(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】冬用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/12 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531452
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 IB2022061541
(87)【国際公開番号】W WO2023119019
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021000032588
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カサロット,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】スペツィアーリ,ディエゴ エットーレ
(72)【発明者】
【氏名】ファサノ,ジャンマルコ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC19
3D131EB83Z
3D131EB98Z
(57)【要約】
タイヤ(1)は、少なくとも1つの入り組んだタイプのサイプ(10)が設けられる少なくとも1つのブロック(8)を備え、かかるサイプ(10)は、ブロック(8)を、それぞれ互いに向き合う第1の表面(13)および第2の表面(14)を備える2つの部分(11、2)に分離する。第1の表面(13)は、互いに対称である第1および第2の半径方向プロファイル(20、21)をそれぞれ有する一組の第1および第2の長手方向部分(17、18)の間に延在しており、各半径方向プロファイルは、3つの連続する傾斜長さ部(27、28、29;32、33、34)によって範囲が定められた突出部(25;31)および凹部(26;30)によって形成された、2つのブロック部分(11、12)間の結合部分を備え、そのパターンは、結合部分の端部(23、24)が、サイプの長手方向に対して横断する方向に沿って互いにずれているようなものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドバンド(2)と、前記トレッドバンドに対して半径方向外側のトレッド面(3)と、前記トレッドバンド(2)に画定された少なくとも1つのブロック(8)と、前記少なくとも1つのブロックに設けられた少なくとも1つの入り組んだタイプのサイプ(10)とを備えるタイヤ(1)であって、前記サイプ(10)が、前記トレッド面(3)に開口して、前記サイプ(10)の展開の長手方向(X)を定め、
前記入り組んだタイプのサイプ(10)が、前記少なくとも1つのブロック(8)を、
- 前記トレッド面(3)から前記トレッドバンド(2)の内側に向かって延在する第1の表面(13)を備える第1のブロック部分(11)と、
- 前記トレッド面(3)から前記トレッドバンドの内側に向かって延在する第2の表面(14)であって、前記第1の表面(13)を向き、前記第1の表面(13)に実質的に平行である第2の表面(14)を備える第2のブロック部分(12)と
に分離し、
- 前記第1の表面(13)が、第1の半径方向プロファイル(20)を有する少なくとも1つの第1の長手方向部分(17)と、前記第1の長手方向部分(17)から間隔を空けて配置され、第2の半径方向プロファイル(21)を有する少なくとも1つの第2の長手方向部分(18)との間に連続して延在し、
- 前記第1の半径方向プロファイル(20)が、前記第1のブロック部分(11)と前記第2のブロック部分(12)との間の第1の結合部分を備え、前記第1の表面(13)の第1の突出部(25)と、前記第1の突出部(25)に対して半径方向内側の前記第1の表面(13)の第1の凹部(26)とを画定し、
- 前記第2の半径方向プロファイル(21)が、前記第1のブロック部分(11)と前記第2のブロック部分(12)との間の第2の結合部分を備え、前記第1の表面(13)の第2の凹部(30)と、前記第2の凹部(30)に対して半径方向内側の前記第1の表面(13)の第2の突出部(31)とを画定し、
- 前記第1の結合部分が、前記サイプ(10)の前記長手方向(X)および前記トレッドバンド(2)の半径方向(R)に平行な第1の基準平面(A)によって横切られる第1の半径方向外側端部(23)と、前記第1の基準平面(A)に平行な第2の基準平面(B)によって横切られる第2の半径方向内側端部(24)との間に延在し、
- 前記第1の突出部(25)は、前記半径方向(R)に対して第1の傾斜で前記第1の端部(23)から延在する前記第1の半径方向プロファイル(20)の第1の長さ部(27)と、前記半径方向に対して前記第1の傾斜とは逆符号の第2の傾斜で前記第1の長さ部(27)から延在する前記第1の半径方向プロファイル(20)の第2の長さ部(28)とによって範囲が定められ、
- 前記第1の凹部(26)は、前記第1の基準平面(A)に対して前記第1の突出部(25)とは反対側に画定され、前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第2の長さ部(28)と、前記第2の長さ部(28)から前記第2の端部(24)まで延在し、前記半径方向(R)に対して前記第2の傾斜とは逆符号の第3の傾斜を有する前記第1の半径方向プロファイル(20)の第3の長さ部(29)とによって範囲が定められ、
- 前記第2の基準平面(B)が、前記第1の基準平面(A)から間隔が空けられて、前記第1の凹部(26)と前記第1の基準平面(A)との間に挟まれている、タイヤ(1)。
【請求項2】
前記第1の結合部分の前記第1の端部(23)が、前記第1の表面(13)の半径方向外側縁部(15)に属する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第1の長さ部(27)が実質的に真っ直ぐである、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第1の長さ部(27)が、前記半径方向(R)に対して3°~25°の第1の角度で傾斜している、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第2の長さ部(28)が実質的に真っ直ぐである、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第2の長さ部(28)が、前記半径方向(R)に対して15°~45°の第2の角度で傾斜している、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1の結合部分の前記第2の端部(24)が、前記第1の表面(13)の半径方向内側縁部(16)に属する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第3の長さ部(29)が実質的に真っ直ぐである、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第3の長さ部(29)が、前記半径方向(R)に対して3°~25°の第3の角度で傾斜している、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第1の長さ部(27)と前記第3の長さ部(29)とが互いに実質的に平行である、請求項1~9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1の突出部(25)が、前記トレッド面(3)から1.5mm~2mmの寸法だけ離れている、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第1の凹部(26)が、前記トレッド面(3)から5mm~5.5mmの寸法だけ離れている、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第1の凹部(26)が、前記第1の表面(13)の前記半径方向内側縁部(16)から1.5mm~2mmの寸法だけ離れている、請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第1の突出部(25)と前記第1の基準平面(A)との間の距離が約0.1mm~約0.4mmである、請求項1~13のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記第1の凹部(26)と前記第2の基準平面(B)との間の距離が約0.1mm~約0.4mmである、請求項1~14のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記第1の基準平面(A)と前記第2の基準平面(B)との間の距離が1mm~3mmである、請求項1~15のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記第2の半径方向プロファイル(21)が、前記第1の基準平面(A)に平行な対称平面に関して、前記第1の半径方向プロファイル(20)に対して実質的に対称である、請求項1~16のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記第1の表面(13)が、前記第1の長手方向部分(17)と前記第2の長手方向部分(18)との間に挟まれかつ前記半径方向(R)に実質的に平行な第3の半径方向プロファイル(22)を有する第3の長手方向部分(19)を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記第1の表面(13)が複数の第1の長手方向部分(17)を備え、第1の長手方向部分(17)のそれぞれが、対応する第2の長手方向部分(18)と交互に配置されている、請求項1~18のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記第1の表面(13)の、前記トレッド面(3)に平行な平面による断面が、波状のパターンを有する、請求項1~19のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項21】
前記波状パターンが、前記第1の表面(13)の、前記トレッド面(3)から異なる距離にある前記トレッド面(13)に平行なそれぞれの平面による各断面に対して得られる、請求項20に記載のタイヤ。
【請求項22】
前記波状パターンが1.5mm~6mmのピッチ(P)を有する、請求項20または21に記載のタイヤ。
【請求項23】
複数の前記入り組んだタイプのサイプ(10)が前記少なくとも1つのブロック(8)に設けられる、請求項1~22のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項24】
前記入り組んだタイプのサイプ(10)のみが前記少なくとも1つのブロック(8)に設けられる、請求項1~23のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項25】
前記少なくとも1つのブロック(8)において、前記複数の前記入り組んだタイプのサイプ(10)が、単純なタイプのサイプ(9)と間隔をおいて配置される、請求項23に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ、特に冬用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは一般に、回転軸線の周りにトロイダル状に形づくられたカーカス構造と、カーカス構造の半径方向外側位置に付与されるものとして、ベルト構造と、さらに重ね合わされるものとして、エラストマー材料から作られたトレッドバンドであって、路面と接触するように意図されたトレッド面が画定されたトレッドバンドとを備える。
【0003】
トレッドバンドは典型的には、複数の周方向溝および/または横断方向溝によって画定され、これらの溝は、対応する複数のブロックの範囲を定め、かかる複数のブロックがともにタイヤのトレッドパターンを画定する。
【0004】
トレッドバンドの特性、特にトレッド面に設けられた溝およびブロックの量および形状は、タイヤの路面挙動に関するタイヤの性能、特に、存在しうる様々な路面状態に対するタイヤの性能を主に決定する。
【0005】
氷雪面でのタイヤのグリップを改善するために、タイヤのトレッド面からブロックの内側に向かって延在する「サイプ」として知られている小さな切り込みをトレッドバンドのブロックに設けることがある。これらの切り込みの機能は、氷雪路面に追加のグリップ要素を提供すること、および特定の量の雪を保持することであり、それによって氷雪路面でのグリップを改善する。
【0006】
しかしながら、トレッドバンドのブロックに切り込みがあると、路面に雪がない場合、乾いた路面であっても濡れた路面であっても、加速時、制動時、またはカーブ走行時のせん断応力にブロックが十分に耐える能力が低下していることにより、タイヤの性能が低下することがある。
【0007】
「周」方向とは、タイヤの回転方向に従って概ね向けられた方向、またはタイヤの回転方向に対して多くともわずかに(例えば、多くとも約5°)傾斜した方向を指す。
【0008】
「軸」方向とは、タイヤの回転軸線に対して実質的に平行な方向、またはタイヤの回転軸線に対して多くともわずかに(例えば、多くとも約5°)傾斜した方向を指す。軸方向は、周方向に対して概ね垂直である。
【0009】
「半径」方向とは、タイヤの回転軸線に垂直に交差する方向、またはタイヤの回転軸線に垂直な方向に対して多くともわずかに(例えば、多くとも約5°)傾斜した方向を指す。
【0010】
「溝」という用語は、トレッドバンドの一部分に形成され、主となる長手方向に延在し、1.5mm以上の幅を有するキャビティを指す。好ましくは、溝は少なくとも3mmの深さを有する。
【0011】
「サイプ」という用語は、トレッドバンドの一部分に設けられ、主となる長手方向に沿って延在し、1.5mmより狭い幅を有するキャビティを指す。
【0012】
溝またはサイプは、周方向に沿って全体的に延在しているとき、「周方向」であると言われる。
【0013】
溝またはサイプは、周方向に対して少なくとも10°より大きな鋭角で傾斜した方向に沿って延在しているとき、「横断」方向であると言われる。
【0014】
溝またはサイプの幅は、溝またはサイプの長手方向およびタイヤの半径方向の両方に対して垂直に1.5mm以上、好ましくは2mm以上の深さのところで測定されるように意図されている。「ブロック」とは、路面との接触が意図され、1つまたは複数の溝、場合によっては、トレッドバンドの軸方向端によって、その全周に沿って範囲が定められたトレッドバンドの一部分を指す。
【0015】
ブロックに設けられたサイプは、そのブロックを、それぞれ互いに向かい合う面を有する2つのブロック部分に分離する。
【0016】
サイプは、ブロック部分の互いに向かい合う面の少なくとも一方が少なくとも1つの突出部を有し、このような面の他方が、このような突出部を少なくとも部分的に受け入れるのに適した対応する凹部を有するとき、「入り組んだタイプ」のサイプとして定義される。
【0017】
言い換えれば、サイプによって分離された2つのブロック部分を半径方向に垂直な平面へそれぞれ投影したものは、突出部および対応する凹部で、少なくとも部分的に重なっている。
【0018】
それによって、2つのブロック部分の半径方向に沿った相対的な変位は、突出部および凹部における2つのブロック部分の間の干渉によって妨げられる。
【0019】
入り組んだタイプのサイプはまた、本技術分野では「3次元」サイプとしても知られている。
【0020】
サイプは、ブロック部分の互いに向き合う面に、2つのブロック部分の半径方向に沿った相対的な変位時に互いに干渉する突出部および/または凹部がないとき、「単純なタイプ」のサイプとして定義される。サイプにおいて互いに向き合うそれぞれのブロック部分の表面は、このような表面間の距離が実質的に一定であるとき、すなわち、このような距離が、サイプの範囲全体にわたって計算された距離の平均値の50%程度の範囲内に含まれるとき、互いに「実質的に平行」である。さらに、2つの方向または2つの直線長さ部は、互いに5°より小さい角度で傾斜しているとき、「実質的に平行」である。
【0021】
サイプによって分離されたブロック部分の表面の「半径方向プロファイル」とは、前記表面と、半径方向に平行で、トレッド面のサイプの展開によって定められた長手方向を横断する方向に平行な平面との交線を指す。
【0022】
半径方向プロファイルは、前記表面の突出部または凹部をかたちづくるプロファイルの部分を指す「結合部分」を含むことができる。
【0023】
第2の方向に対する第1の方向の傾斜は、一般に、第1の方向と第2の方向とがなす鋭角によって規定される。
【0024】
2つの異なる方向は、時計回りまたは反時計回りに測定された角度が正として確定されると、方向付けられた基準方向でその2つの方向によって規定された鋭角が逆符号を有するとき、方向付けられた基準方向に対して「逆符号」で傾斜している。
【0025】
例えば、半径方向プロファイルの第1の長さ部と第2の長さ部は、半径方向によって範囲が定められた同じ半平面において、第1の長さ部の鋭角がトレッド面の方へ向けられ、第2の長さ部の鋭角がタイヤの内側の方へ向けられるとき、タイヤの半径方向に対して逆符号の傾斜を有することになる。
【0026】
ブロックが入り組んだタイプのサイプによって関係付けられた冬用タイヤの例は、国際特許出願WO2018/140851に開示されており、そこでは、サイプは、頂点で結合された互いに90°で配置された平坦な四辺形表面によって形成された複数の突出部および凹部を有する半径方向プロファイルを有するものとして記載されている。
【0027】
ブロックが入り組んだタイプのサイプに関係付けられた冬用タイヤの他の例は、それぞれ同じ出願人の国際特許出願WO2012/164449およびWO2012/164450に開示されており、そこでは、サイプの深さに応じて、例えば真っ直ぐにまたは波状に、長手方向パターンが変化するサイプが記載されている。
【発明の概要】
【0028】
本出願人は、まず、入り組んだタイプのサイプをブロックに設けると、せん断応力を受けたときのブロックの剛性が高くなり、乾いた路面または濡れた路面で、制動時ならびにトラクションおよびカーブ走行時の両方でタイヤの性能が改善されることを確かめた。
【0029】
特に、本出願人は、ブロックの剛性は、ブロック部分間の干渉面が増大するにつれて、したがって、それぞれの表面に得られた突出部の大きさおよび数が増加するにつれて高くなることに気付いた。
【0030】
しかしながら、本出願人は、ブロック部分間の干渉面の増大はまた、特に、タイヤを製造する際の困難が増大することを含む、特定の欠点を伴うことを確かめた。実際、サイプはトレッドバンドを成形しながら作られ、過度に大きな干渉面を有する入り組んだタイプのサイプが存在すると、タイヤが型から取り出されるときにトレッドバンドが望ましくなく破れることがある。
【0031】
本出願人はまた、入り組んだタイプのサイプを設けることによりブロックの剛性を過度に高くすると、隣り合うブロック部分の可動性が低下することにより、雪を保持する効果が下がり、したがって、氷雪路面でのタイヤの性能を阻害する場合があることを確かめた。
【0032】
この状況において、本出願人は、氷雪路面、および一般に乾いた路面または濡れた路面の両方でのタイヤ性能を改善するために、上記の相反する要求を最適にバランスさせるように構成された入り組んだタイプのサイプを備えるタイヤを作る必要性を感じていた。
【課題を解決するための手段】
【0033】
したがって、本出願人は、隣り合うブロック部分の相対的な変位を効果的に防止することができる十分に大きな干渉面を得ると同時に、ブロック部分間の前述の防止が比較的低いブロック変形度で達成されるように入り組んだタイプのサイプを構成することによって、この要求を満たすことができることを認識した。
【0034】
本出願人は、互いに向き合うブロック部分の表面に、長手方向サイプの展開に沿って複数の交互の凹部と突出部とを画定し、前記表面に、半径方向および横断方向に好適に間隔を空けて配置された突出部と凹部とを有する連続的な交互の半径方向プロファイルを画定するように構成された入り組んだタイプのサイプが、典型的な走行時応力を受けたときに、雪を保持する能力を妨げることなく、また、タイヤの製造作業を複雑にすることなく、ブロックに優れた剛性特性を与えることを最終的に見出した。
【0035】
したがって、本発明は、その第1の態様では、トレッドバンドと、前記トレッドバンドに対して半径方向外側のトレッド面と、前記トレッドバンドに画定された少なくとも1つのブロックと、前記少なくとも1つのブロックに形成された少なくとも1つの入り組んだタイプのサイプとを備えるタイヤに関する。
【0036】
好ましくは、前記サイプは、前記トレッド面に開口して、前記サイプの長手展開方向を定める。
【0037】
好ましくは、前記入り組んだタイプのサイプは、前記少なくとも1つのブロックを、前記トレッド面からトレッドバンドの内側に向かって延在する第1の表面を備える第1のブロック部分と、前記トレッド面から前記トレッドバンドの内側に向かって延在し、前記第1の表面を向く第2の表面を備える第2のブロック部分とに分離する。
【0038】
好ましくは、前記第2の表面は、前記第1の表面に実質的に平行である。
【0039】
好ましくは、前記第1の表面は、第1の半径方向プロファイルを有する少なくとも1つの第1の長手方向部分と、前記第1の長手方向部分から間隔を空けて配置され、第2の半径方向プロファイルを有する少なくとも1つの第2の長手方向部分との間に連続して延在する。
【0040】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルは、前記第1のブロック部分と前記第2のブロック部分との間の第1の結合部分を備え、前記第1の表面の第1の突出部と、前記第1の突出部に対して半径方向内側の前記第1の表面の第1の凹部とを画定する。
【0041】
好ましくは、前記第2の半径方向プロファイルは、前記第1のブロック部分と前記第2のブロック部分との間の第2の結合部分を備え、前記第1の表面の第2の凹部と、前記第2の凹部に対して半径方向内側の前記第1の表面の第2の突出部とを画定する。
【0042】
好ましくは、前記第1の結合部分は、第1の半径方向外側端部と第2の半径方向内側端部との間に延在する。
【0043】
好ましくは、前記第1の端部は、前記サイプの前記長手方向および前記トレッドバンドの半径方向に平行な第1の基準平面によって横切られる。
【0044】
好ましくは、前記第2の端部は、前記第1の基準平面に平行な第2の基準平面によって横切られる。
【0045】
好ましくは、前記第1の突出部は、前記半径方向に対して第1の傾斜で延在する前記第1の半径方向プロファイルの第1の長さ部と、前記半径方向に対して前記第1の傾斜とは逆符号の第2の傾斜で前記第1の長さ部から延在する前記第1の半径方向プロファイルの第2の長さ部とによって範囲が定められる。好ましくは、前記第1の長さ部は前記第1の端部から延在する。
【0046】
好ましくは、前記第1の凹部は、前記第1の基準平面に対して前記第1の突出部とは反対側に画定される。
【0047】
好ましくは、前記第1の凹部は、前記第1の半径方向プロファイルの前記第2の長さ部と、前記第2の長さ部から延在し、前記半径方向に対して前記第2の傾斜とは逆符号の第3の傾斜を有する前記第1の半径方向プロファイルの第3の長さ部とによって範囲が定められる。
【0048】
好ましくは、前記第3の長さ部は前記第2の長さ部から前記第2の端部まで延在する。好ましくは、前記第2の基準平面は、前記第1の基準平面から間隔が空けられている。
【0049】
好ましくは、前記第2の基準平面は、前記第1の凹部と前記第1の基準平面との間に挟まれている。
【0050】
上記の特性を有する入り組んだタイプのサイプを設けることにより、タイヤ製造工程、特にタイヤを型から引き出す作業を妨げたり、または雪を保持するタイヤの能力を過度に制限したりすることなく、ブロックの剛性を有利に著しく高めることが可能となる。
【0051】
本出願人は、このような構成により、いかに2つのブロック部分間の干渉が特に大きな表面積にわたって生じ、したがって、2つのブロック部分間の変位を防止する度合いが増大し、その結果、ブロック部分の剛性が増大するかについて、同時に、応力が増大するにつれて、いかにこの干渉状態に急速に到達するかについて、特に確かめた。
【0052】
これにより、氷雪路面および乾いた路面または濡れた路面の両方で優れた性能を有する冬用タイヤを得ることができる。
【0053】
さらに、本発明による入り組んだタイプのサイプの形状は、非方向性タイヤ、例えば非対称タイヤにも適用することが可能である。
【0054】
本発明は、前述の態様において、以下に示す好ましい特性の少なくとも1つを個々にまたは組み合わさって有することができる。好ましくは、前記第1の凹部は、前記第1の基準平面および前記第2の基準平面に対して前記突出部とは反対側に定められる。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記第1の結合部分の前記第1の端部は、前記第1の表面の半径方向外側縁部に属する。
【0056】
言い換えれば、半径方向に対して傾斜した結合部分の第1の長さ部はトレッド面まで延在し、これにより、他のすべてのことが同じであれば、より大きな、および/またはトレッド面により近い突出部を有することが可能になる。
【0057】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルの前記第1の長さ部は実質的に真っ直ぐである。
【0058】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルの前記第1の長さ部は、前記半径方向に対して3°~25°、より好ましくは5°~10°、さらにより好ましくは約6.5°の第1の角度で傾斜している。
【0059】
これにより、容易に破れる過度に弱いトレッドのブロック部分をトレッド面に形成する過度な傾斜を有する長さ部に頼ることなく、トレッド面に近い適切な大きさの突出部を得ることができる。
【0060】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルの前記第2の長さ部は実質的に真っ直ぐである。
【0061】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルの前記第2の長さ部は、前記半径方向に対して15°~45°、より好ましくは25°~35°、さらにより好ましくは約30°の第2の角度で傾斜している。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記第1の結合部分の前記第2の端部は、前記第1の表面の半径方向内側縁部に属する。
【0063】
言い換えれば、半径方向に対して傾斜した結合部分の第3の長さ部はサイプの底部まで延在している。
【0064】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルは、前記半径方向に平行な長さ部を有さない。
【0065】
これにより、第1の表面全体は第1の長手方向部分において、対応する第2の表面との干渉を生じさせるために使用される。
【0066】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルの前記第3の長さ部は実質的に真っ直ぐである。
【0067】
好ましくは、前記第1の半径方向プロファイルの前記第3の長さ部は、前記半径方向に対して3°~25°、より好ましくは5°~10°、さらにより好ましくは約6.5°の第3の角度で傾斜している。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記第1の半径方向プロファイルの前記第1の長さ部と前記第3の長さ部とは互いに実質的に平行である。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記第1の表面は、トレッドバンド内に半径方向に5mm~15mm、より好ましくは約7mmの深さで延在している。
【0070】
好ましくは、前記第1の突出部は前記トレッド面から1.5mm~2mm、より好ましくは約1.75mmの寸法だけ離れている。
【0071】
好ましくは、前記第1の凹部は、前記トレッド面から5mm~5.5mm、より好ましくは約5.25mmの寸法だけ離れている。
【0072】
好ましくは、前記第1の凹部は、前記第1の表面の前記半径方向内側縁部から1.5mm~2mm、より好ましくは約1.75mmの寸法だけ離れている。
【0073】
好ましくは、前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離は0.2mm~0.5mm、より好ましくは約0.3mmである。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記第1の突出部と前記第1の基準平面との間の距離は約0.1mm~約0.4mm、より好ましくは約0.2mmである。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記第1の凹部と前記第2の基準平面との間の距離は約0.1mm~約0.4mm、より好ましくは約0.2mmである。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記第1の基準平面と前記第2の基準平面との間の距離は1mm~3mm、より好ましくは約2mmである。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記第2の半径方向プロファイルは、前記第1の基準平面に平行な対称平面に関して、前記第1の半径方向プロファイルに対して本質的に対称である。
【0078】
これにより、第1の半径方向プロファイルのパターンは、第2の半径方向プロファイルにおいて実質的に鏡像的に繰り返され、その結果、ブロックがサイプの展開方向とは反対の横断方向の接線応力を受けたときに、ブロックの2つの部分の間の干渉が実質的に均一になる。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記第1の表面は、前記第1の長手方向部分と前記第2の長手方向部分との間に挟まれかつ前記半径方向に実質的に平行な第3の半径方向プロファイルを有する第3の長手方向部分を備える。いくつかの実施形態では、前記第1の表面は複数の第1の長手方向部分を備え、第1の長手方向部分のそれぞれは、対応する第2の長手方向部分と交互に配置されている。
【0080】
好ましくは、前記第1の表面の、前記トレッド面に平行な平面による断面は、波状のパターンを有し、より好ましくは、そのようなパターンは実質的に正弦波状または折れ線状、例えばジグザグ状である。
【0081】
好ましくは、前記波状パターン、またはより好ましくは実質的に正弦波状もしくは折れ線状パターンが、前記第1の表面の、前記トレッド面から異なる距離における前記トレッド面に平行なそれぞれの平面による各断面に対して、得られる。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記波状パターン、より好ましくは実質的に正弦波状または折れ線状パターンは1.5mm~6mm、より好ましくは約3mmのピッチを有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのブロックに、複数の前記入り組んだタイプのサイプが設けられる。
【0084】
それにより、ブロックが雪を保持する能力が増大する。
【0085】
1つの変形例では、前記少なくとも1つのブロックに、前記入り組んだタイプのサイプのみが作成される。これにより、同じサイプ数の場合のブロックの剛性が最大になる。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのブロックにおいて、前記複数の前記入り組んだタイプのサイプは、少なくとも1つの単純なタイプのサイプと間隔をおいて配置される。
【0087】
これにより、同じサイプ数の場合、ブロックが雪を保持する能力とともにブロックの剛性を最適化することができる。
【0088】
本発明の特性および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として示される実施形態の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】入り組んだタイプのサイプを有するいくつかのブロックを含む、本発明に従って作られたタイヤの、平面に展開されたトレッドバンドの一部分の概略図である。
【
図2】
図1のトレッドバンド部分に入り組んだタイプのサイプを作るために使用される複数の型要素を上から見た拡大斜視図である。
【
図5】
図1のトレッドバンドの部分から得られた入り組んだタイプのサイプの上からの見た拡大平面図である。
【
図6】
図5のトレッドバンド部分の線VI-VIに沿った断面図である。
【
図7】
図5のトレッドバンド部分の線VII-VIIに沿った断面図である。
【
図8】
図5のトレッドバンド部分の線VIII-VIIIに沿った断面図である。
【
図9】接線応力が存在しない場合のブロックの挙動を示す、
図1のブロックの半径方向断面の概略図である。
【
図10】接線応力が存在する場合のブロックの挙動を示す、
図1のブロックの半径方向断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図を参照して、符号1は、本発明に従って作られたタイヤを全体的に示す。
【0091】
タイヤ1は、それ自体従来のもので、図には示されていないタイヤ構造と、タイヤ1の半径方向外側位置に配置され、トレッド面3が画定されたトレッドバンド2とを備える。
【0092】
特に路面と接触するように意図されたトレッドバンド2の部分は、その軸方向の両端部においてタイヤ1のサイドウォールに接続されている。
【0093】
トレッドバンド2の周方向展開に沿って順に配置された複数のブロック8の範囲を定める複数の溝がトレッドバンド2に得られる。ブロック8と溝の組は、タイヤ1のトレッドパターンを画定し、好ましい転がり方向を定めて方向性タイヤにするように構成することができ、または、転がり方向に関係なく同様の挙動を有するように構成して、例えば非対称タイヤとすることもできる。
【0094】
各ブロック8には、複数の入り組んだタイプのサイプ10が設けられ、いくつかの場合、それらは、単純なタイプのサイプ9と間隔をおいて配置されてもよい。
【0095】
サイプ9および10はトレッド面3に開口しており、それぞれの長手展開方向Xに沿って互いに平行に延在している。
【0096】
各サイプ9または10は、トレッド面3に開口しており、長手方向Xに沿って、約3mmのピッチPを有する波状のほぼ正弦波パターンを示している。
【0097】
入り組んだタイプのサイプ10のそれぞれは、各ブロック8を、第1のブロック部分11と第2のブロック部分12とに分離し、各部分はそれぞれ、トレッド面3からトレッドバンド2の内側に向かって延在し、第2のブロック部分12の方に向けられた第1の表面13と、トレッド面3からトレッドバンド2の内側に向かって延在し、第1の表面13を向く第2の表面14とを有する。
【0098】
本実施形態では、第1の表面13と第2の表面14とは、実質的に平行であり、互いから約0.3mmの間隔が空けられており、したがって、以下の第1の表面13の詳細な説明は、第2の表面14において鏡像的に反映される。
【0099】
第1の表面13は、トレッド面3に開口した外側縁部15から、サイプ10の底部に画定された内側縁部16まで、トレッドバンド2の内側に向かって約7mmの深さだけ延在している。
【0100】
外側縁部15および内側縁部16は、長手方向Xに沿って同じピッチを有する波状パターンを示すが、
図5に示すように、2つのパターンは互いに半ピッチだけ位相がずれている。
【0101】
この波状パターンにより、第1の表面13に、外側縁部15が第2のブロック12に向かって突出している箇所に対応する複数の第1の長手方向部分17が、外側縁部15が第2のブロック部分12の突出部を受け入れる凹部を有する箇所に対応する複数の第2の長手方向部分18の対応する部分と間隔をおいて配置されていることを識別することができる。隣り合う第1の長手方向部分17と第2の長手方向部分18の各対は、半ピッチだけ間隔を空けて配置されている。加えて、隣り合う第1の長手方向部分17および第2の長手方向部分18の各対の間には、第1の長手方向部分17と第2の長手方向部分18とから実質的に等距離にある第3の長手方向部分19がさらに識別される。
【0102】
第1の表面13は、第1の長手方向部分17において、第1の半径方向プロファイル20(
図6に示す)を有し、第2の長手方向部分18において、第2の半径方向プロファイル21(
図8に示す)を有し、第3の長手方向部分19において、半径方向Rに平行な単一の真っ直ぐな長さ部によって形成された第3の半径方向プロファイル22(
図7に示す)を有する。
【0103】
第1の半径方向プロファイル20は、半径方向Rに対して傾斜した一連の長さ部によって形成され、これらの長さ部はともに、第1のブロック部分11と第2のブロック部分12との間の第1の結合部分を画定する。
【0104】
図示していない実施形態では、第1の半径方向プロファイル20は、第1の結合部分に対して半径方向外側位置または半径方向内側位置において半径方向Rに平行な長さ部を有してもよい。
【0105】
第1の結合部分は、上述したように、この実施形態では、第1の半径方向プロファイル20と一致し、外側縁部15に属する第1の半径方向外側端部23と、内側縁部16に属する第2の半径方向内側端部24との間に延在している。
【0106】
第1の端部23および第2の端部24は、互いに平行で長手方向Xおよび半径方向Rにもまた平行である第1の基準平面Aおよび第2の基準平面Bによってそれぞれ横切られる。
【0107】
第1の半径方向プロファイル20は、第1の表面13の第1の突出部25と、半径方向内側の位置において、第1の凹部26とを備える。
【0108】
第1の突出部25は、トレッドバンド表面3から約1.75mm、第1の基準平面Aから約0.2mm離れている。
【0109】
第1の突出部25は、第1の端部23から延在する第1の実質的に真っ直ぐな長さ部27と、第1の長さ部27に連続して延在する第2の実質的に真っ直ぐな長さ部28とによって範囲が定められる。
【0110】
第1の長さ部27は、半径方向Rに対して約7°の角度で傾斜しており、一方、第2の長さ部28は、半径方向Rに対して第1の長さ部27とは逆符号の約30°の角度の傾斜を有している。
【0111】
第1の凹部26は、第1の基準平面Aおよび第2の基準平面Bに対して前記突出部の反対側に画定され、トレッド面3から約5.25mm、第2の端部24から約1.75mm、第2の基準平面Bから約0.2mm離れている。
【0112】
第1の凹部26は、第2の長さ部28と、第2の長さ部28に連続して第2の端部24まで延在する、第1の半径方向プロファイル20の第3の長さ部29とによって範囲が定められる。
【0113】
第3の長さ部29は、実質的に真っ直ぐで、第1の長さ部27に平行であり、その結果、半径方向Rに対して、第2の長さ部28とは反対方向の傾斜の約7°の角度で傾斜している。
【0114】
第1の半径方向プロファイル20の3つの長さ部27、28、29は、第2の基準平面Bが第1の凹部26と第1の基準平面Aとの間に挟まれ、第1の基準平面Aと第2の基準平面Bとの間の距離Dが約2mmとなるような傾斜および長さを有する。
【0115】
加えて、第1の突出部25とトレッド面3との間の半径方向Rに沿った距離Hは、第1の凹部26とサイプの底部(第2の端部24と同一)との間の半径方向Rに沿った距離Hに実質的に等しく、第1の突出部25と第1の凹部26との間の半径方向Rに沿った距離の半分に実質的に等しいことに留意されたい。
【0116】
第1の半径方向プロファイル20と第2の半径方向プロファイル21とは、
図6および
図8からもわかるように、トレッドバンド2の長手方向Xおよび半径方向Rを含む対称面に対して互いに対称である。したがって、第1の半径方向プロファイル20に関する前述の説明はまた、第2の半径方向プロファイル21に対して鏡像的に適用することができる。
【0117】
その結果、第2の半径方向プロファイル21は、第1の突出部25の位置において、半径方向外側位置に画定された第2の凹部30と、第1の凹部26の位置において、半径方向内側の第2の突出部31とを備える。
【0118】
加えて、第2の凹部30および第2の突出部31は、第1のプロファイル20の第1の長さ部27、第2の長さ部28、および第3の長さ部29にそれぞれ類似した長さ部32、33、および34によって範囲が定められ、それらの部分は長さ部27、28、29に等しい値の角度を有しているが、反対の方向に傾斜しているという違いがある。
【0119】
図2~
図4は、対応する入り組んだタイプのサイプ10をトレッドバンド2に設けるように構成された型要素40の異なる図を示す。
【0120】
型要素40において、ブロック8の第1および第2の部分11、12にサイプ10によって画定された幾何学的特徴を確認することができる。
【0121】
第1の表面13と型要素40との間の相関関係をより強調するために、このような幾何学的特徴は、第1の表面13で使用されたのと同じ参照数字に文字「a」を付けて
図2~
図4の型要素40に示されている。
【0122】
図9および
図10は、静止しているとき(
図9)、および、加速または制動状態を代表する接線応力Fを受けているときのブロック8の挙動を概略的に示す。
【0123】
図からわかるように、ブロックが静止しているとき、第1の表面13と対応する第2の表面14とは互いに間隔が空いているが、例えば制動によって引き起こされた接線応力Fを受けると、ブロックの部分11および12は、第1の表面13と第2の表面14とが、第1の半径方向プロファイル20のそれぞれの第2の長さ部28および第2の半径方向プロファイル21のそれぞれの対応する長さ部33で接触するまで変形する。
【0124】
したがって、2つのブロック部分11、12間の接触面積は、特に大きく、対称的であり、サイプ10の長手方向展開全体に沿って延在している。加えて、第1の表面13と第2の表面14との間の接触状態は、ブロック部分11および12の接線方向の変形度合いが特に低い状態で、例えば約0.5mmで達成される。
【0125】
これにより、非常に低いブロックの変形度合いでブロックの高い剛性が達成される。
【0126】
この有利な特性により、このブロックは、氷雪路面でのトラクションの良好な性能も維持しながら、乾いた路面または濡れた路面でトラクションまたはカーブ走行時に良好な性能を発揮することができる。
【0127】
本出願人はまた、単純なタイプのサイプ9と間隔をおいて配置される複数の入り組んだタイプのサイプ10を備えたブロックが、濡れた路面および乾いた路面での性能を過度に阻害することなく、氷雪面での性能をさらに改善することができることを確かめた。
【0128】
最後に、本出願人は、本発明に従って作られた入り組んだタイプのサイプを有するブロックを設けることが、タイヤの加硫および成形工程時で型から引き出す際に特に問題を伴わないことを確かめた。
【0129】
明らかに、当業者であれば、特定および臨時の用途の必要性を満たすために、上記の発明にさらなる修正および変形を加えることができ、変形および修正は、いかなる場合にも、特許請求の範囲によって規定される保護範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドバンド(2)と、前記トレッドバンドに対して半径方向外側のトレッド面(3)と、前記トレッドバンド(2)に画定された少なくとも1つのブロック(8)と、前記少なくとも1つのブロックに設けられた少なくとも1つの入り組んだタイプのサイプ(10)とを備えるタイヤ(1)であって、前記サイプ(10)が、前記トレッド面(3)に開口して、前記サイプ(10)の展開の長手方向(X)を定め、
前記入り組んだタイプのサイプ(10)が、前記少なくとも1つのブロック(8)を、
- 前記トレッド面(3)から前記トレッドバンド(2)の内側に向かって延在する第1の表面(13)を備える第1のブロック部分(11)と、
- 前記トレッド面(3)から前記トレッドバンドの内側に向かって延在する第2の表面(14)であって、前記第1の表面(13)を向き、前記第1の表面(13)に実質的に平行である第2の表面(14)を備える第2のブロック部分(12)と
に分離し、
- 前記第1の表面(13)が、第1の半径方向プロファイル(20)を有する少なくとも1つの第1の長手方向部分(17)と、前記第1の長手方向部分(17)から間隔を空けて配置され、第2の半径方向プロファイル(21)を有する少なくとも1つの第2の長手方向部分(18)との間に連続して延在し、
- 前記第1の半径方向プロファイル(20)が、前記第1のブロック部分(11)と前記第2のブロック部分(12)との間の第1の結合部分を備え、前記第1の表面(13)の第1の突出部(25)と、前記第1の突出部(25)に対して半径方向内側の前記第1の表面(13)の第1の凹部(26)とを画定し、
- 前記第2の半径方向プロファイル(21)が、前記第1のブロック部分(11)と前記第2のブロック部分(12)との間の第2の結合部分を備え、前記第1の表面(13)の第2の凹部(30)と、前記第2の凹部(30)に対して半径方向内側の前記第1の表面(13)の第2の突出部(31)とを画定し、
- 前記第1の結合部分が、前記サイプ(10)の前記長手方向(X)および前記トレッドバンド(2)の半径方向(R)に平行な第1の基準平面(A)によって横切られる第1の半径方向外側端部(23)と、前記第1の基準平面(A)に平行な第2の基準平面(B)によって横切られる第2の半径方向内側端部(24)との間に延在し、
- 前記第1の突出部(25)は、前記半径方向(R)に対して第1の傾斜で前記第1の端部(23)から延在する前記第1の半径方向プロファイル(20)の第1の長さ部(27)と、前記半径方向に対して前記第1の傾斜とは逆符号の第2の傾斜で前記第1の長さ部(27)から延在する前記第1の半径方向プロファイル(20)の第2の長さ部(28)とによって範囲が定められ、
- 前記第1の凹部(26)は、前記第1の基準平面(A)に対して前記第1の突出部(25)とは反対側に画定され、前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第2の長さ部(28)と、前記第2の長さ部(28)から前記第2の端部(24)まで延在し、前記半径方向(R)に対して前記第2の傾斜とは逆符号の第3の傾斜を有する前記第1の半径方向プロファイル(20)の第3の長さ部(29)とによって範囲が定められ、
- 前記第2の基準平面(B)が、前記第1の基準平面(A)から間隔が空けられて、前記第1の凹部(26)と前記第1の基準平面(A)との間に挟まれている、タイヤ(1)。
【請求項2】
前記第1の結合部分の前記第1の端部(23)が、前記第1の表面(13)の半径方向外側縁部(15)に属する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第1の長さ部(27)が実質的に真っ直ぐである、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第1の長さ部(27)が、前記半径方向(R)に対して3°~25°の第1の角度で傾斜している、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第2の長さ部(28)が実質的に真っ直ぐである、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第2の長さ部(28)が、前記半径方向(R)に対して15°~45°の第2の角度で傾斜している、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1の結合部分の前記第2の端部(24)が、前記第1の表面(13)の半径方向内側縁部(16)に属する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第3の長さ部(29)が実質的に真っ直ぐである、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第3の長さ部(29)が、前記半径方向(R)に対して3°~25°の第3の角度で傾斜している、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の半径方向プロファイル(20)の前記第1の長さ部(27)と前記第3の長さ部(29)とが互いに実質的に平行である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1の突出部(25)が、前記トレッド面(3)から1.5mm~2mmの寸法だけ離れている、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第1の凹部(26)が、前記トレッド面(3)から5mm~5.5mmの寸法だけ離れている、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第1の凹部(26)が、前記第1の表面(13)の前記半径方向内側縁部(16)から1.5mm~2mmの寸法だけ離れている、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第1の突出部(25)と前記第1の基準平面(A)との間の距離が約0.1mm~約0.4mmである、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記第1の凹部(26)と前記第2の基準平面(B)との間の距離が約0.1mm~約0.4mmである、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記第1の基準平面(A)と前記第2の基準平面(B)との間の距離が1mm~3mmである、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項17】
前記第2の半径方向プロファイル(21)が、前記第1の基準平面(A)に平行な対称平面に関して、前記第1の半径方向プロファイル(20)に対して実質的に対称である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項18】
前記第1の表面(13)が、前記第1の長手方向部分(17)と前記第2の長手方向部分(18)との間に挟まれかつ前記半径方向(R)に実質的に平行な第3の半径方向プロファイル(22)を有する第3の長手方向部分(19)を備える、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項19】
前記第1の表面(13)が複数の第1の長手方向部分(17)を備え、第1の長手方向部分(17)のそれぞれが、対応する第2の長手方向部分(18)と交互に配置されている、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項20】
前記第1の表面(13)の、前記トレッド面(3)に平行な平面による断面が、波状のパターンを有する、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項21】
前記波状パターンが、前記第1の表面(13)の、前記トレッド面(3)から異なる距離にある前記トレッド面(13)に平行なそれぞれの平面による各断面に対して得られる、請求項20に記載のタイヤ。
【請求項22】
前記波状パターンが1.5mm~6mmのピッチ(P)を有する、
請求項20に記載のタイヤ。
【請求項23】
複数の前記入り組んだタイプのサイプ(10)が前記少なくとも1つのブロック(8)に設けられる、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項24】
前記入り組んだタイプのサイプ(10)のみが前記少なくとも1つのブロック(8)に設けられる、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項25】
前記少なくとも1つのブロック(8)において、前記複数の前記入り組んだタイプのサイプ(10)が、単純なタイプのサイプ(9)と間隔をおいて配置される、請求項23に記載のタイヤ。
【国際調査報告】