(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(54)【発明の名称】細胞および組織に標的化するためのポリ(アミン-CO-エステル)ナノ粒子への表面コンジュゲーション
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20241128BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20241128BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241128BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241128BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241128BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K47/60
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/12
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K48/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533994
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 US2022081189
(87)【国際公開番号】W WO2023108076
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピョトロフスキ-ダスピット, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アルバート, クレア
(72)【発明者】
【氏名】サルツマン, ダブリュー. マーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE59
4C084AA13
4C084MA38
4C084NA13
4C084ZB21
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA38
4C086NA13
4C086ZB21
(57)【要約】
薬物送達のために有用なナノ粒子を記載する。一態様では、ナノ粒子は、ポリ(エチレングリコール)で改変されたポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)(PACE)(PACE-PEG)を含有し、必要に応じて、末端基改変を必要に応じて含有する第2のPACEポリマーとブレンドされ得る。別の態様では、ナノ粒子は、末端基改変を必要に応じて含有するPACEポリマーを含有するコア、およびナノ粒子の表面に非共有結合的にコンジュゲートされたポリマー性界面活性剤を含有する。ナノ粒子は、それぞれ、スクシンイミドまたは置換スルホン部分を含有する、連結を介してPACE-PEGポリマーまたはナノ粒子の表面上の界面活性剤に共有結合的にコンジュゲートされている、ペプチドまたはタンパク質標的化部分を含有する。ナノ粒子を、核酸、例えば、mRNAの送達のための多用途のプラットフォームとして提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
((A)
x-(B)
y-(C)
q-(D)
w-(E)
f)
h
式Ia’
を有するポリ(アミン-co-エステル)-またはポリ(アミン-co-アミド)(PACE)-ポリアルキレンオキシド(PACE-PAO)ポリマーを含むナノ粒子であって、
式中、
式Ia’について、A、B、C、D、およびEは、独立して、モノマー性ラクトン(例えば、ペンタデカラクトン)、多官能性分子(例えば、N-メチルジエタノールアミン)、二酸もしくはジエステル(例えば、セバシン酸ジエチル)、またはポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)を含み、ここで、A、B、C、D、およびEは、少なくともラクトン、多官能性分子、二酸またはジエステルモノマー単位、およびポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコールを含み、x、y、q、w、およびfは、独立して、0~1000の整数であるが、ただし合計(x+y+q+w+f)は1より大きいことを条件とし、hは、1~1000の整数である、
ナノ粒子。
【請求項2】
前記PACE-PAOが、前記ナノ粒子の約0.1%wt/wt~約95%wt/wt、約0.1%wt/wt~約50%wt/wt、約0.1%wt/wt~約20%wt/wt、約0.1%wt/wt~約10%wt/wt、約0.1%wt/wt~約5%wt/wt、約1%wt/wt~約5%wt/wt、5%wt/wt~10%wt/wt、または約10%wt/wt~約20%wt/wtを構成する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリ(エチレングリコール)である、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
式Ia’が、構造:
【化16】
を有し、
式中、
式I’について、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、wは、独立して、1~1000の整数であるが、ただし式I’において、wは0より大きいことを条件とし、
式I’について、ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでRおよびR’は、独立して、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、
式I’について、Tは、独立して、存在しない、酸素、硫黄、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、アミン、置換アミン、カルボニル、置換カルボニルであり、
式I’について、R
7は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、置換スルホン、無置換スルホン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、マレイミド、アミン、置換アミン、チオール、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミド、アジド、アクリレート、メタクリレート、アルキン、ヒドロキシド、またはイソシアネートであり、
式I’について、TMは、独立して、存在しないかまたは標的化部分である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記標的化部分が、存在する、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記標的化部分が、タンパク質またはペプチドである、請求項4または5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記標的化部分が、抗体もしくはその抗原結合性断片、抗体ドメイン、T細胞受容体、細胞表面受容体、細胞表面接着分子、主要組織適合性遺伝子座タンパク質、ウイルスエンベロープタンパク質、規定の細胞に特異的に結合するファージディスプレイによって選択されたペプチド、またはそれらの組合せから選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
式I’について、Tが、置換アミドである、請求項4~7のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
R
7が、スクシンイミドである、請求項4~8のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記PACE-PAOポリマーが、5,000ダルトン~50kDa、または5,000ダルトン~30kDaの重量平均分子量を有し、前記重量平均分子量が、前記標的化部分の分子量を含まない、請求項4~9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記PACE-PAOポリマー、および第2のPACEポリマーの混合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記第2のPACEポリマーが、前記PACE-PAOポリマー中のPACEポリマーと同じまたは異なる、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記第2のPACEポリマーが、構造:
【化17】
を有し、
式中、
式Iについて、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、R
xは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、R
1およびR
2は、独立して、存在しないか、またはヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、もしくはそれらの組合せを含有する化学実体である、
請求項11または12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
R
1およびR
2が、存在しない、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
式Iについて、R
1および/またはR
2が、
【化18】
ではない、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項16】
式Iが、構造:
【化19】
を有し、
式中、J
1およびJ
2は、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、
R
3およびR
4は、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
請求項13または15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
J1が、-O-または-NHであり、J
2が、-C(O)NH-もしくは-C(O)O-、またはそれらの組合せである、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
式Iが、構造:
【化20】
を有する、請求項13、15、または16のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
式Iについて、Zが、Z’と同じである、請求項13~17のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項20】
式Iについて、nが、4、10、13、または14である、請求項13~18のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項21】
式Iについて、R
xが、置換もしくは無置換アルキルである、請求項13~20のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項22】
前記第2のPACEポリマーが、約2,000ダルトン~約30,000ダルトン、約2,000ダルトン~約25,000ダルトン、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、または約5,000ダルトン~約10,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項13~21のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項23】
前記第2のPACEポリマーが、約10%~約100%、好ましくは、約30%~約100%のラクトン含有量を有する、請求項13~22のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項24】
R
3および/またはR
4が、独立して、
【化21-1】
【化21-2】
からなる群より選択される、請求項16~23のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項25】
約1%wt/wt~約15%wt/wtのPACE-PAOポリマー、および約99%wt/wt~約15%wt/wtの第2のPACEポリマー、例えば、約10%wt/wtのPACE-PAOポリマーおよび約90%wt/wtの第2のPACEポリマーを含む、請求項11~24のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項26】
(i)構造:
【化22】
を有するポリマーであって、
式中、
式Iについて、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、R
xは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’であり、ここでR’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールであり、R
1およびR
2は、独立して、存在しないか、またはヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、もしくはそれらの組合せを含有する化学実体である、
ポリマーを含むコア、ならびに
(ii)式Iの構造を有する前記ポリマーに非共有結合的にコンジュゲートされたナノ粒子の表面上の界面活性剤
を含むナノ粒子。
【請求項27】
R
1およびR
2が、存在しない、請求項26に記載のナノ粒子。
【請求項28】
式Iについて、R
1および/またはR
2が、
【化23】
ではない、請求項26に記載のナノ粒子。
【請求項29】
式Iが、構造:
【化24】
を有し、
式中、J
1およびJ
2は、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、
R
3およびR
4は、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである、
請求項26または28に記載のナノ粒子。
【請求項30】
J1が、-O-または-NHであり、J
2が、-C(O)NH-もしくは-C(O)O-、またはそれらの組合せである、請求項29に記載のナノ粒子。
【請求項31】
式Iが、構造:
【化25】
を有する、請求項26、28、または29のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項32】
式Iについて、Zが、Z’と同じである、請求項26~31のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項33】
式Iについて、nが、4、10、13、または14である、請求項26~32のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項34】
式Iについて、R
xが、置換もしくは無置換アルキルである、請求項26~33のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項35】
前記第2のPACEポリマーが、約2,000ダルトン~約30,000ダルトン、約2,000ダルトン~約25,000ダルトン、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、または約5,000ダルトン~約10,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項26~34のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項36】
前記第2のPACEポリマーが、約10%~約100%、好ましくは、約30%~約100%のラクトン含有量を有する、請求項26~35のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項37】
R
3および/またはR
4が、独立して、
【化26-1】
【化26-2】
からなる群より選択される、請求項29~36のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項38】
前記界面活性剤が、構造:
【化27】
を含有し、
式中、
それぞれのAfは、独立して、疎水性または親水性モノマー残基であり、
Bfは、置換アルキル、置換アリール、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アミン、置換カルボニル、置換アミド、または置換スルホンであり、
Tfは、独立して、存在しない、酸素、硫黄、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、アミン、置換アミン、カルボニル、置換カルボニルであり、
R
7fは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、置換スルホン、無置換スルホン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、マレイミド、アミン、置換アミン、チオール、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミド、アジド、アクリレート、メタクリレート、アルキン、ヒドロキシド、またはイソシアネートであり、
TMは、標的化部分であり、
axは、独立して、0~10,000、0~5,000、または0~1,000の整数であり、
bxおよびcxは、独立して、1~10,000、1~5000、または1~1,000の整数である、
請求項26~37のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項39】
前記界面活性剤が、構造:
【化28-1】
【化28-2】
を含有する、請求項26~38のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項40】
治療剤、予防剤、診断剤、またはそれらの組合せを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項41】
核酸を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項42】
mRNAを含む、請求項1~41のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項43】
前記薬剤が、前記ナノ粒子内に非共有結合的に封入されている、請求項40~42のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項44】
前記ナノ粒子の表面上よりも高い割合の、前記ナノ粒子で封入された薬剤を有する、請求項40~43のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項45】
前記薬剤が、前記ナノ粒子内に封入されており、前記ナノ粒子の表面上に存在しない、請求項40~44のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年12月8日に出願された米国出願第63/287,410号;2021年12月15日に出願された米国出願第63/290,042号;2021年12月21日に出願された米国出願第63/292,200号;2022年1月21日に出願された米国出願第63/301,942号;2022年1月24日に出願された米国出願第63/302,413号;および2022年10月24日に出願された米国出願第63/418,744号の利益および優先権を主張し、これらは、それらの全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が支援した研究に関する記載
本発明は、国立衛生研究所によって付与されたHL147352、AI32895、GM86287、およびHL142144の下で政府の支援により行われた。政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明の分野は、一般に、核酸(例えば、mRNA)を含む、診断剤、予防剤および/または治療剤の効率的な送達のための、ポリマー性ナノ粒子への分子(例えば、ペプチドおよびタンパク質)の改善されたコンジュゲーションのためのポリマー組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
遺伝子送達のための非ウイルスベクターは、限定的な免疫原性についてのそれらの可能性、大きなサイズの遺伝子材料を収容および送達する能力、ならびにそれらの表面構造の改変についての可能性に起因して、過去数十年にわたって多くの注目を集めてきた。非ウイルスベクターの主要なカテゴリーとしては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられる。Felgnerおよび同僚によって開拓されたカチオン性脂質由来ベクターは、非ウイルス遺伝子送達のために最も広く調査されている系のいくつかを表している(Felgner, et al. PNAS, 84, 7413-7417 (1987))(Templeton, et al. Nat. Biotechnol. 15, 647-652 (1997))(Chen, et al. J. Invest. Dermatol. 130, 2790-2798 (2010))。
【0005】
カチオン性ポリマー非ウイルスベクターは、それらの合成における柔軟性および特定の生物医学的適用のための構造改変を理由として、ますます注目を集めている。カチオン性脂質系およびカチオン性ポリマー系は両方とも、静電相互作用を通して負に帯電したDNAとの凝縮複合体を形成することによって、遺伝子を送達し、複合体形成は、DNAを分解から保護し、その細胞取り込みおよび核への細胞内輸送を促進する。
【0006】
カチオン性ポリマーおよびDNAの間で形成されるポリプレックスは、一般に、カチオン性脂質およびDNAの間で形成されるリポプレックスよりも安定であるが、両方とも、血清構成要素および塩を含有する生理液中で不安定である場合が多く、複合体をばらばらにするか、または凝集させる傾向がある(Al-Dosari, et al. AAPS J. 11, 671-681 (2009))(Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010))。加えて、いくつかの研究は、アニオン性ポリマー、またはさらにネイキッドDNAが、ある特定の条件下であるレベルのトランスフェクションを提供することができることを示しているが、脂質およびポリマーの両方によるトランスフェクションは、通常、表面に正味の正電荷を有するポリプレックスまたはリポプレックスをもたらす過剰な電荷を有する材料を必要とする(Nicol, et al. Gene. Ther. 9, 1351-1358 (2002))(Schlegel, et al. J. Contr. Rel. 152, 393-401 (2011))(Liu, et al, AAPS J. 9, E92-E104 (2007))(Liu, et al. Gene Ther. 6, 1258-1266 (1999))。in vivoで循環系に注射されると、正の表面電荷は、負に帯電した血清分子または細胞構成要素の膜との複合凝集体の迅速な形成を開始し、次いで、これは、細網内皮系(RES)によって除去される。
【0007】
より重要なことに、これまでに開発された多くのカチオン性ベクターは、実質的な毒性を呈し、これが、それらの臨床適用性を制限している(Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010))(Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011))(Felgner, et al. J. Biol. Chem. 269, 2550-2561 (1994))(Kafil, et al. BioImpacts 1, 23-30 (2011))(Lv, et al. J Contr. Rel. 114, 100-109 (2006))。これはまた、電荷に依存すると思われ、複合体の表面上の過剰な正電荷は、細胞膜などの細胞構成要素と相互作用し、クラスリン媒介性エンドサイトーシス、イオンチャネル、膜受容体、および酵素の活性、または細胞生存シグナル伝達などの正常な細胞プロセスを阻害し得る(Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011))(Felgner, et al. Enhanced gene delivery and mechanism studies with a novel series of cationic lipid formulations. J. Biol. Chem. 269, 2550-2561 (1994))(Kafil, et al. Cytotoxic Impacts of Linear and Branched Polyethylenimine Nanostructures in A431 Cells. BioImpacts 1, 23-30 (2011))。
【0008】
結果として、カチオン性脂質は、多くの場合、動物およびヒトにおいて急性炎症応答を引き起こす一方で、PEIなどのカチオン性ポリマーは、赤血球の形質膜を不安定化し、細胞壊死、アポトーシスおよびオートファジーを誘導する(Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010))(Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011))(Lv, et al. J. Contr. Rel. 114, 100-109 (2006))。これらの望ましくない効果を理由として、より低い電荷密度を有する高効率の非ウイルスベクターに対する必要性が存在する。
【0009】
ジエステルとアミノ置換ジオールとの酵素共重合を経て形成される生分解性ポリ(アミン-co-エステル)のファミリーの合成はLiu, et al. J. Biomed. Mater. Res. A 96A, 456-465 (2011)およびJiang, Z. Biomacromolecules 11, 1089-1093 (2010)において議論されている。さまざまな鎖長を有するジエステル(例えば、スクシネートからドデカンジオエートまで)を、窒素上にアルキル(メチル、エチル、n-ブチル、t-ブチル)またはアリール(フェニル)置換基のいずれかを有するジエタノールアミンと共重合させた。リパーゼ触媒の高い耐性は、共重合反応をアミノ官能基の保護および脱保護なしで1ステップで完了させることを可能にした。弱酸性条件下でのプロトン化の際に、これらのポリ(アミン-co-エステル)は、DNAを容易に凝縮し、ナノサイズのポリプレックスを形成する。スクリーニング研究は、これらの材料の1つであるポリ(N-メチルジエチレンアミンセバケート)(PMSC)が、Lipofectamine 2000およびPEI14などの主要な市販製品の効率に匹敵する効率で、HEK293、U87-MG、および9Lを含む各種の細胞をトランスフェクトしたことを明らかにした。PMSCは、遺伝子送達のために以前に使用されていたが、酵素的に合成された材料の送達効率は、任意の以前に報告されたものよりもおよそ5桁高かった(Wang, et al. Biomacromolecules 8, 1028-1037 (2007))(Wang, et al. Biomaterials 28, 5358-5368 (2007))。しかしながら、これらのポリ(アミン-co-エステル)は、in vivoでの核酸の全身送達には有効ではなかった。これらの制限に対処するために、安全で有効な核酸送達プラットフォームが必要とされている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、メッセンジャーリボ核酸(mRNA)などの核酸のための、有効で、非毒性の持続放出送達システムを提供することである。
【0011】
本発明の目的はまた、mRNAなどの核酸のための、有効で、非毒性の持続放出送達システムのための標的化ポリマー性ナノ粒子を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Felgner, et al. PNAS, 84, 7413-7417 (1987)
【非特許文献2】Templeton, et al. Nat. Biotechnol. 15, 647-652 (1997)
【非特許文献3】Chen, et al. J. Invest. Dermatol. 130, 2790-2798 (2010)
【非特許文献4】Al-Dosari, et al. AAPS J. 11, 671-681 (2009)
【非特許文献5】Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010)
【非特許文献6】Nicol, et al. Gene. Ther. 9, 1351-1358 (2002)
【非特許文献7】Schlegel, et al. J. Contr. Rel. 152, 393-401 (2011)
【非特許文献8】Liu, et al, AAPS J. 9, E92-E104 (2007)
【非特許文献9】Liu, et al. Gene Ther. 6, 1258-1266 (1999)
【非特許文献10】Gao, et al. Biomaterials 32, 8613-8625 (2011)
【非特許文献11】Felgner, et al. Enhanced gene delivery and mechanism studies with a novel series of cationic lipid formulations. J. Biol. Chem. 269, 2550-2561 (1994)
【非特許文献12】Kafil, et al. Cytotoxic Impacts of Linear and Branched Polyethylenimine Nanostructures in A431 Cells. BioImpacts 1, 23-30 (2011)
【非特許文献13】Lv, et al. J Contr. Rel. 114, 100-109 (2006)
【非特許文献14】Tros de Ilarduya, et al. Eur. J. Pharm. Sci. 40, 159-170 (2010)
【非特許文献15】Liu, et al. J. Biomed. Mater. Res. A 96A, 456-465 (2011)
【非特許文献16】Jiang, Z. Biomacromolecules 11, 1089-1093 (2010)
【非特許文献17】Wang, et al. Biomacromolecules 8, 1028-1037 (2007)
【非特許文献18】Wang, et al. Biomaterials 28, 5358-5368 (2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
標的化薬物送達のために特に有用であるナノ粒子を記載する。一部の形態では、ナノ粒子は、ポリポリ(エチレングリコール)で改変されたポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)(PACE)(PACE-PEG)を含有する。ナノ粒子は、PACE-PEGポリマーと、ポリマーが末端基改変を必要に応じて含有する第2のPACEポリマーとのブレンドを含有することもできる。末端基改変を有するPACEポリマーを示す(PACEng)。
【0014】
一部の形態では、PACE-PEGポリマーは、好ましくは、スクシンイミドを含有する、連結を通してそれらに共有結合的にコンジュゲートされた、ペプチドまたはタンパク質標的化部分を含有する。
【0015】
一部の形態では、ナノ粒子は、ナノ粒子の表面に非共有結合的にコンジュゲートされた界面活性剤を含有する。好ましくは、界面活性剤は、ポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコールスルホン)ポリマーから形成されるポリマーである。これらの形態では、ナノ粒子は、末端基改変を必要に応じて含有するPACEポリマーを含有する。これらの形態では、界面活性剤は、好ましくは置換スルホン部分を含有する、連結を介して界面活性剤に共有結合的にコンジュゲートされているペプチドまたはタンパク質を含有する。
【0016】
PACEポリマーは、PEG改変または末端基改変されているかにかかわらず、ラクトン、多官能性分子、および二酸/ジエステルモノマー単位を含有する。好ましくは、PACEngポリマーの一部の形態では、ラクトン単位の組成パーセントは、約30%~約100%であり、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される。モル比に関して表すと、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)含有量は、約0.3~約1、すなわち、x/(x+q)は約0.3~約1である。
【0017】
ナノ粒子を、核酸、例えば、mRNAの送達のための多用途のプラットフォームとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、PACE-PEG-マレイミド(PACE-PEG-MAL)の構造中のPEG-マレイミドの存在を確認する核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
図1A、Kamaly, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USAから、NMRスペクトルにおける構造中のプロトンのそれぞれのピークへの帰属を示す化学構造を含んで、ジブロックポリ(乳酸-co-グリコール酸)-b-ポリ(エチレングリコール)-マレイミド(PLGA-PEG-MAL)のNMRスペクトルを示す。重要なことに、マレイミド基についてのピークは、6.7ppmに現れる。
図1Bは、PACE-PEG-マレイミドのNMRスペクトルを示す。このスペクトルは、PACE-PEGポリマーへのマレイミド基の導入を確認する(6.7ppmのピークを参照されたい)。
【
図2】
図2Aは、PACE-PEG-MALを介したナノ粒子の表面へのタンパク質のコンジュゲーション(例えば、共有結合性コンジュゲーション)を示す概略図である。
図2Bは、in vitroで、抗体で官能化された色素負荷PEG-PEG-MALナノ粒子で処理された細胞による増強され標的化された取り込みを示す線グラフである。細胞は、W1282Xナンセンス嚢胞性線維症変異についてホモ接合性のヒト気管支上皮細胞である。抗体は、上皮マーカーEpCAM(右にシフトしたヒストグラム)を標的にするか、またはアイソタイプ対照抗体(左にシフトしたヒストグラム)である。
【
図3】
図3Aは、ナノ粒子上のPACE-PEG-MALを介したタンパク質コンジュゲート化ナノ粒子のインキュベーションを示す概略図である。
図3Bは、CD31で官能化されたPEG-PEG-MALナノ粒子のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)による標的化された取り込みの増加を示す棒グラフである。
【
図4-1】
図4Aは、ある程度の酢酸ビニルモノマーの存在を伴う、ポリ(ビニルアルコール-ビニルスルホン)コポリマー(PVA-VS)の化学合成を示す概略図である。
図4Cおよび4Cは、PVA-VSの構造を確認するNMRスペクトルである。
【
図4-2】
図4Aは、ある程度の酢酸ビニルモノマーの存在を伴う、ポリ(ビニルアルコール-ビニルスルホン)コポリマー(PVA-VS)の化学合成を示す概略図である。
図4Cおよび4Cは、PVA-VSの構造を確認するNMRスペクトルである。
【
図5】
図5Aは、酢酸ビニルモノマーの存在なしでの、PVA-VSの化学合成を示す概略図である。
図5Bは、in vitroで、PACE-PVA-VS-結合タンパク質(CD31-Mb)ナノ粒子、PACE-PVA-VS-対照(アイソタイプ-Mb)ナノ粒子、またはナノ粒子なしで処理されたHUVECによる取り込みの代表的なフローサイトメトリーヒストグラムを示す線グラフである。
図5Cは、in vitroで、HUVECに結合した蛍光結合タンパク質PACE-NPの平均蛍光強度(MFI)値の棒グラフである(エラーバーはSDを表す)。それぞれのデータ点は、3つのウェルからの平均を表す(ウェルあたり捕捉された10,000個のHUVEC)。統計学的有意性は、ボンフェローニ補正を伴う多重T検定を使用して、p<0.001の場合「****」、p<0.001の場合「***」、p<0.01の場合「**」、p<0.05の場合「*」、および有意差が見出されなかった場合「ns」の群の間で示す。
【
図6-1】
図6A~6Fは、PACE-PEG-MAL NPモノボディおよび抗体コンジュゲーションプロセスの概略図(
図6A);5分間、12分間、30分間、および1時間、アイソタイプ対照またはCD4-標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかとのin vitroインキュベーション後のヒト血液由来のNP+ CD4
+PBMC%のグラフ(
図6B);5分間、12分間、30分間、および1時間、アイソタイプ対照またはCD4-標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかとのin vitroインキュベーション後のヒト血液由来のNP+PBMC%のグラフ(
図6C);ラットにおけるクロドロネートリポソームデコイ事前処置を用いるin vivoでのCD4
+T細胞のPACE-PEG-MAL NP標的化実験の概略図(
図6D;アイソタイプ対照またはCD4標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかのin vivo静脈内送達2時間後のラット血液由来のNP+ CD4
+PBMC%のグラフ(
図6E);ならびにアイソタイプ対照またはCD4標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかのin vivo静脈内送達2時間後のラット血液由来のNP+PBMC%のグラフ(
図6F)である。
【
図6-2】
図6A~6Fは、PACE-PEG-MAL NPモノボディおよび抗体コンジュゲーションプロセスの概略図(
図6A);5分間、12分間、30分間、および1時間、アイソタイプ対照またはCD4-標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかとのin vitroインキュベーション後のヒト血液由来のNP+ CD4
+PBMC%のグラフ(
図6B);5分間、12分間、30分間、および1時間、アイソタイプ対照またはCD4-標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかとのin vitroインキュベーション後のヒト血液由来のNP+PBMC%のグラフ(
図6C);ラットにおけるクロドロネートリポソームデコイ事前処置を用いるin vivoでのCD4
+T細胞のPACE-PEG-MAL NP標的化実験の概略図(
図6D;アイソタイプ対照またはCD4標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかのin vivo静脈内送達2時間後のラット血液由来のNP+ CD4
+PBMC%のグラフ(
図6E);ならびにアイソタイプ対照またはCD4標的化DiD負荷PACE-PEG-MAL NPのいずれかのin vivo静脈内送達2時間後のラット血液由来のNP+PBMC%のグラフ(
図6F)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
I.定義
ナノ粒子は、1nm~1ミクロン未満の直径を有する粒子(ナノスフェアおよびナノカプセル)である。ナノ粒子は、球状または非球状であってもよく、規則的なまたは不規則な形状を有していてもよい。ある特定の実施形態では、ナノ粒子の集団は、約500nm、200nm、100nm、50nm、または10nmの平均直径を有する。一部の実施形態では、粒子の平均直径は、約100nm~約600nm、約100nm~500nm、約100nm~300nm、約100nm~250nm、約200nm~500nm、約200nm~400nm、または約200nm~350nmである。一部の実施形態では、平均直径は、約100nm~250nmである。一部の実施形態では、平均直径は、約200nm~350nm、好ましくは、約200~約500nmである。「直径」という用語は、本明細書では、物理的直径または流体力学的直径のいずれかを指すために使用される。本質的に球状の粒子の直径は、物理的直径または流体力学的直径を指し得る。非球状粒子の直径は、流体力学的直径を優先的に指し得る。非球状粒子の直径は、粒子の表面上の2点間の最大直線距離を指し得る。複数の粒子を指す場合、粒子の直径は、典型的には、粒子の平均直径を指す。粒子直径は、限定されるものではないが動的光散乱を含む、当技術分野における各種の技法を使用して測定することができる。
【0020】
「生体適合性」という用語は、本明細書で使用される場合、それら自体が宿主(例えば、動物またはヒト)に対して毒性でもなく、宿主において毒性濃度でモノマー性もしくはオリゴマー性サブユニットまたは他の副産物を生成する速度で分解もしない(材料が分解する場合)、1つまたは複数の材料を指す。
【0021】
「生分解性」という用語は、本明細書で使用される場合、材料が、その構成要素サブユニットに、または例えば、より小さな(例えば、非ポリマー性)サブユニットへの材料の生化学的プロセスによる消化で、分解または破壊されることを意味する。
【0022】
「持続放出」という語句は、物質の大部分が一度に生物学的に利用可能にされるボーラス型投与とは対照的に、長期間にわたる物質の放出を指す。
【0023】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、当技術分野で認識されている用語であり、典型的には注射による、経腸および局所投与以外の投与の様式を含み、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、皮内、腹腔内、経気管、および皮下の注射および注入が挙げられる。
【0024】
「界面活性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、液体の表面張力を低下させる薬剤を指す。
【0025】
「遺伝子」という用語は、その鋳型またはメッセンジャーRNAを通して、特定のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に特徴的なアミノ酸の配列をコードするDNA配列を指す。「遺伝子」という用語は、RNA産物をコードするDNA配列も指す。遺伝子という用語は、ゲノムDNAに関して本明細書で使用される場合、介在する非コード領域および調節領域を含み、5’末端および3’末端を含むことができる。
【0026】
「ラクトン」および「ラクトン単位」という用語は、環状エステルを含む化合物、または環状エステルにおけるエステル結合の切断から生じる鎖式化学構造を記載するために使用される。例えば、ラクトンは、下記に示される環状エステル、および対応するラクトン由来鎖式構造:
【化1】
[nは、整数である]
を記載するために使用される。鎖式構造は、限定されるものではないが、加溶媒分解、例えば、加水分解、および酵素的切断を含む、当技術分野において公知の方法を経て形成される。
【0027】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族基のラジカルを指し、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。
【0028】
好ましい実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格中に30個またはそれよりも少ない炭素原子(例えば、直鎖についてC1~C30、分枝鎖についてC3~C30)、好ましくは、20個またはそれよりも少ない、より好ましくは、15個またはそれよりも少ない、最も好ましくは、10個またはそれよりも少ない炭素原子を有する。1~30の間の骨格炭素原子の数のすべての整数値が、直鎖または分枝鎖アルキルについて企図され、開示される。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造中に3~10個の炭素原子を有し、より好ましくは、環構造中に5、6、または7個の炭素を有する。3~10の間の環炭素原子の数のすべての整数値が、シクロアルキルについて企図され、開示される。
【0029】
「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、本明細書、実施例、および特許請求の範囲の全体にわたって使用される場合、「無置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むことが意図され、その後者は、炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の水素を置き換える1個または複数の置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられる。
【0030】
炭素の数が他に明示されない限り、「低級アルキル」は、本明細書で使用される場合、上記で定義されるアルキル基を意味するが、その骨格構造中に1~10個の炭素、より好ましくは、1~6個の炭素原子を有する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、類似の鎖長を有する。本出願全体にわたって、好ましいアルキル基は、低級アルキルである。好ましい実施形態では、本明細書でアルキルとして指定される置換基は、低級アルキルである。
【0031】
炭化水素鎖上で置換される部分は、適切である場合、それら自体が置換され得ることが当業者に理解されるであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルを含む)、-CF3、-CN等が挙げられ得る。シクロアルキルも同じ様式で置換され得る。
【0032】
「アリール」は、C5~C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、または二複素環式(bihetereocyclic)の環系を指す。一部の形態では、環系は、3~50個の炭素原子を有する。広義の「アリール」は、本明細書で使用される場合、0~4個のヘテロ原子を含み得る5、6、7、8、9、10および24員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ピレン、コランニュレン、コロネン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが挙げられる。環構造中にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「アリール複素環」または「複素芳香族」とも称され得る。芳香環は、1つまたは複数の環位置で、限定されるものではないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(または4級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素芳香族部分、-CF3、-CN;およびそれらの組合せを含む1個または複数の置換基で置換され得る。
【0033】
「アリール」という用語は、2個またはそれよりも多くの炭素が2つの隣接する環と共通である2つまたはそれよりも多くの環式環を有する多環式環系(すなわち、「縮合環」)も含み、ここで、環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環式環または環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/または複素環であり得る。複素環式環の例としては、限定されるものではないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシンドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。環の1つまたは複数は、「アリール」について上記で定義されたように、置換され得る。
【0034】
「アルコキシ」は、酸素架橋を通して付着した示された炭素原子の数を有する上記で定義されたアルキル基を指す。アルコキシの例としては、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0035】
第一級アミンは、アンモニア中の3個の水素原子のうちの1個が置換もしくは無置換アルキル基または置換もしくは無置換アリール基によって置き換えられる場合に生じる。第二級アミンは、1個の水素と一緒に、窒素に結合した2個の有機置換基(置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換アリール、またはそれらの組合せ)を有する。第三級アミンでは、窒素は3個の有機置換基を有する。
【0036】
「置換された」は、本明細書で使用される場合、モノマー上の1個もしくは複数の原子または原子の群が、置き換えられる原子または原子の群とは異なる1個もしくは複数の原子または原子の群で置き換えられていることを意味する。一部の実施形態では、モノマー上の1個または複数の水素は、1個または複数の原子または原子の群で置き換えられる。水素を置き換えることができる官能基の例は、定義において上記に列挙されている。一部の実施形態では、得られるモノマー/ポリマーの化学的および/または物理的性質、例えば、電荷または親水性/疎水性などを変える1個または複数の官能基を付加することができる。例示的な置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ニトロ、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられる。
【0037】
「阻害する」または「低減する」という用語は、一般に、活性および量を低減または減少させることを意味する。これは、活性もしくは量の完全な阻害もしくは低減、または部分的な阻害もしくは低減であり得る。阻害または低減は、対照または標準レベルと比較され得る。阻害は、5、10、25、50、75、80、85、90、95、99、もしくは100%、またはそれらの間の整数であり得る。一部の実施形態では、阻害および低減は、mRNA、タンパク質、細胞、組織および/または臓器レベルで比較される。
【0038】
「防止する」、「防止」または「防止すること」という用語は、組成物または方法を、疾患もしくは障害によって引き起こされる1つもしくは複数の症状のリスクがあるもしくはその素因を有する対象に投与すること、疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状を対象が発生する可能性を減少させること、または疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の重症度、期間、もしくはその開始の時を低減することを意味する。
【0039】
II.組成物
A.ポリアルキレンオキシドとブレンドされたおよび/またはそれで改変されたポリ(アミン-co-エステル)および/またはポリ(アミン-co-アミド)を含有するナノ粒子
治療剤、診断剤、および/または予防剤の標的化送達のために有用なナノ粒子を開示する。好ましくは、薬剤は、核酸、例えば、mRNAである。
【0040】
1.ポリアルキレンオキシドで改変されたポリ(アミン-co-エステル)および/またはポリ(アミン-co-アミド)
一態様では、ナノ粒子は、ポリアルキレンオキシドで改変されたポリ(アミン-co-エステル)および/またはポリ(アミン-co-アミド)(PACE)(PACE-PAO)を含有する。PAOは、部分-[O-Cna-O]-[式中、naは、少なくとも2、例えば、両端を含む2~8、好ましくは、両端を含む2~3である]を含有する。炭素原子は、独立して、無置換または置換であり得、例えば、ヒドロキシル基、カルビノール基、またはそれらの組合せで置換され得る。例示的な目的のために、naが2であり、炭素原子が無置換である場合、PAOは、ポリ(エチレングリコール)であり;naが2であり、炭素原子の少なくとも1つが、独立して、カルビノール部分で置換されている場合、PAOは、ポリ(グリセロール)であり;naが2および/または3であり、炭素原子の少なくとも1つが、独立して、ヒドロキシル基および/またはカルビノール基で置換されている場合、PAOは、超分岐ポリグリセロールである。好ましくは、ポリアルキレンオキシドは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。PACE-PAOポリマーは、必要に応じて、末端基改変を必要に応じて含有する第2のPACEポリマーとブレンドされる。
【0041】
一部の形態では、ナノ粒子は、ナノ粒子の総重量に対してPACE-PAOポリマーの重量の観点で表される、約0.1%wt/wt~約95%wt/wt、約0.1%wt/wt~約50%wt/wt、約0.1%wt/wt~約20%wt/wt、約0.1%wt/wt~約10%wt/wt、約0.1%wt/wt~約5%wt/wt、約1%wt/wt~約5%wt/wt、5%wt/wt~10%wt/wt、または約10%wt/wt~20%wt/wtのPACE-PAO、例えば、PACE-PEGを含有する。
【0042】
PACE-PAOポリマーは、一般式:
((A)x-(B)y-(C)q-(D)w-(E)f)h
式Ia’
[式中、A、B、C、D、およびEは、独立して、ラクトン(例えば、ペンタデカラクトン)、多官能性分子(例えば、N-メチルジエタノールアミン)、二酸もしくはジエステル(例えば、セバシン酸ジエチル)、またはポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)に由来するモノマー単位を含み、ここで、PACE-PAOポリマーは、少なくともラクトン、多官能性分子、二酸またはジエステルモノマー単位、およびポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)を含む]
を有する。一般に、多官能性分子は、1つもしくは複数のカチオン、1つもしくは複数の正にイオン化可能な原子、またはそれらの組合せを含有する。1つまたは複数のカチオンは、塩基性窒素原子のプロトン化から、または第四級窒素原子から形成される。
【0043】
一般に、PACE-PAOポリマーについて、x、y、q、w、およびfは、独立して、0~1000の整数であるが、ただし、合計(x+y+q+w+f)は1より大きいことを条件とする。hは、1~1000の整数である。
【0044】
PACE-PAOポリマーの一部の形態では、ラクトン単位の組成パーセントは、約10%~約100%であり、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される。モル比に関して表すと、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)含有量は、約0.1~約1、すなわち、x/(x+q)は約0.1~約1である。好ましくは、PACE-PAOポリマーの一部の形態では、ラクトン単位の組成パーセントは、約30%~約100%であり、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される。モル比に関して表すと、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)含有量は、約0.3~約1、すなわち、x/(x+q)は約0.3~約1である。好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は約10~約24であり、より好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は約12~約16である。最も好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は、12(ドデカラクトン)、15(ペンタデカラクトン)、または16(ヘキサデカラクトン)である。
【0045】
PACE-PEG含有ポリマーの構造は、下記:
【化2】
好ましくは、式I’に示される。
[式中、nは、1~30の整数であり、m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、wは、独立して、0~1000の整数であるが、ただし式I’において、wは0より大きく、式II’において、少なくとも1つのwはゼロ(0)ではないことを条件とし、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’(式中、RおよびR’は、独立して、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)であり、
Tは、独立して、存在しない、酸素、硫黄、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、アミン、置換アミン、カルボニル、置換カルボニルであり、
R
7は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、置換スルホン、無置換スルホン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、マレイミド、アミン、置換アミン、チオール、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミド、アジド、アクリレート、メタクリレート、アルキン、ヒドロキシド、またはイソシアネートであり、
【0046】
TMは、独立して、存在しないかまたは標的化部分である]
【0047】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、Zは、式I’または式II’におけるZ’と同じである。
【0048】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、Oである。PACE-PEGポリマーの一部の形態では、式I’または式II’において、Zは、NR’であり、かつZ’は、NR’である。PACE-PEGポリマーの一部の形態では、式I’または式II’において、Zは、Oであり、かつZ’は、NR’である。PACE-PEGポリマーの一部の形態では、式I’または式II’において、Zは、NR’であり、かつZ’は、Oである。
【0049】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14である。一部の形態では、式I’または式II’において、Zも、Oである。
【0050】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8である。一部の形態では、式I’または式II’において、Zも、Oである。
【0051】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、式I’または式II’において、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpは、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4である。一部の形態では、式I’または式II’において、Zも、Oである。
【0052】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、式I’または式II’において、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rは、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルである。一部の形態では、式I’または式II’において、Zも、Oである。
【0053】
PACE-PEGポリマーの一部の形態では、式I’または式II’において、nは、13(例えば、ペンタデカラクトン、PDL)であり、mは、7(例えば、セバシン酸)であり、oおよびpは、2(例えば、N-メチルジエタノールアミン、MDEA)である。
【0054】
特定の実施形態では、x、y、q、およびwの値は、式I’または式II’において、PACE-PEGポリマーの重量平均分子量が、5,000ダルトン超、例えば、5,000ダルトン~50kDa、5,000ダルトン~30kDaであるようなものである。この重量平均分子量は、標的化部分の分子量を含まない。RおよびR’基の例としては、限定されるものではないが、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体および異性体、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、キシリルなどが挙げられる。
【0055】
ポリアルキレンオキシドのブロックは、ポリマーの末端(すなわち、ブロックされた1つのヒドロキシ基を有するPEGを、例えば、メトキシ基と反応させることによる)、ポリマー骨格内(すなわち、どちらのヒドロキシル基もブロックされない)、またはそれらの組合せに位置し得る。
【0056】
一部の形態では、ナノ粒子は、上記に記載される式I’および/または式II’のPACE-PEGポリマーを含有し、ここで、少なくとも標的化部分(TM)は、式Iおよび/または式II’中に存在する。好ましくは、共有結合性コンジュゲーションは、T、R7、またはそれらの組合せを通して起こる。一部の形態では、例えば、標的化部分が、タンパク質またはペプチドである場合、コンジュゲーションは、標的化部分をポリマーのPEG末端に連結するスクシンイミド基を形成する、タンパク質またはペプチド上の反応性基(例えば、チオール)とポリマー上のマレイミド基との間の容易な「クリック」反応を介して進行する。
【0057】
2.第2のPACEポリマーとブレンドされたPACE-PAOを含有するナノ粒子
一部の形態では、ナノ粒子は、PACE-PAOポリマー(PACE-PAOを含有するナノ粒子という表題のセクションで上記に記載された通り)および第2のPACEポリマーのブレンドを含有する。好ましくは、第2のPACEポリマーは、PEG改変を含有しない。第2のPACEポリマーは、PACE-PAO(例えば、PACE-PEG)ポリマー中のPACEポリマーセグメントと同じまたは異なっていてもよく、類似性または相違は、重量平均分子量、またはPACEポリマーにおける構成要素の組成モルパーセントに基づいて評価され得る。第2のPACEポリマーは、必要に応じて、末端基改変を含有する。第2のPACEポリマーが、末端基改変を含有しない場合、これは、「第2のPACEab」と示される。少なくとも1つの末端基改変が存在する場合、第2のPACEポリマーは、「第2のPACEng」と示される。
【0058】
一部の形態では、第2のPACEポリマーは、式I:
【化3】
[式中、nは、1~30の整数であり、
m、o、およびpは、独立して、1~20の整数であり、
x、y、およびqは、独立して、1~1000の整数であり、
R
xは、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリール、または置換もしくは無置換アルコキシであり、
ZおよびZ’は、独立して、OまたはNR’(式中、R’は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)であり、
R
1およびR
2は、独立して、存在しないかまたはヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、もしくはそれらの組合せを含有する化学実体である]に示される構造を有する。
【0059】
第2のPACEポリマーの一部の形態では、R1およびR2は、存在しない。第2のPACEポリマーの一部の形態では、R1およびR2の少なくとも1つは、存在する。R1およびR2が存在しない場合、第2のPACEポリマーは、「第2のPACEabポリマー」と示される。R1およびR2の少なくとも1つが存在する場合、第2のPACEポリマーは、「第2のPACEngポリマー」と示される。
【0060】
RxおよびR’基の例としては、限定されるものではないが、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体および異性体、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、キシリルなどが挙げられる。
【0061】
特定の実施形態では、x、y、および/またはqの値は、第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の重量平均分子量が、20,000ダルトン超、15,000ダルトン超、10,000ダルトン超、5,000ダルトン超、2,000ダルトン超であるようなものである。一部の形態では、PACEngポリマーの重量平均分子量は、約2,000ダルトン~約30,000ダルトン、約2,000ダルトン~約25,000ダルトン、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、または約5,000ダルトン~約10,000ダルトンである。
【0062】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)は、1つまたは複数のラクトン、1つまたは複数のアミン-ジオール(ZおよびZ’=O)、トリアミン(ZおよびZ’=NR’)、またはヒドロキシ-ジアミン(Z=OかつZ’=NR’、またはZ=NR’かつZ’=O)、および1つまたは複数の二酸またはジエステルから調製することができる。2つまたはそれよりも多くの異なるラクトン、二酸もしくはジエステル、および/またはトリアミン、アミン-ジオール、もしくはヒドロキシ-ジアミンモノマーが使用される実施形態では、n、o、p、および/またはmの値は、同じまたは異なり得る。
【0063】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、ラクトン単位の組成パーセントは、約10%~約100%であり、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される。モル比に関して表すと、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)含有量は、約0.1~約1、すなわち、x/(x+q)は約0.1~約1である。好ましくは、第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、ラクトン単位の組成パーセントは、約30%~約100%であり、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される。モル比に関して表すと、ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)含有量は、約0.3~約1、すなわち、x/(x+q)は約0.3~約1である。好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は約10~約24であり、より好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は約12~約16である。最も好ましくは、ラクトン単位中の炭素原子の数は、12(ドデカラクトン)、15(ペンタデカラクトン)、または16(ヘキサデカラクトン)である。
【0064】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、Zは、Z’と同じである。
【0065】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、Oである。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、Oであり、かつZ’は、NR’である。一部の形態では、Zは、NR’であり、かつZ’は、Oである。
【0066】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0067】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0068】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、oおよびpは、1~6の同じ整数、例えば、2、3、または4である。一部の形態では、Zも、Oである。
【0069】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、Z’は、Oであり、nは、1~24の整数、例えば、4、10、13、または14であり、mは、1~10の整数、例えば、4、5、6、7、または8であり、Rは、アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルの同族体および異性体、またはアリール、例えば、フェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリル、もしくはキシリルである。一部の形態では、Zも、Oである。
【0070】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)の一部の形態では、nは、13(例えば、ペンタデカラクトン、PDL)であり、mは、7(例えば、セバシン酸)であり、oおよびpは、2(例えば、N-メチルジエタノールアミン、MDEA)である。
【0071】
一部の形態では、ナノ粒子は、第2のPACEngポリマーを含有し、R
1および/またはR
2は、対応するナノ粒子に関連せず、R
1および/またはR
2は、
【化4】
からなるかまたはそれを含む。
【0072】
一部の形態では、第2のPACEngポリマーを含有するナノ粒子は、R
1および/またはR
2が、
【化5】
からなる、またはそれを含む対応するナノ粒子と比べて、核酸カーゴ、例えば、RNA、より詳細には、mRNAの、改善された負荷、改善された細胞トランスフェクション、改善された細胞内エンドソーム放出、またはそれらの組合せを示す。
【0073】
一部の形態では、第2のPACEngポリマーは、式IIの構造を有する。
【化6】
[式中、J
1およびJ
2は、独立して、連結部分であるかまたは存在せず、
R
3およびR
4は、独立して、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する置換アルキルである]一部の形態では、R
3、R
4、またはその両方の分子量は、500ダルトンもしくはそれ未満、200ダルトンもしくはそれ未満、または100ダルトンもしくはそれ未満である。
【0074】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、J1は、-O-または-NH-である。
【0075】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、J2は、-C(O)NH-または-C(O)O-である。
【0076】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3は、R4と同一である。
【0077】
好ましくは、R3および/またはR4は、直鎖状である。
【0078】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3、R4、またはその両方は、第一級アミン基を含有する。第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3、R4、またはその両方は、第一級アミン基、および1個または複数の第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。
【0079】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3、R4、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有する。第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3、R4、またはその両方は、ヒドロキシル基、および1個または複数のアミン基、好ましくは、第二級アミン基または第三級アミン基を含有する。第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3、R4、またはその両方は、ヒドロキシル基を含有し、アミン基を含有しない。
【0080】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3およびR4の少なくとも1つは、ヒドロキシル基を含有しない。
【0081】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R3、R4、またはその両方は、-無置換C1~C10アルキレン-Aq-無置換C1~C10アルキレン-Bq、-無置換C1~C10アルキレン-Aq-置換C1~C10アルキレン-Bq、-置換C1~C10アルキレン-Aq-無置換C1~C10アルキレン-Bq、または-置換C1~C10アルキレン-Aq-置換C1~C10アルキレン-Bq(式中、Aqは、存在しないかまたは-NR5-であり、Bqは、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、または第三級アミンであり、R5は、水素、置換もしくは無置換アルキル、または置換もしくは無置換アリールである)である。
【0082】
第2のPACEngポリマーの一部の形態では、R
3、R
4、またはその両方は、
【化7-1】
【化7-2】
から選択される。
【0083】
一部の形態では、第2のPACEngポリマーは、第2のPACEngポリマーが式IIIの構造を有することを除いて、上記に記載される通りである。
【化8】
【0084】
モノマー単位は、1つまたは複数の位置で、1個または複数の置換基により置換することができる。例示的な置換基としては、限定されるものではないが、アルキル基、環状アルキル基、アルケン基、環状アルケン基、アルキン、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ニトロ、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられる。
【0085】
第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)は、好ましくは、生体適合性である。さまざまな環のサイズの容易に利用可能なラクトンは、低い毒性を持つことが公知であり、例えば、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(p-ジオキサノン)などの小さなラクトンから調製されたポリエステルは、臨床適用において使用されている市販の生体材料である。大きな(例えば、C16~C24)ラクトンおよびそれらのポリエステル誘導体は、ハチなどの生物において特定されている天然産物である。16~24個の環炭素原子を含有するラクトンが、具体的に企図され、開示される。
【0086】
一部の形態では、第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)は、温度制御された加水分解を経てさらに活性化され、それによって、1個または複数の活性化された末端基を露出させることができる。1個または複数の活性化された末端基は、例えば、ヒドロキシルまたはカルボン酸末端基であり得、これらは両方とも、ポリマー内のエステル結合の加水分解を経て生じ得る。活性化された第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)は、約5~25kDa、好ましくは、約5~10kDaの重量平均分子量を有することができる。
【0087】
一部の形態では、ナノ粒子は、約1%wt/wt~約15%wt/wtのPACE-PAOポリマー、および約99%wt/wt~約15%wt/wtの第2のPACEポリマー(すなわち、第2のPACEabポリマーまたは第2のPACEngポリマー)、例えば、約10%wt/wtのPACE-PAOポリマーおよび約90%wt/wtの第2のPACEポリマーを含有する。
【0088】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、許容されるパラメーター内のわずかな変動を意味する。明確性のために、「約」は、所与の値の±10%を指す。一部の形態では、活性化された第2のPACEngポリマーは、一方の末端にR1またはR2(例えば、R3またはR4を示す非限定的な部分によって例示される、ヒドロキシル基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、またはそれらの組合せを含有する化学実体)を含有し、他方の末端に加水分解を介して生じたヒドロキシルまたはカルボン酸末端基を含有する。
【0089】
一部の形態では、第2のPACEngポリマーは、第2のPACEngポリマーが式IVの構造を有することを除いて、上記に記載される通りである。
【化9】
【0090】
一部の形態では、第2のPACEngポリマーは、第2のPACEngポリマーが式Vの構造を有することを除いて、上記に記載される通りである。
【化10】
【0091】
一部の形態では、第2のPACEngポリマーは、第2のPACEngポリマーが式VIの構造を有することを除いて、上記に記載される通りである。
【化11】
[式中、X’は、-OHまたは-NHR’である]
【0092】
式VI、V、およびVIは、中間生成物の構造である。それらは、R1およびR2の少なくとも1つが存在する、式I、IIまたはIIIの構造を有する多種多様な第2のPACEngポリマーを合成するために使用することができる。
【0093】
3.必要に応じて標的化部分に結合した、表面上に非共有結合的にコンジュゲートされた界面活性剤を含有するナノ粒子
別の態様では、ナノ粒子は、ナノ粒子の表面に非共有結合的にコンジュゲートされた界面活性剤を含有する。これらの形態では、ナノ粒子は、第2のPACEポリマーとブレンドされたPACE-PAOを含有するナノ粒子という表題のセクションで上記に記載された、第2のPACEポリマーを含有する。好ましくは、界面活性剤は、ポリマー性界面活性剤である。
【0094】
好ましくは、これらの形態では、ナノ粒子の表面は、標的化部分が共有結合的にコンジュゲートされている、界面活性剤を含有する。標的化部分を含有する界面活性剤は、構造:
【化12】
[式中、
それぞれのAfは、独立して、疎水性または親水性モノマー残基であり、
Bfは、置換アルキル、置換アリール、置換シクロアルキル、置換ヘテロシクリル、置換アミン、置換カルボニル、置換アミド、または置換スルホンであり、
Tfは、独立して、酸素であるかまたは存在せず、
R
7fは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アミド、置換アミド、置換スルホン、無置換スルホン、アリール、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、マレイミド、アミン、置換アミン、チオール、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スクシンイミド、アジド、アクリレート、メタクリレート、アルキン、ヒドロキシド、またはイソシアネートであり、
TMは、標的化部分であり、
axは、独立して、0~10,000、0~5,000、または0~1,000の整数であり、
bxおよびcxは、独立して、1~10,000、1~5000、または1~1,000の整数である]
を含有する。
【0095】
一部の形態では、標的化部分を含有する界面活性剤は、界面活性剤が、構造:
【化13】
を含有することを除いて、上記に記載される通りである。
【0096】
ナノ粒子に標的化部分をコンジュゲートするいずれかのアプローチでは、標的化部分は、小分子(200Da~2,500Daの分子量)、アプタマー、タンパク質、またはペプチドを含む。
【0097】
一部の形態では、ナノ粒子は、細胞型または細胞状態に特異的な標的化ドメインまたは標的化シグナルを含む。ナノ粒子に連結され得るか、または連結され得ない部分の例としては、例えば、特定の細胞への分子の送達を提供する標的化部分が挙げられる。標的化シグナルまたは配列は、宿主、組織、臓器、細胞、オルガネラ、非核オルガネラ、または細胞コンパートメントに特異的であり得る。また、本明細書の組成物は、他の特定の細胞間領域、コンパートメント、または細胞型に標的化され得る。
【0098】
一部の形態では、標的化シグナルは、ベクターおよび細胞膜を互いに十分に近づけて、ベクターの細胞への浸透を可能にするように、標的細胞の表面上に位置するそのリガンドまたは受容体に結合する。追加の実施形態は、ポリヌクレオチドを特定の組織または細胞型に特異的に送達することを対象とし、ここで、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードすることができるか、または異なるポリヌクレオチドの発現を妨げることができる。細胞に送達されるポリヌクレオチドは、細胞の機能を増強し得るか、またはそれに寄与し得るポリペプチドをコードすることができる。
【0099】
標的化部分は、抗体またはその抗原結合性断片、抗体ドメイン、抗原、T細胞受容体、細胞表面受容体、細胞表面接着分子、主要組織適合性遺伝子座タンパク質、ウイルスエンベロープタンパク質、および規定の細胞に特異的に結合するファージディスプレイによって選択されたペプチドであり得る。
【0100】
一部の形態では、好ましくは、標的化部分は、タンパク質またはペプチドである。
【0101】
当業者は、記載されるナノ粒子の指向性が、単に標的化シグナルを変化させることによって変更することができることを認識するであろう。哺乳動物生物における組織中のほぼすべての細胞型が、ある固有の細胞表面受容体または抗原を持つことは当技術分野において公知である。そのため、細胞表面受容体または抗原に対するほぼあらゆるリガンドを標的化シグナルとして組み込むことが可能である。例えば、ペプチジルホルモンは、そのようなホルモンに対する受容体を持つ細胞への送達を標的化する標的化部分として使用することができる。ケモカインおよびサイトカインは、同様に、それらの標的細胞への複合体の送達を標的化する標的化シグナルとして用いることができる。ある特定の細胞または細胞状態において優先的に発現される遺伝子を特定するために各種の技術が開発されており、当業者は、そのような技術を用いて、目的の標的組織において優先的にまたは固有に発現される標的化シグナルを特定することができる。
【0102】
B.ナノ粒子に結合するおよび/またはその中に封入される材料
1.治療剤、予防剤および診断剤
活性薬剤には、合成および天然タンパク質(酵素、ペプチド-ホルモン、受容体、増殖因子、抗体、シグナル伝達分子を含む)、ならびに合成および天然核酸(RNA、DNA、アンチセンスRNA、三重鎖DNA、阻害性RNA(RNAi)、およびオリゴヌクレオチドを含む)、糖および多糖、小分子(典型的には、1000ダルトン未満)、脂質およびリポタンパク質、ならびにそれらの生物学的に活性な部分が含まれる。好適な活性薬剤は、小ペプチドおよびポリペプチドについて約1,000Da超、より典型的には、タンパク質について、少なくとも約5,000Da、および多くの場合に10,000Daまたはそれよりも大きいサイズを有する。核酸は、より典型的には、塩基対または塩基(まとめて「bp」)の観点で列挙される。
【0103】
代表的な抗がん剤としては、限定されるものではないが、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシルおよびイホスファミド)、代謝拮抗薬(例えば、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、フルダラビン、およびフロクスウリジン)、抗有糸分裂薬(タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル(decetaxel)、ならびにビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンを含む)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、およびエピルビシン、ならびにアクチノマイシン、例えば、アクチノマイシンDを含む)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシン、およびブレオマイシンを含む)、トポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン類、例えば、カンプトテシン、イリノテカン、およびトポテカン、ならびにエピポドフィロトキシンの誘導体、例えば、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシドを含む)、ダナゾール、およびそれらの組合せが挙げられる。他の好適な抗がん剤としては、血管新生阻害剤;受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、パゾパニブ、アキシチニブ、およびラパチニブ;ならびにトランスフォーミング増殖因子-αまたはトランスフォーミング増殖因子-β阻害剤が挙げられる。
【0104】
この技術を用いて送達され得る他の治療薬としては、抗生物質(抗細菌性、抗ウイルス性または抗真菌性)、および抗炎症薬(例えば、コルチゾンおよびプレドニゾンのようなステロイド、ならびに非ステロイド抗炎症薬、例えば、ナプロキセン)が挙げられる。
【0105】
画像化剤、例えば、放射線不透過性化合物も、配置または除去の時に局在化を容易にするために組み込まれ得る。
【0106】
例示的な診断材料としては、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種が挙げられる。好適な診断剤としては、限定されるものではないが、x線画像化剤および造影媒体が挙げられる。放射性核種は、画像化剤として使用することもできる。他の好適な造影剤の例としては、放射線不透過性であるガスまたはガス発生化合物が挙げられる。ナノ粒子は、投与された粒子の場所を決定するために有用な薬剤をさらに含むことができる。この目的のために有用な薬剤としては、蛍光タグ、放射性核種および造影剤が挙げられる。
【0107】
2.負荷
負荷パーセントは、典型的には、約1重量%~約80重量%、約1重量%~約50重量%、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約20重量%、または約1重量%~約10重量%である。一部の実施形態では、薬物負荷パーセントは、約5%~約50%、または約10%~約40%、または約15%~約30%である。具体的な実施形態では、薬物負荷は、約20、21、23、24、25、26、27、28、20、または30%である。
【0108】
III.作製する方法およびそのための試薬
(i)ポリマー
(a)末端基改変またはポリ(エチレングリコール)を有するポリ(アミン-co-エステル)またはポリ(アミン-co-アミド)
ポリマーは、一般に、合成ポリマーから改変される。例示的な合成ポリマーとしては、ラクトン、ジアルキル酸、およびジアルキルアミンから形成されるポリ(アミン-co-エステル)が挙げられる。リパーゼなどの酵素触媒を使用するラクトン、ジアルキル酸、およびジアルキルアミンからのポリ(アミン-co-エステル)の合成のための方法も提供する。例示的なラクトンは、米国特許公開第20170121454号に開示されている。一部の形態では、ポリ(アミン-co-エステル)は、スキーム1に示すようにして調製される。
【0109】
スキーム1:未改変ポリ(アミン-co-エステル)の調製
【化14】
反応物としてPDL、DES、MDA、およびPEGを使用する本明細書に記載されるポリマーの合成を、スキーム2に示す。
【0110】
スキーム2:PACE-PEG-MALブロックコポリマーの酵素的合成
【化15】
モノマーのモル比(例えば、ラクトン:アミノジオール:二酸)は、例えば、約10:90:90~約90:10:10で変わり得る。一部の実施形態では、比は、10:90:90、20:80:80、40:60:60、60:40:40、または80:20:20である。重量平均分子量は、狭い多分散性ポリスチレン標準を使用するGPCによって決定される場合、例えば、約2,000ダルトン~約50,000ダルトン、好ましくは、約2,000ダルトン~約20,000ダルトン、より好ましくは、約5000ダルトン~約20,000ダルトン、最も好ましくは、約5000ダルトン~約10,000ダルトンで変わり得る。
【0111】
ポリマーの疎水性は、ラクトンのパーセンテージを、例えば、約10%~約100%(ラクトン単位対(ラクトン単位+ジエステル/二酸)で算出される)、または約30%~約100%で変えることによって調整することができる。ポリマーの分子量は、第2段階の反応時間、例えば、約8時間~約72時間を調整することによって、調整することができる。
【0112】
酵素法は、多様な鎖構造および調整可能な疎水性を有するポリマーの合成を可能にする。一部の実施形態では、疎水性は、ラクトンモノマーの環サイズおよび/またはモル量を変えることによって変わる。広範囲の環サイズを有するラクトン(例:C4~C24、好ましくは、C6~C24、より好ましくは、C6~C16)をコモノマーとして使用することができる。反応は、アミノ基の保護および脱保護なしで単一ステップで行うことができる。そのようなアミノ保有コポリエステルは、従来の有機金属触媒が、有機アミンに感受性であるか、またはそれによって不活性化する場合が多いので、そのような触媒を使用して調製することは極めて困難である。これらの触媒は、大きなラクトン環モノマーを重合するのに非効率的であることも公知である。酵素触媒は、酵素の高い活性および選択性、ならびに得られる金属を含まない高純度の生成物により、生物医学ポリマーを生成することについての明確な利点を有する。
【0113】
式IV、V、またはVIの構造を有するポリマーは、式VIIの未改変ポリマーを1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と、約1:10~約1:60、好ましくは、約1:40のモル比で反応させることを介して合成することができる。
【0114】
式IまたはIIの構造を有するポリマーは、当技術分野において公知のカップリング反応を使用する式VIIの未改変ポリマーの末端基の改変を介して得ることができる。例えば、式IIIの構造を有するポリマーは、(1)式VIIの未改変ポリマーをCDIと反応させて、式IVのポリマーを得るステップ、および(2)式IVのポリマーをR
3-NH
2およびR
4-NH
2と反応させるステップを介して合成することができる。一部の形態では、R
3、R
4、またはその両方は、
図1に示されるものから選択される。好ましくは、R
3およびR
4は、同じである。
【0115】
あるいは、式IIIの構造を有するポリマーは、(1)式VIIの未改変ポリマーをCDIと反応させて、式VまたはVIのポリマーを得るステップ、(2)ステップ(1)からのポリマー中の-COOH基または-X’基を保護するステップ、(3)ステップ(2)からの保護されたポリマーをR4-NH2またはR3-NH2と反応させるステップ、(4)ステップ(3)からのポリマー中の-COOH基または-X’基を脱保護するステップ、および(5)ステップ(4)からの脱保護されたポリマーをR3-NH2またはR4-NH2と反応させるステップを介して合成することができる。
【0116】
式I、II、またはIIIのポリマーの加水分解媒介活性化は、最大で30日間またはそれよりも長く、温度制御された様式で行うことができる。加水分解の長さは、活性化されるポリマーの分子量に応じて変わり得る。より大きい分子量のポリマー(例えば、約20~25kDa)は、より長い期間、例えば、約30~40日間、最適に加水分解される。より小さな分子量のポリマー(例えば、約5~7kDa)は、より短い期間、例えば、約4~10日間、最適に加水分解される。
【0117】
一部の形態では、ポリマーは、約30℃~42℃、または最高で約100℃の範囲のいずれかの温度で加水分解される。PACEポリマーは、約35℃~40℃、例えば、約37℃の温度で加水分解することができる。
【0118】
一部の形態では、ポリマーは、例えば、約1atmで加水分解される。より高い圧力は、プロセスを加速する(例えば、約1~約100atmの圧力)。プロセスについての速度は、作製される特定の製剤について、当業者によって決定されるであろう。
【0119】
得られる加水分解生成物の重量平均分子量は、約5kDa~約25kDa、好ましくは、約5~約10kDaで変わり得る。
【0120】
好ましくは、ポリマー中のエステル結合の1つまたは複数が加水分解される。加水分解生成物は、一方の末端にR1またはR2、他方の末端に加水分解を介して生じたカルボキシルまたはヒドロキシル基を有し得る。
【0121】
(b)ポリ(ビニルアルコール-ビニルスルホン)の合成
PVA-VSポリマーを、Raudszus, et al. (Raudszus, et al., Int. J. Pharm. 2018, 536(1), 211-221)に記載されるようにして調製した。さらなる詳細を実施例に提供する。
【0122】
(ii)ナノ粒子
粒子は、当技術分野において公知の各種の技法を使用して調製することができる。使用される技法は、ナノ粒子を形成するために使用されるポリマー、得られる粒子の所望のサイズ範囲、および封入される材料に対する適合性を含む各種の要因に依存し得る。
【0123】
ナノ粒子を調製するために使用することができる当技術分野において公知の方法としては、限定されるものではないが、一重および二重エマルジョン;ナノ沈殿;ナノ粒子成形;静電的自己アセンブリー(例えば、ポリエチレンイミン-DNAまたはリポソーム)および高分子電解質濃縮(Suk et al., Biomaterials, 27, 5143-5150 (2006)を参照されたい)が挙げられる。好ましい形態では、ナノ粒子は、一重および二重エマルジョン蒸発手順を介して調製される。
【0124】
一部の形態では、負荷された粒子は、典型的には有機溶媒中で、ポリマーの溶液を目的の薬剤(例えば、mRNAなどの核酸)と組み合わせることによって調製される。最初に、ポリマーの溶液は、ポリマーを溶解するのに好適な溶媒にポリマーを溶解または懸濁させることによって調製される。封入される核酸に悪影響を及ぼさない(例えば、不安定化または分解しない)溶媒が選択されなければならない。好適な溶媒としては、限定されるものではないが、DMSOおよび塩化メチレン、すなわち、ジクロロメタン(DCM)が挙げられる。溶媒中のポリマーの濃度は、必要により変えることができる。
【0125】
次に、ポリマー溶液を、ポリヌクレオチドなどの封入される薬剤と混合する。薬剤は、それをポリマー溶液と組み合わせる前に、溶媒に溶解して溶液を形成することができる。一部の実施形態では、薬剤は、それをポリマー溶液と組み合わせる前に、生理学的緩衝液に溶解する。ポリマー溶液体積の薬剤溶液体積に対する比は、1:1であり得る。ポリマーおよび薬剤の組合せは、典型的には、トランスフェクションなどのその所望の目的のために溶液を使用する前に、数分間インキュベートして、粒子を形成する。一部の形態では、ナノ粒子は、ポリマーを含有する溶液を、無溶媒のポリマーまたはポリマーの構成要素と接触させて、粒子を生成することによって形成される。ポリマー/ポリヌクレオチド溶液を、トランスフェクションのために溶液を使用する前に、2、5、10、または10分より長くインキュベートすることができる。インキュベーションは、室温であり得る。
【0126】
(a)PACE-PEG-MALナノ粒子の製造
ナノ粒子がPACE-PEG-MALを含有する非限定的な場合では、標的化部分は、ナノ粒子の形成の前または後に、ポリマーにコンジュゲートすることができる。非限定的な例では、標的化部分が、タンパク質またはペプチドである場合、コンジュゲーションは、標的化部分をポリマーのPEG末端に連結するスクシンイミド基を形成する、タンパク質またはペプチド上の反応性基(例えば、チオール)とポリマー上のマレイミド基との間の容易な「クリック」反応を介して進行する。チオールは、タンパク質またはペプチド中のシステイン残基の側鎖由来であり得る。
【0127】
(b)PACE-PVA-VSの製造
ナノ粒子がPACE-PVA-VSを含有する非限定的な場合では、標的化部分は、ナノ粒子の形成の前または後に、PVA-VSポリマーにコンジュゲートすることができる。非限定的な例では、標的化部分が、タンパク質またはペプチドである場合、コンジュゲーションは、タンパク質またはペプチド上の反応性基(例えば、チオール)と、PACE-VSポリマーに共有結合的にコンジュゲートされたビニルスルホンの遊離ビニル基との間の容易な「クリック」反応を介して進行する。チオールは、タンパク質またはペプチド中のシステイン残基の側鎖由来であり得る。非限定的な例では、PACEポリマーは、有機相に溶解され、次いで、PVA-VS溶液に添加されて、エマルジョンを形成する。得られたエマルジョンは、次に、PVAの第2の溶液に移され、続いて、有機相を蒸発させて、ナノ粒子が形成され得る。
【0128】
IV.使用する方法
粒子は、有効量の1つまたは複数の治療剤、診断剤、および/または予防剤をそのような処置を必要とする患者に送達するために使用することができる。投与される薬剤の量は、処方する医師によって容易に決定することができ、患者の年齢および体重、ならびに処置される疾患または障害に依存する。
【0129】
一部の形態では、薬剤としては、核酸、例えば、mRNAが挙げられる。一部の形態では、薬剤は、ナノ粒子内に非共有結合的に封入されている。一部の形態では、ナノ粒子は、ナノ粒子の表面上よりも高い割合の、ナノ粒子で封入された薬剤を有する。一部の形態では、薬剤は、ナノ粒子内に封入されており、ナノ粒子の表面上に存在しない。
【0130】
ナノ粒子は、他の送達システムに対していくつかの利点を有する。ナノ粒子は、核酸の改善された負荷を有することができ、ナノ粒子の表面上の標的化薬剤(例えば、タンパク質およびペプチド)の制御された配向も示し得る。非限定的な例では、標的化薬剤(例えば、タンパク質およびペプチド)の配向は、タンパク質またはペプチド中に存在する特定のアミノ酸(例えば、システインのチオール基を含む)を介した共有結合性コンジュゲーションによって達成することができる。これらの性質は、望ましくない副作用、例えば、全身毒性の誘導なしで、薬剤、例えば、核酸を、標的化された組織に送達することを可能にする。したがって、ナノ粒子は、核酸の送達(例えば、制御された送達)のための多用途のプラットフォームとしての役割を果たす。
【0131】
粒子は、静脈内、皮下、もしくは筋肉内に投与することができ、鼻もしくは肺系に投与することができ、腫瘍環境内に注射することができ、粘膜表面(膣、直腸、頬側、舌下)に投与することができ、または経口送達のために封入することができる。粒子は、乾燥粉末として、水性懸濁物(水、食塩水、緩衝食塩水などの中)、ヒドロゲル、オルガノゲル、もしくはリポソーム、カプセル剤、錠剤、トローチ、または他の標準的な医薬賦形剤中で投与され得る。
【0132】
(i)ワクチンプラットフォーム
ナノ粒子は、ワクチン送達プラットフォームとして使用することができ、ここで、それらは、抗原、または病原体に対する増強された免疫を提供するための抗原をコードする核酸を含む。非限定的な例では、対象の粘膜および上皮組織において外因性抗原に対する頑強な粘膜免疫を誘導または増強するための方法で使用することができるナノ粒子が提供される。方法は、レシピエントの組織常在T細胞およびB細胞の1つまたは複数の集団を効果的に生じさせる。一部の形態では、方法は、ワクチン接種抗原および/またはワクチン接種抗原が起源である元の宿主に対して防御的な組織常在性メモリーTおよびB細胞の集団を提供する。一部の形態では、方法は、粘膜または上皮組織における抗体応答を誘導する。好ましくは、抗体応答は、主にIgA 抗体から構成される。細胞の粘膜免疫応答は、粘膜領域(例えば、呼吸管、または胃腸管)から、または粘膜領域(例えば、呼吸器領域または胃腸領域)から流出するリンパ節から単離されたリンパ球からのT細胞応答を測定することによって評価されてもよい。一部の形態では、方法は、感染性疾患に対する防御免疫を提供する。特に、方法は、1つまたは複数の呼吸器疾患に対する防御免疫を提供する。防御免疫が提供される疾患は、投与のための組成物内に提供される抗原によって決定される。
【0133】
一部の形態では、方法は、呼吸器ウイルス疾患による感染、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生に関連するコロナウイルス、またはインフルエンザウイルスによる感染に対して対象をワクチン接種する。
【0134】
(ii)トランスフェクションプラットフォーム
ナノ粒子は、ポリヌクレオチドの細胞トランスフェクションのためのものであり得る。トランスフェクションは、遺伝子治療および疾患処置を含む適用において適用することができる。ナノ粒子は、対照と比較した場合に、より効率的で、毒性が低く、またはそれらの組合せであり得る。一部の実施形態では、対照は、LIPOFECTAMINE 2000またはポリエチレンイミン(PEI)などの代替トランスフェクション試薬で処理された細胞である。
【0135】
トランスフェクションは、細胞をナノ粒子を含有する溶液と接触させることによって行われる。in vivoの方法について、接触は、典型的には、溶液が対象に投与された後にin vivoで起こる。in vitroの方法について、溶液は、典型的には、細胞の培養物に添加され、数分間、数時間、または数日間、細胞に接触させる。その後、細胞を洗浄して、過剰なナノ粒子を移動させることができる。
【0136】
ナノ粒子によって送達される特定のポリヌクレオチドは、処置される状態または疾患に応じて当業者によって選択することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、目的の遺伝子もしくはcDNA、mRNA、阻害性RNAなどの機能性核酸、tRNA、rRNA、あるいは目的の遺伝子もしくはcDNA、機能性核酸、tRNA、またはrRNAをコードする発現ベクターであり得る。一部の形態では、2つまたはそれよりも多くのポリヌクレオチドが、組み合わせて投与され得る。
【0137】
ナノ粒子は、in vitroでポリヌクレオチドを細胞に送達する方法において使用することができる。例えば、ナノ粒子は、細胞のin vitroトランスフェクションのために使用することができる。方法は、典型的には、ポリヌクレオチドを細胞の細胞質に導入するための有効量でポリヌクレオチドを含むナノ粒子と細胞を接触させることを含む。一部の形態では、ポリヌクレオチドは、細胞の遺伝子型または表現型を変化させるための有効量で細胞に送達される。細胞は、対象から単離された初代細胞、または樹立された細胞系の細胞であり得る。細胞は、同種の細胞型のものであり得るか、または異なる細胞型の異種性混合物であり得る。例えば、ナノ粒子は、例えば、フィーダー細胞培養、またはさまざまな分化の状態の混合培養において、異なる型の細胞を持つ不均一細胞系由来の細胞の細胞質に導入することができる。細胞は、細胞培養において無期限に維持することができる形質転換細胞系であり得る。例示的な細胞系は、腫瘍細胞系を含むAmerican Type Culture Collectionから入手可能なものである。
【0138】
任意の真核細胞をトランスフェクトして、特定の核酸、例えば、代謝遺伝子を発現する細胞(初代細胞および樹立された細胞系を含む)を生成することができる。好適な型の細胞としては、限定されるものではないが、幹細胞、全能性細胞、多能性細胞、胚性幹細胞、内部細胞塊細胞(inner mass cell)、成体幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、および外胚葉、中胚葉、または内胚葉に由来する細胞を含む、未分化細胞または部分的に分化した細胞が挙げられる。好適な分化細胞としては、体細胞、神経細胞、骨格筋、平滑筋、膵臓細胞、肝細胞、および心臓細胞が挙げられる。一部の形態では、siRNA、アンチセンスポリヌクレオチド(siRNAまたはアンチセンスポリヌクレオチドを含む)または阻害性RNAを、ナノ粒子を使用して、細胞にトランスフェクトすることができる。
【0139】
方法は、個別化治療の分野において、例えば、欠陥遺伝子を修復する、細胞を脱分化する、または細胞を再プログラミングするためにも有用である。例えば、標的細胞は、最初に、当技術分野において公知の方法を使用してドナーから単離され、in vitro(ex vivo)への変化を引き起こすポリヌクレオチドを含むナノ粒子と接触させ、それを必要とする患者に投与される。供給源または細胞は、患者またはアログラフィック(allographic)ドナーから直接採取された細胞を含む。一部の形態では、対象に投与される標的細胞は、自家である、例えば、対象に由来するか、または同系である。同種異系細胞は、抗原的に一致した、遺伝的に無関係なドナー(国の登録を通じて特定される)から、あるいは遺伝的に関連する同胞もしくは親から得られるか、またはそれらに由来する標的細胞を使用することによって、単離することもできる。
【0140】
細胞は、陽性および/または陰性選択技法によって選択することができる。例えば、特定の細胞表面タンパク質に結合する抗体は、所望の細胞型を回収するために利用される磁気ビーズおよび免疫原性手順にコンジュゲートされ得る。一過性トランスフェクションの前に標的細胞を富化することが望ましくあり得る。特定の標的細胞について富化された組成物の文脈において本明細書で使用される場合、「富化された」は、天然の細胞の起源において見出されるものよりも高い所望のエレメント(例えば、標的細胞)の割合を示す。細胞の組成物は、細胞の天然起源よりも、少なくとも1桁、好ましくは、2桁または3桁、より好ましくは、10、100、200、または1000桁富化され得る。標的細胞が単離されたら、それらを、当技術分野において公知の確立された方法に従って好適な培地中で成長させることによって繁殖させてもよい。樹立された細胞系もまた、方法のために有用であり得る。細胞は、必要により、トランスフェクション前に凍結保存することができる。
【0141】
次に、細胞を、in vitroで組成物と接触させて、細胞を、修復、脱分化、再分化、および/または再プログラミングする。細胞をモニタリングすることができ、所望の細胞型を、治療的投与のために選択することができる。
【0142】
修復、脱分化、および/または再分化および/または再プログラミングの後、細胞は、それを必要とする患者に投与される。最も好ましい実施形態では、細胞は、同じ患者から単離され、同じ患者に戻して投与される。代替の実施形態では、細胞は、1人の患者から単離され、第2の患者に投与される。方法はまた、後の使用のために長期間保存することができる変更細胞の凍結ストックを生成するために使用することができる。一部の形態では、線維芽細胞、ケラチノサイトまたは造血幹細胞は、患者から単離され、in vitroで修復、脱分化、または再プログラミングされて、患者のための治療用細胞を提供する。
【0143】
一部のin vivoアプローチでは、ナノ粒子は、治療有効量で対象に投与される。本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、処置される障害の1つまたは複数の症状を処置、阻害、または軽減するのに十分な投薬量、またはそうでなければ、所望の薬理学的および/または生理学的効果を提供するのに十分な投薬量を意味する。正確な投薬量は、対象に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健康など)、疾患、およびもたらされる処置などの各種の要因に従って変わる。
【0144】
医薬組成物は、非経口的(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経皮的(受動的に、またはイオントフォレーシスもしくは電気穿孔を使用するかのいずれか)、もしくは経粘膜的(鼻、膣、直腸、または舌下)な投与の経路によるか、または生体内分解性挿入物を使用する投与のためのものであり得、それぞれの投与の経路に適した剤形に製剤化することができる。
【0145】
一部の形態では、ナノ粒子は、全身的に、例えば、静脈内または腹腔内投与によって、標的化された細胞への組成物の送達に有効な量で投与される。他の可能な経路としては、経皮または経口が挙げられる。
【0146】
ある特定の形態では、ナノ粒子は、局所的に、例えば、処置される部位への直接注射によって投与される。一部の形態では、組成物は、1つまたは複数の腫瘍に、注射されるか、またはそうでなければ直接投与される。典型的には、局所注射は、全身投与によって達成され得るものよりも高いナノ粒子の増加した局所濃度を引き起こす。一部の形態では、ナノ粒子は、カテーテルまたはシリンジを使用することによって、適切な細胞に局所的に送達される。そのようなナノ粒子を細胞に局所的に送達する他の手段としては、注入ポンプ(例えば、Alza Corporation、Palo Alto、Calif.製)を使用すること、または組成物をポリマー性インプラントに組み込むこと(例えば、P. Johnson and J. G. Lloyd-Jones, eds., Drug Delivery Systems (Chichester, England: Ellis Horwood Ltd., 1987を参照されたい)が挙げられ、これは、インプラントのすぐ近くの領域へのナノ粒子の持続放出をもたらし得る。
【0147】
ナノ粒子は、それを細胞と接触させることによるなどで直接的に、または任意の生物学的プロセスの作用を通じてなどで間接的に、細胞に提供することができる。例えば、ナノ粒子は、生理学的に許容される担体またはビヒクルにおいて製剤化され、細胞を取り囲む組織または流体に注射することができる。ナノ粒子は、単純な拡散、エンドサイトーシス、または任意の能動的なまたは受動的な輸送機構によって、細胞膜を通過することができる。
【0148】
ナノ粒子は、遺伝子関連疾患または障害の処置のための遺伝子治療プロトコールにおいて使用することができる。細胞機能障害は、組成物および方法を使用して処置または低減することもできる。一部の形態では、遺伝子治療に適した疾患が、特異的に標的化される。疾患は、小児、例えば、18歳未満、典型的には、12歳未満の個体、または成人、例えば、18歳またはそれより年長の個体であり得る。そのため、本開示の実施形態は、ポリヌクレオチドを含むナノ粒子の疾患に冒された細胞へのトランスフェクションによって、疾患と診断された宿主を処置することを対象とし、ここで、ポリヌクレオチドは、治療用タンパク質をコードする。一部の形態では、阻害性RNAは、タンパク質の発現を低減または排除するために特定の細胞型または状態に方向付けられ、それによって、治療効果を達成する。本開示は、遺伝子の欠陥または異常によって引き起こされる疾患を処置するための遺伝子を、操作すること、増大させること、または置き換えることを包含する。
【0149】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって、さらに理解されるであろう。
【実施例】
【0150】
(実施例1)
標的化されたPACE NPは、in vitroで、ナノ粒子を標的細胞に有効に方向付ける
直鎖状ポリ(アミン-co-エステル)ターポリマーは、mRNAを含む核酸のための効率的な送達システムを形成することができる。ここで、PACEから形成されたナノ粒子の表面へのペプチドおよびタンパク質の付着のための2つの異なる方法を設計し、これらのナノ粒子の増強された標的化について評価した。これらの方法は、細胞または組織の他の構成要素へのこれらのナノ粒子の効率的で多用途の標的化を可能にする。
【0151】
材料および方法
(i)コンジュゲーション方法1
(a)PACE-PEG-マレイミドの合成
PACE-PEG-マレイミドを、リパーゼ系酵素触媒(CALB)を使用して、ジフェニルエーテル中の15-ペンタデカノリド、N-メチルジエタノールアミン、セバシン酸ジエチルおよびマレイミド-PEG-OHの共重合を介して合成した。第1段階(オリゴマー化)では、反応物および溶媒を、1atmのアルゴンガス下、90℃で、250rpmで18~20時間撹拌した。第2段階(重合)では、反応を、真空下、さらに48~72時間継続した。次いで、得られた粗ポリマーを、ヘキサン中で3回洗浄し、クロロホルムに溶解し、濾過した。次いで、添加されたクロロホルムを、ロータリーエバポレーターを介して除去した。
【0152】
(b)一重エマルジョン蒸発によるDiD負荷PACE-PEG-MALナノ粒子の製造
DiD負荷PACE-PEG-MALナノ粒子を、標準的な一重エマルジョン蒸発手順に従って合成した。
【0153】
(c)ナノ粒子上のPACE-PEG-MALへのシステイン末端結合タンパク質のコンジュゲーション、および色素負荷ナノ粒子の細胞取り込み
PACE-PEG-MAL NPを、NPの表面上のマレイミド基とタンパク質の単一の末端システインのチオール基との間のチオール反応を使用して、Cys末端タンパク質とコンジュゲートした、
図2A。反応を、10:1のNP:タンパク質重量比で、穏やかな混合(Orbit Shaker、250rpm)により、室温で1時間行った。過剰のタンパク質を、遠心分離(15分、25000rpm、17℃)によって除去し、NPを、5mg/mLの濃度で、PBSに再分散させた。結合タンパク質-NPを、液体窒素中で急速凍結し、使用まで-80℃で保存した。
【0154】
W128Xナンセンス嚢胞性線維症変異についてホモ接合性のヒト気管支上皮細胞を、上皮マーカーEpCAMを標的化する抗体またはアイソタイプ対照抗体で官能化された色素(DiD)負荷PACE-PEG-MALナノ粒子で処理した。細胞取り込みを、フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡によって測定した。
【0155】
ヒト臍帯静脈内皮細胞も、標的化されたナノ粒子、標的化されていないナノ粒子、および対照ナノ粒子の取り込みを評価するために使用した。
図3A。
【0156】
(ii)コンジュゲーション方法2
(a)ポリ(ビニルアルコール-ビニルスルホン)(PVA-VS)の合成
PVA-VSポリマーを、Raudszus, et al. (Raudszus, et al., Int. J. Pharm. 2018, 536(1), 211-221)に記載されるようにして調製した。過剰のジビニルスルホンを、水に対する24時間の透析によって除去した(Slide-ALyzer(登録商標)透析カセット、10000 MCWO、Thermo Scientific)。得られたPVA-VSを、凍結乾燥し、D2Oにおける1H NMRによって特徴付けた(Agilent DD2 400 MHz)。PVA-VSの合成のための概略図を、
図4Aに示す。
【0157】
(b)一重エマルジョン蒸発によるPACE-PVA-VSの製造
PACE-PVA-VS NPを、エマルジョン蒸発法に従って調製した。ポリマーを、50mg/mLでDCMに溶解し、0.5%の色素:ポリマー重量比で、脂溶性蛍光色素(DiD)と混合した。次いで、この有機相を、ガラスパスツールピペットを用いて、激しいボルテックス下の5%(w/w)のPVA-VS溶液に滴下添加した(1:2の有機相:水相の体積比)。次いで、得られたエマルジョンを、撹拌下、0.3%(w/w)のPVA溶液のその体積の3倍を含有するビーカーに移した。1分後、有機溶媒を、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させた。過剰のPVAおよびPVA-VSを、2回の遠心分離(18000g、45分、4℃)によって洗浄した。ペレットを、DI水に再分散させ、液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。NPのサイズおよびゼータ電位を、動的光散乱(Zetasizer Nano ZS、He-Neレーザー633nm、173°、Smoluchowski式、Malvern Panalytical)によって測定した。
【0158】
(c)PVA-VSの使用によるPACE-PVA-VSナノ粒子へのタンパク質の表面付着、および色素負荷ナノ粒子の細胞取り込み
第1段階では、PACE-PVA-VS NPを、NPの表面上のビニルスルホン基とタンパク質の単一の末端システインのチオール基との間のチオール反応を使用して、Cys末端タンパク質とコンジュゲートした。反応を、10:1のNP:タンパク質重量比で、穏やかな混合(Orbit Shaker、250rpm)により、室温で1時間行った。過剰のタンパク質を、遠心分離(15分、25000rpm、17℃)によって除去し、NPを、5mg/mLの濃度で、PBSに再分散させた。
【0159】
ヒト臍帯静脈内皮細胞を、標的化されたナノ粒子、対照ナノ粒子、およびナノ粒子なしの取り込みを評価するために使用した。細胞核を、DAPIで染色した。
【0160】
結果
(i)コンジュゲーション方法1
(a)PACE-PEG-マレイミドの合成
PACE-PEG-MALポリマーの構造を、
図1Aおよび1Bに示されるように、NMRを介して確認した。
【0161】
(b)一重エマルジョン蒸発によるDiD負荷PACE-PEG-MALナノ粒子の製造
PACE-PEGポリマーの組成およびナノ粒子の性質を、表1に示す。
【表1】
【0162】
(c)ナノ粒子上のPACE-PEG-MALへのシステイン末端結合タンパク質のコンジュゲーション、および色素負荷ナノ粒子の細胞取り込み
図2Aは、多用途のマレイミド化学を活用する、ナノ粒子表面官能化のための概略図を示す。EpCAM標的化ナノ粒子は、
図2Bに示されるように、アイソタイプ対照と比較して、増強された取り込みを呈した。
【0163】
図3Bに示されるように、標的化されたナノ粒子(CD31官能化)を形成するためのPACE-PEG-MALを介したタンパク質の化学的コンジュゲーションは、標的化されていないナノ粒子、および対照ナノ粒子(CD31アイソタイプで官能化)と比較して、HUVECにおける標的化された取り込みを増加させた。
【0164】
(ii)コンジュゲーション方法2
(a)PVA-VSの合成
PVA-VSポリマーの構造を、
図4Bおよび4Cに示されるように、NMRを介して確認した。
【0165】
(b)一重エマルジョン蒸発によるPACE-PVA-VSの製造
PACE-PVA-VSポリマーの組成およびナノ粒子の性質を、表2に示す。
【表2】
【0166】
(c)ナノ粒子上のPACE-PVA-VSへのシステイン末端結合タンパク質のコンジュゲーション、および色素負荷ナノ粒子の細胞取り込み
図5Bおよび5Cに示されるように、PVA-VSを介したPACEナノ粒子へのタンパク質の化学的コンジュゲーションは、対照ナノ粒子(CD31アイソタイプで官能化)と比較して、HUVECにおける標的化されたナノ粒子(CD31で官能化)の取り込みを増加させた。
【0167】
要約すると、結果は、PACE-PEG-マレイミドを、細胞および組織へのナノ粒子の効率的な標的化を可能にするように、PACEナノ粒子に製剤化することができることを示す。さらに、界面活性剤、例えば、ポリ(ビニルアルコール-ビニルスルホン)を、粒子形成の間に、PACEナノ粒子表面に添加することができ、次いで、細胞および組織へのナノ粒子の効率的な標的化のために、標的化タンパク質にコンジュゲートするために使用することができる。
【0168】
(実施例2)
表面改変ナノ粒子のin vivo取り込み
材料および方法
同意した健康なドナー由来の血液試料を、Yale School of Medicineで収集した。すべての収集は、Yale University Institutional Review Board(IRB)によって承認されたプロトコール下で行った。参加者は、その登録について補償しなかった。
【0169】
実施例1に記載したように、NPを、DiD色素を封入しているPACE-PEGポリマーおよびPACE-PEG-マレイミドポリマーの50:50ブレンドを使用して製剤化した。これらのNPを、最初に、NPの表面上のマレイミド基とモノボディ(Mb)の単一の末端システインのチオール基との間のチオール反応により、Mbアダプター(クローンFCM101)にコンジュゲートした。NPおよびMbは、10NP:1Mbの重量比である。この反応を、250rpmで振とうしながら、室温で1時間行った。過剰のMbを、遠心分離(15分、18,000×g、17℃)によって除去した。
【0170】
NPを、5mg/mLの濃度で、PBSに再分散させ、次いで、ヒトCD4に対する抗体(クローン9H5A8)またはラットCD4に対する抗体(クローンW3/25)と、18NP:1Abの重量比で、穏やかに混合しながら、室温で1時間、カップリングさせた。過剰のAbを、遠心分離(15分、18,000×g、17℃)で除去した。得られたNPを、急速凍結し、使用まで-80℃で保存した。抗体の成功裏のコンジュゲーションを、細胞に基づく結合アッセイを使用して検証した。
【0171】
表面にコンジュゲートされた抗ヒトCD4抗体を用いて製剤化された50:50のPACE-PEG:PACE-PEG-MALから構成される色素負荷NPを、アイソタイプ対照NPと、ヒト全血とともに、5分間、12分間、30分間、または1時間インキュベートした後、PBMCを単離し、フローサイトメトリーによって、さまざまな細胞型におけるNPの取り込みを評価した。
【0172】
次いで、PACE-PEG-MAL系NPのin vivo標的化の可能性を、アイソタイプ対照またはラットCD4標的化NPのいずれかのデコイ事前投与を伴う野生型ラットにおいて評価した。NPを、クロドロネートリポソーム投与の24時間後に野生型ラットに投与した。末梢血単核細胞(PBMC)を、2時間後の末梢血試料から単離し、フローサイトメトリーによって、NPの取り込みについて分析した。
【0173】
結果
結果を、CD4標的化PACE NPが、in vitroでのヒト血液およびin vivoでのラットにおけるCD4
+T細胞において、選択的に蓄積することを示す、
図6A~6Fに示す。
【0174】
図6Aは、CD4+で官能化されたNP表面を形成するための、システインを介してNP表面にコンジュゲートされたモノボディ、次いで、モノボディへの抗体の結合を使用して、PACE-PEG-MALから形成されたナノ粒子の表面官能化を示す。
【0175】
次いで、NPを、PBMCに添加した。5、12、30および60分での結合を、アイソタイプおよびCD4について、
図6Bに示し、表面官能化なしの対照NPの結合を、アイソタイプおよびCD4について、
図6Cに示す。
【0176】
図6Dは、ラットを、-24時間においてクロドロネートリポソームで処置し、次いで、アイソタイプまたはCD4結合PACE-PEG-Mal-Ab NPのいずれかをラットの尾静脈に注射する、手順を示す。
図6Eは、アイソタイプおよびCD4についてのPBMCに結合したCD4+NPのパーセンテージを示し、
図6Fは、アイソタイプおよびCD4についてのCD4で表面が改変されていない対照NPのパーセンテージを示す。
【0177】
結果は、CD4官能化PACE-PEG-MAL NPとの結合の官能化および有効性を実証する。
【0178】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、慣用的なものに過ぎない実験を使用して、認識するか、またはそれを確かめることができる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図する。
【国際調査報告】