(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ネオエピトープワクチン送達賦形剤及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20241128BHJP
C07K 17/02 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20241128BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241128BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241128BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/385 20060101ALI20241128BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K9/06
C07K17/02 ZNA
C12N15/88 Z
C12N15/87 Z
C12N5/10
C12N15/12
C12Q1/02
A61K47/36
A61K39/385
A61K47/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533993
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 US2022081025
(87)【国際公開番号】W WO2023107951
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523333870
【氏名又は名称】イミュニティバイオ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フィリップ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,クリフォード アンダース
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン,ウェイド ニコルス
(72)【発明者】
【氏名】ヒガシデ,ウェンディ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ43
4B063QQ52
4B063QQ67
4B063QQ79
4B063QR33
4B063QR35
4B063QR43
4B063QR48
4B063QR77
4B063QR80
4B063QR83
4B063QS38
4B063QX01
4B063QX02
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
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4B065BA01
4B065CA24
4B065CA46
4C076AA09
4C076AA95
4C076EE30A
4C076EE47
4C076EE59
4C076FF02
4C085AA03
4C085BB23
4C085CC31
4C085DD53
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA61
4H045FA52
(57)【要約】
新規なワクチン送達プラットフォームとしてのマンナンナノゲル、並びに治療薬の生体内送達のための自己集合性マンナンナノゲルを製造する新規な方法が本明細書に開示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬の生体内送達のための自己集合性マンナンナノゲルを製造する方法であって:
a.過ヨウ素酸塩(NaIO4)でマンナンを酸化すること;
b.前記酸化マンナンを精製すること;
c.前記精製酸化マンナンにアニリンを添加して、前記マンナンに共有結合された疎水性フェニルイミン基を有するマンナン誘導体を生成すること;及び
d.前記マンナン誘導体を超音波処理すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記自己集合マンナンナノゲルにジヒドラジド(DH)架橋剤を導入し、前記マンナンナノゲルをコハク酸ジヒドラジド(SDH)及び3,3’-ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DPDH)と反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジヒドラジド架橋マンナンナノゲルを、チオール含有カーゴをロードするために調製し、ナノゲルジスルフィド架橋を(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)で還元すること、ナノゲルイミン及び残留アルデヒドを水素化ホウ素(NaBH
4)で還元すること、及びナノゲルチオールを2,2-ジチオピリジン(DTP)で活性化することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記チオール含有カーゴが前記DTP活性化ナノゲル上にロードされ、前記カーゴが、1種又は複数種のペプチドと、任意にグルタチオン(GSH)とで構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ジヒドラジド架橋ナノゲルがNaIO4酸化マンナンで被覆されている、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ジアミン(DA)架橋剤を前記マンナンナノゲル中に導入し、前記マンナンナノゲルをシスタミン及びエチレンジアミン二塩酸塩(EDA)と、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3)と逐次反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ジアミン架橋マンナンナノゲルを、チオール含有カーゴをロードするために調製し、ナノゲルジスルフィド架橋を(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)で還元すること、及びナノゲルチオールを2,2-ジチオピリジン(DTP)で活性化することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記チオール含有カーゴが前記DTP活性化ナノゲル上にロードされ、前記カーゴが、1種又は複数種のペプチドと、任意にグルタチオン(GSH)とで構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ジアミン架橋ナノゲルをNaIO4酸化マンナンで被覆し、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3)と反応させる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項3に記載のDTP活性化マンナンナノゲル上にチオール修飾RNAをロードする方法であって:
a)酸化RNAをシスタミン及びTCEPと逐次反応させる、酸化RNAの還元的アミノ化;
b)精製;及び
c)DTP活性化ナノゲルへの添加
を含む方法。
【請求項11】
請求項7に記載のDTP活性化マンナンナノゲル上にチオール修飾RNAをロードする方法であって:
a)酸化RNAをシスタミン及びTCEPと逐次反応させる、酸化RNAの還元的アミノ化;
b)精製;及び
c)DTP活性化ナノゲルへの添加
を含む方法。
【請求項12】
請求項7に記載のDTP活性化マンナンナノゲル上にRNAをロードする方法であって、非修飾RNAを前記DTP活性化ナノゲルに添加することを含む方法。
【請求項13】
CD206発現性293T細胞を含む組成物であって、前記293T細胞が、配列番号1の配列を有する遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作される、組成物。
【請求項14】
マンナンナノゲル又はカーゴがロードされたマンナンナノゲルの細胞内取り込みを定量化する方法であって、CD206発現性293T細胞をマンナンナノゲルで処理することを含み、前記293T細胞が、配列番号1の配列を有する遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作され、前記ナノゲルの細胞内取り込み又は前記カーゴの細胞内発現が定量化される、方法。
【請求項15】
定量化が、蛍光、発光、生存率、アポトーシス、細胞サイズ、細胞増殖、スフェロイドの形成、細胞表面発現、又は細胞内局在化による定量化である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マンナンナノゲルに、蛍光標識したデキストランをドープする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光標識がフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月8日出願の米国仮特許出願第63/287,176号明細書への35U.S.C.§119(e)の下での優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第63/287,176号明細書の全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、ST.26XMLフォーマットで電子的に提出された配列表を含有する。「PAT005304_Sequence_Listing.xml」と名付けたテキストファイルは、7000バイトのサイズを有し、2022年12月6日に記録された。テキストファイルに収容される情報は、37CFR§1.52(e)(5)に従って、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
薬物の局在化及びバイオアベイラビリティを向上させるために、コロイド状薬物担体のデザインに、著しい努力が注がれている。理想的には、能動的に標的化された粒状薬物担体は、患部への送達によって薬物の治療有効性を高めると同時に、薬物に関連する副作用を低減する。この目標の達成によって、全身に投与される治療薬の毒性作用がその利益を凌ぎ得る疾患(例えば、癌)の治療が大幅に進歩するだろう。現在まで、無機ナノ粒子、高分子電解質複合体、リポソーム、ブロックコポリマーミセル、及び高分子ナノ粒子など、多くの種類の送達賦形剤が、生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)薬物送達のために探求されている。
【0004】
可能な限り最速の初回用量(prime dose)の送達が求められる、いくつかのナノ粒子ワクチン送達プラットフォームが開発中である。合成ナノスケール賦形剤は、ボトムアップの機能性デザイン、ペプチドなどの感受性生理活性カーゴに対する生体内での保護などの多くの利点を提供し、拡張可能及び再現可能な製造を可能にする。
【0005】
多糖類のマンナンの誘発自己集合によって製造される新規なナノゲルワクチンプラットフォームが本明細書において開示される。ゲルナノ粒子は、マンナン鎖(CD206受容体に粒子を引き寄せるための)及び切断可能なネオエピトープペプチドで修飾される。これらのナノ粒子は、本明細書に開示の方法に従って迅速に製造することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
治療薬の生体内送達のための自己集合性(self-assembling)マンナンナノゲルを製造する方法であって:過ヨウ素酸塩(NaIO4)でマンナンを酸化すること;酸化マンナンを精製すること;精製された酸化マンナンにアニリンを添加して、マンナンに共有結合された疎水性フェニルイミン基を有するマンナン誘導体を生成すること;及びマンナン誘導体を超音波処理することを含む方法が、本明細書において開示される。
【0007】
一態様において、自己集合マンナンナノゲル中にジヒドラジド(DH)架橋剤を導入し、その方法は、マンナンナノゲルをコハク酸ジヒドラジド(SDH)及び3,3’-ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DPDH)と反応させることを含む。
【0008】
一態様において、ジヒドラジド架橋マンナンナノゲルを、チオール含有カーゴをロードするために調製し、その方法は、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)でナノゲルジスルフィド架橋を還元すること;ナノゲルイミン及び残留アルデヒドを水素化ホウ素(NaBH4)で還元すること、及びナノゲルチオールを2,2-ジチオピリジン(DTP)で活性化することを含む。
【0009】
さらに別の態様において、チオール含有カーゴはDTP活性化ナノゲルにロードされ、そのカーゴは、1種又は複数種のペプチドと、任意にグルタチオン(GSH)とで構成される。
【0010】
また別の態様において、ジヒドラジド架橋ナノゲルはNaIO4酸化マンナンで被覆される。
【0011】
一態様において、ジアミン(DA)架橋剤をマンナンナノゲル中に導入し、その方法は、マンナンナノゲルをシスタミン及びエチレンジアミン二塩酸塩(EDA)と、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)と逐次反応させることを含む。
【0012】
一態様において、ジアミン架橋マンナンナノゲルを、チオール含有カーゴをロードするために調製し、その方法は、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)でナノゲルジスルフィド架橋を還元すること、ナノゲルチオールを2,2-ジチオピリジン(DTP)で活性化することを含む。
【0013】
一態様において、チオール含有カーゴはDTP活性化ナノゲル上にロードされ、そのカーゴは、1種又は複数種のペプチドと、任意にグルタチオン(GSH)とで構成される。
【0014】
一態様において、ジアミン架橋ナノゲルをNaIO4酸化マンナンで被覆し、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)と反応させる。
【0015】
DTP活性化ジヒドラジド架橋又はジアミン架橋マンナンナノゲル上にチオール修飾RNAをロードする方法であって、1)酸化RNAをシスタミン及びTCEPと逐次反応させる、酸化RNAの還元的アミノ化、2)精製、及び3)DTP活性化ナノゲルへの付加を含む方法もまた、本明細書に開示される。
【0016】
DTP活性化ジアミン架橋マンナンナノゲル上にRNAをロードする方法であって、非修飾RNAをDTP活性化ナノゲルに添加することを含む方法も、本明細書において開示される。
【0017】
CD206発現性293T細胞を含む組成物であって、その293T細胞が、配列番号1の配列を有する遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作される組成物もまた本明細書において開示される。
【0018】
マンナンナノゲル又はカーゴがロードされたマンナンナノゲルの細胞内取り込みを定量化する方法であって、CD206発現性293T細胞をマンナンナノゲルで処理することを含み、その293T細胞が、配列番号1の配列を有する遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作され、ナノゲルの細胞内取り込み又はカーゴの細胞発現が定量化される方法がさらに本明細書において開示される。
【0019】
細胞内取り込みを定量化する方法の一態様において、定量化は、蛍光、発光、生存率、アポトーシス、細胞サイズ、細胞の殖、スフェロイドの形成、細胞表面発現、又は細胞内局在化による定量化である。
【0020】
細胞内取り込みを定量化する方法の一態様において、マンナンナノゲルに、蛍光標識したデキストランをドープする。一態様において、蛍光標識はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】均一なマンナンナノゲルの新規な自己集合プロセスの略図を示す。
【
図2-1】
図2Aは、ナノゲルサイズが高度に単分散であることを示す。
図2Bは、ナノゲルが負の表面電荷を表すことを示す。
【
図2-2】紫外線(UV)吸光度によって、ナノゲル中のアニリンが確認されることを示す。
【
図3】ナノゲルをDTPで活性化し、且つペプチドカーゴをロードした場合の工程の略図を示す。
【
図4-1】
図4Aは、ペプチドカーゴをナノゲル上に、ジスルフィド形成を介して如何にしてロードすることができるかについての略図を示す。
図4Bは、FITC-RP426Cの構造を示す。
図4Cは、TCEPの構造を示す。
【
図4-2】ロードされ、且つ放出されたFITCペプチドを有するチオール(-SH)チオール部位の分率を示す。
【
図5】ジスルフィド結合に対する修飾サイトメガロウイルス(CMV)抗原ペプチドを示す。構造の最後のボックスは、QGQCの「C」を示す。
【
図6】ELISPOTを用いて確立されたナノゲル抗原送達及び提示を示す。
図6Aは概略図である。
図6Bは、NLV-modペプチドの結果を示し、
図6CはDiHy及びDiAmの結果を示す。
【
図7-1】CD206を発現するように開発された、安定な293T細胞系を示す。
【
図8】高又は低酸化マンナンで製造されたナノゲルの略図を示す。
【
図9】低酸化マンナンによって、細胞系による差次的なナノゲル取り込みが生じることを示す。マンナンの酸化(OD又はOX)の程度によって、反応性アルデヒドの蔓延率(prevalence)が決定される。アルデヒドが少なくなるほど、非特異的結合(例えば、荷電しており、高度に極性又は疎水性)を受けやすい下流の表面基が少なくなる。CD206保有細胞による低ODマンナンゲルの差次的取り込みは、向上した受容体親和性を示すことができ、非特異的な結合又は組み合わせを低減した。低ODマンナンによって、カーゴ保持能力が低いと、安定性の低いゲルも産生される。
図9Aは、高Oxマンナンでの結果を示し;
図9Bは、低Oxマンナンについての結果を示し;及び
図9Cはその2つの間での倍変化を示す。
【
図10】二次マンナン集合の略図を示す。ダングリング(Dangling)架橋剤はアルデヒドに対して反応性を維持する。低ODマンナンは、コアゲルと反応するのに十分なアルデヒドを保持するが、非特異的結合に対する他の部位はほとんどない。低ODマンナンを用いた二次コア-シェルアセンブリはl0w結合性表面を付与するはずである。
【
図11】二次マンナンは、非特異的取り込みを低減し、且つCD206特異性を付与することを示す。
図11Aは、1時間後の結果を示す。
図11Bは20時間にわたる時間経過を示す。
【
図12】CD206特異的取り込みに対して最適化された二次マンナンの酸化レベルを示す。
図12Aは、293T-Neg及び293T-CD206に関する酸化レベルに対するポジティブ%を示す。
図12Bは、酸化レベルに対するスコアの倍変化を示す。
【
図13】
図13Aは、ナノゲル表面の電荷がカーゴ混合物によってコントロールすることができることを示す。NLV-modは、正味の+電荷を保有する。GSHは正味の-1電荷を保有する。様々な比(NLV-mod:GSH)で混合されたペプチドをナノゲルにロードした。確認されたゼータ電位は、期待される表面電荷の変化を反映する。NVLペプチドは、サイトメガロウイルス(CMV)からのHLA-A2制限ペプチドである。それは、CD8T細胞刺激のためのコントロールペプチドとして使用される。
図13Bは、NLV-mod抗原ペプチドの構造を示す。
図13Cは、グルタチオン(GSH)の構造を示す。
【
図14-1】GSH混合カーゴでの取込み及びELISPOTを示す。
図14Aは1:0での結果を示し;
図14Bは1:1での結果を示し、
図14Cは1:9での結果を示す。
【
図14-2】
図14Dはインターフェロン-γ(INF-g)ELISPOT、NLP03を示す。
【
図15】1時間(
図15A)及び一晩(
図15B)でのCD206ポジティブ293T細胞におけるナノゲル及びペプチドの細胞内共局在化を示す。
【
図16】ナノゲルカーゴとしてのRNAの略図を示す。
図16Aは、mRNAの3’末端が、過ヨウ素酸酸化によって選択的にチオール化され、続いてシステインで還元的アミノ化され得ることを示す。
図16Bは、カチオン性(DiAmとも呼ばれるDA)ナノゲルが、静電気のみによってmRNAと複合体も形成し得ることを示す。
【
図17】DiAm及びDiHyナノゲルがmCherry mRNAを送達することを示す。
図17Aはゲルの取り込みを示す。
図17BはmCherry発現を示す。
【
図19】S.セレビジエ(S.cerevisiae)由来のマンナンの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に他に定義されていない限り、本出願で使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。一般に、化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学、並びにタンパク質及び核酸化学と関連して、且つそれらの技術において使用される命名法は、当技術分野でよく知られ、且つ一般に使用される命名法である。
【0023】
本出願で参照されるすべての出版物、特許、及び公開特許出願は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。矛盾がある場合には、その具体的な定義を含む本明細書がコントロールする。
【0024】
新規なワクチン送達プラットフォームとしてのマンナンナノゲル、並びに治療薬の生体内送達のための自己集合性マンナンナノゲルを製造する新規な方法が、本明細書において開示される。マンナンは、C型レクチンを介して樹状細胞(DC)を標的化する。マンノース受容体(CD206)は、DC細胞表面で高度に発現する。DCに対するマンナンナノゲルの標的化は、安定なCD206発現細胞系を使用して、本発明者らによって確認されている。限定されないが、ペプチドなどの治療薬を、システインを介してジスルフィドによって連結することができる。その方法は、マンナンを過ヨウ素酸塩(NaIO4)で酸化すること;酸化マンナンを精製すること;精製された酸化マンナンにアニリンを添加して、マンナンに共有結合された疎水性フェニルイミン基を有するマンナン誘導体を生成すること;及びマンナン誘導体を超音波処理すること;を含む。
【0025】
CD206の発現は、人においてDC、マクロファージに、及び内皮細胞の分集団において制限される。CD206活性化は、抗原カーゴの処理に理想的であるエンドサイトーシスを仲介する。したがって、マンナンナノゲルに結合したペプチドは、CD206発現性樹状細胞に対して標的化され、それによってペプチドは、樹状細胞によって取り込まれ、処理され、且つ提示されて、結合ペプチドに対して特異的なT細胞が活性化される。
【0026】
一態様において、架橋剤が自己集合マンナンナノゲルに導入される。架橋は、疎水性集合体を共有結合性網状構造へと変化させる。本明細書に開示されるように、架橋剤はジアミン又はジヒドラジドであり得て、それらはアミノ基転移によってアニリンを置換し、安定な鎖間結合を提供し、ジスルフィド連結部位を導入する。ジヒドラジド(DH)架橋剤は有機溶媒を必要とし、イミンをヒドラジドに還元し、これらのDH架橋剤は、生理学的pHにて網状構造に電荷を導入しない。ジアミン(DA)架橋剤は、水溶性であり、イミンを第2級アミンへと還元し、これらのDA架橋剤は、網状構造にカチオン(+)電荷を導入する。
【0027】
一態様において、DH架橋剤は自己集合マンナンナノゲル中に導入され、その方法は、マンナンナノゲルをコハク酸ジヒドラジド(SDH)及び3,3’-ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド)(DPDH)と反応させることを含む。
【0028】
本明細書において開示されるように、DH架橋マンナンナノゲルは、チオール含有カーゴをロードするために調製され得る。ローディングの方法は、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)(TCEP)でナノゲルジスルフィド架橋を還元すること、ナノゲルイミン及び残留アルデヒドを水素化ホウ素(NaBH4)で還元すること、及びナノゲルチオールを2,2-ジチオピリジン(DTP)で活性化することを含む。次いで、チオール含有カーゴは、DTP活性化ナノゲル上にロードされる。そのカーゴは、1種又は複数種のペプチド及び任意にグルタチオン(GSH)を含む。一態様において、DH架橋ナノゲルはさらに、NaIO4酸化マンナンで被覆され得る。
【0029】
マンナンナノゲル中に導入され得るDA架橋剤もまた、本明細書において開示される。その方法は、マンナンナノゲルをシスタミン及びエチレンジアミン二塩酸塩(EDA)と、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)と逐次反応させることを含む。一態様において、DA架橋マンナンナノゲルは、チオール含有カーゴをロードするために調製され、その方法は、ナノゲルジスルフィド架橋をTCEPで還元すること、DTPでナノゲルチオールを活性化することを含む。次いで、チオール含有カーゴは、DTP活性化ナノゲル上にロードされ、そのカーゴは、1種又は複数種のペプチドと、任意にGSHとで構成される。一態様において、DA架橋ナノゲルを、NaIO4酸化マンナンで被覆し、次いでシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)と反応させる。
【0030】
本明細書に開示される更なる実施形態は、DTP活性化、DH架橋又はDA架橋、マンナンナノゲル上にチオール修飾RNAをロードする方法である。この方法は、酸化RNAをシスタミン及びTCEPと逐次反応させる、酸化RNAの還元的アミノ化、続いて精製、及びDTP活性化ナノゲルへの添加を含む。
【0031】
DTP活性化DA架橋マンナンナノゲル上にRNAをロードする方法であって、非修飾RNAをDTP活性化ナノゲルに添加することを含む方法も企図される。
【0032】
本明細書に開示の更なる実施形態は、マンナンナノゲル又はカーゴがロードされたマンナンナノゲルの細胞内取り込みを定量化する方法である。その方法は、CD206発現性293T細胞をマンナンナノゲルで処理することを含み、293T細胞は、配列番号1の配列を有する遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作され、且つナノゲルの細胞内取り込み又はカーゴの細胞発現が定量化される。細胞内取り込みの定量化は、蛍光、発光、生存率、アポトーシス、細胞サイズ、細胞増殖、スフェロイドの形成、細胞表面発現、又は細胞内局在化による定量化であり得る。一態様において、マンナンナノゲルは、蛍光標識したデキストランがドープされる。一態様において、蛍光標識はFITCである。
【0033】
更なる実施形態は、CD206発現性293T細胞を含む組成物である。293Tは、配列番号1の配列を有する遺伝子を安定的に発現するように遺伝子操作され得る。
【0034】
本明細書に開示されるように、ナノゲルは、親水性ポリマー鎖と、物理的又は化学的に高度に架橋されるヒドロゲルで構成されるナノ粒子である。ナノゲルは、親水性官能基が存在するために、多量の水を保持することができる。ナノゲルは、その内部構造を維持しながら、良溶媒中で膨潤することができる。「ナノゲル」という用語は、液体を吸収し、且つ液体の少なくとも一部を保持して、膨潤架橋ポリマー粒子を形成することができる、架橋ポリマー粒子を意味し得る。ナノゲルは、多くのサイズを有し、これらのサイズは、溶媒膨潤状態でのナノゲルを表す。ナノゲルサイズは、血流中にとどまるように最適化され得て、さらに有窓(fenestrated)腫瘍脈管構造を横切ることができる。
【0035】
ナノゲルベースの送達システムは、ナノゲル内に実質的に含有される作用薬(active agent)又はカーゴを含み、作用薬は、ナノゲルと共有結合又は非共有結合される。本明細書で使用される、「作用薬」又は「カーゴ」という用語は、1種又は複数種の成分、例えば薬理学的成分、治療的成分、診断成分、薬物成分、生物学的成分等を意味し得る。
【0036】
したがって、「作用薬」、「カーゴ」、「薬物」、「治療的」、「診断」、「製薬」等の用語は、本開示内容全体を通して区別なく使用され得る。作用薬は、限定されないが、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存剤、担体、懸濁化剤、増粘剤、安定剤、不活性成分等の1種又は複数種の薬剤添加剤も含み得る。
【0037】
本明細書で使用される、「作用薬」という用語としては、限定されないが、生物学的又は化学的化合物、例えば単一若しくは複合有機又は無機分子、ペプチド、ペプチドミメティック、タンパク質(例えば、抗体、成長因子)、抗原又は免疫原、mRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、又はポリヌクレオチド、ウイルス、又は治療薬が挙げられる。有機又は無機分子としては、限定されないが、分子自体が天然であろうと、又は人工的に作成されていようと(例えば、合成又は組換え法によって)、製薬、ラジオアイソトープ、粗製若しくは精製植物抽出物、及び/又は生物学的若しくは生化学的イベントを変化させる、阻害する、活性化する、又はそうでなければ影響を及ぼす実体、例えば細胞及び組織において通常見出される、分子のクラス(例えば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖類、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド、成長因子、化学誘引物質、サイトカイン、ケモカイン等)などの、化合物の不均質又は異質な混合物が挙げられる。
【0038】
例えば、mRNAがカーゴ又は作用薬である場合、mRNAの3’末端は、過ヨウ素酸酸化によって選択的にチオール化され得て、続いてシステインで還元的アミノ化され得る。カチオン性DAナノゲルは、単独で静電気によってmRNAと複合体も形成し得ることを示す。
【0039】
かかる作用物質(agent)の例としては、限定されないが、遺伝子治療薬;鎮痛薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗癌剤;抗コリン作動薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;麻酔薬;抗生物質;抗原;抗ヒスタミン薬;抗感染薬;抗炎症剤;抗菌剤;抗真菌剤、抗パーキンソン病薬;鎮痙薬;鎮痒薬;抗精神病薬;解熱薬;抗ウイルス剤;核酸;DNA;RNA;siRNA;ポリヌクレオチド;ヌクレオシド;ヌクレオチド;アミノ酸;ペプチド;タンパク質;炭水化物;レクチン;脂質(lipid);脂質(fat);脂肪酸;ウイルス;免疫原;抗体及びその断片;血清;免疫増強薬;免疫抑制剤;心血管作動薬;チャネル遮断薬(例えば、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬、α遮断薬);抗不整脈剤;抗高血圧剤;DNA、RNA、又はタンパク質合成の阻害剤;神経毒;血管拡張剤;血管収縮剤;ガス、成長因子;成長阻害剤;ホルモン;ステロイド;ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤;コルチコステロイド;血管新生剤(angiogenic agent);血管新生阻害剤;催眠薬;筋弛緩薬;筋肉収縮剤(muscle contractant);鎮静薬;精神安定薬;イオン化及び非イオン化作用薬;金属;小分子;薬剤;血液療法剤;創傷治癒剤;生体環境における変化の指示薬;酵素;酵素阻害剤;栄養素;ビタミン;ミネラル;凝固因子;抗凝固薬;抗血栓剤;神経化学物質(例えば、神経伝達物質);細胞受容体;放射性物質;造影剤(例えば、蛍光、磁気、放射性);ナノ粒子(例えば、磁気、半導体、誘電体、又は金属);ワクチン;細胞増殖の修飾物質;細胞接着の修飾物質;細胞応答修飾物質;細胞;所望の生物学的若しくは薬理学的作用を誘導する化学物質又は生体物質又は化合物;並びにその組み合わせ;が挙げられる。
【0040】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」などのバリエーションは、指定の整数(若しくは成分)、又は整数(若しくは成分)のグループの包含を意味するが、他のいずれかの整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)のグループの排除を意味しない。
【0041】
「1つ(a)」、「1種(an)」及び「その(the)」の単数形は、文脈に特に明確に指定がない限り、複数を包含する。
【0042】
「~を含む(including)」とは、「限定されないが、~を含む」を意味する。「~を含む」及び「限定されないが、~を含む」は区別なく使用される。
【0043】
薬剤として許容される担体とは、本明細書に記載される組成物と共に患者に投与され得て、且つ組成物内の作用薬の薬理活性を破壊しない非毒性担体を意味する。「賦形剤」とは、薬学的に活性な成分ではない、配合物又は組成物中の添加剤を意味する。
【0044】
「薬学的に有効な量」とは、例えば、疾患又は病状(限定されないが、癌など)を患っている患者の全身の健康状態において有益な、及び/又は望ましい変化を生む、患者を治療するのに有効な量を意味する。治療としては、限定されないが、細胞を殺すこと、新たな細胞の増殖を防ぐこと、患者の生活機能を改善すること、患者のウェルビーイング(well-being)を向上させること、痛みを減らすこと、食欲を改善すること、患者の体重を改善すること、及びそのいずれかの組み合わせが挙げられる。「薬学的に有効な量」は、患者の臨床症状を改善するのに必要な量も意味する。
【0045】
「ペプチド」及び「ポリペプチド」は本明細書において同義で使用され、アミノ酸残基から構成されるポリマーを意味する。本明細書で使用される「アミノ酸残基」とは、いずれかの天然アミノ酸(L又はD型)、非天然アミノ酸、又はアミノ酸ミメティック(mimetic)(ペプチドモノマーなど)を意味する。
【0046】
2種類以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において「同一」又は「同一性」パーセントとは、比較窓にわたって最大一致に関して比較及びアライメントする場合、同一である、又は同一であるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの特定パーセンテージを有する、2つ以上の配列又は部分配列を意味する。本開示の目的のためのアミノ酸又は核酸配列同一性の程度は、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10に記載のBLASTアルゴリズムを用いて決定される。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアライメントした場合に、いくつかの正値の閾値スコアに一致するか、又は満たす、クエリー配列中の長さWの短いワードを確認することによって、高スコア配列ペア(HSPS)を同定する。Tは近傍ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-10)。最初の近傍ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見つける検索を開始するための種(seed)として働く。次いで、ワードヒットをそれぞれの配列に沿って、累積アライメントスコアが増加しうる限り、両方向に伸長させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(一対のマッチング残基についての報酬スコア;常に>0)及びN(ミスマッチング残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコアマトリックスを用いて累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアがその最大達成値から量X低下した場合;累積スコアが、1つ又は複数の負のスコアリング残基アライメントの累積のために0以下となった場合;又はいずれかの配列の末端に達しない場合;停止する。アミノ酸配列の同一性パーセントを決定するために、BLASTP設定は:ワード長さ(W),3;期待値(E),10;及びBLOSUM62スコアマトリックスである。核酸配列の解析については、BLASTNプログラム設定は、ワード長(W),11;期待値(E),10;M=5;N=-4;及び両方の鎖の比較である。BLASTNプログラム(問い合わせヌクレオチド配列データベースに対するタンパク質配列)では、ワード長3、期待値(E)10及びBLOSUM62スコアマトリックスが使用される(Henikoff & Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915参照)。
【0047】
配列同一性%の算出の他に、BLASTアルゴリズムでは、2つの配列間の類似性の統計的解析も実施される(例えば、Karlin & Altschul(1993)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA90:5873-87参照)。最小和確率(smallest sum probability)(P(N))は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の一致が偶然起り得る確率の指標を提供する。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較において最小和確率が約0.01未満である場合には、核酸は参照配列と類似していると考えられる。
【0048】
ポリペプチドの「長さ」は、ポリペプチドが含有し得るいずれかの非ペプチドリンカー及び/又は修飾を除外して、ポリペプチドを構成する、端から端まで連結されるアミノ酸残基の数である。
【0049】
疎水性アミノ酸残基は、主に非極性化学的性質を有する官能基(「側鎖」)を特徴とする。かかる疎水性アミノ酸残基は天然(L若しくはD型)又は非天然であり得る。その代わりとして、疎水性アミノ酸残基は、主に非極性化学的性質を有する側鎖を特徴とするアミノ酸ミメティックであり得る。その逆に、親水性アミノ酸残基は、主に極性(荷電又は非荷電)の化学的性質を有する側鎖を特徴とする。かかる親水性アミノ酸残基は天然(L若しくはD型)又は非天然であり得る。その代わりとして、親水性アミノ酸残基は、主に極性(荷電又は非荷電)の化学的性質を有する側鎖を特徴とするアミノ酸ミメティックであり得る。適切な非天然アミノ酸残基及びアミノ酸ミメティックは当技術分野で公知である。例えば、Liang et al.(2013)PLoS ONE8(7):e67844を参照のこと。
【0050】
大部分のアミノ酸残基は疎水性又は親水性のいずれかと考えられるが、その状況に応じて、一部が疎水性又は親水性のいずれかとして挙動し得る。例えば、グリシン、プロリン、及びシステインの比較的弱い非極性の特徴によって時に、それぞれ親水性アミノ酸残基として機能することが可能となる。逆に、ヒスチジン及びアルギニンのかさ高い、わずかに疎水性の側鎖によって時に、それぞれ疎水性アミノ酸残基として機能することが可能となる。
【0051】
別段の指定がない限り、本明細書に開示される各実施形態は、単独で、或いは本明細書における1つ又は他の実施形態と組み合わせて使用され得る。
【0052】
「トランスフェクション」とは、真核細胞への外来核酸の導入を意味する。トランスフェクションは、電気穿孔法、ポリマー(ナノ粒子)、リン酸カルシウム-DNA共沈殿、DEAE-デキストラン仲介トランスフェクション、ポリブレン仲介トランスフェクション、微量注入、リポソーム融合、ポフェクション、プロトプラスト融合、及びバイオリスティクス(biolistics)などの、当技術分野で公知の様々な手段によって達成され得る。
【0053】
「安定トランスフェクション」又は「安定にトランスフェクトされた」とは、トランスフェクト細胞のゲノムへの、外来核酸、DNAの導入及び組込を意味する。
【0054】
バリアントという用語は、参照配列(例えば、SARS-CoV-2タンパク質配列)と類似しているが、同一ではないアミノ酸配列を有するタンパク質、又はその断片を意味し、バリアントタンパク質の活性は著しく変わらない。配列におけるこれらのバリエーションは天然のバリエーションであり得て、又は当業者に公知の技術を使用することによって操作され得る。適切なバリエーションの例としては、限定されないが、アミノ酸欠失、挿入、置換、及びその組み合わせが挙げられる。
【0055】
アミノ酸は、その物理的性質に基づいてグループに分類することができる。かかるグループの例としては、限定されないが、荷電アミノ酸、非荷電化アミノ酸、極性非荷電化アミノ酸、及び疎水性アミノ酸が挙げられる。好ましいバリアントは、1つのアミノ酸が、同じグループからのアミノ酸で置換されているバリアントである。かかる置換は、保存的置換と呼ばれる。
【0056】
天然残基は、一般的な側鎖特性に基づいて以下のクラスに分けられ得る:
1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;及び
6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0057】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを、別のクラスからのメンバーと交換することを含み得る。
【0058】
対象、患者、個体等の用語は、制限的であることを意図せず、一般に交換することができる。つまり、患者として記載される個体は、所定の疾患を必ずしも有する必要はなく、単に医学的アドバイスを単に求め得る。全体を通して使用されるように、対象は、脊椎動物、さらに具体的には哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、及びモルモット)、鳥、爬虫類、両生類、魚、及び他のいずれかの動物であり得る。用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。したがって、雄又は雌にかかわらず、成人及び新生児の対象が包含されることが意図される。本明細書において使用される、患者、個人及び対象は、区別なく使用され得て、これらの用語は制限的であることを意図しない。つまり、患者として記載される個体は、所定の疾患を必ずしも有する必要はなく、単に医学的アドバイスを単に求め得る。患者又は対象という用語は、ヒト及び獣医学的対象を含む。
【0059】
本明細書における「治療的」及び「予防的」の言及は、その最も広範な文脈で考えられるべきである。「治療的」とは必ずしも、哺乳動物が完全に回復するまで治療されることを意味するものではない。同様に、「予防的」とは必ずしも、対象が最終的に、疾患状態にかからないことを意味するものではない。「予防」という用語は、特定の症状発症の重症度を低減するとみなされ得る。治療は、既存の症状の重症度又は急性発作の頻度も低減し得る。本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び類似の単語は、疾患又は病状の症状を安定させ、且つ/又は低減することを意味する。一部の態様において、本明細書に開示される組成物は、疾患若しくは病状の発生を防ぐ、又は疾患若しくは病状を治癒することができ、それは治療とは区別される。
【0060】
本明細書に記載の治療組成物の投与経路及び頻度、並びに投与量は、個人間、疾患間で異なり、標準技術を用いて容易に確立され得る。一般に、医薬組成物は、注入(例えば、皮内、筋肉内、静脈内又は皮下)によって、鼻腔内(例えば、吸入による)、丸剤形態(例えば、嚥下、経腟又は経直腸送達用の坐剤)で投与され得る。
【0061】
本明細書において提供される方法に従って、対象は、本明細書で提供される作用物質の1種又は複数種の有効量又は治療有効量が投与される。有効量、治療有効量及び有効投薬量という用語は区別なく使用される。有効量という用語は、所望の生理学的応答(例えば、炎症の低減)を起こすのに必要な量として定義される。有効量及び作用物質を投与するスケジュールは、当業者によって経験的に決定され得る。投与の投薬量範囲は、疾患又は障害の1つ又は複数の症状が影響を受ける所望の効果(例えば、低減又は遅延)を生むのに十分に大きい。投薬量は、不要な交差反応、アナフィラキシー反応などの、実質的に有害な副作用を生じるほど多い量であるべきではない。一般に、投薬量は、年齢、病状、性別、疾患のタイプ、疾患若しくは障害の程度、投与経路に応じて、又は他の薬物が投与計画に含まれるかどうかに応じて異なり、当業者によって決定することができる。投薬量は、禁忌の場合には、個々の医師によって調節することができる。投薬量は変動し得て、1日又は数日間、1回又は複数回用量の投与で毎日投与され得る。ガイダンスは、所定のクラスの医薬品に関する適切な投薬量についての文献で見つけることができる。例えば、所定のパラメーターに関して、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、又は少なくとも100%の減少又は低減を示す。有効性は、「~倍」の増加又は減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、コントロールと比べて少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、又はそれ以上の効果を有し得る。正確な用量又は配合は、治療の目的によって異なり、公知の技術を用いて当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Editor(2012)、及びPickar,Dosage Calculations(1999)参照)。
【0062】
注射可能な使用に適した組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)及び注射可能な滅菌溶液の即時調製用の滅菌粉末を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)を含有する溶媒又は分散媒、その適切な混合物及び植物油であり得る。微生物作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合には、等張化剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物中での使用によってもたらされ得る。
【0063】
注射可能な滅菌溶液は、上記で列挙される他の様々な成分と適切な溶媒中に必要な量で活性化合物を組み込み、必要に応じて、続いて例えば、濾過滅菌又は滅菌を他の適切な手段によって行うことによって調製され得る。滅菌賦形剤に種々の滅菌活性成分を組み込むことによって、分散液が調製され得て、それは基本の分散媒と、上記で列挙される成分から必要とされる他の成分と、を含有する。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法としては、真空乾燥及び凍結乾燥技術が挙げられ、予め滅菌濾過された溶液から、活性成分+追加の所望のいずれかの成分の粉末がもたらされる。
【0064】
活性成分が適切に保護される場合、それらは、例えば不活性希釈剤と共に、若しくは同化可能な食用担体と共に経口投与され得て、又はハード若しくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入され得て、又はタブレットへと圧縮され得る。経口治療投与については、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ得て、且つ摂取可能なタブレット、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラート等の形態で使用され得る。
【0065】
上述の方法のいずれかと組み合わせて、組成物は、別の薬物と併せて投与され得る。それぞれの場合において、組成物は、他の薬物の投与前、他の薬物の投与と同時に、又は他の薬物の投与後に投与することができる。本明細書に記載の方法に従って、複数種の化合物又は組成物が、1種又は複数種の他の化合物、例えば既知の化学療法剤、抗ウイルス性化合物又は分子、並びに抗生物質、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、肺炎治療のための既知の薬物、鎮痛薬(リドカイン又はパラセタモールなど)、抗炎症剤(ベタメタゾン、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン)、及び/又は他の適切な薬物と同時投与され得る。提供される方法はさらに、放射線治療、外科手術、ホルモン療法及び/又は免疫療法などの他の腫瘍治療法と組み合わせられ得る。したがって、提供される方法はさらに、1種又は複数種の追加の治療薬を対象に投与することを含む。適切な追加の治療薬としては、限定されないが、鎮痛薬、麻酔薬、蘇生薬、コルチコステロイド、抗コリン作用剤、抗コリンエステラーゼ薬、抗痙攣薬、抗腫瘍剤、アロステリック阻害薬、アナボリックステロイド、抗リウマチ剤、精神治療薬、神経ブロック剤、抗炎症剤、駆虫薬、抗生物質、抗凝固薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン様作用薬、抗マイコバクテリア剤、抗原虫薬、抗ウイルス剤、ドパミン作用薬、血液系作用薬、免疫剤、ムスカリン作用薬、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子、及びホルモンが挙げられる。作用物質及び投薬量の選択は、治療される所定の疾患に基づいて当業者によって容易に決定することができる。任意に、追加の治療薬は、酢酸オクトレオチド、インターフェロン、ペムブロリズマブ、グルコピラノシル脂質A、カルボプラチン、エトポシド、又はそのいずれかの組み合わせである。
【0066】
「同時投与される」とは、同一若しくは異なる経路による同一製剤又は2つの異なる製剤での同時投与、或いは、同一若しくは異なる経路による逐次投与を意味する。「逐次」投与は、2つ以上の別々の化合物の投与間の、秒、分、時間、又は日数の時間差を意味する。
【0067】
一部の実施形態において、組成物中に1種又は複数種の賦形剤を含むことは有益であり得る。いずれか一方の賦形剤の選択が、他のもう一方の賦形剤の選択に影響し得ることは、当業者であれば認識されよう。例えば、賦形剤の併用は望ましくない作用を引き起こすであろうことから、特定の賦形剤の選択は、1種又は複数種の追加の賦形剤の使用を排除し得る。もしあるとすれば、本明細書に開示される製剤又は組成物中にどの賦形剤が含まれるかを、当業者であれば経験的に決定することができるだろう。賦形剤としては、限定されないが、共溶媒、可溶化剤、緩衝剤、pH調整剤、増量剤(bulking agent)、界面活性剤、カプセル化剤、張性調整剤、安定剤、保護剤、及び粘度調整剤が挙げられる。一部の実施形態において、薬剤として許容される担体を含むことは有益であり得る。
【0068】
一部の実施形態において、可溶化剤を含むことは有益であり得る。可溶化剤は、本明細書に開示のペプチド若しくは賦形剤など、製剤又は組成物の成分のいずれかの溶解性を高めるのに有用であり得る。本明細書に記載の可溶化剤は、網羅的リストを構成することは意図しないが、単に、使用され得る例示的な可溶化剤として提供される。特定の実施形態において、可溶化剤としては、限定されないが、エチルアルコール、t-ブチルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びその薬剤として許容される塩及び/又はその組み合わせが挙げられる。
【0069】
pHは、組成物に望ましい特性を提供するいずれかのpHであり得る。望ましい特性としては、例えば、ペプチド安定性、他のpHの組成物と比較して増加したペプチド保持、及び向上した濾過効率が挙げられる。
【0070】
一部の実施形態において、張性調整剤を含むことは有益であり得る。液体組成物の張性は、例えば、非経口投与により患者に組成物を投与する場合に、重要な、考慮すべき事項である。したがって、組成物を投与に適するようにするのを助けるために、張性調整剤が使用され得る。張性調整剤は当技術分野でよく知られている。したがって、本明細書に記載の張性調整剤は、網羅的なリストを構成すると意図されないが、単に、使用され得る例示的な張性調整剤として提供される。張性調整剤はイオン性又は非イオン性であり得て、限定されないが、無機塩、アミノ酸、炭水化物、糖、糖アルコール、及び炭水化物が挙げられる。例示的な無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸カリウムが挙げられる。例示的なアミノ酸はグリシンである。例示的な糖としては、グリセロール、プロピレングリコール、グルコース、スクロース、ラクトース、及びマンニトールなどの、糖アルコールが挙げられる。
【0071】
一部の実施形態において、安定剤を含むことは有益であり得る。安定剤は、本発明の組成物におけるペプチドの安定性を高めるのを助ける。
【0072】
一部の実施形態において、保護剤を含むことは有益であり得る。保護剤は、望ましくない状態(例えば、凍結若しくは凍結乾燥、又は酸化によって起こる不安定性)から、薬学的に活性な成分(例えば、本明細書に開示されるペプチド)を保護する作用物質である。保護剤としては、例えば凍結保護物質、凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)、及び酸化防止剤が挙げられる。凍結保護物質は、製剤が、その凍結ポイント未満の温度にさらされた場合に、医薬品有効成分(例えば、本明細書に開示されるペプチド)の効力の損失を防ぐのに有用である。例えば、凍結保護物質は、再構成凍結乾燥製剤中に含有されることができ、その結果、製剤は、静脈内(IV)投与前に製剤を凍結することができる。凍結保護物質は当技術分野でよく知られている。したがって、本明細書に記載の凍結保護物質は、網羅的なリストを構成すると意図されないが、単に、使用され得る例示的な凍結保護物質として提供される。凍結保護物質としては、限定されないが、溶媒、界面活性剤、カプセル化剤、安定剤、粘度調整剤、及びその組み合わせが挙げられる。凍結保護物質は、例えば、二糖(例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、及びトレハロース)、ポリオール(例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、及びダルシトール)、グリコール(例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール)を含み得る。
【0073】
凍結乾燥保護剤は、凍結乾燥された製剤又は組成物の成分の安定化に有用である。例えば、本明細書に開示のペプチドは、再構成前に凍結乾燥保護剤を用いて凍結乾燥させることができる。凍結乾燥保護剤は当技術分野でよく知られている。したがって、本明細書に記載の凍結乾燥保護剤は、網羅的なリストを構成すると意図されないが、単に、使用され得る例示的な凍結乾燥保護剤として提供される。凍結乾燥保護剤としては、限定されないが、溶媒、界面活性剤、カプセル化剤、安定剤、粘度調整剤、及びその組み合わせが挙げられる。例示的な凍結乾燥保護剤は、例えば、糖及びポリオール、トレハロース、スクロース、デキストランであり得て、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは凍結乾燥保護剤の非制限的な例である。
【0074】
酸化防止剤は、組成物の成分の酸化を防止するのに有用である。酸化によって、医薬品(drug product)の凝集、又は医薬品の純度若しくはその効力に対して他の有害な作用が生じ得る。酸化防止剤は当技術分野でよく知られている。したがって、本明細書に記載の酸化防止剤は、網羅的なリストを構成すると意図されないが、単に、使用され得る例示的な酸化防止剤として提供される。酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、チオール、メタ重亜硫酸塩、及びその組み合わせであり得る。
【0075】
本開示内容の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者には、本明細書に記載されることの変形形態、修正形態及び他の具体化が思い浮かぶだろう。したがって、次に続く特許請求の範囲は、前述の例証的な説明のみに限定されるものではない。
【0076】
本明細書に記載の実施形態それぞれが、個々に、又は本発明の1つ若しくは複数の他の実施形態と併せて、組み合わせされ得る。
【0077】
当業者は、本明細書に記載の化合物、組成物、及びその使用方法に対する多くの等価物を、単に通常の実験を用いて、認識するか、又は確かめることができるだろう。かかる等価物は、本明細書に開示の組成物及び方法の範囲内にあるとみなされる。
【0078】
本出願全体を通して記載されるすべての参考文献、特許及び公開特許出願の内容、並びにそれに付随する図面は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0079】
以下の実施例は、実施形態をどのように製造するか、及び使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するために述べられており、本発明者らが彼らの発明とみなすものの範囲を制限することを意図せず、或いは以下の実験がすべてである、又は実施される実験のみであることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度等)に関して正確性を確かにするための努力がなされているが、一部の実験誤差及び逸脱が説明されるべきである。別段の指定がない限り、部は、重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度である。標準的な略語が使用される。
【0080】
実施例1:マンナンナノゲル合成プロトコル(4日間):
A.マンナン及びデキストランの酸化及び精製:
材料:マンナン;FITCデキストラン;100mM酢酸ナトリウム(NaOAc緩衝液,pH5.5);PD10脱塩カラム;CENTRI-SEP(商標)カラム(Princeton Separations);過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4);SPIN-X(登録商標)10k MWCOコンセントレーター(Corning)
【0081】
調製:
実施される各マンナン酸化について、塔頂(top)の緩衝液を除去し、塔底先端(bottom tip)をカットオフし、クランプスタンドにそれを取り付けることによって、1つのPD10脱塩カラムを調製する。NaOAc緩衝液を塔頂に4回充填し、各充填後に完全にそれを排出させることによって、カラムをプライムする。
【0082】
蛍光デキストランが酸化される場合には、1つのCENTRI-SEP(商標)カラムが、NaOAc緩衝液800μLを各カラムに添加し、完全にボルテックスすることによって、必要とされる酸化デキストラン500μgごとに調製される。
【0083】
酸化:
5mLチューブ内に直接、マンナンを計り分け(>15mg/実施される酸化)、NaOAc緩衝液中に濃度10mg/mLに溶解する。マンナン溶液の体積に等しい溶液体積となるように、NaIO4を計量する。NaIO4の濃度は、ナノゲルコア製剤用のマンナンの酸化に対して120mMであり、二次マンナン添加のためのマンナンの酸化に対して2mMである。NaIO4はNaOAc緩衝液に溶解される。
【0084】
実施される各酸化に関して、マンナン溶液1.5mLを適切なNaIO4溶液1.5mLと5mLチューブ中で混合する。最終NaIO4濃度=コア製剤に対して60mM及び二次マンナンに対して1mMである。
【0085】
酸化蛍光デキストランが調製される場合には、NaOAc緩衝液中で10mg/mL溶液が調製され、必要とされる酸化デキストラン500μgごとに、デキストラン溶液60μLをチューブ内で120mM NaIO4溶液60uLと混合する。
【0086】
そのチューブをフォイルで包み、回転させながら、30分間反応させる。
【0087】
精製:
各酸化マンナン(ox-マンナン)反応溶液をそれ自体のPD10脱塩カラムに添加し、廃棄物中に完全に排出する。SPIN-X(登録商標)コンセントレーターを各カラム下に置き、カラムにNaOAc緩衝液3.5mLを添加し、それを完全に排出させることによって、精製マンナンをコンセントレーター中に溶出した。次いで、コンセントレーターを4000×gで13分間スピンする。
【0088】
コンセントレーターの上部からのマンナンすべてを1.7mLチューブに移し、1mLピペットで開始体積を測定し、且つNaOAc緩衝液を添加することによって、総体積を1.25mLまでにする。損失ゼロを想定して、これは10mg/mLである。
【0089】
塔頂及び塔底キャップを除去することによって、デキストラン精製のために、CENTRI-SEP(商標)カラムを排液し、カラム床を800×gで2分間回転させる。次いで、デキストラン反応溶液100uLを、清潔な1.7mLチューブ中で重ねられた各カラム床に添加し、再び800×gで2分間スピンする。約90μLが溶出し、それは、損失ゼロを想定して濃度が約5.6mg/mLであることを意味する。
【0090】
直ぐに使用しない場合には、精製された酸化マンナン又はデキストランを4℃で保管する。
【0091】
B.マンナン自己集合:
材料:アニリン
500μgナノゲル(NG)バッチの調製:
酸化マンナン及びデキストランの合計500ug(損失ゼロを想定)を各バッチに関して1.7mLチューブに添加する。アニリン5μLを各チューブに添加し、次いでチューブを直ちに振とうする。すべてのチューブを、それぞれ約10秒間バッチ超音波処理し、次いでフォイル下にて一晩放置する。
【0092】
C.ナノゲル架橋
材料:コハク酸ジヒドラジド(SDH);3,3’-ジチオビス(プロパン酸ジヒドラジド;DPDH);シスタミン二塩酸塩(「シスタミン」);エチレンジアミン二塩酸塩(EDA);シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3);アセトニトリル(ACN);100mM酢酸ナトリウム,pH5.5(NaOAc緩衝液);PBS(決してDPBSではない);1規定(モル)水酸化ナトリウム(1N NaOH)。
【0093】
ジヒドラジド(DH)架橋:
スピンで良好なペレットを確実に得るめに、すべてのチューブを浴超音波処理する。上記のセクションBからのナノゲル(NG)を15000×gにて4分間スピンする。上清をピペットで吸引し、NaOAc緩衝液1mLを添加し、プローブ超音波処理器から、ショートパルスを用いて、NGを再懸濁する。NGをスピンし、50mM SDH及び50mM DPDHを含む、2:1(vol)ACN:NaOAc1mL中で再懸濁する。回転させながら、フォイル下にて一晩反応させる。
【0094】
ジアミン(DA)架橋
上記のセクションBからのナノゲル(NG)をスピンし、1mL NaOAc緩衝液で洗浄し、次いで50mM EDA及び50mMシスタミンを含むPBS1mL中でスピンし、再懸濁する。回転させながら、フォイル下にて1時間反応させる。1N NaOH中のNaCNBH3の5M溶液を調製し、次いで、この溶液20μLを各NGチューブに添加する。回転させながら、フォイル下にて一晩反応させる。
【0095】
後の使用のための貯蔵:
室温で一晩反応させた後、後の使用のためにDH架橋NGをそのまま4℃で保存することができる。
【0096】
4℃で貯蔵する前に、DA架橋NGは、PBS1mLで1回洗浄しなければならず、次いでPBS1mL中で再懸濁されなければならない。
【0097】
D.二次マンナン処理:
材料:セクションAからの1mM ox-マンナン(10mg/mL);アニリン;NaOAc緩衝液(100mM酢酸ナトリウム,pH5.5);PBS;シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)
【0098】
DH架橋NGへの二次マンナンの添加:
スピンで良好なペレットを確実に得るために、すべてのチューブを浴超音波処理する。NG(まだDH溶液中)をスピンし、2:1(vol)ACN:NaOAc1mLで洗浄する。各NGバッチをNaOAc緩衝液1mLに再懸濁する。次いで、500uL(ox-マンナン250ug)をそれぞれ有する2つの新たなチューブに、各チューブを分割する。調製されたすべての試料が分割前にプールされ得る。続くすべての工程は、この250μg半バッチサイズに対する工程である。
【0099】
それぞれの新たなチューブを、1mM ox-マンナン50μL+NaOAc緩衝液350μL中でスピン及び再懸濁し、フォイル下にて一晩反応させる。
【0100】
DA架橋NGへの二次マンナン添加:
スピンで良好なペレットを確実に得るために、すべてのチューブを浴超音波処理する。NG(既に洗浄され、PBS1mL中)を、500μL(ox-マンナン250ug)をそれぞれ有する2つの新たなチューブに分割する。調製されたすべての試料が分割前にプールされ得る。続くすべての工程は、この250μg半バッチサイズに対する工程である。
【0101】
それぞれの新たなチューブを、1mM ox-マンナン50μL+PBS350μL中でスピン及び再懸濁し、フォイル下にて1時間反応させる。1N NaOH中のNaCNBH3の5M溶液を調製する。この溶液10μLを各NGチューブに添加し、フォイル下にて一晩反応させる。
【0102】
E.活性化及びカーゴのローディング:
材料:PBS;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP);18MΩ脱イオン水(DI);100%メタノール(MeOH);水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4);2,2-ジチオピリジン(DTP);氷酢酸(AcOH);グルタチオン、還元(GSH);ジメチルスルホキシド(DMSO);10規定(モル)水酸化ナトリウム(10N NaOH);ペプチド。
【0103】
TCEPでのジスルフィド架橋のチオールへの還元:
スピンで良好なペレットを確実に得るために、すべてのチューブを浴超音波処理する。TCEPの100mM溶液をPBS中で調製し、次いで10mLごとに、10N NaOH350μLをこの溶液に添加する。pH6.9~7.5を確認する。NG(続く工程で同様に処理されたDH及びDANG)をTCEP溶液1mL中でスピン及び再懸濁し、回転させながらフォイル下にて1時間反応させる。
【0104】
イミン及び残留アルデヒドを水素化ホウ素で還元する(この工程は、DA架橋NGに関して省くことができるが、それらを損なわない):
脱イオン水1mLでNGを1回洗浄し、MeOH1mLで1回洗浄する。MeOH中の100mM NaBH41mLにNGを再懸濁し、1時間反応させる。
【0105】
チオールをDTPで活性化する:
MeOH1mLでNGを洗浄し(上記の工程が省かれる場合、最初に脱イオン水1mLで洗浄する)、MeOH:AcOH(160:1)中の100mM DTPに再懸濁する。回転させながらフォイル下にて4時間反応させる。
【0106】
チオールカーゴのロード(Load)(カーゴは実験ごとに頻繁に変化する):
カーゴ溶液は、脱イオン水中にGSHを200mMに溶解し、次いでDMSOで20mMに希釈することによって調製される。ペプチドをDMSO中に20mMに溶解する。脱イオン水又は他の溶媒にいずれかにおける200mM溶解が一部のペプチドには必要とされ得る。NGはMeOH1mLで洗浄される。合計100μLの20mMカーゴ溶液を各チューブに添加し、次いでMeOH900μLを添加し、再懸濁する。回転させながらフォイル下にて一晩反応させる。
【0107】
送達のための調製:
NGをMeOHで1回洗浄し、脱イオン水で1回洗浄し、滅菌PBS200uL(=1000×濃度)又は1mL(200×濃度)のいずれかに再懸濁し、浴超音波処理器で再懸濁する(約30秒~1分)。
【0108】
実施例2:ジスルフィド結合を介したチオール修飾RNAの結合によるナノゲル-RNA送達:
A.材料:トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP);100mM酢酸ナトリウム(NaOAc緩衝液,pH5.5);CENTRI-SEP(商標)カラム(Princeton Separations);過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4);シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3);シスタミン二塩酸塩(「シスタミン」);リン酸緩衝液生理食塩水(PBS,pH7.4);1規定(モル)水酸化ナトリウム(1N NaOH)
【0109】
B.RNA3’の酸化:
NaOAc緩衝液中のNaIO4の20mM溶液50μLと、10mg/mLのRNA50μLを混合し、フォイル下にて30分間反応させる。PBS中にCENTRI-SEP(商標)カラムを使用して、酸化RNAを精製する。
【0110】
C.RNA3’アルデヒドの還元的アミノ化:
PBS中の100mMシスタミン10μLを酸化RNAに添加し、1時間反応させる。次いで、1NNaOH中のNaCNBH3の5M溶液μLを添加し、2時間反応させる。PBS中にCENTRI-SEP(商標)カラムを使用して、酸化RNAを精製する。
【0111】
D.RNA3’チオールを露出するための、TCEPでの還元:
PBS(pH約7)中の100mM TCEP10μLをシスタミン修飾RNAに添加し、1時間反応させる。PBS中でCENTRI-SEP(商標)カラムを使用して、酸化RNAを精製する。
【0112】
E.RNA-ナノゲル連結(linking)/複合体形成:
PBS中のマンナンナノゲル懸濁液をDTP活性化状態(実施例1のナノゲルプロトコル参照)で、チオール修飾RNA2μgの溶液に添加し、総体積200μLにする(使用されるナノゲルの量は、様々なナノゲル:RNA比を達成するために変化させることができる。重量:重量比約25によって、最も高い発現が達成された)。次いで、混合物を高(high)で約30秒間ボルテックスし、フォイル下にて一晩反応させる。
【0113】
実施例3:ナノゲルとのRNAの静電複合体形成によるナノゲル-RNA送達:
RNA-ナノゲル複合体形成:
PBS中のDiAm(カチオン性)マンナンナノゲルの懸濁液をDTP活性化状態(実施例1のナノゲルプロトコル参照)で、非修飾RNA2μgの溶液に添加し、総体積200μLにする(使用されるナノゲルの量は、様々なナノゲル:RNA比を達成するために変化させることができる。重量:重量比約25によって、最も高い発現が達成された)。次いで、混合物を高で約30秒間ボルテックスし、15分間反応させる。
【0114】
実施例4:CD206発現性293T細胞の方法:
コドン最適化CD206配列及びピューロマイシン耐性遺伝子を有する、CMVプロモーター駆動(promoter-driven)CD206発現プラスミドを作成した。推奨される製造元の条件を用いて、Lipofectamine2000を使用して、293T細胞にCD206発現プラスミドをトランスフェクトし、ピューロマイシンでのセレクション下に2週間置く。セルソーターを使用して、単一CD206ポジティブ細胞を96ウェルプレートに培養し、CD206発現を示す293Tクローンが選択された。
【配列表】
【国際調査報告】