(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】リトラクタアセンブリにおけるプリテンショナハウジング
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B60R22/46 142
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531574
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022081083
(87)【国際公開番号】W WO2023114670
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598122843
【氏名又は名称】オートリブ エー・エス・ピー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バーロウ,ジョン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】マーフィ,ダニエル ロバート
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018MA02
(57)【要約】
【課題】自律車両で使用するのに特に適したシートベルトリトラクタアセンブリの提供。
【解決手段】スピンドル及びフレームを有するシートベルトリトラクタアセンブリにおいて使用するためのシステムは、フレームに装着されるように適合されたハウジングと、ガス発生器と流体連通している第1のチューブ端部及びハウジングの内部キャビティと流体連通している第2のチューブ端部を有するプリテンショナチューブと、スピンドルに固定して結合されているピニオンと、プリテンショナチューブの内側に配設されたプリテンショナロッドとを含む。プリテンショナロッドは、ガス発生器に向かって配設された近位端部と、ガス発生器から離れる方向に配設された遠位端部とを有する。加えて、ハウジングは、プリテンションをかけた後にプリテンショナロッドを格納するために、内側部分及び外側部分を含む少なくとも2つのレベルを備えて形成されている。
【選択図】
図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドル(101)及びフレーム(106)を有するシートベルトプリテンションリトラクタアセンブリ(100)において使用するためのシートベルトプリテンショナシステム(112)であって、
前記フレーム(106)に装着されるように適合されたハウジング(120)と、
ガス発生器(104)と流体連通している第1のチューブ端部(111)及び前記ハウジング(120)と流体連通している第2のチューブ端部(113)を有するプリテンショナチューブ(114)と、
環状本体部分(134)及び突出部(133)を有するピニオン(126)であって、前記ハウジング(120)内に回転可能に装着されており、プリテンションをかけている間にシートベルトウェビング(14)を巻き取るように適合された前記スピンドル(101)に固定して結合されている、ピニオン(126)と、
前記プリテンショナチューブ(114)の内側に配設されたプリテンショナロッド(116)であって、前記ガス発生器(104)に向かって配設された近位端部(130)及び前記ガス発生器(104)から離れる方向に配設された遠位端部(128)を有する、プリテンショナロッド(116)と、を含み、
前記ハウジング(120)が、前記ピニオン(126)の前記環状本体部分(134)を有する内側部分(119)と、前記環状本体部分(134)から延在する前記突出部(133)を受容する外側部分(121)と、を含み、これにより、前記ハウジング(120)の前記内側部分(119)及び前記外側部分(121)が、プリテンションをかけた後に前記プリテンショナロッド(116)を格納することを特徴とする、シートベルトプリテンショナシステム。
【請求項2】
前記ハウジング(120)の前記内側部分(119)が、前記ピニオン(126)の前記環状本体部分(134)を受容する円形キャビティ(148)と、前記シートベルトプリテンションリトラクタアセンブリ(100)の前記フレーム(106)に取り付けられたガイドプレート(142)と、を含むことを更に特徴とする、請求項1に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項3】
前記ハウジング(120)が、前記プリテンショナチューブ(114)から出る前記プリテンショナロッド(116)をガイドするために、前記円形キャビティ(148)の周りの円形経路(146)を備えて形成された弓形ランディング面(150)を含むことを更に特徴とする、請求項2に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項4】
前記ハウジング(120)の前記内側部分(119)が、前記円形経路(146)に沿って前記プリテンショナチューブ(114)の一部分を受容することを更に特徴とする、請求項3に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項5】
前記プリテンショナチューブ(114)の前記第2のチューブ端部(113)が、前記ハウジング(120)内に形成された弓形ランディング面(150)の第1の端部(149)に合流し、前記ハウジング(120)内に形成された前記弓形ランディング面(150)の第2の端部(151)が、前記ハウジング(120)の前記内側部分(119)内に配設された前記ガイドプレート(142)の内側端部(153)に合流することを更に特徴とする、請求項2に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項6】
前記ガイドプレート(142)が、前記ハウジング(120)の前記内側部分(119)内の弓形ランディング面(150)の反対側に配設されており、内側端部(153)と外側端部(155)とを有するガイド経路(152)を備えて形成されていることを更に特徴とする、請求項3に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項7】
前記ガイドプレート(142)が、前記ガイド経路(152)に沿って形成された傾斜面(154)を含み、これにより、前記プリテンショナロッド(116)が、前記傾斜面(154)に沿って前記ハウジング(120)の前記外側部分(121)に向かって移動することを更に特徴とする、請求項6に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項8】
前記ハウジング(120)内に配設された前記ガイドプレート(142)の前記傾斜面(154)により、前記ガイドプレート(142)の外側端部(155)が、前記ハウジング(120)の前記外側部分(121)内に配設されたオーバーフロー経路(156)に合流することを更に特徴とする、請求項7に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項9】
前記ハウジング(120)の前記外側部分(121)が、プリテンションをかけた後に前記外側部分(121)に向かって移動する前記プリテンショナロッド(116)の一部分を収容するオーバーフロー経路(156)を備えて形成されていることを更に特徴とする、請求項1又は2に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項10】
前記プリテンショナロッド(116)が前記プリテンショナチューブ(114)を出た後、前記プリテンショナロッド(116)が、前記内側部分(119)において前記ピニオン(126)の周りで前記ハウジング(120)の弓形ランディング面(150)に接触し、前記外側部分(121)に向かって移動するために前記ガイドプレート(142)の傾斜面(154)を有するガイド経路(152)に向けられ、これにより、前記プリテンショナロッド(116)が、プリテンションをかけた後に前記ハウジング(120)の前記内側部分(119)及び前記外側部分(121)を有する少なくとも2つのレベルで、中に形成された内部キャビティ(141)に格納されることを更に特徴とする、請求項2に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【請求項11】
前記ガイドプレート(142)及び前記ハウジング(120)が各々、鋳造材料から作製されていることを更に特徴とする、請求項2に記載のシートベルトプリテンショナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、米国特許法第119条のもと、2021年12月13日に出願された米国特許出願第17/549,425号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、車両の乗員を拘束するためのシートベルト拘束デバイスに関し、より具体的には、乗員拘束シートベルトをプリテンションするためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションにおける記載は、本開示に関連する背景技術情報を単に提供し、先行技術を構成するものではない。
【0004】
車両シート内の乗員を拘束するためのシートベルト拘束システムは、車両衝突状況における乗員の負傷を軽減するのに重要な役割を果たす。従来のいわゆる「3点」タイプのシートベルト拘束システムは、一般に、乗員の骨盤を横切って延在するラップベルト部分及び上半身を横切るショルダーベルト部分を有し、これらは一緒に締結されるか、又は連続した長さのシートベルトウェビングによって形成される。ラップベルト部分及びショルダーベルト部分は、固定具によって車両構造体に接続される。典型的には、ベルトリトラクタが、ベルトウェビングを格納するために提供され、衝突状況におけるベルト引張荷重を管理するように更に作用し得る。乗員によって手動で展開されるシートベルト拘束システム(いわゆる「アクティブタイプ」)はまた、典型的には、固定具によって車両本体構造に取り付けられたバックルを含む。ベルトウェビングに取り付けられたラッチプレートがバックルによって受容され、ベルトシステムが、拘束を可能にするよう締結され、車両への乗車及び車両からの降車を可能にするよう外されることを可能にする。シートベルトシステムは、展開されると、衝突又は車両衝突事象中に乗員を効果的に拘束する。
【0005】
OEM車両製造業者は、多くの場合、乗員を拘束する性能を向上させるために、車両の衝撃中、又は更には衝撃前のいずれかでシートベルトに張力をかけるプリテンションデバイス(「プリプリテンショナ」としても知られる)を有するシートベルト拘束システムを提供している。プリテンショナは、ウェビングのたるみを取り除き、衝突シーケンスの早期にベルト拘束システムが乗員と結合することを可能にする。1つのタイプのプリテンショナは、ベルトに張力をかけるためにウェビングリトラクタに作用する。火薬によって起動されたガス発生器を組み込んだ回転プリテンショナ(roto-pretensioner)として知られているタイプを含む、リトラクタプリテンショナの様々な設計が現在存在する。概して、火薬又は他の可燃材の点火は、リトラクタスピンドルスプロケットに係合し、ホイールを巻いてウェビングを引き込む、プリテンショナチューブ内に配設された、ピストン、ラック及びピニオン、高分子ロッド、又は一連のボール要素、又はロッド要素などの駆動要素に運動を付与するためのピストンを有するチャンバ内にガス圧力を生み出す。
【0006】
今日、車両技術は高度に自律車両にシフトされているので、乗員シートが車両の内部で高度に可動であり、構成可能であることが開発されている。自律車両では、車両の内側で回転することができる乗員シートが、車両シートに装着することができるシートベルトシステムの必要性を駆り立てる。したがって、自律車両におけるシートベルトシステムは、可動乗員シートに着座している乗員を拘束するために、車両本体ではなくシート構造体に取り付けられる必要がある。しかしながら、本発明者らは、プリテンショナシステムを含む従来のリトラクタアセンブリが、衝撃中に乗員の荷重を支持するためにシート構造体の限られた空間内に収容することができないことを発見した。シート構造体に装着されたプリテンショナシステムを有するリトラクタアセンブリは、コンパクトかつ軽量であるべきであり、また、車両本体に装着された従来のシートベルトシステムと同じ荷重を支持するべきである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、(追加の用途も想定されるが)自律車両で使用するのに特に適したシートベルトリトラクタアセンブリに関する。自律車両の内部に配置された車両シートは、高度に可動であり、構成可能である。したがって、シートベルトリトラクタアセンブリは、乗員用のシートベルトリトラクタアセンブリを有する拘束システムが車両シートと一緒に移動することができるように、車両の内部に配置されたシート構造体に装着されるように適合される。更に、シート構造体に装着されたシートベルトリトラクタアセンブリは、プリテンショナシステムを含み、プリテンショナシステムは、車両衝撃の初期段階でシートベルトに張力をかけ、プリテンションの終了時にリトラクタ及びシートベルトウェビングをロック状態に維持して、その結果、プリテンショナシステムを備えたシートベルトリトラクタアセンブリがコンパクトかつ軽量になるようにするとともに、衝突時に乗員の荷重を支持する。
【0008】
本開示の例示的な実施形態によれば、スピンドル及びフレームを有するシートベルトリトラクタアセンブリにおいて使用するためのシートベルトプリテンショナシステムは、フレームに装着されるように適合されたハウジングと、ガス発生器と流体連通している第1のチューブ端部及びハウジングと流体連通している第2のチューブ端部を有するプリテンショナチューブと、環状本体部分及び突出部を有するピニオンと、プリテンショナチューブの内側に配設されており、ガス発生器に向かって配設された近位端部及びガス発生器から離れる方向に配設された遠位端部を有するプリテンショナロッドとを含む。ピニオンは、ハウジング内に回転可能に装着されており、プリテンションをかけている間にシートベルトウェビングを巻き取るように適合されたスピンドルに固定して結合されている。更に、ハウジングは、ピニオンの環状本体部分を有する内側部分と、環状本体部分から延在する突出部を受容する外側部分と、を含み、これにより、ハウジングの内側部分及び外側部分は、プリテンションをかけた後にプリテンショナロッドを格納する。
【0009】
本開示の更なる態様によれば、ハウジングの内側部分は、ピニオンの環状本体部分を受容する円形キャビティ及びリトラクタアセンブリのフレームに取り付けられたガイドプレートを含む。ハウジングは、プリテンショナチューブから出るプリテンショナロッドをガイドするために、円形キャビティの周りに円形経路を備えて形成された弓形ランディング面を含む。ハウジングの内側部分は、円形経路に沿ってプリテンショナチューブの一部分を受容する。
【0010】
本開示の更なる態様によれば、ガイドプレートは、ハウジングの内側部分内の弓形ランディング面の反対側に配設されており、内側端部及び外側端部を有するガイド経路を備えて形成されている。ガイドプレートは、ガイド経路に沿って形成された傾斜面を含み、これにより、ロッドが、傾斜面に沿ってハウジングの外側部分に向かって移動する。
【0011】
本開示の更なる態様によれば、ハウジングの外側部分は、プリテンションをかけた後に外側部分に向かって移動するロッドの一部分を格納するためのオーバーフロー経路を備えて形成されている。
【0012】
本開示の更なる態様によれば、プリテンショナチューブの第2のチューブ端部は、ハウジングに形成された弓形ランディング面の第1の端部に合流し、ハウジングに形成された弓形ランディング面の第2の端部は、ハウジングの内側部分内に配設されたガイドプレートの内側端部に合流する。ハウジング内に配設されたガイドプレートの傾斜面により、ガイドプレートの外側端部は、ハウジングの外側部分内に配設されたオーバーフロー経路に合流する。
【0013】
本開示の更なる態様によれば、プリテンショナロッドがプリテンショナチューブを出た後、ロッドは、内側部分においてピニオンの周りでハウジングの弓形ランディング面に接触し、外側部分に向かって移動するためにガイドプレートの傾斜面を有するガイド経路に向けられ、これにより、ロッドが、プリテンションをかけた後にハウジングの内側部分及び外側部分を有する少なくとも2つのレベルに形成された内部キャビティ内に格納される。
【0014】
本開示の更なる態様によれば、ハウジング及びガイドプレートは各々、鋳造材料から作製される。
【0015】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、シートベルトプリテンショナシステムは、フレームに装着されるように適合され、内部キャビティを有するハウジングを更に含む。ハウジングの内部キャビティは、プリテンションをかけた後にプリテンショナチューブから出るプリテンショナロッドを格納するために、少なくとも2つのレベルを備えて形成されている。内部キャビティの少なくとも2つのレベルは、ハウジングの内部キャビティがスパイラル形状を備えて形成されるように、内側部分及び外側部分を含む。
【0016】
シートフレームの限られた空間のために、シートフレームに装着されたリトラクタアセンブリは、コンパクトなサイズを有する構成要素で作製される。したがって、乗員シートフレームに装着されたコンパクトリトラクタアセンブリのシートベルトプリテンショナシステムは、車両本体に装着されたリトラクタアセンブリと比較して、コンパクトリトラクタアセンブリのサイズが相対的に低減されるので、プリテンショナハウジング内に配置されたピニオンの平面内にのみプリテンショナロッドを格納するのに十分ではない。したがって、ハウジングが、ピニオンの回転軸に沿って少なくとも2つのレベル(平面)を備えて形成され、スパイラル又は螺旋形状を備えて形成された内部キャビティ内にプリテンショナロッドを格納するように、他の方法でプリテンショナロッドを格納するために、プリテンショナシステムにおけるハウジングの内部キャビティを増大させる必要がある。本発明によれば、シートフレームの限られた空間内にコンパクトリトラクタアセンブリを収容することができる。
【0017】
利用可能性の更なる領域は、本明細書に提供されている説明から明らかになる。説明及び特定の例は、例示のためのみであることが意図され、本開示の範囲を限定することは意図されていないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示が十分に理解され得るために、本開示の様々な形態を、添付の図面を参照してここで例として説明する。
【
図1】本開示の例示的な実施形態による、車両の内部に配置された車両シートを示す。
【
図2】
図1の車両シートにおける乗員拘束システムの斜視図である。
【
図3】
図2の車両シートに設置されたシートベルトリトラクタアセンブリの斜視図である。
【
図4】
図3のプリテンショナシステムを有するシートベルトリトラクタアセンブリの分解図である。
【
図5】
図3のシートベルトリトラクタアセンブリにおけるフレーム及び取付ブラケットを有するフレームアセンブリの分解図である。
【
図7】
図5のフレームアセンブリの他方の側の斜視図である。
【
図8】
図4のプリテンショナシステムにおけるプリテンショナロッドの平面図である。
【
図8A】
図8における線8A-8Aに沿った、プリテンショナロッドの断面図である。
【
図9】
図4のプリテンショナシステムのハウジングの内側のピニオンを示すプリテンショナシステムの切欠図である。
【
図10】
図4のプリテンショナシステムに配置されたプリテンショナカップ(透明)及びガイドプレートを有するプリテンショナシステムの斜視図である。
【
図11】
図3のプリテンショナシステムを含むシートベルトリトラクタアセンブリの斜視図である。
【
図11A】
図3のプリテンショナシステムのプリテンショナカップの斜視図である。
【
図11B】
図3のプリテンショナシステムのガイドプレートの斜視図である。
【
図12A】本開示の例示的な実施形態による、プリテンションをかけた後にプリテンショナシステム内で透明なハウジングの内部キャビティ内に格納されたプリテンショナロッドを示す、リトラクタアセンブリの斜視図である。
【
図12B】
図12Aのプリテンション前のプリテンショナシステムの断面端面図である。
【
図12C】
図12Aのプリテンションをかけた後のプリテンショナシステムの断面端面図である。
【
図13A】
図3のシートベルトリトラクタアセンブリ内のガス発生器を作動させる前の、プリテンショナチューブの内側に配設されたプリテンショナロッドの平面図である。
【
図13B】
図3のガス発生器を作動させた後の、ハウジングの内側に配設されたプリテンショナロッドの平面図である。
【
図13C】
図4のプリテンショナシステムにおけるシールの平面図である。
【
図14】本開示の例示的な形態による、プリテンショナカップで組み立てられたプリテンショナチューブの斜視図である。
【
図14A】
図4のプリテンショナシステムのピニオンを有するプリテンショナチューブの斜視図である。
【
図14B】
図14Aのピニオンを有するプリテンショナチューブの断面端面図である。
【0019】
本明細書に示す図面は、例示のためのみであり、本開示の範囲を限定することは何ら意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明は本質的に単に例示であり、本開示、用途、又は使用を限定することは意図されていない。図面全体において、対応する参照番号は、同様の又は対応する部分及び特徴を示すことを理解されたい。
【0021】
図面を参照すると、
図1は、車両内部における車両シート10を示し、車両シート10は、車両内部の内側で可動であり、かつ回転可能でもある。特に、自律運転システム(図示せず)によって動作される車両では、車両シート10は、車両内で可動であり、かつ回転可能でもある。したがって、
図1の例に示されるように、可動式車両シート10は、シートベルトアセンブリ12が車両シート10と一緒に車両本体から独立して移動することもできるように、シート構造体に装着されるシートベルトアセンブリ12を有する必要がある。
【0022】
図2は、例示的な実施形態による、車両シート10及びシートベルトアセンブリ12を示す。シートベルトアセンブリ12は、概して、上部ガイドループ又は固定具18からラッチプレート20まで延在するショルダーベルト部分16及びラッチプレート20から下部固定具24まで延在するラップベルト部分22を有するシートベルトウェビング14を含む。ラッチプレート20は、シートベルトバックル26に挿入されて、シートベルトアセンブリ12をロック及びロック解除することができる。シートベルトバックルケーブル28は、直接的に又は他の構成要素と協働して、シートベルトバックル26をシート構造体の一部分(例えば、車両シート10のクッションフレーム)に固定する。これにより、
図2の例において示されるように、シートベルトアセンブリ12は、シートベルトアセンブリ12が、車両シート10(
図1を参照)と一緒に移動するように、車両シート10の構造体に取り付けられる。
【0023】
シートベルトウェビング14は、車両シート10内に位置するリトラクタアセンブリ100(
図3に示す)から繰り出すことができる。ラッチプレート20がシートベルトバックル26に締結されると、シートベルトアセンブリ12は、
図2に示すように、固定具18とラッチプレート20と下部固定具24との間に3点拘束を画定する。シートベルトバックケーブル28を含む固定具18及び24の全ては、
図2の例示的な実施形態による車両シート10の構造体に取り付けられる。更に、シートベルトアセンブリ12の任意の他の好適な構成が、車両シート10の構造体に取り付けることによって画定され得る。
【0024】
図3において、プリテンション機構を有するリトラクタアセンブリ100は、リトラクタアセンブリ100が車両シート10の構造体に取り付けられるように、車両シート10の限られた場所に設置するためにコンパクトなサイズで形成されるように設計されており、例えば、シート構造フレーム部材の中空内部に封入されてもよい。リトラクタアセンブリ100は、スピンドルアセンブリ102(
図4を参照)並びにフレーム106及び取付ブラケット118を有するフレームアセンブリ107に装着されたガス発生器104を含む。スピスピンドルアセンブリ102(
図4)は、ショルダーベルト部分16のシートベルトウェビング14に接続され、それを収納し、一方、ラップベルト部分22の端部は、固定点、例えば、フレームアセンブリ107又は車両シート10の別の部分に固定して係合される。(
図2を参照)。
【0025】
図4を参照すると、スピンドルアセンブリ102は、スピンドル101及びスピンドル101の内側に配置され、シートベルトウェビング14のショルダーベルト部分16と係合し、回転してシートベルトウェビング14を巻き取る、又は繰り出すスピンドルプレート103を含む。ねじり「クロック」又は「モータ」タイプのばねアセンブリ108は、ばね端部キャップ110内で搬送され、スピンドル101を回転方向に付勢してシートベルトウェビング14を引き込む。スピンドルアセンブリ102は、プリテンショナ(本明細書で更に説明される)、慣性及びウェビング感知ロッキングデバイス、トーションバー荷重リミッタ、又は他のベルト制御デバイスを含む、先行技術に従って知られている他のスピンドル制御機構を更に組み込む。本明細書で言及されるスピンドル制御システムは、ウェビングスピンドルの回転移動を制御し、したがって、シートベルトウェビングの装着、引き出し、及び引き込みを制御する任意のシステムを含むことができる。スピンドル制御システムのうちの1つは、モータ補助リトラクタである。スピンドルロッキングデバイスは、典型的には、トレッドヘッドと協働する回転ボール又は振り子などの慣性感知要素を組み込み、スピンドルのピニオンを係合させて、シートベルトウェビング14のスピンドル101からの更なる引き出し及び/又はラッチプレート20のシートベルトバックル26への接続を防止する。ウェビング感知ロッキングデバイスは、リトラクタアセンブリ100をロックするためにシートベルトウェビング14の迅速な繰り出しを感知する。シートベルトウェビング14の引き出し及び/又はラッチプレート20のシートベルトバックル26への接続を検出する様々な電子感知機構もまた、リトラクタアセンブリ100に組み込まれてもよい。
【0026】
関連付けられた車両の通常動作中、リトラクタアセンブリ100は、特定量の運動の自由度を乗員に与えるためにシートベルトウェビング14の繰り出しを可能にする。しかし、衝撃又は衝撃の可能性のある状況が検出された場合、リトラクタアセンブリ100は、繰り出しを制限し、乗員を車両シート10に固定するためにロックされる。例えば、車両が所定の速度で減速した場合、又はブレーキが所定の力で作動された場合、次いで、リトラクタアセンブリ100はロックされる。シートベルトウェビング14の自由な繰り出しにより、シートベルトアセンブリ12は、通常の使用中にしばしばたるみを発生させる。
【0027】
図3及び
図4の例示的な実施形態によれば、リトラクタアセンブリ100は、車両シート10の構造体に取り付けるためにコンパクトに形成されている。特に、リトラクタアセンブリ100は、スピンドルアセンブリ102に動作可能に接続され、プリテンションのためにスピンドル101を回転させるように動作可能なプリテンショナシステム112を含む。当業者に知られているように、リトラクタプリテンショナは、検出された車両衝撃の初期段階で、シートベルトウェビングを乗員に対してよりしっかりとした状態に巻き取る。これは、車両の衝撃又は横転の減速力に応答して、乗員の前方運動又は偏位を低減するために提供される。
【0028】
図3及び
図4に示すように、プリテンショナシステム112は、ガス発生器104と連通しているプリテンショナチューブ114を含む。ガス発生器104は、点火信号に応答して膨張ガスを提供するために使用される。当該技術分野で知られているように、例えば、車両は、衝撃事象、衝突、又は横転などの緊急事象を示す信号を送信するセンサアレイを含む。車両センサは、特定の衝撃センサであってもよく、又は従来の車両センサ(例えば、縦方向若しくは横方向加速度センサ)又はさもなければ、一組の複数のセンサを有する制御システムの部分であってもよい。当業者に周知の、又は周知される任意の他の衝撃センサもまた、本開示のシートベルトアセンブリ12と併せて容易に用いられ得る。中央処理装置(central processing unit、CPU)又は他のコントローラなどの電子制御ユニットが信号を受信し、シートベルトアセンブリ12を、車両のシートベルトウェビング14を(例えば、プリテンショナの起動を介して)締め付けることによって応答するよう制御する。
【0029】
以下で更に詳細に論じられるように、プリテンショナチューブ114は、その内部に配設された、細長い形状を有し、チューブ114内で可撓性である、プリテンショナロッド116、例えば、塑性変形可能なポリマーロッドを有する。より具体的には、以下で更に詳細に論じられるように、プリテンショナロッド116は、プリテンショナチューブ114への挿入前に、プリテンショナチューブ114の外側に配設されているときには、概ね直線状の形状を有し、プリテンショナチューブ114内に挿入されると、シート構造体の限られた空間の内側に嵌合されている、プリテンショナチューブ114の屈曲形状に従って曲がり、屈曲する。
【0030】
更に、
図3及び
図4に示すように、リトラクタアセンブリ100は、上述のように、フレーム106に装着されたスピンドルアセンブリ102を含む。より具体的には、スピンドルアセンブリ102は、フレーム106に対して回転し、スピンドルアセンブリ102に取り付けられたシートベルトウェビング14を巻き取る。スピンドルアセンブリ102は、プリテンショナシステム112のハウジング120内に配設されたピニオン126を含む。ピニオン126は、スピンドル101に取り付けられており、ピニオン126の回転は、取り付けられたスピンドル101を回転させて、スピンドル101に取り付けられたシートベルトウェビング14を巻き取る。更に、プリテンショナシステム112の構成要素を有するハウジング120は、フレーム106に取り付けられる。
【0031】
図5、
図6及び
図7を参照すると、リトラクタアセンブリ100を車両シート10の構造体に装着するための限られた空間のために、フレームアセンブリ107は、フレーム106及び取付ブラケット118を含み、これらは、スピンドル101を受容する内部空間を有するようにインターロックされる。
図5及び
図6の例示的な形態では、取付ブラケット118は、平坦な形状を備えて形成されており、フレーム106を受容するための少なくとも1つの開口部(隙間)122及び少なくとも1つのスロット124を備えて形成された主部分129と、フレームアセンブリ107を車両シート10の構造体に取り付けるための少なくとも1つの穴123を備えて形成された接続部分131とを含む。フレーム106は、ボックス形状を備えて形成されており、フレーム106内にベース109を画定する少なくとも1つのパッド105を含み、これにより、フレーム106のベース109が取付ブラケット118の主部分129に取り付けられる。更に、フレーム106のベース109として形成されたパッド105は、フレーム106がシート構造体の限られた空間にリトラクタアセンブリ100を装着するためのパッケージングサイズを低減するように構成されるように、内側に曲げられる。
【0032】
図5、
図6、及び
図7において、例えば、フレーム106は、取付ブラケット118の4つのスロット124に摺動可能に係合する4つのパッド105を備えて形成されており、これにより、フレーム106のパッド105が取付ブラケット118のスロット124とインターロックする。取付ブラケット118の開口部122は、パッド105が取付ブラケット118のスロット124に係合することを容易にする。
図5では、第1のステップとして、パッド105が開口部122を通過し(ブラケット118の開口部122に挿入される、矢印参照)、
図7では、第2のステップとして、パッド105がスロット124内に摺動し(矢印参照)、フレーム106及びブラケット118が構造的に接続されるインターロック位置として画定されるスロット124と確実にインターロックする。更に、内向きに曲げられたパッド105により、フレーム106のパッド105は、取付ブラケット118の主部分129に重なり、フレーム106のパッド105は、フレーム105が取付ブラケット118の設置面積を低減させ、フレームアセンブリ107の機械的強度も増加させるように、接合方式(例えば、溶接又はリベット締め)によって取付ブラケット118に確実に固定される。したがって、フレーム106は、フレームアセンブリ107が単一のユニットとして形成され、リトラクタアセンブリ100を支持するように、取付ブラケット118に固定して取り付けられる。
【0033】
図6及び
図7に示すように、フレーム106及び取付ブラケット118を有するフレームアセンブリ107は、スピンドルアセンブリ102及び可能な限りプリテンショナシステム112も受容するフレーム106の垂直壁上にできるだけ多くの平坦面を維持しながら、リトラクタアセンブリ100のパッケージング空間に影響を与えないようにする必要がある。したがって、フレーム106に形成されたパッド105と取付ブラケット118に形成されたスロット124との相互作用は、シート構造体の限られた空間内に配置するためのリトラクタアセンブリ100の製造可能性を高めるように構成される。
【0034】
図3及び
図4に戻って参照すると、プリテンショナロッド116は、一形態において略円形の断面を有する(
図8も参照)。別の手法では、プリテンショナロッド116は、略長方形断面、三角形断面、又はプリテンショナロッド116がプリテンショナチューブ114内に挿入され、挿入されたときにプリテンショナチューブ114の屈曲(又は円弧)形状に適合することを可能にする他の多角形断面などの、非円形断面を有し得る。議論のために、プリテンショナロッド116は、略円形の断面を有するものとして論じる。円形断面は、一手法において、ロッド116の長さに沿って回転し、スパイラル形状を作り出すことができる。
【0035】
図8及び
図8Aは、略円形の断面形状を有するプリテンショナロッド116を示す。ロッド116は、その全長の大部分に沿って延在する主本体部分115及びその遠位端部128に形成されたテーパ部分117を含む。ロッド116は、ロッド116がプリテンショナシステム112内に設置されるときにはガス発生器104に向かって配設されている近位端部130を更に含む。更に、ロッド116の遠位端部128は、ロッド116の近位端部130の反対側の端部に配設されている。加えて、
図8及び
図8Aに示すように、プリテンショナロッドの全長は約175mmであり、プリテンショナロッド116における主本体部分115の断面直径dは約7.2mmであり、その結果、プリテンショナチューブ114に挿入されたとき、ロッド116とチューブ114との間の半径方向ギャップは、チューブ114の本体部分166において概ね0.15mmである。ロッド116の主本体部分115及びチューブ114は、チューブ114に挿入されたときにサイズが近い(小さな半径方向ギャップ)ので、チューブ115の内側でのロッド116の座屈を防止することができる。
【0036】
プリテンショナロッド116は、好ましくは、ユーザの特定の要望に適合するように選択することができるポリマー材料から作製される。ポリマー材料は、初期設置を可能にするために、及びガス発生器104による作動に応答して、プリテンショナチューブ114を通って曲がり、屈曲することができるよう、十分な可撓性を有するものであることが好ましい。更に、ポリマー材料は、プリテンションをかける動作の間に変形してプリテンション又はピニオンに構造的に係合することができるように選択される。ポリマー材料は、ロッド116がプリテンショナ112のピニオン126に荷重を十分に伝達するよう、作動に応答して十分な「押し込み性」(カラム荷重特性)を有するものであることが好ましい。
【0037】
更に、ロッド116は、好ましくは、塑性変形可能であるポリマー材料から作製される。作動中及び作動後、ロッド116は、作動及びプリテンショナシステム112の他の構成要素(例えば、ピニオンベーン又はガイドプレート)との接触に応答して塑性変形される。この塑性変形は、システム112の使用を参照して以下で更に論じられ、ここで、塑性変形は、プリテンショナチューブ114内の維持されたガス圧力に完全に依存することなく、ロッド116のペイバックを防止又は制限するようにシステムをロックさせる。一手法では、ロッド116は、ナイロン熱可塑性材料から作製される。ロッド116はまた、脂肪族ポリアミド熱可塑性材料から作製され得る。別の手法では、ロッド116は、アセタール材料又はポリプロピレン材料などの、同様の熱可塑性材料から作製され得る。しかしながら、塑性変形を伴わずに、プリテンショナシステム112を起動させることができるプリテンショナロッド116用の他の材料も使用され得ることを理解されよう。例えば、弾性変形可能な材料が使用され得るが、そのような材料は、塑性変形可能なロッドの利点の各々を提供しないであろう。
【0038】
図9及び
図10を参照すると、ピニオン126は、中心スロット132がスピンドルプレート103に圧着されるように(
図4も参照)、スピンドル101に面する第1の側125においてスピンドルプレート103を受容する中心スロット132を画定する略環状形状を有する。したがって、ピニオン126とスピンドル101とがスピンドルプレート103によって接続され、その結果、ピニオン126とスピンドル101とが結合されて一緒に回転する。更に、ピニオン126は、突出部133がプリテンショナシステム112のハウジング120に回転可能に結合されるように、プリテンショナシステム112に面する第2の側127から突出する突出部133を含む。
図9及び
図10に示すように、ピニオン126は、環状本体部分134及び本体部分134のベースから半径方向に突き出すフランジ部分136を含む。ピニオン126は、複数のベーン(又は歯)138を更に含み、ベーン138が本体部分134とフランジ部分138との間に延在するように、本体部分134から半径方向に、及びフランジ部分136から長手方向に各々突き出す(
図4を参照)。
【0039】
図9に示すように、ベーン138は各々、前方から見たときに略三角形の形状を有し、ベーン138が本体部分134から半径方向外向きに延在するにつれて、点139に向かってテーパ状になるベース137を有する。ベーン138の特定の幅及びピッチは、所望に応じて選択することができる。複数のベーン138は、隣接するベーン138間に配設されたキャビティ140を画定するように組み合わされる。
図9の例示的な実施形態では、ピニオン126は、均一に分散された13個のベーン138を備えて形成されており、各ベーン138は、同じサイズ及び形状を有することができる。別の手法では、ベーン138は、異なるサイズを有することができ、かつ/又は異なる間隔で離間させることができる。ベーン138のサイズ及び間隔を調整することにより、プリテンショナシステム112が起動されたときのピニオン126の回転量及び/又は回転速度並びにロッド116との相互作用を変更することができる。
【0040】
図10を参照すると、プリテンショナシステム112(すなわち、プリテンショナカップ(PTカップ))のハウジング120は、ガイドプレート142を有する内部キャビティ141を備えて形成されており、かつまた、フレーム106に取り付けられている。
図11に示すように、ハウジング120は、フレーム106に近い内側部分119と内側部分119の隣に位置する外側部分121とを有する2つの層を備えて形成されており、その結果、外側部分121は、ピニオン126の回転軸において、内側部分119から外向きに配置されている。ガイドプレート142は、ピニオン126の環状本体部分134も受容するハウジング120の内側部分119に配置される。更に、フレーム106には、PTカップ144及びガイドプレート142が取り付けられている。ピニオン126の突出部133は、スピンドルアセンブリ102に取り付けられたピニオン126が必要なときに回転することができるように、ハウジング120の外側部分121に回転可能に結合される。
【0041】
図11Aにおいて、PTカップ144は、ピニオン126を受容するための円形キャビティ148を備えて形成されており、かつまた、ピニオン126のフランジ部分136の周りでチューブ114から出るロッド116のための円形経路146を備えて形成されている。したがって、PTカップ144は、ロッド116をガイドするために円形キャビティ148の周りに円形経路146を備えて提供されている。PTカップ144の円形経路146はまた、円形キャビティ148の周りのチューブ114の出口に向かって凹形状を有する略弓形ランディング面150を備えて形成されている。一手法では、表面150の弧は、一定の半径を有し、弧の半径の中心点は、表面とピニオンとの間の半径方向間隔が表面150の長さに沿って一定であるように、ピニオン126の回転軸と位置合わせされる。別の手法では、表面150とピニオン126の外径との間の半径方向間隔が表面150に沿った異なる点で変化するように、表面の半径の中心点をピニオン126の回転軸からずらすことができる。更に、弓形ランディング面150は、第1の端部149及び第2の端部151を含む。第1の端部149は、ロッド116がチューブ114を出た後に第2の端部151より先に第1の端部149と係合することになるように、チューブ114の出口の反対側に配設されている。
図11Aに示すように、PTカップ144は、概して、亜鉛又はアルミニウムなどの鋳造金属材料から作製される。しかしながら、別の手法では、PTカップ144は、スタンピング鋼材料、成形金属材料、又はプラスチック材料などの他の材料から形成されてもよい。更に、PTカップ144は、射出成形プロセスによって作製することができる。
【0042】
ハウジング120は、内側部分119に配設されたガイドプレート142を更に含む。
図11Bにおいて、ガイドプレート142は、PTカップ144の弓形ランディング面150の反対側に配設されているガイド経路152を備えて形成されている。更に、
図10に示すように、ガイド経路152は、傾斜面154を備えて形成されており、これにより、ロッド116が、内側部分119から外側部分121に向かって移動する。ガイドプレート142内に形成された傾斜面154により、ロッド116は、プリテンションをかけた後に、内側部分119及び外側部分121などの少なくとも2つのレベルを有するハウジング120内に格納される。更に、ガイド経路152は、内側端部153及び外側端部155を含む。ガイドプレート142の内側端部153は、弓形ランディング面150の第2の端部151に合流し、これにより、ピニオン126を通過するロッド116の一部分が、ガイドプレート142の傾斜面154に沿って外側部分121に向かって移動する。加えて、ガイドプレート142は、亜鉛又はアルミニウムなどの鋳造金属材料で形成される。別の手法では、ガイドプレート142は、射出成形プロセスによってプラスチック材料から形成されるか、又はスタンピングプロセスによって鋼材料から形成される。
【0043】
図11Aに戻って参照すると、PTカップ144は、プリテンショナロッド116を格納するためのオーバーフロー経路156を備えて更に形成されている。プリテンションをかけた後、内側部分119内のピニオン126及びガイドプレート142を通過するロッド116の部分は、ハウジング120の外側部分121内に配設されたオーバーフロー経路156に向かって向けられる。オーバーフロー経路156は、必要に応じて、プリテンショナシステム112の作動中にロッド116の一部分がその中に受容されることを可能にするようにサイズ決定され、構成される。例えば、ロッド116がチューブ114を出た後のハウジング120の内側部分119において、ロッド116は、PTカップ144の弓形ランディング面150に接触し、外側部分121に移動するための傾斜面154を有するガイド経路152に向けられ、その結果、最終的には、ロッドの一部分がオーバーフロー経路156に向かって向けられる。
【0044】
本開示によるリトラクタアセンブリ100は、車両シート10の限られた空間内に嵌合するようにサイズ決定されているので、従来のリトラクタアセンブリと比較して、リトラクタアセンブリ100のサイズは、概ねコンパクトであり、減少している。したがって、
図12Aに示すように、ハウジング120は、内側部分119及び外側部分121を備えて形成されており、これにより、ロッド116は、プリテンションをかけた後に内側部分119及び外側部分121の両方に格納される。例えば、ロッド116は、内側部分119及び外側部分121がピニオン126の回転軸に沿って並んで配置されているので、螺旋又はスパイラル格納として形成されたハウジング120内に格納され、そのため、ハウジング120は、ピニオン126の回転軸に沿って2つのレベル(平面)を備えて形成されている。内側部分119として画定された第1のレベル(平面)は、ピニオン126の本体部分134を含み、外側部分121として画定された第2のレベル(平面)は、ピニオン126の突出部133を含む。したがって、ロッド116は、プリテンションをかけた後に、スパイラル形状又は螺旋形状を有するハウジングの2つのレベル(平面)内に格納される。
図12A~
図12Cは、プリテンションをかけた後にプリテンショナシステム112のハウジング120内に格納されたプリテンショナロッド116を概略的に示す。
図12Aは、本開示によるコンパクトプリテンショナシステム112を含むコンパクトリトラクタアセンブリ100を示す。
図12Bは、プリテンションをかけた後のプリテンショナシステム112のハウジング120の内側を示す断面端面図である。
図12Cにおいて、プリテンショナチューブ114を出るロッド116は、まずピニオン126に接触し、内側部分119においてPTカップ144の内側の弓形形状に従う。その後、ロッド116は、ロッド116の一部分が最終的に外側部分121に向かって向けられるように、ガイドプレート142のガイド経路152を介して、内側部分119から外側部分121に向かって移動し、次いで、PTカップ144内に形成されたオーバーフロー経路156に従う。したがって、ロッド116は、プリテンションをかけた後にハウジング120の内側部分119及び外側部分121の両方に格納される(
図12Aを参照)。
【0045】
上述のように、リトラクタアセンブリ100は、点火信号に応答して膨張ガスを提供するガス発生器104(
図4を参照)を含む。
図13Aは、ガス発生器が作動される前のプリテンショナチューブ114の内側のシール160及びストッパ162を有するプリテンショナロッド116を示し、
図13Bは、プリテンションをかけた後にチューブ114から出るプリテンショナロッド116を示す。
図13A及び
図13Bに示されるように、膨張ガスは、チューブ114内の圧力の増大を引き起こし、これにより、最終的には、ロッド116がチューブ114内を通ってガス発生器104から離れる方向に押しやられる。上述したように、プリテンショナチューブ114は、ピストン又はシール160を更に含む。シール160は、ある手法では、円筒形の外面を有する円筒形状を有することができる(
図13Cを参照)。別の手法では、シールは、球形の外面(図示せず)を有する球形の形状を有することができる。シール160は、チューブ114内に摺動可能に配設され、チューブ114の屈曲形状に沿ってロッド116を駆動するように動作可能である。当業者によって理解されるように、シール160は、チューブ114の内側に圧入されるか、又は別様に嵌合されてもよい。
【0046】
図13A及び
図13Cに示すように、シール160は、ガス発生器104から離間した近位端部159を画定して、その間にガスチャンバを画定する。シール160は、ロッド116に向かって向けられた遠位端部161を画定する。更に、プリテンショナチューブ114は、ピストン(シール)160とロッド116との間でチューブ114内に配設されたストッパ162を含む。ストッパ162は、好ましくは、鋼材料から作製されるが、十分な強度の別の好適な材料(例えば、アルミニウム又は強化プラスチック)から作製され得る。ストッパ162は、一手法では、略球形の形状を有する。しかしながら、ストッパ162は、他の手法(図示せず)では卵形又は略円筒形を有することができる。ストッパ162はまた、シール160の遠位端部161に隣接する近位端部163、及びロッド116に隣接する遠位端部164を画定する。
【0047】
図13A及び
図13Bに示されるように、シール160及びストッパ162は、2つの別個の異なる構成要素である。別の手法では、ストッパ162は、接着剤、溶接、若しくは機械的接続を介して固定されるように、又は単一ユニット(図示せず)として形成されるように、シール160に一体化され得る。シール160及びストッパ162は協働して、ガスチャンバ内の増大した圧力からのエネルギーをロッド116に向かって伝達する。シール160及びストッパ162は、結合された様式で協働するようにサイズ決定される。1つの手法では、
図13Cに示されるように、円筒形状を有するシール160の近位端部159及び遠位端部161は各々、半球状凹部又は凹状窪みを画定するように内側に窪んでいる。また、ストッパ162の近位端部163は、シール160及びストッパ162が互いに確実に結合されるように、シール160の窪んだ遠位端部161に嵌合する凸形状を有する。ロッド116は、チューブ114を通って進行し、チューブ114の曲率に従って曲がるために、チューブ114の幅よりもわずかに小さくサイズ決めされる。したがって、シール160がなければ、ガス発生器104からのガスは、ロッド116とチューブ114との間に画定された半径方向の空間内でロッド116を通過して流れる。
【0048】
図14、
図14A、及び
図14Bを参照すると、シート構造体の限られた空間に配置するためのリトラクタアセンブリ100のコンパクトなサイズ(より小さいサイズ)のために、本開示によるプリテンショナチューブ114は、プリテンショナチューブ114が本体部分166及びチューブ114の出口領域に画定された出口部分168を含むように、チューブ114の出口領域で曲がるように形成される。更に、プリテンショナチューブ114は、ガス発生器104と流体連通している第1のチューブ端部111及びハウジング120の内部キャビティ141と流体連通している第2のチューブ端部113を含む。チューブ114の第2のチューブ端部113は、チューブ114を出るロッド116がピニオン126に係合するように、PTカップ144内の弓形ランディング面150の第1の端部149に向かって延在する。
【0049】
図4及び
図14において、プリテンショナチューブ114の出口部分168は、チューブ114の出口部分168がハウジング120の内側部分119の内側に配置されるように、チューブ114の第2のチューブ端部113から延在する。更に、プリテンショナチューブ114は、ストッパ162がチューブ114から出るのを防止するために、第2のチューブ端部113に小さい傾斜(図示せず)を備えて形成されている。
図14A及び
図14Bに示されるように、チューブ114の出口部分168は、チューブ114の出口部分168とピニオン126との間の空間を最小限にするようにピニオン126の周りを部分的に巻き付き、その結果、チューブ114を出るロッド116は、ピニオン126に緊密に係合される。チューブ114の出口部分168において、チューブ114は、ピニオン126に面する開口側173と、PTカップ144内の弓形ランディング面150に接触するカバー側174とを備えて形成されており、これにより、出口部分168のカバー側174は、ピニオン126との係合のために開口側173から出るロッド116を支持する(
図14A及び
図14Bを参照)。カバー側174がピニオン126(
図14Bを参照)の周りに巻き付くことにより、ハウジング120の内側の内部キャビティ141の空間は、プリテンショナの作動中又はシートベルトのプリテンション中にロッド116の変形が防止されるように低減される。
【0050】
加えて、プリテンショナチューブ114は、プリテンション中にチューブ114を支持するために第2のチューブ端部113に隣接して取り付けられた装着ブラケット170を更に含む。チューブ114の外面に溶接された装着ブラケット170は、PTカップ144に形成されたスロット143に係合する。更に、溶接された装着ブラケット170はまた、プリテンショナシステム112がフレームアセンブリ107に取り付けられるときにフレーム106に係合し、その結果、プリテンショナチューブ114が固定され、また、プリテンショナの作動中又はシートベルトのプリテンション中に支持される。更に、チューブ114の出口部分168は、出口部分168の端部に形成されたTタブ172を含み、これは、弓形ランディング面150の第1の端部149と第2の端部151との間の中間部分に位置する。
図14及び
図14Aに示すように、Tタブ172はまた、プリテンショナシステム112がフレームアセンブリ107と組み立てられたときにフレーム106及びハウジング120に係合し、その結果、プリテンショナチューブ114がプリテンションをかけている間に固定され、支持される。
【0051】
ある手法では、
図13A及び
図13Bの例に示されるように、球形ストッパ162が、小さい傾斜を備えて形成されたチューブ114の内側で使用される場合、球形ストッパ162は、チューブ114から出ることを防止される。別の手法では、円筒形状を有するストッパを使用する場合、
図14Bに示すように、チューブ114が急激に曲がっているため、チューブ114の円弧形状領域167を通過させるためには、円筒形状のストッパの長さを非常に短くする必要がある。例えば、円筒形ストッパ(図示せず)は、わずか3~4mmの長さであり、かつまた、円筒形ストッパがチューブ114の円弧形状領域167を通過するのを容易にするために複数の戻り止めを備えて形成される。
【0052】
プリテンショナの作動中及びシートベルトにプリテンションをかけている間に、プリテンションをかけることをトリガする事象中に乗員によって引き起こされるシートベルトへの張力が、プリテンションをかける回転とは反対の方向にスピンドルを回転させ得る、ペイバックとして知られる副作用が存在し得る。この回転はピニオン及び駆動要素に伝達され、駆動要素をチューブ内で逆方向に進行させる。ペイバックは、プリテンショナチューブ内の圧力を維持することによって対抗され得るが、これは、ガス発生器がより長い期間にわたって点火すること及び追加の推進剤を必要とする。
【0053】
しかしながら、本明細書で説明されるプリテンショナシステム112の好ましい実施形態は、維持されたガス圧力の代替として、又はそれに加えて、上述のペイバック副作用に対抗するように構成される特徴を含む。上述したように、ロッド116は、好ましくは、ポリマーなどの塑性変形可能な材料で作製される。
図12A、
図12B、及び
図12Cに戻って参照すると、プリテンショナシステム112の作動中、ロッド116は、チューブ114を出て、ピニオン126のベーン138に接触し、ピニオン126を回転させる。ロッド116がピニオン126を通過し続けてそれを回転させると、ベーン138の追加のベーンがロッド116の側に接触し、ベーン138とロッド116との間の干渉領域においてロッドを圧縮して塑性変形させる。この圧縮はまた、ロッド116をPTカップ144に対して圧縮させ、ピニオン126とPTカップ144との間にロッド116の圧入構成を生み出す。更に、ベーン138によって引き起こされるロッド116の塑性変形は、ピニオン126が反対の方向に回転することを防止するか、又は実質的に制限し、それによって、ペイバックを防止するか、又は実質的に制限する。
【0054】
様々な上記実施形態を説明してきたが、次に、プリテンショナシステム112の一般的な機能について説明する。プリテンショナシステム112は、ロッド116が、好ましくは、
図13Aに示されるように、シール160及びストッパ162に隣接してチューブ114内に位置決めされる、第1の、初期、又は公称状態を有する。シール160及びストッパ162は、ロッド116の上流に位置決めされ、ストッパ164は、シール160とロッド116との間に配設される。ガス発生器104は、ガスチャンバがガス発生器104とシール160との間に画定されるように、チューブ114の端部に取り付けられる。
【0055】
プリテンションを作動させる事象又は信号に応答して、ガス発生器104はガスをガスチャンバ内に放出する。チャンバ内の圧力の増加により、シール160、ストッパ162、及びロッド116がガス発生器104から離れる方向に、かつチューブ114によって画定された経路に沿って押しやられる。ロッド116のテーパ部分(遠位端部)117は、ピニオン126に向かって並進し、最終的にピニオン126のベーン138のうちの1つに接触し、その後、複数のベーン138に接触する。ベーン138に対して加えられるロッド116からの力は、ピニオン126をその回転軸の周りに回転させ、それによって最終的に、シートベルトウェビング14をスピンドル101の周りにその初期、公称位置に対して巻き取る。もちろん、第1の位置と第2の位置との間に中間位置が存在する。
【0056】
ロッド116の近位端部は、最初に、
図13Aに示されるように、シール160及びストッパ162に隣接して位置決めされる。ガス発生器104の作動に応答して、シール160及びストッパ162の力がロッド116に伝達される。この力は、応答して、ロッド116の近位端部を部分的に変形させ、かつまた、ロッド116は、作動中にチューブ114を通って進行する。更に、ロッド116は、PTカップ144のランディング面150に対応する弓形経路内に向けられるように駆動され続け、更に、ロッド116は、ガイドプレート142の傾斜面154に対応するガイド経路152を介して、内側部分119から外側部分121に向かって移動する。ロッド116は、ピニオン126がPTカップ144の弓形ランディング面150に沿って並進する際に、ピニオン216を回転させ続ける。ロッド116の遠位端部は、最終的に、
図13Bに示すように、ハウジング120の外側部分121に形成されたオーバーフロー経路156内に進行する。ピニオン126は、ロッド116の主本体部分115とピニオン126との間の係合によって駆動され続ける。ロッド116がピニオン126から部分的に係合解除された状態で、ロッド116はロック位置にある(
図12Aを参照)。ロック位置にある間、ロッド116はピニオン126のベーン138に係合しているので、ロッド116は逆方向に移動することが防止される。
【0057】
作動中、シール160及びストッパ162もチューブ114に沿って進行し、これらの構成要素の進行は、チューブ114を通してロッド116を駆動するのを支援する。ロッド116のロック位置では、シール160及びストッパ162は、ロッド116がピニオン126と接触する抵抗を受けるときに、ロッド116からの背圧を受ける。したがって、シール160は、ロッド116のロック位置において周方向に拡張された状態を有する。更に、ロッド116が経路に沿って十分に遠くまで進行する場合、シール160及びストッパ162は、出口部分168に向かってチューブ114を通って進行し続ける。したがって、
図13Bに示すように、ストッパ162がチューブ端部113の内径よりも大きい直径を有するため、ストッパ162(シール160も含む)がチューブ114の出口部分168を通過することが防止される。
【0058】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態を構成するが、本発明は、添付の特許請求の範囲の適切な範囲及び公正な意味から逸脱することなく、修正、変形及び変更が可能であることが理解されよう。
【国際調査報告】