(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241128BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241128BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241128BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241128BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241128BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20241128BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533897
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 CN2021137528
(87)【国際公開番号】W WO2023108361
(87)【国際公開日】2023-06-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉文元
(72)【発明者】
【氏名】郎野
(72)【発明者】
【氏名】袁国霞
(72)【発明者】
【氏名】徐磊敏
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
【要約】
【課題】本発明は、電気化学装置のレート特性を向上させるための電気化学装置及び電子装置を提供する。
【解決手段】電気化学装置は、正極片と電解液を含む電気化学装置であって、
前記正極片が正極材料層を含み、前記正極材料層が正極活物質を含み、前記正極活物質がMn元素とX元素を含み、前記X元素がCo元素及びAl元素のうちの少なくとも1つを含み、前記X元素と前記Mn元素のモル比をA%としたとき、Aが0.1~10であり、前記電解液がホウ素含有リチウム塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極片と電解液を含む電気化学装置であって、
前記正極片が正極材料層を含み、
前記正極材料層が正極活物質を含み、
前記正極活物質がMn元素とX元素を含み、
前記X元素がCo元素及びAl元素のうちの少なくとも1つを含み、
前記X元素と前記Mn元素のモル比をA%としたとき、Aが0.1~10であり、
前記電解液がホウ素含有リチウム塩を含む、電気化学装置。
【請求項2】
前記ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び四ホウ酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記ホウ素含有リチウム塩と前記正極活物質との質量比は、0.0001~0.01である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記電解液の質量に対して、前記ホウ素含有リチウム塩の質量分率は0.01%~2.2%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記正極活物質はさらにM1元素を含み、
前記M1元素がNb、Mg、Ti、W、Ga、Zr、Y、V、Sr、Mo、Ru、Ag、Sn、Au、La、Ce、Pr、Nd、Sm及びGdのうちの少なくとも1つを含み、
前記Mn元素のモル数に対して、前記M1元素のモル含有量a1%が、0.1%~2%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記電気化学装置は、
(i)a1とAが、0.14≦a1/A≦0.55を満たすことと、
(ii)前記M1元素はNb元素を含み、前記Mn元素のモル数に対して、前記Nb元素のモル含有量をa2%としたとき、a2とa1が、0.3≦a2/a1≦1を満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項5に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記正極活物質はM2元素をさらに含み、
前記M2元素が、Fe、Cu、Cr及びZnのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記正極活物質はさらに前記M1元素を含み、
前記M1元素がNb、Mg、Ti、W、Ga、Zr、Y、V、Sr、Mo、Ru、Ag、Sn、Au、La、Ce、Pr、Nd、Sm及びGdのうちの少なくとも1つを含み、
前記Mn元素のモル数に対して、前記M1元素のモル含有量をa1%とし、前記M2元素のモル含有量をb1%としたとき、a1とb1が、0.1<a1+b1≦2.05を満たす、請求項7に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記正極活物質はM3元素をさらに含み、
前記M3元素が、F、P、S及びBのうちの少なくとも1つを含み、
前記Mn元素のモル数に対して、前記M3元素のモル含有量c1%が0.1%~2%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記正極活物質はさらにM1元素を含み、
前記M1元素がNb、Mg、Ti、W、Ga、Zr、Y、V、Sr、Mo、Ru、Ag、Sn、Au、La、Ce、Pr、Nd、Sm及びGdのうちの少なくとも1つを含み、
前記Mn元素のモル数に対して、前記M1元素のモル含有量をa1%としたとき、
(iii)a1とc1が、0.1≦a1+c1≦4を満たすことと、
(iv)前記M3元素はF元素を含み、前記Mn元素のモル数に対して、F元素のモル含有量をc2%としたとき、c1とc2が、0.05≦c2/c1≦0.5を満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項9に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記正極活物質は二次粒子を含み、
前記二次粒子における一次粒子の平均粒子径をD1としたとき、
(1)前記正極活物質のDv50は4μm~15μmであることと、
(2)前記一次粒子の平均粒子径D1は0.2μm~2μmであることと、
(3)Dv50とD1が、4≦Dv50/D1≦50を満たし、Dv50はレーザー散乱粒度分布計により測定して得られた正極活物質の体積基準分布中の累積50%の粒子径であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
前記電解液は硫黄酸素二重結合を含む化合物をさらに含み、
前記硫黄酸素二重結合を含む化合物が、1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン及び硫酸ビニルのうちの少なくとも1つを含み、
前記電解液の質量に対して、前記硫黄酸素二重結合を含む化合物の質量分率が、0.01%~2%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に関し、特に電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、及びメモリー効果がないなどの利点があるため、ウェアラブルデバイス、スマートフォン、ドローン、電気自動車及び大型エネルギー貯蔵などの設備などの分野に広く応用され、現在の世界で最も発展潜在力のある新型グリーン化学電源となっている。しかし、同時にリチウムイオン電池の性能にはより高い要求が求められる。
リチウムイオン電池における正極活物質と電解液の効果的な組み合わせはリチウムイオン電池の性能に与える影響が大きく、リチウムイオン電池のサイクル数が増加するにつれて、正極及び/又は負極表面の保護膜が破壊され、リチウムイオン電池の直流インピーダンスが増大し、リチウムイオン電池のレート特性が低下する。そのため、リチウムイオン電池の直流インピーダンスの増加を低減し、サイクル後のレート特性を向上させることに有利な正極活物質と電解液系の開発は早急に解決すべき問題となっている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、電気化学装置のレート特性を向上させるための電気化学装置及び電子装置を提供することを目的とする。
【0004】
本発明の第1の態様は、正極片と電解液を含む電気化学装置であって、正極片が正極材料層を含み、正極材料層が正極活物質を含み、正極活物質がMn元素とX元素を含み、X元素がCo元素及びAl元素のうちの少なくとも1つを含み、X元素とMn元素のモル比をA%としたとき、Aが0.1~10であり、電解液がホウ素含有リチウム塩を含む、電気化学装置を提供する。正極活物質と電解液との相乗効果により、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性を同時に向上させることができ、同時に直流抵抗増加率を低下させることができる。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態において、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び四ホウ酸リチウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態において、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比は、0.0001~0.01である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、電解液の質量に対して、ホウ素含有リチウム塩の質量分率は0.01%~2.2%である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はX元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はさらにM1元素を含み、M1元素がNb、Mg、Ti、W、Ga、Zr、Y、V、Sr、Mo、Ru、Ag、Sn、Au、La、Ce、Pr、Nd、Sm及びGdのうちの少なくとも1つを含み、Mn元素のモル数に対して、M1元素のモル含有量a1%が、0.1%~2%である。正極活物質が前記M1元素を含み、かつ、M1元素のモル含有量が前記範囲内にあることは、正極片のマンガン溶出現象を改善し、電気化学装置のサイクル特性を向上させることに有利である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素及びM1元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、電気化学装置は、(i)a1とAが、0.14≦a1/A≦0.55を満たすことと、(ii)M1元素はNb元素を含み、Mn元素のモル数に対して、Nb元素のモル含有量をa2%としたとき、a2とa1が、0.3≦a2/a1≦1を満たすこととのうちの少なくとも1つを満たす。a1/A及び/又はa2/a1の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性及び初期レート特性を向上させることに有利である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はM2元素をさらに含み、M2元素が、Fe、Cu、Cr及びZnのうちの少なくとも1つを含み、Mn元素のモル数に対して、M2元素のモル含有量をb1%とする。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、M1元素及びM2元素を含み、かつ、a1とb1が、0.1<a1+b1≦2.05を満たす。前記M2元素を選択し、Mn元素とM2元素のモル総含有量a1+b1の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性、初期レート特性の向上、及び直流抵抗の増加率の低減に有利である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素及びM2元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素、M1元素及びM2元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はM3元素をさらに含み、M3元素が、F、P、S及びBのうちの少なくとも1つを含み、Mn元素のモル数に対して、M3元素のモル含有量c1%が0.1%~2%である。前記M3元素を選択し、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比を0.0001~0.01に制御し、M3元素のモル含有量c1%を上記範囲内に調整することにより、構造が安定した正極活物質の形成、正極活物質表面に保護膜の形成に有利であり、正極片におけるマンガン溶出現象を改善することができ、それによって電気化学装置のサイクル特性を高めることができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素及びM3元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素、M1元素及びM3元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素、M2元素及びM3元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素、M1元素、M2元素及びM3元素を含むリチウムマンガン酸化物を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、M1元素及びM3元素を含み、かつ、(iii)a1とc1が、0.1≦a1+c1≦4を満たすことと、(iv)M3元素はF元素を含み、Mn元素のモル数に対して、F元素のモル含有量をc2%としたとき、c1とc2が、0.05≦c2/c1≦0.5を満たすこととのうちの少なくとも1つを満たす。a1+c1の値及び/又はc2/c1の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性を高めることに有利である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は二次粒子を含み、二次粒子における一次粒子の平均粒子径をD1としたとき、正極活物質は、(1)正極活物質のDv50は4μm~15μmであることと、(2)一次粒子の平均粒子径D1は200nm~2μmであることと、(3)Dv50/D1は、4≦Dv50/D1≦50を満たし、Dv50はレーザー散乱粒度分布計により測定して得られた正極活物質の体積基準分布中の累積50%の粒子径であることとのうちの少なくとも1つを満たす。Dv50、D1及びDv50/D1の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置の初期レート特性及びサイクル特性を向上させることに有利である。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、電解液は硫黄酸素二重結合を含む化合物をさらに含み、硫黄酸素二重結合を含む化合物が、1,3-プロパンスルトン、プロペニル-1,3-スルトン及び硫酸ビニルのうちの少なくとも1つを含み、電解液の質量に対して、硫黄酸素二重結合を含む化合物の質量分率が、0.01%~2%である。前記硫黄酸素二重結合を含む化合物を選択し、その質量分率を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性を向上させるとともに、直流抵抗増加率を低下させることができる。
【0024】
本発明の第2の態様は、本発明のいずれかの実施形態における電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0025】
本発明の第1の態様は、正極片と電解液を含む電気化学装置であって、正極片が正極材料層を含み、正極材料層が正極活物質を含み、正極活物質がMn元素とX元素を含み、X元素がCo元素及びAl元素のうちの少なくとも1つを含み、X元素とMn元素のモル比をA%としたとき、Aが0.1~10であり、電解液がホウ素含有リチウム塩を含み、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比が0.0001~0.01である、電気化学装置を提供する。正極活物質と電解液との相乗効果により、電気化学装置の充放電初期において、負極に保護膜を形成することに寄与し、電気化学装置のサイクル過程において、負極の保護膜を修復し、電気化学装置のサイクル過程における界面インピーダンスの増加を低減し、電気化学装置のサイクル過程におけるレート特性の低下の問題を改善することに寄与し、そして、正極活物質の構造安定性を高め、それにより、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性を同時に高めるとともに、直流抵抗増加率を下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、技術案、及び利点をより明確にするために、以下に実施例を挙げ、本発明についてさらに詳細に説明する。明らかに、記載された実施形態は、本発明の実施形態の一部にすぎず、すべての実施形態であるわけではない。本発明における実施例に対して、当業者が得た他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
なお、本発明の具体的な実施形態では、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されるものではない。
【0027】
本発明の第1の態様は、正極片と電解液を含む電気化学装置であって、正極片が正極材料層を含み、正極材料層が正極活物質を含み、正極活物質がMn元素とX元素を含み、X元素がCo元素及びAl元素のうちの少なくとも1つを含み、X元素とMn元素のモル比をA%としたとき、Aが0.1~10であり、好ましくは1~5であり、電解液がホウ素含有リチウム塩を含む、電気化学装置を提供する。
【0028】
本発明のいくつかの実施例において、ホウ素含有リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、及び四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施例において、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比は、0.0001~0.01である。例えば、X元素とMn元素のモル比Aは、0.1、0.5、1、3、5、7、もしくは10であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよく、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比は、0.0001、0.001、0.005、もしくは0.01であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。
【0030】
いかなる理論にも限らず、本発明者は、正極活物質におけるX元素とMn元素のモル比をA%としたとき、Aが0.1~10であり、電解液がホウ素含有リチウム塩を含み、且つホウ素含有リチウム塩と正極活物質の質量比が0.0001~0.01である場合、正極活物質と電解液との相乗効果により、電気化学装置の充放電初期において、負極に保護膜を形成することに寄与し、電気化学装置のサイクル過程において、負極の保護膜を修復し、電気化学装置のサイクル過程における界面インピーダンスの増加を緩和することに寄与し、それにより、電気化学装置のサイクル過程におけるレート特性の低下の問題を改善することができ、そして正極活物質の構造安定性を高め、それにより、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性を同時に高めることができることを見出した。電気化学装置、例えばリチウムイオン電池において、電解液中のホウ素含有リチウム塩の質量は以下の方法により測定することができ、リチウムイオン電池を秤量して質量をm0とし、リチウムイオン電池を分解し、遠心分離し、ジメチルカーボネート溶液に10時間浸漬して乾燥し、乾燥後に秤量して質量をm1とし、電解液の全質量をm0-m1とする。遠心分離して得られた電解液はガスクロマトグラフィー測定とイオンクロマトグラフィーにより測定し、電解液中における各物質の含有量の割合を得る。ホウ素含有リチウム塩の質量=電解液の全質量×ホウ素含有リチウム塩の含有量の割合。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は、X元素を含むマンガン酸リチウム、及びX元素を含むリン酸マンガン鉄リチウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、前記正極活物質はX元素を含むマンガン酸リチウムを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、電解液の質量に対して、前記ホウ素含有リチウム塩の質量分率は、0.01%~2.2%である。例えば、ホウ素含有リチウム塩の質量分率は、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.3%、0.5%、0.7%、0.9%、1.2%、1.5%、2.0%、もしくは2.2%であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、ホウ素含有リチウム塩の含有量が0.01%~2.2%であり、特に含有量が0.05%~0.9%である場合、電気化学装置は優れた初期レート特性とサイクル特性を有し、同時に直流インピーダンス増加率が低いことを見出した。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はさらにM1元素を含み、M1元素がNb、Mg、Ti、W、Ga、Zr、Y、V、Sr、Mo、Ru、Ag、Sn、Au、La、Ce、Pr、Nd、Sm及びGdのうちの少なくとも1つを含み、Mn元素のモル数に対して、M1元素のモル含有量a1%が、0.1%~2%である。例えば、M1元素のモル含有量a1%は、0.1%、0.5%、1%、1.5%、もしくは2%であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、M1元素のモル含有量a1%が低すぎると(例えば0.1%未満)、電気化学装置の性能への改善が顕著ではなく、M1元素のモル含有量a1%の増加に伴い、正極活物質と電解液の相乗効果により、正極片におけるマンガン溶出現象を改善するための、構造が安定した保護膜の形成に有利であり、M1元素のモル含有量a1%が高すぎると(例えば2%超)、電気化学装置の初期レート特性及びグラムあたりの容量に影響を与えることを見出した。正極活物質が前記M1元素を含み、かつ、M1元素のモル含有量が前記範囲内にあることは、正極片のマンガン溶出現象を改善し、電気化学装置のサイクル特性を向上させることに有利である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、電気化学装置は、(i)0.14≦a1/A≦0.55を満たすことと、(ii)M1元素はNb元素を含み、Mn元素のモル数に対して、Nb元素のモル含有量をa2としたとき、a2とa1が、0.3≦a2/a1≦1を満たすこととのうちの少なくとも1つを満たす。例えば、a1/Aの値は、0.14、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、もしくは0.55であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。例えば、a2/a1の値は、0.3、0.4、0.54、0.6、0.7、0.8、0.9、もしくは1であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、a1/Aの値が小さすぎると(例えば0.14未満)、電気化学装置のサイクル特性に対する改善が顕著ではなく、a1/Aの値が大きすぎると(例えば0.55超)、電気化学装置の比容量に影響を与えることを見出した。a1/Aの値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性及び比容量を向上せることに有利である。a2/a1の値を上記範囲内に調整することも、電気化学装置のサイクル特性及び比容量を向上せることに有利である。本発明は、a2%の値に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、a2%が0.03%~2%である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はさらにM2元素を含み、M2元素がFe、Cu、Cr及びZnのうちの少なくとも1つを含み、Mn元素のモル数に対して、M2元素のモル含有量をb1%としたとき、a1、b1が、0.1<a1+b1≦2.05を満たす。例えば、a1+b1の値は、0.11、0.5、1、1.5、2、もしくは2.05であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、a1+b1の値が大きすぎると(例えば2.05超)、M2元素の含有量も増加し、正極活物質の熱安定性に影響を与え、それによって電気化学装置の初期レート特性及びサイクル特性に影響を与えることを見出した。前記M2元素を選択し、M1元素とM2元素のモル総含有量a1+b1の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性、初期レート特性を向上させることに有利である。本発明は、b1の値に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、b1が、0<b1≦0.05を満たす。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質はM3元素をさらに含み、M3元素が、F、P、S及びBのうちの少なくとも1つを含み、Mn元素のモル数に対して、M3元素のモル含有量c1%が0.1%~2%である。例えば、M3元素のモル含有量c1%は0.1%、0.5%、1%、1.5%、もしくは2%であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、前記M3元素を選択し、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比を0.0001~0.01に制御し、M3元素のモル含有量c1%を上記範囲内に調整することにより、構造が安定した保護膜の形成に有利であり、正極片におけるマンガン溶出現象を改善することができ、それによって電気化学装置のサイクル特性を高めることができることを見出した。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、電気化学装置は、(iii)a1とc1が、0.1≦a1+c1≦4を満たすことと、(iv)M3元素はF元素を含み、Mn元素のモル数に対して、F元素のモル含有量をc2%としたとき、c1とc2が、0.05≦c2/c1≦0.5を満たすこと。例えば、a1+c1の値は、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、もしくは4であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。例えば、c2/c1の値は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、もしくは0.5であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、a1+c1及び/又はc2/c1の値を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のサイクル特性を高めることに有利であることを見出した。本発明は、c2%の値に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、c2が、0.1≦c2≦1を満たす。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質は二次粒子を含み、二次粒子における一次粒子の平均粒子径をD1とする。本発明のいくつかの実施形態において、正極活物質のDv50は4μm~15μmである。例えば、正極活物質のDv50は4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、もしくは15μmであり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、一次粒子の平均粒子径D1は0.2μm~2μmである。例えば、一次粒子の平均粒子径D1は0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、1.5μm、もしくは2μmであり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、一次粒子の平均粒子径D1を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のレート特性及びサイクル特性を高めることに有利であることを見出した。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、Dv50とD1が、4≦Dv50/D1≦50を満たす。Dv50/D1の値は、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、正極活物質のDv50及びDv50/D1を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置のレート特性及びサイクル特性を高めることに有利であることを見出した。本発明において、二次粒子とは、一次粒子が凝集して形成された粒子を指す。
【0042】
本発明において、正極活物質のDv50はレーザー粒度分析装置を用いて測定して得ることができ、一次粒子の平均粒子径は走査電子顕微鏡を用いて測定して得ることができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、電解液は硫黄酸素二重結合を含む化合物をさらに含み、硫黄酸素二重結合を含む化合物が、1,3-プロパンスルトン(PS)、1-プロペン-1,3-スルトン(PTS)及び硫酸ビニル(DTD)のうちの少なくとも1つを含み、電解液の質量に対して、硫黄酸素二重結合を含む化合物の質量分率が、0.01%~2%である。例えば、硫黄酸素二重結合を含む化合物の質量分率は0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、1.5%、もしくは2%であり、又はそれらのうちの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。いかなる理論にも限らず、本発明者は、硫黄酸素二重結合を含む化合物の存在が、電気化学装置のサイクル過程における界面インピーダンスの増加を緩和し、電気化学装置のサイクル過程におけるレート特性が低下する問題を改善することができることを見出した。しかし、硫黄酸素二重結合を含む化合物の質量分率が高すぎると(例えば2%超)、負極に厚い保護膜が形成され、高レート充電時にリチウム析出などの問題を引き起こす可能性がある。前記硫黄酸素二重結合を含む化合物を選択し、その質量分率を上記範囲内に調整することにより、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性を向上させるとともに、直流抵抗増加率を低下させることができ、サイクル過程におけるレート特性が低下する問題を改善することができる。
【0044】
本発明は正極活物質の調製方法に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよい。例えば、正極活物質の調製方法は、原料を均一に混合し、一定の昇温速度条件下で、通気量を制御して焼成し、焼成の温度はTx、焼成時間はt'yであり、その後、一定の降温速度を制御して降温し、正極活物質を得るステップを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明は、焼成の温度Tx及び焼成時間t'yに対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、昇温速度は5℃/minであり、焼成の温度Txは800℃~900℃であり、焼成の時間t'yは15h~50h、降温速度は3℃/minである。本発明は、前記原料に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、原料は、MnO2、Li2CO3、Al2O3及びCo2O3のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0045】
昇温速度、降温速度、焼成時間及び焼成温度は、通常、正極活物質の粒子径、金属及び酸素イオンの相均一性、酸素欠陥の含有量などの要素に影響を与え、さらに正極活物質の物理及び化学性能に影響を与える。例えば、焼成温度の低下及び/又は焼成時間の短縮により、正極活物質の粒子径が減少し;焼成温度の上昇及び/又は焼成時間の延長により、正極活物質の粒子径が増大する。
【0046】
本発明において、正極活物質に元素M1、M2及びM3を導入する方法は特に制限されず、本発明の目的を達成できればよく、例えば、正極活物質の調製過程において、M1、M2及びM3を含む化合物を選択的に添加する。本発明はM1を含む化合物に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、Nb2O5、MgO、TiO2、WO3、Ga2O3、ZrO2、Y2O3、V2O5、SrO2、MoO3、RuO2、AgO、SnO2、Au2O3、La2O3、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Sm2O3及びGd2O3のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明は、M2を含む化合物に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、M2を含む化合物は、Fe2O3、CuO2、CrO3及びZnO2のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明は、M3を含む化合物に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、M3を含む化合物は、LiF、HBO3、Li3PO4及びLi2SO4のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0047】
本発明において、正極活物質中の異なる元素のモル比は、当該正極活物質を含有する電気化学装置を0%の充電状態で分解して正極シートを得て、その後、異なる元素の含有量を測定して計算して得たものである。
【0048】
正極片は通常、正極集電体を含み、本発明において、正極集電体は、特に限定されず、本発明の目的を達成できればよく、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、又は複合集電体などを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明において、正極の集電体の厚さは特に限定されず、本発明の目的を達成できればよく、例えば、8μm~12μmである。本発明において、正極材料層は、正極集電体の厚さ方向の一方の表面に設けてもよく、正極集電体の厚さ方向の両方の表面に設けてもよい。なお、ここでの「表面」は、正極集電体の全領域であってもよく、正極集電体の一部の領域であってもよく、本発明に特に限定されず、本発明の目的を達成できればよい。
【0049】
本発明において、正極材料層は、本発明の前記のいずれかの実施形態における正極活物質を含み、正極材料層はさらにバインダーを含んでもよい。本発明はバインダーに対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、バインダーは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリイミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリイミド、ポリアミドイミド、スチレンブタジエンゴム、及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0050】
本発明において、正極材料層は、さらに導電剤を含んでもよく、本発明は導電剤に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、導電剤は、導電性カーボンブラック(Super P)、カーボンナノチューブ(CNTs)、炭素繊維、鱗片黒鉛、ケッチェンブラック、グラフェン、金属材料、及び導電性ポリマーのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ及び/又は多層カーボンナノチューブを含んでもよいが、これらに限定されない。上記炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)及び/又はナノ炭素繊維を含んでもよいが、これらに限定されない。上記金属材料は、金属粉及び/又は金属繊維を含んでもよいが、これらに限定されなく、具体的には、金属は、銅、ニッケル、アルミニウム及び銀のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。上記導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリピロールのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0051】
本発明において、電気化学装置は負極片をさらに含み、本発明は負極片に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば負極片は通常負極集電体と負極材料層とを含む。本発明において、負極材料層は、負極集電体の厚さ方向の一方の表面に設けてもよく、負極集電体の厚さ方向の両方の表面に設けてもよい。なお、ここでの「表面」は、負極集電体の全領域であってもよく、負極集電体の一部の領域であってもよく、本発明に特に限定されず、本発明の目的を達成できればよい。
【0052】
本発明において、負極の集電体は、特に限定されず、本発明の目的を達成できればよく、例え、銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、及び複合集電体などを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明において、負極の集電体の厚さは特に限定されず、本発明の目的を達成できればよく、例えば、厚さは4μm~12μmである。
【0053】
本発明において、負極材料層は、負極活物質を含み、ここで、負極活物質は特に制限されず、本発明の目的を達成できればよく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-炭素複合体及びシリコン酸化物のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0054】
本発明において、負極材料層は、さらに導電剤を含んでもよく、本発明は導電剤に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、前記導電剤のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
本発明において、負極材料層は、さらにバインダーを含んでもよく、本発明はバインダーに対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、前記バインダーのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0055】
任意に、負極片は、さらに、導電層を含んでもよく、導電層は負極集電体と負極材料層との間に位置する。本発明は導電層の組成に対して特に制限はなく、本技術分野で一般的に用いられる導電層であってもよく、例えば、導電層が、上記導電剤及び上記バインダーを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0056】
本発明は、セパレータに対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、セパレータは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレンを主とするポリオレフィン(PO)系セパレータ、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)、セルロースフィルム、ポリイミドフィルム(PI)、ポリアミドフィルム(PA)、スパンデックス、アラミドフィルム、織布フィルム、不織布フィルム(不織布)、微多孔質フィルム、複合フィルム、セパレータペーパー、ラミネートフィルム及び紡糸フィルムのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されなく、好ましくはPPである。本発明のセパレータは多孔質構造を有してもよく、孔径の寸法は特に制限されなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、孔径の寸法は0.01μm~1μmであってもよい。
【0057】
例えば、セパレータは、基材層及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルム又は複合フィルムであってもよい。基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。任意に、ポリプロピレン多孔質フィルム、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合フィルムを使用してもよい。任意に、基材層の少なくとも1つの表面に表面処理層が設けられる。表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合して形成される層であってもよい。
【0058】
無機物層は、無機粒子と無機物層バインダーを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明は無機粒子に対して特に制限はなく、例えば、無機粒子が、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。本発明は無機物層バインダーに対して特に制限はなく、例えば、無機物層バインダーが、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。ポリマー層には、ポリマーが含まれる。ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステル重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0059】
本発明において、電解液はリチウム塩をさらに含んでもよい。本発明はリチウム塩に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、リチウム塩はLiPF6、LiClO4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2及びLiC(SO2CF3)3のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。リチウム塩は、好ましくはLiPF6を含む。
【0060】
本発明において、電解液は、非水溶媒をさらに含んでもよい。本発明は非水溶媒に対して特に制限はなく、本発明の目的を達成できればよく、例えば、非水溶媒が、炭酸エステル化合物及びカルボン酸エステル化合物のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。前記炭酸エステル化合物は、鎖状炭酸エステル化合物、環状炭酸エステル化合物、及びフルオロ炭酸エステル化合物のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。前記鎖状炭酸エステル化合物は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、及びメチルエチルカーボネート(MEC)のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。前記環状炭酸エステル化合物は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、及びビニルエチレンカーボネート(VEC)のうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。前記フルオロ炭酸エステル化合物は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、及びトリフルオロメチルエチレンカーボネートのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。前記カルボン酸エステル化合物は、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、及びγ-ブチロラクトンのうちの少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の電気化学装置は、特に制限されなく、電気化学反応を起こす、任意の装置を含んでもよい。いくつかの実施形態において、電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池(リチウムイオン電池)、リチウムポリマー二次電池、又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0062】
電気化学装置の製造過程は、当業者によく知られており、本発明には特に制限はなく、例えば、正極片、セパレータ、負極片を順に積層し、必要に応じて巻き取り、折り畳みなどの操作を行って、巻き取り構造の電極群を得て、電極アセンブリを包装袋に入れて、電解液を包装袋に注入して封口し、電気化学装置を得るステップと、あるいは、正極片、セパレータ及び負極片を順に積層した後、積層構造の電極アセンブリ全体を包装袋に入れて、電解液を包装袋に注入して封口し、電気化学装置を得るステップと、を含んでもよいが、これらに限定されない。また、必要に応じて過電流防止素子、リード板などを包装袋に設けられてもよく、これによって、電気化学装置内部の圧力の上昇、過充電・過放電を防止する。
【0063】
本発明の第2の態様は、本発明の前述のいずれかの実施形態における電気化学装置を含む電子装置を提供する。本発明が提供する電気化学装置は良好なサイクル特性とレート特性を有し、これによって、本発明が提供する電子装置は長い寿命と良好な性能を有する。
【0064】
本発明の電子装置は、特に限定されなく、先行技術に使用される既知の任意の電子装置であってもよい。いくつかの実施例において、電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯型テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、又は家庭用大型蓄電池などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0065】
実施例
測定方法とデバイス:
レート特性の測定:
25℃の環境で、リチウムイオン電池を0.5Cのレートで電圧4.22Vまで定電流充電し、さらに電流0.02Cまで定電圧充電し、60min静置し、次に0.2Cのレートで電圧2.8Vまで定電流放電し、放電容量D0を記録し、5min静置した後、リチウムイオン電池を0.5Cのレートで4.22Vまで定電流充電し、さらに電流0.02Cまで定電圧充電し、60min静置し、次に5Cのレートで電圧2.8Vまで定電流放電し、放電容量D'を記録した。容量維持率=D'/D0×100%。リチウムイオン電池の初期レート特性は、リチウムイオン電池のサイクル数が10サイクル未満の場合に測定されたレート特性のデータである。
【0066】
サイクル特性の測定:
25℃の環境で、リチウムイオン電池を1Cのレートで電圧4.22Vまで定電流充電し、さらに電流0.02Cまで定電圧充電し、60min静置し、次に1Cのレートで電圧2.8Vまで定電流放電し、放電容量D3を記録し、500サイクル後、放電容量D4を記録した。サイクル容量維持率=D4/D3×100%。
【0067】
直流抵抗(Rcc)の測定:
リチウムイオン電池を25℃の環境で5min静置し、そして、0.5Cのレートで電圧4.2Vまで定電流充電し、4.2Vで電流0.025Cまで定電圧充電し、5min静置し、次に0.2Cのレートで電圧2.8Vまで放電し、このときの放電容量をリチウムイオン電池の実際の容量として記録し、次のように測定し、この実際の容量でレートを計算した。
そして、リチウムイオン電池を25℃の環境で5min静置し、0.5Cで電圧4.2Vまで定電流充電し、4.2Vで電流0.025Cまで定電圧充電し、120min静置した。リチウムイオン電池の充電状態は100%である。次に0.1Cのレートで10秒間放電し、放電電流I1と放電後の電圧V1を記録し、この間に電圧、電流及び時間のサンプリング間隔は100ミリ秒である。そして、リチウムイオン電池を1Cのレートで360秒間放電し、放電電流I2と放電1秒時の電圧V2を記録し、この間に電圧、電流及び時間のサンプリング間隔は100ミリ秒である。下記式によりリチウムイオン電池の直流抵抗を計算する。R=(V1-V2)/(I2-I1)。
サイクル前の電池の充電状態が50%である場合に測定される直流抵抗RをR1とし、500サイクル後の電池の充電状態が50%である場合に測定される直流抵抗RをR2とする。直流抵抗増加率=R2/R1×100%。
【0068】
粒子径測定:
50mLの洗浄したビーカーに測定対象としての材料0.02gを添加し、さらに脱イオン水20mLを添加し、さらに質量濃度1%の界面活性剤としてのヘキサメタリン酸ナトリウムを数滴滴下し、粉末を完全に水に分散させ、120W超音波洗浄機中で5min超音波処理し、MasterSizer 2000を用いて粒度分布を測定した。Dv50は粒子がレーザー散乱粒度分析装置を用いて測定された体積基準分布中の累積50%の粒子径である。一次粒子の平均粒子径D1は走査型電子顕微鏡を用いて測定して得られた。
【0069】
実施例1-1
<正極活物質の調製>
原料としてのMnO2、Li2CO3、Al2O3及びCo3O4をLi、Mn、Al、Co元素のモル比1:1.96:0.03:0.01で混合し、焼成温度Txを830℃に設定し、焼成時間t'yを35hに設定し、一次粒子が凝集した二次粒子の形態を含む正極活物質としてのLiMn1.96Al0.03Co0.01O4を得た。そのうち、MnO2二次粒子のDv50は11.8μmであり、正極活物質のDv50は12.4μmであり、一次粒子の平均粒子径D1は0.6μmであった。
【0070】
<正極片の調製>
上記のように調製した正極活物質、導電剤としてのアセチレンブラック、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンを質量比96.5:2:1.5で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、真空攪拌機により系が均一な正極スラリーとなるまで攪拌した。そのうち、正極スラリーの固形分は70%であった。正極スラリーを厚み12μmの正極集電体としてのアルミニウム箔の一方の表面に均一に塗布し、アルミニウム箔を120℃で1h乾燥処理し、片面に正極材料層を塗布した正極片を得た。アルミニウム箔の他方の表面に上記ステップを繰り返すことにより、両面に正極材料層を塗布した正極片を得た。正極材料層の片面の塗布質量は20mg/cm2であった。その後、冷間圧延、カット、スリット、タブ溶接を経た後、120℃の真空条件下で1h乾燥し、仕様74mm×867mmの正極片を得た。
【0071】
<負極片の調製>
負極活物質としての人造黒鉛、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を質量比96:2:2で混合し、脱イオン水を加え、真空攪拌機により負極スラリーを得た。そのうち、負極スラリーの固形分が75%であった。負極スラリーを厚み12μmの負極集電体としての銅箔の一方の表面に均一に塗布し、銅箔を120℃で乾燥し、塗布層の厚みが130μmである、片面に負極材料層を塗布した負極片を得た。銅箔の他方の表面に上記ステップを繰り返すことにより、両面に負極材料層を塗布した負極片を得た。負極材料層の片面の塗布質量は6.5mg/cm2であった。その後、冷間圧延、カット、スリット、タブ溶接を経た後、120℃の真空条件下で1h乾燥し、仕様78mm×875mmの負極片を得た。
【0072】
<電解液の調製>
乾燥したアルゴン雰囲気のグローブボックスにおいて、PC、EC、DECを質量比1:1:1とし、その後、有機溶媒にリチウム塩LiPF6とホウ素含有リチウム塩LiBF4を加えて溶解し、均一に混合し、電解液を得た。そのうち、電解液の全質量に対して、電解液中のLiPF6の含有量は12.5%であった。LiBF4の質量と正極活物質の質量との比を下記表に示す。
【0073】
<セパレータの調製>
厚さ7μmの多孔質PEフィルム(Celgard社製)を採用した。
【0074】
<リチウムイオン電池の調製>
上記のように調製した正極片、セパレータ、負極片を順に重ね、セパレータを正極片と負極片との間に介在させて隔離の機能を果たし、巻き取り、電極アセンブリを得た。電極アセンブリをアルミニウムプラスチックフィルム包装袋に入れ、乾燥後、電解液を注入し、真空パッケージ、静置、化成、フォーメーション、カットなどの工程を経て、リチウムイオン電池を得た。そのうち、電解液の注液量を4.2g/Ahに、同時にホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比を0.002に制御した。フォーメーション上限電圧は4.15Vであり、フォーメーション温度は70℃であり、フォーメーション静置時間は2hであった。
【0075】
実施例1-2~実施例1-10、実施例1-19
表1に従って、関連の製造パラメータを調整したこと以外は実施例1-1と同様であった。
【0076】
実施例1-11~実施例1-18
<正極活物質の調製>において、正極活物質中の異なる元素のモル比に対して原料のモル比を調整し、表1に示したようにホウ素含有リチウム塩の質量分率、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比を調整したこと以外は、実施例1-1と同様であった。
【0077】
実施例2-1~実施例2-7
<正極活物質の製造>において、表2に従ってM1含有化合物を原料として添加し、正極活物質中の異なる元素のモル比に従って原料のモル比を調整したこと以外は、実施例1-5と同様であった。
【0078】
実施例2-8及び実施例2-9
<正極活物質の製造>において、表2に従ってM1含有化合物及びM2含有化合物を原料として添加し、正極活物質中の異なる元素のモル比に従って原料のモル比を調整したこと以外は、実施例1-5と同様であった。
【0079】
実施例2-10及び実施例2-11
<正極活物質の製造>において、表3に従ってM3含有化合物を原料として添加し、正極活物質中の異なる元素のモル比に従って原料のモル比を調整したこと以外は、実施例1-5と同様であった。
【0080】
実施例2-12~実施例2-15
<正極活物質の製造>において、表3に従ってM3含有化合物を原料として添加し、正極活物質中の異なる元素のモル比に従って原料のモル比を調整したこと以外は、実施例2-1と同様であった。
【0081】
実施例2-16
<正極活物質の製造>において、表3に従ってM2含有化合物及びM3含有化合物を原料として添加し、正極活物質中の異なる元素のモル比に従って原料のモル比を調整したこと以外は、実施例2-1と同様であった。
【0082】
実施例3-1~実施例3-5において、表4に従って関連の調製パラメータを調整したこと以外は、実施例1-5と同様であった。
【0083】
実施例4-1~実施例4-6において、<電解液の調製>にさらに硫黄酸素二重結合を含む化合物を加え、表5に従って関連の調製パラメータを調整したこと以外は実施例1-5と同様であった。
【0084】
比較例1-1~比較例1-4において、表1に従って、関連の調製パラメータを調整し、又は正極活物質中の異なる元素のモル比に従って原料のモル比を調整したこと以外は、実施例1-1と同様であった。
【0085】
各実施例及び各比較例の調製パラメータ及び性能を表1~表5に示す。
【0086】
【0087】
注:表1中の「/」は、対応する調製パラメータ又は物質が存在しないことを示す。
【0088】
実施例1-1~実施例1-18、比較例1-1~比較例1-4から分かるように、X元素とMn元素とのモル比Aの値、ホウ素含有リチウム塩と正極活物質との質量比がいずれも本発明の範囲内にある場合、得られた電気化学装置は良好な初期レート特性とサイクル特性、及び低いRcc増加率を同時に有する。実施例1-1~実施例1-19から分かるように、ホウ素含有リチウム塩の質量分率が本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置はより良い全体的な性能を有する。従って、本発明が提供する電気化学装置は、正極活物質と電解液との相乗効果により、電気化学装置のレート特性とサイクル特性を同時に向上させ、Rcc増加率を低下させることができる。
【0089】
【0090】
注:表2中の「/」は、対応する調製パラメータ又は物質が存在しないことを示す。
【0091】
正極活物質にM1元素及び/又はM2元素を導入することは、通常、電気化学装置の性能、例えば、レート特性、サイクル特性、Rcc増加率に影響を与える。実施例1-5、実施例2-1~実施例2-7から分かるように、正極活物質にM1元素を導入することは、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性をさらに改善し、Rcc増加率を低下させることができる。実施例2-1~実施例2-7から分かるように、a1、a2/a1、a1/Aの値が本発明の範囲内にある場合、得られた電気化学装置はより優れた初期レート特性とサイクル特性、及びより低いRcc増加率を有する。実施例1-5、実施例2-8及び実施例2-9から分かるように、正極活物質にM1元素とM2元素を同時に導入することは、電気化学装置の初期レート特性及びサイクル特性をさらに改善し、Rcc増加率を低下させることができる。実施例2-8及び実施例2-9から分かるように、a1+b1の値が本発明の範囲内にある場合、得られた電気化学装置は良好な初期レート特性とサイクル特性、及びより低いRcc増加率を有する。
【0092】
【0093】
注:表3中の「/」は、対応する調製パラメータ又は物質が存在しないことを示す。
【0094】
正極活物質にM1元素、M2元素、又はM3元素の少なくとも1つを導入することは、通常、電気化学装置の性能、例えば、初期レート特性、サイクル特性、Rcc増加率に影響を与える。実施例1-5、実施例2-10及び実施例2-11から分かるように、正極活物質にM3元素を導入することは、電気化学装置の初期レート特性とサイクル特性をさらに改善し、Rcc増加率を低下させることができる。実施例1-5、実施例2-12~実施例2-15から分かるように、正極活物質にM1元素とM3元素を同時に導入することは、電気化学装置の初期レート特性及びサイクル特性をさらに改善し、Rcc増加率を低下させることができる。実施例2-10~実施例2-15から分かるように、c1、c2/c1、又はa1+c1の少なくとも一方の値が本発明の範囲内にある場合、得られた電気化学装置は良好な初期レート特性とサイクル特性、及びより低いRcc増加率を有する。実施例1-5、実施例2-16から分かるように、正極活物質にM1元素、M2元素及びM3元素を同時に導入することは、電気化学装置の初期レート特性及びサイクル特性をさらに改善し、Rcc増加率を低下させることができる。
【0095】
【0096】
一次粒子及び正極活物質の粒子径は、通常、電気化学装置の性能、例えば、レート特性、サイクル特性、Rcc増加率に影響を与える。実施例1-5、実施例3-1~実施例3-5から分かるように、一次粒子及び正極活物質の粒子径が本発明の範囲内、すなわち一次粒子の平均粒子径D1、正極活物質のDv50及びDv50/D1の値が本発明の範囲内にある場合、得られた電気化学装置は良好な全体的な性能を有する。
【0097】
【0098】
注:表5中の「/」は、対応する調製パラメータ又は物質が存在しないことを示す。
【0099】
電解液に硫黄酸素二重結合を含む化合物を添加することは、通常、電気化学装置の性能、例えば、レート特性、サイクル特性、Rcc増加率に影響を与える。実施例1-5、実施例4-1~実施例4-6から分かるように、電解液に硫黄酸素二重結合を含む化合物を添加することは、電気化学装置のレート特性とサイクル特性をさらに改善し、Rcc増加率を低下させることができる。硫黄酸素二重結合を含む化合物の質量分率が本発明の範囲内にある場合、得られる電気化学装置は良好なレート特性とサイクル特性、及びより低いRcc増加率を有する。
上記の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明の主旨及び原則の範囲内でなされるいかなる変更、同等の置換、改善なども、本発明の保護の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】