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特表2024-545080非水電解液、それを含むリチウム二次電池、およびリチウム二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】非水電解液、それを含むリチウム二次電池、およびリチウム二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241128BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241128BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20241128BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241128BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/058
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533889
(86)(22)【出願日】2023-04-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 KR2023005615
(87)【国際公開番号】W WO2023211116
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0051005
(32)【優先日】2022-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・キョン・シン
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・テ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ホ・オ
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM05
5H029CJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
5H029HJ14
(57)【要約】
本発明は、有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤からなる非水電解液組成物であって、前記アゾ系開始剤が下記化学式1で表されるものであり、前記環状カーボネート系添加剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.01重量%~5重量%で含まれる非水電解液組成物に関する。
(前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基から選択され、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤からなる非水電解液組成物であって、
前記アゾ系開始剤が下記化学式1で表されるものであり、
前記炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.01重量%~5重量%で含まれる、非水電解液組成物。
【化1】
(前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基から選択され、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。)
【請求項2】
前記有機溶媒は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒を含む、請求項1に記載の非水電解液組成物。
【請求項3】
前記リチウム塩は、LiPF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群から選択される一つ以上を含む、請求項1に記載の非水電解液組成物。
【請求項4】
前記リチウム塩は、0.1M~4.0Mの濃度で含まれる、請求項1に記載の非水電解液組成物。
【請求項5】
前記炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートからなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の非水電解液組成物。
【請求項6】
前記アゾ系開始剤が、下記化学式1-1または下記化学式1-2で表される化合物である、請求項1に記載の非水電解液組成物。
【化2】
【化3】
【請求項7】
前記アゾ系開始剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.001重量%~0.3重量%で含まれる、請求項1に記載の非水電解液組成物。
【請求項8】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータと、を含む電極組立体を収納したケースに、請求項1から7に記載の非水電解液組成物の何れか一つを注液することで製造される、リチウム二次電池。
【請求項9】
有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤を含む非水電解液組成物を注液したリチウム二次電池を準備するステップと、
リチウム二次電池を活性化し、電極の表面に環状カーボネート重合体被膜を形成するステップと、を含むリチウム二次電池の製造方法であって、
前記アゾ系開始剤が下記化学式1で表されるものであり、
前記炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.01重量%~5重量%で含まれる、リチウム二次電池の製造方法。
【化4】
(前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基から選択され、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。)
【請求項10】
前記有機溶媒は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートからなる群から選択される一つ以上である、請求項9に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記アゾ系開始剤が、下記化学式1-1または下記化学式1-2で表される化合物である、請求項9に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【化5】
【化6】
【請求項13】
前記アゾ系開始剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.001重量%~0.3重量%で含まれる、請求項9に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記活性化ステップは、初期充電過程、エージング過程、および放電過程を含む、請求項9に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記エージング過程は30℃~80℃で行われる、請求項14に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年4月25日に出願された韓国特許出願第10-2022-0051005号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、非水電解液、それを含むリチウム二次電池、およびリチウム二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウム二次電池の応用領域が、電気、電子、通信、コンピュータなどのような電子機器の電力供給だけでなく、自動車や電力貯蔵装置などのような大面積機器の電力貯蔵および供給に急速に拡大しており、これに伴い、高容量、高出力で、且つ高安定性の二次電池に対する要求が増加している。
【0004】
特に、自動車用途のリチウム二次電池においては、高容量、高出力、長期寿命特性が重要となっている。二次電池の高容量化のために、エネルギー密度は高いが、安定性が低いニッケル高含量の正極活物質を用いたり、二次電池を高電圧で駆動することがある。
【0005】
しかし、上記の条件下で二次電池を駆動する場合、充放電が進行するにつれて、電解質の劣化により発生する副反応によって、正極/負極の表面に形成された被膜あるいは電極表面の構造が劣化し、正極の表面から遷移金属イオンが溶出され得る。このように、溶出された遷移金属イオンが負極に電着(electro-deposition)されてSEIの不動態(passivation)能力を低下させるため、負極が劣化するという問題が発生する。
【0006】
かかる二次電池の劣化現象は、正極の電位が高くなるか、電池が高温に露出した際にさらに加速化する傾向を示す。
【0007】
したがって、かかる問題を解決するために、正極における金属イオンの溶出を抑え、負極に安定なSEI膜を形成して、高温での電気化学的特性を改善することができる方法に関する研究開発が試されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題を解決するために多角的に研究を行った結果、本発明は、正極の劣化を抑え、正極と電解質の副反応を減少させ、負極に安定なSEI膜を形成することができる非水電解液組成物を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、上記非水電解液組成物を含むことで、高温での電気化学的特性が改善されたリチウム二次電池、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤からなる非水電解液組成物であって、前記アゾ系開始剤が下記化学式1で表されるものであり、前記環状カーボネート系添加剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.01重量%~5重量%で含まれる、非水電解液組成物を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基から選択され、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。
【0013】
他の実施形態によると、本発明は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータと、を含む電極組立体を収納したケースに、前記非水電解液組成物を注液することで製造されたリチウム二次電池を提供する。
【0014】
さらに他の実施形態によると、本発明は、有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤を含む非水電解液組成物を注液したリチウム二次電池を準備するステップと、リチウム二次電池を活性化し、電極の表面に環状カーボネート重合体被膜を形成するステップと、を含むリチウム二次電池の製造方法であって、前記アゾ系開始剤が下記化学式1で表されるものであり、前記炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.01重量%~5重量%で含まれる、リチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0015】
【化2】
【0016】
前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基から選択され、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。
【発明の効果】
【0017】
一般に、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、リチウム二次電池の電解液中で開環(Ring opening)反応を主に起こすと知られている。
【0018】
これに対し、本発明の非水電解液組成物は、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤とともにアゾ系開始剤を含むことで、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤で、開環(Ring opening)反応よりも炭素-炭素二重結合の重合反応が主に起こるようにする。炭素-炭素二重結合の重合反応により形成された環状カーボネート重合体被膜は、環状カーボネート系添加剤の開環(Ring opening)反応により形成された被膜と比べてより優れた耐久性を有するため、負極の表面に、弾力性を有し、且つ強固なSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜を形成することができる。
【0019】
したがって、本発明の電解液組成物は、高温でSEIの不動態(passivation)能力が低下することを抑え、負極の劣化を防止することができる。また、本発明に係る非水電解液を含むリチウム二次電池は、高温でも安定であり、抵抗の低い電極-電解質界面を形成することができるため、高温での諸性能が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0021】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解されるべきである。
【0022】
また、本明細書において、「炭素数a~b」の記載において、「a」および「b」は、具体的な官能基に含まれる炭素原子の個数を意味する。すなわち、前記官能基は、「a」~「b」個の炭素原子を含み得る。例えば、「炭素数1~5のアルキレン基」は、炭素数1~5の炭素原子を含むアルキレン基、すなわち、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH-、および-CH(CH)CHCH-などを意味する。また、本明細書において、前記「アルキレン基」という用語は、分岐または非分岐の2価の飽和炭化水素基を意味する。
【0023】
また、本明細書において、アルキル基またはアルキレン基は、何れも置換されても置換されていなくてもよい。前記「置換」とは、別に定義しない限り、炭素に結合された少なくとも1つ以上の水素が、水素以外の元素で置換されることを意味し、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数3~12のヘテロシクロアルキル基、炭素数3~12のヘテロシクロアルケニル基、炭素数6~12のアリールオキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~20のフルオロアルキル基、ニトロ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のヘテロアリール基、炭素数6~20のハロアリール基などで置換されることを意味する。
【0024】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0025】
〔非水電解液組成物〕
本発明に係る非水電解液組成物は、有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤からなることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る非水電解液組成物に含まれる有機溶媒は、環状カーボネート系有機溶媒および直鎖状カーボネート系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒を含んでもよい。
【0027】
前記環状カーボネート系有機溶媒は、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高いため電解質中のリチウム塩を解離させやすい有機溶媒であり、その具体的な例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、および2,3-ペンチレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒を含んでもよい。
【0028】
前記直鎖状カーボネート系有機溶媒は、低粘度および低誘電率を有する有機溶媒であって、その代表例として、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒を含んでもよい。
【0029】
具体的に、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒を含んでもよい。
【0030】
また、前記有機溶媒は、高いイオン伝導率を有する電解質を製造するために、前記環状カーボネート系有機溶媒および直鎖状カーボネート系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一つ以上のカーボネート系有機溶媒に、直鎖状エステル系有機溶媒および環状エステル系有機溶媒からなる群から選択される少なくとも一つ以上のエステル系有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0031】
前記直鎖状エステル系有機溶媒の具体的な例として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒が挙げられる。
【0032】
前記環状エステル系有機溶媒としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも一つ以上の有機溶媒が挙げられる。
【0033】
一方、前記有機溶媒は、必要に応じて、非水電解液に通常用いられる有機溶媒を制限されずに追加して用いてもよい。例えば、エーテル系有機溶媒、グライム系溶媒、およびニトリル系有機溶媒の少なくとも1つ以上の有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0034】
前記エーテル系溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、1,3-ジオキソラン(DOL)、および2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン(TFDOL)からなる群から選択される何れか1つ、またはこれらのうち2種以上の混合物が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記グライム系溶媒は、直鎖状カーボネート系有機溶媒に比べて高い誘電率および低い表面張力を有し、金属との反応性が少ない溶媒であって、ジメトキシエタン(グライム、DME)、ジエトキシエタン、ジグライム(diglyme)、トリグライム(Triglyme)、およびテトラグライム(TEGDME)からなる群から選択される少なくとも一つ以上を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記ニトリル系溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明に係る非水電解液組成物に含まれるリチウム塩は、LiPF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群から選択される一つ以上を含んでもよい。前記リチウム塩は、リチウム二次電池内で電解質塩として用いられるものであって、イオンを伝達するための媒介体として用いられるものである。
【0038】
本発明に係る非水電解液組成物は、前記リチウム塩の他に、追加のリチウム塩を含んでもよい。追加のリチウム塩は、通常、例えば、カチオンとしてLiを含み、アニオンとして、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、BF 、BC 、PF 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNからなる群から選択される少なくとも何れか1つが挙げられる。
【0039】
前記リチウム塩は、通常使用可能な範囲内で適宜変更し得るが、SEI被膜形成の最適な効果を得るために、電解質中に0.1M~4.0Mの濃度、好ましくは、0.8M~2.5Mの濃度、より好ましくは、0.8M~2.0Mの濃度で含まれてもよい。前記リチウム塩の濃度が0.1M未満である場合、リチウムの量が不足してリチウム二次電池の容量およびサイクル特性に劣り、4.0Mの濃度を超える場合、非水電解液の粘度が増加することにより電解質含浸性が低下し、イオン伝導度が減少し、電池抵抗が増加するという問題が生じる恐れがある。
【0040】
本発明に係る非水電解液組成物は、リチウム二次電池において電極の表面に環状カーボネート重合体被膜を形成するために、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤を含む。具体的に、前記環状カーボネート系添加剤は、ビニレンカーボネートおよびビニルエチレンカーボネートからなる群から選択される一つ以上であってもよい。
【0041】
前記炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.01重量%~5重量%で含まれてもよく、好ましくは0.1重量%~3重量%、より好ましくは1重量%~3重量%で含まれてもよい。炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤が上記の範囲で含まれる場合、リチウム二次電池の高温での諸性能が最適化され得る、適切な量のSEI膜が形成される。
【0042】
本発明に係る非水電解液組成物に含まれるアゾ系開始剤は、下記化学式1で表されるものであってもよい。非水電解液組成物に含まれているアゾ系開始剤は、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤で、開環(Ring opening)反応よりも炭素-炭素二重結合の重合反応が主に起こるようにする。炭素-炭素二重結合の重合反応により形成された環状カーボネート重合体被膜は、環状カーボネート系添加剤の開環(Ring opening)反応により形成された被膜と比べてより優れた耐久性を有するため、負極の表面に、弾力性を有し、且つ強固なSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜を形成することができる。また、本発明のアゾ系開始剤は、環状カーボネート重合体被膜が形成される前に揮発される量が少なく、十分な開始反応を起こすことができる効果があり、揮発された開始剤が引き起こす様々な副反応が抑制される効果がある。
【0043】
【化3】
【0044】
前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のアルコキシ基から選択され、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。好ましくは、前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、R~Rの全てがメチル基である場合は除く。
【0045】
具体的に、前記アゾ系開始剤は、下記化学式1-1または下記化学式1-2で表される化合物であってもよい。
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
前記アゾ系開始剤は、非水電解液組成物の全体を基準として0.001重量%~0.3重量%で含まれてもよく、好ましくは0.010重量%~0.25重量%、より好ましくは0.10重量%~0.25重量%で含まれてもよい。アゾ系開始剤が上記の範囲で含まれる場合、リチウム二次電池の高温での諸性能が最適化され得る、適切な量のSEI膜が形成される。
【0049】
本発明の非水電解液組成物は、高出力の環境で非水電解液が分解されて負極の崩壊が引き起こされることを防止するか、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制の効果などをさらに向上させるために、必要に応じて、前記非水電解液中に公知の電解質添加剤をさらに含んでもよい。
【0050】
かかるその他の電解質添加剤は、その代表例として、ハロゲン置換のカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系化合物、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択される少なくとも一つ以上のSEI膜形成用添加剤を含んでもよい。
【0051】
前記ハロゲン置換のカーボネート系化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。
【0052】
前記スルトン系化合物としては、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物が挙げられる。
【0053】
前記サルフェート系化合物としては、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)が挙げられる。
【0054】
前記ホスフェート系化合物としては、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、テトラメチルトリメチルシリルホスフェート、トリメチルシリルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトからなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられる。
【0055】
前記ボレート系化合物としては、テトラフェニルボレート、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C、LiBOB)が挙げられる。
【0056】
前記ニトリル系化合物としては、スクシノニトリル、アジポニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、および4-フルオロフェニルアセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物が挙げられる。
【0057】
前記ベンゼン系化合物としてはフルオロベンゼンが挙げられ、前記アミン系化合物としてはトリエタノールアミンまたはエチレンジアミンなどが挙げられ、前記シラン系化合物としてはテトラビニルシランが挙げられる。
【0058】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解液に含まれるリチウム塩とは異なる化合物であり、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)、LiPO、またはLiBFなどが挙げられる。
【0059】
かかるその他の電解質添加剤のうち、1,3-プロパンスルトン(PS)、エチレンサルフェート(Esa)、リチウムジフルオロホスフェート(LiDFP)の組み合わせをさらに含む場合、二次電池の初期活性化工程時に負極の表面にさらに強固なSEI被膜を形成することができ、高温における電解質の分解により生成され得るガスの発生を抑え、二次電池の高温安定性を向上させることができる。
【0060】
一方、前記その他の電解質添加剤は、2種以上が混合して用いられてもよく、非水電解液の全重量を基準として、0.01重量%~20重量%、具体的には0.01重量%~10重量%で含まれてもよく、好ましくは0.05重量%~5重量%であってもよい。前記その他の電解質添加剤の含量が0.01重量%より少ないと、電池の高温貯蔵特性および高温寿命特性の改善効果が僅かであり、前記その他の電解質添加剤の含量が20重量%を超えると、電池の充放電時に電解質中の副反応が過度に発生する可能性がある。特に、前記その他の電解質添加剤が過量で添加される場合、高温で十分に分解されないため、常温で電解質中において未反応物または析出した状態で存在し得る。これにより、二次電池の寿命または抵抗特性が低下する副反応が起こる恐れがある。
【0061】
〔リチウム二次電池〕
本発明は、前記非水電解液組成物を含むリチウム二次電池を提供する。
【0062】
具体的に、前記リチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と前記負極との間に介在されたセパレータと、前述の非水電解液組成物と、を含む。
【0063】
この際、本発明のリチウム二次電池は、当技術分野で知られた通常の方法により製造することができる。例えば、正極、負極、および正極と負極との間にセパレータが順に積層された電極組立体を形成した後、前記電極組立体を電池ケースの内部に挿入し、本発明に係る非水電解液組成物を注液することで製造することができる。
【0064】
以下では、非水電解液組成物以外の他の構成要素についてより詳細に説明する。
【0065】
(1)正極
前記正極は、正極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む正極合剤スラリーを正極集電体上にコーティングして製造することができる。
【0066】
前記正極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが用いられてもよい。
【0067】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムなどの1種以上の金属とリチウムを含むリチウム金属酸化物を含んでもよい。より具体的に、前記リチウム金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMn(ここで、0<Y<1)、LiMn2-ZNi(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-Z1CoZ1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMn)O(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r<1、p+q+r=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr1)O(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r1<2、p1+q1+r1=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr2s2)O(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r2、およびs2は、それぞれ独立の元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r2<1、0<s2<1、p2+q2+r2+s2=1である)など)などが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。
【0068】
中でも、電池の容量特性および安定性を高めることができる点から、前記リチウム金属酸化物は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、およびLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)Oなど)などであってもよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類および含量比の制御による改善効果の顕著性を考慮すると、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、およびLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0069】
前記正極活物質は、正極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、60重量%~99重量%、好ましくは70重量%~99重量%、より好ましくは80重量%~98重量%で含まれてもよい。
【0070】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と、集電体に対する結合を補助する成分である。
【0071】
このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエン、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、種々の共重合体などが挙げられる。
【0072】
通常、前記バインダーは、正極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0073】
前記導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。
【0074】
前記導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、正極スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0075】
通常、前記導電材は、正極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0076】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%となるように含まれてもよい。
【0077】
(2)負極
前記負極は、例えば、負極活物質、バインダー、導電材、および溶媒などを含む負極合剤スラリーを負極集電体上にコーティングして製造するか、炭素(C)からなる黒鉛電極または金属自体を負極として用いることができる。
【0078】
例えば、前記負極集電体上に負極合剤スラリーをコーティングして負極を製造する場合、前記負極集電体は、一般に、3μm~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの様々な形態で用いられてもよい。
【0079】
また、前記負極活物質は、リチウム金属、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質、金属またはこれらの金属とリチウムの合金、金属複合酸化物、リチウムをドープおよび脱ドープできる物質、および遷移金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0080】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーション可能な炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限されずに使用可能であり、その代表例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらをともに用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛などのような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0081】
前記金属またはこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が使用できる。
【0082】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族の元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択されるものが使用できる。
【0083】
前記リチウムをドープおよび脱ドープできる物質としては、Si、SiO(0<x≦2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらの少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0084】
前記遷移金属酸化物としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0085】
本発明に係る添加剤は、特に、SiまたはSiO(0<x≦2)を負極活物質として用いる場合に効果的である。具体的に、Si系の負極活物質を用いる場合、初期活性化時に負極の表面に強固なSEI層が形成されないと、サイクルの進行時に、激しい体積膨張-収縮によって寿命特性の低下が促進される。しかし、本発明に係る添加剤は、弾力性を有し、且つ強固なSEI層を形成することができるため、Si系の負極活物質を用いる二次電池が優れた寿命特性および貯蔵特性を有するようにすることができる。
【0086】
前記負極活物質は、負極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、50重量%~99重量%、好ましくは60重量%~99重量%、より好ましくは70重量%~98重量%で含まれてもよい。
【0087】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体の間の結合を補助する成分である。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエン、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの種々の共重合体などが挙げられる。
【0088】
通常、前記バインダーは、負極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0089】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極スラリー中の固形分の全重量を基準として1重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材としては、該電池に化学的変化を引き起こすことなく、且つ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;カーボンナノチューブ、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0090】
前記導電材は、負極合剤スラリー中の固形分の全重量を基準として、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0091】
前記溶媒は、水またはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含んだ際に好適な粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%となるように含まれてもよい。
【0092】
前記負極として、金属自体を用いる場合、金属薄膜自体または前記負極集電体上に金属を物理的に接合、圧延、または蒸着などをする方法により製造することができる。前記蒸着方式としては、金属を電気的蒸着または化学的蒸着(chemical vapor deposition)する方法を用いることができる。
【0093】
例えば、前記金属薄膜自体または前記負極集電体上に接合/圧延/蒸着される金属は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銅(Cu)、およびインジウム(In)からなる群から選択される1種の金属または2種の金属の合金などを含んでもよい。
【0094】
(3)セパレータ
また、セパレータとしては、従来にセパレータとして用いられている通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して用いてもよく、または、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれた、コーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0095】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形、またはコイン(coin)形などであってもよい。
【0096】
〔二次電池の製造方法〕
本発明に係るリチウム二次電池の製造方法は、有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤を含む非水電解液組成物を注液したリチウム二次電池を準備するステップと、リチウム二次電池を活性化し、電極の表面に環状カーボネート重合体被膜を形成するステップと、を含んでもよい。
【0097】
前記リチウム二次電池を準備するステップは、当技術分野で知られた通常の方法により行われることができる。例えば、正極、負極、および正極と負極との間にセパレータが順に積層された電極組立体を形成した後、前記電極組立体を電池ケースの内部に挿入し、本発明の非水電解液組成物を注液することで製造することができる。本発明の非水電解液組成物は、上述の有機溶媒、リチウム塩、炭素-炭素二重結合を含む環状カーボネート系添加剤、およびアゾ系開始剤などを混合して製造されることができる。非水電解液組成物および電極組立体の構成要素は上述のとおりであるため、それについての説明は省略し、以下では、他のステップについて説明する。
【0098】
本発明の非水電解液組成物は、リチウム二次電池の初期活性化工程時に、環状カーボネート系添加剤に含まれている炭素-炭素二重結合の間に重合反応が起こり、環状カーボネート重合体被膜が形成されることで、負極の表面に、より強固な負極保護被膜を形成することができる。前記炭素-炭素二重結合の重合反応はアゾ系開始剤により促進され、環状カーボネート系添加剤で開環(Ring opening)反応より優先的に起こる。
【0099】
前記リチウム二次電池を活性化するステップは、初期充電過程、エージング過程、および放電過程を含んで進行されることができる。
【0100】
前記初期充電の条件としては、残存容量(SOC)が5%~85%、好ましくは5%~60%、最も好ましくは30%~50%まで充電が行われてもよい。
【0101】
前記初期充電は、30℃~80℃、好ましくは40℃~70℃、より好ましくは45℃~70℃の温度で進行されてもよい。
【0102】
前記エージング過程は、30℃~80℃、好ましくは40℃~70℃、より好ましくは45℃~70℃の高温で進行されてもよい。高温エージングを進行する場合、電極被膜が安定化し、電極内で発生したガスが外部に排出されやすいという利点がある。しかし、高温エージングをする場合、従来に用いられるアゾ系開始剤の揮発が起こるという問題があり得る。これに対し、本発明に係る非水電解液組成物に含まれるアゾ系開始剤は、環状カーボネート重合体被膜が形成される前に揮発される量が少ないため、十分な開始反応を起こすことができる効果があり、揮発された開始剤が引き起こす様々な副反応が抑制される効果がある。
【0103】
前記エージングは、4時間~48時間、好ましくは6時間~42時間、より好ましくは8時間~36時間進行されてもよい。
【0104】
前記放電の条件としては、残存容量(SOC)が0%~65%まで、好ましくは10%~60%、最も好ましくは15%~25%まで放電が行われてもよい。前記放電は、常温範囲、例えば、20℃~30℃で進行されてもよい。
【0105】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の理解のための例示にすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。本記載の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が、添付の特許請求の範囲に属するということはいうまでもない。
【0106】
〔実施例〕
実施例1
(非水電解液の製造)
有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=30:70体積比)に、LiPFが1Mとなるように溶解して非水溶媒を製造し、前記非水溶媒99.3gにビニレンカーボネート0.5gおよび化学式1-1のアゾ系開始剤化合物0.2gを投入して非水電解液組成物を製造した。
【0107】
【化6】
【0108】
(リチウム二次電池の製造)
正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.1)と、導電材(Super-P)と、バインダー(ポリビニリデンフルオライド)とを97.74:0.70:1.56の重量比で、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmの正極集電体(Al薄膜)の一面に塗布し、乾燥およびロールプレス(roll press)を行って正極を製造した。
【0109】
負極活物質(グラファイト)と、導電材(Super-P)と、バインダー(SBR-CMC)とを96.15:0.50:3.35の重量比で、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを厚さ15μmの負極集電体(Cu薄膜)の一面に塗布し、乾燥およびロールプレス(roll press)を行って負極を製造した。
【0110】
ドライルームで、上記で製造された正極と負極との間に、無機物粒子Alが塗布されたポリオレフィン系多孔性セパレータを介在した後、上記で製造された非水電解液組成物を注液してリチウム二次電池を準備した。
【0111】
製造されたリチウム二次電池を60℃でSOC40%まで充電し、60℃で24時間エージングした。その後、常温でSOC20%まで放電してリチウム二次電池を製造した。
【0112】
実施例2
前記実施例1で製造した非水溶媒99.3gにビニレンカーボネート0.5gおよび化学式1-2のアゾ系開始剤化合物0.2gを投入して非水電解液を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0113】
【化7】
【0114】
比較例1
前記実施例1で製造した非水溶媒99.5gにビニレンカーボネート0.5gを投入して非水電解液を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0115】
比較例2
前記実施例1で製造した非水溶媒99.3gにビニレンカーボネート0.5gおよびアゾビスイソブチロニトリル(ABIN)0.2gを投入して非水電解液を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【化8】
【0116】
比較例3
前記実施例1で製造した非水溶媒94.3gにビニレンカーボネート5.5gおよび化学式1-1のアゾ系開始剤化合物0.2gを投入して非水電解液を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0117】
比較例4
前記実施例1で製造した非水溶媒99.795gにビニレンカーボネート0.005gおよび化学式1-1のアゾ系開始剤化合物0.2gを投入して非水電解液を製造することを除き、前記実施例1と同様の方法によりリチウム二次電池を製造した。
【0118】
〔実験例-高温貯蔵特性の評価〕
実施例1、2および比較例1~4で製造したそれぞれのリチウム二次電池に対して、高温貯蔵特性を評価した。
【0119】
具体的に、前記実施例1、2および比較例1~4のそれぞれのリチウム二次電池を4.2Vまで満充電した後、60℃で8週間保存した。
【0120】
保存する前に、常温で満充電された二次電池の容量および抵抗を測定し、初期二次電池の容量および抵抗と設定した。
【0121】
8週後に、保存された二次電池の容量を測定し、8週の貯蔵期間の間に減少した容量および増加した抵抗を計算した。前記初期二次電池の容量に対する、減少した容量および増加した抵抗のパーセントの割合を計算して8週後の容量維持率および抵抗増加率を導出した。その結果を下記表1に示した。
【0122】
【表1】
【0123】
前記表1に示されたように、実施例1および2のリチウム二次電池が、比較例1~4の二次電池に比べて8週後の容量維持率が高く、高温で安定な性能を有することが確認された。特に、実施例1および2のリチウム二次電池が、比較例1~4の二次電池に比べて8週後の抵抗増加率が著しく低いことが確認された。比較例1のリチウム二次電池は、アゾ系開始剤がないことから、ビニレンカーボネートで開環(Ring opening)反応が優先的に起こり、炭素-炭素二重結合の重合反応により形成される環状カーボネート重合体被膜が適切に生成されなかったためであると考えられる。
【0124】
また、比較例2のリチウム二次電池は、環状カーボネート重合体被膜が形成される前にアゾビスイソブチロニトリル(ABIN)が揮発される量が多く、環状カーボネート重合体被膜が適切に生成されなかったためであると考えられる。
【0125】
比較例3のリチウム二次電池は、環状カーボネートの含量が多すぎて有機SEI層が形成されることになる。有機物成分が多すぎる被膜は、高温安定性に劣っており崩壊されやすいため、電極と電解質との界面で副反応が生じ、サイクルの進行時に容量減少が発生するためであると考えられる。また、このような被膜の崩壊過程で発生するCOガスが電池を膨潤させて抵抗増加を引き起こすと考えられる。
【0126】
比較例4のリチウム二次電池は、環状カーボネートの含量が少なすぎて十分なSEI膜が形成されないため、効果に劣ると考えられる。
【国際調査報告】