(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリオレフィン及びそれからの成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20241128BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241128BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20241128BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20241128BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241128BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/08
C08L23/16
C08L53/00
C08K3/04
C08K3/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533027
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2021136322
(87)【国際公開番号】W WO2023102763
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】リュー、アンドン
(72)【発明者】
【氏名】ゲン、シャン
(72)【発明者】
【氏名】マンロ、ジェフリー シー.
(72)【発明者】
【氏名】バリー、ラッセル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】大村 隆彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB052
4J002BB121
4J002BB152
4J002BP032
4J002DA036
4J002DE116
4J002DE136
4J002FD096
4J002GN00
(57)【要約】
本開示は、物品を対象とする。一実施形態では、成形品が、提供され、無架橋ポリマー組成物を含む。無架橋ポリマー組成物は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマー、20重量%~35重量%の耐衝撃性改良剤、及び0.5重量%~5重量%の顔料(及び任意選択の添加剤)を含み、プロピレンホモポリマー、耐衝撃性改良剤、及び顔料(及び任意選択の添加剤)は、合計で無架橋ポリマー組成物の100重量%になる。耐衝撃性改良剤は、(i)0.85g/cc~0.89g/ccの密度、及び45℃~65℃の融点、並びに0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックスを有するランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、(ii)0.86g/cc~0.89g/ccの密度、115℃~125℃の融点を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、並びに(iii)65重量%~87重量%のエチレン含有量及び16~68のムーニー粘度(125℃での1+4)を有するエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、並びに(iv)これらの組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品であって、
無架橋ポリマー組成物を含み、前記無架橋ポリマー組成物が、
65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーと、
(i)0.85g/cc~0.89g/ccの密度、45℃~65℃の融点、及び0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックスを有するランダムエチレン/C
4~C
8α-オレフィンコポリマー、(ii)0.86g/cc~0.89g/ccの密度、115℃~125℃の融点を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、並びに(iii)65重量%~87重量%のエチレン含有量及び16~68のムーニー粘度(125℃での1+4)を有するエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、並びに(iv)これらの組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーである20重量%~35重量%の耐衝撃性改良剤と、
0.5重量%~5重量%の顔料と、を含む、成形品。
【請求項2】
前記無架橋ポリマー組成物が、
65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーと、
前記耐衝撃性改良剤であって、5重量%~15重量%の前記ランダムエチレン/C
4~C
8α-オレフィンコポリマー、及び15重量%~25重量%の前記エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーからなる、前記耐衝撃性改良剤と、
0.5重量%~3重量%の顔料と、を含み、
前記成形品は、105℃で480時間後に、0%~33%の粒子の面積比及び0マイクロメートル~20マイクロメートルの粒子の平均面積を有する、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記無架橋ポリマー組成物が、
65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーと、
前記耐衝撃性改良剤であって、15重量%~25重量%の前記エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、及び5重量%~15重量%の前記EPDMからなる、前記耐衝撃性改良剤と、
0.5重量%~3重量%の顔料と、を含み、
前記成形品は、105℃で480時間後に、3%~51%の粒子の面積比及び4マイクロメートル~44マイクロメートルの粒子の平均面積を有する、請求項1に記載の成形品。
【請求項4】
前記無架橋ポリマー組成物が、
65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーリと、
前記耐衝撃性改良剤であって、15重量%~25重量%の前記ランダムエチレン/C
4~C
8α-オレフィンコポリマー及び5重量%~15重量%の前記EPDMからなる、前記耐衝撃性改良剤と、
0.5重量%~3重量%の顔料と、を含み、
前記成形品は、105℃で480時間後に、2%~53%の粒子の面積比及び15マイクロメートル~28マイクロメートルの粒子の平均面積を有する、請求項1に記載の成形品。
【請求項5】
前記顔料が、カーボンブラック、酸化チタン、赤酸化鉄、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項6】
前記成形品が、自動車のバンパーフェイシャ、自動車のドアトリムパネル、自動車の計器パネル、自動車の外装閉鎖パネル、ロッカーパネル、自動車のホイールフレア、ピラートリム、エアバッグカバー、自動車のフェンダー、自動車のフード、自動車のルーフパネル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エチレン/α-オレフィンコポリマーを含むポリオレフィンエラストマー(polyolefin elastomer、POE)は、熱可塑性ポリオレフィン(thermoplastic polyolefin、TPO)化合物のための耐衝撃性改良剤として一般に使用される。ポリプロピレン、他の添加剤、及び任意選択的に補強性充填材(タルクなど)とブレンドされる場合、POEは、剛性、衝撃靭性、及び流動特性のバランスをTPOに提供するために適用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車市場において、成形されたTPO部品(自動車の内装パネル、自動車の外装バンパーフェイシャなど)における美観(表面品質)に対する要件は、ユーザー体験の要求がより高くなり、より高い耐久性を必要とするようになるにつれて、より厳しくなりつつある。エチレン/ブテンコポリマー及びエチレン/オクテンコポリマーなどのポリオレフィンエラストマー(POE)を含有する成形されたTPO部品が高いエージング温度(100℃超)にさらされるときに問題が生じる。高いエージング温度では、POEは、成形されたTPO部品の表面に移動し、多くの審美的欠陥、例えば、虎縞模様、白化、光沢の低下、粘着性、不十分な触覚、不十分な耐候性、不十分な塗料安定性、及び他の部品との接着性の低下などをもたらす。
【0003】
当技術分野では、高温(100℃超)での熱処理に耐えることができ、成形部品の表面へのPOEの移動が低減された、POEを含有する成形TPO部品、特に自動車の部品の必要性が認識されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、物品を対象とする。一実施形態では、成形品が、提供され、無架橋ポリマー組成物を含む。無架橋ポリマー組成物は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマー、20重量%~35重量%の耐衝撃性改良剤、及び0.5重量%~5重量%の顔料を含み、プロピレンホモポリマー、耐衝撃性改良剤、顔料(及び任意選択の添加剤)は、合計で無架橋ポリマー組成物の100重量%になる。耐衝撃性改良剤は、(i)0.85g/cc~0.89g/ccの密度、45℃~65℃の融点、及び0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックスを有するランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、(ii)0.86g/cc~0.89g/ccの密度、115℃~125℃の融点を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、及び(iii)65重量%~87重量%のエチレン含有量及び16~68のムーニー粘度(125℃での1+4)を有するエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、並びに(iv)これらの組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも2つのメンバーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】105℃で0時間の熱処理後の、成形品CE-1、CE-2、CE-3、IE-1、IE-2、IE-3の光学顕微鏡画像である。スケールバーは50μmである。
【
図1B】105℃で120時間の熱処理後の、成形品CE-1、CE-2、CE-3、IE-1、IE-2、IE-3の光学顕微鏡画像である。スケールバーは50μmである。
【
図1C】105℃で480時間の熱処理後の、成形品CE-1、CE-2、CE-3、IE-1、IE-2、IE-3の光学顕微鏡画像である。スケールバーは50μmである。
【
図2A】105℃で0時間の熱処理後の、成形品CE-2、CE-4、IE-4、IE-5、IE-6、IE-7、IE-8、IE-9の光学顕微鏡画像である。スケールバーは50μmである。
【
図2B】105℃で120時間の熱処理後の、成形品CE-2、CE-4、IE-4、IE-5、IE-6、IE-7、IE-8、IE-9の光学顕微鏡画像である。スケールバーは50μmである。
【
図2C】105℃で480時間の熱処理後の、成形品CE-2、CE-4、IE-4、IE-5、IE-6、IE-7、IE-8、IE-9の光学顕微鏡画像である。スケールバーは50μmである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本明細書における元素周期表への全ての言及は、CRC Press,Inc.によって2003年に出版及び著作権化された元素周期表を指すものとする。また、族へのいずれの言及も、族を番号付けするためのIUPACシステムを使用してその元素の周期表に反映された族に対するものとする。相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部及び百分率は、重量に基づく。米国特許実務の目的のため、本明細書で参照される任意の特許、特許出願、又は刊行物の内容は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる(又は、それらの同等な米国版が、参照によってそのように組み込まれる)。
【0007】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値~上限値の全ての値(境界値も含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7には、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6、などを含む)。
【0008】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部及び百分率は、重量に基づき、全ての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0009】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、その組成物を含む材料の混合物、並びにその組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0010】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、任意の以降の記述の範囲から任意の他の構成成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる構成成分、工程、又は手順を排除する。
【0011】
「エラストマー」などの用語は、その元の長さの少なくとも2倍まで延伸することができ、延伸させる力を解放させた場合に、ほぼその元の長さまで非常に急速に収縮する、ゴム様のポリマーを指す。エラストマーは、約10,000psi(68.95MPa)以下の弾性率、及びASTM D638-72の方法を使用した室温での非架橋状態で、通常200%超の伸長を有する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセントを超える重合エチレンモノマーを含有し、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」、又は「ポリオレフィン」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合オレフィンモノマーを含有し、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。オレフィン系ポリマーの非限定的な例は、エチレン系ポリマー及びプロピレン系ポリマーを含む。
【0014】
「ポリマー」は、同一のタイプであるか又は異なるタイプであるかに関わらず、モノマーを重合することによって調製された化合物であり、重合形態で、ポリマーを組成する複数及び/若しくは反復「単位」又は「構造単位」を提供する化合物である。したがって、一般的なポリマーという用語は、ただ1つの種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために通常用いられるホモポリマーという用語と、少なくとも2つの種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられるコポリマーという用語と、を包含する。また、例えば、ランダム、ブロックなどの全ての形態のコポリマーも包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」及び「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれエチレン又はプロピレンを重合させて調製した上述のコポリマー及び1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーを示す。ポリマーは、多くの場合、特定されたモノマー又はモノマーの種類に「基づいて」、特定されたモノマー含有量を「含有している」など、1つ以上の特定されたモノマー「から作製される」ものとして言及されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定されたモノマーの重合残留物を指し、非重合種には言及していないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものと称される。
【0015】
「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合プロピレンモノマーを含有し、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。
【0016】
試験方法
粒子の面積比。Pythonスクリプト(https://scipy.org/で入手可能)は、熱処理後にTPOプレートの表面に移動したPOE粒子の画像を分析するために開発された。PythonのSciPyは、数学的、科学的、工学的、及び技術的な問題を解決するために使用されるオープンソースライブラリである。PythonのSciPyは、ユーザーが広範囲の高レベルPythonコマンドを使用してデータを操作し、データを視覚化することを可能にする。
【0017】
SciPy(https://scipy.org/で入手可能)、scikiti-image(https://scikit-image.org/で入手可能)、及びtkinterライブラリを、Pythonスクリプトの開発に使用した。「Tkinter」は、「Tk」(ツールキット)を「GUI」(グラフィカルユーザーインターフェース)にバインドするPythonである。Tkは、GUIを構築するためのGUIウィジェットの基本要素のライブラリを提供するフリーかつオープンソースのクロスプラットフォームウィジェットツールキットである。環境(背景)からのPOE粒子の好適なセグメンテーションを得るために、(i)トップハット変換を適用して閾値処理のための均一な背景を生成すること、(ii)閾値処理後に2値画像上の壊れたPOE粒子輪郭を接続するように設計された内蔵GUI、(iii)ウォーターシェッド変換のためのマーカーを作成するための形態学的再構成、及び(iv)付着したPOE粒子を分離するためのウォーターシェッド変換、を含むいくつかの関数が適用された。画像のブラック「トップハット」は、その形態学的閉鎖から元の画像を引いたものとして定義され、結合されたブラックトップハット変換及び閾値法は、粒子の明確な識別を生成する。アルゴリズムは、TPOプレート上のPOE粒子の好適な識別及びセグメンテーションを有する。識別された粒子の面積を、scikit-imageライブラリからのregionprops関数を使用して測定した。「regionprops関数」は、面積(領域の画素数)などのラベル付けされた画像領域の特性を測定する。粒子の面積比は次のように計算した:
識別された粒子の面積の合計/画像全体の面積。
【0018】
平均粒子サイズ。Pythonスクリプトは、熱処理後にTPOプレートの表面に移動したPOE粒子の画像を分析するために開発された。スクリプトの開発には、SciPy、scikiti-image、及びTkinterライブラリを使用した。環境(背景)からのPOE粒子の好適なセグメンテーションを得るために、(i)トップハット変換を適用して閾値処理のための均一な背景を生成すること、(ii)閾値処理後に2値画像上の壊れたPOE粒子輪郭を接続するように設計された内蔵GUI、(iii)ウォーターシェッド変換のためのマーカーを作成するための形態学的再構成、及び(iv)付着したPOE粒子を分離するためのウォーターシェッド変換、を含むいくつかの関数が適用された。アルゴリズムは、TPOプレート上のPOE粒子の好適な識別及びセグメンテーションを有する。平均粒子サイズは、scikit-imageライブラリからのregionprops関数を使用することによって測定した。「regionprops関数」は、面積(領域の画素数)などのラベル付けされた画像領域の特性を測定する。
【0019】
Pythonスクリプトは以下を含む。scipyのndimageからのdistance_transform_edt及びbinary_fill_holesをスクリプトで使用した。distance_transform_edtを適用して、2値画像の距離マップを作成した。binary_fill_holesは、バイナリオブジェクトの穴を埋めるために適用された。scikiti-imageは、閾値法によって2値画像を取得し、2値画像のセグメンテーションを実行し、セグメント画像を測定するなどを行うために適用された。Tkinterは、2値画像内の任意の壊れた輪郭に対する手動補正のために適用された。
【0020】
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定され、結果は、1立方センチメートル当たりのグラム(g)(g/cc又はg/cm3)で記録される。
【0021】
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)。示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲にわたる温度のポリマーの融解、結晶化、及びガラス転移挙動を測定し得る。例えば、RCE(冷蔵冷却システム(refrigerated cooling system))及びオートサンプラーを備えたTA Instruments Q1000 DSCを使用して、本分析を実行する。試験中、使用する窒素パージガス流量は50mL/分である。各試料を約175℃で溶融圧縮して薄膜にし、次に、溶融した試料を室温(約25℃)まで空冷する。3~10mg、直径6mmの試験片を冷却したポリマーから抽出し、秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)内に置き、圧着して閉じる。次に、その熱特性を決定するために分析を実行する。
【0022】
試料の熱挙動を、試料温度を昇降させて熱流対温度のプロファイルを創出することにより決定する。まず、その熱履歴を除去するために、試料を180℃まで急速に加熱し、3分間等温で保持する。次に、試料を、10℃/分の冷却速度で-80℃まで冷却し、-80℃で3分間等温保持する。次に、試料を10℃/分の加熱速度で180℃まで加熱する(これが「第2の加熱」勾配である)。冷却曲線及び第2の加熱曲線を記録する。ベースラインエンドポイントを結晶化の開始から-20℃までに設定することによって、冷却曲線を分析する。ベースラインエンドポイントを-20℃から融解終了までに設定することによって、熱曲線を分析する。決定される値は、ピーク溶解温度(peak melting temperature)、Tm、及びピーク結晶化温度(peak crystallization temperature)、Tc、融解熱(heat of fusion)、Hf(ジュール/グラムでの)、ガラス転移温度(glass transition temperature)、Tg、並びに次式:結晶化度%=((Hf)/(292J/g))×100を使用するポリエチレン試料についての算出された結晶化度%である。
【0023】
第2の加熱曲線から、融解熱(Hf)(融解エンタルピーとしても周知)及びピーク融解温度が報告される。
【0024】
融点Tmは、まず融解転移の開始と終了との間にベースラインを引くことにより、DSC加熱曲線から決定される。融解吸熱のピークは、融点(melting point)、Tmで認められる。
【0025】
ガラス転移温度(Tg)は、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,278-279(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載されている通り、試料の半分が液体の熱容量を獲得したDSC加熱曲線から求められる。ガラス転移領域の下及び上から基線を引き、Tg領域を通して外挿する。試料の熱容量がこれらの基線の中間となる温度が、Tgである。
【0026】
メルトフローレート(Melt flow rate)(又はMFR)測定(プロピレン系エラストマーの場合)は、ASTM D1238、条件230℃/2.16キログラム(kg)の重量に従って実施される。メルトインデックスと同様に、メルトフローレートはポリマーの分子量に反比例する。したがって、関係は線形ではないが、分子量が高いほど、メルトフローレートは低くなる。
【0027】
メルトインデックス(melt index)(MI又はI2)(エチレン系エラストマーの場合)は、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、結果は10分当たりのグラム数(g/10分)で報告される。
【0028】
ムーニー粘度試験:EPDMゴムムーニー粘度をASTM 1646-04に従ってムーニーせん断ディスク粘度計で測定する。機器は、Alpha Technologiesムーニー粘度計2000である。2rpmでローターを回転させるためのトルクをトルクトランスデューサーによって測定する。プラテンを閉じた後、試料を1分間予熱する。その後、モーターが始動し、トルクを4分間にわたって記録する。結果を、ムーニー単位(Mooney Unit、MU)で「125℃でのML(1+4)」として報告する。「ML」という用語は、大型ローター「ムーニーラージ(Mooney Large)」が粘度試験で使用されることを示し、この大型ローターは標準サイズのローターである。ムーニー粘度(Mooney viscosity、MV)は、比較的低いせん断速度で流動するポリマーの抵抗性を測定し、ポリマーの流動性を示す。
【0029】
引張強度。本組成物は、それらの破断点引張強さ(MPaでの)及び破断点伸び(%)によって特徴評価することができる。引張強度及び引張伸びは、ASTM D4703に従って調製された圧縮成形試料に対して、ASTM D638試験手順に従って測定する。破断点伸び(Elongation at break)、又は破断点伸び(Elongation to break)は、破断したときの、パーセントで示される試料のひずみである。
【0030】
詳細な説明
本開示は成形品を提供する。一実施形態では、成形品は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマー及び20重量%~35重量%の耐衝撃性改良剤から構成される無架橋ポリマー組成物から構成される。耐衝撃性改良剤は、(i)0.85g/cc~0.89g/ccの密度、45℃~65℃の融点、及び0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックスを有するランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、(ii)0.86g/cc~0.89g/ccの密度、115℃~125℃の融点を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、及び(iii)65重量%~87重量%のエチレン含有量及び16~68のムーニー粘度(125℃でのML(1+4))を有するエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(ethylene/propylene/diene terpolymer、EPDM)、並びに(iv)これらの組み合わせ、からなる群から選択される少なくとも2つのポリマー材料から構成される。ポリマー組成物はまた、0.5重量%~5重量%の顔料(及び任意選択の添加剤)も含む。
【0031】
成形品は、無架橋ポリマー組成物から構成される。「成形品」は、本明細書で使用される場合、ポリマー組成物を溶融状態にするか、又は別の方法でポリマー組成物を柔軟な状態にすることによって熱処理を受け、溶融したポリマー組成物を金型に導入して所定の形状を有する成形構造体を形成し、冷却した成形構造体が1ミリメートル(mm)~4mmの厚さを有する、ポリマー組成物である。好適な成形品の非限定的な例としては、自動車の内装パネル、自動車のバンパーフェイシャ、自動車のグリルコンポーネント、内装冷蔵庫パネル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
成形品は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーと、20重量%~35重量%の耐衝撃性改良剤と、0.5重量%~5重量%の顔料(及び任意選択の添加剤)とから構成される無架橋ポリマー組成物で構成される。重量パーセントは、無架橋ポリマー組成物の総重量に基づく。本明細書で使用される場合、「無架橋ポリマー組成物」という用語は、キシレンに不溶性のゲルが、ASTM 2765に従って測定して0%、又は0%超~3重量%未満の程度まで形成されるように、ポリマー鎖間の結合をほとんど又は全く有しないポリマー組成物である。
【0033】
無架橋ポリマー組成物は、65重量%~75重量%のプロピレン系ポリマーを含有する。プロピレン系ポリマーの非限定的な例としては、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンターポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、プロピレン耐衝撃性コポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なα-オレフィンの非限定的な例としては、C2及びC4~C20α-オレフィン、又はC4~C10α-オレフィン、又はC4~C8α-オレフィンが挙げられる。代表的なα-オレフィンとしては、エチレン(プロピレン/エチレンコポリマー)、1-ブテン(プロピレン/ブテンコポリマー)、1-ペンテン(プロピレン/ペンテンコポリマー)、1-ヘキセン(プロピレン/ヘキセンコポリマー)、1-ヘプテン(プロピレン/ヘプテンコポリマー)、及び1-オクテン(プロピレン/オクテンコポリマー)が挙げられる。
【0034】
一実施形態では、無架橋ポリマー組成物は、プロピレンホモポリマーである65重量%~75重量%プロピレン系ポリマーを含む。プロピレンホモポリマーは、以下の特性のうちの1つ、いくつか又は全てを有する:
(i)0.89g/cc~0.91g/cc、若しくは0.90g/ccの密度、及び/又は
(ii)1.0g/10分~30g/10分、又は10g/10分~28g/10分、若しくは15g/10分~25g/10分のMFR、及び/又は
(iii)160℃~170℃、若しくは163℃~168℃の融点。
【0035】
成形品の無架橋ポリマー組成物は、20重量%~35重量%の耐衝撃性改良剤を含む。耐衝撃性改良剤は、(i)0.85g/cc~0.89g/ccの密度、45℃~65℃の融点、及び0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックスを有するランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、(ii)0.86g/cc~0.89g/ccの密度、115℃~125℃の融点を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、並びに(iii)65重量%~87重量%のエチレン含有量及び16~68のムーニー粘度(125℃でのML(1+4))を有するエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、並びに(iv)これらの組み合わせ、から選択される少なくとも2つのポリマー材料から構成される。
【0036】
ランダムエチレンエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーは、エチレン及び1つの重合形態の共重合性C4~C8α-オレフィンコモノマーから構成されるか、又は別様にそれらからなる。C4~C8α-オレフィンコモノマーは、ブテン、ヘキセン、及びオクテンから選択される。耐衝撃性改良剤が存在する場合、ランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーは、次の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを有する:
(i)0.85g/cc~0.89g/cc、若しくは0.86g/cc~0.88g/ccの密度、及び/又は
(ii)45℃~65℃、若しくは50℃~60℃の融点、及び/又は
(iii)0.1g/10分~6.0g/10分のメルトインデックス。一実施形態では、ランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーは、前述の特性(i)~(iii)のそれぞれを有する。
【0037】
好適なランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマーの非限定的な例としては、Dow,Inc.から入手可能なENGAGE 8200及びENGAGE HM7387が挙げられる。
【0038】
「エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー」という用語は、重合形態でのエチレン及びオクテンコモノマー(及び任意選択の添加剤)からなるエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーを指し、ポリマーは、化学的又は物理的特性が異なる2つの重合モノマー単位の複数のブロック又はセグメントによって特徴付けられており、ブロックは、線状の様式で結合(又は共有結合)しており、すなわち、ポリマーは、重合エチレン性官能基に関して端部と端部とが結合している化学的に区別された単位を含む。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーとしては、2つのブロック(ジブロック)及び3つ以上のブロック(マルチブロック)を有するブロックコポリマーが挙げられる。エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、スチレンを含まないか、若しくはそうでなければ除外しており(すなわち、スチレンフリー)、かつ/又はビニル芳香族モノマーを含まないか、若しくはそうでなければ除外しており、かつ/又は共役ジエンを含まないか、若しくはそうでなければ除外している。コポリマー中の「エチレン」又は「コモノマー」の量に言及する場合、これはその重合単位を指すと理解される。いくつかの実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、次式:(AB)nによって表され得、式中、nは、少なくとも1であり、好ましくは1超の整数であり、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又はそれ以上であり、「A」は、ハードブロック又はセグメントを表し、「B」は、ソフトブロック又はセグメントを表す。A及びBは、実質的に分岐状又は実質的に星形の方式とは対照的に、実質的に線状の方式で、又は線状の様式で、連結又は共有結合される。その他の実施形態では、Aブロック及びBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布する。言い換えれば、ブロックコポリマーは、通常、次のような構造を有しない:AAA-AA-BBB-BB。一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、異なるコモノマーを含む第3の種類のブロックを有しない。別の実施形態では、ブロックA及びブロックBのそれぞれは、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマー又はコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、残りのブロックとは実質的に異なる組成を有する先端セグメントなどの別個の組成の2つ以上のサブセグメント(又はサブブロック)を含まない。
【0039】
一実施形態では、エチレンは、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの過半数のモル分率を構成する、すなわち、エチレンは、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの少なくとも50重量%を構成する。より好ましくは、エチレンは、オクテンコポリマーを含むエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー全体の実質的に残りの部分と共に、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%を構成する。一実施形態では、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、50重量%~90重量%のエチレン、又は60重量%~85重量%のエチレン、又は65重量%~80重量%のエチレンを含有する。多くのエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの場合、組成物は、全エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの80重量%超のエチレン含有量及び全マルチブロックコポリマーの10重量%~15重量%又は15重量%~20重量%のオクテン含有量を含む。
【0040】
エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、様々な量の「ハード」セグメント及び「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて、90重量%超、又は95重量%、又は95重量%超、又は98重量%超、最大100重量%の量で存在する重合単位のブロックである。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含有量(エチレン以外のモノマー(オクテン)の含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、10重量%未満、又は5重量%、又は5重量%未満、又は2重量%未満であり、最低でゼロであり得る。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、エチレンから誘導される全ての、又は実質的に全ての単位を含む。「ソフト」セグメントは、コモノマー含有量(エチレン以外のモノマー(オクテン)の含有量)は、ポリマーの重量に基づいて、5重量%超、又は8重量%超、10重量%超、又は15重量%超である重合単位のブロックである。一実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含有量は、20重量%超、25重量%超、30重量%超、35重量%超、40重量%超、45重量%超、50重量%超、又は60重量%超であり、最大100重量%であり得る。
【0041】
ソフトセグメントは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの総重量の1重量%~99重量%、又はエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの総重量の5重量%~95重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、35重量%~65重量%、40重量%~60重量%、又は45重量%~55重量%でエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー中に存在し得る。逆に、ハードセグメントは、同様の範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量百分率及びハードセグメントの重量百分率は、DSC又はNMRから得られたデータに基づいて計算され得る。このような方法及び計算は、例えば、Colin L.P.Shan、Lonnie Hazlittらの名義で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡された、米国特許第7,608,668号、発明の名称:「Ethylene/α-Olefin Block Inter-polymers」に開示されており、その開示は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。特に、ハードセグメント及びソフトセグメントの重量パーセント及びコモノマー含有量は、米国特許第7,608,668号の第57欄~第63欄に記載されるように決定されてもよい。
【0042】
エチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、線状の様式で結合(又は共有結合)した2つ以上の化学的に異なる領域又はセグメント(「ブロック」と称される)を含み、すなわち、それはペンダント又はグラフト化された方式ではなく、重合エチレン性官能基に関して端と端とで結合している化学的に区別された単位を含有する。一実施形態では、ブロックは、組み込まれたコモノマーの量若しくは種類、密度、結晶化度の量、このような組成のポリマーに起因し得る微結晶サイズ、立体規則性の種類若しくは程度(アイソタクチック若しくはシンジオタクチック)、位置規則性若しくは位置不規則性、分岐(長鎖分岐若しくは超分岐を含む)の量、均一性、又は任意のその他の化学的若しくは物理的特性が異なる。連続的なモノマー添加、流動触媒、又はアニオン重合技術によって生成されるインターポリマーを含む、従来技術のブロックインターポリマーと比較して、本発明のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、一実施形態では、ポリマー多分散性(polydispersity、PDI又はMw/Mn又はMWD)、多分散ブロック長分布、及び/又はそれらの調製に使用される複数の触媒と組み合わせたシャトル剤の効果による多分散ブロック数分布の両方の独特の分布によって、特徴付けられる。
【0043】
エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(エチレン及びオクテンコモノマーのみからなる)は、以下の特性のうち1つ、いくつか、又は全てを有する:
(i)1.7若しくは1.8から2.2、若しくは2.5、若しくは3.5のMw/Mn、並びに/又は
(ii)0.850g/cc~0.920g/cc、若しくは0.850g/cc~0.910g/cc、若しくは0.860g/cc~0.890g/cc、若しくは0.860b/cc~0.880g/ccの密度、並びに/又は
(iii)115℃~125℃、若しくは118℃~121℃の融点(Tm)、並びに/又は
(iv)0.7g/10分~20g/10分、若しくは1.0g/10分~15g/10分のMI、並びに/又は
(v)50~93重量%のソフトセグメント及び50~7重量%のハードセグメント、並びに/又は
(vi)ソフトセグメント中の10mol%、若しくは13mol%、若しくは14mol%、若しくは15mol%~16mol%、若しくは17mol%、若しくは18mol%、若しくは19mol%、若しくは20mol%のC4~C12α-オレフィン、並びに/又は
(vii)ハードセグメント中0.5mol%、若しくは1.0mol%、若しくは2.0mol%、若しくは3.0mol%から4.0mol%、若しくは5mol%、若しくは6mol%、若しくは7mol%、若しくは9mol%のオクテン、並びに/又は
(viii)ASTM D 1708に従って測定した21℃における300%/分変形率で、50%、若しくは60%~70%、若しくは80%、若しくは90%の弾性回復(elastic recovery、Re)、並びに/又は
(ix)ブロックの多分散分布及びブロックサイズの多分散分布。特性(i)~(ix)を有するエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーは、米国特許第7,608,668号に開示されており、その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0044】
好適なエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーの非限定的な例としては、Dow,Inc.から入手可能なINFUSE 9107、INFUSE 9507、及びINFUSE 9807が挙げられる。
【0045】
エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)ジエンを含む。一実施形態では、ジエンは、非環状ジエン又は環状ジエンである。非環式ジエンの非限定的な例には、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4-ヘキサジエン及び1,5-ヘプタジエン、並びに分岐鎖非環式ジエン、例えば、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、5,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、及び1,9-デカジエン、並びにジヒドロミルセンの混合異性体が挙げられる。環状ジエンの非限定的な例としては、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、及び1,5-シクロドデカジエンなどの単環式ジエン;テトラヒドロインデン及びメチルテトラヒドロインデンなどの多環脂環式縮合及び架橋環ジエン;5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、及び5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネンなどのアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、及びシクロアルキリデンノルボルネンが挙げられる。
【0046】
一実施形態では、ジエンはENBである。
【0047】
一実施形態では、EPDMは、1種類のジエンのみを含む。この1種類のジエンは無効であるか、又はヘテロ原子を含まない。更なる実施形態では、EPDMは、エチレン/プロピレン/5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)ターポリマーである。エチレン/プロピレン/ENBターポリマーは、3つのモノマーのみを有し、ENBはターポリマー中の唯一のジエンである。
【0048】
一実施形態では、EPDMはニートターポリマーである。本明細書で使用される「ニート」という用語は、その構造内又はその構造上に油を有しない材料を示す。本明細書で使用される場合、「ニート」という用語は、「オイルフリー」である材料を互換的に示す。一実施形態では、EPDMはニートEPDM(すなわち、「n-EPDM」)である。
【0049】
一実施形態では、EPDMはn-EPDMであり、
(i)65~87重量%、若しくは67~85重量%の重合エチレン、
(ii)35重量%~13重量%、若しくは33重量%~15重量%の重合プロピレン、
(iii)0.1重量%~5.5重量%のENB(ここで、(i)、(ii)、(iii)の総量はn-EPDMの100重量%である)、から構成され、n-EPDMは以下の特性のうちの1つ、いくつか、若しくは全てを有する:
(iv)16MU~68MU、若しくは20MU~63MUのムーニー粘度、及び/又は
(v)0.86g/cc~0.92g/cc、若しくは0.87g/cc~0.92g/ccの密度。
【0050】
好適なn-EPDMの非限定的な例としては、Dow Inc.から入手可能なNORDEL IP 3720P、NORDEL IP 3760P、及びNORDEL IP 4820Pが挙げられる。
【0051】
無架橋ポリマー組成物は、0.5重量%~5重量%、又は0.5重量%~3.0重量%の顔料を含む。好適な顔料の非限定的な例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、赤酸化鉄、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、顔料は、ポリマー担体樹脂を有するマスターバッチの形態である。
【0052】
非架橋ポリマー組成物は、任意選択の添加剤を含んでもよい。一実施形態では、添加剤は、無架橋ポリマー組成物中に存在し、添加剤としては、充填剤(タルクなど)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、剥離剤、摩擦係数(coefficient of friction、COF)調整剤、熱安定剤、臭気調整剤/吸収剤、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、添加剤は、無架橋ポリマー組成物の重量に基づいて、0.1重量%~2.0重量%、又は0.1重量%~1.0重量%、又は0.1重量%~0.5重量%の量で存在する。
【0053】
一実施形態では、TPOは、二軸スクリュー押出機(例えば、汎用構成を有するCoperion ZSK 18mm二軸スクリュー押出機など)において調合される。プロファイル温度は、190℃~210℃、又は200℃の温度に設定した。各配合物について、ポリマー樹脂を設計された比で一緒にドライブレンドした。射出成形プロセスのために、調合されたTPOペレットを射出成形装置(例えば、直径28mmのFANUC S-2000I Bシリーズ射出成形機など)で射出成形した。プロファイル温度を200℃~210℃、又は204℃の温度に設定し、金型温度を35℃~40℃、又は38℃の温度に設定した。240mm×60mm×2mm(長さ×幅×厚さ)のサイズで10枚のプレートを成形した。
【0054】
一実施形態では、成形品の無架橋ポリマー組成物は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーを含む。耐衝撃性改良剤は、5重量%~15重量%のランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、及び15重量%~25重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマーからなる。無架橋ポリマー組成物はまた、0.5重量%~3重量%の顔料(及び任意選択の添加剤)も含む。重量パーセントは、無架橋ポリマー組成物の総重量に基づく。プロピレンホモポリマー、耐衝撃性改良剤、及び顔料(及び任意選択の添加剤)の量は、架橋を含まないポリマー構成成分の100重量%であることが理解される。成形品は、(i)105℃で120時間(hr)後に0%~33%の粒子の面積比、及び105℃で120hr後に0マイクロメートル~20マイクロメートルの粒子の平均面積、並びに/又は(ii)105℃で480hr後に0%~33%の粒子の面積比、及び105℃で480hr後に0マイクロメートル~19マイクロメートルの粒子の平均面積、を有する。
【0055】
一実施形態では、成形品の無架橋ポリマー組成物は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーを含む。耐衝撃性改良剤は、15重量%~25重量%のエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー、及び5重量%~15重量%のEPDMからなる。無架橋組成物はまた、0.5重量%~3重量%の顔料(及び任意選択の添加剤)も含む。重量パーセントは、ポリマー組成物の総重量に基づく。プロピレンホモポリマー、耐衝撃性改良剤、及び顔料(及び任意選択の添加剤)の量は、架橋を含まないポリマー成分の100重量%であることが理解される。成形品は、(i)105℃で120(hr)後に1%~46%の粒子の面積比、及び105℃で120hr後に2マイクロメートル~27マイクロメートルの粒子の平均面積、並びに/又は(ii)105℃で480hr後に3%~51%の粒子の面積比、及び105℃で480hr後に4マイクロメートル~44マイクロメートの粒子の平均面積、を有する。
【0056】
一実施形態では、成形品の無架橋ポリマー組成物は、65重量%~75重量%のプロピレンホモポリマーを含む。耐衝撃性改良剤は、15重量%~25重量%のランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、及び5重量%~15重量%のEPDMからなる。無架橋ポリマー組成物はまた、0.5重量%~3重量%の顔料(及び任意選択の添加剤)も含む。重量パーセントは、ポリマー組成物の総重量に基づく。プロピレンホモポリマー、耐衝撃性改良剤、及び顔料(及び任意選択の添加剤)の量は、無架橋ポリマー組成物の100重量%であることが理解される。成形品は、(i)105℃で120hr後に3%~48%の粒子の面積比、及び105℃で120hr後に13マイクロメートル~26マイクロメートルの粒子の平均面積、並びに/又は(ii)105℃で480hr後に2%~53%の粒子の面積比、及び105℃で480hr後に15マイクロメートル~28マイクロメートの粒子の平均面積、を有する。
【0057】
一実施形態では、成形品は、自動車のバンパーフェイシャ、自動車のドアトリムパネル、自動車の計器パネル、自動車の外装閉鎖パネル(垂直ドアパネル、リフトゲート又はテールゲートパネル)、ロッカーパネル、自動車のホイールフレア、ピラートリム、エアバッグカバー、自動車のフェンダー、自動車のフード、自動車のルーフパネル、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0058】
限定するものではなく例として、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳述する。
【実施例】
【0059】
本発明の実施例(「Inventive Example、IE」)及び比較例(「Comparative Example、CE」)で使用する原料は下表1に詳述されている。
【0060】
【表1】
aメルトフローレートは230℃かつ2.16kgで測定した。
【0061】
表1からの材料を、汎用構成を有する二軸スクリュー押出機Coperion ZSK 18mmで調合した。プロファイル温度を200℃に設定した。各配合物について、ポリマー材料を設計された比で一緒にドライブレンドした。表1の材料から形成された無架橋ポリマー組成物を表2に示す。
【0062】
成形品の製造方法
表2の無架橋ポリマー組成物を、直径28mmのFANUC S-2000I Bシリーズ射出成形機で射出成形した。射出プロファイル温度を204℃に設定し、型温を38℃に設定した。射出成形速度は26mm/秒であり、スクリュー回転は80RPMであった。射出成形条件は、全てのTPO化合物について一定にした。10個の成形品(例えば、成形プレート)を作製し、各プレートは、240mm×60mm×2mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を有した。
【0063】
各プレートをオーブンに入れ、0時間、120時間、及び480時間の所定のエージング時間の間、105℃でクリップを用いてオーブン内の棚に吊した。
【0064】
光学顕微鏡(Light Microscopy、LM)測定
反射光による明視野モード下のZ1m顕微鏡を備えたZeiss Imagerを使用して、105℃で0時間、120時間、及び480時間の熱的加熱によって引き起こされた成形品表面の変化を分析した。LMデータを、105℃で120時間及び480時間の熱的加熱について、粒子の面積比(%)(表2の「面積比」)及び粒子の平均面積(マイクロメートル)(表2の「平均面積」)として表2に示す。
【0065】
【表2】
*--表面上に粒子は観察できず、Zeiss Imager及びPythonスクリプトによって粒子は検出できない。
【0066】
IE-1、IE-2、及びIE-3については、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE9107/9507/9807)へのランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー(ENGAGE HM7387)の組み込みは、それぞれ、CE-1(IE-1の0/0と比較してCE-1は28/11.8)、CE-2(IE-2の27.8/16.1と比較してCE-2は63.7/31.7)、及びCE-3(IE-3の32.8/18.3と比較して62.1/36.3)と比較して、成形品の表面上の粒子の面積比及び粒子の平均面積を減少させる。特定の理論に束縛されるものではないが、ランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー(ENGAGE HM7387)の存在は、成形品の表面へのエチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE 9107/9507/9807)粒子の移動を低減させると考えられる。
【0067】
IE-4、IE-5、及びIE-6については、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE 9507)への、エチレン含有量及び/又はムーニー粘度を増加させたEPDMの組み込みは、CE-2と比較して、成形品の表面上の粒子の面積比及び粒子の平均面積を減少させる((i)IE-4の50.7/43.2、(ii)IE-5の19.7/7.5、及び(iii)IE-6の3.4/4.2と比較して、CE-2は63.7/31.7)。特定の理論に束縛されるものではないが、EPDMは、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE 9507)を成形品中に固定し、エチレン/オクテンマルチブロックコポリマー(INFUSE 9507)粒子の成形品表面への移動を低減する。
【0068】
IE-7、IE-8、及びIE-9については、ランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー(ENGAGE 8200)へのエチレン含有量及び/又はムーニー粘度を増加させたEPDMの組み込みは、CE-4と比較して、成形品の表面上の粒子の面積比及び粒子の平均面積を減少させる((i)IE-7の52.3/28、(ii)IE-8の10.3/19.9、及び(iii)IE-9の2.2/15.7と比較して、CE-4は39.3/50.3)。特定の理論に束縛されるものではないが、EPDMは、ランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー(ENGAGE 8200)を成形品中に固定し、ランダムエチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー(ENGAGE 8200)粒子の成形品表面への移動を低減する。
【0069】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されず、実施形態の一部、及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当する範囲で含むことが、特に意図されている。
【国際調査報告】