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特表2024-545063微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)
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  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図1
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  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図7
  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図8A
  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図8B
  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図9
  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図10
  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図11
  • 特表-微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus  acidophilus) 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】微生物叢によるアグマチン産生を増加させるためのラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20241128BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20241128BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241128BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241128BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K35/74 Z
A61P29/00
A61P25/00
A61P25/24
A61P9/08
A61P3/00
A61P43/00 105
A61P25/28
A61K31/198
A61K35/747
A61K35/74 A
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/02
A61K9/48
A61K9/14
A61P43/00 121
A61P39/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533138
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022084793
(87)【国際公開番号】W WO2023104887
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,648
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア‐ガルセラ, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ブーランジュ, クレア ローレンス ルーシー マリー
(72)【発明者】
【氏名】メイサー, レドゥイル, カリン
(72)【発明者】
【氏名】エマミ, ナシュミル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC29
4C076DD23
4C076DD67
4C076EE38
4C076EE41
4C076EE51
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087BC58
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA05
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA08
4C087ZA12
4C087ZA15
4C087ZA21
4C087ZA39
4C087ZB21
4C087ZC21
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA32
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA15
4C206ZA21
4C206ZA39
4C206ZB21
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
開示されるのは、微生物叢を利用してアグマチンを産生するためのプロバイオティクス、組成物及び方法であり、より具体的には、単離プロバイオティクス、単離プロバイオティクスを含む組成物、並びに対象の胃腸管におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるための方法であって、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、加齢性記憶低下の減少、及び/又は長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供する方法である。単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、及び/又は加齢性記憶低下の低減のための方法であって、前記対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させるために、単離プロバイオティクスとアルギニンとを含む有効量の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)株を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)からなる群から選択される株に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する細菌株を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、デンプン源、タンパク質源、プレバイオティクス源、脂質源、ビタミン、糖、塩、香辛料、香味料、ミネラル、着香料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される原材料を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるラクトバチルス・アシドフィルス株を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単離プロバイオティクスが、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用して、前記対象の前記胃腸管におけるアルギニンからのアグマチンの前記産生を触媒し、前記対象の前記胃腸管における前記アグマチンの濃度が、前記組成物の投与から24時間後に少なくとも20μMである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象の前記胃腸管における前記アグマチンの前記濃度が、前記組成物の投与から約24時間後に少なくとも100μMである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記単離プロバイオティクスが、アグマチンの下流ポリアミン類への変換を少なくとも24時間遅延させることによって、前記対象の前記胃腸管においてアルギニンから産生されるアグマチンの生物学的利用能を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が乾燥粉末の形態であり、前記単離プロバイオティクスが前記組成物内に充填される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記単離プロバイオティクスが前記組成物中で活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、カプセルの形態である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記カプセル中の前記単離プロバイオティクスが、pH 1.5の液体環境において少なくとも30分間生存することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カプセル中の前記単離プロバイオティクスが、pH 3.5の液体環境において少なくとも90分間生存することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記単離プロバイオティクスが、pH 1.5の液体環境において少なくとも10分間生存することができる、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記単離プロバイオティクスが、pH 3.5の液体環境において少なくとも60分間生存することができる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記対象の前記胃腸管が前記対象の下部胃腸管である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象の前記胃腸管が、前記対象の大腸である、請求項1に記載の単離プロバイオティクス。
【請求項18】
前記組成物が、少なくとも500万CFUの量の前記単離プロバイオティクスの1日用量及び500~700mgの量の前記アルギニンの1日用量を前記対象に提供するのに有効な量で前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物の投与前又は投与後に、プレバイオティクスを前記対象に投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
単離プロバイオティクスとアルギニンとを含む組成物であって、前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)からなる群から選択される株に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する細菌株を含む、組成物。
【請求項22】
前記組成物が、デンプン源、タンパク質源、プレバイオティクス源、脂質源、ビタミン、糖、塩、香辛料、香味料、ミネラル、及び着香料からなる群から選択される原材料を更に含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記単離プロバイオティクスが生細菌株を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記単離プロバイオティクスが、pH 1.5の液体環境において少なくとも10分間生存することができる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記単離プロバイオティクスが、pH 3.5の液体環境において少なくとも60分間生存することができる、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、カプセルの形態である、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記カプセル中の前記単離プロバイオティクスが、pH 1.5の液体環境において少なくとも30分間生存することができる、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記カプセル中の前記単離プロバイオティクスが、pH 3.5の液体環境において少なくとも90分間生存することができる、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が乾燥粉末の形態である、請求項21に記載の組成物。
【請求項30】
前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるラクトバチルス・アシドフィルス株を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
必要とする対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させる方法であって、単離プロバイオティクスとアルギニンとを含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)からなる群から選択される株に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する細菌株を含む、方法。
【請求項32】
前記単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される細菌株を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、約4.0~約8.0のpHで前記対象の前記胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生するのに有効な量で投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記対象の前記胃腸管における前記アグマチンの濃度が、前記対象への前記組成物の投与から24時間後に少なくとも20μMである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記対象の前記胃腸管が前記対象の下部胃腸管である、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概して、微生物叢を利用してアグマチンを産生するためのプロバイオティクス、組成物、及び方法に関し、より詳細には、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、加齢性記憶低下の減少、及び長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、対象の胃腸管におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるためのプロバイオティクス、組成物、及び方法に関する。組成物には、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、かつ対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換可能である、プロバイオティクスを含む。
【背景技術】
【0002】
[0002](4-アミノブチル)グアニジンとしても知られるアグマチンは、以下の式Iに示されるような化学構造を有するアミノグアニジンである。アグマチンは、アミノ酸であるアルギニンの脱炭酸によって産生される天然化合物であり、脱炭酸アルギニンとしても知られている。アグマチンは、植物、原核生物及びいくつかの哺乳動物細胞におけるポリアミン類の、例えばプトレシン(ジアミン)、スペルミジン(トリアミン)、及びスペルミン(テトラアミン)などの、前駆体の1つである。
【化1】
【0003】
[0003]ポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどは、正常な細胞の増殖及び生存に必須である。スペルミジンは、細胞保護機能を有し、かつオートファジー誘導因子であり、その補給は前臨床及び臨床実験において老化防止効果と関連付けられている[1、2]。全身及び尿中ポリアミンが高レベルであることは、健康な小児における発育と関連しているが、がんの状況では、これらの分子はまた腫瘍進行にも関連する恐れがある[3、4]。
【0004】
[0004] アグマチンは、ポリアミン産生の中間体であることに加えて、中枢神経系及び他の臓器に対して様々な生理作用及び薬理学的効果を誘導する[5、6]。合成アグマチンの補給はいくつかの健康上の効果をもたらすことが示されている。最も報告されており、実証されている効果は、アグマチンによる神経保護効果及び抗うつ効果であり、これらの効果は、動物モデルにおける脳虚血、低酸素症、薬物毒性又は抗うつ活性を予測する行動試験(尾懸垂及び強制水泳試験)を用いたいくつかの前臨床研究によって裏付けられている[7、8]。アグマチン補給による疼痛解消効果はまた、神経根障害に罹患している患者における臨床試験及びいくつかの前臨床研究によって十分に実証されている[6、7]。血管拡張、代謝健康の改善(脂肪酸酸化の刺激、脂質過酸化の減少、インスリンシグナル伝達の改善)及び細胞健康の改善(酸化ストレスの減少、細胞保護、増殖促進効果及び増殖阻害効果)に対するアグマチンの作用について、アーリーエビデンス(in-vitro又はex-vivo実験に基づく)が見出されている[5,6]。
【0005】
[0005]アグマチン及びその下流の副産物は、疼痛緩和、長寿及び老化改善を含む、健康上の効果を有する見込みがあるとされている。今日まで、アグマチンの補給は、合成アグマチンの経口投与によって行われている。アグマチンを提供する他の代替法では、植物性製品中に見出されているアグマチン誘導体として、食物を介して提供する。しかしながら、これらの形態のアグマチンは小腸によって吸収され、血流に到達する前に肝臓において下流のポリアミン類へと変換される。その全てが変換されるため、評価されるようなアグマチンの直接的な効果を得ることは不可能である。胃腸レベルでのアグマチンの局所効果は、微生物叢により産生されるアグマチンを増強する可能性がある場合には血流に依存する。さらに、合成アグマチンの生産は、アグマチンの上流供給源分子であるアルギニンのコストと比較して費用がかかる。微生物叢によるアグマチンの産生を増加させる方法論は提案されていない。
【0006】
[0006]本開示の出願人は、対象の胃腸管において微生物叢を利用してアグマチンの産生を増強するためのプロバイオティクス、組成物及び方法を特定した。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本開示は、微生物叢を利用してアグマチンを産生するためのプロバイオティクス、組成物及び方法を提供し、より詳細には、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、対象の胃腸管におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるための単離プロバイオティクス、組成物及び方法に関する。
【0008】
[0008]一態様において、本開示は、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、並びに加齢性記憶低下の低減のための方法であって、該方法ガ、対象に組成物を投与することを含み、組成物が、単離プロバイオティクスとアルギニンとを含み、単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する細菌株である、方法を提供する。
【0009】
[0009]一実施形態では、組成物は、デンプン源、タンパク質源、脂質源、プレバイオティクス源(FOS、GOSなど)、ビタミン、糖、塩、香辛料、香味料、ミネラル、及び着香料のうちの1つ以上を更に含む。
【0010】
[0010]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0011】
[0011]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0012】
[0012]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用して、対象の胃腸管におけるアルギニンからのアグマチンの産生を触媒し、対象の胃腸管におけるアグマチンの濃度は、組成物を投与してから24時間後に少なくとも20μMである。
【0013】
[0013]一実施形態では、対象の胃腸管におけるアグマチンの濃度は、組成物の投与から約24時間後に少なくとも100μMである。
【0014】
[0014]一実施形態では、組成物は乾燥粉末の形態であり、単離プロバイオティクスは組成物内に充填される。
【0015】
[0015]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、組成物中で活性である。
【0016】
[0016]一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。
【0017】
[0017]一実施形態では、カプセル中の単離プロバイオティクスは、pH1.5の液体環境(fluid environment)において少なくとも30分間生存する能力を有する。
【0018】
[0018]一実施形態では、カプセル中の単離プロバイオティクスは、pH3.5の液体環境において少なくとも90分間生存することができる。
【0019】
[0019]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH1.5の液体環境において少なくとも10分間生存することができる。
【0020】
[0020]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.5の液体環境において少なくとも60分間生存することができる。
【0021】
[0021]一実施形態では、対象の胃腸管は、対象の下部胃腸管である。
【0022】
[0022]一実施形態では、対象の胃腸管は、対象の大腸である。
【0023】
[0023]一実施形態では、組成物は、少なくとも700万CFUの量の単離プロバイオティクスの1日用量及び少なくとも3g/Lの量のアルギニンの1日用量を対象に提供するのに有効な量で対象に投与される。
【0024】
[0024]一実施形態では、対象はヒトである。
【0025】
[0025]一実施形態では、本方法は、組成物の投与前又は投与後にプレバイオティクスを対象に投与することを更に含む。
【0026】
[0026]一態様では、本開示は、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、並びに加齢性記憶低下の低減ための組成物であって、該組成物が、単離プロバイオティクスと、アルギニンとを含み、単離プロバイオティクスが、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する細菌株であり、単離プロバイオティクスが、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有し、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管において少なくとも20μMのアルギニンからアグマチンを産生する能力を有する、組成物を提供する。
【0027】
[0027]一実施形態では、組成物は、デンプン源、タンパク質源、脂質源、プレバイオティクス源、ビタミン、糖、塩、香辛料、香味料、ミネラル、及び着香料のうちの1つ以上を更に含む。
【0028】
[0028]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、組成物中で活性である。
【0029】
[0029]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH1.5の液体環境において少なくとも10分間生存することができる。
【0030】
[0030]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.5の液体環境において少なくとも60分間生存することができる。
【0031】
[0031]一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。
【0032】
[0032]一実施形態では、カプセル中の単離プロバイオティクスは、pH1.5の液体環境において少なくとも30分間生存することができる。
【0033】
[0033]一実施形態では、カプセル中の単離プロバイオティクスは、pH3.5の液体環境において少なくとも90分間生存することができる。
【0034】
[0034]一実施形態では、組成物は乾燥粉末の形態であり、単離プロバイオティクスは組成物内に充填される。
【0035】
[0035]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0036】
[0036]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0037】
[0037]一態様において、本開示は、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、並びに加齢性記憶低下の低減のための単離プロバイオティクスを提供する。単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは95%の配列同一性を有する細菌株であり、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアルギニンから少なくともμMのアグマチンを産生する能力を有する。
【0038】
[0038]一実施形態において、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、細菌株である。
【0039】
[0039]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、約4.0~約8.0のpHでアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用して、対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる。
【0040】
[0040]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、局所微生物叢を利用する、対象の胃腸管におけるアルギニンからのアグマチンの産生を、少なくとも50%増加させる能力を有する。
【0041】
[0041]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、補因子ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)の存在下でアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用する、対象の胃腸管におけるアルギニンからのアグマチンの産生を、少なくとも50%増加させる能力を有する。
【0042】
[0042]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アグマチンの下流ポリアミンへの変換を少なくとも24時間遅延させることによって、対象の胃腸管においてアルギニンから産生されるアグマチンの生物学的利用能を増加させる能力を有する。
【0043】
[0043]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管において24時間後に、対象の胃腸管においてアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用してアルギニンから少なくとも20μMのアグマチンを産生する能力を有する。
【0044】
[0044]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH1.5の環境において少なくとも10分間生存する能力を有する。
【0045】
[0045]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.5の環境において少なくとも60分間生存する能力を有する。
【0046】
[0046]一実施形態では、対象の胃腸管は、対象の下部胃腸管である。
【0047】
[0047]一実施形態では、対象の胃腸管は、対象の大腸である。
【0048】
[0048]一実施形態では、単離プロバイオティクスは活性である。
【0049】
[0049]一態様において、本開示は、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、並びに加齢性記憶低下の低減のための、単離プロバイオティクスを提供する。単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、24時間後に、約4~約8の範囲のpHを有する対象の胃腸管においてアルギニンの存在下でアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用して、アルギニンから少なくとも20μMのアグマチンを産生する能力を有する。
【0050】
[0050]一態様では、本開示は、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、並びに加齢性記憶低下の低減のための方法を提供する。方法は、対象に組成物を投与することを含み、組成物は、単離プロバイオティクスと、アルギニンとを含み、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、対象に組成物を投与してから24時間後に、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用して、約5~約8の範囲のpHを有する対象の胃腸管においてアルギニンから少なくとも20μMのアグマチンを産生する能力を有する。
【0051】
[0051]一態様では、本開示は、局所微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善、加齢性記憶低下の低減のための組成物を提供する。組成物は、単離プロバイオティクスと、アルギニンとを含み、単離プロバイオティクスは、対象の消化管におけるコロニー形成能及び生存能を有し、対象に組成物を投与してから24時間の間に、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用して、約5~約8の範囲のpHを有する対象の胃腸管においてアルギニンから少なくとも20μMのアグマチンを産生する能力を有する。
【0052】
[0052]一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくは成人及び小児を含むヒトであってもよい。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。一実施形態では、組成物は、プロバイオティクスとアルギニンとを含む。
【0053】
[0053]一態様では、本開示は、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有する単離プロバイオティクスを提供し、単離プロバイオティクスは、微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアグマチンを産生することができる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管又は下部胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる。
【0054】
[0054]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。
【0055】
[0055]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有する細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の産生をブーストして、ADCを利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。
【0056】
[0056]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、内因性酵素アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を含む株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)からなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0057】
[0057]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する細菌株である。
【0058】
[0058]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0059】
[0059]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、少なくとも約4.0、少なくとも約5.0、少なくとも約6.0、約5.0~約9.0、約6.0~約8.0、又は約7.0のpHで、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。
【0060】
[0060]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。
【0061】
[0061]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができ、組成物を投与してから24時間後に、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、少なくとも95μM、少なくとも100μM、少なくとも105μM、少なくとも110μM、少なくとも115μM、少なくとも120μM、少なくとも125μM、少なくとも130μM、少なくとも200μM、少なくとも300μM、少なくとも400μM、少なくとも500μM、少なくとも600μM、少なくとも700μM、又は少なくとも800μMのアグマチン濃度を達成することができる。
【0062】
[0062]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃酸環境で少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0063】
[0063]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH2.6の環境で、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0064】
[0064]一実施形態において、単離プロバイオティクスは、pH3.4の環境で、少なくとも60分間生存することができる。
【0065】
[0065]一実施形態では、対象はヒトである。ヒトの胃における胃酸は、約1.5~3.5のpHを有する。単離プロバイオティクスは、ヒトの胃の胃酸環境で生存することができる。
【0066】
[0066]一態様では、本開示は、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、微生物叢を利用して対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるための組成物を提供する。
【0067】
[0067]一実施形態では、本開示は、必要とする対象において、疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康、細胞健康、並びに寿命を改善するための組成物を提供する。組成物は、微生物又は細菌を含む。一実施形態では、微生物は、プロバイオティクスである。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミン類の産生を増加させることができる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができる。
【0068】
[0068]一実施形態では、対象の身体部分は、対象の胃腸管、下部胃腸管、腸、小腸又は大腸である。一実施形態では、アグマチン及び/又はポリアミン類の産生は、対象の胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の下部胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は対象の小腸で行われる。
【0069】
[0069]一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の大腸で行われる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができ、さらに対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることができる。
【0070】
[0070]一実施形態では、組成物は、アルギニンを更に含む。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管でアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、アルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を利用して、アルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の産生をブーストして、ADCを利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。
【0071】
[0071]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。一実施形態では、組成物は、ラクトバチルス・アシドフィルスとアルギニンとを含む。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、アルギニンをアグマチン及び/又は他のポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、内因性酵素アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を含む株である。
【0072】
[0072]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0073】
[0073]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の配列同一性を有する細菌株である。
【0074】
[0074]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0075】
[0075]対象の胃腸管においてアルギニンから産生されるアグマチンの濃度は、対象によって異なる。一実施形態では、対象の胃腸管におけるアグマチン濃度は、組成物を投与してから24時間後に、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、少なくとも95μM、少なくとも100μM、少なくとも105μM、少なくとも110μM、少なくとも115μM、少なくとも120μM、少なくとも125μM、少なくとも130μM、少なくとも200μM、少なくとも300μM、少なくとも400μM、少なくとも500μM、少なくとも600μM、少なくとも700μM、又は少なくとも800μMである。
【0076】
[0076]一実施形態では、組成物は、デンプン源、タンパク質源及び脂質源のうちの1つ以上を更に含む。
【0077】
[0077]適切なデンプン源は、例えば、トウモロコシ、米、小麦、大麦、オート麦、大豆、及びこれらの混合物などの穀物及び豆果である。
【0078】
[0078]適切なタンパク質源は、任意の適切な動物タンパク質源又は植物タンパク質源、例えば、肉及びミール、家禽肉又はミール、魚肉又はミール、大豆タンパク質濃縮物、乳タンパク質、及びグルテンなどから選択することができる。
【0079】
[0079]適切な脂質源としては、肉、動物性脂肪及び植物性油又は脂肪が挙げられる。
【0080】
[0080]デンプン源、タンパク質源及び脂質源の選択は、対象の栄養要求、嗜好性の考慮、及び適用される製品のタイプによって主に決定される。
【0081】
[0081]更に、他の様々な原材料、例えば、糖、塩、香辛料、香味料、ビタミン、ミネラル、着香料、及び脂肪などもまた、所望に応じて組成物に組み込むことができる。
【0082】
[0082]一実施形態では、組成物は、乾燥粉末、カプセル、常温保存可能な液体、又は湿潤ペースト、チルドペースト若しくは常温保存可能なペーストの形態である。一実施形態では、組成物は、粉末である。一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。一実施形態では、組成物は乾燥粉末であり、単離プロバイオティクス細菌は組成物上にコーティングされるか、又は組成物内に充填される。
【0083】
[0083]一実施形態では、単離プロバイオティクス細菌は、最終組成物中で活性である。
【0084】
[0084]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃酸環境で少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0085】
[0085]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH2.6の環境で、少なくとも10分間生存することができる。
【0086】
[0086]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.4の環境で、少なくとも60分間生存することができる。
【0087】
[0087]一実施形態では、対象はヒトである。ヒトの胃内の胃酸は、約1.5~3.5のpHを有する。単離プロバイオティクスは、ヒトの胃の胃酸環境で、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0088】
[0088]一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ヒトの胃酸環境で、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0089】
[0089]一実施形態では、カプセルは、単離プロバイオティクスが、ヒトの胃酸環境で、少なくとも0分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、少なくとも70分間、少なくとも80分間、少なくとも90分間、少なくとも100分間、少なくとも110分間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、又は少なくとも4時間、生存することを可能にする。
【0090】
[0090]一態様では、本開示は、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、微生物叢を利用して対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるための方法を提供する。方法は、対象に組成物を投与することを含む。
【0091】
[0091]一態様では、本開示は、微生物叢を利用して対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させることによる、必要がある疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿の方法であって、本明細書の上記及び本開示の他の箇所で論じられる組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0092】
[0092]一実施形態では、方法は、1日あたり少なくとも500~700mgのアルギニン及び/又は1日あたり少なくとも500万~700万CFUの単離プロバイオティクスを少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間提供するために、有効量の組成物を対象に投与することを更に含む。
【0093】
[0093]一実施形態では、方法は、少なくとも700万CFUの量の単離プロバイオティクスの1日用量及び少なくとも3g/L組成物の量のアルギニンの1日用量を提供するのに有効な量で組成物を対象に投与することを更に含む。
【0094】
[0094]一実施形態では、組成物には、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができ、さらに対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることができる、プロバイオティクスを含む。
【0095】
[0095]一実施形態では、組成物は、アルギニンを更に含む。
【0096】
[0096]一実施形態では、対象の身体部分は、対象の胃腸管である。一実施形態では、アグマチン及び/又はポリアミンの産生は、対象の胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の下部胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の下部胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は対象の小腸で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の大腸で行われる。
【0097】
[0097]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管でアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の産生をブーストして、ADCを利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。
【0098】
[0098]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。一実施形態では、組成物は、ラクトバチルス・アシドフィルスとアルギニンとを含む。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、アルギニンをアグマチン及び/又は他のポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、内因性酵素アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を含む株である。
【0099】
[0099]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0100】
[0100]一実施形態では、単離プロバイオティクス細菌は、ラクトバチルス・アシドフィルスである。
【0101】
[0101]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の配列同一性を有する細菌株である。
【0102】
[0102]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0103】
[0103]一実施形態では、組成物は、乾燥粉末、カプセル、常温保存可能な液体、又は湿潤ペースト、チルドペースト若しくは常温保存可能なペーストの形態である。一実施形態では、組成物は粉末である。一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。一実施形態では、組成物は乾燥粉末であり、単離プロバイオティクスは組成物上にコーティングされるか、又は組成物内に充填される。一実施形態では、単離プロバイオティクス細菌は、組成物中で活性である。
【0104】
[0104]一実施形態では、対象の胃腸管におけるアグマチンの濃度は、組成物を投与してから約24時間後に、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、少なくとも95μM、少なくとも100μM、少なくとも105μM、少なくとも110μM、少なくとも115μM、少なくとも120μM、少なくとも125μM、又は少なくとも130μMである。
【0105】
[0105]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃酸環境で少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0106】
[0106]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH2.6の環境で、少なくとも10分間生存することができる。
【0107】
[0107]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.4の環境で、少なくとも60分間生存することができる。
【0108】
[0108]一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくは成人及び小児を含むヒトであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】アグマチンホメオスタシスに関与する基質及び酵素を示す[34]。
図2】アルファルファの種子、スプラウト及びマイクログリーン(microgreens)中の、ポリアミン類のアグマチン(AGM)、プトレシン(PUT)、カダベリン(CAD)、スペルミジン(SPD)、スペルミン(SPM)の含有量を示す[36]。
図3】哺乳動物細胞及び微生物叢におけるポリアミンの代謝及び輸送を示す。
図4】酸耐性系を有する細菌とATP合成系を有する細菌との間の協力により構成されるプトレシン産生経路のハイブリッド機序を示す[19]。
図5】本明細書に開示される実施例1における実験研究のアルギニン及びFOSの組み合わせを利用したアグマチン産生の効果に関する試験結果を示す。
図6】本明細書に開示される実施例2における実験研究の株スクリーニングを用いた、経時的なアグマチン濃度の変化(T5h、T24h、T48h)に関する試験結果を示す。
図7】本明細書に開示される実施例3における実験研究のアグマチン濃度に対するチューブ発酵及びバッチ発酵の影響に関する試験結果を示す。
図8A】種々のドナーでのアグマチン産生に対する株の効果に関する試験結果を示す:Aは、本明細書に開示される実施例4における実験研究の全体スケールを表し、Bは、0~50μMのズームスケールを表す。
図8B】種々のドナーでのアグマチン産生に対する株の効果に関する試験結果を示す:Aは、本明細書に開示される実施例4における実験研究の全体スケールを表し、Bは、0~50μMのズームスケールを表す。
図9】本明細書に開示される実施例5における実験研究の、アグマチン濃度に対する異なるpH条件による影響に関する試験結果を示す。
図10】本明細書に開示される実施例6の実験研究において、様々な特定の株をドナー1とインキュベーションしたことによる、アグマチン濃度に対する効果について、試験結果を示す。
図11】本明細書に開示される実施例6の実験研究において、様々な特定の株をドナー1とインキュベーションしたことによる、アグマチン濃度に対する効果について、試験結果を示す。
図12】本明細書に開示される実施例7の実験研究における、アルギニンのin vitro発酵を使用した、4つの異なるラクトバチルス・アシドフィルス株によるアグマチンの濃度及び生物学的利用能に対する効果の試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0110】
[0120]定義
[0121]以下、いくつかの定義を示す。しかしながら定義が以下の「実施形態」の項にある場合もあり、上記の見出し「定義」は、「実施形態」の項におけるそのような開示が定義ではないことを意味するものではない。
【0111】
[0122]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「腸」という用語は、食物の移動及び消化、栄養素の吸収、並びに老廃物の排泄を担う臓器、腺、管、及び系を指す。ヒトでは、腸は胃腸管を含む。腸はまた、脾臓、肝臓、胆嚢及び膵臓などの副器官(accessory organ)及び付属腺(accessory gland)を含む。細菌は、腸全体にわたって、例えば、胃腸管、特に腸に見出され得る。
【0112】
[0123]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「胃腸管」(GI管、GIT、消化管、消化器官、又は消化管としても知られる)という用語は、口から肛門までの管を指し、ヒト及び他の動物における消化器系の全ての臓器を含む。口から取り込まれた食物は、消化されて栄養素が抽出され、エネルギーが吸収され、排泄物が糞便として排出される。胃腸管は、口、食道、胃、小腸、及び大腸を含む。ヒトの胃腸管は、口、食道、胃、及び腸を含み、上部と下部の胃腸管に分けられる。GI管は、口と肛門との間の全ての構造を含み、消化の主要臓器、すなわち胃、小腸、及び大腸を含む連続的な通路を形成する。しかしながら、完全なヒト消化器系は、胃腸管に加えて、消化に関する副器官(舌、唾液腺、膵臓、肝臓及び胆嚢)から構成される。
【0113】
[0124]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「上部胃腸管」は、口、咽頭、食道、胃、及び小腸の十二指腸を含む胃腸管を指す。
【0114】
[0125]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「下部胃腸管」という用語は、小腸の残りの部分、すなわち空腸及び回腸、並びに大腸の全て、すなわち盲腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む、胃腸管を指す。細菌は、胃腸管、特に腸に見出され得る。
【0115】
[0126]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「非病原性細菌」という用語は、宿主において疾患又は有害な応答を生じさせる能力を有しない細菌を指す。一実施形態では、非病原性細菌は共生細菌である。非病原性細菌の例としては、バチルス属(Bacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ブレビバクテリア属(Brevibacteria)、クロストリジウム属(Clostridium)、大腸菌(Escherichia coli)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)(ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・レウテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)など)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)及びスタフィロコッカス属(Staphylococcus)が挙げられるが、これらに限定されない。天然の病原性細菌は、病原性を低減又は排除するように遺伝子操作され得る。細菌の特定の株は、ある種においては非病原性であり得るが、別の種においては病原性であり得る。細菌の1つの種は、多くの異なるタイプ又は株を有し得る。細菌種のある株は非病原性であり得、同じ細菌の別の株は病原性であり得る。
【0116】
[0127]本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「プロバイオティクス」という用語は、一般に腸内細菌叢又は微生物叢を改善又は回復させることによって、適切な量の微生物を含有する宿主生物に対し健康上の効果を与えることができる、生きた非病原性微生物、例えば細菌を指す。いくつかの実施形態では、宿主生物は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、宿主生物はヒトである。非病原性細菌のいくつかの種、株、及び/又はサブタイプは、現在、プロバイオティクス細菌として認識されている。プロバイオティクス細菌の例としては、ビフィドバクテリウム属、大腸菌、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム及びサッカロミセス・ブラルディ(Saccharomyces boulardii)が挙げられるが、これらに限定されない。単離プロバイオティクスは、細菌の変異株又は突然変異株であってもよい。非病原性細菌は、所望の生物学的特性(例えば、生存性)を増強又は改善するように遺伝子操作されてもよい。非病原性細菌は、プロバイオティクス特性を提供するように遺伝子操作されてもよい。プロバイオティクス細菌は、プロバイオティクス特性を増強又は改善するように遺伝子操作されてもよい。
【0117】
[0128]本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「組成物」という用語は、脂肪、タンパク質、デンプン、着香料、ビタミン、プレバイオティクス、セルロース誘導体、ゼラチン、界面活性剤、ポリエチレングリコール、炭酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、及び食物繊維などの他の成分を有する本発明のプロバイオティクス細菌の調製物を指す。
【0118】
[0129]本明細書に記載する全ての百分率は、別途記載のない限り、組成物の総重量によるものである。本明細書においてpHについて言及されるとき、値は、標準的な装置を使用して約25℃で測定したpHに相当する。
【0119】
[0130]本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」、及び「実質的に」は、数値のある範囲内、例えば、参照数字の-10%から+10%の範囲内、好ましくは参照数字の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照数字の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照数字の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0120】
[0131]本明細書における全ての数値範囲は、その範囲内の全ての整数又は分数を含むと理解されるべきである。更に、これらの数値範囲は、この範囲内の任意の数又は数の部分集合を対象とする請求項をサポートすると解釈されたい。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、1~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲に対応するものと解釈されたい。
【0121】
[0132]本開示及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈上別段の指示がない限り、複数の指示対象も含まれる。したがって、例えば、「1つの構成成分(a component)」又は「その構成成分(the component)」についての言及は、2つ以上の構成成分を含む。
【0122】
[0133]用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」は、排他的なものではなく、他を包含し得るものとして解釈されるべきである。同様にして、用語「含む」(include、including、containing)、及び「有する」(having)は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を包含し得るものであると解釈されるべきである。更に、これに関して、上記の用語は、記載された特徴の存在を明記するが、追加の特徴又は更なる特徴の存在を排除するものではない。
【0123】
[0134]それにもかかわらず、本明細書で開示される組成物及び方法は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素を欠く場合がある。したがって、「含む(comprising)」という用語を使用する実施形態の開示は、(i)識別された構成成分又はステップを有し、追加の構成成分又はステップも有する実施形態の開示、(ii)識別された構成成分又はステップ「を本質的に含む(consisting essentially of)」実施形態の開示、並びに(iii)識別された構成成分又はステップ「を含む(consisting of)」実施形態の開示である。本明細書で開示される任意の実施形態は、本明細書で開示される任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0124】
[0135]「X及び/又はY」という文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。同様に、「X又はYのうちの少なくとも1つ」は、「X」若しくは「Y」又は「X及びY」と解釈されるべきである。例えば「リン酸一水素ナトリウム又はリン酸二水素ナトリウムのうちの少なくとも1つ」は、「リン酸一水素ナトリウム」若しくは「リン酸二水素ナトリウム」、又は「リン酸一水素ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムの両方」と解釈されるべきである。
【0125】
[0136]本明細書において使用する場合、用語「例」及び「例えば~など(such as)」は、その後に用語の列挙が続くときは特に、単に例示的かつ説明的なものにすぎず、排他的又は包括的なものとみなされるべきではない。
【0126】
[0137]「対象」又は「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。本明細書で使用するとき、「有効量」とは、欠乏を予防する、個体の疾患若しくは医学的状態を治療する、又はより一般的には、症状を軽減させる、疾患の進行を管理する、又は個体に対して栄養学的、生理学的若しくは医学的利益をもたらす、量である。
【0127】
[0138]用語「処置/治療」及び「処置/治療する」には、予防的治療又は抑止的治療(対象とする病的状態又は障害を予防する及び/又は発症を遅らせる治療)と、治癒的治療、治療的治療、又は疾患修飾的治療との両方が含まれ、例えば、診断された病的状態又は障害の治癒、遅延、症状の軽減、及び/又は進行の停止のための治療的手段、並びに、疾患に罹患する危険性がある患者、又は疾患に罹患した疑いのある患者、及び体調不良の患者、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療が含まれる。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」は、対象が全快するまで治療することを必ずしも意味するものではない。「処置/治療」及び「処置/治療する」という用語はまた、疾患に罹患してはいないが不健康な状態を招きやすい可能性のある個体の健康を維持及び/又は促進することも指す。用語「処置/治療」及び「処置/治療する」はまた、1つ以上の主たる予防手段又は治療手段の相乗作用、又はそうでない場合強化を含むことも目的としている。非限定的な例として、処置/治療は、患者、介護者、医師、看護師、又は別の医療専門家が行うことができる。
【0128】
[0139]本明細書で使用するとき、「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び動物対象のための投与量単位として好適な物理的に小分けされた単位を指し、各単位は、製薬上許容可能な希釈剤、担体、又はビヒクルとともに、所望の効果をもたらすのに十分な量の、予め定められた量の、本明細書に開示される組成物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される具体的な化合物、達成しようとする効果、及び宿主体内の各化合物に関連する薬力学によって決まる。
【0129】
[0140]本明細書で使用するとき、「mM」という用語は、水溶液のモル濃度単位を指し、mmol/Lである。例えば、1.0mMは1.0mmol/Lに等しい。本明細書で使用するとき、「μM」という用語は、水溶液のモル濃度単位を指し、μmol/Lである。例えば、1.0μMは1.0μmol/Lに等しい。
【0130】
[0141]特定の成分を参照して使用される「本質的にない」又は「実質的にない」という用語は、存在する成分のいずれかが、約3.0重量%未満、例えば約2.0重量%未満、約1.0重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、又はより好ましくは約0.1重量%未満を構成することを意味する。
【0131】
[0142]実施形態
[0143]本開示は、概して、微生物叢を利用してアグマチンを産生するためのプロバイオティクス、組成物、及び方法に関し、より詳細には、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、対象の胃腸管におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるためのプロバイオティクス、組成物、及び方法に関する。一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくは成人及び小児を含むヒトであってもよい。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。一実施形態では、組成物は、プロバイオティクスとアルギニンとを含む。
【0132】
[0144]一態様では、本開示は、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有するプロバイオティクスを提供し、単離プロバイオティクスは、微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアグマチンを産生することができる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管又は下部胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる。
【0133】
[0145]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。
【0134】
[0146]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の産生をブーストして、ADCを利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。
【0135】
[0147]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、内因性酵素アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を含む株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)からなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0136】
[0148]一実施形態において、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する細菌株である。
【0137】
[0149]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0138】
[0150]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、少なくとも約4.0、少なくとも約5.0、少なくとも約6.0、約5.0~約9.0、約6.0~約8.0、又は約7.0のpHで、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができる。
【0139】
[0151]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管において、フラクトオリゴ糖(FOS)などのプレバイオティクスの存在下で、アルギニンをアグマチンに変換することができる。
【0140】
[0152]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンをアグマチンに変換することができ、組成物を投与してから24時間後に、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、少なくとも95μM、少なくとも100μM、少なくとも105μM、少なくとも110μM、少なくとも115μM、少なくとも120μM、少なくとも125μM、少なくとも130μM、少なくとも200μM、少なくとも300μM、少なくとも400μM、少なくとも500μM、少なくとも600μM、少なくとも700μM、又は少なくとも800μMのアグマチン濃度を達成することができる。
【0141】
[0153]一態様では、本開示は、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、微生物叢を利用して対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるための組成物を提供する。
【0142】
[0154]一実施形態では、本開示は、必要とする対象において、疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康、細胞健康、並びに寿命を改善するための組成物を提供する。組成物は、微生物又は細菌を含む。一実施形態では、微生物は、プロバイオティクスである。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させることができる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができる。
【0143】
[0155]一実施形態では、対象の身体部分は、対象の胃腸管、下部胃腸管、腸、小腸又は大腸である。一実施形態では、アグマチン及び/又はポリアミンの産生は、対象の胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の下部胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は対象の小腸で行われる。
【0144】
[0156]一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の大腸で行われる。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができ、さらに対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることができる。
【0145】
[0157]一実施形態では、組成物は、アルギニンを更に含む。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管でアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の産生をブーストして、ADCを利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。
【0146】
[0158]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。一実施形態では、組成物は、ラクトバチルス・アシドフィルスとアルギニンとを含む。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、アルギニンをアグマチン及び/又は他のポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、内因性酵素アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を含む株である。
【0147】
[0159]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0148】
[0160]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の配列同一性を有する細菌株である。
【0149】
[0161]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0150】
[0162]一実施形態において、組成物は酸性化化合物を更に含む。一実施形態において、酸性化化合物は、フラクトオリゴ糖(FOS)などのプレバイオティクスである。一実施形態において、組成物は、プレバイオティクスを更に含む。一実施形態において、組成物は、フラクトオリゴ糖(FOS)を更に含む。
【0151】
[0163]一実施形態において、組成物は、ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)などの補因子を更に含む。
【0152】
[0164]一実施形態では、対象の胃腸管におけるアグマチン濃度は、組成物を投与してから24時間後に、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、少なくとも95μM、少なくとも100μM、少なくとも105μM、少なくとも110μM、少なくとも115μM、少なくとも120μM、少なくとも125μM、少なくとも130μM、少なくとも200μM、少なくとも300μM、少なくとも400μM、少なくとも500μM、少なくとも600μM、少なくとも700μM、又は少なくとも800μMである。
【0153】
[0165]一実施形態では、組成物は、デンプン源、タンパク質源及び脂質源のうちの1つ以上を更に含む。
【0154】
[0166]適切なデンプン源は、例えば、トウモロコシ、米、小麦、大麦、オート麦、大豆、及びこれらの混合物などの穀物及び豆果である。
【0155】
[0167]適切なタンパク質源は、任意の適切な動物タンパク質源又は植物タンパク質源、例えば、肉及びミール、家禽肉又はミール、魚肉又はミール、大豆タンパク質濃縮物、乳タンパク質、及びグルテンなどから選択することができる。
【0156】
[0168]適切な脂質源としては、肉、動物性脂肪及び植物性油又は脂肪が挙げられる。
【0157】
[0169]デンプン、タンパク質及び脂質源の選択は、対象の栄養要求、嗜好性の考慮、及び適用される製品のタイプによって主に決定される。
【0158】
[0170]更に、他の様々な原材料、例えば、糖、塩、香辛料、香味料、ビタミン、ミネラル、着香料、及び脂肪などもまた、所望に応じて組成物に組み込むことができる。
【0159】
[0171]一実施形態では、組成物は、乾燥粉末、カプセル、常温保存可能な液体、又は湿潤ペースト、チルドペースト若しくは常温保存可能なペーストの形態である。一実施形態では、組成物は、粉末である。一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。一実施形態では、組成物は乾燥粉末であり、単離プロバイオティクス細菌は組成物上にコーティングされるか、又は組成物内に充填される。一実施形態では、単離プロバイオティクス細菌は、最終組成物中で活性である。
【0160】
[0172]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃酸環境で少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0161】
[0173]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH1.5の環境で、少なくとも10分間生存することができる。
【0162】
[0174]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH2.6の環境で、少なくとも10分間生存することができる。
【0163】
[0175]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.4の環境で、少なくとも60分間生存することができる。
【0164】
[0176]一実施形態では、対象はヒトである。健康な対象の胃腸pHプロファイルを以下に記載する。管腔内pHは、胃内の強酸性から十二指腸内の約pH6まで急速に変化する。pHは、小腸においてpH6から末端回腸における約pH7.4まで徐々に増加する。pHは、盲腸において5.7に低下するが、再び徐々に増加し、直腸においてpH6.7に達する。単離プロバイオティクスが下部胃腸管に到達してコロニーを形成し、アルギニンをアグマチンに変換するためには、単離プロバイオティクスが単独で、又は胃内の高酸性液体環境に耐えることができるカプセル内に保護されることによってのいずれかで、胃内の高酸性液体環境で生存する必要がある。
【0165】
[0177]ヒト胃液の正常な体積は約20~約100mLであり、胃液は高度に酸性であり、胃酸としても知られている。ヒト胃腔内の胃酸は、典型的には約1.5~3.5のpHを有し、このpH値はプロトンポンプ、H+/K+ATPアーゼによって維持される。胃腔内の高酸性環境は、タンパク質を含む食物を分解する。傍細胞は、過程において血流中に炭酸水素塩を放出し、血中pHの一時的な上昇(alkaline tide)をもたらす。食事が摂取されると、胃のpHは食事による緩衝効果により上昇し、次いで胃酸の分泌によりベースラインに戻る。
【0166】
[0178]本開示において、単離プロバイオティクスは、ヒト胃の胃酸環境での生存能を有しており、小腸、大腸又は下部胃腸管に到達してコロニーを形成し、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)及び局所微生物叢を利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる。
【0167】
[0179]本開示において、異なるプロバイオティクス株をスクリーニングして、ヒト胃液の胃酸を模したインキュベーション溶液中でインキュベートしたときに安定であった株を同定した。ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)を含む本開示において試験した株は、インキュベーション溶液中、約1.5のpHで少なくとも10分間、少なくとも20分間、又は少なくとも30分間;及び約2.6のpHで少なくとも10分間、少なくとも20分間、又は少なくとも30分間;及び約3.4のpHで少なくとも60分間、又は少なくとも70分間安定であった。
【0168】
[0180]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ヒトの胃の胃酸環境で少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、生存することができる。
【0169】
[0181]一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。一実施形態では、カプセル中の単離プロバイオティクスは、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、又は少なくとも70分間、ヒトの胃の胃酸環境で生存することができる。
【0170】
[0182]一実施形態では、カプセルは、単離プロバイオティクスが、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、少なくとも60分間、少なくとも70分間、少なくとも80分間、少なくとも90分間、少なくとも100分間、少なくとも110分間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、又は少なくとも4時間、ヒトの胃の胃酸環境で生存することを可能にする。
【0171】
[0183]一態様では、本開示は、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿などの特定の健康上の効果を対象に提供するために、微生物叢を利用して対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させるための方法を提供する。方法は、対象に組成物を投与することを含む。
【0172】
[0184]一態様では、本開示は、微生物叢を利用して対象の身体部位におけるアグマチン及び/又はポリアミンの産生を増加させることによる、必要がある疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿の方法であって、本明細書の上記及び本開示の他の箇所で論じられる組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0173】
[0185]一実施形態では、方法は、1日あたり少なくとも500~700mgのアルギニン及び/又は1日あたり少なくとも500万~700万CFUの単離プロバイオティクスを少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、又は少なくとも6ヶ月間提供するために、有効量の組成物を対象に投与することを更に含む。
【0174】
[0186]一実施形態では、組成物には、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有することができ、さらに対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることができる、プロバイオティクスを含む。
【0175】
[0187]一実施形態では、組成物は、アルギニンを更に含む。
【0176】
[0188]一実施形態では、組成物は、プレバイオティクスを更に含む。一実施形態では、プレバイオティクスは、フラクトオリゴ糖(FOS)又はガラクトオリゴ糖(GOS)である。
【0177】
[0189]一実施形態では、組成物は、ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)などの補因子を更に含む。
【0178】
[0190]一実施形態では、本方法は、GITのpH値を調整するために、組成物の投与前又は投与後に、プレバイオティクスなどの酸性化化合物を対象に別々に投与することを更に含む。一実施形態では、酸性化化合物はFOSである。
【0179】
[0191]一実施形態では、対象の身体部分は、対象の胃腸管である。一実施形態では、アグマチン及び/又はポリアミンの産生は、対象の胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の下部胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の下部胃腸管で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は対象の小腸で行われる。一実施形態では、アグマチンの産生は、対象の大腸で行われる。
【0180】
[0192]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管でアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)を利用してアルギニンをアグマチン及び/又はポリアミン、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンに変換することができる細菌株である。一実施形態では、単離プロバイオティクスは、対象の胃腸管においてアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)の産生をブーストして、ADCを利用してアルギニンをアグマチンに変換することができる細菌株である。
【0181】
[0193]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスである。一実施形態では、組成物は、ラクトバチルス・アシドフィルスとアルギニンとを含む。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、アルギニンをアグマチン及び/又は他のポリアミン類、例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどに、変換することができる。一実施形態では、ラクトバチルス・アシドフィルスは、内因性酵素アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を含む株である。
【0182】
[0194]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0183】
[0195]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の配列同一性を有する細菌株である。
【0184】
[0196]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0185】
[0197]一実施形態では、組成物は、乾燥粉末、カプセル、常温保存可能な液体、又は湿潤ペースト、チルドペースト若しくは常温保存可能なペーストの形態である。一実施形態では、組成物は粉末である。一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。一実施形態では、組成物は乾燥粉末であり、単離プロバイオティクスは組成物上にコーティングされるか、又は組成物内に充填される。一実施形態では、単離プロバイオティクス細菌は、組成物中で活性である。
【0186】
[0198]一実施形態では、対象の胃腸管におけるアグマチンの濃度は、組成物を投与してから約24時間後に、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、少なくとも95μM、少なくとも100μM、少なくとも105μM、少なくとも110μM、少なくとも115μM、少なくとも120μM、少なくとも125μM、又は少なくとも130μMである。
【0187】
[0199]一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくは成人及び小児を含むヒトであってもよい。
【0188】
[0200]一態様では、本開示は、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有する単離プロバイオティクスであって、微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる単離プロバイオティクスを提供する。
【0189】
[0201]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を更に利用する微生物叢を利用して、対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができ、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、細菌株である。
【0190】
[0202]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する細菌株である。
【0191】
[0203]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0192】
[0204]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、約4.0~約8.0のpHで微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる。
【0193】
[0205]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、フラクトオリゴ糖(FOS)の存在下で微生物叢を利用して、対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる。
【0194】
[0206]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、補因子ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)の存在下で、微生物叢及びアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる。
【0195】
[0207]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、アグマチンの下流ポリアミン類への変換を少なくとも24時間遅延させることによって、対象の胃腸管においてアルギニンから産生されるアグマチンの生物学的利用能を増加させる能力を有する。
【0196】
[0208]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、微生物叢及びアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)を利用して、対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができ、アグマチンの濃度は、単離プロバイオティクスを投与してから24時間後に少なくとも20μMである。
【0197】
[0209]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH2.6の環境で、少なくとも10分間生存することができる。
【0198】
[0210]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、pH3.4の環境で、少なくとも60分間生存することができる。
【0199】
[0211]一実施形態では、対象の胃腸管は、対象の下部胃腸管である。
【0200】
[0212]一実施形態では、対象の胃腸管は、対象の大腸である。
【0201】
[0213]一態様では、本開示は、微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させて、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、加齢性記憶低下の減少、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿を含む健康上の効果を対象に提供するための組成物であって、組成物が、単離プロバイオティクスとアルギニンとを含み、単離プロバイオティクスが、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる、組成物を提供する。
【0202】
[0214]一実施形態では、組成物はフラクトオリゴ糖(FOS)及び/又はGOSを更に含む。
【0203】
[0215]一実施形態では、組成物は、補因子ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)を更に含む。
【0204】
[0216]一実施形態では、組成物は、デンプン源、タンパク質源、プレバイオティクス源、脂質源、ビタミン、糖、塩、香辛料、香味料、ミネラル、及び着香料のうちの1つ以上を更に含む。
【0205】
[0217]一実施形態では、組成物はカプセルの形態である。
【0206】
[0218]一実施形態では、組成物は乾燥粉末の形態であり、単離プロバイオティクスは組成物に充填される。
【0207】
[0219]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、組成物中で活性である。
【0208】
[0220]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0209】
[0221]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0210】
[0222]一態様では、本開示は、疼痛緩和、老化防止効果、神経保護及び抗うつ効果、加齢性記憶低下の減少、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康の改善、並びに長寿を含む健康上の効果を対象に提供するために、微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させるための方法であって、対象に請求項13に記載の組成物を投与することを含み、組成物が、単離プロバイオティクスとアルギニンとを含み、単離プロバイオティクスが、対象の胃腸管におけるコロニー形成能及び生存能を有しており、微生物叢を利用して対象の胃腸管においてアルギニンからアグマチンを産生することができる、方法を提供する。
【0211】
[0223]一実施形態では、組成物は、5M~10B CFUの範囲の単離プロバイオティクスの1日用量及び500~750mgの範囲のアルギニンの1日用量を対象に提供するのに有効な量で対象に投与される。
【0212】
[0224]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、及びラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)のうちの1つ以上に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0213】
[0225]一実施形態では、単離プロバイオティクスは、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2628(CNCM I-2453)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2766(CNCM I-3848)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2775(CNCM I-3851)、ラクトバチルス・アシドフィルスNCC 2619(ATCC 700396)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、ラクトバチルス・アシドフィルス株である。
【0214】
[0226]一実施形態では、対象はヒトである。
【0215】
[0227]一実施形態では、対象の胃腸管におけるアグマチンの濃度は、組成物を投与してから約24時間後に少なくとも20μMである。
【0216】
[0228]一態様では、本開示は、微生物叢を利用して対象の胃腸管におけるアグマチンの産生を増加させることによる、必要とする対象における疼痛緩和、抗老化効果、神経保護及び抗うつ効果の改善、血管拡張及び代謝健康の改善、細胞健康及び寿命の改善のための方法であって、請求項13に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0217】
[0229]アルギニンの脱炭酸によって産生されるアグマチンは、植物、原核生物及びいくつかの哺乳動物細胞における、ポリアミン類、例えば、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンなどの、前駆体の1つである。プトレシン、スペルミジン、スペルミンは、正常な細胞の増殖及び生存に必須である。スペルミジンは、細胞保護機能を有し、かつオートファジー誘導因子であり、その補給は、前臨床及び臨床実験において老化防止効果と関連付けられている[1、2]。全身及び尿中ポリアミンが高レベルであることは、健康な小児における発育と関連しているが、がんの状況では、これらの分子はまた腫瘍進行にも関連する恐れがある[3、4]。
【0218】
[0230]ポリアミン産生の中間体であることに加えて、アグマチンは、中枢神経系及び他の臓器に対して種々の生理効果及び薬理学的効果を誘導する[5、6]。合成アグマチンの補給はいくつかの健康上の効果をもたらすことが示されている。最も報告されており、実証されている効果は、アグマチンによる神経保護効果及び抗うつ効果であり、これらの効果は、動物モデルにおける脳虚血、低酸素症、薬物毒性又は抗うつ活性を予測する行動試験(尾懸垂及び強制水泳試験)を用いたいくつかの前臨床研究によって裏付けられている[7、8]。アグマチン補給による疼痛解消効果はまた、神経根障害に罹患している患者における臨床試験及びいくつかの前臨床研究によって十分に実証されている[6、7]。血管拡張、代謝健康の改善(脂肪酸酸化の刺激、脂質過酸化の減少、インスリンシグナル伝達の改善)及び細胞健康の改善(酸化ストレスの減少、細胞保護、増殖促進効果及び増殖阻害効果)に対するアグマチンの作用について、アーリーエビデンス(in-vitro又はex-vivo実験に基づく)が見出されている[5,6]。
【0219】
[0231]アグマチンについて既報の効果の機序は、受容体に基づかない効果及び受容体に基づく効果に関与している[5]。アグマチンは、α-2アドレナリン受容体及びイミダゾール受容体を高アフィニティ(α-2アドレナリン受容体に対して0.8~164μM又はイミダゾール受容体に対して0.33~>300μMのKi)で活性化する[5]。これらは、様々な組織において、抗炎症、一酸化窒素調節、Ca2+調節、抗酸化及び細胞生存に関与する、二次メッセンジャーを誘導する[9~11]。これらの受容体は、脳(最も報告されている作用部位)、胃腸(GI)管及び肝臓を含むいくつかの臓器に分布している[5]。重要なことに、これらの受容体は、生理濃度のスペルミジン、スペルミン、プトレシン又はアルギニンでは活性化されない[12]。
【0220】
[0232]アグマチン、プトレシン、スペルミジン及びスペルミンはまた、多様な食物中に、遊離型又はコンジュゲート型(例えば、フェノールアミド)で天然に見出される[13]。全身のポリアミン類及びアグマチンのかなりの割合が食事を起源としたものであり得るが、正確な割合は知られていない[14]。我々が知る限り、1日当たりのアグマチン摂取量は確立されていないことから、食事由来のアグマチンの寄与を評価することはさらに困難である。
【0221】
[0233]遊離型の食餌性ポリアミン類及びアグマチンは、上部GI管、主に胃、十二指腸及び空腸内で迅速かつ効果的に吸収される[15]。食事介入後の血中のアグマチン及びプトレシンの、放射性標識分子による回収は制限されることから、ポリアミンが腸壁、肝臓及び/又は他の臓器において速やかに吸収され、代謝されることが示唆される[16、17]。食餌性アグマチンは、大部分が肝臓及び胃壁に蓄積される[15]。絶食の間にも、重要な腸管腔ポリアミン産生及び代謝回転がなおも見られ、これらは、微生物活性、膵臓分泌、腸の死細胞及び粘膜産生によるものである可能性がある[18]。全体として、腸管内腔におけるポリアミンの量の順序は、プトレシン>スペルミジン>スペルミンである[17]。腸管腔アグマチン濃度に関する情報は見出されていない。
【0222】
[0234]ポリアミン類はまた、腸マイクロバイオームによって産生される場合もあり、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)が律速酵素であるほとんどの哺乳動物細胞とは対照的に、主な合成経路は、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)とアグマチン産生とを介すると考えられる[17]。上部GI管における食餌性ポリアミンの効果的な吸収を考慮すると、回腸、盲腸及び結腸におけるプトレシン、スペルミジン、スペルミン及びアグマチンの存在は、主に微生物活性に起因すると考えられる[17]。いくつかの腸内細菌分類群の、アグマチンの交差供給を介した協調を必要とする、ポリアミン産生の新規なハイブリッド機序が報告されている[19]。この新しいハイブリッド機序を介してアグマチン及びポリアミン類の産生をブーストするための重要な因子として、アルギニンの存在、ADC活性の至適化及び酸産生が示唆されている[19]。
【0223】
[0235]腸管腔のポリアミン類は腸肝循環される[20]。しかしながら、膵胆管液循環に取り込まれる分子は限られた部分であるため、盲腸及び結腸におけるポリアミン吸収は十二指腸及び空腸におけるものとは異なる[17]。マイクロバイオーム由来のポリアミン類が宿主においてどのように吸収され、再分配され、代謝されるかは不明である。分子プール全体に対する微生物ポリアミン類及びアグマチンの正確な寄与についての情報はない。この点を明らかにするためには、ポリアミンの注腸投与による更なる前臨床実験が必要とされる。管腔のポリアミン類及びアグマチンはまた、能動輸送体を介して腸細胞によって吸収され得、かかる細胞において、これらは局所的効果を付与し得る、又は宿主にさらに輸送され得る[21]。
【0224】
[0236]齧歯類に限定されているデータにおいて、アグマチンが胃組織、腸組織及び肝臓組織において最も豊富であることを示した[20]。最も報告されている作用部位は脳はであるが、アグマチンは脳では非常に低濃度で見出される[22]。アグマチンは、ラット組織ではスペルミン又はスペルミジンよりも10~100倍少ないように見えるが、刊行物によって異なるラット種及び分析方法が使用されているため、この比較は慎重に行う必要がある[23]。ヒトの尿及び血清中には、アグマチン、スペルミジン及びスペルミンが同じ濃度範囲(約0.5μM)で見出される[24]。ヒト遠位腸におけるアグマチンの量は知られていないが、限られたデータでは、糞便アグマチン含有量がプトレシン又はスペルミジンよりわずかに高い(約10μmol/g乾燥物質)ことが示されており、腸マイクロバイオームが比較的高濃度でアグマチンを産生し得、少なくとも腸において局所効果を超え得ることを示唆する[24]。別の研究では、糞便プトレシンがスペルミジンよりも有意に高く、健康な成人では約700μMに達し得ることが示されている[25]。この研究では、アグマチン濃度は報告されていない[25]。しかしながら、健康な成人集団における大規模で定量的なデータが欠如しているため、ヒト生体液中のアグマチン及びポリアミンの分布について結論づけることは難しい。ポリアミン及びアグマチンが、食餌投与又は静脈内(IV)投与後に迅速に再吸収及び代謝された(IV注射後のアグマチンの半減期は5分である)ことは、全身のポリアミン値のモニタリングは、腸管腔ポリアミンの増加を追跡するのに最良の方法ではない可能性があることを示唆する[26、27]。アセチル化スペルミン及びスペルミジンは、ポリアミン経路における変化を追跡するためのより良い候補であり得る[28]。
【0225】
[0237]マイクロバイオーム由来のポリアミン経路のブーストは、宿主に対して有益な効果を有し得るが、腸ポリアミンと作用部位との間の相互作用の正確な機序は未知のままである[29、30]。例えば、マウスモデルにおけるアルギニン及びビフィドバクテリアLKM512の組合せは、アルギニン、単離プロバイオティクス単独又は対照と比較して、腸内微生物プトレシン及びスペルミジンを増加させることが見出され、その効果は抗生物質処置後には消失する。この二重処置による6ヶ月の補給は、同じマウスモデルにおいて、単一処置又は対照と比較して寿命を改善し、加齢性記憶低下を減少させる[31]。骨粗鬆症マウスモデルにおける最近の研究では、Chevalier et alは、骨強度に対する温曝露の有益な効果が、マイクロバイオーム組成の変化、機能の変化、及び細菌合成ポリアミン経路の増加によって仲介されることを実証している[32]。
【0226】
[0238]本開示は、腸マイクロバイオーム産生をブーストすることによってアグマチン及び/又はポリアミンを自然に増加させるための、カプセル又は粉末の形態の組成物などの組成物を開示する。本出願人は、利用可能なin-vitro腸モデルを使用して、ADC及び/又はアグマチン産生をブーストするため、以下のパラメータ:1)アルギニン源、アグマチン及びポリアミンの前駆体;2)腸環境の酸性化;3)プロバイオティクス及び/又は補因子の添加、を試験した。
【0227】
[0239]本出願人は、驚くべきことに、アグマチン及びポリアミンなどのこれらの代謝産物を増加させることが、腸における局所効果及び可能性として全身効果を誘導し得ることを発見した。
【0228】
[0240]腸由来アグマチン及びスペルミジンの推定濃度
[0241]特定の効果のためのポリアミン類及びアグマチンの有効用量及び毒性用量は、合成分子を用いた臨床実験及び前臨床実験に基づいて決定される[33]。ヒト糞便及び回腸ポリアミン類のおおよその濃度を計算することによって、本出願人は、腸管腔ポリアミン類含量が、効果又は毒性用量のために必要とされる合成用量よりも低いと推定した。しかしながら、推定された糞便中アグマチン及びスペルミジンは、機序による効果に必要な用量を上回る(受容体アフィニティ又はin-vitroオートファジー用量応答実験に基づく)。例えば、アグマチンは、α-2アドレナリン受容体及びイミダゾリン受容体を活性化することができ、脳、胃又は血小板膜において低濃度で作用機序を誘導する。Gタンパク共役受容体(GPCR)は腸にも存在するため、回腸及び結腸におけるアグマチンの局所的増加は、これらの受容体を活性化するのに十分であり得る。糞便中及びin-vitroバッチ発酵中のスペルミジン及びアグマチン濃度、並びに生体効果に必要とされる濃度(in-vitroアッセイに基づく)との比較を以下の表1に掲載する。
【0229】
[0242]
【表1】
【0230】
[0243]本開示のin-vitro腸モデルからのポリアミン産生を、産生、吸収及び代謝により生じる腸ポリアミン含量によって解釈することは難しい。in-vitroバッチ発酵実験からのスペルミジン及びアグマチン濃度の範囲は、糞便中で見出されるより低いが、同じ桁(μM)である。アルギニン発酵後の平均アグマチン及びスペルミジン濃度は、すでに機序による効果に必要な濃度範囲内にある。しかしながら、受容体を活性化するための、又は腸におけるオートファジー効果を誘導するための正確な濃度は知られていない。追加のin-vitro実験結果は、目標濃度を設定し、マイクロバイオーム由来のポリアミン類に対する局所効果を活用するのに役立った。一方、本開示の原材料選択のためにアグマチン及びスペルミジンの目標濃度を推定することは難しい。
【0231】
[0244]原材料の選択基準
[0245] 原材料は、いくつかの場合においてがんの進行と関連付けられているプトレシンの産生を制限しながら、アグマチン及びスペルミジンの産生の最も高くかつ最も有意な増加を提供するように選択される。原材料の組み合わせ間の相乗効果を評価し、製品の差別化及びコミュニケーションを改善する成分を考慮する。
【0232】
[0246]更なる分析の更なる設計
[0247]本出願人は、1)健康な腸細胞におけるGPCR受容体の、アグマチンにより誘導される活性化を確認し;2)局所用量のための目標濃度を特定し;かつ3)腸の健康に対するアグマチンの局所効果(すなわち、細胞増殖、抗炎症及び抗酸化)についての最初の証拠を提供するためにMiniGut実験を設計した。
【0233】
[0248]本出願人は、1)オートファジーの活性化を介したアンチエイジングに対するアグマチンのアーリーエビデンスを支持し;2)アグマチンの効果をスペルミジンと比較し;かつ3)オートファジー効果に必要とされるアグマチンの目標濃度を特定するために、ゼブラフィッシュ(Zebrafish)及びin-vitroオートファジー実験を設計した。
【0234】
[0249]本出願人は、免疫に基づくアッセイを設計した。
【0235】
[0250]本出願人は更に、1)自由生活(free-living)の高齢者集団における微生物ポリアミンとアグマチンと、i)腸及びii)免疫の健康との間の関連を理解し、2)微生物ポリアミン類及びアグマチンの量が、自由生活の高齢者における特定のタンパク質強化栄養補助食品(乳清又はコラーゲンタンパク質)によってどのように影響を受けるかを理解するために、CALMコホートの調査を行った。
【0236】
[0251]アグマチンは、ポリアミン経路の中間体である。アグマチンは、アルギニンの脱炭酸によって産生される生体アミンである。この反応は、補因子としてピリドキサール-5’-リン酸(PLP)を必要とするアルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)によって行われる。次いで、アグマチンは、2つの主要経路に分配される。アグマチンは、アグマチナーゼ酵素を介して、他のポリアミン、スペルミジン及びスペルミンの前駆体であるプトレシンに変換される、又はアミンオキシダーゼ若しくはジアミンオキシダーゼ(DAO)を介してグアニジノブチルアルデヒドに変換される[34]。アグマチンホメオスタシスに関与する基質及び酵素を図1に示す。[34]
【0237】
[0252]アグマチン及びポリアミンの様々な供給源
[0253]食餌:
[0254]ポリアミンは、多種多様な食品中に見出される。欧州連合における1日当たりの総ポリアミン摂取量(プトレシン、スペルミジン及びスペルミン)は、353.6μmol/日食事であり、プトレシンが最も豊富であり(211.9μmol/日食事)、スペルミジンがそれに続く(87μmol/日食事)[35]。アルコール飲料(酒:114mg/L)、ザワークラウトブライン(12mg/L)及び様々な種子(レンズマメ:38mg/kg、アルファルファフェヌグリーク:11mg/kg、大根:52mg/kg)などの発酵食品では、高いアグマチン濃度が見出される[14]。アグマチンの1日摂取量は報告されていない[14]。種子の発芽は、アグマチン及び他のポリアミン類の増加をもたらす[36]。図2は、アルファルファの種子、スプラウト及びマイクログリーン中の、アグマチン(AGM)、ポリアミン例えばプトレシン(PUT)、カダベリン(CAD)、スペルミジン(SPD)、スペルミン(SPM)などの含有量を示す[36]。
【0238】
[0255]フェノール性化合物とコンジュゲートされたポリアミンとして定義されるフェノールアミドは、いくつかの植物において非常に豊富であり、ポリアミンの供給源とみなすことができる。アグマチンとコンジュゲートしたフェノールアミドは、小麦、米、トウモロコシ、大豆に見出される一方、ホルダチン(アグマチンにコンジュゲートしたフェノールアミドの二量体)はごくわずかに存在する。しかしながら、フェノールアミドの生物学的利用能及び消化率は更に調査する必要がある[13,37]。
【0239】
[0256]合成型:
[0257]スペルミジン、アグマチン及びアルギニン(これらのポリアミンの前駆体)もまた、様々な効果をサポートするための栄養補助食品(粉末又はカプセル)として利用可能である。伝えられている効果は、様々なレベルの証拠によって裏付けられる。栄養補助食品中のアルギニン又は関連ポリアミン類を以下の表2に掲載する。
【0240】
[0258]
【表2】

:これらのサプリメントは、スペルミジンを含有する植物ベースの抽出物であることが多い。
**:市販品は見られない。
【0241】
[0259]内因性産生:
[0260]哺乳動物におけるポリアミンは、図3に示されるように、アルギナーゼデカルボキシラーゼ(ADC)及びオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)経路を介して主に産生される。それにもかかわらず、ADC発現及びアグマチン産生は、脳(グリア細胞、髄質)、肝臓、及び腎臓を含むいくつかの哺乳動物細胞において見出されている[38、39]。ADCは、細胞質よりもミトコンドリアにおいて発現されることが多い。哺乳動物の臓器におけるADC分布は、アグマチンの分布と異なることから、細胞外アグマチンの取り込みが示唆される[34、40]。図3は、哺乳動物細胞及び微生物叢におけるポリアミンの代謝及び輸送を示す。
【0242】
[0261]アグマチンは生理的pHで正に荷電しているため、単純な拡散では細胞脂質関門を通過することができない。代わりに、アグマチンの取り込みは、約400のアノテートされたメンバーを含む溶質輸送ファミリー(SLC)並びに有機カチオンファミリー(OCT)を含む活性ポリアミン輸送系によって介在される[8、40]。活性アグマチンの排出は、ヒトグリオーマ細胞[22]、ラット肝細胞[32]、ラット動脈平滑筋細胞[33]、及びハムスター腎細胞[34]において同定されている。ヒトの腸を起源とする6系統の細胞株(Caco2、Cx1、Colo320、HT29、Colo205E、SW480)で行われた研究は、アグマチン特異的有機カチオン輸送体を介した活性アグマチンの取り込みを示す[21、41]。
【0243】
[0262]腸マイクロバイオーム
[0263]原核生物は、(図3に示されるように)ODC又はADCを介してポリアミンを産生することができるが、ADCは、腸マイクロバイオームによるポリアミン合成の主要経路であると考えられている[40、42]。ADCは、いくつかの腸内細菌属で特性評価されており、アグマチンを産生する腸マイクロバイオームの能力が強調されている[34]。
【0244】
[0264]Mastumoto et al.は、アルギニンとビフィドバクテリウム属種との組み合わせが細菌性プトレシンの産生を促進することを示した[29]。Kitada et al.は更に、図4に示されるように、腸内細菌のいくつかの分類群の協力を必要とする、ポリアミン産生のための独特の機序を報告している[19]。腸内細菌のいくつかの分類群を以下に記載する。第1に、大腸菌などの酸耐性細菌は、細胞内アグマチンを排出し、細胞外アルギニンを取り込み、6.5未満のpHで強く活性化されるアルギニン依存性酸耐性系(アルギニン-アグマチンアンチポーター)を有する。腸内細菌の第2のタイプは、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)などのエネルギー生産系(アグマチン・デイミナーゼ)を含む細菌である。これらの細菌は、ODC又はADCを欠くが、アグマチン-プトレシンアンチポーターを介して細胞外アグマチンを取り込み、ポリアミン及びATP産生を完了することができる。第3に、酸産生細菌、例えば、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp.lactis)は、環境の酸性化を維持する。アグマチンは、独立した生存戦略に従うこれらの複数の細菌の間の栄養共生において鍵となる分子である[19]。したがって、アルギニンの補給、ADC活性及び酸産生の至適化は、アグマチン及びポリアミン産生をブーストするための重要な因子であり得る。図4は、酸耐性系を有する細菌とATP合成系を有する細菌との間の協力から構成されるプトレシン生産経路のハイブリッド機序を示す。
【0245】
[0265]腸における外因性ポリアミン及びアグマチンと、マイクロバイオーム由来ポリアミン及びアグマチンとの、吸収及び分布の比較
[0266]胃腸管内のポリアミンは、食事、腸内微生物叢、膵胆汁分泌物、及び腸の死細胞などの様々な起源を有する。しかしながら、ポリアミンプール全体に対する各供給源の正確な寄与は知られていない[18、40]。
【0246】
[0267]食餌性ポリアミン(プトレシン、スペルミジン及びスペルミン)は、主に十二指腸及び空腸の管腔に速やかに吸収される[18]。正常に給餌された雄性スプラーグドーリーマウスにおける管腔ポリアミン濃度に着目した研究では、プトレシン濃度は十二指腸及び上部空腸において最も高いことが示されている(2000~3000nmol/g湿潤組織)。最も低濃度は回腸であった。スペルミン及びスペルミン濃度は、プトレシン濃度より平均して5倍低かった。最大スペルミジンレベルは盲腸で見出され(約700nmol/g湿潤組織)、回腸では存在しなかった。スペルミンは最も低濃度であり、十二指腸及び空腸においてのみ検出可能であった(100~200nmol/g湿潤組織)[17]。ポリアミンがどのように吸収され、胆肝(billiarohepatic)循環に再分配されるかを更に理解するために、[14C]プトレシン(1.6nmol)を腸管腔の様々な位置に注射し、膵胆管分泌物中の放射能を追跡した。下部及び上部空腸に注射した後、60分以内に、最も高い放射能の回収が見られた。結腸注射は、同じ時間枠で膵胆汁分泌における放射能の増加を誘導したが、回収は空腸注射よりもはるかに低かった。回腸注射プロファイルは、放射能回収がより低く、より長く、注射後約140分でプラトーに達したため異なっており、放射能が回腸では吸収されず、吸収される前に盲腸及び結腸に達することを示唆している[17]。
【0247】
[0268]ヒトにおいて、絶食時のプトレシン、スペルミジン及びスペルミンの空腸流量は、20分間のサンプリング期間でそれぞれ約7000nmol、2000nmol及び500nmolであり、重要な内因性腸ポリアミン濃度が強調された。試験食の後、プトレシン流量は空腸において25%増加したが、他のポリアミン類については有意な変化は見出されず、回腸においては変化は観察されなかった[18]。試験食中のプトレシンの20%までが血液中に回収され、大部分が腸壁及び/又は肝臓で代謝されたことを示唆する[18]。代わりに、アセチル化プトレシン及びスペルミン/スペルミジンのわずかな増加が見出された[28]。
【0248】
[0269]ラットにおける[14C]-アグマチンの摂取後の放射能の分布は、外因性アグマチン吸収の主な部位が胃であることを示した[15、20]。最も高いレベルの放射能は肝臓で見出され、胃壁にも大量に存在した[20]。3時間の消化期間後には、回腸及び結腸の管腔において放射能が検出された[20]。アグマチンが吸収されずにこれらの腸セグメントに輸送される可能性は低いため、本出願人らは、放射能の存在は膵胆管液循環に関連し得ると示唆した[15、20]。血中の放射能レベルは低く、対象間で大きく変動し、臓器間でアグマチンが速やかに再分配されることが強調された[20]。
【0249】
[0270]ADCデカルボキシラーゼ及びODCデカルボキシラーゼの活性をモニタリングすることによって、哺乳動物及び原核生物の活性にそれぞれ起因する粘膜及び管腔ポリアミン合成を評価した[17]。一般に、管腔のADC活性はODC活性よりも高く、細菌ポリアミン産生が主にADC活性を介して生じることが確認された。ADC活性及びODC活性は、いずれも十二指腸及び空腸ではほとんど検出されなかったが、ADC活性が胃、盲腸及び結腸において最も高いことは、腸における細菌ポリアミンの可変産生(differential production)を示唆している。興味深いことに、管腔ポリアミン濃度が高いと、高プトレシンレベル及びODC活性を示した空腸を除いて粘膜ODC率は低かった[17]。
【0250】
[0271]哺乳動物組織におけるアグマチン及びポリアミンの分布
[0272]ラットの組織及びヒトの生体液中のアグマチン、スペルミン及びスペルミジンレベルを、様々な刊行物より表3に要約する。濃度単位は、論文間の比較目的のためにμMに標準化されている。アグマチンは、スプラーグドーリーラットの胃、小腸及び大腸組織において最も豊富であり、胃において観察される最大レベルは0.071μg/g湿潤組織である[22]。様々な年齢の雄性ロングエバンスラットにおいて、同程度の度合いが観察される[22]。ウィスターラット組織では、スペルミジン及びスペルミン濃度が10~100倍豊富であり、小腸(それぞれ213及び100μg/g湿潤組織)及び肝臓(それぞれ230及び235μg/g湿潤組織)において最も高いレベルが見出される[23]。本発明者らは、スペルミジン、スペルミン及びアグマチンの濃度のばらつきが、少なくともある程度は、様々な刊行物[26、43]において使用されているラット種及び分析方法の相違に起因し得ることを排除することができない。
【0251】
[0273]
【表3】
【0252】
[0274]アグマチン、スペルミン及びスペルミジンのラット血中濃度は、他の組織よりも有意に低く、これらの分子が異なる組織において急速に再分布及び/又は代謝されるという以前の観察を支持する[22]。薬物動態、薬力学的(PK/PD)実験は、ボーラス注射(50mg/kg)後のラット血中のアグマチン半減期が約5分であることを示した[27]。ラットにおける放射性標識ポリアミンの静脈内(IV)注射の10分後、血漿プトレシンは67%、スペルミンは30%、スペルミジンは89%減少する[26]。全身ポリアミンレベルは、健康上の効果のために必要とされる有効用量の最良の提示ではない可能性がある。
【0253】
[0275]ヒトの尿及び血清中では、アグマチン濃度はスペルミジン及びスペルミンと同じ範囲の程度である。Swanson et al.は、アグマチン濃度が、6~13μmol/g乾燥物質の範囲でヒト糞便試料中のスペルミジン濃度を超えることを見出した[24、25]。しかし、これらの観察を支持するために利用可能な、ヒト生体液及び組織中の異なるポリアミンを直接比較する更なる刊行物はない。Nestle及び公的な半定量的メタボロミクスデータの研究は、IBDを有する乳児及び成人における糞便アグマチンレベルの大きな個人間変動性を強調した。健康な成人集団における大規模で定量的なデータが欠如しているため、ヒト生体液中のポリアミン及びアグマチンの分布に関する結論を引き出すことは困難である。
【0254】
[0276]ポリアミン経口用量、毒性用量及び有効用量と、腸由来ポリアミン及びバッチ発酵からのin-vitroポリアミン濃度の比較。
【0255】
[0277]本出願人は、ポリアミン及びアグマチンの毎日のヒト糞便及び回腸含量の概算を計算することによって、腸由来ポリアミン産生を、利益及び毒性用量についての平均有効用量と比較することを試みた。本出願人は、腸由来ポリアミン含量が有効用量又は毒性用量より低いことを見出した。しかしながら、糞便中のアグマチン及びスペルミジンの量は、機構的効果に必要な濃度よりも高い。ポリアミン経口用量、毒性用量及び有効用量と、腸由来ポリアミン及びバッチ発酵からのin-vitroポリアミン濃度の比較を表4に示す。
【0256】
[0278]
【表4】

:6時間+24時間+48時間-0時間での濃度から計算された平均;
**6時間+24時間-0時間での濃度の平均;
***文献に他の参照なし
【0257】
[0279]アグマチンの健康上の効果
[0280]内因性アグマチンの生理的関連性は依然として不明であるが、いくつかの健康上の効果が合成アグマチンの補給に起因すると考えられている。これらの利益は、以下を含む証拠のレベルに基づいてランク付けされる[6]:1)抗うつ効果及び認知の改善(いくつかの動物モデルに対する複数の前臨床証拠);2)疼痛解消及び神経保護(いくつかの前臨床証拠及び臨床試験);3)血管拡張及び心臓保護(いくつかのex-vivo研究及びいくつかの前臨床証拠);4)改善された代謝健康(脂肪酸酸化、グルコース調節を刺激する)(少数のin-vitro研究及び前臨床証拠);5)細胞の健康(酸化ストレスの減少、細胞保護、増殖促進効果及び増殖阻害効果)(少数のin-vitro研究)。
【0258】
[0281]アグマチンの潜在的な臨床応用に関連する証拠のレベルに関する更なる詳細は、Pietz et al[6]の総説に見出すことができる。
【0259】
[0282]異なる組織におけるアグマチンの作用機構
[0283]アグマチンの利益に関連する機構としては、抗炎症、抗アポトーシス、抗酸化、グリオーシス及び浮腫の阻害、血管新生、神経原性、並びに標的組織に応じた捕捉効果が挙げられる[6、7]。これらの機構は、アグマチンの受容体に基づく効果及び受容体に基づかない効果に関連付けられている。
【0260】
[0284]受容体に基づく効果
[0285]アグマチンは、以下の表5に列挙されるように、ある範囲の受容体及び結合部位に比較的高いアフィニティで結合する。
【0261】
[0286]
【表5】
【0262】
[0287]アグマチンは、2つのタイプのGPCR受容体のアゴニストである。α-2アドレナリン受容体(α-2アドレナリン受容体又はα-2アドレナリン受容体としても知られる)(アフィニティ:Ki 0.8~164μM)及びイミダゾリン受容体(アフィニティ:Ki 0.33~>300μM)は、様々なシグナル伝達カスケードを誘発する。α-2アドレナリン受容体の4つの異なるサブタイプが特徴付けられており(α-2A、α-2B、α-2C、α-2D)、脳、肝臓、胆嚢及び胃腸管を含む様々な臓器において見出されている[45]。これらの受容体は、腸細胞株(HT29、Caco2-3B、腸クロム親和性細胞)及び免疫細胞(ラットクッパー細胞coll及び腹腔単球マクロファージ)において同定された[45~50]。α-2アドレナリン受容体は、主に、シナプス前及びシナプス後ニューロンにおいて同定され、そこで、それらは、中枢神経系及び末梢神経系の阻害を仲介する。イミダゾリン(IL1)受容体活性化は、神経保護効果、ナトリウム及びカルシウム排出の増加、尿流量及び胃運動性の変化と関連している[9、27、51、52]。それはまた、血圧の調節に関与し、α-2アドレナリン受容体と相乗的に作用し得る[51]。IL1受容体は、脳、肝臓、近位消化管、GI管(単離された子ブタ回腸、ヒト結腸上皮細胞T 84細胞株)及びリンパ系組織(例えば、ヒト末梢血単核細胞)を含むいくつかの臓器に存在する[53、54]。
【0263】
[0288]これらの受容体は、AKT&ERK1/2、CAMP&PKA及びJNK1/2のリン酸化を調節し、CREB及びNRF2を含む転写因子のその後の活性化を誘発する[9、55]。CREBは、DNA配列cAMP応答要素(CRE)に結合し、多様な細胞応答を調節する遺伝子の転写を活性化する。これは、シナプス可塑性及び記憶プロセスにおいて重要な役割を果たす脳由来神経栄養因子(BDNF)の転写を促進する[56]。CREBは、NFkβ複合体を阻害し、IL-2、IL-6、IL-10、及びTNF-αを活性化することによって、T細胞及びB細胞における炎症促進性応答を制限することが見出されている[11]。絶食の間、CREBは、肝臓における脂質貯蔵及び合成を抑制しながら、糖新生及び脂肪酸化を活性化する[57]。NRF2は、酸化ストレス応答(GSH産生、ROS解毒)及び抗炎症に関与するある範囲の細胞保護遺伝子を活性化する別の転写因子である[10、58]。
【0264】
[0289]アグマチンは、高アフィニティのN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体のアンタゴニストである(表5)。NMDAは、シナプス可塑性及び細胞内Ca2+調節において重要な役割を有する[59]。その活性化は、健康な状態においてニューロンの生存及び外傷に対する抵抗性を促進することができるが、病的状態(例えば、虚血)においてニューロンの萎縮及び細胞死も引き起こす[60]。NMDAアンタゴニストは、ストレスの減少、及び治療抵抗性効果を有する患者における抗うつ効果に関連している[59、60]。
【0265】
[0290]重要なことに、スペルミジン、スペルミン又はプトレシンによるイミダゾリン又はα-2-アドレナリン受容体の活性化を示唆する研究はない。アルギニンは、はるかに低いアフィニティ(Ki 5mM)でこれらの受容体を活性化し、このことは、これらの受容体に対するアルギニンの効果がおそらくアグマチンによって仲介されることを示唆している[12]。しかし、スペルミジン及びスペルミンはまた、NMDA受容体を阻害し得る[61]。
【0266】
[0291]受容体に基づかない効果
[0292]いくつかのex-vivo及びin-vitro細胞アッセイにおいて、アグマチンは、ポリアミン代謝、酸化窒素シンターゼに干渉し、ミリモル濃度レベルで抗増殖効果を促進する(マウス腎近位尿細管、Ras形質転換NIH-3T3線維芽細胞、マウス糸球体メサンギウム細胞、ヒトシュワン腫瘍細胞、ラット糸球体内皮細胞、ヒト結腸がんHT29細胞については1mM、及びHTCラット肝細胞腫細胞については0.01mM)[41]。アグマチンの細胞内濃度は、律速ポリアミン生合成酵素ODC活性の減少、並びにポリアミン取り込み並びにプトレシン及びスペルミジンの細胞内レベルの減少に付随する。これは、細胞中のポリアミン含量の自己調節に関与するタンパク質アンチザイムのアグマチン誘導性活性化に関連している可能性がある[62]。対照的に、アグマチンは、スペルミジン/スペルミンアセチルトランスフェラーゼ(SSAT)の活性化を介してポリアミン異化を活性化し、アセチル化ポリアミンの増加をもたらすと考えられている[28]。ポリアミンのアセチル化は、それらの電荷を減少させ、他の高分子と結合する能力を変化させ、それらの機能を改変する。アセチル化ポリアミンは、アセチルポリアミンオキシダーゼによって更に酸化され得るか、又は細胞から容易に排出され得る[63]。スイス(suiss)雌性マウスにおける456.6mg/kgのアグマチンの注射(i.p)は、肝臓及び腎臓内のODCの阻害及びSSATの活性化、並びに腎尿細管内の上皮細胞増殖の部分的な低減を確認する[64]。これらの観察に基づいて、アグマチンは潜在的な腫瘍抑制因子と考えられるが、低用量及び高用量でのアグマチンの抗増殖効果を確認するために更なる前臨床研究が必要とされる。
【0267】
[0293]マイクロバイオーム由来ポリアミンのブーストによる宿主利益
[0294]Mastumoto及び共同研究者らは、いくつかの前臨床及び臨床実験において、健康上の効果に対する微生物ポリアミンの役割を研究した[19、25、29~31]。彼らは、アルギニン摂取(0~9mg/g体重)がプトレシン及びスペルミジンの糞便中濃度を増加させ、これが抗生物質使用後に消失することを見出した[31]。アルギニン、プロバイオティクスのビフィドバクテリアLKM512又はその両方の経口投与による長期介入(6ヶ月)も試験された。二重処置は、対照及び単一処置と比較して、DNA損傷(尿中8-OHDG)を減少させ、老化マーカー(SMP-30)を改善し、寿命を延ばし、加齢性記憶低下を減少させた[31]。
【0268】
[0295]無作為化プラセボ対照試験において、同じ著者らは、アルギニン(600mg)及びビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティスを含有するヨーグルトによる12週間の介入が、BMIが25(健常範囲の最大値)である健常個体において内皮機能を改善した(反応性充血指数を増加させた)ことを示した[30]。加えて、糞便プトレシン及び血清スペルミジンの濃度は、プラセボ群よりも処置群において有意に高かった[30]。
【0269】
[0296]骨粗鬆症のマウスモデルにおいて、Chevalier et al.は、温曝露が、骨梁の容積、結合密度、及び厚さを増加させることによって、骨の健康を改善することを実証した[32]。非処置マウスへの温処置マウスの微生物移植は、これらの温誘導性骨効果を再現した。更なるメタボロミクス及びメタゲノミクス分析は、マイクロバイオーム組成における温関連変化(アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)並びにバクテロイデス属及びアリトシペス属(Alitsipes)増殖、並びにムリバキュラ科(Muribaculaceae)又はラクノスピラzoku(Lachnospirae)の細菌の減少)、並びにより高い盲腸及び糞便ポリアミン含量をもたらす細菌ポリアミン合成能力の増加を示した。ジアミナゼンアセチュレート(diaminazene acetureate)によるポリアミン合成阻害は、温誘導される有益な効果を制限した[32]。マイクロバイオーム由来ポリアミン生合成経路をブーストすると、宿主に対して全身性効果を有し得る。しかし、腸ポリアミンと標的化された利益(記憶低下、骨構造、内皮機能)との間の関係は、腸ポリアミンの作用部位への輸送に関する証拠が示されていないため、不明確なままである。
【0270】
[0297]本開示は、対象に特定の健康上の効果を提供するために、微生物叢を利用してアグマチンの産生を増加させるためのプロバイオティクス、組成物、及び方法を提供する。
【実施例
【0271】
[0298]以下の非限定的な実施例は、アグマチンの産生を増加させるために微生物叢を利用する概念を裏付ける。
【0272】
実施例1
[0299]材料及び方法
[0300]選択された製品の上部GIT消化
[0301]1つの試験製品(タンパク質1)を、経口、胃及び小腸相に完全に通過させたが、小腸では吸収が伴った。この製品は、小分子への変換後に小腸のレベルでin vivoで吸収される消化可能な化合物の画分を含有するため、重要であると考えられた。その消化プロトコルの質を保証するために、ProDigestは、大規模な欧州フレームワーク(COST Action InfoGest)内で開発されたコンセンサスプロトコルに基づいてその消化方法を更新した。後者は、研究チームにわたる消化実験の比較を強化することを目的とした静的な消化方法を記載している(Mackie and Rigby,2015)3。ProDigestは、透析アプローチによる小腸吸収のシミュレーションと共に、より正確なpHプロファイルを組み込むことによって、この消化方法をさらに改善した。透析による小腸吸収のこのシミュレーションは、腸消化物からの小分子の除去を可能にする。そのために、14kDa透析膜を使用した。
【0273】
[0302]糞便試料の保存
[0303]5人の健康な成人ドナーから糞便物質を収集した。糞便懸濁液を調製し、内部最適化凍結保護剤と混合した。得られた懸濁液をアリコートし、急速冷凍し、次いで-80℃で保存した(クライオストック)。実験の直前に、糞便試料を解凍し、直ちに反応器に加えた。
【0274】
[0304]単一の糞便懸濁液からのクライオストックの調製は、同一の微生物群集が各アリコートにおいて得られること、したがって異なるプロジェクト期を通して同一の接種材料が使用されることを確実にする。さらに、アリコートの保存は、新しいアリコートがプロジェクトの各期のために使用されるため、保存された試料が、所与のインキュベーションにおける導入前に1回の凍結融解サイクルのみを受けることを確実にする。これらの動作は、最適な再現性を保証する。
【0275】
[0305]短期の結腸インキュベーション
[0306]短期スクリーニングアッセイは、典型的には、微生物供給源として選択されたドナー由来の細菌接種を利用して、近位大腸の代理となる条件下での単回用量の試験化合物の結腸インキュベーションからなる。
【0276】
[0307]短期結腸インキュベーションの開始時に、試験成分を、結腸の基礎栄養素を含有する糖枯渇栄養培地に添加した。この糖枯渇栄養培地の栄養素も結腸微生物叢によって発酵されるため、糖枯渇栄養培地のみを含有するブランク(製品なし)を各ドナーに関して含めた。最後に、5人のドナーの糞便接種物を添加した(実験前の6ヶ月間、抗生物質使用歴のない健康な成人)。ドナー当たり5つの処置及び1つのブランクを試験して、表6に提供される実験設定を得た。
【0277】
[0308]
【表6】
【0278】
[0309]インキュベーションを1回反復して行い、30回の独立したインキュベーションを行った。反応器を、振盪(90rpm)及び嫌気性条件下、37℃で48時間インキュベートした。インキュベーションは、ロバストな微生物発酵を確実にするだけでなく、経時的に複数の試料の収集を可能にするために、十分に高い容量を有する完全に独立した反応器内で実施した。試料収集は、代謝産物産生の評価を可能にし、したがって、起こっている複雑な微生物相互作用を理解することを可能にする。
【0279】
[0310]試験の終点
[0311]インキュベーションの開始時、並びに6時間後、24時間後及び48時間後のpHの変化、並びにガス、SCFA、アンモニウム及び乳酸産生の評価を行った。定量的ディープショットガン配列決定を、インキュベーションの開始時、並びに24時間後及び48時間後に行った。8つのポリアミン、アミノ酸及び神経伝達物質の標的代謝分析を、インキュベーションの開始時、並びに6時間後、24時間後及び48時間後に実施した。
【0280】
[0312]タンパク質1中のタンパク質及びペプチド/AA画分の決定
[0313]ケルダール法及びTCA沈殿を適用して、元の製品タンパク質1中のタンパク質及びペプチド/AA画分を決定した。同様に、上部GI通過後の小腸溶液をそのまま分析し、TCA沈殿後の上清を分析して、両方の製品画分を決定した。これらの計算により、結腸インキュベーションに投与された実際の製品濃度を推定することが可能になった。
【0281】
[0314]全発酵活性
[0315]pH:実験中の酸性化の程度は、細菌代謝の強度の尺度である。インキュベーションのpHは、異なる試験製品の発酵速度に関する大まかな指標を提供する。
【0282】
[0316]ガス産生:結腸インキュベーションを、閉鎖インキュベーションシステムにおいて行った。これにより、ヘッドスペースにおけるガスの蓄積を評価することが可能になり、これは圧力計で測定することができる。ガス産生は、微生物活性の尺度であり、したがって、潜在的なプレバイオティック基質の発酵速度の尺度である。H及びCOは、微生物発酵時に産生される最初のガスであり、それらは、その後、CH産生のための基質として利用されることができ、ガス体積が減少する。Hはまた、タンパク質分解発酵4から生じる硫酸塩をHSに還元するために利用され得る。結果として、N、O、CO、H及びCHは、腸内ガスの体積の99%を構成する。残りの1%は、NH、HS、揮発性アミノ酸及び短鎖脂肪酸からなる。
【0283】
[0317]微生物代謝産物の変化
[0318]短鎖脂肪酸解析:SCFA産生のパターンは、微生物の炭水化物代謝(酢酸、プロピオン酸及び酪酸)又はタンパク質代謝(分岐SCFA)の評価であり、正常なGI微生物叢の典型的な発酵パターンと比較することができる。
【0284】
[0319]乳酸分析:ヒト腸は、乳酸産生細菌及び乳酸利用細菌の両方を保有する。乳酸塩は乳酸菌によって産生され、環境のpHを低下させ、それによって抗菌剤としても作用する。プロトン化された乳酸は、微生物細胞に浸透することができ、その後、解離し、細胞内でプロトンを放出し、酸性化及び微生物細胞死をもたらす。乳酸はまた、他の微生物によってプロピオネート及びブチレートに迅速に変換され得る。
【0285】
[0320]アンモニウム分析:アンモニウムは、タンパク質分解的分解の産物である。タンパク質分解発酵は、p-クレゾール及びp-フェノールなどの潜在的に毒性又は発がん性の化合物の産生をもたらす。アンモニウムは、低い基質利用可能性の間接的なマーカーとして使用することができる。
【0286】
[0321]標的代謝解析:8つの異なるポリアミン、より具体的にはプトレシン、アグマチン、アセチルアグマチン、オルニチン、スペルミジン、スペルミン、シトルリン及び4-グアニジノブタン酸を標的とした。さらに、試料をアミノ酸アルギニン及び神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)について分析した。
【0287】
[0322]微生物群集組成及び機能分析
[0323]BBdukを使用して、初期QC、アダプタートリミング及びメタゲノム配列決定リードの前処理を行った。次いで、品質管理されたリードを、包括的かつ非冗長なタンパク質配列データベースUniRef 90に対してDiamondを使用して翻訳検索に供した。UniProtによって提供されるUniRef90データベースは、クラスタ内の各配列がクラスタ内の最長配列の90%同一性及び80%被覆度で整列するような、UniProt内のすべての非冗長タンパク質配列のクラスタリングを表す。メタゲノムリードの遺伝子配列へのマッピングは、Franzosa et al 6によって記載されているように、コミュニティ全体の重み付けされた遺伝子ファミリー存在量を推定するために、マッピングの質、被覆度、及び遺伝子配列長によって重み付けされる。次いで、遺伝子ファミリーをMetaCyc反応(代謝酵素)にアノテートして、Franzosa et alによって記載されているように、コミュニティにおけるMetaCyc代謝経路を再構築及び定量化した。さらに、UniRef_90遺伝子ファミリーはまた、コミュニティにおけるGO機能の概要を得るために、GOタームに再グループ化される。最後に、異なる配列決定深度を有する複数の試料にわたる比較を容易にするために、総和スケーリング(TSS)正規化を使用して存在量値を正規化して、「百万当たりのコピー」(RNA-SeqにおけるTPMに類似)単位を生成する。
【0288】
[0324]フローサイトメトリーによる総細菌細胞の定量化
[0325]ショットガン配列決定で分析した試料を、フローサイトメトリーでも分析して、総細菌細胞の数を決定し、したがって、試料中の任意の集団(任意の系統発生レベルで)の相対存在量に、所与の試料のFCで得られた総細胞数を乗じることによって、ショットガン配列決定で得られた比例値を絶対量に変換することを可能にした。試料をBD Facs verseで分析した。高流速を用いて試料を流した。SYTOチャネルに200の閾値レベルを適用することによって、細菌細胞を培地デブリ及びシグナルノイズから分離した。適切な親及び娘ゲートを設定して、全ての集団を決定した。
【0289】
[0326]統計:
[0327]調査した終点に関する処置効果間の差が統計的に適切であるかどうかを評価するために、全ドナーを考慮して、対応のある両側T検定を行った。多数の比較を行う場合の偽発見の割合を制御するために、Benjamini-Hochberg偽発見率(FDR)を適用した。得られたp値(対応のある両側T検定によって得られた)が基準値(ref)よりも小さい場合、処置効果間の差は有意であるとみなした。この基準値は、ドナー群内で得られたp値を昇順でランク付けすることによって得られた。所与のp値のランクを(i)と名付け、1からp値の総量まで変化させた(m=5;以下に述べられる通り)。基準値は、FDRにp値のランクを掛け、行われた比較の総量で割ることによって計算された(ref=FDRi/m)。pH、ガス圧、微生物代謝産物産生(SCFA、乳酸塩、アンモニウム及び生体アミン)、機能プロファイル及び微生物群集組成の変化に関して処置効果を比較するために、FDRを0.1に設定したが、これは、有意に異なるためには、最も低いp値が0.02未満であり、2番目に低いp値が0.04未満でなければならないことなどを意味する。全ての計算は、Microsoft Excelを介して行った。以下の5つの比較を行って評価した。
【0290】
[0328]アルギニン、タンパク質1及びFOSの効果:これらの処置とそれぞれのブランクとの間の差を計算した(3つの比較)。
【0291】
[0329]アルギニン又はタンパク質1と組み合わせたFOSの効果:組み合わせ処置とそれぞれの個々の処置(アルギニン及びタンパク質1)との間の差異を計算した(2つの比較)。
【0292】
[0330]これら5つの比較の体系的表示を表7に提供する。
[0331]
【表7】
【0293】
[0332]実験結果を図5に示す。図5の試験結果は、アルギニンのみを糞便試料に添加した場合、5人のドナー全てが低濃度でアグマチンを産生したことを明確に実証した。FOS(酸性化化合物)なしでは、ドナーA及びEは約5μMのアグマチンを産生した。ドナーBは約3μMのアグマチンを産生した。一方、ドナーC及びDはアグマチンを産生しなかった。
【0294】
[0333]5人のドナーの糞便試料へのアルギニンと組み合わせたFOSの添加は、アグマチンの産生を約10倍まで有意に増加させた。図5に示すように、ドナーA、B、C、D及びEからの試料はそれぞれ、約12μM、5μM、17μM、8μM及び20μMのアグマチンをそれぞれ産生した。試験結果は、より低いpHがバックグラウンド代謝を変化させることによってアグマチンの産生を増加させたことを示す。24時間後、アグマチン存在量が完全に消費された。
【0295】
実施例2
[0334]分析試験結果。
【0296】
[0335]目的
[0336]アグマチン産生ブーストを標的とする潜在的な製品着手を支持するために、本開示において分析作業が必要とされた。分析作業の主な目的は、1)グループ内に新しい分析プラットフォームを設定すること;2)細菌培地中のアグマチンの定量化及び更なるポリアミンの半定量化のための分析アプローチを開発すること;並びに3)HMIグループ4から受け取った試料(n=611)中の合意された化合物を分析及び定量化して分析推奨を提供することであった。
【0297】
[0337]試料
[0338]試料は、Institute of Health Sciences内又は外部で、宿主-微生物相互作用群において生成された。それらを様々なバッチの実験で産生し、エッペンドルフチューブに回収した。試料を分析のためにバッチでEPFLサイトに輸送し、各実験試行を行った後、分析日まで-80℃で保存した。
【0298】
[0339]分析的アプローチ
[0340]高分解能質量分析器(LC-HRMS)と連結された液体クロマトグラフィの利用権は、NIFSAS内のタンパク質及びペプチドグループから寛大に提供された。分析作業は、外部較正アプローチを適用して、1)アグマチンを定量化し、2)追加のポリアミン化合物及び代謝経路に関連する化合物(すなわち、アセチルアグマチン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、アルギニン、オルニチン、プトレシン、スペルミジン及びスペルミン)の半定量化のみを行うために行われた。
【0299】
[0341]分析方法
[0342]試料の調製
[0343]全ての試料は、R&D Memo:「Polyamines in bacterial media-Analytical approach using LC-HRMS」に報告されているような社内で開発された分析アプローチに従って調製された。較正範囲を、展開されるように定義し、次いで、未知の試料中に見出される各分析物の計算された濃度及び分析限界に従って調整して、>ULOQの結果を最小限にした。
【0300】
[0344]実験結果
[0345]分析評価
[0346]各分析シリーズを、目的の各化合物について評価した。各分析シリーズにおいて、3つの異なるレベルの6つのQC試料を用いた較正曲線に、未知試料を注入した。未知の試料の数が>80であった場合、追加の3つのQC試料を有する第2の較正曲線を分析シーケンスの最後に注入した。検量線のR個々の標準点CV並びにQCのCVを、前述のR&D Memoに従ってチェックした。
【0301】
[0347]単一株選択及び経時的実験(77個の試料を受け取り、分析した)
[0348]この実験の目的は、潜在的なアグマチン産生に最も関連する時点を同定することであった。この目的のために、6つの異なる単一株を嫌気条件下でインキュベートして、アグマチン産生に対するそれらの効果を評価した。5時間(T5h)、24時間(T24h)及び48時間(T48h)の試料を測定した。株スクリーニングによる経時的なアグマチン濃度の発展(T5h、T24h、T48h)についての試験結果を図6に示す。図6から、アグマチン濃度は減少する前にT24hで最大に達した。更なる分析は、潜在的な有意なアグマチン産生についてT24hに焦点を当てた。
【0302】
実施例3
[0349]「チューブ対バッチ」発酵(48個の試料を受け取り、分析した)
[0350]この実験の目的は、最も高いアグマチン濃度を得るための社内発酵の最良の条件を選択することであった。この目的のために、8人のドナー(糞便抽出物)を選択し、最良の発酵条件を評価するためにインキュベートした。7人のドナーの抽出物を0時間(T0h)、6時間(T6h)及び24時間(T24h)で分析した。アグマチン濃度に対するチューブ発酵及びバッチ発酵についての試験結果を図7に示す。図7の試験結果は、チューブ発酵が最も高いアグマチン産生(バッチ発酵よりも最大10倍多い)を示すことを明確に実証した。これは、更なる実験のための発酵に選択された。
【0303】
実施例4
[0351]チューブ/株の組合せ(447個の試料を受け取り;200試料を分析した)
[0352]この実験の目的は、特定の株をアルギニンと組み合わせることが、アグマチン産生の増加をもたらし得るかどうかを調査することであった。
【0304】
[0353]この目的のために、以前の実験から3人のドナーを選択し(低、中及び高アグマチン産生者)、7種類の異なる単一株及び1種類の株の組み合わせと共にインキュベートした。優先試料をチーム内で同定し、特定のドナー(ドナー1、ドナー4及びドナー8)の0時間(T0h)、6時間(T6h)及び24時間(T24h)での試料を分析した。アグマチン産生に対する様々なドナーでの株の効果に関する試験結果を、それぞれ図8A及び8Bに示し、(A)は全体スケールを表し、(B)は0~50μMのズームスケールを表す。アグマチン濃度は、図8A及び8Bに示されるように、特定の株と共にインキュベートされている間に3人のドナーにおいて増加した。
【0305】
[0354]図8A及び図8Bの試験結果は、以下の観察を明確に実証した:1)Dolphilus 606、NCC3001をドナー1と共にインキュベートした間に、アグマチン濃度に対する正の効果が観察された。2)Lacto679、NCC3001をドナー4と共にインキュベートした場合に、アグマチン濃度に対する正の効果が観察された。3)Dolphilus606、Thermo511をドナー8と共にインキュベートした場合に、アグマチン濃度に対する正の効果が観察された。この変動性は、アルギニン補給後のアグマチン産生に対するドナー依存性応答を示唆し得る。
【0306】
[0355]残りの試料は、チームがそれらを必要とする場合のため、分析用に-80℃で保存され続けた。これらの結果は、製造されるブレンドミックスの選択のため、特定のドナーと共にインキュベートされる4つの様々なミックスを設計することを可能にした。
【0307】
実施例5
[0356]pHの影響
[0357]チューブ/株組合せ実験において、5.0及び7.0の2つのpH条件(pH5及びpH7)を評価した。図9は、ドナー1について得られたアグマチン濃度に対する異なるpH条件の影響についての結果を示す。図9の試験結果は、Thermo511株又は株の組み合わせを適用する場合を除いて、pH7条件が常により高いアグマチン産生(pH5条件と比較して最大3倍)をもたらすことを明確に実証した。可能な場合はいつでもpH制御がアグマチン生産において重要であった。細菌が存在する場合、7.0の中性pH条件は、試料中のより高いアグマチン産生をもたらした。
【0308】
実施例6
[0358]株調査(24+36試料)
[0359]これらの実験の目的は、異なるNCC株を評価し、アグマチン産生ブースターとして可能性のある候補を得ることであった。この目的のために、以前の実験から、ドナー1を選択し(中程度のアグマチン産生者)、第1のバッチにおいて22の異なるNCC株と共にインキュベートした。T24h試料を分析した。アグマチン濃度に対するドナー1との様々な株のインキュベーションの効果に関する試験結果を図10に示し、これは、4つの特定の株(NCC2619、NCC2628、NCC2766及びNCC2775)が、図10に示されるように、T24hでアグマチン濃度を劇的にブーストしたことを明確に実証した。
【0309】
[0360]アグマチン産生に対する有益な効果を確認するために、第2の実験は、ドナー1と共にインキュベートされた減少した数の株のインキュベーションを研究する。T0、T6h、T24h及びT48h試料を分析し、アグマチン濃度に対するドナー1との特定の株のインキュベーションの効果に関する試験データを図11に示す。
【0310】
[0361]図11の試験結果は、4つの特定の株(NCC2619、NCC2628、NCC2766及びNCC2775)が、24時間で最大アグマチン濃度で、アグマチン産生を劇的にブーストさせたという以前の知見を明確に確認した(これらの特定のサンプリング条件において)。
【0311】
実施例7
[0362]この実験の目的は、アルギニンのin vitro発酵を使用して、アグマチンの産生及びアグマチンの生物学的利用能に対する4つの異なるラクトバチルス・アシドフィルス株の効果を評価することであった。実施例1において調製され、試験された5人のドナー候補からの糞便試料を使用して、アルギニンのin vitro発酵を実施した。微生物叢に、ラクトバチルス・アシドフィルスの4種の異なる株(NCC2619、NCC2628、NCC2766及びNCC2775)を補充した。
【0312】
[0363]アグマチンの生物学的利用能を評価するために、アグマチンの濃度を48時間の時間経過で評価した。
【0313】
[0364]ラクトバチルス・アシドフィルスの4つの株(NCC2619、NCC2628、NCC2766及びNCC2775)は全て、アグマチンの全体濃度を増加させ、したがって生物学的利用能を増加させた。このような増加した濃度は、pHの減少に関連する。
【0314】
[0365]結論
[0366]上記で開発され報告されたLC-HRMSを使用するポリアミン方法論は、プロジェクトMagmaのフレームワーク内でストリーム1から受け取った385個の試料を測定する目的に適合した。アグマチンの絶対定量化により、本出願人は、アグマチン濃度を増加させるための最良の発酵条件及び株を選択することができた。全てのポリアミン及び関連する化合物(例えば、アセチルアグマチン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、アルギニン、アグマチン、オルチニン、プトレシン、スペルミジン及びスペルミン)もまた、各々及び全ての試料において測定した。
【0315】
[0367]本明細書に開示される現在好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかである。そのような変更及び修正は、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なわずに、なされ得る。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【0316】
[0368]参照文献
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図2
図3
図4
図5
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図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】