(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子
(51)【国際特許分類】
C01B 33/08 20060101AFI20241128BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241128BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241128BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241128BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
C01B33/08
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529182
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021081867
(87)【国際公開番号】W WO2023088540
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリャーキナ,アレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ドレーゲル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン,ヤン
【テーマコード(参考)】
4G072
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA11
4G072AA50
4G072BB05
4G072BB15
4G072GG02
4G072HH07
4G072HH09
4G072JJ02
4G072LL02
4G072LL03
4G072MM40
4G072RR11
4G072TT02
4G072TT06
4G072TT08
4G072TT09
4G072UU30
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL04
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ10
5H029HJ14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB04
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA13
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、3.Si含有率>30重量%、4.多孔質マトリックスの細孔内及び細孔上に配置されたケイ素、5.0.0003~16重量%のハロゲン濃度、6.pH値3~9及び7.0.5~20μmの範囲の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子、亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を製造するための方法、リチウムイオンバッテリのためのアノード材料であって、該アノード材料が、複合粒子を含有する、アノード材料、アノード材料でコーティングされた集電体を備えるアノード並びに複合粒子を含有する少なくとも1つのアノードを備えるリチウムイオンバッテリに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子であって、
1.Si含有率>30重量%、
2.多孔質マトリックスの細孔内及び細孔上に配置されたケイ素、
3.0.0003~16重量%のハロゲン濃度、
4.pH3~9、及び
5.0.5~20μmの直径パーセンタイルd
50を有する体積加重粒径分布
を有する、亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子。
【請求項2】
ハロゲンが塩素であり、
0.0003~16重量%のCl濃度を有する、
請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
ケイ素が、少なくとも部分的に亜塩化ケイ素SiCl
x(式中、x=0.00001~0.15である)の形態で存在する、請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
ケイ素浸透によって得られた少なくとも30重量%のケイ素を含む、請求項1~3のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
ケイ素又は亜ハロゲン化ケイ素が、層の形態又は最大1μmの厚さを有するケイ素粒子から形成された層の形態で存在する、請求項1~4のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項6】
最大170m
2/gの比BET表面積を有する、請求項1~5のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項7】
20℃及び1013mbarで気体及び/又は液体であるハロゲン含有及びハロゲン非含有ケイ素前駆体から選択されたケイ素前駆体からのケイ素浸透によって、請求項1~6のいずれかに記載の複合粒子を製造するための方法であって、少なくとも1つのハロゲン含有ケイ素前駆体が、
1.0.5~20μmの直径パーセンタイルd
50を有する体積加重粒径分布、
2.0.4~2.2cm
3/gの範囲のN
2吸着によって測定されるマイクロ細孔及びメソ細孔の全細孔容積(グルビッチ細孔容積)、及び
3.30nm以下のN
2吸着によって測定されるPD50細孔直径
を有する多孔質粒子の存在下で存在する、方法。
【請求項8】
前記ケイ素浸透が、流動床反応器、水平から垂直の位置に配置されたロータリキルン、開放若しくは閉鎖された固定床反応器及び圧力反応器から選択される反応器内で実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素浸透が、280℃~900℃で行われる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記複合粒子が、モノシラン及び塩素含有シランから選択されるシランからのケイ素浸透によって製造され、少なくとも1つの塩素含有シランが採用される、請求項7~9に記載の方法。
【請求項11】
ケイ素を含まない反応性成分もまた、前記ケイ素前駆体と混合して又は前記ケイ素前駆体と交互に存在する、請求項7~10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~6に記載の亜ハロゲン化ケイ素複合粒子を含有するリチウムイオンバッテリのためのアノード材料。
【請求項13】
請求項12に記載のアノード材料でコーティングされた集電体を備えるアノード。
【請求項14】
請求項1~6に記載の亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を含有する少なくとも1つのアノードを備えるリチウムイオンバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質粒子、ケイ素及びハロゲンに基づく亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子、複合粒子を製造するための方法並びにリチウムイオンバッテリのためのアノードにおける活物質としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電流の貯蔵媒体として、リチウムイオンバッテリは現在、最も高いエネルギー密度を有する最も実用的な電気化学エネルギー貯蔵装置である。リチウムイオンバッテリは、主に携帯用電子機器の分野、ツール及び自転車、スクータ又は自動車などの電動輸送手段にも使用されている。グラファイトカーボンは、現在、対応するバッテリの負極(「アノード」)の活物質として広く使用されている。しかしながら、このようなグラファイトカーボンの電気化学容量が比較的低いという欠点がある。これは理論的にはグラファイト1グラム当たり最大372mAhであり、したがって、リチウム金属で理論的に達成可能な電気化学容量のわずか1/10程度に相当する。アノードのための代替的な活物質は、例えばEP3335262B1に記載されているようなケイ素の添加を用いる。ケイ素は、リチウムとともに二元電気化学的に活性な合金を形成し、ケイ素1グラム当たり最大4200mAhの非常に高い電気化学的に達成可能なリチウム含有率を可能にする。
【0003】
ケイ素中のリチウムイオンの組込み及び除去は、非常に大きな体積変化が生じるという欠点を伴う。これは完全な組込みの場合には最大300%に達し得る。このような体積の変化は、ケイ素含有活物質に厳しい機械的応力を与え、その結果、活物質が最終的に分解してしまう可能性がある。電解研削とも呼ばれるこの方法は、活物質中及び電極構造中の電気的接触が失われるため、電極の容量が持続的、不可逆的に失われる。
【0004】
さらに、ケイ素含有活物質の表面は、不動態化保護層(固体電解質界面;SEI)の連続的な形成によって電解質の構成成分と反応する。形成された成分はもはや電気化学的に活性ではない。その中に結合したリチウムはもはやシステムに利用できず、したがって、バッテリ容量が連続的に著しく低下する。バッテリの充放電工程中のケイ素の体積の極端な変化により、SEIは定期的に破裂する。これは、ケイ素含有活物質のまだ占有されていない表面を露出する。次いで、さらにSEI形成にさらされる。使用可能な容量に対応するセル全体の可動リチウムの量はカソード材料によって制限されるため、カソード材料はますます消費され、セルの容量はわずか数サイクル後に用途の観点から許容できない程度まで減少する。
【0005】
数回の充電及び放電サイクルの過程にわたる容量の減少はまた、容量の減衰又は連続的な損失とも呼ばれ、通常は不可逆的である。
【0006】
いくつかのケイ素-炭素複合粒子が、リチウムイオンバッテリのアノードのためのケイ素含有活物質として記載されている。ケイ素-炭素複合粒子は、例えば、気体又は液体のケイ素前駆体のその熱分解により、多孔質炭素粒子内にケイ素を堆積させることから得られる。例えば、US10,147,950B2は、CVD(「化学蒸着」)又はPE-CVD(「プラズマ強化化学蒸着」)方法による、好ましくは粒子の撹拌を伴う300~900℃の高温での管状炉又は同等の炉タイプにおけるモノシランSiH4からの多孔質炭素粒子内へのケイ素の堆積を記載している。このようにして得ることができる複合材でさえ、要求の厳しい用途での使用には不十分なサイクル安定性を有する。加えて、ケイ素の堆積は、高温及び/又は長い反応時間を必要とし、したがって非常に多くのエネルギー及び時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第3335262号明細書
【特許文献2】米国特許第10,147,950号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、公知の材料は、ハロゲンを構成成分として主張していない。US20140272592Aは、例えば、(蛍光X線、TXRFによって測定される)最大1000ppmの塩素含有率を有するSi/C複合材を記載しており、より高いレベルの汚染が電気化学的性能にとって有害であると仮定している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
1.Si含有率>30重量%、
2.多孔質マトリックスの細孔内及び細孔上に配置されたケイ素、
3.0.0003~16重量%のハロゲン濃度、
4.pH3~9並びに
5.0.5~20μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布
を有する、亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を提供する。
【0010】
驚くべきことに、ハロゲン含有材料の性能は、同様の物理的特性を有するハロゲン非含有材料の性能に匹敵することが見出された。加えて、ハロゲン含有材料は、実質的により安価なハロゲン含有前駆体から製造可能である。
【0011】
これらのハロゲン含有前駆体は、同時に、H3SiCl、SiH2Cl2又はHSiCl3から製造され、その後、高エネルギー集約的蒸留精製を必要とする、ハロゲン非含有SiH4の工業用前駆体である。したがって、ハロシランの使用により、材料概念全体のCO2フットプリントを著しく減少させることができる。
【0012】
さらに、驚くべきことに、ハロゲン含有シランの分解温度は、反応性表面(例えば、活性炭)の存在下でこれまで想定されていた(J.Phys.Chem.1990,94,327-331、600℃超)よりも実質的に低いことが見出された。
【0013】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の製造は、任意の所望の方法を採用し得る。US10,147,950B2に記載されている方法と類似する、多孔質粒子内への浸透による気体又は液体ケイ素前駆体からのケイ素の堆積による製造は、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子への特に好適な道筋である。
【0014】
細孔内及び多孔質粒子の表面上の気体又は液体ケイ素前駆体からの熱分解によるケイ素の堆積は、この場合、ケイ素浸透と呼ばれる。
【0015】
同一又は異なるケイ素前駆体が、同一又は異なる多孔質粒子と反応させられ得る。
【0016】
本発明はまた、20℃及び1013mbarで気体及び/又は液体であるハロゲン含有ケイ素前駆体から選択されたケイ素前駆体からのケイ素浸透によって、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を製造するための方法であって、少なくとも1つのハロゲン含有ケイ素前駆体が、
1.0.5~20μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布、
2.0.4~2.2cm3/gの範囲のN2吸着によって測定されるマイクロ細孔及びメソ細孔の全細孔容積(グルビッチ細孔容積)、及び
3.30nm以下のN2吸着によって測定されるPD50細孔直径
を有する多孔質粒子の存在下で存在する、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ケイ素は、細孔内及び多孔質粒子の表面上に堆積させられる。
【0018】
任意の材料が、複合粒子のための多孔質粒子として採用され得る。二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ケイ素-アルミニウム混合酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛及び酸化ジルコニウムなどの多孔質炭素粒子若しくは多孔質酸化物、炭化ケイ素及び炭化ホウ素などの炭化物、窒化ケイ素及び窒化ホウ素などの窒化物並びに以下の成分式:
AlaBbCcMgdNeOfSigによって記述可能なような他のセラミック材料が好ましく、式中、0£a,b,c,d,e,f,g≦1であり、式中、少なくとも2つの係数a~g>0であり、a*3+b*3+c*4+d*2+g*4 3 e*3+f*2である。
【0019】
セラミック材料は、例えば、二元化合物、三元化合物、四元化合物、五元化合物、六元化合物又は七元化合物であり得る。以下の成分式:
非化学量論的窒化ホウ素BNzであり、式中、z=0.2~1、
非化学量論的窒化炭素CNzであり、式中、z=0.1~4/3、
炭窒化ホウ素BxCNzであり、式中、x=0.1~20及びz=0.1~20であり、式中、x*3+4 3 z*3、
ホウ素ニトリドオキシドBNzOrであり、式中、z=0.1~1及びr=0.1~1であり、式中、3 3 r*2+z*3)、
ホウ素カーボニトリドオキシドBxCNzOrであり、式中、x=0.1~2、z=0.1~1及びr=0.1~1であり、式中、x*3+4 3 r*2+z*3、
ケイ素カーボオキシドSixCOzであり、式中、x=0.1~2及びz=0.1~2であり、式中、x*4+4 3 z*2、
炭窒化ケイ素SixCNzであり、式中、x=0.1~3及びz=0.1~4であり、式中、x*4+4 3 z*3、
ケイ素ボロカーボニトリドSiwBxCNzであり、式中、w=0.1~3、x=0.1~2及びz=0.1~4であり、式中、w*4+x*3+4 3 z*3、
ケイ素ボロカーボオキシドSiwBxCOzであり、式中、w=0.10~3、x=0.1~2及びz=0.1~4であり、式中、w*4+x*3+4 3 z*2)、
ケイ素ボロカーボニトリドオキシドSivBwCNxOzであり、式中、v=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4及びz=0.1~3であり、式中、v*4+w*3+4 3 x*3+z*2並びに
アルミニウムボロシリコカーボニトリドオキシドAluBvSixCNwOzであり、式中、u=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2及びz=0.1~3であり、式中、u*3+v*3+x*4+4 3 w*3+z*2
を有するセラミック材料が好ましい。
【0020】
好ましい多孔質粒子は、炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素又はこれらの化合物に基づく混合材料、特に二酸化ケイ素又は窒化ホウ素に基づく。
【0021】
特に好ましい多孔質粒子は、多孔質窒化ホウ素粒子、多孔質酸化ケイ素粒子及び/又は微多孔質炭素粒子である。
【0022】
気体又は液体ケイ素前駆体との反応の前に、多孔質粒子を乾燥させることが好ましい。
【0023】
多孔質粒子の乾燥は、乾燥に適した任意の所望の反応器内の不活性ガス雰囲気内で、50~400℃の高温で実行され得る。採用可能な不活性ガスは、例えば窒素又はアルゴンである。又は、乾燥は、50~400℃の高温及び0.001~900mbarの減圧下で実行されてもよい。乾燥時間は、0.1秒~48時間が好ましい。多孔質粒子の乾燥は、気体又は液体ケイ素前駆体との反応と同じ反応器内で又は乾燥に適した別個の反応器内で実行され得る。
【0024】
多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリによって測定される密度が、好ましくは0.1~4g/cm3、特に好ましくは0.3~3g/cm3である。
【0025】
多孔質粒子は、好ましくは≧0.5μm、特に好ましくは≧1.5μm、最も好ましくは≧2μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは≦20μm、特に好ましくは≦12μm、最も好ましくは≦8μmである。
【0026】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μm、特に好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μm、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmである。
【0027】
多孔質粒子は、好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦5μm、とりわけ好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦2μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、特に好ましくは≧0.4、最も好ましくは≧0.6μmである。
【0028】
多孔質粒子は、好ましくは≧4μm、特に好ましくは≧8μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦20μm、特に好ましくは≦15、最も好ましくは≦12μmである。
【0029】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは≦15.0μm、より好ましくは≦12.0μm、特に好ましくは≦10.0μm、とりわけ好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmの幅d90~d10を有する。多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは≧0.6μm、特に好ましくは≧0.7μm、最も好ましくは≧1.0μmの幅d90~d10を有する。
【0030】
体積加重粒径分布は、多孔質粒子の分散媒としてエタノールを用いたHoriba LA 950測定装置により、Mieモデルを使用した静的レーザ散乱を用いて、ISO 13320に準拠して測定することができる。
【0031】
多孔質粒子は、例えば、単離され得るか又は弱凝集体であり得る。多孔質粒子は、好ましくは非強凝集体であり、好ましくは非弱凝集体である。強凝集体とは、一般に、多孔質粒子の製造の過程で、一次粒子が最初に形成され、融合し及び/又は一次粒子が、例えば共有結合によって互いに連結し、このようにして強凝集体を形成することを意味する。一次粒子は、一般に単離された粒子である。強凝集体又は単離された粒子は、弱凝集体を形成することができる。弱凝集体は、例えばファンデルワールス相互作用又は水素結合によって互いに連結された強凝集体又は一次粒子のゆるい集積である。弱凝集された強凝集体は、一般的な混練及び分散工程によって再び強凝集体内に容易に分割して戻すことができる。強凝集体は、たとえあったとしても、そのような工程によって部分的にのみ一次粒子内に分解され得る。強凝集体、弱凝集体又は単離された粒子の形態の多孔質粒子の存在は、例えば従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して視覚化することができる。対照的に、粒子の粒径分布又は粒子の直径を測定するための静的光散乱法は、強凝集体又は弱凝集体を区別することができない。
【0032】
多孔質粒子は、任意の所望のモルフォロジーを有し得、すなわち、例えば、裂状、フレーク状、球状又は針状であり得、好ましくは、裂状又は球状の多孔質粒子であり得る。
【0033】
モルフォロジーは、例えば、球形度ψ又は球形度Sによって特徴付けられ得る。Wadellの定義によれば、球形度ψは、物体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψは値1を有する。この定義によれば、多孔質粒子は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の球形度ψを有する。
【0034】
球形度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する円相当の円周と、この投影の測定された円周Uとの比:S=2πA/Uである。理想的な円形粒子の場合、Sは値1を有することとなり得る。多孔質粒子について、球形度Sは、球形度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、特に好ましくは0.65~1.0の範囲にある。球形度Sの測定は、例えば光学顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真を使用して又は<10μmの粒子の場合、好ましくは走査型電子顕微鏡を用いて、例えばImageJなどの画像解析ソフトウェアを用いたグラフィック評価によって実行される。
【0035】
多孔質粒子は、好ましくは≧0.2cm3/g、特に好ましくは≧0.6cm3/g、最も好ましくは≧1.0cm3/gのガスアクセス可能細孔容積を有する。これは、高容量リチウムイオンバッテリを得るのに役立つ。ガスアクセス可能細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素を用いたガス吸着測定によって測定される。
【0036】
多孔質粒子は、開孔であることが好ましい。開孔とは、一般に、細孔が、例えばチャネルを介して粒子の表面に接続されており、好ましくは環境と質量交換することができ、特に気体化合物を交換することができることを意味する。これは、ガス吸着測定(Brunauer,Emmett及びTellerによる分析、「BET」)、すなわち比表面積によって実証することができる。
【0037】
多孔質粒子は、好ましくは≧50m2/g、特に好ましくは≧500m2/g、最も好ましくは≧1000m2/gの比表面積を有する。BET表面積は、DIN 66131(窒素を使用)に準拠して測定される。
【0038】
多孔質粒子の細孔は、任意の直径を有し得、すなわち、一般にマクロ細孔(>50nm)、メソ細孔(2~50nm)及びマイクロ細孔(<2nm)の範囲にあり得る。多孔質粒子は、異なる細孔タイプの任意の混合物として使用され得る。全細孔容積を基準として最大30%のマクロ細孔を有する多孔質粒子、特に好ましくはマクロ細孔を有しない多孔質粒子、とりわけ好ましくは5nm未満の平均細孔直径を有する少なくとも50%の細孔を有する多孔質粒子を使用することが好ましい。多孔質粒子は、2nm未満の細孔直径を有する細孔のみを有することが特に好ましい(測定方法:メソ細孔範囲においてはBJH(ガス吸着)に従ってDIN 66134に準拠し、マイクロ細孔範囲においてはDIN 66135準拠したHorvath-Kawazoe(ガス吸着)による細孔径分布であり、マクロ細孔範囲の細孔径分布の評価は、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀ポロシメトリによって実行される)。
【0039】
多孔質粒子のPD50細孔直径は、好ましくは0.5~30nmの範囲、好ましくは0.5~20nmの範囲、特に好ましくは0.5~10nmの範囲にある。本明細書で使用される「PD50細孔直径」という用語は、マイクロ細孔及びメソ細孔の総容積に基づく容積基準の平均細孔直径を指す(すなわち、マイクロ細孔及びメソ細孔の総容積の50%が、それ以下の細孔直径に見出される)。したがって、本発明によれば、好ましくは、マイクロ細孔及びメソ細孔の総容積の少なくとも50%が、30nm未満の直径を有する細孔の形態である。
【0040】
明確にするために、PD50値の測定においては、すべてのマクロ細孔容積(50nmを超える細孔直径)が考慮されるわけではないことに留意されたい。
【0041】
多孔質粒子は、好ましくは>3、好ましくは>5、特に好ましくは>6のpHを有する。多孔質粒子のpHは、ASTM規格番号D1512、方法Aに準拠して測定され得る。
【0042】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素複合粒子は、亜ハロゲン化ケイ素が細孔内及び多孔質粒子の表面上に堆積している1つ以上の多孔質粒子から構成されている。堆積された亜ハロゲン化物は、ケイ素及びハロゲン、好ましくは塩素から構成されており、x=0.00001~0.15、好ましくはx=0.00001~0.01、特に好ましくはx=0.0001~0.05の範囲のモル組成SiClxを有する。別の実施形態では、堆積された亜ハロゲン化物は、x=0.00001~0.15、好ましくはx=0.00001~0.01、特に好ましくはx=0.0001~0.05の範囲のモル組成SiBrx及び/又はSiFx及び/又はSiIxを有する。
【0043】
本発明による亜塩化ケイ素複合粒子は、好ましくは0.0003~16重量%、好ましくは0.0003~12重量%、特に好ましくは0.0003~6重量%の塩素含有率を有する。
【0044】
本発明による亜臭化ケイ素複合粒子は、好ましくは0.0009~30重量%、好ましくは0.0009~22重量%、特に好ましくは0.0009~15重量%の臭素含有率を有する。
【0045】
本発明による亜フッ化ケイ素複合粒子は、好ましくは0.0002~9重量%、好ましくは0.0002~7重量%、特に好ましくは0.0002~3.5重量%のフッ素含有率を有する。
【0046】
本発明による亜ヨウ化ケイ素複合粒子は、好ましくは0.0015~41重量%、好ましくは0.0015~31重量%、特に好ましくは0.0015~18重量%のヨウ素含有率を有する。
【0047】
(測定方法:好ましくは、特にロジウムアノードを有するBruker AXS S8 Tiger 1機器による蛍光X線分析)。
【0048】
堆積された亜ハロゲン化物は、構成成分として以下の元素:H、O、N、C、S、Fe、Ni、Cu、Mo、W、Mn、Al、K、Na、Ca、Ba、Sr、Cr、Mg、Zn、Pをさらに含有し得る。
【0049】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは≧1.5μm、特に好ましくは≧2μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは≦13μm、特に好ましくは≦8μmである。
【0050】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μm、特に好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μm、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmである。
【0051】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦5μm、とりわけ好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦1μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、特に好ましくは≧0.4μm、最も好ましくは≧0.6μmである。
【0052】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは≧5μm、特に好ましくは≧10μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦20.0μm、特に好ましくは≦15.0μm、最も好ましくは≦12.0μmである。
【0053】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは≦15.0μm、特に好ましくは≦12.0μm、より好ましくは≦10.0μm、とりわけ好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmの幅d90~d10を有する。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは≧0.6μm、特に好ましくは≧0.7μm、最も好ましくは≧1.0μmの幅d90~d10を有する。
【0054】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは粒子の形態である。粒子は、単離され得るか又は弱凝集体であり得る。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは非強凝集体であり、好ましくは非弱凝集体である。単離された、弱凝集体及び非強凝集体という用語は、多孔質粒子に関して既に上記でさらに定義されている。強凝集体又は弱凝集体の形態の本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の存在は、例えば従来の走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して視覚化することができる。
【0055】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、任意の所望のモルフォロジーを有し得、すなわち、例えば、裂状、フレーク状、球状又は針状であり得、好ましくは裂状又は球状の粒子であり得る。
【0056】
Wadellの定義によれば、球形度ψは、物体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψは値1を有する。この定義によれば、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは0.3~1.0、特に好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の球形度ψを有する。
【0057】
球形度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する円相当の円周と、この投影の測定された円周Uとの比:S=2πA/Uである。理想的な円形粒子の場合、Sは値1を有することとなり得る。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の場合、球形度Sは、球形度数分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、特に好ましくは0.65~1.0の範囲にある。球形度Sの測定は、例えば光学顕微鏡による個々の粒子の顕微鏡写真を使用して又は<10μmの粒子の場合、好ましくは走査型電子顕微鏡を用いて、例えばImageJなどの画像解析ソフトウェアを用いたグラフィック評価によって実行される。
【0058】
リチウムイオンバッテリのサイクル安定性は、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子のモルフォロジー、材料組成、特に比表面積又は内部多孔率によってさらに高めることができる。
【0059】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の総重量(好ましくはICP-OESなどの元素分析による測定)に基づいて、ケイ素浸透によって得られたケイ素を好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、特に好ましくは30~60重量%、とりわけ好ましくは40~50重量%で含有する。
【0060】
多孔質粒子内に導入された亜ハロゲン化ケイ素の体積は、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の総質量をケイ素の密度(2.336g/cm3)で割ったものに基づく、ケイ素前駆体からの浸透によって得られた亜ハロゲン化ケイ素の質量分率から導かれる。
【0061】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有粒子の細孔容積Pは、ガスアクセス可能細孔容積とガスアクセス不可能細孔容積との和から導かれる。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子のグルビッチガスアクセス可能細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素を用いたガス吸着測定によって測定可能である。
【0062】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子のガスアクセス不可能細孔容積は、式:ガスアクセス不可能細孔容積=1/骨格密度-1/純物質密度により測定可能である。
【0063】
ここで、骨格密度は、DIN 66137-2に準拠したヘリウムピクノメトリによって測定される本発明による複合粒子の密度であり、本発明による複合粒子の純物質密度は、本発明による複合粒子中に存在する成分の理論上の純物質密度に、材料全体中のそれらのそれぞれの重量パーセント比率を乗じたものの和から計算可能な理論上の密度である。これにより、亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子について以下が得られる:
純物質密度=ケイ素の理論上の純物質密度(2.336g/cm3)*重量%でのケイ素の割合+(ヘリウムピクノメトリによって測定される)多孔質粒子の密度*重量%での多孔質粒子の割合。
【0064】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の細孔容積Pは、ケイ素浸透から得られ、本発明による複合粒子中に存在するケイ素の体積に基づいて、好ましくは0~400容積%の範囲、より好ましくは100~350容積%の範囲、特に好ましくは200~350容積%の範囲にある。
【0065】
本発明による複合粒子中に存在する孔は、ガスアクセス可能であってもガスアクセス不可能であってもよい。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子のガスアクセス不可能な孔に対するガスアクセス可能な孔の容積比は、一般に、0(ガスアクセス可能な細孔なし)~1(すべての細孔がガスアクセス可能)の範囲にあり得る。本発明による複合粒子のガスアクセス不可能な孔に対するガスアクセス可能な孔の容積比は、0~0.8の範囲、特に好ましくは0~0.3の範囲、特に好ましくは0~0.1にある。
【0066】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の細孔は、例えばマクロ細孔(>50nm)、メソ細孔(2~50nm)及びマイクロ細孔(<2nm)の範囲の任意の所望の直径を有し得る。本発明による複合粒子はまた、異なる細孔タイプの任意の所望の混合物を含有し得る。本発明による複合粒子は、好ましくは全細孔容積に基づいて最大30%のマクロ細孔を含有し、マイクロ細孔を有さない本発明による複合粒子が特に好ましく、平均細孔直径が5nm未満である少なくとも50%の細孔を含む本発明による複合粒子が極めて特に好ましい。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子が、最大2nmの直径を有する細孔のみを含む場合が特に好ましい。
【0067】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、好ましくは、少なくとも一次元において、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満の構造サイズを有するケイ素構造を有する(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))。
【0068】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子が、細孔内及び/又は外面上に、最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは5nm未満の層厚を有する層の形態でケイ素又は亜ハロゲン化ケイ素を含有する場合が好ましい(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))。本発明による複合粒子はまた、ケイ素粒子から形成された層の形態のケイ素又は亜ハロゲン化ケイ素を含有し得る。ケイ素粒子は、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、特に好ましくは10nm未満の直径を有する(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))。ケイ素粒子に関するデータは、好ましくは、ここでは顕微鏡画像における粒子の円周の直径に関する。
【0069】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、最大170m2/g、好ましくは100m2/g未満、さらにより好ましくは60m2/g未満、特に好ましくは20m2/g未満の比表面積を有する。BET表面積は、DIN 66131(窒素を使用)に準拠して測定される。したがって、リチウムイオンバッテリ用のアノード中の活物質として本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を使用することにより、SEI形成を低減し、初期クーロン効率を高めることが可能になる。
【0070】
さらに、ケイ素含有材料中のケイ素前駆体から堆積されたケイ素は、例えば、Fe、Al、Cu、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類又はそれらの組合せを含む群から選択されたドーパントを含み得る。Li及び/又はSnが好ましい。亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子中のドーパントの含有率は、ICP-OESによって測定可能な複合粒子の総重量に基づいて、好ましくは最大1重量%、特に好ましくは最大100ppmである。
【0071】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、一般に、圧縮荷重及び/又は剪断荷重下で驚くほど高い安定性を有する。本発明による複合粒子の圧縮荷重安定性及び剪断安定性は、例えば、本発明による複合粒子が、圧縮応力下(例えば、電極圧縮中)又は剪断応力下(例えば、電極調製中)に、SEMにおいてそれらの多孔質構造中に、あったとしてもわずかな変化しか示さないという事実によって実証される。
【0072】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子の製造は、ケイ素浸透に一般的に使用される任意の所望の反応器で実行され得る。流動床反応器、水平方向から垂直方向まで任意の所望の配置で配向され得るロータリキルン及び例えば圧力反応器として、開放系又は閉鎖系として動作させられ得る固定床反応器から選択された反応器が好ましい。ケイ素前駆体の浸透中に形成された多孔質粒子及びケイ素含有材料の均質な混合を可能にする反応器が特に好ましい。これは、多孔質粒子の細孔内及び表面上へのケイ素の可能な限り最も均質な堆積にとって有利である。最も好ましい反応器は、流動床反応器、ロータリキルン又は圧力反応器、特に流動床反応器又は圧力反応器である。
【0073】
ケイ素は、一般に、熱分解によってハロゲン含有ケイ素前駆体から堆積される。ケイ素浸透は、1つのケイ素前駆体若しくは2つ以上のケイ素前駆体を混合して又は交互に採用し得、少なくとも1つの塩素含有前駆体が採用されなければならない。好ましいハロゲン含有ケイ素前駆体は、トリクロロシランHSiCl3、トリフルオロシランHSiF3、トリブロモシランHSiBr3、トリヨードシランHSiI3、ジクロロシランH2SiCl2、ジフルオロシランH2SiF2、ジブロモシランH2SiBr2、ジヨードシランH2SiI2、モノクロロシランH3SiCl、モノフルオロシランH3SiF、モノブロモシランH3SiBr、モノヨードシランH3SiI、テトラクロロシランSiCl4、テトラフルオロシランSiF4、テトラブロモシランSiBr4、テトラヨードシランSiI4、ヘキサクロロジシランSi2Cl6、ヘキサフルオロジシランSi2F6、ヘキサブロモジシランSi2Br6、ヘキサヨードジシランSi2I6並びに例えば1,1,2,2-テトラクロロジシランCl2HSi-SiHCl2などの高級直鎖状、分岐状又は環状同族体、トリクロロメチルシランMeSiCl3、ジクロロジメチルシランMe2SiCl2、クロロトリメチルシランMe3SiCl、テトラメチルシランMe4Si、ジクロロメチルシランMeHSiCl2、クロロメチルシランMeH2SiClなどのハロゲン化及び部分ハロゲン化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシランから選択される。
【0074】
混合物中のハロゲン非含有ケイ素前駆体は、モノシランSiH4、ジシランSi2H6及び高級直鎖状、分岐状若しくは環状同族体、ネオペンタシランSi5H12、シクロペンタシラン、シクロヘキサシランSi6H12などのケイ素-水素化合物、メチルシランMeH3Si、クロロジメチルシランMe2HSiCl、ジメチルシランMe2H2Si、トリメチルシランMe3SiHなどのメチルシラン又は記載されたケイ素化合物の混合物から選択される。特に、ケイ素前駆体は、トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、モノクロロシランH3SiCl、テトラクロロシランSiCl4、ヘキサクロロジシランSi2Cl6及び/又はそれらとモノシランSiH4若しくはジシランSi2H6などのH含有シランとの混合物から選択される。5ppmを超えるクロロシランSiHnCl4-n(n=0~3)の割合を有するジクロロシランH2SiCl2、モノクロロシランH3SiCl及びモノシランSiH4が特に好ましい。
【0075】
ケイ素を含まない反応性成分もまた、ケイ素前駆体と混合して又は交互に存在し得る。ケイ素非含有反応性成分中に存在し得るさらなる反応性構成成分は、水素又は1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素を含む群から選択された炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、エテン、アセチレン、プロペン若しくはブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えばシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン若しくはノルボルナジエンなどの1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン若しくはナフタレン、さらなる芳香族炭化水素、例えばフェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン若しくはフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン及び例えば天然ガス凝縮物、石油蒸留物若しくはコークス炉凝縮物からの多数のこのような化合物を含む混合画分、流動接触分解装置(FCC)、蒸気分解装置若しくはフィッシャー-トロプシュ合成プラント又はより一般には木材、天然ガス、石油及び石炭処理からの炭化水素含有材料流の生成流からの混合画分を含む。
【0076】
これらのケイ素非含有反応性成分はまた、ケイ素前駆体と交互に反応器のガス空間内に導入され得る。
【0077】
この工程の特別な実施形態では、各構成成分が0~99.9重量%で存在し得る、例えばモノシランSiH4、トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、モノクロロシランH3SiCl及びテトラクロロシランSiCl4の混合物などのモノシラン又はシランの混合物は、反応器内で使用する直前にのみ好適な工程によって製造される。これらの工程は、一般に、トリクロロシランHSiCl3から進行し、好適な触媒(例えば、AmberLystTM A21DRY)によって、記載された混合物の他の成分内に再構成される。得られた混合物の組成は、主に、1つ以上の再構成段階の後に、1つ以上の異なる温度で形成された混合物のワークアップによって測定される。
【0078】
特に好ましい反応性成分は、モノシランSiH4、オリゴマーシラン又はポリマーシラン、特に一般式SinHn+2の直鎖シランであり、式中、nは2~10の範囲の整数を含み得るもの及び一般式-[SiH2]n-の環状シランであり、式中、nは3~10の範囲の整数を含み得るもの、トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2並びにモノクロロシランH3SiClを含む群から選択され、これらは単独で又は混合物として採用され得、SiH4、HSiCl3及びH2SiCl2単独又は混合での使用が極めて特に好ましい。
【0079】
さらに、反応性成分は、例えば、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含有する化合物に基づくドーパントなどのさらなる反応性構成成分もさらに含有し得る。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH3、ジボランB2H6、ホスファンPH3、ゲルマンGeH4、アルサンAsH3、鉄ペンタカルボニルFe(CO)4及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)4を含む群から選択される。
【0080】
気相の組成は、例えば、ガスクロマトグラフ及び/又は熱伝導度検出器及び/又は赤外分光計及び/又はラマン分光計及び/又は質量分析計によって測定され得、したがって堆積工程の標的制御が可能になり得る。好ましい実施形態では、水素含有率は、熱伝導度検出器を使用して測定され及び/又は存在する任意のクロロシランは、ガスクロマトグラフ又はガス赤外分光計を使用して測定される。
【0081】
亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子はまた、後処理及び/又は不活性化され得る。複合粒子は、好ましくは、同じ又は別の反応器内で、酸素により、特に不活性ガスと酸素との混合物によりパージされる。これにより、例えば、ケイ素及び亜ハロゲン化ケイ素の表面を改質及び/又は不活性化することが可能になる。例えば、ケイ素及び亜ハロゲン化ケイ素の表面上に存在する任意の反応基の反応を引き起こすことが可能である。この目的のために、好ましくは最大20体積%、特に好ましくは最大10体積%、とりわけ好ましくは最大5体積%の酸素及び好ましくは最大100体積%、特に好ましくは最大10体積%、とりわけ好ましくは最大1体積%の水を含有する、窒素、酸素並びに任意選択的にアルコール及び/又は水の混合物を採用することが好ましい。このステップは、好ましくは最大200℃、特に好ましくは最大100℃、とりわけ好ましくは最大50℃の温度で実行される。粒子表面の不活性化はまた、不活性ガス及びアルコールを含有するガス混合物を用いて行われてもよい。ここでは、窒素及びイソプロパノールを採用することが好ましい。しかしながら、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール又はより長鎖及び分枝状アルコール及びジオールを採用することも可能である。
【0082】
複合粒子の不活性化はまた、液体溶媒又は溶媒混合物中での分散によって行われてもよい。これは、例えばイソプロパノール又は水溶液を含有し得る。
【0083】
複合粒子の不活性化はまた、200~800℃の温度でC-、Al-及びB含有前駆体を使用するコーティング及び任意選択的にその後の酸素含有雰囲気での処理によって選択的に実行され得る。
【0084】
又は、複合粒子の後処理は、水又は水溶液を用いて実行され得る。洗浄水のpHが>3になるまで、粒子を水で数回洗浄することが好ましい。サンプルは、例えば超音波で処理され得る。
【0085】
本発明による複合品を製造するための方法は、好ましくは、不活性ガス雰囲気内、例えば窒素又はアルゴン雰囲気内で行われる。
【0086】
この方法では、ケイ素浸透は、好ましくは280~900℃、特に好ましくは320~600℃、特に350~450℃で実行される。
【0087】
ケイ素浸透は、減圧、常圧又は高圧で実行され得る。浸透は、常圧又は50barまでの高圧で実行される場合が好ましい。
【0088】
すべての他の点において、方法は、ケイ素前駆体からのケイ素の浸透に一般的であるような従来の方法で実行され得、必要に応じて当業者に慣例となっている通常の調節が用いられ得る。
【0089】
本発明はさらに、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を含有するリチウムイオンバッテリのためのアノード材料を提供する。
【0090】
アノード材料は、好ましくは、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子と、1つ以上の結合剤と、任意選択的にさらなる活物質としての黒鉛と、任意選択的に1つ以上のさらなる導電性成分と、任意選択的に1つ以上の添加剤と、を含む混合物に基づく。
【0091】
アノード材料は、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子と、好ましくは1つ以上の結合剤と、任意選択的にさらなる活物質としての黒鉛と、任意選択的に1つ以上のさらなる導電性成分と、任意選択的に1つ以上の添加剤と、を含有する。
【0092】
アノード材料内に他の導電性成分を使用することにより、電極内及び電極と集電体との間の接触抵抗を低減することができ、これにより、リチウムイオンバッテリの通電容量が改善される。好ましいさらなる導電性成分は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は金属粒子、例えば銅である。
【0093】
導電性カーボンブラックの一次粒子は、好ましくは直径パーセンタイルd10=5nmとd90=200nmとの間の体積加重粒径分布を有する。導電性カーボンブラックの一次粒子は、鎖のように分岐し、最大μmのサイズの構造を形成することもできる。カーボンナノチューブは、好ましくは0.4~200nm、より好ましくは2~100nm、最も好ましくは5~30nmの直径を有する。金属粒子は、直径パーセンタイルd10=5nmとd90=800nmとの間の体積加重粒径分布を有する。
【0094】
アノード材料は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは0~95重量%、特に好ましくは0~40重量%、最も好ましくは0~25重量%の1つ以上のさらなる導電性成分を含む。
【0095】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、リチウムイオンバッテリのためのアノード中に、アノード材料中に存在する全活物質に基づいて、好ましくは5~100重量%、特に好ましくは30~100重量%、最も好ましくは60~100重量%で存在し得る。
【0096】
好ましい結合剤は、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、特にリチウム塩若しくはナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロース若しくはセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、特にポリアミドイミド又は熱可塑性エラストマー、特にエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーである。ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はセルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロースが特に好ましい。上述の結合剤のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩も特に好ましい。ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩が最も好ましい。結合剤の酸基のすべて又は好ましくは一部は、塩の形態で存在し得る。結合剤は、好ましくは100000~1000000g/molのモル質量を有する。2つ以上の結合剤の混合物もまた使用することができる。
【0097】
使用される黒鉛は、一般に、天然又は合成黒鉛であり得る。黒鉛粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μm~d90<200μmの体積加重粒径分布を有する。
【0098】
添加剤の例は、細孔形成剤、分散剤、レベリング剤又はドーパント、例えば元素リチウムである。
【0099】
アノード材料のための好ましい配合物は、好ましくは、5~95重量%、特に60~90重量%の本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子、0~90重量%、特に0~40重量%のさらなる導電性成分、0~90重量%、特に5~40重量%の黒鉛、0~25重量%、特に5~20重量%の結合剤及び任意選択的に0~80重量%、特に0.1~5重量%のさらなる添加剤を含有し、重量%における量は、アノード材料の総重量に基づき、アノード材料の全構成成分の割合は、合計で100重量%である。
【0100】
本発明はさらに、本発明によるアノード材料でコーティングされた集電体を含むアノードに関する。アノードは、好ましくはリチウムイオンバッテリ内に使用される。
【0101】
アノード材料の構成成分は、例えば、好ましくは水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、エチルアセテート、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びエタノール並びにこれらの溶媒の混合物を含む群から選択された溶媒中で、好ましくはロータステータ機、高エネルギーミル、プラネタリニーダ、アジテータビーズミル、振動板又は超音波装置を使用して、アノードインク又はペーストに加工され得る。
【0102】
アノードインク又はペーストは、好ましくは2~10のpHを有する(例えば、SenTix RJDプローブを有するWTW pH 340i pH計を用いて20℃で測定される)。
【0103】
例えば、アノードインク又はペーストは、銅箔又は別の集電体上にナイフコーティングされ得る。スピンコーティング、ローラ、浸漬又はスロットコーティング、ブラッシング又はスプレーなどの他のコーティング方法も本発明に従って使用され得る。
【0104】
銅箔が本発明によるアノード材料でコーティングされる前に、銅箔は、例えばポリマー樹脂又はシランに基づく市販のプライマで処理され得る。プライマは銅への接着性の改善をもたらすことができるが、それ自体は一般に電気化学的活性を事実上有さない。
【0105】
アノード材料は、好ましくは恒量まで乾燥される。乾燥温度は、使用される成分及び使用される溶媒に依存する。乾燥温度は、好ましくは20℃~300℃、特に好ましくは50℃~150℃である。
【0106】
層厚、すなわちアノードコーティングの乾燥層厚は、好ましくは2μm~500μm、特に好ましくは10μm~300μmである。
【0107】
最後に、電極コーティングはカレンダ加工されて、規定の多孔率を達成し得る。このようにして製造された電極は、好ましくは15~85%の多孔率を有し、これはDIN ISO 15901-1に準拠した水銀ポロシメトリによって測定され得る。好ましくは、このようにして測定することができる細孔容積の25~85%は、0.01~2μmの細孔直径を有する細孔によって提供される。
【0108】
本発明はさらに、本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を含有する少なくとも1つのアノードを含むリチウムイオンバッテリを提供する。リチウムイオンバッテリは、カソードと、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータ及び2つの電極がそれに含浸された電解質と、さらに該部品を収容するハウジングと、をさらに含み得る。
【0109】
本発明の文脈において、リチウムイオンバッテリという用語はセルも含む。セルは、一般に、カソードと、アノードと、セパレータと、電解質とを備える。1つ以上のセルに加えて、リチウムイオンバッテリは、好ましくはバッテリ管理システムも含む。バッテリ管理システムは、一般に、例えば、特に充電状態を検出するための電子回路を使用して、深放電保護又は過充電保護のためにバッテリを制御するために使用される。
【0110】
使用される好ましいカソード材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープ又は非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトホスフェート、リチウムマンガンホスフェート、リチウムバナジウムホスフェート又はリチウムバナジウム酸化物であり得る。
【0111】
セパレータは、好ましくはイオン透過性の電気絶縁膜であり、好ましくはポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)又はポリエステル若しくは対応するラミネートから構成される。又は、セパレータは、バッテリ製造において一般的であるように、ガラス若しくはセラミック材料からなり得るか又はガラス若しくはセラミック材料でコーティングされ得る。公知のように、セパレータは、第1の電極を第2の電極から分離し、したがって電極間の電子伝導接続(短絡)を防止する。
【0112】
電解質は、好ましくは、非プロトン性溶媒中に1つ以上のリチウム塩(=導電性塩)を含む溶液である。導電性塩は、好ましくは、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアーセネート、リチウムパークロレート、リチウムテトラフルオロボラート、リチウムイミド、リチウムメチド、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)及びリチウムボラートを含む群から選択される。導電性塩の濃度は、溶媒に基づいて、好ましくは0.5mol/lと関連する塩の固溶限との間である。特に好ましくは、0.8~1.2mol/lである。
【0113】
使用することができる溶媒の例は、環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、有機炭酸エステル又はニトリルであり得、個々に又はそれらの混合物としてであり得る。
【0114】
電解質は、ビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートなどのフィルム形成剤を含有することが好ましい。その結果、本発明によるケイ素含有材料を含有するアノードのサイクル安定性の著しい改善を達成することができる。これは、主に、活性粒子の表面上に固体電解質界面が形成されることに起因する。電解質中のフィルム形成剤の割合は、好ましくは0.1~20.0重量%、特に好ましくは0.2~15.0重量%、最も好ましくは0.5~10重量%である。
【0115】
リチウムイオンセルの電極の実際の容量を可能な限り最適に一致させるために、正極及び負極の材料の量に関してバランスをとることが有利である。これに関連して、二次リチウムイオンセルの第1の又は最初の充電/放電サイクル(いわゆる形成)中に、アノード内の電気化学的活物質の表面上に被覆層が形成されることが特に重要である。この最上層は「固体電解質界面」(SEI)と呼ばれ、一般に主に電解質分解生成物及び一定量のリチウムからなり、したがってさらなる充電/放電反応にはもはや利用できない。SEIの厚さ及び組成は、使用されるアノード材料及び使用される電解質溶液の種類及び品質に依存する。
【0116】
黒鉛の場合、SEIは特に薄い。黒鉛では、第1の充電ステップにおいてセル内の可動リチウムの典型的に5%~35%の損失がある。したがって、バッテリの可逆容量もまた低下する。
【0117】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を有するアノードの場合、第1の充電ステップにおいて、好ましくは最大で30%、特に好ましくは最大で20%、最も好ましくは最大で10%の可動リチウムの損失があり、これは、ケイ素含有複合アノード材料について例えばUS10,147,950B1に記載された先行技術の値を大幅に下回る。
【0118】
本発明によるリチウムイオンバッテリは、通常の形態のすべて、例えば、巻き取られた形態、折り畳まれた形態又は積み重ねられた形態で製造することができる。
【0119】
上述のように、本発明によるリチウムイオンバッテリを製造するために使用されるすべての物質及び材料は、本発明による複合粒子を除いて公知である。本発明によるバッテリを得るための本発明によるバッテリの部品及びそのアセンブリの製造は、バッテリ製造の分野で公知の方法によって実行される。
【0120】
本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子は、非常に良好な電気化学的挙動を特徴とし、高い容積容量及び優れた性能特性を有するリチウムイオンバッテリをもたらす。本発明による複合粒子は、リチウムイオン及び電子に対して透過性であり、したがって電荷輸送を可能にする。本発明による亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を用いると、リチウムイオンバッテリ内のSEIの量を大幅に低減することができる。加えて、本発明による複合粒子の設計により、SEIはもはや本発明による複合粒子の表面から剥離しないか又は少なくともはるかに少ない程度でそこから剥離する。これはすべて、対応するリチウムイオンバッテリの高いサイクル安定性をもたらす。減衰及び捕捉を最小限に抑えることができる。さらに、本発明によるリチウムイオンバッテリは、セル内で利用可能なリチウムの低い初期及び連続損失、したがって高いクーロン効率を示す。
【0121】
以下の実施例では、各場合で特段に明記しない限り、すべての量及びパーセンテージは重量に基づき、すべての圧力は0.10MPa(絶対値)であり、すべての温度は20℃である。
【実施例】
【0122】
pHは、ASTM規格番号D1512、方法Aに準拠して測定される。
【0123】
走査型電子顕微鏡法(SEM/EDX):
顕微鏡分析を、Zeiss Ultra 55走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型Oxford X-Max 80N X線分光計を使用して実行した。分析前に、帯電現象を防止するために、サンプルを、Safematic Compact Coating Unit 010/HVを使用して炭素の蒸着に供した。ケイ素含有材料の断面は、6kVのLeica TIC 3Xイオンカッターを用いて製造した。
【0124】
無機/元素分析:
C含有率は、Leco CS 230分析器を使用して測定され、Leco TCH-600分析器は、酸素及び窒素含有率を測定するために使用された。他の元素の定性的及び定量的測定、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の測定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析(Optima 7300 DV、Perkin Elmer)によって実行された。この目的のために、サンプルをマイクロ波(Microwave 3000、Anton Paar)中で酸消化(HF/HNO3)に供した。ICP-OESの測定は、ISO 11885「水質-誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)による選択された元素の測定(ISO 11885:2007)、ドイツ版EN ISO 11885:2009」を指針としており、これは、酸性水溶液(例えば、酸性化された飲料水、廃水及び他の水のサンプル、土壌及び沈殿物の王水抽出物)の分析に使用されている。
【0125】
蛍光X線分析:
ロジウムアノードを有するBruker AXS SB Tiger 1での蛍光X線分析によって塩素含有率を測定した。
【0126】
この目的のために、5.00gのサンプルを1.00gのBoreox及び2滴のエタノールと混合し、HerzogのHP 40タブレットプレスで150kNの圧力で15秒間圧縮してタブレットにした。
【0127】
粒径の測定:
粒径分布は、Horiba LA 950を使用した静的レーザ散乱によってISO 13320に準拠して測定される。サンプルの調製において、粒子を測定溶液中に分散させるときには、弱凝集体のサイズではなく、個々の粒子のサイズが測定されることを確実にするように特に注意しなければならない。ここで検討された材料については、これらはエタノール中に分散させられた。この目的のために、分散液を、必要に応じて測定前に4分間、LS24d5ソノトロードを有するHielscher UIS250v超音波実験機器において250W超音波で処理した。
【0128】
BET表面積測定:
材料の比表面積を、Sorptomatic 199090機器(Porotec)又はBELSorp MAX II機器(Microtrac)又はSA-9603MP機器(Horiba)を使用して、BET法(窒素を使用したDIN ISO 9277:2003-05に準拠した測定)により、窒素によるガス吸着によって測定した。
【0129】
骨格密度:
骨格密度、すなわち、外部からのガスがアクセス可能な細孔空間のみの容積に基づく多孔質固体の密度を、DIN 66137-2に準拠したヘリウムピクノメトリによって測定した。
【0130】
ガスアクセス可能細孔容積(グルビッチ細孔容積):
グルビッチガスアクセス可能細孔容積を、DIN 66134に準拠した窒素を用いたガス吸着測定によって測定した。
【0131】
PD50細孔直径:
PD50細孔直径を、DIN 66135に準拠したHorvath-Kawazoe法によって定義されたマイクロ細孔及びDIN 66134に準拠したBJH法によって定義されたメソ細孔の総容積に基づいて、容積平均細孔直径として計算した。
【0132】
以下の実施例1~6及び比較例1は、本発明によるケイ素-炭素の製造に使用される多孔質炭素粒子の製造及び特性を記載する。
【0133】
ケイ素複合粒子の製造
比較例1A(本発明ではない):多孔質炭素粒子からのケイ素-炭素複合粒子。
【0134】
反応には、円筒状の下部(カップ)と、容積5.3Lの複数の接続部(例えば、ガス流入、ガス流出、温度及び圧力の測定)を有する蓋と、からなる電気加熱式オートクレーブを使用した。採用した撹拌機は、実質上狭いクリアランスの螺旋状撹拌機であった。これは、反応器内部のクリアランス高さの約50%に相当する高さを有していた。螺旋状撹拌機は、ベッド内で直接温度測定を可能にするような設計を有していた。オートクレーブに多孔質炭素342.5g(比表面積=1617m2/g、グルビッチ細孔容積=0.80cm3/g)を充填し、密閉した。オートクレーブを最初に真空にした。その後、それをSiH4(70g)を用いて350℃で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(59g)を用いて370℃の温度で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(57g)を用いて370℃の温度で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(55g)を用いて370℃の温度で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(54g)を用いて370℃の温度で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(52g)を用いて370℃の温度で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(51g)を用いて370℃の温度で16.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、圧力を1.5barに下げ、オートクレーブをSiH4(29g)を用いて370℃の温度で10.0barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを20分以内に420℃の温度に加熱し、温度を60分間維持した。次いで、オートクレーブを100℃の温度に冷却した後、窒素で5回パージし、酸素含有率5%の希薄空気で5回パージし、酸素含有率10%の希薄空気で5回パージし、次いで空気で5回パージした。
【0135】
オートクレーブ内の圧力を1barに下げた後、窒素で3回パージした。Ar雰囲気下で、黒色の微細固体の形態のケイ素-炭素複合粒子651gを単離した。
【0136】
比較例1B(本発明ではない):多孔質炭素粒子からの亜塩化ケイ素含有複合粒子。
【0137】
管状反応器に、石英ガラスボート内の多孔質炭素粒子3.0g(比表面積=2140m2/g、グルビッチ細孔容積=1.01cm3/g、pH=5.4)を充填した。窒素で不活性化した後、反応器を450℃に加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス(20g/hのトリクロロシラン(液体)と10NL/hのArとの混合物)を反応器に24時間通した。次いで、反応器を不活性ガスでパージし、室温に冷却し、製造物を取り出した。
【0138】
[実施例1]
多孔質炭素粒子からの亜塩化ケイ素含有複合粒子。
【0139】
管状反応器に、石英ガラスボート内の多孔質炭素粒子3.0g(比表面積=2140m2/g、グルビッチ細孔容積=1.01cm3/g、pH=5.4)を充填した。窒素で不活性化した後、反応器を450℃に加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス(20g/hのトリクロロシラン(液体)と10NL/hのArとの混合物)を反応器に24時間通した。次いで、反応器を不活性ガスでパージし、室温に冷却し、製造物を取り出した。次いで、製造物を20℃の水に懸濁し(水30ml/製造物1g)、10分間撹拌し、pHを測定しながらブフナー漏斗で濾別した。洗浄水のpHが>3になるまで、全手順を繰り返した(一般に3~5回)。
【0140】
[実施例2]
多孔質炭素粒子からのケイ素-炭素複合粒子。
【0141】
管状反応器に、石英ガラスボート内の多孔質炭素粒子3.0g(比表面積=2140m2/g、グルビッチ細孔容積=1.01cm3/g、pH=5.4)を充填した。窒素で不活性化した後、反応器を415℃に加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス(5NL/hのジクロロシランと10NL/hのArとの混合物)を反応器に15時間通した。次いで、反応器を不活性ガスでパージし、室温に冷却し、製造物を取り出した。次いで、製造物を20℃の水(30mlの水/1gの製造物)に懸濁し、80℃の超音波浴で1時間処理し、pHを測定しながらブフナー漏斗で濾別した。洗浄水のpHが>3になるまで、全手順を繰り返した。
【0142】
[実施例3]
多孔質炭素粒子からのケイ素-炭素複合粒子。
【0143】
管状反応器に、石英ガラスボート内の多孔質炭素粒子3.0g(比表面積=2140m2/g、グルビッチ細孔容積=1.01cm3/g、pH=5.4)を充填した。窒素で不活性化した後、反応器を380℃に加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス1(33g/hのトリクロロシラン(液体)と10NL/hのArとの混合物)を反応器に8時間通した。その後、反応性ガス2(N2中10%SiH4、10NL/h)を反応器に9時間通した。次いで、反応器を不活性ガスでパージし、20℃に冷却し、製造物を取り出した。
【0144】
[実施例4]
多孔質炭素粒子からのケイ素-炭素複合粒子。
【0145】
管状反応器に、石英ガラスボート内の多孔質炭素粒子3.0g(比表面積=2140m2/g、グルビッチ細孔容積=1.01cm3/g、pH=5.4)を充填した。窒素で不活性化した後、反応器を380℃に加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス1(5NL/hのジクロロシランと10NL/hのArとの混合物)を反応器に15時間通した。次いで、反応器を400℃に加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス2(N2中10%SiH4、10NL/h)を反応器に7.6時間通した。次いで、反応器を不活性ガスでパージし、室温に冷却し、製造物を取り出した。
【0146】
[実施例5]
圧力反応器内での反応による多孔質炭素粒子からのケイ素-炭素複合粒子。
【0147】
反応には、円筒状の下部(カップ)と、容積594mlの複数の接続部(例えば、ガス流入、ガス流出、温度及び圧力の測定)を有する蓋と、からなる電気加熱式オートクレーブを使用した。採用した撹拌機は、実質上狭いクリアランスの螺旋状撹拌機であった。これは、反応器内部のクリアランス高さの約50%に相当する高さを有していた。螺旋状撹拌機は、ベッド内で直接温度測定を可能にするような設計を有していた。オートクレーブに多孔質炭素(比表面積=2010m2/g、グルビッチ細孔容積=0.95cm3/g)10.0gを充填し、密閉した。オートクレーブを最初に真空にした。その後、それをDCS(1g)及びSiH4(15g)で15.1barの圧力に加圧した。次いで、オートクレーブを90分以内に420℃の温度に加熱し、温度を210分間維持した。反応の過程にわたって圧力は74barに上昇した。オートクレーブを12時間以内に室温(20℃)まで冷却した。冷却後に33.5barのオートクレーブ圧力が残っていた。オートクレーブ内の圧力を1barに下げた後、窒素で3回パージした。Ar雰囲気下で、黒色の微細固体の形態のケイ素-炭素複合粒子20.8gを単離した。Ar雰囲気を空気と交換した後、製造物を水(30ml/1g製造物)に懸濁し、80℃の超音波浴で1時間処理し、pHを測定しながらブフナー漏斗で濾別した。洗浄水のpHが>3になるまで、全手順を繰り返した。
【0148】
製造のための反応条件及びケイ素-炭素複合粒子の材料特性を以下の表2に要約する。
【0149】
【0150】
採用されるケイ素前駆体に関係なく、同一の材料特性が得られる。
【0151】
電気化学セル中のケイ素-炭素複合粒子の評価
比較例7:比較例1Aからの本発明ではないケイ素-炭素複合粒子を含有するアノード及びリチウムイオンバッテリにおける電気化学試験。
【0152】
ポリアクリル酸29.71g(85℃で恒量まで乾燥、Sigma-Aldrich、Mw約450000g/mol)及び脱イオン水756.60gを、ポリアクリル酸が完全に溶解するまでシェーカを用いて(290rpm)2.5時間撹拌した。水酸化リチウムモノハイドレート(Sigma-Aldrich)を、pHが7.0になるまで少しずつ溶液に添加した(WTW pH 340i pHメータ及びSenTix RJDプローブを使用して測定した)。次いで、溶液をシェーカによってさらに4時間混合した。中和されたポリアクリル酸溶液3.87g及び黒鉛0.96g(Imerys、KS6L C)を最初に50ml容器に充填し、プラネタリミキサ(SpeedMixer、DAC 150 SP)内で2000rpmでブレンドした。続いて、実施例1Aからの本発明によるケイ素-炭素複合粒子3.40gを2000rpmで1分間撹拌した。次いで、8パーセント導電性カーボンブラック分散液1.21g及び脱イオン水0.8gを添加し、プラネタリミキサを使用して2000rpmで組み込んだ。これに続いて、溶解機を使用して3000rpm、一定の20℃で30分間分散させた。インクの脱気を、再びプラネタリミキサを用いて真空下、2500rpmで5分間実行した。
【0153】
次いで、完成した分散液を、ギャップクリアランスが0.1mmのフィルム延伸フレーム(Erichsen、model 360)を使用して、厚さ0.03mmの銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)に塗布した。次いで、このようにして製造されたアノードコーティングを60℃及び1barの空気圧で60分間乾燥させた。乾燥アノードコーティングの平均基本重量は2.2mg/cm2、コーティング密度は0.9g/cm3であった。
【0154】
電気化学的研究を、2電極構成のボタンセル(CR2032型、Hohsen Corp.)を使用して実行した。電極コーティングを対電極すなわち負極として使用し(Dm=15mm)、94.0%の含有率及び15.9mg/cm2の平均基本重量を有するリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物6:2:2に基づくコーティング(SEIから得られた)を作用電極すなわち正極として使用した(Dm=15mm)。電解質60μlを浸したガラス繊維濾紙(Pall、GF type A/E)をセパレータとして使用した(Dm=16mm)。採用された電解質は、フルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの1:4(v/v)混合物中のリチウムヘキサフルオロホスフェートの1.0モル溶液から構成されていた。セルの構築はグローブボックス(<1ppmのH2O、O2)内で実行し、採用された全成分の乾燥物中の含水率は20ppm未満であった。
【0155】
電気化学試験を22℃で実行した。セルを、cc/cv法(定電流/定電圧)によって、最初のサイクルで15mA/g(C/10に相当)の定電流で、その後のサイクルで75mA/g(C/2に相当)の定電流で充電し、4.2Vの電圧制限に達すると、電流が1.5mA/g(C/100に相当)又は3mA/g(C/50に相当)を下回るまで定電圧で充電した。セルを、2.5Vの電圧制限に達するまで、最初のサイクルでは15mA/g(C/10に相当)の定電流で、その後のサイクルでは75mA/g(C/2に相当)の定電流で、cc法(定電流)によって放電した。選択した特定の電流は、正極のコーティングの重量に基づいていた。電極を、カソード:アノード=1:1.2の容量比が確立されるように選択した。
【0156】
比較例8:比較例1Bからの本発明ではないケイ素-炭素複合粒子を含有するアノード及びリチウムイオンバッテリにおける電気化学試験。
【0157】
比較例1Bからの本発明ではないケイ素含有材料を使用して、比較例7に記載のアノードを製造した。アノードを、比較例7に記載されるようにリチウムイオンバッテリ内に設置し、同じ手順によって試験に供した。
【0158】
比較例9:比較例1Cからの本発明ではないケイ素-炭素複合粒子を含有するアノード及びリチウムイオンバッテリにおける電気化学試験。
【0159】
比較例1Cからの本発明ではないケイ素-炭素複合粒子を使用して、比較例7に記載のアノードを製造した。アノードを、比較例7に記載されるようにリチウムイオンバッテリ内に設置し、同じ手順によって試験に供した。
【0160】
[実施例10]
実施例3からのケイ素-炭素複合粒子を含有するアノード及びリチウムイオンバッテリにおける電気化学試験。
【0161】
実施例3からの本発明によるケイ素含有材料を使用して、比較例7に記載のアノードを製造した。アノードを、比較例7に記載されるようにリチウムイオンバッテリ内に設置し、同じ手順によって試験に供した。
【0162】
電気化学的評価の結果を以下の表3に要約する。
【0163】
[実施例11]
実施例1からのケイ素-炭素複合粒子を含有するアノード及びリチウムイオンバッテリにおける電気化学試験。
【0164】
実施例1からの本発明によるケイ素含有材料を使用して、比較例7に記載のアノードを製造した。アノードを、比較例7に記載されるようにリチウムイオンバッテリ内に設置し、同じ手順によって試験に供した。
【0165】
電気化学的評価の結果を以下の表3に要約する。
【0166】
【0167】
比較例7と本発明による実施例10との比較から、材料中の塩素含有率の存在は電気化学的性能に悪影響を及ぼさないことが明らかである。比較例8と本発明による実施例11との比較から、過度に低いpHがバッテリの電気化学的性能に悪影響を及ぼす一方で、pHを適合させると性能が安定化することが明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子であって、
1.Si含有率>30重量%、
2.多孔質マトリックスの細孔内及び細孔上に配置されたケイ素、
3.0.0003~16重量%のハロゲン濃度、
4.pH3~9、
5.0.5~20μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布、及び
6.最大170m2/gの比BET表面積
を有する、亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子。
【請求項2】
ハロゲンが塩素であり、
0.0003~16重量%のCl濃度を有する、
請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
ケイ素が、少なくとも部分的に亜塩化ケイ素SiClx(式中、x=0.00001~0.15である)の形態で存在する、請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
ケイ素浸透によって得られた少なくとも30重量%のケイ素を含む、請求項1~3のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
20℃及び1013mbarで気体及び/又は液体であるハロゲン含有及びハロゲン非含有ケイ素前駆体から選択されたケイ素前駆体からのケイ素浸透によって、請求項1~4のいずれかに記載の複合粒子を製造するための方法であって、少なくとも1つのハロゲン含有ケイ素前駆体が、
1.0.5~20μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布、
2.0.4~2.2cm3/gの範囲のN2吸着によって測定されるマイクロ細孔及びメソ細孔の全細孔容積(グルビッチ細孔容積)、及び
3.30nm以下のN2吸着によって測定されるPD50細孔直径
を有する多孔質粒子の存在下で存在する、方法。
【請求項6】
前記ケイ素浸透が、流動床反応器、水平から垂直の位置に配置されたロータリキルン、開放若しくは閉鎖された固定床反応器及び圧力反応器から選択される反応器内で実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ケイ素浸透が、280℃~900℃で行われる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記複合粒子が、モノシラン及び塩素含有シランから選択されるシランからのケイ素浸透によって製造され、少なくとも1つの塩素含有シランが採用される、請求項5~7に記載の方法。
【請求項9】
ケイ素を含まない反応性成分もまた、前記ケイ素前駆体と混合して又は前記ケイ素前駆体と交互に存在する、請求項5~8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~4に記載の亜ハロゲン化ケイ素複合粒子を含有するリチウムイオンバッテリのためのアノード材料。
【請求項11】
請求項10に記載のアノード材料でコーティングされた集電体を備えるアノード。
【請求項12】
請求項1~4に記載の亜ハロゲン化ケイ素含有複合粒子を含有する少なくとも1つのアノードを備えるリチウムイオンバッテリ。
【国際調査報告】