によって引き起こされる磁気的な流れの変化から生じるであろう渦電流の形成を防止するために、随意に電気的に絶縁される。図示の例では、磁気シェル18は、数ミリメートルから数センチメートル、例えば0.5mmから10mmの間の複数の基本磁気シート19から構成されるが、これらの値は限定的ではない。基本磁気シート19は、切り出されるかまたは打ち抜かれ、軸方向に積み重ねられ、対応するラグ21に設けられたオリフィス20を介して、固定部材(図示せず)によって互いに組み立てられる。当然、いかなる他の同等の固定手段も適切であり得る。基本磁気シート19を積み重ねることによって製造する方法により、製造ツール及び使用する原料の量を最適化することが可能になり、磁気アセンブリ3の設計における柔軟性がより高くなり、全体的な製造コストが低減される。このようにして、軸Xを中心とする基本モジュール17の軸方向長さを、必要に応じて調整することができる。
【0037】
各ロータの基本モジュール17は、一方では基本モジュール17を回転軸Aに対してセンタリングし、基本モジュール17の互いに対する角度位置を割り出すように配置された相補的なインターロック形状をさらに備える。
図4及び
図5に示す例では、外部磁気ロータ4の各基本モジュール17は、基本磁気シート19の厚さよりも大きい厚さを有することができ、相補的なインターロック形状を含む、2つの端部磁気シート22によって囲まれている。これらの相補的なインターロック形状は、各基本モジュール17の端部磁気シート22の一方に、外部磁気ロータ4の磁極PM間に規則的に分布する4つの角度セクタに分割された、前記モジュールの外側に向かって回転される、軸方向に突出する隆起部23の形態の雄型インターロック形状を含む。これに対応して、相補的なインターロック形状は、各基本モジュール17の反対側の端部磁気シート22に、外部磁気ロータ4の磁極PM間に規則的に分布する4つの角度セクタに分割された、前記モジュールの内側に向かって回転される、軸方向に突出する溝24の形態の雌型インターロック形状を含む。当然のことながら、任意の他のセンタリング手段及び割出し手段を含む、いかなる他の同等の相補的インターロック形状も適切であり得る。
【0038】
磁気装置3の全部または一部を形成する基本モジュール17は、さらに、対応するラグ26(
図4)に設けられたオリフィス25を介して、ネジ棒、ボルト、タイロッド、ネジなどの固定部材(図示せず)によって互いに組み立てられる。当然ながら、基本モジュール間の溶接点または溶接線など、いかなる他の同等の固定手段も適切であり得る。取付けを簡単にするために、基本モジュール17を2つずつのグループに互いに組み立てることができ、次いで、
図1に示すように、2つずつのグループ自体を中間フランジによって互いに組み立てることができる。いかなる他の組立方法も適切であり得る。
【0039】
内部磁気ロータ5の基本的なモジュールも、図示されてはいないが、相補的なインターロック、センタリング及び割出し形状、並びに固定手段を備える。一例として、互いに基本モジュールの相対位置での固定と保持の両方を実行することを可能にする割出しピン及びネジ用の通し穴を挙げることができる。いかなる他の同等の相補的なインターロック形状及びいかなる他の同等の固定手段も適切であり得る。
【0040】
より具体的には、
図2、
図3及び
図6を参照すると、本発明の発生器1の一組の能動素子2は、外部磁気ロータ4と内部磁気ロータ5との間のエアギャップE内に配設された、Xに沿った回転軸Aを中心とした、固定された環状のステータ30を備えるか、またはそれから形成される。能動素子2は、発生器1の高温端ECと低温端EFとの間に、ステータ30内で長手方向に延び、
図2及び
図7に記号で表されている。能動素子2は多孔質であり、それぞれ、発生器1内で磁気熱力学サイクルを実行するために、前記高温端ECから前記低温端EFへの、及びその逆の、熱伝達流体によるXに沿った代替の軸方向循環を可能にする熱伝達回路を介して、磁気熱量的に受動的な前記熱伝達流体を通過させる。
【0041】
その結果、熱伝達流体のXに沿った軸方向循環は、磁気装置3の磁極PMによって生成される磁力線の半径方向の向きに対して垂直になる。この配置は、磁気回路と熱伝達回路との間の干渉なしに、磁場下の領域と磁場外の領域との間の磁場変化と同期した熱伝達流体の代替の移動によって、能動素子2が磁気熱力学サイクルを実行することを可能にするので、特に有利である。
【0042】
能動素子2は、好ましくは、エアギャップEの容積中に存在するMCM材料の量を最大にするために、ステータ30の円周上に並んで配設される。これを踏まえて、エアギャップE内に配設された磁気回路内の非磁気熱量材料の体積を最小限に減少させ、磁気装置3の回転運動を可能な限り滑らかかつ連続的にし、可能な限り均一な回転トルクを必要とし、ジャーク及びエネルギー消費の低減を誘導するために、2つの連続する能動素子2間の空間は、可能な限り狭くなるように選択される。
【0043】
能動素子2は、さらに、一定のステップによって円周方向に互いに離間して規則的に分布し、能動素子2の数は、好ましくは磁気装置3の磁極PMの数の倍数である。したがって、各熱力学的作業サイクルの各瞬間において、能動素子2は、同数の2つのグループ、すなわち、磁極PMに面する磁場下の領域に位置する能動素子2のグループと、磁極PMの外側の磁場外の領域に位置する能動素子2のグループとに分けられる。発生器1内のこの特定の配置により、磁場下の領域と磁場外の領域との間の良好な分布が可能になり、それにより、熱力学的サイクルを最適化することができる。
【0044】
図7及び
図8をより具体的に参照すると、各能動素子2は、独立した棒の形態で表され、Xに沿った長手方向の材料担体32を備える。材料担体32は、好ましくは、非限定的な例として、高分子系合成材料、炭素繊維系複合材料、ステンレス鋼、シリカ系または樹脂系天然材料など、わずかに熱伝導性で電気絶縁性の材料で作られる。材料担体32は、場合により、磁気ロータに対してその上面及び下面の少なくとも一方を熱的に絶縁することができる。各能動素子2は、ステータ30に直接、または前記ステータ30中に含まれるかもしくは前記ステータを形成する支持体33に、軸方向に格納されるように構成される。
図2に支持体33の一例が示されており、Xに沿って軸方向に延び、ステータ30の円周上に規則的に分布する取付レール34を備える。取付レール34は、それぞれU字形の壁によって画定されるが、この形状は限定的ではない。支持体33は、好ましくは、非限定的な例として、高分子系合成材料、炭素繊維系複合材料、ステンレス鋼、シリカ系または樹脂系天然材料など、磁気的に中立で非導電性の材料で作られる。
図2に示す例では、支持体33は、1つの単一の環状部品から形成されている。支持体33は、並べて組み立てられたいくつかの部品から形成することができ、各部品は環状セクタにわたって延在し、磁極PMの環状セクタに対応することができるので、この例は限定的ではない。材料担体32は、その側壁に、Xに沿った摺動接続によってそれらの材料担体32を互いに組み付けることを可能にする相補的なインターロック手段を備えることができるので、支持体33は必須ではない。
【0045】
図示の例では、ステータ30の支持体33は、前記ステータ30の端部の少なくとも一方に、磁気装置3の外側に位置する少なくとも1つの固定領域ZFを設けるために、ロータ4、5の長さよりも長い長さを有する。このようにして、材料担体32を、ステータ30から容易に抜き差しすることができ、さらに、材料担体32及び支持体33にこの目的のために設けられた固定孔36の中に、ネジまたは任意の他の取外し可能な固定部材によって固定することができる。迅速なクリップ固定手段なども適切であり得る。
【0046】
材料担体32は、正方形、長方形、台形、中空円筒セグメントの中から選択される断面を有する。図示の例では、ステータ30の有効体積を最適化するために、材料担体32の断面は台形になっている。材料担体32の長さは磁気装置3の長さに依存し、これは発生器1の目標とする出力及び/または温度差に応じて決定される。磁気装置3の、及び能動素子2のXに沿った長手方向の設計は、直列に、したがって軸Xを中心とする発生器1の軸方向長さにわたって組み立てられた磁気装置3の基本モジュール17の数を利用することによって、発生器1の直径を大きくすることなく、可変温度範囲において、仕様及び目標とする用途に合わせた発生器1の製造を容易にし、合理化することを可能にするので、有利である。
【0047】
各能動素子2の材料担体32は、少なくとも1つの多孔質MCM材料を通る熱伝達流体の双方向の軸方向循環を可能にする一組の流路31を形成する、前記少なくとも1つのMCMを受け入れるように配置された内側ハウジング35を備える。示された例では、熱伝達流体は流体である。したがって、材料担体32は、能動素子2を熱伝達回路(図示せず)に接続するために、その端部の各々に少なくとも1つの流体コネクタ37、38を備える。図示の例では、材料担体32は、その端部の各々に、それぞれ流体入口37及び流体出口38に対応する2つの流体コネクタ37、38を備える。能動素子2が固定されていることにより、流体コネクタ37、38は、漏れを発生させる可能性がないので、有利には、単純で、回転せず、したがって密閉されたコネクタである。材料担体32はまた、流路31のすべてに熱伝達流体を分配するために、流体コネクタ37、38と内側ハウジング35との間の各端部領域に分配器39を備える。
【0048】
図示の例では、各材料担体32に含まれるMCMは、非晶構造または組織的構造を有する1以上の多孔質MCMブロック40の形態で示されている。各多孔質MCMブロック40は、規則的であるか否かにかかわらず、材料ストリップから、または任意の他の材料構造体から構成され得る。図示の例によれば、各多孔質MCMブロック40において、材料構造体41は、有利にはストリップの形態であり、好ましくは、材料担体32の長手方向軸Bに平行なXに沿って軸方向に配向される。ストリップはまた、エアギャップE内の磁力線に平行に半径方向に延在する。材料構造体41のXに沿った軸方向の配向により、発生器1の低温端EFと高温端ECとの間の熱伝達流体の代替循環が可能になる。また、材料構造体41の半径方向の配向により、渦電流を切断し、局所的な反磁場を低減することが可能になる。使用されている「軸方向」及び「半径方向」という用語は、図示されているような発生器1の円筒形状に特有であるが、図示されていない直線形状の発生器1の「縦方向」及び「横方向」という用語にもそれぞれ適用される。
【0049】
さらに、ストリップの形態の材料構造体41は、互いに(見ることができない)間隔を空けて配置され、この間隔は、熱伝達流体のXに沿った双方向の軸方向循環を可能にする一組の流路31を形成する。材料構造体41間の間隔は、規則的な断面の平坦で狭い流体通路を形成し、それにより、発生器1を通るXに沿った熱伝達流体の流体流を促進することが可能になる。
【0050】
多孔質MCMブロック40は、1つの同じMCMから、または異なるMCMから、または異なるMCM組成物から作ることができる。異なるMCMから構成された多孔質MCMブロック40は、接合ブロック42によって互いに分離されてもよいし、分離されなくてもよい。さらに、異なるMCMまたはMCM組成物は、好ましくは、発生器1のMCM容積中に形成される温度勾配(差)にキュリー温度(Tc)を整合させることを可能にするために、低温端EFに位置する冷熱源から高温端ECに位置する温熱源へ、段階的にまたは連続的に展開するTcの上昇に応じて格納または順序付けされる。
【0051】
図示されていない変形例では、各材料担体32に含まれるMCMを、例えば熱伝達流体のための流体通路を構成する細孔を焼結することによって得られる、1以上の多孔質MCMブロックの形態で示すこともできる。
【0052】
材料担体32は、内側ハウジング35を密封して閉じるためのカバー43をさらに備える。材料担体32及び支持体33に設けられた取付レール34は、それらの対応する壁に、溝、隆起部など、軸方向の並進における案内手段(図示せず)を備えることができる。材料担体32はまた、それらが支持体33なしで取り付けられる場合、それらの対応する壁に、軸方向の並進における組立手段及び/または案内手段(図示せず)を一緒に備えることができる。
【0053】
Xに沿った能動素子2の長手形状により、必要に応じて、ステータ30の軸方向端部の一方に、または2つの軸方向端部に、流体コネクタ37、38、または冷熱源及び温熱源との任意の他の熱的もしくは機械的接続を有することが可能になるので、この形状は特に有利である。このようにして、流体コネクタ37、38は、発生器1の軸方向端部の一方または2つの軸方向端部に設けられた分配器44(
図9)の近くに配置され、それにより、熱伝達回路のパイプの長さ及び発生器1の半径方向の大きさを最小限に抑えることが可能になる。
【0054】
熱伝達流体の場合、一例として、これに限定されるわけではないが、分配器44は、機械式、油圧式、電気式、及び/または電子式アクチュエータの中から選択されたアクチュエータによって、磁場下の領域及び磁場外の領域と同期して、熱力学的作業サイクルの周波数に応じて決定されるスイッチング周波数に従って制御される。分配器44は、例えば、内部磁気ロータ5または外部磁気ロータ4に固定されたカム45による磁気装置3の回転によって直接制御され得、これにより、
図9に示すように、区画46によって分配器44を作動させることが可能になる。分配器44を制御するためのいかなる他の同等の手段も適切であり得る。
【0055】
能動素子2のXに沿った長手方向の設計には、結果として、独立した棒の形態の能動素子2の製造が容易になること、ステータ30内の能動素子2の取付け及び取外しが簡略化されること、多孔質MCMブロック40などの部品が標準化され、原価が低減されること、熱伝達回路が簡略化されること、並びにパイプを短くすることによって負荷損失が低減されること、といういくつかの利点がある。
【0056】
一般に、磁気装置3の、及び能動素子2のXに沿った長手方向の設計により、さらに、磁気装置3の長さ及び能動素子2の長さ、したがって発生器1の全長を、その半径方向の寸法を大きくすることなく増大させることによって、発生器1の出力及び/または仕事温度差を容易に増加させることが可能になり、これは発生器1のコンパクトさ及び大きさの点で有利である。
【0057】
本発明による発生器1は、回転磁気装置3を備えた円筒形状で表されているが、この例は限定的ではない。ステータ30及びロータ4、5が平坦化され、ロータ4、5がステータ30に対して代替の並進運動で直線的に動かされる直線形状が絶対に考えられ得る。当然のことながら、円筒形状により、ロータ4、5を連続的な回転運動で動かすことが可能になり、実現するのにエネルギー的にはるかに効率的で、より簡単で、より安価である。
【0058】
本発明は、当然のことながら、説明した実施形態の例に限定されず、添付の特許請求の範囲の制限内で当業者にとって明らかないかなる修正及び変形にも及ぶ。さらに、上述の異なる実施形態及び変形例の技術的特徴は、全体的にまたはそれらのいくつかについて、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 磁気熱量発生器、2 能動素子、3 磁気装置,磁気アセンブリ、4 外部磁気ロータ、5 内部磁気ロータ、6 磁気発生器,磁石、7 磁気発生器,磁石、8 磁場均一化デバイス、9 電気機械、10 歯付ベルト、11 周縁歯付リング、12 歯付きプーリ、13 軸受、14 周縁案内部材、15 案内リング、16 フランジ、17 基本モジュール、18 磁気シェル、19 基本磁気シート、20 オリフィス、21 ラグ、22 端部磁気シート、23 隆起部、24 溝、25 オリフィス、26 ラグ、30 ステータ、31 流路、32 材料担体、33 支持体、34 取付レール、35 内側ハウジング、36 固定孔、37 流体コネクタ,流体入口、38 流体コネクタ,流体出口、39 分配器、40 多孔質MCMブロック、41 材料構造体、42 接合ブロック、43 カバー、44 分配器、45 カム、46 区画、A 回転軸、B 長手方向軸、C ケーシング、E エアギャップ、EC 高温端、EF 低温端、PM 磁極、ZF 固定領域
【国際調査報告】