(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】局所的な熱及び/又は液体移送が促進されるエアロゾル発生デバイス
(51)【国際特許分類】
A24F 40/46 20200101AFI20241128BHJP
A24F 40/42 20200101ALI20241128BHJP
A24F 40/44 20200101ALI20241128BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/42
A24F40/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533847
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022085420
(87)【国際公開番号】W WO2023110760
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】マッケボイ,ヤッコ
(72)【発明者】
【氏名】ルンゲンシュミート,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 円
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA05
4B162AA07
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB12
4B162AB14
4B162AC12
4B162AC17
4B162AC18
4B162AC22
(57)【要約】
本発明は、固体エアロゾル形成材料(20)を貯蔵するための第1の区画(12)と、液体エアロゾル形成基材(21)を貯蔵するための第2の区画(13)とを含むカートリッジ(10)であって、液体エアロゾル形成基材(21)は、液体エアロゾル形成材料と、液体エアロゾル形成材料を保持するように構成された液体保持構造とを含む、カートリッジ(10)と共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイス(30)に関する。デバイス(30)は、- 第2の区画(13)を含むカートリッジ(10)の一部を受けるように構成されたキャビティを画定するデバイス本体(31)、- 液体エアロゾル形成材料を第2の区画(13)から第1の区画(12)に蒸発させるように構成された加熱要素、- カートリッジ(10)の第2の区画(13)の内部に励起波を発生させて、第2の区画(13)内での熱及び/又は液体移送を促進するように構成された振動要素を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体エアロゾル形成材料(20)を貯蔵するための第1の区画(12;42)と、液体エアロゾル形成基材(21)を貯蔵するための第2の区画(13;43)とを含むカートリッジ(10;40;60;80)であって、前記液体エアロゾル形成基材(21)は、液体エアロゾル形成材料(27)と、前記液体エアロゾル形成材料(27)を保持するように構成された液体保持構造(25)とを含む、カートリッジ(10;40;60;80)と共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)であって、
- 前記第2の区画(13;43)を含む前記カートリッジ(10;40;60;80)の少なくとも一部を受けるように構成されたキャビティ(35)を画定するデバイス本体(31;51)、
- 前記カートリッジ(10;40;60;80)の前記一部が前記キャビティ(35)に受けられ、及びエアロゾルを発生させるように前記エアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)が動作されると、前記液体エアロゾル形成材料(27)を前記第2の区画(13;43)から前記第1の区画(12;42)に蒸発させるように構成された加熱要素、
- 前記カートリッジ(10;40;60;80)の前記一部が前記キャビティ(35)に受けられ、及びエアロゾルを発生させるように前記エアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)が動作されると、前記カートリッジ(10;40;60;80)の前記第2の区画(13;43)の内部に励起波を発生させて、前記第2の区画(13;43)内での熱及び/又は液体移送を促進するように構成された振動要素
を含むエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)。
【請求項2】
前記励起波は、超低周波、超音波又は音波である、請求項1に記載のエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)。
【請求項3】
前記振動要素は、0.5Hz~60kHzに含まれる励起周波数を有する前記励起波を発生させるように構成される、請求項1又は2に記載のエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)。
【請求項4】
前記液体保持構造(25)は、前記液体エアロゾル形成材料(27)を粒子(26)の間隙及び/又はその表面に保持するように構成される、疎に詰められた固体粒子(26)を含み、
好ましくは、前記励起波は、前記第2の区画(13;43)に収容された固体粒子(26)の構造再編成を引き起こすのに十分に大きい振幅を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)。
【請求項5】
前記振動要素及び前記加熱要素は、同じ突出要素(32)に組み込まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(30)。
【請求項6】
前記振動要素は、前記カートリッジ(40;60;80)の前記第2の区画(13;43)に入り込むように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(30;70;90)。
【請求項7】
前記振動要素及び前記加熱要素は、加熱ブレードを形成する、請求項5又は6に記載のエアロゾル発生デバイス(30)。
【請求項8】
- 前記キャビティ(35)は、内面によって境界を定められ、
- 前記振動要素は、前記内面に隣接して配置され、且つ前記加熱要素から隔てられる、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(50;70;90)。
【請求項9】
前記振動要素は、振動子(57)である、請求項8に記載のエアロゾル発生デバイス(50;70;90)。
【請求項10】
エアロゾル発生システム(1;2;3;4)であって、
- 固体エアロゾル形成材料(20)を貯蔵するための第1の区画(12;42)と、液体エアロゾル形成基材(21)を貯蔵するための第2の区画(13;43)とを含むカートリッジ(10;40;60;80)であって、前記液体エアロゾル形成基材(21)は、液体エアロゾル形成材料(27)と、前記液体エアロゾル形成材料(27)を保持するように構成された液体保持構造(25)とを含む、カートリッジ(10;40;60;80)、
- 前記カートリッジ(10;40;60;80)と共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)であって、請求項1~9のいずれか一項に記載のものであるエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)
を含むエアロゾル発生システム(1;2;3;4)。
【請求項11】
前記液体保持構造(25)は、前記液体エアロゾル形成材料(27)を粒子(26)の間隙及び/又はその表面に保持するように構成される、疎に詰められた固体粒子(26)を含み、
好ましくは、固体粒子(26)の大きさは、最大寸法で0.05mm~2mmに含まれ、及び/又は前記固体粒子(26)は、10kg/m
3~20000kg/m
3、好ましくは1000kg/m
3~4000kg/m
3の密度を有する、請求項10に記載のエアロゾル発生システム(1;2;3;4)。
【請求項12】
前記固体粒子(26)は、
- シリカゲル、
- エアログラファイト、
- タングステン、
- セラミック、
- シリカ、
- ガラス、
- パーライト、
- 金属、例えばAl、Fe、軟鋼など、
- タバコ又はタバコ由来材料
を含む群において選択される1つ又はいくつかの要素で作られる、請求項11に記載のエアロゾル発生システム(1;2;3;4)。
【請求項13】
- 第2の区画は、サセプタ(44)を含み、
- 前記エアロゾル発生デバイス(50;70;90)は、前記カートリッジ(40;60;80)の前記第2の区画(13;43)に含まれる前記液体エアロゾル形成基材(20)を前記サセプタ(44)との電磁相互作用によって加熱するように構成された誘導加熱システムを更に含む、請求項10~12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム(2;3;4)。
【請求項14】
前記サセプタ(44)は、前記振動要素によって形成された前記励起波の少なくとも一部を吸収することにより、前記第2の区画(13;43)内に振動を発生させるように構成される、請求項11と組み合わされた請求項13に記載のエアロゾル発生システム(2;3;4)。
【請求項15】
前記サセプタ(44)は、音響メタマテリアルの形態で作られる、請求項14に記載のエアロゾル発生システム(2;3;4)。
【請求項16】
エアロゾル発生システムを動作させる方法であって、
- 固体エアロゾル形成材料(20)を貯蔵するための第1の区画(12;42)と、液体エアロゾル形成基材(21)を貯蔵するための第2の区画(13;43)とを含むカートリッジ(10;40;60;80)であって、前記液体エアロゾル形成基材(21)は、液体エアロゾル形成材料(27)と、前記液体エアロゾル形成材料(27)を保持するように構成された液体保持構造(25)とを含む、カートリッジ(10;40;60;80)を提供するステップ、
- カートリッジ(10;40;60;80)と共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)であって、請求項1~9のいずれか一項に記載のものであり、マウスピース空気出口を更に含むエアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)を提供するステップ、
- 前記第2の区画(13;43)を含む前記カートリッジ(10;40;60;80)の少なくとも一部を受けるように構成された前記エアロゾル発生デバイス(30;50;70;90)の前記キャビティ(35)に前記カートリッジを挿入するステップ、
- 熱を発生させて、前記第2の区画(13;43)から前記液体エアロゾル形成材料(27)を蒸発させるように前記加熱要素を、且つ前記カートリッジ(10;40;60;80)の前記第2の区画(13;43)の内部で励起波を発生させて、前記第2の区画(13;43)内での熱及び/又は液体移送を促進するように前記振動要素を同時に動作させるステップ、
- 前記第2の区画(13;43)内に貯蔵された前記液体エアロゾル形成材料(27)から発生したエアロゾル蒸気を前記第1の区画(12;42)に送出するステップ、
- 前記液体エアロゾル発生材料から発生した前記エアロゾル蒸気を、前記第1の区画(12;42)内の前記固体エアロゾル発生材料を通して前記マウスピース空気出口(19)に送出するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的な熱及び/又は液体移送が促進されるエアロゾル発生デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
異なるタイプのエアロゾル発生デバイスが当技術分野で既に知られている。一般に、そのようなデバイスは、例えば、液体及び/又は固体を含み得る、エアロゾル発生材料とも呼ばれるエアロゾル形成前駆体を貯蔵するための貯蔵部を含む。貯蔵部は、取り外し可能なカートリッジに組み込まれ得る。加熱システムは、エアロゾルを発生させるために前記前駆体を加熱するように配置される1つ以上の電気起動抵抗性加熱要素から形成される。エアロゾルは、デバイスの入口と出口との間に延在する流路内に放出される。出口は、エアロゾルを送出するためにユーザが吸入するマウスピースとして配置され得る。
【0003】
いくつかの既知のカートリッジでは、カートリッジは、液体及び固体エアロゾル発生材料を同じ貯蔵部分内で混合することを避けるために、これらのエアロゾル発生材料を第1の部分と第2の部分に別個に貯蔵する。そのようなカートリッジでは、液体エアロゾル形成材料を貯蔵するための区画は、典型的には、多孔質ガラス若しくはセラミック、発泡体、スポンジ又は繊維状ウィッキング材料である多孔質材料などの液体保持要素を含む。同時に、液体エアロゾル形成材料を貯蔵するための区画は、液体エアロゾル発生材料から発生したエアロゾル蒸気が固体エアロゾル発生材料を通してマウスピース空気出口に送出されるように、カートリッジ内の固体エアロゾル形成材料を貯蔵するための区画の上流に配置される。カートリッジは、液体エアロゾル形成材料を加熱するための加熱要素を含み得る。加熱要素は、液体保持要素に組み込まれ得る。代わりに、加熱要素は、エアロゾル発生システムの再使用可能な部分に取り付けられた別個の着脱可能な要素であり得、使用中に液体保持要素に挿入され得る。
【0004】
そのような場合、液体保持要素は、デバイス内にカートリッジが挿入されると、ヒータを受けるように構成されたキャビティを更に含み、これにより製造工程が複雑になり得る。多孔質材料は、応力下で破断する可能性があるため、多孔質材料におけるキャビティの製造は、簡単でない場合がある。製造工程は、エアロゾル発生デバイスの使用中に安全上の懸念を生じさせ得る残留粒子も生成し得る。多孔質材料の脆い性質は、液体保持要素の設計を更に制限し得る。
【0005】
その上、かかる既知のカートリッジには、液体保持要素内の液体流量を制御する上で限界がある。例えば、液体移送は、設計及び材料(細孔径、多孔性、表面張力など)のみに依存するため、従来の多孔質構造内の液体の流れを変更することができない。その上、低すぎるウィッキング率は、吸煙の乾燥をもたらし得るが、高すぎるウィッキング率は、ユーザ体験を劣化させる望ましくない漏出の原因となり得る。
【0006】
加熱要素から液体への熱伝達を改善することも望ましく、熱伝達の改善により、蒸発プロセスがより効率的になり、最終的にデバイス全体のエネルギー効率が改善する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、上述の問題を解決するエアロゾル発生デバイスを提供することである。詳細には、本発明によるデバイスは、関連するカートリッジを通した熱及び/又は液体移送を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明は、固体エアロゾル形成材料を貯蔵するための第1の区画と、液体エアロゾル形成基材を貯蔵するための第2の区画とを含むカートリッジであって、前記液体エアロゾル形成基材は、液体エアロゾル形成材料と、液体エアロゾル形成材料を保持するように構成された液体保持構造とを含む、カートリッジと共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイスであって、
- 第2の区画を含むカートリッジの少なくとも一部を受けるように構成されたキャビティを画定するデバイス本体、
- カートリッジの前記一部がキャビティに受けられ、及びエアロゾルを発生させるようにエアロゾル発生デバイスが動作されると、液体エアロゾル形成材料を第2の区画から第1の区画に蒸発させるように構成された加熱要素、
- カートリッジの前記一部がキャビティに受けられ、及びエアロゾルを発生させるようにエアロゾル発生デバイスが動作されると、カートリッジの第2の区画の内部に励起波を発生させて、第2の区画内での熱及び/又は液体移送を促進するように構成された振動要素
を含むエアロゾル発生デバイスに関する。
【0009】
これらの特徴を利用して、本発明によるデバイスは、振動要素が励起波を発生させておらず、且つ/又は加熱要素が作動されていないとき、本質的に毛管圧力を用いて液体エアロゾル形成材料を保持する液体保持構造により、カートリッジからの液漏れが最小限に抑えられることを確実にする。
【0010】
振動要素によって発生した励起波は、加熱要素の表面を振動(又は揺動)させ、これにより加熱要素から液体エアロゾル形成材料への熱伝達が促進される。同時に、励起波によって引き起こされた表面振動は、加熱要素の作動時に加熱要素の蒸発面に向けた液体供給の促進をもたらす強制液体対流を振動面付近の領域に誘発し得る。更に、励起波は、液体粘度の低下を引き起こすことが知られており、これも液体エアロゾル形成材料の流量増加に寄与し得る。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、前記励起波は、超低周波、超音波又は音波である。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、振動要素は、0.5Hz~60kHzに含まれる励起周波数を有する前記励起波を発生させるように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、前記液体保持構造は、粒子の間隙及び/又はその表面に液体エアロゾル形成材料を保持するように構成される、疎に詰められた固体粒子を含み、好ましくは、前記励起波は、第2の区画に収容された固体粒子の構造再編成を引き起こすのに十分に大きい振幅を有する。
【0014】
これらの特徴を実現することにより、液体エアロゾル形成材料が非凝集粒子に吸収されると、固体粒子が互いに凝集して疎に詰められた粒子を形成する。凝集した固体粒子によって画定される毛管チャネルの水力直径は、エアロゾル発生システムの不使用時のカートリッジからの液漏れが最小限に抑えられるように、毛管圧力により液体エアロゾル形成材料を効果的に保持するのに十分に小さい。振動要素が励起波を発生させると、これらの波が個々の粒子を揺動させ、液体保持構造の液化を引き起こし、液体保持構造がより均質な懸濁液のように挙動する。固体粒子によって画定される毛管チャネルの水力直径は、液化の結果として大きくなる傾向があり、液体保持構造内の毛管チャネルを通る液体の流れの促進を可能にする。
【0015】
0.5Hz~60kHzに含まれる励起周波数範囲は、十分な振幅によって液体保持構造の液化が起こることを可能にする。励起周波数及び振幅が励起源への入力電力の変化により調整され、熱伝達の促進及びウィッキング率のリアルタイム制御が行われ得る。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、振動要素及び加熱要素は、同じ突出要素に組み込まれる。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、振動要素は、カートリッジの第2の区画に入り込むように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、振動要素及び加熱要素は、加熱ブレードを形成する。
【0019】
これらの特徴を実現することにより、加熱要素及び振動要素は、同じブレード状要素に組み込まれ得る。この場合、振動要素は、ブレード状要素を直接振動させ、液体エアロゾル形成材料が気化したときに液体エアロゾル形成材料が枯渇し得る特にヒータ表面の近傍で音響流によって誘発される液体対流のより効果的な制御を可能にする。加えて、液体保持構造内での励起波の発生により、保持構造の大部分から、液体エアロゾル形成材料の気化が起こるブレード状要素の表面に向けて液体供給を促す、制御された方式で液体保持構造の液化が促進され得る。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、キャビティは、内面によって境界を定められ、及び振動要素は、内面に隣接して配置され、且つ加熱要素から隔てられる。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、振動要素は、振動子である。
【0022】
これらの機能を実現することにより、振動子などの振動要素は、サセプタを使用する誘導加熱システムなどの別個の加熱要素と組み合わせて使用され得る。振動子によって発生する波は、特に入射波に面するサセプタの表面を最大化することにより、好ましい方法で波がサセプタと相互作用する方向に発生させ得る。これにより、より多くの音響エネルギーをサセプタに伝達することが可能となり、サセプタが振動して液体エアロゾル形成材料の気化効率を高めることができる。
【0023】
本発明は、エアロゾル発生システムであって、
- 固体エアロゾル形成材料を貯蔵するための第1の区画と、液体エアロゾル形成基材を貯蔵するための第2の区画とを含むカートリッジであって、前記液体エアロゾル形成基材は、液体エアロゾル形成材料と、液体エアロゾル形成材料を保持するように構成された液体保持構造とを含む、カートリッジ、
- カートリッジと共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイスであって、先行する請求項のいずれか一項に記載のものであるエアロゾル発生デバイス
を含むエアロゾル発生システムにも関する。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、前記液体保持構造は、粒子の間隙及び/又はその表面に液体エアロゾル形成材料を保持するように構成される、疎に詰められた固体粒子を含み、好ましくは、固体粒子の大きさは、最大寸法で0.05mm~2mmに含まれ、及び/又は固体粒子は、10kg/m3~20000kg/m3、好ましくは1000kg/m3~4000kg/m3の密度を有する。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、固体粒子は、シリカゲル、エアログラファイト、タングステン、セラミック、シリカ、ガラス、パーライト、金属、例えばAl、Fe、軟鋼など、タバコ又はタバコ由来材料を含む群において選択される1つ又はいくつかの要素で作られる。
【0026】
これらの特徴を実現することにより、液体保持構造の液化が改善される。特に、粒子の質量、すなわち粒子の密度及び大きさは、周波数及び強度など、所与の特性を有する励起波にさらされたときに液化が生じるのにどの程度のエネルギーが必要になるかに影響を及ぼす。粒子の密度は、例えば、シリカゲル又はエアログラファイトを用いることによる10kg/m3~タングステン又は他の高密度金属を用いることによる20,000kg/m3で選択され得る。特に、好ましい粒子密度は、例えば、セラミック、シリカ、ガラス又はパーライトなどの材料を用いることにより、1000kg/m3~4000kg/m3で選択される。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、第2の区画は、サセプタを含み、及びエアロゾル発生デバイスは、カートリッジの第2の区画に含まれる液体エアロゾル形成基材を前記サセプタとの電磁相互作用によって加熱するように構成された誘導加熱システムを更に含む。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、サセプタは、振動要素によって形成された励起波の少なくとも一部を吸収することにより、第2の区画内に振動を発生させるように構成される。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、サセプタは、音響メタマテリアルの形態で作られる。
【0030】
本発明は、エアロゾル発生システムを動作させる方法であって、
- 固体エアロゾル形成材料を貯蔵するための第1の区画と、液体エアロゾル形成基材を貯蔵するための第2の区画とを含むカートリッジであって、前記液体エアロゾル形成基材は、液体エアロゾル形成材料と、液体エアロゾル形成材料を保持するように構成された液体保持構造とを含む、カートリッジを提供するステップ、
- カートリッジと共に動作するように構成されたエアロゾル発生デバイスであって、先行する請求項のいずれか一項に記載のものであり、マウスピース空気出口を更に含むエアロゾル発生デバイスを提供するステップ、
- 第2の区画を含むカートリッジの少なくとも一部を受けるように構成されたエアロゾル発生デバイスのキャビティにカートリッジを挿入するステップ、
- 熱を発生させて、第2の区画から液体エアロゾル形成材料を蒸発させるように加熱要素を、且つカートリッジの第2の区画の内部で励起波を発生させて、第2の区画内での熱及び/又は液体移送を促進するように振動要素を同時に動作させるステップ、
- 第2の区画内に貯蔵された液体エアロゾル形成材料から発生したエアロゾル蒸気を第1の区画に送出するステップ、
- 液体エアロゾル発生材料から発生したエアロゾル蒸気を、第1の区画内の固体エアロゾル発生材料を通してマウスピース空気出口に送出するステップ
を含む方法にも関する。
【0031】
本発明及びその利点は、非限定的な例としてのみ挙げられ、添付の図面を参照して記述される以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】エアロゾル発生デバイスに受けられたカートリッジを含む、本発明の第1の実施形態によるエアロゾル発生システムの断面図である。
【
図3】
図1のエアロゾル発生デバイスの断面図である。
【
図4】
図3のエアロゾル発生デバイスと協働する
図2のカートリッジの部分断面図である。
【
図5】エアロゾル発生デバイスに受けられたカートリッジを含む、本発明の第2の実施形態によるエアロゾル発生システムの断面図である。
【
図6】
図5のエアロゾル発生デバイスと協働するカートリッジの部分断面図である。
【
図7】エアロゾル発生デバイスに受かられたカートリッジを含む、本発明の第3の実施形態によるエアロゾル発生システムの部分断面図である。
【
図8】エアロゾル発生デバイスに受けられたカートリッジを含む、本発明の第4の実施形態によるエアロゾル発生システムの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明について説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される構造の詳細に限定されないことを理解されたい。本開示の利益を享受する当業者には、本発明が、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践又は実行され得ることが明らかであろう。
【0034】
本明細書で使用する場合、「エアロゾル発生デバイス」又は「デバイス」という用語は、エアロゾル発生ユニット(例えば、ユーザが吸入するための、例えばマウスピースにおいてデバイスの出口に送出される前に、エアロゾルに凝縮する蒸気を発生させるエアロゾル発生要素)により、蒸気吸入のためのエアロゾルを含むエアロゾルをユーザに送出するための蒸気吸入デバイスを含み得る。デバイスは、可搬であり得る。「可搬」とは、ユーザが保持する場合に使用するためのデバイスを指し得る。デバイスは、(例えば、可変時間長にわたってヒータシステムを作動させることにより)(定量のエアロゾルとは対照的に)可変量のエアロゾルを発生させるように適合され得、その発生は、トリガによって制御することができる。トリガは、蒸気吸入ボタン及び/又は吸入センサなど、ユーザが作動させるものであり得る。吸入センサは、可変量の蒸気が提供されることを可能にするために吸入強度及び吸入継続時間に対して高感度であり得る(これは、タバコ、葉巻又はパイプなどの従来の可燃性喫煙物品の喫煙効果を模倣するためである)。デバイスは、ヒータ及び/又は加熱されたエアロゾル発生物質(エアロゾル前駆体)の温度を特定の目標温度まで駆動し、その後、エアロゾルの効率的な発生を可能にする目標温度で温度を維持するための温度調節制御部を含み得る。
【0035】
本明細書で使用する場合、「エアロゾル」という用語は、固体粒子、液滴、気体の1つ以上として前駆体の懸濁液を含み得る。前記懸濁液は、空気を含む気体の状態であり得る。本明細書のエアロゾルは、一般に、蒸気を指すか又はそれを含み得る。エアロゾルは、前駆体の1つ以上の成分を含み得る。
【0036】
本発明の第1の実施形態の説明
図1は、本発明の第1の実施形態によるカートリッジ10とエアロゾル発生デバイス30とを含むエアロゾル発生システム1を示す。
【0037】
エアロゾル発生デバイス30は、カートリッジ10と共に動作するよう構成される。特に、エアロゾル発生デバイス30は、デバイス長手方向軸線Xに沿って延在するデバイス本体31を含む。デバイス本体31は、カートリッジ10を受け入れるように構成されたキャビティ35を画定する。カートリッジ10及びエアロゾル発生デバイス30は、機能的な関係で着脱可能に係合させることができる。カートリッジ10とエアロゾル発生デバイス30とを接続するために、ねじ係合、圧入係合、干渉嵌合又は磁気係合などを含む様々な機構が使用され得る。エアロゾル発生システム1は、
図1に示すように、カートリッジ10及びエアロゾル発生デバイス30が組み立てられると、実質的にロッド状の形状になり得る。
【0038】
図2は、エアロゾル発生デバイス30から分離されたカートリッジ10を示す。
図1及び
図2で視認できるように、カートリッジ10は、カートリッジ長手方向軸線Yに沿って延在するカートリッジハウジング11と、カートリッジハウジング11の内部容積を第1の区画12と第2の区画13とに分割する通気性分離要素14とを含む。第1の区画12は、第2の区画13の下流に配置される。「下流」及び「上流」は、カートリッジ10から流出する空気流に関して定義される。
図1を参照すると、第1の区画12は固体エアロゾル形成材料20を含み、第2の区画13は液体エアロゾル形成基材21を含む。
【0039】
カートリッジハウジング11は、カートリッジ長手方向軸線Yに沿って延在する、管形状を呈する。カートリッジハウジング11は、上流端部18と下流端部17とを含む。カートリッジ10の下流端部17は、フィルタ15を含み得る。フィルタ15は、カートリッジハウジング11内に固体エアロゾル形成材料20を保持する。フィルタ15は、酢酸セルローストウ及びポリ乳酸繊維などのフィルタ材料のロッド又はプラグを含み得る。
【0040】
カートリッジハウジング11の上流端部18は、閉鎖端部である。閉鎖端部は、穿孔可能要素16を含む。穿孔可能要素16は、カートリッジ10がエアロゾル発生デバイス30のキャビティ35に挿入されると、穿孔可能要素16がエアロゾル発生デバイス30の、ブレードなどの突出要素32によって貫通されるようにカートリッジハウジング11に取り付けられる。
【0041】
カートリッジハウジング11の下流端部17は、カートリッジ10の下流端部17に着脱可能に取り付けられたマウスピース19を含み得る。マウスピース19は、少なくとも1つの空気出口を含む少なくとも1つの空気流チャネルを画定する。空気出口は、マウスピース19に組み込まれ得るフィルタ15を介してカートリッジの空気出口と流体連通している。
図1の例は、マウスピース19がカートリッジの遠位端部に取り付けられることを示すが、マウスピース19は、代替的に、カートリッジの下流端部に配置されたフィルタ上の空気出口をマウスピースが覆うように、エアロゾル発生デバイス30のハウジングの一部に着脱可能に取り付けられ得る。代わりに、マウスピース19は、カートリッジ10の一部であり得る。使用時、ユーザは、マウスピースから空気を引き込んで、カートリッジ10を通してエアロゾル発生デバイス30の空気入口37からエアロゾル発生システム1内に空気を流入させ得る。
【0042】
通気性分離要素14は、管状カートリッジハウジング11の内部容積内に配置されて、第1の区画12と第2の区画13とを隔てる。好ましくは、通気性要素14は、ディスクの形状である。ディスクの直径は、通気性分離要素14が通気性分離要素14の内部管状本体に適合するように、カートリッジハウジング11の内部直径と同様である。このように、第1の区画12及び第2の区画13は、カートリッジハウジング11の内壁と通気性要素14の表面とによって画定される。通気性分離要素14は、メッシュ又は多孔プレートを含み得る。通気性分離要素14は、カートリッジ長手方向軸線Yに対して実質的に垂直に位置決めされ得る。分離要素14は、第1の区画12と第2の区画13との物理的分離を提供する一方で、それらの間のエアロゾル蒸気連通を維持する。
【0043】
液体エアロゾル形成基材21は、液体保持構造25と、液体保持要素25内に貯蔵された液体エアロゾル形成材料27とを含む。液体保持構造25は、疎に詰められた固体粒子26を含む。疎に詰められた粒子26は、小さい微小固体粒子の集合体(又は凝集体)である粒状材料である。粒子26が液体により濡れると、隣接する粒子の間隙内に微小液橋が形成され、液橋の毛管力が凝集粒子を互いに保持する。したがって、粒子26のネットワークは柔軟であり、機械的応力が加わると再編成される。固体の突出要素32、例えばブレードが凝集体中に挿入されると、粒子26は移動して、要素形状に適合するように配向を変更する。
【0044】
好ましくは、疎に詰められた固体粒子26は、最大寸法が0.05mm~2mmに含まれる粒子を含む。例えば、粒子16の最大寸法は、約100μm~約1mmの範囲であり得るか、又は約200μm~約800μmの範囲であり得、好ましくは約250μm~約600μmの範囲であり得る。最大寸法は、例えば、約500μmである。疎に詰められた固体粒子26の最大寸法は、実質的に均一である。略球形状と、粒度分布の単分散性とを呈する粒子26は、液化を達成するのに有利である。このように、隣接する粒子26の間隙の大きさは、実質的に均一であり、これにより、液体保持要素にわたる毛管力による液体の均一な伝達をもたらす。「最大寸法」という表現に関して、例えばロッドのような細長い粒子の場合、最大寸法はロッドの長さである。楕円形の断面を有する粒子の場合、最大寸法は、主軸に沿った大きい直径である。粒子が実質的に球形である場合、最大寸法は、直径に相当する。
【0045】
好ましくは、固体粒子26は、10kg/m3~20000kg/m3、好ましくは1000kg/m3~4000kg/m3の密度を有する。好ましくは、固体粒子26は、シリカゲル、エアログラファイト、タングステン、セラミック、シリカ、ガラス、パーライト、金属、例えばAl、Fe又は軟鋼、タバコ又はタバコ由来材料で作られる。粒子の密度、したがって質量は、移動と液化を生じさせるのにどの程度のエネルギーが必要になるかに影響を及ぼす。それゆえ、粒子26の密度は、必要に応じて、例えばシリカゲル又はエアログラファイトを用いることによる10kg/m3~タングステン又は別の高密度金属を用いることによる20,000kg/m3の密度を選択して調整され得る。特に、好ましい粒子密度は、例えば、セラミック、シリカ、ガラス又はパーライトなどの材料を用いることにより、1000kg/m3~4000kg/m3で選択される。
【0046】
好ましくは、疎に詰められた固体粒子26は、少なくとも液体エアロゾル形成材料の気化温度まで、例えば350℃まで安定である。本説明に関連して、材料特性が変化しないか又は少なくとも大きい変化を受けない場合、材料は、「安定」である。材料特性は、例えば、相(固体、液体、気体)、機械的特性(強度、硬度など)、結晶構造及び化学的特性(化学組成、組成の化学構造など)である。
【0047】
好ましくは、疎に詰められた固体粒子26又は疎に詰められた固体粒子26の少なくとも表面は、液体エアロゾル形成材料に対して化学的に不活性な材料を含む。化学的に不活性な表面は、固体粒子自体の化学的に不活性な表面であり得る。代わりに、化学的に不活性な表面は、各固体粒子を封入する化学的に不活性なコーティングであり得る。化学的な不活性は、本明細書では、カートリッジ内に貯蔵された化学物質だけでなく、エアロゾル形成基材を加熱している間に発生する化学物質に関しても理解される。粒子と同様に化学的に不活性なコーティングは、少なくともエアロゾル形成材料27の気化のための温度まで耐えるべきである。
【0048】
疎に詰められた固体粒子26は、粒子の間隙及びその表面にエアロゾル形成材料27を保持するように構成される。詳細には、上述したように、粒子26間に形成される液橋により、粒子26が互いに凝集される。この現象により、次いで凝集された粒子構造内に液体が維持される。吸収能力は、隣接する粒子の間隙内に形成された液橋の容積に関連し、これが、粒子26の凝集力も決定する。
【0049】
液体エアロゾル形成基材内の疎に詰められた固体粒子26は、強固に相互接続されていないため、例えば、液体中に分散されることにより、分離され得る。これは、個々に分離された粒子26を小粒子用に確立された任意の洗浄方法により効果的に洗浄できるため、カートリッジ10の再使用性の点で有利であり得る。
【0050】
液体エアロゾル形成材料27は、エアロゾル形成剤を含む。好適なエアロゾル形成剤としては、多価アルコール又はその混合物、例えばプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール及びグリセリンなどが挙げられる。液体エアロゾル形成基材には、水、溶媒、エタノール、植物抽出物及び天然又は人工香味剤が含まれ得る。液体エアロゾル形成材料27は、加熱時に液体から放出される揮発性タバコ香味剤化合物を含むタバコ含有材料を含む。好ましくは、液体エアロゾル形成基材は、非タバコ材料を含み得る。液体エアロゾル形成材料27は、ニコチンを含まなくてもよい。代わりに、液体エアロゾル形成基材は、ニコチンを含み得る。
【0051】
固体エアロゾル形成材料20は、顆粒、シート、ストリップ、断片、ペレットの形態又はタバコ材料の任意の他の形態の、タバコ葉又は再構成タバコなどのタバコ又はタバコ由来の材料を含み得る。固体エアロゾル形成材料20は、国際公開第2018/122375号パンフレット若しくは国際公開第2020/002607号パンフレットに記載されているものなどの空気入りタバコムース若しくは同等のタバコ発泡体又は国際公開第2021/094366号パンフレットに記載されているものなどの粒状テクスチャを有するソフトなエアロゾル発生基材であり得る。固体エアロゾル形成材料20は、顆粒、カプセル、ゲル又は任意の他の形態の香味剤などの非タバコ材料を含み得る。固体エアロゾル形成材料20は、タバコ含有材料及び非タバコ含有材料を含み得る。本明細書に関連して、タバコ含有材料は、タバコ葉、粉末タバコ植物、タバコムース、再構成タバコ材料及び任意の形態のタバコ材料であり得る。
【0052】
固体エアロゾル形成材料20は、少なくとも1つのエアロゾル形成剤を含み得る。適切なエアロゾル形成剤としては、限定されるものではないが、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール及びグリセリンなどの多価アルコール、グリセロールモノ-、ジ-又はトリアセテートなどの多価アルコールのエステル、ドデカン二酸ジメチル及びテトラデカン二酸ジメチルなどのモノ-、ジ-又はポリカルボン酸の脂肪族エステルが挙げられる。好ましいエアロゾル形成剤は、プロピレングリコール及びグリセリンを含み得る。
【0053】
図3は、エアロゾル発生デバイス30を示す。エアロゾル発生デバイス30は、加熱要素と、振動要素と、電源33と、コントローラ34とを更に含む。キャビティ35は、デバイス長手方向軸線Xに沿ってカートリッジ10を挿入することによりカートリッジ10の第2の区画13の少なくとも一部を受けるように構成される。デバイス本体31は、カートリッジ10の空気入口チャネル23と流体連通している少なくとも1つの空気流入口37を更に含む。
【0054】
ここでは、加熱要素及び振動要素は、同じ突出要素32に組み込まれる。好ましくは、振動要素及び加熱要素は、加熱ブレードである突出要素32を形成する。突出要素32は、キャビティ35の底端部36(又は遠位端部)に配置される。突出要素32は、有利にはデバイス長手方向軸線Xに沿ってキャビティ35内に突出する。好ましくは、突出要素32は、キャビティ35の断面の実質的に中心に配置される。
【0055】
加熱要素は、以下に説明するように、カートリッジ10がキャビティ35に受けられ、及びエアロゾルを発生させるようにエアロゾル発生デバイス10が動作されると、液体エアロゾル27形成材料を第2の区画13から第1の区画12に蒸発させるように構成される。
【0056】
振動要素は、カートリッジ10がキャビティ35に受けられ、及びエアロゾルを発生させるようにエアロゾル発生デバイスが動作されると、カートリッジ10の第2の区画13の内部に励起波を発生させて、第2の区画13内での局所的な熱及び/又は液体移送を促進するように構成される。ここでは、振動要素は、
図1に示すように、カートリッジ10の第2の区画13に入り込むように構成される。励起波は、好ましくは、超低周波、超音波又は音波である。振動要素は、0.5Hz~60kHzに含まれる励起周波数を有する前記励起波を発生させるように構成される。励起波は、第2の区画13に収容された固体粒子26の構造再編成を引き起こすのに十分に大きい振幅を有する。
【0057】
好ましくは、振動要素は、加熱要素が液体エアロゾル27を加熱して蒸発させるときに励起波を発生させるように構成される。
【0058】
使用時のエアロゾル発生システム1を表す
図4を参照すると、第2の区画13の一部に対応するカートリッジ10の上流端部は、
図1に示すように、エアロゾル発生デバイス30のキャビティ35に挿入される。ここでは、デバイス本体31は、
図1に示す例において、第2の区画13の一部を覆うように延在する。図示しない変形形態では、デバイス本体31は、第1の区画12の少なくとも一部まで延在し得るか、又はカートリッジ10がキャビティ35内に完全に配置されるようにカートリッジ10の下流端部17まで延在し得る。
【0059】
カートリッジ10の挿入中に、カートリッジ10上の穿孔可能要素16は、突出要素32により貫通される。穿孔可能要素16により、加熱要素と振動要素とを含む突出要素32を第2の区画13に挿入することが可能となる。穿孔可能要素16及び/又は下流端部18は、実質的に粒子及び/又は液体がカートリッジから漏出できないように封止機構を形成することが好ましい。疎に詰められた固体粒子26は、突出要素32を液体エアロゾル形成基材21に挿入すると、突出要素32の形状に適合するように固体粒子26の配置をすぐに再編成する。カートリッジ10がキャビティ35に完全に挿入されると、突出要素32は、第2の区画13内に位置決めされる。突出要素32の長さは、
図4に示すように、カートリッジ10に挿入された突出要素32が第2の区画13を越えて延在しないように、カートリッジ10の第2の区画32の長手方向の長さよりも短い。好ましくは、第2の区画13内に貯蔵された液体エアロゾル形成基材21の容積は、液体エアロゾル形成基材21及び突出要素32の挿入部分の総容積がカートリッジへの加熱要素の挿入中及び挿入後に第2の区画13の内部キャビティ容積を超えないように、第2の区画13の内部キャビティ容積よりも小さい。
【0060】
突出要素32内に配置された振動要素が振動を発生させていない場合、固体粒子26が、液体エアロゾル形成材料の存在により互いに凝集する。凝集した固体粒子によって画定される毛管チャネルの水力直径は、エアロゾル発生システムの不使用時のカートリッジからの液漏れが最小限に抑えられるように、毛管圧力により液体エアロゾル形成材料を効果的に保持するのに十分に小さい。
【0061】
振動要素が
図4に符号Aで表す励起波を発生させると、これらの波が粒子26を揺動させ、液体保持構造の液化を引き起こし、液体保持構造が、より均質な懸濁液のように挙動する。固体粒子によって画定される毛管チャネルの水力直径は、液化の結果として大きくなる傾向があり、液体保持構造内の毛管チャネルを通る液体の流れの促進を可能にする。
【0062】
突出要素32内の加熱要素の作動時、液体エアロゾル形成材料27と、液体エアロゾル形成材料27を保持する疎に詰められた粒子26とを含む液体エアロゾル形成基材21は、液体エアロゾル形成材料27の気化温度以上の温度に加熱される。この熱伝達は、
図4に符号Hで表されている。第2の区画13内で発生した蒸気は、その後、空気入口37、23からの空気と混合され、第1の区画12を通してフィルタ15の空気出口に送出される。空気と蒸気との混合物が第1の区画12内の固体エアロゾル形成材料20を通過している間、固体エアロゾル形成材料20からのエアロゾルが、空気と蒸気との混合物に取り込まれる。
【0063】
加熱と振動との組み合わせにより、熱伝達と材料移送の促進が可能となる。特に、加熱と振動との組み合わせにより、熱伝達が促進され、加熱要素の表面上の核形成部位の数が増える。振動は、液体が加熱要素の表面に絶えず供給されるように、第2の区画13内の、
図4に符号Cで表す、液体の対流を促進する。励起波は、液体の粘度も低下させ、液体の流れを増加させる。突出要素32内に配置された加熱要素により第2の区画13内の液体を気化させると、突出要素32の外面に近い領域における液体が局所的に枯渇し得る。液体が突出要素32の表面に絶えず供給されるように、振動要素の振動により第2の区画13内の液体の対流が促進され、したがって、熱伝達が改善される。
【0064】
振動要素及び加熱要素は、励起波及び熱を発生させるためのエネルギーを提供する電源33にそれぞれ接続される。
【0065】
本発明の第2の実施形態の説明
図5及び
図6は、本発明の第2の実施形態によるカートリッジ40とエアロゾル発生デバイス50とを含むエアロゾル発生システム2を示す。
【0066】
第2の実施形態によるエアロゾル発生システム2は、以下に記載する特徴を除いて、上で説明した第1の実施形態によるエアロゾル発生システム1と同様である。
【0067】
特に、
図6で視認できるように、カートリッジ40は、第2の区画43を含む。第2の区画43は、疎に詰められた固体粒子26と液体エアロゾル形成材料27とを含む液体エアロゾル形成基材21を含む。
【0068】
この第2の実施形態では、カートリッジ40の第2の区画43は、液体エアロゾル形成基材21を加熱するように構成された少なくともサセプタ44を更に含む。サセプタ44には、例えば、ストリップ、ディスク、リング、プレート、粒子、フレーク及びコイルの形態の誘導加熱可能な材料が含まれ得る。サセプタ要素に適した材料は、鉄、ニッケル、コバルト、鉄合金、ニッケル合金、コバルト合金、フェライトなどの強磁性金属、合金及び酸化物又はアルミニウム、ステンレス鋼などの任意の他の導電性金属及び合金であり得る。
【0069】
この例では、サセプタ44は、カートリッジ長手方向軸線Yに対して垂直に延在する3つのリング状のサセプタプレート44a、44b、44cを含む。しかし、変形形態では、任意の数のサセプタ44が使用され得、サセプタのタイプは、ディスク、ストリップ、プレート又はそれらの組み合わせなどの任意の他の形態であり得る。
【0070】
図示しない別の変形形態では、サセプタ44は、液体エアロゾル形成基材の少なくとも一部の周囲に配置され得る。第2の区画13の少なくとも一部のハウジングは、サセプタ材料を含み得る。
【0071】
有利には、サセプタ44は、音響メタマテリアル、すなわち音響波を吸収し、それに応じて振動できる材料の形態で作られる。
【0072】
カートリッジハウジング41は、第2の区画43内に空気を送り込むように構成された1つ以上の空気入口チャネル(図示せず)を含み得る。空気入口チャネルは、カートリッジハウジング41の管状本体内に配置され得る。
【0073】
図5及び
図6は、カートリッジ40を受けるように構成されたエアロゾル発生デバイス50を示す。エアロゾル発生デバイス50は、キャビティ35を画定するデバイス本体51と、加熱要素と、振動要素と、電源33と、コントローラ34とを含む。キャビティ35は、デバイス長手方向軸線Xに沿ってカートリッジ40を挿入することによりカートリッジ40の第2の区画43の少なくとも一部を受けるように構成される。
【0074】
ここでは、加熱要素は誘導コイル52である。誘導コイル52は、誘導加熱によりカートリッジ40内のサセプタ要素44にエネルギーを伝達するように構成される。誘導コイル52は、カートリッジ40が加熱チャンバ55に挿入されると、コイルがカートリッジ40の第2の区画43(液体エアロゾル形成基材21)の近傍に配置されるように配設される。誘導コイル52は、ハウジング51、典型的には加熱チャンバ55の筒状側壁部分に埋め込まれ得る。この例では、誘導コイルは、第2の区画の上流端部から第2の区画の下流端部に延在する。エアロゾル発生デバイス50のハウジング51は、カートリッジ40の空気入口チャネルと流体連通している空気流入口(図示せず)を更に含む。
【0075】
ここでは、振動要素は、加熱要素から隔てられる。振動要素は、振動子57である。振動子57は、電源33によって提供される電気を音波に変換するように構成される。キャビティ35は、デバイス本体51の内面によって境界を定められる。振動要素は、内面に隣接して配置される。
図6の例では、振動子57は、キャビティ35の底端部36上に配置される。サセプタ44は、振動要素によって形成された励起波の少なくとも一部を吸収することにより第2の区画13内に振動を発生させるように構成される。
【0076】
使用時のエアロゾル発生システム2を示す
図6を参照すると、カートリッジ40の第2の区画43は、エアロゾル発生デバイス50のキャビティ35に挿入される。カートリッジ40がキャビティ35に完全に挿入されると、誘導コイル52は、カートリッジ50の第2の区画55内の液体エアロゾル形成基材21の少なくとも一部を取り囲む。ここでは、振動子57は、第2の区画13の底端部に面する。
【0077】
デバイスの作動時、電源33からの電力が誘導コイル52に送出される。コントローラ34は、誘導コイル52がサセプタ44を目標温度以上に加熱するための電磁場を発生させることを可能にする周波数で誘導コイル52への電力送出を制御する。
【0078】
電源33から電力を受け取る振動子57も作動される。振動子57は、サセプタ44によって吸収される励起音響波を発生させる。サセプタ44は、第1の実施形態と同様に液体保持構造25の液化を達成するために、振動して粒子26を移動させる。
【0079】
サセプタ44の加熱及び励起時、液体エアロゾル形成基材の少なくとも一部は、液体エアロゾル形成基材21内に貯蔵された液体エアロゾル形成材料を気化させるための温度以上に加熱される。次いで、第2の区画43内で発生した蒸気は、カートリッジ40を流れる空気と混合される。液体エアロゾル形成基材21からの蒸気と空気との混合物は、その後、通気性分離要素14を通して第1の区画42に移送される。空気とエアロゾル蒸気との混合物が第1の区画内の固体エアロゾル形成材料20を通過している間、固体エアロゾル形成材料20からのエアロゾルは、空気とエアロゾル蒸気との混合物中に取り込まれる。空気とエアロゾル蒸気との混合物は、第1の区画42を通して、フィルタ15を介してカートリッジ40の下流端部47にある空気出口に送出される。
【0080】
本発明の第3の実施形態の説明
図7は、本発明の第3の実施形態によるカートリッジ60とエアロゾル発生デバイス70とを含むエアロゾル発生システム3を部分的に示す。
【0081】
第3の実施形態によるエアロゾル発生システム3は、以下に記載する特徴を除いて、上で説明した第1の実施形態によるエアロゾル発生システム1と同様である。
【0082】
図7で視認できるように、振動要素を形成する振動子57は、ここでは、キャビティ35の内面に隣接して配置され、且つ加熱要素から隔てられる。ここでは、突出要素32は、加熱要素のみを含み、振動要素を含まない。
【0083】
特に、振動要素は、キャビティ35を取り囲む円筒形の振動子57であり得る。変形形態では、振動要素は、キャビティ35を形成する内面の2つの対向面上で互いに面する2つの振動子板57を含み得る。
【0084】
本発明の第4の実施形態の説明
図8は、本発明の第4の実施形態によるカートリッジ80とエアロゾル発生デバイス90とを含むエアロゾル発生システム4を示す。
【0085】
第4の実施形態によるエアロゾル発生システム4は、ここでは振動子57がキャビティ35の底端部36上に配置されることを除いて、上で説明した第3の実施形態によるエアロゾル発生システム3と同様である。
【0086】
本発明の他の実施形態
前述の実施形態を組み合わせることによって他の実施形態が様々な方法で実行され得ることが当業者に明らかであろう。
【0087】
例えば、サセプタ44を含むカートリッジは、突出要素32を含むデバイスと協働し得る。
【国際調査報告】