(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】リン含有シリコーンコアアクリルシェル衝撃改質剤
(51)【国際特許分類】
C08F 283/12 20060101AFI20241128BHJP
C08L 51/08 20060101ALI20241128BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08F283/12
C08L51/08
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532305
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022052069
(87)【国際公開番号】W WO2023107523
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、プ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス、モリス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BB011
4J002BC021
4J002BC031
4J002BD031
4J002BF021
4J002BG031
4J002BN151
4J002BN202
4J002CF001
4J002CG001
4J002CH001
4J002CK021
4J002CL001
4J002CP112
4J002CP172
4J002FD132
4J002FD202
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J026AB44
4J026BA05
4J026BA27
4J026BA41
4J026BB04
4J026DA04
4J026DA13
4J026DB04
4J026DB13
4J026FA02
4J026FA07
4J026GA02
(57)【要約】
(a)シリコーンポリマーを含むコアと、(b)シリコーンポリマーを含むシェルと、を含む多段ポリマー組成物が提供される。コア中のシリコーンポリマー及びシェル中のアクリルポリマーの少なくとも1つは、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む。そのようなポリマー組成物及びマトリックス樹脂を含むマトリックス樹脂組成物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段ポリマー組成物であって、
(a)シリコーンポリマーを含むコアと、
(b)アクリルポリマーを含むシェルと、を含み、
前記コア中の前記シリコーンポリマー及び前記シェル中の前記アクリルポリマーのうちの少なくとも1つは、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む、多段ポリマー組成物。
【請求項2】
前記有機リンモノマーは、ホスフェート官能基又はホスホネート官能基を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記コア中の前記シリコーンポリマーは、ホスホ-シランモノマーから誘導される重合単位を含む、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ホスホ-シランモノマーは、前記シリコーンポリマーの総重量に対して、0.1~10重量%の範囲の量で前記シリコーンポリマー中に存在する、請求項3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ホスホ-シランモノマーは、式Si(OR
2)
3-R
3-P(O)(OR
4)
2の化合物であり、式中、R
2及びR
4は、独立して、水素又はC
1~C
12アルキル基から選択され、R
3は、C
1~C
12アルキル基から選択される、請求項3又は4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
R
2、R
3、及びR
4は、独立して、C
1~C
6アルキル基から選択される、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記シェル中の前記アクリルポリマーは、有機リンモノマーから誘導される単位を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記有機リンモノマーは、前記アクリルポリマーの総重量に対して、0.5~20重量%の範囲の量で前記アクリルポリマー中に存在する、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記有機リンモノマーは、前記アクリルポリマーの総重量に対して、2~10重量%の範囲の量で前記アクリルポリマー中に存在する、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記シェル中の前記アクリルポリマー中の前記有機リンモノマーは、式CH
2=C(R
5)-C(O)-O-(R
6O)
n-P(O)(OH)
2の化合物であり、式中、R
5が、H又は-CH
3であり、R
6=アルキルであり、n=1~5である、請求項7~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
R
5が、-CH
3であり、R
6が、C
1~C
6アルキル基である、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記シリコーンポリマーは、前記多段ポリマーの総重量に基づいて、2~98重量%の量で存在し、前記アクリルポリマーは、前記多段ポリマーの総重量に基づいて、2~98重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
1つ以上のマトリックス樹脂と請求項1~12のいずれか一項に記載の多段ポリマー組成物とを混合することを含む、マトリックス樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、衝撃改質剤として有用な、リンを含有する多段ポリマー組成物に関する。より具体的には、組成物は、多段ポリマー中にシリコーンコア及びアクリルシェルを有する多段ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造では、製造の容易さ並びに軽量化、すなわち、製品の重量の低減を達成することが概して所望される。これらの目的の両方は、金属又はセラミックの使用と相対的に、プラスチックの使用を通して達成される。一方、製造された物品は、低燃焼性から無燃焼性を有することが、概して所望され、これは、金属又はセラミックの使用によって提供され、概して、プラスチックの使用によっては提供されない。
【0003】
最近、改善された(すなわち、より低い)レベルの燃焼性を有するプラスチック配合物が開発されている。概して、これらの配合物は、防滴性添加剤に加えて、高レベルの難燃性添加剤を含有する。これらの配合物は、UL(Underwriter Laboratories)によって指定された特定の基準を達成することができ、電気製品並びに自動車のボンネット下で使用するための物品の製造におけるそれらの使用を可能にする。
【0004】
これらのプラスチック配合物は、概して、実質的な衝撃強度の使用における要件を有する。しかしながら、より低い燃焼性を達成するために使用される添加剤は、典型的には、成形製品の衝撃強度を低下させる。これらの配合物にコアシェルポリマー衝撃改質剤を添加して、必要なレベルの衝撃強度を達成することが非常に一般的である。しかしながら、これらのコアシェル衝撃改質剤を作製するために使用されるポリマーは、非常に燃焼性であり得、配合物中で利用される量に直接相関して配合物の燃焼性を増加させ得る。それゆえ、衝撃強度と燃焼性との適切なバランスを達成するプラスチック配合の分野における問題が存在する。
【0005】
米国特許第5,219,907号は、シェルの一部としてホスフェートモノマーを含有するコアシェルエマルジョンポリマーの使用を開示しており、コアシェルポリマーは、ポリカーボネート配合物中で使用することができる。コアは、ポリブタジエン又は架橋ポリアクリレートゴムから選択されるエラストマーを含む。
【0006】
欧州特許第0663410号は、改善された燃焼性を提供するためにゴム状基材上のグラフトポリマー中に位置する高濃度のリンモノマーの使用を開示する。ゴム状基材は、アルキルアクリレートゴム又はオレフィンゴムである。
【0007】
改善された燃焼性を有するシリコーンコアを含む新しいプロセス及び衝撃改質剤ポリマー組成物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様は、(a)シリコーンポリマーを含むコアと、(b)アクリルポリマーを含むシェルと、を含む多段ポリマー組成物を提供する。コア中のシリコーンポリマー及びシェル中のアクリルポリマーの少なくとも1つは、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、(A)(i)シリコーンポリマーを含むコア、及び(ii)アクリルポリマーを含むシェルを含む多段ポリマー組成物、ならびに(B)1つ以上のマトリックス樹脂を含むマトリックス樹脂組成物を提供する。コア中のシリコーンポリマー及びシェル中のアクリルポリマーの少なくとも1つは、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による樹脂組成物の燃焼時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、有機リンモノマーをシリコーンコア/アクリルシェル多段ポリマーに組み込むことができ、多段ポリマーの耐燃性を高めることができることを見出した。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。「ポリマー」という一般的な用語は、「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」、及び「樹脂」という用語を含む。本明細書で使用される場合、「から誘導された重合単位」という用語は、生成物ポリマーが、重合反応の出発物質である構成モノマー「から誘導された重合単位」を含有する、重合技術に従って合成されるポリマー分子を指す。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート若しくはメタクリレート又はこれらの組み合わせのいずれかを指し、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル若しくはメタクリル又はそれらの組み合わせのいずれかを指す。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、少なくとも1つの付着した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、及びそれらの組み合わせを有することを指す。
【0013】
本明細書で使用される場合、「有機リン」という用語は、リンを含有する有機化合物を指す。本明細書で使用される場合、「ホスフェート」という用語は、リン原子及び酸素原子から構成されるアニオンを指し、リンは+5の酸化状態にある。オルトホスフェート(PO4
-3)、ポリホスフェート(PnO3n+1
-(n+2)、式中、nは2以上である)、及びメタホスフェート(式PmO3m
-mを有し、式中、mは2以上である、環状アニオン)が含まれる。本明細書で使用される場合、「アルカリホスフェート」は、アルカリ金属カチオンとホスフェートアニオンとの塩を指す。アルカリホスフェートは、アルカリ金属オルトホスフェート、アルカリ金属ポリホスフェート、及びアルカリ金属メタホスフェートを含む。また、アルカリホスフェートは、例えば、リン酸二水素一ナトリウム及びリン酸水素二ナトリウム等の、例えば、オルトホスフェート酸の部分中和塩を含むホスフェート酸の部分中和塩を含む。本明細書で使用される場合、「ホスホネート」という用語は、リン原子及び酸素原子から構成されるアニオンを指し、リンは+3の酸化状態にある。
【0014】
本明細書で使用される場合、「多段ポリマー」という用語は、多段ポリマーのコアを形成する「第1段」又は「第1段ポリマー」と呼ばれる第1のポリマーを形成(すなわち、重合)することによって作製されるポリマーを指す。次に、第1段の存在下で、「第2段」又は「第2段ポリマー」と呼ばれる第2のポリマーを形成し、これは多段ポリマーの中間段又は最終段であり得る。多段ポリマーは、第2段ポリマーの前又は後に形成され得る追加の段を含んでもよい。各中間段は、その中間段の直前の段の重合から生じるポリマーの存在下で形成される。各後続段が前段から残っている各粒子の周りに部分的又は完全なシェルを形成する、かかる実施形態では、結果として生じる多段ポリマーは、「コア/シェル」ポリマーとして既知であり、第1段ポリマーがコアを含み、各後続段は、最終段が最外シェルを形成する状態で先行段上にシェルを含む。したがって、第2段ポリマーは、多段ポリマー中のシェルの少なくとも一部を構成する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」又は「Mw」という用語は、ASTM D5296-11(2011)に従い、かつ移動相及び希釈液としてテトラヒドロフラン(「tetrahydrofuran、THF」)を使用して、較正標準ポリスチレンに対するアクリル酸ポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフィ(「gel permeation chromatography、GPC」)で測定したポリマーの重量平均分子量を指す。本明細書で使用される場合、「ポリマーの重量」という用語は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ガラス転移温度」又は「Tg」という用語は、ガラス質ポリマーが、ポリマー鎖のセグメント運動を受ける温度又はそれ以上の温度を指す。コポリマーのガラス転移温度は、Fox方程式(Bulletin of the American Physical Society、1(3)123ページ(1956))によって次のように推定することができる:
1/Tg=w1/Tg(1)+w2/Tg(2)
【0017】
コポリマーについては、w1及びw2は、2つのコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)及びTg(2)は、モノマーから作製された2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度を指す。3つ以上のモノマーを含有するポリマーについて、追加の用語が加えられる(wn/Tg(n))。ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、J.Brandrup及びE.H.によって編集された「Polymer Handbook」Immergutによって編集された「Polymer Handbook」(Interscience Publishers)において見出され得る。ポリマーのTgはまた、例えば、示差走査熱量測定(「differential scanning calorimetry、DSC」)を含む様々な技術によっても測定することができる。本明細書で使用される場合、「計算されたTg」という語句は、Fox方程式によって計算されるようなガラス転移温度を意味するものとする。多段ポリマーのTgが測定されるとき、2つ以上のTgが観察され得る。多段ポリマーのある段で観察されるTgは、その段を形成するポリマーの特徴であるTg(すなわち、その段を形成するポリマーが他の段とは別に形成及び測定される場合に観測されるTg)と同一であり得る。モノマーがあるTgを有すると言われるとき、そのモノマーから作製されたホモポリマーが、そのTgを有することを意味する。
【0018】
20℃で水に溶解することができる化合物の量が水100mLの当たり5g以上の化合物である場合、その化合物は、本明細書において「水溶性」とみなされる。20℃で水に溶解することができる化合物の量が水100mLの当たり0.5g以下の化合物である場合、その化合物は、本明細書において「水不溶性」とみなされる。20℃で水に溶解することができる化合物の量が水100mLの当たり0.5g~5gである場合、その化合物は、本明細書において「部分的に水溶性」とみなされる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ポリマー組成物が特定の物質をほとんど又は全く含まない」と述べられるとき、ポリマー組成物は、その物質を全く含まないこと、又はその物質のいずれかが本組成物中に存在する場合、その物質の量は、ポリマー組成物の重量を基準にして、1重量%以下である。本明細書に特定の物質を「ほとんど又は全く」有さないと記載されている実施形態の中で、その特定の物質のいずれも存在しない実施形態が想定される。
【0020】
本発明の多段ポリマーは、コア及びシェルを含む。コアはシリコーンポリマーを含み、シェルはアクリルポリマーを含む。シリコーンポリマー及びアクリルポリマーの一方又は両方は、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含有する。
【0021】
シリコーン(すなわち、ポリシロキサン)ポリマーは、鎖状オルガノシロキサン及び環状オルガノシロキサンのいずれかによって合成することができる。特に、環状オルガノシロキサンが好ましい。中でも、3~7員環の環状オルガノシロキサンが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、及びオクタフェニルシクロテトラシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を同時に使用してもよい。中でも、オクタメチルシクロテトラシロキサンをモノマーとして用いることが好ましい。
【0022】
シリコーンポリマーは、好ましくは、より良好な弾性及び衝撃強度のためにシロキサン架橋剤を含有する。シロキサン系架橋剤は、シロキシ基を有するものから選択されることが好ましい。シロキサン系架橋剤を用いることにより、架橋構造を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。シロキサン系架橋剤の具体例としては、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、及びテトラブトキシシラン等の三官能又は四官能のシラン系架橋剤が挙げられる。中でも、四官能の架橋剤が好ましく、テトラエトキシシランがより好ましい。
【0023】
シリコーンポリマーはまた、1つ以上のグラフトリンカーの、重合単位も含有し得る。グラフトリンカーは、(メタ)アクリレート及びシロキサンとの反応を介して、(メタ)アクリルポリマー及びシリコーンポリマーの両方と結合することができるモノマーである。好ましいグラフトリンカーとしては、重合性ビニル官能基を有し、シロキサン結合を介してジメチルシロキサンと結合することができるシロキサン化合物が挙げられる。
【0024】
重合性ビニル官能基を有するシロキサンの例としては、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、及びδ-(メタ)アクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイルオキシシラン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン及びメトキシジメチルビニルシラン等のビニルシロキサン類、p-ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン類、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン及びγ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサン類、1,3-ビス(3-メタクリロイルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、及び1,3-ビス(3-メルカプトプロピル)テトラメチルジシロキサン等のジシロキサン類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
多段ポリマーにおいて、コア中のシリコーンポリマー及びシェル中のアクリルポリマーの一方又は両方は、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む。したがって、多段ポリマーは、コア中のリン含有シリコーンポリマー及びシェル中のアクリルポリマー、コア中のシリコーンポリマー及びシェル中のリン含有アクリルポリマー、又はシェル中のリン含有シリコーンポリマー及びシェル中のリン含有アクリルポリマーを含んでもよい。
【0026】
シリコーンポリマーが有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む場合、有機リンモノマーは、ホスホ-シランモノマーから選択され得る。ホスホ-シランモノマーは、式Si(OR2)3-R3-P(O)(OR4)2の化合物から選択され得る。R2及びR4は、独立して、水素及びC1~C12アルキル基から選択され得る。R3は、C1~C12アルキル基から選択され得る。好ましくは、R2、R3、及びR4は、独立して、C1~C6アルキル基から選択される。
【0027】
コア中のシリコーンポリマーがホスホ-シランモノマーから誘導される重合単位を含む場合、ホスホ-シランモノマーは、シリコーンポリマーの総重量に対して0.1~20重量%の範囲の量で存在してもよい。例えば、ホスホ-シランモノマーは、シリコーンポリマーの総重量に基づいて、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%の量で存在し得る。ホスホ-シランモノマーは、例えば、シリコーンポリマーの総重量に基づいて、15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下の量で存在してもよい。
【0028】
多段ポリマーは、多段ポリマーの総重量に基づいて、例えば、2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、又は20重量%以上、又は50重量%以上の量でシリコーンポリマーを含有し得る。多段ポリマーは、多段ポリマーの総重量に基づいて、98重量%以下、又は95重量%以下、又は90重量%以下の量でシリコーンポリマーを含有し得る。
【0029】
本発明の多段ポリマーは、シェル中にアクリルポリマーを含有する。アクリルポリマーは、置換及び非置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーから誘導される重合単位を含んでもよい。
【0030】
少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートモノマー中の好適なアルキル基としては、直鎖又は分枝鎖C1~C12アルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、及びオクチル基が挙げられる。好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、メチルメタクリレートを含む。
【0031】
アクリルポリマーは、例えば、スチレンモノマー等の他のモノマーから誘導される重合単位を更に含み得る。
【0032】
シェル中のアクリルポリマーが、有機リンモノマーから誘導される重合単位を含む場合。有機リンモノマーの例は、以下のものを含み、
【0033】
【化1】
式中、Rは、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、又はビニル基を含有する有機基であり、R’及びR’’は、独立して、H及び第2の有機基から選択される。第2の有機基は、飽和又は不飽和であり得る。好適な有機リンモノマーは、二水素ホスフェート官能性モノマー、例えば、アルコールの二水素ホスフェートエステルを含み、そのアルコールはまた、重合性ビニル又はオレフィン基、例えば、アリルホスフェート、ビス(ヒドロキシ-メチル)フマレート又はイタコネートのモノホスフェート又はジホスフェート、(メタ)アクリル酸エステルの誘導体、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのホスフェートも含有する。
【0034】
他の好適な有機リンモノマーは、式中、R5がH又は-CH3、R6=アルキル、及びn=1~5であり、例えば、Solvayから入手可能なメタクリレートSIPOMER(商標)PAM-100、SIPOMER(商標)PAM-200、SIPOMER(商標)PAM-400、SIPOMER(商標)PAM-600及びアクリレート、SIPOMER(商標)PAM-300等の、CH2=C(R5)-C(O)-O-(R6O)n-P(O)(OH)2を含む。
【0035】
他の好適な有機リンモノマーは、国際公開第99/25780(A1)号に開示されるホスホネート官能性モノマーであり、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸、α-ホスホノスチレン、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸を含む。更なる好適な有機リンモノマーは、米国特許第4,733,005号に開示される、1,2-エチレン性不飽和(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレートモノマーであり、(ヒドロキシ)ホスフィニルメチルメタクリレートを含む。
【0036】
好ましくは、有機リンモノマーは、式CH2=C(R5)-C(O)-O-(R6O)n-P(O)(OH)2の少なくとも1つの化合物を含む。より好ましくは、R5は、-CH3であり、R6は、1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、n=1である。
【0037】
シェル中のアクリルポリマーは、アクリルポリマーの総重量に基づいて、0.25重量%以上、又は0.5重量%以上の量で、少なくとも1つの有機リンモノマーから誘導された重合単位を含有し得る。第2段ポリマーは、アクリルポリマーの総重量に基づいて、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下の量で、少なくとも1つの有機リンモノマーから誘導された重合単位を含有し得る。好ましくは、アクリルポリマーは、アクリルポリマーの総重量に基づいて、0.5~20重量%未満の範囲の量で、少なくとも1つの有機リンモノマーから誘導された重合単位を含有する。より好ましくは、アクリルポリマーは、アクリルポリマーの総重量に基づいて、2~10重量%未満の範囲の量で、少なくとも1つの有機リンモノマーから誘導された重合単位を含有する。
【0038】
アクリルポリマーは、追加の成分を更に含んでもよい。例えば、アクリルポリマーは、架橋剤、連鎖移動剤、又は官能性モノマーのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0039】
アクリルポリマーは、50℃以上、又は90℃以上のTgを有し得る。最終段ポリマーは、200℃以下、又は150℃以下のTgを有し得る。
【0040】
多段ポリマーは、多段ポリマーの総重量に基づいて、例えば、2重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上の量でアクリルポリマーを含有し得る。多段ポリマーは、多段ポリマーの総重量に基づいて、例えば、98重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下の量でアクリルポリマーを含有し得る。
【0041】
好ましくは、アクリルポリマーは、アクリルポリマーの総重量に基づいて、50重量%以上、又は75重量%以上、又は90重量%以上の量で、50℃以上のTgを有するモノマーから誘導された重合単位を含有する。
【0042】
多段ポリマーは、アクリルポリマーに加えて、シェル中に1つ以上の中間段ポリマーを含有してもよい。中間段ポリマーの総合計は、多段ポリマーの総重量に基づいて、1重量%以上、又は2重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上の量で存在し得る。中間段ポリマーの総合計は、多段ポリマーの総重量に基づいて、60重量%以下、又は2重量%以下、又は5重量%以下、又は10重量%以下の量で存在し得る。多段ポリマー中のシェル中のアクリルポリマーと同様に、1つ以上の中間段ポリマーもまた、1つ以上の有機リンモノマーから誘導された重合単位を含み得る。
【0043】
多段ポリマーは、任意の従来の方法によって作製することができる。例えば、シリコーンポリマーは、酸触媒水性乳化重合によって作製することができる。アクリルポリマーは、ラジカル水性乳化重合によって作製することができる。水性乳化重合では、水は、重合が起こる連続媒体を形成する。水は、水と混和性であるか又は水中に溶解している1つ以上の追加の化合物と混合してもしなくてもよい。連続媒体は、連続媒体の重量に基づいて、30重量%以上の水、又は50重量%以上の水、又は75重量%以上の水、又は90重量%以上の水を含有し得る。シロキサンモノマーの乳化重合は、酸によって触媒される。シロキサン混合物の重合に用いる酸触媒の例としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類、並びに硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又はそれらのうちの2つ以上の種類の組み合わせで使用されてもよい。
【0044】
(メタ)アクリルポリマーの乳化重合は、1つ以上の開始剤の存在を伴う。開始剤は、重合プロセスを開始することができる1つ以上のフリーラジカルを形成する化合物である。開始剤は、通常水溶性である。いくつかの好適な開始剤は、加熱されると1つ以上のフリーラジカルを形成する。いくつかの好適な開始剤は、酸化剤であり、1つ以上の還元剤と混合したとき、若しくは加熱したとき、又はそれらの組み合わせのときに1つ以上のフリーラジカルを形成する。いくつかの好適な開始剤は、例えば、紫外線又は電子線のような放射線に露光されると、1つ以上のフリーラジカルを形成する。好適な開始剤の組み合わせもまた好適である。
【0045】
好ましくは、多段ポリマーはラテックスの形態で作製される。本明細書で使用される場合、「ラテックス」という用語は、ポリマーが水中に分散している小さなポリマー粒子の形態で存在するポリマーの物理的形態を指す。ラテックスは、例えば、50nm以上又は100nm以上の平均粒径を有し得る。ラテックスは、1,000nm以下、又は800nm以下、又は600nm以下の平均粒径を有し得る。
【0046】
乳化重合は、アニオン性ホスフェート界面活性剤を含む少なくとも1つの有機リン石鹸の使用を含み得る。各アニオン性ホスフェート界面活性剤は、それと会合したカチオンを有し、例えば、アルキルホスフェート塩及びアルキルアリールホスフェート塩を含むホスフェート界面活性剤のアルカリ金属塩を形成する。好適なカチオンは、例えば、アンモニウム、アルカリ金属のカチオン、及びそれらの混合物を含む。ホスフェート界面活性剤の好適なアルカリ金属塩は、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルホスフェート塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホスフェート塩、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩を含む。ホスフェート界面活性剤のアルカリ金属塩は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩を含み得る。多段ポリマーの乳化重合中に存在するホスフェート界面活性剤の重量は、重合に添加される総モノマー重量に基づくホスフェート界面活性剤の重量を特徴として、0.5重量%以上、好ましくは、1.0重量%以上、より好ましくは、1.5重量%以上の範囲であり得る。多段ポリマーの乳化重合中に存在するホスフェート界面活性剤の重量は、重合に添加される総モノマー重量を基準にするホスフェート界面活性剤の重量を特徴として、5重量%以下、好ましくは、4重量%以下、より好ましくは、3重量%以下の範囲であり得る。上記で説明されたアニオン性ホスフェート界面活性剤に加えて1つ以上のアニオン性界面活性剤が乳化重合において利用され得る。好適な追加のアニオン性界面活性剤は、例えば、カルボキシレート、スルホスクシネート、スルホネート、及びサルフェートを含む。
【0047】
本発明のプロセスでは、多段ポリマーラテックスは、凝固又は噴霧乾燥によって単離されて、多段ポリマーの表面上に有機リン石鹸を保持することができる。好適な凝固方法は、例えば、二価カチオンによる凝固を含む。
【0048】
好適な二価カチオンは、例えば、二価金属カチオン及びアルカリ土類カチオンを含む。好適な二価カチオンは、例えば、カルシウム(+2)、コバルト(+2)、銅(+2)、鉄(+2)、マグネシウム(+2)、亜鉛(+2)、及びそれらの混合物を含む。好ましくは、多価カチオンは、カルシウム(+2)及びマグネシウム(+2)から選択される。より好ましくは、存在するあらゆる二価カチオンは、カルシウム(+2)、若しくはマグネシウム(+2)、又はそれらの混合物である。更により好ましくは、二価カチオンは、カルシウム(+2)を含む。二価カチオンは、多段ポリマーの乾燥重量に基づいて、10ppm以上、又は30ppm以上、又は100ppm以上の量で存在し得る。二価カチオンは、多段ポリマーの乾燥重量に基づいて、3重量%以下、又は1重量%以下、又は0.3重量%以下の量で存在し得る。
【0049】
好ましくは、組成物中に存在する二価カチオンの大部分又は全ては、水不溶性ホスフェート塩の形態にある。水不溶性ホスフェート塩の形態で存在する多価カチオンのモル量は、組成物中に存在する二価カチオンの総モル数に基づいて、80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は98%以上、又は100%であり得る。
【0050】
好ましくは、単離ポリマーを有して残る水の大部分又は全部は、以下の操作のうちの1つ以上によって単離ポリマーから除去される:濾過(例えば、真空濾過を含む)及び/又は遠心分離である。単離ポリマーは、任意選択的に、水で1回以上洗浄され得る。凝固ポリマーは複雑な構造であり、水が凝固ポリマーのあらゆる部分に容易に接触することはできないことが知られている。理論に拘束されることを望まないが、顕著な量の二価カチオン及び残留有機リン石鹸が取り残されることが企図される。したがって、本発明の組成物は、多段ポリマーの乾燥重量に基づいて、50ppm以上、又は100ppm以上、又は500ppm以上の量で有機リン石鹸を含有し得る。本発明の組成物は、多段ポリマーの乾燥重量に基づいて、10,000ppm以下、又は7,500ppm以下、又は5,000ppm以下の量で有機リン石鹸を含有し得る。
【0051】
好ましくは、乾燥した多段ポリマーは、乾燥した多段ポリマーの重量に基づいて、1.0重量%未満の含水量を有する。
【0052】
本発明のポリマー組成物はまた、流動助剤を含み得る。流動助剤は、粉末(平均粒径1マイクロメートル~1mm)の形態の硬質材料である。好適な流動助剤は、例えば、硬質ポリマー(すなわち、80℃以上のTgを有するポリマー)又はミネラル(例えば、シリカ)を含む。
【0053】
本発明のポリマー組成物はまた、安定剤も含み得る。好適な安定剤は、例えば、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、及び金属不活性化剤を含む。好適なラジカル捕捉剤は、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ヒドロキシル基が結合している炭素原子に隣接する芳香環の各炭素原子に三級ブチル基が結合しているもの)、二級芳香族アミン、ヒンダードアミン、ヒドロキシルアミン、及びベンゾフラノンを含む。好適な過酸化物分解剤は、例えば、有機硫化物(例えば、二価硫黄化合物、例えば、チオプロピオン酸のエステル)、亜リン酸のエステル(H3PO3)、及びヒドロキシルアミンを含む。好適な金属不活性化剤としては、例えば、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)が挙げられる。
【0054】
本発明のプロセスでは、多段ポリマーラテックスを凝固又は噴霧乾燥によって単離させ得る。好適な凝固方法は、例えば、二価カチオンによる凝固を含む。
【0055】
好ましくは、単離ポリマーを有して残る水の大部分又は全部は、以下の操作のうちの1つ以上によって単離ポリマーから除去される:濾過(例えば、真空濾過を含む)及び/又は遠心分離である。単離ポリマーは、任意選択的に、水で1回以上洗浄され得る。
【0056】
好ましくは、乾燥した多段ポリマーは、乾燥した多段ポリマーの重量に基づいて、1.0重量%未満の含水量を有する。
【0057】
本発明のポリマー組成物はまた、流動助剤を含み得る。流動助剤は、粉末(平均粒径1マイクロメートル~1mm)の形態の硬質材料である。好適な流動助剤は、例えば、硬質ポリマー(すなわち、80℃以上のTgを有するポリマー)又はミネラル(例えば、シリカ)を含む。
【0058】
本発明のポリマー組成物はまた、安定剤も含み得る。好適な安定剤は、例えば、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、及び金属不活性化剤を含む。好適なラジカル捕捉剤は、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ヒドロキシル基が結合している炭素原子に隣接する芳香環の各炭素原子に三級ブチル基が結合しているもの)、二級芳香族アミン、ヒンダードアミン、ヒドロキシルアミン、及びベンゾフラノンを含む。好適な過酸化物分解剤は、例えば、有機硫化物(例えば、二価硫黄化合物、例えば、チオプロピオン酸のエステル)、亜リン酸のエステル(H3PO3)、及びヒドロキシルアミンを含む。好適な金属不活性化剤としては、例えば、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)が挙げられる。
【0059】
上記のように、本発明の一態様は、多段ポリマー組成物及びマトリックス樹脂を含有するマトリックス樹脂組成物中の衝撃改質剤として本明細書に記載のポリマー組成物を利用する。多段ポリマーとマトリックス樹脂との混合物を混合して溶融し、そして固体製品に成形した後、その製品の耐衝撃性は、多段ポリマーと混合していないマトリックス樹脂を用いて製造した同じ固体製品よりも良好であろう。多段ポリマーは、固体形態、例えば、ペレット若しくは粉末又はそれらの混合物で提供され得る。マトリックス樹脂はまた、固体形態、例えば、ペレット若しくは粉末又はそれらの混合物で提供され得る。固体多段ポリマーは、室温(20℃)又は高温(例えば、30℃~90℃)で固体マトリックス樹脂と混合され得る。代替的に、固体多段ポリマーは、例えば、押出機又は他の溶融ミキサー中で溶融マトリックス樹脂と混合され得る。固体多段ポリマーはまた、固体マトリックス樹脂と混合され得、固体の混合物は、次いで十分に加熱されて、マトリックス樹脂を溶融させ得、混合物は、例えば、押出機又は他の溶融加工デバイス内で更に混合され得る。
【0060】
マトリックス樹脂対本発明の多段ポリマーの重量比は、例えば、1:1以上、又は1.1:1以上、又は2.3:1以上、又は4:1以上、又は9:1以上、又は19:1以上、又は49:1以上、又は99:1以上の範囲であり得る。
【0061】
好適なマトリックス樹脂は、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、アクリルポリマー、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びポリアミドを含む。好ましくは、マトリックス樹脂は、少なくとも1つのポリカーボネートを含有する。好適なポリカーボネートは、例えば、ビスフェノールAから誘導された重合単位のホモポリマー(「Bisphenol A、BPA」)、及び1つ以上の他の重合単位とともにBPAの重合単位を含むコポリマーも含む。
【0062】
マトリックス樹脂は、少なくとも1つのポリエステルを含有し得る。好適なポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートを含む。
【0063】
マトリックス樹脂は、ポリマーのブレンドを含有し得る。ポリマーの好適なブレンドは、例えば、ポリカーボネートとスチレン樹脂とのブレンド、及びポリカーボネートとポリエステルとのブレンドを含む。好適なスチレン樹脂は、例えば、ポリスチレン及びスチレンと他のモノマーとのコポリマー、例えば、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(「acrylonitrile/butadiene/styrene、ABS」)樹脂を含む。
【0064】
多段ポリマー及びマトリックス樹脂を含有するマトリックス樹脂組成物は、混合物に添加される1つ以上の追加の材料を含有してもよい。全ての材料の最終混合物を形成する前に、そのような追加の材料のいずれか1つ以上を多段ポリマー又はマトリックス樹脂に添加することができる。マトリックス樹脂が固体形態又は溶融形態である場合、追加の材料のそれぞれ(もし使用されるならば)は、マトリックス樹脂に(単独で、又は互いに組み合わせて、及び/又は多段ポリマーと組み合わせて)添加され得る。好適な追加の材料は、例えば、染料、着色剤、顔料、カーボンブラック、充填剤、繊維、滑剤(例えば、モンタンワックス)、難燃剤(例えば、ボレート、三酸化アンチモン、又はモリブデート)、及び本発明の多段ポリマーではないその他の衝撃改質剤を含む。
【0065】
マトリックス樹脂組成物は、例えば、フィルムブロー成形、異形押出し成形、成形、他の方法、又はそれらの組み合わせによって有用な物品を形成するために使用することができる。成形方法は、例えば、ブロー成形、射出成形、圧縮成形、他の成形方法、及びそれらの組み合わせを含む。
【0066】
本発明の多段ポリマーは、マトリックス樹脂組成物の燃焼性において顕著な改善を提供し得る。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例において詳細に説明される。
【実施例】
【0068】
粒径測定
オリゴマーの粒径は、Malvern Zetasizer Nano S90粒径分析器で測定した。
【0069】
代表的なコアシェルポリマー合成
代表的なシリコーンコアエマルジョン合成(S1)
メカニカルスターラー、温度計、コンデンサー、及び電熱マントルを備えた5リットルの4つ口丸底フラスコに、脱イオン水2000g、及びドデシルベンゼンスルホン酸10gを仕込んだ。反応器の内容物を85℃に加熱した。別の容器中で、650gの脱イオン水、975gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、20gのテトラエトキシシラン、及び5gのメタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、及び4.4gのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを混合した。次いで、モノマー混合物をケトルに60分かけて添加した。モノマー供給が終了したとき、反応混合物を85℃で更に3時間撹拌した。保持後、バッチを40℃に冷却し、その温度で4時間保持した後、室温に冷却した。バッチを室温で更に18時間撹拌し、次いで45gの5%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。エマルジョンは、170nmの粒径及び23.5%の固形分を有することを特徴とした。
【0070】
シリコーンコアアクリルシェルエマルジョンポリマー合成(サンプル2)
上記で調製した固形分23.5%のシリコーンエマルジョン(S1)2785部に、脱イオン水285部を添加し、混合物を60℃に加熱した。60℃で、4.1部のRhodafac(登録商標)RS-610、3.2部のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(5%水溶液)及び2.3部のtert-ブチルヒドロペルオキシド(5%水溶液)を添加した。続いて、106部のメチルメタクリレート、44部のスチレン、14.32部のPAM600のモノマー混合物を1時間かけて添加した。モノマー混合物の供給開始と同時に、反応温度を60℃に維持しながら、16部のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(5%水溶液)及び11部のtert-ブチルヒドロペルオキシド(5%水溶液)を240分間にわたって供給した。全ての供給が完了した後、22.4部のRhodafac(登録商標)RS-610を添加した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、24.3%の固形分含量を有すると測定した。
【0071】
凝固の代表的な手順(サンプル2)
エマルジョン調製
サンプル2エマルジョンをリン酸ナトリウム溶液でpH6.9に中和した。5297gの中和したサンプル2エマルジョンを撹拌し、57℃で保持した。
【0072】
凝固
5ガロン凝固容器に、16.6gの固体塩化カルシウム及び7203.4gの脱イオン水を添加した。容器の内容物を500rpmで撹拌しながら57℃に加熱した。内容物が57℃に達すると、上記の予熱したエマルジョンをゆっくり容器に添加した。200gの脱イオン水に溶解した49.7gの塩化カルシウムを添加して凝固を完了させた。次いで、混合物を90℃に加熱し、30分間90℃で保持した。保持後、混合物を冷却し、脱水し、ブフナー漏斗内で洗浄した。濾液の導電率が30μS/m未満になるまでサンプルを脱イオン水で洗浄し、次いで再び脱水した。脱水及び洗浄後、サンプルを真空オーブン中65℃で24時間乾燥させた。凝固スラリーの粒径をMalvern Mastersizer2000で測定した。
【0073】
配合物
表1によるポリカーボネート配合物を、押出機で配合して、射出成形用のペレットを作成した。
【0074】
【0075】
PC Lexan 141:SABIC製のポリカーボネート
MBS:実施例1のFR MBS粉末又は比較例のM732粉末
FR-2025a:3M製の100%ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム
INP449:SABIC製の50%ポリテトラフルオロエチレン及び50%SANのブレンド
IRGANOX(登録商標)1076及びIRGANOX(登録商標)168:BASF製の抗酸化剤
【0076】
ポリカーボネート配合物を射出成形して、UL 94燃焼性試験法を使用する燃焼性試験のためのダブルエンドゲート1.0mmASTM燃焼バーを形成した。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
サンプル1~10はまた、UL-94燃焼性試験を使用して難燃性について試験した。各サンプルは、優れた難燃性(V-0)を示した。
図1に示すように、本発明のサンプルはまた、リンを含有しないサンプルと比較して優れた燃焼時間を示した。比較例は、コアに市販のシリコーンポリマーを含有していた(C1は、70//30のコア//シェル重量比を有し、C2は、80//20のコア//シェル重量比を有した)。コア//シェルポリマー中にリンを有さなかった。
【国際調査報告】