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特表2024-545041トランスレチノールを含む新規の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】トランスレチノールを含む新規の組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 33/14 20060101AFI20241128BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241128BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20241128BHJP
   A23L 3/349 20060101ALI20241128BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   A01N 31/04 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20241128BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241128BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241128BHJP
   D21H 21/36 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07C33/14
A61P3/02 102
A61K31/045
A61P31/10
A61K8/67
A61Q17/00
A23L3/349
A01P3/00
A01N31/04
C09D5/14
C09D7/63
C09D201/00
D21H21/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532483
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022084469
(87)【国際公開番号】W WO2023099791
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/285,604
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21216502.1
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22171737.4
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロック‐エディンガー, クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルダーマン, アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューストン, ピーター, ルイス
【テーマコード(参考)】
4B021
4C083
4C206
4H006
4H011
4J038
4L055
【Fターム(参考)】
4B021MC02
4B021MK17
4B021MP01
4C083AA032
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB352
4C083AB382
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC152
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC212
4C083AC232
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC512
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC582
4C083AC622
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC792
4C083AC852
4C083AC882
4C083AC912
4C083AC932
4C083AD022
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD532
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD632
4C083AD642
4C083AD662
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC31
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD41
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA09
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB32
4H006AA03
4H006AB12
4H006AB20
4H006FC22
4H006FE11
4H011AA03
4H011BB03
4J038EA011
4J038NA05
4L055AG34
4L055AH21
4L055AH50
4L055EA29
4L055EA32
4L055FA30
(57)【要約】
本発明は、特にシス/トランス比が1:100未満でレチノールのシス及びトランス異性体の混合物を含む新規の組成物と、保存のための前記組成物の使用とに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノールのシス及びトランス異性体を含む混合物であって、前記混合物内の前記シス/トランス比が、1:100超であり、前記比が、前記混合物において総レチノイドを基準としてトランス異性体の重量%と比較したシス異性体の重量%として算出され、具体的には前記混合物が、総レチノイドを基準として0.3重量%未満のシスレチノールを含む混合物。
【請求項2】
1:105、1:105.26、1:110、1:111.11、1:117.65、1:120、1:125、1:130、1:133.33、1:135、1:140、1:142.86、1:150、1:153.85、1:155、1:160、1:165、1:166.67、1:170、1:175、1:180、1:181.82、1:185、1:190、1:195、1:200、1:204.08、1:205、1:210、1:215、1:220、1:222.22、1:225、1:230、1:232.56、1:235、1:240、1:245、1:250、1:255、1:260、1:265、1:270、1:275、1:280、1:285、1:285.71、1:290、1:300、1:305、1:310、1:320、1:325、1:330、1:333.33、1:340、1:345、1:350、1:357.14、1:360、1:370、1:380、1:390、1:400、1:420、1:450、1:454.55、1:460、1:480、1:500、1:520、1:550、1:555.56、1:600、1:666.67、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1200、1:1500、1:2000、1:2500、1:2800、1:4000、1:5000、1:7000以下、例えば、1:1000以下、より好ましくは1:101~1:10000、1:125~1:1000、1:140~1:500、1:101~1:1000、1:200~1:1000、1:200~1:10000、1:200~1:2000、1:600~1:1000、1:110~1:10000、1:500~1:700、1:150~1:400、1:200~1:500、1:250~1:400、1:250~1:1000の範囲の、最も好ましくは1:300~1:400のシス/トランス比で、レチノールのシス及びトランス異性体を含む、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記混合物が、1:333の比率でシス-レチノールとトランス-レチノールとを含む、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
が、50~100の範囲であり、aが、-25~10の範囲であり、及びbが、40~150の範囲である色価を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の生物学的由来である混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の生物学的由来である混合物が、発酵プロセスを介して生物学的に生成される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物が、生分解の際に人為的なCO排出プロファイルがゼロになる、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物を含む医薬又は化粧料組成物であって、前記混合物が、前記混合物中の全ての成分を基準として少なくとも約95重量%のレチノールからなる医薬又は化粧料組成物。
【請求項9】
抗真菌剤としての請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物又は組成物。
【請求項10】
アスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の増殖を抑制する抗真菌剤としての、請求項9に記載の混合物又は組成物。
【請求項11】
保存性を向上させるための製品に使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物又は組成物。
【請求項12】
食品、化粧製品、医薬製品又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料における抗真菌剤又は防腐剤としての、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物又は組成物の使用。
【請求項13】
食品、化粧製品、医薬製品及び/又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料の微生物による腐敗及び分解を防止する方法又はプロセスであって、前記方法が、製品、プラスチック、紙及び/又は塗料に、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物又は組成物を抗菌剤として、前記それぞれの製品、プラスチック、紙及び/又は塗料の総重量を基準として、0.005~2重量%の範囲の量で添加することを備える方法又はプロセス。
【請求項14】
微生物細胞、特に真菌細胞の増殖を消滅及び/又は抑制するための方法又はプロセスであって、前記方法が、前記微生物細胞を請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物又は組成物と接触させることを備え、特に、前記真菌細胞が、アスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)から選択される方法又はプロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特にシス/トランス比が1:100未満であるレチノールのシス及びトランス異性体の混合物を含む新規の組成物と、保存のための前記組成物の使用とに関する。
【0002】
食品、化粧製品若しくは家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料をカビから保護するために、現在市販されている殆どの製品は、防腐剤を含有する。これらの防腐剤は、真菌に有効であるが、研究は、こうした物質の多くへの日常的な曝露を、皮膚炎、癌及び/又は内分泌系の問題のリスクの上昇と関連付けている。したがって、多くの製造業者は、防腐剤の量を低減することを可能にすると共に、健康に害を与えないと思われる代替的な抗微生物活性物質を探求している。
【0003】
驚くべきことに、特にシス-レチノールのトランス-レチノールに対する比が約1:100未満で、レチノールのシス及びトランス異性体を含む特定のレチノール混合物が、優れた抗菌活性、具体的には真菌細胞に対する活性、より具体的にはアスペルギルス(Aspergillus)に対する活性、更により具体的にはアスペルギルス・ブラジリエンシス(A.ブラジリエンシス)(Aspergillus brasiliensis(A.brasiliensis))に対する活性を示すことが目下、判明されている。
【0004】
したがって、本発明は、シス-レチノール(重量%)のトランス-レチノール(重量%)に対する比が1:100未満(即ち0.01未満の比)でレチノールのシス及びトランス異性体を含むレチノール混合物、特にシス/トランス比が約0.003であるレチノール異性体の混合物に関する。
【0005】
特に、本発明は、シス-レチノールのトランス-レチノールに対する比が1:100未満である前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物であって、BASF、DSM、ZMC、Adisseoなどから販売されているレチノールなどの市販の純粋な全トランスレチノール組成物(例:Microvit(登録商標)A)とは異なる、医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物を含む組成物に関する。
【0006】
本明細書で使用される「レチノール」は、式(I):
【化1】

(立体化学の指示なし)の化合物に関する。
【0007】
本明細書で示されるシス/トランス比は、例えば酢酸レチニル、レチノール、レチナールなどのそれぞれのレチノイドのそれぞれ全てのトランス異性体に対する全てのシス異性体の合計の重量%比を指し、例えばHPLCなどの既知の方法によって求められ、全ての異性体に対して同じ応答因子を仮定する。
【0008】
本明細書で使用する「レチノール混合物」は、本明細書に定義した比率で、シス異性体及びトランス異性体などのレチノール異性体を含む。
【0009】
本明細書で使用するシス/トランス比、具体的には、レチノール混合物中におけるシス異性体のトランス異性体に対する比、より具体的にはシス-レチノールのトランス-レチノールに対する比は、全て前記混合物中の総レチノイドを基準として、シス異性体の重量%を対応するトランス異性体の重量%と比較することを意味する。したがって、レチノールに関して、シス/トランス比0.01を備える混合物は、例えば、前記混合物中の総レチノイドを基準として1重量%のシス-レチノールと、前記混合物中の総レチノイドを基準として100重量%のトランス-酢酸レチニルとを有する混合物である。
【0010】
本明細書で使用する用語「トランス-レチナール」などは、当業者には知られており、IUPAC-IUB命名法に沿って、式(I)による化合物を含む、そのようなレチノール化合物中の全ての二重結合が、トランス配置であることを意味する。したがって、いくつかの二重結合の1つが、トランス配置ではなく、シス配置であるならば、このような異性体は、本明細書において、例えばシス-レチノールと命名される。
【0011】
本発明が対象とするシス配置のレチノール異性体としては、9-シス-レチノール、11-シスレチノール、13-シスレチノール、9,13-ジ-シス-レチノール、11,13-ジ-シスレチノール、13-シス-3,4-ジデヒドロレチノール、9-シス-3,4-ジデヒドロレチノール、9,13-ジ-シス-3,4-ジデヒドロレチノール(総説については、例えば、Gundersen and Blomhoff,J.Chromatogr.A935:13-43,2001の表1を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明の全ての実施形態においては、上で定義したレチノール異性体のシス/トランス比、即ち、混合物中の総レチノイドを基準とするシス-又はトランス-レチノールの重量%は、0.01(1:100)未満であり、好ましくは0.0099、0.0095、0.009、0.0085、0.008、0.0075、0.007、0.0065、0.006、0.0055、0.005、0.0049、0.0045、0.0043、0.004、0.0035、0.003、0.0028、0.0025、0.0022、0.002、0.0018、0.0015、0.001、0.0005以下、例えば0.0001以下などのシス/トランス比であり、より好ましくは0.0099~0.0001、0.008~0.001、0.007~0.002、0.0099~0.001、0.005~0.001、0.005~0.0001、0.005~0.0005、0.006~0.001、0.009~0.0001、0.008~0.0001、0.006~0.0001、0.0055~0.0001、0.005~0.002、0.007~0.0001、0.0045~0.0001、0.004~0.0001、0.0035~0.0001、0.003~0.0001、0.005~0.0025、0.004~0.0005、0.006~0.0005、0.006~0.0008、0.006~0.0015、0.006~0.002、0.006~0.003、0.006~0.0004、0.006~0.0025の範囲、最も好ましくは0.003のシス/トランス比である。
【0013】
更なる本発明の実施形態によると、上で定義したレチノール異性体のシス/トランス比、即ち、混合物中の総レチノイドを基準とするシス-又はトランス-レチノールの重量%は、1:100超であり、好ましくは、1:105、1:105.26、1:110、1:111.11、1:117.65、1:120、1:125、1:130、1:133.33、1:135、1:140、1:142.86、1:150、1:153.85、1:155、1:160、1:165、1:166.67、1:170、1:175、1:180、1:181.82、1:185、1:190、1:195、1:200、1:204.08、1:205、1:210、1:215、1:220、1:222.22、1:225、1:230、1:232.56、1:235、1:240、1:245、1:250、1:255、1:260、1:265、1:270、1:275、1:280、1:285、1:285.71、1:290、1:300、1:305、1:310、1:320、1:325、1:330、1:333.33、1:340、1:345、1:350、1:357.14、1:360、1:370、1:380、1:390、1:400、1:420、1:450、1:454.55、1:460、1:480、1:500、1:520、1:550、1:555.56、1:600、1:666.67、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1200、1:1500、1:2000、1:2500、1:2800、1:4000、1:5000、1:7000以下、例えば1:1000以下であり、より好ましくは1:101~1:10000、1:125~1:1000、1:140~1:500、1:101~1:1000、1:200~1:1000、1:200~1:10000、1:200~1:2000、1:600~1:1000、1:110~1:10000、1:500~1:700、1:150~1:400、1:200~1:500、1:250~1:400、1:250~1:1000の範囲であり、最も好ましくは1:300~1:400のシス/トランス比、更により好ましくは約1:333のシス/トランス比である。
【0014】
更なる一実施形態においては、本発明は、本明細書において定義される0.01未満のシス/トランス比を有するレチノールのシス及びトランス異性体の前記混合物及び/又は前記混合物を含む前記医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物の、抗菌剤、即ち抗菌活性を示す薬剤としての使用に関する。特に、本発明は、本発明による混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物の、抗真菌剤としての使用、より具体的には、特にアスペルギルス(Aspergillus)、より具体的にはA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)などから選択される真菌の増殖を抑制(低減)及び/又は消滅させるための薬剤としての使用に関する。
【0015】
別の実施形態においては、本発明は、微生物細胞、特に真菌細胞、より具体的にはアスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)の細胞の増殖を抑制する及び/又は消滅させるための方法又はプロセスであって、前記方法が、前記微生物細胞を、本発明による混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用品又は化粧料組成物と接触させることを備える方法又はプロセスに関する。
【0016】
本発明の全実施形態においては、本明細書で使用される用語「抗菌活性」又は「抗菌効果」は、好ましくは所定のサンプル内又は抗菌を必要とするヒト又は動物内の微生物、特に真菌細胞、より具体的にはアスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)の細胞の増殖を抑制及び/又は消滅する能力を指す。本明細書においては、用語「消滅させる」及び「死滅させる」は、互換的に使用される。
【0017】
真菌、具体的にはアスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)に対する抗菌活性のため、本発明による混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物は、食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料の保存に更に好適である。
【0018】
したがって、更なる一実施形態においては、本発明は、本発明による混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用品、又は化粧料組成物の使用であって、食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品、又は家庭用品、プラスチック、紙、及び/又は塗料を保存するための、並びに食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品、又は家庭用品、プラスチック、紙、及び/又は塗料をカビ、具体的には好ましくはA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)などのアスペルギルス(Aspergillus)によって引き起こされるカビの形成から保護するための使用に関する。
【0019】
本発明による、レチノールのシス及びトランス異性体を含むレチノール混合物、及び又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物は、化学又は生物学プロセスにより得られる1つ以上のシス異性体とそれぞれの全トランス異性体を混合することにより調製できる。このような全トランス及び/又はシス異性体を調製する方法は、当業者には公知である。或いは、混合物は、プロセスを適宜調整することにより、前記異性体の比率で調製することができる。
【0020】
有利なことに、本発明の全ての実施形態においては、レチノール混合物は、発酵プロセスを介して生物学的に生成され、発酵によって生成されたトランス-レチノールは加熱処理されてシス-レチノールを形成し、本発明の全ての実施形態において言及される適切なレベルを達成することができる(例えば、McBee et al.,JBC、Vol.276,No.51,pp.48483-48493,2001を参照)。
【0021】
有利なことに、本発明の全ての実施形態においては、シス-レチノールのトランス-レチノールに対する比が1:100未満(即ち0.01未満の比)で、特に約0.003のシス/トランス比で、レチノールのシス及びトランス異性体を含むレチノール混合物は、発酵プロセスを介して生物学的に生成されて、黄色がかった色のレチノール混合物をもたらす。
【0022】
当技術分野で知られているように、色は、XYZ、RGB、CYMK、又はL(EN ISO/CIE 11664-4:2019によるCIELAB)などのいくつかの異なる座標系で正確に記述することができる。好ましい方法は、L系による定義である。当業者は、異なる測色システムに応じてどの機器を使用するか、及び本明細書に記載されている混合物の色をどのように測定するかを知っている。
【0023】
本明細書で使用される「黄色がかった」色は、L表色系によって定義される色を意味し、特にLは(3<L<100、-25<a<30、10<b<150)であり、例えばLは50~100の範囲であり、aは-25~10の範囲であり、bは40~150の範囲であり、好ましくは、ここでLは、80~100の範囲であり、aは、-22~1の範囲であり、bは、40~85又は100~140の範囲であり、より好ましくはLは、80~95の範囲であり、aは、-17~-1の範囲であり、bは、105~135の範囲であり、特にLは、約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100であり、及びaは、約-24.9、-24、-23、-22、-21、-20、-19、-18、-17、-18、-17、-16、-15、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0であり、及びbは、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135である。
【0024】
特定の一実施形態においては、本明細書で定義したレチノールのシス及びトランス異性体の前記混合物を含むレチノール混合物は、例えば細菌又は真菌細胞などの好適なレチノール産生宿主細胞を用いた発酵プロセスで生成される(Sun et al,ACS Synth.Biol.2019 Sep 20;8(9):2131-2140;Jang et al.,Microbial Cell Factories 2011,10:59を参照のこと)、ここで、細胞は、例えば、トランス選択的酵素、即ち、ベータカロチンからレチナールへの変換からレチノールの生合成に関与し、更に酵素的にレチノールに変換される可能性のあるベータカロチンオキシダーゼ(BCO)などのそれぞれの酵素を発現している。特に、発酵には、農業生産由来のエタノール、トウモロコシ糖、又はコーン油が供給される。レチニルエステル、具体的には酢酸レチニル含む発酵生成物は、脂肪相で抽出された後、当技術分野で使用される方法により、結晶形態に精製され得る。
【0025】
本明細書に使用する、用語「生物学的に生成される」は、レチノールが、好適な炭素源のレチナールへの変換、そして更に、本明細書において定義されるレチノールへの変換に関与するそれぞれの酵素を発現する好適な(カロテノイド及び/又はレチノイド産生)宿主細胞の培養を含む発酵プロセスなどのバイオ技術プロセスの助けにより生成されることを意味し、宿主細胞は、細菌、真菌、特に酵母、植物又は藻類、特に真菌細胞、例えばヤロウィア(Yarrowia)又はサッカロミセス(Saccharomyces)、又は細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)などから選択してもよい。レチノールを生成することが知られている他の好適な微生物から更に選択してもよい。「バイオ生成」、「生物由来」及び「生物学的に生成される」又は「バイオベース」は、本明細書において同義語として使用される。したがって、レチノールを含む前記生物学的に生成されるレチノイドは、緑色植物によって糖及びデンプンに変換される大気中の二酸化炭素からの炭素(大気起源の炭素とも呼ばれる)からなり、故に好ましくは非化石燃料炭素からなる糖及びデンプンからなる。又、本明細書で定義される混合物中のレチノールの特定のトランス/シス比の形成を選択的に触媒することができる特定の酵素などの、本明細書で定義されるレチノール混合物を生成するためのプロセスにおける単離した及び/又は固定化した酵素の使用も含まれる。
【0026】
一態様においては、本明細書で定義されるレチノール混合物は、例えば油性酵母、特にヤロウィア(Yarrowia)などの真菌宿主細胞を用いた発酵により生成され、前記宿主細胞は、好適な炭素源の存在下、及び第2相溶媒としての植物由来の第2相、例えば植物油、例えばコーン油の存在下で培養され、第2相にレチノールを含むレチノイドが蓄積される。
【0027】
好適な植物由来の第2相溶媒は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はリノール酸及びグリセロールを含むがこれらに限定されない任意の植物油から選択することができ、例えば、コーン油、オリーブ油、綿実油、菜種油、ゴマ油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、大豆油、ブドウ種子油又はピーナッツ油などであり、好ましくはコーン油である。
【0028】
本発明に使用される炭素源は、直鎖アルカン、遊離脂肪酸、エタノール、グルコース、及び/又はそれらの混合物から選択してよい。
【0029】
本明細書で使用される「バイオベース」化合物は、C-14/C-12同位体比0:1を有する化石由来の化合物とは対照的に、1:0から0:1を超える範囲のC-14/C-12同位体比を有する。化合物のバイオベース含量は、例えば、D6866-05又はD6866-20などのASTM試験方法D6866、DIN SPEC91236(CEN/TS 16137)、ISO 16620、又はDIN EN16785/1などの既知の放射性炭素及び同位体比質量分析又は加速器質量分析により測定することができ、サンプル中のC-14/C-12同位体比を測定し、標準の100%バイオベース材料と比較して、サンプルのバイオベース含量のパーセントを示す。
【0030】
本明細書において使用する「大気起源の炭素」とは、ここ数十年の間に地球の大気中に遊離した二酸化炭素分子の炭素原子を指す。このような炭素の質量は、本明細書に記載される特定の放射性同位元素の存在により、同定可能である。「グリーン炭素」、「大気中の炭素」、「環境にやさしい炭素」、「ライフサイクル炭素」、「非化石燃料起源炭素」、「非石油起源炭素」、「大気起源炭素」、「バイオベース炭素」は、本明細書においては互換的に使用される。
【0031】
本発明の全ての実施形態においては、有利なことに、レチノール混合物は、単に有機的で再生可能なバイオベースの原料、特に発酵生成された原料によって生成され、そのようなレチノールは、そのような「発酵由来の」又は「発酵生成された」レチノールから分解中に放出されるCO分子の全てが大気起源を有するので、生分解時にゼロの人為的CO排出プロファイルを有する。したがって、大気中へのCOの純放出量はゼロになる。
【0032】
したがって、本発明は、特に、シス/トランス比(混合物中の総レチノイドを基準として重量%で定義される)0.01未満で、本明細書に定義するシス及びトランス異性体を含むレチノールを含む混合物であって、前記混合物が、本出願で与えられる定義に従って、少なくとも約20%、例えば25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98又は100%のバイオベース炭素を有する混合物に関する。
【0033】
特に、本発明は、本明細書で定義される0.01未満のシス/トランス比を有する酢酸レチニルの混合物を含む生分解性組成物であって、前記組成物中の酢酸レチニル混合物が、生分解時にゼロの人為的CO排出プロファイルを有する生分解性組成物に関する。
【0034】
好ましい一実施形態においては、本発明によるレチノール混合物は、本明細書に記載の範囲内で且つ全ての定義及び優先権を有するレチノールのシス及びトランス異性体から本質的になる。
【0035】
本発明に従って使用される用語「から本質的になる」は、混合物内の成分の総量が、理想的には合計して100重量%になることを意味する。しかしながら、少量の不純物又は添加物が混合物中に存在することがあることは排除されないが、但し、そのような不純物の総量は、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約3、2、1重量%未満であり、例えば、使用されるそれぞれの原料及び/又はプロセスを介して導入される。
【0036】
本明細書で使用する、用語「不純物及び添加物」は、本明細書において、互換的に使用され、本発明の混合物内の共成分(co-ingredient)を指し、混合物中に存在する全成分を基準として5重量%未満の量で本発明の混合物に存在する。
【0037】
本発明によるレチノール混合物が、本明細書に定義されるシス/トランス比を有するレチノールから本質的になるならば、前記混合物の純度、即ちシス及びトランスのレチノールの(総)量は、例えばHPLC、特に逆相C4 HPLCなどの既知の方法で測定して、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96、97、98%、最も好ましくは少なくとも約98%である。
【0038】
本明細書で使用する用語「純度」は、総重量に対するシス異性体とトランス異性体の合計を意味し、例えば、本明細書に示される定義によるシス-レチノールとトランス-レチノールの合計が、純度100%に設定した総レチノイドを基準とする純度パーセントを示す。したがって、混合物が、98.03重量%のトランス-レチノールと0.25重量%のシス-レチノールとから本質的になるならば、前記混合物は、レチノールに関して98.28%の純度を有する。本発明の全ての実施形態によると、レチノイド混合物は、前記混合物中の総レチノイドを基準として0.3重量%未満のシス-レチノールを含むのが好ましい。
【0039】
一部の実施形態においては、本明細書に定義されるシス/トランス比でシスレチノール及びトランスレチノールを含む混合物は、少量の添加物、例えばジヒドロレチノール及び/又はジヒドロレチニルアセテートをはじめとするジヒドロレチノイドを、全て総レチノイドを基準として、具体的には0.2~0.01重量%以下の範囲で、例えば0.2、0.18、0.16、0.15、0.14、0.12、0.1、0.05、0.01重量%以下、好ましくは0.2~0.1、0.17~0.06、0.1~0.05、0.04~0.01重量%の範囲で、より好ましくは0.1重量%以下の割合で、更に含む。同様に好ましくは、ジヒドロレチニルアセテートの割合は、前記混合物内の総レチノイドを基準として約0.05重量%以下、特に約0.01重量%以下である。
【0040】
レチノール混合物のA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)酵母に対する抗菌活性を利用するために、それらは、例えば化粧製品、医薬製品、栄養補給製品、医療用製品又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料などの多様な用途に使用することができる。
【0041】
本発明の全ての実施形態においては、食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料におけるシス及びトランスレチノールの量(活性物質、即ちレチノールに基づく)は、好ましくはそれぞれの製品、プラスチック、プラスチック、紙及び/又は塗料の総量を基準として0.005~2重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.03~0.75重量%そして最も好ましくは0.05~0.5重量%から選択される。
【0042】
特定の実施形態においては、本発明は、食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品、家庭用品、プラスチック、紙、及び/又は塗料の微生物による腐敗及び分解を防ぐ方法であって、前記方法が、前記製品、プラスチック、紙及び/又は塗料に、本発明による混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物(活性物質、即ちレチノールに基づく)を0.005~2重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲、最も好ましくは0.03~0.75重量%の範囲、例えば0.05~0.5重量%の範囲の量で、抗菌剤として添加することを備える方法に関する。特定の実施形態においては、その方法には、結果を評価するステップも含まれる。
【0043】
「予防」には、完全な予防だけでなく、発症を遅らせること、発症/症状の重篤度を軽減すること、及び/又は病状の再発までの期間を長くすることが含まれる。
【0044】
更なる一実施形態においては、本発明は、食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品、又は家庭用品、プラスチック、紙、及び/又は塗料を微生物汚染又は増殖から保護する方法であって、前記方法が、本発明によるレチノール混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物(活性物質、即ちレチノールに基づく)を0.005~2重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲、最も好ましくは0.03~0.75重量%の範囲、例えば0.05~0.5重量%の範囲の量で、前記製品、プラスチック、プラスチゾル、紙及び/又は塗料に抗菌剤として添加することを備える方法にも関する。
【0045】
特に有利な一実施形態においては、本発明は、食品、化粧製品、医薬製品、医療用製品、又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料の微生物による腐敗及び分解を防止する方法であって、それらが特に微生物による腐敗及び分解を受けやすいので、更に水と、場合により界面活性剤、乳化剤、増粘剤からなる群から選択される少なくとも1つの更なる薬剤とを含む方法に関する。
【0046】
本発明の全ての実施形態における好ましい製品は、上述の混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物である。前記組成物は、水と、界面活性剤、乳化剤、増粘剤からなる群から選択される少なくとも1つの更なる薬剤とを含むのが好ましい。
【0047】
したがって、別の実施形態においては、本発明は又、水と、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、及びオイルからなる群から選択される少なくとも1つの更なる薬剤とを含む化粧製品又は医薬製品であって、医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物が、更に、本発明によるレチノール混合物(活性物質、即ちレチノールに基づく)を製品の総重量を基準として、0.005~2重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲、最も好ましくは0.03~0.75重量%の範囲、例えば0.05~0.5重量%の範囲の量で含む化粧製品又は医薬製品にも関する。
【0048】
本発明による前記化粧製品又は医薬製品中の含水量が、組成物の総重量を基準として30~90重量%、40~90重量%、45~90重量%又は50~90重量%からなる群から選択されることは、更に有利である。更に好適な範囲は、30~75重量%、30~70重量%、30~60重量%、及び40~60重量%である。
【0049】
有利なことには、本発明によるレチノール混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料、家庭用又は化粧料組成物は、前記組成物を含む製品を含んで、従来の防腐剤と組み合わせて使用して、それらの防腐活性を改善することができる。
【0050】
本発明による使用は、好ましくは非治療的であることがよく理解される。
【0051】
特に、本発明による化粧製品又は医薬製品は、特にヒト若しくは動物の皮膚又はヒト若しくは動物の頭皮及び毛髪などの哺乳類の角質組織に局所的に適用される。
【0052】
したがって、一実施形態においては、本発明は、局所用製品、即ち、皮膚、頭皮、毛髪を含むヒト又は動物の角質組織に局所的に塗布される化粧製品としての使用のための、本明細書において定義されるレチノール混合物及び/又は前記混合物を含む医薬又は化粧料組成物に関する。
【0053】
本出願において使用される「化粧製品」という用語は、Roempp Lexikon Chemie,10th edition 1997,Georg Thieme Verlag Stuttgart,New Yorkの表題「Kosmetika」で定義された化粧料組成物及びA.Domsch,“Cosmetic Compositions”,Verlag fuer chemische Industrie(ed.H.Ziolkowsky),4th edition,1992に開示されている化粧料組成物を指す。
【0054】
本発明の目的に適した界面活性剤、乳化剤、増粘剤及び油は、いずれも化粧用途に慣用されているものであり、例えばオンラインのINFO BASE(http://online.personalcarecouncil.org/jsp/Home.jsp)から閲覧可能なパーソナルケア製品協議会(Personal Care Product Council)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary&Handbook(http://www.personalcarecouncil.org/)に掲載されている界面活性剤、乳化剤、増粘剤及び油であるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明による製品は、一般に、製品の総重量を基準として0.005~2重量%の範囲、より好ましくは0.01~1重量%の範囲、最も好ましくは0.03~0.75重量%の範囲、例えば0.05~0.5重量%の範囲で選択される量で、本発明による製剤I又はIIを含む混合物を好適な担体と混合することにより調製される。
【0056】
本発明による化粧製品又は医薬製品は、好ましくは更に、生理学的に許容される媒体、即ち、皮膚、粘膜、及びケラチン繊維などの、ケラチン物質と適合性である媒体を含む。特に、生理学的に許容される媒体は、化粧的又は医薬的に許容される担体である。
【0057】
用語「化粧的又は医薬的に許容される担体」は、化粧料組成物又は医薬組成物に従来使用されているあらゆる担体、及び/又は賦形剤、及び/又は希釈剤を指す。本明細書で使用される場合、それは生理学的に許容される媒体、即ち、例えば皮膚、粘膜、及びケラチン繊維などのケラチン物質との意図された用途に適合する媒体であると理解できる。
【0058】
本発明の化粧料組成物又は化粧製品は、組成物の総重量を基準として組成物の重量の、好ましくは50%~99.995%、例えば50~99.95%など、より好ましくは60%~99.995%、例えば60~99.95%など、更により好ましくは75%~99%、そして最も好ましくは80%~98%例えば90%~98%などの担体を含む。
【0059】
特に有利な実施形態においては、担体は、更に、組成物の総重量を基準として、少なくとも約30重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%、最も好ましくは少なくとも約45、50、60、70、80、90重量%の水、例えば、特に30~90重量%、例えば40~90重量%、45~90重量%又は50~90重量%などの範囲の水からなる。更に好適な範囲は、30~75重量%、30~70重量%、30~60重量%、及び40~60重量%である。
【0060】
好ましくは、本発明による化粧製品又は医薬製品は、溶媒若しくは脂肪物質中の懸濁液若しくは分散液の形態であるか、或いはエマルション若しくはマイクロエマルション(特にO/W若しくはW/O型)、PIT-エマルション、ナノエマルション、多重エマルション(例えば、O/W/O若しくはW/O/W型)、ピッカリングエマルション、ヒドロゲル、リポゲル、単相若しくは多相溶液又は小胞分散液の形態である。
【0061】
本発明による化粧製品又は医薬製品は、液体、ローション、増粘されたローション、ゲル、クリーム、乳液、軟膏又はペーストの形態であり得る。
【0062】
本発明による化粧製品又は医薬製品は、3~10の範囲のpH、好ましくは3~8の範囲のpH、最も好ましくは3.5~7.5の範囲のpHを有する。pHは、当業者に公知の方法によって、例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸を含むヒドロキシ酸などの酸、又は塩基、例えば、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム若しくは水酸化アンモニウム及びこれらの混合物などを使用することによって調整される。
【0063】
皮膚に塗布される化粧料組成物又は化粧製品の量は、決定的なものではなく、当業者により容易に調整することができる。その量は、好ましくは0.1~3mg/cmの皮膚の範囲、例えば好ましくは0.1~2mg/cmの皮膚の範囲、最も好ましくは0.5~2mg/cmの皮膚の範囲から選択される。
【0064】
好ましくは、本発明による製品においては、前記酸は、存在するならば、低くとも約0.0001重量%の量で、例えば約0.01~1重量%の量で、特に約0.01~0.5重量%の量などで使用される。
【0065】
本発明による化粧製品は、具体的には、スキンケア製剤、機能性製剤及び/又はヘアケア製剤、最も具体的にはスキンケア又はヘアケア製剤などである。
【0066】
したがって、一実施形態においては、本発明は、本明細書において定義されるレチノール混合物及び/又は前記混合物を含む食品、飼料、家庭用組成物のスキンケア又はヘアケア製剤としての使用、即ち、ヒト又は動物の皮膚又は毛髪に塗布される化粧製品の製剤用の使用に関する。
【0067】
スキンケア製剤の例は、特に、遮光製剤(日焼け止め製剤)、老化防止製剤、光老化治療用製剤、ボディオイル、ボディローション、ボディジェル、トリートメントクリーム、皮膚保護軟膏、保湿ジェル又は保湿スプレーなどの保湿製剤、顔及び/又は身体用保湿剤並びに皮膚美白用製剤である。
【0068】
好ましくは、本発明の全ての実施形態においては、スキンケア製剤は、消臭剤、制汗剤、又は抗ニキビ組成物である。
【0069】
機能性製剤の例は、ホルモン製剤、ビタミン製剤、野菜抽出物製剤、老化防止製剤、及び/又は抗微生物(抗細菌若しくは抗真菌)製剤などの活性成分を含有する化粧料組成物であるが、これらに限定されない。
【0070】
本発明による好適なヘアケア製剤の例としては、シャンプー、ヘアコンディショナー(ヘアリンスとも称される)、毛髪仕上げ用組成物、ヘアトニック、毛髪再生組成物、ヘアローション、ウォーターウェーブローション、ヘアスプレー、ヘアクリーム、ヘアジェル、ヘアオイル、ヘアポマード又はヘアブリリアンティーンを挙げることができる。したがって、これらは、常に、それらが使用される実際の目的に応じてより短い時間又はより長い時間にわたり毛髪及び頭皮に適用される製剤である。
【0071】
本発明によるヘアケア製剤がシャンプーとして供給される場合、これらは、クリーム形態の、ジェル様の或いは粉末形態の又は錠剤形態の、及びエアロゾルとしての、無色透明液体、不透明液体(真珠光沢効果のある)であることができる。これらのシャンプーがベースとする界面活性剤原材料は、性質がアニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性であることができ、これらの物質の組み合わせでまた存在することができる。
【0072】
別の好ましい実施形態においては、本発明による化粧料組成物は、O/Wエマルション、W/Oエマルション及び/又はシャワージェル又はヘアジェルなどのジェルである。
【0073】
以下の実施例は、本発明の組成物及び効果を更に説明するために提供される。これらの実施例は、例示に過ぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0074】
以下の実施形態(1)~(14)は、特に本発明の範囲内である:
(1):レチノールのシス異性体とトランス異性体の混合物であって、前記混合物内のシス/トランス比が、0.01未満であり、0.0099、0.0095、0.009、0.0085、0.008、0.0075、0.007、0.0065、0.006、0.0055、0.005、0.0049、0.0045、0.0043、0.004、0.0035、0.003、0.0028、0.0025、0.0022、0.002、0.0018、0.0015、0.001、0.0005以下、例えば0.0001以下のシス/トランス比、より好ましくは0.0099~0.0001、0.008~0.001、0.007~0.002、0.0099~0.001、0.005~0.001、0.005~0.0001、0.005~0.0005、0.006~0.001、0.009~0.0001、0.008~0.0001、0.006~0.0001、0.0055~0.0001、0.005~0.002、0.007~0.0001、0.0045~0.0001、0.004~0.0001、0.0035~0.0001、0.003~0.0001、0.005~0.0025、0.004~0.0005、0.006~0.0005、0.006~0.0008、0.006~0.0015、0.006~0.002、0.006~0.003、0.006~0.0004、0.006~0.0025の範囲であり、最も好ましくは0.003のシス/トランス比である混合物。
(2):実施例(1)のシス-レチノールとトランス-レチノールとの混合物を含む組成物。
(3):実施形態(1)の混合物又は実施形態(2)の組成物であって、レチノールが、生物学的由来である混合物又は組成物。
(4):実施形態(1)、(2)、又は(3)の混合物又は組成物であって、混合物が、混合物中の全成分を基準として少なくとも約95%のレチノールからなる混合物又は組成物。
(5):実施形態(1)、(2)、(3)又は(4)の混合物又は組成物の抗真菌剤としての使用。
(6):実施形態(5)の使用であって、抗真菌剤が、アスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の増殖を阻害する薬剤である使用。
(7):実施形態(5)又は(6)の食品、化粧製品、医薬製品又は家庭用品、プラスチッ、紙及び/又は塗料における使用。
(8):実施形態(5)、(6)又は(7)の保存性を向上させるための使用。
(9):食品、化粧製品、医薬製品及び/又は家庭用品、プラスチック、紙及び/又は塗料の微生物による腐敗及び分解を防止する方法又はプロセスであって、前記方法が、製品、プラスチック、紙及び/又は塗料に、実施形態(1)、(2)、(3)又は(4)の混合物又は組成物を抗菌剤として、それぞれの製品、プラスチック、紙及び/又は塗料の総重量を基準として、0.005~2重量%の範囲の量で添加することを備える方法又はプロセス。
(10):添加される混合物の量が、それぞれの製品、プラスチック、紙及び/又は塗料の総重量を基準として、0.01~1重量%の範囲である実施形態(9)の方法又はプロセス。
(11):製品が、更に水と、場合により界面活性剤、乳化剤、増粘剤、オイル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤とを含む実施形態(9)又は(10)の使用、方法又はプロセス。
(12):製品が、シャンプー製剤、ヘアコンディショナー、O/Wエマルション、W/Oエマルション又はゲルの形態の化粧料組成物である実施形態(9)、(10)又は(11)の使用、方法又はプロセス。
(13):微生物細胞、特に真菌細胞の増殖を消滅及び/又は抑制するための方法又はプロセスであって、前記方法が、前記微生物細胞を実施形態(1)、(2)、(3)又は(4)の混合物又は組成物と接触させることを備え、特に、真菌細胞が、アスペルギルス(Aspergillus)、好ましくはアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)から選択される方法又はプロセス。
【0075】
[実施例]
[実施例1:抗菌効力]
本明細書において定義されるレチノールを含むレチノイド混合物を、例えば、Sun et al.(ACS Synth.Biol,10.2021/acssynbio.9b00217)に記載されるように、生成することができ、レチノールを脂質相に蓄積した後、当該技術分野で既知のように、エタノールなどで単離/抽出する。
【0076】
異なるシス/トランス比を有するレチノールの抗菌効力を規制チャレンジ試験方法(NF EN ISO11930)に類似して評価する。したがって、0.85重量%のNaClを有する生理的血清中のそれぞれのレチノール(純度約98%の参照レチノール及び本発明レチノール混合物)の溶液を無菌条件下で調製し、参照に関して0.01のシス/トランスレチノール比を有し、本発明レチノール混合物に関しては0.003のシス/トランスレチノール比を有した(表1)。逆相C4 HPLC分析により、シス異性体及びトランス異性体の存在を算出した。
【0077】
【表1】
【0078】
次に、活性物質の溶液を96ディープウェルプレート(1.6ml/ウェル)に移した。ウェルをA.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)で汚染して、下の表2に示す初期汚染を得た。汚染後、それぞれのウェルを十分に混合して、微生物を確実に均一に分布させた。次いで、各プレートを22℃で24時間インキュベートした。汚染から24時間後に(生残)菌数の測定を行った。
【0079】
表2からわかるように、本発明による特定のシス/トランスのレチノール混合物は、A.ブラジリエンシス(A.brasiliensis)に対して優れた抗菌効果を有し、参照物質の抗菌活性と比較して30%(「ΔR」)の範囲で減少している。市販のトランス-レチノール(例えば、DSMからのRetinol GS 50又はBASFからのRetinol 50 C)の抗菌効力は、参照サンプル(図示せず)と同じ範囲である。
【0080】
【表2】
【0081】
[実施例2:製剤]
ジェル、エマルション、シャンプー、ヘアクリーム、ローション、メークアップ、化粧水、アフターシェーブ、クリーム、手指消毒剤の形態の化粧料製剤を当技術分野で公知の方法により作製する。特に指示がない場合、製剤のpHを適切と思われるpH3~7.5に調整する。以下の製剤において、用語「新規成分」は、表1に示すシス/トランス比を有するレチノール(Retinol mix)を指す。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】

【表5】
【0084】
【表6】

【表7】
【0085】
【表8】

【表9】
【0086】
【表10】
【0087】
【表11】
【0088】
【表12】
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
【表15】
【0092】
【表16】
【0093】
【表17】
【0094】
【表18】
【0095】
【表19】
【0096】
【表20】
【国際調査報告】