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特表2024-545062アンモニア処理システム及びこれを含む船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】アンモニア処理システム及びこれを含む船舶
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20241128BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20241128BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241128BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20241128BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20241128BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20241128BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20241128BHJP
   F17C 13/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
F02M37/00 331
F25J1/00 D
B01D53/94 222
B63H21/38 B
B63B25/16 D
F02M37/00 J
F02M37/08 B
F01N3/08 B
F17C13/00 302A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533132
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 KR2022019541
(87)【国際公開番号】W WO2023101523
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0172393
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041857
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041861
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0044831
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0044835
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0044838
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520387760
【氏名又は名称】エイチディー ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ムン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ホ ヘ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ペク ウン ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ キュン ウォン
【テーマコード(参考)】
3E172
3G091
4D047
4D148
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB20
3E172BA06
3E172BD02
3E172DA90
3E172EB02
3E172EB03
3E172HA04
3E172HA08
3E172KA03
3G091AA04
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB15
3G091BA14
3G091BA36
3G091CA17
3G091HA10
4D047AA01
4D047AB00
4D047BA07
4D047BA08
4D047CA04
4D047CA06
4D047CA09
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC04
4D148CC61
(57)【要約】
アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、上記ベント部は、上記アンモニア貯蔵タンクまたは上記燃料供給部から排出される低圧のアンモニアを収集する低圧排出ドラムと、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出される高圧のアンモニアを収集する高圧排出ドラムと、アンモニアを処理してベントマストに伝達する排出処理機と、を含み、上記低圧排出ドラムまたは上記高圧排出ドラムは、アンモニアを上記排気処理部または上記排出処理機に伝達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、
上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、
上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、
上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、
上記ベント部は、
上記アンモニア貯蔵タンクまたは上記燃料供給部から排出される低圧のアンモニアを収集する低圧排出ドラムと、
上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出される高圧のアンモニアを収集する高圧排出ドラムと、
アンモニアを処理してベントマストに伝達する排出処理機と、を含み、
上記低圧排出ドラムまたは上記高圧排出ドラムは、
アンモニアを上記排気処理部または上記排出処理機に伝達する、アンモニア処理システム。
【請求項2】
上記排気処理部は、
上記燃料供給部により上記エンジンに供給されるアンモニアのうち少なくとも一部を還元剤として利用する、請求項1に記載のアンモニア処理システム。
【請求項3】
上記低圧排出ドラム及び上記高圧排出ドラムは、
収集したアンモニアのうち少なくとも一部を上記アンモニア貯蔵タンクに伝達する、請求項1に記載のアンモニア処理システム。
【請求項4】
上記アンモニア貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを再液化する再液化部をさらに含み、
上記再液化部は、
蒸発ガスのうち少なくとも一部を上記低圧排出ドラムまたは上記排気処理部に伝達する、請求項1に記載のアンモニア処理システム。
【請求項5】
上記燃料供給部は、
アンモニアを移送する低圧ポンプと、
上記低圧ポンプによって加圧されたアンモニアを上記エンジンの要求圧力に対応するように加圧する高圧ポンプと、
アンモニアの温度を調整する熱交換器と、を含み、
上記燃料回収部は、
上記エンジンから排出された余剰アンモニアを冷却し、上記燃料供給部から上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間に伝達するクーラーと、
上記クーラーと並列に設けられ、アンモニアを一時貯蔵するキャッチドラムと、を含む、請求項1に記載のアンモニア処理システム。
【請求項6】
アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、
上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、
上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、
上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、
上記排気処理部は、
アンモニアを酸化処理し、
上記ベント部は、
上記アンモニア貯蔵タンク、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを捕集し、アンモニアに水を混合して上記排気処理部に伝達する排出処理機を含む、アンモニア処理システム。
【請求項7】
上記ベント部は、
上記アンモニア貯蔵タンク、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを収集してから上記排出処理機または上記排気処理部に伝達する排出ドラムをさらに含み、
上記排出処理機は、
水を利用してアンモニアを捕集し、アンモニア水を上記排気処理部に伝達する、請求項6に記載のアンモニア処理システム。
【請求項8】
非爆発性ガスを利用して上記燃料供給部または上記燃料回収部をパージするパージ部をさらに含み、
上記パージ部は、
上記排出ドラムに非爆発性ガスを伝達して上記排出ドラムの圧力を上記排出処理機または上記排気処理部より高く調整する、請求項7に記載のアンモニア処理システム。
【請求項9】
アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、
上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、
上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、
上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、
上記燃料供給部は、
アンモニアを移送する低圧ポンプと、
上記低圧ポンプによって加圧されたアンモニアを上記エンジンの要求圧力に対応するように加圧する高圧ポンプと、
アンモニアの温度を調整する熱交換器と、を含み、
上記燃料回収部は、
上記エンジンから排出された余剰アンモニアを冷却し、上記燃料供給部から上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間に伝達するクーラーと、
上記クーラーの下流に設けられて上記燃料回収部から上記燃料供給部に向かって流動するアンモニアを該当温度の飽和圧力以上に保持する圧力調整バルブと、を含む、アンモニア処理システム。
【請求項10】
上記燃料回収部は、
上記エンジンから排出された余剰アンモニアを上記燃料供給部において上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間のアンモニアに混合する混合器をさらに含み、
上記圧力調整バルブは、
上記クーラーと上記混合器との間に設けられる、請求項9に記載のアンモニア処理システム。
【請求項11】
上記クーラーは、
アンモニアとは別途で備えられる媒体を利用してアンモニアを冷却する第1クーラーと、
上記第1クーラーの下流または上流に設けられ、上記燃料供給部のアンモニアを利用する第2クーラーと、を含む、請求項9に記載のアンモニア処理システム。
【請求項12】
上記熱交換器は、
上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間に設けられる第1熱交換器と、
上記高圧ポンプと上記エンジンとの間に設けられる第2熱交換器と、を含み、
上記第1熱交換器は、
上記混合器と上記高圧ポンプとの間に設けられ、
上記第2熱交換器は、
上記第2クーラーと上記エンジンとの間に設けられる、請求項10に記載のアンモニア処理システム。
【請求項13】
請求項1、6及び9の何れか1項に記載の上記アンモニア処理システムを含む、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンモニア処理システム及びこれを含む船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に大気汚染が深刻化し、大気汚染で気候変動が起きている。船舶から排出される汚染物質が大気汚染に与える影響が大きいため、大気汚染を減らすために国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)、欧州連合、米国などは船舶から排出される汚染物質に対する規制を強化している。
【0003】
今後、船舶の温室効果ガスの排出規制が2050年までに主要基点ごとに段階的に強化されることにより、既存のエンジン及び燃料だけでは汚染物質に対する規制を遵守することが難しいと見込まれる。
【0004】
従って、強化された船舶の温室効果ガスの排出規制が適用されるにつれて、現在使用されている既存の化石燃料の使用が困難となることが予想され、今後強化される規制を満たすことができる代替燃料の発掘が極めて至急である。代替燃料として、アンモニア(NH3)、バイオ燃料(Biofuel)、太陽エネルギー、風力エネルギーなどの非化石燃料が考慮されているのが実情である。
【0005】
そのうちアンモニアは生産、貯蔵、輸送及び供給が可能な化学物質であり、アンモニアを燃料として使用するアンモニア船舶が開発されている。
【0006】
既存のアンモニア船舶はアンモニア燃料を液体として貯蔵するが、アンモニアは常温より低い沸点(大気圧基準、-33℃)を有するため、アンモニアを液体で貯蔵するためにはアンモニア貯蔵タンクも一定仕様を備えなければならない。また、アンモニアを液体状態に保持するためにタンク内部を低温状態に保持する必要があるため、貯蔵タンクを冷却しなければならず、冷却する過程で多くのエネルギーが消費される。
【0007】
また、液体アンモニアの貯蔵タンクはタンク内で蒸発気体が発生する可能性があり、上記蒸発気体により貯蔵タンクの内部圧力が上昇してタンクが爆発するリスクがあるため、液体アンモニアがタンクの外部に流出した場合に爆発が起こり得て、アンモニアの毒性による人命被害の危険がある。
【0008】
このように既存のアンモニア船舶は液体アンモニア燃料を貯蔵し、アンモニア燃料をエンジンに供給するにおいて、設備コストと運営コストの側面で効率性が低下し、施設の安全性も低下するという限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために創出されたものであって、アンモニアをエンジンの燃料として供給するにおいて安定的かつ信頼性の高い燃料供給及び効率的な排気処理などを保障するアンモニア処理システム及びこれを含む船舶を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によるアンモニア処理システムは、アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、上記ベント部は、上記アンモニア貯蔵タンクまたは上記燃料供給部から排出される低圧のアンモニアを収集する低圧排出ドラムと、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出される高圧のアンモニアを収集する高圧排出ドラムと、アンモニアを処理してベントマストに伝達する排出処理機と、を含み、上記低圧排出ドラムまたは上記高圧排出ドラムは、アンモニアを上記排気処理部または上記排出処理機に伝達する。
【0011】
具体的に、上記排気処理部は、上記燃料供給部により上記エンジンに供給されるアンモニアのうち少なくとも一部を還元剤として利用することができる。
【0012】
具体的に、上記低圧排出ドラム及び上記高圧排出ドラムは、収集したアンモニアのうち少なくとも一部を上記アンモニア貯蔵タンクに伝達することができる。
【0013】
具体的に、上記アンモニア貯蔵タンクから排出される蒸発ガスを再液化する再液化部をさらに含み、上記再液化部は、蒸発ガスのうち少なくとも一部を上記低圧排出ドラムまたは上記排気処理部に伝達することができる。
【0014】
具体的に、上記燃料供給部は、アンモニアを移送する低圧ポンプと、上記低圧ポンプによって加圧されたアンモニアを上記エンジンの要求圧力に対応するように加圧する高圧ポンプと、アンモニアの温度を調整する熱交換器と、を含み、上記燃料回収部は、上記エンジンから排出された余剰アンモニアを冷却し、上記燃料供給部から上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間に伝達するクーラーと、上記クーラーと並列に設けられ、アンモニアを一時貯蔵するキャッチドラムと、を含むことができる。
【0015】
本発明の一側面によるアンモニア処理システムは、アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、上記排気処理部は、アンモニアを酸化処理し、上記ベント部は、上記アンモニア貯蔵タンク、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを捕集し、アンモニアに水を混合して上記排気処理部に伝達する排出処理機を含む。
【0016】
具体的に、上記ベント部は、上記アンモニア貯蔵タンク、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを収集してから上記排出処理機または上記排気処理部に伝達する排出ドラムをさらに含み、上記排出処理機は、水を利用してアンモニアを捕集し、アンモニア水を上記排気処理部に伝達することができる。
【0017】
具体的に、非爆発性ガスを利用して上記燃料供給部または上記燃料回収部をパージするパージ部をさらに含み、上記パージ部は、上記排出ドラムに非爆発性ガスを伝達して上記排出ドラムの圧力を上記排出処理機または上記排気処理部より高く調整することができる。
【0018】
本発明の一側面によるアンモニア処理システムは、アンモニア貯蔵タンクから排出されるアンモニアをエンジンに供給する燃料供給部と、上記エンジンからリターンされる余剰アンモニアを回収する燃料回収部と、上記エンジンから排出される排気を処理する排気処理部と、上記燃料供給部または上記燃料回収部から排出されるアンモニアを外部に放出するベント部と、を含み、上記燃料供給部は、アンモニアを移送する低圧ポンプと、上記低圧ポンプによって加圧されたアンモニアを上記エンジンの要求圧力に対応するように加圧する高圧ポンプと、アンモニアの温度を調整する熱交換器と、を含み、上記燃料回収部は、上記エンジンから排出された余剰アンモニアを冷却し、上記燃料供給部から上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間に伝達するクーラーと、上記クーラーの下流に設けられて上記燃料回収部から上記燃料供給部に向かって流動するアンモニアを該当温度の飽和圧力以上に保持する圧力調整バルブと、を含む。
【0019】
具体的に、上記燃料回収部は、上記エンジンから排出された余剰アンモニアを上記燃料供給部において上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間のアンモニアに混合する混合器をさらに含み、上記圧力調整バルブは、上記クーラーと上記混合器との間に設けられることができる。
【0020】
具体的に、上記クーラーは、アンモニアとは別途で備えられる媒体を利用してアンモニアを冷却する第1クーラーと、上記第1クーラーの下流または上流に設けられ、上記燃料供給部のアンモニアを利用する第2クーラーと、を含むことができる。
【0021】
具体的に、上記熱交換器は、上記低圧ポンプと上記高圧ポンプとの間に設けられる第1熱交換器と、上記高圧ポンプと上記エンジンとの間に設けられる第2熱交換器と、を含み、上記第1熱交換器は、上記混合器と上記高圧ポンプとの間に設けられ、上記第2熱交換器は、上記第2クーラーと上記エンジンとの間に設けられることができる。
【0022】
本発明の一側面による船舶は、上記アンモニア処理システムを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるアンモニア処理システム及びこれを含む船舶は、アンモニアエンジンにアンモニアを効率的に供給するだけでなく、ベント、パージ、排気処理などにおいて優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図2】本発明の第1実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図3】本発明の第1実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図4】本発明の第1実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図5】本発明の第2実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図6】本発明の第3実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図7】本発明の第4実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
図8】本発明の第5実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び好ましい実施例によりさらに明らかになるであろう。本明細書では、各図面の構成要素に参照番号を付するにおいて、同じ構成要素に限ってはたとえ異なる図面に表示されても、できる限り同じ番号を付したことに留意されたい。また、本発明を説明するに当たり、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0026】
本発明は以下に説明するアンモニア処理システムを備えた船舶を含む。このとき、船舶はアンモニア運搬船、アンモニアではない貨物や人を運ぶ商船、FSRU、FPSO、Bunkering vessel、海洋プラントなどをすべて含む概念である。
【0027】
本発明の図面には示されていないが、圧力センサー(PT)、温度センサー(TT)、流量センサー(FT)などを制限なく適宜の位置に設けることができ、各センサーによる測定値は以下で説明する構成の運営に制限なく多様に用いられてもよい。
【0028】
また、本発明の図面における直線はアンモニアや熱媒、非爆発性ガスなどの様々な流体が移動する流路を示すものであり、パイプラインと解釈することができる。
【0029】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0030】
図1図4は本発明の第1実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
【0031】
図1図4を参照すると、本発明の第1実施例によるアンモニア処理システム1は、アンモニア貯蔵タンク10、燃料供給部20、燃料回収部、排気処理部40、ベント部50、再液化部60、ドレン処理部70、パージ部80を含む。
【0032】
アンモニア貯蔵タンク10はアンモニアを貯蔵する。アンモニアはエンジンEによって消費される燃料として使用され、このとき、エンジンEはアンモニア専用エンジンEであるか、またはアンモニア混焼エンジンEなどであってもよい。勿論、本明細書におけるエンジンEはアンモニアを消費してエネルギーを得る機関であって、タービンなどを包括する意味と解釈される。
【0033】
アンモニア貯蔵タンク10はアンモニアを液相で貯蔵し、このためにアンモニア貯蔵タンク10の内部または外部のうち少なくとも一側には断熱が適用されることができる。または、アンモニア貯蔵タンク10は高圧でアンモニアを貯蔵することによりアンモニアの液化を防止することができ、この場合、後述する燃料供給部20の低圧ポンプ21が縮小または省略されてもよい。
【0034】
アンモニア貯蔵タンク10は船舶の内部に貨物倉をなすように設けられてもよく、または船舶の内部または甲板上に別途で設けられる燃料タンクであってもよい。当該アンモニア貯蔵タンク10は1つ以上で設けられ、複数のアンモニア貯蔵タンク10が設けられる場合、アンモニアは択一的にまたは同時に消費されることができる。
【0035】
アンモニア貯蔵タンク10にはバンカリング部11が連結される。バンカリング部11は外部の注油源からアンモニア貯蔵タンク10にアンモニアを伝達する。外部の注油源は陸上のアンモニア供給源であるか、または海上のアンモニアバンカリング船などであってもよい。
【0036】
バンカリング部11はマニホールド、ローディングアームなどを利用してアンモニア貯蔵タンク10と注油源を連結することができ、注油源は一定の圧力でアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に伝達する。しかし、アンモニア貯蔵タンク10内にアンモニアが蒸発しながら蒸発ガスが発生し得て、これによりアンモニア貯蔵タンク10の内圧が上昇して注油源対比でアンモニア貯蔵タンク10の圧力が高い場合が発生する。
【0037】
このとき、注油源はアンモニア貯蔵タンク10にアンモニアを供給する際に多くの負荷が消費されるため、バンカリング部11はこのような状況を解消するためにバンカリング圧縮機(不図示)を利用することができる。バンカリング圧縮機はアンモニア貯蔵タンク10で発生した蒸発ガスを圧縮して注油源に伝達して、注油源の圧力を上げることで注油源とアンモニア貯蔵タンク10との差圧を確保する。これにより、バンカリング部11は注油源からアンモニア貯蔵タンク10にアンモニアが円滑に供給されるようにすることができる。
【0038】
バンカリング圧縮機はアンモニア貯蔵タンク10の蒸発ガスの他に、注油源内で発生する蒸発ガスを使用することもできる。または、バンカリング圧縮機はアンモニア以外の気体を用いて注油源の圧力を上げてもよいが、この場合、注油源はアンモニアだけをアンモニア貯蔵タンク10に伝達する構造を有することができる。
【0039】
アンモニア貯蔵タンク10には圧力調整部12が設けられてもよい。圧力調整部12はアンモニア貯蔵タンク10から排出されるアンモニアを加熱または気化させた後、アンモニア貯蔵タンク10の内部に注入してアンモニア貯蔵タンク10の内圧を上げるPBU(Pressure Build-up Unit)であるか、またはアンモニアを冷却/過冷却させてリターンする過冷却器であってもよい。
【0040】
その他にも、圧力調整部12は再液化部60であってもよく、圧力調整部12はアンモニア貯蔵タンク10の内圧を上昇または下降させてアンモニア燃料供給の安定性を確保することができる。
【0041】
燃料供給部20はアンモニア貯蔵タンク10のアンモニアをエンジンEに供給する。燃料供給部20はアンモニア貯蔵タンク10に貯蔵されているアンモニアのうち液相のアンモニアをエンジンEに供給することができる。特に、現在アンモニアを消費するエンジンEの諸元を考慮して、燃料供給部20はアンモニアを液相でエンジンEに供給するように設けられる。燃料供給部20はエンジンEの諸元の変更に対応してアンモニアの状態を多様に調整することもできる。
【0042】
燃料供給部20は低圧部分と高圧部分に区分することができ、低圧部分と高圧部分はスキッド(Skid)で構成されてもよい。また、低圧部分が設けられるスキッド(LP Skid)と高圧部分が設けられるスキッド(HP Skid)は別途に備えられてもよく、互いに連結可能な構造であってもよい。
【0043】
低圧スキッド(LP Skid)の場合、燃料供給部20の構成に加えてアンモニア貯蔵タンク10が設けられてもよい。一方、高圧スキッド(HP Skid)の場合は、燃料供給部20の構成に加えて後述する燃料回収部の構成が一緒に設けられてもよい。
【0044】
図4を参照すると、燃料供給部20の低圧部分は低圧ポンプ21を含む。低圧ポンプ21はアンモニア貯蔵タンク10に貯蔵されたアンモニアを外部に引き出す機能を担い、固定容量型または可変容量型(VFD)などで設けられてもよい。
【0045】
低圧ポンプ21は図のようにアンモニア貯蔵タンク10の下流に配置されてもよいが、アンモニア貯蔵タンク10内に配置されることも可能である。さらに、アンモニア貯蔵タンク10のタイプと内圧などに応じて低圧ポンプ21が省略できることは上述の通りである。
【0046】
低圧ポンプ21は図面とは異なって複数設けられて互いにバックアップ可能な構造をなすことができ、また、複数個の低圧ポンプ21は同時に作動して負荷を分担するように設けられることができる。または、低圧ポンプ21は複数個が直列に設けられて多段加圧方式を活用することもできる。
【0047】
低圧ポンプ21には一定の流量のアンモニアが持続的に流入されなければならず、これは低圧ポンプ21の安定的な稼働には必須である。このような流量は有効吸込水頭(NPSHr)といい、低圧ポンプ21には有効吸込水頭以上の流量が流入される。
【0048】
ただし、エンジンEで要求する流量が有効吸込水頭未満であることができるため、低圧ポンプ21の下流にはアンモニア貯蔵タンク10にアンモニアを戻すための流路が設けられてもよい。このとき、低圧ポンプ21の下流においてアンモニア貯蔵タンク10に連結されるリターン流路は圧力調整部12に連結されることができる。
【0049】
再度、図4を参照すると、燃料供給部20の高圧部分は高圧ポンプ22、熱交換器23を含む。高圧ポンプ22は低圧ポンプ21によって加圧されたアンモニアをエンジンEの要求圧力に対応するように加圧する。高圧ポンプ22は低圧ポンプ21で説明したのと同様に、1つ以上が直列または並列などに設けられてもよい。
【0050】
高圧ポンプ22は可変容量型で設けられてもよく、低圧ポンプ21と高圧ポンプ22との間に設けられ得る流量計の測定値に応じて負荷が可変されることができる。このとき、流量計は燃料回収部により回収される余剰アンモニアの流量が反映される位置に設けられてもよい。
【0051】
後述する燃料回収部はエンジンEから排出される余剰アンモニアを高圧ポンプ22に伝達することができるが、高圧ポンプ22は諸元上気相の流入が好ましくない。従って、高圧ポンプ22の上流のアンモニアは液相でのみ存在することが求められ、このために高圧ポンプ22の上流の温度及び圧力などが効果的に制御されることができる。
【0052】
一例として、燃料回収部により回収されるアンモニアは冷却されることができ、高圧ポンプ22の上流のアンモニアの圧力は高く保持されてアンモニアの沸点を上げて気化を抑制することができる。
【0053】
高圧ポンプ22は低圧ポンプ21で説明したように、有効吸込水頭を満たすための流量(minimum flow)が持続的に流入され、余剰分が発生する場合に備えて高圧ポンプ22の下流にはリターンラインが設けられる。リターンラインはエンジンEに供給される流量以上の余剰分が高圧ポンプ22の下流から上流に循環するようにし、燃料回収部の混合器33に連結されてもよい。
【0054】
熱交換器23はアンモニアの温度を調整する。熱交換器23は低圧ポンプ21と高圧ポンプ22との間に設けられてもよく、高圧スキッド上に配置されてもよい。熱交換器23はグリコールウォーターGWなどの熱媒を利用してアンモニアの温度をエンジンEの要求温度に対応するように調整することができる。
【0055】
熱交換器23はアンモニアを加熱するヒーターであってもよい。通常、アンモニア貯蔵タンク10の貯蔵温度(大気圧におけるアンモニア沸点以下)よりエンジンEの要求温度が高く、低圧ポンプ21及び高圧ポンプ22の加圧時に発生する温度上昇分だけではエンジンEの要求温度に合わせるには足りないため、熱交換器23が用いられてもよい。
【0056】
ただし、熱交換器23は高圧ポンプ22の上流に設けられて高圧ポンプ22にアンモニア気相が流入されないように、アンモニアの温度を適切に調整することができる。このとき、熱交換器23は燃料回収部によりアンモニアが回収されることを考慮してアンモニアの加熱温度を制御する。
【0057】
燃料供給部20は熱交換器23などに熱媒を供給するための熱媒供給部25を含む。熱媒供給部25は熱交換器23にグリコールウォーターなどの熱媒を循環供給することができ、必要に応じて熱媒の循環流路上で熱媒が補充または排出されることができる。または、熱媒供給部25は新たな熱媒が熱交換器23を経由するように持続供給する形態で設けられてもよい。
【0058】
熱媒供給部25は熱交換器23で熱媒と熱交換されるアンモニアの温度を適切に合わせるために、熱媒の温度を加熱または冷却することができる。そのために、熱媒供給部25は熱媒ヒーター251と熱媒クーラー252の両方を備えることができる。
【0059】
熱媒ヒーター251は熱媒をスチームなどの熱源で加熱する構成であり、熱媒が熱交換器23でアンモニアにより冷却された後、再び熱交換器23に流入される前に熱媒の温度を十分に上げることができる。このとき、熱媒は少なくとも一部が熱媒ヒーター251を迂回することによって加熱温度が調整されることができる。
【0060】
熱媒クーラー252は熱媒を清水などの冷源で加熱する構成であり、燃料回収部により回収される高温のアンモニアが相対的に大量の運転状態などである場合、熱媒の温度を下げて高圧ポンプ22に流入されるアンモニアの温度を適切に合わせることができる。または、熱媒クーラー252は以下に説明する燃料回収部のクーラー31によって加熱された熱媒を冷却することができる。熱媒クーラー252の冷却も熱媒ヒーター251と同様に、熱媒の部分迂回を利用して制御されることができる。
【0061】
熱媒クーラー252と熱媒ヒーター251は並列に設けられてもよく、または直列に設けられて択一的に稼働することもできる。熱媒クーラー252及び熱媒ヒーター251の配置及び作動は熱媒の温度を効率的に調整するための様々な変形が可能である。
【0062】
燃料供給部20はエンジンEの直前でアンモニアの供給流量などを調整するためのバルブを備え、このとき、このようなバルブを燃料供給バルブトレインSVTということができる。
【0063】
燃料回収部はエンジンEからリターンされる余剰アンモニアを回収する。現在開発されたか、開発中のアンモニア用エンジンEは液相でアンモニアの供給を受けて消費するが、安定的に必要流量の供給を受けるために余剰分の供給をさらに受ける構造を有する。
【0064】
このとき、余剰分のアンモニアはエンジンEの少なくとも一部分を経由した後エンジンEから排出されることができるが、この場合、エンジンE内で使用される潤滑油がアンモニアに混入され得る。従って、エンジンEから排出される余剰分のアンモニアは汚染された状態であり、アンモニア貯蔵タンク10への復帰が好ましくない。
【0065】
ただし、このような余剰分のアンモニアはエンジンEで消費可能な状態であるため、燃料回収部はエンジンEから排出された余剰分のアンモニアを燃料供給部20に伝達する。具体的には、燃料回収部は余剰分のアンモニアを燃料供給部20から高圧ポンプ22に伝達することができ、図4のようにクーラー31、キャッチドラム32、及び混合器33などを含む。
【0066】
クーラー31はエンジンEから排出された余剰アンモニアを冷却する。余剰アンモニアはエンジンEを経由したためエンジンEの発熱によって加熱された状態であることができ、そのままリターンされて高圧ポンプ22に流入されると、高圧ポンプ22内の気相の流入を誘発することができる。従って、クーラー31は余剰アンモニアを清水などで冷却して燃料供給部20において低圧ポンプ21と高圧ポンプ22との間に伝達することで、高圧ポンプ22にアンモニア気相が流入されることを抑制する。
【0067】
クーラー31は熱交換器23の熱媒を活用することができる。即ち、熱媒供給部25の熱媒循環流路はクーラー31を経由するように設けられてもよく、熱媒の流れを基準としてクーラー31は熱交換器23の下流に配置されることができる。
【0068】
従って、熱媒は熱交換器23でアンモニアを加熱しながら冷却された後、クーラー31で余剰アンモニアを冷却しながら加熱される。その後、熱媒が再び熱交換器23に流入されるが、このとき、熱交換器23に流入される熱媒の温度を熱媒ヒーター251及び/または熱媒クーラー252が適切に合わせることができる。
【0069】
キャッチドラム32はクーラー31と並列に設けられ、アンモニアを一時貯蔵する。キャッチドラム32は余剰アンモニアを気液分離することにより、気相が高圧ポンプ22に流入されないようにする構成であってもよい。また、キャッチドラム32は余剰アンモニアに含まれている潤滑油を除去するように設けられてもよい。
【0070】
キャッチドラム32は図面とは異なって気液分離器及びノックアウトドラムを含む構造を有することができる。この場合、余剰アンモニアはまず気液分離器に流入されて気相が分離され、液相の余剰アンモニアのうち少なくとも一部はノックアウトドラムに流入されて潤滑油が分離される。即ち、上述の気相と潤滑油の分離は別途の構成によって行われることができるが、便宜上、これらの機能を具現する構成をキャッチドラム32で包括することができる。
【0071】
混合器33はエンジンEから排出された余剰アンモニアを燃料供給部20において低圧ポンプ21と高圧ポンプ22との間のアンモニアに混合する。混合器33はクーラー31またはキャッチドラム32を経由したアンモニアが燃料供給部20のアンモニアに混合されるようにし、容器状のミキサーまたはインラインミキサー(In-line mixer)などで設けられてもよい。
【0072】
燃料回収部はエンジンEの直後にアンモニアのリターン流量などを調整するためのバルブを備え、このとき、当該バルブを燃料リターンバルブトレインRVTということができる。
【0073】
排気処理部40はエンジンEから排出される排気を処理する。エンジンEの排気には各種のparticleと窒素酸化物(NOx)などの環境汚染誘発物質が含まれ得るが、排気処理部40はフィルタリング、化学反応などを利用して排気内の汚染物質を適切に処理することができる。
【0074】
一例として、排気処理部40は選択的触媒還元装置(SCR)であるか、またはスクラバーなどであってもよい。ただし、本実施例における排気処理部40は少なくともSCRを含むように設けられてもよく、還元剤としてアンモニアなどを使用することができる。
【0075】
排気処理部40が使用する還元剤は別途で外部から供給されるものであってもよく、または燃料供給部20などから伝達されるものであってもよい。即ち、燃料供給部20は低圧部分または高圧部分のうち少なくとも一部分からエンジンEに向かって流動するアンモニアの一部を排気処理部40に伝達することができる。従って、排気処理部40は燃料供給部20によってエンジンEに供給されるアンモニアのうち少なくとも一部を還元剤として利用することができる。ただし、燃料供給部20の高圧部分のアンモニアはバルブなどで圧力を下げた後、排気処理部40に伝達されることができる。
【0076】
また、排気処理部40は後述するベント部50から伝達されるアンモニアも還元剤として使用して、エンジンEの排気に含まれる窒素酸化物などを浄化することができる。
【0077】
本実施例のエンジンEはアンモニアを消費するエンジンEであり、排気にはアンモニアの一部が混入されていることができる(アンモニアスリップ)。このとき、排気処理部40は排気に含まれるアンモニアを酸化処理して浄化することができる。
【0078】
アンモニアの酸化はSCRによって行われてもよい。即ち、SCRはアンモニアを利用して窒素酸化物を還元することであり、排気処理部40は排気に含まれたアンモニアと窒素酸化物を相互反応させてアンモニアを酸化させることができる。
【0079】
または、アンモニアの酸化はSCRとは別途で行われてもよい。この場合、アンモニアの酸化はアンモニアと酸素が反応して窒素酸化物と水を生成する反応であることができ(4NH3+5O2->4NO+6H2O)、このとき生成される窒素酸化物は上述のSCRによって浄化されることができる。ただし、この場合、アンモニアの酸化はSCRの還元前に行われることが好ましい。
【0080】
従って、排気処理部40はSCRである窒素酸化物還元部(不図示)のみを備えてアンモニア酸化及び窒素酸化物還元を一度に具現することができ、または排気処理部40は窒素酸化物還元部(不図示)とアンモニア酸化部(符号不図示)をそれぞれ含んでもよい。
【0081】
後者の場合、アンモニア酸化部は窒素酸化物還元部の上流に配置され、アンモニアスリップにより排気に混ざったアンモニアを窒素酸化物と水に変化させる。その後、窒素酸化物還元部がアンモニアを還元剤として使用して窒素酸化物を窒素と水に変化させて(4NO+4NH3+O2->2N2+3H2O)、排気中のアンモニアや窒素酸化物の比率が基準以内となるようにする。
【0082】
勿論、排気処理部40は排気に混入されたアンモニアをろ過するアンモニアフィルター(不図示)を備え、窒素酸化物還元部の還元剤として排気内のアンモニアではない別途のアンモニアを使用したり、アンモニア酸化部を最小化または省略することができる。
【0083】
このような排気処理部40はエンジンEの排気に対して十分な浄化処理をした後、大気中に排出することができる。排気処理部40によって浄化された排気は一定の高さを有する煙突(funnel)を介して外部に放出されて人に危害を与えないように処理される。
【0084】
ベント部50は燃料供給部20から排出されるアンモニアを外部に放出する。ベント部50はアンモニア漏れが検知されたか、またはエンジンEの作動停止などの理由でシステムがshut-downしたときなどの異常状況において、システム内のアンモニアを除去する役割を果たす。
【0085】
ベント部50は燃料供給部20の他にもアンモニア貯蔵タンク10、燃料回収部などから排出されるアンモニアを外部に放出するように設けられてもよい。即ち、ベント部50はシステム全体においてアンモニアが貯蔵または流動する部分と連結されてアンモニアの迅速かつ安全な排出を保障する。
【0086】
このようなベント部50は排出ドラム51、52、排出処理機53、ベントマスト54を含む。排出ドラム51、52はアンモニア貯蔵タンク10、燃料供給部20または燃料回収部などから排出されるアンモニアを収集する。
【0087】
排出ドラム51、52は容器状であり、燃料供給部20などからアンモニアの伝達を受ける。このとき、排出ドラム51、52に伝達されるアンモニアは気相または液相などであってもよいが、主に気相であることができる。
【0088】
排出ドラム51、52は水を利用してアンモニアを捕集することができる。即ち、排出ドラム51、52内には水が貯蔵されていてもよく、排出ドラム51、52に流入されるアンモニアは水に溶けてアンモニア水を生成する。
【0089】
排出ドラム51、52に流入されたアンモニアは後述する排出処理機53に伝達されてもよく、または排気処理部40に伝達されることも可能である。即ち、排出ドラム51、52のアンモニア水が排気処理部40に供給されて、排気処理部40の還元剤として使用されるか、または排気処理部40で酸化処理されることができる。
【0090】
排出ドラム51、52は低圧排出ドラム51と高圧排出ドラム52とに分けられる。低圧排出ドラム51は上述の低圧部分から排出されるアンモニアを収集し、高圧排出ドラム52は高圧部分から排出されるアンモニアを収集する。即ち、低圧排出ドラム51はアンモニア貯蔵タンク10または燃料供給部20の低圧ポンプ21などから排出される低圧のアンモニアを収集し、高圧排出ドラム52は燃料供給部20の熱交換器23、高圧ポンプ22または燃料回収部のクーラー31、キャッチドラム32などから排出される高圧のアンモニアを収集することができる。
【0091】
上述したように低圧排出ドラム51と高圧排出ドラム52は、アンモニアを排出処理機53に伝達するか、または排気処理部40に伝達することができる。前者の場合、アンモニアは気体状態で排出処理機53に伝達され、後者の場合、アンモニアはアンモニア水の形態で排気処理部40に伝達されて還元剤として使用されるか、または酸化処理されることができる。
【0092】
または、低圧排出ドラム51と高圧排出ドラム52は、収集したアンモニアのうち少なくとも一部をアンモニア貯蔵タンク10などに伝達することもできる。即ち、低圧排出ドラム51などはアンモニアを分離できる構造を有し、アンモニアのみをアンモニア貯蔵タンク10に回収することができる。
【0093】
低圧排出ドラム51などがアンモニアを分離してアンモニア貯蔵タンク10に伝達する代わりに、低圧排出ドラム51はアンモニアと水などが混合された流体をアンモニア貯蔵タンク10に伝達するが、途中でアンモニア以外の物質をろ過するフィルター(不図示)が使用されてもよい。
【0094】
即ち、排出ドラム51、52は収集したアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に回収し、回収が困難な場合には排気処理部40に伝達することができる。また、排出ドラム51、52において気体アンモニアは排出処理機53に送られて処理されることができる。
【0095】
低圧排出ドラム51はアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10や排出処理機53などに直接伝達することができるのに対し、高圧排出ドラム52はアンモニア貯蔵タンク10などと対比すると、内圧差が大きいため、高圧排出ドラム52のアンモニアはバルブなどを利用して減圧された後、アンモニア貯蔵タンク10などに伝達されることができる。
【0096】
逆に、排出ドラム51、52の圧力が足りない場合、排出ドラム51、52はパージ部80を利用して内圧を上げることができる。パージ部80は後述するが、窒素などの非爆発性ガスを利用して燃料供給部20及び/または燃料回収部をパージする構成であり、排出ドラム51、52の圧力上昇が必要な場合、パージ部80は排出ドラム51、52に非爆発性ガスを注入することができる。
【0097】
従って、排出ドラム51、52はパージ部80により内圧を十分に上げられ、これにより排出ドラム51、52に貯蔵されたアンモニアは別途の加圧や圧縮なしにアンモニア貯蔵タンク10や排出処理機53または排気処理部40に円滑に伝達されることができる。
【0098】
排出処理機53はアンモニアを処理してベントマスト54に伝達する。排出処理機53は排出ドラム51、52から伝達されるアンモニアを捕集し、ベントマスト54にはアンモニアが一定基準(例えば、30ppm)以内に伝達されるようにする。
【0099】
排出処理機53は水を利用してアンモニアを捕集する構成であり、アンモニアを水に溶かすウォータータンクであるか、またはアンモニアに水を噴射するウォータースクラバーなどであってもよく、このとき、排出ドラム51、52から排出処理機53を経てベントマスト54に伝達される物質は主に窒素などであることができる。
【0100】
排出処理機53はアンモニアに水を混合して生成したアンモニア水を排気処理部40に伝達することができる。即ち、排出処理機53が収集したアンモニアは排気処理部40で還元剤として使用されてもよく、このとき、排出ポンプ531が使用されてもよい。
【0101】
ただし、排出処理機53は排気処理部40の作動状態に応じてアンモニア対比水の比率を調整することができる。即ち、排出処理機53は排気処理部40が正常に運転を保持できるように、アンモニアと水が混合されたアンモニア水の流入量を調整することができる。このとき、排出処理機53と排気処理部40は適切なセンサーと信号伝達によりアンモニア水の伝達を相互制御することができる。
【0102】
一例として、排気処理部40には排出される排気内汚染物質を測定するセンサーが設けられ、センサーの測定値に応じて排出処理機53が排気処理部40に伝達するアンモニア水の諸元が調整されることができる。及び/または排気処理部40に流入される排気の温度と圧力、流量などが排出処理機53の制御変数として使用されてもよい。
【0103】
再液化部60はアンモニア貯蔵タンク10から排出される蒸発ガスを再液化する。再液化部60はアンモニア以外の別途の冷媒を利用してアンモニアを再液化することができる(Indirect Type)。このとき、冷媒は窒素、混合冷媒(Mixed Refigerant)などであってもよい。
【0104】
または、再液化部60はアンモニア間の熱交換を利用してアンモニアの再液化を具現するDirect typeで設けられてもよい。例えば、再液化部60はアンモニアを圧縮及び冷却した後、一部を減圧して液化させて残りを液化する冷媒として使用することができる。
【0105】
再液化部60がアンモニアを再液化する方式は公知の様々な再液化装置を用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0106】
再液化部60は蒸発ガスのうち少なくとも一部を低圧排出ドラム51または排気処理部40に伝達することができる。再液化部60は蒸発ガスの液化性能を上げるために圧縮機(不図示)を備えるが、再液化部60の圧縮機により圧縮された蒸発ガスは低圧排出ドラム51に伝達されて低圧排出ドラム51の内圧上昇に一助とすることができる。または、再液化部60は排出ドラム51、52や排出処理機53から排気処理部40に伝達されるアンモニアの圧力を補助するために、蒸発ガスを圧縮して伝達することができる。
【0107】
このとき、再液化部60は排出ドラム51、52の内圧などに基づいて圧縮機の負荷を調整することができる。即ち、再液化部60はアンモニア蒸発ガスの再液化が必要な場合には圧縮機を再液化専用で稼働し、アンモニア蒸発ガスの伝達が必要な場合には圧縮機をアンモニア伝達用として稼働することができる。この場合、再液化部60は1つ以上の圧縮機を備えて、何れか1つは再液化用、残り1つはアンモニア伝達用として使用することもできる。
【0108】
勿論、再液化部60はアンモニア貯蔵タンク10から排出されるアンモニアを圧縮前の状態で排出ドラム51、52、排気処理部40などに伝達することも可能であり、このとき、圧縮機はアンモニア貯蔵タンク10から排出された蒸発ガスの一部が排出ドラム51、52などに伝達されるにつれて負荷が低くなることができる。
【0109】
ドレン処理部70は燃料供給部20や燃料回収部などでドレンされるアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に回収する。即ち、ドレン処理部70は燃料供給部20の低圧部分、高圧部分、燃料供給バルブトレイン、燃料回収部、燃料リターンバルブトレインなどに残留したアンモニアが集まるようにして、燃料供給部20から排出ドラム51、52を介して排出処理機53に向かう量を最小化することができる。
【0110】
ドレン処理部70はエンジンEの稼働などが停止され、燃料供給部20などに残留したアンモニアを回収しなければならない場合、またはシステムのパージの際にドレンされるアンモニアを回収することができる。即ち、ドレンはパージとは別途で行われるか、またはパージの際に行われることができる。
【0111】
ドレン処理部70は液相のアンモニアが円滑にドレンされるように、構造的に燃料供給部20の下方に配置されてもよく、必要に応じてドレンされたアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に戻すことができる。このようなドレン処理部70は図3に示すようにドレンドラム71、ドレンポンプ72、ドレンバルブ73を含んでもよい。
【0112】
ドレンドラム71は燃料供給部20でドレンされるアンモニアを収集する。ドレンドラム71は容器状に設けられてアンモニアを一定量収集することができる。ただし、燃料供給部20などの円滑なドレンのためにパージ部80の非爆発性ガスが燃料供給部20などに注入されることができるため、ドレンドラム71に流入されるアンモニアには非爆発性ガスが混合されている可能性がある。
【0113】
ドレンドラム71には液体検知器711が設けられる。液体検知器711はドレンドラム71内の液滴を検知するものであり、上述したようにドレンドラム71はアンモニアまたは非爆発性ガスが流入されるため、液体検知器711によって液滴が検知されると、ドレンが行われたとみなすことができる。従って、アンモニアのドレンが検知されると、後述するドレンポンプ72によってドレンドラム71のアンモニアが回収されることができる。
【0114】
ドレンポンプ72はドレンドラム71のアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に伝達する。ドレンドラム71にアンモニアが流入されたことが液体検知器711によって検知されると、ドレンポンプ72はドレンドラム71のアンモニアをポンピングすることができる。このとき、液体検知器711はドレンドラム71の一定レベルでアンモニアを検知することにより、ドレンされたアンモニアが一定量以上になったときにドレンポンプ72が稼働するようにすることができる。
【0115】
ただし、ドレンされたアンモニアをドレンドラム71に持続的に貯蔵することよりは、アンモニア貯蔵タンク10にすぐ回収することが運営上好ましい場合がある。従って、ドレンポンプ72は気体が流入されても問題のないタイプで設けられることができる。
【0116】
一例として、ドレンポンプ72は流入される流体に気体が含まれ得ることを考慮して、窒素またはinstrument airを駆動力として使用する低速ポンプで設けられてもよい。従って、ドレンポンプ72は気体が内部に流入されてもその機能が損傷されないことができる。
【0117】
このようなドレンポンプ72は、例えば、パージ部80の非爆発性ガスを駆動源として稼働するタイプで設けられてもよい。従って、ドレン処理部70はパージ部80の非爆発性ガスを駆動源としてアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に回収するようになるため、ドレン処理時に燃焼物質を使用しないことで危険性を最小化することができる。
【0118】
ドレンバルブ73はドレンポンプ72と並列に設けられてドレンドラム71のアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に伝達する。ドレンバルブ73はドレンドラム71の内圧が高い場合、ドレンポンプ72の代わりに利用されることができる。
【0119】
ドレンバルブ73はnon-return valveであり、ドレンドラム71に高圧の流体が流れ込むと、開放されて、ドレンポンプ72の稼働なしにもドレンドラム71とアンモニア貯蔵タンク10との差圧を活用してアンモニアがアンモニア貯蔵タンク10に回収されるようにすることができる。
【0120】
勿論、ドレンバルブ73とドレンポンプ72の稼働は連係されて、ドレンバルブ73が開放されるとドレンポンプ72へのアンモニアの流入は遮断され、逆にドレンポンプ72が稼働するとドレンバルブ73は閉鎖されることができる。
【0121】
ドレンポンプ72とドレンバルブ73の下流にはフィルター74が設けられてもよい。フィルター74はアンモニア内部に存在する不純物を除去するためのものであり、公知のメンブレンフィルターなどを利用することができる。
【0122】
パージ部80は非爆発性ガスである窒素などを利用して燃料供給部20、燃料回収部などをパージする。パージ部80はシステム内のアンモニア流路を空にする必要がある場合に作動し、窒素などの非爆発性ガスをパージングガスとして使用してアンモニア流路をpurgingすることができる。
【0123】
パージ部80は図2のように排出ドラム51、52に非爆発性ガスを伝達することができる。排出ドラム51、52の内圧が十分でない場合、本実施例はパージ部80を活用して窒素などを排出ドラム51、52に注入して排出ドラム51、52の内圧を上げることにより、排出ドラム51、52から排出処理機53などへのアンモニアの流れを円滑に調整することができる。
【0124】
また、パージ部80は、図3のようにドレン処理部70がアンモニアをアンモニア貯蔵タンク10に回収するための駆動源として非爆発性ガスを供給することができる。例えば、パージ部80はドレンポンプ72に非爆発性ガスを供給してドレンポンプ72の稼働を具現することができ、またはドレンドラム71に非爆発性ガスを注入してドレンバルブ73を介したアンモニア伝達を具現することもできる。
【0125】
即ち、パージ部80は危険性のない非爆発性ガスを供給する構成であることを考慮し、アンモニア流路をパージする基本的な機能を行うだけでなく、ベント部50やドレン処理部70などの作動を補助する追加の機能を行うことができる。
【0126】
このように本実施例は、アンモニアを燃料としてエンジンEに供給しながらもアンモニアのベント、ドレン、酸化処理などを安定的に具現して環境にやさしい燃料供給システムを構築することができる。
【0127】
また、本実施例は、システム稼働中に突然排出されるアンモニアに対して排出ドラム51、52などを利用して一次的に捕集し、残りのアンモニアに対しては排気処理部40を介して二次的に処理することで、アンモニアの不要なベントを最小化し、安全なシステム運用を保障することができる。
【0128】
図5は本発明の第2実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
【0129】
以下では、本実施例が上述の実施例と異なる点を中心に説明し、説明を省略する部分は上述の内容に代える。これは後述する他の実施例にも同様に適用される。
【0130】
図5を参照すると、本発明の第2実施例によるアンモニア処理システム1は燃料供給部20の熱交換器23と、燃料回収部の混合器33の配置が上述の実施例と比べて変更される。第1実施例の場合、燃料供給部20におけるアンモニア流動を基準として熱交換器23の下流に混合器33が配置されるが、本実施例は混合器33の下流に熱交換器23が配置されることができる。
【0131】
また、燃料供給部20のアンモニア流路上において混合器33の上流には逆流防止バルブが設けられて、エンジンEを経由しながら潤滑油が混入されたアンモニアがアンモニア貯蔵タンク10に伝達されることを防止する。
【0132】
混合器33の下流に設けられる熱交換器23はアンモニアの加熱または冷却を具現することができる。エンジンEの低負荷運転時にアンモニアの再循環量が増加するが、このとき、混合器33におけるアンモニアは比較的に高温となる。従って、熱交換器23は混合器33と高圧ポンプ22との間でアンモニアを冷却することにより、高圧ポンプ22に気体が流入されることを防止することができる。
【0133】
一方、エンジンEの負荷が上昇すると、余剰アンモニアの流量が減少するようになり、混合器33におけるアンモニアは比較的に低温となるため、熱交換器23はアンモニアを加熱して高圧ポンプ22に伝達することができる。
【0134】
即ち、熱交換器23はエンジンEの負荷に応じてアンモニアを加熱または冷却することができ、例えば、熱交換器23には一定温度の熱媒が十分な量で持続供給されて、熱交換器23に流入されるアンモニアが熱媒の温度に合わせて加熱または冷却されるようにすることができる。
【0135】
図6は本発明の第3実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
【0136】
図6を参照すると、本発明の第3実施例によるアンモニア処理システム1は第1実施例と比較してリターン熱交換器24をさらに含んでもよい。
【0137】
リターン熱交換器24は高圧ポンプ22の下流から高圧ポンプ22の上流にリターンされるアンモニアの温度を調整する。上述したように、高圧ポンプ22の下流にはリターンラインが設けられ、リターン熱交換器24はリターンラインに設けられて高圧ポンプ22から混合器33に伝達されるアンモニアを冷却することができる。
【0138】
エンジンEがアンモニアを燃料として使用しない状態(エンジンEの停止またはエンジンEがアンモニア以外の燃料で稼働)で高圧ポンプ22などが起動している場合、アンモニアは高圧ポンプ22を経由しながら加熱されるが、エンジンEに流入されずにリターンラインに沿って循環する。
【0139】
この場合、高圧ポンプ22の発熱によりアンモニアが気化する恐れがあるため、高圧ポンプ22で発生する熱を除去しなければならない。従って、本実施例はリターンラインにリターン熱交換器24を設け、清水や海水、グリコールウォーターなどの冷媒を利用してアンモニアを冷却することができる。従って、リターン熱交換器24はリターンクーラー31ということもできる。
【0140】
また、リターン熱交換器24は熱媒供給部25によって循環供給される熱媒を利用することができ、この場合、高圧ポンプ22の前段の熱交換器23を通過しながらアンモニアによって冷却された熱媒を利用することができる。
【0141】
従って、本実施例は、高圧ポンプ22が稼働しているが、高圧ポンプ22からエンジンEにはアンモニアが供給されないことにより、高圧ポンプ22の下流のアンモニアが持続的に高圧ポンプ22の上流に循環する場合、循環するアンモニアを冷却することで、高圧ポンプ22におけるアンモニア気化などを抑制することができる。
【0142】
図7は本発明の第4実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
【0143】
図7を参照すると、本発明の第4実施例によるアンモニア処理システム1は、燃料供給部20の熱交換器23が第1熱交換器231及び第2熱交換器232を含んでもよい。第1熱交換器231は低圧ポンプ21と高圧ポンプ22との間に設けられ、例えば、混合器33と高圧ポンプ22との間に設けられることができる。このとき、第1熱交換器231が加熱または冷却を具現できることは第2実施例で説明した通りである。
【0144】
第2熱交換器232は高圧ポンプ22とエンジンEとの間に設けられる。第2熱交換器232は高圧ポンプ22で加圧されたアンモニアをエンジンEの要求温度に合わせて加熱または冷却することができる。
【0145】
後述するが、本実施例は高圧ポンプ22の下流に第2クーラー312を設けることにより、余剰アンモニアと高圧ポンプ22の下流のアンモニアとが熱交換されるようにするが、この場合、高圧ポンプ22で加圧されてから第2クーラー312で熱交換されたアンモニアの温度が一定でない恐れがある。従って、本実施例は第2クーラー312とエンジンEとの間に第2熱交換器232を設けてエンジンEに流入されるアンモニアの温度を一定に調整することができる。
【0146】
本実施例の燃料回収部のクーラー31は第1クーラー311と第2クーラー312を含んでもよい。第1クーラー311はアンモニアとは別途で備えられる媒体を利用してアンモニアを冷却し、このとき、媒体は熱交換器23で使用される熱媒であってもよい。
【0147】
第1クーラー311は上述の第1実施例におけるクーラー31と類似する構成であってもよく、キャッチドラム32と並列に設けられて余剰アンモニアを冷却して混合器33に伝達することができる。
【0148】
第2クーラー312は第1クーラー311の下流または上流に設けられ、燃料供給部20のアンモニアを利用する。即ち、第2クーラー312はアンモニア間の熱交換を具現する構成であり、余剰アンモニアと高圧ポンプ22の下流のアンモニアとを相互熱交換させることができる。
【0149】
燃料供給の観点から、高圧ポンプ22で加圧されたアンモニアはエンジンEに供給される前に第2クーラー312によって温度が変化するため、温度をエンジンEの要求温度に合わせるために第2熱交換器232が使用され得ることは上述した通りである。
【0150】
一方、燃料回収の観点から、エンジンEから排出された余剰アンモニアは第1クーラー311で1次冷却されてから第2クーラー312で2次冷却されて、高圧ポンプ22に循環するときに気体が発生することを十分に抑制することができる。さらに、燃料回収部は圧力調整バルブ34を利用してアンモニアを該当温度の飽和圧力以上に保持することにより気化を防止することができる。
【0151】
圧力調整バルブ34は余剰アンモニアの流れを基準としてクーラー31の下流に設けられ、例えば、第2クーラー312と混合器33との間に配置されることができる。圧力調整バルブ34は燃料回収部から燃料供給部20に向かって流動するアンモニアを該当温度の飽和圧力以上(例えば、15bar以上)に保持することにより、第2クーラー312を通過する余剰アンモニアが液相に保持されるようにすることができる。
【0152】
圧力調整バルブ34は第2クーラー312の余剰アンモニアを液相に保持して第2クーラー312で余剰アンモニアの冷却効率が増大されるようにすることができる。勿論、圧力調整バルブ34の下流のアンモニアは減圧されることによりアンモニアが飽和圧力以下に変化することができるが、余剰アンモニアは第2クーラー312で十分に冷却されるため、圧力調整バルブ34の下流で気相が発生する可能性は低く、減圧時の追加冷却も一部期待できる。
【0153】
従って、本実施例は高圧ポンプ22の上流の低温アンモニアを通じて熱媒を冷却し(第1熱交換器231)、冷却された熱媒で余剰アンモニアを冷却し(第1クーラー311)、圧力調整バルブ34が余剰アンモニアの圧力を高く保持して冷却効率を上げることにより(第2クーラー312)、高圧ポンプ22に余剰アンモニアが流入されるとき気化を効果的に抑制することができる。
【0154】
図8は本発明の第5実施例によるアンモニア処理システムの概念図である。
【0155】
図8を参照すると、本発明の第5実施例によるアンモニア処理システム1は、燃料供給部20及び燃料回収部がアンモニア流路の少なくとも一部を取り囲むハウジング35を備える。
【0156】
アンモニア流路は上述のようにパイプラインであってもよく、ハウジング35がパイプラインの外周を取り囲むことにより、アンモニア流路は二重管構造をなすことができる。従って、ハウジング35はアンモニア流路からアンモニアが漏れたときにアンモニアが外部空間にすぐ浸透することを防止し、ハウジング35内には非爆発性ガスが満たされることができる。
【0157】
一例として、ハウジング35にはパージ部80またはベント部50などにより非爆発性ガスが供給されることができ、ハウジング35を循環した非爆発性ガスは大気中に放出されることができる。以下では、ベント部50によって非爆発性のベントガスがハウジング35に流入される場合を説明する。
【0158】
ベント部50はハウジング35の一側にベントガスを注入し、ハウジング35の他側からベントガスを回収する。例えば、ベント部50は燃料回収部のハウジング35においてエンジンEに隣接する一側にベントガスを注入し、クーラー31またはキャッチドラム32を経由し、また高圧ポンプ22を経由したベントガスを燃料供給部20のハウジング35においてエンジンEに隣接する他側から回収することができる。従って、ベントガスは高圧部分の殆どを循環することができる。
【0159】
このとき、燃料供給部20のハウジング35から回収されるベントガスにはアンモニア流路上の漏れによりアンモニアが混入される恐れがあるため、ベント部50はハウジング35から回収されたベントガスを大気中にすぐ放出せずにベントドラム55に貯蔵することができる。
【0160】
ベントドラム55は水を利用してベントガス内に含まれるアンモニアを捕集する。即ち、ベントドラム55はウォータータンクであってもよく、ベントガスを水に通過させてベントガスに混入され得るアンモニアを水に溶かすことができる。
【0161】
このとき、ベントドラム55にはpHセンサー551が設けられる。pHセンサー551はベントドラム55に貯蔵された水のpHを測定することにより、ベントドラム55内のアンモニアの流入有無を確認することができる。
【0162】
ベントドラム55に流入されたベントガスはOutletラインを介して大気中に放出されることができるが、ベントドラム55からベントガスが排出される部分にはガスディテクター552が設けられてもよい。
【0163】
ベントガスにアンモニアが含まれている場合、ベントガスがベントドラム55の水を経由しながらアンモニアが水に溶けることができるが、水に溶けられなかったアンモニアはベントドラム55の外部に排出されることができる。
【0164】
これに備えるために、ベント部50はpHセンサー551を利用してベントドラム55内のアンモニアの流入を一次検知し、ベントドラム55の排出部分でガスディテクター552を介してアンモニアの存在有無を2次検知することができる。
【0165】
このとき、ガスディテクター552の検知値に応じてベントドラム55からベントガスの大気放出が遮断されることができる。これにより、ベントガスが大気に排出されてもアンモニア漏れによる危険を十分に抑制することができる。
【0166】
参考までに、ベント部50は燃料供給部20のハウジング35からベントドラム55にベントガスを強制回収するベントファン56を利用することができるが、これは燃料回収部のハウジング35に流入されたベントガスの圧力が十分でないため、ベントガスの流れが所望のレベルに達しない場合に活用されることができる。勿論、燃料回収部のハウジング35に高圧のベントガスが注入される場合、ベントファン56は最小化または省略されてもよい。
【0167】
このように本実施例はアンモニア流路からアンモニアが漏れる場合に備えて、ベントドラム55でpH及びガスディテクティングを具現してアンモニアの大気放出を安全なレベルで保障することができる。
【0168】
本発明は上述の実施例の他にも、上記実施例と公知技術の組み合わせによって発生する実施例の全てを包括する。
【0169】
以上、本発明を具体的な実施例をもって詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者によりその変形や改良が可能であることは明らかである。
【0170】
本発明の単純な変形乃至変更はすべて本発明の範囲に属し、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0171】
1 アンモニア処理システム
E エンジン
10 アンモニア貯蔵タンク
11 バンカリング部
12 圧力調整部
20 燃料供給部
21 低圧ポンプ
22 高圧ポンプ
23 熱交換器
231 第1熱交換器
232 第2熱交換器
24 リターン熱交換器
25 熱媒供給部
251 熱媒ヒーター
252 熱媒クーラー
26 ハウジング
30 燃料回収部
31 クーラー
311 第1クーラー
312 第2クーラー
32 キャッチドラム
33 混合器
34 圧力調整バルブ
35 ハウジング
40 排気処理部
50 ベント部
51 低圧排出ドラム
52 高圧排出ドラム
53 排出処理機
531 排出ポンプ
54 ベントマスト
55 ベントドラム
551 pHセンサー
552 ガスディテクター
56 ベントファン
60 再液化部
70 ドレン処理部
71 ドレンドラム
711 液体検知器
72 ドレンポンプ
73 ドレンバルブ
74 フィルター
80 パージ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0158
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0158】
ベント部50はハウジング35の一側にベントガスを注入し、ハウジング35の他側からベントガスを回収する。例えば、ベント部50は燃料回収部のハウジング35においてエンジンEに隣接する一側にベントガスを注入し、クーラー31またはキャッチドラム32を経由し、また高圧ポンプ22を経由したベントガスを燃料供給部20のハウジング26においてエンジンEに隣接する他側から回収することができる。従って、ベントガスは高圧部分の殆どを循環することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0159
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0159】
このとき、燃料供給部20のハウジング26から回収されるベントガスにはアンモニア流路上の漏れによりアンモニアが混入される恐れがあるため、ベント部50はハウジング26から回収されたベントガスを大気中にすぐ放出せずにベントドラム55に貯蔵することができる。
【国際調査報告】