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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作動シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20241128BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241128BHJP
【FI】
F15B15/14 370
B23K26/21 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529928
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 DE2021000198
(87)【国際公開番号】W WO2023104228
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューマッハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエター、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
3H081
4E168
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC18
3H081CC20
3H081CC24
3H081DD25
4E168BA23
4E168BA25
4E168BA83
(57)【要約】
本発明は、シリンダ1は、シリンダ・チューブ3と、クロージャ部材4aと、更なるクロージャ部材4bと、を有し、クロージャ部材4aは一方のシリンダ・チューブ端部5aに配設されており、更なるクロージャ部材4bはもう一方のシリンダ・チューブ端部5bに配設されており、クロージャ部材4aは軸部分4a.1を有し、シリンダ・チューブ3はシリンダ・チューブ端部分5a.1を有し、軸部分4a.1とシリンダ・チューブ端部分5a.1は結合セクション7aを形成しており、結合セクション7aにおいて、クロージャ部材4aは軸部分4a.1がシリンダ・チューブ3のシリンダ・チューブ端部分5a.1内に軸線方向に挿入され、結合セクションは近位区域7a.1と遠位区域7a.2とを有し、軸部分4a.1はテーパを有し、軸部分4a.1はシリンダ・チューブ3の内径に対して少なくとも部分的に大きい寸法を有し、シリンダ・チューブ3はそこで弾性的円周方向拡張を有し、結合セクション7aはクロージャ部材4aとシリンダ・チューブ3を軸線方向に圧力嵌め及び形状嵌めするように設計されており、シリンダ・チューブ端部5aは、レーザ溶接シームの形態の円周に沿ったリング溶接シーム8aによってクロージャ部材4aに一体に接着され、圧力媒体密封シール面を形成している、作動シリンダに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(1)とピストン・ユニット(2)とを有する作動ユニットであって、
前記シリンダ(1)は、シリンダ・チューブ(3)と、クロージャ部材(4a)と、更なるクロージャ部材(4b)とを有し、
前記シリンダ・チューブ(3)は、シリンダ・チューブ端部(5a)と、更なるシリンダ・チューブ端部(5b)とを有し、前記クロージャ部材(4a)は前記シリンダ・チューブ端部(5a)に設けられ、前記更なるクロージャ部材(4b)は前記更なるシリンダ・チューブ端部(5b)に設けられ、
前記シリンダ・チューブ(3)及び前記クロージャ部材(4a、4b)はシリンダ内部(6)を形成し、
前記ピストン・ユニット(2)は前記シリンダ内部(6)に少なくとも1つの作動チャンバ(6.1)を形成し、
前記クロージャ部材(4a)は軸部分(4a.1)を有し、前記シリンダ・チューブ(3)はシリンダ・チューブ端部分(5a.1)を有し、前記軸部分(4a.1)及び前記シリンダ・チューブ端部分(5a.1)は結合セクション(7a)を形成し、
前記結合セクション(7a)において、前記クロージャ部材(4a)は、前記軸部分(4a.1)によって前記シリンダ・チューブ端部分(5a.1)において前記シリンダ・チューブ(3)内に軸線方向に挿入され、前記結合セクションは、近位区域(7a.1)と遠位区域(7a.2)とを有し、
前記軸部分(4a.1)は、所定の円錐度を有し、
前記軸部分(4a.1)は、少なくとも部分的に、前記シリンダ・チューブ(3)の内径に対して大きい寸法を有し、前記シリンダ・チューブ(3)はそこで弾性的円周方向拡張を有し、
前記結合セクション(7a)は、前記クロージャ部材(4a)と前記シリンダ・チューブ(3)とを軸線方向圧力嵌め及び形状嵌めの様式で結合するように設計され、
前記シリンダ・チューブ端部(5a)は、円周方向リング溶接シーム(8a)によって前記クロージャ部材(4a)に積極物質様式で接続され、前記リング溶接シーム(8a)は、レーザ溶接シームとして設計され、且つ圧力媒体密封シール面を形成する、作動シリンダ。
【請求項2】
前記円錐度は遠位方向に減少するように設計され、前記軸部分(4a.1)は、前記結合セクション(7a)の前記近位区域(7a.1)において前記シリンダ・チューブ(3)の内径に対して大きい寸法を有すること、及び
前記シリンダ・チューブ(3)は前記近位区域(7a.1)において前記弾性的円周方向拡張を呈することを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ。
【請求項3】
前記円錐度は遠位方向に増大するように設計され、前記軸部分(4a.1)は、前記結合セクション(7a)の前記遠位区域(7a.2)において前記シリンダ・チューブ(3)の内径に対して大きい寸法を有すること、及び
前記シリンダ・チューブ(3)は前記遠位区域(7a.2)において前記弾性的円周方向拡張を呈することを特徴とする、請求項1に記載の作動シリンダ。
【請求項4】
前記クロージャ部材(4a)は軸線方向クロージャ部材リング面(4a.2)を有し、前記シリンダ・チューブ(3)は軸線方向シリンダ・チューブ・リング面(5a.2)を有すること、及び
両リング面は共通の接触リング面を形成し、前記リング溶接シームは前記接触リング面上に半径方向に設けられることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の作動シリンダ。
【請求項5】
前記軸部分(4a.1)の前記円錐度は円錐度角アルファを有し、アルファは主長手軸線9に対して0.1~1度の範囲であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の作動シリンダ。
【請求項6】
前記近位区域(7a.1)における前記シリンダ・チューブ(3)の前記弾性的円周方向拡張が0.02%~0.5%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の作動シリンダ。
【請求項7】
前記クロージャ部材(4a)は前記シリンダ・チューブ(3)よりも高い弾性率を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の作動シリンダ。
【請求項8】
前記クロージャ部材はクロージャ部材入口面取り部(4a.3)を有し、又は前記シリンダ・チューブはシリンダ・チューブ入口面取り部(5a.3)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の作動シリンダ。
【請求項9】
前記シリンダ・チューブ・リング面(5a.2)は傾斜角ベータを有し、ベータは0.1~1度の範囲であることを特徴とする、請求項2から6までのいずれか一項に記載の作動シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作動シリンダ、特に油圧式作動シリンダと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような作動シリンダは先行技術から知られている。通常、それら作動シリンダは、シリンダ・チューブとクロージャ部材(closure part)とを有する。
【0003】
現状の技術によれば、このような作動シリンダは例えば、クロージャ部材とシリンダ・チューブを1つに螺合することによって製造される。このような作動シリンダはねじ式シリンダとも呼ばれる。
【0004】
更に、MAG溶接によって基部クロージャ部材をシリンダ・チューブに接続し、その後ただガイドクロージャ部材を螺着することが、現状の技術から知られている。
【0005】
通常は、シリンダ・チューブ及びクロージャ部材のねじ山は機械加工プロセスで作り出される。
【0006】
ねじ式シリンダ、及び、一方のクロージャ部材のみを螺着し他方のクロージャ部材はMAG溶接されるシリンダの両方が、現状の技術に基づき高品質で提供され、それらは最高品質で信頼性の高い製品であることが分かっている。
【0007】
シリンダ・チューブ及びクロージャ部材のねじ山は通常、形状切削作業によって作られる。
【0008】
生産に関しては、ねじ山はねじ山の領域でシリンダ・チューブを不可避的に弱化するので、材料を除去してねじ山を挿入するためにシリンダ・チューブのチューブ肉厚を大きくせねばならず、このことは不利である。したがって、動作中の力、特に流体の動作圧力によって引き起こされる力を吸収できるような、かなり大きい寸法を有するチューブ肉厚としなければならない。この解決法の欠点は、材料消費量の増加及び作動シリンダの最終重量の増加である。製造上、互いに対する又はシリンダ・チューブに対するクロージャ部材の所望の特別な角度位置が所望される場合に、ねじ込み中に適切な締め付けトルクが適用されるような様式で、クロージャ部材及びシリンダ・チューブのねじ山を互いに一致させることは、更に困難である。
【0009】
WO2021/089069A1には、先行技術の多数の欠点を克服する解決法が記載されている。この解決法では、両方のクロージャ部材が円周に沿ったレーザ溶接シームによってシリンダ・チューブに結合されている作動シリンダが開示されている。この解決法は、一方では、レーザ溶接シームが、最大限の動作圧力においてもシリンダ・チューブと関連クロージャ部材との間の力を吸収できるような、十分な強度の寸法を有さねばならず、他方では、シール又はガイドなどの熱に敏感な構成要素に過剰な熱負荷を与えないように、溶接中の長さ当たりのエネルギー投入量が十分に低くなければならないという点で、生産上の困難を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2021/089069A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、信頼性が非常に高く、コスト効率の良い方法で製造でき、高い負荷能力を有する作動シリンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は請求項1に規定する構成によって解決される。好ましい実施例は従属請求項から得られる。
【0013】
本発明による作動シリンダは基本要素としてシリンダとピストン・ユニットとを有し、特に特別な結合セクションを特徴とする。
【0014】
本発明による作動シリンダのシリンダは、シリンダ・チューブと、クロージャ部材と、更なるクロージャ部材と、を有する。
【0015】
それ自体知られているように、シリンダ・チューブはシリンダ・チューブ端部と更なるシリンダ・チューブ端部とを、したがって、2つの互いに反対側にあるシリンダ・チューブ端部を有する。クロージャ部材はシリンダ・チューブ端部に配置され、更なるクロージャ部材は更なるシリンダ・チューブ端部に配置される。以下では、シリンダ・チューブ端部及び更なるシリンダ・チューブ端部を総称してシリンダ・チューブ端部とも呼び、クロージャ部材及び更なるクロージャ部材を総称してクロージャ部材とも呼ぶ。シリンダ・チューブとその上に配置されたクロージャ部材はシリンダ内部を形成する。
【0016】
ピストン・ユニットはシリンダ内部に少なくとも1つの作動チャンバを形成している。好ましくは、ピストン・ユニットはピストンとピストン・ロッドの組立体として設計され、ピストン・ロッドは、クロージャ部材のうちの1つを摺動式に通過し、その場合そのクロージャ部材はガイドクロージャ部材である。ただし、ピストン・ユニットは例えば、プランジャ・ピストンとして、又は、連続したピストン・ロッドを有ししたがって伸長及び収縮のための2つの等しい大きさの有効面を有するシリンダのピストン・ユニットとして、設けることもできる。
【0017】
本発明による作動シリンダはまた、特別に設計された結合セクションも特徴とする。
【0018】
本発明によれば、結合セクションは、クロージャ部材と、シリンダ・チューブ端部と、そこに設けられたリング溶接シームと、を有する。シリンダ・チューブとクロージャ部材を総称して結合パートナー(coupling partner)とも呼ぶ。
【0019】
結合セクションのエリアにおいて、クロージャ部材は軸部分(shaft portion)を有し、シリンダ・チューブはシリンダ・チューブ端部分(cylinder tube end portion)を有する。軸部分とシリンダ・チューブ端部分はともに結合セクションを形成する。
【0020】
結合セクションは近位区域と遠位区域とを有する。近位区域と遠位区域は軸線方向において直接に互いに隣り合っている。この文脈では、近位方向及び位置の指示は、作動シリンダの中心の方を指す方向及び位置を指定するものと理解され、遠位方向及び位置の指示は、反対の方向及び位置、すなわち作動シリンダの中心から離れる方を指す方向を指定するものと理解される。
【0021】
本発明によれば、結合セクションにおいて、クロージャ部材は、その軸部分がシリンダ・チューブのシリンダ・チューブ端部分内に、軸線方向に挿入される。その結果、シリンダ・チューブ端部分は軸部分をスリーブのように包囲する。
【0022】
本発明によれば、軸部分はテーパした設計を有する。更に、軸部分は、少なくとも部分的に(in sections)、シリンダ・チューブの内径に対して大きい寸法(overdimension)を有する。大きい寸法は円錐度(conicity)と相関している。大きい寸法は、円錐部の太くなったセクションのエリアにおいて最も大きく、円錐部のテーパしたセクションの方向に小さくなる。また、大きい寸法が軸線方向エリアの全体には及ばないこと、及び特に、テーパしたセクションの軸線方向の部分に何ら円錐度のないこともあり得る。
【0023】
本発明によれば、シリンダ・チューブ端部は、円周に沿ったリング溶接シームによって、クロージャ部材に積極物質様式(positive-substance manner)で接続される。リング溶接シームはレーザ・リング溶接シームとして設計される。レーザ・リング溶接シームは気密シール面も形成する。リング溶接シームは、半径方向、軸線方向、又は更には、主長手軸線に対して傾斜させて設けることができる。円周に沿ったリング溶接シームは、圧力媒体に対して2つの接合パートナーの積極物質及び気密接続部を形成する、及び好ましくは動作中のピーク負荷を吸収する役割を果たす。
【0024】
本発明の特に好ましい態様によれば、軸部分の円錐度は遠位方向に減少する。円錐度が遠位方向に減少するとは、以下では軸外径と呼ぶ軸部分の外径が、軸線に関して偏心する方向に減少することを意味するものと理解される。この場合軸部分は、より大きい外径を有する部分を先行させてシリンダ・チューブ端部分内に挿入される。円錐度は好ましくは、外径が遠位方向に直線的に減少するように、軸部分が切頭円錐の側方表面となるような様式で与えられる。ただし、円錐度は本発明の意味では、外径が近位から遠位に向かって小さくなっている軸部分の他の形状を意味するとも理解される。
【0025】
更に、本発明によれば、軸部の外径は結合セクションの近位区域において、シリンダ・チューブの内径と比較して大きい寸法を有する。
【0026】
したがって、作動シリンダの中心の方を向くクロージャ部材の軸部分の端部は、シリンダ・チューブの内径と比較して大きい寸法を有する外径を有する。この大きい寸法は、作動シリンダの主長手軸線に沿って軸線方向に縮小される。
【0027】
遠位方向に減少する円錐度とシリンダ・チューブの内径に対する大きい寸法との相互作用により、2つの結合パートナーが接合されるとき、すなわちシリンダ・チューブがクロージャ部材の軸部分の上に案内されるとき、円周に沿ったシリンダ・チューブの拡張が引き起こされる。本発明によれば、拡張はシリンダ・チューブ材料の弾性領域で生じる。このように、本発明による近位区域には弾性的な円周方向拡張が存在する。遠位側から見ると、円周方向拡張は、この方向の円錐度の減少に対応して減少する。好ましくは、円周方向拡張は、円周方向拡張が遠位区域においてゼロに減少する程度まで円錐度が遠位方向に減少する結果として減少する。遠位区域と近位区域は軸線に沿った遠位方向において隣り合っている。更に、弾性的円周方向拡張だけを減少させることも可能である。本説明の文脈では、近位区域と遠位区域との間の境界基準は、遠位区域の最大弾性的円周方向拡張が近位区域の最大弾性的円周方向拡張の最大50%であるものと理解されるべきである。特に好ましい実施例では、遠位区域の最小弾性的円周方向拡張は、近位区域の最大弾性的円周方向拡張の最大20%である。
【0028】
近位区域では円周に沿ってシリンダ・チューブ材料の引張応力が増大するため、シリンダ・チューブは円錐状の軸部分に無理なく沿い、形状嵌めと圧力嵌めのハイブリッドな接続部を形成する。好ましくは、このハイブリッドな接続部はそれ自体で、2つの結合パートナー間に油圧シリンダの動作中の引張力に対処するのに十分な接続力を提供する。
【0029】
本発明による結合は特に、以下に記載する特定の利点を提供する。
【0030】
驚くべきことに、シリンダ・チューブと関連するクロージャ部材との間の結合部に、単純な構造の手段を用いて高い負荷能力を付与する解決法が見出された。
【0031】
有利には、圧力嵌め、形状嵌め、及び積極物質接続がここでともに作用し、軸線方向の特に高い引張力の吸収を可能にする。
【0032】
更に、製造面では、クロージャ部材の軸部分の円錐度を実現するために、既知の解決法と比較して実質的に追加の労力を必要としないのが有利である。同時に、シリンダ・チューブの何らかの追加の機械加工も必要ない。
【0033】
更に、遠位区域において、すなわちまたレーザ・リング溶接シームのエリアにおいても、シリンダ・チューブ端部分がほとんど又は全く弾性的円周方向拡張を示さないように円錐度を設計できる本発明による解決法が、有利に見出された。このことは、円周方向の引張応力がほとんど又は全く存在しないことを意味する。高い動作圧力によってレーザ・リング溶接シームのエリアに軸線方向の引張応力が発生する場合、シリンダ・チューブ端部の材料における多軸応力がこのように回避される。この態様により、特にシリンダ・チューブの厚さ及び溶接シームの形成に関して、他の点では同一である条件下で、より大きな軸線方向の引張力を吸収することが可能になる。
【0034】
更に、シリンダ・チューブの内径のどのような寸法公差も、更なる追加措置を必要とすることなく補償される。
【0035】
同時に、本発明による結合がシリンダ・チューブと底部クロージャ部材との間及びシリンダ・チューブとガイドクロージャ部材との間の両方で可能であることは有利である。
【0036】
本発明の代替の態様によれば、軸部分は円錐度が遠位方向に増大する。円錐度が遠位方向に増大するとは、軸の外径が軸線に関して偏心する方向に増大することを意味するものと理解される。この場合軸部分は、そのテーパした外径を有する部分を先行させてシリンダ・チューブ端部分内に挿入される。
【0037】
本発明のこの態様によれば、シリンダ・チューブに対するクロージャ部材の中心位置決め、ひいては結合パートナーの接合が容易になるので、組立てがより容易になるという、特別な利点が存在する。この設計では、シリンダ・チューブの内径のどのような寸法公差も、更なる追加措置を必要とすることなく補償される。
【0038】
有利な更なる発展形態によれば、作動シリンダは、クロージャ部材が軸線方向のクロージャ部材リング面を有し、シリンダ・チューブが軸線方向のシリンダ・チューブ・リング面を有することを特徴とする。2つのリング面は共通のリング接触面も形成する。リング溶接シームは、リング接触面に半径方向に設けられている。シリンダ・チューブとクロージャ部材は接触面で溶接されている。耐圧性及び気密性は積極物質接続によって達成される。
【0039】
有利には、シリンダ・チューブ・リング面と軸線方向のクロージャ部材リング面は接合されると軸線方向の停止部を形成し、その結果結合パートナー間の位置関係は、溶接前であっても軸線方向において確実な様式で固定される。このようにして、溶接前又は溶接中に圧縮予圧を付与することも可能である。
【0040】
別の有利な更なる発展形態によれば、作動シリンダは軸部分の円錐度が円錐度角アルファを有し、アルファの値が主長手軸線に対して0.1~1度の範囲であることを特徴とする。
【0041】
角度アルファは、引き抜き方向にアンダーカットを形成する。アンダーカットは対応する接合相手との形状嵌め接続に使用される。この形状嵌め接続部によって、結合パートナーの永続的な結着が実現する。アンダーカットに起因して、接合力は引き抜き力よりも低い。
【0042】
円錐度角アルファが0.1~1度の範囲であれば、近位区域におけるシリンダ・チューブ端部分の弾性的円周方向拡張が有利な程度であること、及び同時に、遠位区域においてシリンダ・チューブ端部分の弾性的円周方向拡張がほとんど又は全くないことの、両方を達成できることが見出された。このことは同時に、高い耐荷重の圧力嵌め及び形状嵌め結合と、リング溶接シームのエリアにおける多軸材料応力の回避と、を可能にする。
【0043】
別の有利な更なる発展形態によれば、作動シリンダは、近位区域におけるシリンダ・チューブの弾性的円周方向拡張が0.02%~0.5%の範囲であることを特徴とする。
【0044】
このエリアにおける円周方向拡張は、使用される鋼の弾性範囲内であり、塑性範囲の限度未満である。したがって、結果として生じる円周に沿った応力により、接合中に力が蓄積され、この力が角度のついたクロージャ部材との形状嵌め接続部を支持する。
【0045】
次の有利な更なる発展形態によれば、作動シリンダは、クロージャ部材がシリンダ・チューブよりも高い弾性率を有することを特徴とする。
【0046】
クロージャ部材についての角度アルファと、シリンダ・チューブの内径及びその円周方向拡張との組合せには、特定の材料のペアリングが必要である。クロージャ部材は、接合工程後にもアンダーカットを確保するために、円錐状の軸部分が接合プロセスに耐えられるような適切な硬度を有するものとする。対照的に、シリンダ・チューブはアンダーカットに無理なく沿うように十分に拡張せねばならない。その結果が形状嵌め接続部となる。したがって、2つの結合パートナーは異なる材料硬度及び弾性を有するのが好ましい。
【0047】
更なる有利な発展形態によれば、作動シリンダは、クロージャ部材がクロージャ部材入口面取り部を有し、又はシリンダ・チューブがシリンダ・チューブ入口面取り部を有することを特徴とする。
【0048】
接合プロセスを簡単にするために、2つの結合パートナーが互いにとって適正な位置に配されるように、クロージャ部材には外側面取り部が設けられ、別法として又は追加的に、シリンダ・チューブには内側面取り部が設けられる。更に、2つの面取り部が互いに対して摺動することで、シリンダ・チューブの拡張プロセスをサポートする。
【0049】
更なる有利な発展形態によれば、作動シリンダは、シリンダ・チューブ・リング面が傾斜角ベータを有し、ベータの値が0.1~1度の範囲にあることを特徴とする。
【0050】
この更なる発展形態によれば、傾斜角ベータは好ましくは円錐度角アルファと一致する。この更なる発展形態は、断面図において、近位区域における弾性的円周方向拡張の結果として、シリンダ・チューブが円錐度角アルファでクロージャ部材の軸部分と隣り合うという事実に基づいている。この場合、軸線方向のシリンダ・チューブ・リング面もこの角度で傾斜している。その結果この面は、主長手軸線に直交して配置された軸線方向のクロージャ部材リング面に対して、中心から半径方向に広がるくさび形の隙間を形成することになる。ここで提示する更なる発展形態では、角度が補正され、軸線方向のシリンダ・チューブ・リング面と軸線方向のクロージャ部材リング面との間に面平行が作りされ、この結果高剛性の封止レーザ・リング溶接シームが可能になる。
【0051】
本発明を以下の図によって実施例として更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】遠位方向に減少する円錐度を有する円錐度角が誇張して(overdimensioned)表現された、作動シリンダの概略断面図である。
図2】円錐度角を誇張して表現した結合セクションの拡大断面である。
図3】作動シリンダの断面図及び拡大断面である。
図4】円錐度が遠位方向に増大している作動シリンダの断面図、及び拡大断面である。
図5】更なる結合セクションが表現されている作動シリンダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
ここでは、様々な図中の同じ参照番号は、同じ特徴又は構成要素を指す。参照番号は、関連する図に示されていない場合、説明の中でも使用される。
【0054】
図1は作動シリンダ1の一端の概略断面図を示す。
【0055】
作動シリンダ1は、ピストン・ユニット2と、シリンダ・チューブ3と、クロージャ部材4aと、を有する。シリンダ・チューブ3には2つの開口部があり、それらの一方はクロージャ部材4aで閉塞され、もう一方は更なるクロージャ部材4bで閉塞される。完全に組み立てられた作動シリンダ1では、ピストン・ユニット2は更なるクロージャ部材4bの中を摺動式に通過する。この例示的な実施例では、ピストン・ユニット2は2つの部分で設計されており、ピストン・ロッドとピストンとで構成されている。ピストン・ユニット2はシリンダ内部6内を移動し、そこに作動チャンバ6.1を形成する。
【0056】
クロージャ部材4aはシリンダ・チューブ端部5aに配置される。
【0057】
作動シリンダ1を組み立てるために、シリンダ・チューブ3をクロージャ部材4a上に押し付ける。このプロセスでは接合経路が力主導で克服される。この目的のために、クロージャ部材4a及びシリンダ・チューブ3を、クロージャ部材入口面取り部4a.3及びシリンダ・チューブ入口面取り部5a.3に接触させる。面取り部は、結合パートナー4a、3を互いに対してより精確に位置決めするために使用される。軸線方向の接合動作中、シリンダ・チューブ端部分5a.1はクロージャ部材4aの軸部分4a.1の上で摺動する。この摺動プロセスにおいて、シリンダ・チューブ端部分5a.1は弾性拡張され、クロージャ部材4aの軸部分4a.1の周囲に無理なく沿い、その場合、軸部分は遠位方向に円錐度角αだけ拡張され、この結果この軸部分は近位区域7a.1において、シリンダ・チューブ3の内径と比較して大きい寸法を有する。そして、シリンダ・チューブ端部分5a.1は、結合セクション7aの近位区域7a.1において拡張される。
【0058】
この拡張によって結合パートナー4a, 3間に、軸線方向にも有効な形状嵌め接続部が提供される。形状嵌め接続部は、シリンダ・チューブ端部分5a.1の領域におけるシリンダ・チューブ3の内側側方表面と、クロージャ部材4aの軸部分4a.1の円錐状の外側側方表面との間の静止摩擦に起因して、同じく軸線方向に作用する圧力嵌め接続部と相互作用する。
【0059】
2つの接合パートナーは、シリンダ・チューブ・リング面5a.2がクロージャ部材リング面4a.2上に載るまで、力に補助されて接合される。2つのリング面4a.2、5a.2は、軸線方向における主長手軸線9に対して垂直な、接合パートナーのそれぞれの端面である。2つのリング面4a.2、5a.2が互いに接触すると、接合プロセスが完了する。
【0060】
リング溶接シーム8aは、シリンダ1を積極物質及び気密様式で閉塞するために、リング面4a.2、5a.2のレベルで、主長手軸線9に対して垂直に、シリンダ・チューブ3の円周に沿って設けられる。
【0061】
図2図1の拡大断面を示し、円錐度角アルファがここでも数段階誇張した表現で示されている。この例示的な実施例では、円錐度角アルファは0.2度である。結合セクション7aの近位部7a.1における円錐度によって、シリンダ・チューブ3の内径と比較して軸部4a.1の外径は大きい寸法となる。この大きい寸法の結果、シリンダ・チューブ3は、遠位方向に向かって小さくなるシリンダ・チューブ端部分5a.1において、弾性的円周方向拡張を呈する。円錐部の幾何形状は、軸部分4a.1の基部における遠位区域7a.2にはシリンダ・チューブ3の内径と比較した場合の大きい寸法は存在しないように設計されており、このため結合セクション7aの遠位区域においてシリンダ・チューブ3の弾性的円周方向拡張が存在しない。
【0062】
更に、図2は、例示的な実施例で提供される、シリンダ・チューブ・リング面5a.2の傾斜角ベータを示す。例示的な実施例では、傾斜角ベータは0.2度であり、本実施例における円錐度角アルファの値と一致する。傾斜角ベータは、軸部分4a.1の上の遠位方向に減少する弾性的円周方向拡張が等しくないことによって引き起こされるシリンダ・チューブ壁の傾斜位置を補償する。この結果、シリンダ・チューブ・リング面5a.2はクロージャ部材リング面4a.2上に正確に平坦に配され、その結果、そこに高い耐荷重を有するリング溶接シーム8aを、溶接シームの深さ全体にわたるレーザ・リング溶接シームとして設けることができる。同時に、レーザ・リング溶接シームは、シリンダ・チューブ3の材料の円周にわたって作用するいかなる引張応力も受けない。
【0063】
図3はまた、円錐度角アルファを誇張して表現しておらず、そのためクロージャ部材4aの円錐状の軸部分が実質的に円筒形に見える断面図も示す。
【0064】
図3による表現では、シリンダ・チューブ3とクロージャ部材4aはまだ結合されておらず、したがって、軸部分4a1は、シリンダ・チューブ端部分5a1においてシリンダ・チューブ3内にまだ挿入されていない。図3は、クロージャ部材リング面4a.2とシリンダ・チューブ・リング面5a.2の、及び、クロージャ部材入口面取り部4a.3とシリンダ・チューブ入口面取り部5a.3の、配置と位置関係を特に示す。
【0065】
図4は、軸部分4a1の円錐度が遠位方向に増大している例示的な実施例を示す。ここで、テーパした外径は近位区域7a.1に与えられており、軸の増大した外径は遠位区域7a.2に与えられている。したがって、円錐度角アルファは、図1及び図2に示した例示的な実施例と比較して反対方向に拡張される。シリンダ・チューブ3が長さに対して厳密に直交して切断されている場合、シリンダ・チューブ3の弾性拡張に起因して傾斜角ベータが外側に開き、その結果、溶接中にクロージャ部材リング面4a.2とシリンダ・チューブ・リング面5a.2との間の突合せ接合部内へのレーザ鋼の深い侵入がサポートされ、特に高い耐荷重を有するリング溶接シーム8aを製造することができる。
【0066】
図5は、本発明によるクロージャ部材4a、4bが両方のシリンダ・チューブ端部5a、5bに結合されている、作動シリンダの例示的な実施例を示す。シリンダ・チューブ端部5aにおける、他の図に既に示されているクロージャ部材4aへの結合セクション7aに加えて、この例示的な実施例では、ここではガイドクロージャ部材として設計されている更なるクロージャ部材4bが、更なるシリンダ・チューブ端部5bにおける更なる結合セクション7bにおいて、シリンダ・チューブ3に追加的に結合されている。更なる結合セクション7bは結合セクション7aと同様に設計されており、そのため結合セクション7aに関する説明部分は更なる結合セクション7bにも相応に適用される。
【符号の説明】
【0067】
1 シリンダ
2 ピストン・ユニット
3 シリンダ・チューブ
4a クロージャ部材
4a.1 軸部分
4a.2 クロージャ部材リング面
4a.3 クロージャ部材入口面取り部
4b 更なるクロージャ部材
5a シリンダ・チューブ端部
5a.1 シリンダ・チューブ端部分
5a.2 シリンダ・チューブ・リング面
5a.3 シリンダ・チューブ入口面取り部
5b 更なるシリンダ・チューブ端部
6 シリンダ内部
6.1 作動チャンバ
7a 結合セクション
7a.1 近位区域
7a.2 遠位区域
7b 更なる結合セクション
8A リング溶接シーム
9 主長手軸線
α 円錐度角アルファ
β 傾斜角ベータ
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】