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特表2024-545073N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドの結晶形態
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  • 特表-N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドの結晶形態 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドの結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20241128BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241128BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20241128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/517
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/32
A61P35/00
A61K45/00 101
A61K31/4184
A61P43/00 121
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533786
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2022061716
(87)【国際公開番号】W WO2023105371
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,127
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/393,043
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504344509
【氏名又は名称】アレイ バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】コーナー ジェームス コウドリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD26
4C076DD47
4C076EE16
4C076EE31
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C086BC39
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドの結晶形態、前記結晶形態を含む医薬組成物、ならびにBRAF関連腫瘍などのBRAF関連疾患および障害の処置において前記結晶形態を使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-188.1および-115.8ppm±0.2ppmの共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する、結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項2】
35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴(ppm)値を含む13C固体NMRスペクトルを有する、請求項1に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項3】
2シータに関して、8.3、11.5および16.1度2シータ±0.2度2シータにピークを含む、銅波長放射線を使用して測定された粉末X線回折パターンを有する、請求項1または2に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項4】
2シータに関して、8.3、11.5、16.1、22.9、および23.6度2シータ(±0.2度2シータ)にピークを含む、銅波長放射線を使用して測定された粉末X線回折パターンを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項5】
1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に1つまたは複数の波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1と、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム無水物、クロスポビドンタイプBおよびステアリルフマル酸ナトリウムをさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
それを必要とする対象においてBRAF関連腫瘍を処置する方法であって、対象に、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1を投与することを含む方法。
【請求項9】
前記BRAF関連腫瘍がBRAFクラスII変異を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記BRAF関連腫瘍が、肺がん、黒色腫、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、前立腺がん、腺様嚢胞癌、虫垂がん、小腸がん、頭頚部扁平上皮細胞癌、血管肉腫、膀胱癌、形質細胞新生物、肝胆膵癌、卵巣癌、神経内分泌がん、胆管がんおよびCNSがんから選択されるがんである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記BRAF関連腫瘍がBRAFクラスI変異を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記BRAF関連腫瘍が、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞癌、およびその転移性がん、ならびに原発性脳腫瘍から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1種または複数の追加の抗がん薬を投与することをさらに含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
追加の抗がん薬がMEK阻害薬である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
MEK阻害薬がビニメチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
追加の抗がん薬がEGFR阻害薬であり、EGFR阻害薬がセツキシマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
追加の抗がん薬が、MEK阻害薬およびEGFR阻害薬であり、MEK阻害薬がビニメチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、EGFR阻害薬がセツキシマブである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
医薬品として使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項19】
BRAF関連腫瘍の処置において使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【請求項20】
BRAF関連腫瘍を処置するための医薬品を製造するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドの結晶無水形態、前記結晶形態を含む医薬組成物、ならびにBRAF関連腫瘍を含むBRAF関連疾患および障害の処置において前記結晶形態を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セリン/トレオニンキナーゼのRAFファミリーのメンバーであるBRAFタンパク質は、細胞分裂および分化に影響を及ぼすRas-Raf-MEK-細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路またはマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)/ERKシグナル伝達経路のカスケードに関与する。BRAF遺伝子の変異は、無制御の増殖およびその後の腫瘍形成につながり得る。BRAF遺伝子内で100を超える固有の変異が、がんにおいて同定されている(Cerami,E.ら、Cancer Discov.2012、2、401~404)。これらの変異は、種々の作用機序を介してERK活性化をもたらし、3つのクラスに分類されており、そのうちの2つは、活性についての二量化およびRASによる活性化へのそれらの依存(これらの特性がRAF阻害薬に対するそれらの感受性を決定する)に基づきクラスIおよびクラスII変異と称される(Yao,A.ら、Cancer Cell 2015、28、370~383)。
【0003】
V600Eおよび/またはV600KなどのクラスI BRAF変異の活性化が、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞癌およびその転移性がん、ならびに原発性脳腫瘍などのヒトがんにおいて見い出されている。BRAF V600変異体などのクラスI変異はRAS非依存性活性モノマーとしてシグナル伝達する。
【0004】
クラスII BRAF変異は、非V600変異を含み、これは二量化を通じてMEKを活性化するが、RASを必要条件としない(Yao,A.ら、Cancer Cell 2015、28、370~383)。これらのクラスII変異は、構成性RAS非依存性二量化を受けて、負のフィードバックによる低RAS活性でERK活性化の上昇をもたらす。共通のクラスII点変異には、G469A/V/R、K601E/N/T、およびL597Q/Vが含まれる。非V600変異体は、ベムラフェニブなどのクラスI BRAF阻害薬に対して耐性がある。非V600 BRAF変異体はまた、多くのがんにおいて見い出されており、ある特定の腫瘍型では、V600変異よりも優勢である。非V600 BRAF変異は、黒色腫の5~16%、さらには様々な他の腫瘍型において見い出されている(Siroy AEら、J Invest Dermatol.2015;135:508~515;Dahlman KBら、Cancer Discov.2012;2:791~797)。非小細胞肺がんにおけるBRAF変異のおよそ50~80%および結腸直腸がんにおける22~30%が非V600変異をコードする(Jones JCら、J Clin Oncol.2017;35:2624~2630;Paik PKら、J Clin Oncol.2011;29:2046~2051)。G469A、G469R、G469V、K601E、K601N、K601T、L597QおよびL597VなどのクラスII BRAF変異が、神経膠腫(Schreck,K.C.ら、Cancers(2019) 11:1262)ならびに乳がん、小細胞肺がん、膵臓がん、甲状腺がん、前立腺がん、腺様嚢胞癌、虫垂がん、小腸がん、頭頚部扁平上皮細胞がんおよび血管肉腫などの他の腫瘍(Sullivan,R.J.、Cancer Discov February 1 2018 (8)(2)184~195)において同定されている。クラスII BRAF変異は、転移性がんにおいても同定されている(Dagogo-Jack,I.、Clin Cancer Res.Sept.2018;Schirripa,M.、Clin Cancer Res.、May 2019;Menzer,C.、J.Clin Oncol 2019、37(33):3142~3151)。
【0005】
加えて、BRAFインフレーム欠失は、クラスII変異として作用し得る。例えば、獲得耐性が、BRAF V600阻害薬で処置された患者において観察されている。獲得耐性の機序は、選択的スプライシングを含む。BRAFのスプライスバリアントは、活性なキナーゼをコードするが、インタクトなRAS結合ドメインを欠いている。ベムラフェニブに対して耐性がある細胞は、RAS結合ドメインを包含するエクソンを欠く、具体的には、エクソン4~10、エクソン4~8、エクソン2~8またはエクソン2~10を欠くBRAF V600Eのバリアント型を発現することが見い出されている(Poulikakos,P.Iら、Nature、480(7377):387~390。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、非V600 BRAF改変またはBRAF阻害薬耐性変異を持つ患者のために利用可能な、有効な標的処置は存在しない。したがって、非V600 BRAF改変またはBRAF阻害薬耐性変異を持つ患者のための処置が依然として必要とされている。
【0007】
さらに、BRAF V600変異のある特定の阻害薬は、優れた頭蓋外応答をもたらすが、がんがさらに、BRAF阻害薬での治療中、またはその後に、脳転移を発生させることがある(Oliva I.C.Gら、Annals of Oncology、29:1509~1520(2018))。がんを有する全対象のうち推定20%が脳転移を発症し、その際、脳転移の大部分は、黒色腫、結腸直腸がん、肺がん、および腎細胞癌を有する者で起こるが(Achrol A.S.ら、Nature Reviews(2019)、5:5、pp1~26)、これらの種類のがんのみが、脳に伝播し得るわけではない。脳転移の発生は、進行段階のがんを有する対象における全がん死亡率に対する重大な寄与因子であり続けており、それというのも、外科手術、放射線治療、化学治療、免疫治療、および/または標的治療の組合せを含む多様な処置および全身治療の進歩にも関わらず、予後が不十分なままであるためである。
【0008】
BRAFはまた、原発性脳腫瘍を処置するための有望な標的として同定されている。原発性脳腫瘍におけるBRAF-V600E変異の保有率が、Schindlerら(Acta Neuropathol 121(3):397-405、2011)により1,320の中枢神経系(CNS)腫瘍の分析から、ならびに小児および成人集団における969のCNS腫瘍を分析したBehlingら(Diagn Pathol 11(1):55、2016)により報告されている。これらの研究は、他のものと組み合わせて、乳頭状頭蓋咽頭腫、多形性黄色星状膠細胞腫(PXA)、神経節膠腫、星状芽細胞腫などを含む様々ながんにおけるBRAF-V600E変異の存在を報告している(Behlingら、Diagn Pathol 11(1):55、2016;Brastianosら、Nat Genet 46(2):161~165、2014;Doughertyら、Neuro Oncol 12(7):621~630、2010;Lehmanら、Neuro Oncol 19(1):31~42、2017;Mordechaiら、Pediatr Hematol Oncol 32(3):207~211、2015;Myungら、Transl Oncol 5(6):430~436、2012;Schindlerら、Acta Neuropathol 121(3):397~405、2011)。
【0009】
BRAF融合タンパク質を有する、転移性がんを含むがんも記載されている(J.S.Rossら、Int.J.Cancer:138、881~890(2016))。
【0010】
血液脳界面は、血液脳関門(BBB)を形成する脳微小血管内皮と、血液-CSF関門(BCSFB)を形成する脈絡叢の上皮細胞とを含む。血液脳関門(BBB)は、CNSを血液から区分する高度に選択的な物理的輸送および代謝障壁である。BBBは、ある種の薬物が脳組織に侵入することを防ぐことができ、多くの末梢投与された薬剤のCNSへの送達における制限因子である。がんを処置するために一般に使用される多くの薬物は、BBBを通過することができない。このことは、それらの薬物が脳に浸透することができず、したがって、脳においてがん細胞を効果的に死滅させることができないことを意味する。脳腫瘍を有する対象での現行の処置には、外科的切除、放射線治療、ならびに/またはテモゾロミドおよび/もしくはベバシズマブなどの薬剤での化学治療が含まれる。しかしながら、外科手術による脳腫瘍の処置が常に可能であるか、または望ましいわけではなく、例えば、腫瘍がアクセス不可能であることもあるし、または対象が神経外科手術の外傷に耐えられないこともある。加えて、放射線治療および細胞傷害性薬剤での処置は、望ましくない副作用を有することが公知である。例えば、テモゾロミドの使用自体が、対象のかなりの割合において変異を惹起し、予後を悪化させ得るという証拠が増えつつあり(B.E.Johnsonら、Science 343:189~193(2014))、かつベバシズマブ標識は、胃腸穿孔、外科手術および創傷治癒合併症、ならびに出血についての警戒を内包している。
【0011】
キナーゼ阻害薬は、多くの末梢がんを処置するために有用である。しかしながら、それらの構造的特徴により、ある特定のBRAF阻害薬(例えば、ベムラフェニブおよびダブラフェニブ)を含む多くのキナーゼ阻害薬は、P糖タンパク質(P-gp)または乳がん耐性タンパク質(BCRP)などの能動輸送体の基質である。例えば、ダブラフェニブは、11.4のMDR1排出比、21.0のBCRP排出比、および0.023の全脳-対-血漿比を有すると報告されており;遊離脳-対-血漿比は報告されてなく(Mittapalli,RKら、J Pharmacol.Exp Ther 344:655~664、2013年3月)、ベムラフェニブは、83のMDR1排出比、495のBCRP排出比、および0.004の全脳-対-血漿比を有すると報告されており;遊離脳-対-血漿比は報告されなかった(Mittapalli,RK.ら、J Pharmacol.Exp Ther 342:33~40(2012年3月)。P-gpおよびBCRPが両方とも、血液脳毛細血管(blood brain capillaries)を被覆する内皮細胞で発現されることを考慮すると、BBBにおけるP-gpおよびBCRPの両方の活性が、多くのキナーゼ阻害薬の脳実質への分散の阻止において重要な役割を果たしている。したがって、キナーゼ阻害薬は一般的に、BBBにより保護される脳内の腫瘍またはがんを処置するために使用するには適していない。
【0012】
化合物N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドは、BRAFクラスIおよびクラスII変異体の両方の強力な阻害薬であり、BRAF関連腫瘍を含むBRAF関連疾患および障害を処置するために有用であり得る。
【0013】
加えて、N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドは、活性なトランスポーターP-糖タンパク質(P-gp)または乳がん耐性タンパク質(BCRP)の基質ではなく、したがって、CNSの悪性および良性BRAF関連腫瘍ならびに悪性頭蓋外BRAF関連腫瘍を処置するために有用であり得る。
【0014】
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(本明細書において後記では「化合物1」)の遊離塩基は、下に示される構造:
【0015】
【化1】
を有する。
【0016】
薬物製品の製造プロセスおよび薬物製品組成物のより良好な品質管理を提供し得る良好な物理的安定性および非吸湿性などの良好な物理的-化学的特性を有する化合物1の形態を同定することが望ましい。
【0017】
化合物1の遊離塩基の調製は、その内容が全体で参照により本明細書に援用される2021年6月4日出願の国際特許出願PCT/IB2021/054919の実施例126において開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
下に記載される実施形態はそれぞれ、組み合わせる実施形態と矛盾しない本明細書において記載される任意の他の実施形態と組み合わせることができる。
【0019】
一態様では、本発明は、結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(本明細書において後記では「結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1」または「結晶無水化合物1、形態1」)を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、結晶無水化合物1、形態1と、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、BRAF関連疾患または障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の結晶無水化合物1、形態1を投与することを含む方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、BRAF関連疾患または障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に、結晶無水化合物1、形態1を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、BRAF関連疾患または障害を処置するための医薬品を製造するための結晶無水化合物1、形態1の使用を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、医薬品として使用するための結晶無水化合物1、形態1を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、BRAF関連疾患または障害の処置において使用するための結晶無水化合物1、形態1を提供する。
【0026】
この概要は、下の詳細な説明においてさらに記載されるコンセプトの選択を簡略化した形で紹介するために提供されている。この概要は、特許請求の範囲に記載された対象の鍵となる特徴または必須の特徴を同定することを意図したものではなく、特許請求の範囲に記載された対象の範囲の決定における補助として孤立して使用されることを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】結晶無水化合物1、形態1の粉末X線回折パターンを示す。
図2】結晶無水化合物1、形態1の固体19F固体NMRスペクトルを示し、ハッシュ(#)によりマークされたピーク(ppmでの化学シフト)はスピニングサイドバンドを示す。
図3】結晶無水化合物1、形態1の固体13C固体NMRスペクトルを示し、ハッシュ(#)によりマークされたピーク(ppmでの化学シフト)はスピニングサイドバンドを示す。
図4】結晶無水化合物1、形態1のラマンスペクトル(cm-1でのラマンシフト)を示す。
図5】非晶質化合物1、形態2の粉末X線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、次の本発明の詳細な説明およびそこに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解され得る。本発明は、作製する特定の合成方法に限定されず、それらはもちろん変化し得ることは理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記載することを目的としているにすぎず、限定的であることを意図したものではないことも理解されるべきである。
【0029】
本発明は、結晶無水化合物1、形態1を対象とする。本発明は、そのような結晶形態を含む医薬組成物も対象とする。本発明は、BRAF関連疾患または障害の処置においてそのような結晶形態を使用する方法も対象とする。
【0030】
本明細書で使用される場合の「結晶」という用語は、分子または外面平面(external face planes)の規則的な繰返し配置を有することを意味する。結晶形態は、熱力学的安定性、物理的パラメーター、X線構造および調製プロセスに関して異なり得る。
【0031】
「非晶質」という用語は、その物質が分子レベルで長距離秩序を欠いていて、温度に応じて固体または液体の物理的特性を示し得る状態を指す。典型的には、そのような物質は、特有のX線回折パターンを示さず、固体の特性を示しながらも、より形式的には液体として記述される。加熱すると、固体特性から液体特性への変化が生じ、これは、典型的には二次の状態変化により特徴づけられる(「ガラス遷移」)。
【0032】
固体化学の当業者が固体形態を分析するために使用することができるいくつかの分析方法が存在する。粉末X線回折は、混合物において1つの結晶固体形態(または複数の形態)の量を定量化するためにも好適であり得る。粉末X線回折では、X線が結晶粉末に向けられ、回折されたX線の強度が、X線源と試料により回折されたビームとの間の角度の関数として測定される。これらの回折されたX線の強度は、グラフにピークとしてプロットされ得るが、その際、x軸は、X線源と回折されたX線との間の角度(これは「2シータ」角度として公知である)であり、y軸は、回折されたX線の強度である。このグラフは、粉末X線回折パターンまたは粉末パターンと呼ばれる。結晶固体形態が異なると、異なる粉末パターンを示すが、それというのも、x軸上のピークの位置が、結晶の固体構造の1つの特性であるためである。
【0033】
機器、試料、および試料の調製の違いにより、ピーク値を時には、ピーク値に修飾語句「約」を伴って報告する。これは、ピーク値に固有の変化のため、固体化学分野では一般的な慣例である。当業者は、粉末パターンにおけるピークの2シータx軸値の典型的な精度は、プラスまたはマイナス0.2°2シータ(±0.2°2θ)程度であることを認めるであろう。したがって、例えば、「8.3°2シータ」に表れる回折ピークは、大抵のX線回折計で大抵の条件下で測定した場合に、そのピークが、8.1°2シータから8.5°2シータの間に存在し得るであろうことを意味する。さらに、当業者は、相対ピーク強度が装置間変動、さらには、結晶化度の程度、選択配向性、試料表面の調製、および当業者に公知の他の因子による変動性を示し、定性尺度としてのみ解釈すべきであることを認めるであろう。
【0034】
粉末X線回折は、結晶固体形態を特徴づける、および/または同定するために使用することができるいくつかの分析技術の1つにすぎない。ラマン(顕微ラマンを含む)、赤外、および固体NMR分光法などの分光学的技術を、結晶固体形態を特徴づける、および/または同定するために使用することができる。これらの技術を、混合物中の1種または複数の結晶固体形態の量を定量化するために使用することもできる。FT-ラマンおよびFT-赤外測定に関連する波数の典型的な変動性は、プラスまたはマイナス(±)2cm-1程度である。13Cまたは19F NMRに関連する化学シフトの典型的な変動性は、結晶物質ではプラスまたはマイナス(±)0.2ppm程度である。示差走査熱分析開始温度に関連する値の典型的な変動性は、プラスまたはマイナス(±)5℃程度である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「本質的に同じ」という用語は、特定の方法に典型的な変動性が考慮されることを意味する。例えば、粉末X線回折ピーク位置に関して、「本質的に同じ」という用語は、ピーク位置および強度の典型的な変動性が考慮されることを意味する。当業者は、ピーク位置(2シータ)が典型的には±0.2°2θと同じ程度の多少の変動性を示すであろうことを認めるであろう。さらに、当業者は、相対ピーク強度が装置間変動性、さらには、結晶化度の程度、選択配向性、試料表面の調製、および当業者に公知の他の因子による変動性を示し、定性尺度としてのみ解釈すべきであることを認めるであろう。13Cまたは19F NMRと関連する化学シフトでの典型的な変動性は、結晶物質で±0.2ppm程度である。
【0036】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」には、別段に示されていない限り、複数形の言及が含まれる。
【0037】
本明細書で別段に定義されていない限り、「約」という用語は、当業者が考慮した場合に許容される平均値の標準誤差の範囲内に該当する値を有することを意味する。一実施形態では、約という用語は、プラスまたはマイナス10%を意味する。
【0038】
一部の実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、実質的に純粋であり得る。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」という用語は、結晶無水化合物1、形態1に関して、その結晶形態が、化合物1のいずれか他の物理的形態を重量ベースで10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満含むことを意味する。一実施形態では、「実質的に純粋」という用語は、結晶無水化合物1、形態1が化合物1のいずれか他の物理的形態を重量ベースで約10%未満含有することを意味する。一実施形態では、「実質的に純粋」という用語は、結晶無水化合物1、形態1が化合物1のいずれか他の物理的形態を重量ベースで約5%未満含有することを意味する。一実施形態では、「実質的に純粋」という用語は、結晶無水化合物1、形態1が化合物1のいずれか他の物理的形態を重量ベースで約3%未満含有することを意味する。一実施形態では、「実質的に純粋」という用語は、結晶無水化合物1、形態1が化合物1のいずれか他の物理的形態を重量ベースで約1%未満含有することを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合の「無水」という用語は、結晶格子中にいずれの溶媒または水分子も含まない結晶形態を指す。
【0040】
結晶化合物1
一態様では、結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0041】
本明細書において記載されるとおり、結晶無水化合物1、形態1は、次の方法のいずれかにより特徴づけることができる:(1)粉末X線回折(PXRD)(2シータ);(2)19F固体NMR分光法(ppm);(3)13C固体NMR分光法;(4)ラマン分光法;または方法(1)、(2)、(3)および(4)のいずれか2つもしくはそれ以上の組合せ。
【0042】
PXRDにより特徴づけられる本明細書における態様および実施形態のそれぞれで、PXRDピークは、1.5418λでのCuKα放射線を使用して収集された。
【0043】
結晶無水化合物1、形態1は、示差走査熱分析(DSC)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、熱重量分析(TGA)、または示差熱分析(DTA)などの追加の技術によりさらに特徴づけられ得る。
【0044】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターンにより特徴づけられる。
【0045】
表1は、結晶無水化合物1、形態1での全PXRDピークリストを2シータ度(±0.2度2シータ)で提示している。
【0046】
【表1】
【0047】
一実施形態では、本発明は、2シータに関して、8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)に特徴的なピークを含むPXRDパターンを有する結晶無水化合物1、形態1を提供する。別の実施形態では、形態1は、2シータに関して、8.3、11.5、16.1、22.9、および23.6度2シータ(±0.2度2シータ)に特徴的なピークを含むPXRDパターンを有する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、2シータ度(±0.2度2シータ)で、表1においてと本質的に同じPXRDピークリストを含むPXRDパターンを有する結晶無水化合物1、形態1を提供する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、図1に示されているのと本質的に同じ2シータ値にピークを含むPXRDパターンを有する結晶無水化合物1、形態1を提供する。
【0050】
本発明の一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その19F固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0051】
一実施形態では、表2(ppm)において示されている値±0.2ppmから選択される少なくとも1つの共鳴値(ppm)を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0052】
【表2】
【0053】
一実施形態では、-188.1ppm±0.2ppmの共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0054】
一実施形態では、-115.8ppm±0.2ppmの共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0055】
一実施形態では、-188.1および-115.8ppm±0.2ppmの共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0056】
一実施形態では、ハッシュ(#)によりマークされたピークがスピニングサイドバンドである、図2において示されているのと本質的に同じ共鳴(ppm)値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0057】
本発明の一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その13C固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0058】
表3Aは、結晶無水化合物1、形態1での全13C固体NMRピークリストをppm±0.2ppmで提供している。
【0059】
【表3】
【0060】
一実施形態では、表3Bにおいて示されている1つまたは複数の共鳴値(ppm)±0.2ppmを含む13C固体NMRスペクトルにより特徴づけられる結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0061】
【表4】
【0062】
一実施形態では、35.8および57.5ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0063】
一実施形態では、57.5および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0064】
一実施形態では、57.5および130.6ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0065】
一実施形態では、35.8、57.5および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0066】
一実施形態では、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0067】
一実施形態では、35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0068】
一実施形態では、表3Aにおいて示されている共鳴値(ppm)±0.2ppmを含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0069】
一実施形態では、ハッシュ(#)によりマークされているピークがスピニングサイドバンドである、図3において示されているのと本質的に同じ共鳴(ppm)値±0.2ppmを含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0070】
本発明の一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、そのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0071】
表4Aは、結晶無水化合物1、形態1での全ラマンピークリストを提供している。
【0072】
【表5-1】
【0073】
【表5-2】
【0074】
一実施形態では、表4Bから選択される1つまたは複数の波数(cm-1)値±2cm-1を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0075】
【表6】
【0076】
一実施形態では、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0077】
一実施形態では、1308および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0078】
一実施形態では、1447および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0079】
一実施形態では、1433および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0080】
一実施形態では、1308、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0081】
一実施形態では、1308、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0082】
一実施形態では、1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0083】
一実施形態では、表4Aにおいて示されている波数(cm-1)値±2cm-1を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0084】
一実施形態では、図4において示されているのと本質的に同じラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0085】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターンおよびその19F固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0086】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターンならびに(b)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0087】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターンならびに(b)-188.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0088】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターンならびに(b)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0089】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターンおよびその13C固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0090】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターンならびに(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0091】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターンおよびそのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0092】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターンならびに(b)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0093】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その19F固体NMRスペクトルおよびそのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0094】
一実施形態では、(a)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(b)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0095】
一実施形態では、(a)-188.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(b)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1にラマンバンドのセットを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0096】
一実施形態では、(a)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(b)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0097】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その19F固体NMRスペクトルおよびその13C固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0098】
一実施形態では、(a)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0099】
一実施形態では、(a)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0100】
一実施形態では、-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルならびに(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0101】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、そのラマンスペクトルおよびその13C固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0102】
一実施形態では、(a)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルならびに(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0103】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターン、その19F固体NMRスペクトル、およびその13C固体NMRスペクトルにより特徴づけられる。
【0104】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0105】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-188.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0106】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMRを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0107】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターン、その19F固体NMRスペクトル、およびそのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0108】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(c)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0109】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-188.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(c)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0110】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、ならびに(c)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0111】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その19F固体NMRスペクトル、その13C固体NMRスペクトル、およびそのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0112】
一実施形態では、(a)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(c)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0113】
一実施形態では、(a)-188.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(c)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0114】
一実施形態では、(a)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、(b)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(c)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0115】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターン、その13C固体NMRスペクトル、およびそのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0116】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(d)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0117】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、その粉末X線回折(PXRD)パターン、その19F固体NMRスペクトル、その13C固体NMRスペクトル、ならびにそのラマンスペクトルにより特徴づけられる。
【0118】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-188.1および-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(d)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0119】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-188.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(d)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0120】
一実施形態では、(a)8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)の2シータ値にピークを含むPXRDパターン、(b)-115.8ppm±0.2ppmに共鳴値を含む19F固体NMRスペクトル、(c)35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴値を含む13C固体NMR、ならびに(d)1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する結晶無水化合物1、形態1を本明細書において提供する。
【0121】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は実質的に純粋である。
【0122】
ある特定の実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、実質的に純度95%超である。
【0123】
ある特定の実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、実質的に純度97%超である。
【0124】
ある特定の実施形態では、結晶無水化合物1、形態1は、実質的に純度99%超である。
【0125】
医薬組成物
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を送達するための医薬組成物を本明細書において提供する。
【0126】
一実施形態では、医薬組成物は、結晶無水化合物1、形態1と、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤とを含む。
【0127】
「賦形剤」という用語は本明細書では、結晶無水化合物1、形態1以外の何らかの成分を記載するために使用される。賦形剤の選択は、投与様式、溶解性および安定性に対するその賦形剤の作用、ならびに剤形の性質などの因子に大きく依存することとなる。前記賦形剤は、それ自体は薬学的活性を有さない。
【0128】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」には、生理学的に適合性であるあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤、担体、希釈剤および同様のものが含まれる。賦形剤の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよび同様のもの、さらにはそれらの組合せの1種または複数が含まれ、組成物中の等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトールなどのポリアルコール、またはソルビトールが含まれ得る。賦形剤の例には、様々な有機溶媒(水和物および溶媒和物など)も含まれる。医薬組成物は、所望の場合には、フレーバー、バインダー/結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤または香味剤、着色剤または色素、および同様のものなどの追加の賦形剤を含有してよい。例えば、経口投与では、クエン酸などの様々な賦形剤を含有する錠剤をデンプン、アルギン酸およびある特定の複雑ケイ酸塩などの様々な崩壊剤と、ならびにスクロース、ゼラチンおよびアラビアゴムなどの結合剤と一緒に使用してもよい。賦形剤の例には、限定ではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(例えば、リン酸水素カルシウム無水物)、様々な糖およびデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびタルクなどの滑沢剤は多くの場合に、製錠の目的に有用である。同様の種類の固体組成物も、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル剤において使用することができる。したがって、賦形剤の非限定的例には、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールも含まれる。水性懸濁剤またはエリキシル剤が経口投与のために望ましい場合、その中の活性化合物を様々な甘味剤または香味剤、着色剤または色素および、所望の場合には、乳化剤または懸濁化剤と共に、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組合せなどの追加の賦形剤と一緒に組み合わせることができる。
【0129】
賦形剤の例には、結晶無水化合物1、形態1の貯蔵寿命または有効性を増強する湿潤剤などの薬学的に許容できる物質、または湿潤もしくは乳化剤、防腐剤もしくは緩衝剤などの少量の補助物質も含まれる。
【0130】
本発明の組成物は、様々な形態であってよい。これらには、例えば、錠剤、カプセル、丸剤、液体、半固体および固体剤形、例えば、液体液剤(例えば、注射用および注入用液剤)、分散剤または懸濁剤、散剤、リポソーム剤および坐剤が含まれる。形態は、意図されている投与様式および治療用途に依存する。
【0131】
固体剤形の経口投与は、例えば、所定の量の少なくとも1つの本発明の化合物をそれぞれ含有する硬もしくは軟カプセル剤、丸剤、カシェ剤、ロゼンジ剤、または錠剤などの別個の単位で提供することができる。別の実施形態では、経口投与は、散剤または顆粒剤形態であってよい。別の実施形態では、経口剤形は、例えば、ロゼンジ剤などの舌下用である。そのような固体剤形では、結晶無水化合物1、形態1は普通、1種または複数の補助剤と組み合わされる。そのようなカプセル剤または錠剤は、制御放出製剤を含んでよい。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含んでもよいし、または腸溶コーティングを伴って調製されてもよい。
【0132】
別の実施形態では、経口投与は、液体剤形であってよい。経口投与用の液体剤形には、例えば、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤(例えば、水)を含有する薬学的に許容できる乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。そのような組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、香味剤(例えば、甘味剤)、および/または芳香剤などの補助剤を含んでもよい。
【0133】
別の実施形態では、本発明は、非経口剤形を含む。「非経口投与」には、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、腹腔内、筋肉内注射剤、胸骨内注射剤、および注入剤が含まれる。注射用製剤(すなわち、滅菌注射用水性または油性懸濁剤)は、公知の技術に従って好適な分散化剤、湿潤剤、および/または懸濁化剤を使用して製剤化することができる。
【0134】
典型的な組成物は、一般に抗体でのヒトの受動免疫化のために使用されるものと同様の組成物などの注射用または注入用液剤の形態である。投与様式の1つは、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。別の実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を静脈内注入または注射により投与する。また別の実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を筋肉内または皮下注射により投与する。
【0135】
別の実施形態では、本発明は局所剤形を含む。「局所投与」には、例えば、経皮貼付剤もしくはイオン泳動デバイスを介するような経皮投与、眼内投与、または鼻腔内または吸入投与が含まれる。局所投与のための組成物には、例えば、局所ゲル、スプレー、軟膏、およびクリームも含まれる。局所製剤は、皮膚または他の罹患領域を介しての活性成分の吸収または浸透を増強する化合物を含んでよい。結晶無水化合物1、形態1を経皮デバイスにより投与する場合、投与は、レザバーおよび多孔膜タイプ、または固体マトリックス変種のいずれかの貼付剤を使用して達成されることとなる。この目的での典型的な製剤には、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、ウェハ剤、インプラント剤、スポンジ剤、ファイバー剤、絆創膏およびマイクロエマルジョン剤が含まれる。リポソームも使用することができる。典型的な賦形剤には、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが含まれる。透過促進剤を組み込むことができる-例えば、B.C.FinninおよびT.M.Morgan、J.Pharm.Sci.、vol.88、955~958頁、1999を参照されたい。
【0136】
眼への局所投与に好適な製剤には、例えば、結晶無水化合物1、形態1が好適な賦形剤に溶解または懸濁している点眼剤が含まれる。眼または耳投与に好適な典型的な製剤は、等張性のpH調整された滅菌生理食塩水中の超微粉砕懸濁液または溶液の滴剤の形態であってよい。眼および耳投与に好適な他の製剤には、軟膏剤、生分解性(すなわち、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(すなわち、シリコーン)インプラント剤、ウェハ剤、レンズ剤ならびにニオソームまたはリポソームなどの微粒子またはベシクル系が含まれる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖ポリマー、例えば、ゲランゴムなどのポリマーを塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤と一緒に組み込むことができる。そのような製剤をイオン泳動により送達することもできる。
【0137】
鼻腔内投与または吸入による投与では、結晶無水化合物1、形態1を好都合には、患者が絞るか、もしくはポンピングするポンプ型スプレー容器から溶液もしくは懸濁液の形態で、または好適な噴射剤を用いる加圧容器もしくは噴霧器からのエアロゾルスプレー給付として送達する。鼻腔内投与に好適な製剤を典型的には、乾燥粉末吸入器から乾燥粉末の形態で(単独か、混合物としてのいずれか、例えば、ラクトースとの乾燥ブレンドで、または混合構成成分粒子として、例えば、ホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合して)、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、微細なミストを生じさせるために電気流体力学を使用するアトマイザー)、または1,1,1,2-テトラフルオロエタンもしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンなどの好適な噴射剤を用いるか、もしくは用いないネブライザーからエアロゾルスプレーとして投与する。鼻腔内使用では、粉末は、生体用粘着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含んでよい。
【0138】
別の実施形態では、本発明は、直腸剤形を含む。そのような直腸剤形は、例えば、坐剤の形態であってよい。カカオバターが従来の坐剤基剤であるが、適切であれば様々な代替物を使用することができる。
【0139】
医薬分野で公知の他の賦形剤および投与様式も使用することができる。本発明の医薬組成物は、有効な製剤化および投与手順などの薬学の周知の技法のいずれかにより調製することができる。有効な製剤化および投与手順に関する上記の検討は当技術分野で周知であり、標準的な教科書に記載されている。薬物の製剤化は、例えば、Hoover,John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton, Pennsylvania、1975;Libermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York,N.Y.、1980;およびKibbeら編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(第三版)、American Pharmaceutical Association、Washington、1999に論述されている。
【0140】
許容できる賦形剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー(例えば、クロスポビドン);グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリソルベート(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80)、ポロキサマーまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでよい。
【0141】
経口投与では、組成物を、対象に対する投与量の対症調整(symptomatic adjustment)のために、活性成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、75.0、100、125、150、175、200、250または500ミリグラムを含有する錠剤またはカプセル剤の形態で提供することができる。組成物は、典型的には、上記活性成分約0.01mg~約500mg、または別の実施形態では、活性成分約1mg~約100mgを含有する。
【0142】
静脈内では、用量は、定速度注入中に約0.01~約10mg/kg/分の範囲であってよい。
【0143】
結晶無水化合物1、形態1を含有するリポソームは、米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されているものなど、当技術分野で公知の方法により調製することができる。循環時間の延長を伴うリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法により生成することができる。リポソームを、規定の空孔サイズのフィルターを通して押し出して、所望の直径を有するリポソームを得る。
【0144】
結晶無水化合物1、形態1を、例えば、コアセルベーション技法により、または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリラート)マイクロカプセル中に、それぞれ、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル剤)で、またはマクロエマルジョンで封入することもできる。そのような技法は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000)に開示されている。
【0145】
持続放出調製物を使用することができる。持続放出調製物の好適な例は、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、そのマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸および7エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、デポー懸濁液のために酢酸ロイプロリドにおいて使用されているものなどの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用マイクロスフェア)、スクロースアセテートイソブチレート、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0146】
静脈内投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは例えば、滅菌濾過膜を通しての濾過により容易に達成される。静脈内投与のための化合物は一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針により貫通され得るストッパーを有する静脈液バッグまたはバイアル内に入れられる。
【0147】
好適な乳剤は、市販の脂質エマルジョン、例えば、ダイズ油を含む脂質エマルジョン、静脈内投与のための脂質エマルジョン(例えば、水中のベニバナ油、ダイズ油、卵リン脂質およびグリセリンを含む)、大豆油および中鎖トリグリセリドを含有するエマルジョン、ならびに綿実油の脂質エマルジョンを使用して調製することができる。活性成分を、事前混合されたエマルジョン組成物に溶解することができるか、または別法では、油(例えば、ダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油または扁桃油)ならびにリン脂質(例えば、卵リン脂質、ダイズリン脂質またはダイズレシチン)および水と混合すると形成するエマルジョンに溶解することができる。エマルジョンの張性を調整するために、他の成分、例えば、グリセロールまたはグルコースを添加することができることは分かるであろう。好適なエマルジョンは、典型的には、最大20%、例えば、5~20%の間の油を含有するはずである。脂質エマルジョンは0.1から1.0μmの間、特に0.1から0.5μmの間の脂肪滴を含み、5.5~8.0の範囲のpHを有し得る。
【0148】
例えば、エマルジョン組成物は、本発明の化合物を、ダイズ油またはその構成成分(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)を含む脂質エマルジョンと混合することにより調製されるものであり得る。
【0149】
吸入または吹送のための組成物には、薬学的に許容できる水性もしくは有機溶媒、またはその混合物中の液剤および懸濁剤、ならびに散剤が含まれる。液体または固体組成物は、上に提示されたとおりの好適な薬学的に許容できる賦形剤を含有してよい。一部の実施形態では、組成物を、局所または全身作用のために経口または経鼻呼吸経路により投与する。好ましくは滅菌の薬学的に許容できる溶媒中の組成物を、ガスの使用により噴霧化することができる。噴霧化溶液を噴霧化デバイスから直接呼吸することができるか、または噴霧化デバイスを、フェイスマスク、テントまたは間欠的正圧人工呼吸器に取り付けることができる。溶液、懸濁液または粉末組成物を、製剤を適切な手法で送達するデバイスから、好ましくは経口または経鼻で投与することができる。
【0150】
一実施形態では、経口投与のために製剤化された結晶無水化合物1、形態1を含む医薬組成物を本明細書において提供する。一実施形態では、経口投与のために製剤化された医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤の形態である。一実施形態では、経口投与のために製剤化された医薬組成物は、錠剤の形態である。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約1~約100mg含む。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mg含む。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約5mg、25mg、50mgまたは100mg含む。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約5mg含む。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約25mg含む。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約50mg含む。一実施形態では、錠剤製剤は、結晶無水化合物1、形態1を約100mg含む。
【0151】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム無水物、クロスポビドン、およびステアリルフマル酸ナトリウムを含む、経口投与のために製剤化された医薬組成物を本明細書において提供する。一実施形態では、医薬組成物を錠剤として製剤化する。
【0152】
一実施形態では、経口投与のために製剤化されている、結晶無水化合物1、形態1を含む医薬組成物であって、下に示されている製剤1および製剤2から選択される医薬組成物を本明細書において提供する。製剤1を使用して、製剤1ブレンド100mgを圧縮することにより5mg錠剤を、または製剤1ブレンド500mgを圧縮することにより25mg錠剤を調製することができる。製剤2を使用して、製剤2ブレンド800mgを圧縮することにより100mg錠剤を調製することができる。
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
処置方法
結晶無水化合物1、形態1は、BRAF関連疾患および障害、例えば、BRAF関連腫瘍などのBRAFキナーゼ阻害薬で処置することができる疾患および障害を処置するために有用であり得る。BRAF阻害薬として作用する化合物1の能力は、実施例A1に記載されている酵素アッセイ、実施例A2に記載されている細胞アッセイ、実施例A3に記載されている細胞アッセイ、および実施例A4に記載されている増殖アッセイにより実証され得る。
【0156】
したがって、一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象においてBRAF関連腫瘍を処置する方法であって、対象に、治療有効量の結晶無水化合物1、形態1またはその医薬組成物を投与することを含む方法をさらに提供する。
【0157】
本発明は、BRAF関連疾患または障害の処置において使用するための結晶無水化合物1、形態1をさらに提供する。
【0158】
本発明は、BRAF関連疾患または障害を処置するための医薬品の製造における結晶無水化合物1、形態1の使用をさらに提供する。
【0159】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、治療的または姑息的方策を指す。有利または所望の臨床結果には、これに限定されないが、検出可能であるか、または検出不可能であるかにかかわらず、疾患または障害または状態と関連する症状の全体的または部分的緩和、疾患の程度の軽減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患進行の遅延または減速、病態(例えば、疾患の1つまたは複数の症状)の寛解または緩和、および軽快(部分的または全体的であるかにかかわらず)が含まれる。しかしながら、「処置する」または「処置」には、対象の様相および/または症状を一次的に悪化させる治療的方策(例えば、BRAF関連腫瘍におけるBRAFキナーゼの阻害)も含まれ得る。本明細書で使用される場合、「処置すること」および、例えばがんの処置に関する場合の「処置すること」という用語は、絶対的用語であることは意図されていない。例えば、「腫瘍の処置」および「がんを処置すること」は、臨床の状況で使用される場合、有利または所望の臨床結果を得ることを含むことが意図されており、がんを有する対象の状態の改善を含み得る。有利または所望の臨床結果には、これに限定されないが、次の1つまたは複数が含まれる:新生物またはがん細胞の増殖の減少(またはその破壊)、新生細胞の転移の阻害、対象における転移の低下、腫瘍のサイズの縮小または低下、対象における1つまたは複数の腫瘍の成長速度の変化、対象での寛解期間の延長(例えば、処置を受けていないか、もしくは異なる処置を受けている同様のがんを有する対象における1つまたは複数の測定基準と比較した場合、または処置前の同じ対象における1つまたは複数の測定基準と比較した場合)、疾患に起因する症状の低下、疾患に罹患している者の生活の質の向上(例えば、FACT-GまたはEORTC-QLQC30を使用して評価)、疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量の低下、疾患の進行の遅延、および/または疾患を有する対象の生存の延長。「処置」は、処置を受けない場合に予測される生存と比較しての生存の延長、例えば、本明細書に記載のとおりの処置を受けていない対象と比較しての全生存期間(OS)の延長、および/または本明細書に記載のとおりの処置を受けていない対象と比較しての無増悪生存期間(PFS)の延長も意味し得る。
【0160】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、およびヒトなどの哺乳類を含む任意の動物を指す。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は、BRAF関連腫瘍を有すると疑われている。一部の実施形態では、対象はヒトである。一部の実施形態では、ヒト対象は、成人対象である。一部の実施形態では、ヒト対象は小児対象である。
【0161】
「寛解すること」または「寛解」は、処置を投与していない場合と比較して、1つまたは複数の症状の軽減または改善を意味する。「寛解すること」には、症状の持続期間の短縮または縮小も含まれる。
【0162】
本明細書で使用される場合の疾患または障害に関する「BRAF関連」という用語は、クラスI、クラスIIおよびクラスIII BRAF変異から選択される1つまたは複数のBRAF変異と関連するか、またはそれを有する疾患または障害を指す。BRAF関連疾患または障害の非限定的例には、例えば、BRAF関連腫瘍が含まれる。
【0163】
「BRAF変異」という語句は、遺伝子変異(例えば、野生型BRAFタンパク質と比較した場合に1つまたは複数の点突然変異を有するBRAFタンパク質の発現をもたらすBRAF遺伝子における1つまたは複数の変異をもたらす染色体転座)、または野生型BRAFタンパク質と比較した場合にBRAFタンパク質において少なくとも1個のアミノ酸の欠失を有するBRAFタンパク質をもたらすBRAF mRNAの選択的なスプライシングされたバージョン(すなわち、スプライスバリアント)を指す。BRAF変異の非限定的例には、クラスI BRAF変異(例えば、BRAF V600変異、例えば、BRAF V600EおよびBRAF V600K)、クラスII BRAF変異(例えば、BRAF非V600変異およびBRAFスプライスバリアント)、およびBRAFクラスIII変異が含まれる。
【0164】
「クラスI BRAF変異」という用語は、Ras非依存性活性モノマーとしてシグナル伝達するBRAF V600変異を指す。例には、BRAF V600EおよびBRAF V600K変異が含まれる。
【0165】
「クラスII BRAF変異」という用語は、(i)BRAFのRAS非依存性活性化二量体として機能するBRAF非V600変異および(ii)活性についてRAS非依存性様式で二量化に依存しているBRAFスプライスバリアントを含む。
【0166】
BRAF非V600(クラスII)変異の例には、G469A、G469R、G469V、K601E、K601N、K601T、L597QおよびL597Vが含まれる。一実施形態では、BRAF非V600変異はG469Aである。
【0167】
「BRAFスプライスバリアント」という用語は、異常にスプライシングされたBRAF V600Eアイソフォームを指す。BRAFスプライスバリアントは、RAS結合ドメインの一部をコードするエクソンを欠き、かつ細胞において低レベルのRAS活性化で二量化の増強を示すBRAF V600E耐性変異である(Poulikakosら、Nature、480(7377):387~390)。クラスII BRAF V600Eスプライスバリアントの例は、エクソン4~8(p61BRAF(V600E)としても公知)を含む)、エクソン4~10、エクソン2~8またはエクソン2~10を欠いているものを含む。一実施形態では、耐性変異はp61BRAF(V600E)である。
【0168】
「耐性変異」という用語は、単独か、またはMEK阻害薬などの別の抗がん薬と組み合わせたBRAF阻害薬にBRAF V600E変異体を曝露した後に生じる、BRAF V600E変異における変異を指す。耐性変異を有する腫瘍は、BRAF阻害薬に対する感受性が低くなる(例えば、それでの処置に対して耐性になる)。一実施形態では、耐性変異は、ベムラフェニブに対する曝露後に生じる。一実施形態では、耐性変異は、エンコラフェニブに対する曝露後に生じる。
【0169】
「クラスIII BRAF変異」という用語は、BRAFおよび/またはCRAFのRAS依存性活性化二量体として機能するBRAF非V600変異を指す。BRAFクラスIII変異の非限定的例には、G466A、G466E、G466R、G466V、D594A、D594E、D594G、D594H、G594N、D287H、V549L、S467A、S467E、S467L、G469E、N581S、N581I、F595L、G596A、G596C、G596D、G596R、およびK483Mが含まれる。
【0170】
「BRAF融合」という用語は、融合タンパク質の発現をもたらすBRAF遺伝子転座を指す。一実施形態では、BRAF関連腫瘍またはBRAF関連がんは、これに限定されないが、KIAA11549-BRAF、MKRN1-BRAF、TRIM24-BRAF、AGAP3-BRAF、ZC3HAV1-BRAF、AKAP9-BRAF、CCDC6-BRAF、AGK-BRAF、EPS15-BRAF、NUP214-BRAF、ARMC10-BRAF、BTF3L4-BRAF、GHR-BRAF、ZC3HAV1-BRAF、ZNF767-BRAF、CCDC91-BRAF、DYNC112-BRAF、ZKSCAN1-BRAF、GTF2I-BRAF、MZT1-BRAF、RAD18-BRAF、CUX1-BRAF、SLC12A7-BRAF、MYRIP-BRAF、SND1-BRAF、NUB1-BRAF、KLHL7-BRAF、TANK-BRAF、RBMS3-BRAF、STRN3-BRAF、STK35-BRAF、ETFA-BRAF、SVOPL-BRAF、JHDM1D-BRAF、またはBCAP29-BRAFを含む、構成的キナーゼ活性化および変換をもたらす1つまたは複数のBRAF融合を有する。
【0171】
本明細書で使用される場合の「BRAF関連腫瘍」または「BRAF関連がん」という用語は、BRAF変異と関連するか、またはそれを有する腫瘍またはがんを指し、クラスI BRAF、クラスII BRAF変異およびクラスIII BRAF変異から選択される1つまたは複数のBRAF変異を有する腫瘍を含む。BRAF関連腫瘍には、良性BRAF関連腫瘍および悪性BRAF関連腫瘍(すなわち、BRAF関連がん)の両方が含まれる。
【0172】
本明細書で使用される場合の「腫瘍」という用語は、無制御で通常は急速な細胞増殖から生じる組織の異常な成長を指す。腫瘍は、良性腫瘍(非がん性)または悪性腫瘍(すなわち、がん)であってよい。腫瘍は、固形腫瘍または液性腫瘍(すなわち、血液がんとしても公知の血液腫瘍)であってよい。
【0173】
「野生型」という用語は、基準核酸またはタンパク質に関連する疾患または障害を有さない対象において典型的に見い出される核酸(例えば、BRAF遺伝子またはBRAF mRNA)を示す。
【0174】
「野生型BRAF」という用語は、BRAF関連疾患、例えば、BRAF関連がんを有さない(および任意選択で、BRAF関連疾患を発症するリスクも高くなく、および/またはBRAF関連疾患を有する疑いもない)対象において見い出されるか、またはBRAF関連疾患、例えば、BRAF関連がんを有さない(および任意選択で、BRAF関連疾患を発症するリスクも高くなく、および/またはBRAF関連疾患を有する疑いもない)対象からの細胞または組織において見い出されるBRAF核酸(例えば、BRAF遺伝子またはBRAF mRNA)またはBRAFタンパク質を示す。
【0175】
一実施形態では、そのような処置を必要とする対象においてBRAF関連腫瘍を処置する方法であって、対象に、治療有効量の結晶無水化合物1、形態1を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0176】
本明細書で使用される場合、化合物の「治療有効量」は、いずれか1つまたは複数の有利な、または所望の結果を達成するために十分な量である。予防的使用では、有利な、または所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的および/または行動症状、その合併症ならびに疾患の発生中に存在している中間の病的表現型を含めて、リスクを排除もしくは減少させること、重症度を低下させること、または疾患の発生を遅延させることが含まれる。治療的使用では、有利な、または所望の結果には、治療効果をもたらすことが含まれ、それには、腫瘍のサイズを減少させること、腫瘍の進行を阻害すること(例えば、ある程度、減速させること、好ましくは停止させること)、腫瘍成長を阻害すること(例えば、ある程度、減速させること、好ましくは停止させること)、腫瘍侵襲性を阻害すること(例えば、ある程度、減速させること、好ましくは停止させること)、および/または腫瘍転位を阻害すること(例えば、ある程度、減速させること、好ましくは停止させること)ことが含まれ得る。当業者は、ヒト対象における腫瘍進行を様々な方法により決定することができることを理解する。例えば、皮膚の近位の腫瘍のサイズは、キャリパーを用いて腫瘍の幅および深さを確立し、次いで、腫瘍体積を計算することにより測定することができる。肺およびCNSがんなどのアクセスしにくい腫瘍は、磁気共鳴画像法(MRI)走査から得られた画像を観測することにより測定することができる。脳腫瘍などのCNS腫瘍は、MRI走査の組合せにより、および神経性能をモニターすることにより測定することができる。脳腫瘍の成長は典型的に、神経性能の低下を随伴する。治療効果を得ることには、処置の非存在下で予測されたものを超えて対象または対象の生存を延長させること、および/またはがんと関連する1つまたは複数の徴候または症状をある程度、軽減すること(または好ましくは排除すること)も含まれる。一実施形態では、発明による化合物または組合せでの対象または対象の処置は、処置の非存在下で予測されたものを超えて、1か月以上、例えば、3か月以上、例えば、6か月以上、例えば、1年以上、例えば、2年以上、例えば、3年以上、例えば、5年以上、例えば、10年以上生存を延長させる。治療効果を得ることには、がん細胞の数を減少させることも含まれる。治療効果を得ることには、がん細胞を排除することも含まれる。治療効果を得ることには、腫瘍量の減少も含まれる。治療効果を得ることには、がんを寛解させることも含まれる。治療有効量を1回または複数の投与で投与することができる。本発明の目的では、投薬治療有効量の化合物、またはその医薬組成物は、直接的または間接的のいずれかで予防的または治療的処置を達成するために十分な量である。臨床状況で理解されるとおり、投薬治療有効量の化合物またはその医薬組成物は、別の治療と併せて達成されてもよい。
【0177】
「治療有効量」を、1種または複数の治療(例えば、1種または複数抗がん薬)を投与する状況で考慮することもあり、1種または複数の他の薬剤と併せて、所望の結果を達成し得るか、または達成する場合には、単一の薬剤を治療有効量で投与することを考慮してもよい。腫瘍の処置に関して、治療有効量は、(1)腫瘍のサイズを減少させる、(2)腫瘍転位の出現を阻害する(すなわち、ある程度、減速させる、好ましくは停止させる)、(3)腫瘍成長または腫瘍侵襲性をある程度阻害する(すなわち、ある程度、減速させる、好ましくは停止させる)、および/または(4)がんと関連する1つまたは複数の徴候または症状をある程度、軽減する(または、好ましくは、排除する)効果を有する量も指し得る。用量および投与レジメンの治療的または薬理学的有効性を、これらの特異的な腫瘍を有する対象において疾患制御および/または全生存期間を誘導する、増強する、維持する、または延長する能力として特徴づけることもでき、それらは、疾患進行前の時間の延長として測定することができる。
【0178】
一実施形態では、本明細書に開示の方法のいずれかに従って処置される対象を、RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors、例えば、RECIST version 1.0、RECIST version 1.1、および修正RECIST 1.1(mRECIST 1.1))、RANO-BM(Response Assessment in Neuro-Oncology Brain Metastases)、Macdonald、RANO-LMD、およびNANO(Neurologic Assessment in Neuro-Oncology)を含む当技術分野で公知の1つまたは複数の標準的な反応評価基準に従って評価することができる。前記基準のいずれかの一実施形態では、腫瘍を画像研究(例えば、MRI、CT、MDCTまたはPET)により評価する。一実施形態では、処置反応をRECIST version 1.1に従って評価し、その際、完全奏功(CR)は、すべての腫瘍病変の完全な消失と定義され;部分奏功(PR)は、腫瘍測定値の合計の少なくとも30%減少と定義され;進行性疾患(PD)は、腫瘍測定値の合計の少なくとも20%上昇と定義され(その際、新たな病変の発生または非標的病変の実質的進行もPDと定義される)、基線から少なくとも5mmの増大がPDと評価され;安定している疾患(SD)は、処置中の最小合計直径を参照して、PRと認定するには縮小も十分ではなく、PDと認定するには増大も十分ではないと定義される。一実施形態では、評価には、頭蓋内反応(ガドリニウム増強MRIを使用して修正RECISTにより評価)、頭蓋外反応、全奏功率、病勢コントロール率(DCR)、奏功期間(DOR)、無増悪生存(PFS)、および全生存期間(OS)が含まれる。
【0179】
本明細書に記載の使用の方法のいずれかの一実施形態では、BRAF関連腫瘍は固形腫瘍である。一部の実施形態では、腫瘍は頭蓋内である。一部の実施形態では、腫瘍は頭蓋外である。本明細書に記載の使用の方法のいずれかの一部の実施形態では、BRAF関連腫瘍は悪性BRAF関連腫瘍(すなわち、BRAF関連がん)である。本明細書に記載の使用方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは、黒色腫、結腸がん、結腸直腸がん、肺がん(例えば、小細胞肺がんまたは非小細胞肺がん)、甲状腺がん(例えば、甲状腺乳頭がん、甲状腺髄様がん、分化型甲状腺がん、再発性甲状腺がん、または難治性分化型甲状腺がん)、乳がん、膀胱がん、卵巣がん(卵巣癌)、CNSのがん(神経膠腫およびLMDを含む)、骨がん、肛門、肛門管、または肛門直腸のがん、血管肉腫、腺様嚢胞癌、虫垂がん、眼がん、胆管がん(胆管癌)、子宮頸がん、腺管上皮内癌、子宮内膜がん、胆嚢、肝胆道がん、肝胆膵癌、頭頚部扁平上皮細胞癌、口がん、口腔がん、白血病、口唇がん、口咽頭がん、鼻、鼻腔または中耳のがん、外陰がん、食道がん、食道胃がん、子宮頸がん、胃腸管カルチノイド腫瘍、胃腸神経内分泌がん、下咽頭がん、腎臓がん、咽頭がん、肝臓がん、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、末梢神経系がん(例えば、神経芽細胞腫)、神経内分泌がん、膵臓がん、腹膜、形質細胞新生物、大網、および腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、腎臓がん(例えば、腎細胞癌(RCC))、小腸がん、小腸がん、軟部組織肉腫、胃がん、睾丸がん、子宮がん、尿管がん、または膀胱がん、およびその転移性がんである。
【0180】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、CNSがん(すなわち、転移性脳癌または原発性脳腫瘍)、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、および腎細胞癌から選択されるBRAF関連がんである。
【0181】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、および神経芽細胞腫から選択される頭蓋外BRAF関連がんである。一部の実施形態では、BRAF関連がんは黒色腫である。一部の実施形態では、BRAF関連がんは結腸直腸がんである。一部の実施形態では、BRAF関連がんは甲状腺がんである。一部の実施形態では、BRAF関連がんは非小細胞肺がんである。一部の実施形態では、BRAF関連がんは卵巣がんである。一部の実施形態では、BRAF関連がんは神経芽細胞腫である。
【0182】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、BRAFクラスI変異を有するがんである。一部の実施形態では、BRAF関連がんは、BRAF V600EまたはBRAF V600K変異を有するがんである。一部の実施形態では、BRAF V600EまたはBRAF V600K変異を有するBRAF関連がんは、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞癌、およびその転移性がん、ならびに原発性脳腫瘍から選択される。一部の実施形態では、BRAF V600EまたはBRAF V600K変異を有するBRAF関連がんはCNS腫瘍である。一部の実施形態では、CNS腫瘍は悪性腫瘍(CNSがん)である。一部の実施形態では、悪性腫瘍は転移性CNSがんである。一部の実施形態では、転移性CNSがんは、転移性黒色腫、転移性結腸直腸がん、転移性非小細胞肺がん、転移性甲状腺がん、および転移性卵巣がんから選択される。一部の実施形態では、CNS腫瘍は、原発性脳腫瘍である。一部の実施形態では、CNS腫瘍は、頭蓋内LMDまたは頭蓋外LMDである。
【0183】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、BRAFクラスII変異を有するがんである。一実施形態では、BRAFクラスII変異を有するがんは、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、黒色腫、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、前立腺がん、腺様嚢胞癌、虫垂がん、小腸癌、胃腸神経内分泌がん、頭頚部扁平上皮細胞がん腫、血管肉腫、膀胱がん、形質細胞新生物、肝臓胆道がん、肝胆膵癌、卵巣がん、子宮内膜がん、神経内分泌がん、胆管癌、食道胃がん、軟部組織肉腫、白血病、非ホジキンリンパ腫、およびCNSがん(例えば、神経膠腫)から選択される。一実施形態では、がんはBRAF G469A変異を有する。
【0184】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、BRAFクラスIII変異を有するがんである。一実施形態では、BRAFクラスIII変異を有するがんは、黒色腫、小腸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、白血病、膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、神経膠腫、卵巣がん、前立腺がん、肝臓胆道がん、食道胃がん、軟部組織肉腫、および乳がんから選択される。一実施形態では、がんは、BRAF G466VまたはBRAF D594G変異を有する。一実施形態では、がんは、BRAF G466V変異を有する。一実施形態では、がんはBRAF D594G変異を有する。
【0185】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、BRAF融合タンパク質を有し、腫瘍は、乳癌(例えば、乳房侵襲性腺管癌)、結腸直腸癌(例えば、結腸腺癌)、食道癌(例えば、食道腺癌)、神経膠腫(例えば、脳線維形成性乳児神経節膠腫、脳毛様細胞性神経膠星状細胞腫、脳多形黄色星細胞腫、脊髄低悪性度神経膠腫(NOS)、未分化乏突起神経膠腫、未分化神経節膠腫)、頭頚部癌(例えば、頭頚部神経内分泌癌)、肺癌(例えば、肺腺癌、肺非小細胞肺癌(NOS))、黒色腫(例えば、スピッツ様皮膚黒色腫、非スピッツ様粘膜黒色腫、スピッツ様皮膚黒色腫、未知の原発性黒色腫、非スピッツ様皮膚黒色腫)、膵臓癌(例えば、腺癌、膵臓腺房細胞癌)、前立腺癌(例えば、前立腺腺房腺癌)、肉腫(悪性固形線維性腫瘍)、甲状腺癌(甲状腺乳頭状癌)、未知の原発性がん腫(例えば、未知の原発性腺癌)、胸膜中皮腫、直腸腺癌、子宮内膜癌(例えば、子宮内膜腺癌(NOS))または卵巣漿液性がんである。
【0186】
「転移」および「転移性」という用語は、対象において初めに生じた場所(原発性部位)から1つまたは複数の他の部位(1つまたは複数の続発性部位)へのがん細胞の伝播を指す当技術分野で公知の用語である。転移では、がん細胞は元々の(原発性)腫瘍から離れて、血液またはリンパ系を通じて移動し、身体の他の臓器または組織において新たな腫瘍(転移性腫瘍)を形成する。新たな転移性腫瘍は、原発性腫瘍と同じか、または同様のがん細胞を含む。続発性部位で、腫瘍細胞は増殖して、この遠隔部位で続発性腫瘍の成長または定着を開始することができる。
【0187】
本明細書で使用される場合の「転移がん」(「続発性がん」としても公知)という用語は、1つの組織種で起こったが、次いで、その(原発性)がんの起源外の1つまたは複数の組織に伝播しているがんの1種を指す。転移性脳癌は、脳内のがん、すなわち、脳以外の組織で起こって、脳に転移しているがんを指す。
【0188】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、CNS腫瘍である。一実施形態では、BRAF関連CNS腫瘍は、悪性BRAF関連CNS腫瘍(すなわち、「BRAF関連CNSがん」)である。本明細書において互換的に使用される場合の「CNSがん」または「CNSのがん」という用語は、脳のがん(頭蓋内腫瘍としても公知)、脊髄のがん、ならびに脳および脊髄を囲む髄膜の癌を含むCNSのがん(すなわち、悪性腫瘍)を指す。「BRAF関連CNSがん」という用語は、BRAF変異と関連するか、またはそれを有するCNSがんを指す。CNSのがんには、転移性脳癌および原発性脳腫瘍が含まれる。
【0189】
軟髄膜転移(軟髄膜疾患(LMD))は、脳または脊椎の内層で、および/または脳脊髄液(CSF)で成長するCNS転移の亜集団、または軟髄膜癌腫症を表す。哺乳類では、髄膜は、硬膜、クモ膜、および軟膜である。CSFは、クモ膜と軟膜との間のクモ膜下空間に位置する。クモ膜および軟膜は時おり一緒に、軟髄膜と呼ばれる。LMDが軟髄膜および/または脊髄周囲のCSFで生じると、これは「頭蓋外LMD」と称され得る。LMDが軟髄膜および/または脳のCSFで生じると、これは「頭蓋内LMD」と称され得る。LMDがん細胞はCSF中に懸濁し得るので、CNS全体に急速に広がり得る。結果として、LMDは予後不良を有し、生存は典型的には数か月と判断される。一実施形態では、転移がんはBRAF関連LMDである。一実施形態では、転移がんは頭蓋内BRAF関連LMDである。一実施形態では、転移がんは頭蓋外BRAF関連LMDである。軟髄膜転移の最高発病率を示すBRAF関連がんは肺がんおよび黒色腫である。一実施形態では、BRAF関連LMDは、黒色腫転移に由来するLMDである(すなわち、LMDは転移性黒色腫である)。一実施形態では、BRAF関連LMDは、結腸直腸がん転移に由来するLMDである(すなわち、LMDは転移性結腸直腸がんである)。一実施形態では、BRAF関連LMDは、非小細胞肺がん転移に由来するLMDである(すなわち、LMDは転移性非小細胞肺がんである)。
【0190】
一実施形態では、BRAF関連CNS腫瘍はBRAF関連原発性脳腫瘍である。一実施形態では、原発性脳腫瘍は悪性原発性脳腫瘍である。一実施形態では、原発性脳腫瘍は良性原発性脳腫瘍である。一実施形態では、原発性脳腫瘍はクラスI変異を有する。一実施形態では、原発性脳腫瘍はBRAF V600変異を有する。一実施形態では、原発性脳腫瘍は、BRAF V600EまたはBRAF V600K変異を有する。一実施形態では、原発性脳腫瘍はクラスII変異を有する。一実施形態では、原発性脳腫瘍は、G469A、G469R、G469V、K601E、K601N、K601T、L597QおよびL597Vから選択されるクラスII変異を有する。一実施形態では、原発性脳腫瘍はG469A変異を有する。
【0191】
「原発性脳腫瘍」は、脳または脊椎で始まる腫瘍であり、まとめて神経膠腫として公知である。「神経膠腫」という用語は、CNSに存在する神経膠細胞に起源する腫瘍を示すために用いられる。脳腫瘍のWHO分類によれば、神経膠腫は、細胞活性および攻撃性により、グレードI(良性CNS腫瘍)およびグレードII~IV(悪性CNS腫瘍)を含むスケールでグレーディングされる:
【0192】
グレードI神経膠腫(毛様細胞性星細胞腫):典型的には小児において、小脳または脳幹で、また時折、大脳半球で生じ、成長が遅い。グレードIは成人で生じることもある。これらは良性であるが(WHOグレードI)、この疾患の治癒が困難であることにより、それらの成長は、高い罹患率で、挙動において悪性となる(Rostami、Acta Neurochir(Wien).2017;159(11):2217~2221)。
【0193】
グレードII神経膠腫(低悪性度神経膠腫):星細胞腫、乏突起神経膠腫、および混合乏突起星細胞腫が含まれる。グレードII神経膠腫は典型的には、若年成人(20歳から50歳代)で生じ、多くの場合に大脳半球において見い出される。これらの腫瘍の浸潤性により、再発が起こり得る。一部のグレードII神経膠腫は再発して、より攻撃的な腫瘍(グレードIIIまたはIV)に進展する。
【0194】
グレードIII神経膠腫(悪性神経膠腫):未分化星細胞腫、未分化乏突起神経膠腫、および未分化混合乏突起星細胞腫が含まれる。グレードIII腫瘍は攻撃的で高悪性度がんであり、触手様突起で近接の脳組織を侵襲するので、完全な外科的除去が、より困難になっている。
【0195】
グレードIV神経膠腫:多形性神経膠芽腫(GBM)および神経膠肉腫が含まれ;(GBM)は悪性神経膠腫である。GBMは最も攻撃的で、最も一般的な原発性脳腫瘍である。多形性神経膠芽腫は通常、急速に伝播して、触手様突起で脳の他の部分を侵襲するので、完全な外科的除去が、より困難になっている。神経膠肉腫は、悪性がんであり、神経膠腫および肉腫構成成分からなる神経膠芽腫と定義される。
【0196】
一実施形態では、BRAF関連原発性脳腫瘍は神経膠腫である。一部の実施形態では、BRAF関連原発性脳腫瘍は、クラスI変異を有する神経膠腫である。一部の実施形態では、BRAF関連原発性脳腫瘍は、クラスII変異を有する神経膠腫である。
【0197】
良性原発性脳腫瘍は、重篤な疼痛、恒久的脳損傷および死の原因となり得、場合によっては、悪性になる。良性原発性脳腫瘍の非限定的例には、グレードI神経膠腫、乳頭状頭蓋咽頭腫、髄膜腫(横紋筋肉腫様髄膜腫を含む)、非定型奇形様/横紋筋肉腫様腫瘍、および胚芽異形成性神経上皮腫瘍(DNT)、毛様細胞性星細胞腫、乏突起神経膠腫、混合乏突起星細胞腫、未分化星細胞腫、未分化乏突起神経膠腫、未分化混合乏突起星細胞腫、びまん性星細胞腫、脳室上衣細胞腫、多形黄色星細胞腫(PXA)、神経節膠腫、神経膠肉腫、または未分化神経節膠腫が含まれる。一実施形態では、BRAF関連腫瘍は、良性原発性脳腫瘍である。
【0198】
一実施形態では、BRAF関連がんは末梢神経系がんである。一実施形態では、末梢神経系がんは神経芽細胞腫である。
【0199】
化合物1がCNSがんを処置するために好適であり得るか否かを決定する能力は、下の実施例BおよびCにおいて本明細書に記載のとおり、例えば、化合物1が排出トランスポーターの基質であるか否かを同定すること、および/または細胞透過性を測定すること、および/または遊離脳-対-遊離血漿比を測定することにより決定することができる。
【0200】
一実施形態では、BRAF関連腫瘍を有する対象を処置するために、結晶無水化合物1、形態1を1つまたは複数の異なる形態の処置と組み合わせて投与する。例えば、結晶無水化合物1、形態1を、外科手術、放射線治療、および1種または複数の抗がん薬から独立に選択される1種または複数の追加の抗がん治療と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、1つまたは複数の追加の治療、例えば、外科手術、放射線治療、および/または抗がん薬と組み合わせた結晶無水化合物1、形態1での、BRAF関連腫瘍を有する対象の処置は、単剤治療としての結晶無水化合物1、形態1での同じ対象または同様の対象の処置と比較すると、増大した治療有効性を有し得る。
【0201】
したがって、一実施形態では、BRAF関連腫瘍(例えば、本明細書において記載されるBRAF関連腫瘍のいずれか)を有する対象を処置する方法であって、対象に、(i)単剤治療としての治療有効量の結晶無水化合物1、形態1の化合物、または(ii)1つもしくは複数の追加の抗がん治療と組み合わせた治療有効量の結晶無水化合物1、形態1を投与することを含む方法を本明細書において提供する。
【0202】
1種または複数の追加の抗がん治療と組み合わせて使用するための結晶無水化合物1、形態1も本明細書において提供する。
【0203】
上記方法のいずれかに従って結晶無水化合物1、形態1と組み合わせて使用することができる追加の抗がん治療の例には、これに限定されないが、MEK阻害薬、EGFR阻害薬、HER2および/またはHER3の阻害薬、Axl阻害薬、PI3K阻害薬、およびSOS1阻害薬、シグナル伝達経路阻害薬、チェックポイント阻害薬、アポトーシス経路の調節薬、細胞傷害性化学治療薬、血管新生標的治療、ならびに免疫療法を含む免疫標的薬が含まれる。
【0204】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、MEK阻害薬である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。一実施形態では、MEK阻害薬は、ビニメチニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ピマセルチブ、レファメチニブ、ミルダメチニブ、2-(2-クロロ-4-ヨードフェニルアミノ)-N-(シクロプロピルメトキシ)-3,4-ジフルオロベンズアミド(CI-1040)、3-[2(R),3-ジヒドロキシプロピル]-6-フルオロ-5-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)-8-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-4,7(3H,8H)-ジオン(TAK-733)、およびその薬学的に許容できる塩から選択される。一実施形態では、MEK阻害薬は、ビニメチニブまたはその薬学的に許容できる塩である。
【0205】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、EGFR阻害薬である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。EGFR阻害薬の非限定的例には、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、オシメルチニブ(merelectinib、Tagrisso(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、ネシツムマブ(Portrazza(商標))、ネラチニブ(Nerlynx(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、バンデタニブ(Caprelsa(登録商標))、ブリガチニブ(Alunbrig(登録商標))が含まれる。一実施形態では、EGFR阻害薬はセツキシマブである。
【0206】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、MEK阻害薬(例えば、本明細書において開示されるMEK阻害薬のいずれか)およびEGFR阻害薬(例えば、本明細書において開示されるEGFR阻害薬のいずれか)から選択される追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、ビニメチニブまたはその薬学的に許容できる塩であるMEK阻害薬、およびセツキシマブであるEGFR阻害薬と組み合わせて投与する。
【0207】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、HER2および/またはHER3阻害薬である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。HER2および/またはHER3阻害薬の非限定的例には、ラパチニブ、カネルチニブ、(E)-2-メトキシ-N-(3-(4-(3-メチル-4-(6-メチルピリジン-3-イルオキシ)フェニルアミノ)キナゾリン-6-イル)アリル)アセトアミド(CP-724714)、サピチニブ、7-[[4-[(3-エチニルフェニル)アミノ]-7-メトキシ-6-キナゾリニル]オキシ]-N-ヒドロキシ-ヘプタンアミド(CUDC-101)、ムブリチニブ、6-[4-[(4-エチルピペラジン-1-イル)メチル]フェニル]-N-[(1R)-1-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(AEE788)、イルビニチニブ(ツカチニブ)、ポジオチニブ、N-[4-[1-[4-(4-アセチル-1-ピペラジニル)シクロヘキシル]-4-アミノ-3-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジニル]-2-メトキシフェニル]-1-メチル-2-インドールカルボキサミド(KIN001-111)、7-シクロペンチル-5-(4-フェノキシフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イルアミン(KIN001-051)、6,7-ジメトキシ-N-(4-フェノキシフェニル)キナゾリン-4-アミン(KIN001-30)、ダサチニブ、およびボスチニブ、ならびにその薬学的に許容できる塩が含まれる。
【0208】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、Axl阻害薬である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。Axl阻害薬の非限定的例には、ベムセンチニブ、2-(5-クロロ-2-(4-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)フェニルアミノ)ピリミジン-4-イルアミノ)-N,N-ジメチルベンゼンスルホンアミド(TP-0903)、3-[2-[[3-フルオロ-4-(4-メチル-1-ピペラジニル)フェニル]アミノ]-5-メチル-7Hピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]-ベンゼンアセトニトリル(SGI-7079)、ギルテリチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、スニチニブ、ホレチニブ、アムバチニブ、グレサチニブ、N-(4-((2-アミノ-3-クロロピリジン-4-イル)オキシ)-3-フルオロフェニル)-4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド(BMS777607)、メレスチニブ、(Z)-3-((3-((4-(モルホリノメチル)-1H-ピロル-2-イル)メチレン)-2-オキソインドリン-5-イル)メチル)チアゾリジン-2,4-ジオン(S49076)、および(R)-N-(3-フルオロ-4-((3-((1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-4-イル)オキシ)フェニル)-3-(4-フルオロフェニル)-1-イソプロピル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキサミド、ならびにその薬学的に許容できる塩が含まれる。
【0209】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、SOS1阻害薬である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。SOS1阻害薬の非限定的例には、その全体が参照により本明細書に援用されるPCT公報WO2018/115380に開示のものが含まれる。
【0210】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、PI3K阻害薬である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。非限定的例には、ブパルリシブ(BKM120)、アルペリシブ(BYL719)、サモトリシブ(LY3023414)、8-[(1R)-1-[(3,5-ジフルオロフェニル)アミノ]エチル]-N,N-ジメチル-2-(モルホリン-4-イル)-4-オキソ-4H-クロメン-6-カルボキサミド(AZD8186)、テナリシブ(RP6530)、ボクスタリシブ塩酸塩(SAR-245409)、ゲダトリシブ(PF-05212384)、パヌリシブ(P-7170)、タセリシブ(GDC-0032)、トランス-2-アミノ-8-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン(PF-04691502)、デュベリシブ(ABBV-954)、N2-[4-オキソ-4-[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリン-4-イウム-4-イルメトキシ]ブチリル]-L-アルギニル-グリシル-L-アスパルチル-L-セリンアセタート(SF-1126)、ピクチリシブ(GDC-0941)、2-メチル-1-[2-メチル-3-(トリフルオロメチル)ベンジル]-6-(モルホリン-4-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-4-カルボン酸(GSK2636771)、イデラリシブ(GS-1101)、ウムブラリシブトシル酸塩(TGR-1202)、ピクチリシブ(GDC-0941)、コパンリシブ塩酸塩(BAY84-1236)、ダクトリシブ(BEZ-235)、1-(4-[5-[5-アミノ-6-(5-tert-ブチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ピラジン-2-イル]-1-エチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル]ピペリジン-1-イル)-3-ヒドロキシプロパン-1-オン(AZD-8835)、5-[6,6-ジメチル-4-(モルホリン-4-イル)-8,9-ジヒドロ-6H-[1,4]オキサジノ[4,3-e]プリン-2-イル]ピリミジン-2-アミン(GDC-0084)エベロリムス、ラパマイシン、ペリホシン、シロリムス、およびテムシロリムス、ならびにその薬学的に許容できる塩が含まれる。
【0211】
一実施形態では、結晶無水化合物1、形態1を、免疫治療である追加の抗がん薬と組み合わせて投与する。
【0212】
一実施形態では、免疫治療は、抗体治療(例えば、モノクローナル抗体、コンジュゲート抗体)である。一部の実施形態では、抗体治療は、ベバシズマブ(Mvasti(商標)、Avastin(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、リツキシマブ(MabThera(商標)、Rituxan(登録商標))、エドレコロマブ(Panorex)、ダラツムマブ(Darzalex(登録商標))、オララツマブ(Lartruvo(商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、オレゴボマブ、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ジヌチキシマブ(Unituxin(登録商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))、トレメリムマブ(CP-675,206)、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、ウブリツキシマブ(TG-1101)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、エロツズマブ(Empliciti(商標))、ネシツムマブ(Portrazza(商標))、シルムツズマブ(UC-961)、イブリツモマブ(Zevalin(登録商標))、イサツキシマブ(SAR650984)、ニモツズマブ、フレソリムマブ(GC1008)、リリルマブ(INN)、モガムリズマブ(Poteligeo(登録商標))、フィクラツズマブ(AV-299)、デノスマブ(Xgeva(登録商標))、ガニツマブ、ウレルマブ、ピジリズマブ、アマツキシマブ、ブリナツモマブ(AMG103;Blincyto(登録商標))またはミドスタウリン(Rydapt)である。
【0213】
一実施形態では、免疫治療は、免疫チェックポイント阻害薬である。一部の実施形態では、免疫治療は、1種または複数の免疫チェックポイント阻害薬を含む。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、CTLA-4阻害薬、PD-1阻害薬またはPD-L1阻害薬である。一部の実施形態では、CTLA-4阻害薬は、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))またはトレメリムマブ(CP-675,206)である。一部の実施形態では、PD-1阻害薬は、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))またはニボルマブ(Opdivo(登録商標))である。一部の実施形態では、PD-L1阻害薬は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))またはデュルバルマブ(Imfinzi(商標))である。一実施形態では、PD-1阻害薬はRN888(ササンリマブ)である。
【0214】
結晶無水化合物1、形態1を1種または複数の抗がん薬と組み合わせて投与する上の方法のいずれでも、それを必要とする対象に、別々に、同時か、または様々な介在時限で連続して投与することができ、その際、そのような投与が、対象の体内において有効なレベルの2種以上の化合物を提供するように、結晶無水化合物1、形態1および追加の抗がん薬を別々の組成物または投薬量として製剤化する。
【0215】
実施形態(EB):
EB1. -188.1および-115.8ppm±0.2ppmの共鳴値を含む19F固体NMRスペクトルを有する、結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0216】
EB2. 35.8、57.5、130.6および148.1ppm±0.2ppmに共鳴(ppm)値を含む13C固体NMRスペクトルを有する、実施形態EB1に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0217】
EB3. 2シータに関して、8.3、11.5および16.1度2シータ±0.2度2シータにピークを含む、銅波長放射線を使用して測定された粉末X線回折パターンを有する、実施形態EB1またはEB2に記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0218】
EB4. 2シータに関して、8.3、11.5、16.1、22.9、および23.6度2シータ(±0.2度2シータ)にピークを含む、銅波長放射線を使用して測定された粉末X線回折パターンを有する、実施形態EB1からEB3のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0219】
EB5. 1308、1433、1447、1548および1608cm-1±2cm-1に1つまたは複数の波数(cm-1)値を含むラマンスペクトルを有する、実施形態EB1からEB4のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0220】
EB6. 実施形態EB1からEB5のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1と、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0221】
EB7. 微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム無水物、クロスポビドンタイプBおよびステアリルフマル酸ナトリウムをさらに含む、実施形態EB6に記載の医薬組成物。
【0222】
EB8. それを必要とする対象においてBRAF関連腫瘍を処置する方法であって、対象に、実施形態EB1からEB5のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1を投与することを含む方法。
【0223】
EB9. 前記BRAF関連腫瘍がBRAFクラスII変異を有する、実施形態EB8に記載の方法。
【0224】
EB10. 前記BRAF関連腫瘍が、肺がん、黒色腫、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、前立腺がん、腺様嚢胞癌、虫垂がん、小腸がん、頭頚部扁平上皮細胞癌、血管肉腫、膀胱癌、形質細胞新生物、肝胆膵癌、卵巣癌、神経内分泌がん、胆管癌およびCNSがんから選択されるがんである、実施形態EB8またはEB9に記載の方法。
【0225】
EB11. 前記BRAF関連腫瘍がBRAFクラスI変異を有する、実施形態EB8に記載の方法。
【0226】
EB12. 前記BRAF関連腫瘍が、黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞癌、およびその転移性がん、ならびに原発性脳腫瘍から選択される、実施形態EB11に記載の方法。
【0227】
EB13. 1種または複数の追加の抗がん薬を投与することをさらに含む、実施形態EB8からEB12のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
EB14. 追加の抗がん薬がMEK阻害薬である、実施形態EB13に記載の方法。
【0229】
EB15. MEK阻害薬が、ビニメチニブまたはその薬学的に許容できる塩である、実施形態EB14に記載の方法。
【0230】
EB16. 追加の抗がん薬がEGFR阻害薬であり、EGFR阻害薬がセツキシマブである、実施形態EB13に記載の方法。
【0231】
EB17. 追加の抗がん薬が、MEK阻害薬およびEGFR阻害薬であり、MEK阻害薬がビニメチニブまたはその薬学的に許容できる塩であり、EGFR阻害薬がセツキシマブである、実施形態EB13に記載の方法。
【0232】
EB18. 医薬品として使用するための、実施形態EB1からEB5のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0233】
EB19. BRAF関連腫瘍の処置において使用するための、実施形態EB1からEB5のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1。
【0234】
EB20. BRAF関連腫瘍を処置するための医薬品を製造するための、実施形態EB1からEB5のいずれか1つに記載の結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1の使用。
【実施例
【0235】
下に提供される実施例および調製例で、本発明の特定の実施形態をさらに図示し、例示する。本発明の範囲が、次の実施例の範囲により限定されることはないことは理解されたい。
【0236】
一般方法1
特性ピークを決定するための粉末X線回折(PXRD)法
粉末X線回折分析を、銅(Cu)放射線源を備えたBruker AXS D8 Endeavor回折計を使用して行った。拡散スリットは15mmの連続照明に設定した。回折放射線を、2.99度に設定された検出器PSD開口部を伴うPSD-Lynx Eye検出器により検出した。X線管電圧およびアンペアはそれぞれ40kVおよび40mAに設定した。データを、シータ-シータゴニオメーターで、Cu波長で(CuKα=1.5418λ)、3.0から40.0度2シータまで、0.01度のステップサイズおよび1.0秒のステップ時間を使用して収集した。抗散乱スクリーンを3.0mmの一定距離に設定した。収集中は、試料を15/分で回転させた。シリコン低バックグラウンド試料ホルダーに入れることにより試料を準備し、収集中は回転させた。データは、Bruker DIFFRAC Plusソフトウェアを使用して収集し、解析はEVA diffract plusソフトウェアにより行った。PXRDデータファイルを、ピーク探索前に加工することはなかった。EVAソフトウェア内のピーク探索アルゴリズムを使用して、1の閾値で選択されたピークを使用して、予備ピーク割り当てを作成した。有効性を保証するために、手動で調整した;自動割り当てのアウトプットを視覚的に確認し、ピーク位置をピーク最大に対して調節した。3%以上の相対強度を有するピークを一般に選択した。典型的には、解析されなかったか、またはノイズと一致したピークは、選択されなかった。USPにおいて述べられているPXRDからのピーク位置に関連する典型的な誤差は、最大±0.2°2シータである(USP-941)。
【0237】
一般方法2
固体NMR(ssNMR)分光法
固体NMR(ssNMR)分析を、Bruker-BioSpin Avance III 500MHz(H周波数)NMR分光計に配置されたCPMASプローブで行った。物質を4mmZrOローターに充填した。15kHzのマジック角回転速度を使用した。スペクトルを周囲温度(無制御の温度)で収集した。
【0238】
13C ssNMRスペクトルを、プロトンデカップリング交差分極マジック角回転(CPMAS)実験を使用して収集した。スペクトル取得中に、80~100kHzの位相変調プロトンデカップリング界を適用した。交差分極接触時間を2msに設定した。スペクトルを、18.5秒のリサイクルディレイで取集した。スキャン回数を調整して、適切なシグナル対ノイズ比を得た。結晶性アダマンタンの外部標準での13C CPMAS実験を使用し、そのアップフィールド共鳴を29.5ppm(無溶媒TMSから決定して)に設定して、13C化学シフトスケールを基準とした。
【0239】
19F ssNMRスペクトルを、プロトンデカップリングマジック角回転(MAS)実験を使用して収集した。スペクトル取得中に、80~100kHzの位相変調プロトンデカップリング界を適用した。スペクトルを、37.5秒のリサイクルディレイで取集した。スキャン回数を調整して、適切なシグナル対ノイズ比を得た。トリフルオロ酢酸(HO中50%/50%v/v)の外部標準での19F MAS実験を使用し、その共鳴を-76.54ppmに設定して、19F化学シフトスケールを基準とした。
【0240】
自動ピークピッキングを、Bruker-BioSpin TopSpin version 3.6ソフトウェアを使用して行った。一般に、予備ピーク選択のために、相対強度5%の閾値を使用した。自動ピークピッキングのアウトプットを視覚的に確認して、有効性を保証し、必要な場合には、調整を手動で行った。具体的な固体NMRピーク値を本明細書では報告しているが、機器、試料、および試料の調製の違いにより、これらのピーク値には幅がある。これは、ピーク位置に固有の変化によって、固体NMRの分野では当然のことである。13Cおよび19F化学シフトx軸値の典型的な変動性は、結晶固体ではプラスまたはマイナス0.2ppmの程度である。本明細書において報告している固体NMRピーク高は相対強度である。固体NMR強度は、実験パラメーターの実際の設定および試料の熱履歴に応じて変化し得る。
【0241】
一般方法3
ラマン分光法
計測方法:ラマンスペクトルを、FT-IRベンチに取り付けられたThermo Scientific iS50 FT-ラマン付属品を使用して収集した。CaF2ビームスプリッターをFT-ラマン配置で利用した。分光計は、1064nmのダイオードレーザーと、室温のInGaAs検出器とを備えた。データ取得の前に、ポリスチレンを使用して、計器性能および較正検証を行った。試料は、ガラスNMR管内で、錠剤として、またはデータ収集の間は静止状態に保たれる好適な試料ホルダーに入れて分析した。スペクトルを、0.5Wのレーザー出力および512回の同時付加(co-added)スキャンを使用して収集した。収集範囲は、3700~100cm-1であった。APIスペクトルを、2cm-1の分解能を使用して記録し、スペクトルすべてについてHapp-Genzelアポダイゼーションを利用した。複数のスペクトルを記録し、報告するスペクトルは、2つのスポットの代表である。
【0242】
ピークピッキング方法:ピークピッキングの前に、強度スケールを1に対して正規化した。Thermo Nicolet Omnic 9.7.46ソフトウェアを使用して、ピークを手作業で同定した。ピーク位置をピーク最大値において選出し、各側に傾斜があった場合にだけ、ピークをピークとして同定し、ピーク上の肩は含めなかった。200cm-1未満のピークは、バックグラウンドの上昇により、ピーク表に含めなかった。ピークピッキングの際、75の感度で0.03の絶対閾値を利用した。ピーク位置は、標準的手法(0.5は切り上げ、0.4は切り下げ)を使用して、最も近い整数に丸めている。正規化ピーク強度が(1~0.75)、(0.74~0.30)、(0.29~0)の間にあるピークを、それぞれ、強、中、および弱として標識化した。
【0243】
特性ピークの指定:結晶無水化合物1、形態1の特性ピークを、強度、さらにはピーク位置に基づき選択した。プラセボブレンド配合物で生じたスペクトルとの比較を行って、結晶無水化合物1、形態1の特有性を保証した。
【0244】
(実施例1)
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド遊離塩基の合成および特徴づけ
化合物1を、国際特許出願PCT/IB2021/054919の実施例126に記載されているとおりに、中間体P5およびP9を使用して調製した。中間体P5およびP9、さらには、国際特許出願PCT/IB2021/054919の実施例126を調製するために使用された方法を下に再掲する。
【0245】
6-アミノ-5-クロロ-3-メチルキナゾリン-4(3H)-オン(中間体P5)の調製
【0246】
【化2】
【0247】
6-アミノ-3-メチルキナゾリン-4(3H)-オン(3.00g、17.1mmol)をTHF(170mL)に溶解し、次いで、N-クロロスクシンイミド(2.40g、18.0mmol)で処理し、16時間、50℃に加熱した。反応混合物を追加のN-クロロスクシンイミド(1.14g、8.56mmol)で処理し、さらに3時間、50℃で撹拌した。反応混合物を濃縮し、得られた残渣を1.0M PXRDで希釈し、DCM(3x)で抽出した。合わせたDCM、合わせた有機層を1.0M PXRD(2×)で洗浄し、水層を固体NaHCOで、pH約7~8に中和し、次いで、4:1のDCM:IPA(2×)で抽出した。合わせたDCM:IPA抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、6-アミノ-5-クロロ-3-メチルキナゾリン-4(3H)-オン(2.47g、69%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.10 (s, 1H), 7.38-7.36 (d, 2H), 7.29-7.26 (d, 2H), 5.81 (br-s,
2H), 3.40 (s, 3H). MS (apci, m/z) = 210.1, 212.1 (M+H).
【0248】
tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメート(中間体P9)の調製
【0249】
【化3】
ステップ1:2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードアニリンの調製。3つの付加漏斗、内部温度プローブ、および磁気撹拌棒を備えた5Lの四口フラスコ内で、2-クロロ-4-フルオロアニリン(82.03mL、687.0mmol)をNの逆流下で、THF(1.5L)に溶解し、-78℃に冷却した。反応混合物をブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)(299.5mL、748.8mmol)で滴下処理し、添加の完了後に、-78℃で15分間撹拌した。反応混合物を1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタン(155.3g、721.4mmol)のTHF溶液(500mL)で滴下処理し、添加の完了後に、-78℃で30分間撹拌した。反応混合物を追加のブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)(299.5mL、748.8mmol)で滴下処理し、次いで、添加の完了後に氷浴を取り外し、反応混合物を1時間撹拌した。反応混合物を-78℃に再冷却し、追加のブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)(299.5mL、748.8mmol)で滴下処理し、添加の完了後に、-78℃で30分間撹拌した。反応混合物をヨウ素(249.3g、982.4mmol)のTHF溶液(600mL)で滴下処理し、氷浴を取り外し、反応混合物を周囲温度に加温し、16時間撹拌した。反応混合物を水1000mLで、続いて、塩酸(4.0M水溶液)(601.1mL、2404.5mmol)で処理し、周囲温度で1時間撹拌した。反応混合物を、固体NaHCOを用いてpH約8に中和し、次いで、チオ硫酸ナトリウム(3.0M水溶液)(801.5mL、2404.5mmol)で処理し、周囲温度で30分間撹拌した。反応混合物を抽出漏斗に移し、フラスコをMTBEおよび水ですすぎ、次いで、層を分離した。有機層をブライン(1×)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードアニリン(186.49g、100%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 6.97-6.93 (m, 1H), 6.81-6.77 (m, 1H), 5.41 (br-s, 2H).
【0250】
ステップ2:ビス-tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメートの調製。3Lの1口フラスコ内で、2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードアニリン(186.49g、686.99mmol)をTHF(2.0L)に溶解し、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(8.39g、68.7mmol)で処理し、続いて、ジ-tert-ブチル52eカルボネート(314.87g、1442.7mmol)を添加し、次いで、周囲温度で1時間、空気に開放してVigreuxカラムを用いて撹拌した。反応混合物を濃縮乾固した。得られた残渣をDCM(1L)に溶解し、ヘキサン(1L)で希釈し、15分間撹拌し、次いで、追加の1:1のDCM:ヘキサン(2.5L)を溶離液として小さなシリカプラグに通した。濾液を濃縮乾固し、得られた固体をヘプタン(500mL)に懸濁し、80℃で30分間撹拌した。混合物を氷浴内で0℃に冷却し、濾過し、追加の冷却した(0℃)ヘプタン(500mL)ですすぎ、明るい淡褐色の固体を収集して、ビス-tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメート(145.5g、45%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 7.55-7.51 (m, 1H), 7.32-7.28 (m, 1H), 1.33 (s, 18H).
【0251】
ステップ3:tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメートの調製。ビス-tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメート(331.7g、703.2mmol)をMeOH(1.8L)に溶解し、炭酸カリウム(106.9g、773.5mmol)で処理し、次いで、1時間、65℃に加熱した。反応混合物を周囲温度に冷却し、水6.0Lに注ぎ、30分間撹拌した。混合物を濾過し、追加の水(1000mL)ですすぎ、明るい淡褐色の固体を収集して、tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメート(258.0g、99%)を得た。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.82 (s, 1H), 7.53-7.50 (m, 1H), 7.24-7.20 (m, 1H), 1.42 (s, 9H).
【0252】
tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)((3-フルオロアゼチジン-1-イル)スルホニル)カルバメートの調製
【0253】
【化4】
0℃のテトラヒドロフラン(1790μL)中のtert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)カルバメート(中間体P9)(100mg、0.269mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中60%、16mg、0.40mmol)を添加し、10分間撹拌した。3-フルオロアゼチジン-1-スルホニルクロリド(70mg、0.40mmol)を添加し、溶液を5時間、50℃に加熱した。次いで、溶液をジクロロメタンと飽和NaHCO溶液との間で分配し、次いで、有機層をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(5~95%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)((3-フルオロアゼチジン-1-イル)スルホニル)カルバメート(60mg、収率44%)を得た。
【0254】
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドの調製
【0255】
【化5】
トルエン(2860μL)中の6-アミノ-5-クロロ-3-メチルキナゾリン-4(3H)-オン(中間体P5;90mg、0.42mmol)、tert-ブチル(2-クロロ-4-フルオロ-3-ヨードフェニル)((3-フルオロアゼチジン-1-イル)スルホニル)カルバメート(218mg、0.429mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(39mg、0.042mmol)、キサントホス(62mg、0.10mmol)、および炭酸セシウム(279mg、0.858mmol)の溶液をアルゴンでスパージングし、密封バイアル内で終夜110℃に加熱した。溶液を、Celite(登録商標)を通して濾過し、濃縮し、残渣をDCM1mLおよびTFA1mL中で1時間撹拌した。溶液を濃縮し、逆相クロマトグラフィー(5~95%MeCN/水、0.1%TFA)により精製し、生成物をDCMと飽和NaHCOとの間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(78mg、収率37%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.94 (s, 1H), 7.56 - 7.52 (m, 1H), 7.51
(d, 1H), 7.19 - 7.14 (t, 1H), 6.99 - 6.95 (m, 1H), 6.72 (s, br, 1H), 6.47 (s,
br, 1H), 5.35 - 5.15 (m, 1H), 4.25 - 4.10 (m, 4H), 3.57 (s, 3H); MS (apci, m/z)
= 490.1, 492.1 (M+H).このステップから単離された物質をPXRDにより分析した。図5に示されているPXRDパターンにより、その物質が非晶質であることが確認された。これに基づき、その物質を非晶質化合物1、形態2として指定した。
【0256】
(実施例2)
非晶質N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態2の別の調製例
粗製のN-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドを2-プロパノール(5mL/g)および水(5mL/g)に入れた。この混合物に、1N NaOH(1.0当量)を添加して、pHを12より上に上げた。完全に溶解したら、溶液を、汚れのないフィルターに通して、透明な溶液を得た。pHを、1N PXRDを添加することにより4未満に迅速に調整すると、非晶質化合物1、形態2が沈殿した。固体を濾過により単離し、水で洗浄した。
【0257】
(実施例3)
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、非晶質形態2の別の調製例
この実施例では、溶融クエンチ法を使用して非晶質化合物1、形態2を調製する方法を記載する。N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(実施例1に従って調製)を、DSC機器内でその場で2℃/分の加熱速度で、210℃に加熱し、次いで、60℃/分で、-20℃に急速冷却し、周囲温度にして、非晶質化合物1、形態2を得た。第2の加熱において溶融ピークがなく、冷却サイクルにおいて再結晶化ピークがないことが、周囲温度に戻した場合に得られた物質が非晶質であることを証拠付けた。
【0258】
(実施例4)
結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1の調製例および特徴づけ
粗製のN-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(実施例1に従って調製;42.92グラム)をイソプロパノール(171mL)および水(171mL)の混合物に装入した。1M水酸化ナトリウム水溶液(96mL、1.0当量)を添加することにより、完全な溶解を達成して、pHを12.9に調整した。溶液を、汚れのないフィルター(0.45μmナイロンフィルター)を通して濾過し、次いで、50℃に加温した。所望の物質を、1M塩酸水溶液(84mL、1.0当量)を滴下で2時間かけて徐々に添加し、pH終点をpH=4~6に制御することにより結晶化した。得られたスラリーを0.3℃/分で50℃から20℃へと冷却し、次いで、20℃で少なくとも2時間、粒状化した。固体を濾取し、イソプロパノールおよび水の50%混合物(172mL)で洗浄し、続いて、水洗浄(172ml)した。単離された生成物を真空下で窒素フラッシュしながら乾燥して、結晶無水N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド、形態1(「結晶無水化合物1、形態1」)41.57gを得た。
【0259】
結晶無水化合物1、形態1のPXRDパターンは、図1に示されている。結晶無水化合物1、形態1での全PXRDピークリストおよび相対強度データは表1に提示されている。特徴的なPXRDピークは、8.3、11.5および16.1度2シータ(±0.2度2シータ)のピークと同定した。結晶無水化合物1、形態1の19F固体NMRスペクトルは図2に示されている。19F固体NMRピークは表2に提示されている。結晶無水化合物1、形態1の13C固体NMRは、図3に示されている。13C固体NMRピークの全リストは、表3Aに示されており、特性ピークは表3Bに示されている。結晶無水化合物1、形態1のラマンスペクトルは図4に示されている。結晶無水化合物1、形態1での全ラマンピークリストは表4Aに示されており、特性ピークは表4Bに列挙されている。
【0260】
(実施例5)
物理的安定性分析
5℃または70℃/相対湿度(RH)75%のいずれかで8日間、貯蔵された試料でのPXRDを使用して、結晶無水化合物1、形態1、および非晶質化合物1、形態2の物理的安定性を評価した。表5は、形態1と非晶質形態との間の違いを詳述している。
【0261】
【表9】
【0262】
データは、70℃/相対湿度(RH)75%で8日間保管して、試験された促進安定性条件下で、結晶無水化合物1、形態1はこれらの条件下で安定していたが、非晶質化合物1、形態2は結晶無水化合物1、形態1へと結晶化したことを実証している。
【0263】
(実施例7)
吸湿性データ
水吸着および脱着をDVS-Resolutionで分析した。微量てんびんを100mg標準分銅で1か月ごとに較正した。化合物約8mgを試料パンに加え、DVS-ResolutionのチャンバーAの内部に入れた。相対湿度パーセントを1時間、0%に保持し、10%刻みで90%まで上昇させ、次いで、10%刻みで0%に徐々に戻した。0.001%未満のdm/dt変化が観察され、30分の最小、または120分の最大ステップ時間が達成されたときに、ステップが完了したと判断した。DVS分析の後に残った粉末物質をPXRDにより分析して、回折パターンの変化が観察されるかどうかを決定した。データは表6に示されている。この分析に基づき、結晶無水化合物1、形態1は吸湿性ではなく、非晶質化合物1、形態2は吸湿性であり、25℃およびRH90%で重量がおよそ3.6%増加した。
【0264】
【表10】
生物学的実施例
【0265】
(実施例A1)
BRAF V600E酵素アッセイ
B-Raf用に、B-Rafに結合した蛍光タグ付き「トレーサー」の量を、同じくB-Rafに結合した抗タグEu標識抗体からのTR-FRETによってモニターする、競合置換アッセイを構築した。FLAGタグ付き全長B-Raf(V600E)について、アッセイ混合物は、25mMのKHEPES、pH7.4、10mMのMgCl、0.01%のTritonX-100、1mMのDTT、(化合物からの)2%のDMSO、50nMのTracer1710(ThermoFisher、PR9176A)、0.5nMのEu抗FLAG(M2)-クリプテートAb(Cisbio、61FG2KLB)、および5nMのN末端FLAGタグ付き全長B-Raf(V600E)(Origene Technologies、TP700031)からなるものであった。N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミドを、最高用量を10μMとした3倍系列希釈プロトコルを使用して設けられる11段階の投入範囲すべてについて、DMSOに希釈した。アッセイは、処理されていない低体積の白色384ウェルポリスチレンマイクロタイタープレート(Costar4512)において、最終体積を12μLとして実施した。低対照ウェルに、対照としての1μMの強力なB-Raf阻害薬を含めた。検定物を周囲温度(通常は22℃)で60分間インキュベートし、次いで、PerkinElmer EnVisionマイクロプレートリーダーにおいて、標準のTRF設定(λEx=320nm、λEm=615および665nm)を使用して読み取った。比率のカウント(665nm/615nm)を、次の式を使用して対照に対するパーセント(POC)に変換した:
【0266】
【数1】
[式中、
【0267】
【数2】
【0268】
次いで、4パラメーターロジスティックモデルを、各化合物についてのPOCデータに適合させた。その適合からIC50を推定したが、IC50は、最適な曲線が50POCを横切る化合物の濃度であると定義され、表Aに示す。
【0269】
(実施例A2)
A375およびH1755細胞における細胞ホスホ-ERK阻害アッセイ
この実施例では、ホスホル-ERKを阻害するN-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(化合物1)の能力を試験するために使用される2つの細胞アッセイを記載する。
【0270】
A375およびH1755細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)から入手した。A375細胞は、10%FBSを含有するDMEM成長培地中で維持した。H1755細胞は、10%FBSを含有するRPMI成長培地中で維持した。
【0271】
細胞を標準的なプロトコルに従って採取し、カウントし、平底96ウェル組織培養プレート(Costar No.3599)に、A375細胞では2.5×10細胞/ウェルで、かつH1755細胞では1.5×10細胞/ウェルで、10%FBSを含有する成長培地100μL/ウェルで播種した。37℃で、5%COで終夜インキュベートした後に、細胞を2時間、37℃、5%COで、9ポイントの1:3.33倍系列希釈として調製された化合物で、66pM~10μMの範囲の最終化合物濃度および0.25%の一定のDMSO濃度で処理した。対照ウェルは、0.25%DMSOのみ(非阻害対照)または10μMビニメチニブ(完全阻害対照)のいずれかを含有した。リン酸化ERKのレベルを、In Cell Westernプロトコルを使用して決定する:化合物インキュベーションの後に、成長培地を廃棄し、細胞を20分間、室温で、PBS中0.4%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を10分間、室温で、100%メタノールで透過処理した。プレートを0.05%Tween-20を含有するPBSで洗浄し、1時間、室温で、LI-CORブロッキング緩衝液(LI-COR Biosciences;Cat#927-40000)でブロッキングした。次いで、プレートを2時間、室温で、0.05%Tween-20を含有するLI-CORブロッキング緩衝液中の抗ホスホ-ERK1/2(Thr202/Tyr204)(Cell Signaling;カタログNo.9101)の1:400希釈液および抗GAPDH(Millipore;カタログNo.MAB374)の1:1000希釈液50μLと共にインキュベートした。プレートを0.05%Tween-20を含有するPBSで洗浄し、次いで、室温で1時間、0.05%Tween-20を含有するLI-CORブロッキング緩衝液中の抗ウサギAlexaFluor 680(Life Technologies;カタログNo.A21109)の1:1000希釈液および抗マウスIRDye 800CW(LI-COR;カタログNo.926-32210)の1:1000希釈液50μLと共にインキュベートした。プレートをOdyssey CLx赤外スキャナでの読取りにより分析した。各ウェルについて、ホスホ-ERKシグナルをGAPDHシグナルに対して正規化し、次の式を使用してPOCに変換した:
【0272】
【数3】
【0273】
【数4】
【0274】
次いで、IC50値を、XLfitソフトウェアの4パラメーターフィットを使用して計算し、表A1に示す。
【0275】
【表11】
【0276】
(実施例A3)
細胞ホスホ-ERK阻害アッセイ
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(化合物1)をホスホ-ERKアッセイで、2つの変異体BRAFクラスIII細胞系:NCI-H1666(BRAFG466V)およびWM3629細胞(BRAFD594G/NRASG12D)において評価した。NCI-H1666細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)から入手し、WM3629細胞は、Rockland Immunochemicals(Limerick、PA)から入手した。細胞を、10%FBSを含有するRPMI成長培地中で維持した。
【0277】
細胞を標準的なプロトコルに従って採取し、カウントし、平底96ウェル組織培養プレート(Costar No.3599)に、2.5×10細胞/ウェルで、10%FBSを含有する成長培地100μL/ウェルで播種した。37℃で、5%COで終夜インキュベートした後に、細胞を1時間、37℃、5%COで、9ポイントの1:3.33倍系列希釈として調製された阻害剤で、66pM~10μMの範囲の最終化合物濃度および0.25%の一定のDMSO濃度で処理した。対照ウェルは、0.25%DMSOのみ(非阻害対照)または10μMビニメチニブ(完全阻害対照)のいずれかを含有した。リン酸化ERKのレベルを、In Cell Westernプロトコルを使用して決定した:化合物インキュベーションの後に、成長培地を廃棄し、細胞を20分間、室温で、PBS中0.4%ホルムアルデヒドで固定した。細胞を10分間、室温で、100%メタノールで透過処理した。プレートを0.05%Tween-20を含有するPBSで洗浄し、1時間、室温で、LI-CORブロッキング緩衝液(LI-COR Biosciences;Cat# 927-40000)でブロッキングした。次いで、プレートを2時間、室温で、50μLの、0.05%Tween-20を含有するLI-CORブロッキング緩衝液中の抗ホスホ-ERK1/2(Thr202/Tyr204)(Cell Signaling;Cat#9101)の1:400希釈液および抗GAPDH(Millipore;Cat#MAB374)の1:1000希釈液と共にインキュベートした。プレートを0.05%Tween-20を含有するPBSで洗浄し、次いで、室温で1時間、0.05%Tween-20を含有するLI-CORブロッキング緩衝液中の抗ウサギAlexaFluor 680(Life Technologies;カタログNo.A21109)の1:1000希釈液および抗マウスIRDye 800CW(LI-COR;カタログNo.926-32210)の1:1000希釈液50μLと共にインキュベートした。プレートをOdyssey CLx赤外スキャナでの読取りにより分析した。各ウェルについて、ホスホ-ERKシグナルをGAPDHシグナルに対して正規化し、次の式を使用してPOCに変換した:
【0278】
【数5】
[式中、
【0279】
【数6】
]
【0280】
次いで、IC50値を、XLfitソフトウェアの4パラメーターフィットを使用して計算し、表A2に示す。
【0281】
(実施例A4)
増殖アッセイ
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(化合物1)を増殖アッセイで、2つの変異体BRAFクラスIII細胞系:NCI-H1666(BRAFG466V)およびWM3629細胞(BRAFD594G/NRASG12D)において評価した。NCI-H1666細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)から入手し、WM3629細胞は、Rockland Immunochemicals(Limerick、PA)から入手した。細胞を、10%FBSを含有するRPMI成長培地中で維持した。
【0282】
細胞を標準的なプロトコルに従って採取し、カウントし、平底96ウェル組織培養プレート(Costar#3599)に、2000~5000細胞/ウェルで、10%FBSを含有する成長培地100μL/ウェルで播種した。細胞を37℃で、5%COで終夜インキュベートし、次いで、9ポイントの1:3.33倍系列希釈として調製された阻害薬で、66pM~10μMの範囲の最終化合物濃度および0.25%の一定のDMSO濃度で処理した。対照ウェルは、0.25%DMSOのみ:を含有した。37℃、5%COでの3~5日間のインキュベーションの後に、CellTiter-Glo(登録商標)試薬(Promega)100μLを各ウェルに添加し、15分間、室温でインキュベートすることにより、細胞生存率を決定した。化合物処理の時点で、CellTiter-Glo(登録商標)アッセイをDMSO対照ウェルで実行することにより、「0日目」対照を決定した(「0日目」対照=0POC)。ルミネセンスをCytation 5プレートリーダー(BioTek)で測定し、値を、次の式を使用してPOCに変換した:
【0283】
【数7】
【0284】
[式中、
【数8】
]
【0285】
IC50値を、XLfitソフトウェアの4パラメーターフィットを使用して計算し、表A2に示す。
【0286】
【表12】
【0287】
(実施例B)
MDR 1LLC-PK1およびBCRP MDCKII透過性アッセイ
LLC-PK1およびMDR1形質移入LLC-PK1の両方の細胞を、継代時限を7日に延ばすために、継代培地がウシ胎児血清を2%しか含有しなかったことを除き、製造者の推奨に従って培養および播種した。
【0288】
BCRP形質移入MDCKII細胞を、製造者の推奨に従って培養および播種した。試験化合物の流出値へのBCRPの寄与を見極めるために、BCRP特異的阻害薬であるKO143を0.3μMの濃度で用いるおよび用いないアッセイ条件を含めた。
【0289】
陽性と陰性両方の対照を使用して、アッセイにおけるP-gpまたはBCRP流出の相関関係を評価した。アッセイ対照および試験物用のDMSO保存溶液を調製して、最終試験濃度を、それぞれ、10μMおよび1μMとした。検定物中の最終有機物濃度は、1%であった。LLC-PK1またはMDCKII細胞単層完全性をモニターするために、すべての投入溶液が、10μMのルシファーイエローを含有した。
【0290】
先端から基底への定量(AからB)については、個々のtranswellの先端側に、75μLの輸送緩衝液中試験物、N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(化合物1)を個々のトランスウェルの先端側に加え、各ウェルに、化合物またはルシファーイエローなしの250μLの基底培地を加えた。基底から先端への定量(BからA)については、各ウェルに、250μLの輸送緩衝液中試験物を加え、各transwellに、化合物またはルシファーイエローなしの75μLの輸送緩衝液を加えた。試験はすべて、三通りに実施し、化合物を、先端から基底および基底から先端の両方の輸送について試験した。プレートを、50rpmとしたLab-Line Instruments Titerオービタルシェーカー(VWR、ペンシルベニア州ウェストチェスター)上にて、37℃、5%COで2時間インキュベートした。すべての培養プレートをインキュベーターから移し、各ウェルの先端および基底部分から50μLの培地を除去し、2:1(v/v)のアセトニトリル(アセトニトリル):HO中1μMのラベタロール150μLに加えた。
【0291】
Molecular Devices(カリフォルニア州サニーヴェール)Gemini蛍光光度計を使用してプレートを読み取って、425/535nmの励起/発光波長でルシファーイエロー濃度を評価した。そうした値は、MDR1形質移入LLC-PK1またはBCRP形質移入MDCKII細胞単層を介した先端から基底への流動については2%未満、基底から先端への流動については5%未満であると判明したとき、受け入れられた。プレートを密封し、各ウェルの中身をLC-MS/MSによって分析した。化合物濃度は、化合物のピーク面積の内部標準(ラベタロール)に対する比率を、投入溶液と比較することから求めた。
【0292】
LC-MS分析
LC-MS/MSシステムは、HTS-PALオートサンプラー(Leap Technologies、ノースカロライナ州Carrboro)、HP1200 HPLC(Agilent、カリフォルニア州パロアルト)、およびMDS Sciex4000Q Trapシステム(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティー)で構成された。分析物および内標準のクロマトグラフィー分離は、C18カラム(Kinetics(登録商標)、50×300mm、粒径2.6μm、Phenomenex、カリフォルニア州トーランス)を、移動相A(1%のイソプロピルアルコールおよび0.1%のギ酸を含有する水)とB(アセトニトリル中0.1%のギ酸)を使用する勾配条件と組み合わせて使用して、室温において実現された。単一注入についての合計実施時間は、再平衡化を含めて、1.2分であった。分析物の質量分析検出は、イオンスプレーポジティブモードを使用して実施した。各化合物に特有の遷移(各試験物については、前駆体イオンおよび選択された生成物イオンのプロトン化、内標準であるラベタロールについては、m/z329からm/z162)の多重反応モニタリング(MRM)によって、分析物反応を測定した。
【0293】
透過係数(Papp)は、次式:
app=[((C*V*(1×10))/(t*0.12cm*C)]
から算出される。ここで、C、V、t、およびCは、それぞれ、検出された濃度(μM)、投入側の体積(mL)、インキュベート時間(s)、および初期投入濃度(μM)である。Pappの算出を各実験について行い、次いで平均した。本アッセイで試験した場合の化合物1についての透過係数は44×10-6cm/sであった。本アッセイでは、透過性が8×10-6cm/秒より高い場合、化合物が高い透過性を有すると定めている。
【0294】
流出比を、平均の先端から基底(A-B)Pappデータと基底から先端(B-A)Pappデータから、次の式:
流出比=Papp(B-A)/Papp(A-B)
を使用して計算した。
【0295】
本アッセイで試験した場合のN-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(化合物1)での流出比は、2.1(MDR1)および4.2(BCRP)であった。
【0296】
(実施例C)
PK(遊離脳対遊離血漿比)(マウス)
N-(2-クロロ-3-((5-クロロ-3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)アミノ)-4-フルオロフェニル)-3-フルオロアゼチジン-1-スルホンアミド(化合物1)がマウスにおけるBBBに侵入し得るかを、雄CD-1マウスにおいて、非結合脳対非結合血漿(遊離脳対遊離血漿とも呼ばれる)濃度比を評価することにより決定した。
【0297】
経口マウスPK投与からの脳化合物レベルを、典型的なサンプル採取時間を10mg/kgでの経口ガバージュ投与から2、4、8、12、および24時間後として生成した。脳サンプルは、分析前には-20±5℃で保管した。アセトニトリルでタンパク質を沈殿させた後、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)によって、マウス脳ホモジネート中の化合物1の濃度を求めた。0.5~10,000ng/mLの範囲にかけての12点の検量線を二通りに準備した。400μg/mLの化合物1のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を、100%のDMSOに(3倍)段階希釈し、次いで、各標準溶液2.5μLを、未処置雄CD-1マウス脳ホモジネート100μLに加えた。標準曲線における抜き取りを模倣するために、すべての試験サンプルに2.5μLのDMSOを加えた。検量線作成と試験の両方の脳ホモジネートサンプルに、IS(1μg/mLの構造類似体)10μLをスパイク添加した。脳ホモジネートは、MP Fast Prep-24(登録商標)を使用し、ビードビーター管を用いて6m/sで1分間均質化した後の各脳サンプルに、4:1の水:MeOH 0.75mLを加えることにより生成した。300μLのアセトニトリルを加えることにより、100μLの脳ホモジネートからタンパク質を沈殿させた。サンプルを5分間ボルテックス混合し、AllegraX-12R遠心機(Beckman Coulter、カリフォルニア州フラートン;SX4750Aローター)において、4℃にて、およそ1,500×gで15分間スピンにかけた。各上清の一定分量100μLを、550μLのPersonal Pipettor(Apricot Designs、カリフォルニア州モンロヴィア)で96ウェルプレートに移し、HPLCグレード水で1:1希釈した。そうして出来上がるプレートをアルミニウムで密閉し、LC-MS/MS分析に備えた。
【0298】
脳において測定された化合物1の濃度を、血漿において測定された化合物の濃度で割ったものを使用して、脳対血漿比を算出した。脳対血漿比は、常に、単一の動物および時点から生成した。遊離脳対遊離血漿比は、次式:(B/P)*(Bfu/Pfu)を使用して、脳対血漿比に、in vitro脳ホモジネート遊離画分をin vitro血漿遊離画分で割ったものを掛けることにより算出した。本アッセイで試験した場合の化合物1の遊離脳対遊離血漿比は0.12~0.17であった。
【0299】
本明細書に記載のものの変形形態、変更形態、および他の実施態様が、本教示の趣旨および必須の特徴から逸脱することなく、当業者には想起されるであろう。したがって、本教示の範囲は、先行する例示的な説明によってではなく、むしろ下記の特許請求の範囲により定義されるべきであり、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲内に該当するすべての変化が、その中に包含されることが意図されている。
【0300】
これに限定されないが、本明細書において記載されている、または参照されている特許、特許出願、書籍、技術書、業者向け刊行物および雑誌論文を含む印刷された刊行物のそれぞれが、その全体で、あらゆる目的のために、参照により本明細書に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】