(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】車両の前後方向制御のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241128BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20241128BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/10
B60W60/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531594
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022082611
(87)【国際公開番号】W WO2023099260
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021213483.1
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】595007530
【氏名又は名称】ロバート ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】フスキク、 ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】オヴェイシ、 アッタ
(72)【発明者】
【氏名】フルシヒ、 アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロザーメル、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ボエシ、 ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ケンプフ、 アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】クーン、 クラウス-ピーター
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA16
3D241BB27
3D241DB02Z
3D241DB05Z
(57)【要約】
本発明は、車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(Pk)を指定する目標軌道(Tsoll)の関数として車両(1)の前後方向制御を行うための方法に関する。車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて、軌道制御のための作動加速度(actrl_trj)が決定され、それにより車両(1)は目標軌道(Tsoll)の指定に従って加速させられる。車両(1)の実際の速度(vist)と、目標軌道(Tsoll)に追従するときに超えてはならない既定の最大速度(vmax)とに基づいて、速度制御のための作動加速度(actrl_v)を決定し、それにより車両(1)は最大速度(vmax)で誘導されるように加速させられる。両方の作動加速度(actrl_trj,actrl_v)は、アービタ(5.3)に供給され、アービタ(5.3)は、それらを使用して、結果として生じる作動加速度(actrl)を決定し、それによって、車両は、結果として生じる作動加速度(actrl)に従って加速させられる。本発明は、車両(1)の前後方向制御を行うための装置(2)にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(P
k)を指定する目標軌道(T
soll)の関数として前記車両(1)の前後方向制御を行うための方法であって、
前記車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて、軌道制御のための作動加速度(a
ctrl_trj)を決定するステップであって、それにより前記車両(1)は前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速させられるステップと、
前記車両(1)の実際の速度(v
ist)と、前記目標軌道(T
soll)に追従するときに超えてはならない既定の最大速度(v
max)とに基づいて、速度制御のための作動加速度(a
ctrl_v)を決定するステップであって、それにより前記車両(1)は前記最大速度(v
max)で誘導されるように加速させられるステップと、
両方の作動加速度(a
ctrl_trj、a
ctrl_v)をアービタ(5.3)に供給するステップであって、前記アービタはこれらから結果として生じる作動加速度(a
ctrl)を決定するステップと、
前記結果として生じる作動加速度(a
ctrl)に従って前記車両(1)を加速させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記作動加速度(a
ctrl_trj)を決定する際に、前記目標軌道(T
soll)の曲率(K)が考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既定の最大速度(v
max)は、
最大軌道速度(v
max_orth)、
法的に許容される最大速度(v
max_legal)、及び
絶対的なシステム定義の最大速度(v
max_sys)
のうちの最小値から決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記最大軌道速度(v
max_orth)は、
前記車両(1)の実際の位置(P
ist)における前記目標軌道(T
soll)において指定された局所基準速度(v
refPtOrth)、及び
前記車両(1)の前記実際の位置(P
ist)における前記目標軌道(T
soll)の曲率(K)及び前記実際の速度(v
ist)の関数としての前記局所基準速度(v
refPtOrth)の最大許容偏差(Δv)
の和から決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記車両(1)の前記実際の状態(Z)は、少なくとも前記車両(1)の前記実際の速度(v
ist)、実際の加速度(a
ist)及び/又は実際の位置(P
ist)から形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記目標軌道(T
soll)が軌道コントローラ(5.2)に供給され、それにより前記車両(1)は、コントローラ作動加速度(a
ctrl)を使用して前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速され、
前記結果として生じる作動加速度(a
ctrl)は、加速度制御ユニット(6)に供給され、前記加速度制御ユニット(6)は、前記軌道コントローラ(5.2)の下位にあり、かつ前記車両(1)の実加速度を制御及び/又は調整する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記結果として生じる作動加速度
(a
ctrl)が負の値を取るとき、前記車両(1)は減速させられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(P
k)を指定する目標軌道(T
soll)の関数として前記車両(1)の前後方向制御を行うための装置(2)であって、
軌道コントローラ(5.2)であって、与えられた目標軌道(T
soll)を用いて、前記車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて軌道制御のための作動加速度(a
ctrl_trj)を決定し、それにより前記車両(1)は前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速させられる、軌道制御ユニット(5.2)と、
速度コントローラ(5.1)であって、前記車両(1)の実際の速度(v
ist)と、前記目標軌道(T
soll)に追従するときに超えてはならない既定の最大速度(v
max)とに基づいて、速度制御のための作動加速度(a
ctrl_v)を決定し、それにより前記車両(1)は前記最大速度(v
max)で誘導されるように加速させられる、前記速度コントローラ(5.1)と、
アービタ(5.3)であって、決定された2つの作動加速度(a
ctrl_trj、a
ctrl_v)に基づいて結果として生じる作動加速度(a
ctrl)を決定する前記アービタ(5.3)と、
前記軌道コントローラ(5.2)の下位にある加速度制御ユニット(6)であって、前記結果として生じる作動加速度(a
ctrl)に従って前記車両(1)を加速させる加速度制御ユニット(6)と
を備える、装置(2)。
【請求項9】
前記加速度制御ユニット(6)は、車両制動システムである、請求項8に記載の装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後方向制御のための方法に関する。
【0002】
本発明は、車両の前後方向制御のための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
DE102017010180B3には、前後方向動的事前制御設定値変数及び前後方向動的制御誤差変数から下位の加速度制御ユニットのための前後方向加速度制御信号を生成する前後方向位置コントローラによって車両の前後方向位置を制御するための装置及び方法が開示されている。現在の時点に対応する現在の制御基準点及び事前決定可能な先読み時点に対応する以前の制御基準点が、制御関連時点として決定される。各制御基準点について、前後方向位置、運転速度及び加速度の現在の又は予測される実際/目標偏差が決定され、前後方向動的制御誤差変数を形成するための基礎として使用される。さらに、各制御基準点について目標加速度値が決定され、前後方向動的事前制御目標値を形成するための基礎として使用される。前後方向動的事前制御設定値は、制御基準点について決定された加速度設定値を重み付けして加算することによって形成される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、車両の前後方向制御を行うための新規な方法及び装置を提供することにある。
【0005】
本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法及び請求項8に記載の特徴を有する装置によって目的が達成される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
車両が経時的に取るべき一連の目標位置を指定する目標軌道の関数として車両の前後方向制御を行うための本発明による方法において、軌道制御のための作動加速度が、車両の実際の状態に基づいて決定され、これにより車両は目標軌道の指定に従って加速させられる。車両の実際の速度と、目標軌道に追従するときに超えてはならない指定された最大速度とに基づいて、速度制御のための作動加速度が決定され、それにより車両は最大速度で誘導されるように加速させられる。両方の作動加速度は、アービタに供給され、アービタは、それらを使用して、結果として生じる作動加速度を決定し、それによって、車両は、結果として生じる作動加速度に従って加速させられる。
【0008】
自動化された、特に高度に自動化された又は自律走行する車両の軌道制御は、自動運転機能を実現するための基本的な前提条件である。これは、環境検出システムからのデータに基づいて、車両が将来どのような動作を実行すべきかを決定することを含む。この決定の結果は、例えば、道路上の車両の位置を経時的にマッピングし、既知の車両環境における移動基準の役割を果たす軌道である。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな縦方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置における軌道指定は、車両が現在位置している道路上の実際の位置における軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。
【0009】
例えば、車両の自動制御を目的とした制御ループは、様々なシステム制限を考慮しなければならない複雑なシステムである。このようなシステムでは、速度制限が特に重要な役割を果たす。例えば、130km/h未満の規定の最大速度がシステム制限として車両に指定されると同時に、法的な速度制限を考慮しなければならない。さらに、指定された目標軌道に格納された軌道速度からの最大許容偏差が指定されてもよい。特に、車両の実際の位置と目標軌道から導出される目標位置との間にずれがある場合には、これらの制限を遵守し、かつ正確に分類する必要がある。
【0010】
本方法によって、目標軌道に従って関連する時間に計画位置を達成することを目的として、信頼性の高い軌道制御を実現することができるように、上記の制限を全て考慮することが可能である。軌道制御の目標値として指定された作動加速度及び/又は速度制御のための作動加速度は、実際の位置の指定と一致しない場合、結果として生じる作動加速度によって制限される。これは、例えば、前後方向の位置制御誤差が蓄積された場合等であり得る。
【0011】
車両の自動運転に対する従来のアプローチでは、速度制限が一般的に軌道制御と並行して行われ、常に制御品質に影響を与えるのに対し、本方法では、速度制限に達する直前にのみ制限を起動することができる。その結果、この時点まで制御品質を維持することができる。それにもかかわらず、制限速度の超過を確実に防止するために十分に早い段階で起動を行うことができる。
【0012】
これは、複雑な自動化車両における制限速度又は制約速度が、実際の位置と目標位置との間にずれがあっても、本方法を用いて確実に遵守され、かつ正しく分類されることを意味する。速度制約は、常に軌道制御に影響するのではなく、速度制限又は速度制約に違反するリスクがある場合にのみ影響する。
【0013】
本方法の可能な一実施形態では、作動加速度を決定する際に、目標軌道の曲率が考慮される。このようにして、安全な軌道制御を実現することができる。
【0014】
本方法の可能な別の実施形態では、指定された最大速度は、最大軌道速度、法的に許容される最大速度及び絶対的なシステム定義の最大速度の最小値から決定される。これにより、指定された最大速度の特に信頼性の高い決定が可能となる。
【0015】
本方法の可能な別の実施形態では、最大軌道速度は、車両の実際の位置における目標軌道において指定された局所基準速度と、車両の実際の位置における目標軌道の曲率及び実際の速度の関数としての局所基準速度の最大許容偏差との和から決定される。これにより、車両の実際の位置と目標位置との間に大きなずれがある場合でも、実際の位置における作動加速度を確実に制限することが可能となる。
【0016】
本方法の可能な別の実施形態では、車両の実際の状態は、少なくとも車両の実際の速度、実際の加速度及び/又は実際の位置から形成される。これらの変数を用いて実際の状態を非常によくマッピングすることができるため、軌道制御のための作動加速度を確実に決定することができる。
【0017】
本方法の別の可能な実施形態では、目標軌道は軌道コントローラに供給され、それによって、コントローラ作動加速度を使用して車両は目標軌道の指定に従って加速させられる。結果として生じる作動加速度は、軌道コントローラの下位にあり、かつ車両の実加速度を制御及び/又は調整する加速度コントローラに供給される。
【0018】
本方法の別の可能な実施形態では、結果として生じる作動加速度が負の値を取る場合に、車両が減速される。これにより、車両の減速、したがって、車両の特に安全な運転が可能となる。
【0019】
本発明に係る目標軌道の関数として車両の前後方向制御を行うための装置は、軌道コントローラを備えており、目標軌道は、経時的に車両が取るべき一連の目標位置を指定するものであり、軌道コントローラは、供給された目標軌道を用いて、車両の実際の状態に基づいて軌道制御のための作動加速度を決定し、これによって、目標軌道の指定に従って車両が加速させられる。さらに、装置は、速度コントローラを備えており、これは、車両の実際の速度と、目標軌道に追従するときに超えてはならない既定の最大速度とに基づいて、速度制御のための作動加速度を決定し、それにより車両は最大速度で誘導されるように加速させられる。さらに、装置は、決定された2つの作動加速度を用いて結果として生じる作動加速度を決定するアービタと、軌道コントローラの下位にあり、かつ結果として生じる作動加速度に従って車両を加速させる加速度制御ユニットとを備える。
【0020】
本装置は、目標軌道に従って関連付けられた時間に計画された位置に到達することを目的とした確実な軌道制御を可能にする。目標値として指定された軌道制御のための作動加速度及び/又は速度制御のための作動加速度は、実際の位置の指定と一致しない場合、結果として生じる作動加速度によって制限され得る。これは、例えば、前後方向の位置制御誤差が蓄積された場合等であり得る。
【0021】
車両の自動運転に対する従来のアプローチでは、速度制限が一般的に軌道制御と並行して行われ、常に制御品質に影響を与えるのに対し、本装置では、速度制限に達する直前にのみ制限を起動することができる。その結果、この時点まで制御品質を維持することができる。それにもかかわらず、制限速度が超過しないことを確実にするために十分に早い段階で起動を行うことができる。制限速度に達する直前に制限が起動されると、軌道コントローラは速度制限に切り替わるか、又は既存の作動加速度をオーバライドする。したがって、軌道コントローラは、自動化車両の軌道制御のための完全なソリューションを実現するために使用することができる。
【0022】
これは、実際の位置と目標位置との間にずれがある場合でも、複雑な自動化車両の速度制限又は速度制約を確実に遵守し、かつ正確に分類するために装置を使用することができることを意味する。速度制約は、常に軌道制御に影響するのではなく、速度制限又は速度制約に違反するリスクがある場合にのみ影響する。
【0023】
本装置の可能な実施形態では、加速度制御ユニットは、車両制動システムである。これは、結果として生じる作動加速度を簡単かつ確実に調整するために使用することができる。
【0024】
本発明の実施形態の例を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】車両が実際の位置及び目標位置にある交通状況の概略平面図である。
【
図3】車両の前後方向制御を行うための装置の概略ブロック図である。
【
図4】車両の速度コントローラの概略ブロック図である。
【
図5】車両の軌道制御と速度制御とを調停するアービタの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
対応する部分には、全ての図において同じ参照符号が付されている。
【0027】
図1は、車両1が実際の位置P
ist及び目標位置P
kにあり、いくつかの軌道区間T
soll1~T
soll3を有する目標軌道T
sollを有する交通状況の平面図である。
【0028】
車両1は、自動運転、特に高度に自動化された運転又は自律運転を行うように設計されている。このような自動運転機能を実現するためには、軌道制御が大前提となる。
【0029】
この軌道制御では、
図3に詳細に示す環境検出システムからのデータUDに基づいて、車両1が将来どのような行動を取るべきかを決定する。この決定の結果が目標軌道T
sollであり、これは、例えば、時間tにわたる車両1の道路上の位置を表し、既知の車両環境における移動基準となる。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな縦方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置P
kにおける軌道指定は、車両1が現在位置している道路上の実際の位置P
istにおける軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。
【0030】
環状交差点を例に取ると、自動化車両1の実際の位置Pistは、目標位置Pkの後方にあることを示している。実際の位置Pistは環状交差点内にあるが、目標位置Pkは、環状交差点を離れた後で、既に環状交差点の外側にある。
【0031】
図2は、時間tの関数としての車両1の速度vの進行を示しており、速度vは、最大軌道速度v
max_orth、法的に許容される最大速度v
max_legal、絶対的なシステム定義の最大速度v
max_sys、及び目標軌道T
sollから導出される目標速度v
sollを含む。
【0032】
目標速度vsollと共に目標軌道Tsollに割り当てられた速度プロファイルによれば、車両1は、軌道区間Tsoll2では、環状交差点内を低い定速vで走行し、高い速度vに達するまで、環状交差点の後の軌道区間Tsoll3でより強く加速することが意図されている。軌道区間Tsoll3を対象とした速度プロファイルは、軌道区間Tsoll2の道路形状での使用には適していない。
【0033】
しかしながら、
図1に示すように、時間基準点、すなわち、軌道区間T
soll3における目標位置P
kと、局所基準点、すなわち、軌道区間T
soll2における実際の位置P
istとが離れているため、車両1が環状交差点内で軌道区間T
soll2に位置し、かつ自動的に加速するリスクがある。これは、時間基準点が既にはるか先に、この場合、軌道区間T
soll3において環状交差点の後の直線上にあるためである。
【0034】
図3は、車両1の前後方向制御を行うための装置2の可能な実施形態のブロック図である。
【0035】
装置2は、環境検出センサシステム4によって記録されたデータUDに基づいて目標軌道Tsollを計画する軌道計画モジュール3.1を有する第1の演算ユニット3を備える。
【0036】
実際の位置P
istが目標位置P
kから逸脱した場合、自動運転モードで車両1が未調整速度vで移動するという
図1及び
図2に示された課題を解決するために、目標軌道T
sollは、速度コントローラ5.1、軌道コントローラ5.2及びアービタ5.3を備えたさらなる計算ユニット5に供給される。
【0037】
軌道コントローラ5.2によって実行される軌道制御と速度コントローラ5.1によって実行される速度制限は並列に実行され、両方のコントローラの出力を調整する必要がある。
【0038】
軌道制御ユニット5.2は、与えられた目標軌道Tsollを用いて、車両1の実際の状態Zに基づいて軌道制御のための作動加速度actrl_trjを決定し、それによって車両1は目標軌道Tsollの指定に従って加速させられる。車両1の実際の状態Zは、例えば、車両1の実際の速度vist、実際の加速度aist、及び実際の位置Pistによって特徴付けられる。
【0039】
さらに、速度コントローラ5.1は、
図4に詳細に示すように、速度制御のための作動加速度a
ctrl_vを決定するために用いられ、それにより車両1は最大速度v
maxで誘導されるように加速させられる。
【0040】
決定された2つの作動加速度actrl_trj,actrl_vはアービタ5.3に供給され、アービタはそれらを用いて結果として生じる作動加速度actrlを決定する。
【0041】
結果として生じる作動加速度actrlは、軌道コントローラ5.2の下位にある加速度制御ユニット6に供給され、それは結果として生じる作動加速度actrlに従って車両1を加速させる。加速度制御ユニット6は、例えば、車両制動システムである。
【0042】
これは、車両1が目標軌道Tsollに追従するように軌道制御によって制御され、アービタ5.3と共に速度制限によって車両1が規定速度制限内に維持されることを意味する。
【0043】
図4は、
図3に示す速度制御部5.1の可能な実施形態のブロック図である。
【0044】
速度コントローラ5.1は、特性曲線5.1.1、乗算器5.1.2、制限ユニット5.1.3及び制御ユニット5.1.4を備えており、特に測定された車両1の実際の速度vist及び目標軌道Tsollに追従する際に超えてはならない既定の最大速度vmaxに基づいて、速度制御のための作動加速度actrl_vを決定し、これによって車両1は最大速度vmaxで誘導されるように加速させられる。
【0045】
最大速度vmaxは、最小の最大軌道速度vmax_orth、法的に許容される最大速度vmax_legal及び絶対的なシステム定義の最大速度vmax_sysから制限ユニット5.1.3を用いて計算される。
【0046】
最大軌道速度vmax_orthは、指定された目標軌道Tsollに格納され、かつ車両1の実際の位置Pistについて指定された局所基準速度vrefPtOrthと、特性曲線5.1.1の実際の位置Pistにおける目標軌道Tsollの曲率K及び実際の速度vistの関数としての局所基準速度vrefPtOrthの最大許容偏差Δvとから決定される。特性曲線5.1.1において、偏差Δvを特徴付けるパーセンテージ%vが二次元関数として決定される。ここで、このパーセンテージ%vは曲率K及び実際の速度vistに反比例する。パーセンテージ%vは、許容偏差Δvを形成する局所基準速度vrefPtOrthのパーセンテージを示す。偏差Δv及び局所基準速度vrefPtOrthの和が、実際の位置Pistにおける最大軌道速度vmax_orthとなる。
【0047】
例えば、局所基準速度vrefPtOrthが130km/hの場合、5%のパーセンテージ%vが許容され、許容される偏差Δvは6.5km/hとなる。例えば、局所基準速度vrefPtOrthが30km/hの場合、20%のパーセンテージ%vが許容され、許容される偏差Δvは6km/hとなる。これらのパーセンテージ%vは、例えば、直線区間に適用され、例えば、急カーブにおける曲率Kの増加に伴って減少する。
【0048】
局所基準速度v
refPtOrthに基づくこのような制限は、実際の位置Pistと目標位置P
kとの間に大きなずれがあっても、目標速度v
sollを実際の位置P
istでそれに応じて制限できるという利点がある。これは、
図1及び
図2に、車両1が環状交差点を走行する例を用いて示されており、ここでは、設定点指定はより高い速度vを期待するが、局所基準速度v
refPtOrthから導出される最大軌道速度v
max_orthは、車両1がより速く走行することを許容しない。
【0049】
次に、制御ユニット5.1.4は、実際の速度vistと最大速度vmaxとの差を最小化するために、すなわち、最大速度vmaxに到達して、その値を維持するために必要な作動加速度actrl_vを計算する。
【0050】
図5は、
図3に示すような、車両1の軌道制御と速度制御との間の調停を行うアービタ5.3の可能な設計例のブロック図を示す。
【0051】
この目的のために、アービタ5.3は、クロスフェードモジュール5.3.1、特性曲線5.3.2、比較器5.3.3、切替スイッチ5.3.4、及び制限ユニット5.3.5を備える。
【0052】
クロスフェードモジュール5.3.1における軌道コントローラ5.2及び速度コントローラ5.1の出力は、例えば、min関数、ファジー関数又は他の適切な関数でクロスフェードされ、クロスフェードされた作動加速度actrl_v_trjは、作動加速度actrl_v、actrl_trjから形成される。速度制限が起動している場合に、クロスフェードされた作動加速度actrl_v_trjのみが、切替スイッチ5.3.4を介して制限ユニット5.3.5に渡される。そうでない場合には、軌道制御のみがアービタ5.3の出力に接続される。
【0053】
速度制限が作動しているかどうかを決定するために、速度オフセットvoffsetは、特性曲線5.3.2を使用して実際の速度vistの関数として決定され、この速度オフセットvoffsetは、実際の速度vistから減算される。結果として生じる値は、最大速度vmaxから減算され、これにより得られた値は、実際の速度vistと共に比較器5.3.3に供給される。実際の速度vistが減算の結果以上である場合、比較器5.3.3は、速度制限が作動していることを示す0より大きい信号を出力する。実際の速度vistが減算の結果未満である場合、比較器5.3.3は、速度制限が作動していないことを示す0である信号を出力する。
【0054】
速度オフセットvoffsetは、実際の速度vistの関数であり、特に、車両1の動的特性にも依存する。速度オフセットvoffsetは、例えば、実験的に決定され、ルックアップテーブルの形式で実装され得る。
【0055】
このようなアービタ5.3の機能によれば、例えば、作動加速度actrl_trjのmin関数のみをアービトレーションとして用いた場合のように、速度制御が常に起動されるわけではないという利点がある。その代わり、速度制御は最大速度vmaxに達する直前にのみ起動されるため、軌道制御は大部分にわたり起動され得る。早い段階で速度制御が起動されるため、最大速度vmaxを超えることを安全に回避することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
2 装置
3 演算ユニット
3.1 軌道計画モジュール
4 環境検出センサシステム
5 演算ユニット
5.1. 速度コントローラ
5.1.1 特性曲線
5.1.2 乗算器
5.1.3 制限ユニット
5.1.4 制御ユニット
5.2 軌道コントローラ
5.3 アービタ
5.3.1 クロスフェードモジュール
5.3.2 特性曲線
5.3.3 比較器
5.3.4 スイッチ
5.3.5 制限ユニット
6 加速度制御ユニット
actrl 結果として生じる作動加速度
actrl_trj 作動加速度
actrl_v 作動加速度
actrl_v_trjfaded クロスフェードされた作動加速度
aist 実際の加速度
K 曲率
Pist 実際の位置
Pk 目標位置
t 時間
Tsoll 目標軌道
Tsoll1~Tsoll3 軌道区間
UD データ
v 速度
vist 実際の速度
vmax 最大速度
vmax_legal 許容最大速度
vmax_orth 最大軌道速度
vmax_sys 絶対的なシステム定義の最大速度
voffset変数 速度オフセット
vrefPtOral 基準速度
vsol 目標速度
Z 実際の状態
%v パーセンテージ
△v 偏差
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後方向制御のための方法に関する。
【0002】
本発明は、車両の前後方向制御のための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
DE102017010180B3には、前後方向動的事前制御設定値変数及び前後方向動的制御誤差変数から下位の加速度制御ユニットのための前後方向加速度制御信号を生成する前後方向位置コントローラによって車両の前後方向位置を制御するための装置及び方法が開示されている。現在の時点に対応する現在の制御基準点及び事前決定可能な先読み時点に対応する以前の制御基準点が、制御関連時点として決定される。各制御基準点について、前後方向位置、運転速度及び加速度の現在の又は予測される実際/目標偏差が決定され、前後方向動的制御誤差変数を形成するための基礎として使用される。さらに、各制御基準点について目標加速度値が決定され、前後方向動的事前制御目標値を形成するための基礎として使用される。前後方向動的事前制御設定値は、制御基準点について決定された加速度設定値を重み付けして加算することによって形成される。
【0004】
DE19509492A1には、自動車の速度を制限するための方法及び装置が開示されている。この方法は、実際の速度がまだ最大速度を下回っているが、最大速度を超える速度に対する運転者の要求が検出されるときにエンジントルクを制限するために介入する。この場合、加速制御システムの介入が最初に行われ、速度がさらに最大速度に近づくと、速度制御システムの介入が行われ、実際の速度を緩やかに設定された最大速度にすることができる。運転者が要求する速度が最大速度を下回る場合、運転応答は運転者のみによって決定されたままである。速度制限とクルーズコントロールとを組み合わせ、2つの操作モードのうちの1つを選択的に起動することが有利である。
【0005】
DE102011102435A1には、前後方向の運転支援システム及び自動車を動作させるための方法が開示されている。この方法は、制御データに応じて自動車の速度を制御し、制御データとして、及び自動車の制御中の駆動カーブを記述する直近カーブデータとしてのカーブデータを提供する。カーブデータはナビゲーション装置の道路コースデータから決定され、環境データは先見環境センサによって決定される。快適カーブ率は、カーブデータを考慮して決定される。快適カーブ率は、定義された位置でのカーブの最大曲率および所定の快適横加速度から決定される。自動車についての独立クレームも含まれる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、車両の前後方向制御を行うための新規な方法及び装置を提供することにある。
【0007】
本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法及び請求項6に記載の特徴を有する装置によって目的が達成される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
車両が経時的に取るべき一連の目標位置を指定する目標軌道の関数として車両の前後方向制御を行うための本発明による方法において、軌道制御のための作動加速度が、車両の実際の状態に基づいて決定され、これにより車両は目標軌道の指定に従って加速させられる。車両の実際の速度と、目標軌道に追従するときに超えてはならない指定された最大速度とに基づいて、速度制御のための作動加速度が決定され、それにより車両は最大速度で誘導されるように加速させられる。両方の作動加速度は、アービタに供給され、アービタは、それらを使用して、結果として生じる作動加速度を決定し、それによって、車両は、結果として生じる作動加速度に従って加速させられる。
【0010】
自動化された、特に高度に自動化された又は自律走行する車両の軌道制御は、自動運転機能を実現するための基本的な前提条件である。これは、環境検出システムからのデータに基づいて、車両が将来どのような動作を実行すべきかを決定することを含む。この決定の結果は、例えば、道路上の車両の位置を経時的にマッピングし、既知の車両環境における移動基準の役割を果たす軌道である。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな縦方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置における軌道指定は、車両が現在位置している道路上の実際の位置における軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。
【0011】
例えば、車両の自動制御を目的とした制御ループは、様々なシステム制限を考慮しなければならない複雑なシステムである。このようなシステムでは、速度制限が特に重要な役割を果たす。例えば、130km/h未満の規定の最大速度がシステム制限として車両に指定されると同時に、法的な速度制限を考慮しなければならない。さらに、指定された目標軌道に格納された軌道速度からの最大許容偏差が指定されてもよい。特に、車両の実際の位置と目標軌道から導出される目標位置との間にずれがある場合には、これらの制限を遵守し、かつ正確に分類する必要がある。
【0012】
本方法によって、目標軌道に従って関連する時間に計画位置を達成することを目的として、信頼性の高い軌道制御を実現することができるように、上記の制限を全て考慮することが可能である。軌道制御の目標値として指定された作動加速度及び/又は速度制御のための作動加速度は、実際の位置の指定と一致しない場合、結果として生じる作動加速度によって制限される。これは、例えば、前後方向の位置制御誤差が蓄積された場合等であり得る。
【0013】
車両の自動運転に対する従来のアプローチでは、速度制限が一般的に軌道制御と並行して行われ、常に制御品質に影響を与えるのに対し、本方法では、速度制限に達する直前にのみ制限を起動することができる。その結果、この時点まで制御品質を維持することができる。それにもかかわらず、制限速度の超過を確実に防止するために十分に早い段階で起動を行うことができる。
【0014】
これは、複雑な自動化車両における制限速度又は制約速度が、実際の位置と目標位置との間にずれがあっても、本方法を用いて確実に遵守され、かつ正しく分類されることを意味する。速度制約は、常に軌道制御に影響するのではなく、速度制限又は速度制約に違反するリスクがある場合にのみ影響する。
【0015】
さらに、指定された最大速度は、最大軌道速度、法的に許容される最大速度及び絶対的なシステム定義の最大速度の最小値から決定される。これにより、指定された最大速度の特に信頼性の高い決定が可能となる。
【0016】
さらに、最大軌道速度は、車両の実際の位置における目標軌道において指定された局所基準速度と、車両の実際の位置における目標軌道の曲率及び実際の速度の関数としての局所基準速度の最大許容偏差との和から決定される。これにより、車両の実際の位置と目標位置との間に大きなずれがある場合でも、実際の位置における作動加速度を確実に制限することが可能となる。
【0017】
本方法の可能な一実施形態では、作動加速度を決定する際に、目標軌道の曲率が考慮される。このようにして、安全な軌道制御を実現することができる。
【0018】
本方法の可能な別の実施形態では、車両の実際の状態は、少なくとも車両の実際の速度、実際の加速度及び/又は実際の位置から形成される。これらの変数を用いて実際の状態を非常によくマッピングすることができるため、軌道制御のための作動加速度を確実に決定することができる。
【0019】
本方法の別の可能な実施形態では、目標軌道は軌道コントローラに供給され、それによって、コントローラ作動加速度を使用して車両は目標軌道の指定に従って加速させられる。結果として生じる作動加速度は、軌道コントローラの下位にあり、かつ車両の実加速度を制御及び/又は調整する加速度コントローラに供給される。
【0020】
本方法の別の可能な実施形態では、結果として生じる作動加速度が負の値を取る場合に、車両が減速される。これにより、車両の減速、したがって、車両の特に安全な運転が可能となる。
【0021】
本発明に係る目標軌道の関数として車両の前後方向制御を行うための装置は、軌道コントローラを備えており、目標軌道は、経時的に車両が取るべき一連の目標位置を指定するものであり、軌道コントローラは、供給された目標軌道を用いて、車両の実際の状態に基づいて軌道制御のための作動加速度を決定し、これによって、目標軌道の指定に従って車両が加速させられる。さらに、装置は、速度コントローラを備えており、これは、車両の実際の速度と、目標軌道に追従するときに超えてはならない既定の最大速度とに基づいて、速度制御のための作動加速度を決定し、それにより車両は最大速度で誘導されるように加速させられる。既定の最大速度は、最大軌道速度、法的に許容される最大速度、及び絶対的なシステム定義の最大速度のうちの最小値から決定される。最大軌道速度は、車両の実際の位置における目標軌道において指定された局所基準速度、及び車両の実際の位置における目標軌道の曲率及び実際の速度の関数としての局所基準速度の最大許容偏差の和から決定される。さらに、装置は、決定された2つの作動加速度を用いて結果として生じる作動加速度を決定するアービタと、軌道コントローラの下位にあり、かつ結果として生じる作動加速度に従って車両を加速させる加速度制御ユニットとを備える。
【0022】
本装置は、目標軌道に従って関連付けられた時間に計画された位置に到達することを目的とした確実な軌道制御を可能にする。目標値として指定された軌道制御のための作動加速度及び/又は速度制御のための作動加速度は、実際の位置の指定と一致しない場合、結果として生じる作動加速度によって制限され得る。これは、例えば、前後方向の位置制御誤差が蓄積された場合等であり得る。
【0023】
車両の自動運転に対する従来のアプローチでは、速度制限が一般的に軌道制御と並行して行われ、常に制御品質に影響を与えるのに対し、本装置では、速度制限に達する直前にのみ制限を起動することができる。その結果、この時点まで制御品質を維持することができる。それにもかかわらず、制限速度が超過しないことを確実にするために十分に早い段階で起動を行うことができる。制限速度に達する直前に制限が起動されると、軌道コントローラは速度制限に切り替わるか、又は既存の作動加速度をオーバライドする。したがって、軌道コントローラは、自動化車両の軌道制御のための完全なソリューションを実現するために使用することができる。
【0024】
これは、実際の位置と目標位置との間にずれがある場合でも、複雑な自動化車両の速度制限又は速度制約を確実に遵守し、かつ正確に分類するために装置を使用することができることを意味する。速度制約は、常に軌道制御に影響するのではなく、速度制限又は速度制約に違反するリスクがある場合にのみ影響する。
【0025】
本装置の可能な実施形態では、加速度制御ユニットは、車両制動システムである。これは、結果として生じる作動加速度を簡単かつ確実に調整するために使用することができる。
【0026】
本発明の実施形態の例を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】車両が実際の位置及び目標位置にある交通状況の概略平面図である。
【
図3】車両の前後方向制御を行うための装置の概略ブロック図である。
【
図4】車両の速度コントローラの概略ブロック図である。
【
図5】車両の軌道制御と速度制御とを調停するアービタの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
対応する部分には、全ての図において同じ参照符号が付されている。
【0029】
図1は、車両1が実際の位置P
ist及び目標位置P
kにあり、いくつかの軌道区間T
soll1~T
soll3を有する目標軌道T
sollを有する交通状況の平面図である。
【0030】
車両1は、自動運転、特に高度に自動化された運転又は自律運転を行うように設計されている。このような自動運転機能を実現するためには、軌道制御が大前提となる。
【0031】
この軌道制御では、
図3に詳細に示す環境検出システムからのデータUDに基づいて、車両1が将来どのような行動を取るべきかを決定する。この決定の結果が目標軌道T
sollであり、これは、例えば、時間tにわたる車両1の道路上の位置を表し、既知の車両環境における移動基準となる。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな縦方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置P
kにおける軌道指定は、車両1が現在位置している道路上の実際の位置P
istにおける軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。
【0032】
環状交差点を例に取ると、自動化車両1の実際の位置Pistは、目標位置Pkの後方にあることを示している。実際の位置Pistは環状交差点内にあるが、目標位置Pkは、環状交差点を離れた後で、既に環状交差点の外側にある。
【0033】
図2は、時間tの関数としての車両1の速度vの進行を示しており、速度vは、最大軌道速度v
max_orth、法的に許容される最大速度v
max_legal、絶対的なシステム定義の最大速度v
max_sys、及び目標軌道T
sollから導出される目標速度v
sollを含む。
【0034】
目標速度vsollと共に目標軌道Tsollに割り当てられた速度プロファイルによれば、車両1は、軌道区間Tsoll2では、環状交差点内を低い定速vで走行し、高い速度vに達するまで、環状交差点の後の軌道区間Tsoll3でより強く加速することが意図されている。軌道区間Tsoll3を対象とした速度プロファイルは、軌道区間Tsoll2の道路形状での使用には適していない。
【0035】
しかしながら、
図1に示すように、時間基準点、すなわち、軌道区間T
soll3における目標位置P
kと、局所基準点、すなわち、軌道区間T
soll2における実際の位置P
istとが離れているため、車両1が環状交差点内で軌道区間T
soll2に位置し、かつ自動的に加速するリスクがある。これは、時間基準点が既にはるか先に、この場合、軌道区間T
soll3において環状交差点の後の直線上にあるためである。
【0036】
図3は、車両1の前後方向制御を行うための装置2の可能な実施形態のブロック図である。
【0037】
装置2は、環境検出センサシステム4によって記録されたデータUDに基づいて目標軌道Tsollを計画する軌道計画モジュール3.1を有する第1の演算ユニット3を備える。
【0038】
実際の位置P
istが目標位置P
kから逸脱した場合、自動運転モードで車両1が未調整速度vで移動するという
図1及び
図2に示された課題を解決するために、目標軌道T
sollは、速度コントローラ5.1、軌道コントローラ5.2及びアービタ5.3を備えたさらなる計算ユニット5に供給される。
【0039】
軌道コントローラ5.2によって実行される軌道制御と速度コントローラ5.1によって実行される速度制限は並列に実行され、両方のコントローラの出力を調整する必要がある。
【0040】
軌道制御ユニット5.2は、与えられた目標軌道Tsollを用いて、車両1の実際の状態Zに基づいて軌道制御のための作動加速度actrl_trjを決定し、それによって車両1は目標軌道Tsollの指定に従って加速させられる。車両1の実際の状態Zは、例えば、車両1の実際の速度vist、実際の加速度aist、及び実際の位置Pistによって特徴付けられる。
【0041】
さらに、速度コントローラ5.1は、
図4に詳細に示すように、速度制御のための作動加速度a
ctrl_vを決定するために用いられ、それにより車両1は最大速度v
maxで誘導されるように加速させられる。
【0042】
決定された2つの作動加速度actrl_trj,actrl_vはアービタ5.3に供給され、アービタはそれらを用いて結果として生じる作動加速度actrlを決定する。
【0043】
結果として生じる作動加速度actrlは、軌道コントローラ5.2の下位にある加速度制御ユニット6に供給され、それは結果として生じる作動加速度actrlに従って車両1を加速させる。加速度制御ユニット6は、例えば、車両制動システムである。
【0044】
これは、車両1が目標軌道Tsollに追従するように軌道制御によって制御され、アービタ5.3と共に速度制限によって車両1が規定速度制限内に維持されることを意味する。
【0045】
図4は、
図3に示す速度制御部5.1の可能な実施形態のブロック図である。
【0046】
速度コントローラ5.1は、特性曲線5.1.1、乗算器5.1.2、制限ユニット5.1.3及び制御ユニット5.1.4を備えており、特に測定された車両1の実際の速度vist及び目標軌道Tsollに追従する際に超えてはならない既定の最大速度vmaxに基づいて、速度制御のための作動加速度actrl_vを決定し、これによって車両1は最大速度vmaxで誘導されるように加速させられる。
【0047】
最大速度vmaxは、最小の最大軌道速度vmax_orth、法的に許容される最大速度vmax_legal及び絶対的なシステム定義の最大速度vmax_sysから制限ユニット5.1.3を用いて計算される。
【0048】
最大軌道速度vmax_orthは、指定された目標軌道Tsollに格納され、かつ車両1の実際の位置Pistについて指定された局所基準速度vrefPtOrthと、特性曲線5.1.1の実際の位置Pistにおける目標軌道Tsollの曲率K及び実際の速度vistの関数としての局所基準速度vrefPtOrthの最大許容偏差Δvとから決定される。特性曲線5.1.1において、偏差Δvを特徴付けるパーセンテージ%vが二次元関数として決定される。ここで、このパーセンテージ%vは曲率K及び実際の速度vistに反比例する。パーセンテージ%vは、許容偏差Δvを形成する局所基準速度vrefPtOrthのパーセンテージを示す。偏差Δv及び局所基準速度vrefPtOrthの和が、実際の位置Pistにおける最大軌道速度vmax_orthとなる。
【0049】
例えば、局所基準速度vrefPtOrthが130km/hの場合、5%のパーセンテージ%vが許容され、許容される偏差Δvは6.5km/hとなる。例えば、局所基準速度vrefPtOrthが30km/hの場合、20%のパーセンテージ%vが許容され、許容される偏差Δvは6km/hとなる。これらのパーセンテージ%vは、例えば、直線区間に適用され、例えば、急カーブにおける曲率Kの増加に伴って減少する。
【0050】
局所基準速度v
refPtOrthに基づくこのような制限は、実際の位置Pistと目標位置P
kとの間に大きなずれがあっても、目標速度v
sollを実際の位置P
istでそれに応じて制限できるという利点がある。これは、
図1及び
図2に、車両1が環状交差点を走行する例を用いて示されており、ここでは、設定点指定はより高い速度vを期待するが、局所基準速度v
refPtOrthから導出される最大軌道速度v
max_orthは、車両1がより速く走行することを許容しない。
【0051】
次に、制御ユニット5.1.4は、実際の速度vistと最大速度vmaxとの差を最小化するために、すなわち、最大速度vmaxに到達して、その値を維持するために必要な作動加速度actrl_vを計算する。
【0052】
図5は、
図3に示すような、車両1の軌道制御と速度制御との間の調停を行うアービタ5.3の可能な設計例のブロック図を示す。
【0053】
この目的のために、アービタ5.3は、クロスフェードモジュール5.3.1、特性曲線5.3.2、比較器5.3.3、切替スイッチ5.3.4、及び制限ユニット5.3.5を備える。
【0054】
クロスフェードモジュール5.3.1における軌道コントローラ5.2及び速度コントローラ5.1の出力は、例えば、min関数、ファジー関数又は他の適切な関数でクロスフェードされ、クロスフェードされた作動加速度actrl_v_trjは、作動加速度actrl_v、actrl_trjから形成される。速度制限が起動している場合に、クロスフェードされた作動加速度actrl_v_trjのみが、切替スイッチ5.3.4を介して制限ユニット5.3.5に渡される。そうでない場合には、軌道制御のみがアービタ5.3の出力に接続される。
【0055】
速度制限が作動しているかどうかを決定するために、速度オフセットvoffsetは、特性曲線5.3.2を使用して実際の速度vistの関数として決定され、この速度オフセットvoffsetは、実際の速度vistから減算される。結果として生じる値は、最大速度vmaxから減算され、これにより得られた値は、実際の速度vistと共に比較器5.3.3に供給される。実際の速度vistが減算の結果以上である場合、比較器5.3.3は、速度制限が作動していることを示す0より大きい信号を出力する。実際の速度vistが減算の結果未満である場合、比較器5.3.3は、速度制限が作動していないことを示す0である信号を出力する。
【0056】
速度オフセットvoffsetは、実際の速度vistの関数であり、特に、車両1の動的特性にも依存する。速度オフセットvoffsetは、例えば、実験的に決定され、ルックアップテーブルの形式で実装され得る。
【0057】
このようなアービタ5.3の機能によれば、例えば、作動加速度actrl_trjのmin関数のみをアービトレーションとして用いた場合のように、速度制御が常に起動されるわけではないという利点がある。その代わり、速度制御は最大速度vmaxに達する直前にのみ起動されるため、軌道制御は大部分にわたり起動され得る。早い段階で速度制御が起動されるため、最大速度vmaxを超えることを安全に回避することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 装置
3 演算ユニット
3.1 軌道計画モジュール
4 環境検出センサシステム
5 演算ユニット
5.1. 速度コントローラ
5.1.1 特性曲線
5.1.2 乗算器
5.1.3 制限ユニット
5.1.4 制御ユニット
5.2 軌道コントローラ
5.3 アービタ
5.3.1 クロスフェードモジュール
5.3.2 特性曲線
5.3.3 比較器
5.3.4 スイッチ
5.3.5 制限ユニット
6 加速度制御ユニット
actrl 結果として生じる作動加速度
actrl_trj 作動加速度
actrl_v 作動加速度
actrl_v_trjfaded クロスフェードされた作動加速度
aist 実際の加速度
K 曲率
Pist 実際の位置
Pk 目標位置
t 時間
Tsoll 目標軌道
Tsoll1~Tsoll3 軌道区間
UD データ
v 速度
vist 実際の速度
vmax 最大速度
vmax_legal 許容最大速度
vmax_orth 最大軌道速度
vmax_sys 絶対的なシステム定義の最大速度
voffset変数 速度オフセット
vrefPtOral 基準速度
vsol 目標速度
Z 実際の状態
%v パーセンテージ
△v 偏差
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(P
k)を指定する目標軌道(T
soll)の関数として前記車両(1)の前後方向制御を行うための方法であって、
前記車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて、軌道制御のための作動加速度(a
ctrl_trj)を決定するステップであって、それにより前記車両(1)は前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速させられるステップと、
前記車両(1)の実際の速度(v
ist)と、前記目標軌道(T
soll)に追従するときに超えてはならない既定の最大速度(v
max)とに基づいて、速度制御のための作動加速度(a
ctrl_v)を決定するステップであって、それにより前記車両(1)は前記最大速度(v
max)で誘導されるように加速させられるステップと、
両方の作動加速度(a
ctrl_trj、a
ctrl_v)をアービタ(5.3)に供給するステップであって、前記アービタはこれらから結果として生じる作動加速度(a
ctrl)を決定するステップと、
前記結果として生じる作動加速度(a
ctrl)に従って前記車両(1)を加速させるステップと
を含
み、
前記既定の最大速度(v
max
)は、最大軌道速度(v
max_orth
)、法的に許容される最大速度(v
max_legal
)、及び絶対的なシステム定義の最大速度(v
max_sys
)のうちの最小値から決定され、
前記最大軌道速度(v
max_orth
)は、前記車両(1)の実際の位置(P
ist
)における前記目標軌道(T
soll
)において指定された局所基準速度(v
refPtOrth
)と、前記車両(1)の前記実際の位置(P
ist
)における前記目標軌道(T
soll
)の曲率(K)及び前記実際の速度(v
ist
)の関数としての前記局所基準速度(v
refPtOrth
)の最大許容偏差(Δv)との和から決定される、方法。
【請求項2】
前記作動加速度(a
ctrl_trj)を決定する際に、前記目標軌道(T
soll)の曲率(K)が考慮される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(1)の前記実際の状態(Z)は、少なくとも前記車両(1)の前記実際の速度(v
ist)、実際の加速度(a
ist)及び/又は実際の位置(P
ist)から形成される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標軌道(T
soll)が軌道コントローラ(5.2)に供給され、それにより前記車両(1)は、コントローラ作動加速度(a
ctrl)を使用して前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速され、
前記結果として生じる作動加速度(a
ctrl)は、加速度制御ユニット(6)に供給され、前記加速度制御ユニット(6)は、前記軌道コントローラ(5.2)の下位にあり、かつ前記車両(1)の実加速度を制御及び/又は調整する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記結果として生じる作動加速度
(a
ctrl)が負の値を取るとき、前記車両(1)は減速させられる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(P
k)を指定する目標軌道(T
soll)の関数として前記車両(1)の前後方向制御を行うための装置(2)であって、
軌道コントローラ(5.2)であって、与えられた目標軌道(T
soll)を用いて、前記車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて軌道制御のための作動加速度(a
ctrl_trj)を決定し、それにより前記車両(1)は前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速させられる、軌道制御ユニット(5.2)と、
速度コントローラ(5.1)であって、前記車両(1)の実際の速度(v
ist)と、前記目標軌道(T
soll)に追従するときに超えてはならない既定の最大速度(v
max)とに基づいて、速度制御のための作動加速度(a
ctrl_v)を決定し、それにより前記車両(1)は前記最大速度(v
max)で誘導されるように加速させられ
、前記既定の最大速度(v
max
)は、最大軌道速度(v
max_orth
)、法的に許容される最大速度(v
max_legal
)、及び絶対的なシステム定義の最大速度(v
max_sys
)のうちの最小値から決定され、前記最大軌道速度(v
max_orth
)は、前記車両(1)の実際の位置(P
ist
)における前記目標軌道(T
soll
)において指定された局所基準速度(v
refPtOrth
)と、前記車両(1)の前記実際の位置(P
ist
)における前記目標軌道(T
soll
)の曲率(K)及び前記実際の速度(v
ist
)の関数としての前記局所基準速度(v
refPtOrth
)の最大許容偏差(Δv)との和から決定される、前記速度コントローラ(5.1)と、
アービタ(5.3)であって、決定された2つの作動加速度(a
ctrl_trj、a
ctrl_v)に基づいて結果として生じる作動加速度(a
ctrl)を決定する前記アービタ(5.3)と、
前記軌道コントローラ(5.2)の下位にある加速度制御ユニット(6)であって、前記結果として生じる作動加速度(a
ctrl)に従って前記車両(1)を加速させる加速度制御ユニット(6)と
を備える、装置(2)。
【請求項7】
前記加速度制御ユニット(6)は、車両制動システムである、請求項
6に記載の装置(2)。
【国際調査報告】