(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】抗ウイルス治療剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/145 20060101AFI20241128BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20241128BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241128BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241128BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241128BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K31/145
A61K31/185
A61P31/12
A61P31/14
A61K45/00
A61K9/14
A61K9/48
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533959
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022081081
(87)【国際公開番号】W WO2023107996
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370846
【氏名又は名称】シラ セラピューティック インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リズヴィ,サフィア,ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ランズ,ラリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA29
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
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4C076GG05
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4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA37
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4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
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4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C084ZC752
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA52
4C206MA01
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4C206MA36
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA78
4C206MA79
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB33
(57)【要約】
本発明は、ウイルス感染のリスク低減及び治療のための組成物及び方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者においてウイルス感染の治療又はリスクを低減する方法であって、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法。
【請求項2】
ウイルス感染がコロナウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウイルス感染が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV2)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
SARS-CoV2がSARS-CoV2変異株であり、SARS-CoV2変異株がオミクロン株(B.1.1.529)、デルタ株(B.1.617.2)、アルファ株(B.1.1.7)、ガンマ株(P.1)、又はベータ株(B.1.351)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ウイルス感染がライノウイルス又は感冒である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ウイルス感染がRSウイルス(RSV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ウイルス感染が中東呼吸器症候群(MERS)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ウイルス感染が、鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザA、B及びCウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、HPV等のヒトパピローマウイルス、パルボウイルス、レオウイルス:ピコルナウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、オルトミクソウイルス:ブニヤウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、肺炎、結膜炎、胃腸炎、咽頭炎、急性出血性膀胱炎、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、1~65型、パルボウイルスB19、イヌパルボウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、アクアルコイルス、コルチウイルス、エンテロウイルス、エンテロウイルス68、70、ヘパトウイルス;トロウイルス;ペチウイルス;アルファウイルス;ルビウイルス;トゴトウイルス;ハンタウイルス;ナイロウイルス;フレボウイルス;プンタトロフレボウイルス;アデノ随伴ウイルス;アイチウイルス;オーストラリアコウモリリッサウイルス;BKポリオーマウイルス;バンナウイルス;バーマ森林ウイルス;ブニヤムウェラウイルス;ブニヤウイルスラクロス;ブニヤウイルスカンジキウサギ;オナガザルヘルペスウイルス;チャンディプラウイルス;チクングニアウイルス;コサウイルスA;牛痘ウイルス;コクサッキーウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルス;デングウイルス;ドーリウイルス;ドゥグベウイルス;ドゥベンヘイグウイルス;東部ウマ脳炎ウイルス;エボラウイルス;エコーウイルス;脳心筋炎ウイルス;エプスタイン・バーウイルス;ヨーロッパコウモリリッサウイルス;ハンタンウイルス;ヘンドラウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;E型肝炎ウイルス;デルタウイルス;馬痘ウイルス;アストロウイルス;サイトメガロウイルス;ヘルペスウイルス1型;ヘルペスウイルス2型;ヘルペスウイルス6型;ヘルペスウイルス7型;ヘルペスウイルス8型;免疫不全ウイルス;パピローマウイルス1型;パピローマウイルス2型;パピローマウイルス16型、18型;パラインフルエンザ;スプーマレトロウイルス;Tリンパ球指向性ウイルス;イスファハンウイルス;JCポリオーマウイルス;日本脳炎ウイルス;フニンアレナウイルス;KIポリオーマウイルス;クンジンウイルス;ラゴスコウモリウイルス;ビクトリア湖マールブルグウイルス;ランガットウイルス;ラッサウイルス;ロードスデールウイルス;ルーピング病ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;マチュポウイルス;マヤロウイルス;MERSコロナウイルス;麻疹ウイルス;メンゴ脳心筋炎ウイルス;メルケル細胞ポリオーマウイルス;モコラウイルス;伝染性軟属腫ウイルス;サル痘ウイルス;ムンプスウイルス;マレーバレー脳炎ウイルス;ニューヨークウイルス;ニパウイルス;ノーウォークウイルス;オニョンニョンウイルス;オルフウイルス;オロプーシェウイルス;ピチンデウイルス;ポリオウイルス;プウマラウイルス;狂犬病ウイルス;リフトバレー熱ウイルス;ロサウイルスA;ロスリバーウイルス;風疹ウイルス;サギヤマウイルス;サリウイルスA;サンドフライ熱シチリアウイルス;サッポロウイルス;SARSコロナウイルス2;セムリキ森林ウイルス;ソウルウイルス;サル泡沫状ウイルス;シミアンウイルス5;シンドビスウイルス;サウサンプトンウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;ダニ媒介性ポワッサンウイルス;トルクテノウイルス;トスカーナウイルス;ウークニエミウイルス;ワクチニアウイルス;バリオラウイルス;ベネズエラウマ脳炎ウイルス;水疱性口内炎ウイルス;西部ウマ脳炎ウイルス;WUポリオーマウイルス;ウエストナイルウイルス;ヤバサル腫瘍ウイルス;ヤバ類似疾患ウイルス;黄熱ウイルス;ジカウイルス;エフェメロウイルス;又はベシクロウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
被験者が医学的状態を用いて診断される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
医学的状態が、肺疾患、副鼻腔疾患、気道疾患、耳疾患、心臓疾患、高血圧、糖尿病、腎臓疾患、肝臓疾患、胃腸疾患、中枢神経系疾患、認知症、アルツハイマー病、脳卒中、免疫抑制状態、がん、又は肥満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
肺、副鼻腔、気道、または耳の疾患が、原発性毛様体ジスキネジア、嚢胞性線維症、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、閉塞性細気管支炎、鋳型気管支炎、肺気腫、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、気管支炎、気管支拡張症、肺臓炎、肺炎、気管支肺異形成(BPD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性呼吸器疾患(CRDS)、又はCOVID-19である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
リスクのある被験者が5歳未満又は60歳超である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
被験者が免疫抑制状態である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
被験者が入院中である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
被験者が妊娠中である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
被験者に送達される組成物が0.1~600mgである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、5~600mgの2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミンを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、20~95%w/wの2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
組成物が乾燥粉末である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
組成物が噴霧乾燥粉末である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
組成物が液体である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子がカプセル化されている、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子が、リポソーム、ミクロスフェア、人工噴霧乾燥粒子、又はナノ粒子中にカプセル化される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物が第2の抗ウイルス剤をさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第2の抗ウイルス剤が、レムデシビル、イドクスリジン、トリフルリジン、ブリブジン、ビダラビン、エンテカビル、テルビブジン、フォスカルネット、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル・リトナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダルナビル、テラプレビル、ボセプレビル、シメプレビル、アスナプレビル、パリタプレビル、グラゾプレビル、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、パリビズマブ、ドコサノール、エンフビルチド、マラビロク、VariZIG、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、シドホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、又はアデホビルジピボキシルである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組成物が、1種以上の抗炎症剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、短時間作用性β-作動薬、長時間作用性β-作動薬、短時間作用性ムスカリン拮抗薬、長時間作用性ムスカリン拮抗薬、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗感染剤、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
組成物が、マンニトール、塩化カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、酢酸ナトリウム、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、大豆レシチン、卵レシチン、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール、PEG(ポリエチレングリコール);ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DSPE);ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC);ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC);卵ホスファチジルコリン(EPC);DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン);パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC);スフィンゴミエリン(SM);メトキシポリエチレングリコール(MPEG);ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG);ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC);ジオレオリ-sn-グリセロ-ホホエタノールアミン(DOPE)、トリオレイン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(MPEG-DSPE)、又は1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロールナトリウム塩(DPPG)をさらに含み得る、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
粒子サイズが0.01ミクロン~15ミクロンである、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
粒子サイズが、肺、胃腸系、腎臓、肝臓、心臓、脳、血液脳関門(BBB)、血液、組織、中枢神経系(CNS)、リンパ節、膵臓、胆嚢、横隔膜、生殖器官、食道、結腸、又は膀胱の標的部位で主に吸収されるような大きさである、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
粒子サイズが被験者の気道の標的部位で主に吸収されるような大きさであり、標的部位が上気道又は下気道である、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
組成物のかさ密度が0.1~5g/mLである、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子の空気動力学的中央粒子径が1~8μmである、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
空気動力学的中央粒子径が6μm以下である組成物の微粒子画分が10~90%である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
空気動力学的中央粒子径が5μm以下である組成物の微粒子画分が10~90%である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
空気動力学的中央粒子径が7μm以下である組成物の微粒子画分が10~90%である、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
組成物が、経口、舌下、非経口、静脈内、経皮、又は皮下経路により送達される、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
組成物が、鼻、口、気管、又は気管支を通して送達される、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
組成物が、経鼻、経口、舌下、静脈内、非経口、気管内、直腸、経皮、又は皮下に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
組成物が、吸入、経口スプレー、点鼻薬、点滴、又はネブライザーにより投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
吸入が乾燥粉末吸入である、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
被験者を少なくとも週に1回治療する、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
被験者を少なくとも1日1回治療する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
被験者を1日に1~4回治療する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
被験者を外来患者として治療する、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
被験者を併用療法で治療する、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ウイルスタンパク質の細胞外ジスルフィド結合を還元する方法であって、ウイルスタンパク質を2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子と接触させる工程を含む方法。
【請求項47】
ウイルスタンパク質がコロナウイルスタンパク質である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)変異株である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
変異株が、デルタ株 (B.1.617.2)、アルファ株(B.1.1.7)、ガンマ株(P.1)、ベータ株(B.1.351)、又はオミクロン株(B.1.1.529)である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
SARS-COV2タンパク質がスパイクタンパク質である、請求項46から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ウイルスタンパク質がライノウイルスタンパク質又は感冒タンパク質である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
ウイルスタンパク質がRSウイルス(RSV)タンパク質である、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
ウイルスタンパク質が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)タンパク質、RSウイルス(RSV)タンパク質、ライノウイルスタンパク質、鳥インフルエンザウイルスタンパク質;インフルエンザA、B及びCウイルスタンパク質;アデノウイルスタンパク質;ヘルペスウイルスタンパク質;HPVタンパク質等のヒトパピローマウイルスタンパク質;パルボウイルスタンパク質;レオウイルスタンパク質:ピコルナウイルスタンパク質;コロナウイルスタンパク質;フラビウイルスタンパク質;トガウイルス、オルソミクソウイルス:ブニヤウイルスタンパク質;ラブドウイルスタンパク質;パラミクソウイルスタンパク質;肺炎タンパク質;結膜炎タンパク質;胃腸炎タンパク質;咽頭炎タンパク質;急性出血性膀胱炎タンパク質;単純ヘルペスウイルスタンパク質;水痘帯状疱疹ウイルスタンパク質;1~65型タンパク質;パルボウイルスB19タンパク質;イヌパルボウイルスタンパク質;オルビウイルスタンパク質;ロタウイルスタンパク質;ロタウイルスAタンパク質;ロタウイルスBタンパク質;ロタウイルスCタンパク質;アクアルコウイルスタンパク質;コルチウイルスタンパク質;エンテロウイルスタンパク質;エンテロウイルス68、70タンパク質;ヘパトウイルスタンパク質;トロウイルスタンパク質;ペチウイルスタンパク質;アルファウイルスタンパク質;ルビウイルスタンパク質;トゴトウイルスタンパク質;ハンタウイルスタンパク質;ナイロウイルスタンパク質;フレボウイルスタンパク質;プンタトロフレボウイルスタンパク質;アデノ随伴ウイルスタンパク質;アイチウイルスタンパク質;オーストラリアコウモリリッサウイルスタンパク質;BKポリオーマウイルスタンパク質;バンナウイルスタンパク質;バーマー森林ウイルスタンパク質; ブニヤムウェラウイルスタンパク質;ブニヤウイルスラクロスタンパク質;ブニヤウイルスカンジキウサギタンパク質;オナガザルヘルペスウイルスタンパク質;チャンディプラウイルスタンパク質;チクングニアウイルスタンパク質;コサウイルスAタンパク質;牛痘ウイルスタンパク質;コクサッキーウイルスタンパク質;クリミア・コンゴ出血熱ウイルスタンパク質;デングウイルスタンパク質;ドーリウイルスタンパク質; ドゥグベウイルスタンパク質;ドゥベンヘイグウイルスタンパク質;東部ウマ脳炎ウイルスタンパク質;エボラウイルスタンパク質;エコーウイルスタンパク質;脳心筋炎ウイルスタンパク質;エプスタイン・バーウイルスタンパク質;ヨーロッパコウモリリッサウイルスタンパク質;ハンタンウイルスタンパク質;ヘンドラウイルスタンパク質;A型肝炎ウイルスタンパク質;B型肝炎ウイルスタンパク質;C型肝炎ウイルスタンパク質;E型肝炎ウイルスタンパク質;デルタウイルスタンパク質;馬痘ウイルスタンパク質;アストロウイルスタンパク質;サイトメガロウイルスタンパク質;ヘルペスウイルス1型タンパク質;ヘルペスウイルス2型タンパク質;ヘルペスウイルス6型タンパク質;ヘルペスウイルス7型タンパク質;ヘルペスウイルス8型タンパク質;免疫不全ウイルスタンパク質;パピローマウイルス1型タンパク質;パピローマウイルス2型タンパク質;パピローマウイルス16型、18型タンパク質;パラインフルエンザタンパク質;スプーマレトロウイルスタンパク質;Tリンパ球指向性ウイルスタンパク質;イスファハンウイルスタンパク質;JCポリオーマウイルスタンパク質;日本脳炎ウイルスタンパク質;フニンアレナウイルスタンパク質;KIポリオーマウイルスタンパク質;クンジンウイルスタンパク質;ラゴスコウモリウイルスタンパク質;ビクトリア湖マールブルグウイルスタンパク質;ランガットウイルスタンパク質;ラッサウイルスタンパク質;ロードスデールウイルスタンパク質;ルーピング病ウイルスタンパク質;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスタンパク質;マチュポウイルスタンパク質;マヤロウイルスタンパク質;MERSコロナウイルスタンパク質;麻疹ウイルスタンパク質;メンゴ脳心筋炎ウイルスタンパク質;メルケル細胞ポリオーマウイルスタンパク質;モコラウイルスタンパク質;伝染性軟属腫ウイルスタンパク質;サル痘ウイルスタンパク質;ムンプスウイルスタンパク質;マレーバレー脳炎ウイルスタンパク質;ニューヨークウイルスタンパク質;ニパウイルスタンパク質;ノーウォークウイルスタンパク質;オニョンニョンウイルスタンパク質;オルフウイルスタンパク質;オロプーシェウイルスタンパク質;ピチンデウイルスタンパク質;ポリオウイルスタンパク質;プウマラウイルスタンパク質;狂犬病ウイルスタンパク質;リフトバレー熱ウイルスタンパク質;ロサウイルスAタンパク質;ロスリバーウイルスタンパク質;風疹ウイルスタンパク質;サギヤマウイルスタンパク質;サリウイルスAタンパク質;サンドフライ熱シチリアウイルスタンパク質;サッポロウイルスタンパク質;SARSコロナウイルス-2タンパク質;セムリキ森林ウイルスタンパク質;ソウルウイルスタンパク質;サル泡沫状ウイルスタンパク質;シミアンウイルス5タンパク質;シンドビスウイルスタンパク質;サウサンプトンウイルスタンパク質;セントルイス脳炎ウイルスタンパク質;ダニ媒介性ポワッサンウイルスタンパク質;トルクテノウイルスタンパク質;トスカーナウイルスタンパク質;ウークニエミウイルスタンパク質;ワクチニアウイルスタンパク質;バリオラウイルスタンパク質;ベネズエラウマ脳炎ウイルスタンパク質;水疱性口内炎ウイルスタンパク質;西部ウマ脳炎ウイルスタンパク質;WUポリオーマウイルスタンパク質;ウェストナイルウイルスタンパク質;ヤバサル腫瘍ウイルスタンパク質;ヤバ類似疾患ウイルスタンパク質;黄熱ウイルスタンパク質;ジカウイルスタンパク質;エフェメロウイルスタンパク質;又はベシクロウイルスタンパク質である、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
ジスルフィド結合が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%還元される、請求項46から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子がカプセル化されている、請求項46から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子が、リポソーム、ミクロスフェア、人工噴霧乾燥粒子、又はナノ粒子中にカプセル化される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
粒子サイズが0.01ミクロン~15ミクロンである、請求項46から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子の空気動力学的中央粒子径が1~8μmである、請求項46から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
空気動力学的中央粒子径が6μm以下である組成物の微粒子画分が10~90%である、請求項46から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
空気動力学的中央粒子径が5μm以下である組成物の微粒子画分が10~90%である、請求項46から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
空気動力学的中央粒子径が7μm以下である組成物の微粒子画分が10~90%である、請求項46から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム粒子が組成物中に存在する、請求項46から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
組成物のかさ密度が0.1~5g/mLである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
組成物が乾燥粉末である、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項67】
組成物が噴霧乾燥粉末である、請求項64から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
組成物が液体である、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項69】
組成物が第2の抗ウイルス剤をさらに含む、請求項64から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
第2の抗ウイルス剤が、レムデシビル、イドクスリジン、トリフルリジン、ブリブジン、ビダラビン、エンテカビル、テルビブジン、ホスカルネット、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル・リトナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダルナビル、テラプレビル、ボセプレビル、シメプレビル、アスナプレビル、パリタプレビル、グラゾプレビル、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、パリビズマブ、ドコサノール、エンフビルチド、マラビロク、VariZIG、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、シドホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、又はアデホビルジピボキシルである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
組成物が、1種以上の抗炎症剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、短時間作用性β-作動薬、長時間作用性β-作動薬、短時間作用性ムスカリン拮抗薬、長時間作用性ムスカリン拮抗薬、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗感染剤、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項64から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
組成物が、マンニトール、塩化カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、大豆レシチン、卵レシチン、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール、PEG(ポリエチレングリコール);ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DSPE);ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC);ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC);卵ホスファチジルコリン(EPC);DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン);パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC);スフィンゴミエリン(SM);メトキシポリエチレングリコール(MPEG);ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG);ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC);ジオレオイル-sn-グリセロ-ホホエタノールアミン(DOPE)、トリオレイン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(MPEG-DSPE)、又は1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロールナトリウム塩(DPPG) をさらに含み得る、請求項64から71のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
ウイルスは人間の健康にとって大きな脅威である。ウイルスは宿主細胞に感染し、宿主細胞に元のウイルスを複製させる。ウイルスは変異することができるため、元の株(original variant)に対処するために特別にデザインされた治療法の有効性が低下してしまい、治療するのが困難なままである。この分野で必要とされているのは、ウイルス感染リスクを低減し及びウイルス感染を治療するための改良された方法であり、新しい変異株(new variant)にも適用できる作用機序を持つものである。
【0002】
発明の概要
本発明は、ウイルス感染症のリスク低減及び治療のための組成物並びに方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、本発明は、ウイルス感染のリスクがある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法、又は感染した被験者においてウイルス感染を治療する方法であって、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム粒子を含む組成物を被験者に投与する。別の実施形態では、2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与する。
【0004】
幾つかの実施形態では、ウイルス感染はコロナウイルスである。幾つかの実施形態では、ウイルス感染は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)である。幾つかの実施形態では、ウイルス感染は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)である。幾つかの実施形態では、ウイルス感染はSARS-CoV2変異株である。幾つかの実施形態では、変異株は、デルタ株(B.1.617.2)、アルファ株(B.1.1.7)、ガンマ株(P.1)、ベータ株(B.1.351)、又はオミクロン株(B.1.1.529)である。
【0005】
幾つかの実施形態では、ウイルス感染はライノウイルスである。
【0006】
幾つかの実施形態では、ウイルス感染はRSウイルス(RSV)である。
【0007】
幾つかの実施形態では、ウイルス感染は、鳥インフルエンザウイルス;インフルエンザA、B、又はCウイルス;アデノウイルス;ヘルペスウイルス;HPV等のヒトパピローマウイルス;パルボウイルス;レオウイルス;ピコルナウイルス;フラビウイルス;トガウイルス;オルトミクソウイルス;ブニヤウイルス;ラブドウイルス;パラミクソウイルス;単純ヘルペスウイルス;水痘帯状疱疹ウイルス;パルボウイルスB19;イヌパルボウイルス;オルビウイルス;ロタウイルス(例えばロタウイルスA;ロタウイルスB;又はロタウイルスC);アクアルコイルス(aquarcovirus);コルチウイルス;エンテロウイルス(例えばエンテロウイルス68、70);ヘパトウイルス;トロウイルス;ペチウイルス(petsivirus);アルファウイルス;ルビウイルス;トゴトウイルス;ハンタウイルス;ナイロウイルス;フレボウイルス;プンタトロフレボウイルス;アデノ随伴ウイルス;アイチウイルス;オーストラリアコウモリリッサウイルス;BKポリオーマウイルス;バンナウイルス;バーマ森林ウイルス;ブニヤムウェラウイルス;ブニヤウイルスラクロス;ブニヤウイルスカンジキウサギ;オナガザルヘルペスウイルス;チャンディプラウイルス;チクングニアウイルス;コサウイルスA;牛痘ウイルス;コクサッキーウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルス;デングウイルス;ドーリウイルス;ドゥグベウイルス(Dugbe virus);ドゥベンヘイグウイルス;東部ウマ脳炎ウイルス;エボラウイルス;エコーウイルス;脳心筋炎ウイルス;エプスタイン・バーウイルス;ヨーロッパコウモリリッサウイルス;ハンタンウイルス;ヘンドラウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;E型肝炎ウイルス;デルタウイルス;馬痘ウイルス;アストロウイルス;サイトメガロウイルス;ヘルペスウイルス1型;ヘルペスウイルス2型;ヘルペスウイルス6型;ヘルペスウイルス7型;ヘルペスウイルス8型;免疫不全ウイルス;パピローマウイルス1型;パピローマウイルス2型;パピローマウイルス16型、18型;パラインフルエンザ;スプーマレトロウイルス;Tリンパ球指向性ウイルス;イスファハンウイルス;JCポリオーマウイルス;日本脳炎ウイルス;フニンアレナウイルス;KIポリオーマウイルス;クンジンウイルス;ラゴスコウモリウイルス;ビクトリア湖マールブルグウイルス;ランガットウイルス;ラッサウイルス;ロードスデールウイルス;ルーピング病ウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス;マチュポウイルス;マヤロウイルス;MERSコロナウイルス;麻疹ウイルス;メンゴ脳心筋炎ウイルス;メルケル細胞ポリオーマウイルス;モコラウイルス;伝染性軟属腫ウイルス;サル痘ウイルス;ムンプスウイルス;マレーバレー脳炎ウイルス;ニューヨークウイルス;ニパウイルス;ノーウォークウイルス;オニョンニョンウイルス;オルフウイルス;オロプーシェウイルス;ピチンデウイルス;ポリオウイルス;プウマラウイルス;狂犬病ウイルス;リフトバレー熱ウイルス;ロサウイルスA(Rosavirus A);ロスリバーウイルス;風疹ウイルス;サギヤマウイルス;サリウイルスA;サンドフライ熱シチリアウイルス;サッポロウイルス;SARSコロナウイルス2;セムリキ森林ウイルス;ソウルウイルス;サル泡沫状ウイルス;シミアンウイルス5;シンドビスウイルス;サウサンプトンウイルス;セントルイス脳炎ウイルス;ダニ媒介性ポワッサンウイルス;トルクテノウイルス;トスカーナウイルス;ウークニエミウイルス(Uukuniemi virus);ワクチニアウイルス;バリオラウイルス;ベネズエラウマ脳炎ウイルス;水疱性口内炎ウイルス;西部ウマ脳炎ウイルス;WUポリオーマウイルス;ウエストナイルウイルス;ヤバサル腫瘍ウイルス;ヤバ類似疾患ウイルス(Yaba-like disease virus);黄熱ウイルス;ジカウイルス;エフェメロウイルス;又はベシクロウイルスの感染である。
【0008】
幾つかの実施形態では、被験者は医学的状態(medical condition)により診断される。幾つかの実施形態では、医学的状態とは、肺疾患、副鼻腔疾患、気道疾患、耳疾患、心臓疾患、高血圧、糖尿病、腎臓疾患、肝臓疾患、胃腸疾患、中枢神経系(CNS)疾患、認知症、アルツハイマー病、脳卒中、免疫不全状態、がん、又は肥満である。
【0009】
幾つかの実施形態では、肺、副鼻腔、気道、又は耳の疾患とは、原発性毛様体ジスキネジア、嚢胞性線維症、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、閉塞性細気管支炎、鋳型気管支炎、肺気腫、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、気管支炎、気管支拡張症、肺臓炎、肺炎、気管支肺異形成(BPD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性呼吸器疾患(CRDS)、又はCOVID-19である。
【0010】
幾つかの実施形態では、リスクのある被験者は、5歳未満又は60歳超である。幾つかの実施形態では、被験者は免疫不全である。幾つかの実施形態では、被験者は入院中である。幾つかの実施形態では、被験者は妊娠中である。
【0011】
幾つかの実施形態では、被験者に送達する組成物は、0.1~600mgの2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミンを含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、組成物は、5~600mgの2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミンを含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、組成物は、20~95%w/wの2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミンを含む。
【0014】
幾つかの実施形態では、組成物は乾燥粉末である。幾つかの実施形態では、組成物は噴霧乾燥粉末である。
【0015】
幾つかの実施形態では、組成物は液体である。
【0016】
幾つかの実施形態では、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子はカプセル化される。幾つかの実施形態では、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子は、リポソーム、ミクロスフェア、人工噴霧乾燥粒子(engineered spray-dried particles)、又はナノ粒子の中にカプセル化される。
【0017】
幾つかの実施形態では、組成物は、第2の抗ウイルス剤をさらに含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、第2の抗ウイルス剤は、レムデシビル、イドクスウリジン、トリフルリジン、ブリブジン、ビダラビン、エンテカビル、テルビブジン、ホスカルネット、ジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル・リトナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、ダルナビル、テラプレビル、ボセプレビル、シメプレビル、アスナプレビル、パリタプレビル、グラゾプレビル、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、パリビズマブ、ドコサノール、エンフビルチド、マラビロク、VariZIG(水痘免疫グロブリン)、アシクロビル、ガンシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、バルガンシクロビル、シドホビル、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、又はアデホビルジピボキシルである。
【0019】
幾つかの実施形態では、組成物は、1種以上の抗炎症剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、短時間作用性β-作動薬、長時間作用性β-作動薬、短時間作用性ムスカリン拮抗薬、長時間作用性ムスカリン拮抗薬、免疫抑制剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗感染剤、又はそれらの任意の組合せをさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、抗炎症剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、コルチコステロイドをさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、短時間作用性β-作動薬をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、長時間作用性β-作動薬をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、短時間作用性ムスカリン拮抗薬をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、長時間作用性ムスカリン拮抗薬をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、免疫抑制剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、抗生物質をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、抗真菌剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、抗感染剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、抗ヒスタミン剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、組成物は、気管支拡張剤をさらに含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、組成物は、マンニトール、塩化カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、酢酸ナトリウム、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、大豆レシチン、卵レシチン、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール、PEG(ポリエチレングリコール);ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DSPE);ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC);ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC);卵ホスファチジルコリン(EPC);DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン);パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC);スフィンゴミエリン(SM);メトキシポリエチレングリコール(MPEG);ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC);ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG);ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC);ジオレオリ-sn-グリセロ-ホホエタノールアミン(dioleoly-sn-glycero-phophoethanolamine, DOPE)、トリオレイン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(MPEG-DSPE)、又は1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロールナトリウム塩(DPPG)、をさらに含み得る。
【0021】
別の態様では、本発明は、ウイルスタンパク質の細胞外ジスルフィド結合を還元する方法を提供し、この方法は、ウイルスタンパク質を2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子と接触させる工程を含む。
【0022】
別の態様では、本発明は、ウイルスタンパク質の細胞外ジスルフィド結合を還元する方法を提供し、この方法は、ウイルスタンパク質を2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム粒子と接触させる工程を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、ウイルスタンパク質の細胞外ジスルフィド結合を還元する方法を提供し、この方法は、ウイルスタンパク質を2-メルカプトエチルアミン粒子と接触させる工程を含む。
【0024】
幾つかの実施形態では、ウイルスタンパク質はコロナウイルスのスパイクタンパク質である。幾つかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoVである。幾つかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV2である。幾つかの実施形態では、SARS-CoV2は、SARS-CoV2変異株である。幾つかの実施形態では、変異株は、デルタ株(B.1.617.2)、アルファ株(B.1.1.7)、ガンマ株(P.1)、ベータ株(B.1.351)、又はオミクロン株(B.1.1.529)である。
【0025】
幾つかの実施形態では、ジスルフィド結合を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%還元する。
【0026】
幾つかの実施形態では、粒子サイズは0.01ミクロン~15ミクロンである。
【0027】
幾つかの実施形態では、粒子サイズは、肺、胃腸系、腎臓、肝臓、心臓、脳、血液脳関門(BBB)、血液、組織、中枢神経系、リンパ節、膵臓、胆嚢、横隔膜、生殖器官、食道、結腸、又は膀胱の標的部位(target location)で主に吸収されるような大きさにする。
【0028】
幾つかの実施形態では、粒子サイズは、被験者の気道の標的部位で主に吸収されるような大きさにし、標的部位は上気道又は下気道である。
【0029】
幾つかの実施形態では、組成物のかさ密度は0.1~5g/mLである。
【0030】
幾つかの実施形態では、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子の空気動力学的中央粒子径は1~8μmである。幾つかの実施形態では、空気動力学的中央粒子径が6μm以下である組成物の微粒子画分は、10~90%である。幾つかの実施形態では、空気動力学的中央粒子径が5μm以下である組成物の微粒子画分は、10~90%である。幾つかの実施形態では、空気動力学的中央粒子径が7μm以下である組成物の微粒子画分は、10~90%である。
【0031】
幾つかの実施形態では、組成物は、経口、舌下、非経口、静脈内、経皮、又は皮下経路により送達される。
【0032】
幾つかの実施形態では、組成物は、鼻、口、気管、又は気管支を通して送達される。
【0033】
幾つかの実施形態では、組成物は、経鼻(nasally)、経口、舌下、静脈内、非経口、気管内、直腸、経皮、又は皮下に投与される。
【0034】
幾つかの実施形態では、組成物は、吸入、経口スプレー、点鼻薬(nasal spray)、点滴(instillation)、又はネブライザーにより投与される。
【0035】
幾つかの実施形態では、吸入は乾燥粉末吸入である。
【0036】
幾つかの実施形態では、被験者は少なくとも週1回治療を受ける。幾つかの実施形態では、被験者は少なくとも1日1回治療を受ける。幾つかの実施形態では、被験者は1日に1~4回治療を受ける。幾つかの実施形態では、被験者は外来患者として治療を受ける。
【0037】
定義
本発明を理解し易くするために、多くの用語を以下及び本開示全体を通して定義する。 特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における用語は、本発明の具体的な実施形態を説明するために使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲に概説されているもの以外は、本発明を限定するものではない。
【0038】
「1つの("a"、"an"、"the"等)」という用語は、唯一の実体のみを指すことを意図するものではなく、説明のために挙げた具体的な例とほぼ同等の種類のものを含むものとする。
【0039】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載されている値の上下10%以内の値を指す。
【0040】
「投与」又は「投与する」という用語は、ある用量の化合物又は医薬組成物を被験者に与える方法を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「薬理学的に有効な量」、「治療上有効な量」等の用語は、治療用組成物に関して使用される場合、哺乳動物(例えばヒト)を含む被験者に投与された場合に、臨床結果等の有益な結果や所望の結果をもたらすのに十分な量を指す。例えば、本明細書に記載される感染症の治療の文脈において、これらの用語は、組成物を投与せずに得られる応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物の量を指す。このような量に対応する本明細書に記載される組成物の所定の(given)量は、種々の因子、例えば、所与の薬剤、薬学的製剤、投与経路、疾患又は障害のタイプ、治療を受ける宿主又は被験者のアイデンティティー(例えば、年齢、性別、体重等)によって変化し得る。本開示の組成物の「有効量」、「薬理学的有効量」等としては、コントロールと比較して有益な若しくは望ましい結果をもたらす量が挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、又は「処置」という用語は、治療を目的とした化合物又は医薬組成物の投与を指す。「疾患を治療する」ため又は「治療的処置」のための使用とは、疾患又はその1つ以上の症状を改善して患者の状態を改善するために(例えば、炎症の1つ以上の症状を軽減することによって)、既に疾患に罹患している患者に処置を施すことを指す。「治療的」という用語は、特定の炎症過程の有害な臨床的影響(即ち、炎症の症状というよりむしろ炎症の結果)を軽減する効果を含む。本発明の方法は、一次予防手段として、即ち、病態を予防するため、又は病態を発症するリスクを軽減するために用いることができる。予防とは、病態又は疾患を完全には発症していないかもしれないが、病態に罹患しやすいか、そうでなければそのリスクがある患者に対する予防的処置を指す。従って、特許請求の範囲及び実施形態では、本発明の方法は、治療目的又は予防目的のいずれにも使用することができる。
【0043】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、実施例、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】スパイクタンパク質のアミノ酸配列の変異領域を示している:SARS-CoV-2とその変異株であるA)アルファ株(B.1.1.7)、B)ベータ株(B.1.351)、C)ガンマ株(P1)及びD)デルタ株(B.1.617.2)の、受容体結合ドメイン(RBD)領域を強調している。
【
図2】本発明の組成物の濃度を増加させたときの、ヒトACE-2受容体と結合するSARS-CoV2スパイクタンパク質の程度(%)に及ぼす本発明の影響を示す。
【
図3】カプセル化した2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、カプセル化していない2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエチルアミン、及びN-アセチルシステインの濃度を増加させながらインキュベートした場合の、SARS-CoV2スパイクタンパク質と結合するACE-2受容体のパーセンテージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な説明
以下の説明では、特許請求の範囲に記載される主題を完全に理解できるように、具体的な詳細とともに様々な実施例を記載する。しかしながら、特許請求の範囲に記載される主題は、本明細書で開示される具体的な詳細のうちの1つ以上がなくても実施され得ることは、当業者には理解できるであろう。さらに、幾つかの状況において、周知の方法、手順、システム、及び/又は構成要素については、特許請求の範囲に記載される主題を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細に記載していない。詳細な説明及び特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定的な意味合いを持つものではない。ここに提示された主題の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用してもよいし、また他の変更を加えてもよい。本明細書で一般的に説明されるような本開示の態様は、多種多様な異なる構成で配置し、置き換え、組み合わせ、及び設計することができ、それら全ては想定の範囲内であり、且つ本開示の一部を構成することが容易に理解できるであろう。
【0046】
本発明の範囲を限定するものではないが、本発明は治療剤の抗ウイルス活性に関する。国際特許出願第PCT/US2021/047774号(参照により本明細書に組み込まれる)には、本発明者らが発見した例示的な治療剤を用いて、ウイルス感染のリスク低減及び/又は治療することができることが記載されている。
【0047】
ウイルス感染
幾つかの実施形態では、本発明は、感染症のリスクのある被験者においてウイルス性呼吸器感染症のリスクを低減する方法、又は感染症発症後の被験者を治療する方法に向けられている。本発明の組成物は、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減し、様々なウイルス性呼吸器感染症を治療するものである。
【0048】
幾つかの実施形態では、本発明は、経口、吸入、鼻腔内(intranasal)、非経口、直腸、経皮、及び/又はネブライザーにより投与される抗ウイルス組成物の使用による、ウイルス性呼吸器感染症(例えばコロナウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19疾患の原因である重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、感冒ウイルスであるライノウイルス、RSウイルス(RSV)、鳥インフルエンザウイルス、インフルエンザA、B、及びCウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、オルソミクソウイルス:ブニヤウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、肺炎、結膜炎、胃腸炎、咽頭炎、急性出血性膀胱炎、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、HPV1~65型、パルボウイルスB 19、イヌパルボウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、アクアルコウイルス、コルチウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、コロナウイルスとトロウイルス、ペチウイルス、C型肝炎様ウイルス、アルファウイルス、ルビウイルス、トゴトウイルス、ハンタウイルス、ナイロウイルス、フレボウイルス、狂犬病ウイルス、エフェメロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス等)によって引き起こされる又は悪化する疾患のリスク低減及び治療に向けられる。
【0049】
幾つかの実施形態では、本発明は、ウイルス性呼吸器感染症によって引き起こされる又は悪化する疾患のリスク低減及び治療に向けられているが、ここでのウイルス感染症とは、ヘルペスウイルス科、パピローマウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、アネロウイルス科、サーコウイルス科、ジェノモウイルス科、パルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、レトロウイルス科、ピコビルナウイルス科、レオウイルス科、コロナウイルス科、アストロウイルス科、カリシウイルス科、フラビウイルス科、マトナウイルス科、ヘパウイルス科、ピコルナウイルス科、トガウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、ニューモウイルス科、ラブドウイルス科、アレナウイルス科、ハンタウイルス科、ナイロウイルス科、ペリブニヤウイルス科、フェヌイウイルス科、及びオルトミクソウイルス科からなる群より選択されるウイルス科によるものである。
【0050】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)
SARS-CoV-2感染により引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中で2億5,200万人以上の感染が確認され、500万人以上が死亡している世界的パンデミックである。米国では4600万人以上の感染が確認され、76万人以上が死亡している。人的被害だけでなく、パンデミックは国際通貨基金(IMF)により、1930年代の世界恐慌に匹敵する規模の世界的な衰退の原因とも言われている。世界経済は3.5%縮小し、特定地域の経済と失業率が劇的に増加した。
【0051】
COVID-19の臨床症状は不均一で、無症状のものから、人工呼吸や死亡に至る重症呼吸不全まである。重症のSARS-CoV-2肺感染症の病理学的特徴は、好中球性の炎症、肺胞内の線維性滲出液を伴う粘液栓、肺胞損傷、及び微小血栓である。
【0052】
高齢者や肺に基礎疾患のある患者は、免疫反応や損傷した上皮の修復能が低下しているため、COVID-19の重症化リスクが著しく高くなる。粘液線毛クリアランスの低下もまた、ウイルスがガス交換ユニットへと容易に拡散する一因となる。粘液による気道の閉塞は局所的な低酸素と気道上皮細胞の壊死を引き起こす。壊死した上皮細胞は、感染がなくても好中球性の炎症を引き起こす。
【0053】
2020年8月、食品医薬品局(FDA)は、16歳以上のCOVID-19疾患の予防を目的とした、ファイザー・ビオンテック社製の最初のCOVID-19ワクチンを承認した。ファイザー・ビオンテック社製ワクチンの承認に続き、モデルナ社、アストラゼネカ社、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の3種類のワクチンが承認された。ワクチン接種率が上昇するにつれて、COVID-19の感染者数は減少した。しかし、より感染力が強く、広範な疾病、入院、及び死亡を引き起こし、現在利用可能なワクチンでは有効性が低い新しいウイルス株が増加し、ワクチン接種被験者におけるブレークスルー感染も増加している。
【0054】
コロナウイルスはウイルスの一種で、感冒、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、及びCOVID-19感染症等の病気を引き起こす可能性がある。
【0055】
SARS-COV2ゲノムは、ヌクレオカプシド(N)タンパク質、膜(M)タンパク質、スパイク(S)タンパク質、及びエンベロープ(E)タンパク質の4つの構造タンパク質と、幾つかの非構造タンパク質をコードしている。Sタンパク質はウイルス表面に集積し、宿主細胞表面受容体へのウイルスの付着及びウイルス膜と宿主細胞膜の融合を仲介して、ウイルスが宿主細胞内に侵入し易くする。ウイルスは、コロナウイルスのスパイク(S)糖タンパク質のRBD(各スパイクモノマーにはS1サブユニットとS2サブユニットが含まれる)を利用して、鼻、喉、及び肺等の呼吸器官の中にあるものを含む多くのヒト細胞の外膜に存在する共通のヒト・アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に結合する。
【0056】
SARS-CoV2とACE2受容体の結合は、細胞膜とウイルス膜の融合を引き起こして細胞内に侵入する一連の過程を開始する。ACE2受容体への結合は、SARS-CoV2が標的細胞に侵入するための最初の重要ステップであり、ワクチンや治療薬の探索では、この結合を阻害することに焦点が当てられている。
【0057】
上皮細胞表面のACE2受容体は、一般にSARSとして知られる重症急性呼吸器症候群の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1(SARS-CoV)の侵入も媒介する。しかし、SARS-CoV-2のACE2への結合力は、SARS-CoVのそれよりも2~4倍強力である。この結合力の強さは、スパイクタンパク質の配列の違いにより、受容体に認識されやすいRBDが安定化したためと考えられている。
【0058】
ウイルスはしばしば突然変異によって変化する。元のウイルスの変異株は、ウイルスのアミノ酸配列に1つ以上の新たな変異がある場合に発生する。2020年3月以降、病原性の程度の差はあるものの、SARS-COV2の新たな遺伝子変異体が幾つか出現している。世界保健機関(WHO)はそのうちの4つを「懸念される変異株(VOC)」と宣言している。米国疾病管理センター(CDC)は、懸念される変異株を、受容体結合の変化、過去の感染やワクチン接種に対して生成された抗体による中和力の低下、治療効果の低下、潜在的な診断上の影響(potential diagnostic impact)、又は感染力や疾患の重症度の増大の予測と関連付けられた特定の遺伝子マーカーを持つ変異株と定義している。
【0059】
現在流行しており、米国で懸念されているSARS-COV2変異株として、以下のものが挙げられる:
-デルタ株(B.1.617.2):デルタ変異株は2020年10月にインドで確認され、2021年3月に米国で初めて報告された後、急速に優勢になった。この変異株は現在、米国で最も一般的なCOVID-19の変異株である。デルタ変異株は初期の変異株に比べて感染力が2倍近くあり、より重症化する可能性がある。デルタ変異株の最大の感染リスクはワクチン未接種者である。しかし、ワクチンを完全に受けた人でも、症状を伴うブレイクスルー感染をした場合、他の人にウイルスを拡散する可能性がある。デルタ変異株は、一部のモノクローナル抗体治療やCOVID-19ワクチンによって生成される抗体の有効性を低下させる可能性もある。
-アルファ株(B.1.1.7):アルファ株は英国で最初に出現した。COVID-19のアルファ変異株は感染拡大がより容易なようで、これまでに流行した変異株と比較すると感染率は約50%高い。またアルファ変異株は、入院や死亡のリスクも高い可能性がある。
-ガンマ株(P.1):ガンマ株はブラジルで最初に表面化した。ガンマ株は、一部のモノクローナル抗体薬や、過去のCOVID-19感染やCOVID-19ワクチンによって生成された抗体の有効性を低下させる。
-ベータ株(B.1.351):ベータ株は南アフリカで最初に表面化した。ベータ変異株はより広まりやすいようで、これまでに流行した変異株と比較して感染率が約50%高い。また、一部のモノクローナル抗体薬や、以前のCOVID-19感染やCOVID-19ワクチンによって生成された抗体の有効性も低下させる。
-オミクロン株(B.1.1.529):オミクロン株は南アフリカで最初に検出された。オミクロン変異株には多数の変異株が含まれ、感染拡大のリスク、疾患の重篤化、及び一部のモノクローナル抗体薬や、過去のCOVID-19感染やCOVID-19ワクチンによって生成された抗体の有効性を低下させる。
【0060】
図1は、スパイクタンパク質のアミノ酸配列の変異領域を示す。SARS-CoV-2と並べてそれぞれA)アルファ株(B.1.1.7)、B)ベータ株(B.1.351)、C)ガンマ株(P1)及びD)デルタ株(B.1.617.2)のRBD領域を強調している。
図1はさらに、スパイクタンパク質の中で変異が起こった場所の60個の連続したアミノ酸残基のアラインメントを示す。
【0061】
ウイルスのスパイクタンパク質の変異は、変異株がもたらす疾患の重症度に関係がある。スパイクタンパク質の受容体結合ドメインにおける突然変異により、ウイルスがヒトの受容体により強固に結合できるようになり、感染力が強くなり、以前に暴露又は感染した人に再感染できるようになり、ワクチン接種を受けた被験者の免疫反応を回避する可能性がある。このような感染はしばしばブレイクスルー感染と呼ばれる。
【0062】
本発明の組成物はウイルスの突然変異に関係なく有効である。理論に縛られる訳ではないが、本発明の組成物は、ウイルスのジスルフィド架橋による水素結合、及びウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメインの他のゼロ価の相互作用の両方を破壊し、受容体結合ドメインの三次元構造を変化させる。本発明の組成物はまた、受容体の細胞外結合部位も変化させる可能性がある。ウイルスのスパイクタンパク質の三次元構造が変化すると、結合親和性がさらに低下することにより、受容体媒介機構を介したウイルスの細胞内への侵入の低下につながる可能性がある。
【0063】
新たな変異を有する変異株は、幾つかの抗体治療の有効性を低下させることが示されており、重大な問題となっている。変異が今後も続く可能性があることを考えると、変異にとらわれず、全ての変異株に対してスパイクタンパク質RBDと宿主細胞の受容体との結合を阻害できる治療薬が当分野で非常に必要とされており、全ての患者に利益をもたらすであろう。
【0064】
RBDと宿主の受容体との結合を減少させるために、低分子及び広域中和抗体を介してスパイクタンパク質を標的とすることにより、COVID-19の感染を治療し、及びその更なる感染リスクを低減する方法を提供する。本発明の目的は、ウイルスの変異に関係なく、被験者のウイルス感染リスクを低減し、治療することである。本発明の組成物は、特定のアミノ酸残基の変異に関係なく、ウイルスタンパク質の構造を変化させることにより、この目的を達成する。
【0065】
幾つかの実施形態では、本発明は、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する、又は被験者のウイルス感染を治療するものであり、ここでのウイルス感染とはコロナウイルスである。幾つかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoVである。幾つかの実施形態では、コロナウイルスはSARS-CoV2である。幾つかの実施形態では、ウイルス感染はSARS-CoV2変異株である。幾つかの実施形態では、ウイルス感染はSARS-CoV2変異株、例えばデルタ株(B.1.617.2)、アルファ株(B.1.1.7)、ガンマ株(P.1)、ベータ株(B.1.351)、又はオミクロン株(B.1.1.529)である。
【0066】
ライノウイルス
ライノウイルスやRSウイルス(RSV)を含む多くのウイルスは、肺の増悪、救急外来受診、及び入院の原因となっている。ライノウイルスは感冒ウイルスで、小児から成人まで上気道症状を引き起こす。ライノウイルスは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症等の慢性呼吸器疾患患者の肺増悪に関連していることが最も確認されているウイルスでもある。肺増悪は呼吸器症状(咳、喘鳴、喀痰、呼吸困難)の悪化を特徴とし、救急外来受診(COPD:年間150万人、喘息:年間172.5万人(米国))や入院(COPD:年間72.6万人、喘息:年間50万人(米国))に至る場合もある。
【0067】
ライノウイルスには160種類以上のタイプがあり、遺伝的に異なる3つのグループ(RV-A、RV-B、RV-C) がある。ほとんどの呼吸器疾患はRV-AとRV-Cによって引き起こされる。ライノウイルスは、呼吸器の上皮細胞への侵入に使用される細胞表面受容体によっても分類することができる。RV-AとRV-Bの大部分は細胞間接着分子-1(ICAM-1)を受容体として使用する。一部のRV-Aは低密度リポタンパク質受容体(LDLR)ファミリーのメンバーを使用する。RV-Cはカドヘリン関連ファミリーメンバー3(CDHR3)を用いる。これらの受容体タンパク質の三次元構造は、タンパク質内のCys-Cysジスルフィド結合、水素結合、及び特異的なタンパク質の折り畳みの結果としてアミノ酸残基間に形成されるその他の静電結合を介して安定化されている。この三次元構造により、特定の部位の提示が認識され、受容体と結合し、宿主細胞内への輸送を促進することができる。3つのライノウイルス受容体は全て細胞外ドメインによって特徴づけられる。これらのドメインはコイル状であり、Cys-Cysジスルフィド結合によってその構成を実現している。ウイルス表面タンパク質は、宿主細胞受容体のこれらのドメインに認識される特異的結合部位を形成し、細胞接着をもたらす。ウイルスタンパク質の三次元構造及び/又は宿主細胞受容体の細胞外ドメインの変化は、ウイルスが宿主細胞に侵入する能力に影響を及ぼすので、ウイルスの感染力及び病原性に影響を及ぼす可能性がある。
【0068】
RSウイルス(RSV)
RSウイルス(RSV)は、幼い子供や高齢者における上気道及び下気道疾患の主要な原因である。このウイルスは1955年に同定され、公的機関や複数のバイオテクノロジー企業の努力にもかかわらず、有効なRSVワクチンはまだ開発されていない。現在、未熟児やハイリスク児に対する受動的免疫予防として承認されている介入は、ヒト化モノクローナル抗体のみである。RSV呼吸器感染症は、先進国では乳幼児の入院の最も一般的な原因である。世界的には、RSVは5歳未満の子供で年間約60,000人の院内死亡の原因となっている。RSVは2歳までにほぼ全ての子供に感染し、乳幼児の2%が重症化する。小児期以外にも、CDCの推定では、毎年177,000人の高齢者がRSV感染により入院している。
【0069】
RSVはその表面に、宿主細胞表面の受容体CX3CR1に結合する接着タンパク質Gを持っている。Gタンパク質の可溶形態は免疫回避に使われる。G融合タンパク質は、宿主細胞へのRSVの侵入に必要な重要なヘアピン構造(Cys-Cysジスルフィド結合を介して支えられている)を持っている。もう一つのRSV表面タンパク質であるFタンパク質は、ドメインへの宿主細胞の接着(他の受容体の中でも特にICAM-1への結合)を促進し、ウイルスと宿主細胞との融合において重要な役割を果たす。Fタンパク質の立体構造もまた、重要なCys-Cysジスルフィド結合に依存している。G及びFタンパク質の三次元構造に変更を加えると、宿主細胞へのRSVの侵入能力、ひいてはRSVの病原性に影響を及ぼすであろう。
【0070】
幾つかの実施形態では、本発明は、リスクのある被験者において(ライノウイルスによる)ウイルス感染リスクを低減する、又は被験者のウイルス感染を治療する。幾つかの実施形態では、本発明は、リスクのある被験者において(RSVによる)ウイルス感染リスクを低減する、又は被験者のウイルス感染を治療する。
【0071】
リスクのある被験者
本発明には、「リスクのある」被験者のウイルス感染リスクを低減する方法が含まれる。リスクのある被験者とは、ウイルス感染症に罹患しやすい被験者、又はウイルス感染症によって重症化しやすい被験者のことである。重症化とは、入院、集中治療、呼吸を助けるための酸素吸入や人工呼吸器を必要とする可能性があり、死に至る可能性のある人を意味する。
【0072】
幾つかの実施形態では、リスクのある被験者は、医学的状態又は既往症と診断される。リスクのある被験者は、がん、腎臓疾患、肺疾患又は呼吸気道疾患、認知症又は他の神経疾患、糖尿病(1型又は2型)、トリソミー21、高血圧、心臓疾患、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、免疫抑制状態(immunocompromised state)、肝臓疾患、鎌状赤血球疾患又はサラセミア、脳卒中又は脳血管疾患と診断された人でもよい。リスクのある被験者は妊娠中の人でもよい。リスクのある被験者は、過体重の人でもよい。リスクのある被験者は、肥満であってもよく、例えば、体格指数(BMI)が40を超えていてもよい。リスクのある被験者は、現在又は過去に喫煙者であった人でもよい。リスクのある被験者は、固形臓器移植又は血液幹細胞移植を受けた人でもよい。リスクのある被験者は、物質使用障害(substance use disorder)の人でもよい。リスクのある被験者は、障害者でもよい。リスクのある被験者は、慢性疾患又は慢性状態と診断された人でもよい。リスクのある被験者は、無関係の病気のために免疫抑制剤による治療を受けている人でもよい。
【0073】
リスクのある被験者は、肺又は呼吸気道疾患と診断された人でもよい。本発明の恩恵を受ける可能性のある状態及び疾患には、喘息、原発性毛様体ジスキネジア(PCD)、嚢胞性線維症(CF)、気管支拡張症(BE)、気管支肺異形成症(BPD)、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、閉塞性細気管支炎(BO)、肺気腫、気管支炎、肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、その他の肺及び気道疾患、その他の粘液閉塞性疾患、慢性閉塞性気道疾患(COAD)、急性呼吸窮迫症候群、慢性呼吸窮迫、肺のウイルス及び細菌感染、副鼻腔及び耳の疾患、が含まれる。
【0074】
幾つかの実施形態では、リスクのある被験者は、年齢によりリスクありに分類され得る。高齢者は全人口に比べてリスクが高い。リスクのある被験者は65歳を超えた人としてもよい。小児は、RSVのような幾つかのウイルスを獲得するリスクが全人口に比べて高い。リスクのある被験者は5歳未満としてもよい。リスクのある被験者は未熟児としてもよい。上記のような基礎疾患を持つ被験者は、年齢を問わずリスクがある。
【0075】
幾つかの実施形態では、リスクのある被験者は、住宅条件、職業上の曝露、又は他の環境要因によってリスクありに分類され得る。例えば、リスクのある被験者は介護施設の居住者としてもよいし、リスクのある被験者は医療従事者としてもよい。
【0076】
抗ウイルス組成物
本発明は、ウイルス感染のリスクがある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法、又は被験者のウイルス感染を治療する方法に向けられている。
【0077】
本発明は、治療活動を安定化し、予期される投与量を低減し、徐放性とすることが可能であり、及び送達前に相互作用しないよう他の分子と組み合わせることが可能である。これらの利点を以下に詳細に説明する。
【0078】
本発明は、ウイルス感染のリスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法、又は被験者のウイルス感染を治療する方法を提供する。この方法は、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミンを含有する組成物を被験者に投与する工程を含む。
【0079】
幾つかの実施形態では、抗ウイルス剤は2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムである。理論に縛られる訳ではないが、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムは、ウイルスタンパク質の三次元構造を変化させ、結合を減少させ又は阻害し、宿主細胞へのウイルスの侵入を妨げることができる独特の化学構造を有する点で有利である。2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムは、親水性を有する電荷を帯びた末端スルホン酸基をさらに有しており、ウイルスタンパク質の水素結合やジスルフィド結合を切断することができる。
【0080】
SARS-COV2において、スパイクタンパク質のRBDに、RBDの三次元構造と結合部位を安定化させる4つのCys-Cys対のジスルフィド結合が含まれている。そのうちの3つはコアにあり(Cys336-Cys361、Cys379-Cys432、及びCys391-Cys525)、βシート構造を安定化させる役割を果たしている。4番目のペア(Cys480-Cys488)はRBDの接触領域にあり、受容体結合モチーフ(RBM)の遠位端のループをつないでいる。
【0081】
さらに、ACE受容体に認識されるために必要なRBDの構造を安定化させるための静電水素結合も数多く存在する。ACE2のN末端ペプチダーゼドメインには2つのローブ(lobe)があり、その間に結合部位を形成している。SARS-CoV2 RBDの中の伸びた(extended)RBMは、ACE2の小さなローブの下側に接触しており、RBMの凹んだ外表面はACE2のN末端ヘリックスを収容する。
【0082】
理論に縛られる訳ではないが、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムは、末端の遊離チオール基と末端の電荷を帯びたスルホン酸基を組み合わせて、SARS-CoV2スパイクタンパク質の構造を変化させる二重作用を提供する。2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの遊離チオール基は、RBDの4つのジスルフィドCys-Cys結合を切断する可能性があり、電荷を帯びたスルホン酸基は、ACE-2受容体で認識されるようにRBD構造を安定化させる水素結合やその他の非共有結合を破壊する可能性がある。このような作用の組合せにより、スパイクタンパク質のRBDの三次元構造を変化させ、ACE-2受容体と結合する能力に影響を及ぼす可能性がある。
【0083】
Cys-Cys対はSARS-CoV2の全ての変異株で保存されている。従って、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムは変異に関係なく結合を阻害する可能性がある。さらに、理論に縛られる訳ではないが、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムが気道の活性酸素種を消去する能力は、酸化ストレスを軽減するという付加的な利益をもたらす。
【0084】
本発明は、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する、又は被験者のウイルス感染を治療する方法であって、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、被験者のウイルス感染リスクを低減する、又は被験者のウイルス感染を治療する方法であって、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法を提供する。
【0085】
幾つかの実施形態では、抗ウイルス剤は、システアミンとしても知られる2-メルカプトエチルアミンである。理論に縛られる訳ではないが、2-メルカプトエチルアミンも、ウイルスタンパク質のジスルフィド結合及び細胞外成分を破壊して、受容体結合ドメインの三次元構造を変化させる可能性がある。その過程で、2-メルカプトエチルアミンはシステイン-システアミン混合ジスルフィド結合を形成する可能性がある。2-メルカプトエチルアミンはまた、細胞内へのL-システインの輸送を促進する可能性があり、L-システインはさらに、活性酸素種を消去し抗炎症剤として機能する強力な細胞内抗酸化物質であるグルタチオンの合成に使用される可能性がある。従って、2-メルカプトエチルアミンは、ウイルス侵入速度を低下させると同時に、活性酸素種によって引き起こされる炎症を抑制することもできる。本発明は、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法、又は被験者のウイルス感染を治療する方法であって、2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法、又は被験者のウイルス感染を治療する方法であって、2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法を提供する。
【0086】
組成物の形態
幾つかの実施形態では、本組成物は乾燥粉末形態である。乾燥粉末製剤は、(室温等での)優れた安定性や保管及び輸送の容易さ等を含む幾つかの利点を提供する。乾燥粉末製剤は、吸入が容易であり、投与が迅速であり、携帯可能であり、感染リスクが低い。幾つかの実施形態では、吸入による送達は、副作用のリスクを低減する可能性もある。幾つかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、噴霧乾燥を用いて製造される。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は噴霧乾燥粉末である。幾つかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、投与する前に液体形態に再構成するものであってもよい。
【0087】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は液体形態であってもよい。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、例えば5歳未満の子供又は人工呼吸器を装着している患者にネブライザー又は点滴により投与するために、可溶化して溶液として再構成される。ネブライザー及び点滴は、子供及び人工呼吸器を装着している患者への投与に有利である。
【0088】
賦形剤
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、1種以上の賦形剤を含む。
【0089】
幾つかの実施形態では、本発明は、抗ウイルス剤及び1種以上の賦形剤を含む吸入可能な及び/又は鼻腔内用の組成物、並びにリスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法、又は被験者のウイルス感染を治療する方法であって、抗ウイルス剤及び1種以上の賦形剤を含む組成物を被験者に吸入を介して投与することを含む方法に向けられている。
【0090】
例示的な賦形剤としては、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、大豆レシチン;卵レシチン;水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC);コレステロール、ポリエチレングリコール(PEG);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);DSPE(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン);DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン);DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン);EPC(卵ホスファチジルコリン);DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン);POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン);SM(スフィンゴミエリン);MPEG(メトキシポリエチレングリコール);DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン);ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG);DSPG(ジステアロイルホスファチジルグリセロール);ジエルコイルホスファチジルコリン(DEPC);ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン(DOPE);トリオレイン;1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩(MPEG-DSPE);ホスファチジルコリン(PC);及び1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロールナトリウム塩(DPPG)が挙げられる。幾つかの実施形態では、賦形剤は、リン脂質をベースとし、肺サーファクタントの一部であり、従って肺環境に適合するものである。
【0091】
幾つかの実施形態では、賦形剤は、組成物全体の50%未満、例えば、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、又は1%未満を占めていてもよい。幾つかの実施形態では、賦形剤は、組成物全体の1~50%、例えば、1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、又は40~50%を占める。
【0092】
投与
本発明は、本発明の組成物の投与により、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減するため又は被験者のウイルス感染を治療するための治療剤及び方法を包含する。本発明の組成物は、経鼻、経口、舌下、静脈内、非経口、気管内、直腸、経皮、又は皮下に投与され得る。
【0093】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、経鼻、経口、気管内、及び気管支吸入を含む経路のいずれか1つ以上を介した直接肺投与により被験者に送達される。吸入可能な及び/又は鼻腔内用抗ウイルス剤である本発明は、上気道及び/又は下気道に侵入するためにこれらの経路を使用する特定のウイルスに対して鼻腔及び口腔通路に直接送達できる、呼吸器管の下部に存在するウイルスに到達することができる、並びに炎症及び気道閉塞を引き起こす可能性のある気道粘液栓の部位に到達することができる等、複数の利点を提供する。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、気道サーファクタント層上に沈着するように処方され、気道表面による遅延吸収を提供することができ、その結果、気道表面で長く保持されることができる。
【0094】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、吸入可能な及び/又は鼻腔内投与用リポソーム、ミクロスフェア、人工噴霧乾燥粒子、又はナノ粒子を肺及び呼吸器に直接投与する手段によって送達することができる。
【0095】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、鼻腔内経路、直接点滴、乾燥粉末吸入、湿式ネブライザーによる吸入、又は気道経路を介したエアロゾル吸入によって展開することができる。
【0096】
吸入若しくは鼻腔内経路による送達方法は、吸入器(例えば、乾燥粉末吸入器やカプセルベースの単回用量低抵抗吸入デバイス等の低抵抗吸入器(low-resistance inhaler));点鼻スプレーデバイス;スポイト;携帯型ネブライザー等のネブライザー;又は薬剤カプセル化粒子を吸入経路及び/又は鼻腔内経路で送達することができるコンプレッサー-ネブライザー吸入デバイスのような、分散器具の使用を想定している。幾つかの実施形態では、進行した呼吸器疾患であっても製品を吸入しやすいように、分散装置が使用される。
【0097】
本発明の組成物に適合する例示的なデバイスは、例えば、サイズ#2及び/又は#3のカプセルが個々にパッケージングされたRS01単回用量吸入器である。単回用量吸入器は、そのデバイスが抵抗性が低く、且つ患者の吸入能力に応じて15~20L/分~100L/分の流速で良好に機能するため、呼吸困難の患者であっても本発明の薬物粒子が肺深部まで到達する点で有利である。本発明の組成物の粒子は、効力及び充填重量の要望に応じて、サイズ#3カプセルに充填することができる。例示的な充填重量は、40mg未満、例えば、30mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満、10mg未満、5mg未満、又は1mg未満である。次に、上記のものを、患者が15~60LPMの流速(ゆっくり且つ深い吸入)で、(例えば、Plastiape DPI(RS01)又は他の吸入器もしくはネブライザーを使用して)吸入することができる。
【0098】
幾つかの実施形態では、組成物は気管内デバイスを用いて投与される。
【0099】
幾つかの実施形態では、製剤は処方薬であり、これは患者の都合に応じて吸入器を介してどこでも(例えば自宅で)迅速かつ簡便に送達されるため、投与するのに入院や臨床環境を必要としない点で有利である。
【0100】
幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも1週間に1回(例えば1日おき、1日1回、1日2回、1日3回等)投与される。幾つかの実施形態では、組成物は、1日に1~4回投与される。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも1日1回投与される。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも1日2回投与される。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも1日3回投与される。
【0101】
幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも3日間(例えば、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、又は少なくとも14日間)投与される。
【0102】
幾つかの実施形態では、本発明は、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する方法であって、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法を含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも1日1回投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも1日2回投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも1日3回投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも3日間投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも5日間投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも7日間投与することを含む。
【0103】
幾つかの実施形態では、本発明は、被験者においてウイルス感染を治療する方法であって、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2-メルカプトエチルアミン粒子を含む組成物を被験者に投与することを含む方法を含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも1日1回投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも1日2回投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも1日3回投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも3日間投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも5日間投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、組成物を少なくとも7日間投与することを含む。
【0104】
投薬
組成物の用量としては、本明細書において多数挙げられる。幾つかの実施形態では、被験者に送達される組成物は、約5mg~約600mgとしてもよく、例えば5~50mg、5~100mg、50~100mg、100~150mg、100~300mg、100~400mg、100~500mg、150~200mg、200~250mg、200~400mg、200~500mg、250~300mg、300~350mg、350~400mg、400~450mg、400~500mg、400~600mg、450~500mg、500~550mg、500~600mg、又は550~600mg等である。本明細書において、抗ウイルス剤の用量としては5mg超が挙げられる、例えば10mg超、15mg超、20mg超、25mg超、30mg超、35mg超、40mg超、45mg超、50mg超、60mg超、70mg超、80mg超、90mg超、100mg超、125mg超、150mg超、175mg超、200mg超、250mg超、300mg超、350mg超、400mg超、450mg超、500mg超、550mg超等である。
【0105】
組成物中の抗ウイルス剤の量としては、本明細書に多数挙げられる。本発明の組成物中の抗ウイルス剤の量は、組成物全体の約50~99%としてもよく、例えば、50~60%、50~70%、50~75%、50~80%、50~90%、60~70%、60~80%、60~90%、70~80%、70~90%、80~90%、90~95%、又は90~100%である。
【0106】
本発明の組成物は、総重量が50%を超える(例えば、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、99%超、又は99.9%超の)抗ウイルス剤を含んでもよい。
【0107】
標的部位
幾つかの実施形態では、本発明の組成物の粒子サイズは、標的部位で主に吸収されるように定められる。本発明の粒子は、人体の標的部位で吸収されることによりウイルス感染を標的とするように製剤化することができる。
【0108】
幾つかの実施形態では、粒子サイズは、肺、胃腸系、腎臓、肝臓、心臓、脳、血液脳関門(BBB)、血液、組織、中枢神経系(CNS)、リンパ節、膵臓、胆嚢、横隔膜、生殖器、食道、結腸、又は膀胱の標的部位で主に吸収されるように定められる。
【0109】
幾つかの実施形態では、粒子サイズは、被験者の気道の標的部位で主に吸収されるように定められるが、ここで標的部位とは、上気道又は下気道である。
【0110】
カプセル化
幾つかの実施形態では、組成物の形態はカプセル化粒子である。
【0111】
幾つかの実施形態では、本製剤は、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムのモノマー形態のようなチオール剤の酸化活性を安定化し、治療活性が損なわれるのを防ぐ。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの活性モノマー状態を安定化するように構成される。
【0112】
幾つかの実施形態では、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムのチオール基は、ジスルフィド結合を介して二量体化しないようにしてある。しかしながら、場合によっては、理論に束縛されるわけではないが、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムは、酸素が豊富な環境において自己酸化して二量体であるジ-2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムを形成する可能性があり、その結果、治療活性が失われる可能性がある。
【0113】
従って、本発明は、送達前の相互作用がなく抗ウイルス活性が安定している、という利点を提供する。幾つかの実施形態では、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムは、ウイルスタンパク質のジスルフィド結合及び他の静電相互作用を切断する2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの能力を高めるために、マイクロスフェア、噴霧乾燥、リポソーム、又はナノ粒子カプセル化等の粒子のカプセル化によって安定化することができる。さらに、カプセル化粒子は安定性があるため、特殊でコストの高いコールドチェーン供給法を必要とするのとは対照的に、標準的なサプライチェーンの使用が可能になる。
【0114】
さらに、活性医薬成分のカプセル化は、標的薬物の送達に有用な方法である。理論に束縛されることを望むものではないが、リポソーム製剤は、米国特許第4,797,285号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に示されているように、医薬を特定の部位に送達し、特定の時間に放出するために使用することができる。リポソーム、ミクロスフェア、人工噴霧乾燥粒子、及びナノ粒子は、環境(血液、代謝、空気への暴露等)との相互作用から薬物を保護しながら、部位特異的に薬物を呼吸器に直接送達できるユニークな薬物キャリアである。
【0115】
このように、本発明のカプセル化ビヒクルは、抗ウイルス剤を単独で使用する若しくは他の療法と併用する場合に、送達前にその代謝物へと変わってしまわないよう保護することにより、薬物が標的部位で放出されるまで効力を維持するのに有利である。
【0116】
医薬活性化合物を封入したミクロスフィアとしては、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリラクチド、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン)、又はコポリマー(例えば、ポリエチレングリコール-ポリラクチドブロックコポリマー)が挙げられる。ミクロスフェアを形成する例示的な方法は、医薬活性成分を非水溶媒に溶解し、その溶液で水中油型エマルジョンを形成し、次いで有機溶媒を揮発させるものである。幾つかの実施形態では、ミクロスフェア組成物は噴霧乾燥されたものである。米国特許第7,011,776号は、ミクロスフェアの使用を示しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
噴霧乾燥粒子(人工噴霧乾燥粒子としても知られる)は、医薬活性化合物と担体の混合物を高温ガス流中に噴射することにより細かい液滴を形成するプロセスで形成することができる。混合物は溶液、懸濁液、スラリー等であってもよい。溶媒が蒸発すると、直径1ミクロンオーダーの個々の乾燥粒子が形成される。これらの人工噴霧乾燥粒子の形成方法に関するさらなる詳細は、米国特許第6,673,335号及び米国特許第5,993,805号に示されており、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0118】
ナノ粒子は、医薬活性化合物の標的部位への送達や定時放出のための薬物担体として使用されることがある。ポリマー及びコポリマー材料は、カプセル化のためのナノ粒子の調製に使用されるものの一つである。医薬活性成分をナノ粒子にカプセル化する例示的な方法は界面重合である。界面重合では、医薬活性成分と重合性モノマーを非水溶媒に溶解し、これを水性溶媒に加える。重合とカプセル化は有機相と水相の界面で起こる。重合性モノマーの顕著な例は、アルキルシアノアクリレート(ここでアルキルは、例えば、n-ブチル、イソブチル、イソヘキシル等)である。ナノ粒子カプセル化は、ペプチド医薬だけでなく、低分子の送達にも使用できる。さらなる方法及び組成物は、米国特許第8,3818,208号及び第5,641,515号に詳述されており、いずれも参照により組み込まれる。
【0119】
2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムのカプセル化の利点として、活性モノマー形態の安定化や、気道及び肺に直接送達できること等が挙げられる。2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムのカプセル化製剤は、気道に直接送達することができるため、肺からの吸収による全身曝露が制限され、全身性副作用のリスクが減少する。
【0120】
粒子特性
幾つかの実施形態では、組成物は、吸入したときに上気道及び下気道に沈着するのに適したサイズの粒子に製剤化することができる。
【0121】
本発明のミクロスフィア、リポソーム、人工噴霧乾燥粒子、及びナノ粒子は、かさ密度に基づいて評価することができる。単一の固体又は流体の密度が質量を体積で割ったものであるのに対し、かさ密度は質量を多数の粒子の体積で割ったものである。物質のかさ密度は、サンプルの中の個々の粒子の大きさによって変化する。微粒子化、噴霧乾燥、又は本組成物の粒子径に影響を及ぼす他の処理により、化学変化を経ずにサンプルのかさ密度が変化することがある。サンプルが呼吸器管を通って移動し得る距離は、かさ密度に一部依存する。本発明のかさ密度は、0.1~5g/mLの間(例えば、0.1~0.6、0.2~0.7、0.3~0.8、0.4~0.9、0.5~1、1~1.5、1.5~2、2~3、3~4、4~5g/mLの間)で変化し得る。
【0122】
使用されるミクロスフィア、リポソーム、人工噴霧乾燥粒子、及びナノ粒子は、空気動力学的中央粒子径(MMAD)により評価することもできる。空気動力学的中央粒子径がより小さい粒子ほど、被験者の気道内をより遠くまで移動する。空気動力学的直径が十分に小さい粒子は、下気道を通り抜ける。空気動力学的中央粒子径が大きい粒子は、上気道に沈着する(settle into)。本発明は、呼吸器の必要な任意の部分に標的送達するためにMMADの範囲を使用するものである。好ましい実施形態では、本発明の粒子のMMADは、0.1μm~10μm(例えば0.1~0.2、0.2~0.3、0.3~0.4、0.4~0.5、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1、1~1.25、1.25~1.5、1.5~1.75、1.75~2、2~2.25、2.25~2.5、2.5~2.75、2.75~3、3~3.5、3.5~4、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、6.5~7、7~7.5、7.5~8、8~8.5、8.5~9、9~9.5、9.5~10、0.1~1、1~3、3~5、5~7、又は7~10μm)である。
【0123】
空気動力学的中央粒子径は、見かけの空気力学的粒子径(即ち、測定されるサンプルの粒子と同じ終端速度で落下する水滴の粒子径)である。(集団の)空気動力学的中央粒子径=(集団の)幾何学的粒子径*かさ密度の平方根。
【0124】
好ましい実施形態では、粒子の空気動力学的中央粒子径は3.0~4.5μmである。
【0125】
好ましい実施形態では、様々な幾何学的サイズの粒度分布は、e<1.2μmの粒子が10%、3~4.5μmの粒子が50%、4.0~7.9μmの粒子が40%である。
【0126】
使用されるミクロスフェア、リポソーム、人工噴霧乾燥粒子、凍結乾燥粒子及びナノ粒子組成物は、微粒子画分(FPF)を用いて評価することができる。FPFは、標的薬物送達に望ましい空気動力学的中央粒子径(例えば、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、又は7μm)以下の空気動力学的中央粒子径を有する粒子が組成物中で占める割合である。望ましい空気動力学径は、呼吸器管内の標的部位によって異なる。採用する方法が上気道を標的とする場合、望ましい空気動力学径は大きくなり、採用する方法が下気道を標的とする場合、望ましい空気動力学的中央粒子径は小さくなる。組成物中のFPFの許容範囲は、組成物の10~90%、例えば、組成物の10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、10~40%、20~50%、30~60%、40~70%、50~80%、60~90%又は70~90%である。
【0127】
被験者に送達されるFPFの質量は、微粒子服用量(the fine particle dose (FPD))であり、FPDは、直径5μm未満の粒子のパーセントである。本明細書に記載の方法において許容されるFPDの範囲は、0.1~600mg、例えば0.1~1mg、0.1~250mg、1~2mg、2~3mg、3~4mg、4~5mg、5~6mg、5~50mg、5~100mg、6~7mg、7~8mg、8~9mg、9~10mg、1~7mg、3~6mg、1~10mg、10~20mg、20~30mg、30~40mg、40~50mg、50~100mg、100~150mg、100~300mg、100~400mg、100~300mg、100~400mg、100~500mg、150~200mg、200~250mg、200~400mg、200~500mg、250~300mg、300~350mg、350~400mg、400~450mg、400~500mg、400~600mg、450~500mg、500~550mg、500~600mg、又は550~600mgである。
【0128】
使用されるミクロスフィア、リポソーム、人工噴霧乾燥粒子、及びナノ粒子は、空気動力学的中央粒子径(MMAD)を用いて評価することもできる。空気力学的質量中央径がより小さい粒子ほど、被験者の気道内をより遠くまで移動する。空気動力学径が十分に小さい粒子は、下気道を通り抜ける。空気動力学的中央粒子径が大きい粒子は、上気道に沈着する。本発明は、呼吸器の必要な任意の部分に標的送達するためにMMADの範囲を使用するものである。好ましい実施形態では、本発明の粒子のMMADは、0.1μm~10μm、例えば、0.1~0.2、0.2~0.3、0.3~0.4、0.4~0.5、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1、1~1.25、1.25~1.5、1.5~1.75、1.75~2、2~2.25、2.25~2.5、2.5~2.75、2.75~3、3~3.5、3.5~4、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、6.5~7、7~7.5、7.5~8、8~8.5、8.5~9、9~9.5、9.5~10、0.1~1、1~3、3~5、5~7、又は7~10μmである。
【0129】
空気動力学的中央粒子径は、見かけの空気力学的粒子径(即ち、測定されるサンプルの粒子と同じ終端速度で落下する水滴の粒子径)である。(集団の)空気動力学的中央粒子径=(集団の)幾何学的粒子径*かさ密度の平方根。
【0130】
幾つかの実施形態では、粒子の空気動力学的中央粒子径は3.0~5.5μmである。
【0131】
好ましい実施形態では、様々な幾何学的サイズの粒度分布は、1.2μm未満の粒子が10%、3~4.5μmの粒子が50%、4.0~10μmの粒子が40%である。
【0132】
使用されるミクロスフェア、リポソーム、人工噴霧乾燥粒子、凍結乾燥粒子及びナノ粒子組成物は、微粒子画分(FPF)を用いて評価することができる。FPFは、標的薬物送達に望まれる空気動力学的中央粒子径(例えば、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、又は7μm)以下の空気動力学的中央粒子径を有する粒子が組成物中で占める割合である。望ましい空気動力学的径は、呼吸器管内の標的部位によって異なる。採用する方法が上気道を標的とする場合、望ましい空気動力学径は大きくなり、採用する方法が下気道を標的とする場合、望ましい空気動力学的中央粒子径は小さくなる。組成物中のFPFの許容範囲は、組成物の10~90%、例えば、組成物の10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、10~40%、20~50%、30~60%、40~70%、50~80%、60~90%又は70~90%である。
【0133】
ジスルフィド結合の還元
本発明は、ウイルスタンパク質中の細胞外ジスルフィド結合を還元する方法であって、ウイルスタンパク質を本発明の組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0134】
還元レベルは、例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%及び/又は約100%還元である。
【0135】
保存と安定性
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、乾燥粉末形態(カプセル、単回分若しくは複数回分の用量の乾燥粉末吸入器等)又は液体形態(ネブライザー用のアンプル等)で保存することができる。ある実施形態では、乾燥粉末形態のものを、投与前に溶液として再構成する。
【0136】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、安定性があり且つ酸化又は他の種類の分子崩壊に対して耐久性があるように処方される。従って、理論に束縛されるわけではないが、より多くの薬物が、活性のある還元されたモノマー形態で作用部位に到達する。到達性と安定な活性が相まって、例えば投与量を減らしても、製品をより効果のあるものにすることができる。
【0137】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は室温で保存される。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、例えば40°Fにて冷蔵される。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、氷点下にて保存される。
【0138】
併用療法
本発明は、ウイルスに対する単一療法及び併用療法の両方に向けられている。従って、幾つかの実施形態では、本発明は、リスクのある被験者においてウイルス感染リスクを低減する、又は被験者のウイルス感染を治療するための、併用療法を含む。
【0139】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、抗炎症剤、コルチコステロイド、短時間作用性β-作動薬、長時間作用性β-作動薬、短時間作用性ムスカリン拮抗薬、長時間作用性ムスカリン拮抗薬、免疫抑制剤、抗生物質、抗真菌剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、抗感染剤、追加の抗ウイルス剤、又はそれらの任意の組合せをさらに含む。
【0140】
幾つかの実施形態では、追加の抗ウイルス剤は、逆転写酵素阻害剤(例えば、レムデシビル、アバカビル、アデホビル、デラビルジン、デスコビ、ジダノシン、ドラビリン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンテカビル、エトラビリン、ラミブジン、ロビリド、ネビラピン、リルピビリン、スタブジン、テノホビルアラフェナミド、テノホビルジソプロキシル、ザルシタビン、又はジドブジン)、RNA又はDNAポリメラーゼ阻害剤(例えば、アシクロビル、シドホビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、イドクスウリジン、リバビリン、タリバビリン、ソホスブビル、テルビブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、又はビダラビン)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ボセプレビル、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、シメプレビル、テラプレビル、又はチプラナビル)、インテグラーゼ阻害薬(例えば、ビクテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、又はラルテグラビル)、ノイラミニダーゼ阻害薬(例えばオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、又はペラミビル)、レディパスビル、アンプレナビル、アマンタジン、ウミフェノビル、バロキサビルマルボキシル、ダクラタスビル、ドコサノール、エドクスジン、エンフビルタイド、フォミビルセン、イバチタビン、イバリズマブ、レテルモビル、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ネキサビル、ニタゾキサニド、プレコナリル、リマンタジン、トロマンタジン、又はビクリビロクである。
【0141】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、抗感染剤を含む。幾つかの実施形態では、抗感染剤として、キノロン系(ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシン、及びノルフロキサシン等)、スルホンアミド系(スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフィソキサゾール、スルファセトアミド等)、アミノグリコシド系(ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシン等)、テトラサイクリン系(クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン等)、パラアミノ安息香酸、ジアミノピリミジン類(トリメトプリム等(スルファメトキサゾールやピラジナミド等と併用されることが多い))、ペニシリン系(ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン等)、ペニシリナーゼ耐性ペニシリン(メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン等)、第一世代セファロスポリン系(セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、セファロチン、セファピリン等、セファゾリン等)、第二世代セファロスポリン系(セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、アエフロキシムアキセチル(Aefuroxime axetil)、セフネタゾール(Cefinetazole)、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォラニド等)、第三世代セファロスポリン系(セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテン等)、その他のβ-ラクタム系(イミペネム、メロペネム、アストレオナム、クラブラン酸、スルバクタム、タゾバクタム等)、β-ラクタマーゼ阻害剤(クラブラン酸等)、クロラムフェニコール、マクロライド(エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン等)、リンコマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、ポリミキシン類(ポリミキシンA、B、C又はD、E1(コリスチンA))、又はE2、コリスチンBやC等)コリスチン、バンコマイシン、バシトラシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、エチオナミド、アミノサリチル酸、シクロセリン、カプレオマイシン、スルホン類(ダプソン、スルホキソンナトリウム等)、クロファジミン、サリドマイド、又は脂質カプセル化が可能なその他の抗菌剤が挙げられる。 抗感染剤としては、ポリエン系抗真菌剤(アムホテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン等)、フルシトシン、イミダゾール(ミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール等)、トリアゾール(イトラコナゾール、フルコナゾール等)、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、シクロピロックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、テルビナフィン、又は脂質カプセル化若しくは複合化が可能な他の抗真菌剤、並びにそれらの薬学的に許容される塩及びそれらの組合せが挙げられる。
【0142】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、粘液溶解剤を含み得る。幾つかの実施形態では、粘液溶解剤は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNAse)、上皮性ナトリウムチャネル(eNaC)阻害剤、N-アセチルシステイン、Lαウレイドメルカプトプロピオン酸、ブロムヘキシン、アスコルビン酸、ビタミンE、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、N-ブチルシステイン、還元型グルタチオン、アミノ酸システインのN-誘導体及びC-誘導体、システインとグルタミン酸のジペプチド、アスパラギン酸のジペプチド、又はアンブロキソール塩酸塩である。
【0143】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、コルチコステロイドを含み得る。幾つかの実施形態では、コルチコステロイドは、任意の吸入可能及び/又は鼻腔内用ステロイドを含み得る。幾つかの実施形態では、コルチコステロイドとして、フルニソリド、フルチカゾン、フルオコルトロン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン、シクレソニド、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、又はデフラザコートが挙げられる。
【0144】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、気管支拡張剤を含む。幾つかの実施形態では、気管支拡張剤は、長時間作用性β-作動薬(LABA)や長時間作用性ムスカリン拮抗薬(LAMA)等の長時間作用性気管支拡張剤、長時間作用性β-作動薬(SABA)や短時間作用性ムスカリン拮抗薬(SAMA)等の短時間作用性気管支拡張剤、又はそれらの任意の組合せである。幾つかの実施形態では、気管支拡張剤は、サルブタモール、サルメテロール、ホルモテロール、ビランテロール等のβ2作動薬、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、グリコピロニウム等の抗コリン薬、テオフィリン、ムスカリン拮抗薬、又はメチルキサンチン類である。
【0145】
ある実施形態では、本発明の組成物は一酸化窒素を含む。
【0146】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、グリコピロレート、フマル酸ホルモテロール、ブデソニド、グリコピロニウム、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、ビランテロールトリフェニル酢酸塩、ウメクリジニウム臭化物、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0147】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、喘息及びCOPDの治療用薬剤を含む。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、アクリジニウム臭化物(Tudorza Pressair)、アルブテロール硫酸塩吸入用エアロゾル(Proventil HFA)、インダカテロール及びグリコピロニウム吸入用エアロゾル(ウルティブロ)、ブデソニドの臭化物吸入用エアロゾル(パルミコート)、モメタゾンフランカルボン酸エステル(ナゾネックス)、チオトロピウム臭化物吸入用エアロゾル(スピリーバ)、ブデソニド及びホルモテロール(シムビコート)、アルブテロール硫酸塩吸入用エアロゾル(ベントリンHFA)、アルブテロール硫酸塩吸入用エアロゾル(ProAir HFA)、アルブテロール硫酸塩吸入用粉末(ProAir Respiclick)、アルブテロール硫酸塩及びイプラトロピウム臭化物(コンビベント・レスピマット)、アルブテロール硫酸塩及びイプラトロピウム臭化物(デュオネブ(Duoneb)吸入液)、アルホルモテロール酒石酸塩(ブロバナ吸入液)、ベクロメタゾンジプロピオン酸吸入用エアロゾル(QVAR)、ブデソニド吸入用粉末(パルミコート・タービュヘイラー)、ブデソニド吸入用粉末(パルミコート・フレックスヘイラー(Flexhaler))、ブデソニドホルモテロールフマル酸塩(シンビコート吸入用エアロゾル)、シクレソニド(アルベスコ吸入用エアロゾル)、フルニソリド(アロスパンHFA)、フルチカゾンフランカルボン酸エステル及びビランテロールトリフェニル酢酸塩 (ブレオ・エリプタ(Breo Ellipta))、フルチカゾンプロピオン酸エステルHFA吸入用エアロゾル(フーロベント(Flovent)HFA)、フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入用粉末(フローベントディスカス(Diskus))、ホルモテロールフマル酸塩吸入用粉末(フォラジルエアロライザー(Foradil Aerolizer))、ホルモテロールフマル酸塩(パーフォロミスト(Parforomist)吸入液)、インダカテロール吸入用粉末(アルカプタ・ネオヘーラー(Arcapta Neohaler))、イプラトロピウム臭化物HFA吸入用エアロゾル(アトロベントHFA)、レバルブテロール硫酸塩HFA吸入用エアロゾル(ゾペネックス(Xopenex))、モメタゾンフランカルボン酸エステル(アズマネックス吸入用エアロゾルHFA)、モメタゾンフランカルボン酸エステル吸入用粉末(アズマネックスツイストヘラー)、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びホルモテロールフマル酸塩(デュレラ(Dulera)吸入用エアロゾル)、オロダテロール(ストリバーディレスピマット(Striverdi Respimat)吸入用スプレー)、サルメテロールキシナホ酸塩吸入用粉末(セレベントディスカス)、サルメテロールキシナホ酸塩/フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入用粉末(アドベアーディスカス(ADVAIR Diskus))、サルメテロールキシナホ酸塩/フルチカゾンプロピオン酸エステル吸入用粉末(ADVAIR HFA)、チオトロピウム臭化物(スピリーバレスピマット吸入用スプレー)、チオトロピウム臭化物吸入用粉末(スピリーバハンディヘラー)、ウメクリジニウム吸入用粉末(インクラッセエリプタ(Incruse Ellipta))、又はウメクリジニウム&ビランテロール吸入用粉末(アノーロエリプタ(Anoro Ellipta))を含む。
【0148】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は免疫抑制剤を含む。幾つかの実施形態では、免疫抑制剤はシクロスポリンである。
【0149】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、抗真菌剤を含む。幾つかの実施形態では、抗真菌剤は、ポリエン、アムホテリシンB、ナイスタチン、ナタマイシン、フルシトシン、イミダゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、トリアゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、トリアゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール、シクロピロックス、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、又はテルビナフィンである。
【0150】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、短時間作用性β-作動薬を含む。幾つかの実施形態では、短時間作用性β作動薬は、ビトルテロール、フェノテロール、イソプレナリン、レボサルブタモール、オルシプレナリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、サルブタモール、テルブタリン、又はアルブテロールである。
【0151】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、長時間作用性β-作動薬を含む。幾つかの実施形態では、長時間作用性β作動薬は、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、ホルモテロール、サルメテロール、インダカテロール、オロダテロール、又はビランテロールである。
【0152】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、短時間作用性ムスカリン拮抗薬を含む。幾つかの実施形態では、短時間作用性拮抗薬はイプラトロピウムである。
【0153】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、長時間作用性ムスカリン拮抗薬を含む。幾つかの実施形態では、長時間作用性ムスカリン拮抗薬は、アクリジニウム、グリコピロニウム、グリコピロレート、チオトロピウム、又はウメクリジニウムである。
【実施例】
【0154】
以下の実施例は、本明細書において特許請求の範囲に記載される方法及び化合物がどのように実施され、製造され、評価されるかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載され、本発明の単なる例であることを意図しており、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。
【0155】
実施例1
ヒト細胞のACE-2受容体とのウイルススパイルタンパク質受容体結合ドメインの結合に対する2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの評価
SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)とアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との結合率(%)を測定するために、RayBiotech社のCOVID-19 Spike-ACE2結合アッセイキット(CODE:CoV-ACE2S2-1)を使用した。まず、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム並びにカプセル化された2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムを、0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)及びddH2O中、0~20mMの範囲に希釈した濃度で、賦形剤1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)及び塩化カルシウムを含む製剤中に含む組成物~100μLを、割り当てられたウェル中で穏やかに振盪しながら37℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後の工程は、RayBiotechキットのプロトコールの指示に従って行った。簡潔に説明すると、インキュベーション終了後、ウェルを洗浄し、HRP標識IgG抗体溶液中でインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを再度洗浄した。その後、TMBワンステップ基質試薬中でインキュベートした。最後に停止液を各ウェルに添加した。分光光度計で450nmの吸光度(A)を読み取った。
【0156】
組成物について、ブランクはddH2Oを使用した。陰性コントロールにはキットのアッセイ希釈液を使用し、RBDは添加しなかった。陽性コントロールはアッセイ試薬と0mM(結合率100%に設定)を含んでいた(結合率は以下の式で算出した:((試験濃度の組成物を加えた試験試薬のA - 薬物無添加の(ブランク)試験試薬のA)) / 陽性コントロールのA - ブランクのA))×100。
【0157】
COVID-19スパイクタンパク質の結合試験には、APIを85%ローディング(loading)したものを使用した。
【0158】
図2は、組成物の濃度を上げて処理した場合とコントロールの、ACE受容体と結合するSARS-CoV2スパイクタンパク質の割合を示したものである。
【0159】
【0160】
表2は、本発明の一実施形態の安定性を示す。
【表2】
【0161】
表3は、本発明の一実施形態の組成及び粒子径の例を示す。
【0162】
【0163】
SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)とアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の結合率(%)を測定するために、RayBiotech社のCOVID-19 Spike-ACE2結合アッセイキット(CODE:CoV-ACE2S2-1)を使用した。組成物について、結合を50%減少させる阻害濃度(IC50)は1.8 mMであった。比較のため、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム静注液のIC50は2.7 mMであった。
【0164】
この実験結果は、本発明がSARS-COVIDスパイクタンパク質とヒトACE-2受容体との結合を用量依存的に阻害することを示している。
【0165】
実施例2
異なる薬剤候補の濃度を増加させながらインキュベートした場合のヒトACE-2受容体とSARS-CoV2スパイクタンパク質との結合の評価
SARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)とアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の結合率(%)を測定するために、RayBiotech社のCOVID-19 Spike-ACE2結合アッセイキット(CODE:CoV-ACE2S2-1)を使用した。
【0166】
まず、カプセル化した2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(MESNA)、カプセル化されていない2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエチルアミン、及びN-アセチルシステインを60mMでddH2Oに再懸濁した。60mMのカプセル化2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムのサンプルを60秒間超音波処理した(CIL-05B-S)。次に、60mM溶液を20mMに希釈した。2倍ずつ段階希釈して10mM、5mM、2.5mM、1.25mM、及び0.625mMとした。最初の溶液チューブ(20mM)から250μLを2番目の段階希釈チューブ(10mM)にピペッティングし、最終容量を500μLにした。この工程を、最終濃度に達するまで、前の濃度の250μLを使用して、各段階希釈で繰り返した。
【0167】
次に、0~20mMの範囲の濃度のカプセル化した乾燥粉末2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、カプセル化した乾燥粉末2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの溶液、カプセル化されていない2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムIV、2-メルカプトエチルアミン、及びN-アセチルシステイン(NAC)をそれぞれ100μLずつを割り当てられたウェル中で、穏やかに振盪しながら37℃で1.5時間インキュベートした。
【0168】
インキュベーション後の工程は、RayBiotechキットのプロトコールに記載されている通りに行った。簡潔に説明すると、インキュベーション終了後、ウェルを洗浄し、HRP標識IgG抗体溶液中でインキュベートした。インキュベーション後、ウェルを再度洗浄した。その後、ウェルをTMBワンステップ基質試薬でインキュベートした。最後に停止液を各ウェルに添加した。分光光度計により450nmで吸光度(A)を読み取った。
【0169】
ブランクはddH2Oとした。陰性コントロールにはキットのアッセイ希釈液を使用し、RBDは含まない。0mMの薬物を含むウェルを100%結合(陽性コントロール)とした。結合率は次式で算出した:((試験試薬のA - ブランクのA) / 陽性コントロールのA - ブランクのA))x100。
【0170】
図3は、カプセル化した2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、カプセル化されていない2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエチルアミン、及びN-アセチルシステインの濃度を増加させながらインキュベートした場合の、SARS-CoV2スパイクタンパク質とACE-2受容体の結合の割合を示す。
【0171】
その他の実施形態
本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、記載された開示内容の様々な修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求の範囲に記載される開示内容は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないものと理解すべきである。実際、当業者にとって自明である、本開示を実施するための記載された態様の様々な修正は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0172】
その他の実施形態は特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】